JP2023059205A - 金属板塗布用塗料 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス成形が困難な複雑な成形を施される金属板において、プレス成形時の割れ危険部位での摺動抵抗が小さく、面圧が高く型カジリの発生が想定される部位において優れたプレス成形性を有する皮膜を形成するための金属板塗布用塗料を提供することを目的とする。【解決手段】ガラス転移点(Tg)が100℃以上であり、酸価とガラス転移点の比率R=酸価(mg-KOH/g)/Tg(℃)が1.50以上であるアクリル系樹脂と、融点が100℃以上145℃以下、かつ平均粒径が3.0μm以下のポリオレフィンワックスを含有する塗料を金属板に塗布する。【選択図】図1

Description

本発明は、金属板塗布用の塗料に関する。特に厳しい絞り加工時でもプレス成形における摺動性に優れた潤滑皮膜を得るための金属板塗布用塗料に関するものである。
冷延鋼板および熱延鋼板、ステンレス鋼板、あるいはアルミニウム板などの金属板は自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用され、そのような用途では、一般にプレス成形を施されて使用に供される。近年、工程省略のための部品の一体化や意匠性の向上が求められており、より複雑な成形を可能とする必要がある。
より複雑なプレス成形をしようとした場合、金属板が成形に耐えられず破断したり、連続プレス成形時に型カジリが生じたりするなど自動車の生産性に深刻な悪影響を及ぼす可能性がある。
金属板のプレス成形性を向上させる方法として、金型への表面処理が挙げられる。広く用いられる方法ではあるが、この方法では、表面処理を施した後、金型の調整を行えない。また、コストが高いという問題もある。従って、鋼板自身のプレス成形性が改善されることが強く要請されている。
金型に表面処理を施さずにプレス成形性を向上させる方法として、高粘度潤滑油を使う方法がある。しかし、この方法ではプレス成形後に脱脂不良を起こす場合があり塗装性が劣化する懸念がある。
そこで、金型の表面処理や高粘度潤滑油を用いずにプレス成形を可能とする技術として各種潤滑表面処理が検討されている。
特許文献1には、アクリル樹脂皮膜に合成樹脂粉末を含有させた潤滑皮膜を亜鉛めっき鋼板上に形成させる技術が記載されている。
特許文献2には、樹脂皮膜表面から固体潤滑剤を0.01~1.5μm突出させた潤滑皮膜を被覆した金属板が記載されている。
特許文献3には、ポリウレタン樹脂に潤滑剤を含有させた皮膜を0.5~5μm被覆したプレス成形性に優れた潤滑表面処理金属製品が記載されている。
特許文献4には、エポキシ樹脂中に潤滑剤を添加したアルカリ可溶型有機皮膜を鋼板上に形成させる技術が記載されている。
特開平9-170059号公報 特開平10-52881号公報 特開2000-309747号公報 特開2000-167981号公報
しかしながら、特許文献1~4では、含有する潤滑剤等による潤滑効果で潤滑性は発現するものの、複雑な成形において必ずしもプレス成形性が十分なものではなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、プレス成形が困難な複雑な成形を施される金属板において、プレス成形時の割れ危険部位での摺動抵抗が小さく、面圧が高く型カジリの発生が想定される部位において優れたプレス成形性を有する皮膜を形成するための金属板塗布用塗料を提供することを目的とする。
また、前記金属板をコイルとして保管した場合における防錆性も必要とされる。さらには、金属板が自動車車体として用いられる場合には、塗装工程の中のアルカリ脱脂工程において十分な脱膜性を有することも必要とされ、更に、組立工程における接着性に優れることも必要とされる。また、塗料としては含有成分が均一な分散状態を保持する安定性が必要とされる。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ガラス転移点(Tg)が100℃以上であり、酸価とガラス転移点の比率R=酸価(mg-KOH/g)/Tg(℃)が1.50以上であるアクリル系樹脂と、融点が100℃以上145℃以下、かつ平均粒径が3.0μm以下のポリオレフィンワックスを含有する塗料を金属板に塗布することで上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]ガラス転移点(Tg)が100℃以上であり、酸価とガラス転移点の比率R=酸価(mg-KOH/g)/Tg(℃)が1.50以上であるアクリル系樹脂と、融点が100℃以上145℃以下、かつ平均粒径が3.0μm以下のポリオレフィンワックスを含有する金属板塗布用塗料。
[2]前記アクリル系樹脂の酸価が180mg-KOH/g以上350mg-KOH/g以下である[1]に記載の金属板塗布用塗料。
[3]前記アクリル系樹脂の酸価とガラス転移点の比率Rが2.05以下である[1]または[2]に記載の金属板塗布用塗料。
[4]前記塗料を乾燥させたときの質量割合で、全固形分中の前記アクリル系樹脂の割合が30%以上であり、全固形分中の前記ワックスの割合が、5%以上50%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
