JP2024504679A - miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞の治療用組成物 - Google Patents

miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞の治療用組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、miR145阻害剤の心筋梗塞悪化の予防又は治療用途に関するものであって、miR-145のアンタゴミルが心筋梗塞における虚血性損傷による心筋の損傷および壊死を減少させ、心筋組織の再生を増加させることにより、心筋梗塞症候の再生治療に効果を示し、miR-145アンタゴミルの場合、単独投与時にもmiR-124アンタゴミルと併用投与した場合と同程度の治療効果を示し、特に、心筋梗塞発症後、数日内の初期(急性期)に顕著な治療効果を示す効果があるため、これを心筋梗塞症の治療用途として用いることができる。【選択図】図16

Description

本発明は、miR145阻害剤の心筋梗塞を治療するための用途に関する。
心筋梗塞とは、心筋に血液を供給する冠状動脈(coronary artery)の血流が詰まり、心筋壊死および心機能の低下をもたらす致命的な疾患である。現在、2015年基準で、全世界で毎年1600万人程の患者が発生しており、米国だけでも年に百万人の心筋梗塞症患者が発生している(2016)。2011年度の米国の統計に基づいたとき、心筋梗塞は病院入院期間中の診療費が最も高価な5大疾患に属することが示され、612,000日間の入院期間と110億ドルの診療費がかかることが分かった(National inpatient Hospital Cost、2011年レポート)(Statistical Brief#160(ahrq.gov))。心筋梗塞症の治療には、多様な種類の血栓溶解剤が使用されており、経皮的冠動脈形成術(PCI;percultaneous coronary intervention)を施行することがある、基礎疾患があったり、多数の動脈をおかした場合には、CABG(coronary artery bypass surgery)を使って治療したりもする(O’Connor et al.,2010)。しかし、抗凝固治療剤と冠状動脈形成術を適用してからも全体的な死亡率が10~12%を示し、心筋梗塞を治療するための新しいアプローチが必要な状況である(Gershlick and More,1998;Pollard,2000;Williams and Morton,1995)。
一方、miRNAは、非コード調節(non-coding regulatory)RNAの1つであって、主に標的mRNAを分解したり、mRNAに結合してタンパク質合成を阻害する役割を果たす。1993年度に線虫(Caenorhabditis elegans)からmiRNAが初めて発見されて以来、様々なmiRNAが発見され、これらが細胞の遺伝子発現の調節を通じて細胞の機能と運命を調節する重要な役割を果たすことが明らかになっった(Elbashir et al.,2001;Lagos-Quintana et al.,2001)。
そこで、本発明者は、心筋梗塞の心臓再生治療のためにmiRNAに基づく治療的アプローチを試み、これにより心筋の再生および心筋梗塞の治療に使用できることを見出した。
National inpatient Hospital Cost、2011年レポート Statistical Brief#160(ahrq.gov) O’Connor et al.,2010 Gershlick and More,1998;Pollard,2000;Williams and Morton,1995 Elbashir et al.,2001;Lagos-Quintana et al.,2001
本発明の目的は、心筋梗塞の治療用医薬組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、心臓機能を回復させるための医薬組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、心不全の症状を緩和するための医薬組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、心筋組織病変を減少させるための医薬組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、心筋梗塞を治療する方法を提供することである。
併せて、本発明の目的は、心筋梗塞の予防および治療用医薬組成物の製造に使用するための、miR145阻害剤の用途を提供することである。
前記課題を解決するために、本発明は、miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞の治療用医薬組成物を提供する。
また、本発明は、miR145阻害剤を有効成分として含む心臓機能を回復させるための医薬組成物を提供する。
また、本発明は、miR145阻害剤を有効成分として含む心不全の症状を緩和するための医薬組成物を提供する。
また、本発明は、miR145阻害剤を有効成分として含む心筋組織病変を減少させるための医薬組成物を提供する。
また、本発明は、miR145阻害剤を薬学的に有効な量で心筋梗塞に罹患した個体に投与する段階を含む心筋梗塞の治療方法を提供する。
併せて、本発明の目的は、心筋梗塞の予防および治療用医薬組成物の製造に使用するための、miR145阻害剤の用途を提供する。
本発明によれば、miR-145のアンタゴミルは、心筋梗塞における虚血性損傷による心筋の損傷および壊死を減少させ、心筋組織の再生を増加させることにより、心筋梗塞の症候の再生治療に効果を示し、miR-145アンタゴミルの場合、単独投与時にもmiR-124アンタゴミルと併用投与した場合と同程度の治療効果を示し、特に、心筋梗塞が発症してから数日内の初期(急性期)に顕著な治療効果を示す効果があるため、これを心筋梗塞症の治療用途として利用することができる。
