JP2024033770A - 脳機能低下の予防、治療、又は軽減用組成物、及び、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための組成物 - Google Patents

脳機能低下の予防、治療、又は軽減用組成物、及び、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】脳機能の低下の予防、治療、又は軽減に用いる組成物、又は、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための組成物を提供すること。【解決手段】アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分を有効成分として含む、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減に用いるための、組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、脳機能低下の予防、治療、又は軽減用組成物、及び、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための組成物に関する。
ヒトは歳を重ねるにつれ学習能力や記憶力といった脳機能が徐々に低下していき、物忘れや不安障害、意欲の低下、睡眠の質の低下などを引き起こしやすくなる。この自然の摂理に加えて、認知症に罹患したときには、ヒトの尊厳までも脅かされる深刻な事態を招く場合がある。現在、認知症の予防と治療の研究が精力的に進められている。
認知症とは、種々の原因で脳細胞が死んだり、働きが悪くなったりすることにより起こる様々な障害が原因となり、物事の判断ができなくなったり、記憶力の急速な低下が生じたりすることで継続的に生活に支障が出ている状態を指す。認知症を引き起こす原因のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく神経変性疾患であり、続いて多いのが、脳血管型認知症である。この神経変性疾患としては、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症等が挙げられる。また、脳血管型認知症は、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などが引き金となって脳の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れたりしてしまうことにより起こる。
アルツハイマー病は、認知症の50%~60%を占める神経変性疾患である。アルツハイマー病初期の主要な病理変化は、主にアミロイド・ベータ蛋白質(以下、「アミロイドβ」、「Aβ」ともいう)によって構成される老人斑の脳における形成である。このため、脳内のAβがアルツハイマー病の発症と進行を引き起こすというアミロイド仮説が有力である。このアミロイド仮説に基づいて、脳内のAβを排出しアルツハイマー病の進行を抑制する可能性が考えられている。さらにAβが12分子程度凝集した比較的小さなAβオリゴマーが高い毒性を持つというオリゴマー仮説が支持されている。Aβオリゴマーは可溶性であるため拡散しやすいうえ、様々な機能性タンパク質と結合して神経毒性を発揮する。Aβオリゴマーに対する抗Aβモノクローナル抗体療法が開発され、その医薬品の販売製造が申請されている。
この様に疎水性が高いAβは非常に凝集しやすく、可溶性で毒性の高いオリゴマーを形成するが、さらに大きく不溶性の非晶質のAβ凝集体を形成する。この大きなAβ凝集体はほとんど水に溶解しないため、脳内からの排出が困難となる。
ここで、特許文献1には、クロロゲン酸(5-CQA)はその用量依存的に凝集アミロイドの分解活性を有することが記載されている。
特許6529634号公報
上記先行技術のあるところ、本発明は、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減に用いる組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のために用いる組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のアミノ酸およびジペプチド等が、アミロイドβモノマーの凝集抑制、及び/又はアミロイドβ凝集体の細分化に寄与すること、これにより脳機能の低下の予防、治療、又は軽減に効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
上記課題を解決する本発明は、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分を有効成分として含む、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減に用いるための、組成物である。
また、本発明は、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分を有効成分として含む、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための組成物でもある。
本発明の好ましい形態では、前記ジペプチドが、Gly-Asp又はThr-Aspである。
本発明の好ましい形態では、本発明は、直鎖飽和脂肪酸をさらに含む。
本発明の好ましい形態では、前記直鎖飽和脂肪酸がパルミチン酸である。
本発明の好ましい形態では、前記脳機能の低下が、認知症によるものである。
本発明の好ましい形態では、前記認知症がアルツハイマー型認知症である。
本発明の好ましい形態では、前記アルツハイマー型認知症用に用いる組成物は、アミロイドβモノマーの凝集抑制、及び/又はアミロイドβ凝集体の細分化のために用いる。
