JP5128619B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
溶融亜鉛めっき鋼板は、例えば、自動車や家電製品、建材など広範囲の用途に使用されており、特に、溶融亜鉛めっき鋼板に熱処理を施して溶融亜鉛めっき層と素地鋼板(溶融亜鉛めっき前の鋼板)を合金化した合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、耐食性やスポット溶接性に優れていることから自動車の素材として広く使用されている。
自動車においては、車体の軽量化による燃費向上や衝突安全性を高めるために、素地鋼板の高強度化による薄物化が要求されている。一方、素地鋼板を高強度化すると、延性が悪くなり、加工性が劣化する。そこで素地鋼板には、強度と延性のバランスが良好であることが求められている。
良好な強度延性バランスを保ちつつ、強度と延性の両特性を一段と高めるために、高濃度のSiやMnを添加することが知られている。しかしSiやMnは易酸化性元素のため、溶融亜鉛めっきを行なう前の焼鈍時に酸化され、めっきの濡れ性や合金化処理性を著しく阻害するという問題が発生する。濡れ性が悪くなると、素地鋼板の表面にめっき層が均一に付着せず、不めっき部が発生したり、めっき層は付着しているものの表面に波を打った様な「さざなみ」と呼ばれる模様が発現して外観が悪くなり、めっき不良が発生する。また、めっき不良が起こることで合金化ムラが発生し易くなるため、合金化処理条件の制御が難しくなり、安定的に製造することが困難になる。
このようにめっき不良(不めっき部の発生とさざなみ模様の発生)や合金化ムラが発生すると、耐パウダリング性が劣化するため、部品加工工程でめっき層が素地鋼板から剥離し、表面外観不良となる問題も発生する。こうした問題を解決する技術が特許文献1〜5に開示されている。
特許文献1には、亜鉛めっき浴中を通過する前の焼鈍された素地鋼板の表層をドライエッチング法により除去することで、素地鋼板と溶融亜鉛めっきとの濡れ性を良好にすることが開示されている。濡れ性を良好にすることで、めっき不良や合金化ムラが発生するのを防止できるからである。特許文献2には、Mnを含む高張力鋼板の表面に、Sを含有するアンモニウム塩を付着させたのち、熱処理を施し、次いで溶融亜鉛めっき処理を行うことが開示されている。特許文献3には、溶融亜鉛めっき前後の熱履歴を制御することによって、高Si、高P含有鋼を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の板幅方向のめっき密着性を改善し、めっきむらを改善できるめっき性改善方法が開示されている。特許文献4には、高張力鋼板を、無酸化炉型または直火炉型の加熱帯を有する連続焼鈍炉で焼鈍した後、Si、Mn、Al等の表面濃化層の70%以上を酸洗によって除去してから溶融亜鉛めっきを施すことが開示されている。特許文献5には、被めっき鋼板の焼鈍工程で、当該鋼板表層に鋼板添加元素と焼鈍雰囲気の成分との反応物を形成させることが開示されている。
しかし特許文献1〜4では、溶融亜鉛めっきの前にドライエッチングを行なったり、アンモニウム塩を付着させたり、溶融亜鉛めっき前後の熱履歴を制御したり、酸洗条件を制御する必要があるため、製造工程が複雑化する。一方、特許文献5のように、素地鋼板の表面に反応物を形成させると、却ってめっき不良や合金化ムラが発生することがあった。
ところで合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板よりも耐食性に優れている。しかしその耐食性向上効果は、溶融亜鉛めっき層の付着量によるところが多く、付着量を増加させるにしても限界がある。また、耐食性を更に向上させるために、合金化溶融亜鉛めっき層の表面に塗装を施したり、合金化溶融亜鉛めっき層にAlやMgを添加することが行われている。しかし塗装を施すと欠陥が発生する場合があり、コスト高となる。また、合金化溶融亜鉛めっき層にAlやMgを含有させるにしてもコスト高は免れない。また、AlやMgを含有させて合金化溶融亜鉛めっき層自体の耐食性を高めたとしても、該めっき層が素地鋼板表面から剥離してしまうと、結局のところ耐食性は著しく劣化する。
特開平6−88193号公報 特開2001−279410号公報 特開2003−328036号公報 特開2004−263271号公報 特開2005−200711号公報
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、めっき不良や合金化ムラの発生を抑え、表面外観に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、C:0.02〜0.25%(質量%の意味。以下同じ。)、Si:0.5〜3%、Mn:1〜4%、Cr:0.03〜1%、Al:1.5%以下(0%を含まない)、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Ti:0.003〜1%を含有し、更に、Cu:0.25〜5.0%および、Ni:0.05〜1.0%を含有すると共に、CuとNiの含有量が下記(1)式を満足し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼を熱間圧延して得られる素地鋼板に、溶融亜鉛めっきを施してから、めっき層を合金化した合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、金属組織が、フェライトとマルテンサイトの合計が70面積%以上で、残留オーステナイト(以下、残留γと表記することがある。)が1面積%以下(0面積%を含む)に抑制されている点に要旨を有している。(1)式中、[ ]は元素の含有量(質量%)を示す。
[Cu]/[Ni]≧5 ・・・(1)
上記合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、更に、他の元素として、
(a)V:1%以下(0%を含まない)、Nb:1%以下(0%を含まない)、およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
(b)B:0.1%以下(0%を含まない)、
(c)Ca:0.005%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.01%以下(0%を含まない)を含有することが好ましい。
本発明によれば、CuとNiをバランス良く含有する素地鋼板に合金化溶融亜鉛めっき処理を施しているため、めっき不良や合金化ムラの発生が抑制された表面外観が良好な合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供できる。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GA鋼板と呼ぶことがある。)の特徴部分は、CuとNiをバランス良く含む素地鋼板に、合金化溶融亜鉛めっき処理を施すことによって、めっき不良や合金化ムラの発生が抑制された表面外観に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供するところにある。
本発明のGA鋼板は、残留γを実質的に含まないDP(Dual Phase;複合組織)鋼板と、3面積%以上の残留γを含むTRIP(Transformation Induced Plasticity;変態誘起塑性)鋼板の両方を含み、各組織鋼板による効果も有効に発揮される。本明細書では、溶融亜鉛めっきが施される前の鋼板を素地鋼板と呼び、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)やGA鋼板と区別することとする。
