JP2024026989A - 液晶性樹脂組成物、これを用いた金属-液晶性樹脂複合体およびその製造方法 - Google Patents

液晶性樹脂組成物、これを用いた金属-液晶性樹脂複合体およびその製造方法 Download PDF

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康之 竹田
Yasuyuki Takeda
祐政 鄭
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Abstract

【課題】本発明は、金属部材との接合強度に優れた液晶性樹脂組成物と、これを用いた金属-液晶性樹脂複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の液晶性樹脂組成物は、インサート成形に用いられる液晶性樹脂組成物であって、前記液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂と、無機充填材と、を含み、前記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)における損失係数は、0.20以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、液晶性樹脂組成物、これを用いた金属-液晶性樹脂複合体およびその製造方法に関する。
芳香族ポリエステル樹脂や芳香族ポリエステルアミド樹脂に代表される液晶性樹脂は、機械的性質、熱的性質、および成形加工性に優れたエンジニアリングプラスチックとして各種用途に広く使用されており、特に、良流動性を必要とするコネクター等の電気・電子部品に好適に用いられている。
また、近年の機器の小型化や軽量化に伴い、機械部品、電気・電子部品等は薄肉化や形状の複雑化が進んでいる。そのため、機械部品、電気・電子部品等は、金属と液晶性樹脂組成物との複合成形品として製造されることが多くなっている。
一方、上述の部品等に使用される液晶性樹脂組成物は融点が高く、固化速度が速い。そのため、射出成形により金属と一体的に成形されるインサート成形品では、金属の熱伝導度が高いため液晶性樹脂組成物の固化が早く進み、液晶性樹脂組成物と金属部材との接合面で十分な密着性が得られない場合がある。そのため、金属部品と液晶性樹脂組成物との高い密着性が求められている。
たとえば、特許文献1では、金属との良好な密着性を得るために、主鎖構成化合物成分として少なくとも芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、ジオール成分および特定の燐化合物を含有する液晶ポリエステルが提案されている。
特開2005-255914号公報
しかし、特許文献1に記載の液晶ポリエステルは、固化速度が速いため、金属部材と接合する前に固化してしまい、金属部材と液晶ポリエステルとの接合面において十分な接合強度を得ることが困難であった。また、液晶ポリエステルは融点が高いため押出や成形において、含有する燐化合物により液晶ポリエステルの分解が生じたり、押出機や成形機等のスクリューやバレル、金型等の金属部分の腐食が生じてしまうことがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、金属部材との接合強度に優れた液晶性樹脂組成物と、これを用いた金属-液晶性樹脂複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の液晶性樹脂組成物および表面処理を施した金属部材により、上記課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成させた。具体的には、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1] 金属-液晶性樹脂複合体の製造に用いられる液晶性樹脂組成物であって、
前記液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂と、無機充填材と、を含み、
前記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)における損失係数は、0.20以上である、
液晶性樹脂組成物。
[2] 前記液晶性樹脂は、下記構成単位(I)~(VI)から選択される2つ以上の構成単位を含み、
構成単位(I)の含有量は、全構成単位に対して30モル%以上80モル%以下であり、
構成単位(II)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上70モル%未満であり、
構成単位(III)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であり、
構成単位(IV)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上20モル%未満であり、
構成単位(V)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であり、
構成単位(VI)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であり、
構成単位(I)~(VI)の合計の含有量は、全構成単位に対して100モル%である、
前記[1]に記載の液晶性樹脂組成物。
Figure 2024026989000002
[3] 金属部材と、液晶性樹脂組成物とを有する金属-液晶性樹脂複合体であって、
前記金属-液晶性樹脂複合体は、前記金属部材と、前記液晶性樹脂組成物とが接合する接合面を有し、
前記液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂と、無機充填材と、を含み、
前記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)における損失係数は、0.20以上であり、
前記金属部材側の接合面は、表面処理が施されている、金属-液晶性樹脂複合体。
[4] 金属部材を準備する工程と、
液晶性樹脂組成物を準備する工程と、
