JP2023147946A - 光学シートおよび光学部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定の波長領域の光(可視光)を選択的に反射し、それ以外の波長領域の光を透過するハーフミラー層と、偏光性を有する偏光子で構成された偏光層とを備える光学シートにおいて、優れた加工性および製造時における高い生産性を発揮することができる光学シート、および、かかる光学シートを備える、信頼性に優れた光学部品を提供すること。【解決手段】本発明の光学シート15は、偏光層13と、第1基板11および第2基板12とを備えるものであり、第1基板11は、2000nm以上7000nm以下のリタデーションを有し、第1基材111と、高屈折率層と低屈折率層とを交互に繰り返し積層した積層体からなるハーフミラー層113と、第2基材112とを備え、ハーフミラー層113において、第1基材111とハーフミラー層113との界面は連続層を形成し、第2基材112とハーフミラー層113との界面は連続層を形成していること。【選択図】図3

Description

本発明は、光学シートおよび光学部品に関する。
近年、眼鏡、サングラスのようなアイウエアが備えるレンズとして、その意匠性の向上を図ることを目的に、特定の波長領域の光(可視光)を選択的に反射し、それ以外の波長領域の光を透過するハーフミラー層を備える光学シートを、その表面に有するものが提案されている。
また、このレンズを、さらに偏光性を備えるものとすることを考慮した場合、光学シートを、ハーフミラー層と、偏光子とが積層された積層体の両面を、樹脂材料を主材料とする基板で被覆された構成をなすものとすることが考えられ、この光学シートにおいて、ハーフミラー層、偏光子および基板における接合は、これら同士の間に、接着剤層をそれぞれ介挿させることにより実施することが考えられる。
このような光学シートを表面に有するレンズは、例えば、上述した構成をなす光学シートを平面視で平板状をなすものとして用意し、この光学シートの両面に保護フィルムを貼付した状態で、平面視で円形状等の所定の形状に、光学シートを打ち抜く。その後、この光学シートに加熱下で熱曲げ加工を施すことで、熱曲げにより湾曲形状とされた、湾曲凸面と湾曲凹面とを備える湾曲光学シートとする。そして、湾曲光学シートから、保護フィルムを剥離させた後に、湾曲形状とされた凹部を備える金型に、金型の凹部と湾曲光学シートの凸部とが当接するようにして、湾曲光学シートを吸着させた状態で、インサート射出成形法を用いて、この湾曲光学シートの凹面に樹脂材料を主材料として構成される樹脂層(成形層)を形成することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
このようなレンズの製造方法では、前述の通り、光学シートを熱曲げする熱曲げ加工を施すことで、光学シートの一方の面が湾曲凸面とされ、他方の面が湾曲凹面とされた湾曲光学シートが得られこととなるが、この熱曲げ加工において、光学シートは、優れた加工性を有することが求められる。
また、光学シートとしては、前述の通り、ハーフミラー層、偏光子および基板における接合が、これら同士の間にそれぞれ介挿された接着剤層によりなされている構成をなしているものが考えられるが、その生産性の向上の観点からは、より単純な構成をなすものとすることが求められる。
そのため、ハーフミラー層と偏光子とを備える光学シートについて、優れた加工性および生産性を有するものの開発が求められているのが実情であった。
特開2009-294445号公報
本発明の目的は、特定の波長領域の光(可視光)を選択的に反射し、それ以外の波長領域の光を透過するハーフミラー層と、偏光性を有する偏光子で構成された偏光層とを備える光学シートにおいて、優れた加工性および製造時における高い生産性を発揮することができる光学シート、および、かかる光学シートを備える、信頼性に優れた光学部品を提供することにある。
このような目的は、下記(1)~(8)に記載の本発明により達成される。
(1) 偏光子で構成された偏光層と、前記偏光層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ設けられた第1基板および第2基板とを備える光学シートであって、
前記第1基板は、2000nm以上7000nm以下のリタデーションを有し、
光透過性を有する樹脂材料を主材料として構成される第1基材と、
前記第1基材の一方の面に接合して設けられ、高屈折率層と低屈折率層とを交互に繰り返し積層した積層体からなるハーフミラー層と、
前記樹脂材料を主材料として構成され、前記ハーフミラー層の前記第1基材と反対側の面に接合して設けられた第2基材とを備え、
前記ハーフミラー層において、前記高屈折率層の屈折率は、前記低屈折率層の屈折率よりも高く、
前記第1基材と前記ハーフミラー層との界面は、前記第1基材と前記ハーフミラー層との連続層を形成し、前記第2基材と前記ハーフミラー層との界面は、前記第2基材と前記ハーフミラー層との連続層を形成していることを特徴とする光学シート。
(2) 前記高屈折率層を構成する主材料のガラス転移点をTg1とし、前記低屈折率層を構成する主材料のガラス転移点をTg2としたとき、Tg1,Tg2≧105℃である上記(1)に記載の光学シート。
(3) 前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とは、0℃≦|Tg1-Tg2|≦60℃なる関係を満足する上記(2)に記載の光学シート。
(4) 前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とのうち低い方のガラス転移点は、110℃以上250℃以下である上記(2)または(3)に記載の光学シート。
(5) 前記高屈折率層の波長589nmでの屈折率をN1とし、前記低屈折率層の波長589nmでの屈折率をN2としたときの屈折率差(N1-N2)は、0.05以上0.25以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光学シート。
(6) 前記高屈折率層および前記低屈折率層は、それぞれ、その平均厚さが50nm以上300nm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光学シート。
(7) 前記ハーフミラー層において、前記高屈折率層と前記低屈折率層とが交互に繰り返して積層される繰り返し数は、50回以上750回以下である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光学シート。
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光学シートを備えることを特徴とする光学部品。
本発明によれば、高屈折率層と低屈折率層とが交互に繰り返して積層された積層体で構成される繰り返し部を備えるハーフミラー層と、このハーフミラー層に接合して設けられた第1基材および第2基材とは、第1基材とハーフミラー層との界面において、第1基材とハーフミラー層との連続層を形成し、第2基材とハーフミラー層との界面において、第2基材とハーフミラー層との連続層を形成している。そのため、光学シートの一方の面を湾曲凸面とし、他方の面を湾曲凹面として湾曲光学シートを得る、熱曲げ加工を光学シートに施したとしても、第1基材とハーフミラー層との界面、および、第2基材とハーフミラー層との界面において、これら同士の剥離が生じるのを、的確に抑制または防止することができる。また、ハーフミラー層を備える第1基板のリタデーションが2000nm以上7000nm以下の範囲内に設定され、この第1基板側を湾曲凸面側として、熱曲げ加工が施されるため、熱曲げ加工がなされた光学シートを、湾曲面凹側、すなわち人間の目の側から見たときに、第1基板の光学ひずみによって生じる透過像の着色を、的確に抑制または防止することができる。さらに、上記の通り、第1基材とハーフミラー層との界面において、第1基材とハーフミラー層との連続層を形成し、第2基材とハーフミラー層との界面において、第2基材とハーフミラー層との連続層を形成して、各基材とハーフミラー層とを接合するための接着剤層の形成が省略されている。そのため、光学シートの製造時における生産性の向上を図ることができる。したがって、光学シートを、優れた加工性、および、製造時における高い生産性を備えるものであると言うことができる。
本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを有するレンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。 本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを有するレンズの製造方法を説明するための模式図である。 本発明の光学シートの第1実施形態を示す縦断面図である。 図3中の一点鎖線で囲まれた領域[B]に位置する、光学シートが備えるハーフミラー層の一部を拡大した拡大断面図である。 本発明の光学シートの第2実施形態を示す縦断面図である。
以下、本発明の光学シートおよび光学部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の光学シートは、前記偏光層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ設けられた第1基板および第2基板とを備えるものであり、前記第1基板は、2000nm以上7000nm以下のリタデーションを有し、光透過性を有する樹脂材料を主材料として構成される第1基材と、前記第1基材の一方の面に接合して設けられ、高屈折率層と低屈折率層とを交互に繰り返し積層した積層体からなるハーフミラー層と、前記樹脂材料を主材料として構成され、前記ハーフミラー層の前記第1基材と反対側の面に接合して設けられた第2基材とを備えており、前記ハーフミラー層において、前記高屈折率層の屈折率は、前記低屈折率層の屈折率よりも高く、前記第1基材と前記ハーフミラー層との界面は、前記第1基材と前記ハーフミラー層との連続層を形成し、前記第2基材と前記ハーフミラー層との界面は、前記第2基材と前記ハーフミラー層との連続層を形成している。
このように、本発明では、ハーフミラー層と第1基材および第2基材とは、第1基材とハーフミラー層との界面において、第1基材とハーフミラー層との連続層を形成し、第2基材とハーフミラー層との界面において、第2基材とハーフミラー層との連続層を形成している。そのため、光学シートの一方の面を湾曲凸面とし、他方の面を湾曲凹面として湾曲光学シートを得る、熱曲げ加工を光学シートに施したとしても、第1基材とハーフミラー層との界面、および、第2基材とハーフミラー層との界面において、これら同士の剥離が生じるのを、的確に抑制または防止することができる。また、ハーフミラー層を備える第1基板のリタデーションが2000nm以上7000nm以下の範囲内に設定され、この第1基板側を湾曲凸面側として、熱曲げ加工が施されるため、熱曲げ加工がなされた光学シートを、湾曲面凹側、すなわち人間の目の側から見たときに、第1基板の光学ひずみによって生じる透過像の着色を、的確に抑制または防止することができる。また、第1基板のリタデーションが2000nmより低い場合、この透過像のにじみが顕著に発生する。さらに、7000nmより高い場合、光学シートを湾曲させる熱曲げ時に不具合が発生し、求める曲率半径が得られない。したがって、光学シートを、優れた加工性を備えるものであると言うことができる。
さらに、上記の通り、第1基材とハーフミラー層との界面において、第1基材とハーフミラー層との連続層を形成し、第2基材とハーフミラー層との界面において、第2基材とハーフミラー層との連続層を形成して、各基材とハーフミラー層とを接合するための接着剤層の形成が省略されているため、光学シートの製造時における生産性の向上を図ることができる。
よって、光学シートを、優れた加工性、および、製造時における高い生産性を備えるものであると言うことができる。
本発明の光学シートを、加熱下における熱曲げ加工を施すことで得られる、湾曲凸面と湾曲凹面とを備える湾曲形状とされた湾曲光学シートは、例えば、眼鏡の一種であるサングラスが備えるレンズが有する湾曲状をなす樹脂基板(湾曲樹脂基板)として、このレンズにハーフミラー性を付与するために使用される。そこで、以下では、まず、本発明の光学シートを説明するのに先立って、このサングラスについて説明する。
<サングラス>
図1は、本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを有するレンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。なお、図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
サングラス100は、図1に示すように、フレーム20と、レンズ30(眼鏡用レンズ)とを備えている。
なお、本明細書中において、「レンズ(眼鏡用レンズ)」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側にレンズ30が装着される。これにより、使用者は、レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
レンズ30(本発明の光学部品)は、各リム部21に、それぞれ装着されている。このレンズ30は、光透過性を有し、全体形状が外側に向って湾曲した板状をなす部材であり、樹脂層35(成形層)と、湾曲光学シート10とを有している。