[5]前記アクリル系樹脂の質量平均分子量が5000以上30000以下である[1]~[4]のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
[6]前記アクリル系樹脂がスチレンアクリル樹脂である[1]~[5]のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
[7]前記塗料を乾燥させたときの質量割合で、全固形分中に防錆剤を5%以上30%以下含有する[1]~[6]のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
[8]前記防錆剤がリン酸類のアルミニウム塩、亜鉛塩および酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]~[7]のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
[9]前記ワックスの平均粒径が0.01μm以上0.5μm以下である[1]~[8]のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
[10]前記塗料を乾燥させたときの質量割合で、全固形分中にシリカを1%以上10%以下含有する[1]~[9]のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
本発明によれば、金型等との摩擦係数が顕著に低下してプレス成形性に優れた金属板が得られる。このため、複雑な成形を施される金属板に対して、安定的に優れたプレス成形性を有することになる。また、塗料の安定性も確保され、皮膜を付与した金属板の防錆性も良好である。さらに、接着性も良好なため従来の金属板と同様の方法で接着剤の使用が可能であり、アルカリ脱脂による脱膜性に優れるため塗装工程を阻害することもない。
摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。 図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の金属板塗布用塗料は、ガラス転移点(Tg)が100℃以上であり、酸価とガラス転移点の比率R=酸価(mg-KOH/g)/Tg(℃)が1.50以上であるアクリル系樹脂と、融点が100℃以上145℃以下、かつ平均粒径が3.0μm以下のポリオレフィンワックスを含有する塗料である。
以下、酸価とガラス転移点の比率R=酸価(mg-KOH/g)/Tg(℃)をR=酸価/Tgと表記する。
本発明の金属板塗布用塗料のアクリル系樹脂のガラス転移点を100℃以上とするのは、良好な潤滑性を得るためである。ガラス転移点が100℃未満の場合には、摺動時に樹脂が軟化してしまいワックスの保持力が低下するとともに金属板と金型の直接接触を防止する能力が低下するため良好な摺動性が得られない。好ましくは110℃以上150℃以下である。150℃を超えた場合には、逆に摺動時に樹脂の硬度が高くもろくなりやすく優れた潤滑性が得られない場合がある。
ここで、ガラス転移点とは、JIS K 7121「プラスチックの転移温度測定方法」に基づき測定される中間ガラス転移温度である。
アクリル系樹脂の酸価とガラス転移点の比率R=酸価/Tgは1.50以上とする。ガラス転移点が100℃以上であっても酸価が低い場合(R<1.50)には優れた潤滑性が得られない。この原因は明確ではないが、アクリル系樹脂中のカルボキシ基は金型との親和性が高く、摺動時に皮膜中のワックスを金型に移着させる効果が得られると考えられる。摺動時にワックスを含んだアクリル系樹脂成分が金型に移着することで金型表面がワックスで保護され、金属板との直接接触を防止する効果が高まり摺動性が向上する。従って、酸価が低い場合(R<1.50)にはカルボキシ基が不足するため摺動性が劣る。アクリル系樹脂のガラス転移点が上昇した場合には摺動により樹脂が軟化しにくくなるため金型に移着しにくくなる。そのためガラス転移点が上昇した場合に優れた摺動性を得るには、酸価も上昇させる必要がある。すなわち酸価とガラス転移点の比率R=酸価/Tgを1.50以上とする必要がある。好ましくは1.80以上である。なお、Rの上限は特に限定されるものではないが、2.05以下とすることが好ましい。この理由は、Rが2.05を超えると防錆性が劣化する場合があるからである。
また、アクリル系樹脂の酸価は180mg-KOH/g以上350mg-KOH/g以下であることが好ましい。180mg-KOH/g未満の場合はアルカリによる脱膜性が劣る場合があり、また接着剤による接着強度が十分得られない場合がある。350mg-KOH/gを超える場合には防錆性が劣化する場合がある。
ここで、酸価とは樹脂1g中に含まれるカルボキシ基を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数のことであり、JIS K 0070「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」に基づき測定される。本明細では単位をmg-KOH/gとして示した。
本発明に用いるワックスは融点が100℃以上145℃以下、かつ平均粒径が3.0μm以下のポリオレフィンワックスであればよい。
