JP2023146546A - 船速測定装置および船速測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】対水船速をより正確に測定することが可能な船速測定装置および船速測定方法を提供する。【解決手段】船速測定装置1は、超音波を水中に送波するとともに超音波の反射波を受波する送受波器20と、送受波器20から出力される受信信号に基づいて、送受波器20が設置された船の対水船速を算出する信号処理回路110と、を備える。信号処理回路110は、受信信号に基づいて、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度を特定し、当該対象深度に対する進行方向の対水船速を船の対水船速として取得する。【選択図】図1
Description
本発明は、水中に音波を送波し、その反射波に基づいて、船速を測定する船速測定装置および船速測定方法に関する。
従来、水上を進む船の速度を測定する船速測定装置が知られている。この種の船速測定装置では、たとえば、所定の俯角で船の進行方向に超音波が送波され、その反射波の周波数に基づいて船速が算出される。反射波の周波数は、船速に応じたドップラー効果により、送波時の周波数から変化する。したがって、この周波数の変化から、水中に対する船速(対水船速)を算出できる。
対水船速をより正確に計測するための測定方法として、水深方向における流速の変化率を求める方法がある。この方法では、送波時の超音波の周波数と、当該超音波の水中からの反射波の周波数との差分に基づいて、複数の深度に対する流速が算出され、さらに、これら流速の変化率が算出される。そして、この変化率が所定の閾値以下となる深度の流速が船の対水速度として算出される。
以下の特許文献1には、上記と同様の船速測定方法が記載されている。
一般に、水中には、船の進行に伴う伴流等の影響によって流れが生じる。他方、対水船速は、このような外乱の影響を受けない水層に対する速度として計測されることが好ましい。これにより、対水船速を用いた船の燃費計算等を正確に行うことができる。
上記の測定方法では、複数の深度に対してそれぞれ算出された流速のうち、深度間における流速の変化率が所定の閾値以下となる深度の流速が対水速度として算出される。しかし、この測定方法では、この深度が伴流等の外乱の影響を受けていないかについては判定されていない。このため、この測定方法では、正確な対水船速を測定できない場合が想定され得る。
かかる課題に鑑み、本発明は、対水船速をより正確に測定することが可能な船速測定装置および船速測定方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、船速測定装置に関する。本態様に係る船速測定装置は、超音波を水中に送波するとともに前記超音波の反射波を受波する送受波器と、前記送受波器から出力される受信信号に基づいて、前記送受波器が設置された船の対水船速を算出する信号処理回路と、を備える。前記信号処理回路は、前記受信信号に基づいて、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度を特定し、前記対象深度に対する進行方向の対水船速を前記船の対水船速として取得する。
本態様に係る船速測定装置によれば、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度に対して、船の進行方向の対水船速が取得される。水の層が伴流等の外乱の影響を受けていない場合、その層に対する上下方向の対水船速はゼロになる筈である。よって、上記のように、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度に対して船の進行方向の対水船速を取得することにより、伴流等の外乱の影響を受けていない水の層に対する対水船速を取得できる。よって、上記構成によれば、対水船速をより正確に測定することができる。
本態様に係る船速測定装置において、前記信号処理回路は、深度ごとに前記上下方向の対水船速の所定時間における平均値を算出し、算出した前記平均値が実質的にゼロである深度を前記対象深度として特定するよう構成され得る。
この構成によれば、一時的な上昇流や、波またはうねりによる船の上下動等が生じても、これらが平均化されることで、これらの要因により平均値に大きな変動が生じることが抑制される。よって、この平均値が実質的にゼロである深度に対して船の対水船速を取得することで、伴流等の外乱の影響を受けない水の層に対する対水船速を適正に取得することができる。
