JP2024082217A - テトラカルボン酸二無水物、ポリエステルイミド、およびポリエステルイミドフィルム - Google Patents

テトラカルボン酸二無水物、ポリエステルイミド、およびポリエステルイミドフィルム Download PDF

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JP2024082217A JP2023079533A JP2023079533A JP2024082217A JP 2024082217 A JP2024082217 A JP 2024082217A JP 2023079533 A JP2023079533 A JP 2023079533A JP 2023079533 A JP2023079533 A JP 2023079533A JP 2024082217 A JP2024082217 A JP 2024082217A
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匡俊 長谷川
淳一 石井
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Toho University
Resonac Corp
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Hitachi Chemical Co Ltd
Toho University
Showa Denko Materials Co Ltd
Resonac Corp
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Abstract

【課題】低吸水率かつ低誘電正接であるポリエステルイミドの製造に使用できるテトラカルボン酸二無水物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):
Figure 2024082217000030

で表され、前記一般式(1)中、Arが、2,6-ナフタレン構造を含む、テトラカルボン酸二無水物。
【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は、テトラカルボン酸二無水物、ポリエステルイミド、ポリエステル
イミドフィルム、高速通信用フレキシブルプリント配線基板、および耐熱絶縁基板に関す
る。
軽量で繰り返しの曲げおよび展開や複雑な形状に折り曲げて実装可能な電子回路基板、
並びに、フレキシブルプリント配線基板(FPC)は、近年、パーソナルコンピューター
、携帯電話、デジタルカメラ、プリンター、ハードディスク、医療用機器、自動車電装部
品等で広く用いられている。
FPCは、通常、ハンダ耐熱性を有するポリイミドからなる電気絶縁フィルム(ベース
フィルム材)上に銅回路が形成されたものである。FPCは、例えば、回路とポリイミド
フィルムとの強固な密着力を確保するため、エポキシ樹脂/アクリルゴム系等の強力な接
着剤を用いてポリイミドフィルムと銅箔を貼り合わせ、銅張積層板を作製しておき、これ
をフォトリソグラフィーとFeCl水溶液により銅箔をエッチング処理(サブトラクテ
ィブ法)することにより製造される。
FPCのベースフィルム材として現在最も需要の多いポリイミドフィルムは、テトラカ
ルボン酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物(PMDA)とジアミン成分として
4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)から得られる下記式(8):
Figure 2024082217000001
で表される分子構造を有するKapton(R)Hフィルムである。これはFPCのベー
スフィルム材に求められる基本的特性、即ち、短期耐熱性(ガラス転移温度:T)、電
気絶縁信頼性、膜純度、機械的特性、耐薬品性、銅箔密着性および難燃性を全て満足して
いる。
近年、FPCの高精細化に伴い回路の位置ずれ許容制限が厳しくなり、デバイス製造時
の熱サイクルに対するベースフィルム材の寸法安定性(XY方向の熱寸法安定性)が重視
されている。熱寸法安定性を確保するためには、ベースフィルム材のTがハンダリフロ
ー温度(260℃)よりもずっと高いことに加えて、T以下のガラス領域でXY方向の
線熱膨張係数(CTE)が十分に低いことが望まれる。
殆どの一般的な高分子フィルムは、耐熱性が不十分で、Tがハンダリフロー温度に比
べてずっと低いのに加え、回路材である銅箔のCTE(17~18ppm/K)よりもず
っと高いCTE(50~100ppm/K)を示すため、熱寸法安定性も低い。一方、K
apton(R)Hフィルムは一般的な高分子フィルムよりは低いCTEを有しているが
、銅箔のCTEに比べると依然として高い値であり、熱寸法安定性の点では改善の余地が
ある。
熱寸法安定性を改良したポリイミドフィルムも上市されている。例えば、銅箔に近いC
TEを示すKapton(R)ENや、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物(s-BPDA)とp-フェニレンジアミン(p-PDA)より得られ、銅箔
より低いCTEを示す、下記式(9):
Figure 2024082217000002
で表される分子構造を有するポリイミドフィルム、Upilex(R)S等が知られてい
る。
また最近、スマートフォン等の移動体通信機器の高速、大容量、および低遅延通信を可
能にする新通信規格:5Gへの移行に伴い、移動体通信機器のアンテナ部とメイン基板を
接続するFPC部品では、従来よりも高い動作周波数(≧3.6GHz)における電気絶
縁基板由来の誘電損失を大幅に低減することが喫緊の課題となっている。
FPCの絶縁層で生ずる誘電損失を抑制するために、ベースフィルム材であるポリイミ
ドフィルム自身の誘電正接(tan δ)を低く抑えることが有効である。しかしながら
、現行のポリイミドフィルムでは、マイクロ波域での誘電正接を劇的に低減することは原
理的に困難であるという問題があった。例えば、PMDAと4,4’-ODAより実験室
的に作製されたポリイミドフィルムは、高い誘電正接(10GHzで0.0140)を示
すことが報告されている(例えば、非特許文献1を参照。)。これはポリイミドの分子構
造中に高含有率で存在する分極したイミド基(O=C-N-C=O)によるものであると
考えられる。したがって、ベースフィルム材としてイミド基を多く含むポリイミドフィル
ムを選択する限り、低誘電正接化は困難であり、上記低いCTEを示すポリイミドフィル
ムも同様な理由からも高速通信FPC用途には好適ではない。
しかしながら、イミド基は双極子-双極子相互作用に基づく強い分子間力の起源であり
、ポリイミドの耐熱性(極めて高いT)を支える不可欠な基であるため、イミド基を安
易に排除するとポリイミドの最大の特徴である優れた物理的耐熱性(短期耐熱性)が大き
く損なわれる恐れがある。
また従来のポリイミドフィルムでは、吸水率が高いことも重大な問題になることがある
。これは、上記誘電正接増大の要因と同様に、ポリイミド構造中に高い含有率で含まれる
分極したイミド基の存在によるものであると考えられる。吸水率が大きいと、吸湿により
許容を上回るフィルムの寸法変化が生じる恐れがある。また水の誘電損失は非常に大きい
ため、フィルムに吸着または吸収された水によって、ポリイミドフィルムの誘電正接増大
に拍車がかかることになる。
上記のように、従来のポリイミドフィルムに元来備わっている優れた特性を維持しなが
ら、高い熱寸法安定性(低CTE)、低吸水率、および低誘電正接をより高いレベルで実
現することは、FPCのベースフィルム材としてポリイミド樹脂を選択する限り原理的に
困難である。そこで、ポリイミドの代わりに変性ポリイミド、具体的にはポリエステルイ
ミドを用いることで、上記の問題を解決可能とする方法が提案されている(例えば、非特
許文献2を参照。)。ポリエステルイミドは、ポリマー骨格にエステル基(エステル結合
)とイミド基(イミド結合)とを有するポリマーである。
この技術によれば、エステル基を介して芳香環をパラまたはそれに類する結合位置で連
結したモノマー、例えば下記式(10):
Figure 2024082217000003
で表されるテトラカルボン酸二無水物(TA-HQ)を用い、これと剛直な構造を有する
汎用ジアミン(例えばp-PDA)を組み合わせることで、低熱膨張性を確保しながら、
従来のテトラカルボン酸二無水物(PMDA、s-BPDA等)を用いた場合に比べて吸
水率の低い耐熱性フィルムが得られる。
また、優れた物理的耐熱性(高Tg)および優れた熱寸法安定性(低CTE)を維持し
ながら更に吸水率を低減するには、エステル連結基を介してTA-HQよりも更に分子の
長手方向に芳香環を増環および延長した、下記式(11)~(13)で表されるテトラカ
ルボン酸二無水物を用いることが有効である。
Figure 2024082217000004
Figure 2024082217000005
Figure 2024082217000006
例えば、芳香環を6環まで増環した上記式(13)で表されるテトラカルボン酸二無水
物を用い、これと適切な比率で剛直構造のジアミン(p-PDA)および屈曲構造のジア
ミン(4,4’-ODA)を併用(共重合)することで、沈殿析出やゲル化することなく
均一で粘稠なポリエステルイミドの前駆体ワニスが得られる。これを基板上に塗布し乾燥
させた後、高温で加熱して脱水閉環反応(熱イミド化)することで、極めて高いT、超
低CTE、低い吸水率、十分な可撓性、および10GHzで非常に低い誘電正接を有する
ポリエステルイミドフィルムを得ることができる。
テトラカルボン酸二無水物構造を分子の長手方向への増環および延長することで得られ
た効果(吸水率と誘電正接が共に徐々に低下)は、ポリエステルイミド構造中、モル分極
の大きなイミド基の含有率が相対的に減少したことに起因していると考えられる。そのた
め、上記式(13)で表されるテトラカルボン酸二無水物に留まらず、更に増環および延
長したテトラカルボン酸二無水物を用いれば、吸水率と誘電正接を更に低減可能である。
しかしながら、更なる増環策は、ポリイミド前駆体の溶媒への溶解性(本明細書において
溶媒への溶解性を「溶媒溶解性」という場合がある。)を支配するポリイミド前駆体構造
中のカルボキシ基の含有率の低下をもたらす。これによりポリイミド前駆体の重合の際、
生成したポリイミド前駆体の溶媒和が不十分となって沈殿析出やゲル化が起こり、次の製
膜工程が実施困難になる恐れがある。
テトラカルボン酸二無水物の更なる増環策はまた、以下に示す、より顕在化した障害に
より実施困難になるという問題があった。
例えば、上記式(13)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、一般的には下記反応
式(14)に従い、酸受容剤の存在下、非プロトン性溶媒中、室温以下でトリメリット酸
無水物クロリド(反応式(14)中、(a)、トリメリット酸(TMAC))とあらかじ
め合成しておいた分子の長手方向に増環および延長したビスフェノール(反応式(14)
中、(b))を反応させて得られる。
Figure 2024082217000007
その際、上記ビスフェノール(b)は、ポリエステルイミドフィルムの低熱膨張性発現
を意図して、剛直で直線状の構造に設定されているため、溶媒溶解性があまり高くない。
予想されるように、ビスフェノール(b)を更に増環および延長すると、得られるビスフ
ェノールはもはや溶媒溶解性を失い、これをあらかじめ合成すること自体困難になるとい
う、更なる増環策を阻む大きな障害があった。
ACS Applied Polymer Materials,3, 362 (2021). Polymers for Advanced Technologies, 31, 389 (2020).
