JP2024044672A - 耐熱性を備えたrfタグ - Google Patents
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Abstract
Description
塗装ラインに設置された乾燥炉の乾燥温度は高温( 例えば、150℃以上)であり、これに対応するため、周囲が樹脂等のカバーで覆われた耐熱仕様のRFタグの使用が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
まず、RFタグを加熱炉で加熱処理した後に取出して、その表面温度の推移を調査した結果を、図6を参照しながら説明する。なお、RFタグは、ICチップとアンテナが基材に配置されたインレイ全体が、耐熱性を備えたカバー(樹脂(PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)や耐熱ナイロン等)で構成)で覆われたものであり(インレイがカバーで封止されており)、ここでは、3種類の耐熱仕様(175℃:◆、250℃:■、300℃:▲)のRFタグを使用した。
図6に示すように、耐熱仕様の温度が高いほど、RFタグ(周囲を覆うカバー)の表面温度の低下(降下)に時間を要することが分かった。即ち、耐熱仕様のRFタグは、カバーの内部(ICチップ近傍)が熱せられにくいが、熱せられると冷めにくい傾向がある。
図7に示すように、RFタグの加熱処理の回数が2回までは、動作復帰に10分程度を要することが分かった。なお、RFタグの加熱処理の回数が3回以降(特に、4回、5回)では、動作復帰に要する時間が短くなっているが、これは、インレイをカバーで封止する際にカバー内に混入した気体の熱膨張により、カバーの一部が破損して開口部が形成され、この形成された開口部によってRFタグの内部の冷却が行われたことによるものと推測される。
なお、RFタグのICチップは、温度が150℃位までは、一定の導電率を有するため半導体として動作可能であるが、150℃を超えると、導電率が低下して単なる抵抗体となる性質がある。このため、RFタグが加熱されても、ICチップが150℃以下となるような構成とすることも必要である。
本発明は、以上の知見をもとになされたものであり、その要旨は以下の通りである。
前記インレイは、内部に空間部が形成された耐熱性樹脂製の容器内に配置され、該容器には、前記インレイを外気に曝す通気部が形成されている。
このように、容器内の空間部にインレイを配置する構成としているため、容器とインレイとの接触面を少なくでき、容器からインレイへの熱伝導を小さくできる。更に、容器には、インレイを外気に曝す通気部が形成されているため、RFタグの冷却効率を従来よりも向上でき、RFタグの動作復帰に要する時間を従来よりも短縮できる。
このように、容器を円筒状にすることで、RFタグの向きを考慮することなく、RFタグを対象物に取付けることができ、RFタグの取付け対象物への取付け作業を容易にできる。
このような容器(空間部)の形状により、RFタグ冷却時の対流促進効果が得られると共に、容器の製造も容易になる。
なお、円筒部に嵌入状態で取付け固定される蓋部は、円筒部への嵌入部分の外径が円筒部の内径よりも大きくなって、円筒部への蓋部の取付けが圧入方式で行われるため、ネジ止め等が不要となる。ネジを使用する場合、ネジの緩み等で円筒部から蓋部が外れて落下したり、また、これに伴って容器内のインレイが落下したりするため、RFタグの取付け対象である製品等に傷を付けるおそれがあるが、本発明ではネジが不要であるため、このような事象が発生するおそれがない。
しかし、RFタグは、使用にあっては加熱(膨張)と冷却(収縮)が繰返し行われることから、上記した圧入方式を用いたとしても、容器が変形し円筒部と蓋部の嵌入部分との間に隙間が生じて、円筒部から蓋部が外れるおそれがある。そこで、円筒部と蓋部の嵌入部分に係止手段を設けることにより、円筒部からの蓋部の脱落を確実に防止している。
これにより、簡単な構成で、耐熱性シート状基材(インレイ)を容器内に位置決めすることができる。
このように、インレイのアンテナに、先側を螺旋状に巻回したワイヤー(ダイポール)を用いる場合、アンテナに柔軟性を持たせることができる。これにより、耐熱性シート状基材の長手方向両側方にそれぞれワイヤーを突出させ、ワイヤーの螺旋状部の巻き数を可変にすることで、容器の大きさを過剰に大きさにすることなく必要な長さのアンテナを収容でき、RFタグの共振周波数をより共振点に近づけて、通信感度を向上させることができる。
また、ワイヤーの螺旋状に巻回した部分を、対向する蓋部によって圧縮状態にすることで、耐熱性シート状基材(インレイ)を容器内に位置決めすることができる。
