JP2023055814A - 複合体粒子、およびその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕
炭素材料とシリコンを含む粒子、および前記粒子の表面に、炭素と酸素を含むコート層を有する複合体粒子であって、
ヘリウムガスを用いた乾式密度測定による真密度が1.80g/cm3以上1.99g/cm3以下であり、
前記複合体粒子のラマンスペクトルにおいて、
ピークが450~495cm-1に存在し、
前記ピークの強度をISiとし、Gバンドの強度(1580cm-1付近のピーク強度)をIGとすると、ISi/IGが1.3以下であり、
前記複合体粒子のX線光電子分光法のSi、OおよびCのNarrowスペクトルによる原子数比率をそれぞれ、ASi、AO、およびACとし、Si2pスペクトル状態分析によるSi種比率のうち、SiO2とSiOの比率をそれぞれBSiO2、BSiOとすると、
ASiが0.05以上であり、
下記式(1)および(2)の少なくとも一方が満たされる、
複合体粒子。
Y≧-0.32X+0.81 …(2)
〔式(1)および(2)において、X=ISi/IGであり、Y=AC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))である。〕
〔2〕
前記ISi/IGが0.64以下であり、前記式(1)が満たされる、前記〔1〕の複合体粒子。
前記炭素材料が多孔質炭素であり、シリコンが前記多孔質炭素の細孔内の少なくとも一部に含まれている、前記〔1〕または〔2〕の複合体粒子。
コート層の厚さが、電子顕微鏡による断面観察では実質的に測定できない程度に薄い、前記〔1〕~〔3〕のいずれかの複合体粒子。
Cu-Kα線を用いた粉末XRDによるXRDパターンにおいて、Si(111)面のピークの半値幅が3.0°以上であり、(SiC(111)面のピーク強度)/(Si(111)面のピーク強度)が0.01以下であり、ラマンスペクトルによるR値が0.26以上、1.34未満である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかの複合体粒子。
疎水性である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかの複合体粒子。
〔7〕
複合体粒子内部に実質的に黒鉛を含まない、前記〔1〕~〔6〕のいずれかの複合体粒子。
体積基準の累積粒度分布における50%粒子径DV50が1.0~30.0μmである、前記〔1〕~〔7〕のいずれかの複合体粒子。
シリコン含有率が30質量%以上80質量%以下であり、酸素含有率が4.0質量%以下である、前記〔1〕~〔8〕のいずれかの複合体粒子。
多孔質炭素にシリコン含有ガスを接触させて、炭素材料の細孔内および表面にシリコンを堆積させ、Si/C粒子を得る工程(A)、および
不飽和結合を有する炭化水素を含むガスを、400℃以下で前記Si/C粒子に接触させる工程(B)、および
工程(B)で得られた炭化水素を含む層を酸化工程(C)
を有する、複合体粒子の製造方法。
前記工程(A)と、前記工程(B)とを、連続して行う、前記〔10〕の複合体粒子の製造方法。
〔1〕~〔9〕のいずれかの複合体粒子を製造する、前記〔10〕または〔11〕の複合体粒子の製造方法。
前記〔1〕~〔9〕の複合体粒子の表面の少なくとも一部に、黒鉛およびカーボンブラックから選択される1種以上からなる無機粒子と、ポリマー成分とを含み、ポリマー成分の含有率が0.1~10.0質量%である無機粒子含有ポリマー成分コート層を有する、ポリマーコート複合体粒子。
前記〔1〕~〔9〕の複合体粒子または前記〔13〕のポリマーコート複合体粒子を含む、負極活物質。
前記〔14〕の負極活物質を含む、負極合剤層。
〔16〕
前記〔15〕の負極合剤層を含む、リチウムイオン二次電池。
[1]複合体粒子
本発明に係る複合体粒子は、炭素材料とシリコンを含む粒子、および前記粒子の表面に、炭素と酸素を含むコート層を有する複合体粒子である。すなわち、本発明に係る複合体粒子は、表面に炭素と酸素を含むコート層を有し、前記コート層の内側に炭素材料とシリコンを含む粒子状の物質を有する、粒子状の物質である。
なお、「ピーク強度」はベースラインを補正した後の、ベースラインからピーク頂点までの高さとする。
