JP2510345B2 - アルコキシシリル基含有アゾ化合物及びその製造方法 - Google Patents

アルコキシシリル基含有アゾ化合物及びその製造方法

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JP2510345B2 JP2230336A JP23033690A JP2510345B2 JP 2510345 B2 JP2510345 B2 JP 2510345B2 JP 2230336 A JP2230336 A JP 2230336A JP 23033690 A JP23033690 A JP 23033690A JP 2510345 B2 JP2510345 B2 JP 2510345B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ラジカル重合開始剤として用いられるアゾ
化合物及びその製造方法に関し、より特定的には、重合
と同時に生成重合体の分子鎖に、架橋に寄与するアルコ
キシシリル基を導入する新規な重合方法を提供し得る、
アルコキシシリル基含有アゾ化合物及びその製造方法に
関する。
〔従来の技術〕
従来より、アゾ化合物は、ラジカル重合を起こさせる
ための重合開始剤として使用されている。他方、アルコ
キシシリル基を有する高分子化合物は、空気中等の水分
によって架橋を生じるため、架橋性有機高分子として利
用されてきた。
アルコキシシリル基含有高分子の製造すなわち重合に
際しては、(a)原料モノマーとしてアルコキシシリル
基を有する化合物を共重合する方法、(b)連鎖移動剤
としてアルコキシシリル基を有する化合物を用いる方
法、並びに(c)既に合成された重合体に、アルコキシ
シリル基を有する化合物を付加する方法等が行われてい
る。
(a)の共重合を用いた方法は、特公昭51−28301号
に、(b)の連鎖移動剤としてアルコキシシリル基を有
する化合物を用いる方法については、特開昭47−4192号
に、(c)の付加反応によりアルコキシシリル基を導入
する方法については、特公昭45−11819号に開示されて
いる。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、1分子内に少なくとも1個のアゾ基
と、その両側の残基の中に、それぞれ1個以上のトリア
ルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基またはモノア
ルコキシシリル基とを有する化合物、並びにその製造方
法を提供することであり、より特定的には、ビニル重合
性単量体の1種以上のもののラジカル重合を行うに際
し、これをラジカル重合開始剤として用いることによ
り、重合体分子鎖に、架橋に寄与し得るアルコキシシリ
ル基を導入することができる、アルコキシシリル基含有
アゾ化合物及びその製造方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明において目的としているアルコキシシリル基含
有アゾ化合物は、1分子内に、熱に弱いアゾ基と、酸や
強アルカリの存在下で水分に弱いアルコキシシリル基と
の双方を有する。従って、このような不安定な2種の官
能基を有するアルコキシシリル基含有アゾ化合物の合成
方法を見出すことは非常に困難であった。
しかるに、本願発明者は、鋭意検討した結果、分子内
にエステル基またはアミド基を有するアゾ化合物と、分
子内にアミノ基を有するアルコキシシラン化合物との間
で、いわゆるアミノリシス反応を起こさせることによ
り、反応中にアゾ基及びアルコキシシリル基のどちらを
も損なうことなく、目的とする重合開始剤を合成し得る
のではないかと考え、実験の結果、このような合成が可
能であること、並びに生成物が重合開始剤として機能
し、さらにこの重合開始剤を使用して合成された重合体
は、水分の存在下において架橋し、例えば90%以上の高
い不溶分率を示すゴム弾性体を構成することを確認し、
本発明をなすに至った。
請求項1に記載の本発明のアルコキシシリル基含有ア