この場合、前記信号処理回路は、前記平均値が実質的にゼロとなる最小の深度付近の範囲から前記対象深度を特定するよう構成され得る。
深度が大きくなるほど、受信信号のS/Nが低下するため、上下方向および進行方向の対水深度の算出精度が低下する。これに対し、上記構成によれば、平均値が実質的にゼロとなる最小の深度付近の範囲から対象深度が特定されるため、なるべく深度が小さい範囲において対象深度が特定される。よって、S/Nが高く維持された受信信号から上下方向および進行方向の対水深度を精度良く算出できる。
この場合、前記信号処理回路は、前記平均値が実質的にゼロとなる最小の深度を前記対象深度に特定するよう構成され得る。
この構成によれば、平均値が実質的にゼロとなる最小の深度が対象深度に特定されるため、平均値が実質的にゼロとなる範囲の中では、対象深度における受信信号のS/N比が最も高く維持される。よって、上下方向および進行方向の対水深度を、より精度良く算出することができる。
本態様に係る船速測定装置において、前記信号処理回路は、前記対象深度に対する前記進行方向の対水船速の所定時間における平均値を前記船の対水船速として取得するよう構成され得る。
この構成によれば、船の進行方向における対水船速の所定時間分の平均値が船の対水船速として取得される。よって、他船からの伴流等の外乱が一時的に生じた場合も、船の対水船速を安定的に取得できる。
本態様に係る船速測定装置において、前記送受波器は、互いに異なる方向に向けられた複数の超音波振動子を備え、前記信号処理回路は、前記複数の超音波振動子からそれぞれ出力される前記受信信号に基づいて、前記対象深度の特定および前記船の対水船速の取得を行うよう構成され得る。
この構成によれば、複数の超音波振動子からそれぞれ出力される受信信号から、進行方向および上下方向の船速をそれぞれ算出できる。よって、たとえば、各受信信号に基づく船速を平均化することにより、船の揺動による影響が抑制された船速を安定的に取得できる。
本発明の第2の態様は、船速測定方法に関する。本態様に係る船速測定方法は、超音波を水中に送波するとともに前記超音波の反射波を受波し、前記反射波の受信信号に基づいて、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度を特定し、前記対象深度に対する進行方向の対水船速を前記船の対水船速として取得する。
本態様に係る船速測定方法によれば、第1の態様と同様の効果が奏される。
以上のとおり、本発明によれば、対水船速をより正確に測定することが可能な船速測定装置および船速測定方法を提供することができる。
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る、船速測定装置の使用状態を示す模式図である。
図1において、X-Y平面は水平面であり、Z軸正方向は鉛直下方向である。船S1の進行方向はY軸正方向である。便宜上、図1には、船速測定装置の構成のうち、送受波器20のみが図示されている。
送受波器20は、船S1の船底に設置される。図1に示す例では、船S1の中央からやや後方よりの船底に送受波器20が設置されている。送受波器20から、互いに異なる方向に送信ビームB1、B2、B3が送波される。送信ビームB1、B2、B3は、超音波である。送信ビームB1、B2、B3は、狭い範囲において、ほぼ円錐形状に広がる。水平面に対する送信ビームB1、B2、B3の俯角φは、互いに同じである。俯角φは、たとえば60度程度である。ただし、俯角φは、60度に限られるものではない。また、送信ビームB1、B2、B3の俯角φが互いに異なっていてもよい。
図2は、図1の使用状態を船S1の上方から見た図である。
図2に示すように、送信ビームB1は、平面視において、船首方向に送波される。送信ビームB2、B3は、平面視において、船尾側に向けて送波される。平面視において、隣り合う送信ビーム間の水平角θは均一である。すなわち、ここでは、隣り合う送信ビーム間の水平角θは、120度である。ただし、隣り合う送信ビーム間の水平角θは互いに同じでなくてもよい。
図1に戻り、送受波器20から送波された送信ビームB1、B2、B3は、プランクトン等の水中の浮遊物によって反射され、その反射波が、送受波器20で受波される。送受波器20からは、各反射波の受信信号が出力される。これらの受信信号が、船S1の操舵室等に設置された制御装置10によって処理されて、船S1の対水船速が算出される。
