JP2518101B2 - 光学活性アルコ―ル - Google Patents

光学活性アルコ―ル

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JP2518101B2 JP2333183A JP33318390A JP2518101B2 JP 2518101 B2 JP2518101 B2 JP 2518101B2 JP 2333183 A JP2333183 A JP 2333183A JP 33318390 A JP33318390 A JP 33318390A JP 2518101 B2 JP2518101 B2 JP 2518101B2
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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はγ位にスタニル基を有すると共に、分子内に
エポキシ基を有する新規な光学活性アルコールに関す
る。
従来の技術及び発明が解決しようとする問題点 2級アリルアルコールはそれ自体有用な化合物であ
り、また、有用な合成中間体として従来より広く認めら
れている。特に、近年分子構造中に2級アリルアルコー
ルの骨格を含む各種生理活性化合物が広く知られるよう
になっているが、これらの化合物は多くは光学活性体で
あり、2級アリルアルコールの光学活性体の合成は工業
的に重要な課題となっている。
特に、最終目的化合物(多くは光学活性なアリルアル
コールの骨格をその分子構造中に含み、一層複雑な化合
物及びその立体異性体となっている)の合成を考えた場
合、これらのものを有利に合成できる中間体として種々
の反応操作が極めて容易に行なえる光学活性を有するア
リルアルコールが望まれている。
例えば、新しい型の医薬品であるプロスタグランジン
系化合物の合成において、γ位にハロゲン原子を有する
光学活性アリルアルコール〔III c(式中、Halはハロゲン原子を、Rは飽和または不飽和
の炭素数1〜10の置換もしくは未置換のアルキル基、ま
たは置換もしくは未置換のフェニル基を表わす。以下、
同様。) は水酸基の置換した炭素原子上の不斉を光延反応等で反
転させてγ位にハロゲン原子を有する光学活性アリルア
ルコール〔IV cに変えた後、或いはγ位にハロゲン原子を有する光学活
性アリルアルコール〔IV c〕はそのままでω側鎖の原料
として用いられることが良く知られている(J.W.Patter
son,Jr.ら、J.Org.Chem.,39,2506(1974))。
また、ω側鎖の原料としてγ−位のスタニル基を有す
る光学活性アリルアルコール〔IV bも用いることもできる。(E.J.Coreyら、Tetrahedron L
etter,27,2199(1986)等)。
また更に、ω側鎖の原料として下記の如き化合物(V
I)も報告されている(J.G.Miller,W,Kurz,J.Am.Chem.S
oc.,96,6774(1974))。
従来、光学活性な2級アリルアルコールの合成法とし
ては下記式に示される共役エノン〔VII〕の不斉還元に
よる方法(野依ら、J.Am.Chem.Soc.,101,5843(1979)
等)、 或いは下記式に示される共役イノン〔VIII〕の不斉還
元後、ハイドロアルミ化反応し、更にハロゲン化して得
る方法(C.J.Sihら、J.Am.Chem.Soc.,97 857(1975)
等)、更には共役イノンの不斉還元後、水添する方法
(野依ら、J.Am.Chem.Soc.,106,6717(1984))が良く
知られている。
しかし、これらの方法は不斉源として高価な酵素や高
価な光学活性ビナフトールを用いる必要があり、また得
られる化合物〔IV b〕〔IV c〕の光学純度も95%ee以下
と低く、反応条件も低基質濃度やかなりの低温(例えば
−100℃)を必要とする等、工業的な製法としては問題
点が数多かった。
一方、香月、シャープレスらはアリルアルコールのチ
タンテトラアルコキサイド及び光学活性な酒石酸ジエス
テルを用い、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイ
ドのような過酸化物でエポキシ化反応を行う速度論的光
学分割法が光学活性なアリルアルコール類の合成法とし
て極めて有用であることを示した(特開昭57−122072,U
