JP2023111662A - ポリエステルフィルムロール - Google Patents

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Abstract

【課題】硬化樹脂層が凹凸構造を有し、適度に表面形状を制御できるとともに、空気漏れ指数が良好であり、シワ発生が極力なく、ロール巻き取り性が改善されていることから、長尺化対応が可能なポリエステルフィルムロールを提供する。【解決手段】ポリエステルフィルムと、ポリエステルフィルムの片面に硬化樹脂層を備える積層ポリステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、積層ポリステルフィルムが、以下の(1)~(4)の全てを満足するポリエステルフィルムロール。(1)前記硬化樹脂層が凹凸構造を有すること。(2)前記硬化樹脂層が(A)離型剤、(B)架橋剤、及び(D)微粒子を含有する硬化樹脂組成物の硬化物であること。(3)前記硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)が1~9nmであること。(4)前記硬化樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)が0.40~0.80であること。

Description

本発明は、ポリエステルフィルムロールに関し、例えば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において使用される工程用離型フィルムの支持体に好適なポリエステルフィルムロールに関する。
近年、自動車の電装化やスマートフォンの高機能化等に伴い、積層セラミックコンデンサー(Multi-Layered-Ceramic-Capacitor;MLCC)の小型化・高容量化が進んでいる。
積層セラミックコンデンサーは、次のようにして製造される。
まず、離型フィルム上に、セラミック成分及びバインダー樹脂を含むセラミックスラリーを塗工し、乾燥することでセラミックグリーンシート(誘電体シート)を作製し、これに電極をスクリーン印刷法等により印刷して内部電極とし、乾燥した後に印刷済のセラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離し、このようなグリーンシートを多数積層させる。積層させたグリーンシートをプレスして一体化させた後、個々のチップに切断する。
その後、焼成炉で内部電極及び誘電体層を焼結させ、積層セラミックコンデンサーが製造される。
MLCCの小型及び高容量化に際して、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでいる。セラミックグリーンシートの薄膜化が0.5μm(乾燥後の厚み)以下と更に進行するとキャリアフィルムとしての離型フィルムの表面に微小な突起があれば、これに起因して、セラミックグリーンシートにピンホール等が発生する。このため当該離型フィルムには、更に高度な表面平滑性が求められている。
従来、この種の離型フィルムの支持体として、特許文献1には、第1の面と第2の面とを有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられた平滑化層と、前記平滑化層の前記基材と反対の面側に設けられた剥離剤層とを有し、前記平滑化層は、質量平均分子量が950以下の熱硬化性化合物を含む平滑化層形成用組成物を加熱して硬化させることにより形成されたグリーンシート製造用剥離フィルムが開示されている。そして、該剥離フィルムでは、前記剥離剤層の外表面の算術平均粗さRa1が8nm以下であり、かつ、前記剥離剤層の外表面の最大山高さRp1が50nm以下であることが示されている。
また、特許文献2には、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ない離型用ポリエステルフィルムとして、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15~35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である離型用ポリエステルフィルムが開示されている。
グリーンシートの薄膜化が大きく進む中、薄膜化されたグリーンシートを多層に積層させる際の積層精度が、更に高く要求されている。このため離型フィルムの平面性についても重要度が高まってきており、熱しわの制御等が図られている。
この種のフィルムとして、特許文献3には、ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムに存在するスラック欠点が、100mあたり5個未満である、ポリエステルフィルムロールが開示されている。
特開2014-177093号公報 特開2013-7054号公報 特開2002-273719号公報
セラミックグリーンシートの薄肉化に伴い、誘電体層はより高い平滑性が求められる。しかし、ポリエステルフィルムの高平滑化に伴い、製造工程中において、生産性向上のため、生産速度を高くしたり、フィルム巻長さを長尺化したりすると、フィルムロールの巻取り性を良好にすることが難しく、シワが発生しやすいなどの課題があった。
そこで、本発明の目的は、高い平滑性を有しても、シワが発生しにくく、フィルムロールの巻取り性が良好であり、長尺化対応が可能なポリエステルフィルムロールを提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムロールを用いれば、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[17]を提供するものである。
[1]ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの片面に硬化樹脂層を備える積層ポリステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、
前記積層ポリステルフィルムが、以下の(1)~(4)の全ての要件を満足するポリエステルフィルムロール。
(1)前記硬化樹脂層が凹凸構造を有すること。
(2)前記硬化樹脂層が(A)離型剤、(B)架橋剤、及び(D)微粒子を含有する硬化樹脂組成物の硬化物であること。
(3)前記硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)が1~9nmであること。
(4)前記硬化樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)が0.40~0.80であること。
[2]前記硬化樹脂層表面の最大山高さ(Sp)と平均表面粗さ(Sa)との比率(Sp/Sa)が30以下である、[1]に記載のポリエステルフィルムロール。
[3]前記硬化樹脂層表面の突出山部高さ(Spk)が70nm以上である、[1]または[2]の何れかに記載のポリエステルフィルムロール。
[4]前記硬化樹脂組成物が(C)バインダー樹脂を含む、[1]~[3]の何れかに記載のポリエステルフィルムロール。
[5](B)バインダー樹脂が(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上を含む、[4]に記載のポリエステルフィルムロール。
[6]前記硬化樹脂層の厚みが、単位面積当たりの重量で、0.02~0.15g/mである、[1]~[5]の何れかに記載のポリエステルフィルムロール。
[7]前記硬化樹脂組成物における(A)離型剤の含有量が、不揮発成分として5~90質量%である、[1]~[6]の何れかに記載のポリエステルフィルムロール。
[8]前記ポリエステルフィルムが、表面層、中間層、及び表面層をこの順に有する少なくとも3層構造のポリエステルフィルムであり、前記硬化樹脂層が、一方の前記表面層上に接するように設けられる、[1]~[7]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[9]前記ポリエステルフィルムにおける表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)が、0.50dL/g以上である、[1]~[8]の何れかに記載のポリエステルフィルムロール。
[10]前記ポリエステルフィルムにおける表面層は、チタン化合物を含む、[1]~[9]の何れかに記載のポリエステルフィルムロール。
[11]前記ポリエステルフィルムにおける表面層は、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である、[1]~[10]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[12]前記ポリエステルフィルムにおける一方の表面層が実質的に粒子を含有しない、[1]~[11]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[13]前記ポリエステルフィルムにおける他方の表面層が実質的に粒子を含有しない、[12]に記載のポリエステルフィルムロール。
[14]前記ポリエステルフィルムにおいて、硬化樹脂層が設けられる面とは反対側の表面層の平均表面粗さ(Sa)が0.1~9nmである、[1]~[13]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[15]前記硬化樹脂層が設けられる面とは反対側のフィルム表面に離型層を有する、[1]~[14]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[16]積層セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、[1]~[15]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[17]自動車用セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、[1]~[16]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムロール。
本発明によれば、高い平滑性を有するとともに、シワが発生しにくく、フィルムロールの巻取り性が良好であり、長尺化対応が可能なポリエステルフィルムロールを提供することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムロールは、極めて優れた表面平滑性を有することから、当該フィルムを、例えば積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、当該フィルム表面の微細な凹凸によってセラミックグリーンシートに欠陥が生じる虞が少ないという利点がある。
また、本発明のポリエステルフィルムロールは、極めて優れた表面平滑性を有し、且つ、硬化樹脂層表面が特徴的な凹凸形状を有するため、シワ発生防止性が良好である。そのため、当該フィルムを、例えば積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、セラミックスラリーを均一に塗布できることで均一な誘電体層を形成することができ、かつ、フィルムロールの巻取り性が良好であるため、シワが発生しにくく、ポリエステルフィルムロールの長尺化に伴い、切替頻度低減に伴う、生産性向上に貢献できる。
とりわけ、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。
実施例2で得られた硬化樹脂層の表面形状を示す。 比較例1で得られた、硬化樹脂層の表面形状を示す。 従来のフィルム(粒子練り込み)の表面形状を示す。
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明は、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「(メタ)アクリル」という表現を用いる場合、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとする。また、同様に「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の一方又は両方、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方又は両方を意味するものとする。その他についても、上記と同様である。
<ポリエステルフィルムロール>
本発明のポリエステルフィルムロールは、ポリエステルフィルムと、ポリエステルフィルムの片面に硬化樹脂層とを備えた積層ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記積層ポリエステルフィルムが、以下の(1)~(4)の要件を満足する。
(1)前記硬化樹脂層が凹凸構造を有すること。
(2)前記硬化樹脂層が(A)離型剤、(B)架橋剤、及び(D)微粒子を含有する硬化樹脂組成物の硬化物であること。
(3)前記硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)が1~9nmであること。
(4)前記硬化樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)が0.40~0.80であること。
本発明のポリエステルフィルムロール(以下「本ロール」とも称する)は、硬化樹脂層(以下、単に「樹脂層」ということもある)及びポリエステルフィルムをこの順に有する積層ポリエステルフィルム(以下「本フィルム」とも称する)を巻き取ってなるポリエステルフィルムロールである。
本ロールは、紙管、金属管、プラスチック管等のコアに巻き取られたポリエステルフィルムロールであり、幅0.2m以上であることが好ましく、0.3m以上であることがより好ましく、1.0m以上であることが特に好ましく、1.5m以上であることが最も好ましい。ポリエステルフィルムロールの幅は、上限について特に限定されないが、好ましくは2.3m以下であり、より好ましくは2.0m以下である。
また、本ロールに巻き取られる本フィルムの長さは、特に限定されないが、好ましくは1000m以上、より好ましくは6000m以上、更に好ましくは12000m以上である。
更に、本フィルムの厚さは、好ましくは19μm以上38μm以下、より好ましくは25μm以上32μm以下である。
[表面特性]
(1)硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)
本フィルムの硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)は1~9nmである。
