JP2023067811A - 細胞吸着材料、及び細胞吸着カラム - Google Patents

細胞吸着材料、及び細胞吸着カラム Download PDF

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Mariko Yamashita
愛善 韓
Ai-Shan Han
博一 坂口
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良之 上野
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【課題】本発明は、LAP陽性T細胞及びLAP陽性血小板のようなLAP陽性免疫細胞などの細胞を高効率に吸着する細胞吸着材料を提供することを目的とする。【解決手段】ポリアミン及び脂肪族アミンからなる群より選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体の繊維又は粒子であり、上記繊維又は前記粒子の最頻細孔半径が10nm以上100nm以下であり、上記繊維又は前記粒子における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積が50%以上100%以下である、細胞吸着材料。【選択図】図1

Description

本発明は、LAP陽性免疫細胞などの細胞吸着材料及び細胞吸着カラムに関する。
がんは、免疫と密接に関係していることが明らかとなってきており、近年、多くの進行がんで免疫抑制性の血液成分が上昇していることが報告されている。その血液成分の一つが白血球であり、リンパ球、顆粒球、単球に分類される。それぞれの白血球は、さらに細分化され、例えば、リンパ球は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞などに分類される。
がん細胞は、Transforming growth factor-β(以下「TGF-β」という)に代表される免疫抑制物質を産生することで、免疫抑制性のT細胞を誘導し、免疫機構から逃避する機構を備えていることが知られている。TGF-βは、分子量7.5万のLatency Associated Peptide(以下「LAP」という)と非共有結合で会合した、生理活性のない潜在型LAP-TGF-β複合体として産生される。タンパク質分解酵素や細胞接着分子によりLAPが切断されると、TGF-βは各種細胞上のTGF-β受容体に結合できるようになり、生理機能を発揮する。
潜在型LAP-TGF-β複合体は、がん細胞だけでなく、一部の免疫細胞の細胞膜にも結合していることが知られている。このLAP-TGF-β複合体が結合している免疫細胞はLAP陽性免疫細胞と呼ばれ、がん細胞の免疫機構からの逃避の一因にもなっている。特に、LAP陽性免疫細胞の内、LAP陽性T細胞は、がん細胞に対するTGF-βの供給源として着目されており、これを除去するための吸着材の開発が進められてきた。
一方、血小板もTGF-βの供給源の一つであることが知られている。そのため、免疫抑制物質TGF-βの供給源であるLAP陽性T細胞及びLAP陽性血小板を合わせたLAP陽性免疫細胞を同時に除去できれば、がんの治療効果がより高まることが予想される。
がんを治療する方法として、免疫チェックポイント抗体など、がん細胞から発せられる免疫抑制シグナルの伝達を阻害する薬剤が開発されているが、薬剤の副作用により、自己免疫疾患に罹患する例も認められている。
また、副作用を低減しつつ免疫機能を向上させるために、患者自身の白血球でがん細胞を排除する細胞療法も行われている。代表的な方法として、体外でがん抗原を取り込ませた患者の樹状細胞を患者に戻すことで、がん特異的キラーT細胞を誘導して治療する樹状細胞輸注療法がある。しかしながら、現状では、この治療法は治療効果が不十分であるとされている。その理由の一つとして、免疫抑制系の亢進が推測されている。
一方で、TGF-βの供給源であるLAP陽性免疫細胞を除去することができれば、がん細胞に対する免疫応答が維持され、がん細胞の死滅やがんの進展抑制が可能になると期待される。
特許文献1は、白血球を除去する材料として、繊維の直径が3μm未満で、嵩密度が0.15g/cmを超え0.50g/cm以下の不織布からなる白血球除去フィルターを開示している。
特許文献2は、繊維径が0.5μm以上10μm以下の繊維を含み、かつ表面積が0.5m以上10m未満である吸着体を充填してなる細胞吸着カラムであって、吸着体充填容積が100mL以下であることを特徴とする細胞吸着カラムを開示している。
特許文献3は、繊維表面の算術粗さが0.1μm以上3.0μm以下である免疫抑制性白血球の吸着材料を開示している。
特開昭60-193468号公報 国際公開第2008/038785号 国際公開第2019/049962号
しかしながら、特許文献1のフィルターは、ろ過により白血球を除去するため、全ての種類の白血球が除去されてしまう問題がある。特許文献2の吸着材料は、顆粒球や単球の貪食能を利用して細胞を吸着するため、LAP陽性T細胞を除去することが困難な可能性がある。特許文献3は、表面粗さを制御することで免疫抑制性白血球を除去する吸着材料を開示しているが、LAP陽性血小板の除去については開示されていない。
上記の理由により、LAP-TGF-β複合体が結合している免疫細胞を吸着除去可能な材料の開発が望まれている。
そこで、本発明は、LAP陽性T細胞及びLAP陽性血小板のようなLAP陽性免疫細胞などの細胞を高効率に吸着する細胞吸着材料を提供することを目的とする。
上述の課題を解決する本発明の細胞吸着材料は、以下の構成からなる。
ポリアミン及び脂肪族アミンからなる群より選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体の繊維又は粒子であり、
上記繊維又は前記粒子の最頻細孔半径が10nm以上100nm以下であり、
上記繊維又は前記粒子における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積が50%以上100%以下である、細胞吸着材料。
本発明の細胞吸着材料は、LAP陽性T細胞及びLAP陽性血小板のようなLAP陽性免疫細胞などの細胞を高効率に吸着除去できる。
ラジアルフロー型の細胞吸着カラムの一例の縦断面図である。 細胞吸着材料の断面における凸度の解析の一例である。
本発明者らは、繊維状又は粒子状の水不溶性担体にポリアミン又は脂肪族アミンを結合させ、かつ上記水不溶性担体の最頻細孔半径を所定の範囲とし、かつ上記水不溶性担体における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積の比率を所定の範囲とすることにより、LAP陽性免疫細胞などの細胞を吸着除去可能であることを見出した。
つまり本発明は、ポリアミン及び脂肪族アミンからなる群より選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体の繊維又は粒子であり、上記繊維又は前記粒子の最頻細孔半径が10nm以上100nm以下であり、上記繊維又は前記粒子における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積が50%以上100%以下である、細胞吸着材料である。
本発明は、LAP陽性免疫細胞などの細胞吸着材料に関する。LAP陽性免疫細胞とは、細胞膜表面にLAP-TGF-β複合体が結合した細胞を意味する。LAP陽性免疫細胞は、具体的にはLAP陽性T細胞、LAP陽性血小板を意味するが、細胞膜表面にLAP-TGF-β複合体が結合していれば、上記に限定されるものではない。
本発明の細胞吸着材料は、ポリアミン及び脂肪族アミンからなる群より選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体の繊維又は粒子である。
窒素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。窒素含有化合物は、水不溶性担体に直接的に結合させてもよく、又はリンカーを介して間接的に結合させてもよい。
本発明の細胞吸着材料における窒素含有化合物は、LAP陽性免疫細胞との親和性が高いことから、一般式(I)で表されるポリアミンであることが好ましい。
