JP2509721B2 - 鋏特に理髪師用鋏 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、長い柄と、この長い柄に設けられた指環
と、短い柄と、この短い柄に設けられた揺動可能な指環
とを備え、揺動可能な指環が鋏の中心線に対して傾斜し
た軸線の回りに揺動可能に配置されている鋏、特に理髪
師用鋏に関する。

このような鋏は公知である。この鋏は、可動の鋏半部
の指環が固定配置されている鋏と比べて、親指を挿入す
る際に指環の内面が親指に充分に接触し、鋏を操作する
ときにこの接触状態が続くという利点がある。これによ
り、鋏を長時間継続して使用する場合でも、親指に押圧
力が発生せず、手首の関節のけいれんが回避される。

公知の鋏（特公昭58−6515号公報）の場合には、揺動
可能な指環は、親指を指環に挿入する際指環が親指に充
分接触するように、合成樹脂製柄環の溝に支持されてい
る。その際、柄環は中空シリンダ状の延長部を備え、こ
の延長部によって、柄環は可動の鋏半部の柄に固定装着
される。

このような鋏は、次のような重要な欠点がある。鋏を
使用しているうちに、二叉状の柄環が徐々に拡がり、柄
環内での指環の申し分のない支承がもはや保証されなく
なることが判った。更に、指環を揺動可能に支承してい
る柄環の周方向の範囲が短すぎるため、指環の揺動時
に、親指が柄環の半径方向内側縁部と摩擦することにな
る。これは、理髪師用鋏を長時間持続して使用するとき
に、非常に不快である。

柄環の溝内で揺動可能な指環を案内することは必ず必
要である。なぜなら、もしそうしないと、指環が360゜
揺動するからである。これは、理髪師用鋏の場合には次
のような欠点を有する。理髪師は短い時間間隔をおいて
鋏と櫛を交互に使用する作業のときに、親指、人指し指
および中指で櫛を持って操作できるようにするために、
鋏を薬指だけで保持する。櫛を使用した後で、指環を先
ず親指に合わせて、親指を揺動可能な指環に挿入するこ
とは困難である。揺動可能な指環がその外周に球状ヘッ
ドを備えていてもこの欠点を除去することはできない。

他の公知の理髪師用鋏（特開昭56−3089号明細書）の
場合には、可動の指環に設けられた球状ヘッドが可撓性
材料からなるリングによって、凹所状の受け座に保持さ
れている。この場合、受け座は柄に装着された円筒状延
長部材に一体に成形されている。揺動可能な指環は、柄
環を備えておらず、そしてあらゆる方向に容易に揺動可
能である。あらゆる方向に揺動可能であると、指環が親
指のあらゆる運動に追従し、人間工学的に望ましいよう
に思われるがしかし、実際には不利であることが判っ
た。なぜなら、指環があらゆる方向に揺動可能である
と、例えば理髪師が必要とするよう迅速で精密な鋏操作
時に、親指が操縦方向と異なる方向に動いてしまい、親
指で鋏を操縦することができず、かついろいろな姿勢に
保持することができないので、全体として鋏のコントロ
ールが困難になるからである。

更に、鋏の操作時に指環が可撓性リングに抗して絶え
ず揺動することにより、ほんの短い期間使用した後で、
指環の軸受部に遊びやガタツキが生じ、鋏のコントロー
ルに悪影響をもたらす。従って、可撓性リングを頻繁に
交換しなければならない。

更に、球ヘッド用の円筒状受け座が柄の太さよりも太
く、厚いので、鋏の操作時に、指環に挿入された親指が
この受け座に接触し、邪魔になり、不快である。更に、
この球ヘッドと円筒状受け座の形が一般的な鋏の形から
逸脱し、不恰好である。そのため、この公知の鋏は、一
般的な鋏と比べて利点があるにもかかわらず、ほとんど
の理髪師に使用されなかった。不恰好な形状は、理髪師
に、鋏が比較的に重く、使用しにくいという印象を与え
る。

本発明の課題は、理髪師用鋏の一般的な形を充分に維
持しつつ、冒頭に述べた種類の鋏の可動の鋏半部の、親
指を入れる可動の指環の軸承を改善し、かつ簡単にする
ことである。

この課題は請求項１に従い、柄環が短い柄に取付けら
れ、柄環がその内側に取付けられた２本のピンを備え、
このピンが鋏の中心線に対して傾斜した軸線に沿って配
置され、かつ揺動可能な指環の穴に係合していることに
よって解決される。

この場合、指環は、特開昭56−3089号明細書記載の鋏
のようにあらゆる方向に揺動しないで、ピンの回りにの
み揺動する。そのため、指環の可動性が、特開昭56−30
89号明細書の場合よりも制限されるが、驚くべきこと
に、指環の支承が鋏の使用者の手と調和するというだけ
でなく、鋏のあらゆる姿勢でかつ迅速および精密な鋏操
作のときにも、鋏の最適なコントロールを可能にすると
いうことが判った。

