JP2023524151A - 抗癌剤タンパク質 - Google Patents

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Abstract

被験者の血管新生を阻害することにより癌を治療する方法に使用するための組換えレクチンである。本治療法は、治療上有効な量の組換えレクチンを投与することを含む。

Description

本発明は、癌の治療におけるレクチンの使用に関するものである。特に、本発明は、癌細胞に対する抗血管新生作用およびアポトーシス作用を有するレクチンタンパク質の使用に関するものである。
免疫系は様々な病気や病的状態を防御するため、活性な免疫系は、健康な個体に必要なものである。また、免疫系は、癌細胞を破壊することにより、癌の形成にさえも抵抗すると考えられている。この免疫システムが働かない場合、癌が発生する可能性がある。「癌」という言葉は、異常な細胞の無秩序な増殖と無秩序な***を特徴とする数多くの病気を表している。癌は、人体のほぼすべての組織や臓器から発生する可能性がある。近年、医学が発展し、癌の分子的基盤が解明されたにもかかわらず、どのような種類の癌であっても、特定の個人における正確な原因は不明である。このような知見が欠落しているため、特定の個人に有効な治療法を見つけることは依然として非常に困難である。
また、癌は各個体において様々な治療法に対して抵抗性を示すことが多いため、有効な治療法を見出すことは困難である。さらに、ある種の癌は、その最初の発生源または臓器から広がる可能性があるため、効果的な治療法が有効でなくなることもある。この過程は転移と呼ばれ、癌細胞が血液やリンパ系を通じて体の他の重要な部位に広がることを可能にする。
さらに、転移した細胞は、転移先の組織で免疫防御に打ち勝って生き残り、血管新生というプロセスを通じて自分自身の血液供給と栄養分を獲得することも、転移した組織内の転移細胞の治療において直面する課題となっている。しかしながら、転移は、有効な癌治療法の開発が困難である重要な理由の一つであることに変わりはない。
現在、癌治療には、外科的手術、組織への冷却・加熱法、超音波、高周波、放射線、などの様々な焼灼方法、薬剤、細胞障害性薬剤、モノクローナル抗体などの化学的手法、経動脈的化学固定化療法(TACE)、およびこれらの組み合わせなど、癌の種類やステージに応じた様々な治療法が存在する。しかし、これらの治療法には非常に高額な費用を伴う。また、現在の治療法は侵襲性が高く、毒性や副作用も大きいため、患者のQOL(生活の質)が全体的に低下してしまう。
悪性腫瘍に対する特異性は、健康な細胞へのダメージを回避し、治療に伴う毒性を低減するのに役立つ。悪性化・転移の際には、病態の変化や癌細胞による糖鎖修飾の変化により、糖鎖が修飾される。これらの修飾された糖鎖は、糖鎖特異的結合タンパク質または腫瘍特異的レクチンタンパク質(以下、レクチン)により容易に検出することができる。さらに、これらのタンパク質は、糖鎖に関連する情報の解読にも重要な役割を担っている。レクチンは、天然に存在する糖質結合タンパク質であり、糖鎖の変化により癌に関連する抗原を特異的に検出することができる。レクチンは、そのユニークな能力と特異性から、診断や治療の目的に役立っている。
癌胎児トムセン・フリーデンライヒ抗原(Galβ1-3GalNAc-α-O-Ser/Thr、TまたはTF)はヒト癌の90%以上に発現し、腫瘍の進行と転移に相関している。本出願人の先の特許出願WO2010/095143は、TFに対して高い結合特異性を有する菌類Sclerotium rolfsiiから単離されたレクチンを開示している。
特許CN106397554号は、サナギタケ(CCM)レクチンタンパク質を提供するための調製および適用方法について記載している。レクチン-CCMとその抗増殖活性をヒト子宮頸部HeLA癌細胞株に対してin vitroでテストした。特許KR1020030091386号は、韓国ヤドリギ(Viscum album coloratum)の抽出物と抽出物中のレクチン成分を調製する方法を記載している。このレクチンは、マウス実験モデルに投与したところ、抗腫瘍活性および抗転移活性が増強されることを示した。
組換えヤドリギレクチンは、皮膚癌、特に転移性悪性黒色腫(ステージIIIおよびステージIV)の治療に使用されている。特許RU0002639445号は、メラノサイト癌の治療のための、組換えヤドリギレクチンを含む医薬組成物について言及している。組換えヤドリギレクチンによる治療は、癌患者の生存率を著しく増大することが知られている。
特許US7045300号には、韓国のマメ科植物Maackia faurieiから抽出したレクチンタンパク質MFA(Maackia fauriei agglutinin)が記載されており、癌の診断薬として、またN-アセチルノイラミン酸が存在する疾患、特に乳癌、メラノーマ、または肝癌の抗増殖剤(または抗癌剤)として治療的に使用されることが記載されている。
米国特許10294295号には、VEGFアンタゴニストで血管新生を調節することによる癌の治療方法が記載されており、特にガレクチン-l配列は、癌の治療のために血管新生を阻害するVEGFアンタゴニストとして使用されてきた。特許KR1020030028855号には、レクチンを有効成分とする韓国ヤドリギ(Viscum album color alum)の抽出物を含有し、血管新生阻害およびテロメラーゼ活性阻害による転移の抑制を目的とした抗癌組成物について記載されている。
レクチンが抗腫瘍剤として有効であるとの報告は少ないが、その探索は十分に行われていない。レクチンは特異性が高く、細胞毒性も低く、大量合成が容易である。安価で優れた抗癌剤としてのレクチンの開発が求められている。また、より高い治療効果を得るためには、レクチンおよびレクチンと抗癌剤の組み合わせの作用の分子メカニズムを理解することが不可欠である。
本発明の目的は、レクチンを抗腫瘍剤として利用できるように研究開発することである。
本発明の一側面によれば、癌の治療方法に使用するための組換えレクチンが提供される。
本発明の別の側面によれば、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を投与することにより、癌細胞における血管新生を阻害することによる癌の治療方法において使用するための組換えレクチンが提供される。
本発明の別の側面によれば、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を投与することにより、癌細胞のアポトーシスを誘導することによる癌の治療方法に使用するための組換えレクチンが提供される。この側面によれば、レクチンは、癌細胞におけるアポトーシスの初期および後期ステージを誘導する。
本発明のさらに別の側面によれば、血管新生阻害剤および/またはアポトーシス誘導剤として組換えレクチンタンパク質が提供され、これにより、癌細胞の転移を禁止する。
アポトーシスとは、シグナル伝達経路によってプログラムされた細胞死のプロセスである。ここでは「アポトーシスを誘導する」とは、腫瘍細胞のプログラム細胞死に対応するシグナル伝達経路を活性化することを意味する。
転移とは、癌細胞が、その発生源から血液やリンパ液を介して体内の他の重要な部位に広がることである。「転移を禁止する」という用語は、重要な器官および身体部分への広がりを減少させることによって、癌の発生源または起源からの転移を減少させることを意味する。
本発明の別の側面では、癌細胞における血管新生を阻害することによる癌の治療方法が提供され、この方法は、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を被験者に投与することを含む。
本発明のさらに別の側面によれば、癌細胞におけるアポトーシスを誘導することによる癌の治療方法が提供され、この方法は、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を被験者に投与することを含んでいる。
本発明の一側面によれば、治療上有効量の組換えレクチンタンパク質および薬学的に許容される賦形剤を含む、癌の治療方法に使用するための医薬組成物が提供され、この組成物は癌細胞における血管新生を阻害する。
本発明のさらに別の側面によれば、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質と薬学的に許容される賦形剤とを含む、癌の治療方法において使用するための医薬組成物が提供され、この組成物は、癌細胞においてアポトーシスを誘導する。
本発明のさらに別の側面によれば、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を用いて腫瘍細胞の血管新生を防止する方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を用いて、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する方法が提供される。
本発明の上記側面によれば、癌は、腺癌または扁平上皮癌などの癌腫である。
本発明の特定の側面によれば、腺癌は、食道、膵臓、前立腺、子宮頸、乳、結腸または大腸、肺、胆管、膣、尿道または胃の腺癌である.
