JP2522457B2 - 冷間転造に適した軸受レ―ス用鋼管 - Google Patents

冷間転造に適した軸受レ―ス用鋼管

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JP2522457B2
JP2522457B2 JP2249772A JP24977290A JP2522457B2 JP 2522457 B2 JP2522457 B2 JP 2522457B2 JP 2249772 A JP2249772 A JP 2249772A JP 24977290 A JP24977290 A JP 24977290A JP 2522457 B2 JP2522457 B2 JP 2522457B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は玉軸受やローラ軸受などを構成するレース
の材料として用いられる軸受用鋼管であって、特に冷間
転造に適した軸受レース用鋼管に関する。
(従来の技術) 従来、自動車や各種産業機械に使用される軸受のレー
ス材には軸受用鋼が用いられ、その加工は主に旋盤によ
って行われている。そのため軸受用鋼には、転動疲労特
性に優れていることの外に、被切削性がよいことが要求
される。転動疲労特性に対しては、鋼中の非金属介在
物、とくに転動疲労に悪影響をおよぼす酸化物系介在物
を低減させることが提案されている(特開昭60−194047
号公報、特開昭62−294150号公報など)。また、被切削
性の改善にはSやTeなどの快削性向上元素を添加してい
る(特開昭61−217558号公報)。
ところが最近、冷間転造法(以下、CRF法と記す)を
用いる新しい軸受レースの製造法が開発された。第1図
(a)および第1図(b)(第1図(a)のA−A矢視
図)は、CRF法で軸受レースを製造する装置の概要を示
すものである。この装置は図示のように、水平方向に配
列された成形ロール1と、マンドレル2および受けロー
ル3から構成されている。この装置により軸受レースを
製造するときは、成形ロール1を回転させつつ白抜き矢
印方向(第1図(b)参照)に移動させ、マンドレル2
に遊嵌された被加工材(環状素材)4を押圧する。そう
すると被加工材4は成形ロール1とマンドレル2によっ
て転造され、所定の形状と寸法を有する軸受レースが得
られる。製品レースに成形する工程は、旋削加工よりも
CRFによる方が材料歩留りや生産効率の面からはるかに
有利である。
上記のCFR加工に供する原材料としては、鋼棒と鋼管
とがあるが、鋼棒の場合は、熱間鍛造等で一旦環状素材
とし、これを熱処理してからCFR加工に供する。鋼管の
場合は、適当なサイズ(外径、肉厚)に製管しておけ
ば、これを所定の長さに切断するだけで環状素材になる
から、熱間鍛造等の工程が省略できるという大きな利点
がある。
しかしながら、旋盤で切削していた従来の軸受用鋼管
をCRF法により加工すると、レース軌道溝の肩部に微小
割れが発生する。この割れは深いもので約0.3mmに達し
軸受レースの静的強度を低下させる。この割れを除去す
るには、CRF工程の後に切削工程を置かねばならず、余
分な設備費、加工費が必要になる。また、従来の軸受用
鋼管は、その表面が切削されることを前提としているた
め寸法精度(内外径の寸法精度)には格別の考慮は払わ
れていない。更に、鋼管表面のスケールや脱炭層あるい
は微小表面凹凸など(以下、これらを総称して「表面欠
陥」という)についても、特に問題にされることはなか
った。そのため、従来の軸受用鋼管をそのままCRF加工
に供すると、製品に寸法外れが生じたり、表面欠陥が残
留するという問題がある。軌道肩部の微小割れ、寸法外
れ、表面欠陥の残留等は、焼入れ・焼もどし熱処理後の