従って、簡単な構成で安定したトラッキングを実現可能なRFタグを提供できる。
図1(A)~(C)に示す本発明の第1の実施の形態に係る耐熱性を備えたRFタグ(以下、単にRFタグとも記載)10は、ICチップ(IC素子、半導体)11とアンテナ12が耐熱性シート状基材13上に配置されたインレイ(ドライインレイ)14を有するものであり、従来よりも、耐熱性が高められると共に、動作復帰に要する時間を短縮できるものである。
以下、詳しく説明する。
上記した高温の環境としては、具体的には、自動車の製造工場における塗装ライン(乾燥炉)や、製鉄所の製鋼工場(鍋)等がある。
ICチップ11(ケイ素(Si)ベース)は周知の構造のものであり、耐熱性シート状基材13上に貼着された導電性金属(銅箔やアルミニウム箔等)で構成したアンテナ12と接続され、送受信器(図示しない)から電波を受信することで得られる起電力により、内部に特別に記憶された識別コードを無線で外部に送信する構造となっている。
このICチップ11とアンテナ12との接続は、半田15を用いて行われ、半田15のないアンテナ12の露出領域は、耐熱性を備えた周知のレジスト材16で覆われている。
また、ICチップ11の周囲表面(半田15も含む)は、耐熱性を備えた周知のモールド樹脂17で覆われ、耐久性を向上させているが、必要に応じてなくてもよい。
モールド樹脂17は、例えば、車載電子部品等のシーリングや封止に用いられるエポキシ樹脂(融点:350℃程度)等で構成できるが、耐熱性を備えていれば特に限定されるものではない。
なお、上記した耐熱性シート状基材13の厚みは約1.6mm程度、アンテナ12の厚みは約100μm程度、ICチップ11の厚みは約200μm程度、であるが、特に限定されるものではなく、RFタグを使用する対象物等に応じて種々変更できる。
容器19は、耐熱性及び絶縁性を備えた材質の樹脂で構成されている。具体的には、上記したフッ素樹脂やPEEK等を使用できるが、耐熱性や経済性を考慮すれば、フッ素樹脂を使用することが好ましい。なお、容器19は、RFタグの使用環境に応じて材質を種々選択することができる。
このように、インレイ14を容器19内(即ち、空間部18)に配置することにより、例えば、インレイ14の保持、RFタグ10の取付け対象物(導電性を備えた金属製)に対するスペーサ、近接設備との接触や干渉によるインレイ14の破損防止、等の役割を果たすことができる。
蓋部21は、図2(A)、(B)に示すように、円筒部20と外径を同じにする円盤状の外蓋22と、この外蓋22と軸心を合わせてその先側に向けて突出状態で形成された円筒状の嵌入部分23とで構成されている。この蓋部21の嵌入部分23は、円筒部20に嵌入させる前の状態(常温の状態)では、嵌入部分23の外径が円筒部20の内径よりも、例えば、0.2~1mm(ここでは、0.5mm)程度大きくなっている。このため、円筒部20に嵌入部分23を挿入する際は、冷蔵庫等の冷却手段(図示ししない)を用いて、蓋部21を予め冷却(例えば、2~3時間程度)して嵌入部分23を収縮させ(縮径させ)、嵌入部分23の外径を円筒部20の内径よりも小さくする。
更に、円筒部20に嵌入部分23を嵌入させた後は、蓋部21が徐々に常温に近づくことで、図2(E)に示すように、嵌入部分23が元の状態(初期の寸法)に戻ろうとするため(嵌入部分23の外径が円筒部20の内径よりも大きくなろうとするため)、円筒部20の内面と嵌入部分23の外面とが密着状態となり、円筒部20に対する蓋部21の嵌入状態を維持できる。
なお、図2(A)に示す符号24は、蓋部21の冷却時における嵌入部分23の縮径をスムーズにするための切り込みである。
そこで、円筒部20と蓋部21の嵌入部分23に、蓋部21が円筒部20から脱落することを防止する係止手段25を設けている。
係止手段25は、図2(A)~(E)に示すように、蓋部21の嵌入部分23に設けられた返り部(反り部、突出部)26と、円筒部20の内側であって返り部26に対応する位置に設けられた返り受け部(反り受け部、溝部)27とで構成されている。
これにより、円筒部20への嵌入部分23の嵌入時において、円筒部20に返り部26が引っ掛かることなく、嵌入部分23を円筒部20内にスムーズに挿入できる。
返り受け部27は、円筒部20への嵌入部分23の嵌入時において、円筒部20の内側であって返り部26に対応する位置に連続して形成された環状の段差で構成することができる。なお、返り受け部の形状は、返り部の形状に対応させてもよい。
