JP2023125909A - インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Shoichi Takeda
佳久 山下
Yoshihisa Yamashita
淳一 酒井
Junichi Sakai
和彦 荒木
Kazuhiko Araki
義之 金子
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Abstract

【課題】 白インクの保存安定性を確保しながら、反応液を用いることなく、白インク及びカラーインクを用いて、発色性に優れる2次色画像を記録することができるインクジェット記録方法などの提供。【解決手段】 第1インク及び第2インクを用いて画像を記録するインクジェット記録方法である。第1インクが、その表面の少なくとも一部がアルミナ及びシリカで被覆された酸化チタンである酸化チタン粒子、及び酸化チタン粒子の分散剤としての一般式(1)で表される化合物を含有し、第2インクが、酸化チタン粒子とは異なる色材を含有する。第1インク中の、1価カチオンの含有量(ppm)が、700ppm以上1,300ppm以下であり、第2インク中の1価カチオンの含有量M2が、第1インク中の1価カチオンの含有量M1に対する比率(M2/M1)で、1.4倍以上5.0倍以下である。【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
近年、広告や展示物用の記録媒体として、紙や樹脂フィルムなどを用いて出力する際に、インクジェット記録装置が広く利用されるようになってきた。例えば、透明な記録媒体においても鮮明なカラー画像を表現するために、ブラックや基本色のインク(以下、これらをまとめてカラーインクと記載することがある)に加えて、白インクが併用される。具体的には、透明な記録媒体の画像を記録する領域を含む箇所に前もって白インクを付与して下地処理を行い、その上からカラーインクを付与する、又はその逆順で各インクを付与する(いわゆるバックプリント)記録方法が用いられている。
白インクの色材としては、低コストであるとともに、白さや隠ぺい性など白インクとして必要とされる特性に優れるため、酸化チタンが広く用いられている。インクジェット用の水性インクとしては、金属酸化物であるため、比重の大きい酸化チタンを安定に分散させる必要があるが、白さを得るために酸化チタンの含有量を多くすると、安定に分散させることが難しい場合がある。また、樹脂フィルムなど液媒体の吸収性の小さい透明な記録媒体に白インクとカラーインクを組み合わせて2次色画像を記録するためには、先に付与したインクが十分に乾燥してから、もう一方のインクを付与する必要がある。先に付与したインクが十分に乾燥していない状態で、もう一方のインクを付与する場合には、各インクが混合して、画像が濁ってしまいやすい。その結果、本来鮮明な画像を得るために白インクを用いているのにもかかわらず、発色性に優れる2次色画像が得られない場合がある。
これまでにも、酸化チタンを安定に分散させる手法が検討されてきた。酸化チタンをシリカで表面処理した後に、さらにシランカップリング剤で表面処理し、乾燥させることで、シランカップリング剤の一部を酸化チタンの粒子表面に共有結合させた乾燥二酸化チタン生成物の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。また、アルミナで表面処理された酸化チタン、1価の金属塩、及びアルミナ微粒子を含有するインクが提案されている(特許文献2参照)。さらに、インク間の混合を抑制するため、色材を凝集させるための反応液を用いることが提案されている(特許文献3参照)。
特表2017-521348号公報 国際公開第2018/190848号公報 国際公開第2018/144181号公報
本発明者らは、特許文献1で提案された乾燥二酸化チタンを用いて調製した水性インク及び特許文献2で提案された水性インクの保存安定性について検討した。その結果、白さを得るために必要な大きい粒子径の酸化チタンを安定に取り扱うには保存安定性が不十分であり、向上の余地があることがわかった。また、特許文献3のように反応液を利用するためには、反応液を記録媒体に付与するための機構が必要となり、装置の大型化につながってしまう。また、反応液を用いることで、他の画像品位に影響を与えることが考えられる。
したがって、本発明の目的は、白インクの保存安定性を確保しながら、反応液を用いることなく、白インク及びカラーインクを用いて、発色性に優れる2次色画像を記録することができるインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかるインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、第1インクを前記記録媒体に付与する工程、及び前記第1インクを付与する領域の少なくとも一部に重なるように、第2インクを前記記録媒体に付与する工程を有し、前記第1インクが、酸化チタン粒子、及び前記酸化チタン粒子の分散剤を含有する水性インクであり、前記酸化チタン粒子が、その表面の少なくとも一部がアルミナ及びシリカで被覆された酸化チタンであり、前記酸化チタン粒子の分散剤が、下記一般式(1)で表される化合物であり、前記第1インク中の、1価カチオンの含有量M(ppm)が、700ppm以上1,300ppm以下であり、前記第2インクが、前記酸化チタン粒子とは異なる色材を含有する水性インクであり、前記第2インク中の1価カチオンの含有量Mが、前記第1インク中の1価カチオンの含有量Mに対する比率(M/M)で、1.4倍以上5.0倍以下であることを特徴とする。
Figure 2023125909000001
(一般式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1乃至4のアルキル基であり、Rは炭素数が2乃至4のアルキレン基である。Xは単結合、又は炭素数1乃至6のアルキレン基である。nは6乃至24である。aは1乃至3であり、bは0乃至2であり、a+b=3である。)
本発明によれば、白インクの保存安定性を確保しながら、反応液を用いることなく、白インク及びカラーインクを用いて、発色性に優れる2次色画像を記録することができるインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記インクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。酸化チタンや酸化チタン粒子のことを、単に「顔料」と記載することがある。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
酸化チタンは、水性インク中の水性媒体を構成する水分子と反応して、その表面にヒドロキシ基(以下、「表面ヒドロキシ基」と記載することがある)を生ずる。インクジェット用の水性インクにおいては、生成した表面ヒドロキシ基を活用してインクの保存安定性を向上させるために、アルミナやシリカなどの無機酸化物で表面処理が施された酸化チタン(酸化チタン粒子)として利用されることが一般的である。酸化チタン粒子の表面ヒドロキシ基は、表面処理に用いた無機化合物に対応した無機酸化物に固有の性質を持ち、無機化合物の種類によって酸としての強さの指標である等電点がそれぞれ異なる。したがって、酸化チタンはそれそのものも無機酸化物ではあるが、酸化チタン粒子の表面は、表面処理に用いた無機化合物に対応した無機酸化物の性質を示し、酸化チタン粒子の表面電荷は、水性媒体のpH、表面処理剤の種類、表面処理剤の使用量に強く依存する。
本発明者らは、まず、白インクについて、インクに含有させる成分によって、保存安定性を向上させることについて検討した。酸化チタンを安定に分散させるためには、分散剤が必要である。酸化チタンは、表面ヒドロキシ基による静電反発によってある程度の分散安定性を有しているが、長期にわたって安定に分散した状態を保つことは困難である。そこで、一般的には、酸化チタンをシリカやアルミナで被覆することでインクの保存安定性を向上させるとともに、酸化チタン粒子の表面状態に適した分散剤を組み合わせることで、分散状態を安定に保っている。そこで、本発明者らは、適切な分散剤の検討を行った。その結果、酸化チタンの分散剤としては、一般式(1)で表される化合物が好ましいということがわかった。