前記金属部材に前記液晶性樹脂組成物を射出成形し、前記金属部材と前記液晶性樹脂組成物とが接合した、金属-液晶性樹脂複合体を成形する工程と、を有し、
前記液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂と、無機充填材と、を含み、
前記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)における損失係数は、0.20以上であり、
前記金属部材は、表面処理が施されている、金属-液晶性樹脂複合体の製造方法。
[5] 前記表面処理は、化学的表面処理または物理的表面処理である、前記[4]に記載の金属-液晶性樹脂複合体の製造方法。
本発明によれば、金属部材との接合強度に優れた液晶性樹脂組成物と、これを用いた金属-液晶性樹脂複合体およびその製造方法を提供することができる。
図1aは、本発明の金属-液晶性樹脂複合体の接合強度を測定するための試験片の平面図である。図1bは本発明の金属-液晶性樹脂複合体の接合強度を測定するための試験片の側面図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
1.金属-液晶性樹脂複合体
本発明の金属-液晶性樹脂複合体は、金属部材および液晶性樹脂組成物を構成成分として含む。以下、各成分について説明する。
[金属部材]
本発明で使用する金属部材の種類は、特に限定されないが、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄、亜鉛、およびニッケル等から選択されることが好ましい。これらの中では、液晶性樹脂との線膨張係数の差の観点から、銅合金、アルミニウムが好ましい。
また、本発明の金属部材は、後述する液晶性樹脂組成物と接合する接合面を有する。上記接合面は、液晶性樹脂組成物との接合強度の観点から、化学的表面処理または物理的表面処理による表面処理が施されている。
(化学的表面処理)
本発明における、「化学的表面処理」とは、金属部材の表面(液晶性樹脂組成物との接合面)に、液晶性樹脂組成物と共有結合、水素結合または分子間力等の化学結合を生じさせる表面処理方法のことである。
化学的表面処理の例には、ケミカルエッチング処理(表面の粗化処理)、コロナ処理、プラズマ処理等による表面改質処理(表面に対する親水性の付与)、腐食抑制剤と塩酸や硫酸等の酸性水溶液との混合溶液による表面への薄膜形成処理、または特開2000-218935号公報に開示されているトリアジンチオール化合物による表面への薄膜形成等が含まれる。また、金属部材がアルミニウムである場合の化学的処理の例には、特開平8-142110号公報に開示されている温水処理による表面への水和酸化物形成等が含まれる。化学的表面処理は、1つの方法のみを使用してもよいし、2以上の方法を組み合わせて使用してもよい。
(物理的表面処理)
本発明における、「物理的表面処理」とは、物理的な手法で、金属部材の表面(液晶性樹脂組成物との接合面側)に微細な凹凸を形成させる表面処理方法のことである。
物理的表面処理の例には、レーザー照射、サンドブラスト、ショットブラスト、タンブリング、およびウェットブラスト等が含まれる。物理的表面処理は、1つの方法のみを使用してもよいし、2以上の方法を組み合わせて使用してもよい。
表面処理後の金属部材の表面(接合面)の凹凸は、JIS B 0601に準拠して測定した十点平均粗さ(Rz)において、0.5μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。十点平均粗さ(Rz)が0.5μm以上50μm以下であると、金属部材と液晶性樹脂との間に十分な接合強度が得られる表面粗さとすることができる。
[液晶性樹脂組成物]
本発明の液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂と、無機充填材と、を含む。また、上記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc:230~380℃)における損失係数は、0.20以上であり、0.20以上0.55以下が好ましく、0.21以上0.45以下がより好ましい。損失係数が0.20以上であると粘性が高いため、射出時のヘジテーションや圧損、固化による接合面での剥がれが生じにくく、高い接合強度を得ることができる。なお、液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)は、例えば、DSC(TAインスツルメント社製)を用いて求めることができる。また、損失係数は、例えば、RSAIII(Rheometric Scientific社製)を用いて求めることができる。
また、本発明の液晶性樹脂組成物の融点(Tm)は、230℃以上400℃以下であることが好ましく、240℃以上370℃以下であることがより好ましい。液晶性樹脂組成物の融点(Tm)は低い方が金属との接合強度は高くなる一方で、耐熱性が不十分となる。融点が230℃以上であれば、リフローハンダ付けを必要とする表面実装部品等に使用でき、400℃以下であれば、既存の成形機等を使用することができる。なお、融点(Tm)は、例えば、DSC(TAインスツルメント社製)を用いて求めることができる。
(液晶性樹脂)
本発明の液晶性樹脂は、金属部材の接合面に接合させる液晶性樹脂組成物を構成する成分である。液晶性樹脂の種類は、特に限定されないが、芳香族ポリエステルおよび芳香族ポリエステルアミドから選択された少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。また、液晶性樹脂は、芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルも含まれるものとする。
本発明に適用できる液晶性樹脂としての、芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドであることが特に好ましい。具体的には、上記液晶性樹脂は、下記(1)~(5)の樹脂を用いることができる。
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位からなるポリエステル;
(2)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、からなるポリエステル;
