JP2023027835A - 改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ - Google Patents

改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ Download PDF

Info

Publication number
JP2023027835A
JP2023027835A JP2021133138A JP2021133138A JP2023027835A JP 2023027835 A JP2023027835 A JP 2023027835A JP 2021133138 A JP2021133138 A JP 2021133138A JP 2021133138 A JP2021133138 A JP 2021133138A JP 2023027835 A JP2023027835 A JP 2023027835A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gad
gaba
glutamic acid
polypeptide
producing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021133138A
Other languages
English (en)
Inventor
創平 伊藤
Sohei Ito
祥吾 中野
Shogo Nakano
啓詞 高木
Hiroshi Takagi
康平 小塚
Kohei Kozuka
健太 三村
Kenta Mimura
貴久 飯塚
Takahisa Iizuka
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Maize Products Co Ltd
Nihon Shokuhin Kako Co Ltd
University of Shizuoka
Original Assignee
Japan Maize Products Co Ltd
Nihon Shokuhin Kako Co Ltd
University of Shizuoka
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Maize Products Co Ltd, Nihon Shokuhin Kako Co Ltd, University of Shizuoka filed Critical Japan Maize Products Co Ltd
Priority to JP2021133138A priority Critical patent/JP2023027835A/ja
Publication of JP2023027835A publication Critical patent/JP2023027835A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、より高いGABA生産性と工業規模での生産に適した特性(酵素としての熱安定性、pH、生産性)を有するGADを提供すること、並びにこのGADを用いることを含むGABA製造方法、およびこのGAD遺伝子を導入した宿主細胞を作用させることを含むGABA製造方法を提供することを課題とする。【解決課題】本発明によれば、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有する、ポリペプチドが提供される。さらに、本発明によれば、上記ポリペプチドを含むγ-アミノ酪酸(GABA)製造用酵素剤、およびこのGABA製造用酵素剤を用いることを含む、GABA製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドを含むベクター、このベクターで形質転換された宿主細胞、およびこの宿主細胞を作用させることを含む、GABAの製造方法が提供される。【選択図】なし

Description

本発明はグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有する改変ポリペプチド、このポリペプチドを含むγ-アミノ酪酸(GABA)製造用酵素剤、およびこのGABA製造用酵素剤を用いることを含むGABA製造方法に関する。本発明は、さらには、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドを含むベクター、このベクターで形質転換された宿主細胞、およびこの宿主細胞を作用させることを含む、GABAの製造方法に関する。
γ-アミノ酪酸(Gamma-Amino Butyric Acid、GABA)は、生体内で抑制性の神経伝達物質として働き、血圧降下作用、利尿作用などの生理作用があることが知られている。また、発芽玄米、味噌、漬け物(キムチなど)等の食品中にも多く含まれていることが知られている(特許文献1)。加えて、GABAは、ナイロン4を構成するモノマーとしても知られている。ナイロン4は、従来のナイロン6やナイロン66には無い生分解性を備え、更に従来の生分解性プラスチック材料と比較して強度、耐熱性に優れている(特許文献1)。
従来、GABAは、化学合成、発酵法、酵素法で生産され、酵素法ではグルタミン酸にグルタミン酸デカルボキシラーゼ(Glutamate decarboxylase, glutamic acid decarboxylase、GAD;EC 4.1.1.15)を作用させることによって行われている。GADは微生物や植物に内在しており、GABAが食品用途で利用されることが多いことから、発酵食品生産に用いる乳酸菌、カビに内在するGADを利用して生産されている(特許文献2~3)。例えば、特許文献2および3は、それぞれ乳酸菌および麹菌を培養することを含むγ-アミノ酪酸の製造方法を開示する。
遺伝子組換え技術を利用したGABAの生産例も報告されている。例えば、非特許文献1には、Lactobacillus plantarum WCFS1株由来GADを大腸菌で発現させ、GADを調製し精製酵素を用いてGABAを生産したことが記載されている。さらに、特許文献1は、好熱性古細菌由来の耐熱性GADを単離し、これを用いたγ-アミノ酪酸を製造する方法を開示する。
特許第4243685号 特開2007-135416号公報 特開2007-028998号公報
Microbiol. Biotechnol. Lett., 2015年, 43巻, 300-305頁
GABAを工業的に製造するために、生産性と高温での安定性に優れたGADの開発が求められている。乳酸菌や麹菌などGADを内包する微生物を利用したGABAの製造(例えば、特許文献2および3)では、GADの基質であるグルタミン酸またはグルタミン酸塩からGABAへの生物変換率が低いという問題があった。また、従来のGADは高温での安定性が低いという欠点がある。非特許文献1は、精製GADをビーズに固定化することで熱安定性を高めており、酵素そのものの特性を改変するものではない。好熱性古細菌由来の耐熱性GADが発見されているが(特許文献1)、酵素の採取を高塩濃度環境下で行なう必要があり、GABA製造に使用する際に、持ち込んだ塩を除去する工程が必要だった。
そこで本発明は、より高いGABA生産性と工業規模での生産に適した特性(酵素としての熱安定性、pH、生産性)を有するGADを提供すること、並びにこのGADを用いることを含むGABA製造方法、およびこのGAD遺伝子を導入した宿主細胞を作用させることを含むGABA製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、改変グルタミン酸デカルボキシラーゼの作出を企図し、多数の人工GABA合成酵素を設計し、機能解析によるスクリーニングを行ってきた。その中で、Lactobacillus brevis由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼを鋳型とした少なくとも2種類の人工GADがより高いGABA生産性と工業規模での生産に適した特性を有することを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1] 配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有する、ポリペプチド。
[2] 配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を含む、[1]に記載のポリペプチド。
[3] [1]または[2]に記載のポリペプチドを含むγ-アミノ酪酸(GABA)製造用酵素剤。
[4] [3]に記載のGABA製造用酵素剤を用いることを含む、GABA製造方法。
[5] 基質がグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩である、[4]に記載のGABA製造方法。
