JP2023146981A - めっき鋼材及びその製造方法並びに表面処理鋼材 - Google Patents

めっき鋼材及びその製造方法並びに表面処理鋼材 Download PDF

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Abstract

Figure 2023146981000001
【課題】耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が抑制されることで外観が向上しためっき鋼材、そのめっき鋼材の製造方法及びそのめっき鋼材から作製される表面処理鋼材を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るめっき鋼材は、鋼材と、鋼材を覆うめっき層とを備える。めっき層は、Al、Si、Ca、Sr、及びZnを含む。Alの含有率は、めっき層に対して25質量%以上75質量%以下である。Siの含有率は、めっき層中のAlの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下である。Caの含有率は、めっき層に対して400質量ppm以下である。Srの含有率は、めっき層中のCaの量に対して10.0質量%以下である。
【選択図】図1

Description

本開示は、一般に、めっき鋼材、めっき鋼材の製造方法及び表面処理鋼材に関する。より詳細には、亜鉛とアルミニウムとを含むめっき層を備えるめっき鋼材、そのめっき鋼材の製造方法及びそのめっき鋼材から作製される表面処理鋼材に関する。
特許文献1には、鋼材の表面にアルミニウム・亜鉛合金めっき層がめっきされてなる溶融めっき鋼材であって、アルミニウム・亜鉛合金めっき層が構成元素としてAl、Zn、Si及びMgを含み、Mg含有量が0.1~10質量%であり、アルミニウム・亜鉛合金めっき層が0.2~15体積%のSi-Mg相を含み、Si-Mg相中のMgの、Mg全量に対する質量比率が3%以上である溶融めっき鋼材を製造するにあたり、溶融めっき浴が特にCaを含有する場合には、溶融めっき浴におけるドロスの発生が著しく抑制され、溶融めっき鋼材の良好な外観が確保されることが、記載されている。
国際公開第2011/102434号
本開示の目的は、耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が抑制されることで外観が向上しためっき鋼材、そのめっき鋼材の製造方法及びそのめっき鋼材から作製される表面処理鋼材を提供することである。
本開示の一態様に係るめっき鋼材は、鋼材と、前記鋼材を覆うめっき層とを備える。前記めっき層は、Al、Si、Ca、Sr、及びZnを含む。前記Alの含有率は、前記めっき層に対して25質量%以上75質量%以下である。前記Siの含有率は、前記めっき層中の前記Alの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下である。前記Caの含有率は、前記めっき層に対して400質量ppm以下である。前記Srの含有率は、前記めっき層中の前記Caの量に対して10.0質量%以下である。
本開示の一態様に係るめっき鋼材の製造方法は、前記めっき鋼材の製造方法である。構成元素として、Al、Si、Ca、Sr及びZnを含むめっき浴を準備する。鋼材を前記めっき浴に通過させて、前記鋼材にめっき金属を付着させ、前記めっき金属を凝固させて前記鋼材の表面にめっき層を形成する。
本開示の一態様に係る表面処理鋼材は、前記めっき鋼材と、前記めっき鋼材における前記めっき層を覆う化成処理層とを有する。前記化成処理層の厚みが、0.1μm以上5.0μm以下である。
本開示の一態様に係る表面処理鋼材は、前記めっき鋼材と、前記めっき鋼材における前記めっき層を覆う化成処理層とを有し、前記化成処理層を覆う、塗膜層をさらに有し、前記塗膜層の厚みが0.1μm以上2.0mm以下である。
本開示の一態様によると、耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が抑制されることで外観が向上しためっき鋼材、そのめっき鋼材の製造方法及びそのめっき鋼材から作製される表面処理鋼材を提供することができる。
図1は、本開示の一実施形態に係るめっき処理装置の一例を示す概略図である。 図2は、本開示の一実施形態に係るめっき処理装置の他例を示す概略図である。 図3は、本開示の一実施形態に係る過時効処理に用いられる加熱装置及び保存容器の例を示す概略図である。
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、本開示は下記の実施形態に限られない。下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の例に過ぎず、本開示の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
[概要]
従来、建材、自動車用の材料、家電製品用の材料等の用途に溶融Zn-Al系めっき鋼板が広く利用されてきた。なかでも55%アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板(登録商標))に代表される高アルミニウム(25~75質量%)・亜鉛合金めっき鋼板は、通常の溶融亜鉛めっき鋼板に比較して耐食性が優れるため、需要拡大が続いている。また、近年、特に建材に対する更なる外観向上及び耐食性向上の要求がある。
例えば、特許文献1で開示されている技術では、めっき浴にCaを添加することによって、ドロスの発生を抑制することができ、これにより、めっき鋼材の外観を良好にすることができる。
しかし、発明者の調査によると、特許文献1に記載の技術では、めっき浴にCaを添加する場合でも、めっき層にアッシュマーク等の微細な欠陥が生じることがある。
めっき鋼材に対しては、市場の外観に対する要求が益々高くなっていることから、発明者は、上記のような微細な欠陥をも抑制すべく、研究開発を進め、本開示の完成に至った。
なお、本開示の範囲は、上記の開発の経緯によって制限を受けるものではない。
本実施形態に係るめっき鋼材は、鋼材と、鋼材を覆うめっき層とを備える。めっき層は、Al、Si、Ca、Sr、及びZnを含む。Alの含有率は、めっき層に対して25質量%以上75質量%以下である。Siの含有率は、めっき層中のAlの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下である。Caの含有率は、めっき層に対して400質量ppm以下である。Srの含有率は、めっき層中のCaの量に対して10.0質量%以下である。
本実施形態によれば、耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が抑制されることで外観が向上しためっき鋼材及びそのめっき鋼材から作製される表面処理鋼材を提供することができる。その理由は次の通りであると推定される。
めっき鋼材をめっき処理により製造するに当たり、めっき浴にSrを含む場合、めっき層に生じるしわの発生が抑制され、平滑性が高められる。また、めっき層が、Caを含む場合、めっき浴を用いてめっき層が形成される際に、めっき浴中のドロスの発生を抑制することによって、めっき層の外観を向上させることが可能となる。しかしながら、めっき浴にCa、Srを添加するとめっき浴に僅かながらトップドロスが発生することがある。このトップドロスが、めっき層における微細な欠陥の原因であると考えられる。しかし、本実施形態のように、めっき層におけるAlの含有率が25質量%以上75質量%以下、Siの含有率が0.5質量%以上10.0質量%以下である場合に、Caの含有率が400質量ppm以下、かつSrの含有率がCaの量に対して10.0質量%以下であると、めっき処理によりめっき層を作製する際に、めっき浴中にCaとSrとが含まれていても、めっき浴におけるトップドロスの発生が抑制され、このため、めっき層における微細な欠陥が抑制されると考えられる。