本フィルムは、硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)が9nmより大きくなると、硬化樹脂層表面の平滑性が失われて、本フィルム表面の微細な凹凸によってピンホールなどの欠陥が生じやすくなる。また、平均表面粗さ(Sa)が1nm未満の場合、フィルム表面が平坦化しすぎて、傷がつきやすくなる。
本フィルムは、セラミックグリーンシートの薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)が好ましくは2~7nmである。
なお、本フィルムにおいて、硬化樹脂層が設けられる面は、典型的には、後述するとおり、セラミック層などの製造において、各種材料が塗布、積層される面(加工面)とは反対側の面(反対面)である。ただし、反対面であっても、平均表面粗さ(Sa)を上記の通り低くすることで、反対面の凹凸が加工面に転写されて、その転写された凹凸により、ピンホールが発生したり、薄肉化対応ができなかったりすることを防止できる。
平均表面粗さ(Sa)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、二次元のRa(線の算術平均粗さ)を三次元に拡張したもので、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、以下の式(1)から求められる。
表面をXY面、高さ方向をZ軸とした時、A:定義された領域(画像全体とする)、Z(x,y):画像点(x,y)の高さ0の面からの高さとすると、以下のように表される。
(2)二乗平均平方根勾配(Sdq)
本発明者らは、硬化樹脂層表面の凸部の形状、特に傾斜構造に着目し、二乗平均平方根勾配(Sdq)を一定値以上とすることで、ロール状に巻き取った際にフィルム間での良好な空気漏れが発現でき、それにより、巻き取り性が良好になることを見出した。
二乗平均平方根勾配(Sdq)とは、ISO25178に準拠した測定により求められる面粗さパラメーターの一つであり、以下の式(2)で表される。
二乗平均平方根勾配(Sdq)は表面の凹凸形状の局所的な勾配の平均的な大きさを表し、値が大きいほど急峻な表面であることを示す。
本発明において、硬化樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)は、0.40~0.80であることを要する。二乗平均平方根勾配(Sdq)が0.80より大きくなると、ピンホール等の欠陥が生じやすくなり、傷つき防止性が低下し、また、セラミックグリーンシートの薄膜化に対応できないおそれがある。二乗平均平方根勾配(Sdq)が0.40より小さくなると、フィルム間での良好な空気漏れが発現しにくくなり、巻き取り性を良好にすることが難しくなる。また、フィルム表面が極端に平坦化しすぎて、フィルムの滑り性が低下し傷がつきやすくなるため、傷つき防止性が低下し、さらに、ポリエステルフィルムロールの長尺化に対応できない。
一方で、上記範囲を満足することにより、長尺化したロール状フィルムにおいても、硬化樹脂層表面の凸部が変形しにくく、良好なロール外観を得ることができる。
二乗平均平方根勾配(Sdq)は、傷つき防止性の向上並びにポリエステルフィルムロールの長尺化及びセラミックグリーンシートの薄膜化の対応の観点から、0.40~0.60がより好ましい。
なお、硬化樹脂層が後述する微粒子を含有することで、凸部の傾斜が急になり、二乗平均平方根勾配(Sdq)が上記した所定の範囲内になりやすく、フィルム間での良好な空気漏れを発現できるものと推察される。
(3)硬化樹脂層表面の最大山高さ(Sp)
本フィルムは、ピンホール抑制の観点から、硬化樹脂層表面の最大山高さ(Sp)は、例えば150nm以下であり、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以下である。硬化樹脂層表面の最大山高さ(Sp)の下限については特に制限はされないが、フィルム取り扱い性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、更に好ましくは20nm以上である。
なお、最大山高さ(Sp)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、表面の平均面からの高さの最大値を表し、以下の式(3)により表される。
(4)硬化樹脂層表面の負荷長さ率(Rmr(80))
硬化樹脂層表面の切断レベル80%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(80))は、50%以下であることが好ましく、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下、その中でも特に好ましくは35%以下である。負荷長さ率(Rmr(80))の下限値は特に制限されず、1%程度であり、好ましくは4%、より好ましくは6%である。
本発明者らは、負荷長さ率(Rmr(80))が凹凸構造の凹凸分布を表す指標として有効であると考えた。本発明では、当該負荷長さ率(Rmr(80))が50%以下となるように表面の凹凸形状を制御すれば、適度な微細凹凸構造が形成されることでフィルム間の空気が抜けやすく、シワ等の発生がなく巻き取り性が優れたものとなり、良好なロール外観を得ることができる。
負荷長さ率(Rmr(c))は、線粗さ(JIS B 0601)の一つであり、切断レベルc(高さ%又はμm)における輪郭曲線要素の負荷長さML(c)の評価長さLnに対する比率を表したものであり、以下の式(4)から求められる。なお、例えば凹分布が大きいものは負荷長さ率(Rmr(80))の数値が小さくなり、凸分布が大きいものは負荷長さ率(Rmr(80))の数値が大きくなる
上記負荷長さ率(Rmr(80))は、後述する本硬化樹脂組成物の組成や含有量などによって調整することができる。
なお、本発明者らの検討結果より、微粒子を併用して、相分離構造を形成する硬化樹脂層においては、微粒子の添加量増加に伴い、凸部の形成領域が狭くなる傾向にある一方で、凹部の領域は逆に広くなる傾向にあることもわかった。したがって、本発明では、微粒子を含有することで負荷長さ率(Rmr(80))は、小さくなる傾向にある。
(5)突出山部高さ(Spk)
突出山部高さ(Spk)は、ISO25178に準拠した測定により求められる面粗さパラメーターの一つである。硬化樹脂層表面の突出山部高さ(Spk)は、好ましくは70nm以上、さらに好ましくは100nm以上、特に好ましくは150nm以上、その中でも特に200nm以上であることがよい。
前記範囲を満足することで、突起部により、硬化樹脂層表面の凹凸のSpが小さくても、空気漏れ指数が小さく、良好なフィルム取り扱い性を確保できる。
突出山部高さ(Spk)は、特に限定されないが、例えば500nm以下である。
(6)比率(Sp/Sa)
硬化樹脂層表面の最大山高さ(Sp)と平均表面粗さ(Sa)との比率(Sp/Sa)は、30以下であることが好ましく、さらに好ましくは25以下である。比率(Sp/Sa)を30以下とすることで、硬化樹脂層表面に大きい突起がなく、ピンホールなどの発生を抑制して、薄肉化対応もしやすくなる。比率(Sp/Sa)は、特に限定されないが、例えば1以上であり、3以上であってもよい。
[ポリエステルフィルム]
(ポリエステル)
本発明のポリエステルフィルムにおけるポリエステルとは、ポリエステルフィルム等の原料となるポリエステルのことをいい、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいい、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られるポリエステルを挙げることができる。
また、ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸を50モル%よりも多く含有するポリエステルを使用することが好ましい。
前記ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらのエステル誘導体等の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート及びスピログリコール等を挙げることができる。
上記ポリエステルがホモポリエステルである場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、好ましくはテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族ジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
一方、共重合ポリエステルは、例えばジカルボン酸成分と脂肪族ジオールの重縮合ポリマーであることが好ましい。ジカルボン酸成分としては、好ましくはイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸等)等の1種又は2種以上が挙げられる。また、脂肪族ジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上が挙げられる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含み、脂肪族ジオールとしてエチレングリコールを含むことがより好ましい。
上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。第三成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分(すなわち、最も含有量が多い成分)となる化合物と、ジオール成分の主成分となる化合物以外の成分であり、例えば共重合ポリエチレンテレフタレートではテレフタル酸及びエチレングリコール以外の成分である。
また、共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール以外の二官能性化合物由来の構成単位を含んでもよい。ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール以外の二官能性化合物由来の構成単位は、ポリエステルを構成する全構成単位の総モルに対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。二官能性化合物としては、各種のヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール等が挙げられる。
本ポリエステルフィルムを構成する全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
また、本ポリエステルフィルムを構成する全ジオール成分中のエチレングリコールの含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
なお、テレフタル酸及びエチレングリコールの含有量の上限値は、100モル%である。
また、上記ポリエステルとしては、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、エチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートや、エチレン-2,6-ナフタレート単位であるポリエチレン-2,6-ナフタレート等も好ましい。
また、上記ポリエステルは、再生ポリエステルであってもよく、バイオマス由来のポリエステルであってもよい。
<重縮合触媒>
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えばチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物等が挙げられる。これらの中では、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかが好ましく、とりわけ、チタン化合物を用いて得られるポリエステルを使用することが好ましい。
したがって、ポリエステルフィルムは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、チタン化合物を含むことがより好ましい。
前記チタン化合物を使用することで、結果的にアンチモン化合物の使用量を低減することができるため、アンチモン化合物がフィルム表面に析出することによる新たな突起形成リスクが小さくなり、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が小さい本フィルムを得ることができる。
ポリエステルフィルムの最外層(「表面層」あるいは「表層」ともいう、例えば、硬化樹脂層が積層される表面層)を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用することが好ましい。したがって、上記表面層は、チタン化合物を含むことが好ましい。
当該最外層中に当該チタン化合物に由来するチタン元素含有量が質量基準で、3ppm以上40ppm以下であることが好ましく、4ppm以上35ppm以下であることがより好ましい。
上記範囲内であれば、ポリエステルの製造効率を低下させることなく、触媒起因の異物を低減化することができる。
また、生産性の観点から、中間層(後述する「ベース層」,あるいは「中層」ともいう)を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用しないことが好ましい。
また、同様の観点から、本フィルムの表面層中のアンチモン化合物の含有量は質量基準で、100ppm以下であることが好ましい。
例えば、表面層(例えば、後述する表面層A)は、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含み、該表面層におけるアンチモン化合物の含有量が100ppm以下であることが好ましい。この際、該表面層はアンチモン化合物を含有しなくてもよい。すなわち、該表面層におけるアンチモン化合物の含有量の下限値は、0ppmであるとよい。
(ポリエステルの極限粘度(IV))
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)は好ましくは0.50dL/g以上、より好ましくは0.55dL/g以上、更に好ましくは0.60dL/g以上である。かかる範囲であれば、混練中のせん断応力が増大することによって粒子が高分散する等の利点がある。また、該ポリエステルの極限粘度(IV)は、例えば、1.00dL/g以下である。
