JP2024067405A - カップ部を有する衣類 - Google Patents
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Abstract
【課題】着用者の身体形状に沿うように変形することで、バック布が適切な位置に固定され、ずれにくく安定するとともに、着用時の心地よさや安定感を実現することが可能なカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【解決手段】バック部のカップ部脇部分には、少なくとも着用時の中腋窩線を含む領域の上下方向にわたって、人体の体温付近で柔軟性を発現して変形可能な、素材である樹脂シートが取り付けられており、樹脂シートは、カップ側枠部、脇側枠部および下辺側枠部からなる外枠に固着され、少なくとも前記外枠以外の部分において、樹脂シートはバック部から遊離しており、伸長性試験における荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率が、カップ側枠部は15%以上25%以下、脇側枠部は5%以上15%以下、下辺側枠部75%以上85%以下の範囲内にあることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】バック部のカップ部脇部分には、少なくとも着用時の中腋窩線を含む領域の上下方向にわたって、人体の体温付近で柔軟性を発現して変形可能な、素材である樹脂シートが取り付けられており、樹脂シートは、カップ側枠部、脇側枠部および下辺側枠部からなる外枠に固着され、少なくとも前記外枠以外の部分において、樹脂シートはバック部から遊離しており、伸長性試験における荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率が、カップ側枠部は15%以上25%以下、脇側枠部は5%以上15%以下、下辺側枠部75%以上85%以下の範囲内にあることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、カップ部を有する衣類に関する。
従来、ブラジャー等のカップ部を有する衣類においては、着用時の安定性および動作時の追従性が求められている。従来、バック布(脇布)部分に、伸縮する素材からなる脇パネルを設け、脇パネルが伸縮することにより、皮膚においてよく伸び縮みする箇所に伸縮する部分をより広く設けることで、追従性を向上させようとしたカップ部を有する衣類が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、上記の脇パネル部分については、パワーネットのような硬い生地を用いた場合には締め付け感を感じるとともに、身体の動きへの追従性が十分ではなかった。当該部分に硬い素材を設けると、その部分では固定されるものの、一旦ずれ上がると上がったままで元の位置には戻りにくい場合がある。また、前記固定により、カップのほうにも変形が及ぶ場合があり、全体的にずれ上がってしまうこともあった。一方、当該部分の生地が柔らかすぎる場合には、着用時には安定感に欠けるとともにずれやすく、また、一旦伸びると縮みにくいというふうに、皮膚の伸縮への追従性が十分であるとはいえなかった。
本発明は、着用者の身体形状に沿うように変形することで、バック布が適切な位置に固定され、ずれにくく安定するとともに、着用時の心地よさや安定感を実現することが可能なカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、
一対のカップ部、前中心部材、およびバック部を備え、
前記前中心部材は、前記一対のカップ部の前中心側に設けられて前記一対のカップ部を接続し、
前記バック部は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記バック部の前記カップ部脇部分には、少なくとも着用時の中腋窩線を含む領域の上下方向にわたって、人体の体温付近で柔軟性を発現して変形可能な樹脂シートが取り付けられており、
前記樹脂シートは、40℃での10%伸長時の引張応力が、23℃での10%伸長時の引張応力の1/17以下となる素材であり、
前記樹脂シートは、カップ側枠部、脇側枠部および下辺側枠部からなる外枠に固着され、少なくとも前記外枠以外の部分において、前記樹脂シートは前記バック部から遊離しており、
前記外枠の伸長性試験における荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率が、前記カップ側枠部は15%以上25%以下の範囲内にあり、前記脇側枠部は5%以上15%以下の範囲内にあり、前記下辺側枠部75%以上85%以下の範囲内にあることを特徴とする。
一対のカップ部、前中心部材、およびバック部を備え、
前記前中心部材は、前記一対のカップ部の前中心側に設けられて前記一対のカップ部を接続し、
