JP2024011904A - 血球分離フィルター及びイムノクロマト診断キット - Google Patents

血球分離フィルター及びイムノクロマト診断キット Download PDF

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潤一 佐藤
Junichi Sato
武志 松瀬
Takeshi Matsuse
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Abstract

【課題】全血検体を対象とし、赤血球の目詰まりによる展開阻害(液詰まり)や溶血による判定部の汚れを発生させることなく、その血球成分を分離でき、簡易、迅速かつ正確な判定を可能にするイムノクロマト診断キットに用いるための血球分離フィルターの提供。【解決手段】熱可塑性樹脂の繊維から構成される不織布と、該不織布に担持された血球凝集剤を含む血球分離フィルターであって、該不織布の目付が30~200g/m2であり、厚みが0.1mm~1.2mmであり、平均繊維径が1μm~3μmであり、平均孔径が3μm~10μmであり、空隙率が70%~90%である血球分離フィルター、及びこれを用いたイムノクロマト診断キット。【選択図】図1

Description

本発明は、血球分離フィルター、及びそれを用いたイムノクロマト診断キットに関する。
近年、医療情勢の変化とともにPOCT(Point of care testing:臨床現場即時検査)の注目度が増している。POCTとは、被験者の傍らで医療従事者又は被験者自らが行う検査であり、検査時間を短縮できるだけでなく、検査結果を被験者が直接確認することができるという利点を有する検査である。これらの利点を活かして、POCTは、病院の外来や病棟で実施されるのみならず診療所や在宅医療の現場でも着実に普及している。一般にPOCTは、病院の中央検査室や外注検査センターで用いられる検査とは異なり、診療所や在宅医療で行われる検査であるため、検査に関する知識が充分でなく、また測定に習熟していない者が取扱うことが多い。そのためPOCT用の検査試薬には、誰もが簡単な説明を受けただけで確実な検査結果が出せるような簡便な操作性が求められている。
このような簡易迅速診断に用いられる試薬として、イムノクロマトグラフ法の測定原理を利用した検査キットが広く用いられている。そのキット構成としては、主としてクロマトグラフ媒体、試料添加部(サンプルパッド)、標識試薬保持部(コンジュゲートパッド)、及び吸収部(吸収パッド)などで構成されており、必要に応じて、これらの部材が基材(バッキングシート)に貼り付けられ、ハウジング部材に収められている。ニトロセルロース膜などからなるクロマトグラフ媒体は、液体試料の展開部としての機能を有するとともに、検査結果の判定部としての機能も有する。クロマトグラフ媒体の長手方向の一端には、試料添加部(サンプルパッド)及び標識試薬が含有された標識試薬保持部(コンジュゲートパッド)が通液可能に設置され、反対側の端部には過剰な試料液を吸収するための吸収部(吸収パッド)が設けられている。
イムノクロマト診断キットによる検査は、採取した各種検体又は試料液を試料添加部に添加することにより行われる。添加された検体や試料液は、標識試薬保持部を通過し、クロマトグラフ媒体中を毛細管現象により長手方向に移動し、判定部を通って、吸収パッドに吸収される。試料液中の被検出物質は、抗原-抗体反応を利用して、標識試薬保持部を通過する際に金コロイドなどの有色の標識試薬と複合体を形成した後、クロマトグラフ媒体上の判定部に捕捉される。イムノクロマト診断キットによる検査では、規定された反応時間(10~15分間)の間にクロマトグラフ媒体の判定部に捕捉された被検出物質の量を、標識試薬に由来する着色の強度を指標として目視により判定する。
上記イムノクロマトグラフ法による検査では、疾患の判定を迅速且つ正確に行うことが従来から求められている。特に、血液中の物質を検出対象とする検査が近年重要度を増しており、CRP(C反応性タンパク)などの炎症マーカー、H-FABPなどの循環器関連マーカー、HIV、HCV感染症関連マーカー、各種感染症に対するIgG、IGM抗体有無の検査、ホルモン、薬物検査などである。しかし、血液を検体としたイムノクロマト診断キットによる検査においては、赤血球等の血球の存在が検査を妨害するため、予め血液から血清または血漿を分離し使用されている。そのため、検査前に採取した血液を一旦凝固させた後、遠心分離し、血清を得るという過程を経る必要がある。凝固、遠心分離の操作は時間がかかり、臨床検査の短時間化を妨げ、さらに大型の遠心分離器が必要となり、検査できる場所が限定されてしまう。
これらの問題を解決すべく、以下の特許文献1では、焼結多孔質を用いて全血から血漿や血清を分離する方法を、そして以下の特許文献2では、それぞれ孔径が異なる繊維材料を複合させた多層のフィルター機能を持つ材料を用いた分離が検討されている。
特開平3-205563号公報 特開平10-010125号公報
しかしながら、前記した従来技術のようなサイズ排除型の分離方法の場合、血漿もしくは血清を分離し得るものの、その分離過程で赤血球等によりフィルターが目詰まりし、検体が展開されないばかりか、圧力がかかることにより赤血球が破壊され溶血し、結果、判定部を汚してしまうという課題がある。また、赤血球そのものは柔らかい構造で孔をすり抜けやすく、分離が完全には行えないことも課題である。さらに、これまでの不織布、フィルター、もしくは特許文献1及び2に記載の技術を用いた血球成分の分離法においては、同一もしくは異なる素材を重ねる・複合させるなどして、厚みを持たせることで、分離の効率を上げているが、この方法では分離工程から展開・発色までに時間がかかってしまい、迅速な診断が困難となる。
かかる従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、赤血球の目詰まりによる展開阻害(液詰まり)や溶血による判定部の汚れを発生させることなく、全血検体から血球成分を濾過し、簡易かつ正確な判定を可能にするイムノクロマト診断キットに用いるための血球分離フィルターを提供することである。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[項目1]
