JP2544909B2 - スク―タ型自動二輪車のエアクリ―ナ取付構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はリヤカバー内に強制空冷式エンジンを収容し
たスクータ型自動二輪車のエアクリーナ取付構造に関す
るものである。

〔従来の技術〕

この種のスクータ型自動二輪車においては、クランク
軸に冷却送風ファンを取付け、このファンによって起き
た風をエンジンに吹きつけて冷却する強制空冷式のエン
ジンが使用されており、このエンジンを実質的に下方に
のみ開口するリヤカバー内に収容したものが一般的であ
る。そして、前記ファンおよびエンジンシリンダを被覆
して導風路を形成するシュラウドを、冷却風が車幅方向
へ流れるように形成している。すなち、車体の一側面か
ら取り入れた冷却空気をシリンダを横切るように流した
後、車体の反対側の側面から吹き出すように構成されて
いる。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、このような構造では、エアクリーナを
エンジンの後方であって後輪の側方に配設せざるを得
ず、容量を大きくできないという不具合があった。これ
は、リヤカバー内の収容空間が後部において狭められて
いることによる。すなわち、リヤカバーは一般に後方に
向かって断面形状が小さくなるように形成されると共
に、後部には後輪を懸架するクッションユニットが収容
されているために、これら部材との干渉を避けてエアク
リーナを配設する必要があるからである。また、エンジ
ンを冷却した後の熱風をエアクリーナが吸って吸気の吸
入効率、すなわちエンジン性能を低下させるおそれがあ
る。

〔課題を解決するための手段〕

本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、エア
クリーナの容量を大きくできるとともに、エンジンを冷
却した熱の熱風がエアクリーナに吸い込まれ難くなるス
クータ型自動二輪車のエアクリーナ取付構造を提供する
ものである。

本発明に係るスクータ型自動二輪車のエアクリーナ取
付構造は、ハンドルとシートとの間に低床な足載せ台を
有し、前記シートの下方に、シリンダおよびクランク軸
端部の冷却風送風ファンを覆って導風路を形成するシュ
ラウドを有する強制空冷式エンジンとこのエンジンにお
ける前記冷却風送風ファンとはクランク軸方向において
反対側となる側部から後方へ延び後端部に後輪を支持し
た伝動ケースとが一体化されたスイング式動力ユニット
が、その前部を車体フレームに枢支させかつ前記伝動ケ
ース後端部を車体フレームに緩衝器を介して連結して配
置され、シート下縁から下方へ延びて前記動力ユニット
の上方周囲を覆うとともに前記足載せ台に連なる平面視
後細り状のリヤカバーを備え、このリヤカバー内にエア
クリーナを配置したスクータ型自動二輪車において、前
記エアクリーナを、前記シリンダを車体側方視において
略全域にわたって覆う構造とするとともに、前記シュラ
ウドにおけるシリンダを覆う下流部の伝動ケース側とな
る側面に密接させ、このエアクリーナの吸気口を車体内
方へ向けて開口させ、かつこの吸気口と前記シュラウド
の排気口とをエンジンのシリンダによって仕切られた一
方の側と他方の側に開口したものである。

〔作用〕 本発明においては、リヤカバーにおいて断面形状が大
きな部位である前部にエアクリーナを収容することによ
り、リヤカバーおよびクッションユニットがエアクリー
ナに干渉するのを抑えるようにする。また、シリンダお
よびエアクリーナが、エアクリーナの吸気口とシュラウ
ドの排気口との間に介在されることになる。