これにより、図2(E)に示すように、返り部26内に返り受け部27が嵌入した後は、円筒部20から蓋部21を引き抜こうとしても、返り受け部27に返り部26が引っ掛かって抜けない構成にできる。
溝28は、蓋部21の嵌入部分23の先側の上記した返り部26とは異なる位置であって、嵌入部分23の径方向両側(2箇所)に形成されている。ここでは、対向する溝28と対向する返り部26とが、蓋部21を軸心方向からみて直交するように、溝28が嵌入部分23に形成されているが、特に限定されるものではない。
これにより、円筒部20の軸心方向両側に取付け固定された対向する蓋部21により、耐熱性シート状基材13を長手方向両側から挟み込むことで、容器19内での耐熱性シート状基材13(インレイ14)の位置決めがなされる。
一方の通気部29は、容器19(円筒部20)の径方向両側に形成された対向する通気孔31、32で構成され、他方の通気部30は、容器19(蓋部21)の軸心方向両側に形成された対向する通気孔33、34で構成されている。
一方の通気部29を構成する対となる通気孔31、32は同一形状であって、矩形状(長方形状)となっており、容器19の長手方向の通気孔31、32の内幅W1が、容器19の長さLの例えば20~50%程度、容器19の長手方向とは直交する方向の通気孔31、32の内幅W2が、内幅W1と同等以下(内幅W1の10%以上)程度となっている。
他方の通気部30を構成する対となる通気孔33、34は同一形状であって、円形状となっており、その内幅W3が容器19の外径Dの例えば20~50%程度となっている。
これにより、RFタグ10の向きに関係なく、容器19内に外気を流すことができる。
図3(A)~(C)に示すように、RFタグ40が有するインレイ41は、平面視して矩形状(長方形状)の耐熱性シート状基材42(耐熱性シート状基材13と同じ材質)上に、アンテナ43とICチップ11が配置されたものである。ここで、ICチップ11とアンテナ43の基部とは、耐熱性シート状基材42上に半田44を介して接続され、この半田44とICチップ11の周囲表面は、外気に露出させた状態となっているが、前記した耐熱性を備えた周知のモールド樹脂で覆って、耐久性を向上させることが好ましい。なお、図3(C)に示す符号45は、耐熱性を備えた周知のレジスト材である。
アンテナは、基本形がダイポールアンテナであり、耐熱性シート状基材の長手方向に沿う片側のワイヤーの直線状態の長さが81.5mm(λ/4:920MHz)である。このため、そのままの状態では、アンテナの長さだけで16cm程度となり、RFタグの長さが長くなり過ぎる。
また、パッシブタイプのRFタグでは、直線状態のダイポールアンテナの場合、送信器側から発振された電波と共振点にズレが生じ(送信器側のようにバランが設けられていないため)、通信性能が劣る(ストレートキャパシティ(C)不足により周波数の長波側へのズレが生じる)。
具体的には、アンテナの長さを短くするのではなく、逆に長くし、螺旋状に巻回した(共振回路のC成分を増やす)構成とすることで、共振点に近づけることができる。なお、共振点への合せ込みは、例えば、アンテナの長さをλ/4より長めとし、螺旋状の径や巻き数を調整することで実施できる。
上記したインレイ41は、内部に空間部46が形成された耐熱性樹脂製の容器47(容器19と略同様の構成)内に配置されている。この容器47は、円筒部20と、この円筒部20の軸心方向両側に嵌入状態で取付け固定される蓋部48(蓋部21と略同様の構成)とを有している。蓋部48は、外蓋22と、この外蓋22と軸心を合わせてその先側に向けて突出状態で形成された嵌入部分(図示しない)とで構成されている。
これにより、円筒部20の軸心方向両側に取付け固定された対向する蓋部48により、アンテナ43を圧縮状態にすることで、容器47内での耐熱性シート状基材42(インレイ41)の位置決めがなされる。このため、蓋部48の嵌入部分には、前記した嵌入部分23に形成された溝28は不要である。
例えば、乾燥炉や加熱炉でRFタグを使用する場合、高温になったRFタグが常温の外気に曝されれば、対流によって上昇気流が発生する。そこで、この空気の循環を促進するため、インレイを収容する容器に鉛直方向へ通じる通気孔を設けることで、RFタグ内部に外気を流しICチップの温度降下を速めることができる。
具体的には、対象物に取付けられたRFタグ10が、容器19の径方向に形成された2つの通気孔31、32を上下にして水平状態にある場合、通気孔31、32によりRFタグ10の径方向に外気を流すことができる。
また、対象物に取付けられたRFタグ10が垂直状態にある場合、主としてRFタグ10の軸心方向に形成された通気孔33、34により、RFタグ10の軸心方向に外気を流すことができる。