本発明の特定の側面によれば、扁平上皮癌は、皮膚、肺、口腔、甲状腺、食道、膣、子宮頸、卵巣、頭および/または首、前立腺または膀胱の扁平上皮細胞の癌である。
本発明のさらに別の具体的な側面によれば、癌は、脳腫瘍である。
本発明の先の側面のいずれか一つによれば、組換えレクチンタンパク質の有効濃度は、約0.1μg/mLから約200μg/mLである。
本発明の先の側面のいずれか一つによれば、組換えレクチンタンパク質の治療上有効な用量は、被験者の体重について約0.1mg/Kgから約100mg/Kgである。
本発明のさらなる側面によれば、組換えレクチンは、内皮細胞の転移および/または増殖を阻害し、VEGF分泌を調節し、癌細胞においてヘモグロビン含量を減少させ、癌細胞の新生血管形成を減少させる。
本発明の上記側面のいずれか一つによれば、組換えレクチンは、以下から選択される一つ以上のマーカーまたはシグナル伝達経路を調節する:ATF-2、ERK1/2;JNK;MEK-1;P90RSK;STAT-3;p53;MMPs;HGF;C-kit;;Her-2;GMSCF;IL-6;IL-8;p38/MAPK;PDGF;TNFR;MPO;ガレクチン-3;Fol-1;CD40L;アンジオポエチン-2;カリクレイン-5;オステオポンチン;TNF-α;エンドグリン;MAPK/EGFR/Ras/Raf;ADBR1;CCR5;IL-4/STAT6;NF-KB;PI3K/AKT/FOX03;PKC/AA2+;およびTNF-α/JNK、FADDcaspase-3、レプチン、コンタクチン-1、ノッチ-1およびHGFR/c-METを介するTRAIL。
上記側面のいずれか一つによれば、組換えレクチンは、SEQ ID NO.1に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列、またはSEQ ID NO.1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の相同性を有するアミノ酸配列によって表わされる。特定の側面によれば、組換えレクチンは、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3またはSEQ ID NO.4を有するアミノ酸配列から選択される。
上記側面のいずれか一つによれば、組換えレクチンは、特にレクチンの定義に関して参照により本明細書に組み込まれるWO2020/044296に定義される修飾レクチンタンパク質(すなわち、糖質結合部位に少なくとも一つのアミノ酸修飾を有する組換えレクチンタンパク質)である。特定の側面において、組換えレクチンは、SEQ ID NO.1またはSEQ ID NO.1と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列の糖質結合部位に少なくとも一つのアミノ酸修飾を含む。
別の具体的な側面において、糖質結合部位は、一次糖質結合部位および/または二次糖質結合部位である。
別の具体的な態様において、一次糖質結合部位は、SEQ ID NO.1またはSEQ ID NO.1と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列中の27、28、47、48、70、71、72および105のうち一つ以上から選択される位置を含む。
別の具体的な側面において、アミノ酸修飾の位置は、
i)27および/または28;
ii)47および/または48;
iii)70、71、および/または72;および/または
iv)105
のうちの一つ以上から選択される。
別の具体的な側面において、二次糖質結合部位は、SEQ ID NO.1またはSEQ ID NO.1と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列中の77、78、80、101、112、および114のうち一つ以上から選択される位置を含む。
別の具体的な側面において、アミノ酸修飾の位置は、
i)77、78、および/または80;
ii)101;および/または
iii)112、および/または114
のうちの一つ以上から選択される。
別の具体的な側面において、アミノ酸修飾は、置換するアミノ酸が元のアミノ酸を置換するようなアミノ酸置換である。
別の具体的な側面において、一次糖質結合部位におけるアミノ酸置換は、以下の一つ以上から選択される:
i)27位:保存、有利、または不利なアミノ酸であり、ここで保存アミノ酸は非極性または酸性であり、有利アミノ酸は極性または塩基性であり、不利アミノ酸は非極性である;
ii)28位:保存、有利、中性、または不利なアミノ酸であって、保存アミノ酸は非極性であり;有利アミノ酸は極性であり、中性アミノ酸は酸性または塩基性であり、不利アミノ酸は極性である;
iii)47位:塩基性または非極性である不利アミノ酸;
iv)48位:非極性である不利アミノ酸;
v)70位:非極性である不利アミノ酸;
vi)71位:非極性である不利アミノ酸;
vii)72位:非極性である不利アミノ酸;および/または
viii)105位:保存、有利、中性、不利アミノ酸であり、ここで保存アミノ酸は塩基性または非極性であり、有利アミノ酸は極性であり、中性アミノ酸は酸性、塩基性、または極性であり、および/または不利アミノ酸は極性、非極性、または酸性である。
別の具体的な側面において、二次糖質結合部位におけるアミノ酸置換は、以下の一つ以上から選択される:
i)77位:非極性である不利アミノ酸;
ii)78位:非極性である不利アミノ酸;
iii)80位:非極性である不利アミノ酸。
iv)101位:有利、不利、または中性アミノ酸であり、ここで有利アミノ酸は極性または塩基性であり、不利アミノ酸は非極性であり、中性アミノ酸は非極性または酸性である;
v)112位:非極性である有利アミノ酸;
vi)114位:極性である有利アミノ酸。
別の具体的な側面では、修飾レクチンタンパク質は、SEQ ID NO.1のN末端またはSEQ ID NO.1と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列に少なくとも一つのアミノ酸修飾を含み、N末端は、SEQ ID NO.1の1および/または2、または少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、97%または99%の相同性を有する配列のこれに対応する位置から選択される位置を含む。
別の具体的な側面において、アミノ酸修飾は、1位におけるアミノ酸置換であり、置換アミノ酸は、スレオニンまたはバリンではない。
別の具体的な側面において、置換アミノ酸は、以下から選択される:アラニン、グリシン、プロリンまたはセリン。
別の具体的な側面において、アミノ酸修飾は、2位におけるアミノ酸置換であり、置換アミノ酸がトリプトファンである。
別の具体的な側面において、開始剤メチオニンの開裂は、対照と比較して増加または減少する。
別の具体的な側面において、位置76におけるアミノ酸修飾は、非極性アミノ酸によるアミノ酸置換である。
別の具体的な側面において、非極性アミノ酸は、以下から選択される:グリシン、バリンまたはロイシン。
別の具体的な側面において、44位または89位におけるアミノ酸修飾は、非極性アミノ酸によるアミノ酸置換である。
別の具体的な側面において、非極性アミノ酸は、以下から選択される:ロイシン、イソロイシン、またはバリン。
別の具体的な側面では、修飾レクチンタンパク質は、可溶性、部分的に可溶性または不溶性、および/または細胞毒性を有する。
別の具体的な側面では、修飾レクチンタンパク質は、対照の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である細胞毒性を有する。
別の具体的な側面では、修飾レクチンタンパク質は、対照の10%未満の細胞毒性率を有する、または細胞毒性を有さない。
別の具体的な側面では、修飾レクチンタンパク質は、対照と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%増加する細胞毒性率を有する。
別の具体的な側面において、修飾レクチンタンパク質は、500、400、300、250、200、または150以下のアミノ酸長さである。
特定の側面において、本発明は、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの治療上有効量を用いて腫瘍細胞における血管新生を防止する方法を提供する。
別の具体的な側面において、本発明はさらに、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの治療上有効な量を用いて腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する方法を提供する。
さらに別の具体的な側面において、本発明は、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンを約0.1mg/Kgから100mg/Kg体重使用する効果的な抗血管新生を提供するものである。
本発明はさらに、約0.1μg/mLから200μg/mLの濃度の、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンを用いる腫瘍細胞における効果的な抗血管新生に関するものである。
本発明はさらに、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンを約0.1mg/Kgから100mg/Kg体重用いる効果的なアポトーシスに関するものである。
本発明はさらに、約0.1μg/mLから約200μg/mLの濃度の、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンを用いる腫瘍細胞の効果的なアポトーシスに関するものである。
さらに別の具体的な側面において、本発明は、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンを用いて、腫瘍細胞における血管新生を防止することにより、および/またはアポトーシスを誘導することにより、腺癌、扁平上皮癌および/または脳癌を治療する方法を提供する。
さらに別の具体的な側面では、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンを約0.1mg/Kgから100mg/Kg体重で使用し、血管新生を阻止することにより、および/または腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導することにより、腺癌、扁平上皮癌および/または脳腫瘍を治療する方法を提供する。
さらに別の側面において、本発明は、約0.1μg/mLから約200μg/mLの濃度の、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンを用いて、腫瘍細胞における血管新生を防止することにより、および/またはアポトーシスを誘導することにより、腺癌、扁平上皮癌および/または脳癌を治療する方法を提供するものである。
本発明はまた、乳癌細胞株、大腸癌細胞株、膵臓癌細胞株および脳腫瘍細胞株におけるSEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンのin vitroアポトーシス作用の評価に関する。
本発明はさらに、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの、癌の病態に関与する主要なシグナル伝達経路に対する調節効果の評価に関する。
本発明はさらに、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの抗腫瘍能の評価に関する。
さらなる側面において、本発明は、血管新生阻害剤および/またはアポトーシス誘導剤としての、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンに関連し、これにより、癌細胞の転移を禁止する。
添付の配列の簡単な説明
SEQ ID NO:1:ネイティブなS.rolfsiiレクチンアミノ酸塩基配列を表す。
SEQ ID NO:2:S.rolfsiiレクチンアミノ酸配列の変異体(WO2010/095143でRec-2として報告されている)を表す。
SEQ ID NO:3:S.rolfsiiレクチンアミノ酸配列の変異体(WO2010/095143においてRec-3として報告されている)を表す。
SEQ ID NO:4:S.rolfsiiレクチンアミノ酸配列の変異体(WO2014/203261において報告されている)を表す。
発明の詳細な説明
ここで使用される用語「レクチン」は、糖質結合タンパク質を意味する。
ここで使用される用語「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指す。
ここで使用する用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の機能を有するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝暗号によってコード化されているものであり、タンパク源性アミノ酸を含む。また、天然に存在するアミノ酸には、細胞内で翻訳された後に修飾されたものも含まれる。合成アミノ酸には、セレノシステインやピロリジンなどの非定型アミノ酸が含まれる。典型的には、合成アミノ酸は、タンパク質生成アミノ酸ではない。