3D培養と2D培養において差次的に発現されるmiRNAのうち、組織再生能に関与することが知られたEMT勾配(gradient)を増加させることができるmiRNA群および幹細胞性(Stemness)に関連する遺伝子の発現を調節するmiRNA群をスクリーニングした結果を示す図である。 EMT勾配を標的とするmiRNA群および多能性(pluripotency)遺伝子を標的とするmiRNA群を示す図である。 選別したmiRNA群に対するアンタゴミルの組み合わせ(145+124、145+203a、145+124+34aおよび145+124+106b)によるEMT関連遺伝子および多能性関連遺伝子の発現誘導を確認した図である:145:miR-145-5p;124:miR-124-3p;203a:miR203a-3p;34a:miR34a-5P;および106b:miR106b。 心筋梗塞動物モデルの作製および薬物投与過程を示す図である。 EMT関連miR124-3pに対するアンタゴミルおよび多能性関連miR-145-5pに対するアンタゴミルの心臓機能改善効果を超音波で確認した図である。 miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの左室駆出率(%LVEF)および左室内径短縮率(%FS)の測定による心臓の収縮力および左室収縮末期径(LVISd)および左室拡張末期径(LVIDd)の測定による心臓機能改善効果を確認した図である。miR124:miR124-3pに対するアンタゴミル;およびmiR145:miR-145-5pに対するアンタゴミル。 miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用投与による心筋壁の運動性の変化を心超音波を通じて確認した図である。miR12/14:miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用(併合)投与。 miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用投与による心臓機能回復効果を確認した図である。124/145:miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用(併合)投与。 miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用投与による心筋組織病変の減少効果を組織学的に分析して確認した図である。CHP:red;TNNT2:green;DAPI:blue color;およびNC:陰性対照群;miR124/145または124/145:miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用(併合)投与。 併用投与したmiR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの混合比(1:1、1/3:1および1/2:1)による心筋梗塞モデルにおける心臓機能回復効果を示す図である。 併用投与したmiR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの混合比(1:1、1/3:1および1/2:1)による心筋梗塞モデルにおける毛細血管密度(capillary density)変化を組織学的に分析して確認した図である。 併用投与したmiR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの混合比(1:1、1/3:1および1/2:1)による線維化(fibrosis)の程度および生存可能な心筋(viable myocardium)の数を確認した図である。 miRNA124に対するアンタゴミルおよびmiRNA145に対するアンタゴミルの単独/併用投与による心機能回復効果を比較した図である。124+145:miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミル;miR124:miR124-3pに対するアンタゴミル;およびmiR145:miR-145-5pに対するアンタゴミル。 miRNA124に対するアンタゴミルおよびmiRNA145に対するアンタゴミルの単独/併用投与による毛細血管密度および生存可能な心筋の数の変化を組織学的に分析して確認した図である。miR124:miR124-3pに対するアンタゴミル;miR145:miR-145-5pに対するアンタゴミル;および124/145:miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用(併合)投与。 miRNA124に対するアンタゴミルおよびmiRNA145に対するアンタゴミルの単独/併用投与による心筋の線維化程度を比較した図である。scramble:陰性対照群;miR124:miR124-3pに対するアンタゴミル;miR145:miR-145-5pに対するアンタゴミル;124/145:miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用(併合)投与;および12/14:miR124-3pに対するアンタゴミルおよびmiR-145-5pに対するアンタゴミルの併用(併合)投与。 miRNA-145に対するアンタゴミルの投与時点による心筋梗塞の治療効果を確認した図である。D1:心筋梗塞発症から1日後、miRNA-145に対するアンタゴミルを投与;D7:心筋梗塞発症から7日後、miRNA-145に対するアンタゴミルを投与;およびD14:心筋梗塞発症から14日後、miRNA-145に対するアンタゴミルを投与。
以下、添付された図面を参照して本発明の具現例により本発明を詳細に説明する。ただし、以下の具現例は本発明の例示として提示されたものであり、当業者に周知著名な技術または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合には、その詳細な説明を省略することができ、これにより本発明は限定されない。本発明は、後述する特許請求の範囲の記載およびそれから解釈される均等な範疇内で多様な変形および応用が可能である。
また、本明細書で使用される用語(terminology)は、本発明の好ましい実施例を適切に表現するために使用される用語であり、これは、ユーザ、運用者の意図または本発明が属する分野の慣例などに応じて変わり得る。したがって、本用語の定義は、本明細書全体にわたった内容に基づいてなされるべきである。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」としたとき、これは特に相反する記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
本発明で使用されるすべての技術用語は、断りがない限り、本発明の関連分野で通常の当業者が一般に理解するような意味で使用される。また、本明細書には好ましい方法や試料が記載されているが、これと同様または同等のものも本発明の範疇に含まれる。本明細書に参考文献として記載されている全ての刊行物の内容は、本発明に組み込まれる。
