JP2024506840A - 化学ガス曝露を処置する方法 - Google Patents

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Abstract

開示されるのは、それを必要とする対象における化学物質誘導性肺傷害の処置方法であって、対象に、治療有効量のイブジラスト、またはその薬学的塩を投与することを含む、方法である。【選択図】図1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月29日に出願された米国特許仮出願第63/143,750号の利益を主張し、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
イブジラストは、虚血性脳卒中または気管支喘息に関連する症状を和らげるために、日本で広く使われてきた。最近の臨床試験では、中枢神経系の炎症性疾患である、多発性硬化症(MS)の処置におけるその使用が探求されている(News.Medical.Net;Pharmaceutical News、8月2日、2005年)。この刊行物に開示されるように、この臨床試験では、「再発寛解型MS」を処置することが期待されたが、進行性多発性硬化症の記述はない。米国特許第6,395,747号では、イブジラストは、多発性硬化症の処置として開示されており、これは、一般に、進行性多発性硬化症ではなく、再発性および弛張性の多発性硬化症を意味すると理解される。米国特許出願公開第20060160843号は、断続痛および短期疼痛の処置のためのイブジラストを開示しているが、これは進行性神経変性疾患に関連する疼痛ではない。しかしながら、米国特許第9,314,452号は、進行性神経変性疾患である、筋萎縮性側索硬化症の処置としてのイブジラストを開示している。同様に、米国特許第8,138,201号は、一次性進行性多発性硬化症および/または二次性進行性多発性硬化症のための処置としてのイブジラストを開示している。
多くの多様な徴候に対するイブジラストの使用が今日まで報告されている一方、本発明者らの知識が及ぶ限りでは、患者における化学物質誘導性急性肺傷害の処置におけるその使用は、今までほとんど探求されないまま残されている。
一態様では、本明細書に開示されるのは、それを必要とする対象における化学物質誘導性肺傷害の処置方法であって、対象に、治療有効量のイブジラスト、またはその薬学的塩を投与することを含む、から本質的になる、またはからなる、方法である。
いくつかの実施形態では、肺傷害は、塩素、硫黄マスタードガス、ホスゲン、ルイサイト、塩化水素、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、アンモニア、フッ化水素酸、オゾン、イソシアン酸メチル、およびこれらの2つ以上の組み合わせから選択される化学物質によって誘導される。
いくつかの実施形態では、肺傷害は、化学熱傷、肺水腫、喉頭浮腫、肺組織アポトーシス、肺炎、間質性肺炎、気管支炎、細気管支炎、線維症、急性呼吸促迫症候群、呼吸器スパスム、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、経口的に投与される。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、皮下注入により投与される。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、筋肉内注入により投与される。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、吸入により投与される。
いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはそれ以上投与される。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、少なくとも3か月間投与される。
いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、少なくとも1日1回投与される。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、1日2回投与される。
いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、1日当たり0.1mg~720mgである。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、1日当たり30mg~200mgである。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、1日40mg~600mgである。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、1日100mg~480mgである。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、30mg/日、60mg/日、90mg/日、100mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日、および720mg/日からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、治療有効量は、単回用量として投与されるか、または2回、3回もしくは4回の用量に分けられる。いくつかの実施形態では、イブジラストは、連続して投与される。
いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、患者に投与される唯一の活性剤である。いくつかの実施形態では、イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩は、少なくとも1つの他の活性剤と共に患者に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の他の活性剤は、コルチコステロイドを含む、またはからなる。
急性肺傷害ヒツジモデルにおいて試験した、4匹の動物のPaO/FiOの結果を示している(負の対照(対照-N)、正の対照(対照-P)、高MN-166用量、低MN-166用量)。
本開示の実践では、特に明記されない限り、当技術分野における化学、生化学、および薬理学の従来的方法を利用する。そのような技術は、文献に十分に説明されている。例えば;A.L.Lehninger、Biochemistry(Worth Publishers、Inc.、current addition);MorrisonおよびBoyd、Organic Chemistry(Allyn and Bacon、Inc.、current addition);J.March、Advanced Organic Chemistry(McGraw Hill、current addition);Remington:The Science and Practice of Pharmacy、A.Gennaro、Ed.、第20版;FDA’s Orange Book、Goodman & Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J.Griffith Hardman、L.L.Limbird、A.Gilman、第11版、2005年、The Merck Manual、第18版、2007年、ならびにThe Merck Manual of Medical Information 2003を参照されたい。
本明細書に引用される全ての刊行物は、インターネット論文、FDA Orange Book(FDAのウェブサイトで入手可能)、書籍、ハンドブック、雑誌論文、特許および特許出願を含め、上記であろうと下記であろうと、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
定義
本開示を詳細に記述する前に、本開示は、添付の記載から明らかなように、特定の投与方式、患者集団などに限定されることはなく、したがって多様であり得ることを理解されたい。
本明細書および意図される特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「薬物(a drug)」への言及は、単数の薬物と同様に2つ以上の同一または異なる薬物を含み、「任意選択の賦形剤(an optional excipient)」への言及は、単一の任意選択の賦形剤と同様に2つ以上の同一または異なる任意選択の賦形剤などを表す。
本開示を記述し且つ特許請求する際に、以下の用語は、以下に記載の定義に基づいて使用される。
本明細書で使用されるとき、用語「含んでいる(comprising)」または「含む(comprises)」は、組成物および方法が記載された要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することを意図する。「から本質的になる(Consisting essentially of)」は、組成物および方法を定義するために使用されるとき、明示された目的のための組み合わせに対して、本質的に重要な他のあらゆる要素を除外することを意味する。したがって、本明細書に定義された要素から本質的になる組成物は、特許請求された発明の基本的且つ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない他の材料またはステップを除外することはない。「からなる(Consisting of)」は、他の原料の微量を超える元素および実質的な方法ステップを除外することを意味する。これらの移行用語のそれぞれにより定義される実施形態は、本発明の範囲内である。ある実施形態が、これらの用語(例えば、「含んでいる(comprising)」)の内の1つにより定義されるとき、本開示はまた、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」など、前記実施形態の代替的実施形態を含むことを理解されたい。
「薬学的に許容される賦形剤または担体」は、本開示の組成物に任意選択で含まれてもよく、且つ患者に対して著しく有害な毒性的作用を起こさない賦形剤を表す。
「薬学的に許容される塩」は、アミノ酸塩、例えば塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物、および硝酸塩などの無機酸を用いて調製された塩、または例えば塩酸塩などの先行するいずれかの対応する無機酸形態から調製された塩、またはリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩、サリチル酸塩およびステアリン酸塩などの有機酸を用いて調製された塩、同様にエストレート、グルセプト酸塩およびラクトビオン酸塩を含むが、これらに限定されない。同様に、薬学的に許容されるカチオンを含有する塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(置換アンモニウムを含む)を含むが、これらに限定されない。