[6] [1]または[2]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
[7] [6]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[8] [7]に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
[9] 大腸菌(E. coli)、バチルス属細菌(Bacillus)、乳酸菌(Lactobacillus、Lactococcus)、放線菌(Corynebacterium)、アスペルギルス(Aspergillus)、または酵母の細胞である、[8]に記載の宿主細胞。
[10] [8]または[9]に記載の宿主細胞を作用させることを含む、GABAの製造方法。
[11] [8]または[9]に記載の宿主細胞を培養し、培養物からグルタミン酸デカルボキシラーゼを回収することを含む、グルタミン酸デカルボキシラーゼの製造方法。
[12] [4]、[5]および[10]の何れか一に記載の方法を実施して得られたGABAを用いて食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品を得る工程を含む、食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品の製造方法。
[13] [1]もしくは[2]に記載のポリペプチド、[3]に記載の酵素剤、または[8]もしくは[9]に記載の宿主細胞をグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩を含む食品素材に接触させることを含む、GABA含有食品の製造方法。
本発明によれば、グルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有する新規改変ポリペプチドが提供される。
図1Aは、Lactobacillus brevis CGMCC 1306由来の野生型GAD(GAD-Wild_GU987102.1)および改変GAD(GAD-NSK01, GAD-NSK02)のアミノ酸配列を示す。 図1Bは、組換えに使用したベクターに含まれる野生型GAD(GAD-Wild)および改変GAD(GAD-NSK01, GAD-NSK02)の塩基配列を示す。 図1Cは、図1Bのつづきであり、組換えに使用したベクターに含まれる野生型GAD(GAD-Wild)および改変GAD(GAD-NSK01, GAD-NSK02)の塩基配列を示す。 図2は、精製したGAD-Wild、GAD-NSK01、およびGAD-NSK02を示すSDS-PAGEである。M:分子量マーカー、レーン1~4:GAD-NSK01、レーン5~8:GAD-NSK02、レーン9~12:GAD-Wild、レーン1、5および9:不溶出性画分、レーン2、6および10:溶出液(5mM)、レーン3、7および11:溶出液(50mM)、レーン4、8および12:溶出液(250mM)。 図3は、精製したGAD-Wild、GAD-NSK01、およびGAD-NSK02の各反応pHにおける相対活性を示したグラフである。 図4のAは、精製したGAD-Wild、GAD-NSK01、およびGAD-NSK02の酵素反応を各反応温度で10分間行った際の相対活性を示したグラフである。図4のBは、精製したGAD-Wild、GAD-NSK01、およびGAD-NSK02を各温度で10分間保持した際の相対残存活性を示したグラフである。 図5は、反応中のGABA濃度の時間変化を示す。反応は、グルタミン酸と水の混合液に、GAD-NSK02を発現させた菌体を加えて、40℃または50℃で旋回撹拌により行った。
以下に記載する本発明の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。本明細書では、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%の範囲を含むことを意図する。また、「~」を用いて表される数値範囲は「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(ポリペプチド)
本発明は、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有する、ポリペプチド(以下、改変ポリペプチドと記載する場合がある)に関する。一実施態様では、本発明のポリペプチドは、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるものであってもよい。
「グルタミン酸デカルボキシラーゼ活性」は、グルタミン酸(L‐グルタミン酸)を脱炭酸する反応を触媒する活性を意味し、この反応により、グルタミン酸からGABA(γ-アミノ酪酸)が得られる。
本発明の改変ポリペプチドは、Lactobacillus brevis CGMCC 1306由来のGAD(DDBJ/EMBL/GenBank Accession number: GU987102.1、配列番号3、以下、GAD-Wildと記載する)を基に、アミノ酸変異を挿入して設計した。Lactobacillus brevis CGMCC 1306株は、ミルクから単離された株であり、高いGAD活性を有することが報告されている(Chinese J Chem Eng, 15, 157-161 (2007))。本発明者らは、人工設計GADである、配列番号1および2に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有する2種の改変ポリペプチドが、野生型(GAD-Wild)に比較して高いGAD生産性を有し、酵素としての熱安定性に優れ、GABA生産に好適な至適pHを有し、さらには高いGABA生産性を有することを見出した。
本発明の改変ポリペプチド(ヒスチジンタグ無し)の分子量の理論値は54kDaである。本発明の改変ポリペプチドにヒスチジンタグを付与したものの分子量の理論値は56kDaであり、SDS-PAGEにより測定される分子量が約56kDaである。
本発明の改変ポリペプチドは、宿主細胞における向上した発現効率を有することができる。後記する実施例2のとおり、野生型GADと改変GADを同じ種類のベクターに組み込み、各GADの形質転換体での発現効率を比較したところ、野生型に対して、改変ポリペプチドのGAD-NSK01では2倍以上、GAD-NSK02では20倍以上の発現増大が得られた。Fan et al (Ann Microbiol (2012) 62:689‐69)は、Lactobacillus brevis CGMCC 1306のクローニングを記載し、組換え酵素の特性を解析したことを記載する。Fan et alの1L培養当たりの酵素の生産量は13mgであるが、本発明の改変ポリペプチドのGAD-NSK02は253mg/Lであり、19.5倍程度の発現増大が得られた。宿主細胞におけるGAD生産性の向上は、酵素法と発酵法のいずれを用いる場合もGABAの製造効率および純度の向上につながり、相対的に製造したGABAに対する夾雑物が減るため、GABA製造時の精製負荷低減に寄与する。
改変ポリペプチドのグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性の評価は、グルタミン酸を基質として、改変ポリペプチドを作用させ、得られた反応生成物(GABA)を検出することにより行なわれる。反応生成物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、蛍光検出器、RI検出器や荷電化粒子検出器などで検出することができる。検出は、薄層クロマトグラフィー(TLC)および高性能イオン交換クロマトグラフィー/パルスドアンペロメトリ検出法(HPAEC-PAD)を用いて行うこともできる。
本発明の改変ポリペプチドはグルタミン酸を基質として温度40℃で測定した場合、pH3.5で最大活性を示し、最大活性に対し80%以上の活性となるpH範囲は3.0~3.5(GAD-NSK01)および3.0~4.0(GAD-NSK02)である。一方、野生型GADはpH4.5で最大活性を示した。
本発明の改変ポリペプチドは、グルタミン酸を基質としてpH3.5で測定した場合、温度70℃で最大活性を示し、最大活性の80%以上の活性となる温度範囲は50℃~70℃(GAD-NSK01)および70℃~80℃(GAD-NSK02)である。また、改変ポリペプチドは、pH7.0、温度30℃~90℃で10分保持する試験において、70℃以下でほぼ100%(GAD-NSK01)または65℃以下で約90%以上(GAD-NSK02)の残存活性を示し安定であった。一方、野生型GADはpH4.5で測定した場合、温度30℃で最大活性を示し、70℃での残存活性は15%以下であった。なお、最大活性を示す温度および温度安定性は、グルタミン酸生成量を、実施例3に示す条件で測定したものである。