N-X-NR ・・・(I)
一般式(I)中、Xは、2~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、3~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されていてもよい。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。
一般式(I)において、Xは、例えば、2~20個(例えば、16個以下、14個以下、12個以下、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下)の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。一般式(I)において、Xは、例えば、3~20個(例えば、16個以下、14個以下、12個以下、10個以下)の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個(例えば、1~3個)の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基(例えば1~6個(好ましくは1~4個)の炭素原子を有するアルキル基。)で置換されていてもよい。そしてR~Rは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。アルキル基は、例えば1~6個(好ましくは1~4個)の炭素原子を有する。脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
一般式(I)で表されるポリアミンは、水不溶性担体との反応性が高いことから、下記一般式(II)~(VII)のいずれかで表されるポリアミンであることがより好ましい。
N-(CHp1-NH ・・・(II)
一般式(II)中、p1は、2~12(好ましくは2~6、2~5又は2~4)の整数であり、両末端の1級アミノ基の水素原子はアルキル基で置換されていてもよい。
N-(CHp1-NH-(CHp2-NH ・・・(III)
一般式(III)中、p1及びp2は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、2級アミノ基の水素原子は、アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子はアルキル基で置換されていてもよい。
N-(CHp1-NH-(CHp2-NH-(CHp3-NH ・・・(IV)
一般式(IV)中、p1、p2及びp3は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子はアルキル基で置換されていてもよい。
N-(CHp1-NH-(CHp2-NH-(CHp3-NH-(CHp4-NH ・・・(V)
一般式(V)中、p1、p2、p3及びp4は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3及びp4の和は17以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子はアルキル基で置換されていてもよい。
N-(CHp1-NH-(CHp2-NH-(CHp3-NH-(CHp4-NH-(CHp5-NH ・・・(VI)
一般式(VI)中、p1、p2、p3、p4及びp5は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3、p4及びp5の和は16以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子はアルキル基で置換されていてもよい。
N-(CHp1-NH-(CHp2-NH-(CHp3-NH-(CHp4-NH-(CHp5-NH-(CHp6-NH ・・・(VII)
一般式(VII)中、p1、p2、p3、p4、p5及びp6は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3、p4、p5及びp6の和は15以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子はアルキル基で置換されていてもよい。
一般式(II)~(VII)において、2級アミノ基の窒素原子に結合し得る「アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基」の炭素原子数は、例えば1~6個であり、好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~4個であり、さらに好ましくは1~3個である。一般式(II)~(VII)において、両末端の1級アミノ基の窒素原子に結合し得る「アルキル基」の炭素原子数は、例えば1~6個であり、好ましくは1~5個であり、好ましくは1~4個であり、好ましくは1~3個である。これらの「アルキル基」は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
一般式(I)で表されるポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン(以下「DETA」という)、N-エチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミンが挙げられる。また、その他にも、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、1,3-ジアミノプロパン、ノルスペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、アミノブチルカダベリン、ノルスペルミン、テルモスペルミン、アミノプロピルホモスペルミジン、カナバルミン、ホモスペルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、テルモペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミン、テルモヘキサミン、ホモテルモヘキサミン、N-アミノプロピルノルスペルミジン、N-アミノプロピルスペルミジン、N-アミノプロピルノルスペルミンなどのポリアミンが挙げられる。
本発明の細胞吸着材料において、窒素含有化合物が脂肪族アミンの場合、水不溶性担体との反応性及びLAP陽性免疫細胞との親和性の観点から、一般式(VIII)で表される第1級脂肪族アミン又は一般式(IX)で表される第2級脂肪族アミンであることが好ましい。
NH ・・・(VIII)
一般式(VIII)中、Rは、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。
NHR ・・・(IX)
一般式(IX)中、R及びRは、それぞれ独立して、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。
一般式(VIII)又は(IX)で表される脂肪族アミンにおいて、脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~8個であることが好ましく、1~6個であることが好ましく、1~4個であることが好ましい。
窒素含有化合物として好適な脂肪族アミンとしては、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミンなどのモノアルキルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのジアルキルアミンが挙げられる。
また、その他の好適な窒素含有化合物としては、例えば、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、N-エチルエチレンジアミン、DETA、N-エチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタミンが挙げられる。これらの中でも、両末端が1級アミンである直鎖状窒素含有化合物は反応性が高いことから、窒素含有化合物はエチレンジアミン、DETA、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタミンが好ましい。窒素含有化合物は、市販されているもの又は公知の方法若しくはそれに準じた方法により製造したものを用いることができる。