図3は、船速測定装置1の回路部の構成を示す図である。
船速測定装置1は、制御装置10と、送受波器20とを備える。送受波器20は、3つの超音波振動子201、202、203を備える。これら3つの超音波振動子201、202、203は、互いに異なる方向に向けられている。これにより、超音波振動子201、202、203から図1の送信ビームB1、B2、B3がそれぞれ送波され、その反射波が超音波振動子201、202、203によって受波される。
制御装置10は、信号処理回路110と、送信信号生成回路120と、第1~第3送信回路131~133と、第1~第3切替回路141~143と、第1~第3受信回路151~153と、A/D変換回路161~163と、第1~第3尾引き信号除去回路171~173とを備える。
信号処理回路110は、CPU等の演算処理回路とメモリとを備え、メモリに保持されたプログラムに従って、所定の機能を実行する。信号処理回路110は、FPGA等の演算処理回路を含んでいてもよい。送信信号生成回路120は、信号処理回路110からの制御により、超音波振動子201、202、203をそれぞれ駆動するための送信信号を生成して、第1~第3送信回路131~133に出力する。それぞれの送信信号は、所定周波数の正弦波信号である。
第1~第3送信回路131~133は、入力されたこれらの送信信号を増幅して第1~第3切替回路141~143にそれぞれ出力する。第1~第3切替回路141~143は、入力されたこれらの送信信号を、超音波振動子201~203にそれぞれ出力する。これにより、超音波振動子201~203は、所定周波数の超音波(送信ビームB1~B3)をそれぞれ水中に送波する。その後、超音波振動子201~203は、これら超音波の反射波を受波すると、これら反射波に基づく受信信号を、第1~第3切替回路141~143に出力する。
第1~第3切替回路141~143は、超音波振動子201~203から入力された受信信号を、第1~第3受信回路151~153にそれぞれ出力する。第1~第3受信回路151~153は、入力された受信信号を増幅するとともに、反射波の周波数帯域を含む所定帯域の受信信号を抽出して、A/D変換回路161~163にそれぞれ出力する。A/D変換回路161~163は、入力されたこれらの受信信号を所定のサンプリング周期でそれぞれサンプリングしてデジタル信号に変換する。
第1~第3尾引き信号除去回路171~173は、A/D変換回路161~163からそれぞれ入力された受信信号から尾引き信号を除去する。ここで、尾引き信号とは、超音波振動子201~203における送波の残響により受信信号に重畳されるノイズのことである。すなわち、尾引き信号は、送受波器20内での送信信号の反射および超音波振動子201~203の帯域制限された周波数特性等を要因として、超音波が送波された直後にリンギングのように現れる不要な信号のことである。
このように、尾引き信号は、超音波の送波の直後にリンギングのように現れるため、超音波の反射波を受波する期間、すなわち、反射波に基づく受信信号の出現期間の冒頭付近に重なることになる。第1~第3尾引き信号除去回路171~173は、このように受信信号に重畳する尾引き信号を受信信号から除去する。
第1~第3尾引き信号除去回路171~173は、それぞれ、ローパスフィルタ171a~173aと、加算器171b~173bとを備える。ローパスフィルタ171a~173aは、受信信号から尾引き信号の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分の極性を反転させて加算器171b~173bに入力する。加算器171b~173bは、ローパスフィルタ171a~173aから入力された周波数成分を受信信号に加算する。これにより、受信信号から周波数成分が除去され、尾引き信号が除去された受信信号が得られる。尾引き信号が除去された受信信号は、順次、信号処理回路110へと出力され、信号処理回路110内のメモリに保持される。
なお、第1~第3尾引き信号除去回路171~173のより詳細な構成および動作については、特許第4828120号公報の記載が参照により取り込まれ得る。
信号処理回路110は、第1~第3尾引き信号除去回路171~173から入力された受信信号に基づき、複数の深度について、船S1の対水船速を算出する。より詳細には、信号処理回路110は、これら3つの受信信号ごとに、船S1の進行方向における対水船速と、船S1の上下方向(鉛直方向)における対水船速とを、それぞれ深度ごとに算出する。深度は、時間軸上における受信信号の時刻(送波からその時刻までの所要時間)によって特定され得る。