一側面において、本発明は、miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞の治療用医薬組成物に関する。
一具現例において、miR145は、miR-145-5pであってもよく、miR-145-5pは、配列番号1で表される塩基配列を含むことができる。
一具現例において、miR145阻害剤は、阻害性RNA分子(inhibitory RNA molecule)、アンタゴニストmicroRNA、酵素的RNA分子、および抗miRNA抗体からなる群から選択される一つ以上であることができ、miR145に特異的に結合する核酸分子であることができ、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)、アンタゴミル(antagomir)、リボザイム(ribozyme)、アプタマー(aptamer)、siRNA、miRNA、shRNA(short hairpin RNA)、PNA(peptide nucleic acid)およびLNA(locked nucleic acid)からなる群から選択される1つ以上であってもよく、アンタゴミル(antagomir)であることがより好ましく、配列番号4で表されるanti-mir145であることが最も好ましい。
一具現例において、前記「核酸」とは、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、およびその類似体、ならびにその誘導体を含むものであって、例えば、ペプチド核酸(PNA)またはその混合物を含む。また、核酸は一本鎖または二本鎖であってもよい。
本発明で使用される「miR」という用語は、「micro RNA」を指すものであり、互いに混用することができる。
本発明で使用される用語「アンタゴミル(antagomir)」は、一本鎖の化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドであり、内因性のmiRNAの遮断(silence)に使用され、標的配列に相補的な配列を有する。本発明においてアンタゴミルは、miRNAと効果的に結合して阻害できるように、miRNAの相補的RNA塩基配列をhydroxyprolinol-linked cholesterol solid supportおよび2’-OMe phosphoramiditesに修飾(Kru tzfeldt,J.,Rajewsky,N.,Braich,R.,Rajeev,K.G.,Tuschl,T.,Manoharan,M.,and Stoffel,M.(2005)。Silencing of microRNAs in vivo with 「antagomirs.」 Nature 438,685-689参照)して用いたが、これに制限されるものではない。
本発明で使用される用語「相補的」とは、所定のハイブリダイゼーションまたはアニーリング条件、好ましくは生理学的条件下でアンチセンスオリゴヌクレオチドがmiRNA標的に選択的にハイブリダイズするのに十分に相補的であることを意味し、一部または部分的に実質的に相補的(substantially complementary)および完全に相補的(perfectly complementary)であるものを全部包括する意味を有する。実質的に相補的とは、完全に相補的なものではないが、標的配列に結合して本発明による効果、すなわち前記miRNAの発現を妨げるのに十分な効果を奏するほどの相補性を意味するものである。
一具現例では、前記阻害剤は、前記マイクロRNAに特異的に結合する核酸分子をコードおよび発現する核酸を含むことができ、これを含むプラスミドであってもよく、通常の技術分野で用いられるプラスミド型、ベクター型、アンチセンス型、shRNA型、オリゴ型などで投与することができる。
一具現例では、本発明の組成物は、mir124阻害剤をさらに含むことができ、mir124阻害剤はmir124に対するアンタゴミルであってもよく、配列番号5または6で表される塩基配列を含んでもよい。
一具現例では、本発明の組成物は、miR203a阻害剤、miR181阻害剤、miR128阻害剤、miR-128阻害剤、miR106b阻害剤およびmiR34a阻害剤からなる群から選択される1つ以上の阻害剤をさらに含むことができる。
一具現例では、本発明の組成物は、虚血性心筋壊死または急性炎症が存在する状態で投与することができる。
一具現例では、前記心筋梗塞は、虚血性心筋壊死または急性炎症が存在する急性期(acute phase)(または、初期)心筋梗塞であってもよく、急性期は心筋梗塞発症から1週間以内であってもよい。
一具現例では、miR124阻害剤またはmiR145阻害剤は、小さなRNAであってもよい。
小さなRNA(small RNA:以下、「sRNA」と称する)とは、in vivoで遺伝子発現を調節する役割をする17~25ヌクレオチド(nucleotide:以下、「nt」と称する)程の長さのリボ核酸をいう。sRNAは、その生成方法にによって大きくマイクロRNA(microRNA、miR:以下、「miRNA」と称する)と小さな干渉RNA(small interfering RNA:以下、「siRNA」と称する)に分類される。miRNAは、部分的に二重らせんをなすヘアピンRNA(hairpin RNA)から生成され、siRNAは長い二本鎖RNA(double strand RNA:以下、「dsRNA」と称す)に由来する。一般にin vivoの数々の調節過程において重要な役割をするsRNAはmiRNAであり、miRNAは19~25nt長の一本鎖RNA(single strand RNA:以下、「ssRNA」と称する)分子であって、内在的(endegenous)ヘアピン-構造転写体(hairpin-shaped transcript)(Bartel,D.P.,Cell 116:281-297,2004;Kim,V.N.,Mol.Cells.19:1-15,2005)によって生成される。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)と相補的に結合し、転写後遺伝子サプレッサー(post-transcriptional gene suppressor)として作用し、翻訳抑制とmRNA不安定化を誘導することによって標的遺伝子を阻害する。miRNAは、発生(development)、分化、増殖、アポトーシス、および代謝(metabolism)などのさまざまなプロセスにおいて重要な役割を担う。