最終研削工程で或る程度は除去される。しかし、その除
去が不完全であると、レースの静的強度を低下させたり
(微小割れがある場合)、軸受の振動と騒音の増大や焼
付きの原因になったり(寸法外れのある場合)、転動疲
労寿命を著しく低下させたり(表面欠陥が残留した場
合)して製品軸受の信頼性を失墜させる。上記軸受性能
上の問題を回避するために製品レースに残る寸法外れや
表面欠陥を完全に除去すると研削代が増加する。また、
加工不良の防止のためにCRF加工前に表面旋削を行う
と、工数の増加と歩留りの低下を招き、製造コストが嵩
むという別の問題を生じる。
(発明が解決しようとする課題) 鋼管を素材としてCRF法を用いれば、寸法精度のよい
軸受レースを高能率で製造することができる。しかし、
旋削加工を前提として製造されている従来の軸受用鋼管
を用いたのでは、前記のように種々の問題が発生する。
この発明の第一の目的は、CRF加工を行っても加工割
れの発生しない軸受用鋼管を提供することにあり、第二
の目的は管として製造したままで、事前に切削加工など
をしなくても、CRF加工に供することができ、寸法はず
れや表面欠陥残留などの問題を生じない軸受レース用鋼
管を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、CRF法により軸受レースを製造する場
合の素材となる鋼材として、前記のような問題を生じな
いものを得るべく種々検討を重ねた結果、下記のような
知見を得た。
(a) CRF加工の際の微小割れの原因は、鋼中の非金
属介在物にあり、また、粗大炭化物も割れの原因にな
る。従って、割れの防止には非金属介在物を極力少なく
する成分設計と、炭化物の大きさの制限が重要である。
(b) 微小割れの伝播には鋼中のPの含有量と鋼材の
硬度が影響し、Pが少ない程、また硬度が低い程、割れ
が伝播し難い。
(c) 軸受レース用鋼管では、その寸法精度が所定値
以下で且つ表面欠陥(スケール層、脱炭層および微小表
面凹凸)が或る程度以下ならば、製造したままの鋼管を
そのままCRF加工に供することができ、そのとき残る表
面欠陥は、通常実施される最終研削工程で完全に除去で
きる。
(d) 一般に、鋼管表面を旋盤切削したものをCRF加
工した場合より、製造したままの鋼管をCRF加工したと
きの方が加工割れの発生が少ない。これは、製造したま
まの鋼管の表面に存在する脱炭層は、硬度が低いため
に、仮に素地の硬度が高くても、加工割れの発生が抑制
されるものと考えられる。しかし、鋼管表面の脱炭層の
厚さ(深さ)が過大になると、CRF加工後の通常の研削
仕上では除去できず、製品レースに脱炭層が残留してそ
の機械的性質を損なう。これを除去しようとすれば、工
数の増加、歩留りの低下を招く。
本発明は、上記の知見に、軸受レースとして必要な機
械的特性を付与するための合金組織の検討結果を加えて
なされたものであり、その要旨は下記の軸受レース用鋼
管にある。
重量%で、C:0.80〜1.20%、Si:2.0%以下、Mn:2.0
%以下、Cr:0.80〜1.60%およびMo:0〜0.50%を含有
し、不純物としてのP:0.020%以下、S:0.005%以下、O:
0.0006%以下、Ti:0.002%以下およびN:0.006%以下で
あって、残部がFeおよび不可逆的不純物からなり、組織
中に含まれる炭化物の粒径が2μm以下で、硬度がHRB1
00以下であり、下記(イ)および(ロ)の条件を満たす
ことを特徴とする冷間転造に適した軸受レース用鋼管。
(イ)内径および外径の寸法精度が±0.03mm以内 (ロ)内面および外面のそれぞれのスケール層、脱炭層
および微小表面凹凸の深さの総和の最大値が両面ともに
0.15mm以下。
上記に記載した合金成分に加えてMo:0.05〜0.50