次に、本発明者らは、発色性に優れる2次色画像を記録することについて検討を行った。先述の通り、白インクとカラーインクの2次色画像は、一方のインクを付与してからもう一方のインクを付与して記録する。先に付与したインク層が十分な物理的強度を持たないうちに次のインクを付与すると、インク同士の混合が起こり、発色性が低下する。そこで、本発明者らは、反応液を用いない場合でも、発色性に優れる画像を記録することができる各インクの組成について検討を行った。その結果、第1インク及び第2インクの1価カチオンの含有量の比率を特定の範囲にすることで、発色性に優れる2次色画像を記録できるという知見を得た。
すなわち、本発明のインクジェット記録方法は以下の特徴を有する。まず、第1インクの色材(顔料)として、酸化チタンの表面の少なくとも一部が、アルミナ及びシリカで被覆された酸化チタン粒子を用いる。酸化チタン粒子を分散させるための分散剤として、後述する一般式(1)で表される化合物を用いる。第1インク中の1価カチオンの含有量(ppm)は、700ppm以上1,300ppm以下である。また、第2インクの色材は、第1インクの酸化チタン粒子とは異なる色材である。第2インク中の1価カチオンの含有量が、第1インク中の1価カチオンの含有量に対する比率で、1.4倍以上5.0倍以下である。そして、上記の第1インク及び第2インクを記録媒体において重なるように付与して2次色画像を記録する。上記の構成によって、第1インクの保存安定性を確保しながら、発色性に優れる2次色画像を記録することができるメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。
第1インク中の酸化チタン粒子は、その表面の少なくとも一部がアルミナ及びシリカで被覆されている。インクジェット用の水性インクの一般的な液性であるアルカリ性の条件においては、酸化チタン粒子の表面のアルミナ及びシリカは表面ヒドロキシ基を形成する。さらに、シリカの25℃(常温)における水中での等電点は約2.0であり、シリカ由来の表面ヒドロキシ基は負電荷を帯びやすい。シリカ由来の表面ヒドロキシ基が負電荷を帯びるため、酸化チタン粒子同士が接近しても、静電反発により凝集を抑制することができる。一方で、アルミナ由来の表面ヒドロキシ基は正電荷を帯びやすい。しかし、アルミナ及びシリカで表面処理を施すことで、酸化チタン粒子同士の相互作用を抑制しながら、静電反発によって酸化チタン粒子の凝集を抑制できる。その結果、第1インクの保存安定性を向上することができる。アルミナのみで表面処理を施された酸化チタン粒子は、静電反発による酸化チタン粒子の凝集を抑制できず、第1インクの保存安定性が得られない。また、シリカのみで表面処理を施された酸化チタン粒子は、酸化チタン粒子間の相互作用が強すぎて、酸化チタン粒子の凝集を抑制できず、第1インクの保存安定性が得られない。
また、第1インク中の1価カチオンの含有量は、700ppm以上1,300ppm以下である。本明細書における「1価カチオン」は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムを指し、プロトン(H)は含まない。第1インク中の1価カチオンの含有量が700ppm未満であると、インク中のカチオン濃度が不足しているため、表面ヒドロキシ基の電離が十分に促進されない。その結果、酸化チタン粒子を安定に分散させるための静電反発が得られず、第1インクの保存安定性が得られない。第1インク中の1価カチオンの含有量が1,300ppm超であると、インク中のカチオン濃度が高すぎて、塩析により、酸化チタン粒子の分散状態が不安定化してしまい、第1インクの保存安定性が得られない。
一般式(1)で表される化合物の一部は、シランカップリング剤として知られている。一般式(1)中、ORは、それぞれ独立にヒドロキシ基、又は炭素数1以上4以下のアルコキシ基を表す。ケイ素原子に結合しているORの一部は加水分解し、シラノール基を形成し、シラノール基の一部は解離してイオンになり得る。このような反応はアルカリ性の条件下で特に生じやすい。そして、酸化チタン粒子のシリカ由来の表面ヒドロキシ基と一般式(1)で表される化合物のシラノール基との間で、水素結合が形成される。さらに、酸化チタン粒子のシリカ由来の表面ヒドロキシ基と一般式(1)で表される化合物のシラノール基との間の一部においては、脱水反応により共有結合した状態を取り得る。つまり、酸化チタン粒子のシリカ由来の表面ヒドロキシ基と一般式(1)で表される化合物中のシラノール基は水素結合及び共有結合による「弱い親和性」を示す。そのため、脱離と吸着を繰り返して、酸化チタン粒子の近傍に一般式(1)で表される化合物を存在させることができる。ORが炭素数4超のアルコキシ基であると、加水分解しづらくなってしまう。その結果、酸化チタン粒子の表面ヒドロキシ基との親和性が得られず、酸化チタン粒子を安定に分散することができないため、第1インクの保存安定性が得られない。
一般式(1)で表される化合物は、前述のようにシラノール基を形成することができる構造に加えて、連結基となるXを介して、繰り返し単位として炭素数2乃至4のアルキレンオキサイドをn個有する構造(一般式(1)中の(OR)を持つ。nは、繰り返し単位であるアルキレンオキサイド基の個数(平均値)を表し、6乃至24である。以下、上記の構造をアルキレンオキサイド鎖とも表す。アルキレンオキサイド鎖は親水性を有するため、水性媒体中で適度に伸長して、立体障害による反発力を示す。このため、酸化チタン粒子近傍に一般式(1)で表される化合物が存在すると、酸化チタン粒子を安定に分散させることができる。つまり、第1インクの保存安定性を向上することができる。
第1インクを樹脂などで分散させても、ある程度の分散安定性は得られる一方で、長期にわたって安定に分散した状態を保つのは困難である。また、2次色画像を形成する際には、第2インクの1価カチオンによっても、凝集が十分に促進されない。その結果、画像が濁ってしまい、発色性に優れる2次色画像が得られない。
第2インク中の1価カチオンの含有量Mは、第1インク中の1価カチオンの含有量Mに対する比率(M/M)で、1.4倍以上5.0倍以下である。第2インクに多くの1価カチオンを含有させることで、第1インクの酸化チタン粒子が塩析により凝集、増粘する。その結果、各インクドットの混合を抑制し、発色性に優れる2次色画像を記録することができる。前記M/Mの値が1.4倍未満であると、各インクドットが接触した際に、1価カチオンの濃度が十分高くないため、酸化チタン粒子の凝集が促進されず、各インクドットの混合を抑制できない。その結果、発色性に優れる2次色画像が得られない。前記M/Mの値が5.0倍超であると、酸化チタン粒子の凝集が強すぎるため、2次色画像を記録する際に曇り(ヘイズ)が発生し、発色性に優れる2次色画像が得られない。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法(以下、単に「記録方法」とも記す。)は、インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録する方法である。本発明の記録方法は、第1インクを記録媒体に付与する工程、及び第1インクを付与する領域の少なくとも一部に重なるように、第2インクを記録媒体に付与する工程を有する。どちらのインクを先に記録媒体に付与してもよい。
また、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に「記録装置」とも記す)は、インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するために用いる装置である。本発明の記録装置は、第1インクを記録媒体に付与する手段、及び第1インクを付与する領域の少なくとも一部に重なるように、第2インクを記録媒体に付与する手段を備える。どちらのインクを先に記録媒体に付与してもよい。
必要に応じて、記録された画像を加熱する加熱してもよい。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。
図1は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
記録媒体の単位領域へのインクの付与を、記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査に分けて行うマルチパス記録が好ましい。特に、単位領域への第1インクの付与及び第2インクの付与を、それぞれ異なる相対走査で行うことが好ましい。これにより、各インクが接触するまでの時間が長くなり、混合が抑制されやすくなるため、2次色画像の発色性をさらに向上することができる。