SP−4471130,USP−4594439)。
この、いわゆる「シャープレス酸化反応」は不斉源と
して酒石酸ジエステルという安価な原料を用いる点で他
の方法よりも優れている。また、最近はこの不斉源の量
も触媒量まで減らせることが明らかとなったため、さら
にその重要性が増している(K.B.Sharplessら、J.Org.C
hem.,51,1922(1986))。
しかしながら、シャープレスらの方法にも種々問題が
ある。
即ち、第1の問題として、シャープレスらの開示して
いる2級アリルアルコールにおける速度論的光学分割で
は、エポキシ化反応を一層速く受ける特定の光学活性ア
リルアルコールと、より遅くエポキシ化反応を受ける対
応する逆の光学活性アリルアルコールとの速度比が多く
の場合十分でなく、例えばシャープレスらのエポキシ化
反応の原料であるラセミ体のアリルアルコールを通常60
%以上エポキシ化しないと純度の極めて高い光学活性な
アリルアルコールが得られない(K.B.Sharplessら、J.A
m.Chem.Soc.,103,6237(1981))。
このことは、有用な光学活性の2級アリルアルコール
を得ようとした場合、原料のラセミ体の2級アリルアル
コールの60%以上を無駄にすることになり、工業的に実
施しようとしてもこの工程では収率が40%以下となって
非常に不利である。更に、多くの場合はこの工程以後に
多くの化学反応操作を実施して一層複雑な最終生成物に
することを考えると、全体の収率が非常に小さくなると
いう問題がある。
第2の問題として、シャープレスらの開示しているア
リルアルコールでは、シス体は極めて光学分割効率が悪
く、シス体のアリルアルコールの光学分割としては実際
的な有用性が低いという問題点を有している。
また、第3の問題として、シャープレスらの開示して
いるアリルアルコールでは電子吸引性のハロゲン原子を
持つ化合物、例えばブロム原子を有する化合物〔IX〕又
は酸化され易い原子、例えば硫黄原子〔X〕や錫原子、
ハロゲン原子を有する化合物〔V b〕のような反応基質
の例がなく、これらはエポキシ化反応自体が進行しない
可能性があり、矢張り有効な光学分割法とはなり得なか
った。
エポキシ化反応自体が進行しない理由としては、ハロ
オレフィンは二重結合の電子密度が低く、一般に酸化反
応が遅いと考えられること及びオレフィンの酸化よりも
錫原子、ハロゲン原子或いは硫黄原子の酸化の方が速い
可能性があること等が挙げられる。その他、反応生成物
として想定されるエポキシアルコール類〔I′〕或いは
〔II′〕が極めて不安定と考えられることもこれらの例
が知られていなかった理由の一つとしてあげられる。
なお、エポキシアルコールは、それ自体有用な化合物
であり、また更に、合成中間体として有用である。即
ち、近年分子構造中に光学活性なエポキシ基を含む生理
活性化合物が増加していること、光学活性エポキシ基を
立体特異的に反応させて得られる化合物、例えば光学活
性2級アリルアルコールや光学活性1,2−ジオールや光
学活性1,3−ジオールも生理活性化合物として有用であ
ること等による。しかし、変換が容易な原子、例えば珪
素、錫、ハロゲン等の原子をγ位に有する光学活性なエ
ポキシアルコール〔I′〕および〔II′〕はこれまで知
られておらず、工業的に大きな障害となっていた。
本発明はこれらシャープレスらの反応の有効性の3つ
の限界という問題点を克服することにより到達したもの
であって、本発明はγ位にスタニル基を有する新規な有
用な光学活性アルコールを提供することを目的とする。
問題点を解決するための手段 本発明は上記目的を達成するため鋭意研究を進めた結
果、γ位にスタニル基を有するトランス型アリルアルコ
ール〔V〕 をチタンテトラアルコキサイド及び光学活性な酒石酸ジ
エステルの存在下、ハイドロパーオキサイドで酸化する
ことにより、従来は決して得られなかった光学分割高率
で下記の反応が信号し、アンチ体の光学活性エポキシア
ルコール〔I〕と光学活性アリルアルコール〔III〕或
いは光学活性エポキシアルコール〔II〕と光学活性アリ
ルアルコール〔IV〕が得られること、この場合光学活性
エポキシアルコール〔I〕及び〔II〕が新規物質である