本発明の改変ポリペプチドは至適pHが酸性領域を有する。これは、GADの基質として使用するグルタミン酸の水溶液は酸性となるため(0.7%の場合、pH2.9~3.9)、培地のpH調整の必要性がなく、好都合である。また、反応pHを低く保つことにより、反応液中での夾雑微生物の増殖を防ぐことができるという利点がある。本発明の改変ポリペプチドは、至適温度70℃を有し、少なくとも65℃以下で安定であり、野生型GADと比較して非常に高い温度域で高い活性を示すものであり、GABAの工業的製造に適した特性を有するといえる。
一実施態様では、本発明の改変ポリペプチドは、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、または少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有する、ポリペプチドであってもよい。
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整 列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならばギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした場合の、参照ポリペプチドのアミノ酸 残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアライ ンメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。
さらには、本発明の改変ポリペプチドは、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質からなり、且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドであってもよい。本明細書で言う「1もしくは数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列」における「1もしく数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
本発明の改変ポリペプチドの製造方法については、後述の<改変ポリペプチドの製造>を参照されたい。
(酵素剤)
本発明は、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドを含むγ-アミノ酪酸(GABA)製造用酵素剤に関する。本発明のGABA製造用酵素剤は、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるポリペプチドを含むものであってもよい。本発明の酵素剤は、グルタミン酸またはグルタミン酸塩を基質としてGABAを製造するために使用することができる。本発明の酵素剤は、単離・精製された上記改変ポリペプチドであってもよい。さらに、本発明の酵素剤は、単離・精製された上記改変ポリペプチドを有効成分として含む酵素組成物であってもよく、酵素組成物は上記改変ポリペプチドに加えて、グルタミン酸デカルボキシラーゼ反応を阻害しないものであれば、さらなる成分を含むことができる。これらは、例えば、緩衝液、安定化剤、賦形剤など、通常の酵素組成物に用いる成分であってもよい。このようなさらなる成分は、先行技術より公知であり、また当業者によく知られている。また、本発明の酵素剤は、その形状も特に制限は無く、固体(たとえば、粉末状)や液体であり得る。本発明の酵素剤は、例えば、固体や液体のものを、例えば食品素材に添加することにより使用することができる。
本発明の酵素剤は、例えば、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドが固定化担体に固定された酵素剤として提供することができる。固定化された酵素剤とすることで、例えば、高基質濃度および高温において、反応生成物の製造を行うことができ、また、バイオリアクター方式による反応生成物の製造を行うこともできる。
上記固定化担体は、特に制限されず、例えば、グルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドが吸着または架橋結合され、本発明の改変ポリペプチドの活性が保持されるものであれば使用できる。上記固定化担体は、例えば、陰イオン交換担体、陽イオン交換担体、疎水性担体等があげられる。上記固定化担体の具体例は、例えば、イオン交換ゲルである。上記イオン交換ゲルは、例えば、ダイヤイオン(登録商標)SK1B、ダイヤイオン(登録商標)PK212、ダイヤイオン(登録商標)HPA25、ダイヤイオン(登録商標)UBK550、UBK555等のダイヤイオン(登録商標)シリーズ(三菱ケミカル社製);セパビーズ(登録商標)SP-207、セパビーズ(登録商標)SP-850等のセパビーズ(登録商標)シリーズ(三菱ケミカル社製);デュオライトA568、デュオライトPWA7、デュオライトXAD761等のデュオライトシリーズ(住化ケムテックス社製)等があげられる。上記固定化担体の形状は、特に制限されず、例えば、膜、ビーズ、プレート等があげられる。上記改変ポリペプチドの上記固定化担体への固定方法は、特に制限されず、例えば、緩衝液等の溶媒に本発明の改変ポリペプチドと上記固定化担体とを添加し、この混合液を振とうすることで行うことができる。
(GABA製造方法)
本発明は、上記GABA製造用酵素剤を用いることを含む、GABA製造方法に関する。本発明のGABA製造方法の基質は、グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩であり、特に遊離のグルタミン酸またはグルタミン酸塩であり、グルタミン酸塩の例としては、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸カルシウム、グルタミン酸マグネシウム等が挙げられる。すなわち、本発明は、グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩に、本発明のGABA製造用酵素剤を作用させて、GABAを得る工程を含む、GABA製造方法を提供する。
グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩に、本発明の酵素剤を作用させることは、例えば、グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩の水溶液を調製し、必要に応じてpHを調整した後、当該水溶液に本発明の酵素剤を添加することにより実施することができる。さらには、本発明の配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドを担体に固定して酵素剤とし、当該酵素剤にグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩の水溶液を接触させることにより実施することができる。本発明の酵素剤を用いたグルタミン酸デカルボキシラーゼ反応は、反応液中で実施することができるためである。
グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩は、純品を用いても良いし、あるいは他のグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩を含む材料や素材(食品素材など)を用いてもよい。具体的には、遊離のグルタミン酸またはグルタミン酸塩を含有する調味料、蛋白素材等の食品素材、加工品や食品残さがあげられ、例えば、天然原料から抽出した昆布エキスやチキンエキスなどの天然調味料、茶殻、脱脂大豆、オカラなどの食品残さ(食品加工残さ、調理残さ)、また、大豆・小麦等の植物性タンパク質や豚・鶏等の動物タンパク質を酸加水分解または酵素分解して得られるアミノ酸やペプチド混合物、大豆・黒豆・小豆・枝豆・いんげん・えんどう等の豆類、大麦・小麦・えん麦・はと麦等の麦類、胡麻・ピーナッツ・アーモンド・くるみ等の種実類、米・とうもろこし・蕎麦・あわ・きび・ひえ・アマランサス等の雑穀類等のグルタミン酸を含有する原料あるいはその抽出物を微生物発酵により遊離のグルタミン酸を産生させた穀物等の発酵物を使用できる。さらにグルタミン酸を産生させる微生物(カビ・乳酸菌・ビフィズス菌・納豆菌・酢酸菌・酵母・放線菌など)を利用することができる。本発明には、上記改変ポリペプチド、上記酵素剤、または上記宿主細胞をグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩を含む食品素材に接触させることを含む、GABA含有食品の製造方法が含まれる。例えば、上記改変ポリペプチドを含むドレッシングをトマトサラダにかけて食することで、日々の食事で手軽にGABAを摂取することができる。
グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩に、本発明の酵素剤に含まれるポリペプチドを作用させる際の反応温度は、酵素活性が発現する温度域であれば、特に制限はない。本発明の酵素剤に含まれるポリペプチドは、実施例に記載の通り、pH7.0で反応した場合、少なくとも65℃まで熱安定性を示し、pH3.5で反応した場合、至適温度は70℃である。従来のグルタミン酸デカルボキシラーゼの中には、熱安定性の点から工業規模での使用について制限があるものがあった。例えば、Lactobacillus brevis CGMCC 1306由来の野生型GADの至適温度は30℃であり、70℃10分の処理で残存する活性は15%以下であった。しかし、本発明の酵素剤に含まれるポリペプチドは、高い耐熱性を示し、工業規模での使用に適した熱安定性を有している。よって、本発明の酵素剤を作用させる際の反応温度(反応液の液温)を、35~65℃といった幅広い温度域に設定することができる。工業規模の反応系では正確な温度管理が難しい場合があるが、本発明の改変ポリペプチドは、幅広い温度域で安定的に使用できる点で有利である。
上記反応温度は、35~65℃の範囲に設定することができるが、pH3.5の場合、50~65℃の範囲に設定することが好ましい。反応温度が50℃以上であれば、混入菌が繁殖しにくく、65℃以下で、本発明のポリペプチドは安定するためである。
GABA製造方法においては、後述の通り、本発明の酵素剤と、その他の酵素を併用することができる。その他の酵素を併用する場合には、上記反応温度は、本発明の酵素剤に含まれるタンパク質が安定に作用する温度域であればよい。上記の通り、本発明の酵素剤に含まれるタンパク質は幅広い温度域で安定性を有するため、併用するその他の酵素が安定に活性化する温度を勘案して、反応系で使用するすべての酵素の活性が十分に利用できる範囲に、温度設定ができる場合が多い。
反応温度は、反応時間の全体を通して一定である必要はなく、反応時間の初期に併用するその他の酵素の活性を高めることが望ましい場合には、その酵素の活性が高くなる温度域に、反応初期の温度を設定し、反応時間の中期や後期には、本発明の酵素剤に含まれるタンパク質の活性が高くなる温度域に温度を設定するなど、適宜調整することができる。
グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩に、本発明の酵素剤に含まれるポリペプチドを作用させる際の反応液のpHは、酵素活性が発現するpH域であれば、特に制限はないが、pH2.5~5.0の範囲に設定することができる。本発明の酵素剤に含まれるポリペプチドは、実施例に記載の通り、少なくともpH2.5~5.0の範囲で反応が可能であるためである。効率よくGABAを得るには、本発明の酵素剤に含まれるポリペプチドを作用させる際の反応液のpHを、pH3.0~4.0の範囲に設定することが好ましい。とくにGAD-NSK02は、GAD生産性だけでなく、比活性が野生型と比較して高いため、幅広いpH条件で使用可能である。なお、比活性とは、酵素試料タンパク質1mgあたりに含まれる酵素量(unit/mg)である。反応液のpHの調整は、必要に応じ、酸またはアルカリの添加により行うことができる。
GABA製造方法における基質と本発明の酵素剤に含まれるポリペプチドの反応時間は、反応温度や基質の濃度、その他の酵素を併用する場合には使用する酵素の特性等を考慮して適宜決定できる。また、本分野の従来技術に基づいて、効率よくGABAを製造するための、好適な反応時間を適宜決定することができる。具体的な反応時間の例としては、5分から72時間を挙げることができるが、これに限定する意図はない。反応中、本発明の酵素剤を、適宜添加することができる。
反応液中のグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩濃度は、特に制限されず、例えば、上記酵素反応が進行可能な範囲において、グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩の濃度が高いほど経済的に有利である。基質としてグルタミン酸を使用する場合、グルタミン酸濃度は、溶媒100gあたり0.1g~100gの範囲である。上記反応液の溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等があげられる。なお、選択した基質の溶媒への溶解度が低い場合、例えば、所望の濃度で完全に溶解されない場合がある。バッチ式で酵素反応を行う場合、例えば、反応初期において基質が完全に溶解された状態である必要はなく、酵素反応の終了時に溶解される基質濃度を選択すればよい。一方、固定化された酵素剤を充填したカラムを酵素反応に使用する場合、例えば、カラムの目詰まりによる圧力損失を避けるために、基質が完全に溶解された状態であることが好ましい。また、固定化された酵素剤を充填したカラムを酵素反応に使用する場合、例えば、基質溶液を、上記カラムに還流させて、連続的に通液するのが好ましい。
本発明の酵素剤を用いることを含むGABAの製造は、具体的な例として、基質としてグルタミン酸を用いる場合、水100gあたり0.1g~100g程度のグルタミン酸水溶液を調製し、必要に応じて酸またはアルカリを用いて当該水溶液のpHを2.5~4.5程度、好ましくは3.0~4.0程度に調整し、当該水溶液に本発明の酵素剤を添加し、温度35~65℃の範囲で、約5分~72時間保持することでGABAを製造することができる。
また、GABA製造方法において、本発明の酵素剤と、その他の酵素を併用することができる。その他の酵素は、これに制限されないが、本発明のグルタミン酸デカルボキシラーゼ反応を触媒する活性を有する酵素の基質となりうるグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩を生成するものであってもよい。その他の酵素として、限定されないが、グルタミン酸の合成に関わる酵素(例えば、グルタミン酸合成酵素、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、アミノトランスフェラーゼ)、プロテアーゼ、ペプチダーゼ等を用いることができる。本発明の酵素剤(すなわち、グルタミン酸デカルボキシラーゼ反応触媒用酵素剤)と、グルタミン酸の合成に関わる酵素をその他の酵素として併用することにより、グルタミン酸を生成しつつ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ反応によりグルタミン酸からGABAを生成することができる。本発明の酵素剤(すなわち、グルタミン酸デカルボキシラーゼ反応触媒用酵素剤)と、プロテアーゼ、ペプチダーゼ等をその他の酵素として併用することにより、食品、食品素材、食品廃棄物および食品残さ(例えば、茶殻、脱脂大豆、オカラ)に含まれるタンパク質を加水分解してグルタミン酸を得ながら、グルタミン酸デカルボキシラーゼ反応によりグルタミン酸からGABAを生成することができる。
上記製造方法により、GABAを含む水溶液が得られる。このGABAを含む水溶液に対し、必要に応じて常法を用いて脱色、脱塩、精製処理などを施すことができる。また、樹脂分画処理、エタノール等を用いた有機溶媒による沈殿法、クロマト分画法や限外濾過膜による処理等を施すことにより、未反応の基質等を除去し、GABAの純度を高めることができる。精製処理は、単独の操作によって、またはいくつかの操作を組み合わせることにより、より効率的にGABAを精製することができる。
本発明は、上記GABA製造方法を実施して得られたGABAを用いて食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品を得る工程を含む、食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品の製造方法を提供する。GABAの製造方法を実施して得られたGABAを用いて食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品を得る工程では、GABAを原料の一つとして、食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品を製造すること、またはGABAそのものを適当な形態(粉末、液体など)に調製し、食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品として提供することができる。