本発明の好ましい形態では、本発明は認知症を発症していない対象に投与するための組成物である。
本発明の好ましい形態では、本発明は医薬組成物である。
また、本発明の好ましい形態では、本発明は飲食品用組成物である。
本発明によれば、脳機能の低下の予防、治療又は軽減に有効な組成物を提供できる。
また、本発明によれば、アミロイドβモノマーの凝集抑制、及び/又はアミロイドβ凝集体の細分化により、アミロイドβの蓄積の抑制に有効な組成物を提供できる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれの効果であってもよい。
試験例1における、パルミチン酸存在下でのアミノ酸によるアミロイドβ(Aβ)凝集抑制効果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
〈組成物〉
本発明の組成物は、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減(以下、「脳機能の低下の予防等」ともいう)に用いる組成物であって、アスパラギン酸を含むジペプチド(以下、「本発明に係るペプチド」ともいう)、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群から選択される一種又は二種以上の成分を含む組成物である。
また、本発明の組成物は、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分を有効成分として含む、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための組成物でもある。
本発明において、「予防」という用語は、適用対象における症状又は疾患の発症の防止若しくは発症の遅延、又は適用対象における症状又は疾患の発症の危険性を低下させる等を指す。
本発明において、「治療」という用語は、(i)疾患、障害若しくは状態を完全若しくは部分的に阻害し、例えば、その発症を停止させ、(ii)疾患、障害若しくは状態を完全若しくは部分的に緩和し、例えば、疾患、障害及び/若しくは状態の退縮を引き起こし、又は(iii)疾患、障害及び/若しくは状態の素因を持ち得るが、それを有すると未だ診断されていない患者において疾患、障害若しくは状態が起こることを完全若しくは部分的に予防することを指す。同様に、「治療」は、治療的処置及び予防的手段の両方を指す。
本発明において、「軽減」という用語は、症状又は疾患の好転、症状又は疾患の悪化の防止若しくは遅延、症状又は疾患の進行の逆転、防止若しくは遅延、又は症状又は疾患の治療等を意味する。
また、本発明において、「アミロイドβ凝集体の蓄積抑制」とは、具体的には、アミロイドβモノマーの凝集抑制、及び/又はアミロイドβ凝集体の細分化を意味する。
以下において、アスパラギン酸残基をAsp、メチオニン残基をMet、グリシン残基をGly、アラニン残基をAla、セリン残基をSer、スレオニン残基をThr、アスパラギン残基をAsn、グルタミン残基をGln、グルタミン酸残基をGlu、リジン残基をLys、アルギニン残基をArg、ヒスチジン残基をHis、バリン残基をVal、ロイシン残基をLeu、イソロイシン残基をIle、チロシン残基をTyr、フェニルアラニン残基をPhe、トリプトファン残基をTrp、プロリン残基をPro、システイン残基をCysとも記載する。また本明細書において、いずれのアミノ酸もD型、L型のいずれであってもよい。
本発明に係るペプチドは、Aspを含むジペプチドであり、具体的にはAsp-Gly、Asp-Ala、Asp-Ser、Asp-Thr、Asp-Asn、Asp-Gln、Asp-Asp、Asp-Glu、Asp-Lys、Asp-Arg、Asp-His、Asp-Val、Asp-Leu、Asp-Ile、Asp-Tyr、Asp-Phe、Asp-Trp、Asp-Pro、Asp-Met、Asp-Cys、Gly-Asp、Ala-Asp、Ser-Asp、Thr-Asp、Asn-Asp、Gln-Asp、Asp-Asp、Glu-Asp、Lys-Asp、Arg-Asp、His-Asp、Val-Asp、Leu-Asp、Ile-Asp、Tyr-Asp、Phe-Asp、Trp-Asp、Pro-Asp、Met-Asp、Cys-Aspが挙げられる。
本発明に係るペプチドは、ペプチドのC末端がAspであることが好ましく、ペプチドがGly-Asp又はThr-Aspであることがより好ましい。
本発明において、アミノ酸及びペプチドは、その塩の形態であってもよい。酸付加塩の例には、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、および過塩素酸塩などの無機塩、およびクエン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、およびトリフルオロ酢酸などの有機酸の塩が挙げられる。塩基性塩の例には、ナトリウム、カリウム、およびリチウムなどのアルカリ金属の塩;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩が挙げられる。塩基付加塩を作製するのに使用できる例示的塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属の塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化カルシウムが挙げられる。
本発明において、本発明に係るペプチドは脳機能の低下の予防等、及び/又はアミロイドβ凝集体の蓄積抑制に対する有効量が含まれることが好ましい。
また本発明に係るペプチドの組成物中の濃度は特に限定されないが、10μM以上であることが好ましく、100μM以上であることがより好ましく、1mM以上であることがさらに好ましく、また、1M以下であることが好ましく、100mM以下であることがより好ましく、50mM以下であることがさらに好ましい。効能及び経口摂取のし易さの点から、好ましくは100μM~100mM、より好ましくは1mM~50mM、さらに好ましくは5mM~20mMである。