窒素含有化合物として一般式(I)で表されるポリアミンを用いる場合、複数のアミノ基が水不溶性担体に結合して、架橋構造を形成していてもよい。すなわち、窒素含有化合物として、一般式(I)で表されるポリアミンを水不溶性担体に結合させた場合、ポリアミン中のアミノ基の少なくとも2つが水不溶性担体に結合すると、架橋構造を形成することになる。
窒素含有化合物を水不溶性担体に結合させる方法は、例えば、化学的方法により水不溶性担体の表面にリンカーを介して共有結合させる方法が挙げられる。
窒素含有化合物と水不溶性担体とが直接的に共有結合している場合の共有結合としては、窒素含有化合物との反応性が高いことから、アミド結合、尿素結合、エーテル結合又はエステル結合などの電気的に中性の化学結合を有しているものが好ましく、アミド結合又は尿素結合を有しているものがより好ましい。
窒素含有化合物がリンカーを介して水不溶性担体に結合している場合、つまり窒素含有化合物がリンカーと上記共有結合により結合している場合、水不溶性担体への窒素含有化合物の導入効率を上げる観点から、窒素含有化合物と水不溶性担体とをリンカーを介して結合する前のリンカー、すなわち反応前のリンカーが反応性官能基を有することが好ましい。反応前のリンカーが有する反応性官能基としては、例えば、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基若しくはハロゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、又は酸無水物基などが挙げられる。これらの中でも、活性ハロゲン基(特にハロアセチル基)は、製造が容易であり、反応性が適度に高く、窒素含有化合物の固定化反応を温和な条件で遂行でき、生じる共有結合が化学的に安定であるため、好ましい。反応性官能基を有するリンカーを導入した水不溶性担体としては、例えば、クロルアセトアミドメチル基を付加したポリスチレン、クロルアセトアミドメチル基を付加したポリスルホン、又はクロルアセトアミドメチル基を付加したポリエーテルイミドなどが挙げられる。なお、これらの高分子は有機溶媒に対し可溶であり、成型しやすい利点がある。リンカーの導入量の目安は、リンカーの構造にもよるが、例えば、クロルアセトアミドメチル基の場合、水不溶性担体1gに対して、1mmol以上10mmol以下が好ましい。リンカーの導入量は、水不溶性担体への窒素含有化合物の結合量に影響を与えるため、より好ましくは2mmol以上であり、さらに好ましくは3mmol以上である。また、水不溶性担体の強度を維持する観点から、リンカーの導入量は、より好ましくは8mmol以下であり、さらに好ましくは7mmol以下である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
水不溶性担体に反応性官能基を有するリンカーを導入する方法としては、反応性官能基を有するリンカーと水不溶性担体とを予め反応させる方法が挙げられる。例えば、水不溶性担体がポリスチレンで、反応性官能基を有するリンカーがクロルアセトアミドメチル基の場合は、ポリスチレンとN-メチロール-α-クロルアセトアミド(以下「NMCA」という)を反応させることでクロルアセトアミドメチル基を付加したポリスチレンを得ることができる。
本発明の細胞吸着材料における窒素含有化合物は、該窒素含有化合物中のアミノ基(又は窒素原子)を介して水不溶性担体に結合していることが好ましい。
窒素含有化合物が水不溶性担体に結合する際、窒素含有化合物中の結合位置に依存して、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び/又は4級アミノ基が結合後の窒素含有化合物中に存在することになる。例えば、一般式(I)で表されるポリアミンが水不溶性担体に結合する際、ポリアミン中の結合位置に依存して、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び/又は4級アミノ基が結合後のポリアミン中に存在することになる。
細胞吸着材料中のアミノ基は、そのように生じた窒素含有化合物由来の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アミノ基を含む。窒素含有化合物がリンカーを介して水不溶性担体と結合している場合、細胞吸着材料中のアミノ基は、リンカー由来の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アミノ基を含む。また、本明細書において、「アミノ基量」とは、細胞吸着材料中の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アミノ基量を意味する。
本発明の細胞吸着材料中のアミノ基量は、20μmol/g以上200μmol/g以下であることが好ましい。アミノ基量は、十分な細胞吸着性能を付与する観点から、より好ましくは30μmol/g以上であり、さらに好ましくは50μmol/g以上である。また、白血球の一種である単球や顆粒球の吸着を抑制する観点やヘパリンなどの抗血液凝固剤の吸着を抑制できる観点から、アミノ基量は、より好ましくは150μmol/g以下であり、さらに好ましくは100μmol/g以下である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
細胞吸着材料中のアミノ基量は、例えば、酸塩基逆滴定を利用してアミノ基を測定することにより、1級アミノ基量、2級アミノ基量、3級アミノ基量、及び4級アミノ基(4級アンモニウム基)量の和として求めることができる。すなわち、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、細胞吸着材料中の塩が付加されたアミノ基を脱塩し、中性になるまで十分に細胞吸着材料を洗浄、乾燥する。得られた細胞吸着材料中のアミノ基を、過剰の酸を含む標準溶液の一定量と反応させる。この際、アミノ基と反応せずに残った酸の量を、塩基を含む標準溶液で滴定することでアミノ基量を求めることができる。さらに具体的には、後述する「アミノ基量の測定」に記載の方法により求めることができる。なお、当該方法では、4級アミノ基を含む量が測定され得るが、本実施例では、4級アミノ基は用いる窒素含有化合物の構造上含まれることはなく、1級アミノ基量、2級アミノ基量、及び3級アミノ基量の和となる。
細胞吸着材料中のアミノ基量は、例えば、水不溶性担体に直接又はリンカーを介して導入した、反応性官能基の結合量、窒素含有化合物の種類、窒素含有化合物の使用量を調整することで制御できる。水不溶性担体にリンカーを介して導入した反応性官能基の結合量は、例えば、リンカーが有する反応性官能基の種類、溶媒の種類、又は浸漬温度若しくは浸漬時間などの反応条件により制御できる。例えば、水不溶性担体がポリ芳香族ビニルを含む場合は、架橋剤を用いて、水不溶性担体と反応性官能基又は反応性官能基を有するリンカーの結合可能箇所を制御することもできる。
本発明の細胞吸着材料において、窒素含有化合物がアミド基を有するリンカーを介して結合している場合、細胞吸着材料におけるアミド基量に対するアミノ基量の比率(アミノ基/アミド基比率)は0.008以上0.080以下であることが好ましい。十分な細胞吸着性能を付与する観点から、アミド基量に対するアミノ基量の比率は、より好ましくは0.010以上であり、さらに好ましくは0.015以上であり、特に好ましくは0.020以上である。また、白血球の一種である単球や顆粒球の吸着を抑制し、LAP陽性免疫細胞などの細胞を高効率で除去できることや、ヘパリンなどの抗血液凝固剤の吸着を抑制する観点から、アミド基量に対するアミノ基量の比率は、より好ましくは0.070以下であり、さらに好ましくは0.060以下であり、特に好ましくは0.050以下である。いずれの好ましい下限もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