はじめに、本発明に到達した経緯について説明する。本発明者らは強度延性バランスを向上する目的で、SiやMnなどの易酸化性元素を多く含むGA鋼板のめっき不良や合金化ムラを防止するために検討を行った。前述したように、強度と延性を高めるためにSiやMnを高濃度で含有させると、溶融亜鉛めっきを行なう前に行なわれる焼鈍工程でSiとMnが選択的に酸化される。酸化されて形成されたSiやMnの酸化物は、素地鋼板の表面へ拡散し、酸化物層を形成し、この酸化物層がめっき不良を発生する原因となる。また、この酸化物層は、溶融亜鉛めっきした鋼板に熱処理を施して溶融亜鉛めっき層を合金化したときには、合金化ムラを発生する原因となる。特に、素地鋼板の表面にSiが濃化すると、素地鋼板の最表面に薄い酸化物層を形成したり、粒界酸化が起こるため、めっき付着性や合金化処理性が著しく劣化する。一方、素地鋼板の表面にはMnも濃化するが、Mnが酸化されて形成される酸化物(MnO)の形状は粒状のため、合金化処理時にFeが外方へ拡散するバリア効果はSiによる酸化物層よりも弱い。そのため少量添加であればMnの合金化速度への悪影響は少ない。しかしMnを添加して強度と延性を向上させるには、Siよりも多く添加しなければならないため、素地鋼板の表面には多量のMnOが形成される。そのため合金化挙動が複雑化し、合金化処理条件の制御が困難になる。
そこで本発明者らは、素地鋼板の表面に形成されるSi酸化物やMn酸化物と、溶融亜鉛めっき層の合金化との関係に着目し、素地鋼板の表面に形成される上記酸化物の生成を抑制し、素地鋼板と溶融亜鉛の濡れ性や、素地鋼板と亜鉛の反応性を改善すれば、めっき不良や合金化ムラを低減でき、良好な表面外観が得られるのではないかと考えた。そして本発明者らは、Si酸化物やMn酸化物の生成を抑制する元素として、CuとNiに着目した。その結果、高濃度のSiとMnを含有する素地鋼板に、更にCuとNiの両方をバランス良く含有させたところ、めっき不良が低減することが判明した。めっき不良が低減したのは、素地鋼板の表面にCuが濃化することで、素地鋼板の表面においてSiとMnの酸化を抑制できるためと考えられる。このときCuと共にNiを含有させることで、Cu濃化層の融点を上げることができるため、熱間加工時に疵や割れが発生するのを防止できる。しかもCuとNiは、溶融亜鉛めっき層中のZnと反応しやすいため、めっき付着性が良好になったと考えられる。即ち、Niを含むCu濃化層は、めっき不良を低減するだけでなく、溶融亜鉛めっきとの濡れ性を改善するため、合金化反応が均一に進行し、不めっき部の発生や合金化不良も低減することが分かった。
また、Cuを含む素地鋼板を用いれば、GA鋼板の耐食性も向上させることができる。即ち、溶融亜鉛めっき層の一部が腐食しても、Cu(一部、NiやTiも相乗効果がある)がZnの溶解やFeの溶解に作用し、ZnさびやFeさびの形態を微細に変化させるため、さび層自体に耐食性向上作用をもたらすこととなる。つまり、Znめっきが腐食しても、緻密なZnさびを生成するため、耐食性向上作用を維持でき、素地鋼板中のFeが腐食しても、緻密なFeさびを生成するため、耐食性向上作用を維持できる。こうした緻密なZnさびとFeさびの生成によって、全体としての耐食性向上作用が維持され、長寿命化を図ることができる。
また、Cuはそれ自体が貴な金属であるため、Cu濃化層は、外部からの腐食因子に対して侵入障壁の役割を果たし耐食性向上作用を有している。
こうしたCu濃化層を形成させるために、本発明のGA鋼板は、CuとNiの含有量の比([Cu]/[Ni])が5以上となるように、Cuを0.25〜5.0%とNiを0.05〜1.0%含有しているところに特徴がある。CuとNiは、固溶強化元素であり、強度を向上させる他、めっき付着性を向上させるのに作用する元素である。特にCuは、Feよりも酸化し難いため、素地鋼板の表面に濃化させることでSi酸化物やMn酸化物の形態を変化させることができ、めっき付着性の劣化を防止できる。即ち、表面の粒界近傍にCuが濃化することによってSi酸化物やMn酸化物の生成が抑制されるため、めっき不良を低減できる。また、Si酸化物やMn酸化物の生成が抑制されることで、素地鋼板と溶融亜鉛の濡れ性が改善され、合金化反応を均一に進めることができるため、合金化ムラの発生が低減される。
また、本発明においてCuとNiの両方を添加したのは、Cuの単独添加では、鋼の熱間圧延工程において表面に疵や割れが生じる場合があるからである。Cuのみを含むCu濃化層が高温に曝されると、その一部が液相化し、液相が生じた脆弱な素地鋼板の表面が熱間加工を受けることで疵や割れが発生してしまう。そこで表面の疵や割れの発生を防止するために、本発明ではCuと共にNiを必須元素として含有させる。Niを含有させることで、Cu濃化層の融点を上げることができ、熱間加工時に疵や割れが発生するのを防止できるからである。
こうした効果を発揮させるには、Cuは0.25%以上含有させる必要がある。好ましくは0.3%以上であり、より好ましくは0.35%以上である。しかし過剰に含有すると加工性が劣化するため、Cuの上限は5.0%とする。好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
一方、Niは0.05%以上含有させる必要がある。好ましくは0.06%以上である。しかし過剰に含有させると加工性が劣化するため、Niの上限は1.0%とする。好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下である。
本発明のGA鋼板は、CuとNiを必須元素として含有するものであるが、更にCuとNiの含有量の比([Cu]/[Ni])が、下記(1)式で示される関係を満足していることが重要である。CuとNiを上記の範囲で含有しているだけでは、GA鋼板の外観性を改善できない場合があるからである。Niを添加することで、Cuの濃化が若干ではあるが阻害されるため、CuとNiの含有量のバランスが悪ければ、Cu濃化層の幅や厚みが不連続になる。Cu濃化層が不連続になると、Cu濃化層が存在しているところと存在していないところで、めっき付着性や合金化速度に差がでるため、却って合金化ムラが発生することとなる。
[Cu]/[Ni]≧5 ・・・(1)
[Cu]/[Ni]の値が5未満では、Niが過剰となり、所望とするCu濃化層の形成が阻害され、均一な濃化層が形成されないからである。従って[Cu]/[Ni]の値は5以上とする。好ましくは5.5以上であり、より好ましくは6以上である。
[Cu]/[Ni]の上限は、理論上は100であるが、Niに対してCuを過剰に含有すると、割れが発生する原因となったり、コスト高となるので、[Cu]/[Ni]の値は、50以下とするこが好ましい。より好ましくは40以下であり、更に好ましくは30以下である。
上記Cu濃化層は、溶製した鋼を熱間圧延する工程で形成され、素地鋼板の表面近傍に数μmから数十μmの厚みで形成されており、且つ、板厚中央部におけるCu濃度に対して、2倍以上の濃度を有する層を指す。このCu濃化層は、具体的には、素地鋼板の表面近傍に1μm以上の厚みで、連続的に形成されていることが好ましい。Cu濃化層の厚みはより好ましくは3μm以上である。なお、素地鋼板の表面近傍に形成されたCu濃化層は、溶融亜鉛めっき浴へ浸漬したときに反応し、一部が溶解するため、GA鋼板の表面近傍を観察しても厚みや形成状態は変化する。また、Cu濃化層による上記効果は、後述するように、粒界に偏析し易いV、Nb、Mo、B等の元素を添加することによって、一層発揮される。