本明細書に記載される「活性分子」または「活性剤」は、in-vivoまたはin vitroで実証され得る薬理学的な、しばしば有益な効果をもたらす物質または混合物の任意の薬剤、薬物、化合物、組成物を含む。これには、食物、栄養補充物質、栄養分、栄養補助食品、薬物、ワクチン、抗体、ビタミン、および他の有益な薬剤が含まれる。本明細書で使用されるとき、該用語は、患者に局在的または全身的な効果をもたらす、任意の生理学的または薬理学な活性物質をさらに含む。特定の実施形態では、活性分子または活性剤は、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩を含み得る。
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ全てまたは完全に、例えば、ある所与の量の95%以上を意味する。
「任意選択の」または「任意選択で」は、それに続いて記載された状況が起こるかもしれず、または起こらないかもしれず、その結果、該記述は、その状況が起きる場合および起きない場合を含むことを意味する。
用語「対象」、「個体」または「患者」は本明細書で互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳類を表す。哺乳類は、マウス、げっ歯類、ラット、サル、ヒト、家畜、イヌ、ネコ、競技用動物およびペットを含むが、これらに限定されない。
本明細書で提供されるとき、組成物または薬剤の「薬理学的有効量」または「治療有効量」という用語は、無毒性であるが、化学物質誘導性肺傷害の低減または回復などの所望の応答をもたらすのに十分な組成物または薬剤の量を表す。必要とされる的確な量は、対象の人種、年齢、および全身状態、処置される状態の重症度、利用される特定の薬物または複数の薬物、投与様式などに応じて対象により変動する。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、本明細書に提供される情報に基づいて、通例の試験を使用して当業者により決定され得る。
用語「約」は、当業者により理解され、且つそれが使用される文脈に応じてある程度変化する。当業者にとって明確ではない用語の使用がある場合、それが使用される文脈を所与として、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、それは、特定の用語のプラスまたはマイナス5%を意味する。特定の範囲は、用語「約」が先行する数値で本明細書に提示されている。用語「約」は、それが先行する厳密な数字、同様に該用語が先行する数字に近いかまたは近似する数字を文字通り支持するために本明細書において使用される。ある数字が、詳細に記載された数字に近いかまたは近似するかどうかを決定する際に、記載されていない近いかまたは近似する数字は、それが提示されている文脈において、詳細に記載された数字の実質的な均等物を規定する数字であってもよい。
本明細書で使用されるとき、用語「処置」または「処置すること」は、患者における状態または関連障害の任意の処置を意味し、状態または関連障害を阻止すること、すなわち化学熱傷、肺水腫、喉頭浮腫、肺組織アポトーシス、肺炎、間質性肺炎、気管支炎、細気管支炎、線維症、急性呼吸促迫症候群、呼吸器スパスム、もしくはこれらの2つ以上の組み合わせなどの臨床症状の発達を停止もしくは抑制すること、および/または状態もしくは関連障害を和らげること、すなわち臨床症状の軽減を起こすことを含む。
いくつかの態様では、処置することという用語は、肺傷害および症状の発達後のイブジラストの遅延投与による、臨床転帰における改善を表す。用語「臨床転帰」は、治療に対する患者の反応に関する任意の臨床所見または測定値を表す。臨床転帰の非限定的な例として、治療に対して反応する患者における、肺胞炎症、肺水腫、肺組織アポトーシス、肺組織壊死、気道破壊(destruction)、またはその任意の組み合わせの臨床所見または測定値が含まれる。
本開示の他の目的、特色および利点は、以下の詳細な説明から明白となるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本開示の特定の実施形態を示している一方、この詳細な説明から、本開示の趣旨および範囲内における様々な変更および修正の形態が当業者にとって明白であるため、例示のみとして示されていることを理解されたい。
本開示の方法は、イブジラスト分子の投与に基づく。イブジラストは、以下に示す構造を有する小分子薬(分子量230.3)である。
イブジラストはまた、ChemBank ID 3227、CAS # 50847-11-5、およびBeilstein Handbook Reference No.5-24-03-00396にも見出される。その分子式は、C1418Oに相当する。イブジラストはまた、2-メチル-1-(2-(1-メチルエチル)ピラゾロ(1,5-a)ピリジン-3-イル)1-プロパノン;3-イソブチリル-2-イソプロピルピラゾロ(1,5-a)ピリジン;および1-(2-イソプロピル-ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)-2-メチル-プロパン-1-オンを含む様々な化学名によっても公知である。イブジラストに対する他の同義語として、イブジラスツム(Latin)、BRN 0656579、KC-404、およびMN-166が含まれる。その商品名はKetas(登録商標)である。イブジラストは、本明細書で言及されるとき、投与用のその意図される製剤における使用に適切なように、任意のおよび全ての薬学的に許容されるその塩形態、プロドラッグ形態(例えば、対応するケタール、オキシム、オキシム誘導体、ヒドラゾン、またはセミカルバゾン)、溶媒和物などを含むことが意図される。
イブジラストは、また、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)3A、4、10A1および11A1の選択的阻害剤でもあり(Gibsonら、Eur J Pharmacol 538:39~42ページ、2006年)、トール様受容体4(TLR4)アンタゴニスト活性を有し(Yangら、Cell Death and Disease(2016年)7、e2234;doi:10.1038/cddis.2016.140)、ロイコトリエンD4およびPAFアンタゴニスト活性を有することも報告されている。そのプロファイルは、他のPDE阻害剤および抗炎症剤と比較して、効果的に抗炎症性であり独特と思われる。PDEは、3’炭素上のリン酸エステル結合の加水分解を触媒して、対応する5’-ヌクレオチド一リン酸を生じる。したがって、PDEは、環状ヌクレオチドの細胞濃度を調節する。多くのホルモンおよび神経伝達物質に対する細胞外受容体は、環状ヌクレオチドを二次メッセンジャーとして利用するため、PDEはまた、これらの細胞外シグナルに対する細胞応答も調節する。少なくとも8種類のPDEがある:Ca2+/カルモデュリン依存性PDE(PDE1);cGMP刺激性PDE(PDE2);cGMP阻害性PDE(PDE3);cAMP特異的PDE(PDE4);cGMP結合性PDE(PDE5);光受容体PDE(PDE6);高親和性、cAMP特異的PDE(PDE7);および高親和性cGMP特異的PDE(PDE9)。イブジラストは、炎症細胞(例えば、膠細胞)に対する作用を介して炎症を抑制するように作用し、炎症促進性媒介物および向神経活性媒介物の放出の両方の抑制をもたらす。イブジラストはまた、炎症促進性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)の産生も抑制し得、且つ抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10)の産生を増強し得る。前述のものに関する参照文献は、以下の:Obernolte、R.ら、(1993年)「The cDNA of a human lymphocyte cyclic-AMP phosphodiesterase(PDE IV) reveals a multigene family」Gene 129: 239~247ページ;Rile、G.ら、(2001年)「Potentiation of ibudilast inhibition of platelet aggregation in the presence of endothelial cells」Thromb.Res.102:239~246ページ;Souness、J.E.ら、(1994年)「Possible role of cyclic AMP phosphodiesterases in the actions of ibudilast on eosinophil thromboxane generation and airways smooth muscle tone」Br.J.Pharmacol.111:1081~1088ページ;Suzumura、A.ら、(1999年)「Ibudilast suppresses TNF.alpha.production by glial cells functioning mainly as type III phosphodiesterase inhibitor in CNS」Brain Res.837:203~212ページ;Takuma、K.ら、(2001年)「Ibudilast attenuates astrocyte apoptosis via cyclic GMP signaling pathway in an in vitro reperfusion model」Br.J.Pharmacol.133:841~848ページを含む。CNSのがんの処置に関して、イブジラストは良好なCNS浸透を呈する。(Sanftnerら、Xenobiotica 2009年、39:964~977ページ)。
イブジラストはまた、マクロファージ阻止因子(MIF)のp-ヒドキシフェニルピルベート(hydoxyphenylpyruvate)(HPP)トートメラーゼ活性のアロステリック阻害剤であり(Choら、PNAS-USA、2010年6月 107:11313~8ページ)、それにより、MIFの触媒および化学走性機能を阻害する。イブジラストはまたMIFの血漿レベルを低下させることが本発明者らによって予想外に見出された。MIFのアロステリック阻害と血漿中のMIF濃度の間の公知の関連は存在しないため、MIF血漿レベルのそのような減少は予想外である。しかしながら、MIFは、CD44またはケモカイン受容体CXCR2およびCXCR4との複合体においてCD74の活性化を介して細胞内シグナル伝達に関与するため、イブジラストによるMIF阻害およびMIF血漿レベルの減少の両方が、MIFの炎症促進作用を最小限にすることができる。
前述のように、任意の1つまたは複数の本明細書に記載の薬物、詳細にはイブジラストへの言及は、適用可能な場合、任意のおよび全てのエナンチオマー、ラセミ混合物を含むエナンチオマーの混合物、プロドラッグ、薬学的に許容される塩形態、水和物(例えば、一水和物、二水和物など)、溶媒和物、異なる物理的形態(例えば、結晶化固体、非晶質固体)、代謝物などを包含することが意図される。
処置および投与方法
上に明示したように、一態様では、本開示は、それを必要とする対象における化学物質誘導性肺傷害の処置方法であって、対象に、治療有効量のイブジラスト、またはその薬学的塩を投与することを含む、から本質的になる、またはからなる、方法に関する。そのような投与は、対象における化学物質誘導性肺傷害を減弱または逆行させることに効果的である。肺傷害は、化学熱傷、肺水腫、喉頭浮腫、肺組織アポトーシス、肺炎、間質性肺炎、気管支炎、細気管支炎、線維症、急性呼吸促迫症候群、呼吸器スパスム、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含むまたはからなる。
いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1日約0.1mg~720mg、1日約30mg~200mg、1日約40mg~600mg、または1日約100mg~480mgの範囲の1日投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、対象におけるマクロファージ遊走性阻止因子の血漿レベルの減少は、イブジラストの初回用量が投与された後12時間以内に観察される。いくつかの実施形態では、対象におけるマクロファージ遊走性阻止因子の血漿レベルの減少は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間、イブジラストの投与後12時間以内に観察される。
イブジラスト投与は、製剤を含むイブジラストの様々な送達様式を介して達成されてもよい。イブジラストをベースとする治療製剤の好ましい送達方法として、全身的および局在的な送達が含まれる。そのような投与経路として、経口、動脈内、髄腔内、脊髄内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、および吸入の経路が含まれるが、これらに限定されない。
より詳細には、本開示のイブジラストをベースとする製剤は、経口、直腸内、経鼻、局所的(経皮、エアロゾル、バッカルおよび舌下を含む)、腟内、腸管外(皮下、静脈内、筋肉内、および皮内を含む)、髄腔内、ならびに肺を限定されることなく含む、任意の好適な経路により治療用に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、イブジラストをベースとする製剤は、経口的に投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストをベースとする製剤は、注入を介して投与される。好ましい経路は、当然のことながら、受容者の状態および年齢、処置される特定の症候群、ならびに利用される薬物の特定の組み合わせに応じて変化する。
いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、経口的に投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、注入を介して投与される。
本開示のイブジラスト組成物は、2種以上の活性剤を含むとき、イブジラストと、少なくとも1種の付加的な活性剤との組み合わせを含む単一の組み合わせ組成物として投与されてもよい。患者コンプライアンスおよび投与の容易さに関して、患者は、複数の丸剤または剤形を、しばしば1日複数回、処置の持続期間にわたり摂取することを好まないことが多いため、そのような手法が好ましい。あるいは、本開示の組み合わせは、別々の剤形として投与される。本開示の治療組成物を含む薬物が別々の剤形として投与され且つ同時投与が必要とされる場合には、イブジラストおよび付加的な活性剤のそれぞれは、同時に、任意の順序で連続して、または別々に投与されてもよい。
投薬量
治療量は経験的に決定され得、且つ処置される特定の状態、対象、ならびに組成物に含有されるそれぞれの活性剤の有効性および毒性に応じて変化する。投与される実際の用量は、対象の年齢、体重、および全身状態、同様に処置される状態の重症度、医療専門家の判断、ならびに投与される特定の組み合わせに応じて変化する。
治療有効量は、当業者により決定され得、それぞれの特定の場合の必要条件に調節される。一般に、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、約0.1mg/日~720mg/日、約40~600mg/日、もしくは約100~480mg/日の合計1日投薬量の範囲で、またはより好ましくは、約1~240mg/日、約30~240mg/日、約30~200mg/日、約30~120mg/日、約1~120mg/日、約50~150mg/日、約60~150mg/日、約60~120mg/日、もしくは約60~100mg/日の間の量で、単回投薬量としてまたは複数回投薬量としてのいずれかで投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、約30~200mg/日で、単回投薬量としてまたは複数回投薬量としてのいずれかで投与される。いくつかの実施形態では、複数回投薬量は、1日当たり2回、3回、または4回の用量を含む。
好ましい投薬量として、約20mgを超えるBIDまたはTIDの投薬量が含まれる。すなわち、好ましい投薬量は、約30mg/日、60mg/日、90mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日、および720mg/日以上より多い。
いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、少なくとも30mg/日、少なくとも40mg/日、少なくとも50mg/日、少なくとも60mg/日、少なくとも70mg/日、少なくとも80mg/日、少なくとも90mg/日、少なくとも100mg/日、少なくとも110mg/日、少なくとも120mg/日、少なくとも130mg/日、少なくとも140mg/日、少なくとも150mg/日、少なくとも160mg/日、少なくとも170mg/日、少なくとも180mg/日、少なくとも190mg/日、少なくとも200mg/日、少なくとも225mg/日、少なくとも250mg/日、少なくとも275mg/日、少なくとも300mg/日、少なくとも325mg/日、少なくとも350mg/日、少なくとも375mg/日、少なくとも400mg/日、少なくとも425mg/日、少なくとも450mg/日、少なくとも475mg/日、少なくとも500mg/日、少なくとも525mg/日、少なくとも550mg/日、少なくとも575mg/日、少なくとも600mg/日、少なくとも625mg/日、少なくとも650mg/日、少なくとも675mg/日、少なくとも700mg/日、または少なくとも720mg/日である。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、少なくとも60mg/日である。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩の治療有効量は、少なくとも100mg/日である。
投薬量および処置される正確な状態に応じて、投与は、1日に1回、2回、3回、または4回であり得、1日から数日間、数週間、数か月間、および数年間にさえわたるコースの間、ならびに患者の生存期間でさえあり得る。例示的な投与レジメンは、少なくとも約1週間、約1~4週間、1~3か月間、1~6か月間、1~52週間、1~24か月間、またはより長い期間持続する。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、3か月以下の間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、少なくとも3か月間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、少なくとも6か月間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12か月間、またはそれよりも長期間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年間、またはそれよりも長期間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、少なくとも1年間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、少なくとも2年間投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1回限りの単回投与として投与される。
いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1日当たり単回投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1日当たり2回投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1日当たり3回投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1日当たり4回投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、治療有効量のイブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、連続して投与される。
いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、少なくとも1日1回投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、少なくとも1日2回投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、1日2回投与される。
実際的見地から言えば、単位用量の本開示の任意の所与の組成物または活性剤は、臨床医の判断、患者の必要性などに応じて、種々の投与スケジュールで投与され得る。特定の投与スケジュールは、当業者に公知であるか、または通例の方法を試験的に使用して決定され得る。例示的投与スケジュールとして、限定されることなく、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、1日置き、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回などの投与が含まれる。
製剤
イブジラストは、1つまたは複数の以下に記載の付加的な成分を任意選択で含有してもよい製剤の組成物で投与されてもよい。
賦形剤/担体
イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩に加えて、本開示の組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含んでもよい。例示的な賦形剤として、限定されることなく、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG 400、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、水素化ヒマシ油(HCO)、クレモホール、炭水化物、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン)、無機塩類、抗菌剤、抗酸化剤、結合剤/充填剤、界面活性剤、滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウム)、タルクなどの流動促進剤、崩壊剤、希釈剤、緩衝剤、酸、塩基、フィルムコート、これらの組み合わせなどが含まれる。