%を含有する上記に記載する軸受レース用鋼管。
上記またはに記載する軸受レース用鋼管であっ
て、厚さ0.15mm以下の脱炭層を有することを特徴とする
冷間転造に適した軸受レース用鋼管。
上記の〜はCRF加工の際の微小割れの発生を防ぐ
ことに加えて製管のままでCRF加工に供することを意図
した鋼管である。
前述のようにCRF加工の際の微小割れの発生には素材
の硬さとPの含有量が大きく影響する。従って、上記し
た鋼管においては、Pの含有量と硬さとの関係を次のよ
うにすることが推奨される。
(a) 不純物のPの許容上限値を0.020%とする場合
は、硬さの許容上限値をHRB90とする。
(b) 硬さの許容上限値をHRB100とする場合は、Pの
許容上限値を0.010%とする。
本発明の鋼管を製造する鋼の溶製では、不純物の低減
のために真空脱ガス処理を行うのが望ましい。溶製後
は、連続鋳造またはインゴットからの分塊でビレットに
し、熱間圧延、熱間押出等により継目無管とし、球状化
焼鈍、冷間抽伸、さらに硬さ調整のための最終焼鈍、の
各工程を経てCRF加工用の鋼管とする。製管のままで使
用できるというのは、上記最終焼鈍の後、表面手入れの
研磨などをしなくても、CF加工用に供することができ
る、ということである。
(作用) まず、本発明の軸受レース用鋼管の化学組成を前記の
ように定めた理由を説明する。なお、合金成分含有量の
%は全て重量%を表す。
C:0.80〜1.20% Cは、製品としての軸受レースに必要な硬度(焼入れ
−焼戻し処理後で通常、HRC60以上)を持たせるために
0.80%以上の含有量が必要である。一方、1.20%を超え
ると粗大炭化物が生成して転動疲労寿命を低下させ、ま
たCRF加工のとき微小割れの起点となる。したがってC
は0.80〜1.20%とする。
Si:2.0%以下、 Siは、脱酸剤として作用し、焼入れ性を向上させる働
きもある。しかしその量が2.0%を超えると酸化物系介
在物を生成しやすくなって転動疲労寿命を低下させ、CR
F加工時に微小割れの起点となるので2.0%以下にする。
Mn:2.0%以下、 Mnは、Siと同様に脱酸剤となり、また焼入れ性を高め
る。しかし2.0%を超えると硫化物系介在物を生成しや
すくなり、CRF加工のときに微小割れの起点となるので
2.0%以下にする。
Cr:0.80〜1.60% Crは、微細な分散炭化物を形成させて耐摩耗性を向上
させると共に、焼入れ性を高めて基地組織を強靭化す
る。その量が0.80%未満では上記の効果が小さく、一
方、1.60%を超えて含有させると炭化物が粗大化して転
動疲労寿命を低下させ、CRF加工時に微小割れの起点と
なる。Crの適正含有量は0.80〜1.60%である。
Mo:0.05〜0.50% Moは必要に応じて添加することができる成分である。
Moには焼入れ性を向上させる作用があり、太径厚肉鋼管
の場合にこれを含有させると効果が大きい。しかし含有
量が0.05%未満では上記効果が小さく、一方、0.50%を
超えて含有させても効果の増大は殆どない。またMoは高
価であるので、添加する場合でも、その含有量は0.05〜
0.50%の範囲が適当である。
本発明の鋼管は、不純物を厳しく制限したことも特徴
の一つである。以下、不純物の限定について説明する。
P:0.020%以下(望ましくは、0.010%以下) Pは、結晶粒界に偏析して転動疲労寿命や靭性を低下
させる。CRF加工の際の微小割れの防止には靭性の向上
が重要であり、Pが多いと割れの伝播が容易になる。し
かし、割れの伝播にはPの含有量だけでなく、鋼材の硬
さも影響する。従って、鋼材の硬さを低くすれば、Pの
許容上限値は高くすることができる。即ち、鋼材の硬さ
をHRB100以下とする場合にはPを0.010%以下に抑え、