これらの対水船速は、送信信号と各深度における受信信号との間の周波数差から、ドップラー効果に基づき算出される。
たとえば、第1尾引き信号除去回路171から入力された受信信号、すなわち、図1の送信ビームB1に基づく受信信号については、送信信号と各深度における受信信号との周波数差から、ドップラー効果に基づき送信ビームB1の方向における対水船速が算出される。そして、この対水船速から、水平角θおよび俯角φに基づき、船S1の進行方向における各深度の対水船速と、船S1の上下方向における各深度の対水船速が算出される。
図1の送信ビームB2、B3に基づく受信信号については、上記と同様、送信ビームB2、B3の方向における各深度の対水船速が算出され、この対水船速から、水平角θおよび俯角φに基づき、船S1の進行方向における各深度の対水船速と、船S1の上下方向における各深度の対水船速が算出される。
そして、信号処理回路110は、送信ビームB1~B3に基づく進行方向の3つの対水船速を深度ごとに平均化して、進行方向の対水船速を深度ごとに算出し、送信ビームB1~B3に基づく上下方向の3つの対水船速を深度ごとに平均化して、上下方向の対水船速を深度ごとに算出する。
なお、後述する船S1の左右方向(X軸方向)の対水船速も、上記と同様、各送信ビームの方向における各深度の対水船速から、水平角θおよび俯角φに基づき算出され、さらに、これらを深度ごとに平均化することで算出される。
信号処理回路110は、こうして算出した各深度の進行方向および上下方向の対水船速から、船S1の対水船速を決定する。より詳細には、信号処理回路110は、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度を特定し、この対象深度に対する進行方向の対水船速を船の対水船速に決定する。
すなわち、水の層が伴流等の外乱の影響を受けていない場合、その層に対する上下方向の対水船速は実質的にゼロになる筈である。よって、上記のように、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度に対して船の進行方向の対水船速を取得することにより、伴流等の外乱の影響を受けていない水の層に対する対水船速を取得できる。これにより、船S1の進行方向における対水船速を正確に測定することができる。
信号処理回路110は、こうして測定した船S1の進行方向における対水船速を、表示装置30に表示させる。表示装置30は、たとえば、船S1の操舵室に設置されている。
図4は、上記構成において、船の進行方向における対水船速(以下、「Y船速」と称する)、船の上下方向における対水船速(以下、「Z船速」と称する)および船の左右方向における対水船速(以下、「X船速」と称する)を深度ごとに実際に測定した測定結果を示すグラフである。
ここでは、船S1が直進している場合の測定結果が示されている。また、グラフには、この測定時点から所定時間前までの期間に算出された各深度のY船速、Z船速およびX船速をそれぞれ平均化した平均値がプロットされている。本測定では、平均化のための上記所定時間は、15分に設定した。
図4のグラフを参照すると、深度が増加するに伴い、Z船速が次第に0に近づいていき、Y船速が次第に17キロノットに収束していく。したがって、深度の増加に伴い、水の層に対する外乱の影響が減少し、所定深度より深くなると、外乱の影響が殆ど無くなって水の層は略静止した状態になることが推測される。また、Z船速が実質的に0である範囲では、Y船速は、外乱の影響がない水の層に対する本来の対水船速である17キロノットに収束した状態になることが推測される。
図5は、深度とZ船速(平均値)との関係を模式的に示すグラフである。
図5のグラフにおいて、深度が0~17mまでの範囲は図4のグラフが反映され、深度が17m以降の範囲は、図4のグラフの5~17mの範囲の減少傾向と同様の減少傾向が反映されている。
ここで、Z船速が実質的にゼロであるか否かについては、Z船速を閾値Vthと比較して判定され得る。この閾値Vthは、ゼロ近傍の値に設定されればよい。たとえば、閾値Vthは、0に対して±0.1~±0.3程度に設定され得る。この閾値Vthの範囲にZ船速が含まれる場合に、Z船速が実質的にゼロであると判定される。図5の例では、Z船速が閾値Vthに含まれる最小の深度D0は、41.5m程度である。したがって、この深度D0以上の範囲W0では、略一律に、Z船速が実質的にゼロとなる。