〔実施例〕

以下、本発明の一実施例を図により詳細に説明する。
第１図は本発明に係るスクータ型自動二輪車のエアクリ
ーナ取付構造が実施された自動二輪車の一部を示す平面
図、第２図は同じく全体の側面図、第３図は第２図のII
I−III線断面図で、第２図において符号１で示すもの
は、スクータ型の自動二輪車を示す。この自動二輪車１
はハンドル２とシート３との間に低床な足載せ台４を有
し、後部には上方をシート３によって閉塞され実質的に
下方にのみ開口されたリヤカバー５が配設されている。
このリヤカバー５は、従来のものと同様に、前部の断面
形状が比較的大きく、後部に向かうにしたがって小さく
なるよう平面視後細り状に形成されている。さらに、こ
のリヤカバー５は、シート下縁から下方へ延びて後述す
る動力ユニットの上方周囲を覆うとともに、前記足載せ
台４に連なるように形成されている。

10はリヤカバー５内に収容された強制空冷式エンジン
で、側部から後方へ一体的に延設されエンジン動力を伝
達する動力伝達機構11を収容した伝動ケース12と共にス
イング式動力ユニットを構成し、後輪13を懸架する一構
成要素として機能するために、車体フレームに、その前
部が枢軸14を介して連結されるとともに伝動ケース12の
後端部がクッションユニット15を介して連結されること
によって、上下に揺動自在に枢支されている。また、エ
ンジン10はクランク室予圧縮式の２サイクルエンジンで
あり、前記後輪13の直前にシリンダ20が略鉛直方向に配
設されている。21は連設棒22を介してピストン23に連結
されたクランク軸で、クランクケース24に一体に形成さ
れた筒部25a,25bに圧入固定された軸受26,26を介して車
幅方向に軸架されている。27はシリンダ20の前面から斜
め下方に向かって延出された排気管で、エンジン10の下
側を後方に向かって延在し、リヤカバー５よりも下方で
あって後輪13の側方に支持されたマフラ28に接続されて
いる。

30は前記クランク軸21の一端部にキー結合されたボス
31に、発電機32の固定子32aと共に取付けられた冷却送
風ファン、40はこの冷却送風ファン30の外側および前記
シリンダ20の外側を被覆して冷却風の導風路を形成する
樹脂製のシュラウドである。このシュラウド40は、冷却
送風ファン30の周囲から上方に向かってシリンダ20の側
方にまで延在する上流部40aと、この上流部40aの上部か
ら車幅方向に延設されてシリンダ20の外側を覆う下流部
40bから構成されている。

上流部40aは冷却送風ファン30に対向する部位に空気
取入れ口41を有している。下流部40bは下方に向かって
開放された箱形状に形成され、後面には冷却風を吹き出
すための排気口42が後方向へ向けて開口されている。こ
の排気口42は、排気がマフラ28に向けて吹き出されるよ
うに、右側方にやや傾斜しかつ下方にも傾斜した方向を
指向している。

50は側面視略台形状を呈するエアクリーナで、このエ
アクリーナ50は、エンジン10のシリンダ20に対して前記
伝動ケース12と左右同じ側となるシリンダ側方に、シリ
ンダ20の車体左右方向の側面に対面するように配置され
ており、第１図に示すように、前記シュラウド40bの下
流部40bにおける伝動ケース12側となる側面に密接され
ている。このエアクリーナ50は左側方に開放されたクリ
ーナ本体50aと、このクリーナ本体50aの外側を覆うカバ
ー50bとからなり、伝動ケース12上を前後方向に延在
し、下流部40bよりも前後方向に長く形成されている。
また、このエアクリーナ50は、第２図に示すように、前
記シリンダ20を車体側方視において略全域にわたって覆
う構造になっている。

51はクリーナ本体50aの前部に一体に形成された吸気
ダクトで、下流部40bよりも前方に延出され吸気口52が
車体内方に向かって開口されている。一方、後部は下流
部40bよりも後方に延出されており、クリーナ本体50aの
内側面には空気出口53が開口されている。また、図示し
ないが、内部には空気中の塵埃を捕捉するフィルタエレ
メントが内部空間を二室に画成するように取付けられて
いる。

60は前記空気出口53とエンジン10のクランクケース24
内とを連通する吸気通路の途中に介装された気化器であ
り、エンジン10内に吸入される空気中に燃料を噴出させ
て混合する。

