JP2518658Y2 - 回転穿孔工具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、石材、コンクリート、磁器タイル、ガラ
ス、セラミック等の硬質非金属材への穴開けに用いられ
る回転穿孔工具に関し、詳しくは、ドリル先端の切削刃
をミストによって冷却する構造の回転穿孔工具に関す
る。

〔従来の技術〕

この種の穿孔工具では、穿孔時の摩擦熱による切削刃
の損耗を低減するために水や空気等の冷却流体を供給し
て切削刃を冷却することが行われているが、水の場合、
切削屑が混ざった懸濁水を生じて作業域が汚損される問
題があり、また、空気の場合には冷却効率が低いという
欠点がある。

このため、本出願人は、例えば実開平１−153911号公
報所載のもののように、冷却効率が高いという水の利点
と汚損問題を生じないという空気の利点を併せ持つミス
ト（mist）を冷却流体として供給する構造のものを提案
した。

これは、軸方向の貫通孔を有するとともに先端に切削
刃を有する回転ドリルを備えるとともに、エアー供給源
と水源に接続された噴霧手段（ミスト生成手段）を備
え、噴霧手段で生成されたミストを回転ドリルに導いて
切削刃から噴出させる構造のものである。

また、空気やミストによるものでは、穿孔時における
切削屑の飛散を避けられないが、これを防止するため
に、従来、回転ドリルの外部を軸方向に亘って覆うカバ
ー部材を設けるとともに、カバー部材の排出口に集塵機
を接続してカバー部材内に溜まる切削屑を吸引すること
が行われている。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、上述のような集塵機を用いるものでは、吸
引ホースの長さが大きくなるといわゆる管路抵抗が増大
して吸引力が低下するため、通常、吸引ホースの長さは
短く設定されている。しかしながらこの場合、穿孔工具
の使用範囲が狭くなり、機動性ないし取扱性の低下によ
って作業性の低下を来していた。すなわち、作業位置が
大きく変わる場合等には、穿孔工具の移動に合わせて集
塵機を移動させる必要があり、手間を要していたもので
ある。

また、吸引ホースはエアーホース等に比べて径が大き
いため、穿孔工具の機動性に重量負荷を与え、この点か
らも作業性の低下を来していた。

さらにまた、集塵機装備方式では、空気圧搾機等のエ
アー供給源に比べて設備費の増大を招いていた。

このように、ミスト使用によって切削効率の向上が図
られる一方で、集塵形態に起因する問題を抱えていたも
のである。

そこでこの考案は、集塵問題の解消を図ることができ
るとともに全体設備の簡易化を図ることができ、ミスト
使用による利点を十分に活かし得る回転穿孔工具の提供
をその目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

この考案は、上記目的を達成すべく創案されたもの
で、その特徴は、工具本体に設けられ軸方向の貫通孔を
有するとともに先端に切削刃を有する回転ドリルと、こ
の回転ドリルにミスト供給路を介して接続され上記切削
刃から噴出させられるミストを生成するミスト生成手段
と、このミスト生成手段と共通のエアー供給源にエアー
供給路を介して接続されエアー吐出による負圧作用によ
って切削屑を排出する集塵手段と、上記ミスト供給路に
設けられるミスト開閉部材と、上記エアー供給路に設け
られる集塵開閉部材とが備えられ、上記ミスト開閉部材
と集塵開閉部材とは略同時に開閉する構成にある。

〔作用〕

この考案によれば、ミスト生成手段で生成されたミス
トはミスト供給路を介してミスト開閉部材の開状態で回
転ドリルに導かれ、切削刃から噴出する。これによって
切削刃の冷却がなされる。

エアー供給源からのエアーはミスト生成手段に送られ
るとともに、エアー供給路を介して集塵開閉部材の開状
態で集塵手段に供給され、エアー吐出による負圧作用で
切削屑が排出される。エアー吐出による負圧作用による
ため、ホース長さ等の設備要因に左右されることなく一
定した排出能力が得られる。

また、集塵機を要することなく単一のエアー供給源で
ミスト供給と集塵の両方を行えるので設備費の低減化並
びに構造の簡易化がなされ、ミスト開閉部材と集塵開閉
部材とが略同時に開閉されることによって圧力不均衡に
よるミストの逆流が防止される。