<第1インク>
本発明の記録方法で用いる第1インクは、酸化チタン粒子、及び酸化チタン粒子の分散剤を含有するインクである。以下、第1インクに用いる各成分について詳細に説明する。
(色材)
第1インクは色材(顔料)として、アルミナ及びシリカによって酸化チタンに表面処理が施された酸化チタン粒子を含有する。酸化チタン粒子は白色顔料であるため、第1インクは白インクである。第1インク中の酸化チタン粒子の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
酸化チタンは、白色顔料であり、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の3つの結晶形が存在する。なかでも、ルチル型の酸化チタンが好ましい。酸化チタンの工業的製造方法としては、硫酸法及び塩素法が挙げられ、本発明で用いる酸化チタンはいずれの製造方法によるものであってもよい。
酸化チタン粒子の体積基準の累積50%粒子径(以下、平均粒子径とも表す。)は、200nm以上500nm以下であることが好ましく、200nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。酸化チタン粒子の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、粒子径積算曲線において、測定された粒子の総体積を基準として、小粒子径側から積算して50%となる粒子の直径である。酸化チタン粒子のD50は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.59、の条件で測定することができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計を使用することができる。勿論、測定条件などは上記に限られない。
酸化チタンは、アルミナ及びシリカで表面処理が施されているものを用いる。表面処理により光触媒活性能の抑制や分散性の向上が期待される。本明細書において、「アルミナ」は、酸化アルミニウムのようなアルミニウムの酸化物の総称である。また、本明細書において、「シリカ」は、二酸化ケイ素のようなケイ素の酸化物の総称である。酸化チタンを被覆するアルミナ及びシリカの大部分は、酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素の形態で存在している。
酸化チタン粒子に占める、酸化チタンの割合(質量%)は、酸化チタン粒子全質量を基準として、90.0質量%以上であることが好ましく、98.5質量%以下であることが好ましい。酸化チタン粒子に占める、アルミナの割合(質量%)は、シリカの割合(質量%)に対する質量比率で、0.50倍以上1.00倍以下であることが好ましい。前記質量比率が0.50倍未満であると、シリカに対してアルミナが少なすぎて、酸化チタン粒子間の相互作用が強くなり、第1インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。前記質量比率が1.00倍超であると、アルミナが多すぎて、酸化チタン粒子の表面の大部分の表面ヒドロキシ基が正電荷を帯びてしまう。その結果、負電荷を帯びる表面ヒドロキシ基が十分にないため、静電反発が十分に得られず、第1インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。また、酸化チタン粒子に占める、シリカの割合(質量%)は、1.0質量%以上であることが好ましく、後述するシラン化合物との反応性の観点から4.0質量%以下であることが好ましい。また、酸化チタン粒子に占める、アルミナの割合(質量%)は、0.5質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。
酸化チタンの表面処理方法としては、湿式処理、乾式処理などが挙げられる。例えば、酸化チタンを液媒体に分散させた後、アルミン酸ナトリウムやケイ酸ナトリウムなどの表面処理剤と反応させて表面処理を行うことができ、これら表面処理剤の比率を適宜変更することによって所望の特性に調整することもできる。表面処理には、本発明の効果が損なわれない限り、アルミナ及びシリカ以外にも、亜鉛やジルコニウムなどの無機化合物の酸化物や、ポリオールなどの有機物を利用することができる。
(一般式(1)で表される化合物)
第1インクは、酸化チタン粒子の分散剤として、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。インク中の一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量以上0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
Figure 2023125909000002
(一般式(1)中、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1乃至4のアルキル基であり、Rは炭素数が2乃至4のアルキレン基である。Xは単結合又は炭素数1乃至6のアルキレン基である。nは6乃至24である。aは1乃至3であり、bは0乃至2であり、a+b=3を満たす。)
一般式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1乃至4のアルキル基である。炭素数1乃至4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。なかでも、加水分解のしやすさの観点からメチル基が好ましい。R、R、及びRがそれぞれ炭素数4超のアルキル基であると、加水分解してシラノール基を形成することが難しくなってしまい、酸化チタン粒子との親和性が得られない。そのため、酸化チタン粒子を安定に分散させることができず、第1インクの保存安定性が得られない。ROの数を表すaは1乃至3であり、Rの数を表すbは0乃至2であり、a+b=3である。なかでも、aが3であるとともに、bが0である、すなわち、ケイ素原子の置換基が3つともROであることが好ましい。
一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数2乃至4のアルキレン基である。炭素数2乃至4のアルキレン基としては、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基が挙げられる。なかでも、エチレン基が好ましい。ORの個数(平均値)を表すnは6乃至24である。前記アルキレンオキサイド基の個数(平均値)が6未満であると、アルキレンオキサイド鎖の長さが短すぎるため、立体障害による反発力が十分に得られず、第1インクの保存安定性が得られない。前記アルキレンオキサイド基の個数(平均値)が24超であると、アルキレンオキサイド鎖の長さが長すぎるため、親水性が高まり液媒体中に遊離しやすくなる。そのため、酸化チタン粒子の表面ヒドロキシ基との親和性が得られず、酸化チタン粒子の凝集を抑制することができなくなってしまう。そのため、第1インクの保存安定性が得られない。
一般式(1)中、Xは、単結合、又は炭素数1乃至6のアルキレン基である。Xが単結合である場合、ケイ素原子とORが直接結合していることを意味する。炭素数1乃至6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基などが挙げられる。なかでも、n-プロピレン基が好ましい。Xが炭素数6超のアルキレン基であると、前記一般式(1)で表される化合物の疎水性が高くなりすぎて、第1インクの保存安定性が得られない。
分散剤である一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。一般式(2)で表される化合物は、ケイ素原子に結合するORが3個であるため、水性媒体中でその一部が加水分解して、ケイ素原子に結合するヒドロキシ基を3個形成することが可能であり、酸化チタン粒子との親和性を有する部分を増やすことができる。また、下記一般式(2)で表される化合物は、エチレンオキサイド基の繰り返し構造を持つ。そのため、水性の液媒体中で適度にエチレンオキサイド基が伸長し、立体障害による反発力を得ることができる。一般式(2)に含まれない化合物である場合、酸化チタン粒子の分散液の状態であれば保存安定性にそれほど影響を与えないが、種々の成分を含むインクにおいては保存安定性に影響を及ぼす場合がある。