ことを見い出し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は 一般式〔I〕 及び一般式〔II〕 (但し、Rは飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキ
ル基を示し、R1,R2,R3は互に同一又は異種の炭素数1〜
10のアルキル基を示す。〕 で表わされる化合物から選ばれるγ位にスタニル基を有
する新規な光学活性アルコールを提供する。
本発明の一般式〔I〕,〔II〕で表わされるアルコー
ル類は、従来シャープレスらのほかの方法では容易には
得られなかった多くの立体規制された2級アリルアルコ
ール、エポキシアルコール、1,2−ジオール、1,3−ジオ
ール等をその骨格に含む複雑な生理活性物質を合成する
ために有用である。
即ち、本発明の新規な光学活性アルコール〔I〕,
〔II〕はγ位にスタニル基を有し、これらのヘテロ原子
を手懸りにして各種の誘導が可能になる。例えばプロス
タグランジン用のω鎖やロイコトリエンB4(LTB4)等へ
の応用が容易に行えるようになる。
ここで、本発明の新規化合物〔I〕,〔II〕を得るた
めの製造法の特徴を説明すると、第1番目に光学分割効
率が挙げられる。即ち、γ位にスタニル基を有する2級
アリルアルコール(ラセミ又は2種の光学対掌体の混合
物)化合物〔V〕をチタンテトラアルコキサイド及び光
学活性な酒石酸ジエステルを用いてハイドロパーオキサ
イドで酸化すると、用いた酒石酸ジエステルの光学的構
造に対応して、用いた反応基質のラセミな化合物〔V〕
の一方の光学異性体は素速くエポキシ化反応を受け、逆
の光学異性体は極めてゆっくりエポキシ化反応を受け
る。即ち、実用的な反応時間でエポキシ化反応を終了し
た場合、例えば約7時間で得られたエポキシ化合物の光
学純度は99%以上であり、一方残ったアリルアルコール
光学純度も99%以上である。このような生成物の高い光
学純度は反応時間10時間にしても殆んど変化しない。
このことは用いた酒石酸ジエステルの光学的構造に対
応して、エポキシ化反応を素速く受ける化合物〔V〕の
一方の光学異性体が殆んど全てエポキシ化反応を受けた
後、ラセミ化合内〔V〕の他方の光学異性体の逆のもの
がエポキシ化を受け始めるといえる。
従って、このことは両者の反応速度比が無限大に近い
ことを示している。
即ち、この反応はラセミ体化合物に含まれる光学異性
体に対するエポキシ化反応速度比が無限大に近いため、
反応管理が極めて容易になる。従来のように通常エポキ
シ化の反応率を60%(ラセミ反応基質に対して)程度ま
で進めて反応を停止させる場合、キラルなアリルアルコ
ールの収量を一層向上させるために、反応停止点を判断
するためのモニタリングにかなりの大きな労力と反応物
のロス等があった。しかし、上述した方法は、先に述べ
た速度比が極めて大きく、無限大といっていい程である
ため、反応時間をかなりな許容範囲を持って管理するだ
けで十分である。このことは、用いる酸化剤の使用量を
必要最小限に減らすことも、逆に大過剰に増すことも可
能であるといいかえることもできる。
また、反応温度の管理も容易となり、例えば従来−25
〜−20℃が普通であった反応温度条件が+20℃程度でも
充分可能になった。この反応条件の穏和化は工業的には
非常に大きな進歩である。
また、第2番目に、高い光学純度のエポキシアルコー
ルが得られるという特徴がある。
即ち、 という方法で得られる新規な光学活性アルコール〔I〕
及び〔II〕はγ位のスタニル基の効果でいずれも98%以
上の高い光学純度で得られる。また、光学活性アルコー
ル〔I〕及び〔II〕はそのまま或いは立体特異的にさら
に変換し、有用な光学活性なアリルアルコール、1,2−
ジオール、1,3−ジオールとすることができる。例え
ば、後述するように有用な光学活性アリルアルコールに
変換することができる。いいかえれば今迄の通常のシャ
ープレスらの例では、原料のラセミのアリルアルコール
の約半量(通常60%以上)はエポキシ化合物になるが、
得られるエポキシアルコールの光学純度はせいぜい90%
ee程度と低く、キラルな合成原料としては粗悪なもので
あり、高い光学純度のエポキシアルコールを得るには光
学活性アリルアルコールをさらにエポキシ化(通常シン
体とアンチ体の混合物となる)させる必要があった。
これに対し、上記反応で得られるエポキシアルコール
の光学純度は95%ee以上と高く、しかもほぼアンチ体の
みである。しかも後述するように、得られるエポキシア
