JP2024080951A - ブロック共重合体、エポキシ樹脂改質剤、および、これを含有するエポキシ樹脂組成物 - Google Patents

ブロック共重合体、エポキシ樹脂改質剤、および、これを含有するエポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】エポキシ樹脂改質剤として有用な新規なブロック共重合体、これを含有するエポキシ樹脂組成物を提供する。【解決手段】本発明のブロック共重合体は、AブロックとBブロックとを有するA-B型ブロック共重合体であって、前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有し、前記Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位を有し、前記AブロックまたはBブロックのうち一方が、さらに、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)を有し、前記構造単位(c)を有するブロックは、分岐構造を有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、ブロック共重合体、エポキシ樹脂改質剤、および、これを含有するエポキシ樹脂組成物、並びに、エポキシ樹脂組成物からなる接着剤、アンダーフィル材、および、エポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有するエポキシ樹脂(主剤)とアミン類、酸無水物等(硬化剤)とを混合して加熱硬化処理を行うことで得られる熱硬化性樹脂の総称である。エポキシ樹脂は、高弾性率であることに加えて、引張強度、耐溶剤性、電気的特性にも優れているため、自動車用構造接着剤、建築土木用塗料、半導体などの電子材料の封止材(ポッティング材、アンダーフィル材)、航空機用複合材料、スポーツ用品用複合材料等に用いられている。例えば、半導体回路をヒートサイクル試験に供すると、回路基板と半導体チップとの線膨張係数の差に起因して半田バンプ等に過剰な機械的応力が加わり、半田バンプ等にクラックが発生し、半導体回路の接続信頼性が損なわれることがあった。この問題を解決するために、回路基板と半導体チップとの空隙にエポキシ樹脂からなるアンダーフィル材が充填されている。
しかし、エポキシ樹脂は高弾性のために、樹脂中の微小なひびが進展しやすいという特徴も併せ持つ。そのため破壊靭性や剥離接着力が弱く、その向上が求められている。そこで、エポキシ樹脂に、ブロック共重合体やコアシェル粒子などのエポキシ樹脂改質剤を添加することにより、エポキシ樹脂の靭性や剥離接着力を向上する試みが数多くなされている。
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂に、4員環~6員環の環状エーテル基または環状チオエーテル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有するAブロックと、鎖状アルキル基または環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を有するBブロックとを有するブロック共重合体を配合することで、靭性が向上することが開示されている。
特許文献2には、エポキシ樹脂に、コアの主成分がポリブタジエンまたはポリブチルアクリレート、シェルの主成分がアクリレートまたはメタクリレート系重合体からなるコア/シェル粒子を配合することで、靭性(耐衝撃性)が向上することが開示されている。
特許文献3には、エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル系重合体からなる重合体ブロック(a)および重合体ブロック(a)とは異なるアクリル系重合体からなる重合体ブロック(b)からなるブロック共重合体を配合することで、靭性および剛性が向上することが開示されている。
特許文献4には、エポキシ樹脂に、メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする重合体ブロックAを1個以上およびアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主体とする重合体ブロックBを1個以上有するブロック共重合体を配合することで、破壊靭性および剥離接着強さが向上することが開示されている。
新規な材料として、多分岐ポリマーが検討されている。多分岐ポリマーは、デンドロン(樹枝状)やデンドリマーに代表される数多くの枝分かれ構造を持つポリマーである。多分岐ポリマーは直鎖状ポリマーに比べ流体力学半径が小さいことから、溶解性が大きく向上、粘度が大きく低下、ガラス転移温度が大きく変化する等の特徴を有している。そのため、医療業界、化学業界等において、その利用方法が広く検討されている。
多分岐ポリマーの合成法として、デンドリマー合成法がある。デンドリマーの合成法は、AB型モノマー(AおよびBは、互いに異なる官能基aおよびbを有する有機基を表し、官能基aおよびbは、互いに化学的に縮合反応や、付加反応を起こすことができるものである。)を段階的に反応させる方法(下記スキーム1参照)である。これにより核となる分子を中心に樹枝状分岐した構造を持つポリマーが得られるが、モノマー、オリゴマー、ポリマー同士が互いに反応することにより、分岐構造が不均一であるとともに、多分散のポリマーが得られる。規則正しく完全に樹枝状分岐した構造を持つ単分散のポリマーが得られる方法も知られているが、その製造工程は非常に煩雑である。このため、デンドリマーが実用化された例はこれまでない。
スキーム1:AB型モノマーを使用する方法
Figure 2024080951000001
特許文献5には、イニマーと呼ばれる同一分子内に重合性官能基及び重合開始基を有するモノマーを用いた多分岐ポリマーの合成法(下記スキーム2参照。スキーム2中、B*は重合開始基を表す。)が開示されている。
スキーム2:イニマーを使用する方法
Figure 2024080951000002
特許文献6には、重合性二重結合に重合開始基が直接結合したビニルモノマー(ブランマーともいう)を用いた多分岐ポリマーの製造方法が開示されている。スキーム3中、B*は、重合開始基を表す。
スキーム3:ブランマーを使用する方法
Figure 2024080951000003
特開2018-35266号公報 特開平9-25393号公報 再表2014-142024号公報 再表2009-101961号公報 特開2013-148798号公報 国際公開WO2017/191766号
近年、自動車用構造接着剤、半導体などの電子材料、航空材料などの高性能化が進んでいる。そのため、これらに用いられるエポキシ樹脂にもより高度な性能が求められるが、前記手法で十分な靭性や剥離接着力の改善を行う場合、前記改質剤(ブロック共重合体またはコア/シェル粒子)のエポキシ樹脂中への含有割合を大きくする必要がある。しかし、前記改質剤の割合を大きくしたエポキシ樹脂は、引張強度や耐溶剤性といったエポキシ樹脂が本来持つ特徴が弱くなってしまい、そのような特徴を必要とする材料への適用ができなくなる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、エポキシ樹脂改質剤として有用な新規なブロック共重合体、これを含有するエポキシ樹脂組成物、並びに、このエポキシ樹脂組成物からなる接着剤、このエポキシ樹脂からなるアンダーフィル材、および、このエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供することを目的とする。本発明には、本発明のブロック共重合体の製造方法が含まれる。
本発明者らは、エポキシ樹脂改質剤として使用されるブロック共重合体のブロックの一方が分岐構造を有することにより、ブロック共重合体のエポキシ樹脂に対する親和性が変化することを見出し、本発明を完成した。
前記課題を解決することができた本発明のブロック共重合体は、AブロックとBブロックとを有するA-B型ブロック共重合体であって、前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有し、前記Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有し、
前記AブロックまたはBブロックのうち一方が、さらに、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)を有し、前記構造単位(c)を有するブロックは、分岐構造を有することを特徴とする。
本発明のA-B型ブロック共重合体には、前記Aブロックが、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)と、構造単位(c)とを有し、前記Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有する第1の態様、および、前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有し、前記Bブロックが、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)と構造単位(c)とを有する第2の態様が含まれる。
本発明のブロック共重合体は、前記Aブロックに、エポキシ樹脂との親和性が高い構造単位(a-1)と有している。前記Bブロックは、Aブロックに比べてエポキシ樹脂に対する親和性が低い。
本発明のブロック共重合体をエポキシ樹脂に配合すると、低親和性のBブロックがエポキシ樹脂と相溶せずに分散している状態、即ち海島構造が形成される。エポキシ樹脂の亀裂伸展時にはこの島部分がキャビテーションを起こし、発生した空洞を用いて周囲の樹脂が応力緩和を行うことで、亀裂伸展のエネルギーを分散させ破壊靭性を向上することができると考えられる。亀裂伸展のエネルギーを分散させられる程度は、島部分のサイズや形態の影響を受ける。
エポキシ樹脂との親和性が高いAブロックとエポキシ樹脂に対する親和性の低いBブロックをもつブロック共重合体は、エポキシ樹脂中において、低親和性のブロックBをコア、高親和性のブロックAをシェルにしたミセルの状態で分散する。ミセルの形態は臨界充てんパラメータ(CPP)によって支配される。CPPはミセル中の1本の高分子鎖からなる円錐において、その体積をv、母線の長さをl、底面の面積をaとおくと、v/alで表され、CPPが小さい程、微小な径のミセルとなる。
(シェル分岐タイプ)
前記Aブロックが、構造単位(c)を有する第1の態様では、ブロック共重合体がシェル部位に主鎖が分岐した構造をもつことから、ポリマー鎖の流体力学半径が小さくなり、樹脂組成物のせん断粘度が小さくなる。それによって、樹脂組成物中で、亀裂伸展エネルギーの分散を効率良く行うことができるナノワームライク形態のミセルを容易に形成することができるようになり、樹脂硬化物の破壊靭性付与効果が上昇する。また、シェル部位に主鎖が分岐した構造をもつことで、ミセル中の1本の高分子鎖からなる円錐の底面の面積aが大きくなり、同一組成の直鎖ブロック共重合体と比較して、ミセル径が小さく透明性の高い樹脂硬化物となると推測される。
(コア分岐タイプ)
エポキシ樹脂組成物は、樹脂組成物から樹脂硬化物への遷移過程(架橋反応)においては、せん断粘度が急激に上昇する。せん断粘度上昇によりブロック共重合体の移動は制限されてしまうため、高せん断粘度下では必ずしもすべてのブロック共重合体がエネルギー的に最も安定なミセルを形成するとは限らない。破壊靭性付与効果はエネルギー的に最も安定なミセル形成状態の方が高いと考えられるため、樹脂組成物から樹脂硬化物への遷移過程で如何にブロック共重合体の移動が妨げられないかが重要と考えられる。前記Bブロックが、構造単位(c)を有する第2の態様では、ミセルコアに相当する部位(コア部位)に主鎖が分岐した構造をもつから、共重合体鎖同士の絡み合いが少なくなり、移動の妨げが直鎖の共重合体と比べて少なくなっている。そのため、樹脂組成物のせん断粘度の上昇が抑制されると共に、樹脂硬化物の破壊靭性付与効果が上昇していると推測される。さらに、コア部位に主鎖が分岐した構造をもつことから、側鎖の取り得る配置が制限され、側鎖の結晶化が抑制される。側鎖の結晶化を抑えることで、結晶化によるアンカー効果の低下を抑えることができ、高いせん断接着力が得られると推測される。
本発明には、エポキシ樹脂、硬化剤、および、前記エポキシ樹脂改質剤を含有するエポキシ樹脂組成物が含まれる。また、本発明には、前記エポキシ樹脂組成物からなる接着剤、前記エポキシ樹脂組成物からなるアンダーフィル材、および、前記エポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物が含まれる。本発明には、本発明のブロック共重合体の製造方法が含まれる。
本発明によれば、エポキシ樹脂改質剤として有用な新規なブロック共重合体を提供できる。本発明のエポキシ樹脂改質剤は、エポキシ樹脂に配合して硬化物としたときに、優れた破壊靭性を与えることができる。
本発明のブロック共重合体は、AブロックとBブロックとを有するA-B型ブロック共重合体であって、前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有し、前記Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有し、
前記AブロックまたはBブロックのうち一方が、さらに、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)を有し、前記構造単位(c)を有するブロックは、分岐構造を有することを特徴とする。
前記ブロック共重合体は、(メタ)アクリレート系共重合体が好ましい。(メタ)アクリレート系共重合体とは、(メタ)アクリレートに由来する構造単位を主成分(50質量%以上)とする共重合体であればよく、(メタ)アクリレート以外のビニルモノマーに由来する構造単位を含有してもよい。前記共重合体中の(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、共重合体全体100質量%中において、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