鋼材の硬さをHRB90以下とする場合にはPを0.020%以下
に抑えるようにすればよい。
S:0.005%以下 Sは、Mnと結合して硫化物系介在物を形成し、CRF加
工時に微小割れの起点となる。本発明ではできるだけ硫
化物系介在物を減少させてCRF加工による微小割れ発生
を防止するために、Sの含有量は0.005%以下とする。
O(酸素):0.0006%以下 Oは、Al2O3やSiO2などの酸化物系介在物を生成し、
転動疲労寿命を低下させると共にCRF加工時に微小割れ
の起点となる。従って、その含有量はできるだけ低い方
がよい。本発明ではOは、0.0006%以下にする。
Ti:0.002%以下、N:0.006%以下 TiとNは互いに結合して介在物(TiN)を形成し、転
動疲労寿命とCRF加工に悪影響を与える。その含有量は
できるだけ低い方がよいので、Tiは0.002%以下、Nは
0.006以下とする。
本発明の軸受レース用鋼管は、上記の化学組成をもつ
ことと同時に、組織中の炭化物の粒径が2μm以下でな
ければならない。合金元素および不純物元素を前記のと
おりに規制することによって特に微小割れの起点となる
非金属介在物を少なくすることができるが、例えば、C
やCrの偏析、不適切な熱処理などのために炭化物が粗大
化し、それが原因で微小割れを発生することがある。粒
径が2μmを超える炭化物が存在するとCRF加工を行っ
たときに割れの伝播が起る。例えば、炭化物の粒径が10
μm以上になるとそれ自体が割れて微小割れの原因とな
ることがある。
ここで粒径が2μm以下というのは、炭化物の最大粒
径が2μm以下ということである。即ち、実質的に全て
の炭化物の粒径が2μm以下であることが大切である。
なお、上記炭化物の形状は、球状化焼鈍によってほぼ球
形になる。
前述のとおり、CRF加工の際に生じる微小割れは素材
の硬さと強い相関がある。割れを防ぐには、後述する表
面に適当な厚さの脱炭層がある場合を除き、素材の硬さ
をHRBで100以下に抑える必要がある。本発明者の多数の
試験結果から、素材の硬さがHRBで90以下であって、か
つ化学組成と炭化物粒径が上記範囲にあるならば、割れ
は全く発生しないことが確かめられた。硬度をHRB90以
下にすることは、従来の鋼管が旋盤加工時の被切削性の
向上と切り屑処理を容易にするために、硬度を高めに設
定しているのと全く逆のことである。そして、硬度を低
くすることによりCRFでの加工力と仕事量が低減され、
加工工具(第1図の成形ロール1やマンドレル2など)
の寿命延長と電力費の節減が図られる。このように、化
学組成、炭化物粒径および硬度を適正化することによっ
てCRF加工時に発生する微小割れを防止することができ
る。
炭化物粒径と硬度の調整は次に述べるような方法で比
較的簡単に行うことができる。粒径の調整は温度を1200
℃に保持しつつ15〜20時間のソーキングを実施し、Cや
Crの偏析をなくしたあと適切な条件で球状化熱処理を行
えばよい。硬度の調整は温度500〜600℃で1時間程度の
軟化焼鈍を施せばよい。
製造ままの鋼管をCFR加工の素材として使用すること
は、工程合理化の上で大きな利点があることは前述のと
おりである。しかし、出来上がった製品の転動疲労寿命
が劣化しないことが前提となる。転動疲労寿命は製品の
表面性状に左右される。素材としての鋼管を旋削するこ
となくそのまま冷間転造を行った場合でも、冷間転造の
後、通常の一定の旋削を行って製品としたとき、製品の
表面は正常でなければならない。そのためには、素材鋼
管の寸法精度と表面欠陥を厳格に管理することが必要に
なる。
まず、鋼管の寸法精度について述べる。
CRF法は体積一定の加工法であるために素材鋼管には
厳しい寸法精度が要求される。そのため鋼管のままで使