ワックスとしてポリオレフィンワックスを用いるのは、表面エネルギーが低く、自己潤滑性を有するため、良好な潤滑性が得られるためである。また、ポリオレフィンは密度や分子量を制御することで融点を100℃以上145℃以下に調整することも比較的容易である。
融点が100℃以上145℃以下の場合には、ポリオレフィンワックス自身の自己潤滑性に加え、プレス成形時の摺動によりワックスが半溶融状態となることで有機樹脂と混合した潤滑皮膜成分が金型表面を被覆することが可能であり、金型と鋼板の直接の接触を抑制することで優れた潤滑効果が得られる。融点が100℃未満の場合には、プレス成形時の摺動による摩擦熱で完全に溶融しワックス自身の十分な潤滑効果が得られない上に前述した金型の被覆効果も得られない。また、融点が145℃を超えると、摺動時に溶融せず十分な潤滑効果が得られず、金型の被覆効果も得られない。さらに融点が120℃以上140℃以下であることが好ましい。
ここで、ワックスの融点とは、JIS K 7121「プラスチックの転移温度測定方法」に基づき測定される融解温度である。
ワックスの平均粒径が3.0μmを超えると、摺動時に有機樹脂と混合しにくくなり、前述した金型の被覆効果が得られず十分な潤滑性が得られない。ワックスの平均粒径は好ましくは0.5μm以下、さらにより好ましくは0.3μm以下である。
ワックスの平均粒径は0.01μm以上であることが好ましい。0.01μm未満では摺動時に潤滑油に溶解しやすくなり、十分な潤滑性向上効果が発揮されない場合があり、皮膜を形成させるための塗料中でも凝集しやすいため塗料安定性も低い。さらに好ましくは0.03μm以上である。上記アクリル系樹脂との混合性も考慮すると平均粒径は0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
前記平均粒径とは体積平均径のメジアン径であり、レーザー回折/散乱法により求められる。例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置partica LA-960V2(株式会社堀場製作所製)を用いて、純水で希釈した試料を測定することにより求めることが出来る。
ポリオレフィンワックスの中でもポリエチレンワックスを用いた場合に最も潤滑効果が得られるため、ポリエチレンワックスを用いることが好ましい。
本発明の金属板塗布用塗料を乾燥させたときの質量割合で、全固形分中のアクリル系樹脂の割合が30%以上であり、全固形分中の前記ワックスの割合が5%以上50%以下であることが好ましい。
全固形分中のアクリル系樹脂の割合が30%以上の場合には、摺動時の金型への移着による潤滑性向上効果や脱膜性、接着性などのアクリル系樹脂成分の物性が影響する特性が十分に得られる。30%未満の場合には他の成分の影響が大きくなり、目標とする性能が得られない場合がある。
全固形分中のワックスの質量割合が5%未満の場合には十分な潤滑効果が得られない場合がある。10%以上であれば、特に良好な潤滑効果が得られる。また、全固形分中のワックスの質量割合は50%以下であることが好ましい。50%を超える場合には、ベース樹脂成分の不足によりワックスが脱落しやすく、金属板への密着性が劣り、皮膜として安定に存在できず接着性に劣る場合がある。また、自動車車体として用いられる場合に塗装工程の中のアルカリ脱脂工程において十分な脱脂性が得られない場合があり、アルカリ脱脂工程で十分に脱膜せず皮膜が残存し、塗装性を劣化させる場合がある。さらに好ましくは30%以下である。
ここで、全固形分中のワックスの質量割合とは、塗料中の全固形分の質量に対するワックスの固形分の質量の割合である。
アクリル系樹脂の質量平均分子量は5000以上30000以下であることが好ましい。5000未満の場合には防錆性が劣る場合があり、30000を超えると接着性が劣化する場合がある。
ここで、質量平均分子量とは、JIS K 7252「プラスチック-サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方」に基づき測定される質量平均分子量である。
さらにアクリル系樹脂はスチレンアクリル樹脂であることが好ましい。樹脂のモノマーにスチレンを含有することで耐水性が向上するため防錆性が良好となる。さらにはスチレンを含有しない場合に比べて良好な摺動性が得られる効果も発現する。
本発明の金属板塗布用塗料は全固形分中に防錆剤を質量割合で5%以上30%以下含有することが好ましい。防錆剤を含有しない場合でも通常の保管環境ではさびが発生することはないが、防錆剤の含有率が5%未満では、良好でない保管環境下で防錆性が不足し、金属板に皮膜を形成した場合に錆が発生する場合がある。特に良好でない保管環境下で金属帯をコイル状に重ね合わせた状態で保管した場合に吸湿して錆が発生する場合がある。
防錆剤の比率が30%を超えると接着性が劣化する場合があり、また、塗料の状態において防錆剤が沈殿し、塗料安定性が劣化する場合がある。防錆剤としてはリン酸類のアルミニウム塩、亜鉛塩および酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。ここで、リン酸類とはオルトリン酸の他、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸などの縮合リン酸を含む。これらの防錆剤を用いることで十分な防錆効果を発揮することができ、さらには塗料安定性の劣化も小さい。