なお、「ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)」とは、極限粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを使用する場合には、これら混合樹脂の極限粘度(IV)を意味するものとする。
上記の観点から、とりわけ、ポリエステルフィルムが積層構造の場合、表面層、具体的には本フィルムの最外層(例えば、硬化樹脂層が積層される表面層)を構成するポリエステルの極限粘度(IV)は好ましくは0.50dL/g以上、より好ましくは0.55dL/g以上、更に好ましくは0.60dL/g以上である。また、該ポリエステルの極限粘度(IV)は、例えば、1.00dL/g以下である。
<粒子>
本ポリエステルフィルム中には、粒子を含有させることも可能である。ポリエステルフィルムは、粒子を含有することで、易滑性が付与され、かつ各工程での傷発生を防止して、取扱い性が良好となる。
本ポリエステルフィルム中に含有させる粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。これらの中では、有機粒子、シリカ、酸化アルミニウムなどが好ましく、中でもシリカ、酸化アルミニウムがより好ましい。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。
また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
前記粒子の平均粒径は、硬化樹脂層表面又はフィルム表面の平均表面粗さ(Sa)の増大及び最大山高さ(Sp)の抑制、即ち、ハンドリング性の向上及びピンホール抑制の観点から、好ましくは0.05~0.8μm、より好ましくは0.1~0.6μm、更に好ましくは0.1~0.5μmである。
なお、粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
本ポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、多層のポリエステルフィルムであれば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化又はエステル交換反応終了後、添加するのが好ましい。
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
また、本ポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、本ポリエステルフィルムの表層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。
また、ポリエステルは、エステル化又はエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
なお、本ポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
(ポリエステルフィルムの構成)
本発明のポリエステルロールにおける、ポリエステルフィルムは、単層及び2以上の層を有する積層構造(積層フィルム)のいずれも採用することができるが、とりわけ、3層以上の積層構造を有することが好ましい。3層以上の積層構造は、表面層、中間層(「ベース層」ともいう)、及び表面層をこの順に有するとよい。いずれか一方の表面層には、硬化樹脂層が接するように設けられるとよい。
ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の面に粒子を含有する表面層(「表面層C」ともいう)を有する態様も好ましい。係る構成を採用することによりフィルムの取扱い性を向上させることができる。また、本フィルムは、一方の面が表面層Cで、他方の面が表面層Aであってもよい。表面層Aは、粒子を含有してもよく、又は粒子を実質的に含有しなくてもよい層であるが、セラミック層の薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、粒子を実質的に含有しないことが好ましい。
ポリエステルフィルムにおいて、硬化樹脂層が設けられる面とは反対側の表面層は、表面粗さ(Sa)が、セラミック層の薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、9nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、4nm以下がさらに好ましい。また、巻き取り性などを良好にする観点からは、0.1nm以上が好ましく、0.3nm以上がより好ましく、1nm以上がさらに好ましい。
また、ポリエステルフィルムにおいて、硬化樹脂層が設けられる面とは反対側の表面層は、表面最大山高さ(Sp)が、セラミック層の薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、800nm以下であることが好ましく、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。一方、当該最大山高さ(Sp)は、特に制限されないが、フィルムの取り扱い性の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。
なお、上記表面特性を有する硬化樹脂層が設けられる面とは反対側の表面層は、実質的に粒子を含有する層であってもよいし、実質的に粒子を含有しない層であってもよい。
(ポリエステルフィルムの積層構造)
ポリエステルフィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、ベース層Bと表面層A及び表面層Cから構成されるA/B/C及びベース層Bと表面層Aから構成されるA/B/Aの3層構造が好ましい。すなわち、表面層は、両方の表面層が粒子を実質的に含有してもよいし、両方の表面層が粒子を実質的に含有しなくてもよいし、一方の表面層が粒子を実質的に含有し、他方の表面層が粒子を実質的に含有しなくてもよい。
A/B/C、A/B/Aの構成において、硬化樹脂層は、表面層C側、及び表面層A側のいずれに設けられてもよいが、好ましくは表面層C側に設けられる。表面層C側、及び表面層A側に設けられた硬化樹脂層は、典型的にはそれぞれ表面層C及び表面層Aそれぞれに接するように形成されるとよい。
なお、A/B/C、A/B/Aの構成においては、中間層Bが2層以上の構成からなるなど、4層以上の構造であってもよい。また、中間層Bと、表面層Aが、実質的に同じ組成を有してもよいし、中間層Bと表面層Cが実質的に同じ組成を有してもよい。
硬化樹脂層が設けられ、硬化樹脂層と接するポリエステルフィルムの表面層には、粒子を含有していてもよく、又は粒子を実質的に含有していなくてもよいが、セラミック層の薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。また、硬化樹脂層が設けられる面とは反対側の面も、粒子を含有していてもよく、又は粒子を実質的に含有していなくてもよいが、薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、粒子を含有しないことが好ましい。また、フィルムの取扱い性の観点からは、粒子を含有することが好ましい。
なお、「実質的に含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子濃度)が、質量基準で、200ppm以下、より好ましくは150ppm以下、更に好ましくは100ppm以下のことを指す。
また、前記表面層Aは、前記表面層Cよりも平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)のいずれもが同等以下であることが好ましい。
上記A/B/Cの積層構造において、表面層Cは、平均表面粗さ(Sa)が5nm以上又は最大山高さ(Sp)が220nm以下であることが好ましい。この場合、平均表面粗さ(Sa)は20nm以下程度であってもよい。
係る積層構成を採用することにより、表面層Cには取扱い性を向上させるために必要な粗面を具備することができ、表面層Aには肉薄なセラミック層を付与させるために必要な平滑性を具備することができる。
以上の観点から、表面層Aの平均表面粗さ(Sa)は、0.1nm以上5nm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.2nm以上4nm以下がよい。また、最大山高さ(Sp)は、43nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは40nm以下が好ましい。
表面層Cは、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する(いわゆる単分散性を有する)粒子を含有してもよい。例えば、上記A/B/Cの3層構造において、表面層Cは、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する粒子を含有することができる。
上記粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する粒子としては、該粒子の粒度分布において、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下となる粒子が好ましく、0.2以下となる粒子が特に好ましい。
係る関係式(D90-D10)/D50は、D50を基準とした粒子径のバラツキを示すものであり、(D90-D10)/D50が0.4以下の粒子は、D90とD10との差が小さいシャープな粒度分布を有するものであり、本フィルムに対して、優れたハンドリング性を維持しながら、極めて高い平滑性を付与することができる。
前記粒子の粒度分布は、レーザー回折式測定装置によって測定される。
表面層Cに含有する粒子の平均粒径は、好ましくは0.05~0.8μm、より好ましくは、0.1~0.6μm、更に好ましくは0.1~0.5μmである。
また、ポリエステルフィルムは、前記粒子を例えば500ppm以上の質量割合で含み、500~2000ppmの質量割合で含むことが好ましく、中でも500ppm以上1500ppm以下がより好ましく、その中でも800ppm以上1500ppm以下の質量割合で含むことが更に好ましい。なお、ここでいう質量割合とは、各表面層における粒子の割合である。
また、前記表面層Cは、質量基準で、前記粒子を2000ppm未満の質量割合で含んでもよく、中でも500ppm以上1500ppm以下が好ましく、前記粒子を800ppm以上1200ppm以下の質量割合で含むことがより好ましい。
前記ベース層(中間層)Bは、最も厚みの厚い主層として機能させることが好ましく、コストダウンするために、少なくとも表面層Cよりも低濃度で粒子を含むことが好ましい。また、ベース層(中間層)Bは、粒子を実質的に含有しなくてもよい。
ベース層(中間層)Bにおける粒子の含有量は、質量基準で、例えば5000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、その中でも特に好ましくは500ppm以下の割合で粒子を含有してもよい。
上述のとおり、表面層Aは上記表面層Cとは異なる層であるが、具体的には、粒子の種類、平均粒径及び配合量が異なる形態の他、層厚みが異なる形態を例示することができる。
また、次の(X)及び(Y)に示した表面層A及び/又は表面層Cを備える構成が特に好ましい。係る構成を採用することで、本フィルムが、優れたハンドリング性と表面平滑性を具備することができる。
(X)特に好ましい実施形態1
(1)前記A/B/Cの構成において、表面層Cが粒子及びチタン化合物を含み、表面層Aが実質的に粒子を含有しない形態
(2)前記(1)において、表面層Cが少なくとも平均粒径が0.1~0.8μmの無機粒子を含む形態
(3)前記(1)~(2)のいずれかにおいて、表面層Cが、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が質量基準で100ppm以下である形態
(4)前記(1)~(3)のいずれかにおいて、前記粒子は、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である形態
(5)前記(4)において、前記粒子は、シリカ粒子及び酸化アルミニウムから選択されるいずれかである形態
上記(X)では、表面層A及び表面層Cそれぞれにおいて、チタン化合物を触媒として重縮合されたポリエステルを使用することで触媒起因の異物を低減化することができ、高い表面平滑性を具備させることができる。上記(X)では、硬化樹脂層は、表面層(A)側に形成することが好ましい。
(Y)特に好ましい実施形態2
(1)前記A/B/Aの構成において、表面層Aは、実質的に粒子を含有しない形態
(2)前記(1)において、表面層Aが、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である形態
(3)前記(1)又は(2)において、前記表面層Aを構成するポリエステルの極限粘度(IV)が0.50dL/g以上、好ましくは0.55dL/g以上、より好ましくは0.60以上の形態
上記(Y)では、表面層Aが実質的に粒子を含有しない形態をとり、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が小さいポリエステルフィルムを得ることができる。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
以下、本発明のポリエステルロールにおける、ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
例えば二軸延伸フィルムを製造する場合、先に述べたポリエステル原料の乾燥したペレットを、押出機などの溶融押出装置を用いてダイから溶融シートとして押し出し回転冷却ドラムなどの冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。ここで、冷却は、例えばポリマーのガラス転移点以下の温度となるように行い、実質的に非晶状態の未配向シート(未延伸シート)を得るとよい。また、シートの平面性を向上させるためシートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。
次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを、一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常25~120℃、好ましくは35~100℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍である。