本発明において、「Aブロック」は、「Aセグメント」と言い換えることができ、「Bブロック」は、「Bセグメント」と言い換えることができる。本発明において、「ビニルモノマー」とは、分子中にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーのことをいう。「ビニルモノマーに由来する構造単位」とは、ビニルモノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」のことをいい、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」のことをいう。また、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、非環式アルキル基を有する(メタ)アクリレートである。本発明において、「鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート」は、「(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステル」または「(メタ)アクリル酸鎖状アルキル」と言い換えることができ、「環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート」は、「(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル」または「(メタ)アクリル酸環状アルキル」と言い換えることができる。
本発明のブロック共重合体の各種構成成分等について以下説明する。
(Aブロック)
まず、Aブロックについて説明する。前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有する。
含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環は、炭化水素の環を構成する炭素原子の少なくとも1つが酸素原子または硫黄原子に置換された構造を有する。含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環は、3員環以上であることが好ましく、6員環以下であることが好ましい。樹脂組成物のせん断粘度の観点からは、3員環であることが好ましく、樹脂組成物の硬化物のせん断接着力の観点からは、4員環~6員環であることが好ましい。
環を構成する炭素原子が、さらに別の原子で置換されていてもよい。他の原子の具体例としては、窒素原子を挙げることができる。また、3員環~6員環の炭化水素の環を構成する炭素原子の2つ以上が、炭素原子以外の原子で置換されていてもよい。さらに、3員環~6員環を構成する結合は、飽和結合でも不飽和結合でも良い。また、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環は、環を構成する原子に直接結合した水素原子が置換基に置換されていてもよい。前記置換基としては、例えば、炭化水素基が挙げられる。
前記含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)は、下記式(1)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2024080951000004
〔一般式(1)において、R12は、水素原子またはメチル基を表す。X11は、単結合または酸素原子を表す。R11は、単結合、炭素数が1~18のアルキレン基または炭素数が1~18のオキシアルキレン基を表す。Q11は、3員環~6員環の環状エーテル基または環状チオエーテル基を表す。〕
11で表される3員環~6員環の環状エーテル基の具体例としては、例えば、3員環~6員環の環を構成する炭素原子が、少なくとも一つの酸素原子で置換されている環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基(4)、フラニル基(フリル基、5)、テトラヒドロフルフリル基(6)、ピラニル基(7a,7b)、ジヒドロピラニル基(8a,8b)、テトラヒドロピラニル基(9)、ジオキソラニル基(10)、ジオキサニル基(11);3員環~6員環の環を構成する炭素原子が、酸素原子と窒素原子で置換されている環状エーテル基として、オキサゾール基(12)、オキサジニル基(13a~13h)、モルホリノ基(14);3員環~6員環の環を構成する炭素原子が、硫黄原子で置換されている環状チオエーテル基として、チエタニル基(15)、チエニル基(16);3員環~6員環の環を構成する炭素原子が、硫黄原子と窒素原子で置換されている環状チオエーテル基として、チアゾリル基(17);3員環~6員環の環を構成する炭素原子が、酸素原子と硫黄原子で置換されている環状エーテル基(または環状チオエーテル基)として、オキサチオラニル基(18)などを挙げることができる。前記官能基の化学式を以下に示した。官能基名の括弧内の番号が、化学式の番号に対応している。
Figure 2024080951000005
Figure 2024080951000006
Figure 2024080951000007
化学式中、(メタ)アクリル酸骨格が、Q11の環構造に結合する位置を代表例で示しているが、これに限定されない。すなわち、(メタ)アクリル酸骨格は、Q11の環構造を構成する任意の原子に結合することができる。
11は、不飽和結合を有さないものが好ましく、例えば、エポキシ基、オキセタニル基(4)、テトラヒドロフルフリル基(6)、チエタニル基(15)、テドラヒドロピラニル基(9)、ジオキソラニル基(10)、ジオキサニル基(11)、オキサチオラニル基(18)、モルホリノ基(14)などが好ましい。
一般式(1)で表される構造単位(a-1)を形成するビニルモノマーの具体例としては、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2-[(2-テトラヒドロピラニル)オキシ]エチル(メタ)アクリレート、1,3-ジオキサニル-(メタ)アクリレート等が挙げられる。
Aブロックは、一般式(1)で表される構造単位(a-1)を1種のみ有してもよいし、または、一般式(1)で表される構造単位(a-1)を2種以上有してもよい。
一般式(1)で表される構造単位(a-1)は、エポキシ樹脂に対して親和性の高い含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有し、Aブロックのエポキシ樹脂への親和性を高める。
Aブロックにおける一般式(1)で表される構造単位(a-1)の含有率は、Aブロックを構成する構造単位100mol%中において、50mol%以上が好ましく、60mol%以上がより好ましく、65mol%以上がさらに好ましく、100mol%以下が好ましい。構造単位(a-1)の含有率を前記範囲とすることで、Aブロックのエポキシ樹脂への相溶性が良好となり、Bブロックがナノスケールでエポキシ樹脂に分散することができる。シェル分岐タイプであれば、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い透明性を示し、コア分岐タイプであれば、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が高いせん断接着力を示す。
Aブロックは、前述の一般式(1)で表される構造単位(a-1)に加えて、さらに鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-2)を有してもよい。前記構造単位(a-2)は、前記構造単位(a-1)に比べてエポキシ樹脂との親和性が低い。
構造単位(a-2)を構成する鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが有する鎖状アルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基を挙げることができる。前記直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。前記分岐鎖状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~10の鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキル基および/または炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基がさらに好ましい。このような鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することで、Aブロックのエポキシ樹脂への相溶性が良好でありながら、Aブロックのエポキシ樹脂との親和性が適当な範囲となりやすいからである。
Aブロックは、構造単位(a-2)を1種のみ有してもよいし、または、構造単位(a-2)を2種以上有してもよい。
Aブロックにおける構造単位(a-2)の含有率は、Aブロックを構成する構造単位100mol%中において、1mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましく、15mol%以上さらに好ましく、50mol%以下が好ましく、40mol%以下がより好ましく、30mol%以下がさらに好ましい。構造単位(a-2)の含有率を前記範囲とすることで、Aブロックのエポキシ樹脂との親和性が適切となり、Bブロックがナノワームライクミセルの形態でエポキシ樹脂に分散することができるため、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物に優れた破壊靭性を与えることができる。さらには、シェル分岐タイプであれば、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い透明性を示し、コア分岐タイプであれば、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が高いせん断接着力を示す。
Aブロックは、前述の構造単位(a-1)および(a-2)のみから構成されてもよいし、Aブロックのエポキシ樹脂に対する適切な親和性を保持できる範囲において、他の構造単位(a-3)が含まれていてもよい。
Aブロックに含まれ得る他の構造単位(a-3)は、一般式(1)で表される構造単位(a-1)を形成するビニルモノマー、構造単位(a-2)を形成する鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、後述のBブロックを形成するビニルモノマーと共重合し得るビニルモノマーにより形成されるものであれば特に制限はない。Aブロックの他の構造単位(a-3)を形成し得るビニルモノマーの具体例としては、芳香族ビニルモノマー、ヒドロキシ基を有するビニルモノマー、カルボキシ基を有するビニルモノマー、スルホン酸基を有するビニルモノマー、リン酸基を有するビニルモノマー、3級アミンを含有するビニルモノマー、4級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、ビニルアミド、カルボン酸ビニル、α-オレフィン、ジエン類、(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、2-ヒドロキシメチルスチレン、1-ビニルナフタレン等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有するビニルモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシ基を有するビニルモノマーとしては、前記ヒドロキシ基を有するビニルモノマーに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有するビニルモノマーとしては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジスルホン酸エチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スルホン酸エチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
リン酸基を有するビニルモノマーとしては、メタクリロイロキシエチルリン酸エステル等が挙げられる。
3級アミンを含有するビニルモノマーとしては、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマーとしては、N-2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、N-メタクリロイルアミノエチル-N,N,N-ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
ヘテロ環を含有するビニルモノマーとしては、2-ビニルチオフェン、N-メチル-2-ビニルピロール、1-ビニル-2-ピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が挙げられる。なお、構造単位(a-3)を形成し得るヘテロ環を含有するビニルモノマーには、構造単位(a-1)を形成する含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートは含まれない。
ビニルアミドとしては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。
カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。α-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。ジエン類としては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等が挙げられる。
(メタ)アクリルモノマーとしては、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、スルホン酸基を有する(メタ)アクリレート、3級アミンを含有する(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、芳香環基を有する(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スルホン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、ジスルホン酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3級アミン含有(メタ)アクリレートとしては、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートとしては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香環基を有する(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