複合体粒子のX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)のSi、OおよびCのNarrowスペクトルによる原子数比率をそれぞれASi、AO、およびACとし、Si2pスペクトル状態分析によるSi種比率のうち、SiO2とSiOの比率をBSiO2、BSiOとすると、
ASiが0.05以上であり、下記式(1)および(2)のうちの少なくとも一方が満たされる。
Y≧-0.32X+0.81 …(2)
〔式(1)および(2)において、X=ISi/IGであり、Y=AC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))である。〕
なお、ASi+AO+AC=1.00である。
<1>ASi
ASiが0.05未満であることは、コート層が厚すぎることを意味する。コート層が厚すぎると、複合体粒子の抵抗が上がってしまう。ASiは好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.25以上である。XPSの分析深さは数nmと非常に浅いため、Siがある程度観測できることは、前記コート層が極めて薄い層であることを意味する。
<2>AC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))
AC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))の値は、複合体粒子の、表面から深さ数nmまでの位置(XPSでの空間分解能の深さ)における炭素の濃度の指標である。複合体粒子表面ではSiはSiO2やSiOなどの酸化物として存在していると考えられ、複合体粒子表面のほとんどは炭素とSiO2やSiOなどのシリコン酸化物で形成されていると考えられるためである。ただし、ACには表面だけでなくSi/C粒子中の炭素についての情報も含まれているので、この指標はコート層についてのみの炭素濃度を反映しているわけではない。
Y≧0.75 …(1)
〔式(1)において、Y=AC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))である。〕
を満たす。
〔式(2)において、X=ISi/IGであり、Y=AC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))である。〕
上記式(1)および(2)のいずれも満たされない場合は、複合体粒子の酸化抑制能力が低くなる。
Y、すなわちAC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))は、好ましくは0.98以下である。
AC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))の値は、たとえば、後述複合体粒子の製造方法において、工程(B)での反応温度、反応時間、反応圧力、または炭化水素の種類もしくは濃度を調整することにより変えることができる。
本発明の一実施形態に係る複合体粒子においては、コート層が、電子顕微鏡による断面観察では実質的に測定できない程度に薄いことが好ましい。コート層が上記のように薄いと、複合体粒子は抵抗が低い。走査型電子顕微鏡(SEM)は、数nmの厚さを判別するできるほどの分解能を有していないため、それよりも薄いコート層の厚さを測定できない。透過型電子顕微鏡(TEM)は、分解能としては十分であり、数nmの厚さであっても観察可能であるが、複合体粒子からコート層を含む薄膜のTEM観察用試料を作製する際に、加工により複合体粒子のコート層はダメージを受け、破壊されてしまうので、実際にはTEMではコート層の厚さを観察できない。「実質的に測定できない」とはこのような状態を指す。しかしながら、電子顕微鏡による断面観察では実質的に測定できない薄膜であっても、上記のXPSや後述する表面の疎水性の試験から、コート層の存在を確かめることができる。
真密度が1.80g/cm3未満であることは、複合体粒子中の炭素の細孔へのシリコンの充填量が少ないことや、コート層がタール成分やポリマーなどの低密度の有機物の厚い層であることを意味する。
疎水性の測定方法については、複合体粒子をペレット状に形成した後に水の接触角を測定するなどの複合体粒子に対する水の接触角を測定する方法や、複合体粒子に対する水蒸気の吸着量を測定し、それを同じ複合体粒子の窒素吸着量や窒素吸着法で求めたBET比表面積で除する方法などが挙げられる。
