JP2023080799A - 摩擦材組成物および摩擦材 - Google Patents

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Hiroki Hasegawa
淳一 氏田
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Abstract

【課題】高温域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少なく、さらに、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が低い摩擦材を提供する。【解決手段】摩擦材組成物は、摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満である摩擦材組成物であり、ベーマイトと、前記ベーマイトとは異なる別の無機充填材であり、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材(A)と、を含み、前記摩擦材組成物中の前記ベーマイトの含有量は、1質量%以上、24質量%以下であり、且つ前記摩擦材組成物中の粒径1μm以下の前記無機充填材(A)の含有量は、1質量%以上、25質量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は摩擦材組成物および摩擦材に関する。
ディスクブレーキ、ドラムブレーキ等の制動装置のディスクブレーキパッドおよびブレーキシューには摩擦材が使用されている。
特許文献1には、Al・nHOで表されるアルミナ水和物を含有する摩擦材は、500℃以上のようなより高温域においても有機材料の分解抑制が可能であることが記載されている。
特許文献2には、該摩擦調整材成分として酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムを全組成物中に2~7体積%用い、更に、摩擦調整材成分としてゼオライト、活性白土、活性アルミナ、シリカゲル、粉末・粒状若しくは繊維状活性炭および焼結多孔体から成る群より選ばれた1種以上を全組成物中に1~20体積%用いてなる摩擦材は、摩擦係数の安定性と低周波ノイズの低減に優れることが記載されている。
特許文献3には、摩擦調整剤として、リン片状ベーマイトが配合されている摩擦材は、高温時においても摩擦摩耗特性に優れ、且つ生産性、作業性に優れることが記載されている。
特開2009-221400号公報 特開2000-234086号公報 特開2000-240702公報
しかしながら、上述のような従来技術の摩擦材は、(i)高温域での高速制動時の効きおよび耐摩耗性に優れる、(ii)高温域での高速制動時にパッド欠けが少ない、および(iii)常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が低い、の全てを満足することはできない。具体的には、特許文献1および特許文献3に記載の技術は、600℃以上の温度域での高速制動時のパッド欠けへの対策が不十分である。特許文献2に記載の摩擦材は活性アルミナを含有しているため吸湿量が大きく、その結果、耐錆性、パッド強度が低い。また、モース硬度6の活性アルミナを含有しているため、特許文献2に記載の摩擦材は、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が高い。
本発明の一態様は、高温域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少なく、さらに、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が低い摩擦材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満である組成において、ベーマイトと、前記ベーマイトとは異なる別の無機充填材であり、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材(A)の粒径1μm以下のものとを所定量含む摩擦材は、上述した(i)~(iii)の全ての特性に優れた性能を有することを初めて見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の一態様に係る摩擦材組成物は、摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満である摩擦材組成物であり、ベーマイトと、前記ベーマイトとは異なる別の無機充填材であり、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材(A)と、を含み、前記摩擦材組成物中の前記ベーマイトの含有量は、1質量%以上、24質量%以下であり、且つ前記摩擦材組成物中の粒径1μm以下の前記無機充填材(A)の含有量は、1質量%以上、25質量%以下である構成である。
本発明の一態様によれば、銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満でありながらも、600℃以上の温度域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少なく、さらに、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が低い摩擦材を提供することができる。
DTVの発生メカニズムを概略的に示すディスクブレーキの正面図である。 DTVが発生したディスクロータ単体の正面図である。
<1.摩擦材組成物>