また、miRNA生合成は、RNAポリメラーゼIIによる転写により開始される(Cai.X.,et al.,RNA 10:1957-1966,2004;Kim,V.N.Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.6:376-385,2005;Lee,Y.,et al.,EMBO J 21:4663-4670,2002;Lee,Y.,et al.,EMBO J 23:4051-4060,2004)。一次miRNA(primary microRNA:以下、「pri-miRNA」と称する)は、通常、数Kbの長さを超え、5’キャップ(cap)とポリAテール(poly A tail)を含む。pri-miRNAは、リボヌクレアーゼIII、Drosha(Lee,Y.,et al.,Nature 425:415-419,2003)とそのコファクターであるDGCR8(Gregory,R.I.et al.,Nature 432:235-240,2004; Han,J.,et al.,Genes Dev.18:3016-3027,2004; Landthaler,M.,et al.,Curr.Biol.14:2162-2167,2004)からなるマイクロプロセッサ(microprocessor)と呼ばれる複合体により最初に切断され、65nt程のヘアピン構造前駆体(pre-miRNA)に分離される。pre-miRNAプロセスは、miRNA生合成の中心的なステップであり、長さの長いpre-miRNAにmRNA配列を含む分子の一端を生成するプロセスとして定義される。前記開始プロセス以降に生成されたpre-miRNAは、核輸送因子であるExp5(exportin-5)によって細胞質へ輸送される(Bohnsack,MT,et al.,RNA 10:185-191,2004;Lund,E.,et.al.,Science 303:95-98,2004;Yi,R.,et al.,Genes Dev.17:3011-3016,2003)。細胞質内では、細胞質内のRNase III型タンパク質であるDicerが伝達されたpre-miRNAを切断し、22nt程のmiRNA二本鎖を生成する。Dicer産物の一本鎖(strand)は、成熟miRNAとして細胞質中に存在し、miRNP(microribonucleoprotein)またはmiRISC(miRNA-induced silencing complex)と呼ばれるエフェクター複合体(effector complex)と組み立てられる(Khvorova,A.,et al.,Cell 115:209-216,2003;Schwarz,D.S.,et al.,Cell 115:199-208,2003)。sRNAによる遺伝子サイレンシング機構(gene silecing mechanism)であるRNAi現象は、哺乳動物系における効果的な遺伝子研究手段として使用されている。効果的で安定した遺伝子ノックダウン(knockdown)は、小さなヘアピンRNA(small hairpin RNA:以下、「shRNA」と称する)として発現し、小さな干渉RNA(siRNA)のプロセスによって起こる。最近、RNAi技術の飛躍的な進歩は、天然のmiRNA遺伝子を模倣したshRNA発現カセットを作製することによってなされた(Dickins,R.A.,et al.,Nat.Genet.37:1289-1295,2005;Silva,J.M.et al.,Nat.Genet.37:1281-1288,2005:Zeng,Y.,et al.,Mol.Cell 9:1327-1333.2002)。RNAポリメラーゼIIプロモーターによって調整されるmiRNAに基づいたshRNAは、動物モデルのような培養細胞内で効果的かつ安定的に遺伝子サイレンシング(gene silencing)調節を誘導する。
本発明の用語「治療」とは、特に断りのない限り、該用語が適用される疾患または疾病、または前記疾患または疾病の1つ以上の症状を逆転させる、緩和させる、その進行を抑制する、または発生後の悪化を予防することを意味し、本発明で使用される前記用語「治療」とは、心筋梗塞を治療する行為を指す。したがって、哺乳動物における心筋梗塞の治療または治療療法は、以下の1つ以上を含むことができる。
(1)心筋梗塞の進行を阻害する、すなわちその進行を阻止する;
(2)心筋梗塞発症後の悪化を予防する;
(3)心筋梗塞を軽減させる;
(4)心筋梗塞の再発を予防する;および
(5)心筋梗塞の症状を緩和する(palliating)。
本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、治療、観察または実験の対象である哺乳動物を指し、好ましくはヒトを指す。
もし、レシピエント動物が組成物の投与に耐えることができたり、組成物のその動物への投与が適切な場合であると、組成物は「薬学的にまたは生理学的に許容可能である」ことを示す。投与量が生理学的に重要である場合には、前記製剤は「治療学的に有効量」で投与されたと言える。前記製剤の存在が受益患者の生理学的に検出可能な変化をもたらす場合であれば、前記製剤は生理学的に意味がある。
本発明の組成物の治療的に有効な量は、いくつかの要因、例えば投与方法、目的部位、患者の状態などによって変わり得る。したがって、人体に使用する際の投与量は、安全性および効率性を一緒に考慮して適量で決定する必要がある。動物実験によって決定された有効量からヒトに使用される量を推定することも可能である。有効な量を決定する際に考慮すべきこれらの事項は、例えば、Hardman and Limbird,eds.,Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th ed.(2001),Pergamon Press;およびE.W.Martin ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.(1990),Mack Publishing Co.に記述されている。
本発明の医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与される。本発明で使用される用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分であり、副作用を引き起こさない程度の量を意味し、有効用量レベルは、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出率、治療期間、配合または同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野で周知の要素によって決定することができる。本発明の組成物は、個々の治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与したりすることができ、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与することができ、単回または複数回投与することができる。前記の要素のすべてを考慮し、副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定することができる。