(3)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、およびそれらの誘導体の少なくとも1種または2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステル;
(4)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体の1種または2種以上に由来する繰り返し単位と、芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、およびそれらの誘導体の少なくとも1種または2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミドが含まれる。
上記液晶性樹脂を構成する化合物の具体例には、下記構成単位(I)を含むp-ヒドロキシ安息香酸、下記構成単位(II)を含む6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;下記構成単位(III)を含むテレフタル酸、下記構成単位(IV)を含むイソフタル酸、それ以外の構成単位を含む4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;下記構成単位(V)を含む4,4’-ジヒドロキシビフェニル、それ以外の構成単位を含む2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、ハイドロキノン、レゾルシン等の芳香族ジオール;下記構成単位(VI)を含むp-アミノフェノール、それ以外の構成単位を含むp-フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が含まれる。
Figure 2024026989000003
エステル形成能を有する上記化合物類は、そのままの形で重合に用いてもよく、また、重合の前段階で前駆体から上記エステル形成能を有する誘導体に変性されたものでもよい。
また、上記構成単位(I)の含有量は、全構成単位に対して30モル%以上80モル%以下であることが好ましく、35モル%以上70モル%以下であることが好ましい。
構成単位(II)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上70モル%未満であることが好ましく、3モル%以上60モル%以下であることが好ましい。
構成単位(III)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であることが好ましく、5モル%以上25モル%以下であることが好ましい。
構成単位(IV)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%未満であることが好ましく、5モル%以上25モル%以下であることが好ましい。
構成単位(V)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であることが好ましく、5モル%以上25モル%以下であることが好ましい。
構成単位(VI)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であることが好ましく、0モル%以上15モル%以下であることが好ましい。
構成単位(I)~(VI)の合計の含有量は、全構成単位に対して100モル%である。
ここで、上記構成単位(II)の含有量を0モル%以上とすると、液晶性樹脂組成物の耐熱性を向上させやすくなり、上記構成単位(II)の含有量を70モル%未満とすると、液晶性樹脂組成物の損失係数の低下を低減できる。
また、上記液晶性樹脂を構成する化合物の例には、下記一般式(VII)~(IX)で示される化合物が含まれる。これらの具体例には、一般式(VII)、(VIII)で表される化合物等の芳香族ジオール;下記一般式(IX)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸が含まれる。
Figure 2024026989000004
式(VII)中、Xは、アルキレン(炭素数C1~C4)、アルキリデン、-O-、-SO-、-SO-、-S-、および-CO-より選択される基である。
式(IX)中、Yは、-(CH-(n=1~4)および-O(CHO-(n=1~4)より選択される基である。
本発明に使用できる最も好ましい液晶性樹脂は、上述の構成単位(I)~(VI)から選択される2つ以上の構成単位を含むことが好ましい。
なお、上記液晶性樹脂は、上記構成成分のほかに、必要に応じて分子量調整剤を含んでいてもよい。
(液晶性樹脂の調製方法)
本発明の液晶性樹脂の調製は、上述の化合物(モノマー)または上述の化合物(モノマー)の混合物から直接重合法やエステル交換法等の公知の方法で行うことができる。公知の方法の例には溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、またはこれらの2種以上の組み合わせが含まれる。上記方法の中では、溶融重合法、または溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましい。
本発明の液晶性樹脂の調製(重合)方法においては、種々の触媒の使用が可能である。上記触媒の例には、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、N-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒が含まれる。
触媒の使用量は、一般にはモノマーの全質量に対して0.001~1質量%であることが好ましく、0.01~0.2質量%であることがより好ましい。これらの重合方法により製造されたポリマーはさらに必要があれば、減圧または不活性ガス中で加熱する固相重合法により分子量の増加を図ることができる。