構造単位(a-3)を形成し得るビニルモノマーは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
Aブロックが構造単位(a-3)を有する場合、Aブロックにおける構造単位(a-3)の含有率は、Aブロック構成する構造単位100mol%中において、10mol%以下が好ましく、8mol%以下がより好ましく、6mol%以下がさらに好ましく、5mol%以下が特に好ましい。なお、構造単位(a-3)の含有率の下限は、0mol%である。
また、Aブロックは、Bブロックが有する構造単位(b-1)を実質的に含有しないことが好ましい。即ち、Aブロックにおいて、Bブロックが有する構造単位(b-1)の含有率は、Aブロックを構成する構造単位100mol%中において、10mol%以下が好ましく、8mol%以下がより好ましく、5mol%以下がさらに好ましく、2mol%以下が特に好ましい。なお、前記含有率の下限は、0mol%である。
Aブロックにおいて2種以上の構造単位が含有される場合は、Aブロックに含有される各種構造単位は、Aブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合等の何れの態様で含有されていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。例えば、Aブロックが、(a-1)構造単位からなるブロックと(a-2)構造単位からなるブロックとの共重合体により形成されていてもよい。
(Bブロック)
次に、Bブロックについて説明する。Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有するポリマーブロックである。Bブロックは、前記ビニルモノマーに由来する構造単位(a-1)を実質的に含有しないことから、Aブロックに比べてエポキシ樹脂に対する相溶性が低いと考えられる。
鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ノナデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、炭素数11~20の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。また、鎖状アルキル基は、直鎖アルキル基または分岐鎖状アルキル基のいずれであってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ペンチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6~15の環状アルキル基(特に単環アルキル基)を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
前記ビニルモノマーは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
構造単位(b-1)を形成するビニルモノマーとして、特に、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素数11~20の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することがより好ましく、炭素数11~20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することがさらに好ましく、炭素数11~15の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが特に好ましい。構造単位(b-1)を形成するビニルモノマーとして、炭素数が11~20の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することで、Bブロックが柔軟になり、亀裂伸展時のエネルギー分散効果がより向上し、破壊靭性がより向上したエポキシ樹脂組成物の硬化物が得られるからである。
構造単位(b-1)の含有率は、Bブロックを構成する構造単位100mol%中において、50mol%以上が好ましく、80mol%以上がより好ましく、93mol%以上がさらに好ましい。なお、前記構造単位(b-1)の含有率の上限は、100mol%であることが好ましい。構造単位(b-1)の含有率を前記範囲とすることで、破壊靭性がより向上したエポキシ樹脂組成物の硬化物が得られる。
Bブロックは、構造単位(b-1)のみから構成されてもよいし、Bブロックのエポキシ樹脂に対する低相溶性を保持できる範囲において、他の構造単位が含まれていてもよい。また、Bブロックは、Aブロックが有する構造単位(a-1)および(a-2)を実質的に含有しないことが好ましい。即ち、Bブロックにおいて、Aブロックが有する構造単位(a-1)および(a-2)のそれぞれの含有率は、Bブロックを構成する構造単位100mol%中において、10mol%以下が好ましく、8mol%以下がより好ましく、5mol%以下がさらに好ましく、2mol%以下が特に好ましい。なお、前記含有率の下限は、0mol%である。
Bブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーの具体例としては、芳香族ビニルモノマー、ヒドロキシ基を有するビニルモノマー、カルボキシ基を有するビニルモノマー、スルホン酸基を有するビニルモノマー、リン酸基を有するビニルモノマー、3級アミンを含有するビニルモノマー、4級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、ビニルアミド、カルボン酸ビニル、α-オレフィン、ジエン類、(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。
(メタ)アクリルモノマーとしては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、スルホン酸基を有する(メタ)アクリレート、3級アミンを含有する(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、芳香環基を有する(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
前記ビニルモノマーの具体例としては、Aブロックの他の構造単位(a-3)を形成し得るビニルモノマーの具体例として例示したものと同一のものを挙げることができる。
Bブロックで使用される前記ビニルモノマーは、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
Bブロックの他の構造単位の含有率は、Bブロック構成する構造単位100mol%中において、20mol%以下が好ましく、10mol%以下がより好ましく、5mol%以下がさらに好ましい。なお、Bブロックの他の構造単位の含有率の下限は、0mol%である。
Bブロックにおいて2種以上の構造単位が含有される場合は、Bブロックに含有される各種構造単位は、Bブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合等の何れの態様で含有されていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。
本発明のブロック共重合体は、AブロックまたはBブロックのうち一方が、さらに、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)を有する。
構造単位(c)は、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来するものである。前記ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーは、下記一般式(2)で表されるビニルモノマーであることが好ましい。
Figure 2024080951000008
[一般式(2)において、Zはリビングラジカル重合開始基を表す。R22~R24は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子を表す。]
また、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位は、以下の式(3)で表すことができる。
Figure 2024080951000009
[一般式(3)において、R22~R24は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子を表す。]
上記のように、R22~R24で表される基は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。また、前記アルキル基はヘテロ元素官能基が置換していてもよい。好ましくは炭素数1~8の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基を挙げることができる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR221222(R221、R222は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、-COOR223(R223は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ter-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基がよい。
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基を挙げることができる。
Zで表される基は、リビングラジカル重合開始基であり、リビングラジカル重合の重合開始部位として機能する官能基(重合開始基)であれば特に制限はない。前記リビングラジカル重合開始基としては、-Te-R21、-Cl、-Br、-I、-SC(=S)R21、-SC(=S)OR21、-S(C=S)NR21 等が挙げられる。これらのなかでも使用できるモノマーの多様性の観点から、重合開始基としては、好ましくは-Te-R21がよい。
21として表される基は炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基を挙げることができる。
(ブロック共重合体)
本発明のブロック共重合体は、前記Aブロックと、前記Bブロックとを有する。ブロック共重合体の構造は、(A-B)m型、(A-B)m-A型および(B-A)m-B型(mは1以上の整数、例えば1~3の整数)よりなる群から選択される少なくとも1種の構造を持つ共重合体であることが好ましい。これらの中でも、本発明のブロック共重合体は、加工時の取扱い性、組成物の物性の観点から、A-B型ジブロック共重合体であることが好ましい。前記ブロック共重合体は、AブロックおよびBブロック以外の他のブロックを有していてもよい。
本発明のA-B型ブロック共重合体は、前記AブロックまたはBブロックのうち一方が、さらに、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)を有し、前記構造単位(c)を有するブロックは、分岐構造を有する。
すなわち、本発明のA-B型ブロック共重合体には、前記Aブロックが、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)と、構造単位(c)とを有し、前記Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有する第1の態様、および、前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有し、前記Bブロックが、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)と構造単位(c)とを有する第2の態様が含まれる。
前記Aブロックが、前記構造単位(c)を有する第1の態様において、前記Aブロック中の構造単位(c)の含有量は、前記Bブロック全体1molに対して、0mol超であり、1.0mol以上が好ましく、2.0mol以上がより好ましく、10mol以下が好ましく、8mol以下がより好ましく、5mol以下がさらに好ましい。前記構造単位(c)の含有量は、分岐度を指標とする。構造単位(c)の含有量が前記範囲内であれば、Aブロックが適度な分岐構造を有して、高い破壊靭性および透明性が得られる。なお、前記Aブロック中の構造単位(c)の含有量は、(Aブロック中の構造単位(c)のmol数/Bブロックの合成に使用した連鎖移動剤のmol数)で算出できる。例えば、後述するTERP法では、(Aブロック中の構造単位(c)のmol数/Bブロックの合成に使用した連鎖移動剤(BTEE:エチル=2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート)のmol数)で算出できる。
前記Bブロックが、前記構造単位(c)を有する第2の態様において、前記Bブロック中の構造単位(c)の含有量は、前記Aブロック全体1molに対して、0mol超であり、0.5mol以上が好ましく、1.5mol以上がより好ましく、3.5mol以上がさらに好ましく、10mol以下が好ましく、9mol以下がより好ましく、8mol以下がさらに好ましい。前記構造単位(c)の含有量は、分岐度を指標とする。構造単位(c)の含有量が前記範囲内であれば、Bブロックが、適度な分岐構造を有して、高い破壊靭性とせん断接着力が得られる。なお、前記Bブロック中の構造単位(c)の含有量は、(Bブロック中の構造単位(c)のmol数/Aブロックの合成に使用した連鎖移動剤のmol数)で算出できる。例えば、後述するTERP法では、(Bブロック中の構造単位(c)のmol数/Aブロックの合成に使用した連鎖移動剤(BTEE:エチル=2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート)のmol数)で算出できる。