用する鋼管においては、内径および外径の寸法精度をそ
れぞれ±0.03mm以内とする。なお、鋼管に偏肉が生じて
いる場合があるが、それはCRF加工により矯正されるた
め0.5mm程度は許容され、これは、冷間抽伸を行う通常
の鋼管の偏肉(約0.3mm以下)よりも大きな値であるか
ら、偏肉についての特別な管理は必要でない。
上記のように、内径および外径の寸法精度をそれぞれ
±0.03mm以内とする手段としては、冷間抽伸、冷間圧延
などがある。
次に表面欠陥について述べる。
第2図は、光学顕微鏡レベルでの表面欠陥の構成を断
面で模式的に示した図である。ここでいう表面欠陥とは
鋼管の製造過程で発生するもので、表面形状に関係する
微小表面凹凸および鋼の化学組成に関係するスケール層
と脱炭層である。CRF加工に用いる鋼管ではこれらの個
々の深さが問題ではなくこれらの総和(即ち、表面欠陥
深さ=a+b+c)の最大値が問題となる。製造された
ままの鋼管の表面欠陥深さの最大値をd0、CRF加工後の
残留表面欠陥深さの最大値をd1とすると、後述の実施例
で述べるように両者の間にほぼ下記(1)式が成り立
つ。なお、上記最大値とは、鋼管内外表面の各位置にお
ける値のうち、最も大きいものをいう。
d0=R・d1 ・・・(1) ここで、Rは加工度であり、加工前の鋼管直径と加工
後の製品直径との比(R>1)である。
deの最大値が、特許請求の範囲に述べる「内面および
外面のそれぞれのスケール層、脱炭層および微小表面凹
凸の深さの総和の最大値」に相当する。
一方、最終研削工程での各部の研削代は全周に一様で
はなく製品の真円度に依存する。このときの最終研削代
δminは下記(2)式で表せる。
δmin=m−(rmax−rmin) ・・・(2) ここで、mは研削ストローク量、rmaxは製品の最大半
径、rminは製品の最小半径である。
最終研削工程で残留表面欠陥が完全に除去されるため
には、上記(1)式および(2)式から導かれる下記
(3)式が成り立つことが必要である。
d0=R{m−(rmax−rmin)} ・・・(3) 加工度Rは通常1.3〜1.5程度であり、研削ストローク
mは一般に200μm程度である。また後述の実施例で示
すように(rmax−rmin)=30〜60μmとなるため、d0
約180〜250μmとなる。そこで本発明は安全を見込み、
表面欠陥深さを150μm(0.15mm)以下とする。
上記のように表面欠陥深さを0.15mm以下とするのは、
熱処理炉の雰囲気を調整してスケールや脱炭層の発生を
抑制するとともに、製管時に使用する工具(ロール、マ
ンドレル、ダイス、プラグ等)の表面性状を良好に保つ
等の方法で達成できる。
表面欠陥のうち、脱炭層は上記0.15mm以下の範囲であ
れば存在していてもよく、この脱炭層はCRF加工の際の
微小割れの発生防止に寄与する。
通常の鋼管の製造過程では、穿孔圧延前の加熱や、焼
鈍などの工程で、管の内外表面には脱炭層ができる。こ
の脱炭層は、従来は好ましくないものと考えられていた
が、その厚さ(深さ)次第ではCRF加工の際に微小割れ
の発生を防止する好ましい効果があることがわかった。
第3図は、後述の第5表のW材の鋼管と同じ鋼を使用
し、実施例3と同じ条件で同じ寸法の鋼管を作製し、球
状化焼鈍および最終軟化焼鈍における炉内雰囲気を調整
して脱炭層の厚みを変化させたものを、実施例3と同じ
条件でCRF加工し、脱炭層の厚さと加工割れとの関係を
調べた結果である。
図示のとおり、脱炭層が厚い程、割れ発生頻度が小さ
くなり、その厚さが0.05mm以下であれば、割れは全く発
生しない。このように脱炭層が割れ発生を少なくする理
由は、脱炭層のC含有量が芯部に比べて低いため低硬度
となり加工性が良くなるからであると考えられる。実施