[めっき鋼材]
本実施形態に係るめっき鋼材(以下、めっき鋼材ともいう)は、鋼材1と、鋼材1を覆うめっき層とを備える。処理対象である鋼材1は、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼又はマンガン鋼等の鉄鋼から形成されている部材である。鋼材1としては、例えば、薄鋼板、厚鋼板、型鋼、鋼管又は鋼線等の種々の部材が挙げられる。すなわち、鋼材1の形状は特に制限されない。めっき鋼材は、例えば鋼材1に溶融めっき処理などのめっき処理が施されることで製造される。鋼材1とめっき層との間には、めっき処理時に鋼材1とめっき浴の成分とが合金化して形成された合金層が介在してもよい。本実施形態では、合金層と、めっき層とは別個の層である。
めっき層は、Al、Si、Ca、Sr、及びZnを含む。
Alの含有率は、めっき層に対して、25質量%以上75質量%以下である。このAlの含有率は、25質量%以上であればめっき層の耐食性が向上する。このAlの含有率は、75質量%以下であればZnによる犠牲防食効果が充分に発揮されると共にめっき層の硬質化が抑制され、めっき鋼材の折り曲げ加工性が高くなる。このAlの含有率は、45質量%以上であることが好ましい。また、このAlの含有率は、65質量%以下であることが好ましい。
めっき層において、Siの含有率は、めっき層中のAlの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下である。このSiの含有率は、0.5質量%以上であるとめっき層中のAlと鋼材1との過度の合金化を充分に抑制することが可能となる。このSiの含有率は、10.0質量%より多くなるとSiによる作用を効率よく得ることが困難となる。すなわち、めっき層中のAlの量に対するSiの含有率は、10.0質量%より多くなると、めっき層中のAlと鋼材1との過度の合金化を抑制する効果が飽和する。このSiの含有率は、1.0質量%以上であることが好ましい。また、このSiの含有率は、5.0質量%以下であることが好ましい。
めっき層は、Mgをさらに含んでもよい。この場合、めっき層の耐食性がさらに向上しうる。そして、めっき層がMgを含む場合、Mgの含有率は、めっき層に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。このMgの含有率は、0.1質量%以上である場合、Mgを添加したことによるめっき層の耐食性向上効果が発揮される。このMgの含有率は、10.0質量%以下である場合、めっき層がMgを含有することにより発揮される耐食性向上の効果が飽和しにくくなり、かつめっき鋼材の製造中にめっき浴中のドロスが抑制されやすくなる。このMgの含有率は、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、このMgの含有率は、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
また、めっき層が、Mgを含む場合、めっき層は、0.2体積%以上15.0体積%以下のMgSiを含むことが好ましい。MgSiとは、SiとMgとの金属間化合物で構成される相であり、めっき層中に分散して存在する。
なお、めっき層におけるMgSiの体積割合は、めっき層をその厚み方向に切断した場合の切断面におけるMgSiの面積割合とみなす。すなわち、めっき層の切断面におけるMgSiは、電子顕微鏡観察により明瞭に確認されうる。このため、切断面におけるMgSiの面積割合を測定することで、めっき層におけるMgSiの体積割合を間接的に測定することができる。
めっき層中のMgSiの体積割合が高いほど、めっき層におけるしわの発生が抑制されうる。その理由は、次のとおりであると推定される。まず、しわは、次の機序により形成されると推定される。溶融めっき処理によりめっき鋼材が製造される際、鋼材1に付着しためっき金属が冷却される過程で、めっき金属中にMgが含まれていると、めっき金属の表層でMgが、濃化して酸化されやすくなり、その結果、めっき金属が十分に凝固する前にめっき金属の表層にMg酸化物の皮膜が形成されやすくなる。そのため、めっき金属が流動することで、このMg酸化物の皮膜にしわが生じ、続いてめっき金属が凝固することでめっき層が作製されるため、めっき層にしわが生じてしまう。しかし、めっき金属が凝固する過程でMgとSiとが合金化してMgSiが形成されると、MgがMgSiに取り込まれることで、めっき金属の表層でMgが濃化しにくくなり、そのためMg酸化物の皮膜の形成が阻害される。さらにMgSiがめっき金属の流動を阻害するため、Mg酸化物の皮膜が形成されても、この皮膜にしわが生じにくくなる。このような理由により、めっき層にしわが生じにくくなる。めっき層は、0.2体積%以上10.0体積%以下のMgSiを含むことがより好ましく、0.4体積%以上5.0体積%以下のMgSiを含むことがさらに好ましい。
また、めっき層が、MgSiを含む場合、めっき層中のSi:Mgの質量比が、100:50~100:300であることが好ましい。この場合、めっき層中のMgSiの形成が特に促進され、めっき層中におけるしわの発生が抑制される。このSi:Mgの質量比は、100:70~100:250であることがより好ましく、100:100~100:200であることがさらに好ましい。
めっき層は、上述した通り、Srと、Caとを含む。めっき層が、Srを含む場合、めっき層に生じるしわの発生が抑制される。また、めっき層が、Caを含む場合、めっき浴を用いてめっき層が形成される際に、めっき浴中のドロスの発生を抑制することによって、めっき層の外観を向上させることが可能となる。
本実施形態では、上述の通り、Caの含有率がめっき層に対して400質量ppm以下であり、かつSrの含有率は、めっき層中のCaの量に対して、10.0質量%以下であることで、トップドロスの発生が抑制され、めっき層にアッシュマーク等の微細な欠陥が生じにくくなる。Caの含有率は、めっき層に対して1質量ppm以上であることが好ましい。この場合、めっき浴中のドロスの発生が抑制され、めっき鋼材の良好な外観が損なわれにくくなる。また、Srの含有率は、めっき層中のCaの量に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。この場合、めっき層におけるしわの発生が特に抑制される。
このCaの含有率は、めっき層に対して50質量ppm以上200質量ppm以下であることが特に好ましい。この場合、めっき層にアッシュマーク等の微細な欠陥が特に生じにくく、めっき層の外観の均一性が特に高められうるため、本実施形態に係るめっき鋼材は、無塗装又はクリア塗装用途に好適に用いられうる。
また、このCaの含有率は、めっき層中に100質量ppm以上300質量ppm以下であることも特に好ましい。この場合、めっき層の表面の平滑性が特に高くなり、塗装後の外観に優れるため、本実施形態に係るめっき鋼材は、塗装用に好適に用いられうる。
めっき層中のSrの含有率は、めっき層中のCaの量に対して0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.0質量%以上であることが特に好ましい。このSrの含有率は、めっき層中のCaの量に対して8.0質量%以下であることが好ましく、6.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。