本発明の方法で製造される食品の例には、限定されるものではないが、各種炭水化物類(パン、麺、米飯、もち)、各種和菓子類(せんべい、あられ、おこし、求肥、もち類、まんじゅう、どら焼き、ういろう、餡類、羊羹、水羊羹、錦玉、カステラ、飴玉)、各種洋菓子類(パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、ドーナツ、蒸しケーキ、プリン、ゼリー、ムース、ババロア、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、ヌガー、キャンディー、シロップ類)、各種氷菓(アイスクリーム、シャーベット、ジェラート、かき氷)、各種ペースト状食品(フラワーペースト、ピーナッツペースト、マーガリン、フルーツペースト)、各種飲料(果汁含有飲料、果汁ジュース、野菜ジュース、サイダー、ジンジャーエール、アイソトニック飲料、アミノ酸飲料、ゼリー飲料、コーヒー飲料、緑茶、紅茶、ウーロン茶、麦茶、乳飲料、乳酸菌飲料、ココア、ビール、発泡酒、第三のビール、ノンアルコール飲料、ビール風味飲料、リキュール、チューハイ、清酒、果実酒、蒸留酒、栄養ドリンク、健康飲料、粉末飲料)、果物・野菜加工品(ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖果、漬物)、各種乳製品(チーズ、ヨーグルト、バター、練乳、粉乳)、粉末食品(粉末スープ、粉末ムース、粉末ゼリー、粉末甘味料)、栄養食、ダイエット食、スポーツ用栄養食、流動食、半固形流動食、介護食、嚥下食等が挙げられる。
本発明の方法で製造される飼料および餌料の例には、限定されるものではないが、家畜、家禽、魚介類、昆虫(ミツバチ、蚕など)用飼料および餌料を挙げることができる。その形態としては、粉体、ペレット、錠剤、練り餌、カプセルなどである。
本発明の方法で製造される化粧料の例には、限定されるものではないが、保湿剤および美容剤などを挙げることができる。それらの形態としては、乳液、クリームおよびエマルジョンなどである。
本発明の方法で製造される医薬品の例には、限定されるものではないが、例えば脳機能改善剤、血圧上昇抑制剤、睡眠改善剤、疲労感軽減剤、ストレス緩和剤などを挙げることができ、それらの形態としては、錠剤、粉剤、液剤、カプセル剤などである。
<改変ポリペプチドの製造>
本発明の酵素剤に含まれる改変ポリペプチドの取得方法は、特に制限されず、化学合成により合成したタンパク質であってもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換え改変ポリペプチドであってもよい。以下に、遺伝子組換えポリペプチドを作製する場合について説明する。
配列番号1または2に示されるアミノ酸配列、または配列番号1または2に示されるアミノ酸配列に対して85%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドは、遺伝子工学的手法によって調製することができる。例えば、配列番号1または2のアミノ酸配列をコードする遺伝子は、宿主細胞内で複製可能であるか、あるいは染色体に組み込まれかつ同遺伝子を発現可能な状態で含むDNA分子として、特に発現ベクターに挿入された形態で宿主細胞の形質転換を行い、宿主細胞を培養することでタンパク質を産生させることができる。このDNA分子は、配列番号1または2に示されるアミノ酸配列、または配列番号1または2に示されるアミノ酸配列に対して85%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列をコードするDNA断片をベクター分子に組み込むことによって得ることができる。本発明の好ましい態様によれば、このベクターはプラスミドである。本発明におけるDNA分子の作製は、Molecular Cloning:A Laboratory Manualに記載の方法に準じて行なうことができる。
本発明は、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であり且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明の一実施態様において、本発明の改変ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号4もしくは5に記載の塩基配列を含むか、またはその相補鎖配列を含む。配列番号4もしくは5に記載の塩基配列またはその相補鎖配列からなるポリヌクレオチドに対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、または少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の塩基配列同一性を有するポリヌクレオチドであり、かつグルタミン酸デカルボキシラーゼ反応を触媒する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明に含まれる。塩基配列同一性は、比較する2本の塩基配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならばギャップを導入した後、2本の塩基配列間で同一である塩基のパーセントとして定義される。塩基配列同一性は、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより決定することができる。
本発明はさらに、上記のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。本発明において利用できるベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案しながら、ウイルス、プラスミド、コスミドベクターなどから適宜選択できる。例えば、宿主細胞が枯草菌(Bacillus subtilis)の場合はpHT系のプラスミド、大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pET系、pUC系、pCold系、pGEX系のプラスミド、酵母の場合はYEp、YCp系、YIp系のベクター、あるいはpLeu4、pPPLeu4、pJPLeu4系などが挙げられるが、これらに限定されない。このプラスミドは形質転換体を選択するためのマーカーを含んでいてもよく、該選択マーカーとしては薬剤耐性マーカーや栄養要求マーカー遺伝子を使用することができるが、これらに限定されない。
さらに、本発明で利用できる発現ベクターは、酵素遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、ターミネーター、リボゾーム結合部位、転写終結シグナルなどの転写調節信号、翻訳調節信号などを有することができる。該プロモーターとしては、枯草菌においてはズブチリシン、SPAC等のプロモーター、酵母ではアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、酸性フォスファターゼ(PHO)、ガラクトース遺伝子(GAL)、グリセルアルデビド3リン酸脱水素酵素遺伝子(GAP)等のプロモーターを用いることができるが、これらに限定されない。シグナルペプチドの付与は、目的酵素が培養上清中に分泌され、精製が容易になるという利点があるので使用することが好ましい。また、シグナルペプチドを枯草菌や酵母由来のもの(例えば、インベルターゼシグナル、酸性フォスファターゼシグナル、λ-ファクターシグナルなど)に置き換えることができる。また、大腸菌においては、一般に慣用されるlacプロモーターやT7プロモーターのほかに、cspAプロモーター等を用いて分子シャペロンを同時に発現させるなど、発現をより効率化する工夫を行うことができる
本発明は、上記ベクターで形質転換された宿主細胞を培養し、培養物からグルタミン酸デカルボキシラーゼを回収することを含む、グルタミン酸デカルボキシラーゼの製造方法に関する。形質転換を行なった宿主細胞の培養は、使用する宿主細胞に関して一般的な方法を用いることができる。通常は、1~4日程度の培養により細胞内または細胞外の培養物中に酵素が生成され蓄積される。培養条件(培地、pH、温度等)に関しては、例えば、細菌では25~37℃、酵母では25~30℃、真核細胞では37℃程度が一般的である。培養条件については、遺伝子発現実験マニュアル(講談社)等を参照することができる。
宿主細胞としては、大腸菌、バチルス属細菌(Bacillus)、乳酸菌(Lactobacillus、Lactococcus)、放線菌(Corynebacterium)、アスペルギルス(Aspergillus)等の細菌、カンディダ・ウチリス(Candida utilis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccaromyces cerevisiae)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母以外に、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)、リゾプス・デルマー(Rhizopus delemar)や高等真核生物(例えばCHO細胞など)を用いることができる。本発明の改変ポリペプチドの製造の目的において、宿主細胞として酵母、糸状菌または細菌が好ましいが、細菌がより好ましく、特に大腸菌やバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis、枯草菌)が好ましい。さらに、ウサギ網状赤血球溶解物(RRL)、小麦胚芽抽出物、大腸菌溶解物および昆虫細胞溶解物(SF9またはSF21など)等を用いた無細胞タンパク質発現系を用いて、本発明の改変ポリペプチドを製造することができる。