例3にも示すように、適切な厚さの脱炭層が存在する場
合には、鋼管素地の硬さがHRB100を超えていても割れの
発生なしにCRF加工ができる。
しかしながら、脱炭層の厚さを含む表面欠陥深さの和
は、前記のとおり0.15mm以下とすべきであるから、脱炭
層の厚さの最大値は0.15mmとなる。従って、0.05〜0.15
mmの範囲に調整するのが最も望ましいと言える。この調
整は、熱処理炉の雰囲気を調整することによって容易に
実施できる。
以下、本発明の軸受レース用鋼管を実施例に基づいて
説明する。
〔実施例1…化学組成、炭化物粒径、硬さの影響〕 第1表に示す化学組成の鋼を真空溶解炉で溶製し、2
トン鋼塊とした後、熱間圧延でφ147mmのビレットとし
た。これを1250℃に加熱してマンネスマン製管法で継目
無管とし、球状化焼鈍、冷間抽伸、最終焼鈍の工程を経
て外径38.6mm、内径21.3mmの鋼管を製造した。このと
き、球状化焼鈍のヒートパターンを変化させて炭化物の
粒径を調整し、また最終焼鈍条件を調整して硬さを変化
させた。
上記によって製造した鋼管の内外表面を旋削して表面
欠陥(スケール、脱炭層、微小表面凹凸)を取り除いた
後、突切りバイトで切断して、外径35.6mm、内径26.6m
m、幅14mmの環状素材とした。
上記の環状素材を用いてCRF加工を行い、内径39mm、
外径47mm、幅14mm、軌道溝深さ1.5mm、軌道溝曲率半径
4.2mmの軸受用レースを製造し、割れ発生の有無と割れ
深さを調べた。
第1表において、A材は本発明の鋼管であり、寸法精
度は±0.03mm以内、また、表面欠陥深さの最大値は0.15
mm以下である。後述のF材およびG材も同様である。B
材及びC材はA材と同じ化学組成を有するが、B材は球
状化焼鈍を故意に不適切に施して炭化物を15μm程度に
粗大化させたもの、C材は冷間抽伸のままの材料で硬度
をHRB103と高くしたものである。D材はSを多く含有さ
せてMnS系介在物を多量に形成させたもの、E材はO含
有量を増やしてAl2O3系介在物を多く形成させたもので
ある。F材はA材と同等の成分でMoを含有させたもので
ある。G材は硬さはやや高いがPを極低レベルに抑えた
本発明の鋼管、H材はPの高い比較材である。
CRF加工後の割れ発生状況を第1表に併記する。割れ
発生の有無は50倍の顕微鏡で表面検査を行って調査し、
割れの深さは断面を研磨した後、100倍の顕微鏡で調べ
た。
第1表から明らかなように、本発明のA材、F材およ
びG材では微小割れは発生していない。しかし化学組成
がA材と同じでも炭化物が粗大化したB材と硬度を高く
したC材はいずれも割れが生じている。また本発明で規
定する化学組成から外れたD材、E材およびH材にも割
れが発生しておりその深さが深い。
以上のことから、化学組成を所定範囲に収めて非金属
介在物を低減させ、炭化物の粗大化を抑制し、硬度を低
下させるならば、CRF加工時の微小割れを防止できるこ
とがわかる。
〔実施例2…表面欠陥と寸法精度の影響〕 第2表に化学組成と硬度を有する鋼管(外径35.6mm、
内径26.6mm)を実施例1と同じ工程で製造した。炭化物
粒系はいずれも2μm以下である。ここで寸法精度は、
冷間抽伸においてダイス、およびプラグを変更して調整
したもので、第2表には内外径をマイクロメーターでそ
れぞれ測定し、その悪い方の値を範囲で示した。
第2表において、I材、J材およびL材は本発明の鋼
管であり、K材はI材に放電加工を加え、その軸方向に
深さ160〜210μmの人工欠陥をつけたものである。ま
た、M材は寸法精度が±0.05と悪いものである。
上記の鋼管を突切りバイトで幅14mmに切断し、そのま
まCFR加工に供した。CFR加工の条件は実施例1と同じで
ある。
