JP3068798B2 - 摩擦材 - Google Patents

摩擦材

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JP3068798B2
JP3068798B2 JP9041753A JP4175397A JP3068798B2 JP 3068798 B2 JP3068798 B2 JP 3068798B2 JP 9041753 A JP9041753 A JP 9041753A JP 4175397 A JP4175397 A JP 4175397A JP 3068798 B2 JP3068798 B2 JP 3068798B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車等のディスク
ブレーキパッド、ドラムブレーキライニング、またはク
ラッチフェーシング等として使用される摩擦材に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】自動車のディスクブレーキパッド、ドラ
ムブレーキシュー等に使用される摩擦材は、制動のため
に、その相手材であるディスクロータ、ブレーキドラム
と摩擦係合し、運動エネルギーを熱エネルギーに変える
重要な役割を担っている。そのため、摩擦材は十分な摩
擦係数を有するだけでなく、高負荷にも耐えることがで
きる高い強度と、優れた耐熱性と耐摩耗性を有すること
が必要である。また、その摩擦係数は、制動時に発生す
る熱による温度変化に対しても変化が少なく安定したも
のであることも必要である。更には、相手材に対する攻
撃性が少ないこと、ノイズ(ブレーキ鳴き)やジャダー
の発生が少ないこと等も重要であり、摩擦材に求められ
る特性は多項目に亘っている。
【0003】そこで、従来から、これらの各種の特性を
満足させるために、摩擦材は多くの材料成分からなる複
合材として構成されている。即ち、摩擦材は、その骨格
を形成する繊維状の成分である繊維基材と、この繊維基
材を結合保持する樹脂成分である樹脂結合剤と、粉末状
の成分であって、これらの繊維基材と樹脂結合剤とのマ
トリックス中に分散し充填される摩擦・摩耗特性等の改
善のための各種の充填剤とから形成されている。なお、
この樹脂結合剤としては、一般にフェノール樹脂等の熱
硬化性樹脂が使用されている。また、充填剤としては、
主に摩擦係数を調整し安定化するための黒鉛等の固体潤
滑剤、カシューダスト等の摩擦調整剤、主に耐熱性、耐
摩耗性を確保するための硫酸バリウム、炭酸カルシウム
等の体質充填剤、摩擦係数を高めるためのケイ酸ジルコ
ニウム粉等のアブレッシブ剤等が使用されている。
【0004】ここで、摩擦材の基材としてその骨格を形
成し、それに適度な多孔性を付与すると共にその全体の
強度と弾性を与える繊維基材は、それの主要な特性を大
きく左右する最も重要な成分である。そして、このよう
な繊維基材としては、古くは石綿繊維(アスベスト)が
用いられていたが、その粉塵は健康に対する懸念がある
ことから、近年では石綿繊維以外の繊維材料が使用され
ている。
【0005】その一例として、スチール(炭素鋼)繊維
を繊維基材の主材として用いたセミメタリック系摩擦材
がある。このセミメタリック系摩擦材は、耐熱性に優れ
ると共に耐摩耗性に優れ、また比較的高い摩擦係数を得
ることができる。しかし、その反面、重量が重く、また
錆びたり、更には相手材を損傷し、摩耗させ易いという
不具合も有している。
【0006】そのため、最近では、繊維基材としてスチ
ール繊維を用いないか、または用いてもその配合量が少
ない、所謂、非スチール系摩擦材が摩擦材の主流となっ
ている。そして、この非スチール系摩擦材では、繊維基
材として、アラミド繊維等の耐熱性有機繊維、ガラス繊
維、チタン酸カリウム繊維またはウィスカ等の無機繊
維、銅繊維、真鍮繊維等の非鉄金属繊維が主に用いら
れ、また、これらの一種類のみでは石綿繊維の代替とな
る十分な性能が得られないため、複数種を組合わせて使
用されている。
【0007】しかし、このようなアスベスト代替繊維に
よる非スチール系摩擦材は、それらの繊維が比較的軟質
で、硬度が比較的低いことから、その摩擦係数が一般に
低い傾向にある。そこで、特に、この種の摩擦材におい
ては、その摩擦係数を十分に高めるために、繊維基材の
一部として、研摩性のセラミック繊維を合せて使用する
ことが知られている(例えば、特開平4−60225号
公報、特開平4−106183号公報、特開平4−30
4284号公報、特開平8−296678号公報等)。
【0008】即ち、この研摩性のセラミック繊維は、一
般にモース硬さが4以上である硬度の高いセラミック繊
維からなり、具体的には、シリカ繊維、アルミナ繊維、
アルミナ−シリカ系繊維、アルミナ−シリカ−ジルコニ
ア系繊維、炭化ケイ素系繊維、スラグウール或いはロッ
クウール等が挙げられる。これらの中でも、アルミナ−
シリカ系繊維及びアルミナ−シリカ−ジルコニア系繊維
は、比較的硬度も高いため、この種のセラミック繊維と
して最も代表的である。なお、これらのセラミック繊維
は、一般に、原料の溶融体をノズルから流下し、それに
高速気流を当てることによって、または、回転円板の遠
心力を利用することによって繊維化する方法、所謂、溶
融繊維化法によって、或いは、目的とする繊維の構成元
素を含む紡糸液(紡糸原料)から前駆体繊維を形成し、
これを所定の雰囲気で焼成することによって製造する方
法、所謂、前駆体繊維法によって製造される。
【0009】そして、このようなセラミック繊維を繊維
基材の一部として使用することによって、その研摩性に
より摩擦材の摩擦係数を向上することができ、また、相
手材の摩擦係合面に発生した錆を良好に落として清浄化
することができる。しかし、その研摩性(研削性)は、
それと同時に、相手材の摩耗を増大させるものでもあ
る。そこで、本出願人等の先の出願にかかる上記の特開
平8−296678号公報では、相手材の摩耗をより少
なく抑制する一方、摩擦係数を高めるために、繊維径が
十分に小さく、具体的には、平均繊維径で1.0〜4.