よって、この範囲W0に含まれる深度の何れかについて算出されたY船速を船S1のY船速として選択することにより、外乱の影響のない水の層に対する対水船速を取得できる。
ただし、深度が大きくなるほど、受信信号のS/Nが低下する。このため、範囲W0のうち深度D0から大きく離れた深度では、受信信号のS/Nが低下し、Y船速およびZ船速を精度良く算出することが困難になる。したがって、Y船速およびZ船速を算出する対象の深度の範囲は、Z船速が実質的にゼロである最小の深度D0付近の範囲W1に設定されることが好ましく、深度D0に設定されることがさらに好ましい。範囲W1は、たとえば、数mから10m程度に設定され得る。
なお、図4のグラフを参照すると、X船速も深度の増加に伴いゼロに収束している。このため、X船速が実質的にゼロである範囲に含まれる深度について算出されたY船速を、船S1の対水船速として取得する方法も検討され得る。
しかし、図4のグラフにおいてX船速がゼロに収束しているのは、船S1が直進していることによるものであって、船S1が左右に旋回した場合や、これにより船S1にドリフトが生じた場合は、各深度のX船速は、0から乖離する。このように、各深度のX船速は、船S1の進行状況に応じて動的に変化し得るため、X船速が実質的にゼロである深度の範囲に含まれる深度について算出されたY船速を、船S1の対水船速に用いることは、困難であると推定され得る。
図6は、信号処理回路110により実行される船S1の対水船速の測定処理を示すフローチャートである。
送受波器20から超音波(送信ビームB1~B3)が送波されると、信号処理回路110は、第1~第3尾引き信号除去回路171~173からそれぞれ入力された受信信号に基づいて、上記のように、深度ごとにY船速およびZ船速を算出し、算出した各深度のY船速およびZ船速をメモリに記憶する(S101)。次に、信号処理回路110は、変数nに1を設定し(S102)、深度DnにおけるZ船速の所定時間の平均値を算出する(S103)。
ここで、深度Dnは、変数nの増加に伴い所定距離(たとえば、0.5m)ずつ増加する。深度Dnの初期値(変数n=1)は、必ずしも、ゼロに対して所定距離(たとえば、0.5m)を加算した値でなくてもよく、3mまたは5m等の固定の値であってもよい。ステップS103において、Z船速の平均値は、図4の場合と同様、現在の測定時点から所定時間前までの期間に算出された当該深度DnのZ船速を平均化して算出される。
次に、信号処理回路110は、算出したZ船速の平均値が実質的にゼロであるか否かを判定する(S104)。ここでは、図5の場合と同様、Z船速がゼロから閾値Vthの範囲に含まれるか否かが判定される。算出したZ船速の平均値が実質的にゼロでない場合(S104:NO)、信号処理回路110は、変数nに1を加算し(S107)、処理をステップS103に戻す。これにより、次の深度Dnについて、ステップS103以降の処理が行われる。こうして、Z船速の平均値が実質的にゼロとなるまで、処理対象の深度Dnが増加方向に変更されながら、ステップS103、S104に処理が繰り返し実行される。
その後、Z船速の平均値が実質的にゼロになると(S104:YES)、信号処理回路110は、ステップS101においてメモリに記憶した各深度のY船速のうち、現在の深度Dnに対応するY船速を、船S1の進行方向の対水船速として決定する(S105)。そして、信号処理回路110は、対水船速の測定が終了したか否かを判定し(S106)、終了していなければ(S106:NO)、処理をステップS101に戻して、次の超音波(送信ビームB1~B3)の送波に対し同様の処理を実行する。
こうして、信号処理回路110は、超音波(送信ビームB1~B3)を送波するごとに、ステップS101~S105、S107の処理を繰り返し実行し、船S1の進行方向の対水船速を取得する。信号処理回路110は、それぞれの測定時点で取得した船S1の対水船速を、随時、表示装置30に表示させる。その後、対水船速の測定動作が終了すると(S106:YES)、信号処理回路110は、図6の処理を終了する。
なお、図6の処理では、ステップS104の判定がYESとなるときの深度Dnは、深さ方向において最初にZ船速が閾値Vthの範囲内となる深度であり、図5の深度D0に対応する。すなわち、図6の処理では、Z船速の平均値が実質的にゼロとなる最小の深度が、船S1の進行方向の対水船速を算出する対象深度として特定されることになる。