本発明において、アスパラギン酸は脳機能の低下の予防等、及び/又はアミロイドβ凝集体の蓄積抑制に対する有効量が含まれることが好ましい。
またアスパラギン酸の組成物中の濃度は特に限定されないが、10μM以上であることが好ましく、100μM以上であることがより好ましく、1mM以上であることがさらに好ましく、また、1M以下であることが好ましく、100mM以下であることがより好ましく、50mM以下であることがさらに好ましい。効能及び経口摂取のし易さの点から、好ましくは100μM~100mM、より好ましくは1mM~50mM、さらに好ましくは5mM~20mMである。
本発明において、メチオニンは脳機能の低下の予防等、及び/又はアミロイドβ凝集体の蓄積抑制に対する有効量が含まれることが好ましい。
またメチオニンの組成物中の濃度は特に限定されないが、10μM以上であることが好ましく、100μM以上であることがより好ましく、1mM以上であることがさらに好ましく、また、1M以下であることが好ましく、100mM以下であることがより好ましく、50mM以下であることがさらに好ましい。効能及び経口摂取のし易さの点から、好ましくは100μM~100mM、より好ましくは1mM~50mM、さらに好ましくは5mM~20mMである。
本発明の組成物は、さらに直鎖飽和脂肪酸を含むことができる。
本発明において、直鎖飽和脂肪酸は脳機能の低下の予防等、及び/又はアミロイドβ凝集体の蓄積抑制に対する有効量が含まれることが好ましい。
また直鎖飽和脂肪酸の組成物中の濃度は特に限定されないが、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、また、90質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。効能及び経口摂取のし易さの点から、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%、さらに好ましくは0.5~1質量%である。
直鎖飽和脂肪酸は、炭素数が10~20の直鎖飽和脂肪酸であることが好ましく、炭素数が13~20であることがより好ましく、炭素数が16~20であることがさらに好ましく、炭素数が16、すなわちパルミチン酸であることが最も好ましい。
ここで、後述する実施例の通り、メチオニン及びパルミチン酸の混合物、並びに、アスパラギン酸及びパルミチン酸の混合物は、アミロイドβ凝集体をより細分化することができる。
すなわち、本発明の好ましい形態では、本発明は、メチオニン及びパルミチン酸を有効成分として含む、アミロイドβ凝集体の細分化のための組成物として用いることができる。
また、メチオニン、パルミチン酸、及びこれらの混合物、並びに、ジペプチドのGly-Asp及びThr-Aspは、実施例に記載の通り、アミロイドβモノマーの凝集を抑制する効果を有する。
すなわち、本発明の好ましい形態では、本発明は、メチオニン及び/又はパルミチン酸を有効成分として含む、アミロイドβモノマーの凝集抑制のための組成物として用いることができ、より好ましくは、メチオニン及びパルミチン酸を有効成分として含む、アミロイドβモノマーの凝集抑制のための組成物として用いることができる。
また、本発明の好ましい形態では、本発明は、Gly-Asp及び/又はThr-Aspを有効成分として含む、アミロイドβモノマーの凝集抑制のための組成物として用いることができる。
本発明の組成物について、製品形態は特に限定されないが、後述する医薬組成物、飲食品等の形態が好ましい。
〈投与対象〉
本発明の組成物の投与の対象は、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減が必要な対象である。また、より具体的には、アミロイドβの凝集、蓄積が生じている、又は生じる可能性のある対象である。
前記対象は、通常ヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ等のペット動物、ウシ、ヒツジ、ブタ等の家畜に投与することも可能である。以下では、対象がヒトである場合について説明する。
本発明の組成物は、具体的には、例えば、認知症、うつ病、統合失調症、せん妄、健忘症、判断力・思考力の低下、認知能力の低下、知的障害等の症状の予防、治療、又は軽減に用いることができる。
本発明の組成物は、これらの中でも特に、認知症に起因する症状又は疾患の予防、治療、又は軽減に用いられることが好ましい。
また、認知症としては、一般的に、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管型認知症等が知られている。本発明の組成物は、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症及び脳血管型認知症からなる群から選択される一又は複数の脳機能の低下に起因する症状又は疾患の予防、治療、又は軽減に用いられることがより好ましい。
ここで、一般的に、アルツハイマー型認知症の患者においては、脳萎縮(大脳皮質・海馬の萎縮、及び脳室の拡大)が見られ、さらに、大脳皮質には老人斑と呼ばれる病理学的所見が見られる。この老人斑の主要な構成成分はAβであることが知られている。
アルツハイマー型認知症の原因は完全には明らかになってはいないが、このAβが脳内に凝集・蓄積して老人班となる過程で神経毒性を生じ、神経原線維を変性させ、最終的には神経細胞死に至ることが主要因であると想定されている。
後述する実施例の結果を踏まえると、本発明の組成物は、上述した認知症の中でも特に、アルツハイマー型認知症に対して有用であると考えられる。
本発明の組成物の投与対象には、認知症を発症していない対象も含まれる。