Aブロックの含有率は、ブロック共重合体を構成する構造単位100mol%中において、20mol%以上が好ましく、30mol%以上がより好ましく、40mol%以上がさらに好ましく、80mol%以下が好ましく、70mol%以下がより好ましく、65mol%以下がさらに好ましい。Aブロックの含有率を上記範囲内に調整することで、目的の機能を有するブロック共重合体を調整することができる。
Bブロックの含有率は、ブロック共重合体を構成する構造単位100mol%中において、20mol%以上が好ましく、30mol%以上がより好ましく、35mol%以上がさらに好ましく、80mol%以下が好ましく、70mol%以下がより好ましく、60mol%以下がさらに好ましい。Bブロックの含有率を上記範囲内に調整することで、目的の機能を有するブロック共重合体を調整することができる。
本発明のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、10,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましく、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましい。数平均分子量が下限値以下だと破壊靭性付与性が足りず、また上限値以上だとエポキシ樹脂に対して溶解性が低下する。本発明のブロック共重合体の数平均分子量が前記範囲内にあれば、破壊靭性がより向上したエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
前記ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.1以下がさらに好ましい。なお、本発明において、分子量分布(Mw/Mn)とは、(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw))/(ブロック共重合体の数平均分子量(Mn))によって求められるものである。Mw/Mnが小さいほど分子量分布の幅が狭い、分子量のそろった共重合体となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。前記ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が、3.0を超えると、分子量の小さいものや、分子量の大きいものが含まれることになる。分子量が小さいと破壊靭性付与性が足りず、分子量が大きいとエポキシ樹脂に対して溶解性が低下するため、機械的強度が低下するおそれがある。
なお、前記重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」という)法により測定される。
(ブロック共重合体の製造方法)
本発明のブロック共重合体は、リビングラジカル重合により製造されることが好ましい。すなわち、前記ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合により重合されたものが好ましい。従来のラジカル重合法は、開始反応、成長反応だけでなく、停止反応、連鎖移動反応により成長末端の失活が起こり、様々な分子量、不均一な組成のポリマーの混合物となり易い。前記リビングラジカル重合法は、従来のラジカル重合法の簡便性と汎用性を保ちながら、停止反応や、連鎖移動反応が起こりにくく、成長末端が失活することなく成長するため、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーの製造が容易である点で好ましい。
リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、ニトロキサイドラジカルを生じうる化合物を用いる方法(ニトロキサイド法(NMP法));銅やルテニウムなどの金属錯体を用いて、ハロゲン化化合物を重合開始化合物として、その重合開始化合物からリビング的に重合させる方法(ATRP法);ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物を用いる方法(RAFT法);有機テルル化合物を用いる方法(TERP法);有機ヨウ素化合物を用いる方法(ITP法);ヨウ素化合物を重合開始化合物とし、リン化合物、窒素化合物、酸素化合物、又は炭化水素などの有機化合物を触媒として用いる方法(可逆的移動触媒重合(RTCP法)、可逆的触媒媒介重合(RCMP法))等がある。これらの方法の中でも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御、均一な組成、あるいは着色の観点から、TERP法を用いることが好ましい。
リビングラジカル重合法、特にTERP法は、ポリマー鎖が均一にモノマーと反応しながら重合し、全てのポリマーの組成は均一に近づき、擬似架橋を形成する確率が上がるため好ましい。
TERP法とは、有機テルル化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル重合性化合物(ビニルモノマー)を重合させる方法であり、例えば、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および、国際公開第2004/096870号に記載された方法である。
(重合方法(TERP法))
有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)は、連鎖移動剤として下記の一般式(4)で表される有機テルル化合物、または該有機テルル化合物から得られるマクロ連鎖移動剤(以下、これらを総称して単に有機テルル化合物という)等を連鎖移動剤とするリビングラジカル重合である。また、TERP法において、連鎖移動剤は有機テルル化合物の中から1種を選択して使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
マクロ連鎖移動剤とは、ビニルモノマーを下記の一般式(4)で表される有機テルル化合物を用いてリビングラジカル重合して得られるビニル重合体である。前記マクロ連鎖移動剤は、ポリマーの一方の末端に、下記一般式(5)で表されるリビングラジカル重合開始基を有することが好ましい。
Figure 2024080951000010
〔一般式(4)において、R41は炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。R42及びR43は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R44は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基を表す。〕
-Te-R41 (5)
〔一般式(5)において、R41は炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。〕
上記のように、R41で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基又は芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
芳香族ヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基を挙げることができる。
42及びR43で表される基は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。
44で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。好ましくはフェニル基である。
置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。上記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、-COR441で示されるカルボニル含有基(R441は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、炭素数1~8のアルコキシ基またはアリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、1個または2個置換しているのがよい。
芳香族ヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR44214422(R4421、R4422は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)を挙げることがきる。
オキシカルボニル基としては、-COOR443(R443は水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ter-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基がよい。
アリル基としては、-CR44414442-CR4443=CR44444445(R4441、R4442は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であり、R4443、R4444、R4445は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基であり、それぞれの置換基が環状構造で繋がっていてもよい)等を挙げることができる。
プロパルギル基としては、-CR44514452-C≡CR4453(R4451、R4452は、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基、R4453は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはシリル基)等を挙げることができる。
一般式(4)で示される有機テルル化合物は、具体的には(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル=2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート、エチル=2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、(2-トリメチルシロキシエチル)=2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、(2-ヒドロキシエチル)=2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、(3-トリメチルシリルプロパルギル)=2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート等を挙げることができる。
本発明のA-B型ブロック共重合体の製造方法は、前記AブロックまたはBブロックのうち前記構造単位(c)を含有しないブロックを有するマクロ連鎖移動剤を用いて、リビングラジカル重合する方法が好ましい。
上述したように、本発明のA-B型ブロック共重合体には、前記Aブロックが、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)と、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)とを有し、前記Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有する第1の態様、および、前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有し、前記Bブロックが、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)とビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)とを有する第2の態様が含まれる。
本発明のA-B型ブロック共重合体の製造方法は、AブロックまたはBブロックのうち構造単位(c)を含有しないブロックを作製する第1工程と、
得られた構造単位(c)を含有しないブロックを有するマクロ連鎖移動剤を用いて、構造単位(c)を有するブロックを作製する第2工程とを有する。
例えば、前記Aブロックが構造単位(c)を有する第1の態様について、本発明のA-Bブロック共重合体の製造方法は、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有するBブロックを製造する第1工程と、前記Bブロックをマクロ連鎖移動剤として、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)とビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)とを有するAブロックを作製する第2工程とを有する。
前記Bブロックが構造単位(c)を有する第2の態様について、本発明のA-Bブロック共重合体の製造方法は、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有するAブロックを作製する第1工程と、
前記Aブロックをマクロ連鎖移動剤として、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)とを有するBブロックを作製する第2工程とを有する。
リビングラジカル重合がTERP法である場合、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーとしては、一般式(6)で表されるビニルモノマーであることが好ましい。
Figure 2024080951000011
〔一般式(6)において、R62は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子を表す。R61は炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。〕
