JP2023022858A - 電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

電解コンデンサの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023022858A
JP2023022858A JP2021127894A JP2021127894A JP2023022858A JP 2023022858 A JP2023022858 A JP 2023022858A JP 2021127894 A JP2021127894 A JP 2021127894A JP 2021127894 A JP2021127894 A JP 2021127894A JP 2023022858 A JP2023022858 A JP 2023022858A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
conductive polymer
polymer dispersion
electrolytic capacitor
capacitor element
acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021127894A
Other languages
English (en)
Inventor
雄平 鶴元
Yuhei Tsurumoto
光希 藤原
Mitsuki Fujiwara
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tayca Corp
Original Assignee
Tayca Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tayca Corp filed Critical Tayca Corp
Priority to JP2021127894A priority Critical patent/JP2023022858A/ja
Publication of JP2023022858A publication Critical patent/JP2023022858A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)

Abstract

【課題】 漏れ電流が小さく、かつ耐熱性および耐湿性に優れた電解コンデンサを製造する方法を提供する。【解決手段】 本発明の電解コンデンサの製造方法は、チオフェンまたはその誘導体の重合体であり、かつ高分子アニオンをドーパントとして含む導電性高分子を含有する導電性高分子分散液に浸漬したコンデンサ素子を陽極として電圧を印加して、上記コンデンサ素子上に固体電解質層を形成する工程を有することを特徴とする。上記導電性高分子分散液は、電気伝導度が0.01~40mS/cmであることが好ましく、また、pHが1.0~7.0であることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、漏れ電流が小さく、かつ耐熱性および耐湿性に優れた電解コンデンサを製造する方法に関するものである。
導電性高分子は、その高い導電性により、例えば、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどの電解質(固体電解質)として用いられている。
この用途における導電性高分子としては、例えば、ピロールやその誘導体、チオフェンやその誘導体などを化学酸化重合または電解酸化重合することによって得られたものが用いられている。
導電性高分子を電解コンデンサの固体電解質として使用するに際しては、例えば、化学酸化重合や電解酸化重合により得られた粉末状の導電性高分子が溶媒中に分散している分散液を、コンデンサ素子の表面に塗布などによって付着させ、乾燥して固体電解質(導電性高分子)の層を形成する方法が一般に採用されている。
ところが、導電性高分子の分散液をコンデンサ素子の表面に直接塗布した場合、分散液がはじかれやすく、例えばコンデンサ素子の端部において導電性高分子が良好に付着できずに、導電性高分子で構成される固体電解質層の厚みが不均一になり、特にコンデンサ素子の端部において固体電解質層が薄くなったり、固体電解質が存在しない部分が生じたりしやすい。このような固体電解質層を有するコンデンサ素子を用いた電解コンデンサでは、ショート不良が発生しやすい(漏れ電流が大きくなりやすい)といった問題がある。
他方、特許文献1には、チオフェンまたはその誘導体を、特定のスルホン化度を有するスルホン化ポリエステルを含有し、かつ水溶性有機溶剤と水とを溶媒として併用した電解重合液中で電解酸化重合する技術が提案されている。この技術によれば、コンデンサ素子上で導電性高分子を合成して固体電解質層を形成できるため、上記のような問題を回避することができる。
また、導電性高分子の分散液の塗布に先立って、コンデンサ素子の表面に前処理剤を適用することで、上記のような問題を解消する技術も知られている。例えば、特許文献2には、高分子アミンなどの架橋剤を含む溶液や分散液を、固体電解質となる電気伝導性物質(導電性高分子)を含む溶液や分散液の塗布前に、コンデンサ体(コンデンサ素子)の表面に適用する技術が提案されている。
特開2020-4758号公報 特表2012-517113号公報
ところが、特許文献2に記載されているような、架橋剤を含む溶液などの前処理剤を導電性高分子の分散液の塗布に先立ってコンデンサ素子の表面に適用する技術では、耐熱性や耐湿性に優れた電解コンデンサを製造し難いことが本発明者らの検討によって明らかとなった。コンデンサ素子の表面に前処理剤を適用した場合、前処理剤中の成分が素子上に残りやすく、この残渣成分が上記の問題を引き起こしていると推測される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、漏れ電流が小さく、かつ耐熱性および耐湿性に優れた電解コンデンサを製造する方法を提供することにある。
本発明の電解コンデンサの製造方法は、チオフェンまたはその誘導体の重合体であり、かつ高分子アニオンをドーパントとして含む導電性高分子を含有する導電性高分子分散液に浸漬したコンデンサ素子を陽極として電圧を印加して、上記コンデンサ素子上に固体電解質層を形成する工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、漏れ電流が小さく、かつ耐熱性および耐湿性に優れた電解コンデンサを製造する方法を提供することができる。