本発明のGA鋼板は、上述したように、CuとNiをバランス良く含有するところに最大の特徴がある。
次に、CuとNi以外の基本成分について、残留γを実質的に含まないDP鋼板と、3面積%以上の残留γを含むTRIP鋼板を分けて説明する。
本発明で用いる素地鋼板の金属組織は、残留γの有無によって(a)フェライトとマルテンサイトを合計で70面積%以上含み、残留γが1面積%以下(0面積%を含む)であるDP鋼板と、(b)3面積%以上の残留γを含有するTRIP鋼板に分けられる。
上記(a)のDP鋼板を用いれば、母相をフェライトとマルテンサイトの混合組織になっているため、割れの発生を防止できる。一方、上記(b)のTRIP鋼板を用いれば、残留γを3面積%以上含有しているため、マルテンサイト変態開始温度(Ms点)以上の温度で加工変形させることで、応力によって残留γがマルテンサイトに誘起変態して大きな伸びが得られる。
なお、素地鋼板の金属組織は、板厚の中央部を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、分析すればよい。観察倍率は3000倍程度とすればよい。なお、残留γの生成量は、後記の実施例で詳述するように、EBSP検出器を備えたFE−SEMを用いて定量すればよい。
《(a)フェライトとマルテンサイトを合計で70面積%以上で、残留γを1面積%以下(0面積%を含む)に抑えたDP鋼板》
[C:0.02〜0.25%]
Cは、強度を確保するために必要な元素であり、また低温変態生成物の生成量や生成形態を変化させるのにも寄与し、伸びや伸びフランジ性にも影響を及ぼす元素である。従ってCは0.02%以上含有する必要がある。好ましくは0.04%以上であり、より好ましくは0.06%以上である。しかし0.25%を超えて含有すると溶接性が低下するので、Cは0.25%以下とする。DP鋼板の場合は、特に0.2%以下であることが好ましい。より好ましくは0.18%以下である。
[Si:0.5〜3%]
Siは、置換型の固溶強化元素であり、α層中の固溶C量を減少させることにより強度を向上させる元素である。また、Si量が多くなると、フェライト分率が増大すると共に、低温変態生成相のベイナイト変態が抑制される。従ってマルテンサイトが得られやすくなり、金属組織はフェライトとマルテンサイトの複合組織となるため、Siは高強度鋼板の伸びなどの加工性を向上させるのにも作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、Siを0.5%以上含有させる必要がある。好ましくは1%以上であり、より好ましくは1.2%以上である。しかしSiを過剰に含有させると、上述したようにCuとNiを適切に含有させても素地鋼板の表面にSiの酸化物層が形成されるため、めっきの濡れ性が劣化し、めっき不良や合金化ムラを低減できない。また、Siが過剰になると、熱間圧延時に素地鋼板の表面に酸化皮膜を形成し、スケールの除去やキズの除去にコストがかかり、経済的に不利になる。また、Siを過剰に含有させても上述した強度向上効果は飽和し、コスト高となる。従ってSiは3%以下とする。好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2%以下である。
[Mn:1〜4%]
Mnは、強度と延性を高めるために必要な元素であり、1%以上含有する。好ましくは1.3%以上であり、より好ましくは1.5%以上である。しかしMnが過剰になると、上記Siと同様に、素地鋼板の表面にMnの酸化物層が形成されるため、めっきの濡れ性が劣化し、めっき不良や合金化ムラを低減できない。また、熱間圧延時に素地鋼板の表面に酸化皮膜を形成し、スケールの除去やキズの除去にコストがかかり、経済的に不利になる。また、Mnを過剰に含有させても強度向上効果は飽和し、コスト高となる。従ってMnは4%以下とする。好ましくは3.5%以下である。DP鋼板の場合は、3%以下であることが特に推奨される。
[Cr:0.03〜1%]
Crは、焼入れ性を高め、組織強化を図るのに有効に作用する元素である。即ち、Crはオーステナイト中にCを濃化させ、オーステナイトの安定度を高めてマルテンサイトを生成させやすくし、金属組織を強化する元素である。従ってCrは0.03%以上含有する必要がある。好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.15%以上である。しかし1%を超えて含有させても上記効果は飽和し、コスト高となるので、上限は1%とする。好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下である。
[Al:1.5%以下(0%を含まない)]
Alは、耐食性向上作用と耐水素脆化特性向上作用を有する元素である。Alの添加により耐水素脆化特性が向上するのは、Alを添加することで耐食性が向上し、結果として大気腐食で発生する水素量が低減されるからと考えられる。しかし過剰に含有すると、アルミナ等の介在物が多く生成し、加工性が劣化するため、1.5%以下とする。好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.1%以下である。なお、Alは、製鋼段階で脱酸剤として添加するため、通常、0.01%程度含有している。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは、高強度鋼板を得るために有効に作用する元素であるが、過剰に含有すると、めっきムラが生じやすくなり、また溶融亜鉛めっきの合金化が困難になる。従ってPは0.03%以下に抑える必要がある。好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.015%以下とする。
[S:0.03%以下(0%を含まない)]
Sは、不可避不純物として混入する元素であり、過剰に含有すると、熱間圧延時に熱間割れを発生する原因になるほか、スポット溶接性を著しく損なう元素である。また、過剰に含有すると、鋼中に生成する析出物の量が増大し過ぎて、伸びや伸びフランジ性が劣化する。従ってSは0.03%以下に抑える必要がある。好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.01%以下とする。
[Ti:0.003〜1%]
Tiは、鋼中のCを固定して炭化物を形成し、GA鋼板の高強度化に有効に作用する元素である。また、Tiは、鋼中のCを固定する他、Nを固定して窒化物を形成し、r値(ランクフォード値)を高めて加工性を向上させるのにも作用する元素である。また、Tiは、上記CuとNiと複合添加することで、Feが溶解するときにFeの複合酸化物を形成し、この複合酸化物がめっき付着性を向上させる。また、腐食発生時に耐食性を向上させる作用を有している緻密な鉄さびや亜鉛さびの形成に寄与する元素である。即ち、Tiは、塩化物環境での耐食性を劣化させる原因となるβ−FeOOHの生成を抑制する唯一の元素であり、こうした抑制作用は、耐食性を向上させるα―FeOOHや非晶質さびの生成を促進する作用を有するCuやNiと複合添加することで一層発揮される。本発明では、Tiは0.003%以上含有させる必要がある。好ましくは0.0035%以上、より好ましくは0.004%以上とする。しかし過剰に含有させるとコスト高となる他、加工性を低下させるため上限は1%とする。好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.1%以下である。