〔実施例〕

第１図乃至第６図はこの考案の一実施例を示す。

工具本体２の先端側には回転ドリル４が取付けられて
おり、工具本体２の先端側には把手部６が形成されてい
る。把手部６の上方側には、回転ドリル４を駆動操作す
るための駆動スイッチ８が設けられており、把手部４の
下方側には、工具本体２の外部から操作可能なミスト生
成手段10が設けられている。ミスト生成手段10は、給気
管12を介してエアー供給源14に接続されているととに、
給水管16を介して図示しない水供給源に接続されてい
る。

ミスト生成手段10はミスト供給路18を介して回転ドリ
ル４に接続されており、送気管12はエアー供給路20を介
して集塵手段22に接続されている。また、ミスト共通路
18には回転ドリル４へのミスト供給を開閉するミスト開
閉部材24が設けられているとともにエアー供給路20には
集塵手段22へのエアー供給を開閉する集塵開閉部材26が
設けられており、ミスト開閉部材24と集塵開閉部材26は
駆動スイッチ８で同時に開閉できるようになっている。

ミスト生成手段10は、第２図に示すように、接続部材
28と、水量を調整する調整部材30とから概略構成されて
いる。接続部材28には、ミスト供給路18を接続する接続
口28aと、給気管12を接続する接続口28bと、給水管16を
接続する接続口28cとが形成されている。

また、接続部材28には、接続口28aと接続口28bとを連
通させる案内路28dが形成されているとともに、水溜め
部28eが形成されている。案内路28dと水溜め部28eとは
径小の連絡孔28fで連通されている。また、接続部材28
には調整部材30を取付けるためのねじ孔28gが形成され
ている。

調整部材30は、例えば、接続部材28のねじ孔28gに螺
合される雄ねじ部30aと、連絡孔28fに臨むニードル部30
bと、工具本体２の外部に突出する調整ツマミ30cとから
構成することができる。調整ツマミ30cによる操作によ
ってミストＭの生成量が調整される。給気管12から圧搾
空気が案内路28dに流入し、ミスト供給路18へ流れるこ
とによって案内路28dが負圧状態となり、ニードル部30b
で流量を規制された水が霧化される。

また、ミスト開閉部材24は、第３図に示すように、ミ
スト供給路18を連結する連結部材32と、連結部材32内を
駆動スイッチ８の動作に連動して摺動し、ミスト供給路
18を開閉する開閉ロッド34とから概略構成されている。
詳述すると、連結部材32には上下端部にそれぞれミスト
供給路18を接続する接続口32a,32aが形成され、これら
に連通して内部には連通路32bが形成されている。

開閉ロッド34は、例えば駆動スイッチ８に一体に形成
されるロッド本体34aと、連通路32b内に位置する頭部34
bとから構成できる。また、連結部材32には、開閉ロッ
ド34の摺動を案内する内方ガイド36と外方ガイド38とが
設けられている。

内方ガイド36には、開閉ロッド34の挿通孔36aが形成
されているとともに、連通路32bに連通する接続路36bが
形成されている。また、内方ガイド36の一側には、開閉
ロッド34の頭部34bの下面に当接して連通路32bと接続路
36bとの連通を閉塞する閉塞端縁36cが形成されている。
図中、符号40はシール部材を示す。

外方ガイド38には、開閉ロッド34の挿通孔38aが形成
されているとともに、雄ねじ部38bが形成されている。
これに対応して連結部材32には、外方ガイド38の装着ね
じ孔32cが形成されている。また、外方ガイド38には、
連結部材32へねじ込み量を規制する鍔部38cが形成され
ているとともに、駆動スイッチ８側に開口してバネ収容
凹部38dが形成されている。

駆動スイッチ８には、外方ガイド38に対する嵌合凹部
8aが形成されており、嵌合凹部8aと外方ガイド38のバネ
収容凹部38dとの間には、駆動スイッチ８の戻り動作を
付勢するバネ部材42が設けられている。また、内方ガイ
ド36と外方ガイド38との接触面には、ミストＭの漏洩を
防止するためにＯリング44が設けられている。なお、符
号46は外方ガイド38と連結部材32との間の気密を図るシ
ール部材である。

集塵開閉部材26は、エアー供給路20の接続口48a,48b
を有する連結部材48が相違する以外は上記ミスト開閉部
材24と同一の構成となっている。

第３図は回転ドリル４と集塵手段22が停止され、ミス
ト供給路18並びにエアー供給路20が閉塞された状態を示
している。この状態から回転ドリル４と集塵手段22を駆
動すべく駆動スイッチ８が矢印Ｔ方向に押圧されると、
ミスト開閉部材24と集塵開閉部材26の双方の内方ガイド
36,36の閉塞端縁36c,36cと、開閉ロッド34,34の頭部34
b,34bとの間が二点鎖線で示すように開かれる。これに
よって連通路32b,32bと接続路36b,36bとが連通され、ミ
スト供給路18が連通されてミストＭが回転ドリル４へ供
給される。また、同時にエアー供給路20が連通されて圧
搾空気が集塵手段22へ供給される。