ゾ化合物は、下記の一般式(I)で示されるものであ
る。
また、請求項2に記載の本発明のアルコキシシリル基
含有アゾ化合物の製造方法は、下記の一般式(II)で示
される、エステル基含有アゾ化合物またはアミノ基含有
アゾ化合物の1分子と、下記の一般式(III)で示され
るアルコキシシリル基含有第一アミンの2分子とが、一
般式(II)において示されている2個のX′と、一般式
(III)で示されるHの2個(それぞれの分子から1
個)とを脱離すると共に、互いに結合して1分子となる
反応を、金属アルコキシドの共存下において起こさせる
ことを特徴とする。
なお、一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4のそ
れぞれは、炭素数が4以下のアルキル基、2個のQはそ
れぞれ下記の一般式(IV)で示される1価の基である。
一般式(II)において、R1、R2、R3及びR4のそれぞれ
は、炭素数が4以下のアルキル基、2個のX′のそれぞ
れは、アルコール、アンモニア、第一アミンまたは第二
アミンのうち、常圧における沸点85℃以下のものから活
性水素1個を除いた残基を示す。
一般式(III)及び一般式(IV)において、nは1〜
3の整数、R5は炭素数が3以下のアルキル基であり、そ
れぞれは同種であってもよく、異種であってもよく、R6
は炭素数が4以下の2価の飽和炭化水素基である。Xは
炭素数が3以下のアルコキシ基である。
XnR5 3-nSi−R6−NH2 …(III) XnR5 3-nSi−R6− …(IV) 本発明において用いられる物質の具体例 一般式(II)において、X′で示される官能基の具体
例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ
基またはイソプロポキシ基等のアルコキシ基の他、アン
モニアから活性水素1個を除いた残基であるNH2−、さ
らに、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミ
ン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン、メチルエチ
ルアミン、メチルプロピルアミン、ジエチルアミンまた
はエチルプロピルアミン等の各アミンから活性水素1個
を除いた各残基が挙げられる。
式(II)で示されるエステル基含有アゾ化合物または
アミド基含有アゾ化合物の具体例としては、下記の化合
物名及び構造式で示されるものが挙げられる。
2,2′−アゾビス(イソ酪酸メチル) 2,2′−アゾビス(イソ酪酸エチル) 2,2′−アゾビス(イソ酪酸プロピル) 2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル吉草酸メチル) 2,2′−アゾビス(2−エチル酪酸メチル) 2,2′−アゾビス(イソ酪酸アミド) N,N′−ジエチル−2,2′−アゾビス(イソ酪酸アミド) N,N,N′,N′−テトラエチル−2,2′−アゾビス(イソ酪
酸アミド) 式(III)で示されるアルコキシシリル基含有第一ア
ミンの具体例としては、以下の化合物名及び構造式でそ
れぞれ示されるものが挙げられる。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン (CH3O)3Si‐(CH2)3‐NH2 3−アミノプロピルトリエトキシシラン (C2H5O)3Si‐(CH2)3‐NH2 3−アミノプロピルトリプロポキシシラン (C3H7O)3Si‐(CH2)3‐NH2 3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン (i-C3H7O)3Si‐(CH2)3‐NH2 3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン (CH3O)2Si(CH3)‐(CH2)3‐NH2 2−アミノエチルトリメトキシシラン (CH3O)3Si‐(CH2)2‐NH2 4−アミノブチルトリメトキシシラン (CH3O)3Si‐(CH2)4‐NH2 なお、原料である式(II)で示される化合物と、式