本発明の課題は、低吸水率かつ低誘電正接であるポリエステルイミドの製造に使用でき
るテトラカルボン酸二無水物を提供することである。本発明の他の課題は、低吸水率かつ
低誘電正接であるポリエステルイミドを提供することである。本発明の更に他の課題は、
信頼性に優れ、誘電損失が低減された高速通信用フレキシブルプリント配線基板および耐
熱絶縁基板を提供することである。
本発明者らによる前述の知見および考察に基づき、本発明者らは更なる鋭意検討を重ね
た結果、分子の長手方向に芳香環を増環および延長する際に、2位および6位に結合位置
を持つナフタレン構造(2,6-ナフタレン構造)を導入することで、ビスフェノール構
造の剛直性および直線性を維持したまま、十分な溶媒溶解性を確保することができるよう
になり、これを用いて従来にない大きく増環された対称性エステル基含有テトラカルボン
酸二無水物を簡便で効率的な方法で合成できることを見出した。さらに、これを用いて特
性上、極めて有益な高速通信FPC用絶縁材料に適したポリエステルイミドフィルムが得
られることを見出し、本発明を完成するに至った。本明細書において、ポリエステルイミ
ドは、ポリマー骨格にエステル基(エステル結合)とイミド基(イミド結合)とを有する
ポリマーである。
本発明は以下に示す実施形態を含む。本発明は以下の実施形態に限定されない。
[1] 下記一般式(1):
Figure 2024082217000008
で表され、
前記一般式(1)中、Arが、下記式(2)~(6):
Figure 2024082217000009
Figure 2024082217000010
Figure 2024082217000011
Figure 2024082217000012
Figure 2024082217000013
のいずれかで表される、
テトラカルボン酸二無水物。
[2] 下記一般式(7):
Figure 2024082217000014
で表される構造単位を含み、
前記一般式(7)中、Arは前記式(2)~(6)のいずれかで表され、Arは2
価の芳香族基、2価の脂肪族基、または芳香族基と脂肪族基の少なくとも一方を含む2価
の基である、
ポリエステルイミド。
[3] 上記[2]に記載のポリエステルイミドを含む、フィルム(本明細書において、
「ポリエステルイミドフィルム」という場合がある。)。
[4] 熱機械分析によって測定された100~200℃の間の平均線熱膨張係数が、3
0ppm/K以下である、上記[3]に記載のフィルム。
[5] 動的粘弾性分析により測定されたガラス転移温度が、300℃以上であるかまた
は検出されない、上記[3]に記載のフィルム。
[6] 吸水率が、0.5%以下である、上記[3]に記載のフィルム。
[7] 動作周波数10GHzにおける誘電正接が、0.003以下である、上記[3]に記載のフィルム。
[8] 上記[3]~[7]のいずれか1項に記載のフィルムを含む、高速通信用フレキ
シブルプリント配線基板。
[9] 上記[3]~[7]のいずれか1項に記載のフィルムを含む、耐熱絶縁基板。
本発明の実施形態によれば、低吸水率かつ低誘電正接であるポリエステルイミドの製造
に使用できるテトラカルボン酸二無水物を提供することができる。本発明の他の実施形態
によれば、低吸水率かつ低誘電正接であるポリエステルイミドを提供することができる。
本発明の更に他の実施形態によれば、信頼性に優れ、誘電損失が低減された高速通信用フ
レキシブルプリント配線基板および耐熱絶縁基板を提供することができる。
図1は、実施例5に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 図2は、実施例5に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 図3は、実施例8に記載のポリエステルイミド前駆体薄膜の赤外線吸収スペクトルである。 図4は、実施例8に記載のポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルである。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上
限値又は下限値は、別の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細
書中に記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換
えてもよい。本明細書中に段階的に記載されている上限の数値と下限の数値とから、それ
ぞれある数値を選択し、段階的な数値範囲としてもよい。また、本明細書中に記載されて
いる上限の数値と下限の数値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中
に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断ら
ない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において「工程」の語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明
確に区別できない工程であってもその工程の初期の作用が達成されれば、当該工程も含ま
れる。
本明細書において「膜」には、連続する膜と不連続な膜とが含まれる。「膜」の厚さは
、均一であっても不均一であってもよい。「膜」の面方向の外縁及び厚さ方向の外縁は、
それぞれ、明確である場合と不明確である場合があり得る。「層」についても同様である。
本発明の実施形態は、一連のエステル連結基を介して分子の長手方向に増環および延長
した新規なテトラカルボン酸二無水物およびこれらを用いて得られたポリエステルイミド
フィルムを提供するものである。まず、新規なテトラカルボン酸二無水物とその製造方法
について以下に説明する。ただし、新規なテトラカルボン酸二無水物の製造方法は以下に
限定されない。
<テトラカルボン酸二無水物およびその製造方法>
本発明の一実施形態であるテトラカルボン酸二無水物は、上記一般式(1)で表される
。一般式(1)中、Arは、上記式(2)~(6)のいずれかである。
一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、2,6-ナフタレン構造を含む
従来にない大きく増環された対称性エステル基含有テトラカルボン酸二無水物であり、剛
直性および直線性を維持しつつ溶媒への十分な溶媒溶解性を有する。
Arは、式(3)~(6)のいずれかであってよく、式(4)~(6)のいずれかであることが好ましく、式(4)又は(6)であることがより好ましく、式(6)であることが更に好ましい。
以下に一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造方法について説明する
が、これに限定されるものではない。以下の製造方法では、分子の長手方向に増環および
延長する際に2,6-ナフタレン構造を導入することで、溶媒への十分な溶媒溶解性を確
保できるため、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を簡便かつ効率的に合
成することが可能である。
一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物のうち、一例として下記式(15)
で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造方法を以下に説明する。
Figure 2024082217000015
上記式(15)で表されるテトラカルボン酸二無水物は下記反応式(16)で表される
経路で合成される。
Figure 2024082217000016
まず、触媒として強酸の存在下、無水酢酸(AcO)で出発原料である6-ヒドロキ
シ-2-ナフタレンカルボン酸(上記反応式(16)中、(d))のヒドロキシ基を、ア
セチル化して保護し、6-アセトキシ-2-ナフタレンカルボン酸(反応式(16)中、
(e))を得る。
具体的には、反応容器に出発原料(d)、過剰量の無水酢酸および触媒量の酸(例えば
濃硫酸)を入れ、窒素雰囲気中、80~140℃で1~5時間還流して均一溶液を得る。
これを室温まで冷却して生成物を析出させる。析出物を濾過により回収し、洗浄し、50
~150℃で1~24時間にわたり真空乾燥するとアセチル化物(e)が得られる。
次にアセチル化物(e)と2,6-ジヒドロキシナフタレン(g)をエステル化反応さ
せて、エステル基含有ジアセトキシ体(h)を得る工程について説明する。エステル化反
応の際、アセチル化物(e)のカルボキシ基を変換して酸クロリド(f)を得ておき、こ
れと2,6-ジヒドロキシナフタレン(g)を反応させる方法(酸ハライド法)の他、縮
合剤を用いてエステル化する方法が適用できる。以下に酸ハライド法について説明する。
上記アセチル化物(e)を塩素化する反応の際に用いる塩素化剤は特に限定されないが
、例えば塩化チオニル、塩化スルフリル、塩化オキサリル、N-クロロコハク酸イミド、
ホスゲン、メタンスルホニルクロリド、メトキシアセチルクロリド、三塩化リン、五塩化
リン、オキシ塩化リン、N-クロロフタルイミド、トリクロロイソシアヌル酸、トリクロ
ロメタンスルホニルクロリド、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン等が挙
げられる。上記塩素化剤に触媒量のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)やピリジン
を加えて反応系中でビルスマイヤー試薬を発生させることで反応性を高めてもよい。安全
性、経済性、過剰量加えた場合の塩素化剤除去のしやすさおよび副生成物の除去のしやす
さの観点から塩化チオニルが好適に用いられる。
使用する塩素化剤が塩化チオニルのように液体の場合は、溶媒を用いずに、塩素化剤を
塩素化剤兼溶媒として利用できる。液状塩素化剤の留去が容易な場合、塩素化剤は基質に
対して大過剰量となるように添加してもよい。過剰な塩素化剤を留去する際、共沸剤を用
いてもよい。例えば反応終了後、過剰な塩化チオニルを留去する場合は、トルエンまたは
ベンゼンを共沸剤として用いることで留去の効率を高めることもできる。
また上記塩素化の際、必要に応じて溶媒を用いてもよい。使用可能な溶媒は、塩素化剤
と反応せず、アセチル化物(e)を溶解するものであればよく、特に限定されないが、例
えばジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミ
ド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは脱水処理されていることが望ましい。
これらは2種類以上混合して使用してもよい。溶媒を用いる場合、添加する塩素化剤量は
アセチル化物(e)の1モルに対してモル比が、例えば1.1~10、好ましくは2~5
である。塩素化の際の反応温度は、塩素化剤の沸点や用いた溶媒の沸点にもよるが、例え
ば20~150℃、好ましくは50~100℃である。反応時間は例えば30分~6時間
、好ましくは1~4時間である。
塩素化反応終了後、過剰な塩素化剤や溶媒および副生成物を除去することで、目的とす
る酸クロリド(f)がほぼ定量的に得られる。例えば、DMFを触媒として塩化チオニル
で塩素化する場合は、副生成物は気体(二酸化硫黄)であるため、反応終了後、反応溶液
にベンゼンまたはトルエンを加えて過剰な液体を共沸留去するだけで、高純度の酸クロリ
ド(f)を得ることができるが、適当な溶媒から再結晶を行って酸クロリド(f)を精製
してもよい。その際、使用可能な溶媒は、酸クロリド(f)と反応せず且つ再結晶操作が
行えればよく、特に限定されない。例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、
トルエン等の無極性炭化水素系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、γ-ブチ
ロラクトン等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シク
ロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオ
キサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N
-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジ
ノン等のアミド溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒などが挙げ
られる。これらを2種類以上混合して用いてもよい。これらの溶媒は十分に脱水処理され
ていることが望ましい。溶媒中の含水量および再結晶効率の観点から、シクロヘキサン、
ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒が好適に用いられる。
酸クロリド(f)と2,6-ジヒドロキシナフタレン(g)の反応では、よく乾燥した
反応容器中、所定量の2,6-ジヒドロキシナフタレン(g)および酸受容剤を脱水処理
済みの溶媒に溶かし、セプタムキャップで密封してA液とする。次に所定量の酸クロリド
(f)を脱水処理済みの溶媒に溶かし、セプタムキャップで密封してB液とする。B液を
所定の温度に設定して撹拌しながら、B液にA液をシリンジにて徐々に加える。その際、
A液添加後の全溶質濃度は例えば5~50質量%、好ましくは7~30質量%である。反
応は例えば-20~70℃、好ましくは0~50℃で、例えば1~72時間、好ましくは
2~48時間行う。