本発明の一態様に係る摩擦材組成物は、摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満である摩擦材組成物であり、ベーマイトと、前記ベーマイトとは異なる別の無機充填材であり、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材(A)と、を含み、前記摩擦材組成物中の前記ベーマイトの含有量は、1質量%以上、24質量%以下であり、且つ前記摩擦材組成物中の粒径1μm以下の前記無機充填材(A)の含有量は、1質量%以上、25質量%以下である。本態様の摩擦材組成物は、上述の成分を含む摩擦材原料を配合したものが意図される。本態様の摩擦材組成物は、後述する摩擦材を成形するために用いることができる。
〔特徴〕
本態様の摩擦材組成物は、摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満であるので環境に優しい。さらに、ベーマイトと、前記ベーマイトとは異なる別の無機充填材であり、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材(A)の粒径1μm以下のものと、を所定量含有するため、銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満である組成においても、600℃以上の温度域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く、且つ摩擦材の欠けが少なく、さらに、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が低い摩擦材を提供できるという優れた効果を奏する。
本態様の摩擦材組成物を用いた摩擦材は、高温域(例えば600℃以上、好ましくは650℃以上)での高速制動時の効きおよび耐摩耗性に優れているため、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)に代表される大型バッテリーを搭載する車両において優れた性能を発揮することができる。また、本態様の摩擦材組成物を用いた摩擦材は、常用の温度域(例えば、200℃以下)における非制動状態での走行時のロータ研削性が低いため、ディスクロータの不均一摩耗(Disk Thickness Variation:DTV)の成長量を小さく抑えることができる。DTVが大きくなりすぎることは、ブレーキ振動が発生する原因の一つとなることが知られている(例えば、特開2005-273770を参照)。従って、本態様の摩擦材組成物を用いた摩擦材をディスクブレーキ用パッドの摩擦面に使用したディスクブレーキは、常用の温度域における非制動状態での走行時のDTVの成長量を小さく抑えることができるので、ブレーキ振動の発生が少ないという優れた効果を奏する。なお、DTVの成長量は、後述する実施例に記載の方法によって測定した値をいう。
〔用途〕
上述のような特徴を有する本態様の摩擦材組成物は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)用のディスクブレーキ用パッド、ドラムブレーキ用ブレーキシューの摩擦面に使用される摩擦材に用いるため摩擦材組成物として特に有用である。なぜなら、EV/HEVは、大型バッテリー搭載により従来のガソリン車と比べ車両重量が重く、高速制動時においては回生ブレーキの寄与度が低いという傾向があり、従来のガソリン車と比べて高温域での高速制動時にブレーキパッドまたはブレーキシューの温度が上がりやすく、高温に達する頻度が増加するためである。
本態様の摩擦材組成物の用途はEV/HEV用に特に限定されるものではなく、二輪車を含む車両全般において採用されるディスクブレーキ用パッド、ドラムブレーキ用ブレーキシュー等の摩擦面に使用される摩擦材に好適に用いることができる。
〔原料〕
以下に、本態様の摩擦材組成物に含まれている原料(摩擦材原料)について説明する。
(銅)
本発明の一態様に係る摩擦材組成物は、摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満である。本発明の一態様に係る摩擦材組成物は、環境有害性の高い銅および銅合金の含有量が非常に少ないため、環境に優しい摩擦材を提供できるという効果を奏する。環境により優しい摩擦材を提供する観点から、摩擦材組成物中の銅の含有量は、0質量%(銅フリー)であることがより好ましい。本発明の一態様に係る摩擦材組成物中に含まれる銅は、繊維基材として添加された銅繊維に由来するものであり得る。
(ベーマイト)
本発明の一態様に係る摩擦材組成物は、無機充填材の1つとして、摩擦材組成物100質量%に対して1質量%以上、24質量%以下のベーマイトを含有している。ベーマイトは、アルミナ1水和物とも称される。本明細書において、「ベーマイト」の範疇には、一般式Al・HOで表される結晶性のベーマイトおよび一般式Al・nHO(nが1を越えて3未満)で表される結晶性の低いゲル状のベーマイトの両方が含まれる。前者は結晶構造としてベーマイト構造を有しており、通常、ベーマイトと称される。後者は擬ベーマイト構造を有しており、擬ベーマイトまたはベーマイトゲルと称される。中でも、結晶構造としてベーマイト構造を有するAl・HOで表される結晶性のベーマイトが好ましい。ベーマイトのモース硬度は3.5~4である。結晶性のベーマイトおよび擬ベーマイトは、一般に、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解等の公知の製造方法により得られるが、天然由来のものであってもよい。結晶性のベーマイトと擬ベーマイトとは、公知の方法によって粉末X線回折スペクトルを確認することによって区別することができる。
(ベーマイトの作用および効果)
ベーマイトは、600℃以上の温度域での高速制動時の摩擦面において、ベーマイトが被膜を形成する。この被膜は、摩擦面における接触面積を増加させて摩擦係数(μ)を向上させると共に、摩擦面を保護することによって耐摩耗性を向上させる。その結果、摩擦材の耐熱性(効きおよび耐摩耗性)が向上し、パッドの欠けも少なくなるという効果を奏する。