5μmのセラミックス繊維の使用を提案している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、摩擦材、
特に非スチール系摩擦材においては、繊維基材の一部と
してシリカ−アルミナ系等の研摩性のセラミック繊維を
使用することが知られている。そして、これによれば、
摩擦材の強度及び耐熱性を向上し、耐摩耗性をより向上
することができるだけでなく、そのセラミック繊維の研
摩性によって、摩擦材の摩擦係数を有効に高めることが
でき、また、良好な錆落とし性を確保することができ
る。しかし、その逆に、そのセラミック繊維の研摩性
(研削性)は相手材に対する攻撃性も同時に高めること
になり、それの摩耗を増大させる。また、この相手材の
摩耗は、より高い摩擦係数を得るためにそのセラミック
繊維の配合を多くするほど、より増大する。そして、こ
のような相手材の摩耗の増大は単に好ましくないと言う
だけでなく、それが過度に進行すると、偏摩耗となって
ノイズやブレーキジャダ等の異常振動の発生原因となる
虞れもある。
【0011】ただし、この相反する摩擦係数の向上と相
手材の摩耗の増大(悪化)については、前述の特開平8
−296678号公報に開示の技術手段によれば、有利
に解決することができる。即ち、同公報に教示されてい
るように、研摩性のセラミック繊維として繊維径が十分
に小さなものを使用することによって、相手材の摩耗を
余り増大させることなく、摩擦係数を高めることができ
る。つまり、相手材の摩耗を低いレベルに抑制しつつ、
高い摩擦係数を確保することができる。
【0012】しかしながら、繊維径が十分小さいセラミ
ック繊維を使用したこのような摩擦材であっても、特に
最近では自動車の高出力化、高速化等によって制動条件
もますます過酷になる傾向にあることから、更により高
い摩擦係数が得られることが望ましいことは言うまでも
ない。また、最近ではRV車の普及にも伴なって、錆落
とし性が良好であることも、摩擦材に要求される重要な
特性となっている。そのため、アルミナ−シリカ系繊維
等の研摩性のセラミック繊維を繊維基材の一部として含
む摩擦材、特に、非スチール系摩擦材においては、相手
材の摩耗を低く抑制する一方で、より高い摩擦係数と、
より良好な錆落とし性とを確保することが、なお主要な
課題の一つとされている。
【0013】そこで、本発明は、高い摩擦係数と良好な
錆落とし性とを確保することができ、しかも、相手材の
摩耗量を少なく抑制することができる摩擦材の提供を課
題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の特
開平8−296678号公報の教示を基礎に、その研摩
性のセラミック繊維について更に詳細な検討を重ねた結
果、その教示のように、摩擦係数と相手材の摩耗は主に
その繊維径によって左右され、繊維径が十分小さいこと
によって相手材の摩耗を少なく抑制しつつ摩擦係数を向
上することができるが、錆落とし性については繊維径だ
けでなく繊維長とも関連し、その繊維径に対して比較的
長いが、長すぎることのない適切な範囲の繊維長である
ことによって、良好な錆落とし性が得られることを見出
した。更に、これと共に、溶融繊維化法または前駆体繊
維法によって製造されるその研摩性のセラミック繊維に
は、それの製造時(冷却時)に繊維の表層が鱗片状に剥
離して生成した鱗片状物が含まれ、そして、この鱗片状
物は研摩性を阻害し、相手材の摩耗も減少させるが、特
に摩擦係数を低下させる傾向があり、したがって、セラ
ミック繊維として、その鱗片状物の含有量を十分に少な
くしたもの、即ち、嵩を増加するその鱗片状物が少な
く、嵩密度が比較的高いものを使用することによって、
より高い摩擦係数を確保できることを見出し、また確認
した。
【0015】即ち、本発明にかかる摩擦材は、研摩性の
セラミック繊維を含む繊維基材と、樹脂結合剤と、充填
剤とからなる摩擦材において、その研摩性のセラミック
繊維が、平均繊維径が1.0〜5.0μm、平均繊維長
が50〜150μmであり、かつ、嵩密度が0.20〜
0.40g/cm3 であって、摩擦材全体に対し1〜10
重量%の割合で含まれることを特徴とするものである
(請求項1)。
【0016】また、別の面からすれば、本発明にかかる
摩擦材は、研摩性のセラミック繊維を含む繊維基材と、
樹脂結合剤と、充填剤とからなる摩擦材において、その
研摩性のセラミック繊維が、平均繊維径が1.0〜5.