本発明の電解コンデンサの製造方法では、コンデンサ素子上に固体電解質層を形成するにあたり、チオフェンまたはその誘導体の重合体であり、かつ高分子アニオンをドーパントとして含む導電性高分子を含有する導電性高分子分散液を使用し、この導電性高分子分散液に浸漬したコンデンサ素子を陽極として電圧を印加する。これにより導電性高分子分散液中の導電性高分子が、コンデンサ素子上の端部にまで高い均一性で付着して層(固体電解質層)を形成し、かつ通電(電圧の印加)によって導電性高分子同士の反応が進んで層の構造がより緻密になる。
そして、このような固体電解質層を有するコンデンサ素子を用いて製造された電解コンデンサは、ショート不良の発生が抑えられて漏れ電流が小さくなると共に、例えば架橋剤を含む前処理剤を使用した場合のような残渣による影響が生じず、かつ固体電解質層が緻密な構造を有していることから、耐熱性および耐湿性に優れたものとなる。
本発明法においては、電解コンデンサの固体電解質層の形成に、チオフェンまたはその誘導体の重合体であり、かつ高分子アニオンをドーパントして含む導電性高分子分散液を使用する。
チオフェンまたはその誘導体の重合体を形成するためのチオフェンの誘導体としては、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3-アルキル-4-アルコキシチオフェン、3,4-アルキルチオフェン、3,4-アルコキシチオフェンや、上記の3,4-エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェン(アルキル化EDOT)などが挙げられ、そのアルキル基やアルコキシ基の炭素数としては、1以上であることが好ましく、また、16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
上記のEDOTをアルキル基で修飾したアルキル化EDOTについて詳しく説明すると、EDOTやアルキル化EDOTは、下記の一般式(1)で表される化合物に該当する。
Figure 2023022858000001
一般式(1)中、Rは水素または炭素数1~10のアルキル基である。
そして、上記一般式(1)中のRが水素の化合物がEDOTであり、これをIUPAC名称で表示すると、「2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3-Dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「3,4-エチレンジオキシチオフェン」で表示されることが多いので、本明細書では、この「2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン」を「3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)」と表示している。そして、上記一般式(1)中のRがアルキル基の場合、このアルキル基としては、炭素数が1~10のものが好ましく、特に炭素数が1~4のものが好ましい。つまり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が特に好ましく、それらを具体的に例示すると、一般式(1)中のRがメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2-メチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2-Methyl-2,3-dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本明細書では、以下、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン(メチル化EDOT)」と表示する。一般式(1)の中のRがエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2-エチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2-Ethyl-2,3-dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本明細書では、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン(エチル化EDOT)」と表示する。
一般式(1)の中のRがプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2-プロピル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2-Propyl-2,3-dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本明細書では、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン(プロピル化EDOT)」と表示する。そして、一般式(1)の中のRがブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2-ブチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン(2-Butyl-2,3-dihydro-thieno〔3,4-b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、本明細書では、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン(ブチル化EDOT)」と表示する。また、「2-アルキル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン」を、本明細書では、簡略化して「アルキル化エチレンジオキシチオフェン(アルキル化EDOT)」と表示する。そして、それらのアルキル化EDOTの中でも、メチル化EDOT、エチル化EDOT、プロピル化EDOT、ブチル化EDOTが好ましい。