本態様の摩擦材組成物中のベーマイトの含有量が摩擦材組成物100質量%に対して1質量%以上であることにより、ベーマイトの被膜によって十分に摩擦面が保護されるため、摩擦材の耐熱性(効きおよび耐摩耗性)が向上し、パッドの欠けが少なくなることに関して顕著な効果を得ることができる。また、本態様の摩擦材組成物中のベーマイトの含有量が摩擦材組成物100質量%に対して24質量%以下であることにより、パッド形成性が良好となる。
さらには、前述のとおり、ベーマイトのモース硬度は3.5~4であり、アルミナ(モース硬度9相当)や活性アルミナ(モース硬度6相当)と比較して、粒子の硬度が低い。このため、本態様の摩擦材組成物中にベーマイトを含有することにより、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性を低くすることができ、その結果、ブレーキ振動の発生が少なくなるという効果を奏する。なお、ベーマイトとは結晶形が異なるアルミナ1水和物として、ダイアスポアが知られている。ダイアスポアはベーマイトよりも強固な結晶構造を有しており、モース硬度は6.5~7である。このことから、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性を低くする観点から、アルミナ1水和物の中でもベーマイトが好ましいといえる。ベーマイトとダイアスポアとは、公知の方法によって粉末X線回折スペクトルを確認することによって区別することができる。
(ベーマイトの好ましい含有量)
摩擦材の高温域での高速制動時の性能(効きおよび耐摩耗性)をより向上させる観点から、摩擦材組成物中のベーマイトの含有量は、摩擦材組成物100質量%に対して3質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。
(ベーマイトの好ましい粒径)
ベーマイトの粒径は限定されないが、ベーマイトの平均粒径が50μm以下であれば、摩擦材組成物の製造時に偏りなく均一に混合することが可能となること、および制動時にベーマイトの粒子が摩擦面から脱落しにくいことから、摩擦材の高温域での高速制動時の性能(効きおよび耐摩耗性)の向上効果が安定して得られるため好ましい。また、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性をより低くする観点から、ベーマイトの平均粒径が10μm以下であることがより好ましい。また、摩擦材組成物の製造時の取扱い性の観点から、ベーマイトの平均粒径が1μm以上であることが好ましい。ベーマイトの平均粒径は、JIS Z 8825「粒子径解析-レーザ解析・散乱法」により得られる体積基準の中位径(メジアン径)とする。摩擦材形成後にベーマイトの粒子径を確認する場合は、摩擦材の断面の電子顕微鏡画像からベーマイトに該当する粒子の平均粒径をJIS Z 8827-1「粒子径解析-画像解析法-第1部:静的画像解析法」により体積基準の粒度分布を測定し、中位径を求めればよい。
(ベーマイトの好ましい粒子形状)
ベーマイトの粒子形状としては、例えば、鱗片状、板状、粒状、立方体状、針状、いがぐり状等を挙げることができる。ベーマイトの粒子形状は特に限定されないが、鱗片状または板状のベーマイトは潤滑性を有しているため、常用の温度域における制動時の効きを向上させる観点から、ベーマイトの粒子形状は、粒状、立方体状または針状であることが好ましい。また、パッドの緻密性を高め、パッドの欠けをより少なくする観点から、ベーマイトの粒子形状は、粒状または立方体状であることがより好ましい。なお、立方体状は、粒状の粒子形状の一態様である。
ベーマイト粒子の厚みに対する長径の比として表されるアスペクト比(長径/厚み)が低い粒子形状(例えば、アスペクト比(長径/厚み)が4未満)を粒状または立方体状といい、アスペクト比(長径/厚み)が高い粒子形状(例えば、アスペクト比(長径/厚み)が4以上)を鱗片状または板状という。アスペクト比(長径/厚み)が高い粒子形状であり、且つアスペクト比(長径/短径)が高い粒子形状を針状という。多数の針状片が結束し、いがぐり状の形状を成す粒子形状をいがぐり状という。
(粒径1μm以下の無機充填材(A))
無機充填材(A)は、ベーマイトとは異なる別の無機充填材であり、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である任意の無機充填材をいう。本発明の一態様に係る摩擦材組成物は、無機充填材の1つとして、ベーマイトを前述した所定量含有すると共に、摩擦材組成物100質量%に対して、粒径1μm以下の無機充填材(A)を、1質量%以上、25質量%以下含有している。
(粒径1μm以下の無機充填材(A)の作用および効果)
本発明の一態様に係る摩擦材組成物中の粒径が1μmを超える粒子の隙間に、粒径が1μm以下の無機充填材(A)の粒子が入り込むことによって、摩擦材の充填率が上昇し、緻密な構造となる。これにより、本態様の摩擦材組成物を用いた摩擦材は、600℃以上でバインダである樹脂が分解した場合も、空隙の少ない緻密な構造である。また、無機充填材(A)の分解温度は600℃以上であり、無機充填材(A)自体も分解されにくいため、600℃以上の温度域での高速制動時にも空隙の少ない緻密な構造を保持できる。その結果、摩擦材の摩擦面が崩れにくく、効きおよび耐摩耗性が良好となるという優れた効果を奏する。
本態様の摩擦材組成物中の粒径1μm以下の無機充填材(A)の含有量が摩擦材組成物100質量%に対して1質量%以上であることにより、摩擦材の充填率が上昇し、十分に緻密な構造となるため、摩擦材の摩擦面が崩れにくく、効きおよび耐摩耗性が良好となることに関して顕著な効果を得ることができる。また、本態様の摩擦材組成物中の粒径1μm以下の無機充填材(A)の含有量が摩擦材組成物100質量%に対して25質量%以下であることにより、パッド形成性が良好となる。
さらには、前述のとおり、無機充填材(A)のモース硬度は5以下であるので、本態様の摩擦材組成物中に粒径1μm以下の無機充填材(A)を含有することにより、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性を低くすることができ、その結果、ブレーキ振動の発生が少なくなるという効果を奏する。
(無機充填材(A)の例)