また、めっき層がMgを含む場合、Srによりめっき層中のMgSiの形成が特に促進される。さらに、Srにより、めっき層の表層におけるMg酸化物の皮膜が形成されにくくなる。これは、Mg酸化物の皮膜よりもSr酸化物の皮膜の方が優先的に形成されやすくなることで、Mg酸化物の皮膜の形成が阻害されるためである。これらにより、めっき層におけるしわの発生が抑制される。
めっき層は、Crを含んでもよい。この場合、めっき層の耐食性が向上しうる。めっき層がCrを含む場合、Crの含有率はめっき層に対して1.0質量%以下であることが好ましい。このCrの含有率が、1.0質量%以下である場合、めっき鋼材の外観がドロスにより悪化することが抑制されうる。このCrの含有率は、0.02質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.07質量%以上であることがさらに好ましい。また、このCrの含有率は0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
さらに、めっき層が、Mgを含む場合、Crによってめっき層中のMgSiの成長が促進され、めっき層中のMgSiの体積割合が高くなると共に、めっき層中のMg全量に対するMgSi中のMgの割合が高くなる。これにより、Mgに起因するめっき層に生じるしわを抑制することができる。
めっき層は、Feを含むことが好ましい。この場合、Feはめっき層のミクロ組織及びスパングル組織の微細化にも寄与し、これにより、めっき鋼材の外観を向上させることが可能となる。上記の作用効果が発揮されるためには、Feの含有率は、めっき層に対して、0.1質量%以上0.6質量%以下であることが好ましい。このFeの含有率が、0.1質量%以上である場合、めっき層のミクロ組織及びスパングル組織が粗大化することによって生じる、めっき層の外観及び加工性の悪化が抑制されうる。このFeの含有率は、0.6質量%以下であれば、めっき層のスパングルの微細化による外観を向上させる効果が飽和しにくい。このFeの含有率は、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、このFeの含有率は0.5質量%以下であることがより好ましい。
めっき層は、例えば、Al、Si、Ca、及びSrを含み、残部がZnと不可避的不純物とである。また、めっき層は、Al、Si、Ca、及びSrと、Mg、Cr及びFeよりなる群から選択される少なくとも一種とを含み、残部がZnと不可避的不純物とであってもよい。また、めっき層は、Al、Si、Ca、及びSrと、Mg、Cr及びFeよりなる群から選択される少なくとも一種と、任意元素とを含み、残部がZnと不可避的不純物とであってもよい。任意元素は、Al、Si、Ca、Sr、Mg、Cr及びFe以外の元素であり、例えば、アルカリ土類金属元素、Mn、V、Mo、Ni、Co、Sb、Sn、Sc、Y、ランタノイド元素、Ti、及びBよりなる群から選択される少なくとも一種を含む。この任意元素の含有率は、めっき層に対して1質量%以下であることが好ましい。また、不可避的不純物は、例えば、Pb、Cd及びCu等よりなる群から選択される少なくとも一種を含む。不可避的不純物の含有率はできるだけ少ない方が好ましく、特にこの不可避的不純物の含有率の合計が、めっき層に対して質量比率で1質量%以下であることが好ましい。
[めっき鋼材の製造方法]
本実施形態に係るめっき鋼材の製造方法について説明する。
本実施形態に係るめっき鋼材は、例えば、金属を溶融させて調製しためっき浴2中に、鋼材1を浸漬することによって、鋼材1を覆うめっき層を形成することによって製造することができる。
処理対象である鋼材1は、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼又はマンガン鋼等の鉄鋼から形成されている部材である。鋼材1としては、例えば、薄鋼板、厚鋼板、型鋼、鋼管又は鋼線等の種々の部材が挙げられる。すなわち、鋼材1の形状は特に制限されない。
鋼材1には、めっき処理の前にフラックス処理が施されていてもよい。このフラックス処理により、鋼材1のめっき浴2との濡れ性及び密着性が改善されうる。鋼材1には、めっき浴2に浸漬される前に加熱焼鈍・還元処理が施されていてもよいし、この処理が省略されてもよい。また、鋼材1には、プレめっきが施されていてもよい。この場合、めっき処理時の鋼材1とめっき金属との濡れ性が向上し、鋼材1とめっき層との間の密着性が改善しうる。
使用するめっき浴2は、構成元素として、Al、Si、Ca、Sr、及びZnを含み、かつ上記の組成を有するめっき層を形成することができるものが準備される。すなわち、めっき浴2は、構成元素として、Al、Si、Ca、Sr、及びZnを含み、かつそのめっき浴2中における構成元素の組成を調整することで、上記の組成を有するめっき層を形成することができる。この場合、耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が抑制されることで外観が向上しためっき鋼材及びそのめっき鋼材から作製される表面処理鋼材を提供することができる。
めっき浴2において、Alの含有率は、25質量%以上75質量%以下であることが好ましい。このAlの含有率は、25質量%以上であればめっき層の耐食性が向上する。このAlの含有率は、75質量%以下であればZnによる犠牲防食効果が充分に発揮されると共にめっき層の硬質化が抑制され、めっき鋼材の折り曲げ加工性が高くなる。このAlの含有率は、45質量%以上であることがより好ましい。また、このAlの含有率は、65質量%以下であることがより好ましい。
めっき浴2において、Siの含有率は、めっき層中のAlの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。このSiの含有率は、0.5質量%以上であるとめっき層中のAlと鋼材1との過度の合金化を充分に抑制することが可能となる。
このSiの含有率は、めっき浴2中のAlの量に対して、10.0質量%以下である場合、Siによる作用を効率よく得ることができる。すなわち、このSiの含有率は、めっき浴2中のAlの量に対して、10.0質量%より多くなると、めっき層中のAlと、鋼材1との過度の合金化を抑制する効果が飽和しやすくなる。このSiの含有率は、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、このSiの含有率は、5.0質量%以下であることがより好ましい。
めっき浴2は、Mgをさらに含んでもよい。この場合、めっき浴2を用いて形成されるめっき層の耐食性がさらに向上しうる。そして、めっき浴2がMgを含む場合、Mgの含有率は、めっき浴2に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。このMgの含有率は、0.1質量%以上である場合、Mgを添加したことによるめっき層の耐食性向上効果が発揮される。このMgの含有率は、10.0質量%以下である場合、めっき層がMgを含有することにより発揮される耐食性向上の効果が飽和しにくくなり、かつめっき鋼材の製造中にめっき浴2中のドロスの発生が抑制されうる。このMgの含有率は、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、このMgの含有率は、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
めっき浴2は、上述した通り、Srと、Caとの両方を含む。めっき浴2が、Srを含む場合、めっき層に生じるしわの発生が抑制される。また、めっき浴2が、Caを含む場合、めっき浴2を用いてめっき層が形成される際に、めっき浴2中のドロスの発生を抑制することができ、めっき層の外観を向上させることができる。