本発明の組成物はまた生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤または2つ以上のこれらの組み合わせを含み得る。薬学的に許容される担体は、組成物をin vivo送達に適したものであれば特に限定されず、例えば、Merck Index,13th ed.,Merck & Co.Inc.に記載された化合物、生理食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれらの成分のうちの1成分以上を混合して用いることができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤等、他の通常の添加剤を添加することができる。さらに、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、および潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用製剤、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤として製剤化することができる。さらに、当分野の適当な方法として、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を用いて、各疾患によってまたは成分によって好ましく製剤化することができる。
本発明の医薬組成物は、それぞれ通常の方法に従って、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口製剤、外用剤、坐剤または滅菌注射用溶液の形態で製剤化して使用することができる。
本発明で使用される「薬学的に許容される」という用語は、前記組成物にさらされる細胞やヒトに毒性のない特性を示すことを意味する。
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含むことができ、このとき、薬学的に許容される添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、アルファ化デンプン、コーンスターチ、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナウバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白砂糖、デキストロース、ソルビトール、およびタルクなどを使用することができる。本発明による薬学的に許容される添加剤は、前記組成物に対して0.1重量部~90重量部含まれることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用される「投与」という用語は、任意の適切な方法により患者に所定の物質を供することを意味し、所望の方法により非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に注射製剤として適用)または経口投与することができ、投与量は患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、***率および疾患の重症度などによってその範囲が多様である。
本発明の組成物は、所望の方法により非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)または経口投与することができ、投与量は個体の年齢、体重、性別、体調などを考慮して選択される。前記医薬組成物中に含まれる有効成分の濃度は、対象に応じて多様に選択できることは自明であり、好ましくは医薬組成物に0.01μg/ml~50mg/mlの濃度で含まれるものである。その濃度が0.01μg/ml未満の場合には薬学的活性が示されない場合があり、50mg/mlを超えた場合には人体に毒性が現れる場合がある。
本発明の医薬組成物は、様々な経口または非経口投与の形態に剤形化することができる。経口投与用剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、硬質、軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、顆粒剤等が挙げられるが、これらの剤形は有効成分以外に希釈剤(例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン)、滑沢剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸およびそのマグネシウムまたはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール)をさらに含むことができる。また、前記錠剤は、マグネシウムアルミニウムシリケート、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリジンなどの結合剤を含有することができ、場合によってデンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩などの崩壊剤または沸騰混合物および/または吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤を含有することができる。前記剤形は、通常の混合、造粒化またはコーティング方法によって調製することができる。また、非経口投与用剤形の代表的なものは注射用製剤であり、注射用製剤の溶媒として水、リンゲル液、等張性生理食塩水または懸濁液が挙げられる。前記注射用製剤の滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として用いることができ、モノ-,ジ-グリセリドを含んで如何なる非刺激性の固定油をこのような目的に使用することができる。また、前記注射用製剤は、オレイン酸などの脂肪酸を使用することができる。
本発明において「予防」という用語は、本発明による医薬組成物の投与による心筋梗塞の発症、悪化および再発を抑制しまたは遅延させる全ての行為を意味する。