無機充填材(A)は、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材であれば、その種類は特に限定されない。分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ等を挙げることができる。摩擦材をより緻密にする観点から、無機充填材(A)は、アスペクト比(長径/厚み)が低い硫酸バリウム、炭酸カルシウムであることが好ましい。無機充填材(A)は、1種類を単独でまたは複数種類を組み合わせて使用することができる。無機充填材(A)を複数種類組み合わせて使用する場合、本態様の摩擦材組成物中の粒径1μm以下の無機充填材(A)の含有量は、複数種類の粒径1μm以下の無機充填材(A)の総量である。なお、ベーマイトは、モース硬度が5以下であるが、分解温度が約500℃であることから、無機充填材(A)は、ベーマイトとは異なる別の無機充填材である。
(無機充填材(A)の分解温度)
本明細書中に記載の「分解温度」は、JIS K 0129「熱分析通則」における熱重量測定(TG)の測定により得られる、重量減少が開始した温度のことをいう。重量減少が開始した温度は、加熱により脱離する分子相当の重量が減少した温度域で最も低い温度とする。
高温での効果を高める観点から、無機充填材(A)は、分解温度が650℃以上であることが好ましく、700℃以上であることがより好ましい。
(無機充填材(A)のモース硬度)
本明細書中に記載の「モース硬度」は、1~15までの15段階の値で表される修正モース硬度を意味している。修正モース硬度は、公知の測定方法に従って測定することができる。
また、DTV成長量の観点から、無機充填材(A)は、モース硬度が4.5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。
(無機充填材(A)の粒径)
本態様の摩擦材組成物は、粒径が1μm以下の無機充填材(A)を前述した所定量含有していればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、粒径が1μm以下の無機充填材(A)と共に、粒径が1μmよりも大きい無機充填材(A)を含有していてもよい。粒径が1μmよりも大きい無機充填材(A)の粒径の上限値は特に限定されず、当該技術分野で通常採用される無機充填材の粒径を好ましく適用することができる。
本態様の摩擦材組成物中に含まれている粒径が1μm以下の無機充填材(A)の量は、以下の方法で求めればよい。
1.JIS Z 8825「粒子径解析-レーザ解析・散乱法」により無機充填材(A)の体積基準粒度分布を測定する。
2.得られた無機充填材(A)の粒度分布より1μm以下の粒子積算値を求める(単位%)。
3.前項「2」で得た粒子積算値は、無機充填材(A)に含まれる1μm以下の粒子の割合を示す。したがって、摩擦材の粒径1μm以下の無機充填材(A)の含有量は、以下の式で算出できる。
無機充填材(A)の摩擦材中の含有量(質量%)×1μm以下の粒子積算値(%)/100
同様の方法によって、本態様の摩擦材組成物中に含まれている粒径が1μmよりも大きい無機充填材(A)の量を測定することができる。
(粒径1μm以下の無機充填材(A)の好ましい含有量)
摩擦材の高温域での高速制動時の性能(効きおよび耐摩耗性)をより向上させる観点から、摩擦材組成物中の粒径1μm以下の無機充填材(A)の含有量は、摩擦材組成物100質量%に対して1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。
(ベーマイトおよび無機充填材(A)の表面処理)
ベーマイトおよび無機充填材(A)は、粒子の表面に表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理を施したベーマイトおよび無機充填材(A)を使用することによって、バインダである樹脂とのなじみ性が改善、耐水性の向上等の効果を奏する。
表面処理方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ベーマイトおよび無機充填材(A)の粒子に対して、カップリング材処理、リン酸処理等の処理を行う方法;ベーマイトおよび無機充填材(A)の粒子の表面にシリカ、アルミナ等の無機層を形成する方法;等を挙げることができる。
(その他の成分)
本態様の摩擦材組成物は、上述した成分の他に、繊維基材、結合材、有機充填材、並びにベーマイトおよび無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材を摩擦材原料として含有する。
(繊維基材)
繊維基材としては、例えば、有機繊維、無機繊維、金属繊維等を挙げることができる。これらの繊維は、天然繊維であってもよく、人工的に合成した合成繊維であってもよい。有機繊維としては、例えば、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、アクリル繊維、セルロース繊維、炭素繊維等を挙げることができる。無機繊維としては、ロックウール、ガラス繊維等を挙げることができる。金属繊維としては、スチール、ステンレス、アルミニウム、亜鉛、スズ等の単独金属からなる繊維、並びに、それぞれの合金金属からなる繊維を挙げることができる。繊維基材は、1種類を単独でまたは複数種類を組み合わせて使用することができる。摩擦材組成物中の繊維基材の含有量は特に限定されず、当該技術分野で通常採用される含有量とすることができる。
(結合材)
結合材は、摩擦材組成物中の摩擦材原料を結合させる機能を有している。結合材としては、前記性能を発揮できるものであれば特に限定されず、当該技術分野で公知の結合材を好ましく使用することができる。結合材の具体例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂等の樹脂を挙げることができる。結合材は、1種類を単独でまたは複数種類を組み合わせて使用することができる。摩擦材組成物中の結合材の含有量は特に限定されず、当該技術分野で通常採用される含有量とすることができる。また、結合剤はシリコンゴム、アクリルゴム、カシューオイル等の変性成分を含んでいてもよい。