上記方法で得られた液晶性樹脂の溶融粘度は、示差走査熱量計で測定される融点よりも10~30℃高い温度を有することが好ましく、剪断速度1000sec-1で測定した溶融粘度が3Pa・s以上200Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以上100Pa・s以下であることがより好ましく、5Pa・s以上50Pa/s以下であることが特に好ましい。液晶性樹脂の溶融粘度が、3Pa・s以上であると、成形時にバックフローやはなたれ問題が生じるのを抑制でき、200Pa・s以下であると、液晶性樹脂組成物を金属部材の微細な表面まで充填できる。溶融粘度は、例えば、キャピラリー式レオメーター キャピログラフ1D(株式会社東洋精機製作所製)を用いて測定することができる。なお、上記液晶性樹脂は2種以上の液晶性樹脂の混合物であってもよい。
[無機充填材]
本発明の無機充填材の例には、タルク、シリカ、マイカ、ガラス繊維、ウィスカ、およびウォラストナイト等が含まれる。無機充填材を含むことにより、液晶性樹脂組成物の耐熱性や機械特性を向上できるとともに、液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)での損失係数を調整することができる。たとえば、タルク、シリカ、マイカ等は損失係数を上昇させる傾向にあり、ガラス繊維、ウィスカ、ウォラストナイト等は損失係数を低下させる傾向にある。
<タルク>
本明細書において、「タルク」とは、含水珪酸マグネシウム(MgSi10(OH))を主成分とする鉱物のことを意味する。
本発明で使用できるタルクの質量基準または体積基準の累積平均粒子径(D50)は、4.0~20.0μmであることが好ましく、10.0~18.0μmであることがより好ましい。平均粒子径が4.0~20.0μmであると、液晶性樹脂組成物の流動性を維持することができるとともに、それを用いた成形品のそり変形も軽減できる。なお、上記平均粒子径(D50)は、レーザー回折法で測定することができる。
上記タルクは、市販品であってもよい。タルクの市販品の例には、クラウンタルクPP(松村産業株式会社製、「クラウンタルク」は同社の登録商標)、タルカンパウダーPKNN(林化成株式会社製)、LMS-100、LMS-200、LMS-300、LMS-3500、LMS-400、LMP-100、PKP-53、PKP-80、およびPKP-81(いずれも富士タルク工業株式会社製)、D-600、D-800、D-1000、P-2、P-3、P-4、P-6、P-8、およびSG-95(いずれも日本タルク株式会社製)等が含まれる。
<シリカ>
本明細書において、「シリカ」とは、二酸化ケイ素(SiO)、または二酸化ケイ素によって構成される物質の総称を意味する。また、本発明で使用できるシリカの例には、溶融シリカ、球状シリカ、無定形シリカ、結晶性シリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ等が含まれる。これらの中では、球状シリカが好ましい。
また、上記シリカの平均粒子径は、0.1~50nmが好ましく、1~20nmがより好ましい。シリカの平均粒子径が1~10μmであると、流動性や外観を損なわずに剛性を向上することができる。なお、シリカの平均粒子径は、動的光散乱法の粒度分布計を用いてキュムラント法により測定することができる。
上記シリカは、市販品であってもよい。上記シリカの市販品の例には、アエロジルR-972、(日本エアロジル株式会社製、「アエロジル」は同社の登録商標)、アドマファイン SO-C2、SC2500-SQ、SC200G-SQ(株式会社アドマテックス製、「アドマファイン」は同社の登録商標)、X-24-9163A(信越化学工業株式会社製)等が含まれる。
<マイカ>
本明細書において、「マイカ」とは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物を意味する。本発明で使用できるマイカの例には、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等が含まれる。マイカを用いることにより、得られる液晶性樹脂組成物に低そり性を付与することができる。これらのうち、外観上の観点から、色相が良好である白雲母が好ましい。
上記マイカが顆粒状である場合には、マイカの平均粒子径は10~100μmであるものが好ましく、20~80μmであるものがより好ましい。マイカの平均粒子径が10μm以上であると、成形品に十分な剛性を付与できるとともに、十分なウェルド強度も付与できる。また、マイカの平均粒子径が100μm以下であると、本発明の金属-液晶性樹脂複合体を成形するのに十分な流動性を確保できる。なお、マイカの平均粒子径は、マイクロトラックレーザー回折法により測定することができる。
上記マイカが板状(層状)である場合には、マイカの厚さは、0.01~1μmであることが好ましく、0.03~0.3μmであることがより好ましい。マイカの厚さが0.01~1μmであると、液晶性樹脂組成物の溶融加工の際にマイカが割れにくくなるため、成形品の剛性を向上させやすい。ここで、マイカの厚さとは、マイカの幅方向(長軸)の中央部の上下方向(短軸)の高さ寸法のことをいう。なお、上記マイカの厚さは、電子顕微鏡の観察により実測した厚さである。
上述の平均粒子径または厚さを有するマイカが得られるという理由で、本発明においては薄く細かい粉砕されたマイカを使用することが好ましい。とくに、本発明においては、湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。また、上記マイカはシランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
上記マイカは、市販品であってもよい。上記マイカの市販品の例には、A-51S(平均アスペクト比85、体積平均粒径52μm)、SYA-31RS(平均アスペクト比90、体積平均粒径40μm)、SYA-21RS(平均アスペクト比90、体積平均粒径27μm)、SJ-005(平均アスペクト比30、体積平均粒径5μm)、AB-25S(アスペクト比80、平均粒子
径24μm)(いずれも株式会社ヤマグチマイカ製)等が含まれる。
<ガラス繊維>
本明細書において、「ガラス繊維」とは、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料を意味する。本発明で使用できるガラス繊維の例には、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、およびSガラス等が含まれる。これらの中では、線膨張係数および電気絶縁性の観点から、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