アミノ酸は、異なる生化学的性質に従ってグループ化できることが理解される。例としては、極性アミノ酸、非極性アミノ酸、酸性アミノ酸、および塩基性アミノ酸が含まれる。一つの実施形態では、アミノ酸修飾に使用されるアミノ酸は、極性、非極性、酸性、塩基性、セレノシステイン、ピロリジンおよび非定型からなる群から選択される少なくとも一つであるが、これらに限定されるものではない。
ここで使用される用語「相同性」または「相同の」は、所定の領域または部分にわたって少なくとも部分的に同一性を共有する二つ上の参照される実体を指す。相同性または同一性のエリア、領域またはドメインは、相同性を共有するまたは同一である二つ以上の参照される実体の部分を指す。したがって、二つの配列が一つ以上の配列領域に亘って同一である場合、これらの領域で同一性を共有する。実質的な相同性とは、参照分子の一つ以上の構造または機能(例えば、生物学的機能または活性)の少なくとも一部の構造または機能、あるいは相同性を共有する参照分子の関連する/対応する領域または部分を有するかまたは有することが予測されるように、構造的または機能的に保存されている分子を意味する。
一つの実施形態では、二つの配列間の「相同性」率は、デフォルトパラメータを有するBLASTPアルゴリズムを用いて決定される(Altschulら、Nucleic Acids Res. 1997 Sep 1;25(17):3389-402)。特に、BLASTアルゴリズムは、URL:https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiを使用してインターネット上でアクセスすることができる。代替の実施形態では、グローバル配列アラインメントについて、二つの配列間の相同性率は、デフォルトパラメータを使用するEMBOSS Needleを使用して決定される。特に、EMBOSS NEEDLEアルゴリズムは、URL:https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/を使用してインターネット上でアクセスすることができる。
特に示さない限り、本明細書において、「相同性」という用語は、用語「配列同一性」と互換的に使用される。
用語「組換え」は、核酸またはポリペプチドが人為的にまたは合成的に(すなわち、非天然に)改変されたことを意味する。この改変は、自然環境若しくは自然状態において、または自然環境若しくは自然状態から除去された物質に対して行われることがある。例えば、「組換え核酸」は、例えばクローニング、DNAシャッフリングまたは他のよく知られた分子生物学的手順の間に、核酸を組み換えることによって作られるものである。「組換えDNA分子」とは、このような分子生物学的手法により結合されたDNAのセグメントからなるものである。ここで使用される用語「組換えタンパク質」または「組換えポリペプチド」は、組換えDNA分子を使用して発現されるタンパク質分子を指す。本発明に係る組換えタンパク質は、SEQ ID 1のアミノ酸配列を有するタンパク質であり、SEQ ID 1とも称される。
用語「組換えタンパク質」は、ここでは、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、または患者への投与により、ここに記載の化合物を(直接的または間接的に)提供することができる他の化合物を対象とすることが意図される。塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグの調製は、本技術分野で既知の方法によって実施することができる。
用語「有効な」または「治療上有効な」は、所望の生物学的反応を引き出すのに十分な効果を意味する。当業者に理解されるように、発明の組み合わせの効果は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤の薬物動態、治療される疾患、投与様式、および患者などの要因によって変化し得る。治療は、一般に、一つ以上の症状または臨床マーカーが減少した場合に「有効」である。あるいは、疾患、障害または医学的状態の進行が減少または停止した場合、治療は「効果的」である。
ここで使用される用語「治療上有効な量」は、所望の臨床結果をもたらす(すなわち、治療効果を達成する)のに十分な量である。治療上有効な量は、1回または複数回の投与で投与することができる。本発明の目的のために、組換えタンパク質の治療上有効な量は、疾患状態を緩和する、改善する、安定化する、逆転する、予防する、遅らせるまたは遅延させるのに十分な量である。
用語「医薬組成物」または「薬学的に許容される組成物」または「薬学的に許容される製剤」は、ここで開示される化合物と希釈剤または担体のような医薬賦形剤との混合物を指す(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 22nd ed., Pharmaceutical Press (Sep.15,2012)、およびhandbook of Pharmaceutical Excipients,6th edition,Raymond Rowe,Pharmaceutical Press(2009)を参照されたい)。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。医薬組成物は、一般に、特定の意図された投与経路に合わせて調整される。
用語「シグナル伝達経路」とは、細胞機能、細胞分化、細胞増殖、細胞死などのプロセスを維持するために、細胞内の分子群が協働する化学反応のカスケードを指す。シグナル伝達経路の活性化/抑制では、生理活性物質からのシグナルが細胞上または細胞内の特定のタンパク質受容体に結合し、シグナルを活性化する。最初の分子が活性化すると、その活性化シグナルが他の分子に伝達され、細胞の機能が発揮されるまでこのプロセスが繰り返される。シグナル伝達経路の異常な活性化は、癌などの疾病を引き起こす可能性がある。異常なシグナル伝達経路の原因となる特定の分子を標的とすることにより、癌の治療につながる可能性がある。
本発明の第1の側面によれば、癌の治療方法に使用するためのレクチンが提供される。
本発明の別の側面によれば、癌細胞における血管新生を阻害することにより癌を治療する方法に使用するための組換えレクチンが提供され、この方法は、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を投与することを含む。
本技術分野で知られているように、「血管新生」とは、新しい血管が増殖することである。抗血管新生剤は、腫瘍が血管を増殖させるのを阻止することによって機能する、既知の抗癌剤である。したがって、ここで使用されるように、「血管新生を阻害する」とは、血管の形成を防止、遅延または減少させることと理解されるであろう。驚くべきことに、本発明者らは、レクチンが血管新生を阻害することによって抗癌作用を発揮することを見出した。
腫瘍、例えば哺乳類体、例えばヒトの体内の腫瘍において血管新生が防止/抑制されることが理解されよう。
レクチンは、天然に存在するものであってもよい。一つの実施形態において、レクチンは、菌類および植物からなる群に由来するが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、レクチンは、真菌レクチンである。好適な真菌レクチンは、Agaricus bisporus(例えば、ABL)、Sclerotium rolfsii(例えば、SRL)およびXerocomus chrysenteron(例えば、XCL)由来であってよい。
いくつかの実施形態では、レクチンは、S. rolfsiiなどの土壌媒介性植物病原性真菌に由来する。「由来する」とは、レクチンが、ネイティブな配列と同一または類似のアミノ酸配列からなり、組換えDNA技術を使用して実験室で合成されることを意味するものと理解されるであろう。レクチンは、ネイティブ配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有するアミノ酸配列から構成されてもよい。
レクチンは、SEQ ID NO:1に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有する。
いくつかの実施形態では、レクチンは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
レクチンは、組換えであってもよいし、de novoで合成されてもよい。組換えタンパク質の調製方法は、当業者によく知られているであろう。例えば、レクチンをコードする核酸配列を含むプラスミドやウイルスベクターなどの組換えDNA分子を提供することができる。この核酸配列は、適切な宿主細胞におけるレクチンの発現を制御することができるプロモーターに作動可能なように連結されていてもよい。組換えDNA分子は、本技術分野で知られている方法、例えば、形質転換を用いて、適切な宿主細胞に挿入することができる。
適切な宿主細胞には、原核細胞(例えば、大腸菌など)、下等真核細胞(例えば、酵母細胞)、高等真核細胞が含まれる。そして、宿主細胞を適当な条件下で培養することにより、組換えレクチンを発現させることができる。このようにして、宿主細胞から発現産物として単離することにより、組替えレクチンを取得することができる。組換えタンパク質は、当該技術分野において知られている従来の技術、典型的には従来のクロマトグラフィー法によって精製することができる。
いくつかの実施形態において、レクチンは、TF抗原に特異的である。いくつかの実施形態では、レクチンは、O-糖鎖に特異的である。
いくつかの実施形態において、レクチンは、ヒト癌細胞株に対して100μg/mL以下、80μg/mL以下、50μg/mL以下、25μg/mL以下、20μg/mL以下、15μg/mL以下または10μg/mL以下のIC50値を有する。
いくつかの実施形態では、レクチンは、ヒトPA-1細胞株のような卵巣癌細胞株に対して25μg/mL以下のIC50値を有する。
いくつかの実施形態では、レクチンは、ヒトKB細胞株のような子宮頸癌細胞株に対して20μg/mL以下のIC50値を有する。
いくつかの実施形態では、レクチンは、ヒトHT-29細胞株などの大腸癌細胞株に対して50μg/mL以下のIC50値を有する。
いくつかの実施形態では、レクチンは、ヒトPANC-1細胞株などの膵臓癌細胞株(例えば、膵臓上皮癌または管状上皮癌)に対して25μg/mL以下のIC50値を有する。
いくつかの実施形態では、レクチンは、ヒトMDA-MB-231細胞株などの乳癌細胞株(例えば、乳腺腺癌、乳腺癌または乳腺転移癌)に対して10μg/mL以下のIC50値を有する。
いくつかの実施形態では、レクチンは、ヒトT-24細胞株などの膀胱癌細胞株(例えば、尿路膀胱癌または移行細胞癌)に対して15μg/mL以下のIC50値を有する。
いくつかの実施形態では、レクチンは、U251 MG(膠芽腫)およびIOMM-Lee(髄膜腫)などの脳腫瘍細胞株に対して、それぞれ15μg/mL以下および20μg/mL以下のIC50値を有する。
所定の治療薬のIC50値は、当業者に知られているような標準的な技法を用いて決定することができる。例えば、特定の種類の癌に対するレクチンのIC50値は、その種類の癌を代表する適切な細胞株を用いてin vitroで決定することができる。簡単に説明すると、細胞株をレクチンタンパク質で処理すればよく、任意で、確立された抗癌剤である対照剤と一緒に処理すればよい。細胞毒性は、当業者によく知られたカルセインAM細胞生存率アッセイまたはMTTアッセイまたは当業者に知られた他の方法プロセスを用いて、非処理試料、試験試料および対照において推定することができる。非処理細胞に関する細胞毒性率は、式を用いて計算され得る。
細胞毒性=[(RFU非処理-RFUsample)/RFU非処理]*100
RFU:相対蛍光単位
IC50値は、Pad Prism version 4.01ソフトウェアなどの当業者に公知のソフトウェアを用いて算出することができる。
レクチンは、薬学的に許容される形態、例えば、液体(例えば、水溶液もしくは懸濁液、または油性溶液もしくは懸濁液として)、固体(例えば、カプセルもしくは錠剤)、凍結乾燥粉末、スプレー、クリーム、ローションもしくはゲル、およびビロソーム、リポソーム、ニオソーム、トランスファソーム、エソソーム、スフィンゴソーム、ファルマコソーム、多重膜小粒子、ミクロスファーなどの小胞薬物送達系で提供されてもよいが、これらに限らない。
ここで用いられる「水溶液」とは、SEQ ID NO.1のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなどの固体または凍結乾燥剤を、水またはバッファを含む水に溶解することによって生成される溶液である。また、SEQ ID NO.1のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなどの薬剤が液状であり、水またはバッファを含む水と混合することによって水溶液が形成される。
用語「癌」、「腫瘍」および「腫瘍」は、当業者に理解されるように、本願において互換的に使用され得る。癌または腫瘍は、異常な細胞増殖に起因する。それらは、正常な細胞が制御不能に増殖し、群がるときに形成される。腫瘍の形成は、しばしば、組織、器官または生物の正常な機能に影響を与える。