上記反応に用いるA液とB液の溶媒は同一なものを用いても異なっていてもよい。使用
可能な溶媒は、添加した酸クロリド(f)、2,6-ジヒドロキシナフタレン(g)およ
び酸受容剤と反応せず、これらをよく溶解するものであればよく、特に限定されない。例
えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、γ-ブチロラクトン(GBL)等のエス
テル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチ
ルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド溶媒、ジメチルスル
ホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等
のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン
、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。これらを2種類以上混合して用い
てもよい。これらの溶媒は十分に脱水処理されていることが望ましい。溶解力の観点から
GBLが好適に用いられる。
上記エステル化反応の際、目的外のモノエステル体の生成を避けるため、酸クロリド(
f)の使用量はジオールに対して当量(2倍モル量)よりもやや過剰に設定することが望
ましく、ジオールを1モルとすると、モル比は例えば2.01~5であり、好ましくは2
.05~3である。経済性および分離効率の点からは、酸クロリド(f)を過剰に用いる
ことなく、モル比5以下であることが好ましい。
上記エステル化反応の際、添加される酸受容剤として有機3級アミンが使用可能であり
、特に限定されないが、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、N,N-ジメチルアニ
リン、N,N-ジエチルアニリン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチル
アミン等が用いられる。毒性、経済性、過剰分に加えられた酸受容剤や副生成物である塩
酸塩の分離のしやすさの観点からピリジンが好適に使用される。また、酸受容剤の添加量
は発生する理論塩化水素量(モル)に対して例えば1~10倍モル量、好ましくは2~5
倍モル量である。
エステル化反応後、析出した沈殿物をまずトルエン等の無極性溶媒で洗浄して過剰の酸
クロリド(f)を除去し、次いで少量の反応溶媒で洗浄する。更に水で洗浄して副生成物
である塩酸塩を除去するが、1%硝酸銀水溶液を用いて、洗浄液に塩化銀の白色沈殿の生
成の観察されなくなるまで、繰り返し水で洗浄する。
エステル化反応は、上記の酸ハライド法の他、脱水縮合剤を用いる方法も適用できる。
使用可能な縮合剤は特に限定されないが、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(D
CC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルア
ミノプロピル)カルボジイミド(EDC)等のカルボジイミド系縮合剤が挙げられる。こ
れらと4-ジメチルアミノピリジンや1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等とを添加して
併用してもよい。カルボジイミド系縮合剤以外にもN,N’-カルボニルジイミダゾール
等のイミダゾール系縮合剤、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-
イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn水和物等のトリアジン系縮合剤も使用可能
である。反応効率、経済性、副生成物の除去のしやすさの観点から、縮合剤として1-エ
チル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドやN,N’-ジイソプロピル
カルボジイミド等が好適に用いられる。
次に、上記のようにして得られたエステル基含有ジアセトキシ体(h)の末端アセトキ
シ基をアルカリで加水分解して脱保護することで、エステル基含有ビスフェノール(i)
が得られる。上記反応は、具体的には以下のようにして行う。エステル基含有ジアセトキ
シ体(h)を溶媒に溶かし、これに塩基を加え、例えば0~50℃で5分~3時間撹拌し
て末端のアセトキシ基の加水分解を完結する。反応の完結は薄層クロマトグラフィー(T
LC)で追跡することができる。その後、酸を加えて中和することでビスフェノール(i
)を析出させ、濾過、洗浄、および真空乾燥により、ほぼ定量的にビスフェノール(i)
が得られる。
上記加水分解の際、溶媒にジアセトキシ体(h)溶解しておいて、これにアルカリ水溶
液を添加してもよい。その際に使用可能な溶媒は、塩基に対して安定で、アルカリ水溶液
とよく混和し、ジアセトキシ体(h)を溶解するものであればよく、特に限定されないが
、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル
-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホオキシド、スルホラン等のスルホン
系溶媒、γ-ブチロラクトン等の環状エステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジ
オキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、エチレン
グリコール等のグリコール系溶媒等が挙げられる。これらを2種類以上混合して使用して
もよい。
加水分解の際、加水分解により生成するビスフェノール(i)の末端ヒドロキシル基の
酸化を抑制するために、硫酸水素ナトリウムを添加してもよい。この際硫酸水素ナトリウ
ムの添加量は特に制限はないが、例えば全容質量に対して0.1~1質量%程度である。
加水分解反応の際、塩基として、濃アンモニア水(28質量%)が好適に用いられるが
、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等無機強塩基の希薄溶液も使用可能である。無
機強塩基水溶液の濃度は特に制限はなく、例えば0.1~2Nである。加水分解反応は例
えば-20~50℃、好ましくは0~30℃で、例えば5分~12時間、好ましくは10
分~4時間撹拌して行う。塩基として無機強塩基を用いる場合、水溶液の濃度や反応温度
が高すぎたり、反応時間が長すぎたりしないように調節することで、エジアセトキシ体(
h)の末端アセトキシ基だけでなく、エステル基まで加水分解されること防止できる。
加水分解反応後の中和反応で用いる酸は特に制限されず、塩酸等の無機酸水溶液や酢酸
等の有機酸が使用可能である。用いる酸の濃度は特に制限はなく、例えば0.1~2Nで
ある。加水分解後、ビスフェノール(i)を析出させるため、反応溶液が弱酸性になるよ
うに酸を添加するが、溶液のpHは特に制限はなく、例えばpH2~5、好ましくはpH
3~4に調節する。
上記のようにして得られたビスフェノール(i)を用いて一般式(1)で表されるテト
ラカルボン酸二無水物を得るエステル化工程について以下に説明する。この反応にはトリ
メリット酸無水物クロリド(TMAC)を用いる酸ハライド法の他、トリメリット酸無水
物(TMA)のカルボキシ基とビスフェノール(i)のヒドロキシ基を、縮合剤を用いて
直接エステル化する方法が適用可能である。TMACが安価に入手可能であることから、
経済性、反応効率の観点から酸ハライド法が好適に用いられる。以下に酸ハライド法につ
いて説明する。
よく乾燥した反応容器中、所定量のビスフェノール(i)および酸受容剤を脱水処理済
みの溶媒に溶かし、セプタムキャップで密封してA液とする。次に所定量のTMACを脱
水処理済みの溶媒に溶かし、セプタムキャップで密封してB液とする。B液を所定の温度
に設定して撹拌しながら、B液にA液をシリンジにて徐々に加える。その際、A液添加後
の全溶質濃度は例えば5~50質量%、好ましくは7~30質量%である。反応は例えば
-20~70℃、好ましくは0~50℃で、例えば1~72時間、好ましくは2~48時
間行う。反応終了後、析出物を濾過、洗浄、および乾燥することで、目的とするテトラカ
ルボン酸二無水物(j)が得られる。
上記反応に用いるA液とB液の溶媒は同一なものを用いても異なっていてもよい。使用
可能な溶媒は、添加したTMAC、ビスフェノール(i)および酸受容剤と反応せず、こ
れらをよく溶解するものであればよく、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチル
ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(N
MP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド溶媒、ジメチルスルホキシ
ド、スルホラン等のスルホン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、γ-ブチ
ロラクトン(GBL)等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等
のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン
、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。これらを2種類以上混合して用い
てもよい。これらの溶媒は十分に脱水処理されていることが望ましい。溶解力、経済性、
安全性、処理のしやすさの観点からNMPやGBLが好適に用いられる。
上記エステル化反応の際、目的外のモノエステル体の生成を避けるため、また、TMA
Cが安価に入手でき、除去もしやすいことを考慮して、TMACの使用量はビスフェノー
ル(i)に対して当量(2倍モル量)よりも過剰に設定することが望ましく、ビスフェノ
ール(i)を1モルとすると、モル比は例えば2.05~5であり、好ましくは2.1~
3である。
上記エステル化反応の際、添加される酸受容剤として有機3級アミンが使用可能であり
、特に限定されないが、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、N,N-ジメチルアニ
リン、N,N-ジエチルアニリン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチル
アミン等が用いられる。これらはあらかじめ脱水されていることが望ましい。毒性、経済
性、過剰分に加えられた酸受容剤や副生成物である塩酸塩の分離のしやすさの観点からピ
リジンが好適に使用される。また、酸受容剤の添加量は発生する理論塩化水素量(モル)
に対して例えば1~10倍モル量、好ましくは2~5倍モル量である。
エステル化反応後、析出した沈殿物をまずトルエン等の無極性溶媒で洗浄して過剰のT
MACを除去し、次いで水で洗浄して副生成物である塩酸塩を除去するが、1%硝酸銀水
溶液を用いて、洗浄液に塩化銀の白色沈殿の生成の観察されなくなるまで、繰り返し水で
洗浄する。水で洗浄した際、末端酸無水物基の一部が加水分解をして開環する。これを例
えば150~250℃、好ましくは170~220℃で、例えば1~24時間、好ましく
は2~12時間真空で乾燥することで、一部の開環物を完全に閉環することができる。
上記エステル化反応は、上記の酸ハライド法の他、脱水縮合剤を用いる方法も適用でき
る。使用可能な縮合剤は特に限定されないが、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド
(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチ
ルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)等のカルボジイミド系縮合剤が挙げられる
。これらと4-ジメチルアミノピリジンや1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等とを添加
して併用してもよい。カルボジイミド系縮合剤以外にもN,N’-カルボニルジイミダゾ
ール等のイミダゾール系縮合剤、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-
2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn水和物等のトリアジン系縮合剤も使用
可能である。反応効率、経済性、副生成物の除去のしやすさの観点から、縮合剤として1
-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドやN,N’-ジイソプロ
ピルカルボジイミド等が好適に用いられる。
上記のようにして得られたテトラカルボン酸二無水物(j)は十分高純度であり、後述
するポリエステルイミド前駆体の製造方法にそのまま供することができるが、適当な溶媒
から再結晶して更に高純度化することもできる。その際、再結晶溶媒は、テトラカルボン
酸二無水物(j)と反応せず且つ再結晶操作が行えればよく、特に限定されないが、例え
ば、γ-ブチロラクトン(GBL)等の環状エステル系溶媒、N,N-ジメチルホルムア
ミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒、ジメチル
スルホキシド等のスルホン系溶媒等が挙げられる。これらを2種類以上混合して用いても
よい。溶媒は十分に脱水処理されていることが望ましい。溶解力、安全性および再結晶効