樹脂層35は、光透過性を有し、レンズの裏側に位置し、レンズ30に、集光機能を付与する際には、この樹脂層35が集光機能を有している。
樹脂層35の構成材料としては、光透過性を有する樹脂材料であれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する湾曲光学シート10が備える第2基板12を主材料として構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、樹脂層35と湾曲光学シート10との密着性の向上を図ることができる。また、樹脂層35と湾曲光学シート10(第2基板12)との間における屈折率差を低く設定することができるため、樹脂層35と湾曲光学シート10との間において、光が乱反射されるのを的確に抑制または防止し得ることから、優れた光透過率をもって、樹脂層35と湾曲光学シート10との間で光を透過させることができる。なお、樹脂層35と湾曲光学シート10(第2基板12)との間における屈折率差は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。これにより、前記屈折率差を低く設定することで得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
樹脂層35の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
湾曲光学シート10は、樹脂層35の外側の面、すなわち、樹脂層35の湾曲凸面上に、かかる形状に対応して、湾曲凸面と湾曲凹面とを有する湾曲形状をなして、湾曲光学シート10の湾曲凹面を、樹脂層35の湾曲凸面側として、接合される湾曲樹脂基板であり、この湾曲光学シート10をレンズ30が備えることにより、サングラス100にハーフミラー性と偏光性とが付与される。その結果、サングラス100が、ハーフミラー性と偏光性との双方を有するサングラスとしての機能を発揮する。この湾曲光学シート10が、本発明の光学シートを湾曲形状としたもので構成されるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
なお、前述の通り、サングラス100が備えるレンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
また、サングラス100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
さらに、本実施形態では、レンズ30を備える眼鏡を、サングラス100に適用することとしたが、これに限定されず、この眼鏡は、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等であってもよい。
以上のような構成をなすサングラス100(眼鏡)において、サングラス100が備えるレンズ30は、例えば、以下に示すような、レンズ30の製造方法を経ることで製造される。
<レンズの製造方法>
図2は、本発明の光学シートを湾曲形状とした湾曲光学シートを有するレンズの製造方法を説明するための模式図である。なお、以下では、説明の都合上、図2の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、本発明の光学シート15を湾曲形状とした湾曲光学シート10を備えるレンズ30の製造方法の各工程を詳述する。
[1]まず、第1基板11と偏光膜13と第2基板12とを備え、これらがこの順で積層された、全体形状が平板状をなす光学シート15(本発明の光学シート)を用意する。そして、この光学シート15の両面に、保護フィルム50(マスキングテープ)を貼付することで、光学シート15の両面に保護フィルム50が貼付された多層積層体150を得る(図2(a)参照)。
[2]次に、図2(b)に示すように、用意した多層積層体150を、すなわち、光学シート15の両面に保護フィルム50を貼付した状態で光学シート15を、その厚さ方向に打ち抜くことで、多層積層体150を平面視で円形状をなすものとする。
[3]次に、図2(c)に示すように、円形状とされた多層積層体150に対して、加熱下で熱曲げ加工を施すことで、多層積層体150を、第1基板11側(一方の面側)が湾曲凸面とされ、第2基板12側(他方の面側)が湾曲凸面とされた湾曲形状をなす湾曲多層積層体200とする。これにより、平板状をなす光学シート15を、両面に保護フィルム50が貼付された状態で、湾曲形状をなす湾曲光学シート10とすることができる。
この熱曲げ加工は、通常、プレス成形または真空成形により実施される。
この際の多層積層体150(光学シート15)の加熱温度(成形温度)は、前述の通り、本実施形態では、光学シート15が基板11、12および基材111、112を備え、基板11、12および基材111、112の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは180℃以上320℃以下、より好ましくは230℃以上300℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、光学シート15の変質・劣化を防止しつつ、光学シート15を軟化または溶融状態として、光学シート15を確実に熱曲げして、湾曲形状をなす湾曲光学シート10とすることができる。
[4]次に、熱曲げがなされた湾曲光学シート10から、保護フィルム50を剥離させる。その後、図2(d)に示すように、湾曲形状とされた湾曲凹面を備える金型40に、金型40の湾曲凹面と湾曲光学シート10の湾曲凸面とが当接するようにして、湾曲光学シート10を吸着させた状態で、例えば、インサート射出成形法を用いて、この湾曲光学シート10の湾曲凹面に、樹脂材料を主材料として構成される樹脂層35を射出成形する。すなわち、溶融状態とされた樹脂層35の構成材料を、湾曲光学シート10の湾曲凹面に、接触させた状態で冷却して固化させることにより、湾曲光学シート10の湾曲凹面に、接着剤層等を介することなく、樹脂層35を、直接、接触させた状態で成形する。これにより、熱曲げがなされた湾曲光学シート10と、樹脂層35とを備えるレンズ30(本発明の光学部品)が製造される。
この樹脂層35を射出成形する際における、溶融状態とするための樹脂層35の構成材料の加熱温度(成形温度)は、樹脂層35の構成材料の種類に応じて適宜設定されるが、樹脂層35の構成材料が、後述する湾曲光学シート10が備える第1基板11の構成材料と、同種もしくは同一である場合、好ましくは180℃以上320℃以下、より好ましくは230℃以上300℃以下に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、湾曲光学シート10の湾曲凹面に、溶融状態とされた樹脂層35の構成材料を、確実に供給することができる。
また、インサート射出成形法の中でも、射出圧縮成形法が好ましく用いられる。射出圧縮成形法は、金型40の中に樹脂層35を形成するための樹脂材料を低圧で射出した後、金型40を高圧で閉じてこの樹脂材料に圧縮力を加える方法をとるため、成形体としての樹脂層35ひいてはレンズ30に成形歪みや成形時の樹脂分子の局所的配向に起因する光学的異方性が生じにくいことから好ましく用いられる。また、樹脂材料に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂材料を冷却することができるので、寸法精度の高い樹脂層35を得ることができる。
以上のようなレンズの製造方法により製造されるレンズ30が備える湾曲光学シート10に、本発明の光学シート15を湾曲形状としたものが用いられる。以下、この光学シート15の各実施形態について詳述する。
<<第1実施形態>>
図3は、本発明の光学シートの第1実施形態を示す縦断面図、図4は、図3中の一点鎖線で囲まれた領域[B]に位置する、光学シートが備えるハーフミラー層の一部を拡大した拡大断面図である。
なお、以下では、説明の都合上、図3の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図3、図4中のx方向を「左右方向」または「流れ方向(MD)」、y方向を「前後方向」または「垂直方向(TD)」、z方向を「上下方向」と言う。また、図3、図4では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
光学シート15(光学基板)は、本実施形態では、図3に示すように、光透過性を有する第1基板11と、第1基板11の一方の面側に設けられた光透過性を有する第2基板12と、第1基板11と第2基板12との間に設けられた偏光膜13と、を備えている。
また、第1基板11は、光透過性を有する第1基材111と、第1基材111の一方の面側に設けられた光透過性を有する第2基材112と、第1基材111と第2基材112との間に設けられたハーフミラー層113と、を備えている。
光学シート15において、各層が配置される位置関係を上記のように設定することで、偏光膜13およびハーフミラー層113は、第1基板11と第2基板12との間に位置することとなり、光学シート15の表面に露出していない。すなわち、偏光膜13およびハーフミラー層113は、光学シート15の上面または下面で露出する最外層を構成していない。そのため、最外層を構成した場合のように、偏光膜13およびハーフミラー層113に砂ほこりや、雨等が衝突したり、偏光膜13およびハーフミラー層113が他の部材等により摩耗されるのを確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、偏光膜13およびハーフミラー層113が傷つくのを確実に防止することができる。よって、光学シート15を、意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。
さらに、かかる構成をなす光学シート15において、ハーフミラー層113は、高屈折率層31と低屈折率層32とを交互に繰り返し積層した積層体で構成されている。これにより、ハーフミラー層113は、入射する光のうち、特定の波長領域の光を選択的に反射し、残部を透過させることから、光学シート15の裏面側に人が位置する場合、すなわち、人がサングラス100を装着したときには、人(装着者)により光学シート15を介して、光学シート15の表側を視認することができる。また、光学シート15の表側で、反射された特定の波長領域の光が、光学シート15を介して装着者の反対側に位置する人に、視認されることとなるため光学シート15を、意匠性を備えるものとし得る。
また、光学シート15は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有し偏光膜13を有している。そのため、光学シート15を通過する光を、偏光されたものとし得る。
以下、この光学シート15を構成する各層について説明する。
本発明では、光学シート15において、第1基板11は、2000nm以上7000nm以下のリタデーションを有し、光透過性を有する第1基材111と、第1基材111の一方の面側に設けられた光透過性を有する第2基材112と、第1基材111と第2基材112との間に設けられたハーフミラー層113と、を備える積層体で構成され、第1基材111とハーフミラー層113との界面は、第1基材111とハーフミラー層113との連続層を形成し、第2基材112とハーフミラー層113との界面は、第2基材112とハーフミラー層113との連続層を形成している。
第1基材111は、ハーフミラー層113(積層体)を支持するとともに、第1基材111と、後述する第2基板12との間にハーフミラー層113および偏光膜13を配置させる、光学シート15の最外層を構成し、ハーフミラー層113および偏光膜13を保護する保護層としての機能を有している。
この第1基材111は、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
なお、本明細書中において、「主材料」とは、このものを含有する層(基材)を構成する構成材料のうち、50重量%以上含有する構成材料のことを言うこととする。
この透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の透明性を備える樹脂が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高いため、透明樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、第1基材111における透明性や第1基材111の耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1基材111を得ることができる。
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1基材111は、さらに優れた強度を発揮する。
第1基材111中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、前記工程[3]における光学シート15の熱曲げ加工による湾曲光学シート10の形成を比較的容易に実施することができる。また、第1基板11にリタデーションを発現させる際に、このリタデーションの発現のための延伸を好適に行うことができる。さらに、光学シート15の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
また、第1基材111は、光透過性を有していれば、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