Figure 2023125909000003
(一般式(2)中、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1乃至4のアルキル基である。mは8乃至24である。)
第1インク中の一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)は、酸化チタン粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.002倍以上0.10倍以下であることが好ましい。前記質量比率が0.002倍未満であると、酸化チタン粒子を安定に分散させる作用が弱くなってしまい、第1インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。前記質量比率が0.10倍超であると、一般式(1)で表される化合物の割合が高くなりすぎて、一般式(1)で表される化合物が分子間縮合してしまうと考えられる。そのため、一般式(1)で表される化合物が消費されてしまい、酸化チタン粒子を安定に分散させる作用が弱く、第1インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。
(1価カチオン)
第1インクは、1価カチオンを含有する。1価カチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムが挙げられる。なかでも、カリウムイオンを含有することが好ましい。第1インクに複数の1価カチオンを含有させてもよい。この場合の1価カチオンの含有量は、第1インク中の1価カチオンの合計量とする。第1インク中の1価カチオンの含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、700ppm以上1,300ppm以下である。なお、第1インクが2価以上のカチオンを含有する場合、その含有量は、インク全質量を基準として、10ppm以下であることが好ましい。第1インクは、2価以上のカチオンを含有しなくてもよい。第1インク中の1価カチオンの含有量は、例えば、ICP発光分析やイオンクロマトグラフを用いて各種の1価カチオンの含有量を定量することで、測定することができる。
第1インクに、1価カチオンを含有させるためには、例えば、イオン解離によって1価カチオンを生ずる化合物をインクに添加すればよい。このような化合物としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。アルカリ金属塩としては、例えば、フッ素、塩素、臭素などのハロゲンのアルカリ金属塩;炭酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸などの無機酸のアルカリ金属塩;アルカリ金属の水酸化物;酢酸、安息香酸などの有機酸のアルカリ金属塩、などが挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、フッ素、塩素、臭素などのハロゲンのアンモニウム塩;炭酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸などの無機酸のアンモニウム塩;酢酸、安息香酸などの有機酸のアンモニウム塩、などが挙げられる。
(樹脂)
第1インクには、樹脂を含有させることができる。樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂などが挙げられる。なかでも、アクリル系樹脂が好ましい。第1インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上25.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。なかでも、5.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
樹脂は、耐擦過性や隠蔽性などの記録される画像の各種特性を向上させる用途でインクに含有させることができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。また、樹脂は、液媒体に溶解し得る溶解性樹脂であってもよく、液媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。樹脂粒子は、色材を内包する必要はない。
本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と等量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で液媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は溶解性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、とすることができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有する単量体及び(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα-メチルスチレンの少なくとも一方の単量体に由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性単量体を重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性単量体、これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体などを挙げることができる。酸性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。酸性単量体の塩がイオン解離した1価カチオンを利用して、第1インクに1価カチオンを含有させてもよい。
疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性単量体を重合することで形成することができる。疎水性単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有する単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体などを挙げることができる。
樹脂の酸価は、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。樹脂の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましく、5,000以上15,000以下であることがさらに好ましい。樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。
(水性媒体)
第1インクは、水性媒体として水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、水溶性(好ましくは、25℃において水に任意の割合で溶解するもの)であれば特に制限はない。具体的には、1価又は多価のアルコール類、アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性化合物類、含硫黄極性化合物類などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上40.0質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が3.0質量%未満であると、インクジェット記録装置内でインクが固着してしまい、耐固着性が十分に得られない場合がある。水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が50.0質量%超であると、インクの粘度が高くなりすぎて流動性が低下し、インクの供給不良が起きる場合がある。
(その他の添加剤)