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
図6に示したように、上下方向の対水船速(Z船速)が実質的にゼロである深度Dn(対象深度)に対して(S104:YES)、船の進行方向の対水船速が取得される(S105)。水の層が伴流等の外乱の影響を受けていない場合、その層に対する上下方向の対水船速はゼロになる筈である。よって、上記のように、上下方向の対水船速(Z船速)が実質的にゼロである深度Dn(対象深度)に対して船の進行方向の対水船速を取得することにより、伴流等の外乱の影響を受けていない水の層に対する対水船速を取得できる。よって、対水船速をより正確に測定することができる。
図6に示したように、信号処理回路110は、深度ごとに上下方向の対水船速(Z船速)の所定時間における平均値を算出し(S103)、算出した平均値が実質的にゼロである深度を対象深度として特定する(S104、S105)。これにより、一時的な上昇流や、波またはうねりによる船S1の上下動等が生じても、これらが平均化されることで、これらの要因により平均値に大きな変動が生じることが抑制される。よって、この平均値が実質的にゼロである深度に対して船の対水船速(Y船速)を取得することで、伴流等の外乱の影響を受けない水の層に対する対水船速を適正に取得することができる。
図5に示したように、信号処理回路110は、Z船速の平均値が実質的にゼロとなる最小の深度D0付近の範囲W1から、Y船速を取得するための対象深度を特定することが好ましい。これにより、なるべく深度が小さい範囲において対象深度が特定されるため、S/Nが高く維持された受信信号から上下方向および進行方向の対水深度(Z船速、Y船速)を精度良く算出できる。
上記実施形態では、図6に示したように、信号処理回路110は、Z船速の平均値が実質的にゼロとなる最小の深度を、Y船速を取得するための対象深度として特定する(S104、S105)。これにより、平均値が実質的にゼロとなる範囲W0の中では、対象深度における受信信号のS/N比が最も高く維持される。よって、上下方向および進行方向の対水深度(Z船速、Y船速)を、より精度良く算出することができる。
図1~図3に示したように、送受波器20は、互いに異なる方向に向けられた複数の超音波振動子201~203を備える。そして、信号処理回路110は、複数の超音波振動子201~203からそれぞれ出力される受信信号に基づいて、図6の処理により、対象深度の特定および船の対水船速の取得を行う。この構成によれば、複数の超音波振動子201~203からそれぞれ出力される受信信号から、船速(Y船速、Z船速)をそれぞれ算出できる。このため、上記のように、これらの船速を平均化することにより、船の揺動による影響が抑制された船速を安定的に取得できる。
<変更例1>
上記実施形態では、図6のステップS101において、深度ごとに、Z船速とY船速の両方が算出された。これに対し、変更例1では、深度ごとにZ船速のみが算出され、Y船速は、対象深度についてのみ算出される。
上記実施形態では、図6のステップS101において、深度ごとに、Z船速とY船速の両方が算出された。これに対し、変更例1では、深度ごとにZ船速のみが算出され、Y船速は、対象深度についてのみ算出される。
図7は、変更例1に係る、信号処理回路110により実行される船S1の対水船速の測定処理を示すフローチャートである。
図7のフローチャートでは、図6のフローチャートのステップS101、S105が、それぞれ、ステップS111、S112に変更されている。図7のその他のステップの処理は、図6の対応するステップと同様である。
ステップS111において、信号処理回路110は、受信信号からZ船速のみを深度ごとに算出してメモリに記憶する。信号処理回路110は、メモリに記憶した各深度のZ船速を用いて、ステップS102~S104、S107の処理を、上記と同様に実行する。これにより、ステップS104の判定がYESとなると、信号処理回路110は、今回の送波により取得した受信信号から、現在の深度Dnに対するY船速を算出し、算出したY船速を、船S1の対水船速として取得する(S112)。信号処理回路110は、測定が終了するまで(S106:NO)、超音波の送波ごとに、ステップS111以降の処理を繰り返し実行する。
変更例1によれば、ステップS104の判定がYESとなったときの深度Dn(対象深度)についてのみ、Y船速が算出される。よって、図6の処理に比べて、Y船速の算出に対する処理負荷を軽減でき、船S1の対水船速をより効率的に算出できる。