そして、EDOT(すなわち、2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)とアルキル化EDOT(すなわち、2-アルキル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)とは混合して用いることが好ましく、その混合比は、モル比で0.05:1~1:0.1であることが好ましく、0.1:1~1:0.1であることがより好ましく、0.2:1~1:0.2であることがさらに好ましく、0.3:1~1:0.3であることが特に好ましい。
導電性高分子分散液において、導電性高分子のドーパントには、導電性高分子のドーパントとして機能し得る高分子アニオンを使用する。この高分子アニオンは、分散液中での導電性高分子の分散性を高める機能も有している。
高分子アニオンとしては、ポリスチレンスルホン酸;スチレンスルホン酸と、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸グリシジルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体(A);スルホン化ポリエステル;などが挙げられる。
ポリスチレンスルホン酸としては、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを用い、デキストランを標品として見積もられる数平均分子量が、10,000~1,000,000のものが好ましい。
上記共重合体(A)のモノマーとなるメタクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシステアリルなどが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1~4のメタクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
上記共重合体(A)のモノマーとなるアクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどの、アルキル基の炭素数が1~4のアクリル酸ヒドロキシアルキルが挙げられる。これらの、アルキル基の炭素数が1~4のメタクリル酸ヒドロキシアルキルは、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
上記共重合体(A)のモノマーとなる不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物としては、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどの不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物やそれらの加水分解物が挙げられる。この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物の加水分解物とは、例えば、不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物が上記3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの場合は、メトキシ基が加水分解されてヒドロキシル基になった構造である3-メタクリロキシトリヒドロキシシランになるか、またはシラン同士が縮合してオリゴマーを形成し、その反応に利用されていないメトキシ基がヒドロキシル基になった構造を有する化合物になる。そして、この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物としては、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
また、メタクリル酸グリシジルやアクリル酸グリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、これらのグリシジル基を有するものも、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
上記共重合体(A)におけるスチレンスルホン酸と、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸グリシジルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの比率としては、質量比で、1:0.01~0.1:1であることが好ましい。
そして、上記共重合体(A)は、ポリスチレンスルホン酸と同じ上記方法で求められる数平均分子量が、5,000~500,000のものが、水溶性およびドーパントとしての特性上から好ましい。
高分子アニオンとして使用できるスルホン化ポリエステルとは、スルホイソフタル酸エステルやスルホテレフタル酸エステルなどのジカルボキシベンゼンスルホン酸ジエステルとアルキレングリコールとを酸化アンチモンや酸化亜鉛などの触媒の存在下で縮重合させたものである。このスルホン化ポリエステルとしては、GPCにて、ポリビニルアルコールを充填剤とするカラム(昭和電工社製Asahipak GF-7M HQ)を用い、溶媒に0.1M硝酸ナトリウム水溶液を使用して測定される数平均分子量が、5,000~500,000のものが好ましい。
導電性高分子分散液は、例えば、ドーパントとなる上記高分子アニオンを含有する水性液(水または水と水混和性溶媒との混合物)中で、チオフェンまたはその誘導体を酸化重合し、上記高分子アニオンによってドーピングされた導電性高分子(チオフェンまたはその誘導体の重合体)を合成することによって得ることができる。
導電性高分子の合成に使用する上記水性液を構成する水混和性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられる。重合溶液の溶媒全量中における水混和性溶媒の割合は、50質量%以下であることが好ましい。
酸化重合を行う重合液(チオフェンまたはその誘導体と、上記高分子アニオンと、溶媒とを含む溶液)において、チオフェンまたはその誘導体の濃度は、0.5~5.0質量%であることが好ましい。また、重合液中の上記高分子アニオンの濃度は、0.5~5.0質量%であることが好ましい。
重合液は、必要に応じて、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などを含有していてもよい。