本発明のGA鋼板の残部成分は、鉄および不可避不純物である。
本発明の効果を損なわない範囲で、V、Nb、Mo、B、Ca、Mgなどの選択元素を含有してもよい。これらの選択元素を含有する場合の好適な範囲は次の通りである。
[V:1%以下(0%を含まない)、Nb:1%以下(0%を含まない)、およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素]
V、Nb、Moは、いずれも強度を一段と向上させる元素であり、これらの元素を単独、または2種以上添加することができる。特に、VとNbは、鋼中のCを固定して炭化物を形成することで、強度を高める元素である。Moは、めっき付着性を損なわずに、鋼中に固溶して強度を高める元素である。こうした効果は、少量添加することで発揮されるが、好ましくは、いずれかの元素を0.003%以上含有するのがよい。より好ましくは、いずれかの元素を0.01%以上含有するのがよく、更に好ましくは、いずれかの元素を0.02%以上含有するのがよい。しかし過剰に含有させるとコスト高となる他、加工性が低下する。従って上記元素の上限は、いずれの元素も1%とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.5%以下である。なお、2種以上含有させる場合は、合計で1%以下とするのがよい。
[B:0.1%以下(0%を含まない)]
B(ホウ素)は、焼入れ性を高める元素であり、また溶接性も向上させる元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、0.0002%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.0003%以上であり、更に好ましくは0.0004%以上である。しかし過剰に含有させても添加効果は飽和し、しかも延性が低下して加工性が悪くなる。従ってBは0.1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.01%以下であり、更に好ましくは0.001%以下である。
前述したV、Nb、Mo、Bは、SiやMnが素地鋼板の表面で酸化するのを抑えてめっき付着性を向上させる作用を有している元素であり、しかも粒界に偏析して亜鉛めっき層の合金化が均一に進行するように有効に作用して、合金化ムラやめっき不良を低減させる作用を有している。
[Ca:0.005%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.01%以下(0%を含まない)]
CaとMgは、鋼中の介在物の形態を球状化することにより延性を高め、加工性を向上させる作用を有している。また、CaとMgは、鋼を清浄化する作用を有しているため、CaやMgを含有すると溶融亜鉛めっき層の合金化が均一に進行し易くなる。こうした効果を有効に発揮させるには、CaとMgは、夫々、0.0005%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.001%以上である。しかし過剰に含有すると、鋼中の介在物量が増加するため、延性が劣化し、加工性が低下する。従ってCaは0.005%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.003%以下である。Mgは0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.005%以下であり、更に好ましくは0.003%以下である。
本発明のGA鋼板の成分組成は、上記の通りであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の元素を含有してもよい。
上記成分組成を満足する本発明のGA鋼板は、引張強度が590〜1470MPa級になり、強度と延性のバランスが良好になる。
本発明で用いる素地鋼板の金属組織は、母相がフェライトとマルテンサイトの混合組織であればよい。母相組織とは、金属組織全体に対して、70%以上生成している組織を意味する。
母相組織に占めるフェライトとマルテンサイトの各分率は、GA鋼板に要求される強度と伸びのバランスに応じて決定すればよく、特に限定されない。
一般的には、フェライト分率が高くなると、GA鋼板の強度が低下する反面、伸びが向上する傾向がある。一方、マルテンサイト分率が高くなると、GA鋼板の強度は向上するが、伸びが低下する傾向がある。上記金属組織に占めるフェライトとマルテンサイトの分率は、GA鋼板の延性を確保するために、フェライトを5〜90体積%、マルテンサイトを5〜90体積%であればよい。なお、上記フェライトは、通常のフェライトでもよいし、転位密度が高く、板状のベイニティックフェライトであってもよい。即ち、本発明で用いる素地鋼板は、フェライトおよび/またはベイニティックフェライトと、マルテンサイトの混合組織が母相であればよい。
一方、残留γが生成していると、GA鋼板を変形させたときに該残留γがマルテンサイトに変態して割れ発生の起点になるため、残留γは1面積%以下であることが好ましい。
フェライトとマルテンサイトの混合組織が70面積%以上で、残留γを1面積%以下に抑えた素地鋼板を製造するには、例えば、上記成分組成を満足するスラブを熱間圧延した後に酸洗すればよく、必要に応じて冷間圧延してもよい。得られた熱延鋼板または冷延鋼板は、溶融亜鉛めっきライン等において溶融亜鉛めっきを行い、更に合金化処理を施せばよい。以下、この製造条件について具体的に説明する。
熱間圧延の条件は、例えば、加熱温度を約1100〜1300℃、仕上げ圧延温度を約800〜950℃、巻き取り温度を約700℃以下とすることが好ましい。
加熱温度を約1100〜1300℃とするのは、仕上げ圧延温度を確保すると共に、オーステナイト結晶粒の粗大化を防止するためである。仕上げ圧延温度を約800〜950℃とするのは、加工性を阻害する集合組織が形成されないようにするためである。巻き取り温度を約700℃以下とするのは、これを超える高温で巻き取ると素地鋼板の表面に生成するスケールが厚くなり過ぎるため、酸洗性が劣化するからである。なお、仕上げ圧延後は、パーライトの生成を抑制するために、平均冷却速度を約30〜120℃/秒の範囲に制御することが好ましい。
熱間圧延後は、素地鋼板の加工性を向上させるために、必要に応じて冷間圧延を行なってもよい。冷間圧延時の冷延率は、30%以上とすることが好ましい。冷延率を30%未満とすると、熱間圧延時に素地鋼板の厚みを所望の製品厚みまで圧延しなければならないため、生産性が悪くなる。なお、冷間圧延を行なう前には、熱延鋼板を酸洗して表面に生成したスケールを除去すればよい。
上記熱延鋼板または冷延鋼板は、必要に応じて酸洗して素地鋼板の表面を清浄化した後、連続式溶融亜鉛めっきラインで熱処理を行なう。熱処理は、所望の組織を確実に得るには、700℃以上に加熱するのが良い。上限は特に規定しないが、900℃であれば何ら問題はない。熱処理時の保持時間は、10秒以上でれば充分に均熱され、所望の組織が得られる。