本実施形態では、めっき浴2中において、Caの含有率は、めっき浴2中に400質量ppm以下であり、かつSrの含有率は、めっき浴2中のCaの量に対して、10.0質量%以下であることが好ましい。この場合、めっき浴2中において、トップドロスの発生が抑制され、めっき層にアッシュマーク等の微細な欠陥が生じにくくなる。このとき、Caの含有率は、めっき浴2中に1質量ppm以上であることが好ましい。この場合、めっき浴2中のドロスの発生が抑制され、めっき鋼材の良好な外観が損なわれにくくなる。また、Srの含有率は、めっき浴2中のCaの量に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。この場合、めっき層におけるしわの発生が特に抑制される。
このCaの含有率は、めっき浴2中に1質量ppm以上200質量ppm以下であることが特に好ましい。この場合、めっき浴2を用いて形成されるめっき層にアッシュマーク等が特に生じにくく、めっき層の外観の均一性が特に高められうるため、本実施形態に係るめっき鋼材は、無塗装又はクリア塗装用途に好適に用いられうる。
また、このCaの含有率は、めっき浴2中に100質量ppm以上300質量ppm以下であることも特に好ましい。この場合、めっき浴2を用いて形成されるめっき層の表面の平滑性が特に高くなり、塗装後の外観に優れるため、本実施形態に係るめっき鋼材は、塗装用に好適に用いられうる。
このSrの含有率は、めっき浴2中のCaの量に対して0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.0質量%以上であることが特に好ましい。そして、このSrの含有率は、めっき浴2中のCaの量に対して8.0質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以下であることがさらに好ましく、5.0質量%以下であることが特に好ましい。
めっき浴2は、さらにCrを含んでもよい。この場合、めっき浴2を用いて形成されるめっき層の耐食性が向上しうる。めっき浴2がCrを含む場合、Crの含有率はめっき浴2に対して1.0質量%以下であることが好ましい。このCrの含有率が、1.0質量%以下である場合、めっき鋼材の外観がドロスにより悪化することが抑制されうる。このためめっき鋼材の外観がドロスにより悪化することが抑制されうる。このCrの含有率は、0.02質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.07質量%以上であることがさらに好ましい。また、このCrの含有率は、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
めっき浴2は、さらにFeを含むことが好ましい。この場合、めっき浴2を用いて形成されるめっき層がFeを含むこととなり、Feがめっき層のミクロ組織及びスパングル組織の微細化にも寄与し、これにより、めっき鋼材の外観を向上させることが可能となる。上記の作用効果が発揮されるためには、このFeの含有率は、めっき浴2に対して、0.1質量%以上0.6質量%以下であることが好ましい。このFeの含有率は、0.1質量%以上であればめっき層のミクロ組織及びスパングル組織が粗大化することによって生じる、めっき層の外観及び加工性の悪化が抑制されうる。このFeの含有率は、0.6質量%以下であれば、めっき層のスパングルの微細化による外観を向上させる効果が飽和しにくい。このFeの含有率は0.2質量%以上であることがより好ましい。また、このFeの含有率は0.5質量%以下であることがより好ましい。
めっき浴2に含まれる構成元素は、例えば、Al、Si、Ca、及びSrを含み、残部がZnと不可避的不純物とである。また、めっき浴2は、Al、Si、Ca、及びSrと、Mg、Cr及びFeよりなる群から選択される少なくとも一種とを含み、残部がZnと不可避的不純物とであってもよい。また、めっき浴2は、Al、Si、Ca、及びSrと、Mg、Cr及びFeよりなる群から選択される少なくとも一種と、任意元素とを含み、残部がZnと不可避的不純物とであってもよい。任意元素は、Al、Si、Ca、Sr、Mg、Cr及びFe以外の元素であり、例えば、アルカリ土類金属元素、Mn、V、Mo、Ni、Co、Sb、Sn、Sc、Y、ランタノイド元素、Ti、及びBよりなる群から選択される少なくとも一種を含む。この任意元素の含有率は、めっき浴2に対して1質量%以下であることが好ましい。また、不可避的不純物は、例えば、Pb、Cd及びCu等よりなる群から選択される少なくとも一種を含む。不可避的不純物の含有率はできるだけ少ない方が好ましく、特にこの不可避的不純物の含有率の合計が、めっき浴2に対して質量比率で1質量%以下であることが好ましい。
このように、上記の構成元素及び組成を有するめっき浴2を用いて鋼材1に対してめっき処理を施すと、耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が抑制されることで外観が向上しためっき鋼材が得られる。
次に、図1に示すめっき処理装置を用い、鋼材1として板材(鋼板1a)が採用された場合のめっき鋼材の製造工程について説明する。
図1に示されるめっき処理装置は、鋼板1aを連続的に搬送する搬送装置を備える。この搬送装置は、繰出機3、巻取機12、及び複数の搬送ロール15で構成されている。この搬送装置では、長尺な鋼板1aのコイル13(第1のコイル13)を繰出機3が保持する。この第1のコイル13が繰出機3で巻き解かれ、鋼板1aが搬送ロール15で支えられながら巻取機12まで搬送される。さらに、この鋼板1aを巻取機12が巻回し、この巻取機12が鋼板1aのコイル14(第2のコイル14)を保持する。
このめっき処理装置では、前記の搬送装置による鋼板1aの搬送経路の上流側から順に、加熱炉4、焼鈍・冷却部5、スナウト6、ポット7、噴射ノズル9、冷却装置10、調質圧延・形状矯正装置11が順次設けられている。加熱炉4は鋼板1aを加熱する。この加熱炉4は鋼板1aを加熱する。この加熱炉4は無酸化炉等で構成される。焼鈍・冷却部5は鋼板1aを加熱焼鈍し、それに続いて冷却する。この焼鈍・冷却部5は加熱炉4に連結されており、上流側に焼鈍炉が、下流側に冷却帯(冷却機)がそれぞれ設けられている。この焼鈍・冷却部5内は還元性雰囲気に保持されている。スナウト6はその内部で鋼板1aが搬送される筒状の部材であり、その一端が前記の焼鈍・冷却部5に連結され、他端がポット7内のめっき浴2内に配置される。スナウト6内は焼鈍・冷却部5内と同様に還元性雰囲気に保持される。ポット7はめっき浴2を貯留する容器であり、その内部にはシンクロール8が配置されている。噴射ノズル9は鋼板1aに向けてガスを噴射する。噴射ノズル9はポット7の上方に配置される。この噴射ノズル9は、ポット7から引き上げられた鋼板1aの両面に向けてガスを噴射できる位置に配置される。冷却装置10は鋼板1aに付着しているめっき金属を冷却する。この冷却装置10としては、空冷機、ミスト冷却機等が設けられ、この冷却装置10で鋼板1aが冷却される。調質圧延・形状矯正装置11は、めっき層が形成された鋼板1aが冷却される。この調質圧延・形状矯正装置11は、鋼板1aに対して調質圧延を行うためのスキンパスミル等や、調質圧延後の鋼板1aに対して形状矯正を行うためのテンションレベラー等を備える。
図1のようなめっき処理装置を用いためっき処理では、まず繰出機3から鋼板1aが巻き解かれて連続的に繰り出される。この鋼板1aが加熱炉4で加熱された後、還元性雰囲気の焼鈍・冷却部5に搬送され、焼鈍炉で焼鈍されると同時に鋼板1aはスナウト6を通過し、さらにポット7に侵入してこのポット7内のめっき浴2中に浸漬される。鋼板1aはポット7内でシンクロール8に支えられることでその搬送方向が上方へ転換され、めっき浴2から引き出される。これにより鋼板1aにめっき金属が付着する。