前記バック部は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記バック部の前記カップ部脇部分には、少なくとも着用時の中腋窩線を含む領域の上下方向にわたって、人体の体温付近で柔軟性を発現して変形可能な樹脂シートが取り付けられており、
前記樹脂シートは、40℃での10%伸長時の引張応力が、23℃での10%伸長時の引張応力の1/17以下となる素材であり、
前記樹脂シートは、カップ側枠部、脇側枠部および下辺側枠部からなる外枠に固着され、少なくとも前記外枠以外の部分において、前記樹脂シートは前記バック部から遊離しており、
前記外枠の伸長性試験における荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率が、前記カップ側枠部は15%以上25%以下の範囲内にあり、前記脇側枠部は5%以上15%以下の範囲内にあり、前記下辺側枠部75%以上85%以下の範囲内にあることを特徴とする。
本発明によれば、着用者の身体形状に沿うように変形することで、バック部が適切な位置に固定され、ずれにくく安定するとともに、着用時の心地よさや安定感を実現することが可能なカップ部を有する衣類を提供することができる。
本発明のカップ部を有する衣類において、前記バック部は、表布と肌側布との二重構造となっており、前記表布と前記肌側布との間に、前記樹脂シートが配置されており、
前記樹脂シートは、前記肌側布において前記バック部に固着されていることが好ましい。
前記樹脂シートは、前記肌側布において前記バック部に固着されていることが好ましい。
本発明のカップ部を有する衣類において、前記バック部の前記表布と前記肌側布とは、1枚の布を折り返して構成されており、
前記折り返しの位置が前記バック部の上辺となっていることが好ましい。
前記折り返しの位置が前記バック部の上辺となっていることが好ましい。
本発明のカップ部を有する衣類において、前記樹脂シートは、その上端部が、前記バック部の上辺から隙間を有するように構成されていることが好ましい。
本発明のカップ部を有する衣類において、前記脇側枠部は、前記バック部の下端部から上端部側に向けて設けられており、前記脇側枠部の長さは、前記樹脂シートの高さ方向の長さよりも短い長さであることが好ましい。
本発明のカップ部を有する衣類において、前記樹脂シートは、上辺の背面側において角が落とされた形状となっていることが好ましい。
本発明のカップ部を有する衣類において、前記バック部の上辺が、着用時において、少なくとも中腋窩線の位置で第5肋骨の少なくとも一部に相当する部分までを覆うように形成されていることが好ましい。
本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。なお、以下で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。
(第1の実施形態)
図1に、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第1の実施形態に係るブラジャー100を示す。図1は、本実施形態のブラジャー100の斜視図である。以下、図面の記載においては、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。
図1に、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第1の実施形態に係るブラジャー100を示す。図1は、本実施形態のブラジャー100の斜視図である。以下、図面の記載においては、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。
本実施形態のブラジャー100は、一対のカップ部101、前中心部材102、一対のバック部103および一対の肩ストラップ104を備えたブラジャーである。前中心部材102は、一対のカップ部101の前中心側に設けられて、左右のカップ部101を接続している。左右のカップ部101の脇側には、一対のバック部103の一端が取り付けられている。一対のバック部103の他端には、連結係止部105が取り付けられて、背中心付近で着脱自在になっている。
図2は、本実施形態のブラジャー100の着用時の位置を説明する図である。バック部103のカップ部101脇部分には、少なくとも着用時の中腋窩線Lを含む領域の上下方向にわたって、人体の体温付近で柔軟性を発現して変形可能な樹脂シート110が取り付けられている。ここで、中腋窩線Lとは、図2に示すように、腋窩から腰までをつないだ想像上の垂線である。