率の観点から、NMP等のアミド系溶媒やGBLが好適に用いられる。
<ポリエステルイミド前駆体の製造方法>
一般式(7)で表される構造単位を含むポリエステルイミドは、ポリエステルイミド前
駆体を脱水閉環させることで得られる。ポリエステルイミド前駆体は、2,6-ナフタレ
ン構造が導入された式(2)~(6)のいずれかで表される構造を含むため、沈殿の析出
及びゲル化を回避しながらポリエステルイミド前駆体を作製することが可能である。
以下にポリエステルイミド前駆体を製造する方法について説明するが、これに限定され
ず、公知の方法を適用することができる。
まずジアミンを重合溶媒に溶解し、これに一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二
無水物の粉末を添加し、密封して例えば0~100℃、好ましくは20~60℃で、例え
ば1~100時間、好ましくは2~72時間撹拌する。
上記の重合反応の際、反応容器に仕込むジアミンとテトラカルボン酸二無水物とのモル
比は、ジアミン1に対して、テトラカルボン酸二無水物0.8~1.1であり、好ましく
は0.9~1.1、更に好ましくは0.95~1.05である。ジアミンとテトラカルボ
ン酸二無水物は実質的に等モルで仕込むと、ポリエステルイミド前駆体の重合度を高める
ことができる。
また、重合開始時の原料モノマー(固形分)濃度は、例えば5~50質量%、好ましく
は10~40質量%である。ポリエステルイミド前駆体の重合度の増加により、重合溶液
の粘度が高くなり効果的な撹拌に支障が生じた場合は、適宜同一の脱水処理済み溶媒で希
釈してもよい。原料モノマーは、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物と、ジ
アミンとを少なくとも含む。
上記重合反応に用いる溶媒は、原料モノマーと生成するポリエステルイミド前駆体が十
分に溶解し、且つこれらと反応しなければよく、特に限定されない。例えばN,N-ジメ
チルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド等のアミド
溶媒、γ-プチロラクトン(GBL)等の環状エステル溶媒、ジメチルスルホキシド、ス
ルホラン等のスルホン系溶媒、シクロペンタノン、シクロへキサノン等ケトン系溶媒、m
-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェ
ノール系溶媒等が使用可能である。また、これらを2種類以上混合して用いてもよい。溶
解力、安全性、経済性の観点からNMPが好適に用いられる。
上記重合反応の際、重合反応性、反応溶液の均一性およびポリエステルイミドフィルム
の要求特性を損なわない範囲で使用可能な芳香族ジアミンを選択することが望ましい。本
明細書において、芳香族ジアミンは、分子内に、少なくとも芳香族基を含み、芳香族基と
脂肪族基とを含んでもよい。使用可能な芳香族ジアミンとして、特に限定されないが、例
えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、
2,5-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノキシレン、2,4-ジアミノデュレン、4
,4’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(3-メチルアニリン)、4,4
’-メチレンビス(3-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリ
ン)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3,
5-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジエチルアニリン)、4,
4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-
ジエチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフ
ェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニ
ルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’-
ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホ
ン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,
3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,
3’-ジヒドロキシベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、o-トリジン、m-
トリジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4-ビス(4-アミ
ノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビ
ス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(3-アミノフェノ
キシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、
2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-
(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミ
ノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p-ターフェニレンジアミン、4-アミノフェニ
ル4-アミノベンゾエート、4-アミノ-2-メチルフェニル4-アミノベンゾエート、ハイドロキノンビス(4-アミノベンゾエート)、メチルハイドロキノンビス(4-アミノベンゾエート)、メトキシハイドロキノンビス(4-アミノベンゾエート)、フェニルハイドロキノンビス(4-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4-アミノ-2-メチルフェニル)テレフタレート等が挙げられる。これらを2種類以上併用(共重合)してもよい。
上記重合反応の際、重合反応性、反応溶液の均一性およびポリエステルイミドフィルム
の要求特性を損なわない範囲で使用可能な脂肪族ジアミンを選択することが望ましい。本
明細書において、脂肪族ジアミンは、分子内に、少なくとも脂肪族基を含み、芳香族基を
含まない。使用可能な脂肪族ジアミンとして、特に限定されないが、例えば、トランス-
1,4-シクロヘキサンジアミン(t-CHDA)、シス-1,4-シクロヘキサンジア
ミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3
-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3-エチルシクロヘキシル
アミン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4
’-メチレンビス(3,5-ジエチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、1
,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ〔
2.2.1〕ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン
、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3-ジアミ
ノアダマンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(
4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-プロパンジアミン、1,
4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレ
ンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,
9-ノナメチレンジアミン、シロキサン含有ジアミン等が挙げられる。これらを2種類以
上併用(共重合)してもよい。また、これらの脂肪族ジアミンと前述の芳香族ジアミンを
併用してもよい。
上記重合反応の際、重合反応性、反応溶液の均一性およびポリエステルイミドフィルム
の要求特性を損なわない範囲で、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外
の芳香族テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として併用することができる。その際に
使用可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、ピ
ロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1
,4-フェニレンビス(トリメリテート アンハイドライド)、2-メチル-1,4-フ
ェニレンビス(トリメリテート アンハイドライド)、2-メトキシ-1,4-フェニレ
ンビス(トリメリテート アンハイドライド)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテ
トラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二
無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’
-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’
-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタ
レンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物
等が挙げられる。また、これらを2種類以上用いてもよい。また、これらの共重合成分の
使用量は、全テトラカルボン酸二無水物中、例えば0.1~50mol%、好ましくは1
~40mol%の範囲である。
上記重合反応の際、重合反応性、反応溶液の均一性およびポリエステルイミドフィルム
の要求特性を損なわない範囲で、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外
に脂肪族テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として併用することができる。その際に
使用可能な脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、例
えば、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二
無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物
、ビシクロ[2.2.2]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン-2
,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3c-カルボキシメチルシクロペンタンー1
r,2c,4c-トリカルボン酸1,4:2,3-二無水物、ビシクロ-3,3’,4,
4’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二
無水物(、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル
-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペ
ンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらを2種類以上用いてもよい。ま
た、脂肪族テトラカルボン酸二無水物(共重合成分)の使用量は、全テトラカルボン酸二
無水物中、例えば0.1~40mol%、好ましくは1~30mol%の範囲である。ま
た、の脂肪族テトラカルボン酸二無水物(共重合成分)と前述の芳香族テトラカルボン酸
二無水物(共重合成分)とを併用してもよい。
ポリエステルイミド前駆体ワニスのハンドリングおよびポリエステルイミドフィルムの
物性の観点から、ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は0.5~5.0dL/gの範囲
であることが好ましく、1.0~3.0dL/gの範囲であることがより好ましい。ポリ
エステルイミド前駆体の固有粘度は、固形分濃度0.5質量%に調整したポリエステルイ
ミド前駆体の溶液を用い、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定して得られる値であ
る。
上記の製造方法により得られたポリエステルイミド前駆体ワニスを、例えばキャスト製
膜工程のための適切な溶液粘度に調整する等の目的で、溶媒で適度に希釈してもよい。希
釈には前述の重合溶媒が使用可能である。通常、重合に用いたものと同一の溶媒で希釈す
るが、ワニスの均一性が損なわれなければ異なった溶媒で希釈してもよい。また、希釈溶