熱処理した後は、亜鉛めっき処理を施す。めっき浴温は、管理のし易さや、その後の合金化処理条件との関係で、約400〜500℃とすることが好ましい。より好ましくは約440〜480℃である。めっき浴への浸漬時間は、1〜5秒とすることが好ましい。めっき浴の組成は特に限定されないが、例えば、有効Al濃度を0.07〜0.13質量%に調整しておくことが好ましい。なお、めっき浴へ浸漬する前の素地鋼板は、めっき付着性を向上させるために、めっき浴温程度に加熱しておくことが推奨される。
溶融亜鉛めっきを施した鋼板は、更に合金化処理を施す。合金化処理条件は、所望の特性に応じて決定すればよく、例えば、合金化処理温度は400〜600℃程度、合金化処理時間は1〜300秒程度とすればよい。
合金化処理は、加熱炉や直火、赤外線加熱炉などを用いて行えばよい。加熱方法も特に限定されず、例えば、ガス加熱やインダクションヒーター加熱(高周波誘導加熱装置による加熱)など慣用の手段を採用できる。なお、合金化処理は、溶融亜鉛めっき直後に行うことが好ましい。
《(b)3面積%以上の残留γを含むTRIP鋼板》
[C:0.02〜0.25%]
Cは、強度を確保するために必要な元素であり、また低温変態生成物の生成量や生成形態を変化させるのにも寄与し、伸びや伸びフランジ性にも影響を及ぼす元素である。従ってCは0.02%以上含有する必要がある。好ましくは0.04%以上であり、より好ましくは0.06%以上である。しかし0.25%を超えて含有すると溶接性が低下するので、Cは0.25%以下とする。好ましくは0.2%以下であり、より好ましくは0.18%以下である。
[Si:0.5〜3%]
Siは、置換型の固溶強化元素であり、α層中の固溶C量を減少させることにより強度を向上させる元素である。また、Si量が多くなると、フェライト分率が増大すると共に、低温変態生成相のベイナイト変態が抑制される。従ってマルテンサイトが得られやすくなり、金属組織はフェライトとマルテンサイトの複合組織となるため、Siは高強度鋼板の伸びなどの加工性を向上させるのにも作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、Siを0.5%以上含有させる必要がある。TRIP鋼板の場合は、Siは、特に1%以上含有することが推奨される。Siは、残留γが分解して炭化物が生成するのを抑制するのに作用する元素だからである。Siは、好ましくは1.2%以上である。しかしSiを過剰に含有させると、上述したようにCuとNiを適切に含有させても素地鋼板の表面にSiの酸化物層が形成されるため、めっきの濡れ性が劣化し、めっき不良や合金化ムラを低減できない。また、Siが過剰になると、熱間圧延時に素地鋼板の表面に酸化皮膜を形成し、スケールの除去やキズの除去にコストがかかり、経済的に不利になる。また、Siを過剰に含有させても上述した強度向上効果は飽和し、コスト高となる。従ってSiは3%以下とする。好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2%以下である。
[Mn:1〜4%]
Mnは、強度と延性を高めるために必要な元素であり、1%以上含有する。好ましくは1.3%以上であり、より好ましくは1.5%以上である。しかしMnが過剰になると、上記Siと同様に、素地鋼板の表面にMnの酸化物層が形成されるため、めっきの濡れ性が劣化し、めっき不良や合金化ムラを低減できない。また、熱間圧延時に素地鋼板の表面に酸化皮膜を形成し、スケールの除去やキズの除去にコストがかかり、経済的に不利になる。また、Mnを過剰に含有させても強度向上効果は飽和し、コスト高となる。従ってMnは4%以下とする。好ましくは3.5%以下であり、より好ましくは3%以下である。
[Cr:0.03〜1%]
Crは、焼入れ性を高め、組織強化を図るのに有効に作用する元素であり、0.03%以上含有する必要がある。好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.15%以上である。しかし1%を超えて含有させても上記効果は飽和し、コスト高となるので、上限は1%とする。好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下である。
[Al:1.5%以下(0%を含まない)]
Alは、耐食性向上作用と耐水素脆化特性向上作用を有する元素である。Alの添加により耐水素脆化特性が向上するのは、Alを添加することで耐食性が向上し、結果として大気腐食で発生する水素量が低減されるからと考えられる。また、Alを添加することによってラス状の残留γの安定度が増加することも耐水素脆化特性の向上に寄与していると考えられる。しかし過剰に含有すると、アルミナ等の介在物が多く生成し、加工性が劣化するため、1.5%以下とする。好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.1%以下である。なお、Alは、製鋼段階で脱酸剤として添加するため、通常、0.01%程度含有している。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは、高強度鋼板を得るために有効に作用する元素であるが、過剰に含有すると、めっきムラが生じやすくなり、また溶融亜鉛めっきの合金化が困難になる。従ってPは0.03%以下に抑える必要がある。好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.015%以下とする。
[S:0.03%以下(0%を含まない)]
Sは、不可避不純物として混入する元素であり、過剰に含有すると、熱間圧延時に熱間割れを発生する原因になるほか、スポット溶接性を著しく損なう元素である。また、過剰に含有すると、鋼中に生成する析出物の量が増大し過ぎて、伸びや伸びフランジ性が劣化する。従ってSは0.03%以下に抑える必要がある。好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.01%以下とする。
[Ti:0.003〜1%]
Tiは、鋼中のCを固定して炭化物を形成し、GA鋼板の高強度化に有効に作用する元素である。また、Tiは、鋼中のCを固定する他、Nを固定して窒化物を形成し、r値(ランクフォード値)を高めて加工性を向上させるのにも作用する元素である。また、Tiは、上記CuとNiと複合添加することで、Feが溶解するときにFeの複合酸化物を形成し、この複合酸化物がめっき付着性を向上させる。また、腐食発生時に耐食性を向上させる作用を有している緻密な鉄さびや亜鉛さびの形成に寄与する元素である。即ち、Tiは、塩化物環境での耐食性を劣化させる原因となるβ−FeOOHの生成を抑制する唯一の元素であり、こうした抑制作用は、耐食性を向上させるα―FeOOHや非晶質さびの生成を促進する作用を有するCuやNiと複合添加することで一層発揮される。本発明では、Tiは0.003%以上含有させる必要がある。好ましくは0.0035%以上、より好ましくは0.004%以上とする。しかし過剰に含有させるとコスト高となる他、加工性を低下させるため上限は1%とする。好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.1%以下である。
本発明のGA鋼板の残部成分は、鉄および不可避不純物である。
本発明の効果を損なわない範囲で、V、Nb、Mo、B、Ca、Mgなどの選択元素を含有してもよい。これらの選択元素を含有する場合の好適な範囲は次の通りである。
[V:1%以下(0%を含まない)、Nb:1%以下(0%を含まない)、およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素]
