JP2520058B2 - 衝撃エネルギ―を吸収する座席の脚構造 - Google Patents

衝撃エネルギ―を吸収する座席の脚構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、座席に加わる衝撃エネ
ルギーの吸収技術に係り、特に車両又は航空機等の事故
時に座席の正面側又は上面側に加わる衝撃荷重を吸収し
て乗客の安全を確保する衝撃エネルギーを吸収する座席
の脚構造に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】従来から、座席の緩衝装置としては種々
のものが使用されており、例えば航空機が着陸に失敗し
たような場合に発生する衝撃エネルギーの多くは、機体
側に構成した緩衝装置によって吸収する構造に成り、ま
た自動車が衝突した場合には、バンパーとシャーシ間に
設けた緩衝装置によって衝突エネルギーを吸収する構造
に成っている。
【０００３】しかし、航空機の着陸失敗事故又は自動車
の衝突事故においては、緩衝装置の衝撃吸収能力を超え
る衝撃荷重が発生することがあり、乗客に過大な衝撃エ
ネルギーが加わるため、特に航空機等の座席において
は、従来よりこのような衝撃エネルギーを吸収するため
に、特別な衝撃吸収装置を座席の脚部や対角材に付加構
成することにより、該衝撃吸収装置の押し潰し荷重や引
っ張り荷重によって衝撃エネルギーを吸収するように構
成した座席が使用されていた。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の座
席においては、脚部や対角材等の脚構造が、前後ビーム
と脚部及び対角材の連結固定部においてボルトやスクリ
ュウによって堅固に固定されているため、脚構造に衝撃
が加わった場合でも該衝撃によって変形したり、又は該
衝撃のエネルギーを吸収し得るような構造には構成され
ていないなかった。従って、このような場合、脚構造に
衝撃吸収用の部品や装置を特別に構成しなければなら
ず、脚構造が複雑になるばかりでなく、座席の構成重量
が増加し、また価格高騰の原因にもなるという問題を有
していた。
【０００５】本発明は、上記問題に鑑みて創案されたも
のであり、その目的は従来の脚構造に特別な衝撃吸収装
置や部材を付加構成することなく、脚構造を構成する対
角材と脚部の連結方法を変えることにより、対角材自体
の材質的特性、即ち塑性変形によって座席に加わる衝撃
のエネルギーを減殺し、座席としての安全性を高めるこ
とができる衝撃エネルギーを吸収する座席の脚構造を提
供することにある。また、本発明の他の目的は衝撃吸収
後の座席としての変形量を小さくすることができ、乗客
に対する安全性を高めた衝撃エネルギーを吸収する座席
の脚構造を提案することを目的とするものである。
【０００６】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る衝撃エネルギーを吸収する座席の脚構
造は、前後ビーム間に掛け渡したベースフレーム上にシ
ートボトムとシートバックを取り付けて成る座席の脚構
造であって、前脚にブラケットを介して支持される前記
前ビームを、座席に対して衝撃荷重が加わると捩作用を
生じるように構成し、前記前ビームのブラケットから座
席の下部後方へ撓み変形し得る対角材を延出掛け渡すと
共に、後ビームを支持する後脚を上記対角材の略中間部
位上に支持固設し、前記前脚の下端部及び対角材の下端
部をそれぞれ固定金具を介して床側レールに固定するよ
うに構成したことを要旨とするものである。即ち、座席
の前方へ加わる衝撃荷重に対しては、前記脚構造が前ビ
ームを回転中心として後方へ回動変形すると共に、ベー
スフレームの後部側が座席の上方へ引き上げるように回
動し、上端を後ビームに連結した後脚と共にその下端に
連結した対角材を上方へ撓み変形させることができるも
のである。また、座席の上方から加わる衝撃荷重に対し
ては、前ビームを回転中心にしてベースフレームの後部
側が下方へ回動すると共に、その荷重を後脚を介して対
角材に伝え、該対角材を下方へ撓み変形させることがで
きるものである。更に、後脚を固設支持する対角材に
は、該固設部にガイド部材を介装するという手段を講ず
ることも可能である。
【０００７】
【作用】上記構成によれば、図８に一点鎖線で示すよう
に、座席の前方へ衝撃荷重Ｇが加わると、床側の固定構