第1インクには、上記の添加剤以外に、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させることができる。なかでも、第1インクは界面活性剤を含有することが好ましい。第1インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。なかでも、インクの各種物性の調整に用いるため、酸化チタン粒子との親和性が低く、少量で効果をもたらすノニオン性界面活性剤が好ましい。
(第1インクの物性)
第1インクは、インクジェット方式に適用するインクであるので、その物性を適切に制御することが好ましい。25℃における第1インクの表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。第1インクの表面張力は、インク中の界面活性剤の種類や含有量を適宜決定することで、調整できる。また、25℃における第1インクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃における第1インクのpHは、7.0以上9.0以下であることが好ましい。第1インクのpHが上記の範囲内であれば、一般式(1)で表される化合物の加水分解によるシラノール基の生成が進むため、酸化チタン粒子及び一般式(1)で表される化合物の弱い親和性が効果的に発揮される。第1インクのpHは、ガラス電極などを搭載した一般的なpHメータで測定することができる。
<第2インク>
第2インクは、酸化チタン粒子とは異なる色材を含有する。そのため、第2インクは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの色を呈するインク(カラーインク)である。以下、第2インクに用いる各成分について詳細に説明する。
(色材)
第2インクは、酸化チタン粒子以外の色材(以下、白と区別するため、「カラー顔料」や、単に「顔料」とも記す)を含有する。第2インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。なかでも、カーボンブラック、有機顔料を用いることが好ましい。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを挙げることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを挙げることができる。なかでも、樹脂結合型顔料やマイクロカプセル顔料ではなく、分散剤としての樹脂を顔料の粒子表面に物理吸着させた樹脂分散顔料を用いることが好ましい。
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(-R-)を介して結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(-R-)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
(1価カチオン)
第2インクは、1価カチオンを含有する。1価カチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムが挙げられる。なかでも、カリウムイオンを含有することが好ましい。第2インクに複数の1価カチオンを含有させてもよい。この場合の1価カチオンの含有量は、第2インク中の1価カチオンの合計量とする。第2インク中の1価カチオンの含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、980ppm以上6,500ppm以下であることが好ましい。第2インク中の1価カチオンの含有量を上記の範囲より大きくすると、塩析により第2インクの保存安定性が得られない場合がある。なお、第2インクが2価以上のカチオンを含有する場合、その含有量は、インク全質量を基準として、10ppm以下であることが好ましい。第2インクは、2価以上のカチオンを含有しなくてもよい。第2インク中の1価カチオンの含有量は、例えば、ICP発光分析やイオンクロマトグラフを用いて各種の1価カチオンの含有量を定量することで、測定することができる。
第2インクに、1価カチオンを含有させるためには、例えば、イオン解離によって1価カチオンを生ずる化合物をインクに添加すればよい。このような化合物としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。アルカリ金属塩としては、例えば、フッ素、塩素、臭素などのハロゲンのアルカリ金属塩;炭酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸などの無機酸のアルカリ金属塩;アルカリ金属の水酸化物;酢酸、安息香酸などの有機酸のアルカリ金属塩、などが挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、フッ素、塩素、臭素などのハロゲンのアンモニウム塩;炭酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸などの無機酸のアンモニウム塩;酢酸、安息香酸などの有機酸のアンモニウム塩、などが挙げられる。
第2インク中の1価カチオンの含有量Mは、第1インク中の1価カチオンの含有量Mに対する比率(M/M)で、1.4倍以上5.0倍以下である。なかでも、前記比率は、3.0倍以下であることが好ましい。前記M/Mの値を、上記の範囲とすることで、酸化チタン粒子の凝集を適度に調整して、発色性に優れる2次色画像を記録できる。
(樹脂分散剤)
第2インクには、顔料を分散させるための樹脂(樹脂分散剤)を含有させることができる。すなわち、第2インクの色材は、樹脂分散顔料とすることができる。第2インク中の樹脂分散剤の含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、1.0質量%以上25.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。なかでも、5.0質量%以上15.0質量%以下であることが特に好ましい。顔料の分散方式が自己分散の場合は、樹脂分散剤を含有しなくてもよい。
樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させ得るものを用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、水溶性樹脂を用いることが好ましい。例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、多糖類、ポリペプチド類などを挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルに由来するユニットで構成されるアクリル系樹脂がさらに好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有する単量体及び(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα-メチルスチレンの少なくとも一方の単量体に由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性単量体を重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性単量体、これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体などを挙げることができる。酸性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。酸性単量体の塩がイオン解離した1価カチオンを利用して、第2インクに1価カチオンを含有させてもよい。
疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性単量体を重合することで形成することができる。疎水性単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有する単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体などを挙げることができる。