前記認知症を発症していない対象は、以下の(1)~(4)のいずれかの対象が好ましい。
(1)認知症を発症していないが、加齢に伴う脳の認知機能の低下が気になる対象。
(2)認知症を発症していないが、加齢に伴う複合的な認知機能の低下が気になる対象。
(3)健常者からなる群、軽度認知障害者からなる群並びに健常者及び軽度認知障害者からなる群から選択される対象。
(4)MMSEスコアが22以上であり、かつ、RBANS合計スコアが65以下又はあたまの健康チェックのスコアが75以下である対象。なお前記RBANS合計スコアは、41以下が好ましい。前記あたまの健康チェックのスコアは50.2以下が好ましい。
ここで、MMSEスコアは、MMSE(Mini Mental State Examination;ミニメンタルステート検査)によって算出されるスコアである。MMSEは、臨床および研究において国際的に広く用いられている認知機能障害のスクリーニング法である。見当識、言語性記憶、全般性注意・計算、言語、図形模写に関する検査で、30点満点である。MMSEスコアが低いほど認知機能低下が進んでいることを示す。
RBANSスコアは、RBANS(Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status;アーバンス)によって算出されるスコアである。RBANSは、1998年にRandolphにより開発され、全米で標準化された神経心理学検査で、即時記憶、遅延記憶、視空間・構成、言語、注意の5つの認知領域を評価する。12個の試験から構成されており、各試験の粗点から年齢等を加味した換算表により各認知領域の評価点を算出する(レジリオ株式会社より提供)。RBANSスコアが低いほど認知機能低下が進んでいることを示す。
あたまの健康チェック(JMCIS)(登録商標)は、健常者~境界域~MCI領域の微細な認知機能の変化を10分程度の対話式チェックで簡易に高い精度で定量表現することが出来る検査である。対象者の性別、年齢、学習年数、人種などの情報を基に、独自のアルゴリズムとデータベースを用いて認知機能指数を算出する(株式会社ミレニアより提供)。あたまの健康チェックにより評価、算出される個人の認知機能を客観的に示す指数であるMPI(Memory Performance Index:認知機能指数)スコア(以下「MPIスコア」又は「あたまの健康チェックのスコア」という。)が低いほど認知機能低下が進んでいることを示す。
本発明において、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減は、本発明の組成物の投与の前後で、MMSEスコア、RBANS合計スコア及びあたまの健康チェックのスコアのうち1つ以上に有意なスコア減少が認められないこと、もしくはMMSEスコア、RBANS合計スコア及びあたまの健康チェックのスコアのうち1つ以上にスコア増加が認められることにより、判別することができる。
本発明の組成物による、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減の効果は、マウス又はウサギ若しくはサルモデルのような動物モデルに基づいて評価することもできる。
〈摂取(投与)時期、量、頻度、経路〉
本発明の組成物の摂取(投与)時期は、特に限定されず、投与対象の状態に応じて適宜選択することが可能である。
本発明の組成物の摂取(投与)量は、摂取(投与)対象の年齢、性別、状態、その他の条件等により適宜選択される。
本発明の組成物の摂取(投与)量は、本発明に係るペプチドの摂取量として、例えば、成人において0.1mg/日以上であることが好ましく、1mg/日以上であることがより好ましく、また、1000mg/日以下であることが好ましく、100mg/日以下であることがより好ましい。具体的には、0.1~1000mg/日であることが好ましい。
本発明の組成物の摂取(投与)量は、アスパラギン酸の摂取量として、例えば、成人において0.1mg/日以上であることが好ましく、1mg/日以上であることがより好ましく、また、1000mg/日以下であることが好ましく、100mg/日以下であることがより好ましい。具体的には、0.1~1000mg/日であることが好ましい。
本発明の組成物の摂取(投与)量は、メチオニンの摂取量として、例えば、成人において0.1mg/日以上であることが好ましく、1mg/日以上であることがより好ましく、また、1000mg/日以下であることが好ましく、100mg/日以下であることがより好ましい。具体的には、0.1~1000mg/日であることが好ましい。
本発明の組成物の摂取(投与)量は、直鎖飽和脂肪酸の摂取量として、例えば、成人において0.1mg/日以上であることが好ましく、1mg/日以上であることがより好ましく、また、1000mg/日以下であることが好ましく、100mg/日以下であることがより好ましい。具体的には、0.1~1000mg/日であることが好ましい。
なお、摂取(投与)の量や期間にかかわらず、本発明の組成物は1日1回又は複数回に分けて投与することができる。
本発明の組成物の摂取(投与)頻度および期間は、特に限定されない。単回投与でもよいが、1週間に1回以上投与されることが好ましく、3日に1回以上投与されることがより好ましく、2日に1回以上投与されることがさらに好ましく、毎日継続して投与されることが最も好ましい。好ましくは4週間以上、より好ましくは12週間以上、更に好ましくは24週間以上とすると、効果が得られやすい。また、摂取(投与)期間の上限は特に設けられず、継続的な長期の摂取(投与)が可能である。
本発明の組成物の摂取(投与)経路は、例えば、経口投与、経管投与(経鼻、胃瘻、腸瘻等)、腹腔内投与、筋肉内投与、経粘膜投与、鼻腔内投与、直腸内投与等が挙げられるが、特に、経口投与が好ましい。
〈ペプチドの取得方法〉