形質転換体が産生したポリペプチドの単離・精製は、公知の分離方法や精製方法を適当に組み合わせて行なうことができる。これらの分離・精製方法としては例えば塩沈殿、溶媒沈殿のような溶解性の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過およびSDS-ポリアクリル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、さらに等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法、このほかにアフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。実施例に記載した精製方法のほかに、一般的な分離・精製法に関しては、例えば蛋白質・酵素の基礎実験法(南江堂)等を参照することができる。
(発酵法)
本発明は、上記ベクターで形質転換された宿主細胞を作用させることを含む、GABA製造方法に関する。具体的には、宿主細胞を作用させるとは、例えば、グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩の水溶液を調製し、必要に応じてpHを調整した後、当該水溶液に本発明の宿主細胞を添加することにより実施することができる。宿主細胞として、乳酸菌(乳酸桿菌 Lactobacillus、乳酸球菌、例えばLactococcus)、放線菌 (コリネバクテリウム属Corynebacterium)、アスペルギルス(Aspergillus)、大腸菌(E. coli)、バチルス属細菌(Bacillus)、または酵母を用いることができる。一実施態様にいて、宿主細胞として、Corynebacterium glutamicumを用いることが好ましい。C. glutamicum は、グルタミン酸ナトリウムの工業的な発酵生産に用いられている。改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子で C. glutamicum を形質転換することにより、グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩を添加しなくても、C. glutamicum 自身が生産したグルタミン酸塩を用いてGABAを生産することができるであろう。宿主細胞は用いる前に、タンパク質発現誘導を行うことができる。宿主細胞として大腸菌を用いる場合、例えばイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)を誘導剤として用いることができる。グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩の水溶液中の濃度は0.01~3Mの範囲とすることができる。宿主細胞を添加したグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩の水溶液を、インキュベーションすることができ、その時間は特に制限されないが、例えば5分から72時間の範囲である。インキュベーションは、室温で静置または振盪・攪拌してもよいし、宿主細胞におけるタンパク質の発現に適した温度に設定してもよく、例えば温度30~55℃の範囲で静置または振盪・攪拌してもよい。グルタミン酸および/またはグルタミン酸塩の水溶液のpHは、宿主細胞に適した値に設定することができる。
GABA製造法については、大きく分けて微生物の発酵による発酵法と酵素を使った酵素法の二つがある。一般的に、発酵法の方が生産に時間がかかり、基質変換効率も低いという問題があった。一方、酵素法は反応時間が短くなるが、補酵素であるピリドキサールリン酸(PLP)の添加や酵素自体の精製に労力とコストがかかるという事情があった。上記方法と比較して、本発明の改変グルタミン酸デカルボキシラーゼは、従来の酵素と比較して、酵素の比活性と耐熱性の向上による反応速度が速い点で優れているので、基質変換効率が高く、短時間で高濃度のGABAを製造できる。また、本発明の改変グルタミン酸デカルボキシラーゼは、酵素の生産性が高く菌体重量当たりの酵素量が多いため、本発明の改変グルタミン酸デカルボキシラーゼを発現させた菌体を利用することにより、補酵素添加や酵素精製のコストを削減してGABAを製造できる。後記する実施例4では、2.5MのGABAが50分で生産できており、グルタミン酸からGABAの変換率は90%以上であった。
以下の例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において、特に記載しない限り、「%」等は質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実施例1:改変グルタミン酸デカルボキシラーゼの設計
Lactobacillus brevis CGMCC 1306由来のGAD(以下、GAD-Wildと記載する、DDBJ/EMBL/GenBank Accession number: GU987102.1、配列番号3)を鋳型として、Blastpから類似配列を10000個取得した。解析条件としてExpectec thresholdの値を1.0E‐4、Max target sequencesを10000とした。取得した類似配列を解析し、鋳型配列と類似した配列等を除去した後、文献A (Nakano, S., Motoyama, T., Miyashita, Y., Ishizuka, Y., Matsuo, N., Tokiwa, H., Shinoda, S., Asano, Y., and Ito, S. (2018) Benchmark Analysis of Native and Artificial NAD+-Dependent Enzymes Generated by a Sequence-Based Design Method with or without Phylogenetic Data, Biochemistry 57, 3722-3732.)、および文献B (Nakano, S., Niwa, M., Asano, Y., and Ito, S. (2019) Following the Evolutionary Track of a Highly Specific l-Arginine Oxidase by Reconstruction and Biochemical Analysis of Ancestral and Native Enzymes, Appl Environ Microbiol 85, e00459-00419.)で用いた手法を適用し、合計8種類の改変グルタミン酸デカルボキシラーゼの配列を設計した。これら8種類の配列をコードする遺伝子を人工合成し、組換え大腸菌での酵素生産の可否を確認した結果、5種についてグルタミン酸デカルボキシラーゼの生産が確認された。この5種について、hisタグ精製し、天然型と比較して活性が向上しているものを選抜したところ、GAD-NSK01およびGAD-NSK02と名付けた2種の改変グルタミン酸デカルボキシラーゼを得た。GAD-NSK01およびGAD-NSK02はそれぞれ配列番号1および2に記載のアミノ酸配列を有する(図1A)。
実施例2:酵素の調製
以下の通り、GAD-Wild並びにGAD-NSK01およびGAD-NSK02を調製した。
ベクターとしてpET15b(メルク株式会社)の制限酵素サイトNdeI/BamHIに人工合成DNA(GeneScript社)を挿入した(図1B)。pET15bは、ヒスチジンタグ(MGSSHHHHHHSSGLVPAGSH、配列番号7)を含む。
次いで、上記のクローニングプラスミドにより大腸菌BL21(DE3)(ニッポンジーン株式会社)を形質転換し、LB培地にて37℃で培養した。濁度(OD600)が0.4~0.6になった時点でイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導を行い、25℃で一晩培養した。培養後、菌体を回収して、菌体破砕緩衝液(10mM リン酸緩衝液、50mM NaCl、pH7.0)に懸濁した。この菌体懸濁液に対して、超音波破砕および遠心を行い、遠心上清を粗酵素液とした。粗酵素液を、Niカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー(GEヘルスケアジャパン株式会社)に供して、SDS-PAGEにより精製GAD-Wild、GAD-NSK01および、GAD-NSK02が得られたことを確認した(図2)。SDS-PAGEにおけるポリアクリルアミドゲル(12.5%)はe・パジェル(アトー株式会社)を使用した。また、測定に当たってタンパク質は10μgを供し、電気泳動は20mAの定電流で行った。なお、分子量マーカーには、ワイドビューTMプレステインたん白質サイズマーカーIII(富士フィルム和光純薬株式会社)を用いた。また、調製したGADの濃度を280nmの吸光度で測定し、液量と濃度から各GADの生産性を算出した結果を表1に示す。具体的には、表1のGAD生産性(mg/L)は、精製したGAD溶液の液量と濃度から得られたGADの重量を算出し、そのGAD量を初期培地体積で割った値である。