熱可塑性樹脂の繊維から構成される不織布と、該不織布に担持された血球凝集剤を含む血球分離フィルターであって、
該不織布の目付が30~200g/mであり、厚みが0.1mm~1.2mmであり、平均繊維径が1μm~3μmであり、平均孔径が3μm~10μmであり、空隙率が70%~90%である、
血球分離フィルター。
[項目2]
前記不織布の地合指数が75以下であり、かつ、孔径分布が以下の式:
Dmax/Dave<2
Dmax/Dmin<3.5
{式中、Dmaxは最大孔径(μm)であり、Daveは平均孔径(μm)であり、そしてDminは最小孔径(μm)である。}
を満たす、項目1に記載の血球分離フィルター。
[項目3]
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及びポリエチレンからなる群より選ばれた1種以上である、項目1又は2に記載の血球分離フィルター。
[項目4]
前記不織布が、単層の不織布である、項目1~3の何れか1項に記載の血球分離フィルター。
[項目5]
項目1~4の何れか1項に記載の血球分離フィルターを用いたイムノクロマト診断キット。
本発明の血球分離フィルターは、赤血球の分離能に優れており、溶血が発生せず、かつ、液詰まりが低減されるため、イムノクロマト診断キットに用いることで全血検体中の対象物を迅速に検査可能なものとする。
本発明の一実施形態としてのイムノクロマト診断キットの断面図である。 本発明の一実施形態としてのイムノクロマト診断キットの断面図である。 本発明の一実施形態としてのイムノクロマト診断キットの断面図である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の血球分離フィルターは、熱可塑性樹脂の繊維から構成される不織布と、該不織布に担持された血球凝集剤を含み、該不織布の目付が30~200g/mであり、厚みが0.10mm~1.20mmであり、平均繊維径が1.0μm~3.0μmであり、平均孔径が3.0μm~10.0μmであり、空隙率が70%~90%である。
イムノクロマト診断キットを用いて実施するイムノクロマトグラフ法による検査方法には、一般的に、被測定物を含む溶液を膜に対して垂直方向に通過させるフロースルー方式と、水平方向に通過させるラテラルフロー方式の2種類があるが、本実施形態の血球分離フィルターは、特にラテラルフロー方式のイムノクロマト診断キットに使用されることが好ましい。
図1はイムノクロマト診断キットの一例であり、(a)吸収パッド、(b)ニトロセルロース膜、(c)コンジュゲートパッド(抗体感作標識試薬を含む)、(d)サンプルパッド、及び(e)バッキングシートで構成される。本実施形態に係る血球分離フィルターは、単独でコンジュゲートパッド上部の試料添加部として用いてもよい。この場合、血球分離フィルターは図1においては(d)サンプルパッドに置き換わることになるが、血球分離フィルターとしての機能とサンプルパッドとしての機能を兼ねることになる。
また、血球分離能を持たない一般的なサンプルパッドと本実施形態に係る血球分離フィルターを併用してもよく、図2はその場合のイムノクロマト診断キットの一例であり、(a)吸収パッド、(b)ニトロセルロース膜、(c)コンジュゲートパッド(抗体感作標識試薬を含む)、(d)サンプルパッド、(e)バッキングシート及び(f)血球分離フィルターで構成される。
図2(a)は、(e)バッキングシートを底面としたときに(f)血球分離フィルターが(d)サンプルパッドの上にある場合を示した図であり、図2(b)は、(e)バッキングシートを底面としたときに(f)血球分離フィルターが(d)サンプルパッドの下にある場合を示した図である。これらの場合、(d)サンプルパッドと(f)血球分離フィルターの位置は、目的とする検体量やキット構成などの目的に応じて上下どちらかを選択でき、特に限定されるものではない。
<不織布>
[不織布構造]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布としては、特に制限はなく、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等が挙げられる。特に、極細繊維を用いるのに適した、メルトブローン不織布やフラッシュ紡糸不織布が好ましい。
また、不織布は積層されたものでも、単層のものでもよい。
平均孔径や空隙率の均一性に優れることから、単層の不織布を用いることが好ましい。
[目付]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布の目付は30g/m以上200g/m以下である。目付が200g/mを超えると、診断キット製造の際の加工性が低くなる点、また仮にハウジングケースなど使用する場合にその形状が制約される点で不適である。目付は、好ましくは190g/m以下、より好ましくは180g/m以下である。他方、目付が30g/m未満になると不織布構造として繊維の粗密のムラが顕著にあらわれ、地合いも悪くなってしまうため、赤血球分離能が低下してしまう。それゆえ、目付は、30g/m以上が好ましく、より好ましくは40g/m以上である。
不織布の目付は、面積0.5m以上の不織布を、105℃で一定重量になるまで乾燥後、20℃、65%RHの恒温室に16時間以上放置してその重量を測定し、不織布の単位面積当たりの重量を測定することで求められる。
[厚み]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布の厚みは、0.1mm以上1.2mm以下である。1.2mmを超える厚みの不織布を製造しようとすると、目付や繊維径が所定範囲を外れてしまい、いずれの場合も孔径分布や地合いの均一性を損なう。厚みは、好ましくは1.1mm以下、より好ましくは0.9mm以下である。他方、0.1mm未満であると、使用する検体・展開液に対し十分な吸液量を得られず、また、強度を担保できないため、診断キットの製造工程上不具合が生じる。また、地合いも悪くなってしまうため、厚みは、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上である。