次に、この鋼板1aの両面に噴射ノズル9からガスが噴射されることで、鋼板1aに付着しためっき金属の付着量が調整される。このようなガスの噴射による付着量の調整方法をガスワイピング法という。このめっき金属の付着量は、鋼板1aの両面を併せて40g/m以上200g/m以下の範囲に調整されることが好ましい。
ガスワイピング法において鋼板1aへ噴射されるガス(ワイピングガス)の種類として、例えば、大気、窒素、アルゴン、ヘリウム又は水蒸気等が挙げられる。これらのワイピングガスは予備加熱されてから鋼板1aへ噴射されてもよい。
めっき付着量の調整方法は、前述のガスワイピング法に限らず、種々の付着量制御方法を適用することができる。ガスワイピング法以外の付着量制御方法としては、例えばめっき浴2の浴面直上に配置された一対のロール間に鋼板1aを通過させるロール絞り法、めっき浴2から引き出された鋼板1aに近接して遮蔽版を配置してこの遮蔽版でめっき金属を払拭する方法、鋼板1aに付着しているめっき金属に対して電磁力を用いて下方へ移動する力を加える電磁力ワイピング法、又は外的な力を加えず自然重力落下を利用してめっき付着量を調整する方法等が挙げられる。また、これらの調整方法が、二種類以上組み合わされて、鋼板1aのめっき付着量が調整されてもよい。
次に、この鋼板1aは噴射ノズル9の配置位置よりもさらに上方に搬送された後、二つの搬送ロール15に支えられることで下方へ折り返すように搬送される。すなわち、鋼板1aは逆U字状の経路を搬送される。この逆U字状の経路について鋼板1aが冷却装置10で空冷やミスト冷却等により冷却される。これにより、鋼板1aの表面上に付着しためっき金属が凝固し、めっき層が形成される。
冷却装置10によって冷却されることによりめっき金属の凝固が完全に終了するためには、鋼板1a上が冷却装置10により、めっき金属(或いはめっき層)の表面温度が300℃以下になるまで冷却されることが好ましい。めっき金属の表面温度は、例えば、放射温度計等で測定される。また、良好な外観を有するめっき層が形成されるためには、この鋼板1aがめっき浴2より引き出されてから鋼板1a上のめっき金属の表面が300℃に冷却されるまでの間の冷却速度が5℃/sec以上100℃/sec以下の範囲であることが好ましい。したがって、冷却装置10が、鋼板1aの冷却速度を制御するために、鋼板1aの温度をその搬送方向及び板幅方向に沿って調節するための温度制御機能を備えることが好ましい。そして、この冷却装置10は、鋼板1aの搬送方向に沿って、複数に分割されていてもよい。すなわち、噴射ノズル9の配置位置よりもさらに上方に搬送される経路において鋼板1aを冷却する一次冷却装置101と、一次冷却装置101よりも下流側で鋼板1aを冷却する二次冷却装置102とが設けられていてもよい。このように一次冷却装置101と、二次冷却装置102とが設けられている場合、一次冷却装置101で鋼板1aをめっき金属の表面が300℃或いはそれ以下の温度になるまで冷却し、さらに二次冷却装置102で鋼板1aを調質圧延・形状矯正装置11へ導入させる際の温度が100℃以下となるように冷却することができる。
鋼板1aが冷却される過程では、鋼板1a上の溶融めっき金属の表面温度が500℃以上である間の溶融めっき金属の表面の冷却速度が50℃/sec以下であることが好ましく、40℃/sec以下であることがより好ましく、35℃/sec以下であることがさらに好ましい。
冷却後の鋼板1aには調質圧延・形状矯正装置11で調質圧延が施された後、形状矯正が施される。調質圧延による圧下率は0.3%以上3.0%以下であることが好ましい。そして、形状矯正による鋼板1aの伸び率は3%以下であることが好ましい。
続いて、鋼板1aは巻取機12で巻き取られ、この巻取機12で鋼板1aのコイル14が保持される。
このようなめっき処理時においては、ポット7内のめっき浴2の温度は、このめっき浴2の凝固開始温度よりも高く、かつ前記の凝固開始温度よりも40℃高い温度以下の温度であることが好ましい。ポット7内のめっき浴2の温度がめっき浴2の凝固開始温度よりも高く、かつ前記の凝固開始温度よりも25℃高い温度以下の温度であればさらに好ましい。このように、めっき浴2の温度の上限が制限されると、鋼板1aがめっき浴2から引き出されてから、この鋼板1aに付着しためっき金属が凝固するまでに要する時間が短縮されうる。その結果、鋼板1aに付着しためっき金属が流動可能な状態にある時間も短縮され、このためにめっき層の外観が良好になる傾向がある。前記のめっき浴2の温度がめっき浴2の凝固開始温度よりも20℃高い温度以下であれば、めっき層の外観が特に良好になりやすい。
鋼板1aがめっき浴2から引き出される際には、非酸化性雰囲気又は低酸化性雰囲気中へ引き出されてもよく、さらに、この非酸化性雰囲気又は低酸化性雰囲気中で鋼板1aに対してガスワイピング法によるめっき金属の付着量の調整が施されてもよい。そのためには、例えば、図2に示すように、めっき浴2から引き出された鋼材1の、めっき浴2よりも上流側の搬送経路(めっき浴2から上方へ向かう搬送経路)が、中空の部材22で囲まれると共に、この中空の部材22の内部が窒素ガス等の非酸化性ガス又は低酸化性ガスで満たされることが好ましい。非酸化性ガス又は低酸化性ガスとは、大気に比較して酸素濃度の低いガスを意味する。非酸化性ガス又は低酸化性ガスで満たされた雰囲気が非酸化性雰囲気又は低酸化性雰囲気であり、この雰囲気中では酸化反応が抑制される。噴射ノズル9は中空の部材22の内側に配置される。中空の部材22は、めっき浴2内(めっき浴2の上部)からこのめっき浴2の上方に亘って、鋼材1の搬送経路を囲むように設けられている。さらに、噴射ノズル9から噴射されるガスも、窒素ガス等の非酸化性ガス又は低酸化性ガスであることが好ましい。この場合、めっき浴2から引き出された鋼板1aに付着しためっき金属の酸化が抑制される。このため、めっき層におけるしわの発生がさらに抑制される。中空の部材22が使用される代わりに、鋼板1aの搬送経路を含むめっき処理装置の一部、或いはめっき処理装置の全部が、非酸化性雰囲気又は低酸化性雰囲気中に配置されてもよい。
図3は、過時効処理に用いられる装置を示し、このうち図3Aは加熱装置を、図3Bは保温容器20をそれぞれ示す。加熱装置は、めっき処理後の鋼板1aが連続的に搬送される搬送装置を備える。この搬送装置は、めっき処理装置における搬送装置と同様に繰出機16、巻取機17、及び複数の搬送ロール21で構成されている。この搬送装置による鋼板1aの搬送経路には、誘導加熱炉等の加熱炉18が設けられている。保温容器20は、内部に鋼板1aのコイル19が保持可能であり、且つ断熱性を有する容器であれば、特に制限されない。保温容器20は大型の容器(保温室)であってもよい。
鋼板1aに過時効処理が施される場合には、まず、めっき処理後の鋼板1aのコイル14がめっき処理装置の巻取機12からクレーンや台車等で運搬され、加熱装置の繰出機16に保持される。加熱装置ではまず繰出機16から鋼板1aが巻き解かれて連続的に繰り出される。この鋼板1aは加熱炉18で過時効処理に適した温度まで加熱されてから、巻取機17で巻き取られ、この巻取機17で鋼板1aのコイル19が保持される。
続いて、鋼板1aのコイル19が巻取機17からクレーンや台車等で運搬されて、保温容器20内に保持される。この保温容器20内に鋼板1aのコイル19が一定時間保持されることで、鋼板1aに対して過時効処理が施される。
なお、本実施形態では、めっき処理装置及び加熱装置は、別個の装置であるが、めっき処理装置が加熱炉21を備えることにより、めっき処理装置が加熱処理装置を兼ねてもよい。これらの装置については、必要に応じて種々の機能が追加、除去及び置換されることで適宜設計されてもよい。本実施形態によるめっき処理装置及び加熱処理装置は鋼材1が鋼板1aである場合に適するが、めっき処理装置及び加熱装置等の構成は、鋼材1の形状等に応じて種々設計が可能である。
[表面処理鋼材]