ルコールは容易に光学活性なアリルアルコールにも変換
できる。即ち、原料のγ位にスタニル基を有する化合物
〔V〕の半量は光学活性アリルアルコールとして、また
残りの半量は光学活性エポキシアルコールとして全てを
有効に利用できる。
その他の特徴として、化合物〔V〕のエポキシ化が従
来のシャープレス法の場合に比べ速く進むことが挙げら
れる。その上に、第一の特徴として述べたハイドロパー
オキサイドの使用量の増量及び反応温度の昇温により、
さらに10〜20時間程度まで反応時間を短縮できるように
なったが、これは従来のシャープレス法が5〜15日間を
要したのに比べると、大きな進歩であり、工業的なプロ
セスとして非常に重要な点である。
この有用な新規な光学活性〔I〕,〔II〕を極めて高
い光学純度で得るためのポイントは、〔V〕で示す化合
物、 を用いることであり、γ位にスタニル基を持つ2級アリ
ルアルコールを用いることにより、本発明化合物を高純
度で得ることができる。
また、今まで述べたことからも判る通り、〔I〕或い
は〔II〕式の化合物は、次式のように〔III〕或いは〔I
V〕の化合物より合成することもできる。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の新規な光学活性〔I〕,〔II〕: におけるRは、上述したように、飽和または不飽和の炭
素数1〜10の置換もしくは未置換のアルキル基を示す
が、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−
プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、アミ
ル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、
2−メチルヘキシル、2−メチル−2−ヘキシル、2−
ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘ
キシルメチル、ヘキサ−4−イン−2−イル、ヘプタ−
4−イン−2−イル、2,6−ジメチル−ヘプタ−5−エ
ン−1−イル、ペンタ−1−エン−1−イル、ペンタ−
2−エン−1−イル、ヘキサ−1−エン−2−イル、3
−エトキシ−2−メチル−プロパン−2−イル、エトキ
シエチル、5−メトキシヘキシル、6−メトキシ−2−
ヘキシル、ハロゲン化メチル、ハロゲン化n−ブチル、
ハロゲン化n−ペンチル、ハロゲン化ノニル、n−ペン
チルオキシメチル、1−エトキシ−2−メチル−プロパ
ン−2−イル、1−ブチル−シクロプロピル、3−エチ
ル−シクロペンチル、2−オクテニル、3−メトキシカ
ルボニルプロピル、ビニル等を挙げることができる。
また、R1,R2,R3は炭素数1〜10のアルキル基で、具体
的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピ
ル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、アミル、ヘ
キシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等を挙げ
ることができる。なお、R1,R2,R3は互いに同一であって
も異なっていても良い。
次に、本発明に係る新規化合物の製造法について説明
すると、化合物〔V〕より〔I〕,〔II〕の光学活性ア
ルコールを得ることが好ましく、このためには、次式に
示すように、用いる光学活性酒石酸ジエステルを用いて
生成物のアルコールの立体を規制している。ここで用い
る光学活性な酒石酸ジエステルとしては、L−(+)−
酒石酸ジメチル、L−(+)−酒石酸ジエチル、L−
(+)−酒石酸ジイソプロピル、L−(+)−酒石酸ジ
−t−ブチル、L−(+)−酒石酸ジステアリル、L−
(+)−酒石酸ジフェニル及びこれ等のD−(−)−体
が例として挙げられる。例えば、L−(+)−酒石酸ジ
エステルを用いれば、 又は、D−(−)−酒石酸ジエステルを用いれば、 となり、〔I〕或いは〔II〕の立体異性体であるシン体
のエポキシアルコールは殆んど生成しない。
この酒石酸ジエステルの使用量は、先に述べたチタン
アルコキサイド1モル当り0.9〜2.0モル、特に1.0〜1.2
モルが望ましい。
上記反応では、チタンテトラアルコキサイドを使用す