(III)で示される化合物との実際の組合わせを決定す
る場合に注意しなければならないことがある。これは、
アゾ化合物としてエステル基含有アゾ化合物を用いる場
合に限ってのことであるが、原料であるアルコキシシリ
ル基含有第一アミンのSiに結合したアルコキシ基の全て
と、エステル基含有アゾ化合物から脱離する2個のアル
コキシ基とが、反応中に容易に交換し得るので、目的物
質として、もし、単一のアルコキシ基が結合した純物質
を望むのであれば、2種の原料に結合しているアルコキ
シ基は全て同じものとしておくことが確実な方法であ
る。
もっとも、生成物が、異種のアルコキシ基を結合した
ものの混合物になってもよい場合には、以上の注意は必
要ではない。
本発明の合成方法の具体的説明 本発明にかかるアルコキシシリル基含有アゾ化合物の
合成手順は以下のとおりである。
上述した式(II)で示されるエステル基含有アゾ化合
物またはアミド基含有アゾ化合物と、アルコキシシリル
基含有第一アミンとを、略1:2のモル比で混合し、触媒
としてナトリウムメトキシド等の金属アルコキシドを加
えることにより反応させる。反応に伴って、アルコー
ル、アンモニアまたはアミン等が脱離するため、十分な
反応率を得るには、減圧によりこれらを反応系から除く
ことが望ましい。
金属アルコキシドの代わりに、ナトリウムアミド等の
金属アミドを用いても反応は生じる。金属アミドはアル
コキシシリル基含有第一アミンのアルコキシシリル基と
優先的に反応し、平衡反応によって、反応系中に金属ア
ルコキシドを共存させる。従って、金属アミドを利用し
た方法も本発明の範囲に包含される。この場合、副生す
るアンモニアは、減圧によりアルコール等の脱離物と同
時に除去される。
上述した反応を充分に行った後、触媒、すなわち金属
アルコキシドを除去する。触媒の除去は、オーブンにて
乾燥させた弱酸性のカチオン交換樹脂を、乾燥メタノー
ルで膨潤させた後、加えることによって行い得る。これ
とは別に、クロロホルム等のハロゲン化アルキルを加
え、金属アルコキシドと反応させ、エーテルと金属ハロ
ゲン化物とに変えてしまう方法も有効である。後者の場
合には、生成した金属ハロゲン化物は、濾過によって除
かれ、他方、生成したエーテル及び過剰のハロゲン化ア
ルキルは減圧等によって除去される。
〔作用〕
本発明の製造方法により得られるアルコキシシリル基
含有アゾ化合物は、アゾ基を有するため、アクリル酸エ
ステル等のビニル重合性単量体を主原料として用い、溶
液重合または塊状重合といった重合法により重合体を製
造する際に、従来のラジカル重合開始剤と同様に用いる
ことができる。
また、上記のようにして得られた重合体では、分子鎖
にアルコキシシリル基が結合されているため、空気中の
湿気等の水分の作用により架橋する能力が該重合体に与
えられる。
本発明のアルコキシシリル基含有アゾ化合物の利用法
としては、上記とは逆に、アルコキシシリル基の反応を
先に利用することも可能である。例えば、シランカップ
リング剤と同様に用い、無機材料の表面にアゾ基を導入
する。このようにして表面処理された無機材料を単量体
中に浸漬し、熱等の作用により重合を起こさせれば、有
機高分子がグラフトされた無機物質を得ることができ
る。
〔実施例の説明〕
以下、本発明の実施例につき説明する。
アルコキシシリル基含有アゾ化合物の合成例 下記の構造式(Ia)で示される、2,2′−アゾビス
〔N−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソ酪酸ア
ミド〕を目的物質として、合成を試みた。原料として
は、下記の構造式(IIa)で示される2,2′−アゾビス
(イソ酪酸メチル)と、構造式(IIIa)で示される3−
アミノプロピルトリメトキシシランとを用いた。
以下においては、例えば式(Ia)で示される化合物
を、「化合物(Ia)」と、また、本質的に化合物(Ia)
からなると考えて用いている物質を「物質(Ia)」等