本発明に係るペプチドは、例えば、(1)当該アミノ酸配列を含むタンパク質やペプチドを加水分解酵素等にて分解し、得られた分解物から分離精製して得る方法、(2)ペプチドの合成法によって本発明に係るペプチドを合成した後、得られた粗合成物から所望の本発明に係るペプチドを分離精製して得る方法、(3)本発明に係るペプチドを生産する植物、動物又は微生物から抽出し、得られた抽出物から分離精製する方法等により得ることができる。
以下に(1)、(2)及び(3)の方法について具体的に説明する。
(1)加水分解により得る方法
本発明に係るペプチドは、当該アミノ酸配列を含むタンパク質やペプチドをタンパク質加水分解酵素や、酸・アルカリ等により加水分解し、得られた加水分解物から本発明に係るペプチドを分離精製して得ることができる。原料となるタンパク質やペプチドは、当該アミノ酸配列を含むものであれば特に制限されない。具体的なタンパク質としては、乳、大豆、卵、小麦、大麦、オーツ麦、米、じゃが芋、さつま芋、えんどう豆、トウモロコシ、畜肉、魚肉、魚介などに由来するタンパク質などが挙げられる。
タンパク質やペプチドの加水分解処理として、例えば酵素処理、酸処理、アルカリ処理、熱処理等が挙げられ、これらの2種以上の処理を適宜組み合わせてもよい。
酵素処理には、植物由来、動物由来、微生物由来等のタンパク質分解酵素を使用でき、これらから1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。当該タンパク質分解酵素として、例えばエンドプロテアーゼが挙げられる。
前記エンドプロテア-ゼとしては、例えば、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼが挙げられ、これらを1種又は2種以上選択して用いることができる。
前記タンパク質分解酵素は、市販品を用いることができる。前記タンパク質分解酵素として、例えば、ビオプラーゼ(ナガセケムテックス社製)、プロレザー(天野エンザイム社製)、プロテアーゼS(天野エンザイム社製)、PTN6.0S(ノボザイムズ社製)、サビナーゼ(ノボザイムズ社製)、GODO B.A.P(合同酒精社製)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)、GODO B.N.P(合同酒精社製)、ニュートラーゼ(ノボザイムズ社製)、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製)、トリプシン(ノボザイムズ社製)、キモトリプシン(ノボザイムズ社製)、スブチリシン(ノボザイムズ社製)、パパイン(天野エンザイム社製)、ブロメライン(天野エンザイム社製)等が挙げられ、これらから1種又は2種以上の酵素を選択して用いてもよい。
なお、本発明において、対象のペプチド含有量は、下記の方法にて測定できる。
(a)試料粉末を、1.0mg/mLとなるように、0.2%ギ酸水溶液に希釈溶解し、10分間超音波破砕したのち、0.22μm口径のPVDFフィルター(Millipore社製)でろ過して粉末溶液を調製し、下記測定条件によるLC/MS分析を実施する。一方、測定対象のペプチドの化学合成標準ペプチド(ペプチド研究所社製)の溶解液を濃度別に数点調製し、下記測定条件によるLC/MS分析を実施し、検量線を作成する。
前記粉末溶液の分析におけるピークのうち、標準ペプチドと分子量及びリテンションタイムが一致するものを、標準ペプチドと同一の配列として同定する。標準ペプチドのピーク面積と資料粉末のピーク面積を対比することにより、前記粉末溶液中に対象ペプチドの含有量を求める。
(b)対象ペプチド含有量(mg/加水分解物1g)
対象ペプチド含有量(mg/加水分解物1g)=〔得られた加水分解物中の対象ペプチド測定値(mg)〕/〔得られた加水分解物の質量(g)〕
〔得られた加水分解物中の対象ペプチド測定値(mg)〕は、下記「LC/MS」による、試料中の対象ペプチドの測定値である。
(c)LC/MS使用機器
質量分析計:TSQ Quantum Discovery MAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)。
高速液体クロマトグラフ:Prominence (島津製作所社製)、カラム:XBridge BEH300 C18 φ2.1 mm×250 mm,3.5 μm(Waters社製)。
(d)LC/MS測定条件
移動相A:0.2重量% ギ酸-水溶液
移動相B:0.2重量% ギ酸-アセトニトリル溶液
タイムプログラム:2%B(0.0分)-25%B(5.0分)-65%B(5.1分)-65%B(10分)-85%B(10.1分)-85%B(13.0%)-2%B(13.1分)-STOP(30.0分)。
試料注入量:10μL、カラム温度:40℃、液体流量:200μL/min
分析モード:SRM測定。
Product Mass:m/z=260.10(Parent m/z = 375.21)
得られた加水分解物は、未精製のままの状態で使用しても効能を発揮することが可能である。すなわち、加水分解物を後述の医薬組成物や飲食品組成物の態様として、摂取や投与に供してもよい。
また、得られたタンパク質加水分解物に対して、適宜公知の分離精製を行ってもよい。例えば、得られたタンパク質加水分解物に対して分子量分画を行い、本発明に係るペプチドの分子量に該当する分画を含むタンパク質分解物を得ることができる。
分子量分画として、例えば、限外ろ過、ゲルろ過等の方法が採用でき、これにより不要な分子量のペプチドや遊離アミノ酸の除去率を高めることができる。
限外ろ過の場合には、所望の限外ろ過膜を使用すればよく、ゲルろ過の場合には、所望のサイズ排除クロマトグラフィーに用いるゲルろ過剤を使用すればよい。
さらに、脱塩や不純物を除去したり、純度を高めたりするために、公知の分離精製方法例えば、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー、溶媒沈殿、塩析、2種の液相間での分配等の方法を用いてもよい。