上記のように、R62として表される基は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基を挙げることができる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR621622(R621、R622は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、-COOR623(R623は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ter-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基がよい。
シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等をあげることができる。
61として表される基は炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、より好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基を挙げることができる。
一般式(6)で表されるビニルモノマーとしては、具体的には2-メチルテラニルプロペン、2-ブチルテラニルプロペン、2-フェニルテラニルプロペン、2-メチルテラニルブテン、2-ブチルテラニルブテン等を挙げることができる。
TERP法は、ビニルモノマーの種類に応じ反応促進、分子量の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤および/または一般式(7)で表される有機ジテルル化合物を加えて重合を行ってもよい。
具体的には、ビニルモノマーを、下記(a)~(d)のいずれかを用いて重合し、ビニル重合体を製造する方法が挙げられる。
(a)有機テルル化合物。
(b)有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との混合物。
(c)有機テルル化合物と有機ジテルル化合物との混合物。
(d)有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と有機ジテルル化合物との混合物。
(R41Te) (7)
〔一般式(7)において、R41は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。〕
一般式(7)で示される有機ジテルル化合物は、具体的には、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-s-ブチルジテルリド、ジ-t-ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等を挙げることができる。
アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)、2,2’-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等を挙げることができる。
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと有機テルル化合物とに、ビニルモノマーの種類に応じ反応促進、分子量の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤及び/又は有機ジテルル化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。特に好ましくは、窒素がよい。
ビニルモノマーの使用量としては、目的とするビニル重合体の構造により適宜調節することができる。例えば、有機テルル化合物1molに対して、ビニルモノマーを10mol~50,000molとすることができ、好ましくは25mol~10,000molであり、より好ましくは50mol~5,000molであり、さらに好ましくは75mol~1,000molである。
有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、アゾ系重合開始剤の使用量としては、通常、有機テルル化合物1molに対して、アゾ系重合開始剤を0.01mol~1molとすることができる。
有機テルル化合物と有機ジテルル化合物を併用する場合、有機ジテルル化合物の使用量としては、通常、有機テルル化合物1molに対して、有機ジテルル化合物を0.1mol~10molとすることができる。
有機テルル化合物と有機ジテルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、アゾ系重合開始剤の使用量としては、通常、有機テルル化合物と有機ジテルル化合物の合計1molに対して、アゾ系重合開始剤を0.01mol~10molとすることができる。
重合工程は、無溶剤でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される溶媒(非プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒)を使用し、上記混合物を撹拌して行われる。
使用できる非プロトン性溶媒としては、特に限定はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、ヘキサフルオロイソプロパオール、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、トリフルオロメチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
使用できるプロトン性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、ビニルモノマー1gに対して、通常0.001ml~50mlの範囲であり、好ましくは0.01ml~10mlの範囲であり、より好ましくは0.02ml~3mlの範囲である。
反応温度および反応時間は、目的とするビニル重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよく、通常、0℃~150℃の範囲で、1分~150時間撹拌する。このとき、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧または減圧しても構わない。
重合工程により得られるビニル重合体の成長末端は、有機テルル化合物由来の-TeR41(式中、R41は上記と同じである)及び-TeR61(式中、R61は上記と同じである)の形態であることから、成長末端に様々な置換基・官能基を導入しビニル重合体の機能向上が可能である。また、マクロ連鎖移動剤として用いることもできる。
重合工程の終了後、重合溶液から使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去して目的とするビニル重合体を取り出したり、不溶溶媒を使用して再沈殿処理により目的とするビニル重合体を単離することができる。重合工程終了後の空気中の操作により、得られたビニル重合体の成長末端は失活していくが、テルル原子が残存する場合がある。テルル原子が末端に残存したビニル重合体は着色したり、熱安定性に劣ることから、トリブチルスタンナン又はチオール化合物等を用いるラジカル還元方法、さらに活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブス及び高分子吸着剤等で吸着する方法、イオン交換樹脂等で金属を吸着する方法や、また過酸化水素水や過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加したり、空気や酸素を系中に吹き込むことでビニル重合体末端のテルル原子を酸化分解させ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留テルル化合物を除去する液-液抽出法や固-液抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限界ろ過等の溶液状態での精製方法を用いることができ、また、これらの方法を組み合わせることもできる。
(重合方法(ATRP法))
遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法)は、遷移金属錯体からなるレドックス触媒の存在下、有機ハロゲン化合物、又は該有機ハロゲン化合物から得られるマクロ連鎖移動剤(以下、これらを総称してATRP開始剤という)を連鎖移動剤とするリビングラジカル重合法である。また、ATRP法において、連鎖移動剤は、有機ハロゲン化合物の中から1種を選択して使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
レドックス触媒として用いられる遷移金属錯体は、周期表第8族~第11族から選ばれる金属元素の錯体である。遷移金属錯体は、遷移金属、及び有機配位子からなる。遷移金属の具体例としては、銅、ニッケル、ルテニウム又は鉄である。これらの中でも、反応制御やコストの観点から銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などが挙げられる。その中でも塩化第一銅、臭化第一銅が、重合制御の観点から好ましい。より安定で取扱いの容易な塩化第二銅、臭化第二銅に還元剤を加え、重合系中で塩化第一銅、臭化第一銅を発せさせ、重合を行うこともできる。
また、遷移金属とともに錯体を形成する有機配位子としては、2座以上の窒素配位子が好ましく、例えば、2,2’-ビピリジル、4,4’-ビピリジル、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[2-(ピリジル)メチル]アミンなどが挙げられる。
上記遷移金属の塩と有機配位子とは、別々に添加して重合系中で遷移金属錯体を生成させてもよいし、予め遷移金属の塩と有機配位子とから調製した遷移金属錯体を重合系中へ添加してもよい。遷移金属が銅である場合には前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルの場合は後者の方法が好ましい。
有機ハロゲン化合物としては、分子内に1個以上の炭素-ハロゲン結合(但し、ハロゲンはフッ素以外とする)を有する種々の有機化合物が使用でき、脂肪族炭化水素系ハロゲン化物、芳香族炭化水素系ハロゲン化物などが挙げられる。
脂肪族炭化水素系ハロゲン化物の具体例としては、2-クロロプロピオンアミド、2-ブロモプロピオンアミド、2-クロロアセトアミド、2-ブロモイソ酪酸エチル、2-ブロモプロピオン酸メチル、2-ブロモプロピオン酸t-ブチル、2-ブロモイソ酪酸メチル、2-ブロモイソ酪酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
芳香族系炭化水素系ハロゲン化物の具体例としては、ベンザルクロリド、ベンジルブロミド、4-ブロモベンジルブロミド、ベンゼンスルホニルクロリド等が挙げられる。
リビングラジカル重合がATRP法である場合、ビニルモノマーとしては、一般式(8)で表されるビニルモノマーであることが好ましい。
Figure 2024080951000012
〔一般式(8)において、R81は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子を表す。Zは、リビングラジカル重合開始基である塩素又はヨウ素を表す。〕
上記のように、R81として表される基は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR811812(R811、R812は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、-COOR813(R813は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ter-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基をあげることができる。
重合工程では、容器で、ビニルモノマーと、遷移金属錯体と、ATRP開始剤とを混合する。混合時、混合後の反応は、副反応を抑制するため窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
遷移金属錯体の使用量は、ATRP開始剤1molに対して0.03mol~3mol、好ましくは0.1mol~2molの割合で用いられる。また、有機配位子の使用量は、遷移金属1molに対し、通常1mol~5mol、好ましくは1mol~3molである。
重合工程は、無溶剤でも行うことができるが、ATRP法で使用される溶媒を使用し、上記混合物を攪拌して行うこともできる。
反応温度及び反応時間は、目的とするビニル重合体の分子量あるいは分子量分布により適宜調節すればよく、通常、0℃~150℃の範囲で、1分~150時間攪拌する。このとき、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧または減圧しても構わない。
重合工程により得られるビニル重合体の成長末端には重合開始基を有していることから、成長末端に様々な置換基・官能基を導入しビニル重合体の機能向上が可能である。また、マクロ連鎖移動剤として用いることもできる。
重合工程の終了後、重合溶液から使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去して目的とするビニル重合体を取り出したり、不溶溶媒を使用して再沈殿処理により目的とするビニル重合体を単離したりすることができる。
本発明の製造方法は、上述のようにワンポットで行うことができ簡便な製造方法で分子量分布の幅が狭い多分岐ポリマーを得ることができる方法であり、工業的に有利な方法である。また、本発明の製造方法で得られる多分岐ポリマーは、高度に分岐が制御されており、またポリマー末端も適宜置換基、官能基を導入することが可能である。
<エポキシ樹脂改質剤>
本発明のエポキシ樹脂改質剤は、前記ブロック共重合体を含有するものであり、エポキシ樹脂に配合して使用される。
本発明のエポキシ樹脂改質剤は、前記ブロック共重合体のみを含有してもよく、さらにその他の成分を含有してもよい。本発明のエポキシ樹脂改質剤に含まれ得るその他の成分としては、有機溶媒、安定剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の各種公知の添加剤が挙げられる。前記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、キシレン、トルエン、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン等が挙げられる。