さらに、本発明の金属板塗布用塗料は全固形分中にシリカを質量割合で1%以上10%以下含有することが好ましい。シリカを含有することで防錆剤の沈殿を抑制することが可能となり塗料安定性が向上する。また、皮膜の撥水性が高まり十分な防錆性が得られる。シリカの含有量が1%未満の場合は前述の効果が得られにくく、10%を超えると接着性が劣化する場合がある。粒子径5nm以上200nm以下のコロイダルシリカを用いることが用いることが好ましい。
本発明においてアクリル系樹脂、ワックス、防錆剤、シリカ以外の成分として、一般的に塗料に添加される表面調整剤や消泡剤、分散剤などを含んでもよい。
次に、本発明の金属板について詳細に説明する。本発明では上述したいずれかの塗料を金属板の少なくとも片面に塗布して乾燥することで潤滑皮膜を形成した潤滑処理金属板を提供する。塗料の溶媒としては水または有機溶剤を用いることが出来るが、水を用いることが好ましい。塗料中の全固形分の濃度は質量割合で1~30%であることが好ましい。
1%未満や30%超えでは塗装ムラが発生する場合がある。塗装方法は特に制限されないが、例としてロールコーターやバーコーターを使用する方法や、スプレー、浸漬、刷毛による塗布方法が挙げられる。塗布後の鋼板の乾燥方法は一般的な方法で行うことができる。例えば、熱風による乾燥や、IHヒーターによる乾燥、赤外加熱による方法が挙げられる。また金属板の片面当たりの付着量が乾燥質量で0.3~2.5g/mとなるように塗装することが好ましい。0.3g/m未満では十分な摺動性が得られない場合があり、2.5g/mを超えるとアルカリによる脱膜性や接着性が劣化する場合がある。乾燥時の鋼板の最高到達温度は60℃以上使用したワックスの融点以下であることが好ましい。60℃未満では乾燥に時間がかかる上に、防錆性が劣る場合がある。使用したワックスの融点を超える場合はワックスが溶融、合体し、粒径が粗大化することで潤滑性が劣化する場合がある。
金属板は特に限定されない。熱延鋼板、冷延鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム板、チタン板などいずれの金属板にも使用することが出来る。
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
板厚0.7mmの270MPa級の引張強度を有する冷延鋼板SPCD(JIS G 3141)を用い、表1に示す組成の塗料を固形分濃度15質量%となるよう純水で調整し、バーコーターで塗布し、鋼板の最高到達温度が80℃となるようIHヒーターで乾燥することで潤滑処理鋼板とした。片面当たりの皮膜の付着量は1.0g/mとなるように塗布量を調整した。なお、シリカとしては体積平均粒子径9nmのコロイダルシリカを用いた。
皮膜付着量は、皮膜塗布後の鋼板の皮膜を除去し、皮膜除去前後の鋼板の質量差を面積で除して求めた。
(1)プレス成形性(摺動特性)の評価方法
プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を以下のようにして測定した。
図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けられている。上記押し付け力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油として、スギムラ化学工業(株)製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを試料1の表面に塗布して試験を行った。
図2は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ59mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ50mmの平面を有する。
摩擦係数測定試験は、図2に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):20cm/minとし行った。供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
摺動特性の評価は、摩擦係数が0.119以下の場合を特に優れた摺動性であるとして◎、0.119を超え0.130以下を良好な摺動性であるとして〇、0.130を超える場合は不十分として×と評価した。
(2)脱膜性の評価方法
本発明に係る金属板が、自動車用途で使用される場合を想定して、脱脂時の脱膜性を評価した。皮膜の脱膜性を求めるために、まず、各試験片をアルカリ脱脂剤のファインクリーナーE6403(日本パーカライジング(株)製)で脱脂処理した。脱脂処理は、試験片を、脱脂剤濃度20g/L、温度40℃の脱脂液に所定の時間浸漬し、水道水で洗浄することにより行った。脱脂処理後の試験片に対し、蛍光X線分析装置を用いて表面炭素強度を測定し、測定値と予め測定しておいた脱脂前表面炭素強度および無処理金属板の表面炭素強度の測定値を用いて、以下の式により皮膜剥離率を算出した。