(有機充填材)
有機充填材は、耐摩耗性等を向上させるための摩擦調整材としての機能を有している。有機充填材としては、前記性能を発揮できるものであれば特に限定されず、当該技術分野で公知の有機充填材を好ましく使用することができる。有機充填材の具体例としては、カシューダスト、ゴム粉、タイヤ粉、フッ素樹脂、メラミンシアヌレート、ポリエチレン樹脂等を挙げることができる。有機充填材は、1種類を単独でまたは複数種類を組み合わせて使用することができる。また、有機充填材は、リン酸やフッ素樹脂によって表面を被覆していてもよい。摩擦材組成物中の有機充填材の含有量は特に限定されず、当該技術分野で通常採用される含有量とすることができる。
(ベーマイトおよび無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材)
本態様の摩擦材組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ベーマイトおよび無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材を含んでいてもよい。ベーマイトおよび無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材としては、当該技術分野で公知の無機物を好ましく使用することができ、例えば、酸化ジルコニウム、酸化鉄(酸化第一鉄、酸化第二鉄等)、チタン酸塩、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸ジルコニウム等の珪酸化合物、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム等の炭酸化合物等を挙げることができる。チタン酸塩としては、例えば、チタン酸アルカリ金属塩、チタン酸アルカリ金属・第二族塩等を挙げることができ、具体例として、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸リチウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム等を挙げることができる。これらの無機充填材は、1種類を単独でまたは複数種類を組み合わせて使用することができる。ベーマイトおよび無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材の含有量は特に限定されず、ベーマイトおよび無機充填材(A)とあわせた無機充填材の総含有量が当該技術分野で採用される無機充填材の含有量の範囲となるように適宜調整すればよい。
ベーマイトおよび無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材として、酸化ジルコニウムやチタン酸塩を含有することにより、600℃以上の温度域での高速制動時の摩擦面において形成される被膜がより強固になり、摩擦材の耐熱性(効きおよび耐摩耗性)がより向上するため好ましい。この場合の酸化ジルコニウムおよびチタン酸塩の含有量の上限は特に限定されず、ベーマイトおよび無機充填材(A)とあわせた無機充填材の総含有量が当該技術分野で採用される無機充填材の含有量となるように適宜調整すればよい。酸化ジルコニウムおよびチタン酸塩の含有量が多い程、前述した摩擦材の耐熱性がより向上するため好ましい。
また、ベーマイトおよび無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材の粒径は特に限定されず、当該技術分野で通常採用される平均粒径を有する無機物を好ましく使用することができる。前述したとおり、粒径が1μmを超える粒子の隙間に、粒径が1μm以下の無機充填材(A)の粒子が入り込むことによって、摩擦材の充填率が上昇し、緻密な構造となることを考慮すると、ベーマイトおよび無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材は、粒径が1μmよりも大きい粒子を含むものであることが好ましく、ほとんどが粒径が1μmよりも大きい粒子であり、粒子粒径が1μm以下の粒子を実質的に含まないものであることがより好ましい。「粒径が1μm以下の粒子を実質的に含まない」とは、粒径が1μm以下の粒子の含有量が、全体の20質量%以下、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であることを意味している。本態様の摩擦材組成物中の粒径が1μmよりも大きい無機充填材の含有量は、ベーマイトおよび無機充填材(A)とあわせた無機充填材の総含有量が当該技術分野で採用される無機充填材の含有量の範囲となるように適宜調整すればよい。
(潤滑剤)
本態様の摩擦材組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、潤滑剤をさらに含んでいてもよい。潤滑剤としては特に限定されず、当該技術分野で公知の潤滑剤を好ましく使用することができる。潤滑剤の具体例としては、コークス、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、金属硫化物等を挙げることができる。金属硫化物としては、例えば、硫化スズ、三硫化アンチモン、二硫化モリブテン、硫化ビスマス、硫化鉄、硫化亜鉛、硫化タングステン等を挙げることができる。これらの潤滑剤は、1種類を単独でまたは複数種類を組み合わせて使用することができる。潤滑剤の含有量は特に限定されず、当該技術分野で通常採用される含有量とすることができる。
(摩擦材組成物の製造方法)