細胞吸着材料中のアミド基量は、例えば、細胞吸着材料中のアミド基を加水分解した後に滴定を行うことで測定できる。具体的には、後述する「アミノ基/アミド基比率の測定」に記載の方法により求めることができる。
細胞吸着材料中のアミド基量は、例えば、反応性官能基としてアミド基を有するリンカーを使用し、水不溶性担体への該リンカーの導入量を調整することなどにより制御できる。より具体的な例としては、反応性官能基を有し、かつアミド基を有するリンカーであるNMCAを水不溶性担体に導入することにより、水不溶性担体にアミド基を付与できる。
本発明の細胞吸着材料において、窒素含有化合物の導入量を増加し、細胞吸着性能を向上させる観点から、アミド基量は、2500μmol/g以上が好ましく、より好ましくは2800μmol/g以上である。一方で、リンカー導入反応による水不溶性担体の表面粗さの増大を抑制し、非特異的な吸着の増加を抑制する観点から、アミド基量は5000μmol/g以下が好ましく、より好ましくは4000μmol/g以下である。いずれの好ましい下限もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
「水不溶性担体」とは、常温(25℃)の水に浸漬した場合に質量変化を起こさない担体を意味し、具体的には、25℃の水に1時間浸漬させた際の質量変化が5%以下である担体であることが好ましい。
水不溶性担体の材料としては、例えば、ポリスチレンに代表されるポリ芳香族ビニル化合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、又はポリフェニレンサルファイドなどが好ましく挙げられる。水不溶性担体の材料は、市販されているもの又は公知の方法若しくはそれに準じた方法により製造したものを用いることができる。これらの高分子材料は、血液と接触した際に補体を活性化しやすいとされている水酸基を実質的に有しない材料である。これらの中でも単位質量当たりの芳香環の数が多く、窒素含有化合物を固定化しやすいことから、水不溶性担体の材料としてはポリスチレンが好ましい。これらの高分子材料は、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、水不溶性担体は、ポリ芳香族ビニル化合物、例えば、ポリスチレンを含む高分子材料であることが好ましい。水不溶性担体としては、ポリスチレン部分に窒素含有化合物を固定化するための活性ハロゲン基などのリンカーを導入し易い点、ポリオレフィン部分により強度が補強され扱い易い点、及び耐薬品性の点から、ポリスチレンとポリオレフィンの共重合体、例えば、ポリスチレンとポリエチレンの共重合体又はポリスチレンとポリプロピレンの共重合体が好ましい。また、高分子材料は、ブレンド又はアロイ化したものでもよく、特に、ポリスチレンとポリオレフィンのポリマーアロイ、例えば、ポリスチレンとポリエチレンのポリマーアロイ又はポリスチレンとポリプロピレンのポリマーアロイは、耐薬品性を有し、物理形状を保持し易い観点から、好ましい。その中でも、血液体外循環療法で使用実績のあるポリスチレンとポリプロピレンのポリマーアロイが好ましい。また、用いる水不溶性担体は、アミノ基を実質的に有さないことが好ましい。
細胞吸着材料中の窒素含有化合物の固定化量は、例えば、水不溶性担体への反応性官能基若しくは反応性官能基を有するリンカーの導入量、窒素含有化合物の種類、又は窒素含有化合物の使用量を調整することで制御できる。反応性官能基を有するリンカーの導入量は、例えば、反応性官能基を有するリンカーの種類、溶媒の種類、又は浸漬温度若しくは浸漬時間などの反応条件で制御できる。例えば、水不溶性担体がポリ芳香族ビニルを含む場合は、架橋剤を用いて、反応性官能基又は反応性官能基を有するリンカーの結合可能箇所を制御することもできる。
本発明の細胞吸着材料における水不溶性担体は、繊維又は粒子である。特に、高次加工により血液流路を確保しつつ、血液との接触面積を増大させることが可能である点で、繊維が好ましい。
水不溶性担体が繊維の場合、海島型の複合繊維であることが好ましく、材料としての強度を保つ観点から、島が補強材、海が水不溶性高分子と補強材のアロイである海島型の複合繊維が好ましく、さらに島がポリプロピレンであり、海がポリスチレンとポリプロピレンのアロイである海島型の複合繊維が好ましい。補強材としては、例えば、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、又はポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。なかでも、耐薬品性が高く、熱可塑性にも優れていることから、ポリプロピレンが好ましい。これらの高分子は、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
水不溶性担体が繊維の場合、その高次加工品である編み地とすることが好ましい。編み地は、その編み目を制御することで血液流路を確保できるため、血液が繊維を通過する際の圧力損失を低減させることができる。また、繊維を合糸させて編み地を形成させる場合、合糸本数は好ましくは10本以上100本以下であり、より好ましくは30本以上80本以下である。合糸本数が100本以下である場合、LAP陽性免疫細胞が繊維束内に進入しやすくなるため、吸着性能が向上する。また、合糸本数が10本以上である場合、編み地の形状の保持性が向上する。なお、いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。なお、編み地を作製する場合や合糸をさせる場合において、窒素含有化合物が結合した繊維、すなわち細胞吸着材料と窒素含有化合物が結合していない繊維を組み合わせてもよい。
本発明の細胞吸着材料における水不溶性担体の繊維又は粒子の長径は、15μm以上50μm以下であることが好ましい。
細胞吸着材料における水不溶性担体である繊維又は粒子の長径が15μm以上50μm以下の場合、細胞吸着材料のカラムへの充填密度を適切な大きさに維持しながら、細胞吸着材料の単位体積当たりの血液接触面積を大きくできるため、血小板や白血球などの非特異的な吸着を抑制し、かつLAP陽性免疫細胞の吸着性能が向上すると推測される。そのため、細胞吸着材料における水不溶性担体である繊維又は粒子の長径は、より好ましくは17μm以上であり、さらに好ましくは18μm以上であり、特に好ましくは19μm以上である。一方で、繊維又は粒子の長径は、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは35μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
「繊維の長径」は、走査型電子顕微鏡などを用いて1000倍以上3000倍以下の倍率で繊維の伸長方向に垂直な断面の写真を撮影し、得られた繊維断面の画像を解析することで測定できる。具体的には、後述する「繊維の長径の測定」に記載の方法で測定できる。
「粒子の長径」は、粒子のサンプル群10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡などを用いて1000倍以上3000倍以下の倍率で写真をサンプル群1個につきそれぞれ1枚撮影する。次に、写真1枚当たり10個の粒子の長径を繊維断面の長径測定と同様の方法で測定する。そして、それらの値の平均値(計100個の粒子の長径の平均値)を算出することにより、「粒子の長径」とする。なお、平均値は小数点第1位を四捨五入した値を用いる。
本発明の細胞吸着材料である繊維又は粒子の最頻細孔半径は10nm以上100nm以下であり、かつ細胞吸着材料における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積が50%以上100%以下である。本明細書における「最頻細孔半径」とは、細胞吸着材料である繊維又は粒子の細孔半径の頻度を測定した時に、最も多くの頻度をもつ細孔半径を意味する。なお、細胞吸着材料の全細孔の総体積とは、測定時に観測された全ての細孔の体積を合計したものを意味する。細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積とは、該当する半径を有する全ての細孔の体積を合計したものを意味する。そして、細胞吸着材料における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積、つまり「細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積」/「細胞吸着材料の全細孔の総体積」のことを、総体積比、という。