不織布の厚みは、JIS-L1096準拠の厚み試験にて荷重を1.96kPaとして測定することで求められる。
[平均繊維径]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布の平均繊維径は1μm以上3μm以下である。平均繊維径が3μmを超えると平均孔径が大きくなり、また、同時に孔径分布の均一性が低下することにより、赤血球の分離能が著しく低下する。そのため、平均繊維径は、好ましくは2.9μm以下、より好ましくは2.5μm以下である。また、平均繊維径が細くかつ均一であるほど緻密で均一な孔径を構成するものの、繊維径が細すぎても製造の際、目付が小さく、また、膜厚が薄くなってしまい、十分な吸液量や強度を保てず、かつ、目付について前記したように繊維の粗密のムラが顕著にあらわれ、おなじく赤血球の分離能が著しく低下してしまう。それゆえ、平均繊維径は1.1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上である。
装置型式:JSM-6510 日本電子株式会社製
不織布を10cm×10cmにカットし、上下60℃の鉄板に0.30MPaの圧力で90秒間プレスした後、不織布に白金を蒸着する。そして上記SEM装置を用いて、加速電圧15kV、ワーキングディスタンス21mmの条件にて撮影する。
撮影倍率は、平均繊維径が0.5μm未満の糸は10000倍、平均繊維径が0.5μm以上1.5μm未満の糸は6000倍、平均繊維径が1.5μm以上の糸は4000倍とする。それぞれの撮影倍率での撮影視野は、10000倍では12.7μm×9.3μm、6000倍では21.1μm×15.9μm、4000倍では31.7μm×23.9μmである。撮影視野内からランダムに繊維100本以上を選択し、全ての繊維径を測長する。この際に、糸長方向で融着している繊維同士は測定から省く。
以下の式:
繊維径Diの繊維がNi本存在するとき、
Dw=ΣWi・Di=Σ(Ni・Di)/(Ni・Di)
{式中、Wi=繊維径Diの重量分率=Ni・Di/ΣNi・Diである。}
により求められる重量平均繊維径(Dw)を、平均繊維径(μm)とする。
[平均孔径]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布の平均孔径(Dave)は、3μm以上10μm以下である。平均孔径が10μmを超えると赤血球の分離能が著しく低下してしまう。そのため、平均孔径は、9μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。また、平均孔径が3μm未満では液詰まりを起こしやすくなり、液を展開しないという事象が発生する。よって、平均孔径は、3.5μm以上が好ましく、より好ましくは4.0μm以上である。
[空隙率]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布の空隙率は、70%以上90%以下である。空隙率が大きいほど、不織布の特徴である3次元構造を生かした分離が可能となる。さらに血球凝集剤で前処理した際、十分に不織布の空隙内に充填・担持させることができる為、好ましい。一方で、90%を超えると不織布強度が低下する。その為、好ましくは88%以下、より好ましくは85%以下である。また、空隙率が70%を下回ると血球成分が凝集しサンプルパッド上に堆積した後、液詰まりが発生し分離能が著しく低下する。よって、空隙率は、好ましくは72%以上、より好ましくは74%以上である。
空隙率(%)=〔1-(不織布の目付/不織布の厚み/不織布の原料密度)〕×100
なお、不織布の原料密度は、ISO1183に記載の方法で測定する。
[孔径分布]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布の孔径分布は、以下の式:
Dmax/Dave<2
Dmax/Dmin<3.5
{式中、Dmaxは最大孔径(μm)であり、Daveは平均孔径(μm)であり、そしてDminは最小孔径(μm)である。}
を満たすことが好ましい。
Dmax/Dave<1.82がより好ましく、Dmax/Dave<1.5がさらに好ましい。ここで、Dmax/Dave=1は、理論上で不織布を構成する繊維で形成される孔径が完全に同一である理想的な状態における孔径分布を意味する。Dmax/Dave<2であれば、孔径分布の均一性が適度に保たれ、赤血球分離能が優れる。
Dmax/Dmin<3がより好ましく、Dmax/Dmin<2.5がさらに好ましい。ここで、Dmax/Dmin=1は、理論上で不織布を構成する繊維で形成される孔径が完全に同一である理想的な状態における孔径分布を意味する。Dmax/Dmin<3.5では、孔径分布の均一性が適度に保たれ、赤血球分離能が優れ、また、検査結果の判定部であるTL(テストライン)発色強度のバラツキが小さく誤診の可能性が低くなる。
装置型式:Automated Perm Porometer(多孔質材料自動細孔径分布測定システム)Porous Materials, Inc.社製
不織布サンプルを打ち抜き刃でφ25mmにカットし、GALWICK試液に浸漬させ、1時間脱気する。その後サンプルをセットし、エア圧を加える。GALWICK試液が毛細管内の液体表面張力に打ち勝ち、押し出される為、その時の圧力を装置により測定することで毛細管の式から導かれたWashburnの式から、最大孔径:Dmax(μm)、平均孔径:Dave(μm)、最小孔径:Dmin(μm)を求める。