と、構造式の符号により化合物及び物質を表すこととす
る。
(CH3O)3Si‐(CH2)3‐NH2 …(IIIa) 物質(IIa)としては和光純薬(株)製のもの(商品
名:V−601)を、物質(IIIa)としてはAldrich社の試薬
を用いた。また、クロロホルム(使用量29.8g)及びト
ルエン(使用量450g)は、モレキュラーシーブ3Aを用い
て予め乾燥させておいた。
合成のための実験器具としては、容積1のなす型フ
ラスコ、マグネットスターラー、撹拌チップ、活栓を取
り付けたなす型フラスコ用の栓、なす型フラスコのため
の水浴(マグネットスターラー上で使えるもの)、冷却
トラップ、冷却トラップのためのデュワーびん、油回転
ポンプ、減圧用ゴム管等を用いた。またトラップの冷却
はドライアイス−エタノール浴で行った。
撹拌チップを入れたなす型フラスコに、物質(IIa)
1モル(230g)、物質(IIIa)2モル(358g)及び触媒
としてのナトリウムメトキシド粉末0.2モル(10.8g)を
仕込んだ。簡単に減圧した後、容器と活栓が取り付けら
れた栓とを含む重量を測っておいた。続いて、常温(23
℃)の水浴上に移し、減圧しながら撹拌(内部の液及び
水浴の双方の撹拌)を開始した。
常温で固体である物質(IIa)は、しばらくすると全
て溶解した。溶解後、若干の発熱があり、容器がやや暖
かくなったのが感じられた。1時間半の間、そのまま減
圧、撹拌を続けた。
次に、水浴の温度を35℃に設定し、減圧、撹拌を6時
間続けた後、活栓を閉じて、常温で16時間放置した。も
う一度、35℃の水浴上で減圧、撹拌を8時間行った。こ
れを終えた時点で、系の重量は、仕込み時より30.2g減
少していた。最後に再び、常温で16時間放置した。
以上の操作で物質としての合成を終え、次に、精製操
作を行った。
始めに述べた操作で乾燥させておいたクロロホルム2
9.8g(0.25モル)をフラスコ内容物に加え、常温で撹拌
しながら触媒として用いたナトリウムメトキシドとの反
応を行った。クロロホルム添加後、約5分後にわずかに
発熱していた。2時間後、始めに述べた操作で予め乾燥
させておいたトルエン450gを加えた。
以上の混合物を17G4のガラスフィルターで減圧濾過し
た。得られた溶液の重量は958.3gであった。
溶液の内から10gを、容積1のなす型フラスコに取
り、減圧乾燥した。開始2時間後に、フラスコに入れた
試料の重量はほぼ恒量になったが、そのまま1昼夜減圧
を続けた。
得られた不揮発分は5.41gであり、これから、溶液の
不揮発分濃度は54.1%と求められた。また、溶液全部を
このように減圧乾燥した場合の収量は518gと求められ
る。ここで得た不揮発分を試料αとする。この試料αに
つき、以下の分析を行った。
性状 試料αは淡黄色で常温では粘稠な液体であり、ドライ
アイス−エタノール浴の温度ではガラス状に固化した。
凝固点降下 試料αのベンゼン中における凝固点降下を測定した。
測定には目盛り間隔が0.1℃の水銀棒温度計を使用し
た。直径18mmの試験管に試料5gと温度計を入れ、氷水浴
に試験管の下部を、内部の液面が十分沈むように浸し
て、ごく少量の結晶を生じさせた後、すばやく引き上げ
て、温度計の先で試料を撹拌しつつ目盛りを読み、結晶
が融け切る直前の温度を記録した。溶液の濃度と凝固点
の関係は下記の第1表のようになった。これをグラフ化
したものを第1図に示す。凝固点降下の傾きは、第1図
中に示した斜線に従い、約9.6×10-2K/重量部と求め
た。
ベンゼンのモル凝固点降下係数の文献値5.12K・kg/モ
ル(=51.2K・分子量/重量部)を用いると、試料αの
(数平均)分子量は5.3×102と求められ、化合物(Ia)
関する理論値524.8と良い一致を示した。
液体クロマトグラフィ 積水ファインケミカル(株)製のGPC(ゲル浸透クロ
マトグラフィ)用の充填材である、SFG−308、SFG−50
8、SFG−708の3種のものを、内径8mm、長さ450mmのカ
ラム3本にそれぞれ充填し、これらを直列に接続し、溶
媒としてテトラヒドロフランを用い、流量毎分1mlの条