本開示の組成物は、糖、例えばアルジトール、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーなどの糖誘導体などの1つまたは複数の炭水化物を含んでもよい。特定の炭水化物賦形剤として、例えば:フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖類;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類;およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールが含まれる。
本開示の組成物における使用に好適なものはまた、ナトリウムデンプングリコレートおよび直接圧縮可能な加工デンプンなどのジャガイモおよびトウモロコシをベースとするデンプンである。
さらに代表的な賦形剤として、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム一塩基酸、リン酸ナトリウム二塩基酸、およびこれらの組み合わせなどの無機塩または緩衝剤が含まれる。
本開示の組成物はまた、1つまたは複数の抗酸化剤を含有してもよい。抗酸化剤は、酸化を防止するために使用され、それにより、薬物(複数可)または他の調製成分の劣化を防止する。本開示における使用に好適な抗酸化剤として、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせが含まれる。
付加的な例示的賦形剤として、例えば「Tween20」および「Tween80」のようなポリソルベート、ならびにF68およびF88などのプルロニック(これらの両方ともBASF、Mount Olive、N.J.から入手可能)などの界面活性剤、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ならびにホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質)、脂肪酸および脂肪エステル、コレステロールなどのステロイド、ならびにEDTAなどのキレート剤、亜鉛および他のこのような好適なカチオンが含まれる。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリエトキシ化ヒマシ油誘導体(例えば、Cremophor EL、Kolliphor ELPなど)を含み得る。他の非限定的な賦形剤として、アルコール(例えば、エタノール)、プロピレングリコール、グリセロール(glyderol)、またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
さらに、本開示の組成物は、1つもしくは複数の酸または塩基を任意選択で含んでもよい。使用され得る酸の非限定的な例として、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるこれらの酸が含まれる。好適な塩基の非限定的な例として、限定されることなく、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が含まれる。
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の役割、活性剤成分の必要投薬量、および組成物の特定の必要性に応じて変化する。典型的には、任意の個々の賦形剤の最適量は、通例の試験を介して、すなわち、多様な量の賦形剤(低分量から高分量の範囲)を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを検討し、次に著しい有害作用を伴うことなく最適な性能が達成される範囲を決定することにより決定される。
しかしながら、一般に、賦形剤は、約1重量%~約99重量%、好ましくは約5重量%~約98重量%、より好ましくは約15重量%~約95重量%の賦形剤の量で組成物中に存在する。一般に、本開示のイブジラスト組成物中に存在する賦形剤の量は、以下から選択される:少なくとも約2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、またはさらに95重量%。
他の賦形剤と共に、これらの前述の医薬賦形剤は、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、第19版、Williams & Williams、(1995年)、「Physician’s Desk Reference」、52.sup.nd 版.、Medical Economics、Montvale、N.J.(1998年)、およびKibbe、A.H.、Handbook of Pharmaceutical Excipients、3.sup.rd 版、American Pharmaceutical Association、Washington、D.C.、2000年に記載されている。
他の活性物質
本開示に基づく製剤(またはキット)は、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩に加えて、1つまたは複数の他の治療活性剤を含有してもよい。
好ましくは、1つまたは複数の他の治療剤は、イブジラストの作用機序とは異なる作用機序を有する治療剤である。そのような有効成分は、FDA’s Orange Book、Goodman & Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J.Griffith Hardman、L.L.Limbird、A.Gilman、第11版、2005年、The Merck Manual、第18版、2007年、およびThe Merck Manual of Medical Information 2003年に列挙されているのを見出すことができる。
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の他の治療活性剤は、1つまたは複数のコルチコステロイドである。コルチコステロイドの非限定的な例として、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、フルオコルトロン、ハロメタゾン、モメタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、酢酸フルプレドニデン、およびフロ酸モメタゾンが含まれる。
上に提供される投薬量は単なる指針を意図するものであり;イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩との併用療法中に投与される第2の活性剤の正確な量は、当然のことながらそれに合うように調節され、且つ対象とする患者集団、処置される特定の症状また状態、投与される活性剤間の潜在的相乗作用などの因子に依存し、本明細書に提供されるガイダンスに基づいて当業者により容易に決定される。
持続性送達製剤
好ましくは、組成物は、安定性を改善し、且つイブジラストまたは薬学的に許容されるその塩の半減期を延長するために製剤化される。例えば、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、制御放出性または延長放出性の製剤で送達されてもよい。制御放出性または延長放出性の製剤は、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩を、担体またはビヒクル中に、例えば、リポソーム、酢酸エチレンビニルコポリマーおよびHytrel(登録商標)コポリマーなどの非吸収性の不透過性ポリマー、ヒドロゲルなどの膨潤性ポリマー、またはコラーゲンなどの吸収性ポリマー、ならびに吸収性縫合糸を作製するために使用されるものなどの特定のポリ酸またはポリエステル中に組み込むことにより調製される。加えて、イブジラストまたは薬学的に許容されるその塩は、カプセル化、微粒子担体に吸着、または関連させることができる。微粒子担体の例として、ポリメチルメタクリレートポリマーから生じるもの、同様にポリ(ラクチド)およびPLGとして公知のポリ(ラクチド-co-グリコリド)から生じる微小粒子が含まれる。例えば、Jefferyら、Pharm.Res.(1993年)10:362~368ページ;およびMcGeeら、J.Microencap.(1996年)を参照されたい。
この目的に好適な延長放出性ポリマーは、当技術分野で公知であり、セルロースエーテルなどの疎水性ポリマーが含まれる。好適なセルロースエーテルの非限定的な例として、エチルセルロース、酢酸セルロースなど;酢酸ポリビニル、ポリアクリル酸エステル、メタクリル酸およびアクリレートのポリマー(pH依存型)などのポリビニルエステル;脂肪酸およびグリセリド、メタクリル酸エステル中性ポリマー、ポリビニルアルコール-無水マレイン酸コポリマーなどの高分子量ポリビニルアルコールおよびワックス;エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー;アミノアルキルメタクリレートコポリマー;ならびにこれらの混合物が含まれる。
送達形態
本明細書に記載されるイブジラストまたは薬学的に許容されるその塩の組成物は、全ての種類の製剤、詳細には、全身的または髄腔内の投与に適した製剤を包含する。経口剤形として、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、シロップ剤、経口懸濁剤、乳剤、顆粒剤、およびペレット剤が含まれる。放出性錠剤である。いくつかの実施形態では、経口剤形はカプセル剤である。いくつかの実施形態では、カプセル剤は延長放出性カプセル剤である。
代替的製剤として、エアゾール剤、経皮吸収型貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、坐剤、散剤、または再構成することが可能な凍結乾燥剤、同様に液体剤が含まれる。例えば注入の前に固体組成物を再構成するのに好適な希釈剤の例として、注入用の静菌水、水中5%のデキストロース、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、生理食塩水、減菌水、脱イオン水、およびこれらの組み合わせが含まれる。液体医薬組成物に関して、溶液剤および懸濁剤が想定される。好ましくは、本開示のイブジラストまたは薬学的に許容されるその塩の組成物は、経口投与に適したものである。
ここで経口送達製剤に注意を向けると、錠剤は、任意選択で1つもしくは複数の副原料または添加剤と共に、圧縮または成形により作製され得る。圧縮錠剤は、例えば、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレート、架橋ポビドン、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)および/または界面活性剤もしくは分散剤と任意選択で混合された、粉末または細粒などの自由流動性形態の有効成分を、好適な打錠機中で圧縮することにより調製される。
成形錠剤は、例えば、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、好適な打錠機中で成形することにより作製される。錠剤は、任意選択でコーティングされるかまたは割線を入れられてもよく、且つ有効成分の低速または制御放出をもたらすために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを所望の放出特性を提供するように多様な割合で使用して、製剤化されてもよい。錠剤は、胃よりはむしろ腸部分で放出をもたらすように、薄膜、糖コーティング、または腸溶コーティングなどのコーティングを用いて任意選択で提供されてもよい。錠剤およびカプセル剤の作製用のプロセス、装置、ならびにトール(toll)の製造業者は、当技術分野で周知である。