これらの色の選択は、第1基材111に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
第1基材111は、必要に応じて、上述した、透明樹脂、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
この場合、第1基板11中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、75重量%以上であるのが好ましく、85重量%以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、光学シート15を、優れた強度を発揮するものとし得る。
また、第1基材111の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1基材111の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜13およびハーフミラー層113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
第1基材111は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下に設定される。第1基材111の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学シート15の薄型化を図りつつ、光学シート15に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。そのため、ハーフミラー層113により選択的に反射される特定の波長領域の光における色目を、光学シート15の全体に亘って、より均一に視認することができるようになる。
第2基材112は、ハーフミラー層113(光学多層膜)および偏光膜13を支持する機能を有している。
この第2基材112を構成する構成材料としては、第1基材111で挙げたのと同様のもので構成することができる。なお、第2基材112の構成材料と、第1基材111の構成材料とは、同一(同種)のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
さらに、第2基材112の波長589nmでの屈折率は、第1基材111の屈折率と、同じであってもよく、異なっていてもよいが、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第2基材112の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜13およびハーフミラー層113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
また、第2基材112は、その平均厚さが、第1基材111と、同じであってもよく、異なっていてもよいが、例えば、0.2mm以上1.5mm以下であるのが好ましく、0.2mm以上0.8mm以下であるのがより好ましい。第2基材112の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学シート15の薄型化を図りつつ、光学シート15に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。そのため、ハーフミラー層113により選択的に反射される特定の波長領域の光における色目を、光学シート15の全体に亘って、より均一に視認することができるようになる。
ハーフミラー層113は、第1基板11の厚さ方向の中央に位置する中間層であり、本発明では、特定の波長領域(特定波長領域)を有する光を選択的に反射し、この反射により反射されない光である残部を透過する。
ハーフミラー層113は、図4に示す通り、可視光領域における光に対して、屈折率が高い高屈折率層31と、屈折率が低い低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された積層体で構成される繰り返し部33を備えるものである。すなわち、ハーフミラー層113は、繰り返し部33を複数回繰り返して積層した多層積層体で構成することにより、1つの高屈折率層31を、2つの低屈折率層32で挟み込んだ構成を繰り返して有するものである。
このハーフミラー層113において、高屈折率層31を、可視光領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料を含有し、低屈折率層32を、可視光領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料を含有する構成とすることで、高屈折率層31と低屈折率層32との層間において、可視光領域における光に対する屈折率差を大きく、反射されない光に対する屈折率差を小さくすることができる。これにより、可視光領域の特定の波長領域における光を選択的に反射して、反射されない残部の光を透過光として透過する多層積層体すなわち多層積層反射板としての機能を、ハーフミラー層113に付与することができる。換言すれば、ハーフミラー層113は、可視光領域における光がハーフミラー層113に入射光として入射すると、その入射光のうち反射される光(反射光)が、最大限でブロック(反射)すなわち最小限で透過し、これに対して、反射されない光(透過光)がハーフミラー層113に入射光として入射すると、その透過光が最小限でブロックすなわち最大限で透過する多層積層反射板としての機能を発揮する。
ここで、可視光領域の特定の波長領域における光を選択的に反射して、反射されない残部の光を透過光として透過するには、具体的に、ハーフミラー層113において、高屈折率層31の波長589nmでの屈折率をN1とし、低屈折率層32の波長589nmでの屈折率をN2としたとき、屈折率差(N1-N2)が好ましくは0.05以上0.25以下、より好ましくは0.08以上0.25以下に設定されている。波長589nmにおける屈折率差(N1-N2)を前記範囲内に設定することにより、高屈折率層31と低屈折率層32との層間において、可視光領域における光に対する屈折率差が大きく設定されていると言うことができ、可視光領域における光を、確実に最大限でブロック(反射)することができる。
なお、可視光領域における光を最大限でブロック(反射)し、反射されない光を最小限でブロックする可視光の特定の波長領域、さらに、その波長領域の光の強度は、高屈折率層31および低屈折率層32にそれぞれ含まれる樹脂材料の種類、ハーフミラー層113(繰り返し部33)における高屈折率層31と低屈折率層32との繰り返し数、ならびに、ハーフミラー層113(高屈折率層31、低屈折率層32)の厚さ等を適宜設定することで、所望の大きさ(範囲内)に調整される。
したがって、光学シート15を、湾曲形状をなすものとした湾曲光学シート10を、レンズ30が備えることで、サングラス100の外部から照射される外光、すなわち、太陽光の直接光や、その反射光は、光学シート15を透過する際に、可視光領域における特定波長領域の光が光学シート15で反射され、残りの光すなわち反射されない光として減衰された光がサングラス100の装着者の眼にまで到達することとなる。これにより、太陽光の直接光や反射光に含まれる可視光のうち特定波長領域の光の眼への侵入が抑制され、よって、装着者が視認する対象物の認識性の向上を図ることができる。これに対して、レンズ30(光学シート15)を介して、装着者とは反対側に位置する人には、光学シート15を反射した特定の波長領域の光(反射光)が視認されるため、サングラス100の意匠性の向上を図ることができる。このように光学シート15は、可視光のうち、特定の波長領域を有する光を選択的に反射し、その残部を選択的に透過させる、反射板としての機能を発揮する。
また、光学シート15は、前述したレンズの製造方法において、前記工程[3]における熱曲げ加工や、前記工程[4]における射出成形加工が施されるため、熱履歴を経ることとなる。また、これらの加工時における加熱温度は、前述の通り、前記工程[3]では好ましくは120℃以上250℃以下程度、前記工程[4]では好ましくは180℃以上320℃以下程度に設定されるため、光学シート15が有するハーフミラー層113は、優れた耐熱性を備えることが好ましい。
ハーフミラー層113は、前述の通り、可視光領域における特定波長領域の光を最大限で反射し、これに対して、反射されない残部の光を最大限で透過する特性を発揮するものである。したがって、ハーフミラー層113が優れた耐熱性を発揮するとは、過酷な条件下に晒されたとしても、かかるハーフミラー層113の特性が好適に維持されていることであると言うことができる。
そのため、ハーフミラー層113を構成する、高屈折率層31の主材料および低屈折率層32の主材料として、それぞれに含まれる、可視光領域における光に対して屈折率が高い、高屈折率層31に含まれる樹脂材料のガラス転移点をTg1とし、可視光領域における光に対して屈折率が低い低屈折率層32に含まれる樹脂材料のガラス転移点をTg2としたとき、Tg1,Tg2≧105℃なる関係を満足することが好ましい。このように、Tg1とTg2との双方が105℃以上であるものを好ましくは選択することで、高屈折率層31と低屈折率層32との双方を優れた耐熱性を有するものとし得る。したがって、低屈折率層32および高屈折率層31のうちガラス転移点が低い方の屈折率層において、その膜厚が変化するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、光学シート15が有するハーフミラー層113は、特定の波長領域の光(可視光)を選択的に反射する反射板としての機能が低下するのが的確に抑制または防止されることから、優れた耐熱性を発揮する。なお、低屈折率層32において屈折率が低い樹脂材料は、一般的に、高屈折率層31の主材料として含まれる屈折率が高い樹脂材料よりも、ガラス転移点が低いものが選択される傾向が高い。そのため、屈折率が低い樹脂材料として、そのガラス転移点Tg2が105℃以上であるものを用いることにより、前記効果を確実に発揮させることができる。
このハーフミラー層113を備える光学シート15は、高屈折率層31を構成する主材料のガラス転移点Tg1と、低屈折率層32を構成する主材料のガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、金属型に押し当てることで、光学シート15を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲光学シート10としたときの湾曲光学シート10の波長589nmの光の反射率をR1[%]とし、この湾曲光学シート10を、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、湾曲光学シート10の波長589nmの光の反射率をR2[%]としたとき、R2/R1×100[%]で求められる反射率保持性が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
上記の通り、曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状とされた湾曲光学シート10が105℃の温度環境下で1000hr保管するという過酷な条件下に晒されたとしても、前記反射率保持性は前記下限値以上であることを維持している。このように、前記反射率保持性が前記下限値以上の割合で維持されていることから、このハーフミラー層113を、優れた耐熱性を発揮するものであると言うことができる。また、湾曲光学シート10の波長589nmの光の反射率R1は、40%以上であることが好ましく、45%以上70%以下であることがより好ましい。このような湾曲光学シート10を、可視光領域における光を優れた反射率で反射しているものであると言うことができる。
また、前述の通り、繰り返し部33(積層体)では、可視光領域における光を最大限でブロック(反射)し、反射されない光を最小限でブロックする可視光の特定の波長領域、さらに、その波長領域の光の強度は、高屈折率層31および低屈折率層32にそれぞれ含まれる樹脂材料の種類、ハーフミラー層113(繰り返し部33)における高屈折率層31と低屈折率層32との繰り返し数、ならびに、ハーフミラー層113(高屈折率層31、低屈折率層32)の厚さ等を適宜設定することで、所望の大きさ(範囲内)に調整される。
このようなハーフミラー層113(繰り返し部33)において、具体的に、一般的に可視光の基準波長として使用されるナトリウムD線(589nm)を代表値として用いて、波長589nmにおける高屈折率層31の屈折率N1と低屈折率層32の屈折率N2との屈折率差(N1-N2)の大きさを、好ましくは0.05以上0.25以下に規定することにより、ハーフミラー層113(繰り返し部33)すなわち反射板を、可視光領域における光、具体的には、波長領域400nm以上780nm以下の可視光のうち、特定の波長領域の光を最大限で反射するものとし得る。
さらに、高屈折率層31の主材料および低屈折率層32の主材料として、高屈折率層31に含まれる可視光領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料のガラス転移点Tg1と、低屈折率層32に含まれる可視光領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料のガラス転移点Tg2とが好ましくはTg1,Tg2≧105℃なる関係を満足しているものを選択することで、ハーフミラー層113(繰り返し部33)すなわち反射板(多層積層反射板)を優れた耐熱性を発揮するものとし得る。