一側面では、本発明は、miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞で心臓機能を回復させるための医薬組成物に関する。
一具現例では、前記医薬組成物は、心筋壁の運動性、心拍出量、左室駆出率(%LVEF)および左室内径短縮率(%FS)を増加させ、および左室拡張末期径(LVIDd)および左室収縮末期径(LVISd)を減少させることができる。
一側面では、本発明は、miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞における心筋リモデリングおよび拡張型心不全症(dilative heart failure)を緩和するための医薬組成物に関するものである。
一具現例では、前記組成物は、心不全の治療用医薬組成物として使用することができる。
一側面では、本発明は、miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞における心筋組織病変を減少させるための医薬組成物に関するものである。
一具現例では、前記組成物は、心筋の壊死および損傷を防ぎ、正常な心筋の再生を促進させることができ、毛細血管密度および生存可能な心筋(viable myocardium)の数を増加させることができ、心筋の線維化(fibrosis)を抑えることができる。
一側面では、本発明は、miR145阻害剤を薬学的に有効な量で心筋梗塞に罹患した個体に投与する段階を含む心筋梗塞の治療方法に関するものである。
一具現例では、前記心筋梗塞は、急性期(acute phase)の心筋梗塞であってもよい。
一側面では、本発明は、心筋梗塞の予防および治療用医薬組成物の製造に使用するためのmiR145阻害剤の使用に関するものである。
一具現例では、前記心筋梗塞は、急性期(acute phase)の心筋梗塞であってもよい。
以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は本発明の内容を具体化するためのものに過ぎず、これによって本発明が限定されるものではない。
実施例1.EMT勾配および多能性関連miRNAスクリーニングおよび確認
1-1.EMT勾配を増加させるmiRNAおよび幹細胞遺伝子の発現を調節するmiRNAスクリーニング
本発明者の以前の研究において、3D培養を通じて細胞の再生能が増加し、これらのうち、EMT(epithelial-mesenchymal transition)に関連するmiRNAの変化が特徴的に観察され、EMT勾配(gradient)を増加させることが確認された。よって、3D培養と2D培養において差次的に発現されるmiRNA中、EMT勾配(gradient)を増加させることができるmiRNA群をスクリーニングし、差次的に発現される当該miRNAの標的遺伝子をmiRNAデータベース(miRWalk2.0およびmiRtargbase)で追跡した。また、これと共に細胞において幹細胞性(Stemness)に関連する遺伝子の発現を調節するmiRNAを同様のmiRデータベースを介してスクリーニングした(図1)。
その結果、miR203a-3p、miR124-3p、miR181-5p、およびmiR128-3pがEMT勾配が増強したことが確認され、miR145-5p、miR-128-3p、miR34a-5PなどのmiRNAが共通して多能性(pluripotency)遺伝子(oct-4、nanog、Klf-4およびSox-2)を標的とすることが確認された(図2)。
1-2.アンタゴミルのEMT勾配および多能性遺伝子発現の増加を確認
前記実施例1-1にて選定したmiRNA候補群のアンタゴミル(antagomir)の組み合わせが細胞の再生に必要なEMT勾配および多能性(pluripotency)関連遺伝子の発現を増加させることができるか否かを確認するために、各組み合わせ別の遺伝子発現の様相を比較した。具体的には、前記で選定した各miRNAのアンタゴミル(antagomir)(表1)を(株)上海Gene Pharmaから注文し、複数の組み合わせのmiR-antagomirをヒト骨髄に由来するMSCにそれぞれトランスフェクトした後、EMT勾配関連遺伝子であるSnai1、Slug、Twist1、Zeb1およびZeb2と多能性関連遺伝子であるOct4、Nanog、Sox2、およびKLF4の発現程度をqRT-PCRにより確認した。
その結果、様々な組み合わせの候補群のうち、4つの組み合わせのmiR-antigomir(145+124、145+203a、145+124+34aおよび145+124+106b)が対照群(scrambled oligonucleotide:NC)と比較して有意にEMT関連遺伝子および多能性関連遺伝子の発現を誘導することができることが確認された(図3)。そこで、これらmiRNAが心筋梗塞が発生した心臓において、再生作用を示すか否かを確認するために、EMT関連miRNAの1つであるmiR124-3pと多能性に関連するmiRNAの1つであるmiR-145-5pに対して、それぞれ独立してあるいはその組み合わせにより、心筋再生の治療効果を示すことができるか否かを確認するための研究を行った。
実施例2.アンタゴミルの心筋梗塞症の治療効果の分析
2-1.心筋梗塞動物モデルの作製
ラット(rat)(Fischer 344、F344)をカトリック大学の聖医キャンパス動物実験室で飼育し、安定化期間を経た後、動物実験に使用しており、本研究は、カトリック大学の聖医キャンパスの動物実験審議委員会の承認を受けて行われた(承認番号2019-0058-01)。ラットの胸部を切開し、曝露した心臓冠状動脈中、LAD(left anterior descending artery)を結紮(ligation)した後、結紮を切離することにより、心筋梗塞および虚血再灌流(ischemic reperfusion)モデルによる心筋梗塞を誘導し、心筋梗塞の動物モデルを作製した。前記心筋梗塞の動物モデルを作製する過程中、LADの結紮切離による再循環時、それぞれのmiRNAアンタゴミルを梗塞部位(infarct area)周辺の心筋に注射器で一次注入し、心筋梗塞誘導1週間後、同様の方法で開胸手術後、心筋に二次注入した(図4)。
2-2.心機能改善効果の確認
アンタゴミルによる心筋梗塞の治療効果を確認するために、心筋梗塞を誘導してから4時間になる時点を基準に1週間から4週間に及ぶ期間の間、心臓超音波(echocardiography)を通じて心臓機能の変化を測定した(図4)。また、左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)および左室内径短縮率(Fractional shortening)により心臓の収縮力を評価した。併せて、左室収縮末期径(LVISd)および左室拡張末期径(LVIDd)により拡張型心不全(diated heart hailure)による心臓の大きさの変化を定量的に評価した。