CRF加工した後の内外径を測定した結果、M材から製
造したレースは寸法にバラツキが大きく、そのままでは
適正な製品にはならなかった。
加工前後の各材の表面欠陥深さを第3表に示す。な
お、M材は前記のように製品精度が不良であったため、
第3表には記載していない。表中、表面欠陥深さとは、
スケール層、脱炭層および微小表面凹凸の総和を意味
し、これらは断面を研磨して顕微鏡によって調査したも
のである。第3表の加工前の欄の表面欠陥深さをみる
と、I材では16〜48μm、J材では69〜118μm、K材
では168〜223μmそしてL材では65〜150μmである。
これをCRF加工すると同表右欄に示す表面欠陥深さとな
る。CRF加工によりいずれも表面欠陥深さは減少し、そ
の関係は前記(1)式をほぼ満足していることが分か
る。この実施例のCRF加工では微小割れは発生しなかっ
た。
次にCRF加工後の製品の真円度を評価するため、3次
元形状測定器を用いて内径及び外径を測定した。その測
定の1例は第4図のとおりであり、各材の測定値から半
径差(rmax−rmin)を求めると第4表の左欄のようにな
る。これから明らかなように各材ともほぼ同じレベルで
あり、その値は30〜60μmの範囲にある。そしてこの値
をもとに前記(2)式を用いて最小研削代を求めると第
4表の右欄に示す値となる。この値と第3表のCRF加工
後の表面欠陥深さから、I材、J材およびL材では表面
欠陥は完全に除去されるが、K材は表面欠陥深さ(132
〜171μm)が最小研削代(142〜170μm)より大きい
ために完全には除去されないことがわかる。このように
本発明の規定する寸法精度と表面欠陥深さ以下であるI
材、J材およびL材は製造したままの鋼管をそのままCR
F加工に供することが可能であり、従って、軸受レース
の製造コストを大きく節減することができる。しかしK
材はそのままCRF加工に供することができず、事前に表
面を旋盤切削するか、CRF加工後に大きな表面研削を行
わなければならないから、それだけレースの製造コスト
が嵩むことになる。
〔実施例3…脱炭層の影響〕 第5表に示す化学組成の鋼を真空溶解炉で溶製し2ト
ンインゴットとした後、熱間圧延でφ147mmのビレット
とした。
前記ビレットを1250℃に加熱してマンネスマン穿孔を
行い、さらに球状化焼鈍においてヒートパターンを変化
させて炭化物の粒系を調整した。次いで抽伸率38%で冷
間抽伸を実施した。このとき、ダイス、プラグを変更し
て寸法精度の調整を行った。さらに、硬さを所定の値に
するために、加熱温度を調整して最終焼鈍を行った。
以上の条件で、内径26.6mm、外径35.6mmの鋼管を製管
した。
なお、脱炭層の厚さを調整するため、前記球状化焼鈍
および最終焼鈍は、炉内ガスの種類を種々変えて実施し
た。
第5表の寸法精度の欄には、内径、外径の寸法のう
ち、どちらか精度の悪い方の値を示し、また、脱炭層の
厚さの欄には内面側の脱炭層厚さを示した。
こうして得られた鋼管を突っ切りバイトで幅14mmの短管
に切断してCFR加工用素材を作製した。
このとき、鋼管内外表面には何らの加工も施さず、製
管のままの状態とした。
上記の素材をCRF加工し、内径39mm、外径47mm、幅14m
m、軌道深さ1.5mm、軌道溝曲率半径4.2mmの軸受用レー
スを製造した。
第6表に、CRF加工の際の割れ発生の有無、割れの深
さ、加工後の寸法精度およひ表面欠陥深さを示す。
なお、割れの有無は50倍の顕微鏡によって表面検査を
行うことにより、また、割れ深さは、断面を研磨し、10
0倍の顕微鏡によって、それぞれ調査した。加工後の寸
法精度は、内外径をマイクロメーターでそれぞれ測定
し、悪い方の値で示した。また表面欠陥深さは断面を研
摩して顕微鏡により調査した。