るが、チタンテトラアルコキサイドとしては、具体的に
は、チタンテトラメトキサイド、チタンテトラエトキサ
イド、チタンテトラプロポキサイド、チタンテトライソ
プロポキサイド、チタンテトラブトキサイド、チタンテ
トラt−ブトキサイド等の挙げられ、その1種又は2種
以上を使用することができる。その使用量は、〔V〕で
表わされるアリルアルコール1モル当り0.05〜1.5モル
にすることが望ましい。
また、酸化剤(ハイドロパーオキサイド)としては、
通常、脂肪酸のハイドロパーオキサイドが使用され、例
えばt−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α−ジメ
チルヘプチルハイドロパーオキサイド、ビス−イソブチ
ル−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1−メチルシク
ロヘキシルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパ
ーオキサイド及びシクロヘキシルハイドロパーオキサイ
ド等を挙げることができる。その使用量は〔V〕のアリ
ルアルコール1モル当り0.5〜3モル、特に0.5〜1.5モ
ルが好ましい。
上記の製造法においては溶媒を使用することが好まし
く、溶媒としては不活性溶媒、特にハロゲン化炭化水素
溶媒が好適に用いられる。具体的にはジクロロメタン、
ジクロロエタン等を挙げることができる。
反応温度は−80℃〜80℃の範囲が採用され、望ましく
は−30℃〜30℃である。また、反応時間は、反応基質又
は温度等により異なるが、通常10分〜100時間である。
反応系は水分を非常に嫌うので反応溶媒、反応基質及
び反応剤は全て極力脱水する必要がある。また、触媒量
の酒石酸ジエステルを用いる場合は粉末化したモレキュ
ラーシーブ、水素化カルシュウム、シリカゲル等を共存
させて反応させても良い。
なお、上記方法で用いられるトランス型のアリルアル
コール〔V〕は ラセミ体でも、光学活性体の混合物でも良く、光学活性
エポキシアルコール〔I〕或いは〔II〕を合成する場合
は対応する光学活性アリルアルコール、即ち各々この順
に〔IV〕の化合物或いは〔III〕の化合物を用いても良
い。
ここで、〔V〕の化合物は常法、即ちエノンのケト
ン還元、ビニル金属試薬とアルデヒドの反応、アセ
チレンアルコールのトランス水素化等で合成できる。
次に、本発明化合物〔I〕,〔II〕の有用性について
具体的に説明する。
これらの化合物の有用性の本質は、キラルな化合物で
あること、同時にエポキシスタニル基を持つことであ
る。本発明化合物のスタニル基を有する〔I〕,〔II〕
から、容易に今迄のシャープレス等の方法では効率良く
得られなかったシス体の光学活性なアリルアルコールが
効率良く、容易に得ることができる。
例えば、ハロゲンを持つ、プロスタグランジンのω鎖
として用いられる前出の〔VI〕のようなものも下記反応
式に示すように容易に得ることがでる。
本発明の新規な化合物〔I〕,〔II〕は多くの種類の
2級アリルアルコールの全ての立体異性体を合成するこ
とができる。より具体的な例を挙げれば以下の反応を示
すことができる。
一般式〔I a〕で表わされるアンチ型エポキシアルコ
ールの水酸基を保護した化合物とグリニヤール試薬を反
応させ、 (但し、Rは前記と同じ意味を有し、R4は置換もしくは
未置換の炭素数1〜10のアルキル基及びアリール基並び
にその誘導体を表わす。また、OEEは 基を示す。) 一般式〔XI〕で表わされる各種1,2−ジオールを得るこ
とができる。
そして、一般式〔XI〕で表わされる化合物を各々塩基
性ピターソン脱離反応、酸性ピターソン脱離反応を行う
と、一般式〔A〕及び一般式〔B〕で表わされる化合物
を得ることができる。
これと同様にして、γ位にスタニル基を有する一般式
〔I b〕で表わされるアンチ型エポキシアルコールと有
機スズリチウム試薬との反応で光学活性アリルアルコー
ル〔IV b〕を得ることができる。
また、ブタニル基を有する〔I a〕あるいは〔II a
は水酸基を保護した後テトラブチルアンモニウムフロリ
ドで処理し、続いて脱保護することにより、無置換のエ
ポキシアルコール〔XII〕に変換できる。
無置換のエポキシアルコール〔XII〕は昆虫フェロモ
ンであるブレビコミン(S.Takano et al.,J.C.S.,Chem.