なお、RFタグ10の向きが斜めの場合は、上記した複数の通気孔31~34の組合せにより、RFタグ10に外気を流すことができる。
そして、コンピュータにより送受信器を操作し読取動作を行わせると、送受信器は、所定の高周波電流をアンテナへ送出し、この高周波電流がアンテナに給電されると、アンテナから電波が放射される。この電波は、RFタグ10を動作させる質問波である。
上記した送受信器は、既存のRFタグリーダ(リーダ/ライタ)と同様の構成である。
これにより、RFタグ10を動作させることができる。
送受信器は、この高周波電流を復調し、RFタグ10のデータを読取る。
上記した動作が、コンピュータに予め設定されたプログラムに基づいて行われ、得られたデータがコンピュータに送られ保存される。
これにより、対象物のトラッキングを実施できる。
まず、加熱炉で加熱処理して取出した後のRFタグが動作復帰(半導体として動作可能)に要する時間を測定した結果を、図4を参照しながら説明する。なお、加熱処理は260℃×20~40分とした。
使用したRFタグは、上記した図3(C)に基づく実施例に係る3種類のRFタグと、比較例に係る1種類のRFタグである。具体的には、実施例に係るタグは、実施例1がICチップのみをモールド樹脂で覆った場合、実施例2が耐熱性シート状基材とアンテナとの接合部及びICチップをモールド樹脂で覆った場合、実施例3がモールド樹脂で覆わない場合(図3(C)に示す状態)、であり、比較例に係るRFタグは、図1(C)に示すインレイを開口部が形成されていない2枚の耐熱性樹脂製の板材(耐熱温度:250度、厚み:5mm)で挟み込んだ場合、である。
図4に示すように、実施例1~3の構成、即ち、空間部を有する容器を用い、この容器に通気部を形成した構にすることで、比較例の構成、即ち、容器を用いることなく通気部を形成しない板材を使用した構成と比較して、動作復帰に要する時間を大幅に短縮できることが分かった。特に、RFタグの動作復帰に要する時間は、比較例では7分以上要しているが、実施例1~3では30秒未満に安定に短縮できることが分かった。
使用したRFタグは、熱性シート状基材とアンテナとの接合部及びICチップをモールド樹脂で覆ったものであり、ここでは、その3箇所で表面温度を測定した。具体的には、耐熱性シート状基材の長手方向中央(通気部近傍)、容器内の軸心方向中央(通気部近傍)、容器内の軸心方向端部、の3箇所である。
図5に示すように、空間部を有する容器を用い、この容器に通気部を形成した構成にすることで、RFタグの冷却効果が顕著になることが分かった。特に、RFタグの冷却速度は、通気部近傍である耐熱性シート状基材と容器内で早いことが分かった(約10分程度で50℃未満まで低下)。
従って、高温の環境(例えば、150℃以上、好ましくは200℃以上)であっても、安定したトラッキングを実現できる。
前記実施の形態においては、耐熱性容器を円筒状に形成し、円筒部と、その軸心方向両側に嵌入状態で取付け固定される蓋部とで構成した場合について説明したが、インレイを配置する空間部が内部に形成されていれば、特に限定されるものではない。例えば、耐熱性容器の形状は、断面楕円形や断面多角形等の筒状にすることもでき、また、有底の容器の開口部を蓋等で塞ぐ等の構成にすることもできる。なお、軸心方向中央部が端部よりも拡径(拡幅)した構成にすることもできる。
そして、前記実施の形態において、容器に形成した通気部の構成は、必要な冷却効率が得られれば特に限定されるものではなく、通気部を構成する通気孔の形成位置や形状、また、個数を種々変更することができる。例えば、前記実施の形態においては、通気部を容器の径方向と軸心方向の双方に形成した場合について説明したが、用途に応じて、いずれか一方のみに形成することもできる。
塗装ラインに設置された乾燥炉の乾燥温度は高温( 例えば、150℃以上)であり、これに対応するため、周囲が樹脂等のカバーで覆われた耐熱仕様のRFタグの使用が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
まず、RFタグを加熱炉で加熱処理した後に取出して、その表面温度の推移を調査した結果を、図6を参照しながら説明する。なお、RFタグは、ICチップとアンテナが基材に配置されたインレイ全体が、耐熱性を備えたカバー(樹脂(PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)や耐熱ナイロン等)で構成)で覆われたものであり(インレイがカバーで封止されており)、ここでは、3種類の耐熱仕様(175℃:◆、250℃:■、300℃:▲)のRFタグを使用した。