癌は体内のどの場所でも発生し、また体の他の部位に転移することもある。癌細胞の広がりは転移と呼ばれる。したがって、用語「癌」は、原発性癌と転移性癌の両方を包含する。ここで使用されるように、用語「癌」は、固形腫瘍および血液由来腫瘍を含むが、これらに限定されるものではない。
用語「癌」は、皮膚、組織、臓器、骨、軟骨の疾患を含む。本発明の方法および組成物によって治療され得る癌の例としては、これらに限定されないが、胆管、膀胱、骨、脳、***、頸部、結腸、食道。胃腸(回腸、結腸、直腸および/または肛門を含む)、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、甲状腺、尿道、膣および子宮の癌が挙げられる。癌は良性か悪性か、また悪性のどの段階であるかは問われない。
癌は、上皮組織、非上皮組織、皮膚を構成する細胞または臓器を裏打ちする組織、免疫系の細胞、結合組織、または脊髄もしくは脳の細胞の癌であってよい。
いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍であってよい。
癌は、癌腫であってもよい。いくつかの実施形態では、癌は腺癌である。腺癌は、食道、膵臓、前立腺、子宮頸部、***、結腸または大腸、肺、胆管、膣、尿道または胃の腺癌であってもよい。
いくつかの実施形態では、癌は扁平上皮癌である。扁平上皮癌は、皮膚、口腔、肺、甲状腺、食道、膣、子宮頸、卵巣、頭および/または首、前立腺または膀胱の扁平上皮癌であってよい。
いくつかの具体的な実施形態では、癌は脳腫瘍/癌であってもよく、これには、グリオブラストーマ、髄膜腫、星細胞腫、神経膠腫、および神経芽腫が含まれることがある。
用語「治療」は、癌を実質的に治癒すること、疾患の進行を防止もしくは減速すること、または疾患の重症度を低減すること、転移を防止もしくは低減すること、腫瘍の増殖を阻害すること、腫瘍の質量を低減すること、または腫瘍を除去すること、および/または癌に関連する症状を(一時的または永久的に)改善することを含んでよいことが理解されよう。症状は、癌の種類によって異なるが、痛み、機能の低下または喪失、吐き気および/またはつわり、発熱、腫瘍形成、免疫抑制、および/または疲労を含んでもよいことができることが理解されよう。
治療は、治療上有効な量のレクチンを被験者に投与することを含んでよい。いくつかの実施形態において、レクチンは、約0.05mg/Kgから約1000mg/Kg、約0.1mg/Kgから約100mg/Kgの用量で投与される。
いくつかの実施形態では、治療は、被験者におけるレクチンの有効濃度が約0.001μg/mLから約1000μg/mL、0.05μg/mLから約500μg/mL、0.1μg/mLから200μg/mL、0.15μg/mLから150μg/mLとなるように被験者にレクチンを投与することである。
いくつかの実施形態では、癌は、乳癌(例えば乳腺癌)、子宮頸癌、卵巣癌(例えば卵巣扁平上皮癌)および膵臓癌(例えば膵臓腺癌)、膀胱癌(例えば、尿路上皮癌、尿路上皮癌)、脳腫瘍(例えば、膠芽腫、髄膜腫、星細胞腫、神経膠腫および神経芽腫)であり、治療は、被験者におけるレクチンの有効濃度が0.1μg/mLから200μg/mLであるように、被験者にレクチンを投与することから構成される。
いくつかの実施形態では、治療は、レクチンの非細胞毒性濃度を投与することを含む。
レクチンの投与は、注射(静脈内(ボーラスまたは注入)、動脈内、腹腔内、皮下(ボーラスまたは注入)、脳室内、筋肉内、またはくも膜下を含む)、経口摂取(例えば錠剤、ゲル、ロゼンジまたは液体の)、吸入、局所、粘膜(口腔、鼻腔または直腸粘膜など)経由、スプレー、錠剤、経皮パッチ、皮下移植または坐剤の形態でのなどの任意の適切な送達によるものであってもよいが、これらに限られない。
被験者は、哺乳類の被験者であってよい。いくつかの実施形態では、被験者は、ヒトである。
抗血管新生
血管新生は、癌の増殖および進行において重要な役割を果たす。腫瘍実質組織に貫通する血管は、増殖する細胞に栄養と酸素を供給する。腫瘍の血管新生の制御は、腫瘍細胞とマクロファージや線維芽細胞のような宿主浸潤細胞の両方から分泌されるいくつかの活性化因子(血管新生因子)と阻害因子(抗血管新生因子)の正味のバランスに依存する。血管新生因子は、血管基底膜を分解するプロテアーゼとプラスミノーゲンアクチベーターを内皮細胞に分泌させ、周囲のマトリックスへの細胞の侵入と新しい血管の形成を促す。強力な抗血管新生分子は、血管新生促進因子に結合する、または内皮細胞表面上の受容体の活性を阻害することによって、内皮細胞の増殖および移動を抑制する。
したがって、いくつかの実施形態において、レクチンは、内皮細胞などの細胞の移動および/または増殖を阻害することができる。
細胞の移動および/または増殖を阻害するレクチンの能力は、ここに記載されるような標準的な技法を使用して試験することができる。
細胞増殖抑制効果を示すSEQ IDNO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの非細胞毒性濃度は、したがって、内皮細胞における抗増殖効果は、10μg/mLから100μg/mLでもよい。
ドキソルビシンをポジティブ対照として、組替えレクチンの抗増殖効果の評価を行った。組替えレクチンは血清を介した細胞増殖に対して用量依存的な抑制効果を示した。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有するような本発明の組替えレクチンは、血清を介した細胞増殖に対して用量依存的な阻害効果を示した。SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの非細胞毒性濃度は、約20μg/mLから100μg/mLの範囲で、内皮細胞における抗増殖効果、ひいては抗血管新生効果を示した。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンのヒト内皮細胞EA.Hy926における抗血管新生作用の決定は、レクチンの濃度が約20μg/mLから100μg/mLの範囲で行った。20μg/mLから100μg/mLの濃度では、参照と比較して15.51%から58.53%の内皮細胞増殖の抑制が見られた。同じ濃度範囲では、対照(DMEM)と比較して72時間後の内皮細胞の転移を71.5%から82.4%抑制することが示された。
本発明はさらに、組換えレクチン(SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなど)のin vivoでの抗血管新生能をC57BL/6マウスのマトリゲル・プラグ・アッセイを用いて評価することに関する。SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有するレクチンを投与したマウス群では、マトリゲル・プラグのホモジネート中のヘモグロビン量が23.6%減少したのに対し、スニチニブを投与した群ではマトリゲル・プラグのホモジネート中のヘモグロビン量が59.2%と最も減少していることが示された。さらに、SEQ ID No2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンを10mg/Kg投与したマウスでは、新生血管がわずかに減少していた。
本発明は、さらに、(SEQ ID No2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなどの)組換えレクチンの癌の病態におけるシグナル伝達経路に対する調節効果の評価に関する。
レクチンは、MEK-1;P90RSK;STAT-3;p53;MMPs;HGF;EGF;C-kit;VEGF;VEGFR;Her-2/3;GMSCF;IL-6;IL-8;p38/MAPK;PDGF;MPO;Fol-1;CD40L;アンジオピエチン-2;オステオポンチン;エンドグリン;P1GF;BMP-9;エンドセリン-1から選ばれる一種以上のバイオマーカーを調節してもよい。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの様々なシグナル伝達経路に対する調節効果、および癌において重要な役割を果たすMAPK/EGFR/Ras/Raf、CCR5、IL-4/STAT6、NF-KB、PI3K/ACT/FOXO3、PKC/Ca2+およびTNF-α/JNK経路の阻害効果が実証されている。
いくつかの実施形態では、レクチンは、MAPK/EGFR/Ras/Raf;ADBR1;CCR5;NF-KB;PI3K/ACT/FOXO3;およびPKC/CA2+から選択される一つ以上のバイオマーカーまたはシグナル伝達経路を調節する。
MAPK/EGFR/Ras/Raf経路およびADBR1経路に対する組換えレクチンの阻害濃度範囲は0.158pg/mLから50μg/mLであり、これら二つの経路についてそれぞれ2%から48%および26%から49%の有効阻害率で阻害される。
NF-KB経路、TNF-α/JNK経路、PI3K/ACT/FOXO3経路に対する組換えレクチンの阻害濃度範囲は0.5μg/mLから50μg/mLであり、三つの経路についてそれぞれ3%から13%、12%から45%、2%から73%の有効阻害率で阻害される。
CCR5経路に対する組替えレクチンの阻害濃度範囲は0.058μg/mLから50μg/mLの範囲であり、有効阻害率は21%~70%である。
PKC/Ca2+経路に対する組換えレクチンの阻害濃度範囲は、0.00158μg/mLから0.5μg/mLの範囲であり、有効阻害率は5%から19%である。
いくつかの実施形態では、レクチンは、VEGFレベルを調節する。ここで使用されるように、用語「調節する」は、バイオマーカーまたはシグナル伝達経路の発現または活性レベルを、正常レベル(すなわち、非処理細胞における)と比較して増加または減少させる薬剤の能力を指すことが理解されよう。いくつかの実施形態では、レクチンは、癌細胞などの細胞におけるVEGFの発現を増加させる。
血管上皮成長因子(VEGF)は、新生血管形成に関連する重要な血管形成分子であり、血管内皮細胞再生の重要なレギュレータである。VEGFレベルの低下は通常、抗血管新生作用と関連している。しかし、C-26結腸癌に対して顕著な抗腫瘍効果が示されたプロテアソーム阻害剤(PSI)などのいくつかの抗癌剤の活性は、mRNA発現とタンパク質産生の両方のレベルで、VEGFのアップレギュレーションと関連していた。VEGFの産生の増大は、内皮細胞がPSIのプロアポトーシス活性を感受しやすくし、腫瘍増殖の抑制に関連することが示唆されている。
驚くべきことに、本発明者らは、本発明に係るレクチンで癌細胞を処理した場合、非処理の細胞と比較して、VEGFレベルが上昇することを見出した。理論にとらわれることなく、本発明のレクチンは、PSIと同様に、レクチンのプロアポサイト活性に対する内皮細胞の感受性を高めることにより抗癌作用を発揮し、これにより、抗血管新生作用を発揮すると考えられる。
したがって、いくつかの実施形態では、レクチンは、さらに、癌細胞のアポトーシスを誘導する。
レクチンの抗血管新生効果は、腫瘍の質量または体積の減少、腫瘍の成長阻害率(%TGI)、または腫瘍の消失によって決定することができる。いくつかの実施形態では、レクチンの抗血管新生効果は、未処置対照と比較し、腫瘍が所定の質量または体積に到達するのに要する時間の増加によって決定されてもよい。
いくつかの実施形態では、レクチンは、腫瘍の成長を少なくとも20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または少なくとも60%阻害する(または阻害することが可能である)。腫瘍増殖抑制率(%TGI)は、ここで記載される方法を用いて決定することができる。
いくつかの実施形態では、レクチンは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、10、12または少なくとも14日の腫瘍増殖遅延を及ぼす(または及ぼすことが可能である)。腫瘍増殖遅延(TGD)は、ここで記載される方法を用いて決定することができる。
本発明のさらなる側面によれば、被験者の癌を治療する方法が提供され、この方法は、被験者にレクチンを投与することを含み、このレクチンは、血管新生を阻害することによって癌の治療を効果的に行う。
本発明は、さらに、本発明に係るレクチンを用いて被験者における腫瘍の血管新生を防止する方法に関する。
いくつかの実施形態において、腫瘍における血管新生を防止する方法は、SEQ ID NO.1のアミノ酸配列またはその相同配列を有する組換えレクチンなどのレクチンを非細胞障害性濃度で使用することを含む。レクチンの非細胞毒性濃度は、約0.1μg/mLから約200μg/mLであってよい。本方法は、レクチンの溶液(例えば、約0.1μg/mLから約200μg/mLのSEQ ID NO.1のアミノ酸配列またはその相同配列を有する組換えレクチンの溶液)を腫瘍細胞に接触させることを含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明は、約0.1mg/Kgから100mg/Kg体重のレクチン、例えばSEQ ID NO.1またはその相同配列のアミノ酸配列を含む組み換えレクチンを使用して、腫瘍細胞において抗血管新生を作用させることに関する。