樹脂分散剤として用いる樹脂の酸価は、0mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂分散剤の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましく、5,000以上15,000以下であることがさらに好ましい。樹脂分散剤の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。
(その他の樹脂)
第2インクには、樹脂分散剤とは異なる樹脂(その他の樹脂)を含有させることができる。第2インク中のその他の樹脂の含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%であることが好ましい。その他の樹脂は、記録される画像の各種特性を向上させる用途で第2インクに含有させることができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。また、樹脂は、液媒体に溶解しうる溶解性樹脂であってもよく、液媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。樹脂粒子は、色材を内包する必要はない。
その他の樹脂の酸価は、0mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。その他の樹脂の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましく、5,000以上15,000以下であることがさらに好ましい。その他の樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。
(水性媒体)
第2インクは、水性媒体として水を含有する水性のインクである。第2インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。第2インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、水溶性(好ましくは、25℃において水に任意の割合で溶解するもの)であれば特に制限はない。具体的には、1価又は多価のアルコール類、アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性化合物類、含硫黄極性化合物類などを用いることができる。第2インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上40.0質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が3.0質量%未満であると、インクジェット記録装置内でインクが固着してしまい、耐固着性が十分に得られない場合がある。水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が50.0質量%超であると、インクの粘度が高くなりすぎて流動性が低下し、インクの供給不良が起きる場合がある。
(その他の添加剤)
第2インクには、上記の添加剤以外に、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させることができる。なかでも、第2インクは界面活性剤を含有することが好ましい。第2インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。なかでも、インクの各種物性の調整に用いるため、酸化チタン粒子との親和性が低く、少量で効果をもたらすノニオン性界面活性剤が好ましい。
(第2インクの物性)
第2インクは、インクジェット方式に適用するインクであるので、その物性を適切に制御することが好ましい。25℃における第2インクの表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。第2インクの表面張力は、第2インク中の界面活性剤の種類や含有量を適宜決定することで、調整できる。また、25℃における第2インクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃における第2インクのpHは、7.0以上11.0以下であることが好ましく、7.0以上9.0以下であることがさらに好ましい。第2インクのpHは、ガラス電極などを搭載した一般的なpHメータで測定することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。また、酸化チタン粒子の分散液、及びカラー顔料の分散液を、それぞれ「白顔料分散液」、及び「カラー顔料分散液」と記載する。
<酸化チタンの準備>
表面処理が施されていない市販の酸化チタン、及び、未処理の酸化チタンを表面処理して調製した酸化チタン粒子を準備した。酸化チタン粒子の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、動的光散乱法による粒度分析計(商品名「Nanotrac WaveII-EX150」、マイクロトラック・ベル製)を使用して測定した。酸化チタン粒子の特性を表1に示す。表1中、TITANIX:JR、JR-600Aは、テイカ製のルチル型酸化チタンの商品名である。
(アルミナ及びシリカの被覆量の測定)
酸化チタン粒子に占める、アルミナ及びシリカの割合、すなわち、アルミナ及びシリカの被覆量は以下のようにして測定した。準備した酸化チタン粒子を硝酸に添加した液体を試料として、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光装置によるアルミニウム及びケイ素元素の定量分析を行った。この際、表面に被覆している原子がすべて酸化物になっていると仮定し、得られたアルミニウム及びケイ素の値をその酸化物、つまりアルミナ及びシリカに換算して質量比率を算出した。
(酸化チタン粒子1~8)
酸化チタンの表面処理を湿式法により行い、酸化チタン粒子1~8を製造した。湿式法による表面処理は、未処理の酸化チタンに、表面処理剤(アルミン酸ナトリウムやケイ酸ナトリウムなど)を接触させるもので、表面処理剤の使用量や比率を適宜調整することで、任意の比率に表面処理を施した。
具体的には、表面処理が施されていない、ルチル型の酸化チタン(商品名「TITANIX JR」、テイカ製)300部、及び、純水700部をホモジナイザーで混合した。そして、撹拌しながら90℃に昇温し、水酸化カリウム(pH調整剤)を添加して、pHを10.5に調整した。次に、ケイ酸ナトリウムを添加して、希硫酸(pH調整剤)を約1時間かけて添加することで、pHを5.0に調整した。約1時間反応を継続させた。その後、90℃で、アルミン酸ナトリウムを少量ずつ添加した。この際、pHを維持するために、希硫酸を併用してpHを6.0以上8.0以下に維持した。アルミン酸ナトリウムの添加後、約1時間反応を継続し、分散液を得た。前記分散液を25℃まで冷却した後、遠心分離機による沈降と、イオン交換水への再分散を繰り返すことで精製し、120℃で乾燥させることで、アルミナ及びシリカの少なくとも一方で表面処理が施された各酸化チタン粒子を得た。
(酸化チタン粒子9)
市販のルチル型酸化チタン粒子(商品名「TITANIX JR-600A」、テイカ製、アルミナで表面処理が施されているもの)を、酸化チタン粒子9として用いた。表1に酸価チタン粒子9の特性を合わせて示す。
(酸化チタン粒子10)
市販のルチル型酸化チタン粒子(商品名「TITANIX JR」、テイカ製、表面処理が施されていないもの)を、酸化チタン粒子10として用いた。表1に酸化チタン粒子10の特性を合わせて示す。
Figure 2023125909000004
<一般式(1)で表される化合物の準備>
一般式(1)で表される化合物を以下の手順で合成した。一般式(1)で表される化合物として合成した化合物、及び、比較化合物の合成条件、及び構造を、それぞれ表2及び表3に示す。一般式(1)で表される化合物は、原料(ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルなど)をアリル化及びヒドロシリル化することによって合成することができる。
(化合物1~10、比較化合物11)