件で、高速液体クロマトグラフ分析を行った。
第2図のグラフにこの分析結果を示す。横軸は流出時
刻、縦軸は屈折率を示す。グラフ中、実線で示す曲線
が、試料αに関して行った分析結果(注入量0.525mg)
である。約53分目の位置にピークがあり、ほぼ単一物質
であることを裏付けられる。
第2図に破線及び一点鎖線で示されているものは、そ
れぞれ、原料である物質(IIa)(注入量0.23mg)及び
物質(IIIa)(注入量0.358mg)を同様に分析した結果
であるが、試料αのチャートでは、これら原料の痕跡は
認められない。
元素分析 試料α中のC、H、N、Si、Na、Clの各元素を定量し
た。C、H及びNの各元素は、試料の燃焼により発生す
る、CO2、H2O及びN2を捕集することによって定量した。
また、Si及びNaは、試料をフッ酸と王水との混合液にて
処理した後、誘導コイルプラズマ発光分析装置によっ
て、Clは、酸素フラスコ燃焼法で分解後、イオンクロマ
トグラフィーによって、それぞれ、定量した。
結果を下記の第2表に示す。第2表から明らかなよう
に、試料α中の各元素の重量分率は、C原子に関する値
を除けば、化合物(Ia)の理論値と概ねよく一致するこ
とがわかる。C原子に関する値が理論値と合わないの
は、試料中のC原子の一部がSi原子と結合してかなり安
定な無機化合物を作るため、実際の含有量よりも低い値
になってしまっているものと考えられる。
紫外吸光分析 紫外吸光分析は、試料αにおけるアゾ基の存在と、ア
ゾ基の周辺における分子構造を推定するために行った。
アゾ基を持つ化合物は、340〜380nmといった独特の波長
領域に吸収ピークを有するが、ピークの波長及びそこに
おける吸収の強さは、アゾ基周辺の分子構造によって少
しずつ異なったものになる。
実験の結果を下記の第3表及び第3図に示す。測定し
たのは、試料α、原料であるところの物質(IIa)、及
び下記の構造式(V)で示す化合物である。この物質
(V)としては、和光純薬(株)製のもの(商品名:VA
−086)を使用した。
化合物(V)はアゾ基の周辺において、試料αの本体
と仮定される化合物(Ia)とよく似た構造を持ってい
る。
測定にあたっては、それぞれの物質を、エタノール
中、0.005モル/lの濃度の溶液として調製し、行路長1cm
の石英ガラス製セルに該溶液を入れて分光器にかけた。
但し、試料αの分子量としては、化合物(Ia)の分子量
である524.8を仮定して、調製と、モル吸光係数の算出
を行った。
第3図に、試料αの測定結果を実線で、物質(IIa)
の測定結果を破線で、物質(V)の測定結果を二点鎖線
で、それぞれ、示す。
第3表及び第3図の結果から、ピーク位置とモル吸光
係数の両方において、試料αにおける値は、原料である
物質(IIa)における値を離れ、物質(V)における値
に近くなっていることがわかる。従って、試料αのアゾ
基を中心とする部分の化学構造は、化合物(V)によく
似たものになっているだろうと推測される。このことは
試料αが本質的に化合物(Ia)であることを裏付ける。
赤外吸光分析 試料αに関する赤外吸光分析を、KBr錠剤法によって
行った。チャートを第4図に示す。第4図のスペクトル
の特性吸収に関し、ピークの帰属を下記の第4表に示
す。
H−核磁気共鳴分析 濃度5重量%の試料αのCDCl3溶液を作り、H−核磁
気共鳴分析を行った。結果を第5図に示す。
また、試料を化合物(Ia)と考える上でのピークの位
置、吸収強度、及び化合物(Ia)におけるH原子の数を
第5表に示す。吸収強度の測定値(積分値)は、ピーク
位置0.65ppmのものを4.0として、他のものはこれに対し
て規格化した。これらの値は、対応づけられる化合物
(Ia)中の水素原子の数に良い一致を示す。
なお、この測定方法においては、N原子に結合したH
の吸収強度については、良好な定量性が得られないこと
が分かっており、実際、アミド基のH原子による吸収強
度に関して、定量性は良くないが、この点はあくまで参
考データとして示す。
半減期測定 試料αの10重量%キシレン溶液40gを調整した。ここ