ここで使用されるように、mg/Kg体重への言及は、ヒト体重のような哺乳類体重を指す。
腫瘍細胞における効果的な血管新生抑制のために約0.1μg/mLから約200μg/mLの濃度のSEQ ID NO.1のアミノ酸配列またはその相同配列を有する組換えレクチンの溶液を哺乳動物体の腫瘍細胞に約0.1mg/Kgから100mg/Kgの量で接触させてという側面によれば。
アポトーシス
本発明のさらに別の側面によれば、アポトーシスを誘導することにより癌を治療する方法に使用するためのレクチンが提供される。
本発明は、治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を投与することを含む、癌細胞におけるアポトーシスを誘導することによる癌の治療方法において使用するための組換えレクチンを提供する。この側面によれば、レクチンは、癌細胞におけるアポトーシスの初期および後期ステージを誘導する。
本発明は、さらに、本発明に係る組換えレクチンを用いて、被験者の腫瘍にアポトーシスを誘導する方法に関する。
本発明はまた、(SEQ ID NO.1またはSEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなどの)レクチンの癌細胞株、例えば、乳癌細胞株および/または膵臓癌細胞株に対するin vitroアポトーシス効果の評価に関する。レクチンのin vitroアポトーシス作用は、当業者に公知の標準的なアッセイ技法を使用して決定することができる。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの乳癌細胞株としてのMDA-MB-231および膵臓癌細胞株としてのPANC-1細胞株に対するin vitroアポトーシス効果の評価をJC-1アッセイを用いて行った。評価は、ドキソルビシンをポジティブ対照として、組替えレクチンの濃度を約2.5μg/mL~80μg/mLとして行った。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンは、PANC-1細胞株では9.5%~51.7%、MDA-MB-231細胞株では19.8%~54.1%の範囲でミトコンドリア膜の脱分極を有意に誘導することが確認された。
MDA-MB-231およびPANC-1細胞株に対するSEQ ID NO.2のin vitroアポトーシス効果をアネキシン-V染色で評価したところ、標準品(ドキソルビシン)が後期アポトーシス効果のみを示したのに対し、組み換えレクションは癌細胞株に対して初期および後期アポトーシス効果を高いレベルで有することが示された。さらに、細胞周期分析により、SEQ ID NO.2で処理した場合、アポトーシス細胞集団が増加することが示された。
さらに、本発明は、(SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなどの)組換えレクチンの癌の発症に関与するシグナル伝達経路に対する調節効果の評価に関する。
SEQ ID NO.2は、MEK-1;P90RSK;STAT-3;p53;C-kit;IL-6;IL-8;p38/MAPK;MPO;Fol-1;CD40L;ATF-2、ERK1/2;JNK;TNFR;ガレクチン-3;カリクレイン-5およびTNF-αから選ばれる一つ以上のバイオマーカーの調整によりアポトーシスを誘発した。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンの様々なシグナル伝達経路に対する調節効果、ならびに癌において重要な役割を果たすMAPK/EGFR/Ras/Raf、CCR5、IL-4/STAT6、NF-KB、PI3K/ACT/FOXO3、PKC/Ca2+およびTNF-α/JNK経路の阻害に対する効果が実証される。
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO.2は、IL-4/STAT6;NF-KB;PI3K/ACT/FOXO3;およびTNF-α/JNKから選択される一つ以上のバイオマーカーまたはシグナル伝達経路を調節する。
NF-KB、PI3K/AKT/FOXO3およびTNF-α/JNK経路に対する組換えレクチンの阻害濃度範囲は0.5μg/mLから50μg/mLの間であり、これらの3経路に対する有効阻害率はそれぞれ3%から13%、2%から73%、12%から45%である。
IL-4/STAT6経路に対する組換えレクチンの阻害濃度範囲は、0.0158μg/mLから0.5μg/mLの範囲であり、16%から28%の有効な阻害を有する。
いくつかの実施形態では、腫瘍にアポトーシスを誘導する方法は、SEQ ID NO.1のアミノ酸配列またはその相同配列を有する組換えレクチンなどのレクチンの非細胞毒性濃度を用いることを含んでいる。レクチンの非細胞毒性濃度は、約0.1μg/mLから約200μg/mLであってよい。本方法は、約0.1μg/mLから約200μg/mLの濃度のSEQ ID NO.1のアミノ酸配列またはその相同配列を有する組み換えレクチンまたは組み換えレクチンの溶液を腫瘍細胞に接触させることを含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明は、約0.1mg/Kgから100mg/Kg体重のSEQ ID NO.1のアミノ酸配列またはその相同配列を含む組換えレクチンなどの組換えレクチンを用いて腫瘍細胞においてアポトーシスを効果的に行うことに関連する。
癌の治療または腫瘍細胞の効果的なアポトーシスは、腫瘍体積の減少によって、または一つ以上の腫瘍の消失によって決定することができる。
いくつかの実施形態では、組換えレクチンは、SEQ ID No1またはSEQ ID No2またはSEQ ID No3、またはSEQ ID No4のアミノ酸配列を含む、またはこれらからなる。
組成物
癌の治療方法、血管新生を防止する方法、またはアポトーシスを誘導する方法は、組換えレクチンを含む組成物を腫瘍に接触させることを含む場合がある。例えば、SEQ ID NO.1のアミノ酸配列を有する組換えレクチンまたはその相同配列を有する組換えレクチンの溶液を腫瘍細胞に接触させることができる。組成物中の組換えレクチンの濃度は、約0.001μg/mLから約1000μg/mL、約0.05μg/mLから約500μg/mL、約0.1μg/mLから約200μg/mL、または約0.15μg/mLから約150μg/mLとすればよい。
癌の治療方法、血管新生を防止する方法またはアポトーシスを誘導する方法は、組換えレクチンを哺乳動物体重の約0.05mg/Kgから約1000mg/Kg、または約0.1mg/Kgから約100mg/Kgの量で投与することを含む場合がある。
さらなる側面によれば、腫瘍細胞における血管新生を防止することおよび/またはアポトーシスを誘導することによる腺癌もしくは扁平上皮癌または脳癌の治療方法であって、この方法は、腫瘍細胞を、SEQ ID NO.1 のアミノ酸配列を有する組換えレクチンまたはその相同配列などの組換えレクチンの溶液に接触させることを含む。組換えレクチン(例えばSEQ ID NO.1、またはSEQ ID NO.2)の溶液の濃度は、約0.1μg/mLから200μg/mLであってよい。
本発明はさらに、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなどの組換えレクチンの抗腫瘍能の評価に関するものである。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンの抗腫瘍能を、PA-1(卵巣奇形癌)異種移植モデルを用いて評価した。組替えレクチンを投与したヌードマウスは、投与により腫瘍サイズの有意な減少を示した。
また、KB(子宮頸癌)異種移植モデルを用いて、組替えレクチンの抗腫瘍性を評価した。その結果、腫瘍の増殖抑制率は標準薬(ドキソルビシン)と同程度であった。
さらに、HT-29(大腸腺癌)異種移植モデルを用いて、組替えレクチンの抗腫瘍能を評価した。20mg/Kgおよび30mg/Kg体重で投与(毎日)した動物は、ビヒクル対照群に比べ、腫瘍体積の有意な減少を示した。
さらに、T24(膀胱/転移性細胞癌)異種移植モデルを用いて、動物に組替えレクチンを投与した。T24細胞移植モデルにおいて、組替えレクチンはドキソルビシン投与群に匹敵する抗腫瘍性を示した。
さらに、乳癌細胞株(MCF-7およびMDA-MB-231)を用いて、組替えレクチンの抗腫瘍活性を評価した。両ケースにおいて、腫瘍増殖抑制率は標準薬(ドキソルビシン)に匹敵していた。
さらに、PANC-1(膵臓/管上皮癌)細胞株も組替えレクチンで処理したところ、ゲムシタビン処理細胞株に匹敵する高い抗腫瘍効果を示した。
本発明はさらに、血管新生阻害剤またはアポトーシス誘導剤として使用し、それによって癌細胞の転移を阻害し、および/またはプログラム細胞死を引き起こすための組換えレクチン(例えば、SEQ ID NO.2 のアミノ酸配列を有する組換えレクチン)にも関する。
本明細書に記載される実施形態のいずれも、特に断らない限り、互いに、および本発明の任意の側面と組み合わせることができることが理解されるであろう。
本実施例のセットは、性能のベストモードを示し、いかなる方法によっても本発明の範囲を制限するものではない。
実施例1:SEQ ID No.2のアミノ酸配列を有する抗癌作用可能な組替えレクチン
SEQ ID No.2の精製組替えレクチンについて、異なる細胞株における抗癌作用を検討した。その結果、10種類の癌細胞株で細胞毒性活性を示した。測定方法の概要は以下の通りである。
1. 96ウェル組織培養プレートに特定数の癌細胞/正常細胞をプレーティングした。
2. 一晩培養した後、細胞をそれぞれの試験項目で所定の時間間隔(48時間~72時間)処理した。
3. 化学発光/蛍光/比色検出法により、試験項目の細胞毒性/抗増殖活性を評価した。
4. 統計ツールを用いて、細胞毒性率を算出した。
SEQ ID No2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンは、試験した10種の癌細胞株全てに対して細胞毒性作用を示し、正常細胞(PBMC)に対しては細胞毒性作用を示さなかった。MDA-MB-231(トリプルネガティブ乳腺癌細胞)では、MCF-7(乳腺癌)と比較して、より優れた効果を示した。結果を下表に纏める。
Figure 2023524151000001

実施例2:in vivo(異種移植)有効性試験
上記データの通り、SEQ ID No2の組換えレクチンは、in vitroアッセイにおいて、様々な癌細胞株に対して細胞障害性抗増殖効果を示した。SEQ ID No.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンの抗腫瘍剤としての有効性を、in vivoの免疫不全マウスモデルにおける対応する異種移植によって評価した。使用した異種移植モデルは、HT-29、KB、PA-1、MCF-7、PANC-1、T24、MDA-MB-231であった。異種移植試験の基本的な試験デザインは以下の通りである。
1. 細胞維持および細胞懸濁液の調製
2. ドナー動物への腫瘍細胞懸濁液の無菌注入
3. 各群への動物のランダム化
4. あらかじめ決められた用量の試験物質のIP投与
5. 標準品のIP投与
6. 投与期間終了後
7. 体重と臨床症状を毎日記録しながら、腫瘍量を毎週2回記録する。
個々の異種移植試験の結果を下表にまとめた。
Figure 2023524151000002
Figure 2023524151000003
SEQ ID NO 2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンの腫瘍体積および腫瘍増殖抑制効果は上表の通りであり、SEQ ID NO 2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンは、免疫不全マウスモデルにおいて、各種癌に対して強い抗癌活性を示すことが示された。
実施例3:癌の発症に関与するシグナル伝達経路に対する組替えレクチンの調節作用の評価