造上に固定された状態のまま、前脚は前ビームをその長
手方向を回転中心として後方へ回動変形し、同時にベー
スフレームの後部側が座席上方へ引き上げられるように
回動し、上端を後ビームに連結した後脚と共に、その下
端に連結した対角材を上方へ撓み変形させて該衝撃のエ
ネルギーを吸収する。
【０００８】また、図９に一点鎖線で示すように、座席
の上方から衝撃荷重Ｇが加わると、前脚は前ビームをそ
の長手方向を回転中心にしてベースフレームの後部側が
下方へ回動変形し、その荷重を後脚を介して対角材へ伝
え、該対角材を下方へ撓み変形させて該衝撃のエネルギ
ーを吸収する。更に、座席に衝撃荷重がかかって、ガイ
ド部材により対角材が撓み変形をするときに、このガイ
ド部材は該対角材の撓み方向に対してそのガイド面に添
った変形ガイド作用を奏すると共に、該変形部における
対角材の切断破壊を防止することができる。
【０００９】尚、上記いずれの場合でも、前ビームには
捩作用を生じ、該捩作用が上記対角材のエネルギー吸収
作用に対する相乗的効果を生ずるものである。即ち、脚
構造に加わる衝撃荷重は、対角材の撓み変形と前ビーム
捩作用による機械的エネルギーの消失によって吸収され
る。
【００１０】
【実施例】以下、本発明に係る衝撃エネルギーを吸収す
る座席の脚構造に関する好適な実施例を図面に従って説
明する。図１乃至図２は、本発明に係る脚構造を構成し
た３人掛け航空機用座席による実施例を示すものであ
り、前後ビーム１，２間にベースフレーム３を掛け渡す
と共に、該前後ビーム１，２及びベースフレーム３上に
シートボトム４及びシートバック５を載置して座席を構
成してあり、適宜リクライニング装置（図示していな
い）を介してシートバック５を座席後方へ傾動可能に支
持する構造に成っている。
【００１１】本発明に係る脚構造は、図３に示すよう
に、上記前ビーム１に対して前脚６の上端をブラケット
７を介して固定すると共に、該前ビーム１を同軸として
対角材８の上端を上記ブラケット７上に固定し、かつ該
対角材８の下端を座席の下部後方へ延出掛け渡し、その
下端を床側に固定し得るように構成する。また、後ビー
ム２を支持する後脚９は、その上端を該後ビーム２に固
定すると共に、下端を上記対角材８の略中間部分に固設
し、後ビーム２が後脚９を介して対角材８上に支持され
るように構成してある。この対角材８は、金属製管状
体、即ち角材等で構成したものであり、通常の使用荷重
によっては撓み変形を生じない程度の剛性を有するもの
である。また、後脚９を固設支持する対角材８の該固設
部にはガイド部材１０を介装してある。このガイド部材
１０は、対角材８の撓み方向に対し、図４及び図５に示
すように、対角材８の長手方向へ向かう前後先端側へ船
形に曲成したガイド面１０ａを形成したものであり、後
脚９と対角材８を止めているボルト等の固定手段１１で
一緒に固定してある。而して、ガイド部材１０により座
席に衝撃荷重がかかり、これにより対角材８が撓み変形
をするときに、該対角材８の撓み方向に対して上記ガイ
ド面１０ａに添った変形ガイド作用を奏すると共に、該
変形部における対角材８の切断破壊の防止作用を奏す
る。
【００１２】尚、図示例において、上記ガイド部材１０
はブロックに形成したものを示しているが、同様形状の
板材により形成したガイド部材１０を対角材８の内側端
面に張り合わせ固定することにより構成することも可能
である。
【００１３】本発明に係る衝撃エネルギーを吸収する座
席の脚構造は、該脚構造を構成する前脚６の下端と、対
角材８の下端をそれぞれ図６及び図７に示すような固定
金具１２，１３を介して床側のレール等の固定構造１４
に対して固定されるものである。
【００１４】本発明に係る脚構造によれば、図８に示す
ように、座席の前方へ衝撃荷重（矢印Ｇ）が加わると、
該脚構造はその前脚６と対角材８の下端をそれぞれレー
ル等の固定構造１４上に固定した状態のまま、前ビーム
１を回転中心（矢印Ａ）として該脚構造自体を回動変形
し、同時にベースフレーム３の後部側を座席の上方へ引
き上げるように回動し（矢印Ｂ）、後ビーム２と対角材
８の略中央部間に介在させた後脚９を上方へ引上げ（矢
印Ｃ）、該張引力により対角材８を上方へ撓み変形（矢
印Ｄ部）させて衝撃のエネルギーを吸収する。
【００１５】また、図９に示すように、座席の上方から
衝撃荷重（矢印Ｇ）が加わると、前ビーム１を回転中心
（矢印Ａ）にしてベースフレーム３の後部側が下方（矢