細胞吸着材料の最頻細孔半径及び総体積比が所定の範囲に含まれる場合に、本発明の効果が得られる理由・メカニズムについては、以下のように推測される。細胞吸着材料の最頻細孔半径が10nm未満である場合、タンパク質が吸着されやすくなることで、免疫細胞の非特異的な吸着が促進される可能性がある。一方、細胞吸着材料の最頻細孔半径が100nmを超える場合、細胞吸着材料の表面の凹凸が小さくなり、LAP陽性免疫細胞などの細胞の吸着性能が低下する可能性がある。また、細胞吸着材料における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積が占める割合が50%未満である場合、同じくタンパク質や免疫細胞の非特異的な吸着を誘発する可能性がある。したがって、細胞吸着材料の最頻細孔半径及び総体積比が、所定の範囲に含まれることが好ましいものと推測される。
最頻細孔半径及び総体積比は、水不溶性担体を有機溶媒に浸漬させることや水不溶性担体へ窒素含有化合物を結合する際の反応溶媒の種類などにより制御できる。例えば、反応溶媒と水不溶性担体との親和性が高いほど、最頻細孔半径及び総体積比は小さくなる。
細胞吸着材料である繊維又は粒子の最頻細孔半径は、好ましくは15nm以上であり、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは30nm以上であり、特に好ましくは40nm以上である。一方で、最頻細孔半径は、好ましくは95nm以下であり、より好ましくは85nm以下であり、特に好ましくは75nm以下である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。また、細胞吸着材料における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積が占める割合、つまり総体積比は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
「最頻細孔半径」、「細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積」、及び「細胞吸着材料の全細孔の総体積」は、示差走査熱量測定法(DSC法:Differential Scanning Calorimetry)を測定し、解析することで算出できる。具体的には後述する「最頻細孔半径及び総体積比の測定」に記載の方法により求めることができる。
本発明の細胞吸着材料である繊維又は粒子の断面の真円度は、0.75以上0.95以下であることが好ましい。細胞吸着材料の断面の真円度はより好ましくは0.77以上であり、さらに好ましくは0.80以上である。一方で、真円度は、より好ましくは0.90以下である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。断面の真円度が0.75以上0.95以下の範囲である場合、単球や顆粒球の細胞吸着材料への非特異的吸着が抑制され、LAP陽性免疫細胞が高効率で除去できると推測される。
「真円度」とは、対象の円形形体である細胞吸着材料が真円からどれだけ逸脱しているかを表す指標である。真円度は0.00以上1.00以下の値をとり、1.00に近い値であるほど、対象の円形形体が真円に近い形体であることを意味する。真円度は、繊維断面又は粒子全体の画像を画像解析ソフトウェアで解析することで算出できる。具体的には後述する「真円度の測定」に記載の方法で算出できる。
真円度は、水不溶性担体を有機溶媒に浸漬させることや水不溶性担体へ窒素含有化合物を結合する際の反応溶媒の種類などにより制御できる。例えば、反応溶媒と水不溶性担体との親和性が低いほど、真円度は大きくなる。
本発明の細胞吸着材料である繊維又は粒子の断面の凸度は、0.92以上1.00以下であることが好ましい。細胞吸着材料表面の凹凸を少なくすることにより、単球や顆粒球の細胞吸着材料への非特異的吸着が抑制され、細胞吸着性能が向上することから、細胞吸着材料の断面の凸度は、より好ましくは0.94以上であり、さらに好ましくは0.96以上である。
「凸度」とは、対象の形体である細胞吸着材料の断面における凹みの少なさを表す指標である。凸度は0.00以上1.00以下の値をとる、すなわち上限は1.00であり、1.00に近い値であるほど、対象の形体の凹みが少ないことを意味する。凸度は、繊維又は粒子の断面の画像を画像解析ソフトウェアで解析することで算出できる。具体的には後述する「凸度の測定」に記載の方法で算出できる。
凸度は、真円度と同様に、水不溶性担体を有機溶媒に浸漬させることや水不溶性担体へ窒素含有化合物を結合する際の反応溶媒の種類などにより制御できる。例えば、反応溶媒と水不溶性担体との親和性が低いほど、凸度は大きくなる。
本発明の吸着材料である水不溶性担体の繊維又は粒子における、表面の算術平均粗さは、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
「算術平均粗さ」とは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さLのみを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦倍率の方向にy軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表した時に、以下の式(1)で求められる値であり、JIS B 0601-2001の算術平均粗さ(Ra)を意味する。算術平均粗さは、例えば、形状測定レーザーマイクロスコープで測定できる。測定状態としては、細胞吸着材料が乾燥した状態で行うことが好ましい。また、繊維のように配向性のある場合は、長手方向の値を測定する。
Figure 2023067811000002
水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、0.01μm以上1.00μm以下がより好ましい。細胞吸着材料の表面の算術平均粗さが0.01μm以上1.00μm以下の範囲である場合、LAP陽性細胞の吸着性能を維持し、かつ単球や顆粒球の非特異的な吸着を抑制することが可能であると推測される。そのため、水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.10μm以上、さらにより好ましくは0.20μm以上、特に好ましくは0.30μm以上、最も好ましくは0.40μm以上である。一方で、細胞吸着材料の表面の算術平均粗さは、より好ましくは0.90μm以下、さらに好ましくは0.80μm以下である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。なお、細胞吸着材料である繊維又は粒子の好ましい長径、細胞吸着材料の好ましい真円度及び凸度、並びに細胞吸着材料の表面の好ましい算術平均粗さの値は、任意に組み合わせることができる。
細胞吸着材料の表面の算術平均粗さは、水不溶性担体を有機溶媒に浸漬させることなどにより制御できる。例えば、水不溶性担体としてポリ芳香族ビニル化合物とポリプロピレンを混練させて得た高分子を、ポリ芳香族ビニル化合物の一部が可溶であり、かつ、ポリプロピレンが不溶である溶媒に浸漬する方法が挙げられる。細胞吸着材料の表面の算術平均粗さは、高分子の種類、高分子の分子量、溶媒の種類、浸漬温度、浸漬時間などで制御できる。さらには、ポリ芳香族ビニルについては、架橋剤を導入することにより、溶媒への可溶性を制御するなどの方法も採用することができる。さらには、上記の反応は、窒素含有化合物の導入反応と同時に行うことも可能である。
本発明の細胞吸着材料は、免疫細胞を吸着する細胞吸着材料であることが好ましい。また、免疫細胞がLAP陽性免疫細胞を吸着する細胞吸着材料であることが好ましい。そして、LAP陽性免疫細胞のなかでも、LAP陽性T細胞又はLAP陽性血小板を吸着する細胞吸着材料であることが好ましく、LAP陽性CD4陽性T細胞又はLAP陽性CD42b陽性血小板を吸着する細胞吸着材料であることがより好ましい。