V、Nb、Moは、いずれも強度を一段と向上させる元素であり、これらの元素を単独、または2種以上添加することができる。特に、VとNbは、鋼中のCを固定して炭化物を形成することで、強度を高める元素である。Moは、めっき付着性を損なわずに、鋼中に固溶して強度を高める元素である。こうした効果は、少量添加することで発揮されるが、好ましくは、いずれかの元素を0.003%以上含有するのがよい。より好ましくは、いずれかの元素を0.01%以上含有するのがよく、更に好ましくは、いずれかの元素を0.02%以上含有するのがよい。しかし過剰に含有させるとコスト高となる他、加工性が低下する。従って上記元素の上限は、いずれの元素も1%とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.5%以下である。なお、2種以上含有させる場合は、合計で1%以下とするのがよい。
[B:0.1%以下(0%を含まない)]
B(ホウ素)は、焼入れ性を高める元素であり、また溶接性も向上させる元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、0.0002%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.0003%以上であり、更に好ましくは0.0004%以上である。しかし過剰に含有させても添加効果は飽和し、しかも延性が低下して加工性が悪くなる。従ってBは0.1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.01%以下であり、更に好ましくは0.001%以下である。
前述したV、Nb、Mo、Bは、SiやMnが素地鋼板の表面で酸化するのを抑えてめっき付着性を向上させる作用を有している元素であり、しかも粒界に偏析して亜鉛めっき層の合金化が均一に進行するように有効に作用して、合金化ムラやめっき不良を低減させる作用を有している。
[Ca:0.005%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.01%以下(0%を含まない)]
CaとMgは、鋼中の介在物の形態を球状化することにより延性を高め、加工性を向上させる作用を有している。また、CaとMgは、鋼を清浄化する作用を有しているため、CaやMgを含有すると溶融亜鉛めっき層の合金化が均一に進行し易くなる。こうした効果を有効に発揮させるには、CaとMgは、夫々、0.0005%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.001%以上である。しかし過剰に含有すると、鋼中の介在物量が増加するため、延性が劣化し、加工性が低下する。従ってCaは0.005%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.003%以下である。Mgは0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.005%以下であり、更に好ましくは0.003%以下である。
本発明のGA鋼板の成分組成は、上記の通りであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の元素を含有してもよい。
上記成分組成を満足する本発明のGA鋼板は、引張強度が590〜1470MPa級になり、強度と延性のバランスが良好になる。
本発明のGA鋼板は、3面積%以上の残留γが生成しているTRIP鋼板であってもよい。残留γを含有することで、加工性が向上する。また、残留γが粒界に存在することによって、粒界を通してFeとZnが急激に反応するのが抑制されるため、めっき不良や合金化ムラの発生が低減され、鋼板の外観が良好になる。また、残留γが分布していることにより、腐食時に腐食の起点になるアノードサイトが分散するため、腐食時には表面に微細な凹凸が形成され、マクロ的に見ると全面腐食が発生することとなる。しかし、表面に微細な凹凸が均一に形成されることにより、局所的に腐食して孔が空く孔食は発生しない。特に、薄鋼板の場合は、孔食が発生して鋼板が貫通することは工業的に大変危険であるので、孔食が発生するよりも、均一に全面腐食する方が望まれている。
こうした効果を有効に発揮させるには、残留γは金属組織全体に対して3面積%以上含有していることが好ましい。この残留γは、できるだけ微細に分散していることが推奨される。
上記残留γ結晶粒は、平均軸比(長軸/短軸)が5以上を満たすラス状で分散しているのが好ましい。残留γは粒界に存在するため、亜鉛と鉄が粒界を通して急激に反応し、外観ムラの原因となる反応を抑制し、合金化ムラやめっき不良を低減させる効果があるからである。こうした効果は、残留γの体積率が同じ場合は、粗大な粒で存在するよりも反応を均一に進行させるために微細に分散している方が一段と発揮される。
残留γ結晶粒の平均軸比は、例えば、EPSP検出器を備えたFE−SEMを用いて金属組織を観測すればよい。
残留γ以外の金属組織は、主としてベイニティックフェライトであり、更にベイナイトおよび/またはマルテンサイトを含有していてもよい。
残留γ以外の金属組織は、金属組織全体に占めるベイニティックフェライトが、70面積%以上であればよい。但し、混合組織に占めるベイニティックフェライトの分率や、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトの各分率は、鋼板に要求される強度と伸びのバランスに応じて決定すればよく、特に限定されない。
ベイニティックフェライトが70面積%以上で、残留γを3面積%以上含有する鋼板を製造するには、例えば、上記成分組成を満足するスラブを熱間圧延した後に酸洗し、必要に応じて冷間圧延した後、オーステナイト単層域(この温度を以下「T1」とする)に加熱・保持し、平均冷却速度を10℃/秒以上として300〜600℃の温度域(この温度を以下「To」とする)で30秒間以上保持すればよい。なお、溶融亜鉛めっきライン等において溶融亜鉛めっき等を行なう場合は、溶融亜鉛めっきを上記Toの温度域で行えばよい。以下、この製造条件について具体的に説明する。
熱間圧延の条件は、例えば、加熱温度を約1100〜1300℃、仕上げ圧延温度を約800〜950℃、巻き取り温度を約700℃以下とすることが好ましい。
加熱温度を約1100〜1300℃とするのは、仕上げ圧延温度を確保すると共に、オーステナイト結晶粒の粗大化を防止するためである。仕上げ圧延温度を約800〜950℃とするのは、加工性を阻害する集合組織が形成されないようにするためである。巻き取り温度を約700℃以下とするのは、これを超える高温で巻き取ると素地鋼板の表面に生成するスケールが厚くなり過ぎるため、酸洗性が劣化するからである。なお、仕上げ圧延後は、パーライトの生成を抑制するために、平均冷却速度を約30〜120℃/秒の範囲に制御することが好ましい。
熱間圧延後は、加工性を向上させるために、必要に応じて冷間圧延を行なってもよい。冷間圧延時の冷延率は、30%以上とすることが好ましい。冷延率を30%未満とすると、熱間圧延時に素地鋼板の厚みを所望の製品厚みまで圧延しなければならないため、生産性が悪くなる。なお、冷間圧延を行なう前には、熱延鋼板を酸洗して表面に生成したスケールを除去すればよい。
次に、熱延鋼板または冷延鋼板を、連続式溶融亜鉛めっきラインにて以下の熱処理を行なう。鋼板をオーステナイト単層域(T1)にて加熱・保持し、続いて冷却する。T1での保持時間は、鋼板の金属組織をオーステナイト化できる範囲で設定すればよく、例えば、10秒以上である。しかし保持時間が長くなり過ぎると生産性が悪くなるので、保持時間は1200秒以下とすることが好ましい。より好ましくは600秒以下である。