媒として2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。これらの希釈溶媒はあらかじめ脱水
処理されていることが望ましい。
上記の製造方法により得られたポリエステルイミド前駆体ワニスとしてそのまま用いる
ことができ、または、前述の希釈溶媒で適度に希釈後、大量の水やメタノール等の貧溶媒
中に滴下して繊維状の粉末として析出させ、濾過、洗浄、及び乾燥してポリエステルイミ
ド前駆体を単離することもできる。更に単離した粉末を再度、溶媒に溶解して均一なワニ
スとすることができる。その際、再溶解には前述の重合溶媒が使用可能である。通常、重
合に用いたものと同一の溶媒に溶解させるが、ワニスの均一性が損なわれなければ異なっ
た溶媒に溶解させてもよい。また、再溶解用の溶媒(本明細書において「再溶解溶媒」と
いう場合がある。)として2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。これらの再溶解溶
媒はあらかじめ脱水処理されていることが望ましい。再溶解を促進するため、溶液を例え
ば30~120℃、好ましくは40~80℃で、例えば1分~4時間、好ましくは5分~
1時間加熱してもよい。
重合して得られたポリエステルイミド前駆体ワニスの粘度を安定化するため、またはポ
リエステルイミド前駆体の分子量を適度に下げること等を目的とし、重合して得られたポ
リエステルイミド前駆体ワニスをそのまま、希釈後、または再溶解後に、例えば50~1
30℃、好ましくは70~120℃で、例えば10分~6時間、好ましくは30分~4時
間加熱してもよい。
ポリエステルイミド前駆体を部分的にイミド化することを目的として、沈殿析出または
ゲル化を生じないように注意しながら、重合により得られたポリエステルイミド前駆体ワ
ニスをそのまま、希釈後、または再溶解後に、例えば70~160℃、好ましくは80~
150℃で、例えば10分~6時間、好ましくは30分~4時間加熱してもよい。
ポリエステルイミド前駆体を部分的にイミド化することを目的として、沈殿析出または
ゲル化を生じないように注意しながら、重合により得られたポリエステルイミド前駆体ワ
ニスをそのまま、希釈後、または再溶解後に、有機3級アミンと脱水閉環剤とを含む化学
イミド化剤を添加し、例えば0~100℃、好ましくは20~60℃で、例えば1~48
時間、好ましくは2~24時間撹拌してもよい。
化学イミド化剤中の有機3級アミンとして、特に限定されないが、例えばピリジン、ピ
コリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、トリエチルアミン、ト
リプロピルアミン、トリブチルアミン等が使用可能である。毒性や経済性の観点からピリ
ジンが好適に使用される。また、化学イミド化剤中の脱水閉環剤として、特に限定されな
いが、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸等の酸無水物が使用
可能である。除去の容易さや経済性の観点から無水酢酸が好適に用いられる。
化学イミド化剤中の脱水閉環剤と有機3級アミンの混合比(質量比)は特に限定されな
いが、脱水閉環剤の質量を1gとすると、有機3級アミンは例えば0.1~2gの範囲で
あり、好ましくは0.2~1gの範囲である。
ポリエステルイミド前駆体を部分的にイミド化する際に添加する化学イミド化剤量は、
その中に含まれる脱水閉環剤が、ポリエステルイミド前駆体中のカルボキシ基量即ち理論
脱水量(モル)の0.05~0.2倍モル量の範囲になるように添加する。これにより、
反応溶液から沈殿が析出したり、ゲル化が生じたりすることを防ぐことができる。
ポリエステルイミドフィルムの要求特性を損なわない範囲で、上記のようにして得られ
たポリエステルイミド前駆体のワニスに、ポリエステルイミド以外のポリマー、無機フィ
ラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤
、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を添加してもよい。
<ポリエステルイミドおよびその製造方法>
本発明の一実施形態であるポリエステルイミドは、上記一般式(7)で表される構造単
位を含む。一般式(7)中、Arは前記式(2)~(6)のいずれかで表され、Ar
は2価の芳香族基、2価の脂肪族基、または芳香族基と脂肪族基の少なくとも一方を含む
2価の基である。芳香族基と脂肪族基の少なくとも一方を含む2価の基は、芳香族基を含
む基、脂肪族基を含む基、または芳香族基と脂肪族基とを含む基であってよい。芳香族基
と脂肪族基の少なくとも一方を含む2価の基は、任意の基を更に含んでよい。「芳香族基と脂肪族基の少なくとも一方を含む2価の基」は、「2価の芳香族基」及び「2価の脂肪族基」以外の基であってよい。
一般式(7)で表される構造単位を含むポリエステルイミドは、エステル基を導入する
ことでイミド基の濃度が低減されているために低吸水率であり、かつ、2,6-ナフタレ
ン構造によりポリマー鎖に沿って芳香環が増環された構造単位を含むために低誘電正接で
ある。
Arは、式(3)~(6)のいずれかであってよく、式(4)~(6)のいずれかであることが好ましく、式(4)又は(6)であることがより好ましく、式(6)であることが更に好ましい。Arは、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物に由来する構造であってよい。
Arは、低吸水率、低誘電正接、低熱膨張性、及び高弾性のポリエステルイミドフィルムを得る観点から、2価の芳香族基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。Arは、誘電正接が特に低いポリエステルイミドフィルムを得る観点から、芳香族基とオキシ基(エーテル結合)とを含む2価の基であることが好ましく、ジフェニルエーテル基(-Ph-O-Ph-基(Phはフェニレン基))であることがより好ましい。Arは、吸水率と誘電正接とが特に低いポリエステルイミドフィルムを得る観点から、芳香族基とオキシカルボニル基(エステル結合)とを含む2価の基であることが好ましい。Arは、誘電率を低下させる観点から、芳香族基とオキシ基(エーテル結合)とイソプロピリデン基とを含む2価の基であることが好ましく、ビス(フェノキシフェニル)プロパン基(-Ph-O-Ph-C-Ph-O-Ph-基(Phはフェニレン基))であることが更に好ましい。2価の芳香族基、2価の脂肪族基、または芳香族基と脂肪族基の少なくとも一方を含む2価の基における芳香族基および脂肪族基は、それぞれ、置換又は非置換であってよい。Arである、2価の芳香族基、2価の脂肪族基、または芳香族基と脂肪族基の少なくとも一方を含む2価の基は、それぞれ、上記の芳香族ジアミンまたは脂肪族ジアミンに由来する構造であってよい。
ポリエステルイミドは、一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の芳香
族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を含む構造単位、脂肪族テトラカルボン酸二
無水物に由来する構造を含む構造単位、またはこれらの両方の構造単位を更に含むことが
できる。
一般式(7)で表されるポリエステルイミドは、上記のポリエステルイミド前駆体を脱
水閉環させることにより製造することができる。脱水閉環させる方法は特に限定されず、
熱イミド化法、化学イミド化法等の公知の方法を適用できる。簡便であることから、熱イ
ミド化法が好ましく、加熱温度は例えば230~400℃、好ましくは250~370℃
である。
<ポリエステルイミドフィルム>
本発明の一実施形態であるポリエステルイミドフィルムは、少なくともポリエステルイ
ミドを含む。ポリエステルイミドフィルムは、用途に応じて、ポリエステルイミド以外の
ポリマー、無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レ
ベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤などを含ん
でもよい。
以下にポリエステルイミドフィルムの製造方法について例示するが、これに限定されな
い。ポリエステルイミドフィルムの製造には、キャスト製膜法を好ましく用いることがで
きる。上記のように得られたポリエステルイミド前駆体の均一なワニスを様々な材質、例
えばガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の支持体(基板)上に塗工し、
熱風乾燥器中、例えば40~150℃、好ましくは50~130℃で、例えば10分~4
時間、好ましくは30分~2時間乾燥し、ポリエステルイミド前駆体のフィルムを得る。
上記のようにして得られたポリエステルイミド前駆体のフィルムを基板上で真空中また
は窒素等の不活性ガス中、例えば230~400℃、好ましくは250~370℃で加熱
することでポリエステルイミドフィルムを製造することができる。また、昇温は段階的に
行ってもよい。熱イミド化は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミ
ド化温度が高すぎなければ空気中で行ってもよい。
ポリエステルイミド前駆体のフィルムのイミド化は通常、上記のように高温で加熱して
行うが、ポリエステルイミド前駆体フィルムを前述の化学イミド化剤浴中に浸漬すること
によっても行うことができる。浸漬したフィルムを洗浄および乾燥後、更に熱処理しても
よい。
熱イミド化工程後、ポリエステルイミドフィルムと基板との積層体を水やアルコール浴
等に浸漬し、ポリエステルイミドフィルムを基板から剥離して自立フィルムとし、これを
残留歪を除く等の目的で真空中、不活性ガス中または空気中で更に熱処理してもよい。そ
の際ポリエステルイミドフィルムの変形や配向緩和によるCTEの増加等の悪影響を抑制
するため、熱処理の温度条件を適宜選択することができる。
ポリエステルイミドフィルムは、熱機械分析によって測定された100~200℃の間
の平均線熱膨張係数が、例えば60ppm/K以下、好ましくは30ppm/K以下、よ
り好ましくは10ppm/K以下である。下限は特に限定されない。平均線熱膨張係数は
、熱機械分析装置を用いて、試験片(例えば、長さ:20mm、幅:5mm、チャック間
長さ:15mm)に膜厚1μm当たり静荷重0.5gをかけて、昇温速度5℃/分におけ
る試験片の伸びより、100~200℃の範囲での平均値として求められるポリエステル
イミドフィルム(25μm厚)のフィルム面(XY)方向の値である。
ポリエステルイミドフィルムは、動的粘弾性分析により測定されたガラス転移温度が、
例えば300℃以上であるかまたは検出されないことが好ましく、より好ましくは340
℃以上、更に好ましくは350℃以上である。ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置を
用い、窒素雰囲気中、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分、室温~450℃の温度範囲
で測定した損失弾性率曲線のピーク温度から求めることができる。
ポリエステルイミドフィルムは、吸水率が、例えば1.0%以下、好ましくは0.5%
以下、より好ましくは0.3%以下である。下限は特に限定されない。吸水率は、JIS
K 7209に従い、50℃で24時間真空乾燥したポリエステルイミドフィルムの質
量(W)を秤量し、次にそのフィルムを23℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分
を拭き取り質量(W)を秤量し、計算式:W=(W-W)/W×100(%)より
求めることができる。
ポリエステルイミドフィルムは、動作周波数10GHzにおける誘電正接が、例えば0
.004以下、好ましくは0.003以下、より好ましくは0.002以下である。下限
は特に限定されない。誘電正接は、ポリエステルイミドフィルムを23℃、50%RH(
相対湿度)の環境に24時間置いた後、同一の温度および湿度条件下で、空洞共振器摂動
法により測定することができる。
ポリエステルイミドフィルムは、高速伝送FPC用基板、耐熱絶縁基板、高速伝送FP
C用耐熱絶縁基板(ベースフィルム)等に好適に用いることができる。高速伝送FPCの
動作周波数は、例えば、3.6GHz以上である。これらの基板は、ポリエステルイミド
フィルムが低吸水率かつ低誘電正接であるために、信頼性の向上と誘電損失の低減とを両
立することができ、特性上極めて有益である。フィルムの厚さは、特に限定されず、適宜
調節することができる。FPC用耐熱絶縁基板として用いる場合、フィルム厚は10~6
0μmが好適な範囲である。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるもので
はない。なお、実施例中の物性値は、次の方法により測定した。
<赤外線吸収(FT-IR)スペクトル>
合成したモノマー(テトラカルボン酸無水物)およびその中間体の赤外線吸収スペクト
ルは、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT-IR4100)を用い、KBr
プレート法にて測定した。また、透過法にてポリエステルイミド前駆体およびポリエステ
ルイミド薄膜(約5μm厚)の赤外線吸収スペクトルを測定した。
H-NMRスペクトル>
合成したモノマーおよびその中間体のH-NMRスペクトルは、日本電子社製NMR
分光光度計(ECP400)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d