[地合指数]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布の地合指数が75以下であることが好ましい。地合指数は、目視との相関が極めて高く、不織布の地合を最も端的にあらわしている。また、地合指数は値が小さい程、不織布の構造として均一であることを示し、逆に地合指数は値が大きい程、不織布の構造が不均一であることを示す。地合指数は不織布製造の際の目付と厚みや、不織布製造後のプレス加工などで調整が可能である。地合指数が75以下であれば、不織布構造としてのバラツキが小さく、赤血球分離能に優れる。加えて、特に細幅のイムノクロマト診断キットを作製する場合(例えば、2.0~3.0mm幅のキット)には、より細かく不織布を切断することになるが、不織布構造の均一性が適度に保たれるため性能のバラツキが少ない。これらの観点から、地合指数は、70以下がより好ましく、さらに好ましくは60以下である。一方、実際の不織布生産の精度などを考慮し、地合指数は30以上であればよい。
装置型式:FMT-MIII 野村商事株式会社製
サンプルをセットしない状態で、光源点灯時/消灯時の透過光量をCCDカメラ装置でそれぞれ測定する。続いて、A4サイズにカットした不織布サンプルをセットした状態で同様に透過光量を測定し、平均透過率、平均吸光度、標準偏差(吸光度のバラツキ)を求める。地合指数は、標準偏差÷平均吸光度×10で求めることができる。
なお、A4サイズの不織布サンプルの調整ができない場合でも、10cm×10cm以上のサンプルで測定してもよい。
[熱可塑性樹脂]
本実施形態の血球分離フィルターに含まれる不織布は熱可塑性樹脂の繊維により構成され、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂である。
具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの単独若しくは共重合体である、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体等のポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマーあるいはこれらの混合物等を例示することができる。熱や水分に対する安定性や汎用性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及びポリエチレンからなる群より選ばれた1種以上が望ましい。また、それぞれの樹脂からなる不織布を複合させてもよい。
[親水化処理]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布は、後に述べる血球凝集剤を担持させる処理の際の作業性の観点から、親水化処理されていてもよい。親水化の方法については特に限定せず、物理的な加工方法であれば、例えば、コロナ処理又はプラズマ処理による親水化が挙げられ、また、化学的な加工方法、例えば、表面官能基の導入、例えば、酸化処理等によりスルホン酸基、カルボン酸基等を導入することや、水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンスルホン酸、若しくはポリグルタミン酸、及び/又は界面活性剤、例えば、ノニオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、若しくは両イオン性界面活性剤等の処理剤を不織布にディップニップ法やスプレーコート法などで含浸、コーティングする方法など公知の方法が挙げられる。吸収パッドに必要な吸水性を考慮して、適切な親水化加工方法及び条件、例えば、処理剤の使用量及び官能基の導入量等を選択することができる。
[積層]
本実施形態の血球分離フィルターに用いる不織布は、種々用途に応じて、積層してもよい。不織布を積層する場合は、熱融着用フィルムを用いた熱圧着、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤による方法、押出しラミネート等をはじめ、種々公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
[血球凝集剤]
本実施形態の血球分離フィルターの処理に用いる血球凝集剤としては、血球成分、特に赤血球を凝集させる剤であれば特に限定されるものではないが、一般的には、PHA(phytohemagglutinin)、コンカナバリンA、PWM(pokeweed mitogen)などに代表されるレクチン類、トロンビン、抗血球抗体、イオン性ポリマー、サッカライド等が例示される。そのうち、PHAなどのレクチン類が植物などの天然物由来で安価に取得可能であることからより好ましい。また凝集剤の担持量(不織布単位面積あたりの凝集剤保持量)については、0.03g/m以上15g/m以下であることが好ましい。凝集剤担持量が15g/m以下であれば、展開性に優れる。より好ましくは13g/m以下、さらに好ましくは10g/m以下である。一方、0.03g/m以上であれば、十分な凝集効果が得られ、また不織布を均一に処理することも容易である。より好ましくは0.15g/m以上、さらに好ましくは0.4g/m以上である。
<イムノクロマトによる診断方法>
本実施形態の血球分離フィルターを用いるイムノクロマト診断キットを使用するところの「診断方法」とは、イムノクロマト診断キットを用いて行われる様々な診断を指す。診断対象は特に限定されるものではなく、人用、動物用など血液を検体として用いる様々な診断対象の検査に用いることができる。一般的な診断の手順では、検査対象から検体試料を採取し、必要であればそれを抽出やろ過などの前処理を行い、イムノクロマト診断キットに滴下し、検査開始から所定時間待ち、検査対象物質の有無によって異なる発色より診断結果を判断する。勿論、この手順に限定されず、同じような手順、原理の診断にも用いることができる。
[イムノクロマト診断キット]