Figure 2023027835000001
野生型GADと改変GADを同じベクターにそれぞれ組み込み、各GADの形質転換体での発現効率を比較したところ、GAD-Wildに対して、GAD-NSK01では2倍以上、GAD-NSK02では20倍以上の発現増大が得られた。また、比較例(Fan et al., 2012 上掲)の GADと比較すると、GAD-NSK02では、19.5倍程度の発現増大が得られた。
改変GADを導入した大腸菌におけるGAD生産性の増大は、精製酵素を用いる場合も、改変GADを導入した大腸菌を培養してGABAを製造する場合のいずれにおいても、GABAの製造効率および純度の向上につながると考えられる。
実施例3:酵素の特性分析
a)活性測定
5~30mM グルタミン酸、0.2mMピリドキサールリン酸、100mM リン酸-クエン酸緩衝液(pH3.5)からなる混合液26μLに実施例1で調製したGAD-NSK01またはGAD-NSK02(100~500μg/mL)を4μL添加し、40℃、10分間保持した後、95℃、10分間保持して反応を停止させた。同様に、GAD-Wildについては、5~30mM グルタミン酸、0.2mM ピリドキサールリン酸、100mM リン酸-クエン酸緩衝液(pH4.5)からなる混合液26μLに実施例1で調製したGAD-Wild(100~500μg/mL)を4μL添加し、40℃、10分間保持した後、95℃、10分間保持して反応を停止させた。次いで、L-グルタミン酸測定キット「ヤマサ」NEO(ヤマサ醤油株式会社)R1酵素試薬液100μLおよびR2酵素試薬液100μLを添加し、30℃、20分間保持した後に吸光度(A555)を測定し、消費したグルタミン酸量から反応速度を算出した。なお、検量線作成には、グルタミン酸(0~30mM)を用いた。酵素活性単位1Uは、上記条件において反応1分間に1μmolのグルタミン酸を消費する酵素量と定義した。次いで、OriginPro2021(株式会社ライトストーン)を用いて、各濃度における反応速度について非線形近似を行い、ミカエリスメンテン式に適応させることで、反応速度定数を算出した。結果を表2に示す。
Figure 2023027835000002
b)至適pH
至適pHは、pH2.5~6.0における酵素活性を測定して求めた。具体的には、10mM グルタミン酸、0.2mMピリドキサールリン酸、100mM リン酸-クエン酸緩衝液(pH2.5~6.0)からなる混合液26μLに、200μg/mLのGAD-WildまたはGAD-NSK01またはGAD-NSK02を4μL添加し、40℃、10分間保持して酵素反応を進行させ、95℃、10分間保持して反応を停止させた。次いで、L-グルタミン酸測定キット「ヤマサ」NEO(ヤマサ醤油株式会社)R1酵素試薬液100μLおよびR2酵素試薬液100μLを添加し、30℃、20分間保持した後に吸光度(A555)を測定した。酵素活性は、消費したグルタミン酸量に基づき前記a)の方法に従って算出した。最大活性を示す酵素活性を100%とした場合の相対活性を図3に示す。分析の結果、GAD-Wildの至適pHは4.5であり、GAD-NSK01およびGAD-NSK02の至適pHは3.5であった。具体的には、GAD-NSK01およびGAD-NSK02は、pH3.5で、活性6.9U/mgおよび17.2U/mgをそれぞれ示した。一方、GAD-Wildは、pH3.5で、活性2.7U/mgを示し、pH4.5で、活性5.4U/mgを示した。GAD-NSK01は酸性領域でGAD-Wildに対して活性が優位であり、GAD-NSK02はGAD-Wildに対して活性が優位なpH領域が広い。
GADの基質として使用するグルタミン酸の水溶液は酸性となるため(0.7%の場合、pH2.9~3.9)、GAD-NSK01およびGAD-NSK02の至適pHが酸性領域であることは、培地のpH調整の必要性がなく、好都合である。また、反応pHを低く保つことにより、反応液中での夾雑微生物の増殖を防ぐことができるという利点がある。
c)至適温度および温度安定性
至適温度は、10~90℃における酵素活性を測定して求めた。具体的には、10mM グルタミン酸、0.2mMピリドキサールリン酸、100mM リン酸-クエン酸緩衝液(pH3.5)からなる混合液26μLに、200μg/mLのGAD-NSK01またはGAD-NSK02を4μL添加し、10~90℃で10分間保持して酵素反応を進行させ、95℃、10分間保持して反応を停止させた。同様に、GAD-Wildについては、10mM グルタミン酸、0.2mMピリドキサールリン酸、100mM リン酸-クエン酸緩衝液(pH4.5)からなる混合液26μLに、200μg/mLのGAD-Wildを4μL添加し、10~90℃で10分間保持して酵素反応を進行させ、95℃、10分間保持して反応を停止させた。次いで、L-グルタミン酸測定キット「ヤマサ」NEO(ヤマサ醤油株式会社)R1酵素試薬液100μLおよびR2酵素試薬液100μLを添加し、30℃、20分間保持した後に吸光度(A555)を測定した。酵素活性は、消費したグルタミン酸量に基づき前記a)の方法に従って算出した。最大活性を示す酵素活性を100%とした場合の相対活性を図4Aに示す。
温度安定性は、500μg/mLのGAD-NSK01またはGAD-NSK02を10mM リン酸緩衝液、50mM NaCl、pH7.0で30~90℃、10分間インキュベートした後、4℃に冷却して、酵素活性を測定することにより求めた。酵素活性の測定は、前記a)の方法に従って行った。最大残存活性を示す酵素活性を100%とした場合の相対活性(残存活性)を図4Bに示す。
分析の結果、GAD-Wildの至適温度は30℃であり、50℃以下で残存活性87.3%以上を示し、50℃以下で安定であった。70℃での残存活性は15%以下であった。また、GAD-NSK01の至適温度は70℃であり、70℃以下で安定であった。GAD-NSK02の至適温度は70℃であり、65℃以下で残存活性89.6以上%を示し、65℃以下で安定であった。具体的には、GAD-NSK01およびGAD-NSK02は、温度70℃で、活性10.5U/mgおよび34.3U/mgをそれぞれ示した。一方、GAD-Wildは、温度70℃で、活性1.2U/mgを示し、温度30℃では活性5.4U/mgを示した。すべての温度帯でGAD-NSK02の活性がGAD-Wildに対して優位であり、GAD-NSK01は特に40℃以上でGAD-Wildに対して優位な活性を示した。
GAD-NSK01およびGAD-NSK02は、共に至適温度70℃を有し、それぞれ70℃以下および65℃以下で安定であり、GABAの工業的製造に適した特性を有するといえる。
実施例4:GABAの製造
500mlバッフル付き三角フラスコにグルタミン酸26.4gと超純水60mlの混合液にGAD-NSK02を発現させた菌体3g(湿重量)を加えて、40℃か50℃で旋回撹拌することでGABAを生産した。10分ごとにサンプリングを行い、超純水で10倍希釈した後に、10分間煮沸することで反応を停止させた。その後、AccQ・Tag 誘導体化ケミストリーキット(waters社)を用いて下記条件でHPLC分析を行い、GABAの生成量を確認した。
<HPLC分析条件>
カラム:AccQ-Taq Column(150mm × 3.9 mm、waters社製)
カラム温度:50°C
溶離液:(A)AccQ Taq、(B)アセトニトリル、(C)脱気超純水
グラジエント:表3に示す。
流速:1.0mL/分
検出器:蛍光検出器(励起波長250 nm、蛍光波長395 nm)
打ち込み量:10μL
分析時間:20分
Figure 2023027835000003
60分反応後、反応液を回収し、遠心分離によって菌体を除去し、反応液を得た。この反応液を減圧乾燥することでGABA粉末を得た。当該粉末を超純水に溶解させ、上記条件でHPLC分析を行い、GABAの純度を求めた。
分析の結果、反応中のGABA濃度の時間変化を図5に示す。50℃で50分反応させた時点でGABA濃度は2.5M程度になった。また、減圧乾燥により得られた粉末のGABA含有量は98%以上、グルタミン酸からGABAの変換率は90%以上であった。
配列番号1:改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ GAD―NSK01のアミノ酸配列