上記ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が1~25μmであることが好ましく、5~17μmであることがより好ましい。数平均繊維径を1~25μmとすることにより、液晶性樹脂組成物の成形加工性がより向上する。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本の単繊維を撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(数平均繊維長が1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(数平均繊維長が10~500μmのガラス繊維)等のいずれであってもよい。これらは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有していても良い。上記異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10の断面形状のことをいう。ガラス繊維が扁平であると、液晶性樹脂組成物に低そり性を付与ことができる。本発明においては、異形断面形状のガラス繊維を使用する場合の上記扁平率は、2.5~10であることが好ましく、2.5~8であることがより好ましく、2.5~5であることが特に好ましい。扁平率が2.5~10であると、流動性が向上するとともに、耐衝撃性も良好となる。
上記ガラス繊維は、市販品であってもよい。上記ガラス繊維の市販品の例には、CS3J-257、CSG3PA-830(いずれも日東紡績株式会社製)、ECS03T-786H(日本電気硝子株式会社製)等が含まれる。
なお、上記ガラス繊維は、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物等で表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
<ウィスカ>
本明細書において、「ウィスカ」とは、断面の直径が1μm程度以下の細長い結晶物(ひげ状結晶)の針状の無機充填材のことを意味する。ウィスカの例には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、アルミナ、チタン酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、およびマグネシウムオキシサルフェート等が含まれる。
特に、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等のホウ酸塩を用いると、これらは線膨脹率が非常に小さいために、液晶性樹脂組成物の線膨脹率を低減できるだけでなく、液晶性樹脂組成物の表層の強度が高まるので、液晶性樹脂組成物と金属部材との密着性を向上させることができる。
また、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩を用いた場合にも、ホウ酸塩と同様に、液晶性樹脂組成物と金属部材との密着性を向上させることができる。
上記ウィスカは、市販品であってもよい。上記ウィスカの市販品の例には、ティスモN102、ティスモD102、ティスモD102SG(大塚化学株式会社製)等が含まれる。
また、針状のウィスカを用いて、成形品を成形する際に、液晶性樹脂組成物の流れ方向に対して無機充填材(針状のウィスカ)が直行するように配向することで生じる異方性が、繊維長の長い繊維状の充填材等に比べて緩和される。これにより、成形品の液晶性樹脂組成物の流れ方向とそれに直交する方向における線膨張率や成形収縮率の差を小さくすることができる。
<ウォラストナイト>
本明細書において、「ウォラストナイト」とはケイ酸塩鉱物(CaO・SiO)を意味する。
本発明で使用するウォラストナイトの繊維径は0.1~10μmであることが好ましく、0.1~5μmであることがより好ましく、0.1~3μmであることが特に好ましい。また、そのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上30以下であることが好ましい。繊維径は、電子顕微鏡で強化フィラーを観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出することができる。
ウォラストナイトは、シランカップリング剤、高級脂肪酸エステル、およびワックス等の各種表面処理剤で表面処理されていてもよい。さらに各種樹脂、高級脂肪酸エステル、およびワックス等の集束剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
上記ウォラストナイトは、市販品であってもよい。上記ウォラストナイトの市販品の例には、NYAD-G、NYAD 400、NYAD 1250、NYGLOS 4W(いずれもImerys社(米国)製)等が含まれる。
なお、上述のガラス繊維およびウォラストナイトの繊維径は、例えば、動的画像解析法/粒子(状態)分析計「PITA-3」(株式会社セイシン企業製)、繊維状粒子計測システム「ルーゼックス」(株式会社ニレコ製、ルーゼックスは同社の登録商標)で測定することができる。
[その他の成分]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、その他の重合体、その他の充填剤、一般に合成樹脂に添加される公知の酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等のその他の成分も要求性能に応じ適宜添加することができる。その他の成分は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(液晶性樹脂組成物)