本実施形態のイムノクロマト診断キットとは、様々な検体中の検査対象物質の有無を簡便に検出するためのものである。診断キットの種類としては、ラテラルフロー式やフロースルー式があるが、好ましくはラテラルフロー式である。また、ラテラルフロー式の中でも、ディップスティックタイプとカセットタイプがあるが、それらのタイプは特に限定されない。診断キットの構成は、特に限定されるものではなく、当該分野で一般的に用いられる構成であればいずれでも構わない。部材としては、当該分野で用いられるものであれば特に限定されず、例えば、図1に示す(a)吸収パッド、(b)ニトロセルロース膜、(c)コンジュゲートパッド(抗体感作標識試薬を含む)、(d)サンプルパッド、及び(e)バッキングシートが挙げられる。また、必要に応じそれら部材を一部省いていても構わない。なお、本構成は本実施形態に係る血球分離フィルターをサンプルパッドとして用いる場合のものである。
[(a)吸収パッド]
図1に示すように、(a)吸収パッドとは、イムノクロマト診断キットにおいて測定対象である検体を最後に吸収する部分である。一般的な吸収パッドとしては、セルロース濾紙、紙、ガラス繊維、グラスファイバーなどが挙げられる。
[クロマトグラフ媒体]
イムノクロマト診断キットに用いられるクロマトグラフ媒体は特に限定されるものではなく、一般的に用いられる様々なクロマトグラフ媒体を用いることができる。具体的には、(b)ニトロセルロース膜が挙げられる。
[(c)コンジュゲートパッド]
コンジュゲートパッドは、抗体感作標識試薬等の標識粒子を乾燥固定化しておく部分である。一般的なコンジュゲートパッドとしては、ガラス繊維、グラスファイバー、アクリル繊維、PET繊維単体又はPET繊維と他の繊維を複合した不織布、織布などが挙げられる。また、必要に応じて前処理を行っても構わない。
[(d)サンプルパッド]
サンプルパッド(サンプル滴下部)は、イムノクロマト診断キットにおいて測定対象である検体を最初に受け取る部分である。一般的なサンプルパッドとしては、不織布、セルロース濾紙、紙、ガラス繊維、グラスファイバー、アクリル繊維、ナイロン繊維、各種織物などが挙げられる。また、必要に応じて前処理を行っても構わない。例えば、緩衝液、界面活性剤、タンパク質、検体試料中の夾雑物をトラップする試薬、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、などを予め含ませるなどの処理を行っても構わない。なお、サンプルパッドに代えて本実施形態の血球分離フィルターを用いてもよく、サンプルパッドと血球分離フィルターを併用してもよい。
[標識試薬]
コンジュゲートパッドに固定される標識試薬とは、水、緩衝液などに不溶性であり、色素や染料等が担持された粒子状物質を指す。粒子を構成する素材は特に限定されないが、このような標識試薬としては、例えば、金コロイド、白金コロイド、銀コロイド、セレンコロイドなどの金属コロイド粒子、ポリスチレンラテックス等のスチレン系ラテックスやアクリル酸系ラテックス等を着色した着色ラテックス粒子、ケイ素原子及び酸素原子からなる3次元構造体からなるシリカを着色した着色シリカ粒子、セルロースを着色した着色セルロース粒子、カーボンブラックなどの着色成分をそのまま粒子化した標識試薬、磁性粒子、などが挙げられる。また、標識試薬は蛍光発光性粒子でも構わない。
[担持物質]
標識試薬は、抗体などの被検出物に特異的に結合する物質を担持する必要があるが、その担持方法は特に限定されない。例えば、物理的な吸着による担持、共有結合による担持、それらの組み合わせによる担持などが挙げられる。担持する物質の種類や量も特に限定されない。担持する物質の種類としては抗体が最も一般的であり好ましい。また、担持する方法としては、容易さの観点からは物理的な吸着による担持が、安定性や性能などの観点からは共有結合による担持が好ましい。
[診断対象]
本実施形態のイムノクロマト診断キットで診断できる対象は、特に限定されるものではないが、具体例としては以下のものが挙げられる:癌マーカー、ホルモン、感染症、自己免疫、血漿蛋白、TDM、凝固・線溶、アミノ酸、ペプチド、蛋白、遺伝子、細胞などである。より具体的には、CEA、AFP、フェリチリン、β2マイクロ、PSA、CA19-9、CA125、BFP、エラスターゼ1、ペプシノーゲン1・2、便潜血、尿中β2マイクロ、PIVKA-2、尿中BTA、インスリン、E3、HCG、HPL、LH、HCV抗原、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HBe抗原、HBe抗体、HTLV-1抗体、HIV抗体、トキソプラズマ抗体、梅毒、ASO、A型インフルエンザ抗原、A型インフルエンザ抗体、B型インフルエンザ抗原、B型インフルエンザ抗体、ロタ抗原、アデノウィルス抗原、ロタ・アデノウィルス抗原、A群レンサ球菌、B群レンサ球菌、カンジダ抗原、CD菌、クリプトロッカス抗原、コレラ菌、髄膜炎菌抗原、顆粒菌エラスターゼ、ヘリコバクターピロリ抗体、O157抗体、O157抗原、レプトスピラ抗体、アスペルギルス抗原、MRSA、RF、総IgE、LEテスト、CRP、IgG,A,M、IgD、トランスフェリン、尿中アルブミン、尿中トランスフェリン、ミオグロビン、C3・C4、SAA、LP(a)、α1-AC、α1-M、ハプトグロビン、マイクロトランスフェリン、APRスコア、FDP、Dダイマー、プラスミノーゲン、AT3、α2PI、PIC、PAI-1、プロテインC、凝固第X3因子、IV型コラーゲン、ヒアルロン酸、GHbA1c、その他の各種抗原、各種抗体、各種ウィルス、各種菌、各種アミノ酸、各種ペプチド、各種蛋白質、各種DNA、各種細胞、各種アレルゲン、各種残留農薬、各種有害物が挙げられる。本実施形態はこれらの中でも全血検体を用いる診断対象に対して好適に用いることができる。
[イムノクロマト診断キットの作製方法]
所定の濃度に調整した標識試薬の分散液を準備し、緩衝液、抗体を加え、温度調整を行いながら一定時間撹拌し、標識試薬に抗体を吸着させる。一定時間撹拌後、更にブロッキング剤を加え温度調整を行いながら一定時間撹拌することで、抗体を吸着した標識試薬粒子のブロッキングを行う。