導電性高分子を合成するにあたっての酸化重合は、化学酸化重合、電解酸化重合のいずれも採用することができる。
化学酸化重合を行うにあたっての酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられるが、その過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどが用いられる。
過硫酸塩の使用量は、例えば、ドーパントである上記高分子アニオン:1モルに対して、過硫酸塩が、好ましくは0.4モル以上、より好ましくは0.5モル以上であって、好ましくは4.0モル以下、より好ましくは3.5モル以下となるように調整すればよい。
化学酸化重合において、その重合時の条件は、特に限定されることはないが、化学酸化重合時の温度としては、5℃~95℃が好ましく、10℃~30℃がより好ましく、また、重合時間としては、1時間~72時間が好ましく、8時間~24時間がより好ましい。
電解酸化重合は、定電流でも定電圧でも行い得るが、例えば、定電流で電解酸化重合を行う場合、電流値としては、0.05mA/cm~10mA/cmが好ましく、0.2mA/cm~4mA/cmがより好ましく、定電圧で電解酸化重合を行う場合は、電圧としては、0.5V~10Vが好ましく、1.5V~5Vがより好ましい。電解酸化重合時の温度としては、5℃~95℃が好ましく、特に10℃~30℃が好ましい。また、重合時間としては、1時間~72時間が好ましく、8時間~24時間がより好ましい。なお、電解酸化重合にあたっては、触媒として硫酸第一鉄または硫酸第二鉄を添加してもよい。
上記のようにして得られる導電性高分子(上記高分子アニオンによってドーピングされた導電性高分子)は、重合直後、水中または水性液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる導電性高分子の水分散体を超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーや遊星ボールミルなどの分散機にかけて不純物を分散させた後、カチオン交換樹脂で金属成分を除去することが好ましい。このときの動的光散乱法により測定した導電性高分子の粒径としては、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、また、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。その後、エタノール沈殿法、限外濾過法、陰イオン交換樹脂などにより、酸化剤や触媒の分解により生成したものを除去することが好ましい。
また、得られた導電性高分子分散液には、例えば導電性高分子の含有量を後記の好適量を満たすように調整するために、水や上記の水混和性溶媒をさらに添加することもできる。
また、導電性高分子分散液には、固体電解質層とコンデンサ素子との密着性を向上させる成分(密着性向上剤)をさらに添加することもできる。このような成分として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック樹脂、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリスチレン、シランカップリング剤などが挙げられる。
本発明法では、このようにして得られる導電性高分子分散液中にコンデンサ素子を浸漬し、このコンデンサ素子を陽極として電圧を印加して、コンデンサ素子上に固体電解質層を形成する。
本発明法により製造される電解コンデンサには、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどが含まれる。これらの電解コンデンサには、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の多孔体からなる陽極と、それらの弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を有するコンデンサ素子が使用される。
よって、本発明法によって電解重合を行うに際しては上記のようなコンデンサ素子を陽極とし、その誘電体層の表面に固体電解質層(導電性高分子の層)を形成すればよい。ただし、これらのコンデンサ素子は、上記の通り、表面に酸化皮膜からなる誘電体層を有しているが、この誘電体層は導電性に劣るため、この表面での電圧の印加を可能とするために、コンデンサ素子の誘電体層上に導電性を有するプレコート層を形成する必要がある。
上記のプレコート層については特に制限はないが、化学酸化重合によってチオフェンまたはその誘導体の重合体を合成して、上記プレコート層を形成することが好ましい。上記プレコート層は、例えば、公知の有機スルホン酸第二鉄塩などの酸化剤兼ドーパントを含有する分散液(エタノールなどのアルコールを溶媒とする分散液)をコンデンサ素子表面に塗布などによって付着させて乾燥した後に、これをチオフェンまたはその誘導体(導電性高分子分散液に係る導電性高分子の合成用のものとして先に例示したもの)中に浸漬して、20~50℃で、30~240分化学酸化重合する方法によって形成することができる。このような手法によって、コンデンサ素子の誘電体層表面に、厚みが数μm程度のプレコート層を形成することができる。
そして、プレコート層を形成したコンデンサ素子を導電性高分子分散液に浸漬し、このコンデンサ素子を陽極として電圧を印加する。電圧の印加は、定電流でも定電圧でも行い得るが、例えば、定電流で行う場合、電流値としては、0.05mA/cm~10mA/cmが好ましく、0.2mA/cm~4mA/cmがより好ましく、定電圧で行う場合は、電圧としては、0.5V~10Vが好ましく、1.5V~5Vがより好ましい。電圧印加時の温度としては、5℃~95℃が好ましく、特に10℃~30℃が好ましい。また、電圧を印加する時間としては、10~600分が好ましく、60~300分がより好ましい。
固体電解質層の形成に使用する導電性高分子分散液において、ドーパントである上記高分子アニオンを含む導電性高分子の含有量は、0.5~5質量%であることが好ましい。また、導電性高分子分散液は、必要に応じて、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などを含有していてもよい。