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、この場合、延伸温度は通常50~140℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは4.5倍以上であり、より好ましくは4.5~5.0倍である。
そして、引き続き180~220℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。この熱処理は、熱固定工程とも呼ばれる。熱処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、フィルムを構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本ポリエステルフィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。
<<硬化樹脂層>>
本積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面側に、硬化樹脂組成物から形成される硬化樹脂層を備えるものである。
本硬化樹脂層は、上述のとおり、硬化樹脂組成物(以下、「本組成物」とも称する)から形成され、凹凸構造を有する。
<凹凸構造>
本硬化樹脂層が有する凹凸構造は、相分離によって形成された微細な形状である。相分離による凹凸は、相溶性の異なる樹脂からなる組成が、塗布、延伸、乾燥、硬化、熱処理等の過程で相分離を起こし、それにより表面に凹凸構造を成すものである。より具体的には、相分離によって凹部もしくは凸部が形成されることにより表面に凹凸構造を成すものである。
なお、その構造は種々の表面分析手法、例えば原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)などの手段によって確認することが可能である。
ここで、本発明において「樹脂」とは、被膜形成に関与する主たる成分をさす。より具体的には、「樹脂」としては後述の化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)などが挙げられる。
<硬化樹脂組成物>
本硬化樹脂組成物は、下記化合物(A)、(B)および(D)を含むことを要件とする。
(A)離型剤
(B)架橋剤
(D)微粒子
本組成物に含まれる化合物(A)及び(B)の合計含有量は、不揮発成分として30質量%以上であることが好ましい。より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは55質量%以上である。当該合計含有量がかかる範囲であれば、相分離による効果が十分に発揮され、所望する微細な凹凸構造を得やすくなる。なお、化合物(A)及び(B)の合計含有量は、上限値について特に限定されないが、後述する(D)微粒子や(C)バインダーなどを一定以上含有させる観点から、例えば97質量%以下、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは70質量%以下である。
(((化合物(A))))
本組成物は、(A)離型剤((化合物(A))を含有する。前記離型剤としては、特に制限はなく、従来公知の離型剤を使用することができる。例えばワックス、長鎖アルキル基含有化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物等を挙げることができる。中でも、ワックス、及び長鎖アルキル基含有化合物の少なくともいずれかであることが好ましく、ワックスであることがより好ましい。本組成物において、化合物(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本樹脂層の凹凸構造は、上述のとおり、相溶性の異なる樹脂が相分離することによって形成されるものであるが、本組成物が化合物(A)を含有することにより、離型剤の有する撥水及び/又は撥油効果によって効果的に微細な凹凸構造を発現させることができる。撥水及び/又は撥油効果によって凹凸が形成されるメカニズムは定かではないが、撥水及び/又は撥油などによって他の樹脂をはじき、はじかれた樹脂によって凸部が形成されることによって、より効果的に微細な凹凸が形成されると推定している。
(ワックス)
上記ワックスとしては、天然ワックス、合成ワックス及び変性ワックスなどを挙げることができる。
天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス及び石油ワックスである。
植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ及びホホバ油等が挙げられる。
動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン及び鯨ロウ等が挙げられる。
鉱物系ワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト及びセレシン等が挙げられる。
石油ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びペトロラタム等が挙げられる。
合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン類、イミド類、エステルワックス及びケトン類を挙げることができる。
合成ワックスとしては、例えばフィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾールワックス)、ポリエチレンワックスなどを挙げることができる。このほかに低分子量の高分子(具体的には数平均分子量500~20000の高分子)である以下のポリマー、すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック又はグラフト結合体等を挙げることができる。
変性ワックスとしては、例えばモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体及びマイクロクリスタリンワックス誘導体等を挙げることができる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、又はそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては、硬化ひまし油、及び硬化ひまし油誘導体を挙げることができる。
中でも、相分離による凹凸形成性能が優れるという観点において、前記離型剤としては合成ワックスが好ましく、その中でもポリエチレンワックスがより好ましく、酸化ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
なお、ワックスは、本組成物を水などの溶媒により希釈して塗布液とする場合には、界面活性剤などにより分散させてワックスエマルションにして、塗布液に配合してもよい。
合成ワックスの数平均分子量は、相分離による凹凸形成性能や取扱い性の観点から、通常500~30000、好ましくは1000~15000、より好ましくは2000~8000の範囲である。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算の値である。
また、硬化樹脂層を形成する際、架橋などのために加熱することを考慮すると、上記ワックスの中でも、融点又は軟化点は80℃以上が好ましく、より好ましくは110℃以上である。一方、熱処理を行った後に相分離性能をコントロールする観点で、200℃以下が好ましく、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。特に、熱処理の過程が相分離のきっかけになる場合、定かではないが、上記ワックスが融解し、融解したワックスが他の樹脂をはじくことで、凸部が形成され得ると推定している。
なお、ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)によって測定ができる。
(長鎖アルキル基含有化合物)
長鎖アルキル基含有化合物とは、炭素数が6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖又は分岐のアルキル基を有する化合物のことである。
アルキル基としては、例えばヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等の炭素数6~30程度のアルキル基が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性を考慮すると高分子化合物であることが好ましく、少ない含有量で効果的に適度な相分離による凹凸形成性能を得ることができるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物とは、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。上記反応性基としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。これらの反応性基を有する化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも取り扱いやすさを考慮するとポリビニルアルコールであることが好ましい。使用されるポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300~40000の範囲である。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは70~99.9モル%の範囲、より好ましくは80~97モル%、さらに好ましくは86~95モル%であるものが用いられる。
上記の反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とは、例えばヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキサノイルクロライド、オクタノイルクロライド、デカノイルクロライド、ラウロイルクロライド、オクタデカノイルクロライド、ベヘノイルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも取り扱い易さを考慮すると長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合物や長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとは、例えばヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(フッ素化合物)
フッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。インラインコーティングによる塗布外観の点で有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えばパーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。少ない含有量で効果的に適度な相分離による凹凸形成性能を得ることができるという観点から、パーフルオロアルキル基を有する化合物であることが好ましい。さらに、フッ素化合物には、上述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物も使用することができる。
パーフルオロアルキル基を有する化合物とは、例えばパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートやその重合物、パーフルオロアルキルメチルビニルエーテル、2-パーフルオロアルキルエチルビニルエーテル、3-パーフルオロプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニルビニルエーテル等のパーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルやその重合物などが挙げられる。耐熱性を考慮すると重合物であることが好ましい。重合物は単一化合物のみでも複数化合物の重合物でもよい。また、少ない含有量で効果的に適度な相分離による凹凸形成性能を得ることができるという観点から、パーフルオロアルキル基は炭素原子数が3~11であることが好ましい。さらに、上述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物との重合物であってもよく、基材であるポリエステルフィルムとの密着性の観点から、塩化ビニルとの重合物も好ましく用いられる。
(シリコーン化合物)
シリコーン化合物とは、分子内にシリコーン構造を有する化合物のことであり、シリコーンエマルション、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。耐熱性を考慮すると硬化型シリコーン樹脂を含有することが好ましい。
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型、縮合型、紫外線硬化型、電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
本組成物中の化合物(A)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは5~90質量%、より好ましくは15~85質量%、さらに好ましくは20~60質量%、より更に好ましくは25~45質量%の範囲である。当該含有量を5質量%以上とすることで、相分離による凹凸構造を十分に形成させることができる。また、当該含有量を90質量%以下とすることで、他の樹脂の含有量を確保することができ、相分離による凹凸形成性能を適度に調整することができる。
(((化合物(B))))
本組成物は、(B)架橋剤(化合物(B))を含有する。前記化合物(B)は、相分離による微細な凹凸構造の形成にも寄与でき、さらに本組成物を塗布液とした時の塗布性を向上させることができる。
化合物(B)として選択される前記架橋剤としては、特に制限はなく、従来公知の架橋剤を使用することができる。架橋剤を使用することで、本組成物を容易に硬化できる。架橋剤としては、例えばメラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、シランカップリング化合物等を挙げることができる。中でも、相分離による凹凸形成性能の調整しやすさの観点から、架橋剤としては、メラミン化合物及びオキサゾリン化合物の少なくともいずれかを用いることが好ましく、メラミン化合物がより好ましい。本組成物において、架橋剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メラミン化合物)