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンの作用機構を、癌の発症に関与する主要なシグナル伝達経路の調節に及ぼす影響を決定することにより検討する。この研究は、USAのLife TechnologiesにおけるSelectScreen(登録商標)Cell-based Pathway Profiling Servicesを使用して実施された。GeneBLAzer Beta-lactamase (bla) Reporter Technologyと Tango プラットフォームを用い、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を持つレクチンの様々な細胞シグナル伝達経路に対する調節効果を、特定のマーカーを過剰発現している細胞株で検討した。試験した細胞株は、MDA-MB-231(ヒト乳癌)、KB(ヒト子宮頸癌)、PA-1(ヒト卵巣癌)、PANC-1(ヒト膵臓癌)、HT-29(ヒト大腸癌)、T-24(ヒト膀胱癌)であった。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチン10mgを200μLのTBSバッファ(25mM、pH8.0)に溶解し、50mg/mLのストック溶液を得た。このストック液を無血清培地(SFM)で希釈し、細胞内の最終濃度を0.00158μg/mLから50μg/mLとした。細胞(32μL)を適切な細胞密度になるようにアッセイ培地で希釈し、アッセイプレートに添加した。細胞は37℃/5%COで24時間培養した。1000倍サンプル40nLとアッセイ培地4μLをアッセイプレートに加え、加湿インキュベーター内で37℃/5%COで30分培養した。その後、10×EC80濃度のアクチベーター4μLをサンプルを含むすべてのウェルに加え、最終アッセイ量を40μLにした。このアッセイプレートを37℃/5%CO、加湿インキュベーターで16時間培養した。さらに、Substrate Loading Solution(LiveBLAzer(商品商標)-FRET B/G)8μLをアッセイプレートに添加した。アッセイプレートは室温、暗所下で2時間培養した。アッセイプレートを蛍光プレートリーダー(Tecan Safire2)で読み取った。標準的な蛍光プレートリーダーを用いて460nmと530nmの蛍光発光値を求め、変調度を決定した。
変調度=[(A-B)/A]*100
ここで、A=対照(非処理細胞)中の蛍光測定値
B=TI処理細胞の蛍光測定値
結果
レクチンは、以下の表に示すようなシグナル伝達経路の阻害をもたらした。
Figure 2023524151000004
SEQ ID NO.2 のアミノ酸配列を有する組替えレクチンによるメカニズムバイオマーカーの調節効果は、以下のように要約される。
・HGFを増大し、その受容体であるC-Metに結合し、そしてMAPKに作用する
・癌抑制因子であり、アポトーシスを誘導して活性化するATF-2を増大する
・SCFの受容体であるc-kitの発現が増加し、これがMAPKの下流に作用する
・JNKの発現を増加させ、p53を阻害し、これにより、AFT-2を活性化させ、アポトーシスを引き起こす
・VEGF、VEGF-A、VEGFR2の発現を促進し、これはRas-Raf経路を活性化する
・EGFの発現を抑制し、EGFはEGFRに結合し、Ras-Raf経路やPKCを介して抗癌作用を発揮する
・Her-2を刺激し、Ras-Raf-MEKl-MAPK-ERKの活性化を促す
・ERKとMEK-1のレベルを上昇させ、これは、p90RSKとMMPsの発現を活性化した。ERKはstat-3やNF-KBも介して作用する
・GMCSFとIL-6の発現を刺激し、これは、JAK-STAT経路を介して作用し、NF-KBを活性化する
・IL-4Rの発現を活性化し、これは、JAK-STAT経路に接続する。IL-4Rは、PI3K-Aktアームも介して作用する
・IL-8が増加し、これは、PI-3K-Akt-FOX3アームを介して作用する。Aktはまた、Stat-3-NF-KBアームを介して作用し、ここでSEQ ID NO.2はStat-3の増加効果を示した
・レプチンの発現が増加し、これは、レプチンはその受容体であるレプチン-Rに結合し、ERK経路に作用する
・サイトカイン(GMCSF、IL-6、IL-8)のレベルが増大し、これは、腫瘍微小環境における免疫系と相互作用して抗癌免疫保護効果を発揮している可能性がある
・TNF-αを活性化し、これは、JNK経路に接続する
・TGF-bの受容体であるEndoglin-1の発現が増加する。Endoglin-1はSmadを介して作用し、ATF-2の発現を活性化する
・PDGF-BB PDGFの活性化は血管新生を抑制することにより抗腫瘍効果を発揮する
・活性化とTGF-アルファは、オートクラインとパラクライン経路を通じて、癌細胞の増殖を制御する
・アンジオポエチン-1とアンジオポエチン-2の活性化は、腫瘍抑制機能を示すTIE2-発現マクロファージの浸潤を促進する。Tie-2との結合は、PI3k経路を制御する
・Kallikrien-3とKallikrien-5の活性化により、アポトーシスを誘導を介して腫瘍抑制に働く
・TRAILとTRAILR2の活性化は、特定のデスレセプターと結合することにより、主に腫瘍細胞においてアポトーシスを引き起こす
・オステオポンチン(PON)の活性化は、レセプターaVβ3やCD44に結合し、Akt経路を経由して作用する
・Ras-Raf経路またはPI3k-Akt経路を介して作用するガレクチン-1を阻害する。また、PI3k-AKT経路で作用するガレクチン-3も阻害する
・Smadを介して作用し、ATF-2の発現を活性化するFol-1の発現を増加させる
・CD40に結合し、MAPKを阻害するCD40Lを阻害する
実施例4:レクチンのin vitroアポトーシス作用の評価
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンのMDA-MB-231(乳癌)およびPANC-1(膵臓癌)細胞株におけるin vitroアポトーシス効果をJC-1アッセイにより評価するために、ミトコンドリア膜脱分極の増加をアポトーシスのマーカーとして使用した。SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンで16時間処理したMDA-MB-231およびPANC-1細胞において、ミトコンドリア膜の脱分極の程度をJC-1色素に基づく方法で評価した。細胞株MDA-MB-231(ヒト***腺癌)およびPANC-1(ヒト膵臓上皮癌)は、National Centre for Cell Science, Pune(インド)から入手した。細胞株は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)+10%熱不活性化FBS中、37℃(湿度95%、5%CO)で培養した。細胞株は、トリプシン処理後に細胞懸濁液を新鮮なフラスコに分割し、新鮮な培養液を補充することで再増殖させた。SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンを無血清培地で希釈した。陽性対照としてドキソルビシンを用い、ジメチルスルホキシド(DMSO)でストック溶液を調製した。MDA-MB-231およびPANC-1細胞をトリプシン処理し、計数し、10%FBSを含む10×10細胞/ウェル/180μlのDMEMに相当する密度で平底96ウェルプレート(暗壁プレート)のウェルにプレーティングした。その後、増殖条件下で一晩培養し、細胞の回復と指数関数的な増殖をさせた。SEQ ID NO.2の組替えレクチン(20μlストック溶液)で、最終濃度が2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mL、40μg/mLおよび80μg/mLとなるように細胞を処置した。同様に、細胞を、0.1μM、1μM、10μM、25μMおよび50μMの最終濃度となるようにドキソルビシンで処理した。それぞれの処理後、上記プレート内の細胞を37℃、5%CO、95%湿度のCOインキュベーターで16時間培養した。
16時間の培養後、上清を捨て、100μLのJCl-dye溶液(1mMのDMSOストックを1×PBSで10μMに希釈して調製)を各ウェルに添加した。その後、細胞を37℃のCOインキュベーターで15分間、色素とともに培養した。15分間の培養後、上清を除去し、細胞を1×PBSで2回洗浄し、そして100μLの1×PBSを各ウェルに添加した。Biotek Synergy HT プレートリーダーを用いて、赤色蛍光(励起550nm、発光600nm)および緑色蛍光(励起485nm、発光535nm)を測定した。ミトコンドリア膜電位(ΔΨM)は、以下のように記述された赤色蛍光の強度と緑色蛍光の強度の比として計算された。
ΔΨM=赤色蛍光の強度/緑色蛍光の強度
各処理に対応する赤色蛍光/緑色蛍光の減少率は、以下の式で算出した。
減少率=[(R-X)/R]*100
ここで、X=処理した細胞に対応するΔψm
R=対照ウェルに対応するΔΨM
その結果、組換えレクチンは、PANC-1細胞株で9.5%から51.7%、MDA-MB-231細胞株で19.8%から54.1%の範囲でミトコンドリア膜の脱分極を導くことが確認できた(表1および2)。
Figure 2023524151000005
Figure 2023524151000006
実施例5:アネキシン-V染色および細胞周期解析によるヒト乳癌細胞株(MDA-MB-231)およびヒト膵臓癌細胞株(PANC-1)におけるレクチンのプロアポトーシス作用の評価
細胞株MDA-MB-231(ヒト***腺癌)およびPANC-1(ヒト膵臓上皮癌)は、National Centre for Cell Science, Pune(インド)から入手した。細胞株は、DMEM+10%FBS(熱不活性化)を用いて、37℃、5%CO、95%湿度で維持した。抗生物質ペニシリン(100U/mL)とストレプトマイシン(100μg/mL)を培地に添加した。細胞株はトリプシン処理により再培養し、その後、細胞懸濁液を新しいフラスコに分割し、新しい培養液を補充した。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンのストック溶液を、最終有効濃度の10倍高濃度(体積重量)に相当する異なる濃度で無血清培地(SFM)中で希釈した。陽性対照としてドキソルビシンを用い、ストック溶液はDMSOで調製した。
アネキシン染色
細胞を血球計数装置で計数し、DMEM+10%FBSの6ウェルプレートに0.4×10細胞/ウェルの密度で培養プレートにプレーティングした。細胞は一晩培養し、細胞の回復と指数関数的な増殖をさせた。一晩培養後、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有するレクチンをDMEM+0%FBS中、2.5μg/mLから80μg/mLの濃度で処理した。非処理の細胞は対照群としてサンプルに加えた。ドキソルビシンで処理した細胞は陽性対照群として含めた。DMSO処理した細胞はドキソルビシンの対照群として含めた。処理後、細胞を24時間培養した。
培養後、アネキシンアッセイキットを用いて以下のようにアポトーシス促進作用を評価した。アネキシン試薬にはアネキシン-V+7-AAD染色が含まれており、異なるフェーズのアポトーシス細胞を区別して標識する。フローサイトメトリーのプロットから、以下の4つの細胞集団が決定される:
a)左上(UL)-7-AAD(+)/アネキシン(-)またはネクローシス細胞
b)右上(UR)-7-AAD(+)/アネキシン(+)または後期アポトーシス細胞
c)左下(LL)-7-AAD(-)/アネキシン(-)または増殖可能な/非アポトーシス細胞
d)右下(LR)-7-AAD(-)/アネキシン(+)または初期アポトーシス細胞
細胞は、あらかじめラベルを貼った滅菌遠心管に静かに採取し、300×gで5から7分間遠心分離した。上清を捨て、ペレットを200μlの新鮮な培養液に再懸濁した。
100μlの細胞懸濁液を予め標識した滅菌遠心管に移した。100μlのアネキシン-V試薬を各チューブに加え、暗所、室温で30分間培養した。
その後アネキシン-Vで染色した細胞を96ウェルプレートに移し、フローサイトメーター(Guava Technologies社製)で取得した。初期アポトーシス期、後期アポトーシス期、ネクローシス期の細胞の割合を決定した。
対照(非処理細胞)と比較して、アポトーシス細胞(被験物質で処理した細胞)の増加倍率を測定した。
細胞周期解析
細胞を血球計数装置で計数し、6-ウェルプレートDMEM+10%FBSに0.5×10細胞/ウェルの密度で培養プレートにプレーティングした。細胞は一晩培養し、細胞の回復と指数関数的な増殖をさせた。一晩の培養の後、DMEM+1%FBSで4時間血清不足にした。4時間後、DMEM+0%FBS中、2.5μg/mLから80μg/mLの濃度で被験物質を4時間処理した。非処理の細胞は、試験項目の対照群として含ませた。ドキソルビシンで処理した細胞は陽性対照群とした。DMSO処理した細胞はドキソルビシンの対照群とした。処理後、24時間培養した。培養後、細胞周期によるアポトーシス促進作用を以下のように測定した。細胞周期試薬は、Sub(G0/G1)、G1、S、G2、Mの細胞周期の異なる位相の細胞のDNAを染色するPI染色剤を含んでいる。Sub(G0/G1)位相の細胞はアポトーシス細胞に相当する。
回収と固定
細胞をあらかじめラベルした遠心チューブに静かに採取し、450g、5分間、室温で遠心分離(ローブレーキ)した。上清を慎重に取り出し(ペレットに触れないように)、廃棄した。ペレットに1mLの1XPBSを加え、穏やかに再懸濁し、均質な懸濁液とした。細胞を450g、5分間、RTで遠心分離(ローブレーキ)した(洗浄ステップ)。上清を注意深く除去し、約100μLのPBSを残した。残存するPBSに穏やかに、しかし完全に細胞を再懸濁させた。氷冷した70%エタノール(300μLl)を、低速で渦を巻きながら、各チューブ内の細胞に滴下した(固定ステップ)。細胞は染色前に4℃で24時間保存した。
染色
エタノール固定した細胞を450g、5分間、RTで遠心分離(ローブレーキ)した。上清を慎重に取り出し(ペレットに触れないように)、廃棄した。(ペレットは、見えないが、チューブの表面に薄い膜形成することがある)。ペレットに1×PBSを1mL加え、静かに再懸濁した。細胞を常温で1分間培養した。細胞を450g、5分、RTで遠心分離(ローブレーキ)した(洗浄ステップ)。上清を注意深く除去し、約20μL~50μLのPBSを残した。200μLの細胞周期試薬を各チューブに添加した。