本発明における樹脂シート110は、40℃での10%伸長時の引張応力が、23℃での10%伸長時の引張応力の1/17以下となる素材である。樹脂シート110を用いた部分では、温度が高くなると引張応力が低くなる(1/17以下となる)ことで、着用時には柔らかくなり、身体の形状に沿い、さらに、着用圧をあまりかけることなく身体に沿った状態を保つことができる。このような樹脂シートとしては、いわゆる感温柔軟樹脂シートである、例えば、「アブソートマー」(製品名、登録商標、三井化学株式会社製)、「ヒューモフィット」(製品名、登録商標、三井化学株式会社製)等を用いることができる。前記樹脂シートは、発泡させたり、メッシュ状に形成して、伸度を調整することも好ましい。
前記樹脂シートは、形状記憶樹脂を成形したシートであることが好ましい。形状記憶樹脂としては、ノルボルネン系、トランスポリイソプレン系、スチレン-ブタジエン共重合体系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、乳酸系、アクリル系、アミド系からなる形状記憶樹脂群から選択される一種または二種以上を含む構造体を使用することができる。
前記樹脂シートが感温柔軟樹脂シートである場合、その厚みは0.1mm以上3.0mm以下の範囲内にあることが好ましい。0.1mmより薄いと、感温柔軟樹脂シートの性能が発揮できなくなる場合がある。3.0mmより厚いと、縫製が困難になったり、デザイン制約が出る場合がある。
樹脂シート110は、カップ側枠部121、脇側枠部122および下辺側枠部123からなる外枠120に固着されている。外枠120の伸長性試験における荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率は、カップ側枠部121は15%以上25%以下の範囲内にあり、脇側枠部122は5%以上15%以下の範囲内にあり、下辺側枠部123は75%以上85%以下の範囲内にある。
ここで、伸長性試験における荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率は、JIS等に規定された伸長回復試験等とは異なる測定を行っているため、以下にその測定方法を示す。なお、本評価においては、160mm×全幅、つかみ間隔が100mmとなる試験片を用いたが、測定対象の試験片の大きさが足りない場合は、換算することで評価することが可能である。
(試料片の調整)
カップ側枠部、脇側枠部、下辺側枠部の材料について、各々、160mm×全幅としたものを試験片とした。試験片は、各材料について2つずつ用意した。
カップ側枠部、脇側枠部、下辺側枠部の材料について、各々、160mm×全幅としたものを試験片とした。試験片は、各材料について2つずつ用意した。
(伸び率)
試験片を、上部つかみ25mm、下部つかみ35mm、つかみ間隔100mmとして、定速伸長形引張試験機(島津製作所製”オートグラフ”AG-500D)に取り付け、300mm±20mm/分の速度で、22.1N(2.5kgf)の荷重をかけ、荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率(%)を測定し、2回の平均値を算出し、整数位で表した。
試験片を、上部つかみ25mm、下部つかみ35mm、つかみ間隔100mmとして、定速伸長形引張試験機(島津製作所製”オートグラフ”AG-500D)に取り付け、300mm±20mm/分の速度で、22.1N(2.5kgf)の荷重をかけ、荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率(%)を測定し、2回の平均値を算出し、整数位で表した。
カップ側枠部121の前記伸び率が15%未満の場合には、身体の動きへの追随が十分ではなく、ずれの原因となりやすい。また、25%を超える場合には、樹脂シート110も、カップ側枠部121の伸びとともに同時に過剰に引っ張られてしまうので、適正な位置に配置されにくくなる。脇側枠部122の前記伸び率が5%未満の場合、身体の動きへの追随が十分ではなく、ずれの原因となりやすい。また、15%を超える場合には、樹脂シート110も、脇側枠部122の伸びとともに同時に過剰に引っ張られてしまうので、適正な位置に配置されにくくなる。カップ側枠部121は、比較的剛直なカップ部101の付近に配置されるため、ある程度の伸びは許容できるが、脇側枠部122は、変形しやすいバック部103に繋がる部分なので、伸びの許容幅は小さくなる。下辺側枠部123の前記伸び率が75%未満の場合、身体の動きへの追随が十分ではなく、ずれの原因となり、85%を超えると、ブラジャー本体を体に固定させることが困難となり、ずれの原因となる。
カップ側枠部121および脇側枠部122としては、ボーン(板状の樹脂部材)、バイヤステープ、ゴム等を用いることができる。また、樹脂や接着剤で、生地を固着して前記所定範囲内の伸び率としてもよい。また、カップ部101のカップくり部分にワイヤー等を設けている場合には、前記ワイヤー等をカップ側枠部121として利用してもよい。