以上のように、屈折率差(N1-N2)が好ましくは0.05以上0.25以下であり、さらに、好ましくはTg1,Tg2≧105℃であることを満足する、高屈折率層31の主材料すなわち可視光領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料、および、低屈折率層32の主材料すなわち可視光領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料としては、それぞれ、非結晶性を有するポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびアクリル系樹脂のうちの少なくとも1種であることが好ましく、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂およびポリエステル系樹脂のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。これらのものから高屈折率層31および低屈折率層32の主材料を適宜選択することで、高屈折率層31および低屈折率層32を備えるハーフミラー層113を、比較的容易に、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることと、Tg1,Tg2≧105℃であることとの双方を満足するものとし得る。
以上のような点を考慮して、高屈折率層31の主材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル系樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)およびポリアリレート(PAR)のうちの少なくとも1種が好適に選択される。
また、低屈折率層32の主材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)のようなスチレン系樹脂およびポリアリレート(PAR)のうちの少なくとも1種が好適に選択される。
このような樹脂材料を用いる場合、高屈折率層31と低屈折率層32とに、それぞれ含まれる主材料の組み合わせとしては、具体的には、ポリカーボネート(PC)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との組み合わせ、ポリアリレート(PAR)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との組み合わせ、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との組み合わせ、ポリエーテルサルフォン(PES)とポリアリレート(PAR)との組み合わせ、ポリエチレンナフタレート(PEN)とアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)との組み合わせ、ポリエチレンナフタレート(PEN)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との組み合わせ等が挙げられる。このような組み合わせによれば、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることと、Tg1,Tg2≧105℃であることとの双方を、より容易に満足するものとし得る。
なお、高屈折率層31および低屈折率層32には、それぞれ、前記主材料の他に、充填材のような添加剤が含まれていてもよい。これにより、高屈折率層31および低屈折率層32を備えるハーフミラー層113を、屈折率差(N1-N2)が0.05以上0.25以下であることと、Tg1,Tg2≧105℃であることとの双方をより容易に満足するものとし得る。
また、この充填剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルク、スメクタイトのような無機充填材、架橋ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のような有機充填材が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、炭酸ストロンチウムおよびスメクタイトのうちの少なくとも1種であることが好ましく、炭酸ストロンチウムであることがより好ましい。
また、充填剤は、球状、扁平状のような粒子状、顆粒状、ペレット状および鱗片状のいずれの形状をなしていてもよいが、粒子状をなして含まれることが好ましい。
以上のような樹脂材料の組み合わせで得られる高屈折率層31および低屈折率層32において、可視光領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料のガラス転移点Tg1と、可視光領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料のガラス転移点Tg2とは、好ましくはTg1,Tg2≧105℃なる関係を満足するが、換言すればTg1とTg2とのうち温度が低い方が105℃以上であることが好ましいが、さらに、Tg1とTg2の温度が低い方が110℃以上250℃以下なる関係を満足するのが好ましく、Tg1とTg2の温度が低い方が110℃以上200℃以下なる関係を満足するのがより好ましい。また、0℃≦|Tg1-Tg2|≦60℃なる関係を満足するのが好ましく、25℃≦|Tg1-Tg2|≦60℃なる関係を満足するのがより好ましい。このように、Tg1とTg2との双方が前記範囲内であり、さらに、双方の差が前記上限値以下であるものを選択することで、高屈折率層31と低屈折率層32との双方を優れた耐熱性を有するものとし得ることから、ハーフミラー層113を、確実に優れた耐熱性を発揮するものとし得る。
また、高屈折率層31の波長589nmでの屈折率N1と、低屈折率層32の波長589nmでの屈折率N2との関係式である屈折率差(N1-N2)は、0.05以上0.25以下であるのが好ましいが、高屈折率層31は、波長589nmでの屈折率N1が1.57以上1.85以下であるのが好ましく、低屈折率層32は、波長589nmでの屈折率N2が1.49以上1.67以下であるのが好ましい。これにより、可視光領域における、特定の波長領域の光を、より確実に反射させることができる。
さらに、高屈折率層31および低屈折率層32は、それぞれ、その平均厚さが50nm以上300nm以下であることが好ましく、その平均厚さが50nm以上200nm以下であることがより好ましい。かかる範囲内の平均厚さにおいて、高屈折率層31および低屈折率層32の光学厚み(層の平均厚さ×層の屈折率)を、選択的に反射すべき可視光領域における光の波長に対して4分の1の大きさに設定する。これにより、界面反射した光を、互いに強め合うことができるため、ハーフミラー層113により、可視光領域における特定の波長領域の光を選択的に反射させることができる。
また、高屈折率層31と低屈折率層32とが積層された繰り返し部33は、その積層された数が50回以上750回以下であることが好ましく、100回以上600回以下であることがより好ましい。
高屈折率層31および低屈折率層32の平均厚さ、ならびに、高屈折率層31と低屈折率層32とが積層された繰り返し部33の数を前記範囲内に設定することにより、可視光領域において最大限でブロックする光の特定の波長(波長領域)を、所望の大きさ(範囲内)のものに調整することができる。
以上のような、第1基板11は、第1基材111と、ハーフミラー層113と、第2基材112とが、この順で、互いに接合して積層された積層体で構成されるが、この第1基板11を備える光学シート15は、前述したレンズの製造方法において、前記工程[3]における熱曲げ加工が施されることで、第1基板11(第1基材111)側(上側)を湾曲凸面とし、第2基板12側(下側)を湾曲凹面とする湾曲形状をなす湾曲光学シート10に熱曲げされる。そのため、積層体で構成される第1基板11は、光学シート15において、優れた加工性を備えることが求められる。
第1基材111および第2基材112は、その主材料として、樹脂材料を含有している。また、ハーフミラー層113は、前述の通り、本発明では、ハーフミラー層113を構成する、高屈折率層31の主材料および低屈折率層32の主材料として、それぞれ、ガラス転移点がTg1である樹脂材料およびガラス転移点がTg2である樹脂材料を含有している。
このように、第1基材111および第2基材112の主材料、ならびに、ハーフミラー層113を構成する、高屈折率層31および低屈折率層32の主材料を、ともに樹脂材料で構成することで、これらの積層体で構成される第1基板11に、優れた加工性を付与することができる。したがって、この第1基板11を備える光学シート15を、湾曲形状をなすものに熱曲げする際に、例えば、高屈折率層31および低屈折率層32が金属系(無機系)の材料で構成される場合のように、高屈折率層31および低屈折率層32において、クラックが発生するのを的確に抑制または防止することができる。
そして、本発明では、このような第1基板11において、第1基材111とハーフミラー層113との界面は、第1基材111とハーフミラー層113との連続層を形成し、第2基材112とハーフミラー層113との界面は、第2基材112とハーフミラー層113との連続層を形成している。このように、第1基板11では、このものを構成する各層が互いに接合する界面において、接合する各層にそれぞれ含まれる構成材料が互いに混じり合った状態をなす連続層を形成している。そのため、第1基材111とハーフミラー層113との密着性、および、第2基材112とハーフミラー層113との密着性の向上が図られる。したがって、前記工程[3]において、第1基板11(第1基材111)側(上側)を湾曲凸面とし、第2基板12側(下側)を湾曲凹面とする湾曲形状をなす湾曲光学シート10を得るために、第1基板11を備える光学シート15に熱曲げ加工が施されたとしても、第1基材111とハーフミラー層113との界面、および、第2基材112とハーフミラー層113との界面において、これら同士の剥離が生じるのを、的確に抑制または防止することができる。よって、光学シート15に、より優れた加工性を付与することができる。
また、このように、第1基材111とハーフミラー層113との界面において、第1基材111とハーフミラー層113との連続層を形成し、第2基材112とハーフミラー層113との界面において、第2基材112とハーフミラー層113との連続層を形成して、基材111、112とハーフミラー層113とを接合するための接着剤層の形成が省略されている。そのため、光学シート15の製造時における生産性の向上を図ることができる。
なお、この連続層とは、第1基材111とハーフミラー層113との界面では、第1基材111およびハーフミラー層113にそれぞれ含まれる構成材料が互いに混じり合った状態のことを言い、より詳しくは、第1基材111とハーフミラー層113との界面において、第1基材111の構成材料が、ハーフミラー層113側に分散し、さらに、ハーフミラー層113の構成材料が、第1基材111側に分散している状態のことを言う。また、第2基材112とハーフミラー層113との界面では、第2基材112およびハーフミラー層113にそれぞれ含まれる構成材料が互いに混じり合った状態のことを言い、より詳しくは、第2基材112とハーフミラー層113との界面において、第2基材112の構成材料が、ハーフミラー層113側に分散し、さらに、ハーフミラー層113の構成材料が、第2基材112側に分散している状態のことを言う。
また、以上のような第1基材111と、ハーフミラー層113と、第2基材112とを含む積層体で構成される第1基板11は、本発明では、そのリタデーション(複屈折率×厚さ)が、2000nm以上7000nm以下の範囲内に設定されている。これにより、第1基板11に、偏光性を付与することができる。
そして、この第1基板11は、その遅相軸(もしくは進相軸)が、偏光膜13の吸収軸に対して平行となるように配置されている。
リタデーションの大きさが前記範囲内に設定されている第1基板11を、その遅相軸(もしくは進相軸)が、偏光膜13の吸収軸に対して平行となるように、第1接着剤層14を介して、偏光膜13に接合することで、第1基板11側を湾曲凸面側として、光学シート15を熱曲げ加工して湾曲形状をなす湾曲光学シート10とし、この湾曲光学シート10を、湾曲凹側、すなわち、第2基板12側から見たときに、第1基板11の光学ひずみによって生じる透過像の着色を的確に抑制または防止してクリアな視界を確保することができる。また、第1基板11のリタデーションが2000nmより低い場合、この透過像のにじみが顕著に発生する。さらに、7000nmより高い場合、光学シート15を熱曲げ加工して湾曲光学シート10とする熱曲げ時に不具合が発生し、求める曲率半径が得られない。
第1基板11のリタデーションは、2000nm以上7000nm以下の範囲内に設定されていればよいが、2500nm以上6000nm以下であるのが好ましく、3000nm以上5000nm以下であるのがより好ましい。これにより、第2基板12側から見たときに、透過像の着色をより的確に抑制または防止してクリアな視界を、確実に確保することができる。
また、第1基板11の遅相軸(もしくは進相軸)と、偏光膜13の吸収軸とは、平行をなしているのが特に好ましいが、好ましくは±3°程度、より好ましくは±1°程度の範囲内のズレ量でズレが生じることが許容される。このようなズレが生じたとしても、湾曲面凹側から見たときに、第1基板11の光学ひずみによって生じる透過像が着色するのを、確実に抑制することができる。また、「遅相軸」とは、第1基板11を透過する光の進む速度が遅い(位相が遅れる)方位のことであり、これと反対に、光の進む速度が速い(位相が進む)方位をその位相子の「進相軸」と言う。