分離精製したペプチドの分画物は、本発明に係るペプチドが含まれているかどうかを確認することを目的として、前記の質量分析法によりペプチドの同定を行うことができる。
このようにして得られた本発明に係るペプチドは、ペプチド溶液のまま使用することもでき、また、必要に応じて、該溶液を公知の方法により、濃縮した濃縮液として使用することもできる。また、該濃縮液を公知の方法により乾燥し、粉末にして使用することもできる。
(2)合成により得る方法
本発明に係るペプチドは、化学合成又は生合成によっても製造することができる。
ペプチドの化学合成は、ペプチドの合成に通常用いられている液相法または固相法によって行うことができる。合成されたペプチドは必要に応じて脱保護され、未反応試薬や副生物等を除去して、本発明に係るペプチドを単離することが可能である。このようなペプチドの合成は、市販のペプチド合成装置を用いて行うことができる。
ペプチドの生合成は、宿主生物にペプチド発現ベクターを導入して生成・分泌させるといった常法により行うことができる。
目的とするペプチドが得られたことは、「(1)加水分解により得る方法」に記載した方法と同様にして確認することができる。
(3)植物、動物又は微生物から抽出、分離精製する方法
本発明に係るペプチドは、本発明に係るペプチドを生産する植物、動物、微生物又は微生物の培養上清から抽出し、得られた抽出物から分離精製する方法等により得ることができる。
上記微生物としては、例えばビフィドバクテリウム、ラクトバチルス、ラクトコッカス、エンテロコッカス、ストレプトコッカス、大腸菌、酵母などが挙げられる。
上記分離精製物を回収後、「(1)加水分解により得る方法」に記載した方法と同様にして、目的とするペプチドが得られたことを確認することができる。
〈医薬組成物〉
本発明の組成物は、医薬組成物であってよい。医薬組成物の形態としては、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。
製剤化に際しては、本発明に係る有効成分であるペプチド・アミノ酸の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、他の薬効成分や、公知の又は将来的に見出される、アミロイドβ凝集体の蓄積を抑制する効果のある成分等、脳機能の低下を予防、治療、又は軽減し得る成分等の他の医薬を併用することも可能である。
また、本発明の効果を妨げない限りにおいて、他のアミノ酸やペプチドが併存してもかまわない。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、通常製剤化に用いる担体を配合して製剤化してもよい。かかる担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤等が挙げられる。
本発明の医薬組成物を摂取するタイミングは、例えば食前、食後、食間、就寝前など特に限定されないが食前が好ましい。
また、本発明に係るペプチド、アスパラギン酸、メチオニン、直鎖飽和脂肪酸は、これら医薬組成物の製造のために使用可能である。
〈飲食品用組成物〉
本発明の組成物は、飲食品用組成物であってよい。飲食品用組成物としては、本発明の効果を損なわず、経口摂取できるものであれば形態や性状は特に制限されず、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
飲食品用組成物としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、例えば、錠菓;流動食(経管摂取用栄養食);パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
また、飲食品用組成物の一態様として飼料とすることもできる。飼料としては、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
飼料の形態としては特に制限されず、本発明に係るペプチド、アミノ酸等の他に例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を含有するものであってよい。
本発明の組成物が飲食品用組成物(飼料を含む)の態様である場合、脳機能低下予防、記憶力低下予防等の用途が表示された飲食品用組成物として提供・販売されることが可能である。また、本発明に係るペプチド、アスパラギン酸、メチオニン、直鎖飽和脂肪酸は、これら飲食品用組成物等の製造のために使用可能である。
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明における「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一年内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、「記憶力の低下が気になる方へ」「認知機能を向上させたい方へ」「認知機能が気になる方へ」「将来アルツハイマー型認知症になるのを予防したい方へ」「認知の精度を高めたい方へ」「数・言葉・図形・状況等の情報をサポートしたい方へ」「認知機能の一部である記憶の精度や判断の正確さを向上させたい方へ」「記憶力を維持したい方へ」「健常な中高年の方で認知機能の維持をサポートしたい方へ」「もの忘れや軽度認知障害(MCI)が気になる方へ」「もの忘れが気になる中高年の方へ」、「軽度認知障害(MCI)が気になる中高年の方へ」等と表示することが挙げられる。
本発明の別の側面は、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減に用いるための、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分である。