第5表および第6表のN材、O材、U材、V材および
W材は本発明の鋼管である。これらは本発明で定める化
学組成、炭化物粒径、寸法精度、脱炭層厚さおよび表面
欠陥深さの条件を満たしており、従って、CRF加工によ
る割れの発生がなく加工後の寸法精度も良好であるとと
もに表面欠陥深さも浅くなっている。即ち、これらの鋼
管を素材として製造した軸受レースは、充分に実用に供
することができる。特に、W材は硬さ(鋼管素地の硬
さ)がHRB100を超えているが、表面に0.08mmの脱炭層が
存在するため、CRF加工を行っても割れが発生してな
い。
一方、P材およびQ材は、化学組成が本発明で定める
範囲をはずれているためにCRF加工の際に割れを生じて
いる。実用に供するにはこの割れを除去する研削などの
工程が必要となり、製造コストの上昇を招く。R材は、
割れの発生はないが、素材鋼管の寸法精度が悪いために
製品の寸法精度も悪く、これもそのままでは実用できな
い。即ち、寸法精度を整えるための余分の工程を必要と
する。さらに、S材は、炭化物の粒系が大きいためCRF
加工の際にP材、Q材と同じく割れが生じている。ま
た、T材は、割れの発生はないが、表面欠陥深さが深い
ため、通常の最終研削では表面欠陥が残留する恐れがあ
る。このため研削代を多くする必要があり、材料歩留り
低下、工数増加によるコスト増加を招き実用的でない。
(発明の効果) 本発明は、CRF加工に供して、その加工の際に微小割
れの発生しない軸受レース用鋼管を提供する。特に、本
発明の鋼管は、寸法精度、表面欠陥を前述のように調整
することによって製管のままでCRF加工に供し得るもの
であり、CRF加工後は、通常の研削だけで何らの欠陥も
ない軸受レース製品となる。
本発明は、軸受レース製造の工程の合理化、製造コス
トの削減に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、CRF法による軸受レースの製造工程を説明す
る図で、(a)は平面図、(b)は、(a)のA−A矢
視図である。 第2図は、鋼管の表面欠陥を説明する断面拡大模式図で
ある。 第3図は、鋼管の脱炭層の厚さとCRF加工の際の割れ発
生との関係を示す図である。 第4図は、製品軸受レースの真円度の測定結果の一例を
示す図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、 C:0.80〜1.20%、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下およびC
    r:0.80〜1.60%を含有し、不純物としてのP:0.020%以
    下、S:0.005%以下、O:0.0006%以下、Ti:0.002%以下
    およびN:0.006%以下であって、残部がFeおよび不可避
    的不純物からなり、組織中に含まれる炭化物の粒径が2
    μm以下で、硬度がHRB100以下であり、かつ、下記
    (イ)および(ロ)の条件を満たすことを特徴とする冷
    間転造に適した軸受レース用鋼管。 (イ)内径および外径の寸法精度が±0.03mm以内 (ロ)内面および外面のそれぞれのスケール層、脱炭層
    および微小表面凹凸の深さの総和の最大値が両面ともに
    0.15mm以下。
  2. 【請求項2】請求項(1)に記載した合金成分に加えて
    Mo:0.05〜0.50%を含有する請求項(1)に記載する軸
    受レース用鋼管。
  3. 【請求項3】厚さ0.15mm以下の脱炭層を有することを特
    徴とする請求項(1)または(2)に記載する冷間転造
    に適した軸受レース用鋼管。
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