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えばアルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。
アルキロール化としては、メチロール化、エチロール化、イソプロピロール化、n-ブチロール化、イソブチロール化等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、メチロール化が好ましい。
エーテル化に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール及びイソブタノール等が好適に用いられ、これらの中では、メタノールがより好ましい。
また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために、本組成物にはさらに触媒を使用することも可能である。
(オキサゾリン化合物)
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基及びシクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上のモノマーを使用することができる。
また、オキサゾリン化合物は、ポリエチレンオキサイド鎖などのポリアルキレンオキサイド鎖を有してもよく、例えばポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートなどを他のモノマーとして使用してもよい。
樹脂層のポリエステルフィルムに対する密着性向上の観点から、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基量は、好ましくは0.5~10mmol/g、より好ましくは1~9mmol/g、さらに好ましくは3~8mmol/gの範囲である。
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン及びビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物や、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物並びにグリシジルアミン化合物等がある。
ポリエポキシ化合物としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
ジエポキシ化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
モノエポキシ化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。樹脂層のポリエステルフィルムに対する密着性向上の観点から、ポリエーテル系のエポキシ化合物が好ましい。
また、エポキシ基の量としては、2官能より、3官能以上の多官能であるポリエポキシ化合物が好ましい。
(カルボジイミド化合物)
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、樹脂層とポリエステルフィルムのより良好な密着性等のために、分子内に2つ以上のカルボジイミド構造を有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
カルボジイミド化合物は、従来公知の技術で合成することができ、一般的にはジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられる。
カルボジイミド化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100~1000、好ましくは250~800、より好ましくは300~700の範囲である。上記範囲で使用することで、樹脂層の耐久性が向上する。
さらに、本発明の主旨を損なわない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩及びヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)及びイソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式イソシアネート等が例示される。
また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物及びカルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネート又は脂環式イソシアネートがより好ましい。
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類;フェノール、クレゾール及びエチルフェノールなどのフェノール系化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール及びエタノールなどのアルコール系化合物;イソブタノイル酢酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物;ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物;ジフェニルアニリン、アニリン及びエチレンイミンなどのアミン系化合物;アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物;ホルムアルデヒドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム及びシクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
また、イソシアネート化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
(シランカップリング化合物)
シランカップリング化合物とは、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基などの加水分解基を有する有機ケイ素化合物である。例えば3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有化合物;p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシランなどのスチリル基含有化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有化合物;トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート基含有化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基含有化合物などが挙げられる。
本組成物中の架橋剤の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは3~50質量%、より好ましくは8~45質量%、さらに好ましくは10~40質量%、よりさらに好ましくは15~35質量%の範囲である。当該含有量を上記範囲内とすることで、所定の表面粗さを有する凹凸構造を形成しやすくなる。また、硬化樹脂組成物の塗布性、硬化性なども適切にしやすくなる。
(化合物(C))
本組成物は、(C)バインダー樹脂(化合物(C))を含有してもよい。前記化合物(C)は、相分離による微細な凹凸構造の形成にも寄与でき、さらに本組成物を塗布液とした時の塗布性を向上させることができる。
前記化合物(C)として選択される前記バインダー樹脂は、「高分子化合物安全性評価フロースキーム」(昭和60年11月、化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ、造膜性を有するものと定義する。
そのようなバインダー樹脂としては、特に制限はなく、従来公知のバインダー樹脂を使用することができる。例えば(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、イオン導電性の高分子化合物、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。中でも、親水性が高く、相分離による凹凸形成性能の維持と被膜形成の観点から、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアルコールの少なくともいずれかを用いることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。本組成物において、バインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル類由来の構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種の重合体でもよいし、これらから選択される少なくとも1種と、これら以外のモノマー類、例えば、スチレン又はスチレン誘導体、水酸基を含有するモノマーなどから選択される少なくとも1種との共重合体であってもよい。
また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えばブロック共重合体、グラフト共重合体である。すなわち、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂であってもよい。
あるいは、ポリエステル溶液、又はポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれ、これらも本明細書では、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂とする。なお、(メタ)アクリル樹脂において使用される上記したポリエステル、ポリウレタンは、後述するバインダー樹脂に使用されるポリエステル、ポリウレタンとして例示されたものから適宜選択して使用できる。
また、(メタ)アクリル樹脂は、ポリエステルフィルムとの密着性をより向上させるために、ヒドロキシ基、アミノ基を含有することも可能である。
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の各種カルボキシル基含有モノマー類、及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキシフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種のアルキル(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、又は(メタ)アクリロニトリル等の種々の窒素含有モノマー類;N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の窒素含有モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の各種スチレン誘導体;プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエン等の各種共役ジエン類が挙げられる。
上記の(メタ)アクリル樹脂の中では、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体が好ましく、重合性モノマーがアルキル(メタ)アクリル酸エステル類を含むことがより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂を含む本組成物は、後述するように溶媒で希釈して塗布液とするのが好ましく、かかる溶媒が水を主溶媒(50質量%以上)とするのが好ましい。すなわち、塗布液を水系とした場合に溶解又は分散しやすくする観点から、重合性モノマーは水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有することが好ましい。また、相分離によって効果的に凹凸構造が得られるという観点からも、水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有することが好ましい。
したがって、アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類と、水酸基を含有するモノマー、カルボキシル基含有モノマーなどの親水性基含有モノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体も好ましい。
また、アクリル樹脂は、例えば界面活性剤の存在下に重合性モノマーを重合した乳化重合体でもよい。
(ポリビニルアルコール)
ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール部位を有する化合物であり、例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変性化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300~40000の範囲である。重合度を100以上とすると、樹脂層の耐水性を良好にしやすくなる。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは70~99.9モル%の範囲、より好ましくは80~97モル%、さらに好ましくは86~95モル%であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。
すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
また、上記多価カルボン酸の一部として、5-ソジウムスルホイソフタル酸などのスルホイソフタル酸類を共重合して、ポリエステル骨格にスルホン酸基を導入し、中和して親水化した物が好ましく用いられる。共重合する量は、多価カルボン酸全体に対し通常1~13モル%、好ましくは3~10モル%、さらに好ましくは5~9モル%である。スルホン酸基を適量導入することで、樹脂の親水性を高め、凹凸構造を形成しやすくすることができる。さらに水分散安定性を向上させることができる。
(イオン導電性の高分子化合物)