口における局所投与のための製剤として、一般にスクロースおよびアカシアなどの着香基剤中に有効成分を含むトローチ剤、またはゼラチンおよびグリセリンもしくはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に有効成分を含むトラガントおよび香錠が含まれる。
局所投与用の医薬組成物はまた、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアゾール剤または油脂として製剤化されてもよい。
あるいは、製剤は、貼付剤(例えば、経皮吸収型貼付剤)、または有効成分および任意選択で1つもしくは複数の賦形剤もしくは希釈剤を含浸させた包帯もしくは絆創膏などの包帯材の形態であってもよい。局所製剤は、皮膚または他の患部を介して、数例を挙げるとジメチルスルホキシド、ビサボロール、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、およびD-リモネンなどの原料の、吸収または浸透を増強する化合物を付加的に含んでもよい。
乳剤に関して、油状相は、公知の原料から公知の方式で構成される。この相が、単に1つの乳化剤(あるいは利尿剤として公知)を含み得る一方、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪および/または油脂の混合物を含むことが望ましい。親水性の乳化剤は、安定剤として作用する親油性の乳化剤と共に含まれることが好ましい。共に、乳化剤(複数可)は、安定剤(複数可)を伴うかまたは伴わず、いわゆる乳化ワックスを構成し、該ワックスは、油脂および/または脂肪と共に、クリーム製剤の油状分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を構成する。例示的な利尿剤および乳化安定剤として、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよび硫酸ラウリルナトリウムが含まれる。
直腸内投与用の製剤は、典型的には、例えばカカオバターまたはサリチレートを含む好適な基剤を用いた坐剤の形態である。
腟内投与に好適な製剤は、一般に、坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤の形態をとる。
経鼻投与に好適な製剤は、担体が固体であり、例えば約20~約500ミクロンの範囲の粒度を有する粗粉末を含む。そのような製剤は、典型的には、例えば鼻の近くに置かれた粉末の容器から、鼻道を介して迅速吸入により投与される。あるいは、経鼻送達用の製剤は、液体、例えば点鼻スプレー剤または点鼻剤の形態であってもよい。
吸入用のエアゾール化製剤は、乾燥粉末形態(例えば、乾燥粉末吸入器による投与に好適)であってもよく、または代替的に、例えば噴霧器に使用される液体形態であってもよい。エアゾール化溶液剤の送達用の噴霧器として、AERx(登録商標)(Aradigm)、Ultravent(登録商標)(Mallinkrodt)、およびAcorn II(登録商標)(Marquest Medical Products)が含まれる。本開示の組成物はまた、例えばクロロフルオロカーボンまたはフルオロカーボンのような薬学的に不活性の液体噴射剤中の、本明細書に記載される薬物の組み合わせの溶液剤または懸濁剤が入れてある、例えばVentolin(登録商標)定量吸入器のような、加圧された定量吸入器(MDI)を使用して送達されてもよい。
非経口投与に好適な製剤として、注入に好適な水性および非水性の等張性無菌溶液剤、同様に水性および非水性の無菌懸濁剤が含まれる。
本開示の非経口的製剤は、例えばアンプルおよびバイアルのような単位用量または複数回用量の密封された容器に任意選択で入れられ、使用直前に注入用に、例えば水のような無菌の液体担体の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)の状態で保管されてもよい。即時調合の注入用の溶液剤および懸濁剤は、既に記載された種類の、無菌の粉剤、顆粒剤および錠剤から調製されてもよい。
本開示の製剤はまた、非持続放出性製剤と比較すると、薬物の各成分が経時的にゆっくりと放出されるかまたは吸収されるような延長放出性製剤であってもよい。持続放出性製剤は、活性剤のプロドラッグ形態、リポソームもしくはポリマーマトリックス、ヒドロゲルなどの遅延放出性の薬物送達系、またはポリエチレングリコールなどのポリマーと活性剤との共有結合を利用してもよい。
詳細には上述の原料に加えて、本開示の製剤は、医薬分野で従来的な、且つ例えば経口投与形態用に利用される特定の種類の製剤のような他の薬剤を任意選択で含んでもよく、経口投与用の組成物はまた、甘味料、増粘剤または着香剤として付加的な薬剤を含んでもよい。
キット
また本明細書に提供されるのは、本開示の少なくとも1種の組成物を含み、使用説明書を伴うキットである。
いくつかの実施形態では、キットは、使用説明書を伴う、本明細書に記載される少なくとも1種の組み合わせ組成物を含有する。例えば、各薬物自体が、個々のまたは別々の剤形として投与される場合には、該キットは、本開示の組成物を構成している各薬物に加えてイブジラストを含み、使用説明書を伴う。薬物成分は、包装が、投与用の説明を伴うと考えると、各薬物成分が投与される方式を明確に示している限り、投与に好適な任意の方式で包装されてもよい。
例えば、イブジラストおよび1つの他の活性剤を含む例示的なキットに関して、該キットは例えば日ごとなどの任意の適切な期間により構成されてもよい。一例として、1日目用に、代表的なキットはイブジラストおよび1つの他の活性剤それぞれの単位投薬量を含み得る。それぞれの薬物が1日2回投与される場合は、キットは、投与タイミングに関する説明書と共に、1日目に対応する、2通りのイブジラストおよび1つの他の活性剤それぞれの単位剤形を含み得る。あるいは、1つまたは複数の薬物が、組み合わせの他の構成薬物と比較して、投与されるタイミングまたは単位剤形の量が異なる場合、それは包装および説明書に反映される。上記に基づく様々な実施形態が容易に想定され得、イブジラストに加えて処置に利用される薬物の特定の組み合わせ、それらの対応する剤形、推奨される投薬量、意図される患者集団などに、当然のことながら依存する。包装は、医薬品の包装に一般に利用される任意の形態であってもよく、異なる色、包装材料、不正開封防止包装、ブリスター包装、防湿剤などの任意の多くの特色を利用してもよい。
本開示は、好ましい特定の実施形態と関連して記載されているが、前述の記載と同様に以下の実施例は、例示することを目的としており、本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点および修正の形態は、本開示に関する当業者には明白であろう。
本出願において述べられた全ての参考文献は、任意の特許、公開された特許出願、書籍、ハンドブック、雑誌刊行物、またはFDA Orange Bookを含めて、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
以下の実施例は、本開示の様々な実施形態を例示する目的で示され、いかなる様式においても本開示を限定することを意図するものではない。当業者は、本開示が、目的を実行し、且つ本明細書で述べた目標および利点、同様に本明細書に固有のこれらの目的、目標および利点を得るようにうまく適合されていることを容易に認識するであろう。本実施例は、本明細書に記載される方法と共に、実施形態の現在の代表例であり且つ例示的なものであり、本開示の範囲の限定を意図するものではない。特許請求の範囲により定義される本開示の趣旨の内に包含される変更および他の使用は、当業者に想到されるであろう。
マウスにおける塩素の有効性研究
この研究の目的は、C57BL/6マウスにおける全身酸素吸入曝露に対するイブジラストの有効性を評価することである。動物を、塩素ガスに575ppm(LD50/7d)で11分間曝露する。群は、以下の表に従って、塩素曝露後1時間目に開始される1日1回のイブジラストを尾静脈注射によって受け(低用量:約4~6mg/kg、中用量:約6~7.5mg/kg、高用量:約7.5~10mg/kg)、7日間毎日継続する。ある群は、PDE4阻害剤(ロリプラム)に曝露され、陽性対照として働く。塩素曝露後24時間目に、動物は、EMKA全身肺機能系を使用する肺機能検査を受け、続いて細胞計数および白血球分画の分析のために洗浄液を収集され、組織病理学分析のために左肺葉を収集される。有効性評価を実施する前に、10匹の動物の一群(以下の表の群0)を、塩素に曝露して、575ppmで11分間の曝露の致死性を検証する。研究のこの部分の最後に、ターミナル手順は実施せずに動物を安楽死させる。
研究設計
合計139匹のC57BL/6マウス(予備を含む)を購入する。動物は、到着時におよそ8~10週齢であり、最短で7日間の検疫を受ける。
塩素の投与後、動物を、最初の4時間にわたって継続的にモニタリングする。この期間中、動物は、外部の騒音(すなわちドアをバタンと閉める音)を最小限に抑えられた曝露施設内に留まる。動物を、最少でさらに3回モニタリングする(塩素の約5~7時間後、塩素の約11~13時間後、および塩素の約17~19時間後)。24時間後、動物を、研究持続期間を通して1日1回モニタリングする。動物を、嗜眠、猫背の姿勢、呼吸促迫、ならびに過度の排尿および下痢についてモニタリングする。体重を、塩素曝露の前および剖検時に収集する。
スケジュールされた安楽死の日(8日目)に、塩素曝露後の動物は、肺機能検査を受ける。スケジュールされた安楽死まで生存していた動物だけが、肺機能分析を受ける。瀕死であると決定された動物は、肺機能検査を受けない。
塩素曝露の8日後の研究の最後に、動物を安楽死させる。瀕死の動物は、研究持続期間を通して必要に応じて安楽死させる。剖検は、塩素曝露後8日目に実施する。左葉を、組織病理学のために固定する。右葉は洗浄し、瞬間凍結する。収集した洗浄試料を、細胞計数および白血球分画について分析する。
塩素誘導性急性肺傷害(ALI)ヒツジモデル:プロトコール1
ヒツジモデルでは、非常に高度な様々な心肺機能変数の測定が可能であり、これらの変数は、処置または輸液蘇生のためのエンドポイントとして使用することができる。ヒツジは、げっ歯類とは異なり、気道への損傷を最小限に抑えながら挿管または気管切開することができ、標準的な臨床機器を使用して機械的に換気することができる。加えて、ヒツジモデルは、急性肺傷害の基本的な標準ケア、すなわち、輸液蘇生、肺機能のモニタリング、および機械的換気法に関して、臨床状況を非常によく模倣している。ヒツジの血液量は、循環血液量減少性ショック無しに、頻繁な間欠的な血液ガス分析および循環細胞計数のための試料を供給するのに十分に多い。ヒツジは、無麻酔状態で容易に研究することができる。重要なことには、炎症に対するヒツジの応答(生理的応答およびゲノム的応答の両方)は、ブタおよびげっ歯類モデルとは異なり、ヒトの応答の実際に類似している。