可動の指環を本発明に従って配置および支承すると、
鋏半部自体を一体に製作することができ、そして指環の
支承部の太さまたは厚さが薄いので、一般的な理髪師用
鋏の形状が維持されるという利点がある。さらに、指環
がきわめて簡単でかつ長期間にわたって確実に支承さ
れ、鋏の操作時に親指が指環以外の部分に接触しないと
いう利点がある。

揺動可能な指環の揺動角度の制限は、指環の壁が柄環
の壁よりも幅が広くなっていることによって簡単に達成
され、これにより、指環は揺動の終りに柄環の内壁に当
接する。指環の揺動角度は、人間工学的に最適である、
鋏の操作に必要な範囲に制限されると共に、指環への親
指の挿入を容易にするよう制限される。

本発明の課題は更に、請求項３に従い、長い柄の方へ
向いている、短い柄の端部の曲げ部に、鋏の中心線に対
して30゜〜60゜の角度で斜めに延びる穴が設けられ、揺
動可能な指環に取付けられたピンが、前記穴に挿入さ
れ、かつ不意に外れないようにばね座金によって保持さ
れ、指環の揺動角度を制限するためのストッパーが、短
い柄の端部と指環との間に設けられていることによって
も解決される。

この鋏は、前記の請求項１記載の解決手段と同様に、
ピンの回りにのみ揺動するので、指環の支承が鋏の使用
者の手と調和するというだけでなく、鋏のあらゆる姿勢
でかつ迅速および精密な鋏操作のときにも、鋏の最適な
コントロールを可能にするという利点がある。更に、指
環は長期間にわたって確実に支承され、かつ支承部の構
造がきめめて簡単であるという利点がある。

この鋏は更に、可動の鋏半部に指環が直接連結されて
おり、柄環を備えていないので、鋏半部の構造が非常に
簡単であると共に、鋏の操作時に親指が指環以外の部分
に接触しない。更に、揺動可能な指環のピンが柄の穴に
取り外し可能に支持されているので、大きな親指または
小さな親指に合わせるための、揺動可能な指環の交換
も、ばね座金を外して再び固定することによって非常に
容易である。

更に、指環の支承部の太さまたは厚さが薄いので、一
般的な理髪師用鋏の形状が維持されるという利点があ
る。

鋏中心線に対する、揺動可能な指環の傾斜軸線の角度
は、好ましくは53゜である。短い柄の中心線と揺動可能
な指環の傾斜軸線との間の角度は、５゜〜30゜である。
この角度は、柄の開置角度が小さくなると、大きくな
る。

更に、指環の揺動角度が短い柄の端部と指環との間に
設けられたストッパーによって制限されるので、指環の
揺動角度を、人間工学的に最適である、鋏の操作に必要
な角度に、かつ指環への親指の挿入を容易にするよう制
限することができる。

傾斜した縁を有する突起が指環に設けられ、指環を50
゜だけ揺動させた後で、突起の縁が柄の他方の縁に当接
するように、ほぼ真っ直ぐな縁が柄の曲げ部の端部に設
けられていると有利である。０から約50゜までの人間工
学的に望ましい揺動角度に、可動の指環の揺動角度を制
限するための他の有利な実施形の場合には、指環がピン
の隣かつ曲げ部の端部に対向した突起を備え、柄が指環
寄りの曲げ部の側に突起を備えている。この場合、突起
は互いに向き合った側またはピン寄りの側に、約50゜の
揺動角度を許すようにほぼ真っ直ぐな縁を備えている。
この形状は例えば指環と短い柄の端部の互いに対向する
面をフライス加工することによって簡単に作ることがで
きる。

以下、本発明の前述の詳細および他の詳細を、図に基
づいて詳しく説明する。

第１図は閉じた理髪師用鋏の正面図、 第２図は第１図の鋏の側面図、 第３図は理髪師用鋏が開いたときの、親指を挿入した
位置にある可動の指環を有する柄環を示す図、 第４図は第１図のIV−IV線に沿った拡大断面図、 第５図は第１図と類似していて柄環を持たない理髪師
用鋏の簡単な実施例を示す図、 第６図は第５図のＢ部分の拡大図、 第７図は第６図の矢印Ｃ方向からＢ部分を見た図、 第８図は第６図の図示部分を変形した、第５図のＤ部
分の拡大図、 第９図は第８図のIX−IX線に沿った断面図である。

第１〜４図に示した理髪師用鋏は、鋏の使用時に動か
ない鋏半部１と可動の鋏半部４とからなっている。動か
ない鋏半部１は柄２を備え、この柄は指支持部23を有す
る指環３を備えている。可動の鋏半部４は揺動可能な指
環５を備えている。鋏半部1,4は枢着ねじ６によって互
いに連結されている。可動の鋏半部４の柄７には、柄７
と一体の柄環８が設けられ、この柄環内には揺動可能な
指環５が支持されている。指環５は柄環８の長手方向中
心軸線の両側で柄環の内壁に固定配置された２本のピン
9,10によって支持されている。このピンは、親指を指環
に差し込んだ後理髪師用鋏を開放するときに指環５の内
面が親指に充分に接触するように、互いに斜めに配置さ
れている。指環５の壁は、揺動を制限するために、柄環
８の壁よりも少しだけ広くなっている（第２図と第４
図）。