で、キシレンは予めモレキュラーシーブ3Aにて乾燥して
おいたものを用いた。
溶液20gを試験管に入れ、キャピラリーを通したゴム
栓をした。これを90℃のオーブン中に入れ、約1時間の
後、第1回のサンプリングを行った。この時刻を基点
(t=0)とし、以後数回のサンプリングをした。
メタクリル酸ブチルのモノマー50gとトルエン50gとの
混液を、複数のセパラブルフラスコに仕込み、撹拌を行
いながら、還流温度(125℃)でしばらく加熱を続け
た。
次に、先にサンプリングした溶液のそれぞれの1gを添
加し、重合を行った。温度は重合液の温度を計測し、12
5±1℃に調整しながら、2時間重合を続けた。
重合後、フラスコを直ちに冷却し、フラスコごとの重
量から、予め測っておいたフラスコの重量を引き算して
収量を求めた。また、重合物の乾燥重量を求めることに
より固形分の割合を求め、開始剤由来の重量をバッチ当
たり0.1gと見做して引き算した後、原料モノマーに対す
る転化率、さらに開始剤量の尺度である、 {−100ln(1−転化率×10-2)}2 を算出した。この結果を第6表(a)及び第6図(a)
に示す。
以上の操作とは別に、試料αのキシレン溶液の残り20
gを別の試験管に入れ、ここに温度計を入れ、液温が120
℃になるように調節しながら、加熱装置にて加熱した。
温度が一定になってから第1回のサンプリングをした。
この時間を基点(t=0)とし、以後数回のサンプリン
グをした。
この数点のサンプルについて、90℃にて行った熱分解
実験と同様に重合を行い、重量法により、転化率等を求
めた。この結果を第6表(b)及び第6図(b)に示
す。
第6図(a)の測定点の傾きから、90℃における半減
期は4.6×102分、第6図(b)の測定点の傾きから、12
0℃における半減期は3.3×10分と求められた。
重合例 還流冷却器、撹拌羽根、滴下漏斗及び温度計を取り付
けたた500mlのセパラブルフラスコに、メタクリル酸ブ
チル100gと、トルエン100gとを仕込んだ。撹拌を行いな
がら、還流温度まで熱し、約10分間還流を続けて空気を
追い出した。
浴の温度を少し下げて、還流を穏やかにしてから、試
料αの50重量%のトルエン溶液10gを滴下漏斗より一度
に加えた。間もなく発熱が始まり、液温は117℃から最
高で121℃にまでなった。この状態で4時間重合を続け
た。最終的には液温は118℃であった。
重合物溶液の収量は204.4g、固形分濃度は51.1重量%
であり、固形分重量は104.4g、うち4.7gを開始剤由来と
考えて、モノマー転化率を99.7%と算出した。
このような重合は、重合開始剤の存在なくしては起こ
らないことである。ゲル浸透クロマトグラフィ(ポリス
チレン標準試料によって検量線作成)によって重合物の
分子量を測定したところ、Mwが1.36×105、Mnが4.8×10
4、Mw/Mnは2.8であった。
得られた重合物溶液10gに対し、ジブチル錫ジアセテ
ート0.02gを混合し、離型紙の上に滴下した。これを常
温の空気中に18時間さらした後、100℃のオーブン中で
3時間加熱し、溶剤の乾燥及び硬化を行った。得られた
硬化物の一部をテトラヒドロフランに浸し、可溶分の浸
出を行ったところ、不溶分の割合は91.8重量%であっ
た。
このような硬化特性は、重合体への官能基導入がなさ
れない限り、従来より用いられている単なる重合開始剤
で重合した生成物においては発現され得ないものであ
る。
試験結果のまとめ 以上の諸分析により、試料αは本質的に化合物(Ia)
からなることが示された。また重合例より、このもの
は、単量体の重合を開始する能力を持つとともに、重合
体に架橋性を付与する性質を持つことが示された。
〔発明の効果〕
以上のように、本発明によれば、ラジカル重合開始剤
として使用することにより、空気中等の水分の作用によ
って不溶分率の高い架橋体を構成し得る重合体組成物を
得ることが可能なアルコキシシリル基含有アゾ化合物が
提供される。そして、本発明のアルコキシシリル基含有
アゾ化合物を重合開始剤として用いて得られた重合体組