図6に示すように、耐熱仕様の温度が高いほど、RFタグ(周囲を覆うカバー)の表面温度の低下(降下)に時間を要することが分かった。即ち、耐熱仕様のRFタグは、カバーの内部(ICチップ近傍)が熱せられにくいが、熱せられると冷めにくい傾向がある。
図7に示すように、RFタグの加熱処理の回数が2回までは、動作復帰に10分程度を要することが分かった。なお、RFタグの加熱処理の回数が3回以降(特に、4回、5回)では、動作復帰に要する時間が短くなっているが、これは、インレイをカバーで封止する際にカバー内に混入した気体の熱膨張により、カバーの一部が破損して開口部が形成され、この形成された開口部によってRFタグの内部の冷却が行われたことによるものと推測される。
なお、RFタグのICチップは、温度が150℃位までは、一定の導電率を有するため半導体として動作可能であるが、150℃を超えると、導電率が低下して単なる抵抗体となる性質がある。このため、RFタグが加熱されても、ICチップが150℃以下となるような構成とすることも必要である。
本発明は、以上の知見をもとになされたものであり、その要旨は以下の通りである。
前記インレイは、内部に空間部が形成された耐熱性樹脂製の容器内に配置され、該容器には、前記インレイを外気に曝す通気部が形成され、
前記容器は円筒状に形成され、円筒部と、該円筒部の軸心方向両側に嵌入状態で取付け固定される蓋部とを有し、前記容器の軸心方向に前記耐熱性シート状基材の長手方向を合わせて前記インレイが配置され、前記通気部は、前記容器の径方向両側に形成された通気孔であり、
前記インレイの前記アンテナには、前記耐熱性シート状基材の長手方向両側方にそれぞれ該長手方向に沿って突出するワイヤーが用いられ、該ワイヤーの先側は螺旋状に巻回され、対向する前記蓋部によって該ワイヤーを圧縮状態にすることで、前記耐熱性シート状基材が前記容器に接触することなく該容器内での前記耐熱性シート状基材の位置決めがなされる。
このように、容器内の空間部にインレイを配置する構成としているため、容器とインレイとの接触面を少なくでき、容器からインレイへの熱伝導を小さくできる。更に、容器には、インレイを外気に曝す通気部が形成されているため、RFタグの冷却効率を従来よりも向上でき、RFタグの動作復帰に要する時間を従来よりも短縮できる。
このような容器(空間部)の形状により、RFタグ冷却時の対流促進効果が得られると共に、容器の製造も容易になる。
なお、円筒部に嵌入状態で取付け固定される蓋部は、円筒部への嵌入部分の外径が円筒部の内径よりも大きくなって、円筒部への蓋部の取付けが圧入方式で行われるため、ネジ止め等が不要となる。ネジを使用する場合、ネジの緩み等で円筒部から蓋部が外れて落下したり、また、これに伴って容器内のインレイが落下したりするため、RFタグの取付け対象である製品等に傷を付けるおそれがあるが、本発明ではネジが不要であるため、このような事象が発生するおそれがない。
しかし、RFタグは、使用にあっては加熱(膨張)と冷却(収縮)が繰返し行われることから、上記した圧入方式を用いたとしても、容器が変形し円筒部と蓋部の嵌入部分との間に隙間が生じて、円筒部から蓋部が外れるおそれがある。そこで、円筒部と蓋部の嵌入部分に係止手段を設けることにより、円筒部からの蓋部の脱落を確実に防止している。
これにより、簡単な構成で、耐熱性シート状基材(インレイ)を容器内に位置決めすることができる。
そして、ワイヤーの螺旋状に巻回した部分を、対向する蓋部によって圧縮状態にすることで、耐熱性シート状基材(インレイ)を容器内に位置決めすることができる。
従って、簡単な構成で安定したトラッキングを実現可能なRFタグを提供できる。
図1(A)~(C)に示す本発明の第1の実施の形態に係る耐熱性を備えたRFタグ(以下、単にRFタグとも記載)10は、ICチップ(IC素子、半導体)11とアンテナ12が耐熱性シート状基材13上に配置されたインレイ(ドライインレイ)14を有するものであり、従来よりも、耐熱性が高められると共に、動作復帰に要する時間を短縮できるものである。
以下、詳しく説明する。
上記した高温の環境としては、具体的には、自動車の製造工場における塗装ライン(乾燥炉)や、製鉄所の製鋼工場(鍋)等がある。
ICチップ11(ケイ素(Si)ベース)は周知の構造のものであり、耐熱性シート状基材13上に貼着された導電性金属(銅箔やアルミニウム箔等)で構成したアンテナ12と接続され、送受信器(図示しない)から電波を受信することで得られる起電力により、内部に特別に記憶された識別コードを無線で外部に送信する構造となっている。