または重水素化クロロホルム(CDCl)を溶媒として測定した。
<元素分析>
有機微量元素分析装置(ジェイ・サイエンス・ラボ社製MICRO CORDER J
M10)を用い、合成したモノマーおよびその中間体のC、H、Nの化学組成分析を行っ
た。
<示差走査熱量分析(融点)>
合成したモノマーおよびその中間体の融点は、ネッチ・ジャパン社製示差走査熱量分析
装置(DSC3100)またはネッチ・ジャパン社製熱重量分析装置(TG-DTA20
00S)を用い、窒素雰囲気中、昇温速度5℃/分で測定したサーモグラムのピーク温度
から求めた。
<固有粘度(ηinh)>
ポリエステルイミド前駆体の還元粘度(ηred)は、ポリエステルイミド前駆体であ
るポリアミド酸を重合により得た後のワニスを重合溶媒で希釈して、固形分濃度0.5質
量%の溶液とし、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。この値は実質的に固有
粘度(ηinh)と見なすことができ、この値が高いほどポリアミド酸の分子量が高いこ
とを表す。通常、この条件で測定された還元粘度が1.0dL/g以上であると、十分高
分子量であると見なすことができる。
<ガラス転移温度(T)>
TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置(Q800)を用い、窒素雰囲気中、周
波数0.1Hz、昇温速度5℃/分、室温~450℃の温度範囲で測定した損失弾性率曲
線のピーク温度からポリエステルイミドフィルム(25μm厚)のガラス転移温度(T
)を求めた。Tが高いほど、物理的耐熱性(短期耐熱性)に優れていることを表す。
<線熱膨張係数(CTE)>
ネッチ・ジャパン社製熱機械分析装置(TMA4000)またはリガク社製熱機械分析
装置(TMA8311)を用いて、試験片(長さ:20mm、幅:5mm、チャック間長
さ:15mm)に膜厚1μm当たり静荷重0.5gをかけて、昇温速度5℃/分における
試験片の伸びより、100~200℃の範囲での平均値としてポリエステルイミドフィル
ム(25μm厚)のフィルム面(XY)方向のCTEを求めた。この値が低いほど、ガラ
ス状温度領域における熱寸法安定性に優れていることを表す。
<5%重量減少温度(T )>
ネッチ・ジャパン社製熱重量分析装置(TG-DTA2000S)を用いて、窒素中お
よび空気気流中、昇温速度10℃/分での昇温過程におけるポリエステルイミドフィルム
(25μm厚)の重量が初期重量の5%減少した時の温度を測定した。窒素中で測定した
の値が高いほど化学的耐熱性(熱安定性)が高く、より高温まで揮発性有機化合物
(VOC)の発生が抑制されていることを表す。
<機械的特性:引張弾性率(E)、破断伸び(ε)、破断強度(σ)>
ポリエステルイミドフィルム(試験片:30mm長×3mm幅×25μm厚)の機械的
特性は、エー・アンド・デイ社製引張試験機(テンシロンUTM-2)を用い、延伸速度
8mm/分で測定した。応力-歪曲線の初期の勾配から引張弾性率(E)、フィルムが破
断した時の伸び率および応力から破断伸び(ε)および破断強度(σ)をそれぞれ求
めた。
<吸水率(W)>
JIS K 7209に従い、50℃で24時間真空乾燥したポリエステルイミドフィ
ルム(膜厚20~30μm)の質量(W)を秤量し、次にそのフィルムを23℃の水に
24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、質量(W)を秤量し、W=(W-W
/W×100(%)より吸水率(W)を求めた。
<高周波誘電特性:誘電率(ε)、誘電正接(tan δ)>
ポリエステルイミドフィルムの高周波誘電特性(10GHz)は、フィルムを23℃、
50%RH(相対湿度)の環境に24時間置いた後、同一の温度および湿度条件で空洞共
振器摂動法(IEC62810準拠、キーサイト・テクノロジー社製PNAネットワーク
アナライザN5222B、関東電子応用開発社製空洞共振器10GHz用CP531)に
て、測定した。
<テトラカルボン酸二無水物の合成>
[実施例1:8環型テトラカルボン酸二無水物(TDCA)モノマーの合成]
実施例1のテトラカルボン酸二無水物は、以下の反応式(16’)に従い、以下に示す
手順で合成した。
Figure 2024082217000017
[アセチル化]
まず、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸(反応式(16’)中、(d))を
以下のようにしてアセチル化した。
300mL三口フラスコに6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸(17.11g
、912mmol)、無水酢酸(70mL)および濃硫酸3滴を入れ、マグネチックスタ
ーラーで撹拌しながら窒素雰囲気中、100℃で3時間リフラックスし、褐色透明溶液を
得た。これを室温に冷却して沈殿を析出させ、沈殿を濾別して水、次いでトルエンで洗浄
後、120℃で12時間真空乾燥しクリーム色の生成物を得た(収率78%)。
この生成物の分析結果を以下に示す。FT-IR(KBrプレート法、cm-1):3
053(芳香族C-H伸縮)、2987/2845(脂肪族C-H伸縮)、2684(水
素結合性カルボキシ基、O-H伸縮)、1761(アセトキシ基、C=O伸縮)、168
0(水素結合性カルボキシ基、C=O伸縮)、1223(アセトキシ基、C-O伸縮)。
H-NMR(400MHz、DMSO-d、δ、ppm):13.11(s、1H(
相対積分強度:0.90H)、COOH)、8.64(s、1H(1.15H)、6-ア
セトキシ-2-ナフタレンカルボン酸ユニット(6A2NA)の1-プロトン)、8.1
8(d、1H(1.07H)、J=8.9Hz、6A2NAの8-プロトン)、8.03
-7.99(m、2H(2.27H)、6A2NAの3-プロトン+4-プロトン)、7
.77(sd、1H(1.15H)、J=2.2Hz、6A2NAの5-プロトン)、7
.42(dd、1H(1.09H)、J=8.9、2.2Hz,6A2NAの7-プロト
ン)、2.34(s、3H(3.00H)、CH)。融点(TG-DTA):203℃
。これらの分析結果より、生成物は目的とするアセチル化物(反応式(16’)中、(e
))であることが確認された。
[塩素化]
次に、上記のようにして得られたアセチル化物(e)を以下のようにして塩素化した。
300mLナス型フラスコにアセチル化物(e)15.37g(49mmol)、塩化チ
オニル(30mL、300mmol)および触媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(
DMF)5滴を入れ、窒素雰囲気中、80℃で3時間リフラックスして黄色透明溶液を得
た。反応後、共沸剤としてベンゼンを加え、塩化チオニルを共沸留去し、黄色粉末を析出
させた。これをシクロヘキサンから再結晶し、結晶を濾別して60℃で12時間真空乾燥
して黄色結晶を得た(収率78%)。
この生成物の分析結果を以下に示す。FT-IR(KBrプレート法、cm-1):3
063(芳香族C-H伸縮)、1741(アセトキシ基+酸クロリド、C=O伸縮)。
H-NMR(400MHz、CDCl、δ、ppm):8.74(s、1H(1.04
H)、6-アセトキシ-2-ナフタレンカルボン酸クロリドユニット(6A2NC)の1
-プロトン)、8.08-8.02(m、2H(2.18H)、6A2NCの8-プロト
ン+3-プロトン)、7.88(d、1H(1.09H)、J=8.7Hz、6A2NC
の4-プロトン)、7.65(sd、1H(1.04H)、6A2NCの5-プロトン、
J=2.0Hz)、7.37(dd、1H(1.06H)、J=8.9、2.2Hz,6
A2NCの7-プロトン)、2.38(s、3H(3.00H)、CH)。融点(TG
-DTA):127℃。これらの分析結果より、生成物は目的とする酸クロリド(反応式
(16’)中、(f))であることが確認された。
[ビスエステル化]
次に、上記のようにして得られた酸クロリド(f)と2,6-ジヒドロキシナフタレン
(g)よりエステル化反応を行った。
100mLナス型フラスコ中、2,6-ジヒドロキシナフタレン(g)4.80g(2
9.9mmol)を脱水処理済みのγ-ブチロラクトン(GBL)20mLに溶かし、こ
れに酸受容剤としてピリジン8mL(100mmol)を添加して、セプタムキャップで
密封してA液とした。次に500mLナス型フラスコ中、酸クロリド(f)16.93g
(68mmol)をGBL210mLに溶かし、セプタムキャップで密封してB液とした
。室温でB液を撹拌しながら、B液にA液をシリンジにて徐々に加え、12時間撹拌を続
けた。析出した沈殿物を濾別し、トルエン、次いでGBLで洗浄して過剰の酸クロリドを
除去し、最後に水で十分洗浄して副生成物であるピリジン塩酸塩を完全に除去した。これ
を160℃で12時間真空乾燥し、クリーム色の生成物を得た(収率82%)。
上記反応の際、2,6-ジヒドロキシナフタレンの2つの末端ヒドロキシ基のうち、片
側のみ酸クロリドと反応したモノエステル化中間体(モノアセトキシ体)の溶媒溶解性が
著しく低い場合、目的とするビスエステル化体の生成と並行して、目的外のモノエステル
化中間体(モノアセトキシ体)の沈殿析出が同時に起こり、純粋なビスエステル化体(ジ
アセトキシ体)が得られなくなる。しかしながら、実際には、TLCで調べたところ、析
出した生成物中にモノエステル化中間体は含まれていなかった。これよりモノエステル化
中間体、ビスエステル化体共に十分な溶媒溶解性が確保されていたことが示唆される。こ
れは、2,6-ナフタレン構造の導入による予想外に大きな溶解性の促進効果によるもの
と考えられる。
得られた生成物の分析結果を以下に示す。FT-IR(KBrプレート法、cm-1
:3068(芳香族C-H伸縮)、1757(アセトキシ基+酸クロリド、C=O伸縮)
、1736(芳香族エステル基、C=O伸縮)。H-NMR(400MHz、DMSO
-d、δ、ppm):8.97(sd、2H(2.00H)、J=0.84Hz、末端
6-アセトキシ-2-ナフタレンカルボキシレートユニット(末端6A2NCE)の1,
1’-プロトン)、8.32(d、2H(1.97H)、J=9.2Hz、末端6A2N
CEの8,8’-プロトン)、8.22(dd、2H(1.91H)、J=8.6、1.
7Hz、末端6A2NCEの3,3’-プロトン)、8.15-8.10(m、4H(4
.04H)、末端6A2NCEの4,4’-プロトン+中央2,6-ナフタレンユニット
(中央26NA)の4,8-プロトン)、8.02(sd、2H(1.97H)、J=2
.4Hz、末端6A2NCEの5,5’-プロトン)、7.86(sd、2H(2.01
H)、J=2.4Hz、中央26NAの1,5-プロトン)、7.62(dd、2H(1
.95H)、J=8.9、2.4Hz,末端6A2NCEの7,7’-プロトン)、7.
50(dd、2H(1.97H)、J=8.8、2.3Hz、中央26NAの3,7-プ
ロトン)、2.37(s、6H(5.94H)、CH)。融点(TG-DTA):22
0℃。これらの分析結果より、生成物は目的とする純粋なエステル基含有ジアセトキシ体
(反応式(16’)中、(h))であることが確認された。
[末端ジアセトキシ基の加水分解]
次に、上記のようにして得られたエステル基含有ジアセトキシ体(h)の末端ジアセト
キシ基を加水分解してビスフェノールを得る反応を以下のようにして行った。
500mLナス型フラスコにエステル基含有ジアセトキシ体(h)4.55g(8.4
mmol)とN-メチル-2-ピロリドン(NMP)50mLを入れ、150℃に加熱し
て完全に溶解した。次にこれを0℃に冷却し、撹拌しながらこの溶液に濃アンモニア水(
28質量%)40mLをゆっくり加え、0℃で20分撹拌を続けた。反応終了後、この溶
液に1N塩酸60mLを加えて弱酸性とし、沈殿を析出させた。これを濾別し、水で十分
洗浄後。160℃で12時間真空乾燥してクリーム色の生成物を得た(収率94%)。
この生成物の分析結果を以下に示す。FT-IR(KBrプレート法、cm-1):3
419(末端ヒドロキシ基、O-H伸縮)、3069(芳香族C-H伸縮)、1717(
エステル基、C=O伸縮)。H-NMR(400MHz、DMSO-d、δ、ppm
):10.33(s、2H(2.00H)、OH)、8.79(sd、2H(1.95H
)、J=1.4Hz、末端6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボキシレートユニット(
末端6H2NCE)の1,1’-プロトン)、8.10-8.05(m、6H(5.94
H)、末端6H2NCEの8,8’-プロトン+3,3’-プロトン+4,4’-プロト
ン)、7.97(sd、2H(1.87H)、J=2.4Hz、末端6H2NCEの5,
5’-プロトン)、7.88(d、2H(1.99H)、J=8.8Hz、中央26NA
の4,8-プロトン)、7.58(dd、2H(1.98H)、J=8.5、2.5Hz
、末端6H2NCEの7,7’-プロトン)、7.27-7.22(m、4H(4.06
H)、中央26NAの1,5-プロトン+3,7-プロトン)。融点(TG-DTA):
328℃。これらの分析結果より、生成物は目的とするエステル基含有ビスフェノール(
反応式(16’)中、(i))であることが確認された。
[エステル基含有ビスフェノールとTMACとのエステル化反応]
次に、上記のようにして得られたエステル基含有ビスフェノール(i)とトリメリット
酸無水物クロリド(TMAC)のエステル化反応により、テトラカルボン酸二無水物を得
る反応を以下のようにして行った。
100mLナス型フラスコ中、エステル基含有ビスフェノール(i)3.58g(7.