本態様の摩擦材組成物は、上述した摩擦材原料を配合し、それらを混合する混合工程を含む製造方法によって製造することができる。摩擦材原料を均一に混合する観点から、混合工程は、粉体状の摩擦材原料を混合する工程であることが好ましい。混合工程における混合方法および混合条件は、摩擦材原料を均一に混合することができる限り特に限定されず、当該技術分野で公知の方法を採用することができる。例えば、フェンシェルミキサ、レーディゲミキサ等の公知の混合機を使用して、摩擦材原料を常温で10分間程度混合すればよい。混合工程では、混合中の摩擦材原料が昇温しないように、公知の冷却方法によって摩擦材原料の混合物を冷却しながら混合してもよい。
<2.摩擦材>
本発明の一態様に係る摩擦材は、本発明の一態様に係る摩擦材組成物を成形してなる。本態様の摩擦材の効果、用途等は本発明の摩擦材組成物の一態様について説明したとおりであるのでここでは繰り返さない。
(摩擦材の製造方法)
本態様の摩擦材は、本発明の一態様に係る摩擦材組成物を成形する成形工程を含む製造方法によって製造することができる。成形工程における成形方法および成形条件は、本発明の摩擦材組成物の一態様を所定の形状に成形することができる限り特に限定されず、当該技術分野で公知の方法を採用することができる。例えば、本発明の摩擦材組成物の一態様をプレス等で押し固めることにより成形することができる。プレスによる成形方法としては、本発明の摩擦材組成物の一態様を加熱して押し固めて成形するホットプレス工法および本発明の摩擦材組成物の一態様を加熱せずに常温で押し固めて成形する常温プレス工法のいずれかを好適に採用することができる。ホットプレス工法で成形する場合には、例えば、成形温度を140℃以上、200℃以下(好ましくは160℃)とし、成形圧力を10MPa以上、40MPa以下(好ましくは20MPa)とし、成形時間を3分以上、15分以下(好ましくは10分)とすることで、本発明の摩擦材組成物の一態様を摩擦材に成形することができる。常温プレス工法で成形する場合には、例えば、成形圧力を50MPa以上、200MPa以下(好ましくは100MPa)とし、成形時間を5秒以上、60秒以下(好ましくは15秒)とすることで、本発明の摩擦材組成物の一態様を摩擦材に成形することができる。更に、必要に応じて、摩擦材の表面を研磨して摩擦面を形成する研磨工程を行ってもよい。
<3.摩擦部材>
本発明の一態様に係る摩擦材を摩擦面として用いた摩擦部材も本発明の範疇に含まれる。摩擦部材としては、本発明の摩擦材の一態様のみを備える構成、または裏板としての金属板等の板状部材と本発明の摩擦材の一態様とを一体化した構成とすることができる。本態様の摩擦部材の効果、用途等は本発明の摩擦材組成物の一態様について説明したとおりであるのでここでは繰り返さない。
本態様の摩擦部材を、板状部材と本発明の摩擦材の一態様とが一体化した構成とする場合は、本発明の摩擦材の一態様と板状部材とをクランプ処理し、その後、熱処理することによって本発明の摩擦材の一態様と板状部材とを接着することができる。クランプ処理の条件は特に限定されないが、例えば、例えば、180℃、1MPa、10分間である。また、クランプ処理後の熱処理の条件も特に限定されないが、例えば、150℃以上、250℃以下、5分以上、180分以下であり、好ましくは、230℃、3時間である。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る摩擦材組成物は、摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満である摩擦材組成物であり、ベーマイトと、前記ベーマイトとは異なる別の無機充填材であり、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材(A)と、を含み、前記摩擦材組成物中の前記ベーマイトの含有量は、1質量%以上、24質量%以下であり、且つ前記摩擦材組成物中の粒径1μm以下の前記無機充填材(A)の含有量は、1質量%以上、25質量%以下である、構成である。このような構成によれば、銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満でありながらも、600℃以上の温度域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少なく、さらに、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が低い摩擦材を提供できるという効果を奏する。
本発明の態様2に係る摩擦材組成物は、前記の態様1において、前記ベーマイトは、平均粒径が10μm以下であることが好ましい。このような構成によれば、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性がより低い摩擦材を提供できる。
本発明の態様3に係る摩擦材組成物は、前記の態様1または2において、前記摩擦材組成物中の前記ベーマイトの含有量は、3質量%以上、15質量%以下であり、且つ前記摩擦材組成物中の粒径1μm以下の前記無機充填材(A)の含有量は、1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。このような構成によれば、600℃以上の温度域での高速制動時の効きおよび耐摩耗性がより高い摩擦材を提供できる。
本発明の態様4に係る摩擦材組成物は、前記の態様1から3のいずれか1つにおいて、前記ベーマイトは、粒状ベーマイトであることが好ましい。このような構成によれば、パッドの緻密性を高め、パッドの欠けをより少なくすることができる。
本発明の態様5に係る摩擦材は、前記の態様1から4のいずれか1つの摩擦材組成物を成形してなる、構成である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
<摩擦材原料>
実施例および比較例で用いた主要な摩擦材原料は以下のとおりである。
・ベーマイト(Al・HO):平均粒径1μm、8μm、および50μm;粒子形状は粒状(アスペクト比(長径/厚み)1.5)
・活性アルミナ:平均粒径8μm
・硫酸バリウム(無機充填材(A)):粒径1μmを超える粒子を含まない硫酸バリウムと粒径1μm以下を含まない硫酸バリウムの2種を使用した。