なお、第1基板11のリタデーションの差異は、層中に含まれる構成材料や、厚さ、さらには、延伸倍率等を異ならせることにより発現させることができる。
また、この第1基板11を備える光学シート15は、高屈折率層31を構成する主材料のガラス転移点Tg1と、低屈折率層32を構成する主材料のガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、金属型に押し当てることで、光学シート15を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲光学シート10とし、この湾曲光学シート10を、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、曲率半径が60±5mmの大きさとなっている形状を維持しているものの数が、50個の湾曲光学シート10のうち、48個以上であることが好ましく、50個であることがより好ましい。
上記の通り、曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状とされた湾曲光学シート10が105℃の温度環境下で1000hr保管するという過酷な条件下に晒されたとしても、湾曲光学シート10の形状の保持性は前記下限値以上であることを維持している。このように、前記形状の保持性が前記下限値以上の割合で維持されていることから、この湾曲光学シート10を、優れた加工性を発揮するものであると言うことができる。
また、上記の通り、湾曲光学シート10を、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、第1基材111とハーフミラー層113との間、または、第2基材112とハーフミラー層113との間に、剥離が生じているものの数が、前記湾曲光学シート50個中、2個以下であることが好ましく、0個であることがより好ましい。
上記の通り、曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状とされた湾曲光学シート10が105℃の温度環境下で1000hr保管するという過酷な条件下に晒されたとしても、湾曲光学シート10における剥離の発生は、前記上限値以下であることを維持している。このように、前記剥離の発生が前記上限値以下の割合に抑制されていることから、この湾曲光学シート10を、基材111、112とハーフミラー層113との間の剥離の発生を抑止して、優れた加工性を発揮するものであると言うことができる。
かかる構成をなす、第1基板11は、第1基材111と、高屈折率層31と低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された繰り返し部33が複数形成されたハーフミラー層113と、第2基材112とが、この順で、互いに接合して積層された積層体を一体的に成膜した後に、このものを流れ方向(MD)に延伸することで得られるが、より具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。
すなわち、まず、高屈折率層31および低屈折率層32を形成するための樹脂組成物として、それぞれ、可視光領域における光に対して屈折率が高い樹脂材料、および、可視光領域における光に対して屈折率が低い樹脂材料を主材料として含有するものを用意し、これらを交互に積層することで、高屈折率層31と低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された繰り返し部33(積層体)を複数積層した複数積層体を得た後に、第1基材111および第2基材112を形成するための樹脂材料を主材料とする樹脂組成物を、それぞれ、得られた複数積層体の上面および下面に積層することで、第1基材111と複数積層体と第2基材112とがこの順で積層された一体物を得る(積層工程)。換言すれば、複数積層体の上面および下面が、それぞれ、第1基材111および第2基材112を被覆層(スキン層)として被覆された一体物を得る。
このように、第1基材111と複数積層体と第2基材112とがこの順で積層された一体物を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、数台の押出機により、各層の原料となる樹脂材料を含有する樹脂組成物を、それぞれ、溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法などの共押出Tダイ法、空冷式または水冷式共押出インフレーション法が挙げられ、なかでも、特に、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法は、厚さ方向に互いに重なるように成膜する各層の厚さ制御に優れることから好ましく用いられる。
次いで、得られた一体物を、冷却させて、乾燥・固化させる(冷却工程)。これにより、第1基材111と、ハーフミラー層113と、第2基材112とが、この順で、互いに接合して積層された積層体を、一体的に得ることができる。
そして、この得られた積層体を、流れ方向(MD)に延伸させることで、リタデーションの大きさが2000nm以上7000nm以下の範囲内に設定されている第1基板11を得ることができる。
なお、積層体をMDに延伸させる際における、積層体の延伸倍率は、1.2以上であることが好ましく、1.5以上3.0以下であることがより好ましい。これにより、第1基板11のリタデーションを、比較的容易に前記範囲内に設定することができる。
偏光膜13は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有する偏光子を構成している。これにより、光学シート15を通過する光は、偏光されたものとなる。
偏光膜13の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上100%以下であるのが好ましく、80%以上100%以下であるのがより好ましい。また、偏光膜13の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、10%以上80%以下であるのが好ましく、20%以上50%以下であるのがより好ましい。
このような偏光膜13の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
これらの中でも、偏光膜13は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光膜13は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光能に優れたものとなる。
なお、上記二色性染料としては、例えばクロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシッドブラックなどが挙げられる。
この偏光膜13の波長589nmでの屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.45以上1.55以下であるのが好ましく、1.47以上1.53以下であるのが好ましい。
また、偏光膜13の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。
第2基板12は、偏光膜13を支持するとともに、第2基板12と、前述した第1基材111との間にハーフミラー層113および偏光膜13を配置させる、光学シート15の最外層を構成し、ハーフミラー層113および偏光膜13を保護する保護層としての機能を有している。
この第2基板12は、第1基材111と同様に、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
この透明樹脂としては、前述した第1基材111で挙げたのと同様のものを用いることができるが、中でも、ポリアミド系樹脂またはポリカーボネート系樹脂を主材料として構成されていることが好ましい。
ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富むため、光学シート15の透明性や耐衝撃性を向上させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、その比重が1.2程度であり、樹脂材料のなかでも軽いものに分類されることから、光学シート15の軽量化が図られる。また、ポリアミド系樹脂は、透明性および耐衝撃性の他に、耐薬品性、耐応力性等の向上を図ることができる。
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができ、例えば、脂環式ポリアミド、半芳香族ポリアミド等が挙げられる。脂環式ポリアミドは、耐衝撃性に優れた材料である。そのため、光学シート15を優れた耐衝撃性を発揮するものとし得る。また、半芳香族ポリアミドは、弾性率の高い材料である。そのため、曲げ等の応力に対して、優れた耐性を有する光学シート15とすることができる。
なお、本明細書において、半芳香族ポリアミドとは、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの一方が芳香族性化合物であり、他方が脂肪族化合物であるポリアミドのことを言い、具体的には、下記式(1B)で表すことができる。
(ただし、式(1B)中のRおよびRは、一方が2価の芳香族置換基、他方が2価の脂肪族置換基であり、nは、2以上の整数である。)
なお、ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミンのうち少なくとも一方について、2種以上のモノマーを含む共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)であってもよい。
また、上記式(1B)中のR、Rのうちの芳香族置換基としては、下記式(2B)で表されるものであるのが好ましい。
(ただし、式(2B)中、l、mは、それぞれ独立に0以上2以下の整数である。)
これにより、偏光膜13をより好適に保護することができるとともに、光学シート15の加工性をより優れたものとし得る。また、第2基板12にリタデーションを付与する場合には、第2基板12の延伸によるリタデーションの制御をより容易に行うことができる。
上記式(1B)中のR、Rのうちの脂肪族置換基は、炭素数が4以上18以下のものであるのが好ましく、炭素数が4以上18以下の炭化水素基であるのがより好ましく、炭素数が4以上18以下の飽和炭化水素基であるのがさらに好ましい。
これにより、光学シート15の加工性をより優れたものとし得る。
さらに、半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジアミンとを構成モノマーとして含むものであるのが好ましい。これにより、ハーフミラー層113および偏光膜13をより好適に保護することができるとともに、光学シート15の加工性をより優れたものとし得る。また、第2基板12の延伸によるリタデーションの制御をより容易に行うことができる。
脂環式ポリアミドは、その分子内に脂環式の化学構造を有しており、主鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよいし、側鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよい。
この脂環式ポリアミドとしては、例えば、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの少なくとも一方が脂環式の化学構造を有する化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、下記式(3B)で表すことができる。
(ただし、式(3B)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が4以下の炭化水素基、oは、2以上14以下の整数、pは、0以上6以下の整数、nは、2以上の整数である。)
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましく、前述した第1基材111で挙げたのと、同様のものを用いることができる。
第2基板12中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、前記工程[3]における光学シート15の熱曲げ加工による湾曲光学シート10の形成を比較的容易に実施することができる。また、第1基板11にリタデーションを発現させる際に、このリタデーションの発現のための延伸を好適に行うことができる。さらに、光学シート15の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
また、第2基板12には、主材料として含まれる樹脂材料以外に、他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、主材料以外の樹脂材料や、染料等の着色剤、充填材、配向助剤、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤および酸化防止剤等)、可塑剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられる。