その結果、miR-145-5p阻害剤であるmiR-145に対するアンタゴミルを心筋に注入した場合、注入1週間後から左室駆出率(%LVEF)および左室内径短縮率(%FS)の有意な上昇が観察され、梗塞後の(post-infarct)4週間まで心機能の改善が維持されたことが示された(図5および6)。その反面、miR-124-3p阻害剤であるmiR-124に対するアンタゴミルを心筋に注入した場合、注入1週間後には効果が示されなかったが、梗塞後の(post-infarct)2週間後から左室駆出率および左室内径短縮率が有意に増加し、その効果が梗塞(infarction)4週間後まで維持されることが示された(図5および6)。また、心拍出量の増加とともに、左室拡張末期径(LVIDd)および左室収縮末期径(LVISd)が対照群と比較して処置群において有意に減少し(図5および6)、心筋リモデリングおよび拡張型心不全(dilative heart failure)症状が緩和したことが確認された。
これにより、miR-124に対するアンタゴミルおよびmiR-145に対するアンタゴミルは、それぞれ異なる時点で独立して心筋梗塞による損傷した心臓機能の回復を誘導することができることが確認された。
実施例3.アンタゴミルの組み合わせによる心筋梗塞の治療効果の分析
3-1.心臓機能回復効果の確認
前記実施例2-1における心筋梗塞の動物モデルを作製する過程中、LADの結紮切離による再循環時、それぞれのmiRNAアンタゴミルを梗塞部位周辺の心筋に注射器でmiR-124に対するアンタゴミルおよびmiR-145に対するアンタゴミルを組み合わせて直接注入した後(併用投与)、実施例2-2と同様に心臓機能の改善効果が確認された。
その結果、心臓超音波時、心筋壁の運動性が増加し、%LVEFおよび%FSが増加したことが示された(図7および8)。さらに、心拍出量の増加とともに左室拡張末期径(LVIDd)および左室収縮末期径(LVISd)が対照群に比べて処置群において有意に減少したことが示され、心筋のリモデリングおよび拡張型心不全の症状が緩和したことが確認された(図7および8)。
これにより、miR-124に対するアンタゴミルおよびmiR-145に対するアンタゴミルの併用投与が心筋梗塞によって損傷を受けた心臓機能を回復する効果があることが確認された。
3-2.心筋組織病変減少の効果
miR-124に対するアンタゴミルおよびmiR-145に対するアンタゴミルの併用投与による治療が心筋組織に及ぼす影響を分析するために、免疫蛍光染色を行い、心臓の筋肉内のコラーゲンの変性程度を測定することができるCHP(collagen hybridizing peptide:red color)との結合(hybridization)程度、正常な心筋組織であるトロポニン(troponin)(TNNT2:green color)および核酸(DAPI:blue color)を組織学的に分析した。定量的結果は、Image Jを介して心筋組織の損傷とリモデリングを分析した。
その結果、miR-124に対するアンタゴミルおよびmiR-145に対するアンタゴミルを併用投与した群において、対照群に比べて心筋の病変部位(CHP陽性部位;red)が有意に減少し、正常な心筋組織(CHP陰性/TNN2陽性:green)は、有意に増加していることが確認された(図9)。
これにより、miR-124に対するアンタゴミルおよびmiR-145に対するアンタゴミルの併用投与が心筋の壊死および損傷を防ぎ、正常な心筋の再生を促進し、心筋梗塞後の心臓機能の回復を促進することができることが分かった。
実施例4.アンタゴミルの組み合わせ条件による心筋梗塞の治療効果の分析
4-1.アンタゴミルの混合比による効果の確認
miR-124に対するアンタゴミルおよびmiR-145に対するアンタゴミルの混合比(1:1、1/3:1および1/2:1)(各アンタゴミルの総投与量(ug)の比率w/w)による心筋梗塞の治療効果を比較した。
その結果、2つのアンタゴミルの併用投与によるLVEF(%)の増加は、1:1で混合した群と1/3:1および1/2:1で混合した群の全部において有意な差はみられず、他の心機能評価(LVIDおよびSWT)においても、前記3つの群間に有意な差がないことが示された(図10)。これを組織学的に分析した結果、毛細血管密度(capillary density)も3群(1/3:1、1/2:1および1:1)の間に差がないことが示された(図11)。また、各混合比による線維化(fibrosis)の程度および生存可能な心筋(viable myocardium)の数を確認した結果からも、3つの混合比による差が存在しないことが確認された(図12)。
4-2.アンタゴミル単回投与および併合投与治療効果の比較
前記実施例4-3において、miRNA124に対するアンタゴミルの割合が全体的な治療効果に有意な影響を及ぼさなかったため、miRNA124に対するアンタゴミルおよびmiRNA145に対するアンタゴミルそれぞれの単独投与による治療効果をこれらの組み合わせによる併用投与と比較分析した。
心機能回復に及ぼす影響を確認した結果、心筋梗塞の治療後、1週間となる時点では、miRNA145単独阻害群(miR-145に対するアンタゴミル投与群)がmiRNA-124単独阻害群(miR-124に対するアンタゴミル投与群)に比べてより顕著な心機能改善(LVEF)効果を示し、2~4週目にはmiRNA-124単独阻害群においても対照群と比較して向上した心機能改善効果を示した(図13の右側)。また、miR-124またはmiR-145の単独阻害効果は、これらの組み合わせによる効果と同様のレベルであることが示された(図13の左側 vs 右側の比較)。同様に、他の心機能指標(SWTおよびLVID)においても、各単独投与群において併用投与群に準ずる心機能改善効果を観察することができた(図13)。その一方、組織学的に分析した結果、miRNA-145の単独阻害がmiRNA-124の単独阻害と比較してより高い毛細血管密度および生存可能な心筋の数を示し、その効果はこれらの組み合わせ(124/145)による効果と同程度であることが確認された(図14)。さらに、心筋(myocardium)の線維化を分析する際、miR-145単独阻害群においてmiR-124単独阻害群に比べて心筋の線維化が著しく抑制される効果を示し、これはこれらの組み合わせ(124/145)による効果と同程度であることが確認された(図15)。