本発明の一実施形態に係る複合体粒子は、複合体粒子内部に黒鉛を含まないことが好ましい。複合体粒子内部の黒鉛の存在はCu-Kα線を用いた粉末X線回折測定(粉末XRD)によるXRDパターンで判別する。複合体粒子内に黒鉛が有意に存在する場合は、黒鉛に由来する、2θで26°付近に鋭いピークが観測できる。この付近には炭素やシリコン酸化物由来のハローも同時に観測されるが、これらのパターンの強度は低く、一方黒鉛は強度の高い非常に鋭いピークとして観測されるので、黒鉛のピークが観測されないときは、黒鉛は複合体粒子内に実質的には含まれていないものと考えられる。
(円形度)=4π×(S/L2)
ここで、Sは粒子断面積[m2]、Lは粒子周囲長[m]である。
本発明の一実施形態に係る複合体粒子は、体積基準の累積粒度分布における50%粒子径DV50が1.0μm以上であることが好ましい。DV50が1.0μm以上であることにより、電解液との副反応を低減できるからである。さらに粉体がハンドリング性に優れ、塗工に適した粘度や密度のスラリーを調製しやすく、また電極とした際の密度を上げやすい。この観点から、DV50は2.0μm以上であることがより好ましく、3.0μm以上であることがさらに好ましく、3.5μm以上であることが最も好ましい。
本発明の一実施形態に係る複合体粒子は、シリコン含有率が30質量%以上であることが好ましい。ここで、複合体粒子の「シリコン含有率」とは、複合体粒子に含まれるシリコン単体および化合物の、シリコン元素としての含有率である。シリコン含有率が30質量%以上であると、複合体粒子中のシリコンの量が十分であり、放電容量を高くすることができる。同様の観点から、シリコン含有率は35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明において、複合体粒子の酸素含有率は、特別な記載の無い限り、製造後2日以内あるいは非酸化性雰囲気下で保管したものの酸素含有率のことを指す。工程の都合上等で製造後2日以内に測定できない場合には、例えばアルゴン等の不活性雰囲気下で保管しておき、後日に測定しても、その値は製造後2日以内と同等としてよい。これは不活性雰囲気下で保管した場合は、酸化が進まないためである。
本発明に係る複合体粒子の製造方法は、以下の工程(A)、工程(B)、工程(C)を有する。本発明の複合体粒子の製造方法によって、前述の本発明の複合体粒子、すなわち、前記[1]で述べた複合体粒子を得ることができる。
工程(A):多孔質炭素にシリコン含有ガスを接触させて(すなわち、反応させて)、多孔質炭素の細孔内および表面にシリコンを堆積させ、Si/C粒子を得る工程
工程(B):不飽和結合を有する炭化水素を含むガスを、400℃以下で前記Si/C粒子に接触させる工程
工程(C):工程(B)で得られた物質を酸化する工程
細孔を有する炭素材料を、本明細書では「多孔質炭素」と呼ぶ。複合体粒子はシリコンが粒子内に含まれている構造を有していることが好ましいので、多孔質炭素は、内部にシリコンを担持できる細孔容積を有することが好ましい。また、炭素材料(多孔質炭素)の窒素吸着試験において、相対圧P/P0が0.99のときの細孔容積をV0.99としたとき、V0.99は0.25cc/g以上1.50cc/g以下であることがより好ましい。
多孔質炭素を所望の複合体粒子の形状または粒度分布に調整してから、工程(A)を実施することが好ましい。これは工程(A)、工程(B)および工程(C)で粒子の形状および粒度はほとんど変化しないため、複合体粒子の形状および粒度分布は多孔質炭素の形状および粒度分布と変わらないためである。そのために、工程(A)に使用する多孔質炭素は、解砕や粉砕し、篩掛けを実施してもよい。
工程(B)は、工程(A)で得られたSi/C粒子を反応器内に設置し、不飽和結合を有する炭化水素を含むガスを、400℃以下で前記Si/C粒子に接触させる工程である。本発明に係る複合体粒子のコート層は薄い。炭素CVDのように炭素を表面に堆積させる方法は、厚い炭素被覆が形成されるため、適していない。Si/C粒子の表面のSi-H基と不飽和結合を有する炭化水素とを反応させて、Si/C粒子の表面に炭化水素を含む層を形成することが好ましい。この炭化水素を含む層には、炭化水素同士が反応した物質が含まれていてもよい。不飽和結合を有する炭化水素のガスとしては、二重結合や三重結合を有する炭化水素のガスを用いることができる。炭化水素が、蒸気圧が低く常圧でガス化しない化合物である場合は、常圧より低い圧力で炭化水素を用いればよい。好ましくは常圧でガスであるアセチレン、エチレン、プロピレン、および1,3-ブタジエンが挙げられ、アセチレン、エチレンがより好ましい。このとき、複数種類の炭化水素を用いてもかまわない。また、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガス、あるいは水素などの還元性ガスを混合して使用してもよい。