下辺側枠部123としては、ゴム、伸縮性のあるテープ等を用いることができる。下辺側枠部123は、別部材を設ける態様に限られず、樹脂シート110の該当部分を加工することで、下辺側枠部123としてもよい。具体的には、樹脂シート110の下辺部を、千鳥縫いなどの縫い目で補強することで、下辺側枠部123とすることもできる。
脇側枠部122は、バック部103の下端部から上端部側に向けて設けられているが、その長さは、樹脂シート110の高さ方向の長さよりも短い長さであることが好ましい。脇側枠部122が、バック部103の上端部付近まで設けられていると、着用時にバック部103の生地が伸びて巾痩せしても、脇側枠部122が角や出っ張りとなることを抑制できる。
樹脂シート110は、カップ側枠部121および脇側枠部122の少なくとも2辺はバック部103に縫着等の方法で固着されているが、外枠120以外の部分において、バック部103から遊離している。本実施形態においては、カップ側枠部121、脇側枠部122および下辺側枠部123の3辺で、バック部103に縫着されている。前記3辺の外枠部分で身体に固定し、枠の内側にある樹脂シート110が身体になじむことで、動作後の衣類のずれを抑制することができる。前記特定範囲の伸び率を有している下辺側枠部123がバック部103と固着されることで、樹脂シート110にはバック部103の下辺で引く力が適度にかかり、着用者の皮膚の動きに対応するように変形させることができる。外枠120は、樹脂シート110の上辺(バック部103の上辺側の端部)には設けられず、したがって、前記上辺はバック部103から遊離している。樹脂シート110の上辺が遊離していることで、前記上辺が着用時に身体にフィットして、なじみやすくなっている。樹脂シート110は、その上端部(前記上辺)が、バック部103の上辺から隙間を有するように構成されていることが好ましい。樹脂シート110の上辺がバック部103に固着されずに遊離しており、かつ、前記隙間を有することで、バック部103の生地が伸びたときの巾痩せに対応することができる。前記隙間は、1mm程度設けることが好ましい。樹脂シート110は、バック部103の生地が伸びた際に、つっかえ棒のような役割を果たすことができるため、バック部103の脇部分での巾痩せを抑制することができる。また、樹脂シート110は、上辺の背面側において、例えば半円形状のような角が落とされた形状とすることで、より身体になじませることができる。
樹脂シート110の幅方向の長さは、4cm~6cmの範囲内にあることが好ましい。衣類のサイズが変わっても、中腋窩線Lを含む脇部分の領域は大きく変わらないため、必ずしもサイズに比例した幅とする必要はない。樹脂シート110の高さ方向の長さは、衣類のサイズに合わせて変化し、7cm~15cmの範囲とすることができる。ここで、樹脂シート110の前記幅方向の長さとは、カップ側枠部121と脇側枠部122との間の距離を指し、前記高さ方向の長さとは、カップ側枠部121に沿う部分の長さを指す。
樹脂シート110のガラス転移点(Tg)は、25~45℃の範囲内にあればよいが、28℃以下にあることが好ましい。ガラス転移点が、体温より少し低いところにあると、着用により温められて身体にフィットさせることが可能となる。
バック部103は、表布103Aと肌側布103Bとの二重構造となっており、表布103Aと肌側布103Bとの間に、樹脂シート110が配置されていることが好ましい。バック部103が、表布103Aと肌側布103Bとの二重構造となっている場合、樹脂シート110は、肌側布103Bにおいてバック部103に固着されていることが好ましい。肌側布103Bに樹脂シート110が固着されていることによって、樹脂シート110をより身体の近くでなじませることができ、さらに表布103Aが外側から面で樹脂シート110を押さえつけるので、樹脂シート110の存在する領域とそれ以外の領域との境界線が分かりにくくなり、バック部103に段差が生じることを抑制して、外観を良好なものとすることができる。
図3に、本実施形態におけるバック部103付近の構造を示す。同図では、表布103Aと肌側布103Bとが1枚の布を折り返して構成されているバック部103を、展開した状態を示しており、樹脂シート110は、肌側布103Bにおいてバック部103に固着されている。図3において二点鎖線は折り返し位置を示す。図3に示すように、表布103Aと肌側布103Bとは、1枚の布を折り返して構成されていることが好ましく、この場合には、前記折り返しの位置がバック部103の上辺となっていることが好ましい。バック部103の上辺を縫製箇所がない状態で設けることで、着用時の身体の動きにより順応させることができる。さらに、表布103Aと肌側布103Bとが別々に動くことにより、肌側は樹脂シート110の外枠120(カップ側枠部121、脇側枠部122、下辺側枠部123)の構造でしっかり安定させ、表布103Aは外枠120付き樹脂シート110を均一に押さえこむことで、さらに着用時の安定性を向上させることができる。