この場合、第2基板12中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、第2基板12の100重量%中、75重量%以上であるのが好ましく、85重量%以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、光学シート15を、優れた強度を発揮するものとし得る。
また、第2基板12にリタデーションを発現させる場合、第1基板11のリタデーションと第2基板12のリタデーションとは、異なっているのが好ましく、第2基板12のリタデーションは、第1基板11のリタデーションよりも低くなっているのがより好ましい。
これにより、第1基板11は、熱収縮により湾曲曲率が小さくなる方向に変形しやすいが、第2基板12は、熱収縮により変形しにくくすることができる。したがって、図2に示したように、レンズ30が備える湾曲光学シート10に適用することで、湾曲した湾曲状態で用いられることになるが、この際に、湾曲凹面側に第2基板12が位置し、湾曲凸面側に第1基板11が位置するように湾曲形状とするのが好ましい。この場合、第1基板11が比較的熱収縮率が高くなるため、比較的熱変形しやすいが、湾曲光学シート10では、第2基板12は、第1基板11の熱変形を抑制する機能を発揮する。そのため、湾曲光学シート10全体として、熱による過剰な変形を防止することができる。その結果、湾曲光学シート10の熱変形に起因して、レンズ30自体の形状が変形するのを、的確に抑制または防止することができる。
第2基板12のリタデーションは、0nm以上6000nm以下であるのが好ましく、0nm以上4000nm以下であるのがより好ましい。これにより、第2基板12のリタデーションを十分に低くすることができる。よって、第2基板12のリタデーションを、第1基板11のリタデーションよりも低くすることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
なお、第2基板12のリタデーションの差異は、層中に含まれる構成材料や、厚さ、さらには、延伸倍率等を異ならせることにより発現させることができる。
第2基板12の延伸倍率は、特に限定されないが、前記リタデーションの大きさに設定されるように、例えば、0.95以上1.1以下であるのが好ましい。
また、第2基板12の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第2基板12の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜13およびハーフミラー層113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
第2基板12は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下に設定される。第2基板12の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学シート15の薄型化を図りつつ、光学シート15に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。そのため、ハーフミラー層113により選択的に反射される特定の波長領域の光における色目を、光学シート15の全体に亘って、より均一に視認することができるようになる。
第1接着剤層14は、第1基板11(一方の基板)と、偏光膜13との間に設けられ、第1基板11と偏光膜13とを接合する機能を有する。これにより、第1接着剤層14を介して、第1基板11と偏光膜13との間に、優れた密着力を付与することができる。
また、第2接着剤層16は、第2基板12(他方の基板)と、偏光膜13との間に設けられ、第2基板12と偏光膜13とを接合する機能を有する。これにより、第2接着剤層16を介して、第2基板12と偏光膜13との間に、優れた密着力を付与することができる。
これら第1接着剤層14および第2接着剤層16は、それぞれ、光透過性を有する接着剤により構成されている。この接着剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、シリル化ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系、ポリエステル系、ポリイミド系、フェノール系等の接着剤が挙げられる。
これらの中でも、第1接着剤層14および第2接着剤層16は、ウレタン樹脂系の接着剤により構成されていることが好ましい。これにより、光学シート15を、湾曲形状をなす湾曲光学シート10に熱曲げ加工を施す際に、熱曲げ加工に必要な耐熱性を付与することができる。さらには、シリコーン系の接着剤により構成されていることも好ましい。これにより、接着剤の硬化時にガスが発生するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、接着剤層14、16中に気泡が残存するのを的確に抑制または防止することができる。
なお、第1接着剤層14と第2接着剤層16とは、同一または同種のものであってもよいし、同一または同種のものとは異なるものであってもよい。
また、第1接着剤層14および第2接着剤層16の波長589nmでの屈折率は、それぞれ独立して、1.3以上1.7以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。
第1接着剤層14および第2接着剤層16の厚さは、それぞれ独立して、例えば、2μm以上100μm以下であるのが好ましく、5μm以上35μm以下であるのがより好ましい。このような第1接着剤層14および第2接着剤層16により、それぞれ、第1接着剤層14および第2接着剤層16と偏光膜13とを確実に接合することができる。
また、光学シート15の総厚は、特に限定されないが、0.2mm以上3.0mm以下程度であるのが好ましく、0.4mm以上1.6mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、光学シート15に優れた強度を付与しつつ、光学シート15を、湾曲形状をなす湾曲光学シート10に成形する際に、この光学シート15に優れた熱成形性を付与することができる。
また、光学シート15は、第1接着剤層14と偏光膜13との間、および、第2接着剤層16と偏光膜13との間の少なくとも一方に、中間層として密着層を備えるものであってもよい。これにより、接着剤層14、16と偏光膜13との間における密着力の向上を図ることができる。
この密着層としては、特に限定されないが、例えば、SiOおよびAlのうちの少なくとも1種を主材料として構成されるものが挙げられる。
<第2実施形態>
また、光学シート15は、前記第1実施形態で説明した構成をなすものの場合の他、以下に示すような構成をなすものであってもよい。
図5は、本発明の光学シートの第2実施形態を示す縦断面図である。
なお、以下では、説明の都合上、図5の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図5中のx方向を「左右方向」、y方向を「前後方向」、z方向を「上下方向」と言う。さらに、図5では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
以下、この図を参照して本発明の光学シートの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態の光学シート15は、最外層として、第1基板11および第2基板12をそれぞれ被覆する被覆層17(ハードコート層)をさらに有すること以外は前記第1実施形態の光学シート15と同様である。
すなわち、図5に示すように、本実施形態では、光学シート15は、第1基板11の一方の面側(上面側)に、最外層として第1基板11を被覆する被覆層17をさらに有している。また、第2基板12の他方の面側(下面側)に、最外層として第2基板12を被覆する被覆層17をさらに有している。換言すれば、本実施形態の光学シート15では、被覆層17、第2基板12、第2接着剤層16、偏光膜13、第1接着剤層14、第1基板11および被覆層17が、光学シート15の下面側から上面側に向かって、この順で積層された積層体で構成されている。
第1基板11および第2基板12をそれぞれ被覆する被覆層17を、本実施形態のように設ける構成とすることで、第1基板11および第2基板12が傷つくのを確実に防止することができる。
この被覆層17(コート層)は、樹脂組成物を用いて形成された、いわゆるハードコート層であり、この樹脂組成物としては、例えば、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含むものが好ましく用いられる。そこで、以下では、このシリコン変性(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物について説明する。
(シリコン変性(メタ)アクリル樹脂)
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂(シロキサン変性(メタ)アクリレート)は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖と、この主鎖に連結し、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)とを有するポリマー(プレポリマー)である。
すなわち、主鎖としての(メタ)アクリル系化合物と、副鎖としてのシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有する化合物とが連結したポリマー(プレポリマー)である。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂は、前記主鎖を有することにより、被覆層17に優れた透明性を付与し、また、前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、被覆層17に優れた耐擦傷性および耐候性を付与すること、すなわち被覆層17としての機能を確実に付与することができる。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂の主鎖としては、具体的には、下記式(1)および式(2)の少なくとも一方の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられ、これら双方のモノマーに由来する構成単位の繰り返しを備えるものとして、下記式(12)で示す化学式を有するものが挙げられる。
(式(1)中、nは、1以上の整数を示し、R1は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
(式(2)中、mは、1以上の整数を示し、R2は、独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
(式(12)中、m、nは、1以上の整数を示し、R1、R2、R3は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示し、R0は、独立して炭化水素基または水素原子を示す。)
また、かかる構成の主鎖の少なくとも1つの末端または側鎖には、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体(副鎖)が結合している。
シロキサン結合は、結合力が高いため、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体を有することにより、耐熱性、耐候性がより良好な被覆層17を得ることができる。また、シロキサン結合の結合力が高いことで、硬質な被覆層17を得ることができるため、光学シート15の耐擦傷性をさらに増大させることができる。
シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、下記式(3)および式(4)の少なくとも一方のシロキサン結合を有する構成単位の繰り返しで構成されているものが挙げられる。
(式(3)中、Xは、炭化水素基または水酸基を示す。)
(式(4)中、Xは、炭化水素基または水酸基を示し、Xは、炭化水素基または水酸基から水素が離脱した2価の基を示す。)
前記シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体としては、具体的には、ポリオルガノシロキサンを有するものや、シルセスキオキサンを有するものが挙げられる。なお、シルセスキオキサンの構造としては、ランダム構造、籠型構造、ラダー構造(はしご型構造)等、いかなる構造であってもよい。
前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、ビフェニル基等が挙げられる。
また、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖には、不飽和二重結合が導入されていることが好ましい。これにより、樹脂組成物中に後述するウレタン(メタ)アクリレートが含まれる場合、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークを形成することができる。そのため、被覆層17において、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとがより均一に分散し、その結果、被覆層17は、前述した特性をその全体にわたってより均一に発現することができる。