工程(C)は酸素濃度を変えて酸化処理をしてもよい。
本発明に係る複合体粒子は、上述した、Si/C粒子とSi/C粒子表面のコート層とを有する複合体粒子(以下「複合体粒子本体」ともいう。)のさらに外側に層を有していてもよい。前出の『コート層』と区別するため、複合体粒子本体のさらに外側に配置される層をここでは『表面コート層』と記すことにする。
乾燥時の温度はポリマー成分が分解して留去しない限りは特に制限されず、例えば50℃~200℃から選択することができる。不活性雰囲気での乾燥や、真空下での乾燥を実施してもよい。
ポリマー成分の含有率は、例えば、充分に乾燥させたポリマーコート複合体粒子をポリマー成分が分解する温度以上、かつシリコンや炭素が酸化する温度よりも低い温度(例えば300℃)に加熱して、ポリマー成分が分解した後の複合材料の質量を測定することで確認することができる。具体的には、加熱前のポリマーコートした複合体粒子の質量をAg、加熱後の複合体粒子の質量をBgとした場合に(A-B)がポリマー成分の含有量である。含有率は{(A-B)/A}×100で算出できる。
本発明に係る複合体粒子は、水中でのコート処理中、すなわち水を用いて湿式法により表面コート層を形成する際に酸化され難い。複合体粒子本体の表面には、均一にコートすることができる
表面コート層の効果としては、例えば、(i)複合体粒子内部のシリコンの経時酸化の抑制、(ii)初回クーロン効率の改善、(iii)サイクル特性の改善が挙げられる。
本発明の一実施形態に係る負極活物質は、本発明に係る複合体粒子を含む。本発明に係る複合体粒子は二種以上を混合して使用してもよい。負極活物質は、さらに他の成分を含むことができる。他の成分としては、リチウムイオン二次電池の負極活物質として一般的に用いられるものが挙げられる。例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)や、シリコン、スズなどの合金系活物質およびその複合材料等が挙げられる。これらの成分は通常粒子状のものが用いられる。複合体粒子以外の成分としては、一種を用いても、二種以上を用いてもよい。その中でも特に黒鉛粒子やハードカーボンが好ましく用いられる。
本発明の一実施形態に係る負極合剤層は、前記[4]で述べた負極活物質を含む。
本発明の負極合剤層は、リチウムイオン二次電池用の負極合剤層として用いることができる。負極合剤層は一般に、負極活物質、バインダー、任意成分としての導電助剤とからなる。
電極塗工用のスラリーを調製する際の溶媒としては、特に制限はなく、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、水などが挙げられる。溶媒として水を使用するバインダーの場合は、増粘剤を併用することも好ましい。溶媒の量はスラリーが集電体に塗工しやすい粘度となるように調整することができる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、前記負極合剤層を含む。前記リチウムイオン二次電池は、通常は前記負極合剤層および集電体からなる負極と、正極合剤層および集電体からなる正極、その間に存在する非水系電解液および非水系ポリマー電解質の少なくとも一方、並びにセパレータ、そしてこれらを収容する電池ケースを含む。前記リチウムイオン二次電池は、前記負極合剤層を含んでいればよく、それ以外の構成としては、従来公知の構成を含め、特に制限なく採用することができる。
リチウムイオン電池に用いられる非水系電解液および非水系ポリマー電解質は、リチウムイオン二次電池の電解液として公知であるものが使用できる。例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSO3CF3、CH3SO3Liなどのリチウム塩を、以下の溶媒やポリマーに溶解したものを使用する。溶媒としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトンなどの非水系溶媒;ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビリニデン、およびポリメチルメタクリレートなどを含有するゲル状のポリマー;エチレンオキシド結合を有するポリマーなどが挙げられる。