細胞を穏やかに懸濁し、混合し、室温、暗所で30分間培養した。染色したサンプルを96ウェルプレートに移し、フローサイトメーター(Guava Technologies社製)にて取得した。Sub(G0/G1)期にある細胞のパーセンテージを測定した。対照(非処理細胞)に対して、(試験項目で処理した)アポトーシス細胞の倍増量を測定した。
結果
結果は、(表3から表10に示すように)レクチンはアポトーシス後期およびネクローシス後期の細胞を増加させることを示した。また、レクチン処理により、アポトーシス(SubG0/G1)細胞集団の増加が観察された。
Figure 2023524151000007
Figure 2023524151000008
Figure 2023524151000009
Figure 2023524151000010
Figure 2023524151000011
Figure 2023524151000012
Figure 2023524151000013
Figure 2023524151000014
SEQ ID NO 2の組替えレクチンのMDA-MB-231細胞株に対するアポトーシス効果の結果は、初期アポトーシス細胞、後期アポトーシス細胞、ネクローシス細胞の増加を誘導することを示した。また、SEQ ID NO.2で処理することにより、アポトーシス(SubG0/G1)細胞集団の増加も観察された。
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンのPANC-1細胞株に対するアポトーシス作用の結果は、後期アポトーシス細胞およびネクロシス細胞の増加を誘導した。また、SEQ ID NO.2で処理することにより、アポトーシス(SubG0/G1)細胞集団の増加も観察された。
実施例6:レクチンのヒト内皮細胞に対する抗血管新生効果
試験に用いた細胞株は、National Centre for Cell Science,Pune(インド)から調達したEA.hy926(ヒト内皮細胞)である。この細胞株をDMEM+10%FBS(熱不活性化)中、37℃、5%CO2、95%湿度で維持した。細胞を血球計数装置で数え、96ウェルプレートに5×10細胞/ウェル/180μlの増殖培地の密度でプレーティングした。一晩培養後、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンで約2.5~100μg/mLの濃度で細胞を処理した。完全培地(10%FBS)非処理の細胞は完全培地対照、血清フリー培地の細胞はSFM対照、パクリタキセルで処理した細胞はポジティブ対照として使用した。
3日間培養後、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンの細胞増殖に及ぼす影響をMTTアッセイにより判定した。5mg/mLのMTTの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド溶液20μlをすべてのウェルに加え、さらに37℃で3時間培養した。上清を吸引し、各ウェルにDMSOを150μ1加え、フォルマザンの結晶を溶解させた。その後、Synergy HTマイクロプレートリーダーを用いて、各ウェルの吸光度を540nmで読み取った。各処理に対応する細胞毒性率を算出した。
内皮細胞のスクラッチアッセイによる細胞移動
EA.hy296細胞を血球計数装置で計数し、6ウェルプレートに0.5×10細胞/ウェルの密度でプレーティングした。この細胞を、細胞の回復と指数関数的な増殖を可能にするために、上記のような増殖条件下で一晩培養した。一晩培養後、滅菌した200μlのマイクロピペットチップで穏やかにこすり、合流する単層(ウェルの中央部)に小さな線状の傷(代表的な傷)を形成した。スクラッチの顕微鏡写真を0時間後(初期時点)に撮影した。細胞は無血清DMEMで洗浄し、二つの異なる血清条件下の処理にグループ分けした。
A:無血清培地(SFM)でのTI
ベースライン対照:細胞+DMEM
ポジティブ/バリデーション対照:ベースライン対照+ポジティブ対照
試験:ベースライン対照+試験項目
B:DMEM+1%FBSでのTI
ベースライン対照:細胞+DMEM+1%FBS
ポジティブ/バリデーション対照:ベースライン対照+ポジティブ対照
試験:ベースライン対照+試験項目
スクラッチの顕微鏡写真を24時間から72時間の時点に撮影した。上記ステップで得られた顕微鏡写真を、ImageJツールソフトウェアを用いて、創傷閉鎖の面積の定量的評価のために解析した。異なる時点における非処理細胞に対する移動率を算出した。
Figure 2023524151000015
Figure 2023524151000016
癌細胞におけるVEGFの分泌
VEGFの分泌をNational Centre for Cell Science, Pune(インド)から調達したMDA-MB-231(ヒト乳腺癌)およびPANC-1(ヒト膵臓上皮癌)において検討した。細胞株をDMEM+10%FBS(熱不活性化)、37℃、5%CO2、95%湿度で維持した。細胞を数え、6ウェルプレートに0.5×10細胞/ウェルの密度で24時間プレーティングした。細胞の回復と指数関数的な増殖を許容するように、上記のような増殖条件下で一晩培養した。無血清培地中で、細胞を異なる濃度の各試験項目で24時間処理した。陽性対照としてドキソルビシンを用いた。VEGFの分泌量は、Human VEGF ELISAキット(R&D systems)を用いて24時間後の上清中において製造者のプロトコルに従って測定した。各処理に対応するVEGFレベルの変化量は、以下の式を用いて算出した。
変化率%=[R-X)/R]*100
ここで、X=処理した細胞に対応するウェルの吸光度
R=非処理細胞(増殖培地で維持した細胞)の吸光度
結果
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンは、内皮細胞の遊走を阻害した(表13)。
Figure 2023524151000017
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンは、2.5~80μg/mLの範囲で試験したほとんどの濃度で、非処理の対照と比較してMDA-MB-231細胞のVEGFレベルを増加させることが観察された(表14)。レクチン存在下でのVEGFレベルの増加は、同じ濃度範囲にわたって試験したすべての濃度において、PANC-1細胞でも観察された(表15)。
Figure 2023524151000018
Figure 2023524151000019
実施例7:SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンのin vivo血管新生能のc57bI/6マウスにおけるマトリゲル・プラグ・アッセイを用いた評価
健康なC57BL/6マウスを選択し、体重に基づいて5群(G1からG4、n=7)にグループ分けした。G2-G4群の各マウスに、500ngのFGF-2(bFGF)を含む500μlのマトリゲルを右脇腹部に皮下注射した。一方、G1グループのマウスは、500μlのマトリゲルのみを右脇腹に皮下投与した。このアッセイでは、bFGFなどの血管新生誘導化合物を冷たい液体マトリゲルに導入し、皮下注射後、固化して宿主細胞の浸透と新しい血管の形成(新生血管形成)を可能にするものである。
Figure 2023524151000020
必要量の被験物質を採取し、必要な濃度になるように適切な量のトリス緩衝生理食塩水(TBS)に添加した。動物への投与量は10mL/Kgとした。
実験期間中、毎日ケージサイドで観察を行い、臨床症状や死亡率を検出し、記録した。
結果
1.マトリゲル・プラグ切片のヘモグロビン量
グループG3(スニチニブ、55mg/Kg)はマトリゲル・プラグのホモジネートのヘモグロビン量の最大の減少、すなわち59.2%を示したが、グループG4(SEQ ID No 2のアミノ酸配列を有する組み換えレクチン、10mg/Kg、qdxl5)は陽性対照と比較して23.6%のヘモグロビン量の減少を示した(表17)。
Figure 2023524151000021
2.ヘマトキシリン・エオジン(H&E)による組織観察
陽性対照群(G2)では陰性対照群(G1)と比較して新生血管の重症度が劇的に上昇したが、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組換えレクチン10mg/Kg、i.p、qdx15(G4)を投与したマウスでは新生血管がわずかに減少した(表18)。
Figure 2023524151000022
マトリゲルプラグ中のヘモグロビン量、マトリゲルプラグ組織学の新生血管形成は、C57BL/6マウスにおけるマトリゲルプラグアッセイを用いた陽性対照群と比較して、SEQ ID NO. 2のアミノ酸配列を有する組み換えレクチン(10mg/Kg;qdx15)が抗血管形成活性を示すことを示している。
実施例8:脳腫瘍に対する細胞毒性、アポトーシス試験
細胞毒性
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンのin vitro細胞毒性作用を、ヒト神経膠芽腫:LN-18、ヒト神経膠芽腫:U251MG;ヒト神経芽細胞腫:SH-SY-5Y;ヒト髄膜腫:IOMM-Lee;ヒト星状細胞腫:U87MG;ラットC6(グリオーマ)から成る脳腫瘍細胞株パネルをMTTアッセイで検討した。SEQ ID NO.2を水溶液(12.17mg/mL)として提供し、SEQ ID NO.2のストック溶液を10倍高濃度に相当する異なる濃度で無血清培地(SFM)中に希釈した。血球計数装置を用いて細胞を数え、96ウェルプレートにプレートし、37℃、5%COインキュベーターで一晩培養した。24時間培養後、2.5μg/mL~100μg/mLの範囲で異なる濃度のSEQ ID NO.2で細胞を処理した。非処理の細胞を対照として使用した。エベロリムスおよびドキソルビシンで処理した細胞を陽性対照として使用した。72時間の培養の後、細胞の細胞毒性に対するSEQ ID NO.2の効果をMTTアッセイによって決定した。プレートを取り出し、20μLのMTT3-(4,5-ジメチチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド溶液5mg/mLを全てのウェルに添加した。細胞は37℃で3時間培養した。上清を吸引し、150μLのDMSOを各ウェルに加え、ホルマザンの結晶を溶解させた。Synergy HTマイクロプレートリーダーを用いて、各ウェルの吸光度を540nmで読み取った。
結果
・ヒト神経膠芽腫:LN-18、ヒト神経膠芽腫:U251MG;ヒト神経芽腫:SH-SY-5Y;ヒト髄膜腫:IOMM-Lee;ヒト星細胞腫:U87MG;ラットC6(グリオーマ)に対するSEQ ID NO.2の細胞毒性試験の阻害率が表19に表されている。
・SEQ ID NO.2は、神経膠芽腫、髄膜腫および星細胞腫タイプの脳腫瘍において有意な細胞毒性を示した。
・SEQ ID NO.2は、神経芽腫型および神経膠腫型の脳腫瘍の細胞タイプにおいて良好な細胞毒性を示した。
・細胞毒性は以下のように観察された。LN18(神経膠芽腫)>U251MG(神経膠芽腫)>IOMM-Lee(髄膜腫)>U87MG(星細胞腫)>C6(グリオーマ)>SH-SY5Y(神経芽腫)。
・SEQ ID NO.2は、膠芽腫タイプの脳腫瘍に良好な選択性を示し、髄膜腫には中程度の選択性を示した。
Figure 2023524151000023
アポトーシス
脳腫瘍細胞株U251MG&IOMM LeeにおけるSEQ ID NO.2のプロアポトーシス作用の評価を実施した。IC50値付近の様々な濃度で細胞をSEQ ID NO.2で処理した。アポトーシスに対する効果は、アネキシン-V染色による細胞膜上のホスファチジルセリン(PS)の外在化、JC-1染色によるミトコンドリア膜の脱分極、ヨウ化プロピジウム(PI)染色による細胞周期分布分析により決定した。U251MG&IOMM-Lee細胞株におけるアポトーシスマーカーの増加は、脳腫瘍におけるSEQ ID NO.2のプロアポトーシスポテンシャルを反映している。
U25IMG細胞株のアネキシン-V染色による細胞膜上のPSの外在化:SEQ ID NO.2 (1μg/mL~80μg/mL)は、対照(非処理)と比較して、初期および後期アポトーシス集団のそれぞれ3倍~5倍(p<0.001)、2倍~5倍(p<0.05)の増加を示した。
IOMM-Lee細胞株のアネキシン-V染色による細胞膜上のPSの外在化:SEQ ID NO.2(1μg/mL~80μg/mL)は、対照(非処理)と比較して、初期および後期アポトーシス集団のそれぞれ22倍~28倍(p<0.001)、2倍~5倍の増加を示した。
U25IMG細胞株のミトコンドリア膜の脱分極:SEQ ID NO.2(1μg/mL~80μg/mL)は、対照(非処理)と比較して、36.8%~60.9%(p<0.001)のミトコンドリア膜の脱分極の増加を示した。
IOMM-Lee細胞株のミトコンドリア膜の脱分極:SEQ ID NO.2(1μg/mL~80μg/mL)は、対照(非処理)と比較して、16.1%~36.4%(p<0.001)のミトコンドリア膜の脱分極の増加を示した。