このICチップ11とアンテナ12との接続は、半田15を用いて行われ、半田15のないアンテナ12の露出領域は、耐熱性を備えた周知のレジスト材16で覆われている。
また、ICチップ11の周囲表面(半田15も含む)は、耐熱性を備えた周知のモールド樹脂17で覆われ、耐久性を向上させているが、必要に応じてなくてもよい。
モールド樹脂17は、例えば、車載電子部品等のシーリングや封止に用いられるエポキシ樹脂(融点:350℃程度)等で構成できるが、耐熱性を備えていれば特に限定されるものではない。
なお、上記した耐熱性シート状基材13の厚みは約1.6mm程度、アンテナ12の厚みは約100μm程度、ICチップ11の厚みは約200μm程度、であるが、特に限定されるものではなく、RFタグを使用する対象物等に応じて種々変更できる。
容器19は、耐熱性及び絶縁性を備えた材質の樹脂で構成されている。具体的には、上記したフッ素樹脂やPEEK等を使用できるが、耐熱性や経済性を考慮すれば、フッ素樹脂を使用することが好ましい。なお、容器19は、RFタグの使用環境に応じて材質を種々選択することができる。
このように、インレイ14を容器19内(即ち、空間部18)に配置することにより、例えば、インレイ14の保持、RFタグ10の取付け対象物(導電性を備えた金属製)に対するスペーサ、近接設備との接触や干渉によるインレイ14の破損防止、等の役割を果たすことができる。
蓋部21は、図2(A)、(B)に示すように、円筒部20と外径を同じにする円盤状の外蓋22と、この外蓋22と軸心を合わせてその先側に向けて突出状態で形成された円筒状の嵌入部分23とで構成されている。この蓋部21の嵌入部分23は、円筒部20に嵌入させる前の状態(常温の状態)では、嵌入部分23の外径が円筒部20の内径よりも、例えば、0.2~1mm(ここでは、0.5mm)程度大きくなっている。このため、円筒部20に嵌入部分23を挿入する際は、冷蔵庫等の冷却手段(図示ししない)を用いて、蓋部21を予め冷却(例えば、2~3時間程度)して嵌入部分23を収縮させ(縮径させ)、嵌入部分23の外径を円筒部20の内径よりも小さくする。
更に、円筒部20に嵌入部分23を嵌入させた後は、蓋部21が徐々に常温に近づくことで、図2(E)に示すように、嵌入部分23が元の状態(初期の寸法)に戻ろうとするため(嵌入部分23の外径が円筒部20の内径よりも大きくなろうとするため)、円筒部20の内面と嵌入部分23の外面とが密着状態となり、円筒部20に対する蓋部21の嵌入状態を維持できる。
なお、図2(A)に示す符号24は、蓋部21の冷却時における嵌入部分23の縮径をスムーズにするための切り込みである。
そこで、円筒部20と蓋部21の嵌入部分23に、蓋部21が円筒部20から脱落することを防止する係止手段25を設けている。
係止手段25は、図2(A)~(E)に示すように、蓋部21の嵌入部分23に設けられた返り部(反り部、突出部)26と、円筒部20の内側であって返り部26に対応する位置に設けられた返り受け部(反り受け部、溝部)27とで構成されている。
これにより、円筒部20への嵌入部分23の嵌入時において、円筒部20に返り部26が引っ掛かることなく、嵌入部分23を円筒部20内にスムーズに挿入できる。
返り受け部27は、円筒部20への嵌入部分23の嵌入時において、円筒部20の内側であって返り部26に対応する位置に連続して形成された環状の段差で構成することができる。なお、返り受け部の形状は、返り部の形状に対応させてもよい。
これにより、図2(E)に示すように、返り部26内に返り受け部27が嵌入した後は、円筒部20から蓋部21を引き抜こうとしても、返り受け部27に返り部26が引っ掛かって抜けない構成にできる。
溝28は、蓋部21の嵌入部分23の先側の上記した返り部26とは異なる位置であって、嵌入部分23の径方向両側(2箇所)に形成されている。ここでは、対向する溝28と対向する返り部26とが、蓋部21を軸心方向からみて直交するように、溝28が嵌入部分23に形成されているが、特に限定されるものではない。
これにより、円筒部20の軸心方向両側に取付け固定された対向する蓋部21により、耐熱性シート状基材13を長手方向両側から挟み込むことで、容器19内での耐熱性シート状基材13(インレイ14)の位置決めがなされる。
一方の通気部29は、容器19(円筒部20)の径方向両側に形成された対向する通気孔31、32で構成され、他方の通気部30は、容器19(蓋部21)の軸心方向両側に形成された対向する通気孔33、34で構成されている。
一方の通気部29を構成する対となる通気孔31、32は同一形状であって、矩形状(長方形状)となっており、容器19の長手方向の通気孔31、32の内幅W1が、容器19の長さLの例えば20~50%程度、容器19の長手方向とは直交する方向の通気孔31、32の内幅W2が、内幅W1と同等以下(内幅W1の10%以上)程度となっている。