バック部103の上辺は、着用時において、少なくとも中腋窩線Lの位置で第5肋骨の少なくとも一部に相当する部分までを覆うように形成されていることが好ましい。この部分を覆うように形成することで、脇が高い構造ではあるが、樹脂シート110が用いられていることにより、しっかり感や圧迫感がない状態で、パーソナルスペースである脇の下を包み込む心地よい圧力を再現することができる。脇の下は敏感なのでそこに強い圧をかけると圧迫感に繋がる。そこに圧をかけすぎず押さえることが心地よさに繋がっている。また、脇部は外気温などの影響を受けにくく、安定した体温を反映しやすい場所なので、この位置に配置することで、より確実に樹脂シートの効果を発揮することができる。なお、中腋窩線の位置は、動作にともない、最も皮膚がずれる位置なので、衣類においてはこの箇所での位置のずれを吸収することができる構造とすることが重要である。中腋窩線の位置にこの構造を配置することで、より確実に樹脂シートの十分な効果を得ることができる。
[評価試験]
本発明のカップ部を有する衣類であるブラジャーを含む3種類のブラジャーについて、次の評価を行った。図4は、評価における計測箇所を説明する図である。ブラジャーNo.1は、樹脂シート110の箇所に伸びない素材であるマーキゼットを用いたブラジャーである。ブラジャーNo.2は、樹脂シート110の箇所によく伸びる素材であるウレタン混のパワーネットを用いたブラジャーである。ブラジャーNo.3は、樹脂シート110を用いた本発明のブラジャーである。ブラジャーNo.3に用いた樹脂シート110は、23℃での10%伸長時の引張応力は1.7MPaであり、40℃での10%伸長時の引張応力は0.1MPaであった(40℃での10%伸長時の引張応力が、23℃での10%伸長時の引張応力の1/17)。
本発明のカップ部を有する衣類であるブラジャーを含む3種類のブラジャーについて、次の評価を行った。図4は、評価における計測箇所を説明する図である。ブラジャーNo.1は、樹脂シート110の箇所に伸びない素材であるマーキゼットを用いたブラジャーである。ブラジャーNo.2は、樹脂シート110の箇所によく伸びる素材であるウレタン混のパワーネットを用いたブラジャーである。ブラジャーNo.3は、樹脂シート110を用いた本発明のブラジャーである。ブラジャーNo.3に用いた樹脂シート110は、23℃での10%伸長時の引張応力は1.7MPaであり、40℃での10%伸長時の引張応力は0.1MPaであった(40℃での10%伸長時の引張応力が、23℃での10%伸長時の引張応力の1/17)。
C70サイズの3種類のブラジャーを、温度35℃、湿度70%の環境下で、C70サイズのマネキンに着用させ、慣らし作業を実施した。ここで、慣らし作業とは、ブラジャーをマネキンに着用させた状態で、後中心の位置をマネキンから離す方向に引っ張る動作を5回繰り返す作業である。マネキンは人体と違って硬くなじみにくいため、ある程度なじませて、自然に着用した想定にするための作業である。図4に示す位置A~位置Dの長さを計測し、その後、温度35℃、湿度70%の環境に3分間放置した後、再度、位置A~位置Dの長さを計測した。この計測を3回行い、その平均値を算出した。結果を表1に示す。表1において、「変化率」は、放置前の長さを100%としたときの3分間放置後の長さをパーセント表示した値である。ここで、位置Aは、樹脂シート110の前端(カップ側枠部121と重なる部分)の一番上の点と脇側枠部122の背中側の辺の延長線上と樹脂シート110の上辺の延長線との交点との間の部分、位置Bは、樹脂シート110の前端(カップ側枠部121と重なる部分)の一番下の点と脇側枠部122の背中側の辺の一番下の点との間の部分、位置Cは、樹脂シート110の前端(カップ側枠部121と重なる部分)の一番上の点と樹脂シート110の前端(カップ側枠部121と重なる部分)の一番下の点との間の部分、位置Dは、脇側枠部122の樹脂シート110側の辺の延長線上の樹脂シート110上の一番上の点と脇側枠部122の樹脂シート110側の辺の一番下の点の間の部分である。
この試験より、タテ方向については、No.1~No.3のどのタイプのブラジャーも、大きな寸法変化はなかった。一方、ヨコ方向についてはNo.1の伸びない素材を用いたブラジャー、No.2のよく伸びる素材を用いたブラジャーでは寸法変化はなかったが、No.3の本発明品のブラジャーでは、位置Bにおいて約6%伸びており、ボディに沿った長さになっていることがわかる。また、位置Aにおいては、ほぼ変化はなかった。上辺(位置A)は枠を設けずバック部から遊離させることにより、樹脂シートの上辺は元の寸法を維持するので、安定した着用感が得られる。もしも上辺も変形(移動)した際には、カップくりの位置などが移動し、不安定な着用感となる。
(第2の実施形態)
図5(A)に、本発明のカップ部を有する衣類の第2の実施形態に係る、ブラキャミソール200の斜視図を示す。