本発明の液晶性樹脂組成物は、上述の液晶性樹脂を、液晶性樹脂組成物の全質量に対して、60.0質量%以上90.0質量%以下含むことが好ましく、62.0質量%以上85.0質量%以下含むことがより好ましく、65.0質量%以上80.0質量%以下含むことがさらに好ましい。上記液晶性樹脂の含有量が、60.0質量%以上90.0質量%以下であると、流動性が良く、表面処理が施された金属部材の細部まで充填することができるとともに、形成された成形品の荷重たわみ温度や高温での曲げ弾性率を容易に好ましい範囲に調整することができる。
本発明の液晶性樹脂組成物は、上述の無機充填材を、液晶性樹脂組成物の全質量に対して、2質量%以上50質量%以下含むことが好ましく、5質量%以上40質量%以下含むことがより好ましい。上記無機充填材の含有量が、5質量%以上40質量%以下であると、流動性や外観を損なわず、耐熱性、機械特性を改善することができる。
また、本発明の液晶性樹脂組成物は、上述の無機充填材を、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
2.金属-液晶性樹脂複合体の製造方法
本発明の金属-液晶性樹脂複合体の製造方法は、
(1)金属部材を準備する工程と、
(2)液晶性樹脂組成物を準備する工程と、
(3)上記金属部材に上記液晶性樹脂組成物を射出成形し、上記金属部材と上記液晶性樹脂組成物とが接合した、金属-液晶性樹脂複合体を成形する工程と、を有する。
上記製造方法で製造される金属-液晶性樹脂複合体は、金属部材の、液晶性樹脂組成物と接合する接合面は、化学的または物理的表面処理が施されており、上記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)における損失係数は、0.20以上である。
(工程(1))
工程(1)は、上述の化学的または物理的表面処理が施されて金属部材を準備する工程である。
(化学的表面処理)
本工程における化学的表面処理は、金属部材の表面に液晶性樹脂組成物と共有結合、水素結合または分子間力等の化学結合を生じさせる処理を施すことをいう。化学的表面処理は、金属部材の種類によって適宜選択することができる。たとえば、金属部材として銅合金を選択した場合には、トリアジンチオール化合物を用いて銅部材表面に薄膜を形成させる表面処理を施すことができる。また、金属部材としてアルミニウムを選択した場合には、温水処理によりアルミニウム表面に対して水和酸化物を形成させる表面処理を施すことができる。なお、上記化学的処理は、1つの方法のみを使用してもよいし、2以上の方法を組み合わせて使用してもよい。また、上記化学的表面処理後に分子向上剤等で処理する工程を含んでもよい。
(物理的表面処理)
本工程における物理的表面処理は、金属部材の表面に微細な凹凸を形成させる処理を施すことをいう。たとえば、物理的表面処理は、金属部材の種類によって適宜選択することができる。たとえば、金属部材としてアルミニウムを選択した場合には、ウェットブラストにより表面に微細な凹凸(十点平均粗さ(Rz)において、0.5μm以上50μm以下)を形成させる処理を施すことができる。物理的表面処理は、1つの方法のみを使用してもよいし、2以上の方法を組み合わせて使用してもよい。
(工程(2))
工程(2)は、上述の液晶性樹脂組成物を準備する工程である。まず、上述の液晶性樹脂を準備し、上記液晶性樹脂と、無機充填材と、任意の添加剤等を、公知の方法で、例えば、2軸押出機(たとえばTEX-30α、株式会社日本製鋼所社製))を用いて混練することで、液晶性樹脂組成物を製造することができる。上記液晶性樹脂は、液晶性樹脂組成物とする前に、ペレット状に形成する工程を有してもよい。ペレット状に形成する方法としては、例えば、ストランドカッターを用いる方法がある。
(工程(3))
工程(3)は、上記金属部材に上記液晶性樹脂組成物を射出成形して、液晶性樹脂組成物と上記金属部材との金属-液晶性樹脂複合体を形成する工程である。具体的には、上述の化学的または物理的に表面処理を施した金属部材を金型に固定し、そこに液晶性樹脂組成物を射出成形し、金属-液晶性樹脂複合体を形成する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特段の断りの無い限り、実験および測定は、23℃、50%RHの雰囲気下で行った。
1.液晶性樹脂の調製
液晶性樹脂(A)-1~4を、下記原料(モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤)を用いて、下記に示す調製方法により調製した。
(液晶性樹脂(A)-1)
[原料]
(モノマー)
(I) 4-ヒドロキシ安息香酸 :1385g(60モル%)
(II) 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸 : 88g(5モル%)
(III)テレフタル酸 : 504g(17モル%)
(V) 4,4’-ジヒドロキシビフェニル : 415g(13モル%)
(VI) N-アセチル-p-アミノフェノール: 126g(5モル%)
(脂肪酸金属塩触媒)
酢酸カリウム触媒:120mg
(アシル化剤)
無水酢酸:1662g
[調整方法]
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、上記原料を仕込んだ後、重合容器内を窒素置換し、反応系の温度を140℃まで昇温し、140℃で1時間反応させた。その後、360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて10Torr(すなわち、1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行い、液晶性樹脂(A)-1を調製した。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にし、上記重合容器の下部から液晶性樹脂(A)-1を重合容器から排出してから、ストランド状に押し出し、それをペレタイズすることにより、ペレット状の液晶性樹脂(A)-1を得た。得られた液晶性樹脂(A)-1の融点(Tm)は335℃であり、結晶化温度(Tc)は291℃であった。融点および結晶化温度は、DSC(TAインスツルメント社製)で測定した。
(液晶性樹脂(A)-2)
[原料]
(モノマー)
(I) 4-ヒドロキシ安息香酸 :1040g(48モル%)
(II) 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸 : 89g(3モル%)