ブロッキング剤としては、検査対象物質や検体又はそれを希釈する溶液の組成などに応じ様々なブロッキング剤を用いることができる。抗体吸着・ブロッキング後の標識試薬を洗浄するため、遠心分離を行い、余剰な抗体とブロッキング剤が含まれた上澄み液と沈降した粒子を分離し、上澄み液をデカンテーションにて除去する。沈降した粒子に緩衝液などの液体を加え、必要に応じ超音波などで分散処理を行う。この遠心分離による沈降、上澄みの除去、液体の添加という一連の操作による洗浄を必要回数行い、抗体吸着・ブロッキングを行った粒子を所定の濃度含有した分散液を調製する。
この分散液に必要に応じタンパク質、界面活性剤、スクロースやトレハロースなどの糖を加え、得られた溶液をコンジュゲートパッドに一定量塗布し、乾燥させ、標識試薬保持部を調製する。また必要に応じ、緩衝液、界面活性剤、タンパク質、検体試料中の夾雑物をトラップする試薬、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、などを不織布に塗布し、乾燥させ、サンプルパッドを調製する。更に所定の位置に抗体を固定化したニトロセルロース膜製のクロマトグラフ媒体、検体を吸収するための吸収パッドを調製する。それらをバッキングシートと呼ばれる接着部位を有するシートに固定化し、所定のサイズに裁断することでイムノクロマト診断キットを作製する。
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。また、特に記載のない全ての操作は温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で行った。
まず、実施例等で用いた物性の測定方法を説明する。
<厚み(mm)>
不織布の厚みを、JIS-L1096準拠の厚み試験にて荷重を1.96kPaとして測定した。
<目付(g/m)>
0.5m以上の面積の不織布を、105℃で一定重量になるまで乾燥後、20℃、65%RHの恒温室に16時間以上放置してその重量を測定し、不織布の単位面積当たりの重量を測定し、不織布の目付とした。
<平均繊維径(μm)>
装置型式:JSM-6510 日本電子株式会社製を用いた。
得られた不織布を10cm×10cmにカットし、上下60℃の鉄板に0.30MPaの圧力で90秒間プレスした後、不織布に白金を蒸着した。そして上記SEM装置を用いて、加速電圧15kV、ワーキングディスタンス21mmの条件にて撮影した。
撮影倍率は、平均繊維径が0.5μm未満の糸は10000倍、平均繊維径が0.5μm以上1.5μm未満の糸は6000倍、平均繊維径が1.5μm以上の糸は4000倍とした。それぞれの撮影倍率での撮影視野は、10000倍では12.7μm×9.3μm、6000倍では21.1μm×15.9μm、4000倍では31.7μm×23.9μmであった。撮影視野内からランダムに繊維100本以上を選択し、全ての繊維径を測長した。この際に、糸長方向で融着している繊維同士は測定から省いた。
以下の式:
繊維径Diの繊維がNi本存在するとき、
Dw=ΣWi・Di=Σ(Ni・Di)/(Ni・Di)
{式中、Wi=繊維径Diの重量分率=Ni・Di/ΣNi・Diである。}
により求められる重量平均繊維径(Dw)を、平均繊維径(μm)とした。
<Dmax、Dave、Dminの測定>
装置型式:Automated Perm Porometer(多孔質材料自動細孔径分布測定システム)Porous Materials, Inc.社製を用いた。
不織布サンプルを打ち抜き刃でφ25mmにカットし、GALWICK試液に浸漬させ、1時間脱気する。その後サンプルをセットし、エア圧を加える。GALWICK試液が毛細管内の液体表面張力に打ち勝ち、押し出される為、その時の圧力を装置で測定することにより毛細管の式から導かれたWashburnの式から、最大孔径Dmax(μm)、平均孔径Dave(μm)、最小孔径Dmin(μm)を求めた。
<地合指数>
装置型式:FMT-MIII 野村商事株式会社製を用いた。
サンプルをセットしない状態で、光源点灯時/消灯時の透過光量をCCDカメラ装置でそれぞれ測定した。続いて、A4サイズにカットした不織布サンプルをセットした状態で同様に透過光量を測定し、平均透過率、平均吸光度、標準偏差(吸光度のバラツキ)を求めた。地合指数は、標準偏差÷平均吸光度×10で求めることができる。
なお、A4サイズの不織布サンプルの調整ができない場合でも、10cm×10cm以上のサンプルで測定してもよい。
<空隙率>
空隙率(%)=〔1-(不織布の目付/不織布の厚み/不織布の原料密度)〕×100
なお、不織布の原料密度は、ISO1183に記載の方法で測定した。
<イムノクロマト診断キットの性能評価>
4.0mm幅にカットしたイムノクロマト診断キットをプラスチックのハウジングに入れた。次に、0.1重量%Tween(登録商標)-20を含む66mM、PH7.4のPBSを調製し、展開液とした。得られたハウジング入りの診断キットを用い、50μlのヒト全血検体をサンプル滴下、その後100μlの展開液を同じく診断キットのサンプル滴下部に滴下し、15分後にキットの展開の様子を確認した。
一度の評価で同じキットを50キット展開し、そのうち、問題なくTL(テストライン)が発色したもの、TL周辺が血液によって赤色に着色したもの(溶血が発生したもの)、サンプル滴下部で液詰まりが発生し全く展開しなかった、もしくはTLまでしか展開しなかったもの、それぞれのキット数を記録することで、イムノクロマト診断キットの性能評価を行った。
[実施例1]
<熱可塑性樹脂製不織布(サンプルパッド)の作製>
ポリエチレンテレフタレート樹脂を押出機で溶融し、ノズル径0.3mmの紡口ノズルから単孔吐出量0.12g/minで押し出した。上記の熱可塑性樹脂を押し出す際に、紡糸ガスは紡糸ガス温度370℃、紡糸ガス圧力0.075MPaの条件に設定し、ポリエチレンテレフタレート製不織布を作製した。得られた不織布は、目付80g/m、厚み0.22mm、平均繊維径:1.9μm、空隙率は74%であった。また、孔径と地合指数を上記の方法で測定した結果、Dmax:5.64μm、Dave:4.10μm、Dmin:3.23μmで、地合指数は49であった。
<血球凝集剤の担持処理>