16mmol)を脱水処理済みのNMP20mLに溶かし、これに酸受容剤としてピリジ
ン5mL(63mmol)を添加して、セプタムキャップで密封してA液とした。次に2
00mLナス型フラスコ中、TMAC6.34g(30mmol)をNMP20mLに溶
かし、セプタムキャップで密封してB液とした。室温でB液を撹拌しながら、B液にA液
をシリンジにて徐々に加え、12時間撹拌を続けた。析出した沈殿物を濾別し、トルエン
、次いでGBLで洗浄して過剰の酸クロリドを除去し、最後に水で十分洗浄して副生成物
であるピリジン塩酸塩を完全に除去した。これを200℃で12時間真空乾燥し、薄茶色
の生成物を得た(収率68%)。
上記反応に用いたエステル基含有ビスフェノールの溶媒溶解性が著しく低い場合、低濃
度でビスエステル化反応を行わざるを得なくなり、反応の効率、生成物の収率および純度
が著しく悪化する。しかし実際には、用いたエステル基含有ビスフェノールは十分に高い
溶媒溶解性を保持していたため、十分に高い濃度で上記反応を実施することが可能であっ
た。また、エステル基含有ビスフェノールの2つの末端ヒドロキシ基のうち、片側のみT
MACと反応したモノエステル化中間体の溶媒溶解性が著しく低い場合、目的とするビス
エステル化体の生成と同時にモノエステル化中間体の沈殿析出が起こり、純粋な目的物が
得られなくなる。しかし実際には、生成物中にモノエステル化中間体は含まれていなかっ
た。これより、モノエステル化中間体は十分に高い溶媒溶解性を保持していたことが示唆
される。これは、2,6-ナフタレン構造の導入による予想外に大きな溶解性の促進効果
によるものと考えられる。
得られた生成物の分析結果を以下に示す。FT-IR(KBrプレート法、cm-1
:3065(芳香族C-H伸縮)、1858/1784(酸無水物基、C=O伸縮)、1
737(エステル基、C=O伸縮)。H-NMR(400MHz、DMSO-d、δ
、ppm):9.04(sd、2H(2.00H)、J=1.8Hz、6H2NCEの1
,1’-プロトン)、8.73-8.70(m、4H(4.17H)、末端無水フタル酸
ユニット(PAn)の3,3’-プロトン+6,6’-プロトン)、8.42(d、2H
(1.83H)、J=8.6Hz、6H2NCEの8,8’-プロトン)、8.33(d
d、2H(1.65H)、J=7.7、0.8Hz、PAnの5,5’-プロトン)、8
.27(dd、2H(2.37H)、J=8.4、1.7Hz、6H2NCEの3,3’
-プロトン)、8.21(d、2H(2.18H)、J=8.6Hz、6H2NCEの4
,4’-プロトン)、8.14-8.12(m、4H(3.88H)、6H2NCEの5
,5’-プロトン+中央26NAの1,5-プロトン)、8.04(d、2H(2.14
H)、J=8.6Hz、中央26NAの4,8-プロトン)、7.77(dd、2H(1
.74H)、J=8.7、2.1Hz、6H2NCEの7,7’-プロトン)、7.65
(dd、2H(2.38H)、J=8.6、2.1Hz、中央26NAの3,7-プロト
ン)。元素分析(C502414、分子量848.73):推定値C;70.76%
、H;2.85%、分析値C;70.61%、H;3.06%。融点(TG-DTA):
284℃。これらの分析結果より、生成物は下記式(15)で表される目的とするテトラ
カルボン酸二無水物(反応式(16’)中、(j))であることが確認された。
Figure 2024082217000018
[実施例2:7環型TCDAモノマーの合成]
2,6-ジヒドロキシナフタレン(g)の代わりに、ハイドロキノンを用いた以外は、
上記反応式(16’)に準じて、実施例2のテトラカルボン酸二無水物を合成した。実施
例2においても、エステル基含有ビスフェノールを合成する工程や、これとTMACと反
応させてテトラカルボン酸二無水物を合成する工程において、好ましくないモノエステル
化中間体の沈殿析出は見られなかった。これは実施例1の場合と同様に、2,6-ナフタ
レン構造導入による予想外に大きな溶解性の促進効果によるものと考えられる。
得られた生成物の分析結果を以下に示す。FT-IR(KBrプレート法、cm-1
:3072(芳香族C-H伸縮)、1853/1779(酸無水物基、C=O伸縮)、1
742(エステル基、C=O伸縮)。H-NMR(400MHz、DMSO-d、δ
、ppm):8.99(s、2H(2.13H)、6H2NCEの1,1’-プロトン)
、8.73-8.69(m、4H(3.86H)、PAnの3,3’-プロトン+6,6
’-プロトン)、8.41(d、2H(2.07H)、J=9.0Hz、6H2NCEの
8,8’-プロトン)、8.33(dd、2H(2.22H)、J=7.8、0.7Hz
、PAnの5,5’-プロトン)、8.25-8.2(m、4H(4.19H)、6H2
NCEの3,3’-プロトン+4,4’-プロトン)、8.14(sd、2H(2.12
H)、J=1.9Hz、6H2NCEの5,5’-プロトン)、7.76(dd、2H(
2.11H)、J=8.7、2.3Hz、6H2NCEの7,7’-プロトン)、7.5
2(s、4H(4.00H)、中央ハイドロキノンユニットの2,3,5,6-プロトン
)。元素分析(C462214、分子量798.67):推定値C;69.18%、
H;2.78%、分析値C;68.78%、H;3.13%。融点(DSC):306℃
。これらの分析結果より、生成物は下記式(17)で表される目的とするテトラカルボン
酸二無水物であることが確認された。
Figure 2024082217000019
[比較例1:2,6-ナフタレン構造を有しない8環型TCDAモノマーの合成]
4,4’-ビフェノールと4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸クロリドより、ビ
スエステル化反応により6環の芳香環を有するエステル基含有ジアセトキシ体を合成し、
次いでこの末端ジアセトキシ基を加水分解してビスフェノールに変換した後、これとTM
ACより、全8環のテトラカルボン酸二無水物を合成することを試みた。しかしながら、
最初のビスエステル化反応の際、析出した生成物は、目的外の片側モノエステル化中間体
(モノアセトキシ体)が主成分であり、目的とする6環のエステル基含有ビスアセトキシ
体を得ることは困難であった。これは片側モノエステル化中間体(モノアセトキシ体)の
溶媒溶解性が著しく低いためである。
<ポリエステルイミド前駆体の重合、熱イミド化およびポリエステルイミドフィルム特性
評価>
[実施例3:8環型TCDA/p-PDA系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
実施例1に記載の上記式(15)で表されるテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレ
ンジアミン(p-PDA)より以下のようにしてポリエステルイミド前駆体を重合した。
よく乾燥した密閉反応容器中、p-PDA(2mmol)をモレキュラーシーブス4A
で脱水処理済みのNMPに溶かし、マグネチックスターラーで撹拌しながら、この溶液に
実施例1に記載のテトラカルボン酸二無水物粉末(2mmol)を加え撹拌を続けた(初
期全固形分濃度:30質量%)。重合が進むにつれて溶液粘度が増加し、十分に撹拌でき
なくなったため、適宜NMPを追加し、最終的に室温で141時間撹拌して均一で粘稠な
ポリエステルイミド前駆体ワニスを得た(最終全固形分濃度:15.9質量%)。NMP
中、30℃、0.5質量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリエステルイミド前駆体の還元粘度は1.24dL/gであり、十分に高分子量体のポリエステルイミド前駆体が得られた。
このポリエステルイミド前駆体ワニスをガラス基板に塗布し、熱風乾燥器中80℃で3
時間乾燥してポリエステルイミド前駆体のキャストフィルムを得た。これをガラス基板ご
と電気炉に入れ、250℃で1時間、更に350℃で1時間、真空中で段階的に昇温し加
熱して熱イミド化を行った。残留応力を除去するため、フィルムをガラス基板から剥がし
て更に真空中350℃で1時間熱処理を行い、膜厚25μmの濁りのない可撓性のポリエ
ステルイミドフィルムを得た。上述の方法に従い、得られたフィルムの物性値を測定した
別途、薄膜試料を用いて熱イミド化前後の赤外線吸収スペクトルを測定した。熱イミド
化処理により、ポリエステルイミド前駆体由来の1680および1530cm-1付近の
アミド基C=O伸縮振動吸収バンドが完全に消えていることから、この加熱条件で熱イミ
ド化反応が完結することが確認された。
実施例3のポリエステルイミドフィルム(膜厚25μm)は非常に高いガラス転移温度
(371℃)に加え、極めて低い線熱膨張係数(3.8pm/K)を有していた。機械的
特性を評価した結果、引張弾性率(ヤング率)は7.70GPaであり、超高弾性率を示
した。観測された超低熱膨張性と高弾性は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン共に剛
直な構造のモノマーを用いたことによるポリエステルイミド主鎖の剛直かつ直線性と熱イ
ミド化によって誘起された主鎖の高度な面内配向によるものと考えられる。5%重量減少
温度は窒素中で467℃であり、十分に高い化学的耐熱性(長期耐熱性)も保持していた
。また、実施例3のポリエステルイミドフィルムは非常に低い吸水率(0.26%)を示
した。これは、2,6-ナフタレン構造を導入して長手方向に増環および延長した新規な
テトラカルボン酸二無水物を用いたことで、ポリエステルイミド構造中に含まれるモル分
極の高いイミド基の含有率が劇的に減少したことによるものと考えられる。更に10GH
zにおける誘電率は3.20、誘電正接は0.00246であった。この誘電正接は、液
晶ポリエステルに匹敵するほど、低い値であった。表1に物性値をまとめる。このように
、実施例3のポリエステルイミドフィルムは高速通信FPC用耐熱絶縁フィルム材に適し
た特性を有していた。なお、表1中、評価が行われなかった項目は空欄とした。
[実施例4:8環型TCDA/4,4’-ODA系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
ジアミンとしてp-PDAの代わりに4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA
)を用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にして、ポリエステルイミド前駆体を
重合、キャスト製膜、熱イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特
性を評価した。実施例3に記載のポリエステルイミドフィルムと同様に非常に低い吸水率
(0.27%)を有していた。また、誘電正接は実施例3に記載のポリエステルイミドフ
ィルムよりも更に減少した極めて低い値(0.00170)であった。
[実施例5:7環型TCDA/p-PDA系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
実施例1に記載の上記式(15)で表されるテトラカルボン酸二無水物の代わりに、実
施例2に記載の上記式(17)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いた以外は、実
施例3に記載した方法と同様にして、ポリエステルイミド前駆体を重合、キャスト製膜、
熱イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特性を評価した。実施例
3に記載のポリエステルイミドフィルムと同様に優れた特性を有していた。図1に熱イミ
ド化前の薄膜試料(ポリエステルイミド前駆体のフィルム)の赤外線吸収スペクトルを、