<エポキシ樹脂組成物>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、および、上述の本発明のエポキシ樹脂改質剤を含有する。
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、従来から知られているエポキシ樹脂のいずれも使用できる。その具体例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂およびこれらのハロゲン、アミノ基又はアルキル置換体、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等の芳香族環・脂肪族環含有型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、m-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、テトラフェニルエタンテトラグリシジルエーテル等の分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ樹脂(ポリエポキシ化合物)を挙げることができる。前記エポキシ樹脂は、1種又は2種以上を用いることができる。
前記エポキシ樹脂は、取扱い性、組成物の調整の点から、室温(25℃)でも液状のものが好ましく、室温で液状のエポキシ樹脂は、通常、重量平均分子量が300~1000、エポキシ当量が150g/eq~600g/eqであり、好ましくは150g/eq~200g/eqである。また、前記エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が、樹脂組成物の取り扱い性、工程性、樹脂硬化物の耐熱性、破壊靭性、剥離接着強さ等の点から好ましく用いられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールADとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールAD型エポキシ樹脂、および、これらのハロゲンあるいはアルキル置換体等を挙げることができる。これらの中でも、樹脂組成物の取り扱い性および工程性並びに樹脂硬化物の耐熱性がより優れたものとなる点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましく用いられ、中でもビスフェノールA型ジグリシジルエーテルがさらに好ましく用いられる。
本発明で用いる硬化剤の種類は特に制限されず、従来から使用されているエポキシ樹脂用の硬化剤のいずれも使用できる。前記硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤が好ましく、酸無水物系硬化剤がより好ましい。酸無水物系硬化剤は、カルボン酸無水物基を1分子に1個以上有する硬化剤であり、エポキシ樹脂等のエポキシ基とカルボン酸無水物基の重縮合反応によりエポキシ樹脂組成物が硬化する。酸無水物系硬化剤としては、例えば、環状脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族酸無水物等が挙げられ、具体的には、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、4-メチルフタル酸無水物、4-メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。アミン系硬化剤は、アミノ基を1分子に1個以上有する硬化剤であり、エポキシ樹脂等のエポキシ基とアミノ基の重縮合反応によりエポキシ樹脂組成物が硬化する。アミン系硬化剤としては、例えば、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アミン等が挙げられ、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、メタンフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。前記フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記硬化剤の含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、特に好ましくは70質量部以上であり、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。また、前記硬化剤は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基に対して、好ましくは0.5当量以上であり、好ましくは2.5当量以下、より好ましくは1.5当量以下である。硬化剤の含有量が前記範囲内であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的特性が向上するからである。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含有することが好ましい。硬化促進剤の具体例としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ピリジン、トリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルピペラジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-n-ヘプチルイミダゾール、2-n-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-n-ウンデシルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-フェニル-4,5-ジ((2’-シアノエトキシ)メチル)イミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-n-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-(2-シアノエチル)-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-n-ウンデシルイミダゾリル)エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’))エチル-s-トリアジン、2-メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))エチル-s-トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物や、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスホニウム塩;オクチル酸スズ等の金属化合物、マイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。硬化促進剤の含有量が前記範囲内であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的特性が向上するからである。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂改質剤の含有量は、A-B型ブロック共重合体の換算量で、エポキシ樹脂および硬化剤の合計量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。エポキシ樹脂改質剤の含有量が1質量部以上であれば、破壊靭性に優れたエポキシ樹脂組成物の硬化物が得られる。また、エポキシ樹脂改質剤の含有量が25質量部以下であれば、エポキシ樹脂改質剤の多量添加に伴うエポキシ樹脂の機能低下(引張強度や耐溶剤性など)を抑えることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、および、本発明のエポキシ樹脂改質剤に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。例えば、n-ブタノールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2 -エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリルグリシジルエーテル、フルフリルグリシジルエーテル、トリメトキシシリルグリシジルエーテル、その他高級アルコール系グリシジルエーテル、メタアクリル酸グリシジルエステル等や、多官能基型の1,4-ブタンジオール・ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ダイマー酸・ジグリシジルエステル等の反応性希釈剤;ケッチェンブラック等のカーボンブラック、シリカ、微粒炭酸カルシウム、セピオライト等のチキソ剤(揺変性付与剤);炭酸カルシウム、タルク、マグネシア、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、ジルコン、グラファイト、硫酸バリウム、クレー、マイカ、カオリン、ウォラストナイト、雲母、長石、閃長石(シエナイト)、緑泥石(クロライト)、ベントナイト、モンモリロナイト、バライト、クリストバライト、ドロマイト、石英、珪藻土、ケイ酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、鉱物繊維、織物繊維、ガラス繊維、アラミドパルプ、ホウ素繊維、炭素繊維、リン酸塩、結晶シリカ、非晶シリカ、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕(微粉末) シリカ等のシリカ、ろう石、ケイ砂、セルロース、セメント、ポリエチレン等の樹脂粉末、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、二酸化チタン、中空セラミックビーズ、中空ガラスビーズ等の中空無機ビーズ、ポリエステル樹脂等による中空有機ビーズ、ガラスビーズ、金属粉末、瀝青物質等の充填剤;反応遅延剤;老化防止剤;酸化防止剤;可塑剤;接着性付与剤;難燃剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;界面活性剤;分散剤;消泡剤;レオロジー調整剤;重合防止剤;顔料;染料;カップリング剤;イオン補足剤;離型剤;エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂;熱可塑性樹脂等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、反応性希釈剤を含有することが好ましい。反応性希釈剤としては、1,6-ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルが好ましい。エポキシ樹脂組成物中の反応性希釈剤の含有率は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。反応性希釈剤の含有率が前記範囲内であれば、優れた破壊靭性を維持しながら、エポキシ樹脂組成物のせん断粘度を下げることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、エポキシ樹脂、硬化剤、本発明のエポキシ樹脂改質剤、および必要に応じて硬化促進剤やその他添加剤を均一に混合できる製造方法のいずれもが採用できる。例えば、(1)エポキシ樹脂を反応器に導入し、エポキシ樹脂が固体の場合は適当な温度で加熱して液体にし、そこにエポキシ樹脂改質剤を加えて溶解させ、そこに硬化剤や硬化促進剤を加えて液体状で均一に混合し、さらに必要に応じて脱泡処理してエポキシ樹脂組成物を製造する方法、(2)ミキサー等を用いて、エポキシ樹脂、硬化剤や硬化促進剤、およびエポキシ樹脂改質剤を均一に混合した後、熱ロール、二軸押出機、ニーダー等を使用して溶融混練してエポキシ樹脂組成物を製造する方法、(3)エポキシ樹脂、硬化剤や硬化促進剤、およびエポキシ樹脂改質剤を、例えばメチルエチルケトン、アセトン、トルエン等の溶剤に溶解してワニス状のエポキシ樹脂組成物を製造する方法等を採用して本発明のエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
<接着剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、優れたせん断接着力を与えることができることから、接着剤として有用である。本発明の接着剤の用途としては、例えば、自動車等の車両の構造用、土木・建築用、電子材料用、一般事務用、医療用、工業用等が挙げられる。
<アンダーフィル材>
半導体装置などの電子装置の製造では、基板と半導体チップ、半導体チップと半導体チップなどの構成要素同士を半田バンプ等により接続する半導体チップ実装がなされている。この半導体チップ実装において、構成要素同士間の空隙を充填する封止材(アンダーフィル材)が使用されている。本発明のエポキシ樹脂組成物は、優れたせん断接着力や破壊靭性を与えることができることから、キャピラリーアンダーフィル材、モールドアンダーフィル材などのアンダーフィル材としても有用である。本発明のアンダーフィル材の用途としては、半導体チップ実装用等が挙げられる。より具体的に、半田バンプ等で接続された半導体チップと基板の間の空隙や半導体チップ同士間の空隙を充填する用途に好適に用いることができる。
本発明のアンダーフィル材は、室温(25℃)で液状であることが好ましい。本発明のアンダーフィル材の室温(25℃)でのせん断粘度は、500mPa・s以上が好ましく、1500mPa・s以上がより好ましく、2500mPa・s以上がさらに好ましく、6000mPa・s以下が好ましく、4500mPa・s以下がより好ましく、3000mPa・s以下がさらに好ましい。アンダーフィル材のせん断粘度が前記範囲内であれば、キャピラリーアンダーフィル材として好適に用いられる。即ち、アンダーフィル材は、毛細管現象を利用して樹脂が基板と半導体チップ間に速やかにかつ隙間なく侵入しやすくなると共に、侵入から硬化までの間に樹脂が拡散することを防ぐことができるからである。なお、前記せん断粘度は、後記する方法により測定する。
<樹脂硬化物>