本発明の細胞吸着材料においては、LAP陽性T細胞の吸着率は、60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。LAP陽性血小板の吸着率は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。ここで、LAP陽性T細胞としては、CD4陽性T細胞を対象とし、血小板としては、CD42b陽性血小板とする。上記の吸着率の試験系としては、例えば、ヒト血液を用いた吸着カラム通液式免疫細胞吸着試験(本実施例参照)が挙げられる。また、評価系としては、例えば、免疫細胞の表面抗原を指標としたフローサイトメトリーによる分析(本実施例参照)が挙げられる。
本発明の細胞吸着カラムは、本発明の細胞吸着材料を内蔵する。
「細胞吸着カラム」とは、少なくとも血液入口部、ケース部、血液出口部を有しており、ケース部には細胞吸着材料が充填されているものを意味する。細胞吸着カラムとしては、例えば、ラジアルフロー型の細胞吸着カラムが挙げられる。上述したように、細胞吸着材料の形状としては、繊維が好ましく、編み地が好ましい。
本発明の細胞吸着カラムの内部の構成の一例を、図1に沿って説明する。図1において、1は容器本体であり、その長手方向の前端と後端とに流入口2と流出口3とを有する。流入口2の内側には、フィルター4と円板状の仕切板5が設けられ、また、流出口3の内側には、フィルター6と円板状の仕切板7が設けられている。2枚の仕切板5、7のうち、前側(流入口側)の仕切板5には中心部に開口5aが設けられ、また、後側の仕切板7の中心部には支持突起7aが設けられている。また、仕切板7の外周には、多数の透孔7bが周方向に間欠的に設けられている。さらに仕切板5の開口5aと仕切板7の支持突起7aとの間に、1本のパイプ8が掛け渡されている。パイプ8は血液を誘導する流路9を内側に形成し、かつ周壁に多数の貫通孔10を有する。また、パイプ8は、その前端で仕切板5の開口5aに連通しており、また、その後端は仕切板7の支持突起7aにより閉止されている。このパイプ8の外周に、細胞吸着材料11が何重にも複数層に巻き付けられている。この細胞吸着カラムを循環法に使用するときは、流入口2と流出口3に、血液プールとの間に循環回路を形成したチューブを連結し、その血液プールから取り出される血液を流入口2に供給し、内部の細胞吸着材料11で対象吸着物質(LAP陽性免疫細胞)を除去して流出口3から流出し、再び血液プールに戻すように循環させる。カラム内では、流入口2からフィルター4を経て流路9に侵入した血液は、流路9を移動しながら貫通孔10から順次細胞吸着材料11に浸入する。そして、半径方向のいずれかへ移動する血液中の細胞などを吸着する。細胞などが除去された血液は、仕切板7の外周の多数の透孔7bから流出し、フィルター6を経て流出口3から流出する。上記の例では血液が開口5aからパイプ8内の流路9を流動しながら貫通孔10から流出するが、細胞吸着カラムにおける血液の移動方向は、上記とは逆にして、流出口3から血液を供給し、流入口2から流出させるようにしてもよい。
LAP陽性免疫細胞などの吸着率を上げるためには、カラム内の血液線速度も重要である。すなわち、血液線速度が速い場合、LAP陽性免疫細胞が細胞吸着材料と十分に相互作用するのが困難となる可能性がある。一方、血液線速度が遅い場合、血小板やタンパク質などの他の血液成分が細胞吸着材料に非特異的に付着し、細胞吸着材料とLAP陽性免疫細胞などとの相互作用が阻害される場合がある。したがって、細胞吸着カラム入口の流速Sinが50cm/分のときの細胞吸着材料内の血液線速度の最大値は50cm/分以下であることが好ましく、25cm/分以下であることが好ましい。また、細胞吸着カラム入口の流速が50cm/分であるときの細胞吸着材料内の血液線速度の最小値は、0.1cm/分以上であることが好ましく、0.5cm/分以上であることが好ましい。ここで、血液線速度は、計算によって求められるものであり、例えば、下記のラジアルフロー型の細胞吸着カラムの場合、細胞吸着材料内の血液線速度の最大値(Vmax)は、中心パイプの側面に空いた開口部の合計面積(S)と細胞吸着カラム入口の流速Sin(50cm/分)から、下記式(2)により算出される。
max(cm/分)= Sin(cm/分)/S(cm)・・・式(2)
また、最小値(Vmin)は中心パイプに巻き付けた細胞吸着材料の最外周面の面積(S)と細胞吸着カラム入口の流速Sin(50cm/分)から、下記式(3)により算出される。
min(cm/分)= Sin(cm/分)/S(cm)・・・式(3)
さらには、本発明の細胞吸着カラムとしては、供給された血液を流出するために設けられた貫通孔を長手方向の側面に備える中心パイプと、上記中心パイプの周りに細胞吸着材料が充填されており、流入する上記血液が、上記中心パイプの中を通るように上記中心パイプの上流端に連通され、上記血液が上記中心パイプを通過せずに細胞吸着材料と接触するのを防ぐように配置されたプレートAと、上記中心パイプの下流端を封鎖し、細胞吸着材料を上記中心パイプの周りの空間に固定するように配置されたプレートBと、を備えるラジアルフロー型の細胞吸着カラムが好ましい。これは、血液が細胞吸着材料を均一に流れるようにするためである。なお、上記中心パイプの貫通孔の開口率が低い場合、この部分で圧力損失が生じ易くなるために、顆粒球、単球及び血小板が活性化し、これらが細胞吸着材料に非特異的に付着しやすくなる。そのため、LAP陽性免疫細胞などの吸着選択性が低下する可能性がある。また、開口率が高い場合は、パイプの強度が低下すること、血液入口部付近の貫通孔でショートパスを起こしやすくなるなどの課題が出てくる可能性がある。したがって、貫通孔の開口率は20%以上80%以下であることが好ましく、30%以上60%以下であることが好ましい。
「ラジアルフロー型」とは、カラム内部の血液の流れ方をいう。カラムの入口と出口に血液が垂直方向に流した場合、カラム内部で、水平方向の血液流れが存在する場合に、ラジアルフロー型と呼ぶ。
「貫通孔の開口率」とは、下記式(4)で求められる値を意味する。
貫通孔の開口率(%)=パイプの長手方向の側面に形成された貫通孔の面積の和/パイプの側面の面積×100・・・式(4)
本発明の細胞吸着カラムは、血液浄化療法に用いることができる。本発明の細胞吸着カラムを血液浄化用カラムとして使用することで、血小板や白血球などの非特異的な吸着を抑制しつつ、血液中からLAP陽性免疫細胞などを高効率で除去できる。例えば、血液を体外循環させて、本発明の細胞吸着カラムに通すことにより、血液中からLAP陽性免疫細胞などを高効率で除去できる。すなわち、本発明の細胞吸着カラムは、体外循環用カラムとして用いることができる。より具体的には、本発明の細胞吸着カラムは、がん患者の血液中からLAP陽性免疫細胞を除去するがん治療に用いることができる。また、樹状細胞やナチュラルキラー細胞などを活性化させる細胞輸注治療と併用することも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<最頻細孔半径及び総体積比の測定>
最頻細孔半径は、細胞吸着材料の細孔半径に対して、対数微分細孔体積(dV/d(logr)、ここでVは細胞吸着材料1g当たりの細孔体積、rは細孔半径を示す)をプロットした図上において、対数微分細孔体積の値が最大となる細孔半径、すなわち最も多くの頻度をもつ細孔半径である。細孔半径及び細孔体積は、DSC装置(DSC Q100、TA Instruments社製)を用いて、細孔内の水の毛管凝集による氷点降下度を測定し、求めた。まず、蒸留水に浸漬した状態の細胞吸着材料から過剰な表面付着水を除去し、DSC装置を用いて細胞吸着材料を-55℃に急冷後、0.3℃/分で5℃まで昇温させて測定し、得られた融点分布曲線のピークトップ温度を融点として、融点降下量を求め、下記式(5)より細孔半径を算出した。なお、細孔半径は、小数点第1位を四捨五入した値を用いた。
細孔半径(nm)=(33.30-0.3181×融点降下量[℃])/融点降下量[℃]・・・式(5)