図2に熱イミド化後の薄膜試料(ポリエステルイミドフィルム)の赤外線吸収スペクトル
を示す。
[実施例6:7環型TCDA/4,4’-ODA系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
テトラカルボン酸二無水物として実施例2に記載の上記式(17)で表されるテトラカ
ルボン酸二無水物、ジアミンとして4,4’-ODAを用いた以外は、実施例3に記載し
た方法と同様にして、ポリエステルイミド前駆体を重合、キャスト製膜、熱イミド化して
ポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特性を評価した。実施例4に記載のポリ
エステルイミドフィルムと同様に、低吸水率、低誘電正接の点で優れた特性を有していた
[比較例2:TA-HQ/p-PDA系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
テトラカルボン酸二無水物として、全3環型のエステル基含有テトラカルボン酸二無水
物:1,4-フェニレンビス(トリメリテート アンハイドライド)(TA-HQ)、ジ
アミンとしてp-PDAを用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にして、ポリエ
ステルイミド前駆体を重合、キャスト製膜、熱イミド化してポリエステルイミドフィルム
を作製し、いくつかのフィルム特性を測定した。比較例2のフィルムの吸水率は、Kap
ton(R)Hフィルムの値(2.5%)よりは低かったが、依然として高い値であった
。これは用いたTA-HQの増環が不十分で芳香環数が少ない上、2,6-ナフタレン構
造を含んでいないため、得られたポリエステルイミド構造中のイミド基含有率が依然とし
て高いためである。
[実施例2a:6環型TCDAモノマーの合成]
アセチル化物(e)(6-アセトキシ-2-ナフタレンカルボン酸)の代わりに、4-アセトキシ安息香酸を用いた以外は、上記反応式(16’)に準じて、実施例2aのテトラカルボン酸二無水物を合成した。実施例2aにおいても、実施例1および2と同様に、好ましくないモノエステル化中間体の沈殿析出は見られなかった。
得られた生成物の分析結果を以下に示す。FT-IR(KBrプレート法、cm-1):3111/3068(芳香族C-H伸縮)、1860/1781(酸無水物基、C=O伸縮)、1747/1736(エステル基、C=O伸縮)、1509(1,4-フェニレン)。H-NMR(400MHz、DMSO-d、δ、ppm):8.70-8.68(m、4H(4.04H)、PAnの3,3’-プロトン+6,6’-プロトン)、8.35(d、4H(3.92H)、J=8.9Hz、オキシベンゾエート(OBA)ユニットの2,2’,6,6’-プロトン)、8.31(dd、2H(2.11H)、J=7.6、1.0Hz、PAnの5,5’-プロトン)、8.10(d、2H(2.13H)、J=8.8Hz、中央ナフタレン(NA)の4,8-プロトン)、7.98(sd、2H(2.00H)、J=2.4Hz、NAの1,5-プロトン)、7.70(d、4H(3.86H)、J=8.8Hz、OBAの3,3’,5,5’-プロトン)、7.60(dd、2H(1.93H)、J=8.8、2.6Hz、NAの3,7-プロトン)。元素分析(C422014、分子量748.61):推定値C;67.39%、H;2.69%、分析値C;67.71%、H;2.89%。融点(DSC):283℃。これらの分析結果より、生成物は下記式(18)で表される目的とするテトラカルボン酸二無水物であることが確認された。
Figure 2024082217000021
[比較例3:PMDA/4,4’-ODA系ポリイミドフィルムの作製および評価]
汎用のモノマーであるピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)を用いた以外は、実施例3に記載の方法に準じて重合し、ポリアミド酸の均一なワニスを得た後、これをキャスト製膜し、熱イミド化してポリイミドフィルムを作製し、いくつかのフィルム特性を測定した。10GHzにおける誘電率は3.17、誘電正接は0.01140であった。このように非常に高い誘電正接値を示したことから、比較例3に示したような従来のポリイミドフィルムは、高速通信FPC用耐熱絶縁フィルム材に適していないことがわかる。
[実施例7:8環型TDCA/APAB系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
上記式(15)で表される実施例1に記載のテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとして4-アミノフェニル4-アミノベンゾエート(APAB)を用い、実施例3に記載の方法に従って重合し、ポリアミド酸の均一なワニスを得た後、これをキャスト製膜し、熱イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特性を評価した。このポリエステルイミドフィルムは実施例3~6に記載のポリエステルイミドフィルムと同様に、高耐熱性、低吸水率、低誘電正接の点で非常に優れた特性を有していた。表2に物性値をまとめる。なお、表2中、評価が行われなかった項目は空欄とした。
[実施例8:8環型TDCA/ATAB系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
上記式(15)で表される実施例1に記載のテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとして4-アミノ-2-メチルフェニル4-アミノベンゾエート(ATAB)を用い、実施例3に記載の方法に従って重合し、ポリアミド酸の均一なワニスを得た後、これをキャスト製膜し、熱イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特性を評価した。このポリエステルイミドフィルムは実施例3~7に記載のポリエステルイミドフィルムと同様に、高耐熱性、低吸水率、低誘電正接の点で非常に優れた特性を有していた。図3に熱イミド化前の薄膜試料(ポリエステルイミド前駆体のフィルム)の赤外線吸収スペクトルを、図4に熱イミド化後の薄膜試料(ポリエステルイミドフィルム)の赤外線吸収スペクトルを示す。
[実施例9:8環型TCDA/ATAB(70);BAPP(30)コポリマー系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
上記式(15)で表される実施例1に記載のテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとして4-アミノ-2-メチルフェニル4-アミノベンゾエート(ATAB)(70mol%)および2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)(30mol%)を用い、実施例3に記載の方法に従って重合し、ポリアミド酸の均一なワニスを得た後、これをキャスト製膜し、熱イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特性を評価した。このポリエステルイミドフィルムは実施例3~8に記載のポリエステルイミドフィルムと同様に、高耐熱性、低吸水率、低誘電正接の点で非常に優れた特性を有していた。
[実施例10:6環型TCDA/p-PDA系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
上記式(18)で表される実施例2aに記載のテトラカルボン酸二無水物と、p-フェニレンジアミン(p-PDA)を用い、実施例3に記載の方法に従って重合し、ポリアミド酸の均一なワニスを得た後、これをキャスト製膜し、熱イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特性を評価した。このポリエステルイミドフィルムは実施例3~9に記載のポリエステルイミドフィルムと同様に、高耐熱性、低吸水率、低誘電正接の点で非常に優れた特性を有していた。
[実施例11:6環型TCDA/4,4’-ODA系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
上記式(18)で表される実施例2aに記載のテトラカルボン酸二無水物と、4,4’-ODAを用い、実施例3に記載の方法に従って重合を行い、ポリアミド酸の均一なワニスを得た後、これをキャスト製膜し、熱イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特性を評価した。このポリエステルイミドフィルムは実施例3~10に記載のポリエステルイミドフィルムと同様に、高耐熱性、低吸水率、低誘電正接の点で非常に優れた特性を有していた。
[実施例12:6環型TCDA/p-PDA(75);4,4’-ODA(25)コポリマー系ポリエステルイミドフィルムの作製および評価]
上記式(18)で表される実施例2aに記載のテトラカルボン酸二無水物と、p-PDA(75mol%)および4,4’-ODA(25mol%)を用い、実施例3に記載の方法に従って重合を行い、ポリアミド酸の均一なワニスを得た後、これをキャスト製膜し、熱イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、フィルム特性を評価した。このポリエステルイミドフィルムは実施例3~11に記載のポリエステルイミドフィルムと同様に、高耐熱性、低吸水率、低誘電正接の点で非常に優れた特性を有していた。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2024082217000023
    で表され、
    前記一般式(1)中、Arが、下記式(2)~(6):
    Figure 2024082217000024
    Figure 2024082217000025
    Figure 2024082217000026
    Figure 2024082217000027
    Figure 2024082217000028
    のいずれかで表される、
    テトラカルボン酸二無水物。
  2. 下記一般式(7):
    Figure 2024082217000029
    で表される構造単位を含み、
    前記一般式(7)中、Arは前記式(2)~(6)のいずれかで表され、Arは2
    価の芳香族基、2価の脂肪族基、または芳香族基と脂肪族基の少なくとも一方を含む2価
    の基である、
    ポリエステルイミド。
  3. 請求項2に記載のポリエステルイミドを含む、フィルム。
  4. 熱機械分析によって測定された100~200℃の間の平均線熱膨張係数が、30pp
    m/K以下である、請求項3に記載のフィルム。
  5. 動的粘弾性分析により測定されたガラス転移温度が、300℃以上であるかまたは検出
    されない、請求項3に記載のフィルム。
  6. 吸水率が、0.5%以下である、請求項3に記載のフィルム。
  7. 動作周波数10GHzにおける誘電正接が、0.003以下である、請求項3に記載の
    フィルム。
  8. 請求項3~7のいずれか1項に記載のフィルムを含む、高速通信用フレキシブルプリン
    ト配線基板。
  9. 請求項3~7のいずれか1項に記載のフィルムを含む、耐熱絶縁基板。
JP2023079533A 2022-12-07 2023-05-12 テトラカルボン酸二無水物、ポリエステルイミド、およびポリエステルイミドフィルム Pending JP2024082217A (ja)

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