本発明の樹脂硬化物は、前述した本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるものである。
前記エポキシ樹脂組成物を用いて樹脂硬化物を製造するにあたっては、従来から採用されているエポキシ樹脂組成物の硬化方法のいずれもが採用できる。例えば、加熱硬化法、エネルギー線硬化法(電子線硬化法、紫外線硬化法等)、湿気硬化法のいずれもが採用でき、そのうちでもブロック共重合体の分散の観点から加熱硬化法が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物が室温(25℃)で固体状である場合は、例えば、粉砕、打錠後に、トランスファー成形、コンプレッション成形、インジェクション成形等の従来の成形方法で硬化成形して樹脂硬化物(硬化した成形品)を製造することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物が室温(25℃)で液状やワニス状を呈する場合は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を、型に注いだり(成形)、容器に注いだり(ポッティング等)、基材上に塗布したり(積層)、繊維(フィラメント)などに含浸させたり(フィラメントワイディング等)する等の適当な方法で施した後、加熱硬化させることによって、それぞれの用途等に応じた樹脂硬化物を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させる際の硬化温度および硬化時間は、エポキシ樹脂や硬化剤の種類等に応じて異なり得るが、例えば、硬化温度は20℃~250℃、硬化時間は1時間~24時間の条件等が採用される。
本発明の樹脂硬化物の光透過度は、本発明のエポキシ樹脂改質剤を配合しないエポキシ樹脂組成物の硬化物の光透過度を100%としたとき、30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。光透過度を30%以上とすることで、透明性に優れる樹脂硬化物となるからである。
本発明の樹脂硬化物のせん断接着力は、5.2MPa以上が好ましく、5.5MPa以上がより好ましい。せん断接着力を5.2MPa以上とすることで、せん断接着性に優れる樹脂硬化物となるからである。
本発明の樹脂硬化物の破壊靭性は、0.7MPa・m1/2以上が好ましく、0.8MPa・m1/2以上がより好ましく、0.9MPa・m1/2以上がさらに好ましい。破壊靭性を0.7MPa・m1/2以上とすることで、破壊靭性に優れる樹脂硬化物となるからである。
なお、本発明の樹脂硬化物の光透過度、せん断接着力、破壊靭性などは、後記する方法により測定する。
本発明の樹脂硬化物は、従来のエポキシ樹脂の硬化物が利用される多種多様な用途に利用することができる。例えば、シェル分岐タイプのエポキシ改質剤を用いると、破壊靭性と透明性が高いことから、光学用接着剤用途に使用することができる。さらに、コア分岐タイプのエポキシ改質剤を用いると、優れた破壊靭性とせん断接着力をもつため、自動車用構造接着などの接着剤用途や半導体チップ実装などのアンダーフィル材用途に使用することが可能できる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
なお、略語の意味は下記のとおりである。
BTEE:エチル=2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート
VT:2-ブチルテラニルプロペン
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
iBA:イソブチルアクリレート
LA:ドデシルアクリレート
4HBAGE:4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル
THF:テトラヒドロフラン
TMS:テトラメチルシラン
CDCl:重水素化クロロホルム
[評価方法]
(重合率)
核磁気共鳴(NMR)測定装置(ブルカー・バイオスピン社製、型式:AVANCE500(周波数500MHz))を用いて、H-NMRを測定(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)した。得られたNMRスペクトルについて、モノマー由来のビニル基と、ポリマー由来のエステル側鎖のピークの積分比を求め、モノマーの重合率を算出した。
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Мn)および分子量分布(Mw/Mn))
高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、型式:HLC-8320GPC)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。カラムはTSKgel SuperMultipore HZ-H(Φ4.6mm×150mm)(東ソー社製)を2本直結し、移動相にTHF、検出器に示差屈折率検出器を使用した。測定条件は、カラム温度を40℃、試料濃度を5mg/mL、試料注入量を10μL、流速を0.35mL/min.とした。標準物質としてポリスチレン(分子量2,890,000、1,090,000、706,000、427,000、190,000、96,400、37,900、10,200、2,630、440)を使用して検量線(校正曲線)を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。これらの測定値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
(THF希薄溶液中の粒子径)
動的光散乱装置(大塚電子社製、型式ELSZ-2000)を用いて、動的光散乱法(光子相関法)によりTHF希薄溶液中の粒子径を求めた。作製したブロック共重合体をTHFに0.5mg/mLの濃度で溶解させ、溶解液に半導体レーザーを照射した。得られた散乱光をEinstein-Stоkesの式を用いた光子相関法で解析することにより、THF希薄溶液中の粒子径を算出した。分岐構造が形成されたポリマーは、直鎖状のポリマーに比べて、THF希薄溶液中で粒子径が小さくなる。分岐鎖数が多いほど、THF希薄溶液中での粒子径が小さくなる。従って、THF希薄溶液中の粒子径を測定することにより、ポリマー鎖中に分岐構造が形成されているかどうかを確認することができる。
(エポキシ樹脂組成物のせん断粘度)
エポキシ樹脂組成物(硬化前)のせん断粘度は、室温(25℃)で、E型粘度計(商品名:TVE-22L、東機産業社製)を用いて測定した。コーンローターは測定粘度に合わせたもの(1500mPa・s未満は1°34‘xR24、1500mPa・s以上は3°xR14)を使用し、ローター回転速度は5rpm、測定レンジは5とした。
(エポキシ樹脂組成物の硬化物の透明性)
エポキシ樹脂組成物を120℃で90分間加熱硬化することで得られた硬化物について、6mm当たりの600nm光透過度を、分光光度計U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。測定は10回実施し、10回の平均値を光透過度の値とした。表3における各エポキシ樹脂組成物の硬化物の光透過度は、ブロック共重合体を配合しなかったエポキシ樹脂組成物No.8の硬化物の光透過度を100%として指数化された値である。指数化された値が大きいほど、エポキシ樹脂組成物の硬化物が透明性に優れていることを示す。
[透明性の評価基準]
白濁:光透過度15%以下
微白濁:光透過度15%以上、30%未満
透明:光透過度30%以上
(エポキシ樹脂組成物のせん断接着力)
エポキシ樹脂組成物をアルミ板(A1050P、1.6x25x100mm)に12.5mmx25mmの面積で塗布し、別のアルミ板と貼り合わせた。接着層には0.2mmのスペーサーを挟んだ。このアルミ板を120℃で90分間加熱し、エポキシ樹脂組成物を硬化させた。常温に戻した後、島津製作所社製力学試験機オートグラフAGS-Jを用いて、ヘッドスピード10mm/min.の速度で、2枚のアルミ板が乖離するまでせん断方向に引っ張った。乖離したときの応力をせん断接着力とした。測定は5回実施し、5回の平均値を用いた。
(エポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性)
エポキシ樹脂組成物を寸法6mmx12mmx60mmの型に流し込み、120℃で90分間加熱硬化させた。得られた硬化物について、ASTM D5045-93に準じて島津製作所社製力学試験機オートグラフAGS-Jを用いて破壊靭性試験を行った。測定は10回実施し、10回の平均値を破壊靭性の値とした。破壊靭性K1cは、亀裂進行抵抗を意味するものであり、値が大きくなるほど破壊靭性が高いことを意味する。
1.<Aブロックが分岐構造を有するブロック共重合体(シェルタイプ)の製造>
(合成例1):リビングラジカル重合によるブロック共重合体No.1の合成
窒素置換したΦ25mmxL200mmの試験管に、窒素置換したLA 10.02g、BTEE 0.15g、AIBN 0.0167g、トルエン 10.03gを入れ、60℃で21.67時間反応させて、Bブロックを作製した。重合率は92.6%であった。このBブロックをマクロ連鎖移動剤として用いて、この反応液に、窒素置換したTHFA 8.03g、iBA 2.02g、トルエン 10.00g、AIBN 0.0166gを加え、60℃で23.00時間反応させた。重合率は95.1%であった。
反応液をTHFで希釈し、撹拌下のメタノール中に注いだ。加圧濾過後、70℃、2kPa下で乾燥し、ブロック共重合体No.1を得た。ブロック共重合体No.1のMnは30,973、Mw/Mnは1.33、THF希薄溶液中の粒子径は27.7nmであった。
表1に、使用した原料モノマー、有機テルル化合物、有機ジテルル化合物、アゾ系重合開始剤、溶媒、反応条件、重合率を示した。表2に、ブロック共重合体の組成、Mn、Mw/Mn、およびTHF希薄溶液中の粒子径を示した。なお、ブロック共重合体中の各構造単位の含有率は、重合反応に用いたモノマーの仕込み比率および重合率から算出した。
(合成例2~7):リビングラジカル重合によるブロック共重合体No.2~7の合成
各原料の配合量および反応時間を表1に記載するように変更した以外は、ブロック共重合体No.1と同様の方法で、ブロック共重合体No.2~7を合成した。ブロック共重合体No.2~7のMn、Mw/Mn、およびTHF希薄溶液中の粒子径は、表2に記載した。
Figure 2024080951000013
Figure 2024080951000014
<エポキシ樹脂組成物の製造>
(エポキシ樹脂組成物No.1~7)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:jER(商標登録)828、エポキシ当量194g/eq、重量平均分子量370、三菱ケミカル株式会社製)49.65質量%、硬化剤としての4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物45.17質量%(エポキシ樹脂に対して2.0当量)、硬化促進剤としての2-エチル-4-メチルイミダゾール0.47質量%、およびエポキシ樹脂改質剤としての前記で得られたブロック共重合体4.71質量%を混合し、混合物を撹拌脱泡機(AR-250、株式会社シンキー製)にて22分間撹拌および脱泡を行い、エポキシ樹脂組成物No.1~7を得た。
(エポキシ樹脂組成物No.8)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:jER(商標登録)828、エポキシ当量194g/eq、重量平均分子量370、三菱ケミカル株式会社製)52.23質量%、硬化剤としての4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物47.27質量%(エポキシ樹脂に対して2.1当量)、および硬化促進剤としての2-エチル-4-メチルイミダゾール0.49質量%を混合し、混合物を撹拌脱泡機(AR-250、株式会社シンキー製)にて22分間撹拌および脱泡を行い、エポキシ樹脂組成物No.8を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物No.1~No.8およびその硬化物について、評価した結果を表3に併せて示した。
Figure 2024080951000015
Aブロックが構成単位(c)を含有するブロック共重合体を改質剤として用いたエポキシ樹脂組成物は、Aブロックが構成単位(c)を含有していないブロック共重合体を改質剤として用いたエポキシ樹脂組成物と比較して、25℃におけるせん断粘度が減少している。これは構成単位(c)の導入によって、ブロック共重合体のポリマー鎖長が短くなり、ポリマー鎖同士の絡み合いが少なくなっているためと考えられる。ブロック共重合体のポリマー鎖長が短くなっているのは、表2に記載したTHF希薄溶液中の粒子径が構成単位(c)の導入により小さくなっていることからも示唆される。
Aブロックが構成単位(c)を含有するブロック共重合体をエポキシ樹脂の改質剤として用いることにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物の光透過度および破壊靭性は共に増加している。これは、構成単位(c)の導入により、ブロック共重合体のBブロックがエポキシ樹脂中へ拡散しやすくなるため、構成単位(c)を含まないブロック共重合体を改質剤として使用した場合と比較して、より凝集体が形成され難くなることに加え、CPPの変化により、亀裂伸展エネルギーの分散を効率良く行うことができるミセル形態となったためと考えられる。
2.<Bブロックが分岐構造を有するブロック共重合体(コアタイプ)の製造>
(合成例9):リビングラジカル重合によるブロック共重合体No.9の合成
窒素置換したΦ25mmxL200mmの試験管に、窒素置換したTHFA 6.35g、4HBAGE 0.34g、BTEE 0.11g、AIBN 0.0112g、トルエン 6.68gを入れ、60℃で41.00時間反応させて、Aブロックを作製した。重合率は98.8%であった。
このAブロックをマクロ連鎖移動剤として用いて、この反応液に、窒素置換したLA 13.35g、トルエン10.02g、AIBN 0.0114gを加え、60℃で39.67時間反応させた。重合率は95.8%であった。反応液をTHFで希釈し、撹拌下のメタノール中に注いだ。加圧濾過後、70℃、2kPa下で乾燥し、ブロック共重合体No.9を得た。ブロック共重合体No.9のMnは35,458、Mw/Mnは1.30、THF希薄溶液中の粒子径は34.2nmであった。