上述したようにめっき処理が施され、或いはさらに過時効処理が施された鋼材1には、めっき層に重ねて化成処理層が形成される。すなわち、めっき鋼材と、そのめっき鋼材におけるめっき層を覆う化成処理層を有する表面処理鋼材が得られうる。そして、このような化成処理層の厚みは、0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましい。
化成処理層は適宜の化成処理によって形成される層である。化成処理層を形成するための処理剤(化成処理剤)としては、例えば、界面活性剤を含有する処理剤;クロメート処理剤、3価クロム酸処理剤、樹脂を含有するクロメート処理剤、3価クロム酸処理剤等のクロムを含有する処理剤;リン酸亜鉛処理剤、リン酸鉄処理剤等のリン酸系の処理剤;コバルト、ニッケル、タングステン、ジルコニウム等の金属酸化物を単独で或いは複合して含有する処理剤;バインダー成分(有機、無機、有機-無機複合等)とインヒビター成分とを複合した処理剤;インヒビター成分と金属酸化物とを複合した処理剤;バインダー成分とシリカやチタニア、ジルコニア等のゾルとを複合した処理剤;前記例示した処理剤の成分をさらに複合した処理剤等が、挙げられる。
また、化成処理層は、環境問題等の環境負荷への低減が要求される場合には、クロム化合物を含まないことが好ましい。すなわち、化成処理層は、クロメートフリーの処理剤から作製されてもよい。この場合、表面処理鋼材が与える環境負荷を低減することができる。また、クロメートフリーの処理剤を使用して形成される化成処理層の付着量は、例えば、20mg/m以上150mg/m以下である。
界面活性剤を含有する処理剤の例としては、例えば水及び水分散性のエステル・エーテル系ウレタン樹脂と、ジアミノ官能性アルコキシシラン等の有機ケイ素化合物と、ポリエーテル変性シロキサン等を含む界面活性剤とを配合して調製される処理剤が挙げられる。このような処理剤を使用して形成された化成処理層は、めっき鋼材の耐食性と、耐黒変性とが高くなる傾向がある。また、このような化成処理剤を使用して形成される化成処理層の厚みは、0.1μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。この場合、表面処理鋼材は耐黒変性が良好となり外装建材の用途に好適に用いられうる。また、化成処理剤を使用して形成される化成処理層の厚みは、経済性の観点から、5.0μm以下が好ましい。
クロムを含有する処理剤の例としては、水及び水分散性アクリル樹脂と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、クロム酸アンモニウムや重クロム酸アンモニウム等のクロムイオンの供給源とを配合して調製される処理剤が挙げられる。水分散性アクリル樹脂は、例えば、アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーとアクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有モノマーとを共重合させることで得られる。この化成処理剤から形成される化成処理層は耐水性、耐食性、及び耐アルカリ性が高い傾向にある。そして、このような化成処理層を有する表面処理鋼材は、白錆及び黒錆が発生しにくくなるとともに、その耐食性が向上する。
ジルコニウムの酸化物を含有する酸化物処理剤の例としては、水及び水分散性のポリエステル系ウレタン樹脂と、水分散性アクリル樹脂と、炭酸ジルコニウムナトリウム等のジルコニウム化合物と、ヒンダードアミン類とを配合して調製される処理剤が挙げられる。水分散性のポリエステル系ウレタン樹脂は、例えば、ポリエステルポリオールと、水添型イソシアネートとを反応させるとともにジメチロールアルキル酸を共重合させることで自己乳化させることで合成される。このような水分散性のポリエステル系ウレタン樹脂によって乳化剤を使用することなく化成処理層に高い耐水性が付与され、めっき鋼材の耐食性及び耐アルカリ性を向上させることが可能となる。
化成処理層は、化成処理剤を用い、ロールコート法、スプレー法、浸漬法、電解処理法又はエアーナイフ法等適宜の方法で形成されうる。
化成処理剤の塗布後、必要に応じ、常温放置、加熱装置による乾燥又は焼き付け等の工程が追加されてもよい。また、赤外線類、紫外線類又は電子線類等のエネルギー線により、塗布した化成処理層を硬化させる方法が適用されてもよい。乾燥時の温度や乾燥時間は、使用した化成処理剤の種類や、求められる生産性等に応じて適宜決定される。このようにして形成される化成処理層は、めっき層上で、連続状又は非連続状の被膜となる。
また、めっき鋼材上に施した化成処理層を覆う、塗膜層をさらに有した表面処理鋼材を得ることもできる。この塗膜層は、塗料、又はフィルム等により形成されうるが、塗料のみ或いはフィルムのみから形成されてもよく、塗料から形成される層と、フィルムから形成される層とが組み合わされて積層されることで形成されてもよい。すなわち、表面処理鋼材は、少なくとも1層以上の塗膜層を有していてもよい。そして、このような塗膜層の厚みは、0.1μm以上が好ましい。この場合、表面処理鋼材の耐食性が良好となる。また、塗膜層の厚みは、経済性の観点から、2.0mm以下が好ましい。
また、塗料及びフィルム等から形成される塗膜層は、適宜の方法で形成されうる。
塗料から塗膜層が形成される場合、塗料としては、例えばポリエステル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、アミノ樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、塩化ビニル樹脂系塗料、又はこれらの塗料を複合化した複合塗料等が使用される。
塗料の塗装法としては、ロールコート法、カーテンコート法、スプレー法、浸漬法、電解処理法、又はエアーナイフ法等の適宜の方法が採用されうる。塗料の塗布後、常温乾燥若しくは加熱装置による乾燥又は焼付け等が施されることで、塗膜層が形成される。また、エネルギー線硬化性の塗料が使用される場合には、塗装後の塗料に対して、赤外線類、紫外線類又は電子線類等のエネルギー線を照射することにより塗料を硬化することによって、塗膜層が形成されてもよい。なお、塗料の乾燥時の温度及び乾燥時間は、使用される塗料の種類等に応じて適宜決定される。塗膜層は、連続状又は非連続状の塗膜となる。
塗料を用いて塗膜層が形成される場合において、化成処理層の上に、下塗り塗膜層と、上塗り塗膜層とが形成されてもよい。下塗り塗膜層を形成する場合、例えばエポキシ樹脂系塗料が用いられる。また、上塗り塗膜層を形成する場合、例えばポリエステル系塗料が用いられる。このような上塗り塗膜層と、下塗り塗膜層とを有する表面処理鋼材は、屋外用の建材として好適に使用することができる。このとき、下塗り塗膜層の厚みは、1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、上塗り塗膜層は5.0μm以上50.0μm以下であることが好ましい。
フィルムから塗膜層が形成される場合、フィルムとしては、例えば、塩化ビニル系フィルム、ポリエステル樹脂系フィルム、アクリル樹脂系フィルム、フッ素樹脂系フィルム、これらの樹脂を複合した複合フィルム又はこれらのフィルムを積層した積層フィルム等が挙げられる。このようなフィルムが、化成処理層等の上に、例えば熱融着されたり接着剤によって接着されたりすることで、塗膜層が形成される。
また、塗膜層がフィルムから形成される場合、その厚みは、1.0μm以上2.0mm以下であることが好ましい。このような塗膜層を有する表面処理鋼材は、屋外建材の用途に好適に使用することができる。