図5(A)に、本発明のカップ部を有する衣類の第2の実施形態に係る、ブラキャミソール200の斜視図を示す。
このブラキャミソール200のブラジャー相当部分は、図1で説明したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、ブラキャミソール200は、前中心部材102およびバック部103の下側に、身頃201を有している。本例では、身頃201は、バック部103の下に取り付けられているが、身頃201が本発明におけるバック部を兼ねてもよい。その他の態様は図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第1の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するブラキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するブラキャミソールとすることもできる。
(第3の実施形態)
図5(B)に、本発明のカップ部を有する衣類の第3の実施形態に係る、ブラキャミソール300の斜視図を示す。
図5(B)に、本発明のカップ部を有する衣類の第3の実施形態に係る、ブラキャミソール300の斜視図を示す。
このブラキャミソール300は、キャミソールの身頃内側にブラジャー相当部分が設けられており、前記ブラジャー相当部分は、図1で説明したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、ブラキャミソール300は、ブラジャー相当部分を覆うように身頃301を有している。また、バック部303は、その背面部に連結係止部を有しておらず、連結係止部の操作をすることなく着脱ができる態様である。その他の態様は図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。本態様では、バック部303を設けて、その下に身頃301を取り付けているが、バック部303を身頃の内側に内蔵してもよい。また、バック部を別途設けずに、身頃301がバック部の機能を有する態様としてもよい。ここでは、第1の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するブラキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するブラキャミソールとすることもできる。本例の構成にすることにより、カップ部101のデザインにかかわらず、着用時の外観のバリエーションを多様にすることができる。また、カップ部101を、よりアウターにひびかなくすることもできる。
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャーおよびブラキャミソールをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、カップ付きニット、ボディースーツ、ブラスリップ、水着、レオタード、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。マタニティ衣類にも好適に用いることができる。
本発明のカップ部を有する衣類は、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のようなファンデーション衣類以外にも、スポーツ衣類、アウターなど、各種のカップ部を有する衣類に適用できる。
100 ブラジャー
101 カップ部
102 前中心部材
103、303 バック部
103A 表布
103B 肌側布
104 肩ストラップ
105 連結係止部
110 樹脂シート
120 外枠
121 カップ側枠部
122 脇側枠部
123 下辺側枠部
200、300 ブラキャミソール
201、301 身頃
L 中腋窩線
101 カップ部
102 前中心部材
103、303 バック部
103A 表布
103B 肌側布
104 肩ストラップ
105 連結係止部
110 樹脂シート
120 外枠
121 カップ側枠部
122 脇側枠部
123 下辺側枠部
200、300 ブラキャミソール
201、301 身頃
L 中腋窩線
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、
一対のカップ部、前中心部材、およびバック部を備え、
前記前中心部材は、前記一対のカップ部の前中心側に設けられて前記一対のカップ部を接続し、
前記バック部は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記バック部の前記カップ部脇部分には、少なくとも着用時の中腋窩線を含む領域の上下方向にわたって、人体の体温付近で柔軟性を発現して変形可能な樹脂シートが取り付けられており、