0μm、平均繊維長が50〜150μmであり、かつ、
繊維の表層が剥離してなる鱗片状物の繊維全体に対する
含有割合が30%以下であって、摩擦材全体に対し1〜
10重量%の割合で含まれることを特徴とするものであ
る。
【0017】なお、ここで、この鱗片状物の含有割合
は、その繊維の走査電子顕微鏡(SEM)写真から求め
られるものである。即ち、そのSEM写真(倍率:10
00〜5000倍)において鱗片状物の占める面積と繊
維状物(繊維本体)の占める面積とをそれぞれ概算して
求め、その鱗片状物の面積の繊維状物の面積と鱗片状物
の面積との合計面積に対する割合として算出されるもの
である。また、ここで、繊維表層の剥離物である鱗片状
物は、その繊維本体から完全に剥がれ落ちているものだ
けでなく、繊維本体に被着しているが実質的に剥がれそ
うな状態にある鱗片状物も含むものである。
【0018】このように、本発明の摩擦材においては、
繊維基材の一部として、繊維径が十分小さく平均繊維径
で1.0〜5.0μmであり、また平均繊維長が50〜
150μmの適切な範囲であると共に、嵩密度が0.2
0〜0.40g/cm3 と比較的大きい、つまり、繊維表
層の剥離物である鱗片状物の含有割合が少なく、繊維全
体に対する割合が30%以下である研摩性のセラミック
繊維が、摩擦材全体に対し1〜10重量%の割合で配合
されているので、後述の試験結果からも明らかなよう
に、相手材の摩耗を少なく抑制することができる一方、
より高い摩擦係数と良好な錆落とし性とを確保すること
ができる。
【0019】なお、この理由は必ずしも明らかではない
が、試験結果から次のように推測される。即ち、摩擦係
数は、セラミック繊維の繊維径にかかわらず、その研摩
性によって同程度に高められるが、相手材の摩耗につい
ては、繊維径が比較的大きいと相手材の研摩(研削)が
粗くなされ、その結果相手材の摩耗も増大するのに対
し、繊維径が十分小さいと、その研摩がより均一に滑ら
かになされる。繊維径が上記のように十分小さいことに
よって、相手材の摩耗を比較的少なく抑制しつつ摩擦係
数を高めることができるのは、そのためであると考えら
れる。また、同様に錆落とし性についても、繊維径が十
分に小さいことによって相手材の摩耗を少なく抑制しつ
つ錆落とし性を高めることができるが、特に、上記の所
定の範囲の繊維長によって良好な錆落とし性が得られる
のは、そのような繊維長であるとき、セラミック繊維は
圧縮成形による摩擦材の予備成形時に最も良く摩擦材表
面と平行に配列され、それによって相手材表面とのより
良い接触が得られるためであると思われる。更に、セラ
ミック繊維の表層の剥離生成物である鱗片状物が研摩性
を阻害するのは、破壊され易いその鱗片状物が相手材と
の摩擦係合時に更に微粉化され、その微粉化した粒子が
摩擦材と相手材との間に介在してむしろ減摩剤として働
くためであると考えられる。そのような鱗片状物の含有
割合が十分に少なく、嵩密度が比較的高いことによって
より高い摩擦係数が得られるのは、そのためであると思
われる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、この摩擦材について、更に
詳細に説明する。
【0021】上記のように、本発明の摩擦材において
は、繊維基材の一部として、平均繊維径が1.0〜5.
0μm、平均繊維長が50〜150μmであり、かつ、
嵩密度が0.20〜0.40g/cm3 である、即ち、繊
維中に含まれる鱗片状物の割合が少なく、繊維全体に対
して30%以下である研摩性のセラミック繊維を使用す
る。
【0022】この研摩性のセラミック繊維としては、モ
ース硬度において一般に4以上のものを使用することが
できる。ただし、モース硬度が4であるチタン酸カリウ
ム繊維またはウィスカは、耐摩耗性には優れているが研
摩性がないため、この研摩性のセラミック繊維には含ま
れない。したがって、この研摩性のセラミック繊維のモ
ース硬度は、より厳密には、そのチタン酸カリウム繊維
またはウィスカよりも高い4.5以上であることにな
る。他方、その上限は特に限定されるものではないが、
硬度が余り高くても摩擦係数の向上効果には限界があ
る。そのため、使用するセラミック繊維のモース硬度
は、実用上一般に、アルミナ繊維のモース硬度を限度と
する4.5〜9が好ましく、また、5〜7程度がより好
ましい。
【0023】そして、このようなモース硬度を有する研
摩性のセラミック繊維としては、具体的には、シリカ繊
維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、アルミナ−シリカ
系繊維、アルミナ−シリカ−ジルコニア系繊維、炭化ケ
イ素系繊維、ロックウールまたはスラグウール等を挙げ
ることができる。しかし、これらの中でも、断熱材用セ
ラミック繊維として一般的でもあるアルミナ−シリカ系
繊維、及びアルミナ−シリカ−ジルコニア系繊維は、適
度に高い硬度を有し、また所望の特性が容易に得られる
等の点で、特に好適に使用することができる。
【0024】なお、これらの研摩性のセラミック繊維