U251MG細胞株中の細胞周期解析におけるSub(G0/G1)集団の増加:SEQ ID NO.2(1μg/mL~80μg/mL)は、対照(非処理)と比較して、1.5倍~4.3倍(p<0.001)のアポトーシス集団;Sub(G0/G1)の増加を示した。
IOMM-Lee細胞株中の細胞周期解析におけるSub(G0/G1)集団の増加:SEQ ID No 2(1μg/mL~500μg/mL)は、対照(非処理)と比較して、1.1~35.3倍(p<0.001)のアポトーシス集団;Sub(G0/G1)の増加を示した。
実施例9:マルチプレックス解析による脳腫瘍におけるSEQ ID No2の作用機構の解明
ヒト髄膜腫細胞株(IOMM-Lee)における以下の7つのバイオマーカーの発現に対するSEQ ID No.2の効果をマルチプレックス解析により推定した。TNF-alpha、VEGF、VEGFR2、HGF、HGFR/c-MET、PDGF-BB、コンタクティン-1。また、同じ細胞株で、もう一つのマーカーであるノッチ-1のレベルもELISAで推定した。これら8つのバイオマーカーは、脳腫瘍の発症と進行に極めて重要な役割を担っている。ヒト髄膜腫(IOMM-Lee細胞)をIC50を含む濃度のSEQ ID No.2で48時間処理した。上清を回収してこれら8つのマーカーのレベルを調査した。
SEQ ID NO.2は、非処理参照と比較し、バイオマーカー(VEGF、VEGFR2、HGF、HGFR/c-MET、PDGF-BB、ノッチ-1)の有意な阻害をもたらした(p<0.01、p<0.001)
TNT-αとコンタクティン-1レベルもSEQ ID NO.2によって阻害された。
Figure 2023524151000024
実施例10:癌細胞株におけるSEQ ID NO.2の細胞毒性効果
カルセインAMアッセイによるSEQ ID NO.1のアミノ酸配列を有する組替えレクチンの異なる細胞株におけるin vitro抗癌活性
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する精製組替えレクチンの異なる細胞株における抗癌活性を検討した。SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンの抗癌作用を、13種類の癌細胞株と3種類の正常細胞を用いて、in vitroでカルセインAMアッセイにより評価した。すべての癌細胞株は、National Centre for Cell Science, Pune(インド)から入手した。細胞株を以下の表21に記載される条件下で維持した。細胞株は、トリプシン処理によって亜培養し、その後、細胞懸濁液を新鮮なフラスコに分割し、新鮮な培養液を補充した。
Figure 2023524151000025
全ての細胞株は、37℃、湿度95%、5%CO2の条件下で、所定の培地で培養した。陽性対照としてドキソルビシンを用いた。SEQ ID 2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンのストック溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で調製し、2.5、5、10、20、40、80μg/mLの最終濃度で使用した。同様に、ドキソルビシンのストック溶液をDMSOで調製し、0.1、1、10および100μMの最終濃度で使用した。
細胞毒性活性の測定
細胞をトリプシン処理し、ノイバウアーのチャンバーでトリパンブルー法により計数し、10×10細胞/ウェル/180μl培地に相当する密度で96ウェルプレート(暗壁プレート、平底)のウェルにプレーティングした。
一晩培養後、各ウェルの総容量が200μLとなるように、細胞を2.5~80μg/mLの範囲の濃度の試験項目(20μL)で処理した。ポジティブ対照群に相当する細胞は、ドキソルビシンで処理した。非処理の細胞は、なんら処理を受けていない陰性対照として用いた。
細胞を試験項目またはポジティブ対照とともに48時間の時間培養した。培養後、R&D systemsのCalcein AM Cell Viability Assay Kit(カタログNo.4892-010-K)を用いて細胞の細胞毒性を推定した。
蛍光はSynergy HTマイクロプレートリーダーを用いて485nm(励起/528nm(発光)スペクトルで測定した。
非処理細胞に対する細胞毒性率は、以下の式で算出した。
細胞毒性=[(RFUuntreated-RFUsample)/RFUuntreated]*100
RFU:相対蛍光単位
IC50値は、Graph-Pad Prism version 4.01ソフトウェアを使用して算出した。
結果は、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンは、AGS(ヒト胃腺癌)、KB(ヒト子宮頸癌)、PA-1(ヒト卵巣癌)、HT-29(ヒト大腸腺癌)細胞株に対して細胞毒性を示し、IC50値はそれぞれ42.6、18.4、20.3、42.0μg/mLであることを示した。SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンは、他の癌細胞に対しても正常細胞と同様に80μg/mLを超えるIC50値を示した。結果を表22にまとめる。
Figure 2023524151000026
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンのMTTアッセイによる異なる細胞株に対するin vitro抗癌能
SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する精製レクチンについて、異なる細胞株における抗癌作用を検討した。SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンの抗癌作用は、異なる7種の癌細胞株と1種の正常細胞株を用い、MTTアッセイによりin vitroで評価した。
すべての癌細胞株は、National Centre for Cell Science, Pune (インド)から入手した。細胞株は、表23に記載の条件下で維持した。細胞株は、トリプシン処理後に細胞懸濁液を新しいフラスコに分割し、新鮮な培養液を補充することで亜培養した。
Figure 2023524151000027
すべての細胞株を37℃、95%湿度、5%CO2で指定された培地で培養した。ドキソルビシンはポジティブ対照として使用した。SEQ ID 2のアミノ酸配列を有する組換えレクチンのストック溶液をDMSOで調製し、最終濃度2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mL、40μg/mL、80μg/mLで使用した。同様にドキソルビシンのストック溶液をDMSOで調製し、0.1μM、1μM、10μM、25μM、50μMおよび75μMの最終濃度で使用した。
細胞毒性活性の決定
細胞をトリプシン処理し,ノイバウアーのチャンバーでトリパンブルー法により計数し,10×10細胞/ウェル/200μL培地に相当する密度で平底96ウェルプレートのウェルにプレーティングした。
一晩培養後、プレート内の培地を180μL/ウェル補充し、各ウェルの総容量が200μLとなるように、3連で2.5μg/mLから80μg/mLの濃度の各試験項目で20μLずつ細胞を処理した。
ポジティブ対照群に相当する細胞は、ドキソルビシンで処理した。非処理の細胞は、陰性対照として用いた。細胞は、試験項目または陽性対照と48時間培養した。培養後、MTTアッセイを用いて細胞の細胞毒性を評価した。吸光度は540nmで測定した。各処理に対応する細胞毒性率は、式を使用して計算された:細胞毒性率=(1-X/R*100
ここで、X=処理した細胞に対応するウェルの吸光度
R=非処理細胞(増殖培地のみで維持した細胞)の吸光度
IC50値は、Graph-Pad Prism version 4.01ソフトウェアを用いて算出した。
結果は、SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有する組替えレクチンは、PANC-1(ヒト膵臓上皮癌)、MDA-MB-231(ヒト乳腺癌)、T24(ヒト膀胱癌)細胞株に対して細胞毒性を示し、IC50値はそれぞれ24.3μg/mL、9.7μg/mL、10.4μg/mLであることを示した。SEQ ID NO.2の組替えレクチンは、他のすべての細胞株に対して80pg/mlを超えるIC50値を示した。結果を表24にまとめる。
Figure 2023524151000028

Claims (26)

  1. 治療有効量の組換えレクチンの投与を含む、被験者における血管新生を阻害することによる癌の治療方法に使用するための組換えレクチン。
  2. 治療有効量の組換えレクチンの投与を含む、被験者のアポトーシスを誘導することによる癌の治療方法に使用するための組換えレクチン。
  3. 前記癌が癌腫である、請求項1および2に記載の組換えレクチン。
  4. 前記癌が腺癌または扁平上皮癌である、請求項3記載の組換えレクチン。
  5. 腺癌が、食道、膵臓、前立腺、子宮頸、乳、結腸若しくは直腸、肺、胆管、膣、尿道または胃腺癌から選択される、請求項4に記載の組換えレクチン。
  6. 扁平上皮癌が、皮膚、肺、口腔、甲状腺、食道、膣、子宮頸、卵巣、頭および/または首、前立腺または膀胱扁平上皮癌である、請求項4に記載の組換えレクチン。
  7. 前記癌が脳腫瘍である、請求項3に記載の組換えレクチン。
  8. 前記組換えレクチンが、SEQ ID NO.1と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列で表される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えレクチン。
  9. 前記アミノ酸配列がSEQ ID NO.1と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有する、請求項8に記載の組替えレクチン。
  10. 前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3またはSEQ ID NO.4から選択される、請求項8および9に記載の組換えレクチン。
  11. 組換えレクチンの前記有効濃度が0.1μg/mLから約200μg/mLである、請求項1から10に記載の組換えレクチン。
  12. 治療有効量が、被験者の体重の0.1mg/Kgから100mg/Kgである、請求項1から10に記載の組換えレクチン。
  13. 内皮細胞の遊走および/または増殖を抑制する、先行する請求項のいずれか一項に記載の組換えレクチン。
  14. VEGFの分泌を調節する、先行する請求項のいずれか一項に記載の組換えレクチン。
  15. 癌細胞のヘモグロビン含量を低下させ、新生血管を抑制する、先行する請求項のいずれか一項に記載の組換えレクチン。
  16. ATF-2,ERK1/2;JNK;MEK-1;P90RSK;STAT-3;p53;MMPs;HGF;C-kit;Her-2;GMSCF;IL-6;IL-8;p38/MAPK;PDGF;TNFR;MPO;ガレクチン-3;Fol-1;CD40L;アンジオポエチン-2;カリクレイン-5;オステオポンチン;TNF-α;エンドグリン;CCR5;FADDおよびカスパーゼ-3を介したTRAIL、;レプチン;MAPK/EGFR/Ras/Raf;ADBR1;IL-4/STAT6;NF-KB;TNF-α/JNK、PKC/CA2+;およびPI3K/AKT/FOXO3から選択されるシグナル伝達経路を調節する、先行する請求項のいずれか一項に記載の組換えレクチン。
  17. 前記癌細胞のアポトーシスの初期および後期を誘導する、請求項2に記載の組換えレクチン。
  18. 組換えレクチンタンパク質を用いる、癌細胞における血管新生を抑制する方法。
  19. 組換えレクチンタンパク質を用いる、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する方法。
  20. 癌細胞の血管新生を抑制することによる癌の治療方法であって、治療有効量の組換えレクチンを被験者に投与することを含む、癌の治療方法。
  21. 癌細胞のアポトーシスを誘導することによる癌の治療方法であって、治療上有効な量の組換えレクチンを被験者に投与することを含む、癌の治療方法。
  22. 組換えレクチンタンパク質と薬学的に許容される賦形剤を含む、癌の治療方法に使用するための医薬組成物であって、癌細胞における血管新生を阻害する医薬組成物。
  23. 組換えレクチンタンパク質と薬学的に許容される賦形剤を含む、癌の治療方法に使用するための医薬組成物であって、癌細胞においてアポトーシスを誘導する医薬組成物。
  24. 請求項1から16に記載のレクチンを投与することを含む、請求項19または20に記載の治療方法。
  25. 請求項1から16に記載のレクチンを含む、請求項21または22に記載の組成物。
  26. 治療有効量の組換えレクチンの投与を含む、膵臓癌、子宮頸癌、乳癌、結腸若しくは大腸癌、膀胱癌、卵巣癌または脳癌の治療方法において使用するための組換えレクチン。
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