このことからmiRNA145に対するアンタゴミルおよび miRNA 145に対するアンタゴミルの組み合わせ(併用投与)による心筋梗塞の治療効果を、miRNA145に対するアンタゴミル単独投与によっても再現できることが確認された。
実施例5.miRNA-145に対するアンタゴミルの投与時期別の治療効果の分析
miRNA-145に対するアンタゴミルの投与時点による心筋梗塞の治療効果を確認するために、心筋梗塞発症後、2週間の間、様々な時点(day 0、7および14)にmiRNA-145に対するアンタゴミルを単回投与し、心機能回復の程度を分析した。
その結果、心筋梗塞が発症してから1日後(day1)にmiRNA-145に対するアンタゴミルを注入した場合に単回投与にもかかわらず、対照群に比べて有意な心機能改善(LVEF%)が示され、day7またはday14に注入した場合には、対照群と比較して有意な差がみられなかった(図16)。したがって、急性心筋梗塞が発症し、虚血性壊死(ischemic necrosis)および炎症が活性化された期間には、miRNA-145に対するアンタゴミルが治療的効果を示すが、急性炎症などが消失する静止期(stationary phase)では、治療効果が有意に現れないことが確認された。
これにより、miRNA-145に対するアンタゴミルは、心筋梗塞が発症した数日内、すなわち、心筋梗塞の初期(急性炎症のある期間)に局限され、効果を示す治療濃度域(therapeutic window)の特異的効果を有し、恒常性(homeostasis)が回復した組織では、心筋梗塞の治療効果が示されないことが分かった。
前記の実施例により、miR-124およびmiR-145のアンタゴミルがそれぞれ単独または組み合わせて投与される場合、心筋梗塞における虚血性損傷(ischemic injury)による心筋の損傷および壊死を減少させ、同時に、心筋組織の再生を増加させることにより、心筋梗塞症候の再生治療に効果を示すことが確認され、miR-145アンタゴミルの場合、単独投与時にもmiR-124アンタゴミルと併用投与した場合と同程度の治療効果を示し、これらは、心筋梗塞発症後、数日以内の初期(急性期)にのみ治療効果を示す急性期特異的治療効果を示すことが確認された。

Claims (20)

  1. miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  2. miR145は、miR-145-5pである、請求項1に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  3. miR145阻害剤は、RNA阻害分子(inhibitoy RNA molecule)、アンタゴニストmicroRNA、酵素的RNA分子、および抗miRNA抗体からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  4. miR145阻害剤は、miR145に特異的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)、アンタゴミル(antagomir)、リボザイム(ribozyme)、アプタマー(aptamer)、siRNA、miRNA、shRNA(short hairpin RNA)、PNA(peptide nucleic acid)およびLNA(locked nucleic acid)からなる群から選択される1つである、請求項1に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  5. miR145阻害剤は、配列番号4で表されるanti-mir145である、請求項1に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  6. mir124阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  7. miR203a阻害剤、miR181阻害剤、miR128阻害剤、miR-128阻害剤、miR106b阻害剤およびmiR34a阻害剤からなる群から選択される1つ以上の阻害剤をさらに含む、請求項6に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  8. 虚血性心筋壊死または急性炎症が存在する状態で投与される、請求項1に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  9. 急性期(acute phase)心筋梗塞である、請求項1に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  10. 前記急性期心筋梗塞は、虚血性心筋壊死または急性炎症が存在する心筋梗塞である、請求項9に記載の心筋梗塞の治療用医薬組成物。
  11. miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞において心臓機能を回復させるための医薬組成物。
  12. 心筋壁の運動性、心拍出量、左室駆出率(%LVEF)および左室内径短縮率(%FS)を増加させ、および左室拡張末期径(LVIDd)および左室収縮期内径(LVISd)を減少させる、請求項11に記載の医薬組成物。
  13. miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞における心筋のリモデリングおよび拡張型心不全(dilative heart failure)症を緩和するための医薬組成物。
  14. miR145阻害剤を有効成分として含む心筋梗塞における心筋組織病変を減少させるための医薬組成物。
  15. 心筋の壊死および損傷を防ぎ、正常な心筋の再生を促進させる、請求項14に記載の医薬組成物。
  16. 毛細血管密度および生存可能な心筋(viable myocardium)の数を増加させる、請求項14に記載の医薬組成物。
  17. 心筋の線維化(fibrosis)を抑制する、請求項14に記載の医薬組成物。
  18. miR145阻害剤を薬学的に有効な量で心筋梗塞に罹患した個体に投与する段階を含む、心筋梗塞の治療方法。
  19. 急性期(acute phase)心筋梗塞症である、請求項18に記載の心筋梗塞の治療方法。
  20. 心筋梗塞の予防および治療用医薬組成物の製造に使用するための、miR145阻害剤の用途。
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