他方の通気部30を構成する対となる通気孔33、34は同一形状であって、円形状となっており、その内幅W3が容器19の外径Dの例えば20~50%程度となっている。
これにより、RFタグ10の向きに関係なく、容器19内に外気を流すことができる。
図3(A)~(C)に示すように、RFタグ40が有するインレイ41は、平面視して矩形状(長方形状)の耐熱性シート状基材42(耐熱性シート状基材13と同じ材質)上に、アンテナ43とICチップ11が配置されたものである。ここで、ICチップ11とアンテナ43の基部とは、耐熱性シート状基材42上に半田44を介して接続され、この半田44とICチップ11の周囲表面は、外気に露出させた状態となっているが、前記した耐熱性を備えた周知のモールド樹脂で覆って、耐久性を向上させることが好ましい。なお、図3(C)に示す符号45は、耐熱性を備えた周知のレジスト材である。
アンテナは、基本形がダイポールアンテナであり、耐熱性シート状基材の長手方向に沿う片側のワイヤーの直線状態の長さが81.5mm(λ/4:920MHz)である。このため、そのままの状態では、アンテナの長さだけで16cm程度となり、RFタグの長さが長くなり過ぎる。
また、パッシブタイプのRFタグでは、直線状態のダイポールアンテナの場合、送信器側から発振された電波と共振点にズレが生じ(送信器側のようにバランが設けられていないため)、通信性能が劣る(ストレートキャパシティ(C)不足により周波数の長波側へのズレが生じる)。
具体的には、アンテナの長さを短くするのではなく、逆に長くし、螺旋状に巻回した(共振回路のC成分を増やす)構成とすることで、共振点に近づけることができる。なお、共振点への合せ込みは、例えば、アンテナの長さをλ/4より長めとし、螺旋状の径や巻き数を調整することで実施できる。
上記したインレイ41は、内部に空間部46が形成された耐熱性樹脂製の容器47(容器19と略同様の構成)内に配置されている。この容器47は、円筒部20と、この円筒部20の軸心方向両側に嵌入状態で取付け固定される蓋部48(蓋部21と略同様の構成)とを有している。蓋部48は、外蓋22と、この外蓋22と軸心を合わせてその先側に向けて突出状態で形成された嵌入部分(図示しない)とで構成されている。
これにより、円筒部20の軸心方向両側に取付け固定された対向する蓋部48により、アンテナ43を圧縮状態にすることで、容器47内での耐熱性シート状基材42(インレイ41)の位置決めがなされる。このため、蓋部48の嵌入部分には、前記した嵌入部分23に形成された溝28は不要である。
例えば、乾燥炉や加熱炉でRFタグを使用する場合、高温になったRFタグが常温の外気に曝されれば、対流によって上昇気流が発生する。そこで、この空気の循環を促進するため、インレイを収容する容器に鉛直方向へ通じる通気孔を設けることで、RFタグ内部に外気を流しICチップの温度降下を速めることができる。
具体的には、対象物に取付けられたRFタグ10が、容器19の径方向に形成された2つの通気孔31、32を上下にして水平状態にある場合、通気孔31、32によりRFタグ10の径方向に外気を流すことができる。
また、対象物に取付けられたRFタグ10が垂直状態にある場合、主としてRFタグ10の軸心方向に形成された通気孔33、34により、RFタグ10の軸心方向に外気を流すことができる。
なお、RFタグ10の向きが斜めの場合は、上記した複数の通気孔31~34の組合せにより、RFタグ10に外気を流すことができる。
そして、コンピュータにより送受信器を操作し読取動作を行わせると、送受信器は、所定の高周波電流をアンテナへ送出し、この高周波電流がアンテナに給電されると、アンテナから電波が放射される。この電波は、RFタグ10を動作させる質問波である。
上記した送受信器は、既存のRFタグリーダ(リーダ/ライタ)と同様の構成である。
これにより、RFタグ10を動作させることができる。
送受信器は、この高周波電流を復調し、RFタグ10のデータを読取る。
上記した動作が、コンピュータに予め設定されたプログラムに基づいて行われ、得られたデータがコンピュータに送られ保存される。
これにより、対象物のトラッキングを実施できる。
まず、加熱炉で加熱処理して取出した後のRFタグが動作復帰(半導体として動作可能)に要する時間を測定した結果を、図4を参照しながら説明する。なお、加熱処理は260℃×20~40分とした。