このように構成されたスクータ型自動二輪車のエアク
リーナ取付構造においては、エンジン10が始動される
と、吸気は矢印Ａで示すように車体内方に向けて開口す
る吸気口52を有する吸気ダクト51からエアクリーナ50内
に流入し、気化器60で燃料が混合された後にエンジン10
に吸入される。このとき、リヤカバー５内は雨水、泥、
埃等が浸入し難いので、これら異物が吸気口52からエア
クリーナ50に吸い込まれることは少ない。しかも、吸気
口52が車体内方を向くように開口されているので、走行
時に車体前側から後側へ流れる走行風の動圧が吸気口52
に作用することが少ないから、安定したエンジン性能が
得られる。

一方、冷却風は矢印Ｂで示すように空気取入れ口41か
ら取入れられてシュラウド40内を流れてシリンダ20を冷
却した後、排気口42から後方向に吹き出される。このよ
うにシュラウド40から排出されたエンジン冷却後の熱風
は、排気口42とエアクリーナ50の吸気口52との間にエン
ジン10のシリンダ20およびエアクリーナ50が介在されて
いるから、エアクリーナ50に吸い込まれることは少な
い。このため、高い吸入効率をもって吸気をエンジン10
に供給することができる。

また、シュラウド40の排気口42とエアクリーナ50の吸
気口52とをシリンダ20を隔てた一側と他側とに配置し、
エンジン10を冷却した後の熱風が吸気口52に吸い込まれ
難くなるように構成したことにより、エアクリーナ50
を、シリンダ20における伝動ケース側の側面に対面する
ように配置し、リヤカバー５において断面形状が大きな
部位である前部に収容することができる。したがって、
エアクリーナ50がリヤカバー５やクッションユニット15
に干渉されるのを従来に比較して抑えることができるの
で、その分エアクリーナ50の容量を大きくすることがで
きる。

なお、上記実施例においては排気口42を下流部40bの
後面に開口した例について説明したが、本発明はこれに
限定されるものではなく、前面に開口してもよい。この
場合、走行方向と異なる方向に指向させることにより、
走行風の影響を少なくできる。また、エアクリーナ50の
吸気口52の開口位置もシリンダ20より前側に限定される
ものではなく、適宜変更することができる。

〔発明の効果〕

以上説明したように本発明に係るスクータ型自動二輪
車のエアクリーナ取付構造は、エアクリーナを、エンジ
ンのシリンダを車体側方視において略全域にわたって覆
う構造とするとともに、前記シリンダとクランク軸端部
の冷却風送風ファンを覆う強制空冷式エンジン用シュラ
ウドにおけるシリンダを覆う下流部の伝動ケース側とな
る側面に密接させたため、車体後側へ向かうにしたがっ
て次第に幅狭になるリヤカバーの内方空間における相対
的に幅広になる前側の空間にエアクリーナが収容される
ことになるから、エアクリーナがリアカバーおよびクッ
ションユニットに干渉されるのを防ぐことができ、エア
クリーナの大容量化を図ることができる。

強制空冷式エンジンを有するスイング式動力ユニット
では、車幅方向略中央にシリンダを位置づけ、このシリ
ンダに対してクランク軸方向の一方に、送風ファンで吸
い込んだ空気をシリンダへ送るシュラウドの上流部を配
置するので、この動力ユニットをリヤカバーで覆う構成
を採ると、シリンダに対して前記シュラウド上流部とは
反対側となる側方の空間であって、リヤカバーと伝動ケ
ースとで囲まれた空間がデッドスペースになってしま
う。

本発明によれば、エアクリーナを前記デッドペースに
配置し、シュラウドの下流部の側面に密着させたので、
リヤカバー内の限られた空間を有効に利用することがで
き、リヤカバーの内方空間の前寄りに容積の大きなシュ
ラウドおよびエアクリーナをコンパクトに配設すること
ができる。