T1で保持した後は、平均冷却速度を10℃/秒以上として300〜600℃の温度域(To)で30秒間以上保持すればよい。Toで30秒間以上保持することで、オーステナイトを微細分散でき、所望の残留γを生成させることができる。特に、残留γを微細に、しかも平均軸比が大きいラス状にするには、保持温度Toを低温側に設定すればよい。なお、T1からToまでの冷却速度が小さいとパーライト変態が起こるため、T1からToまでの平均冷却速度は10℃/秒以上とするのがよい。
次に、熱処理した鋼板に、溶融亜鉛めっき処理と合金化処理を施す。
溶融亜鉛めっき処理は、上記Toの温度域で行えばよい。具体的には、めっき浴温は、管理のし易さや、その後の合金化処理条件との関係で、約400〜500℃とすることが好ましい。より好ましくは約440〜480℃である。めっき浴への浸漬時間は、1〜5秒とすることが好ましい。めっき浴の組成は特に限定されないが、例えば、有効Al濃度を0.07〜0.13質量%に調整しておくことが好ましい。なお、めっき浴へ浸漬する前の鋼板は、めっき付着性を向上させるために、鋼板をめっき浴温程度に加熱しておくことが推奨される。
溶融亜鉛めっきを施した鋼板は、更に合金化処理を施す。合金化処理は、溶融亜鉛めっき後の鋼板の温度を上記Toの温度域に保持し、1〜30秒以内に行うのがよい。
合金化処理は、加熱炉や直火、赤外線加熱炉などを用いて行えばよい。加熱方法も特に限定されず、例えば、ガス加熱やインダクションヒーター加熱(高周波誘導加熱装置による加熱)など慣用の手段を採用できる。
合金化処理条件は、所望の特性に応じて決定すればよく、例えば、合金化処理温度は450〜550℃程度、合金化処理時間は5〜30秒程度とすればよい。
本発明のGA鋼板は、自動車用強度部品、例えば、フロントやリア部のサイドメンバやクラッシュボックスなどの衝突部品をはじめ、センターピラーレインフォースなどのピラー類、ルーフレールレインフォース、サイドシル、フロアメンバー、キック部などの車体構成部品に使用できる。
また、上記GA鋼板には、各種塗装や塗装下地処理(例えば、リン酸塩処理などの化成処理)、有機皮膜処理(例えば、フィルムラミネートなどの有機皮膜の形成)などを行なってもよい。
塗料には、公知の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂などを使用できる。耐食性の観点から、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂が好ましい。前記樹脂とともに、硬化剤を使用しても良い。また塗料は、公知の添加剤、例えば、着色用顔料、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤などを含有していても良い。
本発明において塗料形態に特に限定はなく、あらゆる形態の塗料、例えば、溶剤系塗料、水系塗料、水分散型塗料、粉体塗料、電着塗料などを使用できる。また塗装方法にも特に限定にはなく、ディッピング法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法、電着塗装法などを使用できる。被覆層(めっき層、有機皮膜、化成処理皮膜、塗膜など)の厚みは、用途に応じて適宜設定すれば良い。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
下記実験例1では金属組織が上記(a)で規定する要件を満足するDP鋼板を狙って製造し、下記実験例2では金属組織が上記(b)で規定する要件を満足するTRIP鋼板を狙って製造した。
[実験例1]
下記表1に示す成分組成(残部は鉄および不可避不純物)の溶鋼を鋳造し、得られたスラブを1180℃に加熱し、仕上げ温度を890〜900℃として熱間圧延を行なった。熱間圧延後、平均冷却速度を50℃/秒として500℃まで冷却した後、この温度で巻取った。次いで、酸洗を行い、冷間圧延して厚さ1.2mmの冷延鋼板を製造した。冷延率は30%である。
得られた冷延鋼板を100×250mmに加工し、溶融めっきシミュレータを用いて焼鈍、還元処理し、続いて溶融亜鉛めっき、および合金化処理を行い、GA鋼板を得た。具体的には、冷延鋼板の表面を酸洗して清浄化した後、800℃で30秒間の焼鈍を行い、H2を20%含有する還元性雰囲気中で860℃で45秒間の還元処理を行なった。還元処理した冷延鋼板を、Alを0.13%含有し、浴温が460℃の溶融亜鉛めっき浴に2秒間浸漬して溶融亜鉛めっきを行なった。
溶融亜鉛めっき後の合金化処理は、めっき処理直後に、めっきシミュレータ内で赤外線加熱炉を用いて行った。合金化温度は550℃とし、合金化時間は15秒とした。
得られたGA鋼板の金属組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で観察した。その結果、鋼板の金属組織は、フェライトとマルテンサイトの混合組織を主体(全組織に対する面積率で70%以上)であった。なお、残留γの生成量は、後記の実験例2に示した方法で定量した。その結果、残留γ量は、1面積%以下であった(表には示さず)。
次に、得られたGA鋼板について、めっき性と耐パウダリング性を次の手順で評価した。
《めっき性の評価》
不めっき部の有無と、合金化ムラ発生の有無を目視で観察してめっき性を評価した。不めっき部の発生状況と、合金化ムラの発生状況は、面積率に基づいて次の基準で評価し、評価結果を下記表2に示す。本発明では、評価3〜評価5を合格とする。
(評価基準)
評価5:不めっき部無し、合金化ムラ無し。
評価4:不めっき部無し、合金化ムラ微量発生(面積率で5%未満)。
評価3:不めっき部無し、合金化ムラ一部発生(面積率で5%以上10%未満)。
評価2:不めっき部無し、合金化ムラ発生(面積率で10%以上)。
評価1:不めっき部有り、合金化ムラ発生(面積率で10%以上)。
《耐パウダリング性の評価》
曲げ角が60°、曲げ半径が1mmのV型パンチを用いてV曲げ試験を行い、曲げ部の内側におけるめっき剥離量を測定し、耐パウダリング性を次の基準で評価した。評価結果を下記表2に示す。本発明では、評価◎と評価○を合格とする。
(評価基準)
評価◎:めっき剥離量が6mg以下。
評価○:めっき剥離量が6mgを超え、10mg以下。
評価×:めっき剥離量が10mgを超える。
下記表1、表2から次のように考察できる。No.1〜4は、本発明の要件、特に[Cu]/[Ni]の値が本発明で規定する要件を満足していないため、めっき性が悪く、耐パウダリング性も劣っている。特にNo.4は、Niを含有せず、Cuのみを含有しているため、鋼板表面に微小な疵などが発生し、表面性状に劣るため、めっき付着にムラが生じた。そのため、No.2やNo.3よりもCuの添加量が多いにもかかわらず、めっき性は悪くなった。一方、No.5〜17は、本発明で規定している要件を満足しているため、めっき性が良好で、耐パウダリング性にも優れている。
Figure 0005128619
Figure 0005128619
[実験例2]
下記表3に示す成分組成(残部は鉄および不可避不純物)の溶鋼を鋳造し、得られたスラブを熱間圧延して板厚3.2mmの熱延鋼板を得た後、酸洗して表面スケールを除去し、冷間圧延して板厚1.2mmの冷延鋼板を得た。