Comunn.,1985,1759)や、単糖類(D.Seebach et al.,He
lv.Chim.Acta,64,687(1981))の合成などに用いられ
る有用な化合物である。
この他、〔I〕の化合物或いは〔II〕の化合物に類似
した光学活性エポキシアルコールをRed−Al還元するこ
とを利用することによって光学活性1,3−ジオールを得
ることもできる。
また、以上の反応は例えば〔I〕に対しては〔II〕の
逆の立体配置の立体配置が規制された水酸基を有するγ
位にスタニル基を有するアンチ型エポキシアルコールに
ついても行なうことができ、それぞれ立体規則性のある
化合物を得ることができる。
発明の効果 以上説明したように、本発明の一般式〔I〕及び〔I
I〕で表わされた光学活性を有するアルコールは、新規
な化合物であって、各種の生理活性物質合成の中間体と
して有用であると共に、アルコール自身が生理活性物質
として作用するものである。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は
下記実施例に制限されるものではない。
なお、下記例において、Buはブチル基、Amはアミル基
を示す。
〔実施例〕
−20℃に冷却したチタンテトライソプロポキサイド0.
72mlのCH2Cl218mlの溶液にL−(+)−酒石酸ジイソプ
ロピル〔DIPT〕0.61mlを滴下し、10分攪拌した。これに
1−(1)1.01gのCH2Cl23ml溶液を滴下して、さらに10
分攪拌した。続いて、t−ブチルハイドロパーオキサイ
ド〔TBHP〕の3.40M CH2Cl2溶液1.07mlを滴下し、4時間
攪拌した。薄層クロマトグラフィーで1−(2)と1−
(3)がほぼ1:1であることを確認後、−20℃でジメチ
ルサルファイド0.71mlを加え、そのままの温度で40分攪
拌した。つづいてエーテル25mlと10重量%酒石酸水溶液
1ml、NaF3g、セライト10gを室温で加え、1時間攪拌し
た。混合物を吸引濾過して沈澱を除去し溶媒を減圧下除
去した。得られた粗製物をシリカゲルクロマトグラフィ
ーにより精製し、1−(3)を433mg、1−(2)を450
mgそれぞれ油状物として得た。
化合物1−(2),1−(3)の分析値を下記に示す。
1H NMR(CCl4,TMS) 69.6,58.4,48.2,33.8,32.0,29.0,27.3,25.1,22.5,13.9,
13.6,8.8 ▲〔α〕25 D▼ −34.5゜(C 1.10,CHCl3,88%ee) IR(neat) 3425,2920,2850,1460,1380,1250,1070,102
0,862(cm-1 1H NMR(CCl4) δ 0.76〜1.71(m,39H,4CH3,13CH3,OH),3.79〜4.10
(m,1H,CHOH),5.54〜6.40(m,2H,CH=OH) ▲〔α〕25 D▼ −3.09゜(C 1.10,クロロホルム) このものの光学純度は参考例の結果から100%eeに非
常に近いと判断できる。
〔参考例〕 化合物1−(3)543mgのエーテル溶液7mlを0℃に冷
却し、この中にヨウ素363mgを加えた。0℃で1時間攪
拌後、Na2S2O3水溶液を加えた。生成物をヘキサンで抽
出し、抽出液をMgSO4で乾燥後濃縮し、得られた油状物
をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して
2−(3)を油状物として304mg得た。収率92%1 H NMR(CDCl3) δ 0.87(t,J=6.0Hz,3H,CH3),1.06〜1.76(m,8H,C
H2),2.45(brs,1H,OH),4.03(q,J=6.0Hz,1H,CHO),
5.26(d,J=15.6Hz,1H,HCI),5.55(dd,J=15.6Hz,6.0H
z,1H,IC=CH) ▲〔α〕24 D▼ −9.86゜(C 1.48,メタノール) 1−(3)のエナンチオマーの文献値(R.Noyori et
al.,J.Am.Chem.Soc.,106,(1979))は、 ▲〔α〕24 D▼ −9.87゜(C 1.57,メタノール) であり良く一致している。
この2−(3)を光学活性なα−メトキシ−α−トリ
フロロメチルフェニル酢酸のエステル(Mosherエステ
ル)に誘導してNMRを測定する方法によっても光学純度
が99.5%ee以上であった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式〔I〕: 及び一般式〔II〕: 〔式中、Rは飽和または不飽和の炭素数1〜10のアルキ
    ル基を示し、R1,R2,R3は互に同一又は異種の炭素数1〜
    10のアルキル基を示す。〕 で表わされる化合物から選ばれるγ位にスタニル基を有
    する光学活性アルコール。
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