から、その組み合わせも含めて自由に選択することができ、ポリエチレンあるいはポリプ
ロピレン製の微多孔フィルム等が挙げられる。またこのようなセパレータに、SiO2や
Al2O3などの粒子をフィラーとして混ぜたもの、表面に付着させたセパレータも用いる
ことができる。
物性値の測定および電池評価は下記のように行った。
[1-1]X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)
小型スパチュラを用いて、Si基板上に貼り付けた両面テープの粘着面にサンプルを乗せ、下地の両面テープが露出しない様に均一に広げ、測定面がある程度平坦になるように小型スパチュラを用いて軽く押さえつけた。サンプルを広げる範囲は測定範囲(約100μmφ)より広くした。これは、測定範囲内には複合体粒子のみが敷き詰められているようにするためであった。このサンプルについて、以下の方法で測定を行った。
装置装置:PHI QuanteraII(アルバックファイ社製)
X線源:Alモノクロ(25W、15kV)
分析範囲:φ100μm
電子、イオン中和銃:ON
光電子検出角度:45度
Narrow scan
Pass Energy:55eV Step:0.2eV Dwell:20ms
Sweep time:O(25) C,Si(50)
[エネルギー補正]
Narrowスペクトルについて、炭素の1sのピークが284.6eVになるように補正を行った。
C、O、SiのNarrowスペクトルの面積比を原子数比として算出した。C、OとSiすべての原子数比AC、AO、ASiの合計は1.00とした。
Siの2p Narrowスペクトルについて、以下の方法を用いてピークフィッテングを行い、Si種の状態比率BSiO2、BSiO、BSiを算出した。
(化学シフト)Si 0価=99eV、Si 2価=101eV、Si 4価=103eV
(ピークフィッテング方法)ピークフィッテング結果と測定結果の残差が最小になるように解析ソフトウェアで半値幅とピークトップを自動調整した。なお、ピークトップの調整は幅3成分ともに±0.5eVの幅で行った。解析ソフトウェアは上記測定装置付属のソフトウェアを用いた。
・バックグラウンドの差し引き方法:Shirley法
・関数:Gauss-Lorentz
Si 0価はいわゆる単体のSiを意味する。Si 2価はSiOを意味する。Si 4価はSiO2を意味する。Siの1価と3価は強度が小さいため、ピークフィッテングの精度が逆に低くなるので除外した。Si 2価には一般的には炭化ケイ素も含まれるが、C 1s Narrowスペクトルのピーク形状を見ると、炭化ケイ素に由来する282.5~283.0eVの化学シフトに関与するピーク形状の乱れ(ショルダーピークやテーリングなど)が観測されないので、炭化ケイ素の存在量は検出下限以下と考えられた。そのため、Si 2価のピークはSiOのみを意味していると考えられた。
20mLのガラス製のサンプル瓶(胴径×高さ:φ28mm×61mm)に室温と同じ温度の純水を約1cmの深さまで投入した。ここに、薬包紙上に0.05gの複合体粒子を測り取り、前記サンプル瓶に複合体粒子をゆっくり投入した。このとき複合体粒子の投入高さは水面から0.5~3.0cm以内とした。投入後サンプル瓶はそのまま静置し、複合体粒子の水への浸透挙動を観察した。目視で確認して、5分間静置しても複合体粒子がサンプル瓶の底まで到達しないときを疎水性とする。同一の条件で5分以内に粉体が水中に沈む場合を親水性のサンプルとした。
サンプルを180℃で12時間真空乾燥した後、乾燥アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にてサンプルを測定セルの4~6割になるように充填し、セルを100回以上タッピングした後サンプルの重量を測定した。その後試料を大気下に取り出し、以下の方法でヘリウムガスを用いた定容積膨張法による乾式密度測定を行い、真密度を算出した。
装置:Micromeritics製 AccuPyc(登録商標)II 1340 Gas Pycnometer