外科手術の準備:少なくとも7~14日間の検疫期間の後に、ヒツジを、心拍、全身動脈圧力、肺動脈圧(心拍出を含む)、肺動脈楔入圧、左心房圧、深部体温、および中心静脈圧の測定のために外科的に準備する。これらの機器による手順は、気管内チューブを介してイソフルラン麻酔下で実施される。
簡潔には、成体の雌ヒツジ36匹を、15~20mg/kgの筋肉内ケタミンで、続いて10~15mg/kgのIVケタミンで、予め麻酔する。気管内挿管後、吸入イソフルランを使用して麻酔を維持する。ヒツジを機械的に換気し、厳密な無菌技術を利用して外科手術を実施する。長時間作用性(72時間)ブプレノルフィンによって鎮痛をもたらす。
16ゲージ、24インチの動脈および静脈カテーテルを、大腿動脈および静脈にわたる切開を使用して、下行大動脈および大静脈に置く。カテーテルを、1/0のエチボンド縫合糸を使用して適所に縫合し、側腹部皮膚への小切開により露出させ、創傷を、2/0のバイクリルを用いて単純連続パターンで閉じる。スワンガンツ熱希釈肺動脈カテーテルを、商業的に入手可能な経皮的カテーテルイントロデューサー系を使用して、右外頸静脈を介して肺動脈に位置させる。また、カテーテル(内径0.062インチ、外径0.125インチ)を、第5肋間腔を通して左心房に位置させる。心臓の左心房のカニューレ挿入中に起こり得る不整脈を防止するために、1~3mg/kgのリドカインを心臓表面に局所適用する。胸壁への穿刺による小切開により、チューブを露出させる。肋骨を、2本の1/0または2/0の単純結節用ステンレス鋼ワイヤー縫合糸を用いて合わせる。筋肉および皮下組織を、2/0のバイクリルを用いて、単純連続パターンを使用して二層縫合する。皮膚を、2/0のバイクリルを用いて、単純連続パターンで閉じる。外科手術中、感染のリスクを低減するために、二倍IV用量のセファゾリン(2g)を投与する。次に、ヒツジを麻酔から回復させ、外科手術から治癒させるために食餌および水を自由に摂取できるようにして5~7日与えた後、ALIプロトコールを受けさせる。外科手術中および術後の鎮痛を、長時間作用性(72時間)ブプレノルフィンSR(0.1~0.27mg/kg)の皮下注射を用いてもたらす。
回復期間中、ヒツジを血行動態モニターに接続し、乳酸リンゲル液でIV輸液蘇生し、食餌および水を与える。血管カテーテルおよびラインを、ヘパリン処置した食塩水で継続的にフラッシュする。
ベースライン変数:5~7日間の外科手術からの回復期間後に、呼吸器および血行動態変数のベースライン測定を、覚醒状態の無麻酔下のヒツジで行う。
ベースライン変数には、以下が含まれる。
心肺血行動態:
・心拍、
・平均動脈圧、
・心拍出、
・左心房圧、
・中心静脈圧、
・肺動脈圧、
・肺動脈閉塞圧、ならびに
・計算された変数:心指数、全身血管および肺動脈抵抗指数、肺毛細血管圧、ならびに左室および右室一回拍出量指数、
・深部体温
動脈および静脈血液ガス分析、全血球計数:
・PO、CO、SO、ヘマトクリット、ヘモグロビン、pH、電解質(Na、K、Ca、Cl)、乳酸、およびグルコース、
・計算された変数-動脈血酸素分圧(PaO)/吸入酸素分圧(FiO)比および肺シャント率、
・全血球計数。
除外基準:以下の症状のいずれかが存在している場合、ヒツジは研究から除外される。
・室内空気でPaO<90mmHg、
・ヘマトクリット<20%、
・ヘモグロビン<7g/dL、
・深部体温>40℃(正常なヒツジの体温は、およそ39.6℃である)、
・白血球>10k/μL。
ALIの誘導:研究開始直前に、ヒツジに、ケタミン麻酔剤を5mg/kgでIV注射により施し、続いて長時間作用性(72時間)ブプレノルフィン鎮痛薬を0.1mg/kgでSC注射により施す。気管切開術を実施し、IVプロポフォールを使用して、50mgの初期ボーラスで麻酔を維持し、その後効果を得るために調整する。ヒツジを、5cm HOの呼気終末陽圧(PEEP)において、一回換気量(TV)12mL/kgで換気する。尿量の測定のために、フォーリーカテーテルを尿道に通して膀胱をカテーテル処置して、継続的蓄尿を可能にする。動物は、塩素曝露前および安楽死前(適用できる場合)に、胸部X線を受けるものとする。
傷害は、塩素槽に接続した閉鎖換気装置回路により、空気中150ppmまたは200ppmの濃度の塩素を30分間気管内送達することによって誘導する。換気装置は、12mL/kgの一回換気量、5cm HOのPEEP、および20b/分の呼吸数に設定する。この設定により、動物の間で同等の曝露が可能になる。
吸入ガスの塩素レベルは、換気装置により希釈無しに供給される、塩素と医療用空気との予混合ブレンドとして認定されている。塩素/空気混合物の全流量は、質量流量計により、調節器の直後にステンレス鋼コンポーネントが置かれた状態で決定する。塩素槽を電気加温器で40℃に予熱して(24時間)、ガスを適切に混合する。傷害を生じさせる30分間の間に、血液ガス分析を10分ごとに実施し、心肺機能変数を記録する。曝露中に生じる可能性がある塩素漏れを、少なくとも2つのモニターによってモニタリングする。曝露は、陰圧および毒性ガス避難フードを備えた特別室内で実施する。保護マスクを含む指定のPPEを着用している少なくとも3人のTICU職員が曝露を誘導し、ケアを提供する。30分間の塩素曝露後に、ヒツジを空気(塩素無し)で10分間換気して、ヒツジの気道および換気装置回路の両方から残留塩素を追い出す。次に、ヒツジを換気装置から外し、ICUステーションに移す。
傷害後モニタリング:ヒツジをICUステーションに移した後、血行動態モニターに接続した換気装置(Avea APVcmvモード:RR 20b/m、TV 12mL/kg、PEEP 5cm H2O)をヒツジに装着し、覚醒状態で48時間モニタリングする。ヒツジを、傷害後48時間目に、深麻酔および鎮痛下で人道的に安楽死させる。研究中に以下の1つが生じ、蘇生を行ったにもかかわらず1時間回復しなかった場合、ヒツジを人道的に安楽死させる。
・PaO/FiO比<50mmHg
・PaCO>90mmHg
・MAP<50mmHg。
グループ化および処置:傷害後に、ヒツジを以下の4つの群の1つに無作為に割り当てる。
1.対照:塩素に曝露され、等量のビヒクルで処置される群、
2.正の対照:塩素に曝露され、PDE4阻害剤(ロリプラム)で処置される群、
3.MN-166(高用量):塩素に曝露され、高用量MN-166(100mg/kgまで)で処置される群、および
4.MN-166(低用量):塩素に曝露され、低用量MN-166(50mg/kgまで)で処置される群。
各基は、8匹のヒツジを含んでいる。研究全体でのヒツジの総数は、生じる可能性がある技術的誤差のために1群当たり1匹のヒツジを含む36匹である(36=1群当たり8匹のヒツジ×4群+実験の失敗/誤差のための4匹のヒツジ(1群当たり1匹のヒツジ))。研究期間中、ヒツジは、乳酸リンゲル液2mL/kg/時で輸液蘇生される。
エンドポイント:処置後、研究評定を、ベースライン変数と同じ方式で実施する。各評定の説明を、以下に提供する。
1.肺機能を、以下によって評定する:1)動脈および静脈血のPaO、CO、SO、塩基過剰、pH、およびSOを含む、間欠的(6時間ごと)動脈および静脈血ガス分析。加えて、動脈ヘマトクリット、ヘモグロビン、電解質、グルコース、および乳酸を、6時間ごとに測定する。PaO/FiO比を計算して、ARDSの重症度を決定する。両側性肺浸潤を、研究の最後に撮影した胸部X線によって確認する。胸部X線は、傷害の前にも同様に撮影する。肺シャント率を、標準的な式によって計算する;ならびに2)肺力学、すなわち、肺コンプライアンス、気道ピークおよびポーズ圧、ならびに死腔を、換気装置の読取りから6時間ごとに得る。
2.肺傷害および浮腫形成を、胸部X線に加えて、組織学的検査(肺胞および間質性浮腫)、および肺含水量(湿重量と乾燥重量の比)によって死後評定する。肺組織の組織学的検査には、実質組織のうっ血、出血、炎症細胞の蓄積、無気肺、および気道上皮剥脱も含まれる。
3.心肺血行動態を、継続的にモニタリングし、ベースラインに示されている変数を、6時間ごとに記録する。
4.全身血管透過性を、48時間にわたる正味の蓄積体液バランス(摂取した流体および尿量を6時間ごとに測定する)、血漿タンパク質、体腔(胸部および腹部)への体液蓄積の決定によって評定する。
5.全末梢血細胞数を、6時間ごとに決定する。
サンプリング:1)動脈血を、最初の24時間は6時間ごとに、次の24時間は12時間ごとに採取し、一定分量の血漿および血清を、将来の評定のために20℃で保存する、2)一定分量の尿を、示されている時点に採取し、20℃で保存する、3)気管支肺胞洗浄を、研究の最後に実施し、一定分量を凍結し、20℃で保存する、4)動物を、傷害後48時間目に人道的に安楽死させ、一定分量の気管、気管支、肺実質、心臓、肝臓、および腎臓を、-80℃で凍結保存し、ホルマリンで固定する。胸部および腹部体液の体積を、存在する場合には測定し、全タンパク質を測定する。
統計的分析:統計的分析を、GraphPad Prism 8ソフトウェアを使用して、二元配置または一元配置ANOVAおよび適用できる場合にはT検定を用いて実施する。
肺機能。呼吸器パラメータを、間欠的に評定し、処置群間で定量化できる比較を行う。様々な処置群におけるARDSの相対的な重症度を、計算されたPaO2/FiO2比から評定する。評定されるべき他の変数には、肺浸潤、肺シャント率および肺力学が含まれる。
肺傷害および浮腫形成。組織学的試料の死後比較を評価し、処置群の間で比較を行って、イブジラスト薬物処置の有効性を評定する。出血、炎症細胞の蓄積、無気肺、および気道上皮剥脱の程度を定量化する。肺含水量の差を、胸部X線によって決定し、比較する。
全身血管透過性。正味の蓄積体液バランスを、48時間の期間にわたって測定し、薬物処置群、未処置群および正の対照群の比較を比較して、有効性を評定する。
塩素誘導性急性肺傷害(ALI)ヒツジモデル:プロトコール2
外科手術の準備:少なくとも7~14日間の検疫の後に、ヒツジを、心拍、全身動脈圧力、肺動脈圧(心拍出を含む)、肺動脈楔入圧、左心房圧、深部体温、および中心静脈圧の測定のために外科的に準備した。これらの機器による手順は、気管内チューブを介してイソフルラン麻酔下で実施した。
簡潔には、成体の雌ヒツジ36匹を、15~20mg/kgの筋肉内ケタミンで、続いて10~15mg/kgのIVケタミンで、予め麻酔した。気管内挿管後、吸入イソフルランを使用して麻酔を維持した。ヒツジを機械的に換気し、厳密な無菌技術を利用して外科手術を実施した。長時間作用性(72時間)ブプレノルフィンによって鎮痛をもたらした。
16ゲージ、24インチの動脈および静脈カテーテルを、大腿動脈および静脈にわたる切開を使用して、下行大動脈および大静脈に置いた。カテーテルを、1/0のエチボンド縫合糸を使用して適所に縫合し、側腹部皮膚への小切開により露出させ、創傷を、2/0のバイクリルを用いて単純連続パターンで閉じた。スワンガンツ熱希釈肺動脈カテーテルを、商業的に入手可能な経皮的カテーテルイントロデューサー系を使用して、右外頸静脈を介して肺動脈に位置させた。また、カテーテル(内径0.062インチ、外径0.125インチ)を、第5肋間腔を通して左心房に位置させた。心臓の左心房のカニューレ挿入中に起こり得る不整脈を防止するために、1~3mg/kgのリドカインを心臓表面に局所適用した。胸壁への穿刺による小切開により、チューブを露出させた。肋骨を、2本の1/0または2/0の単純結節用ステンレス鋼ワイヤー縫合糸を用いて合わせた。筋肉および皮下組織を、2/0のバイクリルを用いて、単純連続パターンを使用して二層縫合した。皮膚を、2/0のバイクリルを用いて、単純連続パターンで閉じた。外科手術中、感染のリスクを低減するために、二倍IV用量のセファゾリン(2g)を投与した。次に、ヒツジを麻酔から回復させ、外科手術から治癒させるために食餌および水を自由に摂取できるようにして5~7日与えた後、ALIプロトコールを受けさせた。外科手術中および術後の鎮痛を、長時間作用性(72時間)ブプレノルフィンSR(0.1~0.27mg/kg)の皮下注射を用いてもたらした。