上記で作製した不織布を、幅15mm、高さ300mmの形状にカットした。続いて2.5mg/mLの濃度で調整したPHA溶液を担持量が0.9g/mとなるようにカットした不織布に滴下し、37℃で1時間乾燥させた。
<抗体感作金コロイド粒子の調製>
金コロイド粒子懸濁液(田中貴金属社製、平均粒子径40nm、粒子濃度0.006wt%、平均粒子径40nm)2500μlに、リン酸緩衝液(50mM、pH7.0)を600μl加え、更に抗ヒトCRPマウスモノクローナル抗体Aの0.1重量%水溶液を200μl加えて、ボルテックスで攪拌した。続いて、25℃で10分間、温調しながら攪拌した。上記懸濁液に1重量%のPEG水溶液を300μl、10重量%のBSA水溶液(pH9.0、50mMホウ酸含有)を600μl添加し、ボルテックスで攪拌した。その後、遠心分離操作(10000g、30分間)を行い、上澄み液を除去した。その残渣に、1重量%BSA水溶液(0.05重量%PEG、150mMNaCl、pH8.2、20mMトリス含有)を11000μl添加し、ボルテックスで撹拌した。その後、遠心分離操作(10000g、30分間)を行い、上澄み液を除去した。その残渣に、1重量%BSA水溶液(0.05重量%PEG、150mMNaCl、pH8.2、20mMトリス含有)を900μl添加し、超音波処理を30秒間行った。
<コンジュゲートパッドへの標識試薬の含浸、乾燥>
グラスファイバー製コンジュゲートパッド(Ahlstrom社製、#8951)を幅10mm、高さ300mmの形状にカットした。その後、抗体感作金コロイド粒子分散液1020μlを均等に塗布し、50℃で60分乾燥させた。
<捕捉抗体塗布ニトロセルロース膜の調製>
ニトロセルロース膜(Millipore社製、SHF0900425)を幅25mm、高さ300mmの形状にカットした。液体塗布装置(武蔵エンジニアリング社製、300DS)を用い、0.1重量%抗ヒトCRPマウスモノクローナル抗体Bを含むPBS溶液(66mM、pH7.4)を0.1μl/mmの割合で端から7mmの部分に塗布した。続いて0.1重量%の抗マウス-ウサギ抗体(Daco社製、Z0259)を含むPBS溶液(66mM、pH7.4)を0.1μl/mmの割合で端から12mmの部分に塗布した。続いて37℃で30分乾燥させた。
<イムノクロマト診断キットの調製>
バッキングシート(Adhesives Reserch社製、AR9020)に、調製した捕捉抗体塗布ニトロセルロース膜、吸収パッド(Ahlstrom社製、#222)、標識試薬(抗体感作金コロイド粒子)を含有したコンジュゲートパッド、サンプルパッドを図1に図示したとおりの配置構成となるように張り合わせた。捕捉抗体塗布ニトロセルロース膜は、抗体を塗布する際に基準とした端が、サンプルパッド側(図1及び図2中の左側)になるように配置した。続いて裁断機にて5mmの幅にカットし、幅5mm、高さ60mmのイムノクロマト診断キットを得た。
<イムノクロマト診断キットの性能評価>
得られたイムノクロマト診断キットの性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例2]
熱可塑性不織布の目付が90g/m、厚みが0.42mm、かつ、平均繊維径が2.1μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例3]
熱可塑性不織布の厚みが0.28mm、かつ、平均繊維径が1.1μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例4]
熱可塑性不織布の目付が90g/m、厚みが0.39mm、かつ、平均繊維径が2.9μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例5]
熱可塑性不織布の目付が90g/m、厚みが0.25mm、かつ、平均繊維径が2.5μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例6]
熱可塑性不織布の目付が100g/m、厚みが0.50mm、かつ、平均繊維径が2.0μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例7]
熱可塑性不織布の厚みが0.20mm、かつ、平均繊維径が1.9μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例8]
熱可塑性不織布の厚みが0.52mm、かつ、平均繊維径が2.5μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例9]
熱可塑性不織布の目付が120g/m、厚みが0.80mm、かつ、平均繊維径が1.3μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例10]
熱可塑性不織布の目付が120g/m、厚みが0.80mm、かつ、平均繊維径が1.1μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例11]
ポリプロピレンを用いて熱可塑性不織布を作製したこと以外は実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
[実施例12]
実施例2で用いた熱可塑性不織布を、ポリエチレン製の熱融着用フィルムを用いた熱圧着により積層させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。
〔実施例1~12の説明〕
実施例1~12においてはいずれも、本開示の所定範囲の物性をもつ熱可塑性樹脂製不織布が血球凝集剤を担持しており、これらをサンプルパッドに用いることで、以下の表1に示すように、15分後にTL周辺が汚れていた、もしくは滴下部液詰まりが発生し展開しなかったものは5例以下で、血球成分を確実にろ過・分離し、簡易かつ迅速な診断が可能なイムノクロマト診断キットを得ることができた。
[比較例1]