回転ドリル４には、軸方向の貫通孔4aが形成されてい
るとともに、その先端には例えばダイヤモンド粒を焼結
して形成される切削刃50が取付けられ、切削刃50の側部
には貫通孔4aに連通して噴出口50aが形成されている。
ミスト生成手段10で生成されたミストＭは、ミスト供給
路18を経て回転ドリル４に導かれ、切削刃50から噴出さ
れる。これによって切削刃50の冷却がなされ、穿孔時の
摩擦熱による早期損耗が抑制される。

集塵手段22は、回転ドリル４の外部を軸方向に亘って
覆うカバー部材52と、集塵本体54とから概略構成されて
いる。カバー部材52は、開口部56aを有する当接部56
と、排出口58aを有する取付部58と、当接部56と取付部5
8との間を接続するジャバラ部60とから概略構成されて
いる。

ジャバラ部60は、例えばゴム質ないしエラストマー等
の弾性素材で形成され、回転ドリル４の掘進移動に対応
して伸縮できるようになっている。ジャバラ部60の弾性
によってカバー部材52の収縮からの自力復帰が可能であ
るが、当接部56と取付部58とにそれぞれ取付片56b,58b
を設けてロッド62を配するとともに、ロッド62にバネ64
を嵌挿してバネ弾性による強制復帰構造とすることもで
きる。

集塵本体54は、第４図に示すように、例えば排出口58
aに接続されるノズル部材66と、このノズル部材66の先
端に取付けられる集塵袋68とから構成することができ
る。

ノズル部材66は、第５図に示すように、外筒70と、外
筒70内に装着される内筒72、それに外筒70内で内筒72の
先端に装着される空気絞り部材74とから成っている。外
筒70は径大部70a、減径部70b及び集塵袋68が取付けられ
る吐出口70cとから成っており、径大部70aの側部にはエ
アー供給路20からの圧搾空気を取り入れて内部へ噴出さ
せる噴出口70dが形成されている。また、吐出口70cの先
端には、集塵袋68の抜け落ちを阻止する***部70eが形
成されている。

内筒72は径大部72aと、径小部72b、それに先細りのテ
ーパ部72cとから成っている。

空気絞り部材74はリング状に形成されており、その内
孔74aは内筒72のテーパ部72cに密着して嵌められるよう
に同一勾配のテーパが付けられている。また、内孔74a
の周囲には、内孔74aないしテーパ72cの傾斜に平行な軸
心を有する絞り孔74bが形成されている。内筒72はその
径大部72aをもって外筒70に接着、圧入等の手段で固定
される。装着固定状態において、内筒72の径大部72aは
外筒70から一定寸法突出され、これに対応してカバー部
材52の排出口58aは、内筒72に対する径小部58bと、外筒
70に対する径大部58cとからなる段構造に形成されてい
る。したがって、接着等の手段で強固な接続を得ること
ができる。また、外筒70の径大部70aの内方先端には、
空気絞り部材74に対する係止面70fが形成されており、
空気絞り部材74は内筒72のテーぱ部72cと係止面70fとの
間で挟持して保持することができる。外筒70に内筒72及
び空気絞り部材74を装着した状態で、外筒70の径大部70
aの内方先端側には圧力空間としての環状の空気溜部76
が形成される。

エアー供給路20を介して圧搾空気が供給されると、圧
搾空気は噴出口70dから空気溜部76へ噴出される。そし
て空気溜部76で圧力を高められ、実線の矢印で示すよう
に絞り孔74bから高速で噴出される。これによって、内
筒72の内孔72d内は負圧状態となり、破線の矢印で示す
ようにカバー部材52内の切削屑Ｄがノズル部材66内に吸
引される。吸引された切削屑Ｄはノズル部材66の吐出口
70cを経て集塵袋68に収容される。

このように、集塵本体54を排出口58a側に負圧域を形
成ノズル部材66と、集塵袋と68とから成る構成とすれ
ば、吸引経路を極端に短くできるとともに吸引力がエア
ー供給路20の長さに左右されないので、常に高い吸引力
を得ることができ、切屑の排出効率を高めることができ
る。また、比較的径の小さいエアー供給路20を可能な限
り長く設定できるので、穿孔工具の使用範囲を拡大でき
るとともにホース長による重量負荷が軽減され、よって
穿孔工具の機動性ないし取扱性の向上ひいては作業性の
向上を図ることができる。また、コンプレッサー等の簡
易な設備をミスト生成手段10と共用して切削屑排出のた
めの吸引力を得ることができるので、設備費の低減を図
ることができる。