イオン導電性の高分子化合物とは、イオン導電性の官能基を含む高分子化合物であり、例えば、アンモニウム基含有化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸化合物、ベタイン化合物等の高分子化合物が挙げられる。これらの中でも極性が高く、効果的に凹凸を形成するという観点から、アンモニウム基含有化合物が特に好ましい。
アンモニウム基含有化合物とは、分子内にアンモニウム基を有する化合物を指し、アンモニウム基を有する高分子化合物であることが好ましい。例えば、アンモニウム基と不飽和性二重結合を有する単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
かかる重合体の具体的な例としては、例えば下記式(1)で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体を挙げることができる。これらの単独重合体や共重合体、さらに、その他の複数の成分を共重合していても構わない。
上記式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ基、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲン等である。また、RおよびRは化学的に結合していてもよく、例えば、-(CH-(m=2~5の整数)、-CH(CH)CH(CH)-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=N-、-CH=CH-N=C-、-CHOCH-、-(CHO(CH-などを挙げることができる。
上記式(1)中のX-は、本発明の要旨を損なわない範囲で適宜選択することができる。例えば、ハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等を挙げることができる。
前記重合体、すなわちアンモニウム基と不飽和性二重結合を有する単量体を成分として含む重合体の中でも、造膜性を高め、安定した被膜が得られるという観点から、他のモノマーと共重合していてもよい。
他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキル、n-メチロールアクリルアミド等のアクリルアミドを挙げることができる。
また、より極性を高め、効果的に凹凸を形成するという観点からは、上記式(1)で示される構成要素を繰り返し単位とした単独重合体が好ましい。
また、アンモニウム基含有化合物の数平均分子量は、1000~500000であるのが好ましく、中でもより好ましくは2000~350000、さらに好ましくは5000~200000以下である。分子量を1000以上とすることで、塗膜の強度が弱くなることを防止でき、耐熱安定性を良好にしやすくなる。また、分子量を500000以下とすることで、塗布液の粘度が高くなることを防止して、取扱い性や塗布性を良好にしやすくなる。
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物で、水分散性又は水溶性のものが好ましい。本発明では、単独でも2種以上を併用してもよい。
水分散性又は水溶性を付与させるために、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をポリウレタン樹脂に導入することが一般的であり好ましい。前記親水性基のなかでも、樹脂層とポリエステルフィルムの密着性の点から、カルボキシル基又はスルホン酸基が特に好ましい。
ポリウレタン樹脂を作製する方法の一つに、水酸基含有化合物とイソシアネートとの反応によるものがある。原料として用いられる水酸基含有化合物としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸又はそれらの酸無水物と多価アルコールから得られるものが挙げられる。多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えばポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
上記した中でもポリエステルポリオール類が好ましい。
ポリウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
ポリウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール;キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール;ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えばトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。
本組成物中の化合物(C)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは2~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは8~35質量%、よりさらに好ましくは10~25質量%の範囲である。当該含有量を2質量%以上とすることで、相分離による凹凸構造の形成、及び、本組成物を塗布液とした時の塗布性の向上を両立させることができる。また、当該含有量を50質量%以下とすることで、一方の樹脂の含有量を確保することができ、相分離による凹凸形成性能を適度に調整することができる。
(((特に好ましい形態)))
本組成物に含まれる化合物(A)、(B)および(C)としては、(a)離型剤及び架橋剤、(b)離型剤、バインダー樹脂及び架橋剤の組み合わせが特に好ましい。
((化合物(D)))
本組成物は、(D)微粒子(化合物(D))を含有する必要がある。微粒子を併用することによって、凹凸構造を有する硬化樹脂層において、凸部の表面硬度をさらに向上させることが可能となる。凸部の表面硬度を上げることによって、本積層ポリエステルフィルムをロール状にした際にも、硬化樹脂層表面の凸部が変形しにくくなり、良好なロール外観を得ることができるようになる。また、微粒子を含有することで、硬化樹脂層の表面を所望の粗さにしやすくなり、例えば、硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)及び二乗平均平方根勾配(Sdq)を所定の範囲内に調整しやすくなる。
前記微粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム及び酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。これらの中では、シリカ、酸化アルミニウムが好ましい。
前記微粒子の平均粒径は、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは2~60nm、さらに好ましくは3~30nmである。当該平均粒径がかかる範囲であれば、粒子の凝集による粗大突起の発生や、粒子の脱落による工程の汚染を抑制することができ、所望する微細な凹凸構造を得やすくなる。
なお、微粒子の平均粒径の測定方法は、比表面積測定装置によって測定される比表面積と粒子の密度より算出する方法や、透過型電子顕微鏡(TEM)もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)観察して粒子の直径を算出する方法、動的光散乱法による測定から求める方法があり、微粒子の平均粒径により適した手法によって測定できる。
本組成物中の微粒子の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~45質量%、さらに好ましくは10~40質量%、より更に好ましくは25~35質量%の範囲である。当該含有量をかかる範囲とすることで、凸部の表面硬度を向上させながら、所望する微細な凹凸構造を得ることができる。
((化合物(E)))
前記化合物(B)として架橋剤を含む場合には、本組成物は、さらに架橋触媒(E)(化合物(E))を含んでいてもよい。前記架橋触媒(E)は、架橋剤の反応性を高めるために使用するものであって、種々公知の触媒を使用することができる。例えばアミン化合物、アミン化合物の塩類、p-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸化合物やリン酸化合物などの有機酸類及びそれらの塩、イミン化合物、アミジン化合物、グアニジン化合物、有機金属化合物、ステアリン酸亜鉛やミリスチン酸亜鉛やステアリン酸アルミニウムやステアリン酸カルシウムなどの金属塩類等が挙げられる。これらの中でもアミン化合物、アミン化合物の塩類やp-トルエンスルホン酸が好ましく、アミン化合物やアミン化合物の塩類がより好ましい。
本組成物が架橋触媒を含む場合、本組成物中の架橋触媒の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~4質量%、さらに好ましくは1~3質量%の範囲である。当該含有量をかかる範囲とすることで、ポットライフの低下を抑制することができ、また、相分離による凹凸形成性能が十分となる。
((その他成分))
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、上記成分以外にも、消泡剤、塗布性改良剤、界面活性剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤をさらに適宜配合してもよい。
(((溶媒)))
本組成物は、溶媒で希釈して塗布液としてもよい。すなわち、本組成物は、液状の塗布液として、例えば本ポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて乾燥、かつ、硬化させて樹脂層を形成させるとよい。
なお、本組成物を構成する各成分(化合物(A)、化合物(B)、微粒子(D)、任意に添加されるバインダー樹脂(C)、架橋触媒(E)、その他成分等)は、溶媒に溶解させてもよいし、溶媒中に分散させてもよい。
塗布液とした場合、塗布液中における本組成物の全不揮発成分の濃度は、0.1~50質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、効率的に所望の厚みの樹脂層を形成することができる。一方、50質量%以下であれば、塗工時の粘度を抑えることで樹脂層の外観を向上させることができ、また、塗布液中の安定性を高めることができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、水及び有機溶剤のいずれも使用することができる。環境保護の観点から、水を主溶媒(全溶媒の50質量%以上)として水性塗布液とすることが好ましい。水の含有量に関して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であるのがよい。水性塗布液には、少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤の具体的な量は、質量基準で水の量以下とするとよいが、例えば、溶媒中の50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下とするのがよい。
水と併用する有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;エチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルエタノールアミン等のアミン類等を例示することができる。これらは単独、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。水性塗布液に、必要に応じてこれらの有機溶剤を適宜選択し、含有させることで、塗布液の安定性、塗工性を良好にできる場合がある。
また、上記溶媒として有機溶剤のみを使用する場合、かかる有機溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類;エタノール、2-プロパノール等のアルコール類;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類などを挙げることができる。これらは、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
樹脂層中には、本組成物を構成する各成分(化合物(A)、化合物(B)、微粒子(D)、任意に添加されるバインダー樹脂(C)、架橋触媒(E)、その他成分等)の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
なお、樹脂層中の各成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
<硬化樹脂層の形成方法>
次に、積層ポリエステルフィルムを構成する硬化樹脂層の形成方法について説明する。
本樹脂層は、本組成物をポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて、塗布した本組成物に対して乾燥、硬化、熱処理等などの処理を行って形成すればよく、少なくとも熱処理を行うことが好ましい。また、熱処理により、硬化樹脂組成物を硬化させることが好ましい。硬化樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えばリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
また、樹脂層の形成方法としては、インラインコーティング及びオフラインコーティングがある。塗布した樹脂組成物を熱処理する方法は、特に限定されるわけではなく、例えばオフラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。一方、インラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
また、熱処理は、上記温度範囲内において温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。熱処理の少なくとも一部は、延伸時の加熱により行ってもよい。また、乾燥及び硬化は、上記熱処理における加熱により合わせて行うとよい。
本発明では、樹脂層は、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成されるのが好ましい。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後、熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムのいずれかにコーティングする。