また、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制に用いるための、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分でもある。
本発明の別の側面は、脳機能の低下を予防、治療、又は軽減させるための、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分の使用である。
また、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分の使用でもある。
本発明の別の側面は、脳機能の低下を予防、治療、又は軽減させるための有効成分としての、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分の使用である。
また、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための有効成分としての、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分の使用でもある。
本発明の別の側面は、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分を、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減が必要な対象に投与することを含む、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減のための方法である。
また、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分を、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制が必要な対象に投与することを含む、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制方法でもある。
本発明の別の側面は、脳機能の低下を予防、治療又は軽減させるための組成物の製造における、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分の使用である。
また、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための組成物の製造における、アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分の使用でもある。
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な一例を示したものにすぎず、本発明はこれにより限定されるものではない。
<試験例1:可溶化Aβ凝集体に対するアミノ酸とパルミチン酸の細分化効果>
(1)可溶化Aβ凝集体の作製
Aβ42(株式会社ペプチド研究所)500μgをマイクロチューブに入れ、1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-propanol 200μLで溶解させたのち、4℃で16時間静置した。その後、37℃で3時間静置後、凍結乾燥を行った。この溶解と凍結乾燥を2度行うことで可溶化Aβ42凝集体を作製し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えて-80℃で保存した。
(2)Aβ42凝集体細分化効果の評価
(1)で作製した可溶化Aβ42凝集体に、パルミチン酸を0.033w/v%、アミノ酸(イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、トリプトファン、メチオニン、アラニン、グリシン、システイン、チロシン、プロリン、スレオニン、セリン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、リジン又はアルギニン)を10mM又は20mM添加した。なお、チロシン(図1のY*)は溶解度が低いため、2mM溶液を使用した。
次いで、Aβ42凝集体に対するモノクローナル抗体(抗体83-3)を用いた酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって、Aβ42凝集体の細分化効果を評価した。
ここで、文献(Shimizu et al., Global J. Res. Anal., 4: 117-119 (2015))のFig.3に示されている通り、上記抗体83-3は、主に0.22μm以下300kDa以上の大きさの非晶質Aβ42凝集体と反応する。すなわち、上記抗体83-3を用いれば、細分化されたAβを検出可能となる。そして、抗体83-3にて検出されたAβの量が多いほど、Aβ凝集体が細分化されているといえる。
図1は、アミノ酸を添加しないAβ凝集体(パルミチン酸のみ含む)でのELISA値を1(基準)とし、各種アミノ酸を添加した場合におけるELISA値の比を示す。また、図1において、アミノ酸は一文字表記で示した。
評価の結果、メチオニンとパルミチン酸の混合液、及びアスパラギン酸とパルミチン酸の混合液を添加した場合に、基準に対するELISA値が高いことが明らかとなった。また、アミノ酸としてメチオニン、アスパラギン酸を添加した場合、アミノ酸の濃度が高いほどELISA値が高くなる傾向があった。
以上より、メチオニンとパルミチン酸の混合液、及び、アスパラギン酸とパルミチン酸の混合液の存在下では、Aβ凝集体がより細分化されることが明らかとなった。