測定セル:アルミニウム製 深さ39.3mm、内径18mm
キャリアガス:ヘリウムガス
ガス圧:19.5psiG(134.4kPaG)
測定時パージ回数:200回
温度:25℃±1℃
以下の条件で測定を行った。
顕微ラマン分光測定装置:株式会社堀場製 LabRAM(登録商標) HR Evolution
励起波長:532nm
露光時間:10秒
積算回数:2回
回折格子:300本/mm(600nm)
測定サンプル:小型スパチュラを用いて複合体粒子をガラスプレパラート上に乗せ、粉体が均一になるようにした。下記の測定範囲より広くした。
測定範囲:縦80μm×横100μm。測定範囲内には複合体粒子のみが敷き詰められていた。
ポイント数:縦送り17.8μm、横送り22.2μmで100ポイント測定を実施し、
それらを平均化したスペクトルを取得して、以下の解析を実施した。
このSiピークの強度をIsiとし、1580cm-1付近のピーク強度(IG)の比を(ISi/IG)とした。
なお、ベースラインを補正した後の、ベースラインからピークトップの高さをピークの強度とした。
サンプルをガラス製試料板(窓部縦×横:18mm×20mm、深さ:0.2mm)に充填し、以下の方法で測定を行った。
XRD装置:株式会社リガク製 SmartLab(登録商標)
X線源:Cu-Kα線
Kβ線除去方法:Niフィルター
X線出力:45kV、200mA
測定範囲:10.0~80.0°
スキャンスピード:10.0°/min
得られたXRDパターンに対し、解析ソフト(PDXL2、株式会社リガク製)を用い、バックグラウンド除去、Kα2成分の除去を行い、スムージングを行った後に、プロファイルフィッティングを行い、ピーク位置、強度と半値幅を求めた。
[1-6]粒度分布測定
サンプルを極小型スパチュラ1杯分と、非イオン性界面活性剤(SARAYA株式会社製 ヤシの実洗剤ハイパワー)32質量%の原液を100倍希釈した液2滴とを水15mLに添加し、3分間超音波分散させた。この分散液について以下の方法で測定を行った。
装置:セイシン企業社製レーザー回折式粒度分布測定器(LMS-2000e)
解析:体積基準累積粒度分布を算出し、50%粒子径DV50(μm)、90%粒子径DV90(μm)を求めた。
以下の条件でサンプルのシリコン含有率の測定を行った。
蛍光X線装置:株式会社リガク製 NEX CG
管電圧:50kV
管電流:1.00mA
サンプルカップ:φ32 12mL CH1530
サンプル重量:2~3g
サンプル高さ:5~18mm
サンプルカップにサンプルを充填し、上記方法で測定を行い、ファンダメンタル・パラメーター(FP法)を用いて複合体粒子中のシリコン含有率を質量%の単位で算出した。
サンプル20mgをニッケルカプセルに秤量し、酸素・窒素分析装置EMGA(登録商標)-920(株式会社堀場製作所製)により複合体粒子中の酸素含有率を質量%の単位で算出した。キャリアガスはアルゴンを用いた。この複合体粒子中の酸素含有率を前記シリコン含有率で割ることで、複合体粒子中のシリコン含有率を100質量%としたときの酸素含有率を質量%の単位で得た。
[1-9]走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)、エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy:EDS)
サンプルをカーボンテープ上に担持し、粒子の観察の場合はそのまま観察を実施した。断面の観察の場合は、日本電子株式会社製クロスセクションポリッシャ(登録商標)を用いて断面加工したものを観察した。以下の方法で観察・測定を行った。
SEM:走査型電子顕微鏡装置:Regulus(登録商標)8220(株式会社日立ハイテク製)
EDS:XFlash(登録商標)5060FlatQUAD(ブルカー株式会社製)
加速電圧:1~20kV
観察倍率:500~5000倍(粒子の大きさに合わせて適宜選択)
測定装置としてカンタクローム(Quantachrome)社製NOVA(登録商標) 4200eを用い、サンプルセル(9mm×135mm)にサンプルの合計表面積が2~60m2となるようにサンプルを入れ、300℃、真空条件下で1時間乾燥後、サンプル重量を測定し、測定を行った。測定用のガスには窒素を用いた。
[1-11]ポリマー成分含有率の測定
以下の方法で測定を行った。