回復期間中、ヒツジを血行動態モニターに接続し、乳酸リンゲル液でIV輸液蘇生し、食餌および水を与えた。血管カテーテルおよびラインを、ヘパリン処置した食塩水で継続的にフラッシュした。
ベースライン変数:5~7日間の外科手術からの回復期間後に、呼吸器および血行動態変数のベースライン測定を、覚醒状態の無麻酔下のヒツジで行った。
ベースライン変数には、以下が含まれていた。
心肺血行動態:
・心拍、
・平均動脈圧、
・心拍出、
・左心房圧、
・中心静脈圧、
・肺動脈圧、
・肺動脈閉塞圧、ならびに
・計算された変数:心指数、全身血管および肺動脈抵抗指数、肺毛細血管圧、ならびに左室および右室一回拍出量指数、
・深部体温
動脈および静脈血液ガス分析、全血球計数:
・PO、CO、SO、ヘマトクリット、ヘモグロビン、pH、電解質(Na、K、Ca、Cl)、乳酸、およびグルコース、
・計算された変数-動脈血酸素分圧(PaO)/吸入酸素分圧(FiO)比および肺シャント率、
・全血球計数。
除外基準:以下の症状のいずれかが存在している場合、ヒツジは研究から除外された。
・室内空気でPaO<90mmHg、
・ヘマトクリット<20%、
・ヘモグロビン<7g/dL、
・深部体温>40℃(正常なヒツジの体温は、およそ39.6℃であった)、
・白血球>10k/μL。
ALIの誘導:研究開始直前に、ヒツジに、ケタミン麻酔剤を5mg/kgでIV注射により施し、続いて長時間作用性(72時間)ブプレノルフィン鎮痛薬を0.1mg/kgでSC注射により施した。気管切開術を実施し、IVプロポフォールを使用して、50mgの初期ボーラスで麻酔を維持し、その後効果を得るために調整した。ヒツジを、5cm HOの呼気終末陽圧(PEEP)において、一回換気量(TV)12mL/kgで換気した。尿量の測定のために、フォーリーカテーテルを尿道に通して膀胱をカテーテル処置して、継続的蓄尿を可能にした。動物は、塩素曝露前および安楽死前(適用できる場合)に、胸部X線を受けるものとした。
傷害は、塩素槽に接続した閉鎖換気装置回路により、空気中210ppmの濃度の塩素を30分間気管内送達することによって誘導した。換気装置は、12mL/kgの一回換気量、5cm HOのPEEP、および20b/分の呼吸数に設定した。この設定により、動物の間で同等の曝露が可能になった。
吸入ガスの塩素レベルは、換気装置により希釈無しに供給される、塩素と医療用空気との予混合ブレンドとして認定された。塩素/空気混合物の全流量は、質量流量計により、調節器の直後にステンレス鋼コンポーネントが置かれた状態で決定した。塩素槽を電気加温器で40℃に予熱して(24時間)、ガスを適切に混合した。傷害を生じさせる30分間の間に、血液ガス分析を10分ごとに実施し、心肺機能変数を記録した。曝露中に生じる可能性がある塩素漏れを、少なくとも2つのモニターによってモニタリングした。曝露は、陰圧および毒性ガス避難フードを備えた特別室内で実施した。保護マスクを含む指定のPPEを着用している少なくとも3人のTICU職員が曝露を誘導し、ケアを提供した。30分間の塩素曝露後に、ヒツジを空気(塩素無し)で10分間換気して、ヒツジの気道および換気装置回路の両方から残留塩素を追い出した。次に、ヒツジを換気装置から外し、ICUステーションに移した。
傷害後モニタリング:ヒツジをICUステーションに移した後、血行動態モニターに接続した換気装置(Avea APVcmvモード:RR 20b/m、TV 12mL/kg、PEEP 5cm HO)をヒツジに装着し、覚醒状態で48時間モニタリングした。ヒツジを、傷害後48時間目に、深麻酔および鎮痛下で人道的に安楽死させた。研究中に以下の1つが生じ、蘇生を行ったにもかかわらず1時間回復しなかった場合、ヒツジを人道的に安楽死させた。
・PaO/FiO比<50mmHg
・PaCO>90mmHg
・MAP<50mmHg。
グループ化および処置:傷害後に、ヒツジを以下の4つの群の1つに無作為に割り当てた。
1.負の対照:塩素に曝露され、等量のビヒクル(5%Kolliphor ELおよび50%プロピレングリコールおよび食塩水)で処置される群、
2.正の対照:塩素に曝露され、PDE4阻害剤(ロリプラム、3mg)で処置される群、
3.MN-166(高用量):塩素に曝露され、高用量MN-166(20mg)で処置される群、および
4.MN-166(低用量):塩素に曝露され、低用量MN-166(10mg)で処置される群。
各ヒツジは、30分間の注入にわたって最終体積20mLを受けた。
各基は、8匹のヒツジを含んでいた。研究全体でのヒツジの総数は、生じる可能性がある技術的誤差のために1群当たり1匹のヒツジを含む36匹であった(36=1群当たり8匹のヒツジ×4群+実験の失敗/誤差のための4匹のヒツジ(1群当たり1匹のヒツジ))。研究期間中、ヒツジは、乳酸リンゲル液2mL/kg/時で輸液蘇生された。
エンドポイント:処置後、研究評定を、ベースライン変数と同じ方式で実施した。各評定の説明を、以下に提供する。
1.肺機能を、以下によって評定した:1)動脈および静脈血のPaO、CO、SO、塩基過剰、pH、およびSOを含む、間欠的(6時間ごと)動脈および静脈血ガス分析。加えて、動脈ヘマトクリット、ヘモグロビン、電解質、グルコース、および乳酸を、6時間ごとに測定した。PaO/FiO比を計算して、ARDSの重症度を決定した。両側性肺浸潤を、研究の最後に撮影した胸部X線によって確認した。胸部X線は、傷害の前にも同様に撮影した。肺シャント率を、標準的な式によって計算した;ならびに2)肺力学、すなわち、肺コンプライアンス、気道ピークおよびポーズ圧、ならびに死腔を、換気装置の読取りから6時間ごとに得た。
2.肺傷害および浮腫形成を、胸部X線に加えて、組織学的検査(肺胞および間質性浮腫)、および肺含水量(湿重量と乾燥重量の比)によって死後評定した。肺組織の組織学的検査には、実質組織のうっ血、出血、炎症細胞の蓄積、無気肺、および気道上皮剥脱も含まれていた。
3.心肺血行動態を、継続的にモニタリングし、ベースラインに示されている変数を、6時間ごとに記録した。
4.全身血管透過性を、48時間にわたる正味の蓄積体液バランス(摂取した流体および尿量を6時間ごとに測定した)、血漿タンパク質、体腔(胸部および腹部)への体液蓄積の決定によって評定した。
5.全末梢血細胞数を、6時間ごとに決定した。
サンプリング:1)動脈血を、最初の24時間は6時間ごとに、次の24時間は12時間ごとに採取し、一定分量の血漿および血清を、将来の評定のために-20℃で保存した、2)一定分量の尿を、示されている時点に採取し、-20℃で保存した、3)気管支肺胞洗浄を、研究の最後に実施し、一定分量を凍結し、-20℃で保存した。
剖検:Cl曝露後48時間目(または安楽死基準に達したら[上述を参照されたい])、ヒツジを、Panel on Euthanasia of the American Veterinary Medical Associationの推奨に合致する100mgのキシラジン、1500mgのケタミン、および0.3mgの速効性ブプレノルフィンのIV注入投与によって、麻酔下で失血させた。剖検の直前に、適用できる場合には、携帯型デジタルX線機器を使用して胸部X線を実施した。
死後サンプリング:安楽死後、心臓および全肺および上気道を切除した。臓器重量、ならびに心臓および肺の画像を得た。一定分量の気管、気管支、肺実質、心臓、肝臓、および腎臓を、-80℃で凍結保存し、ホルマリンで固定した。胸部および腹部体液の体積を、存在する場合には測定し、全タンパク質を測定した。一定分量の肺組織も、肺の湿重量と乾燥重量の比の測定のために採取した。
統計的分析:統計的分析を、GraphPad Prism 8ソフトウェアを使用して、二元配置または一元配置ANOVAおよび適用できる場合にはT検定を用いて実施した。
研究中間結果:PaO/FiO比を、塩素曝露後の各時点において計算した。様々な時点における4匹の動物についてのPaO/FiOの結果(mmHg)[負の対照(対照-N)、正の対照(対照-P)、高用量MN-166、低用量MN-166]は、以下の表および図1に示されている。
塩素曝露後に、全ての群で、塩素曝露の3時間後までにPaO/FiO比の悪化が観察された。ビヒクルだけで処置した負の対照動物において、PaO/FiOは、全ての時点で200mmHg未満(中等度のARDS)または100mmHg未満(重症のARDS)のままであった。正の対照動物(ロリプラム、3mgで処置された)において、PaO/FiOは、塩素ガス曝露後18時間目の時点で300mmHg未満(軽度のARDS)であり、24時間目の時点で200mmHg未満もしくは100mmHg未満のままであった。低用量MN-166(10mg)で処置された動物は、塩素ガス曝露後6時間目の時点でPaO/FiOが300mmHgを超えて改善し、300mmHg超のままであった。高用量MN-166(20mg)で処置された動物のPaO/FiO値は、全ての時点で300mmHg未満には一度も低下せず、30時間目の時点までに400mmHgを超えて上昇した。
化学物質誘導性肺傷害を有しているヒト患者へのイブジラストの投与
塩素、硫黄マスタードガス、ホスゲン、ルイサイト、塩化水素、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、アンモニア、フッ化水素酸、オゾン、イソシアン酸メチル、またはこれらの2つ以上の組み合わせによる化学物質誘導性肺傷害からの症状(例えば、化学熱傷、肺水腫、喉頭浮腫、肺組織アポトーシス、肺炎、間質性肺炎、気管支炎、細気管支炎、線維症、急性呼吸促迫症候群、または呼吸器スパスムの1つまたは複数)に罹患しているヒト患者に、100mgまでのイブジラストを投与する。
イブジラストに対する応答を、呼吸数測定、血中酸素レベル測定(すなわち、パルスオキシメーターによって)、呼吸困難尺度(例えば、修正医学研究会議呼吸困難スコア(modified medical research council dyspnea score))、肺機能検査(すなわち、肺活量計によって)、胸部イメージング研究(すなわち、胸部X線、胸部CT)、または任意のこれらの2つ以上の組み合わせによって評定する。
特定の実施形態
実施形態1.それを必要とする対象における化学物質誘導性肺傷害の処置方法であって、対象に、治療有効量のイブジラスト、またはその薬学的塩を投与することを含む、方法。
実施形態2.肺傷害が、塩素、硫黄マスタードガス、ホスゲン、ルイサイト、塩化水素、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、アンモニア、フッ化水素酸、オゾン、イソシアン酸メチル、およびこれらの2つ以上の組み合わせから選択される化学物質によって誘導される、実施形態1の方法。
実施形態3.肺傷害が、化学熱傷、肺水腫、喉頭浮腫、肺組織アポトーシス、肺炎、間質性肺炎、気管支炎、細気管支炎、線維症、急性呼吸促迫症候群、呼吸器スパスム、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む、実施形態1または実施形態2の方法。