また、ミスト開閉部材24と集塵開閉部材26は同時開閉
できるようにしてあるので、圧力不均衡によるミストＭ
の逆流（集塵手段22への流入）を防止することができ
る。

なお、この例では特定の構造を示したがこれに限られ
るものではなく、要するにエアー供給源14からの空気を
工具本体２の外方向へ噴出させてカバー部材52内の切屑
を吸引し得る負圧状態を形成すれば良く、この範囲で種
々設計できるものである。

次に、第６図に基づいて回転ドリル４の駆動機構とミ
ストＭの供給構造を一例として示す。なお、集塵手段22
は省略してある。

工具本体２の先端側内方には、中空部材80がベアリン
グ82,84を介して回転可能に設けられている。中空部材8
0は、ベアリング86,86を介して回転可能に設けられ、電
動モータに接続される駆動軸88で歯車90,92を介して駆
動されるようになっている。中空部材80の後端には回転
接続体94が固定されており、これに対応して工具本体２
には、内部にミスト通路96aが形成された固定接続体96
が設けられている。回転接続体94と固定接続体96との間
にはスラストベアリング98が設けられており、また、相
互の中心部間には径の異なるＯリング100,102が設けら
れて２段階のシーリングが形成されている。ミスト生成
手段10側からのミスト供給器18は、連結管104で固定接
続体96のミスト通路96aに連通されている。

中空部材80の先端部には、装着凹部80aが形成されて
おり、回転ドリル４のテーパシャンク部4bを装着できる
とともに、奥行き端部をねじ止めして固定できるように
なっている。また、遠心力や通路面積の大きさによるミ
ストＭへの悪影響を低減するために、中空部材80内には
先端部が細口のテーパ状に形成された細管106がその後
端部を固定接続体96に圧入されて設けられており、回転
ドリル４内にはスペーサ108を介して同形状の細管110が
設けられている。細管106,110によって、ミストＭの消
失が抑制される。なお、符号112はコンクリート等の被
穿孔材を示す。

〔考案の効果〕

この考案によれば、ミスト冷却による穿孔効率の向上
を図ることができるとともに、集塵効率の向上を図るこ
とができる。

集塵手段はエアー吐出による負圧作用によって切削屑
を排出する構成であるので、常にエアー供給路の長さに
左右されない一定の吸引力を得ることができるととも
に、ミスト生成手段と共通のエアー供給源の利用に加え
て集塵機設備の必要がなく、よって大幅な設備費の低減
化と簡略化を図ることができる。

また、ミスト開閉部材と集塵開閉部材とが略同時に開
閉される構成であるので、圧力不均衡によるミストの逆
流を回避することができ、エアー供給源の共用化による
メリットを低減することなく維持できる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係る回転穿孔工具の一実施例を示す
部分切欠側面図、第２図はミスト生成手段部分の拡大断
面図、第３図はミスト開閉部材と集塵開閉部材の拡大断
面図、第４図は集塵手段の切削屑の吸引動作を示す要部
拡大断面図、第５図は集塵手段におけるノズル部材の分
解斜視図、第６図は回転ドリルの駆動機構周辺の集塵手
段を省略した断面図である。 ２……工具本体 ４……回転ドリル 4a……貫通孔 10……ミスト生成手段 14……エアー供給源 18……ミスト供給路 20……エアー供給路 22……集塵手段 24……ミスト開閉部材 26……集塵開閉部材 50……切削刃 Ｄ……切削屑

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】工具本体に設けられ軸方向の貫通孔を有す
   るとともに先端に切削刃を有する回転ドリルと、この回
   転ドリルにミスト供給路を介して接続され上記切削刃か
   ら噴出させられるミストを生成するミスト生成手段と、
   このミスト生成手段と共通のエアー供給源にエアー供給
   路を介して接続されエアー吐出による負圧作用によって
   切削屑を排出する集塵手段と、上記ミスト供給路に設け
   られるミスト開閉部材と、上記エアー供給路に設けられ
   る集塵開閉部材とが備えられ、上記ミスト開閉部材と集
   塵開閉部材とは略同時に開閉するようにしてなる回転穿
   孔工具。