皮膜剥離率(%)=[(脱脂前炭素強度-脱脂後炭素強度)/(脱脂前炭素強度-無処理鋼板の炭素強度)]×100
皮膜の脱膜性は、皮膜剥離率が98%以上となるアルカリ脱脂液への浸漬時間により、以下に示す基準で評価し、120秒以内である場合を良好な脱膜性であるとして〇、120秒超えの場合は不十分な脱膜性であるとして△と評価した。
(3)防錆性の評価方法
本発明に係る金属板が、金属帯としてコイル状態で保管した場合を想定して、重ね合わせ状態での防錆性を評価した。各試験片を150mm×70mmのサイズに加工し、防錆油を片面当たり1.0g/mとなるよう両面に塗布し、2枚の試験片を重ね合わせ、面圧0.02kgf/mmとなるように荷重をかけた状態で温度50℃、湿度95%RHの環境で試験を行った。防錆性の評価は7日ごとに重ね合わせた内側の面を確認し、錆が発生するまでの日数を評価し、56日以上である場合を特に良好な防錆性として◎、21日以上である場合を良好な防錆性として○、21日未満の場合を不十分な防錆性として△と評価した。
(4)接着性の評価方法
各試験片を100×25.4mmのサイズに加工し、防錆油に浸漬後24時間垂直に立て掛けて余分な油を除去したものを2枚使用し、25.4mm×13mmの部分にエポキシ系接着剤を0.2mm厚に均一に塗布後、クリップで重ね合わせて挟み、180℃で20分焼付けし、乾燥・硬化させた。冷却後、オートグラフ試験機によりせん断引張試験を行い、せん断接着力を測定した。潤滑皮膜を形成していない金属板(原板)を2枚使用して同様のせん断引張試験を行った場合はせん断接着力が29.0MPaであった。接着性は接着力20MPa以上を良好な接着性として○、20MPa未満を不十分な接着性として△と評価した。
(5)塗料安定性の評価方法
純水で固形分濃度15質量%となるよう調整した各塗料をφ18mm×180mmの試験管に25g入れ、よく振り混ぜた後に静置して試験管の底に沈殿が生じるまでの時間を評価した。塗料安定性は24時間たっても沈殿が生じていないものは良好として○、24時間以内に沈殿が生じたものは不十分として△と評価した。
Figure 2023059205000002
Figure 2023059205000003
表2によれば、本発明例の金属板塗布用塗料を塗布した金属板は、いずれも優れたプレス成形性を有している。これに対し、本発明の技術的特徴を有さない比較例の金属板はいずれもプレス成形性に劣っている。
本発明の金属板塗布用塗料はプレス成形時の摺動性、アルカリによる脱膜性、防錆性、接着性、塗料安定性に優れる。この塗料を塗布して皮膜を形成した潤滑処理金属板はこれらの優れた特性を有することから、自動車車体用途を中心に広範な分野で適用できる。
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール

Claims (10)

  1. ガラス転移点(Tg)が100℃以上であり、酸価とガラス転移点の比率R=酸価(mg-KOH/g)/Tg(℃)が1.50以上であるアクリル系樹脂と、融点が100℃以上145℃以下、かつ平均粒径が3.0μm以下のポリオレフィンワックスを含有する金属板塗布用塗料。
  2. 前記アクリル系樹脂の酸価が180mg-KOH/g以上350mg-KOH/g以下である請求項1に記載の金属板塗布用塗料。
  3. 前記アクリル系樹脂の酸価とガラス転移点の比率Rが2.05以下である請求項1または2に記載の金属板塗布用塗料。
  4. 前記塗料を乾燥させたときの質量割合で、全固形分中の前記アクリル系樹脂の割合が30%以上であり、全固形分中の前記ワックスの割合が、5%以上50%以下である請求項1~3のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
  5. 前記アクリル系樹脂の質量平均分子量が5000以上30000以下である請求項1~4のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
  6. 前記アクリル系樹脂がスチレンアクリル樹脂である請求項1~5のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
  7. 前記塗料を乾燥させたときの質量割合で、全固形分中に防錆剤を5%以上30%以下含有する請求項1~6のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
  8. 前記防錆剤がリン酸類のアルミニウム塩、亜鉛塩および酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1~7のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
  9. 前記ワックスの平均粒径が0.01μm以上0.5μm以下である請求項1~8のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
  10. 前記塗料を乾燥させたときの質量割合で、全固形分中にシリカを1%以上10%以下含有する請求項1~9のいずれかに記載の金属板塗布用塗料。
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