このようにシュラウドとエアクリーナとを車幅方向に
並べて互いに近接させたとしても、エアクリーナの吸気
口と前記シュラウドの排気口とをエンジンのシリンダに
よって仕切られた一方の側と他方の側に開口させるとい
う構成を採っているため、排気口から排出された冷却
風、すなわちエンジンを冷却した後の熱風がエアクリー
ナから吸気系に吸い込まれるのを抑えることができる。
これは、前記吸気口と排気口との間にシリンダおよびエ
アクリーナが介在するからである。上述したようにエア
クリーナに熱風が吸い込まれるのを防ぐことにより、高
い吸入効率をもって吸気をエンジンに供給できるから、
エンジン性能を十分確保できる。

また、エアクリーナによりシュラウドの下流部の側面
を車体側方視において略全域にわたって覆うという構成
を採ることによって、シリンダの側方にエアクリーナか
らなる実質的に遮音壁として機能する物が配置されるこ
とになるから、シリンダで生じるエンジン騒音の放散を
低減することができるという効果もある。エアクリーナ
は上述したように容量を多くとることができることか
ら、容量が小さいエアクリーナを備えたエンジンに比較
してより低い周波数域の吸気騒音の低減ならびにエンジ
ン出力の向上も期待できる。

さらに、エアクリーナの吸気口を車体内方へ向けて開
口させたため、エンジンが運転されるときにはエアクリ
ーナへはリヤカバー内の空気が吸い込まれるようにな
る。すなわち、リヤカバー内は雨水、泥、埃等が浸入し
難いので、エアクリーナにこれら異物が吸い込まれるこ
とが少ない。しかも、走行時に車体前側から後側へ流れ
る走行風の動圧が吸気口に作用することが少ないから、
安定したエンジン性能が得られる。

このように、リヤカバー内の空気がエアクリーナに常
時吸入されるように構成するとともに、エンジンを冷却
した後の熱風が吸気口側へ流れ難い構成を採ることによ
り、アイドリング時等においてリヤカバー内に熱気が滞
留するのを防ぐことができる。

したがって、本願発明によれば、エアクリーナをシリ
ンダ側方に配置して大容量化を図ることができるととも
に、エンジン性能を向上させることができるという効果
がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るスクータ型自動二輪車のエアクリ
ーナ取付構造が実施された自動二輪車の一部を示す平面
図、第２図は同じく全体の側面図、第３図は第２図のII
I−III線断面図である。 ５……リヤカバー、10……エンジン、20……シリンダ、
40……シュラウド、40b……上部シュラウド、42……排
気口、50……エアクリーナ、51……吸気ダクト、52……
吸気口、60……気化器。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ハンドルとシートの間に低床な足載せ台を
   有し、前記シートの下方に、シリンダおよび冷却風送風
   ファンを覆って導風路を形成するシュラウドを有する強
   制空冷式エンジンとこのエンジンにおける前記冷却風送
   風ファンとはクランク軸方向において反対側となる側部
   から後方へ延び後端部に後輪を支持した伝動ケースとが
   一体化されたスイング式動力ユニットが、その前部を車
   体フレームに枢支させかつ前記伝動ケース後端部を車体
   フレームに緩衝器を介して連結して配置され、シート下
   縁から下方へ延びて前記動力ユニットの上方周囲を覆う
   とともに前記足載せ台に連なる平面視後細り状のリヤカ
   バーを備え、このリヤカバー内にエアクリーナを配置し
   たスクータ型自動二輪車において、前記エアクリーナ
   を、前記シリンダを車体側方視において略全域にわたっ
   て覆う構造とするとともに、前記シュラウドにおけるシ
   リンダを覆う下流部の伝動ケース側となる側面に密接さ
   せ、このエアクリーナの吸気口を車体内方へ向けて開口
   させ、かつこの吸気口と前記シュラウドの排気口とをエ
   ンジンのシリンダによって仕切られた一方の側と他方の
   側に開口したことを特徴とするスクータ型自動二輪車の
   エアクリーナ取付構造。