撹拌子及び窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、表2に示す原料、塩基、及び溶媒を入れ、25℃で30分撹拌した。「水素化ナトリウム」としては、60%水素化ナトリウムのパラフィン分散液を用い、表2に示す水素化ナトリウムの使用量となるように分散液を用いた。そして、表2に示す臭化物を滴下しながら25℃で撹拌し、滴下終了後12時間撹拌を続け、反応物を含む溶液を得た。前記反応物を含む溶液から、未反応の水素化ナトリウム及び中和物(臭化ナトリウム)をろ別した後、減圧によりテトラヒドロフラン(THF)を除去し、濃縮物を得た。前記濃縮物を純水500部に溶解させ、この水溶液をヘキサン200mLで3回抽出した後、ジクロロメタン200mLで抽出した。生成物を含む溶媒を硫酸マグネシウムの添加により乾燥し、減圧して濃縮することで、アリル化した化合物をそれぞれ得た(アリル化の工程)。
撹拌子及びアルゴン導入管を備え、不動態化処理をした乾燥丸底フラスコに、表2に示すアリル化した原料及びシラン化合物を入れ、85℃で撹拌した。そして、65mmol/L塩化白金酸・一水和物のイソプロピルアルコール水溶液を0.54部添加し、85℃で5時間加熱した。反応終了後、混合物を25℃まで放冷し、減圧により過剰のシラン化合物を除去した。残留物をトリエトキシシランによって不動態化処理を行ったシリカゲルを担体として、カラムクロマトグラフィーによる精製を行い、各化合物を得た(ヒドロシリル化の工程)。カラムクロマトグラフィーによる精製の際には、酢酸エチル/ヘキサン/エタノール=85/15/5(体積基準)の溶離液を利用した。
(比較化合物12)
撹拌子、還流コンデンサー、及びアルゴン導入管を備えた3つ口フラスコに、表2に示す原料、及び溶媒を入れ、原料を溶解させた。表2に示す臭化物を80℃で約1時間かけて撹拌しながら滴下し、30分間還流させた。反応終了後、減圧によりTHFを除去し、純水300部及び表2に示す塩基を添加した。得られた反応物を含む液体を室温まで放冷し、ジエチルエーテル200mLで2回抽出した。生成物を含む溶媒を硫酸マグネシウムの添加により乾燥し、減圧して濃縮することで、アリル化した化合物を得た。ヒドロシリル化の工程については、化合物1~10、及び比較化合物11と同様の手順で行い、比較化合物12を得た。
(比較化合物13)
撹拌子及び窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、表2に示す原料、及び溶媒を入れ、原料を溶解させた。混合物を55℃で3時間撹拌し、反応終了後、減圧により溶媒を除去し、濃縮物を得た。前記濃縮物にエタノール100部を添加して、ろ過し、残留物をエタノールで洗浄することで不純物を取り除いた。ろ液を減圧することで液体成分を除去し、アリル化した化合物を得た。ヒドロシリル化の工程については、化合物1~10、及び比較化合物11と同様の手順で行い、比較化合物13を得た。
(比較化合物14)
ビニルトリエトキシシラン(商品名「KBE-1003」、信越化学工業製)を比較化合物14として用いた。この化合物は、一般式(1)に含まれない構造を持つシランカップリング剤である。
Figure 2023125909000005
Figure 2023125909000006
<白顔料分散液の調製>
下記の手順で白顔料分散液を製造した。顔料分散液の製造条件を表4及び5に示す。
(白顔料分散液1~32)
表4に示す酸化チタン粒子40.0%、一般式(1)で表される化合物、及び成分の合計が100.0%となるイオン交換水を混合し、ホモジナイザーを用いて予備分散を行った。その後、0.5mmジルコニアビーズを用いて25℃、ペイントシェーカーで12時間分散処理(本分散)を行った。ジルコニアビーズをろ別し、必要に応じてイオン交換水を適量加え、酸化チタン粒子の含有量が40.0%の白顔料分散液1~32を調製した。
(白顔料分散液33)
表4に示す種類の酸化チタン粒子40.0%、及びイオン交換水60.0%を混合し、ホモジナイザーを用いて予備分散を行った。その後、酸化チタン粒子を分散させるための樹脂分散剤(商品名「フローレンG700」、酸価:60mgKOH/g、共栄社化学製)を添加して、混合物を得た。この混合物を、0.5mmジルコニアビーズを充填したペイントシェーカーを用いて12時間分散処理(本分散)を行い、酸化チタン粒子の含有量が40.0%の白顔料分散液33を調製した。
(白顔料分散液34)
特許文献1の実施例3の顔料3kの調製方法に準じて白顔料分散液を調製した。具体的には、酸化チタン粒子1の代わりに酸化チタン粒子4を用いること、また、分散剤として化合物4の代わりに化合物3を用いること以外は、白顔料分散液1と同様に白顔料分散液を調製した。得られた白顔料分散液を撹拌しながら35℃の送風による乾燥で水分を除去した後、105℃のオーブンで4時間15分乾燥し、酸化チタン粒子の粉体を得た。前記酸化チタン粒子の粉体を適量のイオン交換水で再分散させ、酸化チタン粒子の含有量が40.0%の白顔料分散液34を調製した。
Figure 2023125909000007
Figure 2023125909000008
<カラー顔料分散液の調製>
(カラー顔料分散液1~4)
表6に示す種類及び量の顔料、分散剤、及び成分の合計が100.0%となるイオン交換水を混合し、ホモジナイザーを用いて予備分散を行った。分散剤としては、顔料親和性基を有する共重合体(商品名「DISPERBYK-199」、ビックケミー・ジャパン製)を用いた。その後、0.5mmジルコニアビーズを用いて25℃、ペイントシェーカーで12時間分散処理(本分散)を行った。ジルコニアビーズをろ別し、必要に応じてイオン交換水を適量加え、カラー顔料分散液1~4を調製した。
(カラー顔料分散液5)
カラー顔料分散液5としては、市販の顔料分散液(商品名「Cab-O-Jet 400」、キャボット製、顔料の含有量15.0%)に、イオン交換水を混合して顔料の含有量を14.0%としたものを用いた。上記の顔料分散液には、顔料(カーボンブラック)の粒子表面に他の原子団を介してホスホン酸基が結合した自己分散顔料が含まれている。
Figure 2023125909000009
<アルミナ粒子を含む液体の調製>
アルミナ粒子を含む液体は、特許文献2の実施例1のインク3の調製方法を参考に調製した。具体的には、両性アルミナ粒子(商品名「Dispal 23N4-80」、分散粒子径90nm、Sasol製)の含有量が10%であるアルミナ粒子分散液を用意した。前記アルミナ粒子分散液のpHを、強酸(1mol/L塩酸)によって4.0に調整し、前記アルミナ粒子分散液をプロペラミキサーで均一になるまで混合し、ビーズミルを用いて粉砕し、アルミナ粒子を含む液体(アルミナ粒子の含有量:10%)を得た。
<第1インク及び第2インクの調製>
表7~表9の上段に示す種類及び量の各成分を混合し、撹拌した。ビニブラン2685(商品名)は、日信化学工業製のアクリルエマルジョン(アクリル樹脂粒子の含有量:30%)の商品名である。アセチレノールE60(商品名)は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。水酸化カリウムを含む液体は、表7~表9の下段に示す1価カチオンの含有量となるように水酸化カリウムを加えたイオン交換水であり、成分の合計が100.0%となるように、残量を添加した。その後、ポアサイズ5.0μmのメンブレンフィルタ(ザルトリウス製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。各インクのpHは、pHメータ(商品名「ポータブル型pHメータD-74」、堀場製作所製)を用いて測定した。第1インクのpHは、7.0~9.0の範囲内であり、第2インクのpHは、7.0~11.0の範囲内であった。
(インク中の1価カチオンの含有量の算出)
インク中の1価カチオンの含有量の測定は、ICP発光分析により行った。具体的には、調製した各インクの顔料の含有量が0.04%となるようにイオン交換水で希釈し、ICP発光分析装置(商品名「SPS5100 ICP-OES」、SIIナノテクノロジー製)を使用して各種の1価カチオンの含有量を定量した。また、1価カチオンのうち、アンモニウムイオンの含有量は、イオンクロマトグラフ(商品名「DX-320」、ダイオネクス製)を用いて測定した。そして、定量した1価カチオンの含有量から、インク中の1価カチオンの含有量(ppm)を算出した。表7~表9の下段に各インクの特性とともに、1価カチオンの含有量をまとめて示す。
Figure 2023125909000010
Figure 2023125909000011
Figure 2023125909000012
<評価>