以上の結果から、メチオニン及びパルミチン酸、又は、アスパラギン酸及びパルミチン酸を有効成分として含む組成物は、Aβ凝集体を細分化する用途で用いることができることが明らかとなった。さらに、上述の通り、Aβ凝集体を細分化しAβ凝集体の蓄積を抑制することでアルツハイマー型認知症の予防、治療、又は低減が可能であることから、メチオニン及びパルミチン酸、又は、アスパラギン酸及びパルミチン酸を有効成分として含む組成物は、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減の用途で用いることができるといえる。
<試験例2:Aβモノマーに対するメチオニン及びパルミチン酸の凝集抑制効果>
Aβモノマーとして、26-O-acyl isoAβ1-42 (isoAβ42、株式会社ペプチド研究所)を用いた。このisoAβ42は有機溶媒中や酸性条件でモノマーの状態であるが、中性の水溶液中において半減期約1分でAβ42となり、直ちに凝集を開始する。
初めに、ジメチルスルホキシドに溶解した10μMのisoAβ42に対して、評価物質として1mMのメチオニン及び/又は0.033w/v%のパルミチン酸を添加し、37℃で24時間放置した。コントロールは、isoAβ42のみを反応させた。
その後、原子間力顕微鏡(日本分光株式会社)に付属の解析ソフトを用いて、Aβ凝集体の平均直径を測定し、凝集体の形成度を評価した。結果を表1に示す。
評価物質を添加していないコントロール条件と比べて、メチオニン、パルミチン酸、およびその混合液の存在下ではAβモノマーから形成される凝集体の平均直径が小さくなった。すなわち、メチオニン、パルミチン酸、およびその混合液は大きなAβ凝集体の形成を抑制する効果が認められた。
以上より、メチオニン、パルミチン酸、又はこれらの混合物を有効成分として含む組成物は、Aβモノマー凝集抑制の用途で用いることができることが明らかとなった。さらに、上述の通り、Aβ凝集体の蓄積を抑制することでアルツハイマー型認知症の予防、治療、又は低減が可能であることから、メチオニン、パルミチン酸、又はこれらの混合物を有効成分として含む組成物は、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減の用途で用いることができるといえる。
<試験例3:Aβモノマーに対するジペプチドの凝集抑制効果>
下記表2に記載の6種類のジペプチド(Glu-Glu,Gly-Asp,Gly-Gly,Ser-Glu,Thr-Asp,Tyr-Glu)及び、過去にAβの凝集抑制効果が報告されている2種類のジペプチド(Trp-Met,Trp-Tyr)の合成ペプチド(アズワン株式会社製)を使用した。これらのジペプチド1mMの添加によるAβモノマーの凝集抑制効果を、試験例2と同様にして評価した。結果を表2に示す。
この結果、評価物質を添加していないコントロール条件と比べて、1mM Gly-Asp又は1mM Thr-Asp存在下では形成されるAβ凝集体が特に小さくなったことから、この2つのジペプチドがAβモノマーの凝集を抑制する効果が高いことが示された(表2)。また、過去にAβの凝集抑制効果が報告されている2種類のジペプチド(Trp-Met,Trp-Tyr)を添加した場合と比して、Gly-Asp又はThr-Aspを添加した方が、平均直径が小さくなることが明らかとなった。
また、ジペプチドGly-Asp及びThr-AspはAspを含む点で共通しており、本試験例で評価した他のジペプチドはAspを含んでいない。すなわち、Aspを含むジペプチドが、Aβモノマーの凝集を抑制する効果が高いことが示唆された。
以上より、Aspを含むジペプチドを有効成分として含む組成物は、Aβモノマー凝集抑制の用途で用いることができることが明らかとなった。さらに、上述の通り、Aβ凝集体の蓄積を抑制することでアルツハイマー型認知症の予防、治療、又は低減が可能であることから、Aspを含むジペプチドを有効成分として含む組成物は、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減の用途で用いることができるといえる。
本発明によれば、特にアミロイドβ凝集体の蓄積の予防による、脳機能低下の予防、治療、改善用の新たな組成物を提供することができる。

Claims (11)

  1. アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分を有効成分として含む、脳機能の低下の予防、治療、又は軽減に用いるための、組成物。
  2. アスパラギン酸を含むジペプチド、アスパラギン酸、及びメチオニンからなる群より選択される一種又は二種以上の成分を有効成分として含む、アミロイドβ凝集体の蓄積抑制のための組成物。
  3. 前記ジペプチドが、Gly-Asp又はThr-Aspである、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 直鎖飽和脂肪酸をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  5. 前記直鎖飽和脂肪酸がパルミチン酸である、請求項4に記載の組成物。
  6. 前記脳機能の低下が、認知症によるものである、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記認知症がアルツハイマー型認知症である、請求項6に記載の組成物。
  8. アミロイドβモノマーの凝集抑制、及び/又はアミロイドβ凝集体の細分化のための、請求項1、2、6、7の何れか一項に記載の組成物。
  9. 認知症を発症していない対象に投与するための、請求項1又は2に記載の組成物。
  10. 医薬組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
  11. 飲食品用組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。

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