は、一般に、原料を溶融し、その溶融体を繊維状に引伸
ばすと共に冷却固化することによって製造する方法、所
謂、溶融繊維化法によって、或いは、目的とする繊維の
構成元素を含む紡糸液から前駆体繊維を形成し、これを
所定の雰囲気で焼成して繊維を製造する方法、所謂、前
駆体繊維法によって得ることができる。より具体的に
は、例えば、アルミナ−シリカ系繊維の場合は、原料で
あるアルミナとシリカとを所定の割合で混合し溶融して
原料溶融体を形成し、この溶融体をノズルからエアージ
ェット中に流下させ、エアージェットで吹飛ばすことに
より***・延伸して細繊化すると共に冷却固化する方法
(ブローイング法)、または、その溶融体を回転円盤上
に流下させ、それの遠心力を利用して飛散させることに
より***・延伸して繊維化すると共に冷却固化する方法
(スピニング法)で製造することができる。なお、前駆
体繊維法の場合も同様の方法でなされるが、アルミナ源
としては塩基性蟻酸アルミニウム等が、シリカ源として
は水溶性シリコーンやシリカゾル等が使用される。そし
て、そのブローイング等の条件を適宜設定することによ
り、得られるセラミック繊維の繊維径と繊維長を調整す
ることができる。
【0025】そして、この研摩性セラミック繊維の繊維
径は、相手材の摩耗を十分に抑えるために小さいほど好
ましく、平均繊維径で5.0μmより小さいことが好ま
しい。ただし、平均繊維径が1.0μm未満の繊維は、
製造が比較的困難であるだけでなく、十分な摩擦係数及
び相手材の錆落とし性を確保し難くなる傾向がある。そ
のため、平均繊維径は1.0〜5.0μmであることが
適当である。また、そのような繊維径と共に、用いるセ
ラミック繊維の繊維長については平均繊維長で50〜1
50μmであることが適切であり、それによって特に良
好な錆落とし性を得ることができる。即ち、錆落とし性
の点では、繊維長は比較的長いほど好ましく、平均繊維
径の少なくとも10倍である50μm以上の平均繊維長
が好ましい。ただし、繊維長が余り長いと却って錆落と
し性が低下する傾向があり、試験的に確認した範囲で
は、平均繊維長は150μmより短いことが好ましい。
なお、それらの繊維径と繊維長とはそれぞれ独立的に設
定することができるが、製造の容易性、摩擦材中での保
持性等の点も考慮すれば、平均繊維径に対する平均繊維
長の比(アスペクト比)は20〜50程度が最も好まし
い。
【0026】ところで、溶融繊維化法または前駆体繊維
法によって一般に製造されるセラミック繊維には、前述
のように、繊維表層の剥離生成物である鱗片状物が、繊
維から完全に剥れ落ちた状態で、或いは繊維に被着した
ままの状態で含有されている。即ち、この鱗片状物は、
セラミック繊維の製造時の冷却過程において、繊維の表
面と内部との冷却速度の差により(特に、表面が急冷さ
れることにより)、その表層部が脆くなって鱗状(薄片
状)に剥れて生成するものである。そして、このような
鱗片状物は、多いときには40%を越える割合で含まれ
る場合もある。なお、この鱗片状物はその繊維の嵩を増
加させるものであり、したがって、その含有量が多いほ
どセラミック繊維の嵩密度は低下する。
【0027】この鱗片状物は、薄片からなるため、重量
的には比較的僅かな割合でしか繊維中に含まれない。し
かし、これはセラミック繊維の研摩性を阻害し、それに
よる摩擦係数の向上効果を低下させるものである。その
ため、より高い摩擦係数を得るために、この鱗片状物は
できる限り除去されることが好ましく、繊維のSEM写
真から算出されるその含有割合は、少なくとも30%以
下であることが好ましく、20%以下であり、更には1
5%であることがより好ましく、最も好ましいのは10
%以下である。ただし、この鱗片状物を完全に除去する
ことは、少なくともその一部は繊維に一体に被着してい
ることから不可能であり、実際上においてはその含有割
合は5%程度が限界である。また、この鱗片状物の除去
は乾式空気分級機等で処理することによって行うことが
できるが、その含有割合をより少なくするほど、それに
要するコストも増加する。したがって、少なくとも30
%以下であるが、具体的にどの程度の含有割合になるま
で鱗片状物を除去するかは、そのコストも考慮して適宜
決めることができる。
【0028】また他方、使用するセラミック繊維がその
ように鱗片状物の除去処理が施されたものであって、嵩
密度において0.20g/cm3 以上であるとき、より高
い摩擦係数を確保できることが確認されている。つま
り、セラミック繊維の嵩密度が比較的大きく、0.20
g/cm3 以上であるときには、それに含まれる鱗片状物
は十分に少なく(少なくとも30%以下であり)、それ
によって、セラミック繊維の研摩性が良好に発揮され、
より高い摩擦係数を得ることができる。なお、この嵩密
度の上限は特に重要ではないが、これが余り大きく、
0.40g/cm3 を越えると、セラミック繊維の繊維径
または繊維長が上記の適切な範囲から外れることにもな
る。そのため、使用するセラミック繊維の嵩密度は0.