TG-DTA用装置 :NETZSCH JAPAN製 TG-DTA2000SE
サンプル重量 :10~20mg
サンプル用パン:アルミナ製
リファレンス用パン:アルミナ製
ガス雰囲気:Ar
ガス流量:100mL/min
昇温測度:10℃/min
測定温度範囲:室温~1000℃
200℃から350℃の熱分解による減量をポリマー成分の量として、ポリマー成分含有率を算出した。
20mLのガラス製サンプル瓶に撹拌子と純水2gを仕込んだ。ここにサンプルを0.05g投入し、シリコーンゴム製のセプタムで蓋をした。室温下(20~26℃)でマグネティックスターラーにて撹拌しながら、サンプル瓶内の気相の水素ガス濃度を測定した。
リアルタイム質量分析計:ファイファー・バキューム(PFEIFER VACUUM)社製、OMNISTAR(登録商標) GSD350
[3]電池評価
[3-1]負極シートの作製
バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。
混合導電助剤として、カーボンブラック(SUPER C 45(登録商標)、イメリス・グラファイト&カーボン社製)およびシングルウォールタイプのカーボンナノチューブ(TUBALL(登録商標)WPB-030、OCSiAl社製)を5:1の質量比で混合したものを調製した。
負極の電極密度(負極密度)は以下の様に計算した。前述の方法で得られた負極の質量と厚さを測定し、そこから別途測定しておいた16mmφに打ち抜いた集電体箔の質量と厚さを差し引いて負極合剤層の質量と厚さを求め、その値から電極密度(負極密度)を計算した。
ポリプロピレン製の絶縁ガスケット(内径約18mm)内において、前述した負極と17.5mmφに打ち抜いた厚さ1.7mmの金属リチウム箔で電解液を含浸させたセパレータ(ポリプロピレン製マイクロポーラスフィルム)を挟み込んで積層した。この際、負極の負極合剤層の面はセパレータを挟んで金属リチウム箔と対向するように積層した。これを2320コイン型セルに設置し、カシメ機で封止して試験用セル(リチウム対極セル)とした。
リチウム対極セルを用いて試験を行った。OCV(Open Circuit Voltage)から0.005Vまで、0.1C相当の電流値で定電流(コンスタントカレント:CC)充電を行った。0.005Vに到達した時点で定電圧(コンスタントボルテージ:CV)充電に切り替えた。カットオフ条件は、電流値が0.005C相当まで減衰した時点とした。このときの比容量を初回充電比容量とする。次に、上限電圧1.5Vとして0.1C相当の電流値で定電流放電を行った。このときの比容量を初回放電比容量とする。
初回放電比容量を初回充電比容量で割った値を百分率で表した数値、(初回放電比容量)/(初回充電比容量)×100を初回クーロン効率(%)とした。
複合体粒子中のシリコンの比容量を初回放電比容量と負極活物質の組成から計算し、その値をシリコン理論比容量(4200mAh/g)で除した値を百分率で表した数値を、シリコン利用率(%)とした。この値が100%に近いほど、複合体粒子中のシリコンの容量をより有効に使用できていると考えられる。
なお、上記式の炭素濃度とシリコン濃度は、負極活物質組成と複合体粒子の組成から算出した。また、複合体粒子中の炭素材料における炭素含有率は100質量%とした。
表1に記載の物性を有する多孔質炭素を管状炉内部に仕込み、管状炉内をアルゴンで置換した後に、管状炉内に表1に記載の工程(A)の条件に従いシリコン含有ガスを流し、反応を行った。
表1に記載の物性を有する多孔質炭素を管状炉内部に仕込み、管状炉内をアルゴンで置換した後に、管状炉内に表1に記載の工程(A)の条件に従いシリコン含有ガスを流し、反応を行った。
続いて、管状炉内をアルゴンで置換した後に、管状炉内に表1に記載の工程(C)の条件に従いガスを流し(工程C-1およびC-3)または充填し(工程C-4)、反応を行い、複合体粒子を得た。工程(C)は工程C-1、工程C-2、工程C-3、工程C-4の順序で実施した。実施していない工程は表1に「―」を記入してある。得られた複合体粒子の構造・物性値を表2に示す。評価結果を表3に示す。
[無機粒子分散液の製造]
無機粒子として、平均粒子径DV50が3μmの鱗片状黒鉛(KS-6、Timcal製)およびアセチレンブラック(HS100、デンカ株式会社製)を準備した。水800gに対して、鱗片状黒鉛156g、アセチレンブラック40g、カルボキシメチルセルロース4g入れ、ビーズミルで分散および混合し、無機粒子分散液(固形分20質量%)を得た。