熱間圧延は、具体的には、開始温度1150〜1200℃で30分間保持した後、仕上温度を850℃として熱間圧延を行ない、次いで平均冷却速度50℃/秒で冷却して550℃で巻取り、熱延鋼板を得た。冷間圧延は、具体的には、冷延率を40%として行なった。
得られた冷延鋼板を100×250mmに加工し、更に溶融めっきシミュレータを用いて連続焼鈍し、続いて溶融亜鉛めっき、および合金化処理を行い、GA鋼板を得た。
連続焼鈍は、冷延鋼板をオーステナイト単層域(この温度をT1とし、下記表4に示す。)で180秒間保持した後、下記表4に示す温度Toまで平均冷却速度を50℃/秒として冷却して行なった。なお、連続焼鈍は、H2を20%含有する還元性雰囲気中で行なった。
溶融亜鉛めっきは、連続焼鈍した冷延鋼板を、Alを0.13%含有し、浴温が460℃の溶融亜鉛めっき浴に2秒間浸漬して行なった。
溶融亜鉛めっき後の合金化処理は、めっき処理直後に、溶融めっきシミュレータ内で赤外線加熱炉を用いて行った。合金化温度は550℃とし、合金化時間は15秒とした。
得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の金属組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で観察した。その結果、鋼板の金属組織は、ベイニティックフェライトが主体(全組織に対する面積率で70%以上)であり、残留γが生成していた。残留γの生成量は、後述する方法で測定した。また、残留γ結晶粒の平均軸比(長軸/短軸)は、任意に選択される1視野内に観察される残留γの軸比を測定して平均値を求めた。残留γの生成量と平均軸比に基づいて下記基準で評価した。評価結果を下記表4に示す。本発明では、評価◎と評価○を合格とする。
(評価基準)
評価◎:残留γの生成量が3面積%以上で、平均軸比が5以上。
評価○:残留γの生成量が3面積%以上で、平均軸比が1以上5未満。
評価△:残留γの生成量が1面積%以上、3面積%未満。
評価×:残留γの生成量が1面積%未満。
残留γの生成量は、EBSP(Electron Back Scatter diffraction Pattern)検出器を備えたFE−SEMを用い、FCC(面心立方格子)として観察される領域として測定した。EBSPは、試料表面に電子線を入射させてこのときに発生する反射電子から得られた菊池パターンを解析することにより電子線入射位置の結晶方位を決定する装置であり、電子線を試料表面に2次元で走査させ、所定のピッチごとに結晶方位を測定すれば、試料表面での方位分布を測定できる。
測定手順の一例は、次の通りである。板厚に対して1/4の位置で圧延面と平行な面における任意の測定面積(約50×50μm、測定間隔は0.1μm)を測定対象とする。なお、当該測定面までの研磨は、残留γの変態を防ぐために電解研磨によって行った。
次に、上記EBSP検出器を備えたFE−SEMを用い、EBSP画像を高感度カメラで撮影し、コンピューターに画像として取り込み、画像解析を行い、既知の結晶系[残留γの場合はFCC(面心立方格子)]を用いたシミュレーションによるパターンと比較して決定したFCC相をカラーマップした。このようにしてマッピングされた領域の面積率を算出し、これを残留γの面積率とした。なお、前記解析に係わるハードウェアおよびソフトとしては、TexSEM Laboratorieses Inc.のOIM(Orientation Imaging Microscooy)を用いた。
また、得られたGA鋼板のめっき性と耐パウダリング性を上記実験例1と同じ手順で評価した。評価結果を下記表4に示す。また、得られたGA鋼板の耐食性を次の手順で評価した。
《耐食性の評価》
GA鋼板から150mm×50mmの試験片を切り取り、乾湿繰り返しの腐食サイクル試験を行った。腐食サイクル試験は、8時間を1サイクルとし、具体的には、5%塩水噴霧を2時間行った後、60℃で4時間乾燥し、95%RH湿潤で2時間保持する工程を1サイクルとした。本実験例では、このサイクルを45回繰返して試験を行った。試験後にさびを除去し、試験片の質量を測定し、腐食による質量の減量を算出した。評価基準は次の通りであり、結果を下記表4に示す。本発明では、評価2〜評価5を合格とする。
(評価基準)
評価5:腐食減量が40mg/cm2以下。
評価4:腐食減量が40mg/cm2を超え、50mg/cm2以下。
評価3:腐食減量が50mg/cm2を超え、60mg/cm2以下。
評価2:腐食減量が60mg/cm2を超え、80mg/cm2以下。
評価1:腐食減量が80mg/cm2を超える。
下記表3、表4から次のように考察できる。No.21〜24,33は、本発明の要件、特に[Cu]/[Ni]の値が本発明で規定する要件を満足していないため、めっき性が悪く、耐パウダリング性も劣っている。特にNo.24は、Niを含有せず、Cuのみを含有しているため、鋼板表面に微小な疵などが発生し、表面性状に劣るため、めっき付着にムラが生じた。そのため、No.22やNo.23よりもCuの添加量が多いにもかかわらず、めっき性は悪くなった。また、No.21〜24は、腐食減量が60mg/cm2を超えており、耐食性も悪くなっている。一方、No.25〜32,34〜39は、本発明で規定している要件を満足しているため、めっき性が良好で、耐パウダリング性にも優れている。また、腐食減量を60mg/cm2以下に抑えることができており、耐食性にも優れている。
Figure 0005128619
Figure 0005128619

Claims (4)

  1. C :0.02〜0.25%(質量%の意味。以下同じ。)、
    Si:0.5〜3%、
    Mn:1〜4%、
    Cr:0.03〜1%、
    Al:1.5%以下(0%を含まない)、
    P :0.03%以下(0%を含まない)、
    S :0.03%以下(0%を含まない)、
    Ti:0.003〜1%を含有し、
    更に、
    Cu:0.25〜5.0%および、
    Ni:0.05〜1.0%を含有すると共に、CuとNiの含有量が下記(1)式を満足し、
    残部が鉄および不可避不純物からなる鋼を熱間圧延して得られる素地鋼板に、溶融亜鉛めっきを施してから、めっき層を合金化した合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、
    金属組織が、フェライトとマルテンサイトの合計が70面積%以上で、残留オーステナイトが1面積%以下(0面積%を含む)に抑制されていることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
    [Cu]/[Ni]≧ ・・・(1)
    [(1)式中、[ ]は元素の含有量(質量%)を示す。]
  2. 更に、他の元素として、
    V :1%以下(0%を含まない)、
    Nb:1%以下(0%を含まない)、および
    Mo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 更に、他の元素として、
    B :0.1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 更に、他の元素として、
    Ca:0.005%以下(0%を含まない)および/または
    Mg:0.01%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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