<変更例2>
上記実施形態では、図6のステップS105において、対象深度に対するY船速が船S1の対水船速として取得された。これに対し、変更例2では、対象深度に対するY船速の所定時間における平均値が、船S1の対水船速として取得される。
上記実施形態では、図6のステップS105において、対象深度に対するY船速が船S1の対水船速として取得された。これに対し、変更例2では、対象深度に対するY船速の所定時間における平均値が、船S1の対水船速として取得される。
図8は、変更例2に係る、信号処理回路110により実行される船S1の対水船速の測定処理を示すフローチャートである。
図8のフローチャートでは、図6のフローチャートのステップS105が、ステップS121に変更されている。図7のその他のステップの処理は、図6の対応するステップと同様である。
ステップS111において、信号処理回路110は、ステップS104の判定がYESとなったときの深度Dnに対するY船速の平均値を算出する。より詳細には、信号処理回路110は、今回の測定時点から所定時間(所定回数)前までの当該深度DnのY船速をメモリから抽出し、抽出したY船速の平均値を算出する。そして、信号処理回路110は、算出したY船速の平均値を、船S1の対水船速として取得する。
ここで、ステップS121における平均化のための所定時間は、ステップS103においてZ船速の平均値を算出する場合の所定時間と同様であってよく、あるいは、この所定時間と異なっていてもよい。たとえば、ステップS121における平均化のための所定時間は、今回の測定時点から10数回前までの測定時点に対応する期間であってよい。
図8の処理によれば、Y船速の所定時間分の平均値が船S1の対水船速として取得される。このため、他船からの伴流等の外乱が一時的に生じた場合も、船S1の対水船速を安定的に取得できる。
<変更例3>
上記実施形態では、図1および図2に示したように、3つの送信ビームB1~B3がそれぞれ所定の方向に送受波器20から送波された。しかしながら、送受波器20から送波される送信ビームB1の数および方向は、これに限られるものではない。
上記実施形態では、図1および図2に示したように、3つの送信ビームB1~B3がそれぞれ所定の方向に送受波器20から送波された。しかしながら、送受波器20から送波される送信ビームB1の数および方向は、これに限られるものではない。
たとえば、図9(a)に示すように、船S1の前後方向に所定の俯角で送信ビームB1、B4が送波されてもよく、あるいは、図9(b)に示すように、送信ビームB1~B3の他に、船S1の船尾方向に所定の俯角で送信ビームB4がさらに送波されてもよい。また、図10に示すように、送信ビームB1~B3の他に、船S1の真下方向に送信ビームB5がさらに送波されてもよく、あるいは、送信ビームB1のみが送波されてもよい。
これらの変更例では、送信ビームの数に応じて、送受波器20に配置される超音波振動子の数が変更される。各超音波振動子は、対応する送信ビームの送波方向に向けられて配置される。これらの変更例によっても、上記実施形態と同様、各送信ビームに対応する受信信号から、深度ごとに、Y船速およびZ船速が算出され、さらに、Y船速およびZ船速を深度ごとに所定時間において平均化することで、深度ごとに、Y船速およびZ船速の平均値が算出される。
したがって、変更例3の構成によっても、図6~図8の処理により、外乱の影響を受けていない水の層に対する対水船速を取得でき、対水船速を正確に測定できる。
<その他の変更例>
上記実施形態およびその変更例では、Z船速の平均値が実質的にゼロとなる最小の深度が、船S1の対水船速(Y船速)を取得するための対象深度に特定されたが、対象深度の特定方法はこれに限られるものではない。たとえば、図11のステップS131に示すように、ステップS104の判定がYESとなったときの深度Dn(図5の深度D0に相当)に所定距離ΔD(たとえば、数メートル)を加算した深度(深度Dnより所定距離ΔDだけ深い深度)が対象深度として特定され、この深度に対するY船速が船S1の対水船速として取得されてもよい。
上記実施形態およびその変更例では、Z船速の平均値が実質的にゼロとなる最小の深度が、船S1の対水船速(Y船速)を取得するための対象深度に特定されたが、対象深度の特定方法はこれに限られるものではない。たとえば、図11のステップS131に示すように、ステップS104の判定がYESとなったときの深度Dn(図5の深度D0に相当)に所定距離ΔD(たとえば、数メートル)を加算した深度(深度Dnより所定距離ΔDだけ深い深度)が対象深度として特定され、この深度に対するY船速が船S1の対水船速として取得されてもよい。