(III)テレフタル酸 : 547g(21モル%)
(IV) イソフタル酸 : 91g(3.5モル%)
(V) 4,4’-ジヒドロキシビフェニル : 716g(24.5モル%)
(脂肪酸金属塩触媒)
酢酸カリウム触媒:110mg
(アシル化剤)
無水酢酸:1644g
[調整方法]
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、上記原料を仕込んだ後、重合容器内を窒素置換し、反応系の温度を140℃まで昇温し、140℃で1時間反応させた。その後、360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(すなわち、667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行い、液晶性樹脂(A)-2を調製した。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にし、上記重合容器の下部から液晶性樹脂(A)-2を重合容器から排出してから、ストランド状に押し出し、それをペレタイズすることにより、ペレット状の液晶性樹脂(A)-2を得た。得られた液晶性樹脂(A)-2の融点(Tm)は355℃であり、結晶化温度(Tc)は310℃であった。
(液晶性樹脂(A)-3)
液晶性樹脂(A)-3は、液晶性樹脂(A)-2で用いた原料を、下記原料に変更した以外は、液晶性樹脂(A)-2の調製方法と同様の方法で調製した。得られた液晶性樹脂(A)-3の融点(Tm)は282℃であり、結晶化温度(Tc)は241℃であった。
[原料]
(モノマー)
(I) 4-ヒドロキシ安息香酸 :1679g(73モル%)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸: 801g(27モル%)
(脂肪酸金属塩触媒)
酢酸カリウム触媒:110mg
(アシル化剤)
無水酢酸:1644g
(液晶性樹脂(A)-4)
液晶性樹脂(A)-4は、液晶性樹脂(A)-1で用いた原料を、下記原料に変更した以外は、液晶性樹脂(A)-1の調製方法と同様の方法で調製した。得られた液晶性樹脂(A)-4の融点(Tm)は360℃であり、結晶化温度(Tc)は318℃であった。
[原料]
(モノマー)
(I) 4-ヒドロキシ安息香酸 : 46g(2モル%)
(II) 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸 :845g(48モル%)
(III)テレフタル酸 :741g(25モル%)
(V) 4,4’-ジヒドロキシビフェニル:798g(25モル%)
(脂肪酸金属塩触媒)
酢酸カリウム触媒:120mg
(アシル化剤)
無水酢酸:1644g
(無機充填材(B))
(B)-1:タルク(クラウンタルクPP(平均粒子径14μm)松村産業株式会社製)
(B)-2:ガラス繊維(CS 3J-257(繊維径11μm)、日東紡績株式会社製)
(B)-3:ウォラストナイト(NYGLOS 8(繊維径12μm)、Imerys社(米国)製)
なお、(B)-1に記載の平均粒子径、(B)-3の繊維径はカタログ値であり、(B)-2の繊維径は実測値である。
(その他の成分)
滑剤:ペンタエリスリトールステアリン酸エステル(エメリーオレオケミカルズジャパン社製)
2.液晶性樹脂組成物の調製
(実施例1)
液晶性樹脂(A)-1(67.7質量%)を、二軸押出機(TEX-30α、株式会社日本製鋼所社製)のメインフィード口から供給し、サイドフィード口から、無機充填材(B)-1(22質量%)、および無機充填材(B)-2(10質量%)、および滑剤(0.3質量%)を供給して、混合することにより液晶性樹脂組成物を得た。なお、上記二軸押出機のメインフィード口に設けられたシリンダーの温度を280℃に設定し、他のすべてのシリンダーの温度を360℃に設定した。
(実施例2、比較例2、3、4および7)
表1に示す液晶性樹脂および/または無機充填材に変更した以外は、実施例1と同様の調製方法で、実施例2、比較例2、3、4および7における液晶性樹脂組成物を得た。
(実施例3および比較例5)
表1に示す液晶性樹脂および/または無機充填材に変更し、メインフィード口に設けられたシリンダーの温度を280℃から250℃に、他のすべてのシリンダーの温度を360℃から320℃に変更した以外は、実施例1と同様の調製方法で、実施例3および比較例5における液晶性樹脂組成物を得た。
(比較例1および6)
表1に示す液晶性樹脂および/または無機充填材に変更し、メインフィード口に設けられたシリンダーの温度を280℃にし、他のすべてのシリンダーの温度を360℃から370℃に変更した以外は、実施例1と同様の調製方法で、比較例1および6における液晶性樹脂組成物を得た。
3.物性値の測定
[融点(Tm)および結晶化温度(Tc)の測定]
表1に示す液晶性樹脂組成物の融点(Tm)および結晶化温度(Tc)を以下の方法で測定した。
(測定方法)
液晶性樹脂組成物を室温から20℃/分の昇温条件で昇温した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)℃、および上記吸熱ピーク温度の観測後に、(Tm+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で降温した際に観測される発熱ピーク温度(Tc)を測定した。融点(Tm)[℃],結晶化温度(Tc)[℃]は、表1に記載したとおりである。上記融点および結晶化温度は、DSC(TAインスツルメント社製)を用いて行った。
[損失係数の測定]
表1に示す液晶性樹脂組成物の損失係数を以下の方法で測定した。
(測定方法)
液晶性樹脂組成物を、射出成形機(SE100DU、住友重機械工業製)により射出成形して、130×12.7×1.6mmの試験片を作製した。得られた試験片の損失係数を、1Hzの周波数、昇温速度2℃/分の条件下、40mmのスパンの3点曲げ試験法により測定した。損失係数は、粘弾測定装置RSAIII(Rheometric Scientific社製を用いて行なった。
[金属部材の表面処理方法]
(表面処理1:化学的表面処理)