第５〜７図に示した理髪師用鋏は、鋏の使用時に動か
ない鋏半部11と、親指によって動く鋏半部14とからなっ
ている。動かない鋏半部11は柄12を備え、この柄は指支
持部24を有する指環13を備えている。可動の鋏半部14は
揺動可能な指環15を備えている。鋏半部11,14は枢着ね
じ16によって互いに連結されている。可動の鋏半部14の
柄17はその端部25に、他方の鋏半部11の柄12の方へ曲が
った曲げ部28を有する。この曲げ部28はピン21（第６
図）のための孔26を備えている。ピンの端部20は指環15
のねじ穴27にしっかりとねじ込まれている。ピン21は鋏
中心線Ｍに対して、30゜〜60゜、好ましくは53゜の角度
Ａをなしている。ピン21を指環15のねじ穴27にねじ込ん
だ後、合成樹脂製のスリーブ18がピン21の外面に嵌め込
まれ、そして穴26に挿入した後、ピン21は不意に外れな
いようにばね座金19によって柄17の端部25に保持され
る。曲げ部28の柄12側には弾性的な緩衝材22が取付けら
れている。この緩衝材は柄12,17相互の金属的な当接を
防止する。指環15に設けられた突起29の縁30と曲げ部28
の縁31との間には、角張った中間空間32が設けられてい
る。鋏の使用時に第７図に示す中立位置から外へ揺動す
ると、指環15は、ストッパーとしての縁30,31が当接す
るまで、５〜50゜の揺動範囲内でピン21を中心に揺動可
能である。これは人間工学的な観点から最も望ましい範
囲である。揺動角度を制限すると、使用者の親指を指環
15に容易に挿入することができる。なぜなら、親指を挿
入しにくい揺動位置まで、指環15が揺動しないからであ
る。

可動の指環15の揺動角度を０゜から約50゜までの揺動
範囲内に制限するための他の例では、第8,9図に従っ
て、指環15が突起34を備え、柄17が突起33を備えてい
る。突起34はピン21に隣接し、かつ曲げ部28の端部35に
対向している。突起33は指環15に面した曲げ部28の側に
設けられている。これらの突起33,34はピン21に向いた
側に、ストッパーとしてのほぼ真っ直ぐな縁36,37を備
えている。その際、この縁36,37により、指環15と柄17
は約50゜の揺動角Ｅにわたって揺動可能である。真っ直
ぐな縁36,37は簡単な方法、例えばフライス加工によっ
て形成可能である。

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】長い柄および指環と、短い柄および揺動可
   能な指環を備え、揺動可能な指環が鋏の中心線に対して
   傾斜した軸線の回りに揺動可能に配置されている鋏、特
   に理髪師用鋏において、柄環（８）が短い柄（７）に取
   付けられ、柄環（８）がその内側に取付けられた２本の
   ピン（9,10）を備え、このピンが鋏の中心線（Ｍ）に対
   して傾斜した軸線に沿って配置され、かつ揺動可能な指
   環（５）の穴に係合していることを特徴とする鋏。
2. 【請求項２】揺動可能な指環（５）の壁が柄環（８）の
   壁よりも幅が広いことを特徴とする、請求の範囲第１項
   記載の鋏。
3. 【請求項３】長い柄および指環と、短い柄および揺動可
   能な指環を備え、揺動可能な指環が鋏の中心線に対して
   傾斜した軸線の回りに揺動可能に配置されている鋏、特
   に理髪師用鋏において、長い柄（12）の方へ向いてい
   る、短い柄（17）の端部（25）の曲げ部（28）に、鋏の
   中心線（Ｍ）に対して30゜〜60゜の角度で斜めに延びる
   穴（26）が設けられ、揺動可能な指環（15）に取付けら
   れたピン（21）が、前記穴に挿入され、かつ不意に外れ
   ないようにばね座金（19）によって保持され、指環（1
   5）の揺動角度を制限するためのストッパー（30,31;36,
   37）が短い柄（17）の端部と指環（15）の間に設けられ
   ていることを特徴とする鋏。
4. 【請求項４】傾斜した縁（30）を有する突起（29）が指
   環（15）に設けられ、真っ直ぐな縁（31）が柄（17）の
   曲げ部（28）の自由端部（35）に設けられ、指環（15）
   を約50゜だけ揺動させた後で、突起（29）の縁（30）が
   柄（17）の縁（31）に当接するように、縁（30）と縁
   （31）がストッパーとして形成されていることを特徴と
   する、請求の範囲第３項記載の鋏。
5. 【請求項５】傾斜した縁（37）を有する突起（34）がピ
   ン（21）に隣接して指環（15）に設けられ、縁（36）を
   有する突起（33）が柄（17）の曲げ部（28）に設けら
   れ、指環（15）を約50゜だけ揺動させた後で、突起（3
   4）の縁（37）が突起（33）の縁（36）に当接するよう
   に、両縁（37,36）がストッパーとして形成されている
   ことを特徴とする、請求の範囲第３項記載の鋏。