上記で得られた各インクを表10の左側に示す組み合わせで用いて、以下の各項目の評価を行った。本発明においては、以下の各項目の評価基準で「A」、及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表10に示す。
(インクの保存安定性)
調製したインク中の酸化チタン粒子の体積基準の累積50%粒子径を測定した(「保存前の粒子径」とする)。各インクを密閉容器に入れ、70℃で3日間保存した。インクを25℃に戻した後、酸化チタン粒子の体積基準の累積50%粒子径を再び測定した(「保存後の粒子径」とする)。酸化チタン粒子の体積基準の累積50%粒子径は、上記の測定条件、及び装置を用いて測定した。そして、「粒子径変化率」(%)=100×(「保存後の粒子径」-「保存前の粒子径」)/(「保存前の粒子径」)の式に基づいて粒子径変化率を算出し、以下に示す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。
A:粒子径変化率が、20%以下であった。
B:粒子径変化率が、20%を超えて30%以下であった。
C:粒子径変化率が、30%を超えていた。
(発色性)
上記で調製した各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS PRO 10-S」、キヤノン製)にセットした。この装置は、シリアル方式で記録を行うものであり、記録ヘッドの主走査方向に直交する副走査方向(記録媒体の搬送方向)に沿って、複数の吐出口列が配置されている。第1インク、及び第2インクのインクカートリッジを、それぞれの吐出口列が隣り合う位置となるように、装置にセットした。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域(1画素)に、3.8ngのインク滴を4滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。この条件で、マルチパス記録(記録媒体の単位領域へのインクの付与を、記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査に分けて行う)により以下の評価用画像を記録した。
記録条件1として、第1インク及び第2インクを異なる記録パスで重ねて付与する条件で評価用画像を記録した。第1インクは、副走査方向における上流側の吐出口列のうち1/2に当たる吐出口から吐出するように設定した。また、第2インクは、副走査方向における下流側の吐出口列のうち1/2に当たる吐出口から吐出するように設定した。そして、白インクの記録デューティが100%であるベタ画像に重なるように、カラーインクの記録デューティが100%であるベタ画像を記録した。得られた記録物を120℃のオーブンで10分乾燥し、評価用画像を得た。
記録条件2として、第1インク及び第2インクを同一の記録パスで重ねて付与する条件で評価用画像を記録した。そして、白インクの記録デューティが100%であるベタ画像に重なるように、カラーインクの記録デューティが100%であるベタ画像を記録した。得られた記録物を120℃のオーブンで10分乾燥し、記録デューティの合計が200%の評価用画像を得た。
上記で得られた評価用画像における2次色画像について、蛍光分光濃度計(商品名「FD-7」、コニカミノルタジャパン製)を使用して、Lab表色系におけるL、a、及びbを測定した。そして、C={(L+(a+(b1/2の式に基づいて彩度Cを算出し、以下に示す評価基準にしたがって画像の発色性を評価した。画像の彩度Cの値が高いほど、画像の発色性が良いことを意味する。
A:画像の彩度Cの値が、45以上であった。
B:画像の彩度Cの値が、35以上45未満であった。
C:画像の彩度Cの値が、35未満であった。
Figure 2023125909000013

Claims (6)

  1. インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    第1インクを前記記録媒体に付与する工程、及び前記第1インクを付与する領域の少なくとも一部に重なるように、第2インクを前記記録媒体に付与する工程を有し、
    前記第1インクが、酸化チタン粒子、及び前記酸化チタン粒子の分散剤を含有する水性インクであり、
    前記酸化チタン粒子が、その表面の少なくとも一部がアルミナ及びシリカで被覆された酸化チタンであり、
    前記酸化チタン粒子の分散剤が、下記一般式(1)で表される化合物であり、
    前記第1インク中の、1価カチオンの含有量M(ppm)が、700ppm以上1,300ppm以下であり、
    前記第2インクが、前記酸化チタン粒子とは異なる色材を含有する水性インクであり、
    前記第2インク中の1価カチオンの含有量Mが、前記第1インク中の1価カチオンの含有量Mに対する比率(M/M)で、1.4倍以上5.0倍以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
    Figure 2023125909000014

    (一般式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1乃至4のアルキル基である。Rはそれぞれ独立に、炭素数2乃至4のアルキレン基である。Xは、単結合、又は炭素数1乃至6のアルキレン基である。nは6乃至24である。aは1乃至3であり、bは0乃至2であり、a+b=3である。)
  2. 前記酸化チタン粒子に占める、前記アルミナの割合(質量%)が、前記シリカの割合(質量%)に対する質量比率で、0.50倍以上1.00倍以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記第1インク中の前記一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)が、前記酸化チタン粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.002倍以上0.10倍以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第2インク中の1価カチオンの含有量Mが、前記第1インク中の1価カチオンの含有量Mに対する比率(M/M)で、3.0倍以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記記録媒体の単位領域へのインクの付与を、前記記録ヘッドと前記記録媒体との複数回の相対走査に分けて行い、前記単位領域への前記第1インクの付与及び前記第2インクの付与を、それぞれ異なる相対走査で行う請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するために用いるインクジェット記録装置であって、
    第1インクを前記記録媒体に付与する手段、及び前記第1インクを付与する領域の少なくとも一部に重なるように、第2インクを前記記録媒体に付与する手段を備え、
    前記第1インクが、酸化チタン粒子、及び前記酸化チタン粒子の分散剤を含有する水性インクであり、
    前記酸化チタン粒子が、その表面の少なくとも一部がアルミナ及びシリカで被覆された酸化チタンであり、
    前記酸化チタン粒子の分散剤が、下記一般式(1)で表される化合物であり、
    前記第1インク中の、1価カチオンの含有量M(ppm)が、700ppm以上1,300ppm以下であり、
    前記第2インクが、前記酸化チタン粒子とは異なる色材を含有する水性インクであり、
    前記第2インク中の1価カチオンの含有量Mが、前記第1インク中の1価カチオンの含有量Mに対する比率(M/M)で、1.4倍以上5.0倍以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
    Figure 2023125909000015

    (一般式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1乃至4のアルキル基である。Rはそれぞれ独立に、炭素数2乃至4のアルキレン基である。Xは、単結合、又は炭素数1乃至6のアルキレン基である。nは6乃至24である。aは1乃至3であり、bは0乃至2であり、a+b=3である。)
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