さらに、塗膜層に重ねてクリア塗料が塗布成膜される等して、塗膜層上にクリア層が形成されてもよい。また、塗膜層は、化成処理層の上にではなく、めっき層の上に直接形成されてもよい。すなわち、化成処理層を有さず、めっき鋼材のめっき層の上に、直接塗膜層が形成された表面処理鋼材が製造されてもよい。
化成処理層又は塗膜層が形成される前のめっき層の表面に対する下地処理として、純水若しくは各種有機溶剤液による洗浄、又は酸、アルカリ及び各種エッチング剤の少なくとも一種を任意に含む水溶液若しくは各種有機溶剤液による洗浄等が施されてもよい。このように、めっき層の表面が薬剤等で洗浄されると、めっき層と、化成処理層又は塗膜層との密着性が改善されうる。
本実施形態により製造されるめっき鋼材は、良好な外観を有するとともに、高い耐食性を発揮する。したがって、このめっき鋼材は、建材、自動車用の材料、家電製品用の材料、その他各種用途に適用することができ、特に良好な外観と耐食性とが要求される用途に好適に用いられる。
以下、実施例について説明する。
[実施例と比較例]
鋼材1として厚み0.8mm、幅1000mmの長尺の鋼板1a(低炭素アルミニウムキルド鋼)を用いた。
この鋼板1aに対し、図1に示すめっき処理装置を用いて、めっき処理を施した。表1から表4には、めっき処理を施した鋼板1aのめっき層の組成を記載した。なお、めっき層の各元素の含有量はめっき浴中の各元素の含有量とほぼ等しくなる。すなわち、めっき浴の組成を調整することで所定のめっき層の組成を得ることができる。また、めっき層の組成は、採取した鋼板のめっき層をインヒビター入りの塩酸で溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置(製品名:Agilent 7700x ICP-MS(アジレントテクノロジー株式会社製))を用いて分析することにより測定した。
また、めっき処理を行った時の浴温度を表1から表4に記載した。
鋼板1aのめっき浴2への侵入時の温度は530℃とした。
鋼板1aをめっき浴2から引き出す際には空気雰囲気中に引き出し、ガスワイピングも空気雰囲気中で施した。
冷却装置10では、鋼板1aをめっき層の表面温度が300℃になるまで冷却した。
各実施例及び比較例で得られためっき鋼板について次の評価を行った。
(裸耐食性評価)
実施例1~19及び比較例1~18のめっき鋼板を切断して、平面視100mm×50mmの寸法のサンプルを得た。このサンプルについて、JIS Z2371に準拠した塩水噴霧試験を20日間行った。塩水噴霧試験後のサンプルについて、めっき腐食減量を測定して、このめっき腐食減量の測定時には、塩水噴霧試験後のサンプルをCrO濃度200g/L、温度80℃の処理浴に3分間浸漬することで、このサンプルから腐食生成物を溶解除去した。この処理後のサンプルの重量と塩水噴霧試験前のサンプルの重量から重量減少分を求め、めっき腐食減量とした。
この結果に基づき、裸耐食性を下記のように評価した。その結果を表1から表2に示す。
A:めっき腐食減量が5g/m以下
B:めっき腐食減量が5g/mより大きく、10g/m以下
C:めっき腐食減量が10g/mより大きく、20g/m以下
D:めっき腐食減量が20g/mより大きい
(折り曲げ加工後の耐食性評価)
実施例1~19及び比較例1~18のめっき鋼板を切断して、平面視30mm×40mmの寸法のサンプルを得た。このサンプルに4T曲げ加工を施した。なお、4T曲げとは、JIS G3222の13.2.2の表17における「曲げの内側間隔」が、「表示厚さの板4枚」の場合に相当する。日本国の沖縄の海岸地域の屋外に、木材製の平面視1.5m×1.5mの寸法の板を地面と水平に地面から1mの高さ位置に設置し、この板の地面と対抗する面にサンプルを固定することで、サンプルが降雨に晒されないようにした。この状態でサンプルを屋外に2年間暴露した。
この処理後のサンプルにおける折り曲げられている部分を観察し、その結果に基づいて下記基準により腐食状況を評価した。その結果を表1から表2に示す。
A:折り曲げられている部分に白錆発生が認められない
B:折り曲げられている部分のクラックが生じている部分にのみ白錆発生が認められる
C:折り曲げられている部分全体を覆うように白錆が発生し、一部は折り曲げられている部分以外へも錆が流れて拡がっている
D:折り曲げられている部分に白錆が発生し、さらに赤錆発生も認められる
(外観評価)
実施例1~19及び比較例1~18のめっき鋼板におけるめっき層の表面の外観を目視及び光学顕微鏡により観察した。
この観察結果に基づいて、めっき層に付着しているドロスの程度を、下記基準により評価した。その結果を表1から表2に示した。
A:めっき層の表面に凹凸を伴うドロスの付着がなく、或いは凹凸を伴うドロスの付着が1mあたりに5箇所未満認められる
B:めっき層の表面に凹凸を伴うドロスの付着が1mあたりに5箇所以上認められる
また、この観察結果に基づいて、めっき層の表面のアッシュの程度を、下記基準により評価した。その結果を表1から表2に示した。
A:アッシュマークが認められない
B:アッシュマークが認められる
さらに、この観察結果に基づいて、めっき層の表面の平滑性の程度を、下記基準により評価した。その結果を表1から表2に示した。
A:めっき層の表面にしわが認められない
B:めっき層の表面にしわが認められる
加えて、ドロス、アッシュマーク及び平滑性をのぞくめっき層の外観的な特徴を観察したところ、比較例3では、Srの含有率が、めっき層中のCaの量に対して多すぎるため、筋引き状欠陥が認められた。
また、いずれの実施例及び比較例についても、めっき層の表面にタレは見られなかった。
(耐黒変性)
表3に示すサンプル1~10のめっき鋼板に、989質量部の水分散性エステル系・エーテル系ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、品名:スーパーフレックス150)と、10質量部の有機ケイ素化合物(信越化学工業株式会社製、品名:KBM-402)と、1質量部の界面活性剤(ビッグケミー・ジャパン株式会社製、品名:BYK-348)とを混合し調製した化成処理剤を塗布して、表3に示す膜厚で化成処理層を形成した。この化成処理後のめっき鋼板を切断して、平面視100mm×50mmの寸法のサンプルを得た。そして、このサンプルを屋外に30日間保管した後に、サンプルの表面の外観と、作製直後のめっき鋼板の表面の外観とを、目視で観察することで比較し、下記基準により外観の色の変化を評価した。その評価結果を表3に示した。
A:黒変は観察されず、表面外観の変化は確認されない
B:黒変は観察されるが、表面の外観の大きな変化は確認されない
C:7日目経過時点では変化が確認されないものの、30日経過後には黒変が観察され、表面の外観の変化が確認される
D:7日目経過時点で黒変が観察され、表面の外観の変化が確認される
(塗装後耐食性評価)
表4に示すサンプル11~26のめっき鋼板の両面上に、クロメートフリー化成処理剤(日本パーカライジング株式会社製 品番:CT-E215N)を塗布した後、乾燥させることで、付着量が70mg/mの化成処理層を形成した。この化成処理層上に、エポキシ系下塗り塗料(日本ペイント株式会社製 品番ニッペスーパーコート4571NC)を塗布し、加熱焼き付けすることで、下塗り塗膜層を形成した。この下塗り塗膜層上にポリエステル系上塗り塗料(日本ペイント株式会社製 商品名ニッペスーパーコート300HQ)を塗布し、加熱焼き付けすることで、上塗り塗膜層を形成した。
この塗装後のめっき鋼板を切断して、平面視100mm×50mmの寸法のサンプルを得た。このサンプルを沖縄の海岸地域で屋外に1年間暴露した後、このサンプルの塗装面を観察し、下記基準により腐食状況を評価した。その結果を表4に示した。
A:白錆の発生が認められない
B:白錆が点在している
C:多数の白錆が認められる(塗装面の面積の50%未満)
D:多数の白錆が認められる(塗装面の面積の50%以上)