前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、5質量部以上45質量部以下であることが好ましく、11質量部以上28質量部以下であることがより好ましい。前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記下限値未満であると、前記樹脂組成物により得られた被覆層17の硬さが低下する場合がある。また、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂の含有量が前記上限値を超えると、前記樹脂組成物中におけるシリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の材料の含有量が相対的に減ってしまい、前記樹脂組成物を用いて形成された被覆層17の撓み性が低下してしまう可能性がある。
以上のような構成を有するシリコン変性(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、下記式(5)、式(6)で表される化合物が挙げられる。
(式(5)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示す。)
(式(6)中、Meは、メチル基を示し、m、n、pは、それぞれ1以上の整数を示し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭化水素基、有機基、または水素原子を示す。)
(ウレタン(メタ)アクリレート)
また、樹脂組成物は、さらに、ウレタン(メタ)アクリレートを含むものであることが好ましい。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中にウレタン(メタ)アクリレートが含まれることで、このウレタン(メタ)アクリレートが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとのネットワークが形成される。その結果、樹脂組成物が硬化して硬化物が得られることにより、この硬化物で構成される被覆層17が形成される。なお、この(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を紫外線のようなエネルギー線を照射することにより硬化する光硬化により行われる。
以上のようにして形成される被覆層17において、ウレタン(メタ)アクリレートが含まれることにより、被覆層17の柔軟性を向上させることができ、光学シート15を、その一部または全部を、湾曲形状を有するものに適用するため、光学シート15を熱曲げする際に、被覆層17の表面におけるクラックの発生を的確に抑制し得ることから、光学シート15に優れた熱成形性を付与することができる。
さらに、上述したシリコン変性(メタ)アクリル樹脂と、このウレタン(メタ)アクリレートとの組み合わせとすることにより、優れた耐擦傷性と熱成形性とを高度に両立した光学シート15を得ることができる。
このウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合(-OCONH-)を有する主鎖と、この主鎖に連結した(メタ)アクリロイル基とを有する化合物のことを言う。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、モノマーまたはオリゴマーである。
かかる構成のウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有するため、柔軟性に優れた化合物である。このため、被覆層17がウレタン(メタ)アクリレートを含むことで、被覆層17にさらなる撓み性(柔軟さ)を付与することができる。そのため、光学シート15を湾曲形状をなす湾曲光学シート10に成形した際の、曲げ部におけるクラックの発生を的確に抑制することができる。
なお、このウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。
また、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられ、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
さらに、ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ジオールと、炭酸エステルとの反応物が挙げられ、ジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等が用いられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、10質量部以上75質量部以下であることが好ましく、17質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、前記下限値未満であると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、被覆層17の柔軟性が乏しくなるおそれがある。また、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量が前記上限値を超えると、ウレタン(メタ)アクリレートの種類によっては、樹脂組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート以外の材料の含有量が相対的に減少し、光学シート15の耐擦傷性が低下するおそれがある。
((メタ)アクリレートモノマー)
また、樹脂組成物は、さらに(メタ)アクリレートモノマーを含むものであることが好ましい。
シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、シロキサン結合を有する構成単位が繰り返された繰り返し体の末端または側鎖に不飽和二重結合が導入されている場合、樹脂組成物中に(メタ)アクリレートモノマーが含まれることで、この(メタ)アクリレートモノマーが有する(メタ)アクリロイル基と不飽和二重結合とが結合して、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂と(メタ)アクリレートモノマーとのネットワークが形成され、その結果、樹脂組成物が硬化することで被覆層17が形成される。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、光学シート15の耐候性を向上させる観点から、芳香族を含まない樹脂であることが好ましい。
樹脂組成物中における(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、15質量部以上55質量部以下であることが好ましく、27質量部以上55質量部以下であることがより好ましい。
(イソシアネート)
また、樹脂組成物は、さらにイソシアネートを含むものであることが好ましい。
これにより、樹脂組成物中において、イソシアネートは、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂を分子間で結合(架橋)させる架橋剤として機能する。すなわち、架橋剤としてのイソシアネートが含まれることで、シリコン変性(メタ)アクリル樹脂が備える、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構成単位が繰り返された主鎖が備える水酸基と、イソシアネートが有するイソシアネート基とが反応してウレタン結合で構成された架橋構造が形成され、その結果、樹脂組成物の硬化物で構成される被覆層17が形成される。なお、この水酸基とイソシアネート基とが結合することによる樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物を加熱することにより硬化する熱硬化により行われる。
以上のようにして形成される被覆層17において、水酸基とイソシアネート基とが結合することにより形成されるネットワークを構築することができるため、被覆層17の耐擦傷性および耐候性をより向上させることができる。
樹脂組成物中におけるイソシアネートの含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物100質量部中、3質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
(その他の材料)
さらに、樹脂組成物には、上述した各種材料以外に、その他の材料が含まれていてもよい。
その他の材料としては、特に限定されないが、例えば、前記シリコン変性(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂材料、光重合開始剤、紫外線吸収剤、着色剤、増感剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤、表面調整剤、親水化添加剤、充填材および溶剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
以上のような樹脂組成物の硬化物で構成される被覆層17の平均厚さは、特に限定されないが、1μm以上40μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。被覆層17の厚さが前記下限値未満であると、光学シート15の耐候性が低下する場合がある。一方、被覆層17の厚さが前記上限値を超えると、光学シート15を、湾曲形状をなすものとした湾曲光学シート10とする際に、湾曲光学シート10においてクラックが発生するおそれがある。
このような第2実施形態の光学シート15によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上、本発明の光学シートおよび光学部品について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ハーフミラー層113を反射板として備え、さらに、偏光膜13を偏光子として備える光学シート15を構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
さらに、前記実施形態では、本発明の光学シート15を、湾曲形状をなすものとした湾曲光学シート10を、湾曲樹脂基板として備えるレンズ30に適用する場合、すなわち、本発明の光学部品がレンズ30で構成される場合について説明したが、例えば、液晶ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイのような表示装置等が備えるカバーフィルム、バイク、車、航空機、鉄道のような移動手段、工作機械、建築物が備える窓部材、ヘッドライト、フォグランプが備えるカバー部材、ヘッドアップディスプレイが備える光源内に設けられる輝度向上フィルムやコールドミラー、赤外線センサーのような車載センサーが備える反射板等に、光学シート15を貼付して使用することもできる。なお、これらの場合、カバーフィルム、窓部材、カバー部材、輝度向上フィルム、コールドミラーまたは反射板と、これらに貼付された湾曲光学シート10とにより、光学部品が構成される。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
1.原材料の準備
<ポリカーボネート(PC1)>
ポリカーボネート(PC1)として、ユーピロンE2000(三菱エンジニアプラスチックス社製)を用意した。
<ポリメタクリル酸メチル(耐熱PMMA1)>
ポリメタクリル酸メチル(耐熱PMMA1)として、デルペットPM120N(旭化成社製)を用意した。
<ポリエチレンテレフタレート(耐熱PETG1)>
耐熱非晶性ポリエチレンテレフタレート(耐熱PETG1)として、トライタンTX2001(イーストマンケミカル社製、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)を用意した。
<ポリエチレンテレフタレート(PETG2)>
非晶性ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG2)として、スカイグリーンK2012(SKケミカル社製)を用意した。
<ポリアリレート(PAR1)>
ポリアリレート(PAR1)として、UポリマーP-5001(ユニチカ社製)を用意した。
<ポリエーテルサルフォン(PES)>
ポリエーテルサルフォン(PES)として、スミカエクセル3600G(住友化学社製)を用意した。
<ポリエチレンナフタレート(PEN1)>
ポリエチレンナフタレート(PEN1)として、テオネックスTN8065S(帝人社製)を用意した。
<ポリエチレンテレフタレート(APET1)>
ポリエチレンテレフタレート(APET1)として、ノバペックスGM700Z(三菱ケミカル社製、結晶性ポリエチレンテレフタレート)を用意した。
<アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS1)>
アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS1)として、デンカAS-XGS(デンカ社製)を用意した。
<スチレン-N-フェニルマレイミド-無水マレイン酸共重合体(IP1)>
スチレン-N-フェニルマレイミド-無水マレイン酸共重合体(IP1)として、デンカIP-ND(デンカ社製)を用意した。
<シリコーン接着剤>
シリコーン接着剤として、液加熱硬化型シリコーン接着剤(信越化学工業社製、「KER-2937A,B」)を用意した。
2.光学シートの製造
(実施例1)