細孔体積は、下記式(6)より算出した。
Figure 2023067811000003
式(6)中、Vfpは細胞吸着材料1g当たりの細孔体積、rは細孔半径である。
全細孔の総体積は、DSC測定で観測された細胞吸着材料1g当たりの全ての細孔の体積を合計し、求めた。細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積は、全細孔の総体積と同様に、DSC測定で観測された細胞吸着材料1g当たりの細孔半径が10nm以上250nm以下の全ての細孔の体積を合計し、求めた。全細孔の総体積に対する細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積の割合を計算し、総体積比を算出した。なお、上記測定、算出方法については、文献(Kazuhiko Ishikiriyama et al.; JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE,VOL.171,103-111(1995))の記載を参照した。
<繊維の長径の測定>
「繊維の長径」は、以下の方法により求めた。細胞吸着材料である、繊維形状の水不溶性担体のサンプル100本をランダムに採取し、走査型電子顕微鏡を用いて3000の倍率で断面(繊維の伸長方向に垂直な断面)の写真をサンプル1本につきそれぞれ1枚撮影した。次に、画像解析ソフトウェアのImageJを用いてそれぞれの繊維断面の長径を測定した。そして、それらの値の平均値(計100本の繊維断面の長径の平均値)を算出し、小数点第1位を四捨五入した値を、繊維の長径とした。
<真円度の測定>
細胞吸着材料が繊維である場合、以下の方法で測定した。乾燥させた吸着材料である窒素含有化合物が結合した水不溶性担体の繊維又は粒子を樹脂包埋し、ウルトラミクロトームを用いて、繊維の伸長方向に対して垂直な断面を作製した。上記の細胞吸着材料の断面を撮影し、得られた対象の円形形体である細胞吸着材料の断面の画像Yを画像解析ソフトウェアのAvizo及びImageJを使用し、画像Y中の対象の円形形体である細胞吸着材料の外周を囲い、周長を測定し、下記式(7)より真円度を算出し、小数点第3位を四捨五入した値を用いた。
真円度=4π×S/a ・・・式(7)
式(7)中、Sは、対象の円形形体の面積、aは、対象の円形形体の周長である。
<凸度の測定>
上述の「真円度の測定」で得られた細胞吸着材料の断面の画像Yを画像解析ソフトウェアのAvizo及びImageJを使用し、解析を行った。その一例を図2に示した。画像Y中の細胞吸着材料の断面の外周21を囲い、細胞吸着材料の断面積及び細胞吸着材料の断面の外周に対する凸包22の面積を求め、下記式(8)より凸度を算出し、小数点第3位を四捨五入した値を用いた。
凸度=S/S ・・・式(8)
式(8)中、Sは、細胞吸着材料の断面積、Sは、細胞吸着材料の断面の外周に対する凸包22の面積である。凸包とは、与えられた点をすべて包含する最小の凸多角形を意味する。
<算術平均粗さの測定>
形状測定レーザー顕微鏡(カラー3Dレーザー顕微鏡 VK-9700、キーエンス社製)を用いて、100倍の倍率で、乾燥状態の細胞吸着材料の表面を観察し、粗さ曲線を測定した。得られた粗さ曲線において、その平均線の方向に基準長さLのみを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦倍率の方向にy軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表し、下記式(1)により算術平均粗さを算出した(JIS B 0601-2001準拠)。基準長さLを50μmとし、位置が異なる10箇所で測定した値の平均値を、細胞吸着材料の表面の算術平均粗さとし、小数点第3位を四捨五入した値を用いた。
Figure 2023067811000004
<アミノ基量の測定>
まず、細胞吸着材料1.0gに6mol/L水酸化ナトリウム水溶液を50mL添加し、室温で1時間撹拌した。上記細胞吸着材料にイオン交換水50mLを添加して洗浄し、上記イオン交換水のpHが7になるまで洗浄を繰り返すことで、脱塩処理された細胞吸着材料を得た。脱塩後の細胞吸着材料を25℃の減圧下で48時間静置して乾燥した。乾燥後の吸着材料の質量を測定し、0.1mol/L塩酸を40mL加え、室温で30分間撹拌した。撹拌後、細胞吸着材料を取り出して残った溶液(以下「分注溶液1」という)のみを5mL抜き取り、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL滴下した(以下「測定溶液1」という)。滴下後10分間撹拌し、測定溶液1のpHを測定した。測定溶液1のpHが8.5を超えるまで、滴下後10分間の撹拌及びpH測定を同様に繰り返した。測定溶液1のpHが8.5を超えた際の水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を細胞吸着材料1g当たりの滴定量とした。細胞吸着材料1g当たりの適定量と下記式(9)を用いて、アミノ基量を算出し、小数点第1位を四捨五入した値を用いた。
細胞吸着材料1g当たりのアミノ基量(μmol/g)=VHCl-1/VS1×V/MS1×CNaOH-1×1000 ・・・式(9)
式(9)中、VHCl-1は添加した0.1mol/L塩酸の量(40mL)、VS1は分注溶液1の量(5mL)、Vは滴定量(mL)、MS1は乾燥後の細胞吸着材料の質量(g)、CNaOH-1は水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.1mol/L)を意味する。
<アミノ基/アミド基比率の測定>
アミド基量は、下記の方法で求めた。まず、乾燥させた細胞吸着材料1.0gに6mol/L塩酸を100mL添加し、110℃で20時間加水分解した。加水分解後の細胞吸着材料をイオン交換水で洗浄し、6mol/L水酸化ナトリウム水溶液50mLを添加した。上記細胞吸着材料を30分以上転倒撹拌した後、イオン交換水を添加して洗浄した。上記細胞吸着材料に添加したイオン交換水のpHが7になるまで洗浄を繰り返した後、上記細胞吸着材料を25℃の減圧下で48時間静置して乾燥させた。次に、乾燥後の細胞吸着材料の質量を測定し、0.1mol/L塩酸を30mL加え、30分間転倒撹拌した。細胞吸着材料を取り出して残った溶液(以下「分注溶液2」という)に対し、メチルレッド溶液及びフェノールフタレイン溶液を添加した(以下「測定溶液2」という)。測定溶液に0.02mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下していき、測定溶液の色が黄色になった時点を終点とした。細胞吸着材料1g当たりのアミド基の量は、下記式(10)から算出し、小数点第1位を四捨五入した値を用いた。
細胞吸着材料1g当たりのアミド基量(μmol/g)=(VS2×CHCl-2/CNaOH-2-VNaOH-2)×CNaOH-2×(VHCl-2/VS2)/MS2×1000 ・・・式(10)
式(10)中、VS2は分注溶液2の量(mL)、CHCl-2は2回目に添加した塩酸の濃度(0.1mol/L)、CNaOH-2は測定溶液2に滴下した水酸化ナトリウム水溶液の濃度(0.02mol/L)、VNaOH-2は測定溶液2に滴下した水酸化ナトリウム水溶液の量(mL)、VHCl-2は2回目に添加した塩酸の量(mL)、MS2は乾燥後の細胞吸着材料の質量(g)を意味する。
上述の「アミノ基量の測定」で算出したアミノ基量を用いて、アミノ基/アミド基比率を算出し、小数点第4位を四捨五入した値を用いた。
<LAP陽性免疫細胞の吸着試験>
細胞吸着材料におけるLAP陽性免疫細胞の吸着率を、ヒト血液を用いた吸着カラム通液式免疫細胞吸着試験により測定した。また、分析にはフローサイトメトリー(FACSLyric、ベクトン・ディッキンソン社製)を用いた。