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と樹脂層形成を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
また、延伸前にフィルム上に樹脂層を設けることにより、樹脂層をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより樹脂層をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦及び横方向に拘束することができ、その後の熱処理(熱固定工程)において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。
それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、樹脂層の造膜性が向上し、樹脂層とポリエステルフィルムをより強固に密着させることができる。さらには、強固な樹脂層とすることができ、樹脂層上に形成され得る各種の機能層への耐移行性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングにかかわらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本樹脂層の不揮発成分の塗布量は、好ましくは0.005~0.95g/m、より好ましくは0.01~0.5g/m、さらに好ましくは0.02~0.2g/mり、よりさらに好ましくは0.02~0.15g/m、よりさらに好ましくは0.02~0.10g/m、その中でも特に0.03~0.08g/mであることが好ましい。
当該塗布量がかかる範囲であれば、相分離により微細な凹凸構造を形成することができる。
なお、当該塗布量は、塗布液不揮発成分濃度、塗布液消費量から導かれる乾燥前塗布量、横延伸倍率等から計算で求めることができる。
また、不揮発成分の塗布量とは、本積層ポリエステルフィルムにおける塗布量であり、例えば、乾燥及び延伸を行う場合には、乾燥延伸後の塗布量である。そして、上記不揮発成分の塗布量は、単位面積当たりの重量で表される、硬化樹脂層の厚みを示す指標ともいえる。
本発明に係る硬化樹脂層は、上述の樹脂組成物により形成された、硬化性樹脂組成物の硬化物である。
硬化樹脂層の厚みの好適な範囲は、不揮発成分の塗布量として述べたとおりであるが、硬化樹脂層の厚みが上記の範囲内であれば、前述の通り、相分離により、精密な凹凸構造を形成することができる。その結果、硬化樹脂層表面の平滑性が良好となり、平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)をともに低くすることができる。
特に硬化樹脂層を備えたポリエステルフィルムがA/B/C構成であり、硬化樹脂層と接する側の表面層が実質的に粒子を含有せず、かつ、ベース層Bに粒子を含有する場合、下地層である、表面層表面の微細な凹凸形状が硬化樹脂層表面の凹凸形成に及ぼす影響(例えば、表面層からの突き上げ効果)を緩和することができ、より効果的である。
樹脂層中には、本組成物を構成する各成分((A)離型剤、(B)架橋剤、(D)微粒子、任意に添加される(C)バインダー、(E)架橋触媒及びその他成分等)の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
なお、樹脂層中の各成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
(空気漏れ評価)
本積層ポリエステルフィルムの巻き取り性といったハンドリング性を評価する一つの指標として、空気漏れ指数を用いることができる。空気漏れ指数が低ければ、本積層ポリエステルフィルムを巻き上げた際に噛み込んだエアが抜けやすく、シワや端面不揃いなどのロール外観の不良を防ぐことができる。また、空気漏れ指数が高い場合、巻き込んだエアが十分時間経過後、特に搬送中に抜けることで、巻き芯方向にフィルムがズレたり、ズレによりキズが入ったりして問題となる。
本積層ポリエステルフィルムの空気漏れ指数は、例えば20000秒以下であり、10000秒以下が好ましく、さらに好ましくは8000秒以下、その中でも特に6000秒以下が好ましい。上記範囲を満足することにより、フィルム間の空気が抜けやすく、シワ等の発生がなく巻き取り性が良好となり、良好なロール外観を得ることができる。
本発明における硬化樹脂層は特定構成の組成物から構成することにより、相分離構造を形成させ、微細な凹凸構造を有する点に特徴がある。さらにロール状フィルムにした時にシワ発生のリスクを考慮し、凸部の表面硬度を向上させるために、微粒子を併用した点に特徴がある。上記設計思想により、従来の粒子練り込み型のフィルムの製法では達成困難な、微細な凹凸構造を精密に制御しながら形成することが可能となった。
[離型層]
本発明のポリエステルフィルムロールは、積層ポリエステルフィルムの硬化樹脂層を設ける面とは反対側のフィルム面に離型層を有することが好ましい。
当該離型層は、本フィルムにおいて、平均表面粗さ(Sa)が0.1nm以上15nm以下のフィルム表面側に積層されることが好ましい。
したがって、例えばポリエステルフィルムがA/B/A構成の場合には、離型層表面とは反対側のフィルム面に硬化樹脂層が積層され、離型層/A/B/A/硬化樹脂層の構成となる。
離型層が設けられる場合、本フィルムの粗面側に凹凸構造を有する硬化樹脂層を積層することで、フィルム巻き取り性を良好とし、超薄層のセラミック層を積層してグリーンシートをシート成形する際にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。
積層ポリエステルフィルムにおいて、前記離型層は、硬化樹脂層が設けられる面とは反対側のフィルム面に積層される。
離型層は、離型剤を含む離型剤組成物から形成されるが、良好な離型性能を得る観点から、とりわけ、該離型剤組成物中にシリコーン樹脂を含有することが好ましい。具体的には、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプや、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ、或いはフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。
硬化型シリコーン樹脂としては、付加型、縮合型等の熱硬化型や紫外線硬化型等の電子線硬化型等、既存の何れの硬化反応タイプでも用いることができ、また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用してもよい。
また、離型層を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限は無く、有機溶剤に溶解している形態、水系エマルジョンの形態、無溶剤の形態の何れであってもよい。
離型層を形成する離型剤組成物には、その他にも、必要に応じてバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機系有機系粒子、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料及び顔料等が含有されてもよい。
離型層の形成は、本フィルムに離型剤組成物をコーティングすることにより設けられ、フィルム製膜工程内で行うインラインコーティング、或いは、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングのいずれを採用してもよい。
本フィルム上に離型層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
離型層を形成する際の硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80℃以上で10秒間以上、好ましくは100~200℃で3~40秒間、より好ましくは120~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、公知の装置、エネルギー源を用いることができる。
離型層の塗工量(乾燥後)は塗工性の面から、通常、0.005~5g/m、好ましくは0.005~1g/m、更に好ましくは0.005~0.1g/mの範囲である。塗工量(乾燥後)が0.005g/m以下であると、塗工性が安定性し、均一な塗膜を得るのが容易になる。一方、5g/m以下であると、厚塗りされず、離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下することが防止できる。
なお、塗布量は、塗布した時間あたりの液質量(乾燥前)、塗工液不揮発分濃度、塗布幅、延伸倍率、ライン速度等から計算で求める。
(積層ポリエステルフィルムの用途)
本フィルムは、各種の離型用途に好適に用いることができる。
例えばドライフィルムレジスト(DFR)用、多層回路基板用、積層セラミックコンデンサーのセラミックグリーンシート製造用等の各種離型・工程用途として使用でき、中でもシート成形用に使用されることがより好ましい。本フィルムは、離型用途、工程用途では、例えば支持体として使用され、例えば支持体の少なくとも一方の面上にセラミックスラリーなどの様々な材料が塗布、積層などされるとよい。
なお、本樹脂層が片面にのみ設けられる場合には、各種材料は、硬化樹脂層が設けられた面とは反対側のフィルム面(反対面)に塗布、積層などされることが好ましいが、樹脂層が設けられたフィルム面側に塗布、積層などされてもよい。なお、本フィルムにおいては、硬化樹脂層が設けられた面の反対側に設けられた離型層上に様々な材料が塗布、積層などされてもよい。
とりわけ、本発明のポリエステルフィルムロールは、前述したように、高い平滑性を有するとともに、空気漏れ指数が良好であり、シワ発生が極力なく、ロール巻き取り性が改善されていることから、ポリエステルフィルムロールの生産性向上に伴い、フィルムの更なる長尺化が可能である。
例えば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、均一な薄膜の誘電体層を形成することができ、かつ、長尺化によるポリエステルフィルムロールの切替頻度の低減に伴う、生産性向上に貢献できる。とりわけ、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。
<<<語句の説明>>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<ポリエステルの製造>
[ポリエステル(A)]
ジメチルテレフタレート100質量部及びエチレングリコール65質量部を、攪拌装置、昇温装置及び留出液分離塔を備えたエステル交換反応槽に仕込み、150℃に加熱してジメチルテレフタレートを溶融させた。
次いで、得られるポリエステルに対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を添加した。
その後、常圧下で3時間かけて225℃まで昇温させ、更に225℃で1時間15分攪拌保持すると共にメタノールを留去しながらエステル交換反応を行ない、実質的にエステル交換反応を終了してポリエステル低重合体(オリゴマー)を得た。
次いで、前記オリゴマーを留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽へ移送した。
得られるポリエステル樹脂分に対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を、移送後のオリゴマーに添加した。
その後、得られるポリエステルに対するリン酸の添加量が0.017質量%となるように、熱安定剤としてリン酸のエチレングリコール溶液を添加した。
次いで、得られるポリエステルに対してチタン原子として4.5質量ppmとなるように、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、前記オリゴマーに添加した。
その後、101.3kPaから0.4kPaまで85分間で減圧し0.4kPaに保持するとともに、225℃から280℃まで2時間かけて昇温させ280℃で1.5時間保持して溶融重縮合反応を行い、極限粘度(IV)が0.63dL/gのポリエステルAを得た。
[ポリエステル(B)]
ポリエステル(A)でテトラブチルチタネートを添加する代わりに、得られるポリエステル樹脂分に対してアンチモン原子として300質量ppmとなるように、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加すること以外はポリエステル(A)と同様にして、極限粘度(IV)が0.63dl/gのポリエステル(B)を得た。
[ポリエステル(C)]
ポリエステル(A)中に、平均粒径(平均1次粒径)0.05μmのアルミナ粒子を0.75質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込み、極限粘度(IV)が0.63dL/gのポリエステル(C)を得た。
下記表1に示す組成にて撹拌混合して得られる硬化樹脂組成物を水で希釈して、各実施例、比較例の塗布液を調整した。使用した化合物は以下のとおりである。
[化合物(A):離型剤]
攪拌機、温度計、温度コントローラーを備えた内容量1.5Lの乳化設備に融点105℃、酸価16mgKOH/g、密度0.93g/mL、数平均分子量5000の酸化ポリエチレンワックス300g、イオン交換水650gとデカグリセリンモノオレエート界面活性剤を50g、48%水酸化カリウム水溶液10gを加え窒素で置換後、密封し150℃で1時間高速攪拌した後130℃に冷却し、高圧ホモジナイザーを400気圧下で通過させ40℃に冷却したワックスエマルション。
[化合物(B):架橋剤]
メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン
[化合物(C):バインダー樹脂]
下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
[化合物(D):微粒子]
平均粒径0.005μmのシリカ粒子
[化合物(E):架橋触媒]
2-アミノ-2-メチルプロパノールハイドロクロライド
[実施例1]
ポリエステルAが100質量%の原料を表層Aの原料とし、ポリエステルBが100質量%の原料を中間層Bの原料とし、原料の各々を3台の押出機に供給し、各々280℃で溶融した後、A層を表面層、B層を中間層とする二種三層(A/B/A)の層構成で、厚み構成比がA/B/A=1.6/27.8/1.6となるよう共押出して25℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸フィルムを得た。
次いで、このフィルムを86℃の加熱ロール群を通過させながら縦方向(MD方向)に3.5倍延伸した。その後、この縦延伸フィルムを表層Aの片面に、下記硬化樹脂組成物の塗布液を延伸及び乾燥後の厚みが0.06g/mになるように塗布し、テンター延伸機に導き横方向(TD方向)に105℃で4.5倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ31μmの積層ポリエステルフィルムを得て、積層ポリエステルフィルムを巻き取ってポリエステルフィルムロールとした。
なお、得られたフィルムは、下記組成を有する硬化樹脂組成物から形成される硬化樹脂層を有していた。
(A)離型剤: 32質量%
(B)架橋剤: 18質量%
(C)バインダー樹脂:15質量%
(D)微粒子: 33質量%
(E)架橋触媒 2質量%
[実施例2~4]
実施例1において、硬化樹脂層の厚みおよび硬化樹脂層の配合組成を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムロールを得た。
[実施例5]
ポリエステルAとCを87質量%と13質量%の割合で混合した原料を表層Aの原料とし、ポリエステルAが100質量%の原料をB層,表層Cの原料とし、原料の各々を3台の押出機に供給し、各々280℃で溶融した後、表層A、表層Cそれぞれを表面層,B層を中間層とする二種三層(A/B/C)の層構成で、厚み構成比がA/B/C=1.6/27.8/1.6となるよう共押出し、表面温度を25℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸フィルムを得た。
次いで、このフィルムを86℃の加熱ロール群を通過させながら縦方向(MD方向)に3.5倍延伸した。その後、この縦延伸フィルムを、表層C側の面に、硬化樹脂組成物の塗布液を延伸及び乾燥後の厚みが0.06g/mになるように塗布し、テンター延伸機に導き横方向(TD方向)に105℃で4.5倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ31μmの積層ポリエステルフィルムを得て、積層ポリエステルフィルムを巻き取ってポリエステルフィルムロールとした。
[実施例6~7]
実施例5において、硬化樹脂層の厚みおよび硬化樹脂層の配合組成を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムロールを得た。
[比較例1]
実施例1において、硬化樹脂層の厚みおよび硬化樹脂層の配合組成を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムロールを得た。
[比較例2]
実施例2において、硬化樹脂層の厚みおよび硬化樹脂層の配合組成を変更する以外は実施例2と同様にして製造し、ポリエステルフィルムロールを得た。
得られた各フィルムロールの特性を下記表1に示す。
<測定及び評価方法>
実施例及び比較例で用いた測定法及び評価方法を次のとおりである。測定及び評価結果は、表1にまとめた。
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度(IV)測定装置(離合社製「VMS-022UPC・F10」)を用いて、30℃で測定した。
(2)粒子の平均粒径及び粒度分布
走査型電子顕微鏡(HITACHI製、「S3400N」)を用いて、実施例及び比較例のポリエステルフィルムロールのポリエステルフィルムのA層側より、粉体を観察した。得られた画像データから粒子1個の大きさを測定し、10点の平均値を平均粒径(平均1次粒径)とした。
また、粒子の(D90-D10)/D50については、以下のように算出できる。粒子にフェノール/テトラクロロエタン=2/3の混合溶剤を添加した固形分0.03g/mLの分散液を調製し、当該分散液について、マイクロトラックベル社製「MT3300EXII」を用いてレーザー回折散乱法により、累積個数が10%となる粒子径D10、累積個数が50%となる粒子径D50及び累積個数が90%となる粒子径D90を測定し、(D90-D10)/D50を算出する。
(3)平均表面粗さ(Sa)、最大山高さ(Sp)
表面粗さ測定器(アメテック株式会社、「NewView」(登録商標))を用いて実施例及び比較例のポリエステルフィルムロールの積層ポリエステルフィルムのA層側および硬化樹脂層側(すなわち、C層がある場合はC層側)の表面を測定し、得られた表面のプロファイル曲線より、平均表面粗さSa値、最大山高さSp値を求めた(SaおよびSpいずれも測定数36点に対し最大値・最小値各3点分を除いた30点分の測定値平均をSa値、Sp値とした)。
(4)硬化樹脂層の凹凸構造
走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所社製 SPM-9700)を用いて、下記の条件で測定を行った。
探針:シリコンカンチレバー
走査モード:ダイナミックモード
走査範囲:25μm×25μm
スキャン速度:0.8Hz
画素数:512×512データポイント
得られたデータから25μm幅の断面形状を観察し、8割以上の位置において、段差が10nmを超える凸部もしくは凹部が複数ある場合は凹凸構造「有」、複数の凸部もしくは凹部を確認できない場合は凹凸構造「無」と判断した。
本実施例、比較例の硬化性樹脂層は、全て凹凸構造が「有」であった。
(5)硬化樹脂層表面の負荷長さ率(Rmr(80))
上記(4)と同様の方法で走査型プローブ顕微鏡の断面解析を行い、切断レベル80%の負荷長さ率(Rmr(80))を求めた。フィルムの製膜方向(すなわち、縦方向)に等間隔に10点の断面解析データを求め、これを平均して求めた。
(6)硬化樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)および突出山部高さ(Spk)
上記(4)と同様にAFM(株式会社島津製作所、SPM-9700)を用いて実施例及び比較例のポリエステルフィルムロールの硬化樹脂層が設けられた積層ポリエステルフィルムの表面を観察し、得られた画像データを画像解析ソフトSPIP6.2.5ImageMetrologyを用いて解析し二乗平均平方根勾配(Sdq)および突出山部高さ(Spk)を算出した。
(7)空気漏れ指数
デジベック平滑度試験機(東洋精機株式会社製、「DB-2」)を使用し、JIS P8119に準拠して、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で測定した。加圧装置の圧力は100kPa、真空容器は容積38mlの容器を使用し、1mLの空気が流れる時間、すなわち容器内の圧力が50.7kPaから48.0kPaに変化するまでの時間(秒)を計測し、得られた秒数の10倍を空気漏れ指数とした。試験フィルムのサンプルサイズは70mm四方として、試験フィルムの表裏が重なるように20枚を積層し、試験用積層フィルムとした。
試験用積層フィルムの中央に直径5mmの穴を開けて、前述の通り、空気漏れ指数を測定した。この空気漏れ指数の値が大きいほど、フィルム同士の隙間から空気が漏れるのに時間を要するので、フィルム同士がより密に接していることを示しており、ロール状フィルムにした時にシワ発生のリスクが大きいこと示す。
実施例1~7のポリエステルフィルムロールは、空気漏れ指数がいずれも20000秒以下であり、ロール状フィルムにした時にシワ発生のリスクが小さいことを示している。
また、実施例1~7の結果より、硬化樹脂層表面の表面形状が低Saかつ高Sdqを両立するためには、特定構成の硬化樹脂組成物の組み合わせにより、凹凸形成することが必要である。
さらに、比較例1、2においては、低Saかつ高Sdqの両立が困難なため、空気漏れ指数が大きく、ロール状フィルムにした時にシワ発生のリスクが大きいことを示した。これは相分離により形成される凹凸構造において、凸部の構造による差異により、実施例1から実施例7の凸部構造が急峻であるのに対して、比較例1および2は、緩やかな凸部形成であることが、空気漏れ指数の低下につながったものと推察される。
本発明における硬化樹脂層は特定構成の組成物から構成することにより、相分離構造を形成させ、微細な凹凸構造を有する点に特徴がある。さらにロール状フィルムにした時にシワ発生のリスクを考慮し、凸部の形状を急峻にするために、微粒子を併用した点に特徴がある。上記設計思想により、従来の粒子練り込み型のフィルムの製法では達成困難な、微細な凹凸構造を精密に制御しながら形成することが可能となった。
本発明のポリエステルフィルムロールは、高い平滑性を有するとともに、空気漏れ指数が良好であり、シワ発生が極力なく、ロール巻き取り性が改善されていることから、ポリエステルフィルムロールの生産性向上に伴い、フィルムの更なる長尺化が可能である。
例えば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、均一な薄膜の誘電体層を形成することができ、かつ、長尺化によるポリエステルフィルムロールの切替頻度の低減に伴う、生産性向上に貢献できる。とりわけ、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。

Claims (17)

  1. ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化樹脂層を備える積層ポリステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、
    前記積層ポリステルフィルムが、以下の(1)~(4)の全ての要件を満足するポリエステルフィルムロール。
    (1)前記硬化樹脂層が凹凸構造を有すること。
    (2)前記硬化樹脂層が(A)離型剤、(B)架橋剤、及び(D)微粒子を含有する硬化樹脂組成物から形成されること。
    (3)前記硬化樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)が1~9nmであること。
    (4)前記硬化樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)が0.40~0.80であること。
  2. 前記硬化樹脂層表面の最大山高さ(Sp)と平均表面粗さ(Sa)との比率(Sp/Sa)が30以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
  3. 前記硬化樹脂層表面の突出山部高さ(Spk)が70nm以上である、請求項1または2に記載のポリエステルフィルムロール。
  4. 前記硬化樹脂組成物が(C)バインダー樹脂を含む、請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  5. (C)バインダー樹脂が(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項4に記載のポリエステルフィルムロール。
  6. 前記硬化樹脂層の厚みが、単位面積当たりの重量で、0.02~0.15g/mである、請求項1~5のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  7. 前記硬化樹脂組成物における(A)離型剤の含有量が、不揮発成分として5~90質量%である、請求項1~6のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  8. 前記ポリエステルフィルムが、表面層、中間層、及び表面層をこの順に有する少なくとも3層構造のポリエステルフィルムであり、
    前記硬化樹脂層が、一方の前記表面層上に接するように設けられる、請求項1~7のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  9. 前記ポリエステルフィルムにおける表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)が、0.50dL/g以上である、請求項1~8のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  10. 前記ポリエステルフィルムにおける表面層は、チタン化合物を含む、請求項1~9のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  11. 前記ポリエステルフィルムにおける表面層は、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である、請求項1~10のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  12. 前記ポリエステルフィルムにおける一方の表面層が実質的に粒子を含有しない、請求項1~11のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  13. 前記ポリエステルフィルムにおける他方の表面層が実質的に粒子を含有しない、請求項12に記載のポリエステルフィルムロール。
  14. 前記ポリエステルフィルムにおいて、硬化樹脂層が設けられる面とは反対側の表面層の平均表面粗さ(Sa)が1~9nmである、請求項1~13のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  15. 前記硬化樹脂層が設けられる面とは反対側のフィルム表面に離型層を有する、請求項1~14のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  16. 積層セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1~15のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  17. 自動車用セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムロール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024019038A1 (ja) * 2022-07-20 2024-01-25 東洋紡株式会社 積層フィルムおよび積層フィルムの製造方法
WO2024019039A1 (ja) * 2022-07-20 2024-01-25 東洋紡株式会社 積層フィルムおよび積層フィルムの製造方法
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