なお、固体電解質層の形成に使用する導電性高分子分散液は、その電気伝導度が、0.01mS/cm以上であることが好ましく、0.1mS/cm以上であることがより好ましく、また、40mS/cm以下であることが好ましく、20mS/cm以下であることがより好ましい。電気伝導度が上記の範囲にある導電性高分子分散液を使用することで、より特性の優れた電解コンデンサを形成することが可能となる。導電性高分子分散液の電気伝導度は、導電性高分子の合成に使用するチオフェンまたはその誘導体と高分子アニオンとの比率や、重合液におけるこれらの濃度を調節することで調整できる。
本明細書でいう導電性高分子分散液の電気伝導度は、堀場製作所製の導電率測定器(F-55)で測定した値であるが、これと同等の導電率測定器で測定してもよい(後記の実施例で記載する値は、上記F-55で測定した値である)。
さらに、固体電解質層の形成に使用する導電性高分子分散液は、そのpHが、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、また、7.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。電気伝導度が上記の範囲にある導電性高分子分散液を使用することで、より特性の優れた電解コンデンサを形成することが可能となる。導電性高分子分散液のpHは、必要に応じて公知の酸やアルカリを添加することで調整できる。
また、固体電解質層の形成に使用する導電性高分子分散液には、チオフェンまたはその誘導体を添加することが好ましく、これにより、形成される固体電解質層がより緻密な構造となるためか、電解コンデンサの特性が向上する。導電性高分子分散液におけるチオフェンまたはその誘導体の添加量は、0.05質量%以上であることが好ましく、また、1.0質量%以下であることが好ましい。
さらに、固体電解質層の形成に使用する導電性高分子分散液には、上記高分子アニオンを添加することが好ましく、これにより、固体電解質層を構成する導電性高分子の導電性がより向上するためか、電解コンデンサの特性が向上する。導電性高分子分散液における上記高分子アニオンの添加量は、0.1質量%以上であることが好ましく、また、2.0質量%以下であることが好ましい。
コンデンサ素子上に形成する固体電解質層の厚みは、10~25μmであることが好ましい。
固体電解質層を形成したコンデンサ素子は、洗浄した後、乾燥する。そして、乾燥後のコンデンサ素子にカーボンペースト、銀ペーストを付け、乾燥した後、外装することによって、積層型もしくは平板型の電解コンデンサ(アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなど)が製造される。
また、コンデンサ素子の固体電解質層に、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤とヒドロキシル基またはカルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族系化合物とを含む導電性補助液を含ませて、電解コンデンサを構成してもよい。
上記導電性補助液に使用可能な沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン(沸点:203℃)、ブタンジオール(沸点:230℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、スルホラン(沸点:285℃)、N-メチルピロリドン(沸点:202℃)、ジメチルスルホラン(沸点:233℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、リン酸トリエチル(沸点:215℃)、リン酸トリブチル(289℃)、リン酸トリエチルヘキシル〔215℃(4 mmHg)〕、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
また、上記の、ヒドロキシル基(芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基をいい、カルボキシル基中などの-OH部分を意味するものではない)またはカルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族系化合物としては、ベンゼン系のもの、ナフタレン系のもの、アントラセン系のもののいずれも用いることができ、その具体例としては、例えば、ヒドロキシベンゼンカルボン酸、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、アミノニトロフェノール、ヒドロキシアニソール、ヒドロキシジニトロベンゼン、ジヒドロキシジニトロベンゼン、アルキルヒドロキシアニソール、ヒドロキシニトロアニソール、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ジヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシニトロ安息香酸)、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、トリヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ヒドロキシトルエンカルボン酸、ニトロナフトール、アミノナフトール、ジニトロナフトール、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンカルボン酸、トリヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシアントラセンジカルボン酸、ジヒドロキシアントラセンジカルボン酸、テトラヒドロキシアントラセンジオン、ベンゼンカルボン酸、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
また、上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または導電性補助液にエポキシ化合物またはその加水分解物、シラン化合物またはその加水分解物およびポリアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の結合剤を含有させることもできる。