また、図6~図8、図11の処理では、Z船速の平均値が最初に実質的にゼロになった深度Dnが対象深度として特定されたが、Z船速の平均値が最初に実質的にゼロになった深度Dnであっても、これに後続する深度のZ船速の平均値が実質的にゼロでない場合は、この深度Dnは、対象深度として特定されなくてもよい。この場合、その後に、Z船速の平均値が実質的にゼロになった深度Dnが生じたときに、この深度Dnに後続する所定数の深度について、Z船速の平均値が実質的にゼロとなったことを条件に、この深度Dnが対象深度として特定されればよい。
また、船S1の対水船速を取得するための処理は、図6~図8、図11の処理に限られるものではなく、受信信号に基づいて、Z船速が実質的にゼロである対象深度を特定し、特定した対象深度に対するY船速を船S1の対水船速として取得する処理である限りにおいて、図6~図8、図11以外の処理工程によりなされてもよい。
また、船速測定装置1の構成も、図3に示した構成に限られるものではなく、適宜変更可能である。たとえば、図3の構成から第1~第3尾引き信号除去回路171~173が省略されてもよい。この場合、信号処理回路110は、たとえば、尾引き信号が重畳される深度範囲より深い深度範囲を対象に、図6~図8、図11の処理を行ってもよい。
また、上記実施形態およびその変更例では、船速測定装置1が船速の測定機能のみを有していたが、船速測定装置1は、船速の測定機能とともに、物標の検出機能等の他の機能を備えていてもよい。また、船速測定装置1は、ソナー等に他の機能を有する装置に搭載されてもよく、この装置が実行する機能の1つとしてこの装置に含まれていてもよい。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
1 船速測定装置
20 送受波器
110 信号処理回路
201、202、203 超音波振動子
20 送受波器
110 信号処理回路
201、202、203 超音波振動子
Claims (7)
- 超音波を水中に送波するとともに前記超音波の反射波を受波する送受波器と、
前記送受波器から出力される受信信号に基づいて、前記送受波器が設置された船の対水船速を算出する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路は、前記受信信号に基づいて、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度を特定し、前記対象深度に対する進行方向の対水船速を前記船の対水船速として取得する、
ことを特徴とする船速測定装置。 - 請求項1に記載の船速測定装置において、
前記信号処理回路は、深度ごとに前記上下方向の対水船速の所定時間における平均値を算出し、算出した前記平均値が実質的にゼロである深度を前記対象深度として特定する、
ことを特徴とする船速測定装置。 - 請求項1または2に記載の船速測定装置において、
前記信号処理回路は、前記平均値が実質的にゼロとなる最小の深度付近の範囲から前記対象深度を特定する、
ことを特徴とする船速測定装置。 - 請求項3に記載の船速測定装置において、
前記信号処理回路は、前記平均値が実質的にゼロとなる最小の深度を前記対象深度に特定する、
ことを特徴とする船速測定装置。 - 請求項1ないし4の何れか一項に記載の船速測定装置において、
前記信号処理回路は、前記対象深度に対する前記進行方向の対水船速の所定時間における平均値を前記船の対水船速として取得する、
ことを特徴とする船速測定装置。 - 請求項1ないし5の何れか一項に記載の船速測定装置において、
前記送受波器は、互いに異なる方向に向けられた複数の超音波振動子を備え、
前記信号処理回路は、前記複数の超音波振動子からそれぞれ出力される前記受信信号に基づいて、前記対象深度の特定および前記船の対水船速の取得を行う、
ことを特徴とする船速測定装置。 - 超音波を水中に送波するとともに前記超音波の反射波を受波し、
前記反射波の受信信号に基づいて、上下方向の対水船速が実質的にゼロである対象深度を特定し、
前記対象深度に対する進行方向の対水船速を前記船の対水船速として取得する、
ことを特徴とする船速測定方法。
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