使用したRFタグは、上記した図3(C)に基づく実施例に係る3種類のRFタグと、比較例に係る1種類のRFタグである。具体的には、実施例に係るタグは、実施例1がICチップのみをモールド樹脂で覆った場合、実施例2が耐熱性シート状基材とアンテナとの接合部及びICチップをモールド樹脂で覆った場合、実施例3がモールド樹脂で覆わない場合(図3(C)に示す状態)、であり、比較例に係るRFタグは、図1(C)に示すインレイを開口部が形成されていない2枚の耐熱性樹脂製の板材(耐熱温度:250度、厚み:5mm)で挟み込んだ場合、である。
図4に示すように、実施例1~3の構成、即ち、空間部を有する容器を用い、この容器に通気部を形成した構にすることで、比較例の構成、即ち、容器を用いることなく通気部を形成しない板材を使用した構成と比較して、動作復帰に要する時間を大幅に短縮できることが分かった。特に、RFタグの動作復帰に要する時間は、比較例では7分以上要しているが、実施例1~3では30秒未満に安定に短縮できることが分かった。
使用したRFタグは、熱性シート状基材とアンテナとの接合部及びICチップをモールド樹脂で覆ったものであり、ここでは、その3箇所で表面温度を測定した。具体的には、耐熱性シート状基材の長手方向中央(通気部近傍)、容器内の軸心方向中央(通気部近傍)、容器内の軸心方向端部、の3箇所である。
図5に示すように、空間部を有する容器を用い、この容器に通気部を形成した構成にすることで、RFタグの冷却効果が顕著になることが分かった。特に、RFタグの冷却速度は、通気部近傍である耐熱性シート状基材と容器内で早いことが分かった(約10分程度で50℃未満まで低下)。
従って、高温の環境(例えば、150℃以上、好ましくは200℃以上)であっても、安定したトラッキングを実現できる。
前記実施の形態においては、耐熱性容器を円筒状に形成し、円筒部と、その軸心方向両側に嵌入状態で取付け固定される蓋部とで構成した場合について説明したが、インレイを配置する空間部が内部に形成されていれば、特に限定されるものではない。例えば、耐熱性容器の形状は、断面楕円形や断面多角形等の筒状にすることもでき、また、有底の容器の開口部を蓋等で塞ぐ等の構成にすることもできる。なお、軸心方向中央部が端部よりも拡径(拡幅)した構成にすることもできる。
そして、前記実施の形態において、容器に形成した通気部の構成は、必要な冷却効率が得られれば特に限定されるものではなく、通気部を構成する通気孔の形成位置や形状、また、個数を種々変更することができる。例えば、前記実施の形態においては、通気部を容器の径方向と軸心方向の双方に形成した場合について説明したが、用途に応じて、いずれか一方のみに形成することもできる。
Claims (5)
- ICチップとアンテナが耐熱性シート状基材に配置されたインレイを有する耐熱性を備えたRFタグであって、
前記インレイは、内部に空間部が形成された耐熱性樹脂製の容器内に配置され、該容器には、前記インレイを外気に曝す通気部が形成されていることを特徴とする耐熱性を備えたRFタグ。 - 請求項1記載の耐熱性を備えたRFタグにおいて、前記容器は円筒状に形成され、該容器の軸心方向に前記耐熱性シート状基材の長手方向を合わせて前記インレイが配置され、前記通気部は、前記容器の径方向両側に形成された通気孔であることを特徴とする耐熱性を備えたRFタグ。
- 請求項2記載の耐熱性を備えたRFタグにおいて、前記容器は、円筒部と、該円筒部の軸心方向両側に嵌入状態で取付け固定される蓋部とを有し、該蓋部を前記円筒部に嵌入する前の状態では、前記蓋部の前記円筒部への嵌入部分の外径が前記円筒部の内径よりも大きく、前記円筒部と前記嵌入部分には前記蓋部が前記円筒部から脱落することを防止する係止手段が設けられていることを特徴とする耐熱性を備えたRFタグ。
- 請求項3記載の耐熱性を備えたRFタグにおいて、前記蓋部の前記嵌入部分には、前記インレイの前記耐熱性シート状基材の長手方向端部を嵌め込む溝が形成され、対向する前記蓋部によって前記耐熱性シート状基材を長手方向両側から挟み込むことで、前記容器内での前記耐熱性シート状基材の位置決めがなされることを特徴とする耐熱性を備えたRFタグ。
- 請求項3記載の耐熱性を備えたRFタグにおいて、前記インレイの前記アンテナには、前記耐熱性シート状基材の長手方向両側方にそれぞれ該長手方向に沿って突出するワイヤーが用いられ、該ワイヤーの先側は螺旋状に巻回され、対向する前記蓋部によって該ワイヤーを圧縮状態にすることで、前記容器内での前記耐熱性シート状基材の位置決めがなされることを特徴とする耐熱性を備えたRFタグ。
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