なお、塗装面における白錆の発生は、めっき層の***或いはめっき層に付着したドロスのために、塗膜層の厚みが部分的に薄くなり、あるいは***やドロスが塗膜層を突き抜けるために生じるものと考えられる。
Figure 2023146981000002
Figure 2023146981000003
Figure 2023146981000004
Figure 2023146981000005
サンプル1及び6に関しては、化成処理層が薄く、水分及び酸素等の腐食因子の侵入抑制効果が十分に得られず、耐黒変性向上の効果が見られなかった。
また、サンプル11及び19に関しては、塗膜層が薄く、水分及び酸素等の腐食因子の侵入抑制効果が十分に得られず、塗装後耐食性向上の効果が見られなかった。
上記の実施形態及び実施例から明らかなように、本開示の第一の態様に係るめっき鋼材は、鋼材と、鋼材を覆うめっき層とを備える。めっき層は、Al、Si、Ca、Sr、及びZnを含む。Alの含有率は、めっき層に対して25質量%以上75質量%以下である。Siの含有率は、めっき層中のAlの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下である。Caの含有率は、めっき層に対して400質量ppm以下である。Srの含有率は、めっき層中のCaの量に対して10.0質量%以下である。
第一の態様によると、耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が抑制されることで外観が向上しためっき鋼材が提供されうる。
本開示の第二の態様に係るめっき鋼材は、第一の態様において、めっき層がさらにMgを含む。Mgの含有率は、めっき層に対して0.1質量%以上10.0質量%以下である。
第二の態様によると、めっき層の耐食性が充分に確保できる。
本開示の第三の態様に係るめっき鋼材は、第一又は第二の態様において、めっき層がさらにCrを含む。Crの含有率は、めっき層に対して1.0質量%以下である。
第三の態様によると、めっき層の耐食性が良好となる。そして、めっき鋼材の外観がドロスで悪化しにくくなる。
本開示の第四の態様に係るめっき鋼材の製造方法は、第一から第三のいずれか一の態様に係るめっき鋼材の製造方法である。構成元素として、Al、Si、Ca、Sr及びZnを含むめっき浴を準備する。鋼材をめっき浴に通過させて、鋼材にめっき金属を付着させ、めっき金属を凝固させて鋼材の表面にめっき層を形成する。
第四の態様によると、耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が抑制されることで外観が向上しためっき鋼材が提供されうる。
本開示の第五の態様に係るめっき鋼材の製造方法は、第四の態様において、めっき浴中のAlの含有率は、めっき浴に対して25質量%以上75質量%以下である。めっき浴中のSiの含有率は、めっき浴中のAlの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下である。めっき浴中のCaの含有率は、めっき浴に対して400質量ppm以下である。めっき浴中のSrの含有率は、めっき浴中のCaの量に対して10.0質量%以下である。
第五の態様によると、耐食性に優れ、かつめっき層における微細な欠陥が特に抑制されることで外観が向上しためっき鋼材が提供されうる。
本開示の第六の態様に係るめっき鋼材の製造方法は、第四又は第五の態様において、めっき浴が、さらにMgを含む。Mgの含有率は、めっき浴に対して0.1質量%以上10質量%以下である。
第六の態様によると、めっき層の耐食性が充分に確保できる。
本開示の第七の態様に係るめっき鋼材の製造方法は、第四から第六のいずれか一の態様において、めっき浴が、さらにCrを含む。Crの含有率は、めっき浴に対して1.0質量%以下である。
第七の態様によると、めっき層の耐食性が良好となる。そして、めっき鋼材の外観がドロスで悪化しにくくなる。
本開示の第八の態様に係る表面処理鋼材は、第一から第三のいずれか一の態様のめっき鋼材と、めっき鋼材におけるめっき層を覆う化成処理層とを有する。化成処理層の厚みが、0.1μm以上5.0μm以下である。
第八の態様によると、耐食性が要求される用途に適用できる表面処理鋼材が提供される。
本開示の第九の態様に係る表面処理鋼材は、第一から第三のいずれか一の態様のめっき鋼材と、めっき鋼材におけるめっき層を覆う化成処理層とを有し、化成処理層を覆う、塗膜層をさらに有する。塗膜層の厚みが0.1μm以上2.0mm以下である。
第九の態様によると、耐食性が要求される用途に適用できる表面処理鋼材が提供される。
1 鋼材
2 めっき浴

Claims (9)

  1. 鋼材と、前記鋼材を覆うめっき層とを備え、
    前記めっき層は、Al、Si、Ca、Sr、及びZnを含み、
    前記Alの含有率は、前記めっき層に対して25質量%以上75質量%以下であり、
    前記Siの含有率は、前記めっき層中の前記Alの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下であり、
    前記Caの含有率は、前記めっき層に対して400質量ppm以下であり、
    前記Srの含有率は、前記めっき層中の前記Caの量に対して10.0質量%以下である、
    めっき鋼材。
  2. 前記めっき層がさらにMgを含み、前記Mgの含有率は、前記めっき層に対して0.1質量%以上10.0質量%以下である、
    請求項1に記載のめっき鋼材。
  3. 前記めっき層がさらにCrを含み、前記Crの含有率は、前記めっき層に対して1.0質量%以下である、
    請求項1又は2に記載のめっき鋼材。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載のめっき鋼材の製造方法であって、
    構成元素として、Al、Si、Ca、Sr及びZnを含むめっき浴を準備し、
    鋼材を前記めっき浴に通過させて、前記鋼材にめっき金属を付着させ、前記めっき金属を凝固させて前記鋼材の表面にめっき層を形成する、
    めっき鋼材の製造方法。
  5. 前記めっき浴中の前記Alの含有率は、前記めっき浴に対して25質量%以上75質量%以下であり、
    前記めっき浴中の前記Siの含有率は、前記めっき浴中の前記Alの量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下であり、
    前記めっき浴中の前記Caの含有率は、前記めっき浴に対して400質量ppm以下であり、
    前記めっき浴中の前記Srの含有率は、前記めっき浴中の前記Caの量に対して10.0質量%以下である、
    請求項4に記載のめっき鋼材の製造方法。
  6. 前記めっき浴がさらにMgを含み、前記Mgの含有率は、前記めっき浴に対して0.1質量%以上10.0質量%以下である、
    請求項4又は5に記載のめっき鋼材の製造方法。
  7. 前記めっき浴がさらにCrを含み、前記Crの含有率は、前記めっき浴に対して1.0質量%以下である、
    請求項4から6のいずれか一項に記載のめっき鋼材の製造方法。
  8. 請求項1から3のいずれか一項に記載のめっき鋼材と、前記めっき鋼材における前記めっき層を覆う化成処理層とを有し、
    前記化成処理層の厚みが、0.1μm以上5.0μm以下である、
    表面処理鋼材。
  9. 請求項1から3のいずれか一項に記載のめっき鋼材と、前記めっき鋼材における前記めっき層を覆う化成処理層とを有し、
    前記化成処理層を覆う、塗膜層をさらに有し、
    前記塗膜層の厚みが0.1μm以上2.0mm以下である、
    表面処理鋼材。
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