配列番号2:改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ GAD―NSK02のアミノ酸配列
配列番号3:Lactobacillus brevis CGMCC 1306由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼのアミノ酸配列
配列番号4:改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ GAD―NSK01をコードする塩基配列
配列番号5:改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ GAD―NSK02をコードする塩基配列
配列番号6:Lactobacillus brevis CGMCC 1306由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼをコードする塩基配列
配列番号7:ヒスチジンタグ配列

Claims (13)

  1. 配列番号1または2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、且つグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を有する、ポリペプチド。
  2. 配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 請求項1または2に記載のポリペプチドを含むγ-アミノ酪酸(GABA)製造用酵素剤。
  4. 請求項3に記載のGABA製造用酵素剤を用いることを含む、GABA製造方法。
  5. 基質がグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩である、請求項4に記載のGABA製造方法。
  6. 請求項1または2に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  7. 請求項6に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
  9. 大腸菌(E. coli)、バチルス属細菌(Bacillus)、乳酸菌(Lactobacillus、Lactococcus)、放線菌(Corynebacterium)、アスペルギルス属細菌(Aspergillus)、または酵母の細胞である、請求項8に記載の宿主細胞。
  10. 請求項8または9に記載の宿主細胞を作用させることを含む、GABAの製造方法。
  11. 請求項8または9に記載の宿主細胞を培養し、培養物からグルタミン酸デカルボキシラーゼを回収することを含む、グルタミン酸デカルボキシラーゼの製造方法。
  12. 請求項4、5および10の何れか一項に記載の方法を実施して得られたGABAを用いて食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品を得る工程を含む、食品、飼料、餌料、化粧料、または医薬品の製造方法。
  13. 請求項1もしくは2に記載のポリペプチド、請求項3に記載の酵素剤、または請求項8もしくは9に記載の宿主細胞をグルタミン酸および/またはグルタミン酸塩を含む食品素材に接触させることを含む、GABA含有食品の製造方法。
JP2021133138A 2021-08-18 2021-08-18 改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ Pending JP2023027835A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021133138A JP2023027835A (ja) 2021-08-18 2021-08-18 改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021133138A JP2023027835A (ja) 2021-08-18 2021-08-18 改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023027835A true JP2023027835A (ja) 2023-03-03

Family

ID=85331228

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021133138A Pending JP2023027835A (ja) 2021-08-18 2021-08-18 改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023027835A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11859224B2 (en) Methods for manufacturing a product using a 3-epimerase
JP6793957B2 (ja) 改変された全細胞触媒を用いたノンカロリー甘味料の生成
CN110191643B (zh) 甜菊醇糖苷的生物合成生产及其工艺
CN112831489B (zh) 一种阿洛酮糖3-差向异构酶固定化酶、其固定化方法与应用
Jiang et al. One-step bioprocess of inulin to product inulo-oligosaccharides using Bacillus subtilis secreting an extracellular endo-inulinase
US11312948B2 (en) Method and enzyme for preparation of enzyme-modified stevia sugar and use of enzyme-modified stevia sugar
US20230295676A1 (en) Enzyme preparation for catalyzing epimerization reaction of saccharide, method for producing epimerization reaction product, and epimerization reaction product
Guo et al. Efficient and economical biosynthesis of high-purity isomaltulose from sugar industrial waste molasses using an engineered Corynebacterium glutamicum strain
JP2023027835A (ja) 改変グルタミン酸デカルボキシラーゼ
WO2002055708A1 (en) POLYPEPTIDE HAVING α-ISOMALTOSYLGLUCOSACCHARIDE SYNTHASE ACTIVITY
US20230279451A1 (en) Methods for the biocatalytical manufacturing of dihydrochalcones
JP6657453B1 (ja) 糖のエピメリ化触媒用の酵素剤、エピメリ化反応生成物の製造方法およびエピメリ化反応生成物
WO2022184248A1 (en) Biocatalytical production of dihydrochalcones
JP2022158102A (ja) 糖のエピメリ化反応触媒用の酵素剤、エピメリ化反応生成物の製造方法およびエピメリ化反応生成物
WO2022264963A1 (ja) トランスグルタミナーゼを含む酵素剤及びその用途
KR20110046426A (ko) 리포산 합성 관련 효소를 이용한 알파-리포산의 생산방법
KR102513450B1 (ko) 신규한 엑토인 합성효소 및 그 용도
JP7486783B2 (ja) 酵素含有組成物の製造方法
US20220282288A1 (en) Novel oleate hydratases
WO2021070961A1 (ja) Ace阻害用または血圧上昇抑制用の組成物、その製造方法、酵素剤、ポリヌクレオチド、及び形質転換体
JP7068511B2 (ja) 耐塩性γ-グルタミルトランスペプチダーゼを生産する新規な好塩性バチルス・ポリファーメンチカス菌株
WO2023114957A1 (en) Production of natural peptide sweetener
WO2024054847A1 (en) Production of natural peptide sweetener
CN117106831A (zh) 一种酶法制备l-岩藻糖的制备方法和应用
Mancheño et al. Characterization and improvement of a new glycosidase from Lactobacillus plantarum