20〜0.40g/cm3 の範囲が好ましく、また適切で
ある。なお、この嵩密度は、試料繊維を測定用カップに
採入れ、これに微震動を加えてならした後の体積と、そ
の重量とから算出される。
【0029】そして、この研摩性のセラミック繊維は、
摩擦材全体に対して、一般に1〜10重量%の割合で配
合することができる。即ち、この配合が余り少なく、1
重量%よりも少ないと、十分な摩擦係数の向上効果を得
ることが難しくなると共に、相手材の錆落としを良好に
行うことが困難となる。他方、この配合を多くするほど
摩擦係数はより向上され、また錆落とし性も高められる
が、余り多い配合は、相手材の摩耗がやはり増大する傾
向がある。そのため、10重量%を限度として、それ以
下の割合で配合することが好ましい。したがってまた、
その配合割合は、通常、多いときでも繊維基材全体の半
分以下の割合である。
【0030】なお、このセラミック繊維以外の摩擦材成
分、即ち、その他の繊維基材、樹脂結合剤、及び充填剤
については、従来と基本的に同様である。
【0031】即ち、繊維基材としては、相手材攻撃性が
無いかまたは少ない、つまり、非研摩性であって、通常
モース硬度が4以下の繊維状材料を使用することができ
る。具体的には、アラミド繊維、ノボロイド繊維、ナイ
ロン繊維、レーヨン繊維等の耐熱性有機繊維、チタン酸
カリウム繊維またはウィスカ、カーボン繊維、或いはガ
ラス繊維等の無機繊維、銅繊維、真鍮繊維等の非鉄金属
繊維、等が挙げられる。そして、これらの繊維は、一般
にこれらの2種以上を相互に組合せて、上記の研摩性の
セラミック繊維と共に使用することができる。
【0032】なお、繊維基材としては、スチール繊維ま
たはステンレススチール繊維も使用することができる。
そして、このスチール系繊維を繊維基材の主材として用
いた場合には摩擦材はセミメタリック系摩擦材として形
成されるが、この場合、摩擦係数は研摩性のあるそのス
チール系繊維によって十分に高められるため、繊維基材
の一部として含まれるセラミック繊維は、摩擦材の摩擦
係数を高めるというよりは、むしろスチール系繊維によ
る相手材攻撃性を抑え、相手材の摩耗を抑制するように
働く。
【0033】また、繊維基材及び充填剤を結合保持する
樹脂結合剤としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、
エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹
脂、或いはSBR等のゴム等を使用することができる。
ただし、これらの中でも、フェノール樹脂、またはその
各種変性物が最も一般的に使用されるものでもあり、特
に好ましい。そして、このフェノール樹脂としては、一
般にノボラック型の粉末を使用することができる。
【0034】更に、摩擦材の摩擦・摩耗特性を調整し改
善する充填剤としては、黒鉛(グラファイト)、二硫化
モリブデン、三硫化アンチモン等の固体潤滑剤、硫酸バ
リウム、炭酸カルシウム等の体質充填剤、カシューダス
トまたはその他の高分子粉末、主に熱伝導性を向上する
ための銅粉、亜鉛粉、真鍮粉等の金属粉、或いはその他
の摩擦調整のための添加剤を使用することができる。ま
た、上記の研摩性セラミック繊維の使用によってもなお
摩擦係数が不足する場合等には、必要に応じて、アルミ
ナ粉、シリカ粉、ケイ酸ジルコニウム粉、酸化ジルコニ
ウム粉等のアブレッシブ剤を合せて使用することもでき
る。ただし、このアブレッシブ剤には、錆落とし性の向
上効果は余り期待することができない。
【0035】そして、以上の成分、即ち、研摩性のセラ
ミック繊維を含む繊維基材と、樹脂結合剤と、充填剤と
からなる本発明の摩擦材は、これらの材料成分を混合
し、この混合物を圧縮して予備成形した後、加熱加圧成
形する通常の熱成形方法によって製造することができ
る。
【0036】
【実施例】以下、本発明を、実施例及び比較例により更
に具体的に説明する。
【0037】図1は本発明の実施例の摩擦材の配合組成
(重量%)とその評価試験結果を示す表図である。ま
た、図2は比較例の摩擦材の配合組成(重量%)とその
評価試験結果を示す表図である。
【0038】〔摩擦材(パッド)の作製〕図1に示す配
合組成(重量%)で、本発明の実施例1乃至実施例6の
摩擦材を作製した。また、これらの実施例との対比のた
めに、図2に示す配合組成(重量%)で、比較例1乃至
比較例6の摩擦材も合わせて作製した。なお、これらの
実施例及び比較例の摩擦材は、具体的には、自動車のデ
ィスクブレーキ用パッドとして具体化したものである。