成物は、塗料、変性シリコーン型シーリング材、架橋型
粘着剤または反応型接着剤等に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、試料αをベンゼンに溶解して行った凝固点降
下を示す図であり、横軸は試料αの濃度(重量分率)、
縦軸は凝固点(℃)である。第2図は液体クロマトグラ
フィによる分析結果を示す図であり、横軸は流出時刻
(注入時点をt=0とする)、縦軸は流出液の屈折率
(相対値)であり、図中、実線は試料αのもの(注入量
0.525mg)、破線は物質(IIa)のもの(注入量0.230mg
=1×10-6モル)、一点鎖線は物質(IIIa)のもの(注
入量0.358mg=2×10-6モル)をそれぞれ示す。第3図
は、紫外吸光分析結果を示す図であり、横軸は波長(n
m)、縦軸は吸光度及びモル吸光係数であり、図中、実
線は試料αのもの(濃度2.62g/l)、破線は物質(IIa)
のもの(濃度1.15g/l=0.005モル/l)、二点鎖線は物質
(V)のもの(濃度1.44g/l=0.005モル/l)であり、何
れもエタノール溶液における測定結果を示す。第4図
は、試料αの赤外吸光分析の結果を示す図であり、横軸
は波数(cm-1)、縦軸は透過率(5%)である。第5図
は、試料αに関するH−核磁気共鳴吸収分析の結果を示
す図であり、横軸はテトラメチルシランからの化学シフ
トである。第6図は、半減期の測定結果を示し、(a)
は90℃における、(b)は120℃における分解の様子を
それぞれ示し、横軸は経過時間を、縦軸は開始剤残留濃
度に比例する値{−100ln(1−転化率×10-2)}2を示
す。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の一般式(I)で示されることを特徴
    とするアルコキシシリル基含有アゾ化合物 (式(I)において、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、
    炭素数が4以下のアルキル基、2個のQは、それぞれ下
    記の一般式(IV)で示される1価の基であり、 式(IV)において、nは1〜3の整数、R5は炭素数が3
    以下のアルキル基であり、それぞれは同種であってもよ
    く、異種であってもよく、R6は炭素数が4以下の2価の
    飽和炭化水素基、Xは炭素数が3以下のアルコキシ基で
    ある。)。 XnR5 3-nSi−R6− …(IV)
  2. 【請求項2】請求項1に記載の一般式(I)で示される
    アルコキシシリル基含有アゾ化合物の製造方法であっ
    て、下記の一般式(II)で示される、エステル基含有ア
    ゾ化合物またはアミド基含有アゾ化合物の1分子と、下
    記の一般式(III)で示されるアルコキシシリル基含有
    第一アミンの2分子とが、一般式(II)で示される2個
    のX′と、一般式(III)で示されるHの2個(それぞ
    れの分子から1個)とを脱離すると共に、互いに結合し
    て1分子となる反応を、金属アルコキシドの共存下にお
    いて起こさせることを特徴とする、アルコキシシリル基
    含有アゾ化合物の製造方法 (一般式(II)において、R1、R2、R3及びR4のそれぞれ
    は、炭素数が4以下のアルキル基、2個のX′のそれぞ
    れは、アルコール、アンモニア、第一アミンまたは第二
    アミンのうち、常圧における沸点が85℃以下のものから
    活性水素1個を除いた残基、 一般式(III)において、nは1〜3の整数、R5は炭素
    数が3以下のアルキル基であり、それぞれは同種であっ
    てもよく、異種であってもよく、R6は炭素数が4以下の
    2価の飽和炭化水素基、Xは炭素数が3以下のアルコキ
    シ基である。)。 XnR5 3-nSi−R6−NH2 …(III)
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