熱可塑性不織布の目付が220g/m、厚みが0.55mm、かつ平均繊維径が4.8μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から明らかなように、高目付でありながら、かなり目の詰まった不織布となってしまい、TL周辺が赤色に着色した例が2例、液詰まりが発生し展開しない例が10例発生した。
[比較例2]
熱可塑性不織布の目付が190g/m、厚みが1.30mmになるように製造した以外は、実施例1と同様の方法でイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から明らかなように、目付に対して厚みが厚すぎるため、かなり粗な構造となってしまったため、十分に血球成分を分離できず、TL周辺が赤色に着色した例が20例発生した。
[比較例3]
熱可塑性不織布の厚みが0.25mm、かつ、平均繊維径が0.9μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から明らかなように、比較例1と同じく目の詰まった不織布となってしまい、TL周辺が赤色に着色した例が1例、液詰まりが発生し展開しない例が13例発生した。
[比較例4]
熱可塑性不織布の厚みが0.28mm、かつ、平均繊維径が3.2μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。表1に示す結果から明らかなように、比較例2と同様、かなり粗な構造となってしまったため、十分に血球成分を分離できず、TL周辺が赤色に着色した例が15例発生した。
[比較例5]
熱可塑性不織布の厚みが0.20mm、平均繊維径が2.8μm、かつ、平均孔径2.9μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。表1に示す結果から明らかなように、平均孔径が小さく目の詰まった不織布となってしまい、TL周辺が赤色に着色した例が2例、液詰まりが発生し展開しない例が11例発生した。
[比較例6]
熱可塑性不織布の厚みが0.50mm、平均繊維径が1.1μm、かつ、平均孔径11μmになるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。表1に示す結果から明らかなように、平均孔径が大きい構造で十分に血球成分を分離できず、TL周辺が赤色に着色した例が15例発生した。
[比較例7]
熱可塑性不織布の厚みが0.18mm、平均繊維径が1.9μm、かつ、空隙率が68%になるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。表1に示す結果から明らかなように、空隙率が小さいと、目の詰まった不織布となってしまい、TL周辺が赤色に着色した例が2例、液詰まりが発生し展開しない例が10例発生した。
[比較例8]
熱可塑性不織布の厚みが0.88mm、平均繊維径が1.5μm、かつ、空隙率が93%になるように製造した以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。表1に示す結果から明らかなように、空隙率が大きく、かなり粗な構造となってしまったため、十分に血球成分を分離できず、TL周辺が赤色に着色した例が18例発生した。
[比較例9]
表1に記載の物性を有する厚手のセルロース製パッドを用いたこと以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から明らかなように、高密度で目の詰まった不織布であることから、TL周辺が赤色に着色した例が5例、液詰まりが発生し展開しない例が25例発生した。
[比較例10]
表1に記載の物性を有する薄手のセルロース製パッドを用いたこと以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から明らかなように、比較例9と同じく高密度で目の詰まった不織布であることから、TL周辺が赤色に着色した例が7例、液詰まりが発生し展開しない例が21例発生した。
[比較例11]
表1に記載の物性を有するグラスファイバー製パッドを用いたこと以外は、実施例1と同様にイムノクロマト診断キットを調製し、その性能を評価した。結果を以下の表1に示す。表1に示す結果から明らかなように、かなり粗な構造であり、十分に血球成分を分離できず、TL周辺が赤色に着色した例が22例、液詰まりが発生し展開しない例が3例発生した。
本発明の血球分離フィルターは、赤血球などの血球成分の目詰まりによる展開阻害や溶血が起こらないことから、全血を検体として用いる各種イムノクロマト診断キットに好適に利用可能である。
(a) 吸収パッド
(b) ニトロセルロース膜
(c) コンジュゲートパッド(抗体感作標識試薬を含む)
(d) サンプルパッド
(e) バッキングシート
(f) 血球分離フィルター

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂の繊維から構成される不織布と、該不織布に担持された血球凝集剤を含む血球分離フィルターであって、
    該不織布の目付が30~200g/mであり、厚みが0.1mm~1.2mmであり、平均繊維径が1μm~3μmであり、平均孔径が3μm~10μmであり、空隙率が70%~90%である、
    血球分離フィルター。
  2. 前記不織布の地合指数が75以下であり、かつ、孔径分布が以下の式:
    Dmax/Dave<2
    Dmax/Dmin<3.5
    {式中、Dmaxは最大孔径(μm)であり、Daveは平均孔径(μm)であり、そしてDminは最小孔径(μm)である。}
    を満たす、請求項1に記載の血球分離フィルター。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及びポリエチレンからなる群より選ばれた1種以上である、請求項1又は2に記載の血球分離フィルター。
  4. 前記不織布が、単層の不織布である、請求項1又は2に記載の血球分離フィルター。
  5. 請求項1又は2に記載の血球分離フィルターを用いたイムノクロマト診断キット。
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