【0039】図1及び図2のように、これらの実施例及
び比較例の摩擦材は、その骨格を形成する繊維状の成分
である繊維基材と、この繊維基材を結合保持する樹脂結
合剤と、これらの繊維基材と樹脂結合剤とのマトリック
ス中に分散して充填される粉体状の成分である充填剤と
から形成され、その繊維基材の一部として、研摩性のセ
ラミック繊維を含むものである。そして、これらの各実
施例及び比較例において、その研摩性のセラミック繊維
の種類、及びその配合割合が種々に変えられている。
【0040】具体的には、繊維基材は、主材としてのア
ラミド繊維と、主に耐熱強度と耐摩耗性を確保するため
のチタン酸カリウムウィスカと、主に熱伝導性を確保す
るための銅繊維とに加えて、その研摩性のセラミック繊
維とからなっている。したがって、ここでは、各摩擦材
はスチール繊維を含まない非スチール系摩擦材として形
成されている。そして、各実施例及び比較例において、
アラミド繊維5重量%、チタン酸カリウムウィスカ8重
量%、及び銅繊維11重量%を固定条件として、セラミ
ック繊維の割合を0〜11重量%の範囲で変えて配合し
た。
【0041】樹脂結合剤としては、フェノール樹脂(ノ
ボラック型)を使用し、硬化剤と共に、各実施例及び比
較例において7重量%の割合で配合した。
【0042】充填剤としては、摩擦係数を調整し、また
安定化するためのカシューダストと、主に耐摩耗性を向
上するための固体潤滑剤である黒鉛と、摩擦材のアルカ
リ性を保持しその防錆性を高めるための消石灰と、アブ
レッシブ剤としてのケイ酸ジルコニウムと、体質充填剤
としての硫酸バリウムとを使用した。そして、各実施例
及び比較例において、カシューダスト9重量%、黒鉛7
重量%、消石灰4重量%を固定条件として配合し、ま
た、ケイ酸ジルコニウムは、後述のようにセラミック繊
維の配合が比較的少ない実施例1及び実施例6では、そ
れぞれ12重量%及び8重量%とし、セラミック繊維が
無配合の比較例6では14重量%として、それ以外の各
実施例及び比較例ではそれぞれ4重量%となるように配
合した。そして、硫酸バリウムの配合割合を変えて全体
で100重量%となるように調節した。つまり、各実施
例及び比較例において、研摩性のセラミック繊維以外の
成分は同じであり、またそのセラミック繊維とケイ酸ジ
ルコニウム以外の配合割合は実質的に同じである。
【0043】ここで、研摩性のセラミック繊維として、
繊維径、繊維長、嵩密度、及び鱗片状物の含有割合が異
なる次の9種類のアルミナ−シリカ系セラミック繊維A
〜Iを用意した。なお、これらのアルミナ−シリカ系セ
ラミック繊維(モース硬度6)は、溶融繊維化法によっ
て、その際細繊化条件等を種々に変えて製造したもので
あり、また、製造後の繊維から、それに含まれる鱗片状
物(繊維表層の剥離生成物)を乾式の空気分級機を用い
て分別し除去した、正確には、その含有量を少なくした
ものである。ただし、セラミック繊維Iでは、この鱗片
状物の除去処理が施されていない。
【0044】〈セラミック繊維A〉平均繊維径5.0μ
m,平均繊維長150μm,嵩密度0.24g/cm3
鱗片状物の含有割合約10%. 〈セラミック繊維B〉平均繊維径3.0μm,平均繊維
長130μm,嵩密度0.20g/cm3 ,鱗片状物の含
有割合約10%. 〈セラミック繊維C〉平均繊維径3.0μm,平均繊維
長100μm,嵩密度0.25g/cm3 ,鱗片状物の含
有割合約10%. 〈セラミック繊維D〉平均繊維径3.0μm,平均繊維
長70μm, 嵩密度0.35g/cm3 ,鱗片状物の含
有割合約5%. 〈セラミック繊維E〉平均繊維径1.0μm,平均繊維
長70μm, 嵩密度0.23g/cm3 ,鱗片状物の含
有割合約10%. 〈セラミック繊維F〉平均繊維径0.9μm,平均繊維
長40μm, 嵩密度0.25g/cm3 ,鱗片状物の含
有割合約10%. 〈セラミック繊維G〉平均繊維径5.5μm,平均繊維
長160μm,嵩密度0.25g/cm3 ,鱗片状物の含
有割合約10%. 〈セラミック繊維H〉平均繊維径5.0μm,平均繊維
長30μm, 嵩密度0.45g/cm3 ,鱗片状物の含
有割合約10%. 〈セラミック繊維I〉平均繊維径3.0μm,平均繊維
長100μm,嵩密度0.18g/cm3 ,鱗片状物の含
有割合約35%. なお、鱗片状物の含有割合(%)は、前述のように、そ
の繊維の走査電子顕微鏡(SEM)写真から求めたもの
であり、鱗片状物の面積/(繊維状物の面積+鱗片状物
の面積)の百分率である。
【0045】そして、実施例1では、そのセラミック繊
維Aを、摩擦材全体に対し1重量%の割合で配合した。