・炭酸カルシウム(無機充填材(A)):硫酸バリウムと同様に、粒径1μmを超える粒子を含まない炭酸カルシウムと粒径1μm以下の粒子を含まない炭酸カルシウムの2種を使用した。
・水酸化アルミニウム、およびアルミナ(Al):粒径1μmを超える粒子を含まない水酸化アルミニウムとアルミナを使用した。
・酸化ジルコニウム、マイカ(無機充填材(A))、酸化鉄(組成:Fe)、および水酸化カルシウム:粒径1μm以下の粒子を含まない原料を使用した。
上述した摩擦原料以外の原料は、当技術分野で通常用いられるものを使用した。
粒径1μm以下の無機充填材として実施例または比較例で使用した以下の無機充填材の物性を表1にまとめた。
Figure 2023080799000001

これらの無機充填材の粒径が1μmよりも大きい粒子も、粒径1μm以下の粒子と物性は同じである。
〔実施例1〕
<ブレーキパッドの作製>
表2に示す配合比率に従って各原料を配合し、レーディゲミキサを使用して、常温(20℃)で10分間程度混合することで、摩擦材組成物を得た。なお、表2の各原料の配合量の単位は、摩擦材組成物中の質量%である。
成形プレスを使用して、ホットプレス工法によって摩擦材組成物を加熱しつつ押し固めて成形して成形品を得た。ホットプレス工法による成形条件は、以下のとおりであった:
成形温度:160℃
成形圧力:20MPa
成形時間:10分間
得られた成形品の表面を、研磨機を用いて研磨し摩擦面を形成して、摩擦材を得た。この摩擦材を使用して実施例1のブレーキパッドを作製し、高温試験および試験後DTV成長量の評価を行った。なお、実施例1で作製したブレーキパッドは、摩擦材の厚み12.5mm、摩擦材投影面積55cmであった。
〔実施例2~10〕
表2に示す配合比率に従って各原料を配合したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~10のブレーキパッドを作製した。
〔比較例1~10〕
表3に示す配合比率に従って各原料を配合したこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例1~10のブレーキパッドを作製した。
<高温試験>
AMSフェード試験(独自動車雑誌auto motor und sportに掲載の評価条件:車速130km/時間、最高ロータ温度600℃以上)を実施し、実施例1~10および比較例1~10のブレーキパッドについて、以下の評価を行った。各試験の最高ロータ温度は650~670℃であった。
(最低摩擦係数)
AMSフェード試験時の最も低い摩擦係数を、下記の方法で測定した。
(最低摩擦係数の測定方法)
1制動中の最低トルクを用いて、各制動の摩擦係数をJIS D 0106記載の計算式で算出した。試験中で最も低い摩擦係数を最低摩擦係数とした。
最低摩擦係数の測定結果を、以下に示す基準に従ってA~Eの5段階のスコアで評価した。
A:比較例1に対して20%を超えて良化
B:比較例1に対して10%以上、20%以下良化
C:比較例1と同じまたは同等
D:比較例1に対して10%以上、20%以下悪化
E:比較例1に対して20%を超えて悪化
ここでは、評価対象のブレーキパッドの最低摩擦係数が比較例1のブレーキパッドの最低摩擦係数に対して10%以上増加した場合に「良化」と評価し、評価対象のブレーキパッドの最低摩擦係数が比較例1のブレーキパッドの最低摩擦係数に対して10%以上減少した場合に「悪化」と評価した。評価対象のブレーキパッドの最低摩擦係数の増減が比較例1のブレーキパッドの最低摩擦係数に対して10%未満の場合は、比較例1と同じまたは同等と評価した。
(摩耗量)
AMSフェード試験後のブレーキパッドの摩耗量を、下記の方法で測定した。
(摩耗量の測定方法)
JASO C427 6.計測方法に準じて摩耗量を測定した。
試験後、ブレーキパッド1点につき8か所のパッド摩耗量を測定し、その平均値を「パッド摩耗量」とした。
摩耗量の測定結果を、以下に示す基準に従ってA~Eの5段階のスコアで評価した。
A:比較例1に対して20%を超えて良化
B:比較例1に対して10%以上、20%以下良化
C:比較例1と同じまたは同等
D:比較例1に対して10%以上、20%以下悪化
E:比較例1に対して20%を超えて悪化
ここでは、評価対象のブレーキパッドの摩耗量が比較例1のブレーキパッドの摩耗量に対して10%以上減少した場合に「良化」と評価し、評価対象のブレーキパッドの摩耗量が比較例1のブレーキパッドの摩耗量に対して10%以上増加した場合に「悪化」と評価した。評価対象のブレーキパッドの摩耗量の増減が比較例1のブレーキパッドの摩耗量に対して10%未満の場合は、比較例1と同じまたは同等と評価した。
(欠けの有無)
AMSフェード試験後のブレーキパッドの外観観察を目視で行い、ブレーキパッドにおける欠けの有無を確認した。
<試験後DTV成長量(μm)の測定>
不均一摩耗(以下、単にDTVという)は、図1に概略的に示したように、非制動状態での走行時にディスクロータ11の回転振れ(図1では振れ角θと振れ量Sとが誇張して示してある)に伴って、制動時に比較して非常に軽い面圧でインナーパッド12のブレーキ用摩擦材12aとアウターパッド13のブレーキ用摩擦材13aとがディスクロータ11の各摩擦面11a,11bに軽く接触し、その接触部分が各パッド12,13のブレーキ用摩擦材12a,13aによって削られることによって生じて成長するものである。また、このDTVは、一般に、図2に示したディスクロータ11の最大厚みToと最小厚みT1またはT2との差で表わされるものである。
台上試験機を用いて、初期のディスクロータの振れ量S(図1参照)を100μmに設定し、摺り合わせを50回(車速65km/時間→車速0km/時間、減速度3.5m/s、制動前パッド温度90℃)を行い、さらに、車速100km/時間で1時間空転させ、車速100km/時間→車速60km/時間の制動を10回連続で行い、これを1サイクルとして、合計30サイクル実施し、初期のDTVと比較し、その差分を試験後DTV成長量(μm)とした。