印Ｂ）へ回動し、その荷重を後脚９を介して対角材８に
伝え、該対角材８を下方へ押し下げて（矢印Ｃ）撓み変
形（矢印Ｄ部）させ、該衝撃のエネルギーを吸収する。
また、この時前ビーム１を回転中心として脚構造の前脚
６及び対角材８の上端側を前方へ押し出す（矢印Ｅ）よ
うに作用する。
【００１６】尚、上記いずれの場合でも、前ビーム１に
は捩作用を生じ、該捩作用が上記対角材８のエネルギー
吸収作用と共に相乗的な衝撃吸収作用を奏するものであ
る。即ち、本発明に係る衝撃エネルギーを吸収する座席
の脚構造においては、該脚構造に加わる衝撃荷重Ｇを、
対角材８の撓み変形と前ビーム１の捩作用による機械的
エネルギーの消失によって吸収する構造に成るものであ
る。
【００１７】
【発明の効果】本発明に係る衝撃エネルギーを吸収する
座席の脚構造は、以上のように構成したから、従来の脚
構造における構成部材を増減又は変更することなく、脚
構造の補強部材である対角材に、該対角材の塑性変形に
伴う機械的エネルギーの吸収作用による衝撃吸収機能を
付与し、効率的な衝撃吸収シートの脚構造を構成するこ
とができると共に、シートの構成重量の増加を避けるこ
とができ、かつ脚構造として従来の構造と殆ど同じであ
るためこれを簡単に改修調整することができる等、極め
て優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る衝撃エネルギーを吸収する座席の
脚構造を構成したシートの側面図である。
【図２】衝撃エネルギーを吸収する座席の脚構造を構成
したシートの正面図である。
【図３】衝撃エネルギーを吸収する座席の脚構造に関す
る要部拡大側面図である。
【図４】対角材に介装するガイド部材の構造を示す拡大
側断面図である。
【図５】対角材に介装するガイド部材の構造を示す拡大
正断面図である。
【図６】前脚下端を床側レールに固定するための固定金
具の一例を示す要部拡大側面図である。
【図７】対角材の下端を床側レールに固定するための固
形金具の一例を示す要部拡大側面図である。
【図８】正面側へ加わる衝撃に対する脚構造の衝撃エネ
ルギー吸収作用を示す説明図である。
【図９】上面から加わる衝撃に対する脚構造の衝撃エネ
ルギー吸収作用を示す概略説明図である。
【符号の説明】 １ 前ビーム ２ 後ビーム ３ べースフレーム ４ シートボトム ５ シートバック ６ 前脚 ８ 対角材 ９ 後脚 １０ ガイド部材

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 前後ビーム間に掛け渡したベースフレー
    ム上にシートボトムとシートバックを取り付けて成る座
    席の脚構造であって、前脚にブラケットを介して支持される前記前ビームを、
    座席に対して衝撃荷重が加わると捩作用を生じるように
    構成し、 前記前ビームのブラケットから座席の下部後方へ撓み変
    形し得る対角材を延出掛け渡すと共に、前記後ビームを
    支持する後脚を上記対角材の略中間部位上に支持固設
    し、前記 前脚の下端部及び対角材の下端部をそれぞれ固定金
    具を介して床側レールに固定するように構成したことを
    特徴とする衝撃エネルギーを吸収する座席の脚構造。
  2. 【請求項２】 座席の前方へ加わる衝撃荷重に対して、
    前記脚構造が前ビームを回転中心として後方へ回動変形
    すると共に、ベースフレームの後部側が座席の上方へ引
    き上げるように回動し、上端を後ビームに連結した後脚
    と共にその下端に連結した対角材を上方へ撓み変形させ
    ることを特徴とする請求項１記載の衝撃エネルギーを吸
    収する座席の脚構造。
  3. 【請求項３】 座席の上方から加わる衝撃荷重に対し
    て、前ビームを回転中心にしてベースフレームの後部側
    が下方へ回動すると共に、その荷重を後脚を介して対角
    材に伝え、該対角材を下方へ撓み変形させることを特徴
    とする請求項１記載の衝撃エネルギーを吸収する座席の
    脚構造。
  4. 【請求項４】 後脚を固設支持する対角材において、該
    固設部にガイド部材を介装したことを特徴とする請求項
    １記載の衝撃エネルギーを吸収する座席の脚構造。
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