実施例1で得た複合体粒子7g、水1.98g、2.5質量%のタマリンシードガム水溶液3.84g、2.5質量%のソルビトール水溶液0.43g、無機粒子分散液1.60gを用意した。
表1に記載の物性を有する多孔質炭素を管状炉内部に仕込み、管状炉内をアルゴンで置換した後に、管状炉内に表1に記載の工程(A)の条件に従いシリコン含有ガスを流し、反応を行った。
表1に記載の物性を有する多孔質炭素を管状炉内部に仕込み、管状炉内をアルゴンで置換した後に、管状炉内に表1に記載の工程(A)の条件に従いシリコン含有ガスを流し、反応を行った。
表1に記載の物性を有する多孔質炭素を管状炉内部に仕込み、管状炉内をアルゴンで置換した後に、管状炉内に表1に記載の工程(A)の条件に従いシリコン含有ガスを流し、反応を行った。
続いて、生成物を室温まで冷却し、複合体粒子を得た。複合体粒子の構造・物性値を表2に示す。断面SEM観察により表面炭素被覆が確認でき、その平均厚さは21nmであった。評価結果を表3に示す。
また、電池特性については、実施例1~5、7~11の複合体粒子および実施例6のポリマーコート複合体粒子は、比較例2、3での生成物に比べて、シリコン利用率が高く、複合体粒子中のシリコンを有効に使用できる。比較例2、3は工程(B)での反応温度が高く炭化ケイ素が生成したため、充放電することができるシリコンが減ったことで、シリコン利用率が低くなったものと考えられる。
Claims (12)
- 炭素材料とシリコンを含む粒子、および前記粒子の表面に、炭素と酸素を含むコート層を有する複合体粒子であって、
前記コート層が、電子顕微鏡による断面観察では実質的に測定できない程度に薄く、
ヘリウムガスを用いた乾式密度測定による真密度が1.80g/cm3以上1.99g/cm3以下であり、
前記複合体粒子のラマンスペクトルにおいて、
ピークが450~495cm-1に存在し、
前記ピークの強度をISiとし、Gバンドの強度(1580cm-1付近のピーク強度)をIGとすると、ISi/IGが1.3以下であり、
前記複合体粒子のX線光電子分光法のSi、OおよびCのNarrowスペクトルによる原子数比率をそれぞれ、ASi、AO、およびACとし、Si2pスペクトル状態分析によるSi種比率のうち、SiO2とSiOの比率をそれぞれBSiO2、BSiOとすると、
ASiが0.05以上であり、
下記式(1)および(2)の少なくとも一方が満たされる、
複合体粒子。
Y≧0.75 …(1)
Y≧-0.32X+0.81 …(2)
〔式(1)および(2)において、X=ISi/IGであり、Y=AC/(AC+ASi×(BSiO2+BSiO))である。〕 - 前記ISi/IGが0.64以下であり、前記式(1)が満たされる、請求項1に記載の複合体粒子。
- 前記炭素材料が多孔質炭素であり、シリコンが前記多孔質炭素の細孔内の少なくとも一部に含まれている、請求項1に記載の複合体粒子。
- Cu-Kα線を用いた粉末XRDによるXRDパターンにおいて、Si(111)面のピークの半値幅が3.0°以上であり、(SiC(111)面のピーク強度)/(Si(111)面のピーク強度)が0.01以下であり、ラマンスペクトルによるR値が0.26以上、1.34未満である、請求項1に記載の複合体粒子。
- 疎水性である、請求項1に記載の複合体粒子。
- 内部に実質的に黒鉛を含まない、請求項1に記載の複合体粒子。
- 体積基準の累積粒度分布における50%粒子径DV50が1.0~30.0μmである、請求項1に記載の複合体粒子。
- シリコン含有率が30質量%以上80質量%以下であり、酸素含有率が4.0質量%以下である、請求項1に記載の複合体粒子。
- 請求項1に記載の複合体粒子と、その表面の少なくとも一部に形成された、黒鉛およびカーボンブラックから選択される1種以上からなる無機粒子と、ポリマー成分とを含み、ポリマー成分の含有率が0.1~10.0質量%である無機粒子含有ポリマー成分コート層を有する、ポリマーコート複合体粒子。
- 請求項1に記載の複合体粒子または請求項9に記載のポリマーコート複合体粒子を含む、負極活物質。
- 請求項10に記載の負極活物質を含む、負極合剤層。
- 請求項11に記載の負極合剤層を含む、リチウムイオン二次電池。
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