表4に、使用した原料モノマー、有機テルル化合物、有機ジテルル化合物、アゾ系重合開始剤、溶媒、反応条件、重合率を示した。表5に、ブロック共重合体の組成、Mn、Mw/Mn、およびTHF希薄溶液中の粒子径を示した。なお、ブロック共重合体中の各構造単位の含有率は、重合反応に用いたモノマーの仕込み比率および重合率から算出した。
(合成例10~13):リビングラジカル重合によるブロック共重合体No.10~13
各原料の配合量および反応時間を表4に記載するように変更した以外は、ブロック共重合体No.9と同様の方法で、ブロック共重合体No.10~13を合成した。ブロック共重合体No.10~13のMn、Mw/Mn、およびTHF希薄溶液中の粒子径は、表5に記載した。
Figure 2024080951000016
Figure 2024080951000017
<エポキシ樹脂組成物の製造>
(エポキシ樹脂組成物No.9~13)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:jER(商標登録)828、エポキシ当量194g/eq、重量平均分子量370、三菱ケミカル株式会社製)49.65質量%、硬化剤としての4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物45.17質量%(エポキシ樹脂に対して2.0当量)、硬化促進剤としての2-エチル-4-メチルイミダゾール0.47質量%、およびエポキシ樹脂改質剤としての前記で得られたブロック共重合体4.71質量%を混合し、混合物を撹拌脱泡機(AR-250、株式会社シンキー製)にて22分間撹拌および脱泡を行い、エポキシ樹脂組成物No.9~13を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物No.9~No.13およびその硬化物について、評価した結果を表6に併せて示した。
Figure 2024080951000018
Bブロックが構成単位(c)を含有するブロック共重合体を改質剤として用いたエポキシ樹脂組成物は、Bブロックが構成単位(c)を含有していないブロック共重合体を改質剤として用いたエポキシ樹脂組成物と比較して、25℃におけるせん断粘度が減少している。これは構成単位(c)の導入によって、ブロック共重合体のポリマー鎖長が短くなり、ポリマー鎖同士の絡み合いが少なくなっているためと考えられる。ブロック共重合体のポリマー鎖長が短くなっているのは、表5に記載したTHF希薄溶液中の粒子径が構成単位(c)の導入により小さくなっていることからも示唆される。
Bブロックが構成単位(c)を含有するブロック共重合体をエポキシ樹脂の改質剤として用いることにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性が増加している。これは、構成単位(c)の導入により、ブロック共重合体のエポキシ樹脂中での運動性が増加するため、構成単位(c)を含まないブロック共重合体を使用した場合と比較して、凝集体が形成され難くなることに加え、CPPの変化により、亀裂伸展エネルギーの分散を効率良く行うことができるミセル形態となったためと考えられる。
表1~6の結果より、本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂改質剤として有用である。本発明のエポキシ樹脂改質剤を配合したエポキシ樹脂組成物の硬化物は、破壊靭性に優れていることが分かる。
本発明のブロック共重合体は、エポキシ樹脂改質剤として有用である。また、本発明のエポキシ樹脂改質剤を含有するエポキシ樹脂組成物は、従来のエポキシ樹脂が利用される多種多様な用途に利用することができる。また、透明性が高いことから、透明性が求められる用途にも利用できる。さらに、せん断接着力が高いため、自動車用構造接着などの接着剤用途や半導体チップ実装などのアンダーフィル材用途に使用することが可能で、優れた破壊靭性値をもつため、衝撃が加わり易い航空材料やスポーツ用途への適用もできる。
本発明の好ましい態様1は、AブロックとBブロックとを有するA-B型ブロック共重合体であって、
前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有し、
前記Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有し、
前記AブロックまたはBブロックのうち一方が、さらに、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)を有し、前記構造単位(c)を有するブロックは、分岐構造を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様2は、前記Aブロックが、前記構造単位(c)を有し、前記Aブロック中の構造単位(c)の含有量は、前記Bブロック全体1molに対して、0mol超、10mol以下である態様1に記載のブロック共重合体である。
本発明の好ましい態様3は、前記Bブロックが、前記構造単位(c)を有し、前記Bブロック中の構造単位(c)の含有量は、前記Aブロック全体1molに対して、0mol超、10mol以下である態様1に記載のブロック共重合体である。
本発明の好ましい態様4は、前記ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーが、下記一般式(2)で表されるビニルモノマーである態様1~3のいずれか一項に記載のブロック共重合体である。
Figure 2024080951000019
[一般式(2)において、Zはリビングラジカル重合開始基である。R22~R24は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子を表す。]
本発明の好ましい態様5は、前記Aブロックが、さらに鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-2)を有する態様1~4のいずれか一項に記載のブロック共重合体である。
本発明の好ましい態様6は、前記Aブロックの構造単位(a-1)の含有率が、Aブロックを構成する構造単位100mol%中、50mol%以上、100mol%以下である態様1~5のいずれか一項に記載のブロック共重合体である。
本発明の好ましい態様7は、前記Bブロックの構造単位(b-1)の含有率が、Bブロックを構成する構造単位100mol%中、50mol%以上、100mol%以下である態様1~6のいずれか一項に記載のブロック共重合体である。
本発明の好ましい態様8は、前記Aブロックの含有率が、ブロック共重合体を構成する構造単位100mol%中、20mol%以上、80mol%以下である態様1~7のいずれか一項に記載のブロック共重合体である。
本発明の好ましい態様9は、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される前記ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)が、10,000以上、100,000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下である態様1~8のいずれか一項に記載のブロック共重合体である。
本発明の好ましい態様10は、態様1~9のいずれか一項に記載のブロック共重合体を含有するエポキシ樹脂改質剤である。
本発明の好ましい態様11は、エポキシ樹脂、硬化剤、および、態様10に記載のエポキシ樹脂改質剤を含有するエポキシ樹脂組成物である。
本発明の好ましい態様12は、前記エポキシ樹脂改質剤の含有量が、前記A-B型ブロック共重合体の換算量で、エポキシ樹脂および硬化剤の合計100質量部に対して、1質量部~25質量部である態様11に記載のエポキシ樹脂組成物である。
本発明の好ましい態様13は、態様11又は12に記載のエポキシ樹脂組成物からなる接着剤である。
本発明の好ましい態様14は、態様11又は12に記載のエポキシ樹脂組成物からなるアンダーフィル材である。
本発明の好ましい態様15は、態様11又は12に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物である。
本発明の好ましい態様16は、態様1~9のいずれか一項に記載のブロック共重合体の製造方法であって、前記AブロックまたはBブロックのうち前記構造単位(c)を含有しないブロックを有するマクロ連鎖移動剤を用いて、リビングラジカル重合することを特徴とする態様1~9のいずれか一項に記載のブロック共重合体の製造方法である。
本発明の好ましい態様17は、前記マクロ連鎖移動剤が、ポリマーの一方の末端に下記一般式(5)で表されるリビングラジカル重合開始基を有するマクロ連鎖移動剤である、態様16に記載のブロック共重合体の製造方法である。
-Te-R41 (5)
〔一般式(5)において、R41は炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。〕


Claims (17)

  1. AブロックとBブロックとを有するA-B型ブロック共重合体であって、
    前記Aブロックは、含酸素ヘテロ環または含硫黄ヘテロ環を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-1)を有し、
    前記Bブロックは、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーに由来する構造単位(b-1)を有し、
    前記AブロックまたはBブロックのうち一方が、さらに、ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(c)を有し、前記構造単位(c)を有するブロックは、分岐構造を有することを特徴とするブロック共重合体。
  2. 前記Aブロックが、前記構造単位(c)を有し、前記Aブロック中の構造単位(c)の含有量は、前記Bブロック全体1molに対して、0mol超、10mol以下である請求項1に記載のブロック共重合体。
  3. 前記Bブロックが、前記構造単位(c)を有し、前記Bブロック中の構造単位(c)の含有量は、前記Aブロック全体1molに対して、0mol超、10mol以下である請求項1に記載のブロック共重合体。
  4. 前記ビニル結合炭素の一つに結合する重合開始基を有するビニルモノマーが、下記一般式(2)で表されるビニルモノマーである請求項1に記載のブロック共重合体。
    Figure 2024080951000020
    [一般式(2)において、Zはリビングラジカル重合開始基を表す。R22~R24は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基またはフッ素原子を表す。]
  5. 前記Aブロックが、さらに鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位(a-2)を有する請求項1に記載のブロック共重合体。
  6. 前記Aブロックの構造単位(a-1)の含有率が、Aブロックを構成する構造単位100mol%中、50mol%以上、100mol%以下である請求項1に記載のブロック共重合体。
  7. 前記Bブロックの構造単位(b-1)の含有率が、Bブロックを構成する構造単位100mol%中、50mol%以上、100mol%以下である請求項1に記載のブロック共重合体。
  8. 前記Aブロックの含有率が、ブロック共重合体を構成する構造単位100mol%中、20mol%以上、80mol%以下である請求項1に記載のブロック共重合体。
  9. ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される前記ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)が、10,000以上、100,000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下である請求項1に記載のブロック共重合体。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載のブロック共重合体を含有するエポキシ樹脂改質剤。
  11. エポキシ樹脂、硬化剤、および、請求項10に記載のエポキシ樹脂改質剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
  12. 前記エポキシ樹脂改質剤の含有量が、前記A-B型ブロック共重合体の換算量で、エポキシ樹脂および硬化剤の合計100質量部に対して、1質量部~25質量部である請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物。
  13. 請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物からなる接着剤。
  14. 請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物からなるアンダーフィル材。
  15. 請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物。
  16. 請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法であって、前記AブロックまたはBブロックのうち前記構造単位(c)を含有しないブロックを有するマクロ連鎖移動剤を用いて、リビングラジカル重合することを特徴とする請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
  17. 前記マクロ連鎖移動剤が、ポリマーの一方の末端に下記一般式(5)で表されるリビングラジカル重合開始基を有するマクロ連鎖移動剤である、請求項16に記載のブロック共重合体の製造方法。
    -Te-R41 (5)
    〔一般式(5)において、R41は炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。〕
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