試験後DTV成長量の測定結果を、以下に示す基準に従ってA~Cの3段階のスコアで評価した。
A:比較例1に対して同等、または良化
B:比較例1に対して10%以上、20%以下悪化
C:比較例1に対して20%を超えて悪化
ここでは、評価対象のディスクロータにおける試験後DTV成長量が比較例1のディスクロータにおける試験後DTV成長量に対して10%以上減少した場合に「良化」と評価し、評価対象のディスクロータにおける試験後DTV成長量が比較例1のディスクロータにおける試験後DTV成長量に対して10%以上増加した場合に「悪化」と評価した。評価対象のディスクロータにおける試験後DTV成長量の増減が比較例1のディスクロータにおける試験後DTV成長量に対して10%未満の場合は、比較例1と同じまたは同等と評価した。試験後DTV成長量のスコアがAであれば、試験後DTV成長量を小さく抑えることができていることから、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が低い摩擦材であると言える。
前述のとおり、DTVはブレーキ振動の原因の一つとなるおそれがあることから、試験後DTV成長量の測定結果の評価結果のスコアは、ブレーキ振動の発生し易さを表していると言える。すなわち、試験後DTV成長量の測定結果のA~Cの3段階のスコアは、以下のブレーキ振動の発生し易さを表している。
A:比較例1と同等、または比較例1よりもブレーキ振動が少ない。
B:比較例1よりもブレーキ振動の発生がやや多い。
C:比較例1よりもブレーキ振動の発生が非常に多い。
<結果>
高速試験における各評価結果および試験後DTV成長量の測定における評価結果を表2および3に示した。
Figure 2023080799000002
Figure 2023080799000003

表2中の太線で囲った実施例は、実施例の中でも特に高温試験および試験後DTV成長量の測定の評価結果が良好であったものである。表2に示すとおり、実施例1~10のブレーキパッドは、無機充填材として摩擦材組成物中に(i)ベーマイトを1質量%以上、24質量%以下、および(ii)粒径が1μm以下の無機充填材(A)を1質量%以上、25質量%以下、含有することにより、比較例1のブレーキパッドと比較して、600℃以上の温度域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少なく、さらに、試験後DTV成長量が減少することが確認された。
比較例1~6に示す結果から、600℃以上の温度域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少ないという効果を発現するためには、ベーマイトの含有量と粒径が1μm以下の無機充填材(A)の含有量との両方が所定量含まれている必要があることが確認された。
また、比較例2、7および8に示すとおり、粒径が1μmよりも大きい無機充填材(A)や粒径が1μm以下の無機充填材(A)とは異なる別の無機充填材を所定量含有していても所期の効果が得られないことから、600℃以上の温度域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少ないという効果の発現には、粒径が1μm以下の無機充填材(A)が含まれている必要があることが確認された。
また、比較例9に示すとおり、ベーマイト(Al・HO)に代えて活性アルミナ(Al)を所定量含有していても所期の効果が得られないことから、600℃以上の温度域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少なく、さらに、試験後DTV成長量が減少するという効果の発現には、アルミナ水和物であるベーマイト(Al・HO)が含まれている必要があることが確認された。
以上の結果から、無機充填材として摩擦材組成物中に(i)ベーマイトを1質量%以上、24質量%以下、および(ii)粒径が1μm以下の無機充填材(A)を1質量%以上、25質量%以下、含有することにより、銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満でありながらも、600℃以上の温度域での高速制動時に効きおよび耐摩耗性が高く且つ摩擦材の欠けが少なく、さらに、常用の温度域における非制動状態での走行時のロータ研削性が低い摩擦材を提供することができることが明らかになった。
本発明の一態様に係る摩擦材組成物および摩擦材は、自動車等の車両の制動装置における摩擦部材に好適に利用することができる。
11 ディスクロータ
12 アウターパッド
13 インナーパッド
12a、13a ブレーキ用摩擦材
θ 回転振れ角
S 回転振れ量

Claims (5)

  1. 摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として0.5質量%未満である摩擦材組成物であり、
    ベーマイトと、
    前記ベーマイトとは異なる別の無機充填材であり、分解温度が600℃以上、且つモース硬度が5以下である無機充填材(A)と、を含み、
    前記摩擦材組成物中の前記ベーマイトの含有量は、1質量%以上、24質量%以下であり、且つ
    前記摩擦材組成物中の粒径1μm以下の前記無機充填材(A)の含有量は、1質量%以上、25質量%以下である、摩擦材組成物。
  2. 前記ベーマイトは、平均粒径が10μm以下である、請求項1に記載の摩擦材組成物。
  3. 前記摩擦材組成物中の前記ベーマイトの含有量は、3質量%以上、15質量%以下であり、且つ
    前記摩擦材組成物中の粒径1μm以下の前記無機充填材(A)の含有量は、1質量%以上、20質量%以下である、請求項1または2に記載の摩擦材組成物。
  4. 前記ベーマイトは、粒状ベーマイトである、請求項1から3のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の摩擦材組成物を成形してなる摩擦材。
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