18mm×45mm×1.5mmtの銅(C1100)に、株式会社東亜電化のTRI技術(国際公開第2020/059651号など)による表面処理によって、トリアジンチオール化合物からなる接合面を形成した。
(表面処理2:物理的表面処理)
18mm×45mm×1.5mmtのアルミニウム(A5052)を、不二精機製ウェットブラスト装置 LH-5に配置し、アルミナ研削材フジブラウンを用いて、処理圧力0.4MPaで平均表面粗さ(Rz)が10μmになるまで研磨した。
4.金属-液晶性樹脂複合体の作製および評価
[金属-液晶性樹脂複合体の作製]
射出成形機(TR40VRE、ソディック社製)を用い、ISO19095-2:2015「Overlapped test specimens(typeB)」に準拠して、表1に示す液晶性樹脂組成物を上述の表面処理した金属部材にインサート成形し、接合強度を測定するための金属-液晶性樹脂複合体(試験片)を得た。なお、上記試験片は、図1aおよび図1bに示されるように、液晶性樹脂部材1(10mm×45mm×3mmt)と金属部材3(18mm×45mm×1.5mmt)とが接合面2(50mm)で接合している構造を有する。
[成形条件]
成形機:ソディック社製射出成形機TR40VRE
シリンダー温度(ノズル側からの温度(℃)を示す):
(実施例1、2、比較例2、3、4、7)
360-370-370-360-350-50
(実施例3、比較例5)
320-320-320-320-300-50
(比較例1、6)
380-380-380-360-350-50
金型温度:80℃
射出速度:100mm/sec
保圧力:50MPa
保圧時間:5秒
冷却時間:15秒
[接合強度の評価]
上記ISO19095-2(typeB)に準拠して作製した金属-液晶性樹脂複合体を構成する金属部材と液晶性樹脂組成物との接合強度を測定した。
(測定方法)
引張試験機(オートグラフAG-20kNXDplus、株式会社島津製作所製)を用いて、10mm/分の条件で行った。
Figure 2024026989000005
表1に示されるように、液晶性樹脂組成物の損失係数が0.2以上である実施例1~3では良好な接合強度が得られた。一方、損失係数が0.2未満の比較例1~7では剥離して接合強度が得られなかった。また、比較例3~7に示されるように、表面処理が施されていない金属部材を用いた場合にも全て界面剥離してしまい所望する接合強度が得られなかった。このことから、金属部材の表面(液晶性樹脂との接合面)に化学的または物理的に表面処理を施すことにより、液晶性樹脂組成物と高い密着性が得られることが分かった。
本発明の液晶性樹脂組成物は、金属部材と良好な密着性を有することから、当該樹脂組成物を用いたインサート成形品の製造に有効である。また、当該インサート成形品は、薄肉化や形状の複雑化が進む機械部品、電気・電子部品等に貢献することが期待される。
1 液晶性樹脂部材
2 金属部材と液晶性樹脂部材との接合面
3 金属部材

Claims (5)

  1. 金属-液晶性樹脂複合体の製造に用いられる液晶性樹脂組成物であって、
    前記液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂と、無機充填材と、を含み、
    前記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)における損失係数は、0.20以上である、
    液晶性樹脂組成物。
  2. 前記液晶性樹脂は、下記構成単位(I)~(VI)から選択される2つ以上の構成単位を含み、
    構成単位(I)の含有量は、全構成単位に対して30モル%以上80モル%以下であり、
    構成単位(II)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上70モル%未満であり、
    構成単位(III)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であり、
    構成単位(IV)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上20モル%未満であり、
    構成単位(V)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であり、
    構成単位(VI)の含有量は、全構成単位に対して0モル%以上30モル%以下であり、
    構成単位(I)~(VI)の合計の含有量は、全構成単位に対して100モル%である、請求項1に記載の液晶性樹脂組成物。
    Figure 2024026989000006
  3. 金属部材と、液晶性樹脂組成物とを有する金属-液晶性樹脂複合体であって、
    前記金属-液晶性樹脂複合体は、前記金属部材と、前記液晶性樹脂組成物とが接合する接合面を有し、
    前記液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂と、無機充填材と、を含み、
    前記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)における損失係数は、0.20以上であり、
    前記金属部材側の接合面は、表面処理が施されている、金属-液晶性樹脂複合体。
  4. 金属部材を準備する工程と、
    液晶性樹脂組成物を準備する工程と、
    前記金属部材に前記液晶性樹脂組成物を射出成形し、前記金属部材と前記液晶性樹脂組成物とが接合した、金属-液晶性樹脂複合体を成形する工程と、を有し、
    前記液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂と、無機充填材と、を含み、
    前記液晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)における損失係数は、0.20以上であり、
    前記金属部材は、表面処理が施されている、金属-液晶性樹脂複合体の製造方法。
  5. 前記表面処理は、化学的表面処理または物理的表面処理である、請求項4に記載の金属-液晶性樹脂複合体の製造方法。

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