まず、細胞吸着カラムの充填部(直径10mm、高さ14mm)に乾燥質量0.3gの細胞吸着材料及び生理食塩水を充填し、高圧蒸気滅菌(117℃、105分)を行った。その後、細胞吸着カラムに対し、終濃度50単位/mLのヘパリン添加生理食塩水を1.54mL/分で2.5分間通液して、プライミング処理をした。次に、ヒト健常者から採血した血液(終濃度5単位/mLのヘパリンを添加)を0.31mL/分で通液し、10分後のカラム出口の血液を採取した。カラム入口側の血液についても10分後に採取した。採取した血液を容量5mLのポリプロピレン製チューブ(FALCON社製)に100μLずつ分注し、各種蛍光標識抗体を添加して免疫細胞を染色した。各種蛍光標識抗体としては、フルオレセインイソチオシアネート(以下「FITC」という)標識抗ヒトCD4抗体(BioLegend社製)、フィコエリスリン(以下「PE」という)標識抗ヒトCD42b抗体(BioLegend社製)、アロフィコシアニン(以下「APC」という)標識抗ヒトLAP抗体(R&D社製)を用いた。LAP陽性免疫細胞数の検出には、フローサイトメーターを用いた。LAP陽性T細胞としてはCD4陽性かつLAP陽性の細胞を、LAP陽性血小板としてはCD42b陽性かつLAP陽性の細胞を評価対象とした。
LAP陽性T細胞の吸着率は、下記式(11)により算出し、小数点第1位を四捨五入した値を用いた。
LAP陽性T細胞の吸着率(%)=(1-細胞吸着材料を添加した血液中のLAP陽性T細胞数/細胞吸着材料を添加していない血液中のLAP陽性T細胞数)×100・・・式(11)
LAP陽性血小板の吸着率は、下記式(12)により算出した。
LAP陽性血小板の吸着率(%)=(1-細胞吸着材料を添加した血液中のLAP陽性血小板数/細胞吸着材料を添加していない血液中のLAP陽性血小板数)×100・・・式(12)
<原編み地(水不溶性担体)及び中間体(リンカー結合水不溶性担体)の作製>
水不溶性担体として、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)からなる島成分を264島有し、ポリスチレン(重量平均分子量:181,000)90質量%及びポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)10質量%からなる海成分を有し、島と海の比率(質量比)が50:50である、海島複合繊維(繊維の直径:20μm)を紡糸した。得られた繊維36本を合糸して編み地を形成した(以下「原編み地」という)。なお、繊維表面の算術平均粗さは、島数や海島比率、ポリスチレンやポリプロピレンの分子量などによって影響を受ける。
ニトロベンゼン(20mL)と硫酸(13mL)の混合溶液にパラホルムアルデヒド(以下「PFA」という、2g)を10℃で溶解させた(以下「PFA溶液」という)。さらに、ニトロベンゼン(259mL)と硫酸(169mL)の混合溶液にNMCA(47g)を10℃で溶解させた(以下「NMCA溶液」という)。原編み地(10g)をPFA溶液に浸漬した後、速やかにNMCA溶液を添加し、撹拌した。1時間浸漬・撹拌した後、編み地を取り出し、過剰量のニトロベンゼンで洗浄後、メタノールで置換・洗浄し、さらにイオン交換水で洗浄して、α-クロルアセトアミドメチル化した編み地(以下「中間体」という)を得た。PFA溶液の調製からメタノールを用いた編み地の洗浄までの一連の操作は15℃以下で実施した。
[実施例1]
DETA(23.3mL)をイオン交換水(405.0mL)に溶かし、500mmol/LのDETA水溶液を調製した。このDETA水溶液に、中間体(10g)を浸漬し、40℃で3時間撹拌した。その後、メタノール、イオン交換水に浸漬して洗浄し、乾燥させ、細胞吸着材料E1を得た。
[実施例2]
イオン交換水(364.8mL)とジメチルスルホキシド(以下「DMSO」という、63.8mL)を混合した後、DETA(23.3mL)を添加して、500mmol/LのDETA-10質量%DMSO水溶液を調製した。このDETA-10質量%DMSO水溶液に、中間体(10g)を浸漬し、40℃で3時間撹拌した。実施例1と同様に洗浄、乾燥させ、細胞吸着材料E2を得た。
[実施例3]
DETA(0.9mL)をイオン交換水(427.6mL)に溶かし、20mmol/LのDETA水溶液を調製した。この20mmol/LのDETA水溶液に、中間体(10g)を浸漬し、40℃で3時間撹拌した。実施例1と同様に洗浄、乾燥させ、細胞吸着材料E3を得た。
[比較例1]
イオン交換水(428.6mL)に、中間体(10g)を浸漬し、40℃で3時間撹拌した。実施例1と同様に洗浄、乾燥させ、細胞吸着材料C1を得た。
[比較例2]
DMSO(398.4mL)にトリエチルアミン(28.6mL)を添加した後、DETA(0.046mL)を添加して、1mmol/LのDETA-DMSO溶液を調製した。このDETA-DMSO溶液に、中間体(10g)を浸漬し、40℃で3時間撹拌した。その後、DMSO、メタノール、次いで水に浸漬して洗浄し、乾燥させ、細胞吸着材料C2を得た。
細胞吸着材料(E1、E2、E3、C1、C2)について、上述の方法により、最頻細孔半径、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積、真円度、凸度、長径、表面の算術平均粗さ、アミノ基量、アミノ基/アミド基比率、並びにLAP陽性T細胞及びLAP陽性血小板の吸着率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2023067811000005
表中の略号は以下の通りである。
DETA:ジエチレントリアミン
DMSO:ジメチルスルホキシド
本発明の細胞吸着材料及び細胞吸着カラムは、LAP陽性免疫細胞などの細胞を高効率で吸着することができる。そのため、がん治療への適用が期待される。また、本発明の細胞吸着材料及び細胞吸着カラムは、樹状細胞やナチュラルキラー細胞などを活性化させる細胞輸注治療と併用することも可能である。
1 容器本体
2 流入口
3 流出口
4 フィルター
5 仕切板
5a 仕切板の開口
6 フィルター
7 仕切板
7a 仕切板の支持突起
7b 仕切板の透孔
8 パイプ
9 流路
10 貫通孔
11 細胞吸着材料
Q 血液流れ
21 細胞吸着材料の断面の外周
22 細胞吸着材料の断面の外周に対する凸包

Claims (11)

  1. ポリアミン及び脂肪族アミンからなる群より選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体の繊維又は粒子であり、
    前記繊維又は前記粒子の最頻細孔半径が10nm以上100nm以下であり、
    前記繊維又は前記粒子における全細孔の総体積に対する、細孔半径が10nm以上250nm以下の細孔の総体積が50%以上100%以下である、細胞吸着材料。
  2. 前記繊維又は前記粒子の断面の真円度が0.75以上0.95以下である、請求項1記載の細胞吸着材料。
  3. 前記繊維又は前記粒子の長径が15μm以上50μm以下である、請求項1又は請求項2記載の細胞吸着材料。
  4. 前記繊維又は前記粒子の表面の算術平均粗さが0.01μm以上1.00μm以下である、請求項1又は2記載の細胞吸着材料。
  5. 前記窒素含有化合物が、下記一般式(I)で表されるポリアミンである、請求項1又は2記載の細胞吸着材料。
    N-X-NR ・・・(I)
    [一般式(I)中、Xは、2~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、3~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アルキル基又はアミノ基を有するアルキル基で置換されていてもよい。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。]
  6. 前記窒素含有化合物は、リンカーを介して前記水不溶性担体に結合している、請求項1又は2記載の細胞吸着材料。
  7. 前記細胞が免疫細胞である、請求項1又は2記載の細胞吸着材料。
  8. 前記免疫細胞がLAP陽性免疫細胞である、請求項7記載の細胞吸着材料。
  9. 前記LAP陽性免疫細胞は、LAP陽性T細胞又はLAP陽性血小板である、請求項8に記載の細胞吸着材料。
  10. 請求項1又は2記載の細胞吸着材料を内蔵した細胞吸着カラム。
  11. 血液浄化療法に用いるための、請求項10に記載の細胞吸着カラム。
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