同様に、実施例2ではセラミック繊維Bを、実施例3で
はセラミック繊維Cを、実施例4ではセラミック繊維D
をそれぞれ5重量%の割合で配合し、また、実施例5で
はセラミック繊維Eを10重量%、実施例6ではセラミ
ック繊維Cを3重量%の割合で配合した。
【0046】これらの実施例に対して、比較例1ではセ
ラミック繊維Fを、比較例2ではセラミック繊維Gを、
比較例3ではセラミック繊維Hを、比較例4ではセラミ
ック繊維Iを、それぞれ5重量%配合した。また、比較
例5では、同じくセラミック繊維Iを使用し、その配合
割合を多くして11重量%とした。更に、比較例6で
は、セラミック繊維を無配合とした。
【0047】そして、これらの実施例及び比較例の摩擦
材(ディスクブレーキパッド)の作製は、通常の熱成形
による方法によって、具体的には次のように行った。即
ち、各種のセラミック繊維を種々の割合で含む上記配合
の摩擦材原料をブレンダで十分均一に混合し、次いで、
この粉状混合物を予備成形金型に投入し、常温下、圧力
200kg/cm2 で約1分間加圧して、略パッド形状の摩
擦材の予備成形物を形成した。次いで、この摩擦材の予
備成形物を、予め表面にフェノール樹脂系接着剤を塗布
した裏金と共に熱成形金型にセットし、加圧圧力400
kg/cm2 、温度160℃で10分間熱成形した。そし
て、これを更に250℃で120分間熱処理して、裏金
と一体になった摩擦材、即ち、ディスクブレーキパッド
を得た。
【0048】〔評価試験〕次に、作製したこれらの実施
例及び比較例の各摩擦材(ディスクブレーキパッド)に
ついて、それらの摩擦係数、相手材攻撃性(相手材摩耗
性)及び錆落とし性に関する評価試験を行った。
【0049】摩擦係数については、3000回の低減速
度制動試験を行い、その時の最終摩擦係数を測定した。
試験条件は次のとおりである。 使用キャリパブレーキ型式:PD51−18V イナーシャ:4.0kgf・m・s2 制動前温度:100℃ 初速度:50km/h 減速度:0.1G。
【0050】また、相手材(鋳鉄製の厚さ18mmベンチ
レーテッド型ディスクロータ)に対する攻撃性に関して
は、400回の制動試験を行い、その時の相手材の摩耗
量を測定した。この試験条件は次のとおりである。 使用キャリパブレーキ型式:PD51−18V イナーシャ:4.0kgf・m・s2 制動前温度:120℃ 初速度:65km/h 減速度:0.35G。
【0051】更に、錆落とし性に関しては、予め錆を発
生させた上記のディスクロータを相手材として100回
の制動試験を行い、その時の落ちた錆の厚さ(残存する
錆の厚さ)を測定し、錆落ち率(落ちた錆の厚さ/当初
の錆の厚さ[%])を求めた。この試験条件は次のとお
りである。 使用キャリパブレーキ型式:PD51−18V 試験前のロータ錆厚み:50〜100μm イナーシャ:4.0kgf・m・s2 制動前温度:120℃ 初速度:65km/h 減速度:0.35G。
【0052】測定した摩擦係数、相手材であるディスク
ロータの摩耗量(μm)及び錆落ち率(%)を、図1及
び図2に摩擦材の配合組成と合わせて示す。
【0053】〔試験結果〕図1のように、研摩性のセラ
ミック繊維として、平均繊維径が1.0〜5.0μm、
平均繊維長が50〜150μmの範囲にあり、また、嵩
密度が0.20以上であって、鱗片状物の含有割合が約
10%以下であるセラミック(アルミナ−シリカ系)繊
維A〜Eを使用した実施例1乃至実施例6の摩擦材にお
いては、相手材であるディスクロータの摩耗量が十分に
少ないレベルに維持されている一方、十分に高い摩擦係
数と良好な錆落とし性とが得られている。そして、この
効果は、図2の比較例との対比からより明らかである。
【0054】即ち、図2のように、比較例1は、平均繊
維径がより細い0.9μmであり、また、平均繊維長も
比較的短い40μmであるセラミック繊維Fを用いたも
のであるが、これによれば、相手材の摩耗量はより少な
くなるが、同時に、摩擦係数が若干低下すると共に、錆
落とし性については大幅に低下している。逆に、平均繊
維径がより大きな5.5μmであり、平均繊維長も16
0μmと比較的長いセラミック繊維Gを用いた比較例2
では、摩擦係数及び錆落とし性はより高められている
が、その増加以上に相手材の摩耗が累加的に増大してい
る。なお、平均繊維径は5.0μmであるが、平均繊維
長がそれに対して30μmとかなり短いセラミック繊維
Hを用いた比較例3では、それでもなお相手材の摩耗が
多い傾向にある。
【0055】更に、セラミック繊維Iは、実施例3,6
で用いたセラミック繊維Cと同じく、平均繊維径が3.