前記樹脂シートは、40℃での10%伸長時の引張応力が、23℃での10%伸長時の引張応力の1/17以下となる素材であり、
前記樹脂シートは、カップ側枠部、脇側枠部および下辺側枠部からなる外枠に固着され、少なくとも前記外枠以外の部分において、前記樹脂シートは前記バック部から遊離していることを特徴とする。
一対のカップ部、前中心部材、およびバック部を備え、
前記前中心部材は、前記一対のカップ部の前中心側に設けられて前記一対のカップ部を接続し、
前記バック部は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記バック部の前記カップ部脇部分には、少なくとも着用時の中腋窩線を含む領域の上下方向にわたって、人体の体温付近で柔軟性を発現して変形可能な樹脂シートが取り付けられており、
前記樹脂シートは、40℃での10%伸長時の引張応力が、23℃での10%伸長時の引張応力の1/17以下となる素材であり、
前記樹脂シートは、カップ側枠部、脇側枠部および下辺側枠部からなる外枠に固着され、少なくとも前記外枠以外の部分において、前記樹脂シートは前記バック部から遊離していることを特徴とする。
(伸び率)
試験片を、上部つかみ25mm、下部つかみ35mm、つかみ間隔100mmとして、定速伸長形引張試験機(島津製作所製”オートグラフ”AG-500D)に取り付け、300mm±20mm/分の速度で、22.1N(2.25kgf)の荷重をかけ、荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率(%)を測定し、2回の平均値を算出し、整数位で表した。
試験片を、上部つかみ25mm、下部つかみ35mm、つかみ間隔100mmとして、定速伸長形引張試験機(島津製作所製”オートグラフ”AG-500D)に取り付け、300mm±20mm/分の速度で、22.1N(2.25kgf)の荷重をかけ、荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率(%)を測定し、2回の平均値を算出し、整数位で表した。
Claims (7)
- カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、前中心部材、およびバック部を備え、
前記前中心部材は、前記一対のカップ部の前中心側に設けられて前記一対のカップ部を接続し、
前記バック部は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記バック部の前記カップ部脇部分には、少なくとも着用時の中腋窩線を含む領域の上下方向にわたって、人体の体温付近で柔軟性を発現して変形可能な樹脂シートが取り付けられており、
前記樹脂シートは、40℃での10%伸長時の引張応力が、23℃での10%伸長時の引張応力の1/17以下となる素材であり、
前記樹脂シートは、カップ側枠部、脇側枠部および下辺側枠部からなる外枠に固着され、少なくとも前記外枠以外の部分において、前記樹脂シートは前記バック部から遊離しており、
前記外枠の伸長性試験における荷重14.7N(1.50kgf)の伸び率が、前記カップ側枠部は15%以上25%以下の範囲内にあり、前記脇側枠部は5%以上15%以下の範囲内にあり、前記下辺側枠部75%以上85%以下の範囲内にあることを特徴とする、カップ部を有する衣類。 - 前記バック部は、表布と肌側布との二重構造となっており、前記表布と前記肌側布との間に、前記樹脂シートが配置されており、
前記樹脂シートは、前記肌側布において前記バック部に固着されている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。 - 前記バック部の前記表布と前記肌側布とは、1枚の布を折り返して構成されており、
前記折り返しの位置が前記バック部の上辺となっている、請求項2記載のカップ部を有する衣類。 - 前記樹脂シートは、その上端部が、前記バック部の上辺から隙間を有するように構成されている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。
- 前記脇側枠部は、前記バック部の下端部から上端部側に向けて設けられており、
前記脇側枠部の長さは、前記樹脂シートの高さ方向の長さよりも短い長さである、請求項1記載のカップ部を有する衣類。 - 前記樹脂シートは、上辺の背面側において角が落とされた形状となっている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。
- 前記バック部の上辺が、着用時において、少なくとも中腋窩線の位置で第5肋骨の少なくとも一部に相当する部分までを覆うように形成されている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。
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