実施形態4.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、経口的に投与される、実施形態1~3のいずれか1つの方法。
実施形態5.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、静脈内に投与される、実施形態1~3のいずれか1つの方法。
実施形態6.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、皮下注入により投与される、実施形態1~3のいずれか1つの方法。
実施形態7.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、筋肉内注入により投与される、実施形態1~3のいずれか1つの方法。
実施形態8.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、吸入により投与される、実施形態1~3のいずれか1つの方法。
実施形態9.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはそれ以上投与される、実施形態1~8のいずれか1つの方法。
実施形態10.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、少なくとも3か月間投与される、実施形態1~8のいずれか1つの方法。
実施形態11.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、少なくとも1日1回投与される、実施形態1~10のいずれか1つの方法。
実施形態12.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、1日2回投与される、実施形態1~10のいずれか1つの方法。
実施形態13.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量が、1日当たり0.1mg~720mgである、実施形態1~12のいずれか1つの方法。
実施形態14.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量が、1日当たり30mg~200mgである、実施形態1~12のいずれか1つの方法。
実施形態15.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量が、1日40mg~600mgである、実施形態1~12のいずれか1つの方法。
実施形態16.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量が、1日100mg~480mgである、実施形態1~12のいずれか1つの方法。
実施形態17.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩の治療有効量が、30mg/日、60mg/日、90mg/日、100mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日、および720mg/日からなる群から選択される、実施形態1~12のいずれか1つの方法。
実施形態18.治療有効量が、単回用量として投与されるか、または2回、3回もしくは4回の用量に分けられる、実施形態1~17のいずれか1つの方法。
実施形態19.イブジラストが、連続して投与される、実施形態1~17のいずれか1つの方法。
実施形態20.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、患者に投与される唯一の活性剤である、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
実施形態21.イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、少なくとも1つの他の活性剤と共に患者に投与される、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
実施形態22.少なくとも1種の他の活性剤が、コルチコステロイドを含む、実施形態21の方法。
均等物
本開示は、詳細には特定の実施形態および任意選択の特色により開示されるけれども、本明細書に開示される、実施された本開示の修正、改善および変形の形態は、当業者により用いられ得、そのような修正、改善および変形の形態は、本開示の範囲内であると考えられることを理解されたい。ここに提供される材料、方法、および実施例は、特定の実施形態の代表例であり、例示的なものであり、本開示の範囲の限定を意図するものではない。
本開示は、広範に且つ包括的に本明細書に記載される。包括的な開示内に入る、より狭い種類および下位の包括的な分類のそれぞれもまた、本開示の一部をなす。これには、削除された物質が詳細には本明細書に記載されるか否かに関わらず、その部類から任意の主題を取り除くという条件付きかまたは消極的な限定を伴い、本開示の包括的な記載が含まれる。
加えて、本開示の特色または態様がマーカッシュ語群の表現で記載される場合、当業者は、本開示がまた、マーカッシュ語群の任意の個々の構成員またはサブグループの構成員の表現によっても記載されていることを理解するであろう。
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを表すことが明示的に示されていない限り、または代替物が相互排他的でない限り、たとえ本開示が、代替物のみならびに「および/または」を表すという定義を支持していても、「および/または」を意味するために使用される。

Claims (22)

  1. それを必要とする対象における化学物質誘導性肺傷害の処置方法であって、前記対象に、治療有効量のイブジラスト、またはその薬学的塩を投与することを含む、方法。
  2. 前記肺傷害が、塩素、硫黄マスタードガス、ホスゲン、ルイサイト、塩化水素、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、アンモニア、フッ化水素酸、オゾン、イソシアン酸メチル、およびこれらの2つ以上の組み合わせから選択される化学物質によって誘導される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記肺傷害が、化学熱傷、肺水腫、喉頭浮腫、肺組織アポトーシス、肺炎、間質性肺炎、気管支炎、細気管支炎、線維症、急性呼吸促迫症候群、呼吸器スパスム、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩が、経口的に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、静脈内に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  6. イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、皮下注入により投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  7. イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、筋肉内注入により投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  8. イブジラスト、または薬学的に許容されるその塩が、吸入により投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  9. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、またはそれ以上投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩が、少なくとも3か月間投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  11. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩が、少なくとも1日1回投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩が、1日2回投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
  13. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩の前記治療有効量が、1日当たり0.1mg~720mgである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩の前記治療有効量が、1日当たり30mg~200mgである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  15. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩の前記治療有効量が、1日40mg~600mgである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  16. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩の前記治療有効量が、1日100mg~480mgである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  17. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩の前記治療有効量が、30mg/日、60mg/日、90mg/日、100mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日、および720mg/日からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記治療有効量が、単回用量として投与されるか、または2回、3回もしくは4回の用量に分けられる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
  19. イブジラストが、連続して投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
  20. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩が、患者に投与される唯一の活性剤である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
  21. イブジラスト、または前記薬学的に許容されるその塩が、少なくとも1つの他の活性剤と共に患者に投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記少なくとも1種の他の活性剤が、コルチコステロイドを含む、請求項21に記載の方法。
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