0μm、平均繊維長が100μmであるが、鱗片状物の
除去処理が施されていないものであって、鱗片状物の含
有割合は約35%と多く、それによって嵩密度も0.1
8g/cm3 と小さいものである。そして、このセラミッ
ク繊維Iを5重量%配合した比較例4では、セラミック
繊維C(鱗片状物の含有割合約10%,嵩密度0.2
5)を同量で用いた実施例3と対比して、相手材の摩耗
量はより少なく、また錆落とし性は殆ど変わらないが、
特に、得られる摩擦係数が低い。また、このセラミック
繊維Iの配合を増量して11重量%とした比較例5で
は、十分な摩擦係数を確保できるものの、相手材の摩耗
量が増大している。
【0056】なお、セラミック繊維が無配合である比較
例6では、アブレッシブ剤(ケイ酸ジルコニウム)の増
量によって摩擦係数は確保されているが、このアブレッ
シブ剤には相手材の錆を落とす作用が殆ど無いため、十
分な錆落とし性が得られていない。
【0057】そこで、この評価試験の結果からも、相手
材の摩耗を十分に少ないレベルに抑制する一方、十分に
高い摩擦係数と良好な錆落とし性とを確保するために
は、繊維基材の一部として使用するセラミック繊維とし
ては、十分に小さいが小さすぎない繊維径(平均繊維径
1.0〜5.0μm)と適当な長さの繊維長(平均繊維
長50〜150μm)とを有し、更にこれに加えて、セ
ラミック繊維の製造時に生成する繊維表層の剥離物であ
る鱗片状物をできるだけ除去し、これの含有割合が少な
く、嵩密度が比較的高い(0.20g/cm3 以上)もの
を使用することが好ましいことが分かる。
【0058】ところで、本発明の摩擦材については、特
に、ディスクブレーキ用のパッドを例として主に説明し
たが、本発明を実施する場合には、これに限定されるも
のではなく、ドラムブレーキのライニング、或いはクラ
ッチフェーシング等、乾式摩擦係合装置に使用されるそ
の他の摩擦材にも同様に適用することができる。また、
繊維基材等の種類と配合等についても、上記の実施例に
限定されることなく、種々に変更することができる。
【0059】
【発明の効果】以上のように、請求項1にかかる摩擦材
は、研摩性のセラミック繊維を含む繊維基材と、樹脂結
合剤と、充填剤とからなる摩擦材において、その研摩性
のセラミック繊維が、平均繊維径が1.0〜5.0μ
m、平均繊維長が50〜150μmであり、かつ、嵩密
度が0.20〜0.40g/cm3 であって、摩擦材全体
に対し1〜10重量%の割合で含まれることを特徴とす
るものである。
【0060】また、請求項2にかかる摩擦材は、研摩性
のセラミック繊維を含む繊維基材と、樹脂結合剤と、充
填剤とからなる摩擦材において、その研摩性のセラミッ
ク繊維が、平均繊維径が1.0〜5.0μm、平均繊維
長が50〜150μmであり、かつ、繊維の表層が剥離
してなる鱗片状物の繊維全体に占める割合が30%以下
であって、摩擦材全体に対し1〜10重量%の割合で含
まれることを特徴とするものである。
【0061】したがって、この摩擦材によれば、繊維基
材の一部として研摩性のセラミック繊維を配合し、ま
た、その研摩性のセラミック繊維として十分小さな繊維
径と適当な繊維長とを有するものを使用しているので、
相手材の摩耗を少なく抑えつつ、それの研摩性により摩
擦係数と錆落とし性とを高めることができると共に、そ
のセラミック繊維として、その研摩性を阻害する繊維表
層の剥離生成物である鱗片状物を取り除いて、その含有
割合が少なく、または嵩密度が比較的大きく適度である
ものを用いているので、それの研摩性をより有効に発揮
させ、特に摩擦係数をより向上させることができる。即
ち、本発明の摩擦材によれば、相手材の摩耗を十分少な
く抑制する一方、より高い摩擦係数とより良好な錆落と
し性とを確保できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施例の摩擦材(ディスクブ
レーキパット)の配合組成とその評価試験結果を示す表
図である。
【図2】 図2は比較例の摩擦材(ディスクブレーキパ
ット)の配合組成とその評価試験結果を示す表図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−60225(JP,A) 特開 平8−296678(JP,A) 特開 平8−283076(JP,A) 特開 平7−18092(JP,A) 特開 平6−346045(JP,A) 特開 平7−19272(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16D 69/02 C08J 5/14 CFB C09K 3/14 520

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 研摩性のセラミック繊維を含む繊維基材
    と、樹脂結合剤と、充填剤とからなる摩擦材において、 前記研摩性のセラミック繊維は、平均繊維径が1.0〜
    5.0μm、平均繊維長が50〜150μmであり、か
    つ、嵩密度が0.20〜0.40g/cm3 であって、摩
    擦材全体に対し1〜10重量%の割合で含まれることを
    特徴とする摩擦材。
  2. 【請求項2】 研摩性のセラミック繊維を含む繊維基材
    と、樹脂結合剤と、充填剤とからなる摩擦材において、 前記研摩性のセラミック繊維は、平均繊維径が1.0〜
    5.0μm、平均繊維長が50〜150μmであり、か
    つ、その繊維の表層が剥離してなる鱗片状物の繊維全体
    に占める割合が30%以下であって、摩擦材全体に対し
    1〜10重量%の割合で含まれることを特徴とする摩擦
    材。
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