[1]まず、基材111、112および高屈折率層31を形成するための樹脂材料としてポリカーボネート(PC1)を、低屈折率層32を形成するための樹脂材料としてポリメタクリル酸メチル(耐熱PMMA1)を、それぞれ、用意した。
[2]次に、ポリカーボネート(PC1、Tg150℃)およびポリメタクリル酸メチル(耐熱PMMA1、Tg123℃)を、それぞれ、押出機(サン・エヌ・ティー社製、「SNT40-28」)で、270℃の溶融状態とし、フィードブロックおよびダイを用いて共押出しして、フィルム形成した後、このものを冷却することで、高屈折率層31と低屈折率層32とが交互に繰り返して積層された、合計1023層(繰り返し数511回)の積層体(多層積層体)で構成されるハーフミラー層113の上面および下面が、それぞれ、第1基材111および第2基材112で被覆された積層体を得た後、この積層体を延伸倍率2倍でMDに沿って延伸させることで、第1基板11を得た。ここで、積層厚み比が高屈折率層31:低屈折率層32=1:1になるように吐出量を調整した。
なお、得られたハーフミラー層113において、低屈折率層32の波長589nmにおける屈折率を、アッペ屈折率計(ATAGO社製、「NA-1T SOLID」)を用いて測定したところ1.510であった。また、高屈折率層31の波長589nmにおける屈折率を、アッペ屈折率計(ATAGO社製、「NA-1T SOLID」)を用いて測定したところ1.585であった。さらに、ハーフミラー層113の平均厚さは、100μm、第1基材111および第2基材112の平均厚さは、ともに0.3mmであった。
また、第1基板11のリタデーションを、位相差測定装置(王子計測機器社製、「KOBRA-21ADH」)を用いて測定したところ、3100nmであった。
[3]次に、第2基板12を形成するための樹脂材料としてポリカーボネート(PC1)を用意し、その後、100質量部のポリカーボネート(PC1)を押し出し成形することで、厚さが0.3mmの第2基板12を得た。
また、第2基板12のリタデーションを、位相差測定装置(王子計測機器社製、「KOBRA-21ADH」)を用いて測定したところ、3100nmであった。
[4]次に、ポリビニルアルコール系フィルムを、水槽中で延伸しながら、染料を溶解した水溶液にて染色し、ホウ酸で処理した。その後、処理されたポリビニルアルコール系フィルムを水洗いし、乾燥することで、厚さが35μmの偏光膜13を得た。
[5]次に、偏光膜13の双方の面上に、硬化後に形成される接着剤層14、16の厚さが、それぞれ、50μmになるように、シリコーン接着剤で構成される塗膜を塗工した。
そして、第1基板11と、第2基板12とが、それぞれ、偏光膜13の双方の面上に形成された塗膜と接触するように貼り合わせ、その後、温度100℃、時間1.0hrの条件で一次加熱した後に、温度120℃、時間2.0hrの条件で二次加熱することで塗膜を硬化させ、さらに、温度25℃、湿度50%RH環境下で7日間、塗膜を養生することで、第1基板11と偏光膜13との間、および、第2基板12と偏光膜13との間に、それぞれ、第1接着剤層14および第2接着剤層16を形成した。
以上のような工程[1]~[5]を経ることで、実施例1の光学シート15を得た。
(実施例2~6、参考例1、2、比較例1、2)
前記工程[1]において、第1基材111、第2基材112、高屈折率層31、低屈折率層32、第2基板12を形成するための樹脂材料として、それぞれ、表1に示すものを用意し、さらに、前記工程[2]において、第1基板11を得るために積層体を延伸する延伸倍率を、必要に応じて、変更したこと以外は前記実施例1と同様にして、実施例2~6、参考例1、2、比較例1、2の光学シート15を得た。
3.評価
各実施例、各参考例および各比較例の光学シート15を、以下の方法で評価した。
<1A>加熱前の湾曲光学シート10の反射率R1(%)の測定
まず、各実施例、各参考例および各比較例の光学シート15を、それぞれ、高屈折率層31を構成する主材料のガラス転移点Tg1と、低屈折率層32を構成する主材料のガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、金属型に押し当てることで、前記光学シート15(積層体)を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲光学シート10(湾曲積層体)とした。
次いで、湾曲光学シート10を、589nmの光を発する光源と、受光部との間に、湾曲光学シートの上面と、光源と受光部とを結ぶ直線とのなす角度が90°となるように配置した。
次いで、湾曲光学シート10を透過した、光源から発光された発光光(透過光)を、受光部において受光し、この透過光の透過率(%)を測定することで、初期(加熱前)の反射率R1(%)を求めた。
<2A>加熱後の湾曲光学シート10の反射率R2(%)の測定
まず、各実施例、各参考例および各比較例の光学シート15を、それぞれ、高屈折率層31を構成する主材料のガラス転移点Tg1と、低屈折率層32を構成する主材料のガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度で、金属型に押し当てることで、前記光学シート15(積層体)を曲率半径60mmで湾曲した湾曲形状をなす湾曲光学シート10(湾曲積層体)とした。
次いで、湾曲光学シート10を、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管し、その後、589nmの光を発する光源と、受光部との間に、湾曲光学シートの上面と、光源と受光部とを結ぶ直線とのなす角度が90°となるように配置した。
次いで、湾曲光学シート10を透過した、光源から発光された発光光(透過光)を、受光部において受光し、この透過光の透過率(%)を測定することで、加熱後の反射率R2(%)を求めた。
そして、ここで得られた、加熱後の反射率R2(%)と、前記<1A>で得られた、初期(加熱前)の反射率R1(%)とを用いて、反射率保持性(R2/R1×100[%])を求めた。
<3A>光学シートの可視光領域における耐熱性の確認
まず、各実施例、各参考例および各比較例の光学シート15について、590nmの波長での反射率を測定した。その後、耐久試験(105℃×1000hr)を行い、試験後のサンプル(光学シート)についても同様に反射率を測定した。
そして、耐久試験前後における反射率を、それぞれ、R3、R4としたとき、これらに基づいて、以下に示すようにすることで、反射率の変化率を求めた。
反射率の変化率:R4/R3×100(%)
その後、得られた反射率の変化率について、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎: R4/R3×100が85%以上
〇: R4/R3×100が80%以上85%未満
×: R4/R3×100が80%未満
<4A>光学シートの熱曲げ性の確認
まず、各実施例、各参考例および各比較例の光学シート15について、それぞれ、ガラス転移点Tg1とガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度に加熱した状態で、曲率半径60mmの金属型に押し当てることで、熱曲げ加工を施した。
そして、熱曲げされた湾曲光学シート10について、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管し、その後の曲率半径を測定し、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、曲率半径が60±5mmの大きさを維持しているものの数が、
◎: 湾曲光学シート50個中、50個である
〇: 湾曲光学シート50個中、48個以上50個未満である
×: 湾曲光学シート50個中、48個未満である
また、熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、湾曲光学シート10が備える基材111、112とハーフミラー層113との間における剥離の有無について、目視にて確認し、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
熱循環式オーブン内に105℃の温度環境下で1000hr保管した後において、基材111、112とハーフミラー層113との間に剥離が確認されるものの数が、
◎: 湾曲光学シート50個中、0個である
〇: 湾曲光学シート50個中、1個以上3個未満である
×: 湾曲光学シート50個中、3個以上である
<5A>光学シートの透視像の見え方の評価
まず、各実施例、各参考例および各比較例の光学シート15について、それぞれ、ガラス転移点Tg1とガラス転移点Tg2とのうち高い方のガラス転移点よりも10℃高い温度に加熱した状態で、曲率半径60mmの金属型に押し当てることで、熱曲げ加工を施した。
そして、熱曲げされた湾曲光学シート10について、第2基板12側から目視にて見たときに、視認される透過像の着色の有無を確認し、以下に示す評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
湾曲光学シート10において、透過像に着色が認められるものの数が、
◎: 湾曲光学シート50個中、0個である
〇: 湾曲光学シート50個中、1個以上3個未満である
×: 湾曲光学シート50個中、3個以上である
以上のようにして得られた各実施例、各参考例および各比較例の光学シート15における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
表1に示したように、各実施例における光学シートでは、第1基板11のリタデーションが2000nm以上7000nm以下であり、かつ、第1基材111とハーフミラー層113との界面および第2基材112とハーフミラー層113との界面において、それぞれ、連続層が形成されており、これにより、優れた熱曲げ加工性を示す結果が得られた。
これに対して、各比較例における光学シートでは、第1基材111とハーフミラー層113との界面および第2基材112とハーフミラー層113との界面において、それぞれ、連続層が形成されているものの、第1基板11のリタデーションが2000nm以上7000nm以下であることを満足しておらず、その結果、優れた熱曲げ加工性を有しているとは言えない結果を示した。
10 湾曲光学シート
11 第1基板
12 第2基板
13 偏光膜
14 第1接着剤層
15 光学シート
16 第2接着剤層
17 被覆層
20 フレーム
21 リム部
22 ブリッジ部
23 テンプル部
24 ノーズパッド部
30 レンズ
31 高屈折率層
32 低屈折率層
33 繰り返し部
35 樹脂層
40 金型
50 保護フィルム
100 サングラス
111 第1基材
112 第2基材
113 ハーフミラー層
150 多層積層体
200 湾曲多層積層体

Claims (8)

  1. 偏光子で構成された偏光層と、前記偏光層の一方の面側および他方の面側にそれぞれ設けられた第1基板および第2基板とを備える光学シートであって、
    前記第1基板は、2000nm以上7000nm以下のリタデーションを有し、
    光透過性を有する樹脂材料を主材料として構成される第1基材と、
    前記第1基材の一方の面に接合して設けられ、高屈折率層と低屈折率層とを交互に繰り返し積層した積層体からなるハーフミラー層と、
    前記樹脂材料を主材料として構成され、前記ハーフミラー層の前記第1基材と反対側の面に接合して設けられた第2基材とを備え、
    前記ハーフミラー層において、前記高屈折率層の屈折率は、前記低屈折率層の屈折率よりも高く、
    前記第1基材と前記ハーフミラー層との界面は、前記第1基材と前記ハーフミラー層との連続層を形成し、前記第2基材と前記ハーフミラー層との界面は、前記第2基材と前記ハーフミラー層との連続層を形成していることを特徴とする光学シート。
  2. 前記高屈折率層を構成する主材料のガラス転移点をTg1とし、前記低屈折率層を構成する主材料のガラス転移点をTg2としたとき、Tg1,Tg2≧105℃である請求項1に記載の光学シート。
  3. 前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とは、0℃≦|Tg1-Tg2|≦60℃なる関係を満足する請求項2に記載の光学シート。
  4. 前記ガラス転移点Tg1と前記ガラス転移点Tg2とのうち低い方のガラス転移点は、110℃以上250℃以下である請求項2または3に記載の光学シート。
  5. 前記高屈折率層の波長589nmでの屈折率をN1とし、前記低屈折率層の波長589nmでの屈折率をN2としたときの屈折率差(N1-N2)は、0.05以上0.25以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光学シート。
  6. 前記高屈折率層および前記低屈折率層は、それぞれ、その平均厚さが50nm以上300nm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学シート。
  7. 前記ハーフミラー層において、前記高屈折率層と前記低屈折率層とが交互に繰り返して積層される繰り返し数は、50回以上750回以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学シート。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光学シートを備えることを特徴とする光学部品。
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