本発明法によって製造される電解コンデンサは、漏れ電流が小さく、かつ耐熱性および耐湿性に優れていることから、このような特性が要求される用途(例えば、車載用途)に好適に用い得るほか、従来から電解コンデンサが用いられている用途と同じ用途にも適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
〔導電性高分子分散液の調製〕
調製例1
ポリスチレンスルホン酸(テイカ社製、数平均分子量:100,000)の4質量%濃度の水溶液:600gを内容積:1Lのステンレス鋼製容器に入れ、そこに触媒として硫酸第一鉄・7水和物:0.3gを添加して溶解させた。その中にEDOT:4mLをゆっくり滴下した。上記容器内の反応液をステンレス鋼製の攪拌翼で攪拌し、容器に陽極を取り付け、攪拌翼の付け根に陰極を取り付け、1mA/cmの定電流で18時間電解酸化重合して、ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子を合成した。
電解酸化重合後の反応液を水で6倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US-T300(商品名)〕で30分間分散処理を行った。その後、反応液中にカチオン交換樹脂〔オルガノ社製、アンバーライト120B(商品名)〕:100gを添加して攪拌機で1時間攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中の鉄イオンなどのカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製、Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈することでポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の濃度を1質量%に調整して、導電性高分子分散液(1)を得た。
調製例2
ポリスチレンスルホン酸の水溶液の濃度を2.5質量%に変更した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(2)を調製した。
調製例3
ポリスチレンスルホン酸の水溶液の濃度を5質量%に変更した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(3)を調製した。
調製例4
ポリスチレンスルホン酸の水溶液の濃度を2.5質量%に変更し、ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度を0.5質量%に調整した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(4)を調製した。
調製例5
ポリスチレンスルホン酸の水溶液の濃度を5質量%に変更し、ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度を2.5質量%に調整した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(5)を調製した。
調製例6
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、アンモニア水を加えてpHを4に調整した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(6)を調製した。
調製例7
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、アンモニア水を加えてpHを6に調整した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(7)を調製した。
調製例8
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、アンモニア水を加えてpHを8に調整した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(8)を調製した。
調製例9
ポリスチレンスルホン酸に代えて、スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとを8:2(質量比)で共重合した共重合体(数平均分子量:90,000)を用いた以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(9)を調製した。
調製例10
ポリスチレンスルホン酸に代えて、スルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製、プラスコートZ?561(商品名)、数平均分子量:27,000〕を用いた以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(10)を調製した。
調製例11
ポリスチレンスルホン酸の水溶液に代えて、調製例1で使用したものと同じポリスチレンスルホン酸と、調製例10で使用したものと同じスルホン化ポリエステルとを、それぞれ、3質量%、1質量%の濃度で含有する水溶液を用いた以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(11)を調製した。
調製例12
EDOTに代えて、EDOTとブチル化EDOTとの7:3(質量比)の混合物を用いた以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(12)を調製した。
調製例13
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、0.5質量%の濃度となる量のポリスチレンスルホン酸(調製例1で使用したものと同じもの)を添加した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(13)を調製した。
調製例14
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、EDOTのアセトニトリル溶液(濃度:20質量%)を、EDOTの濃度が0.5質量%となる量で添加した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(14)を調製した。
調製例15
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、0.25質量%の濃度となる量のポリスチレンスルホン酸(調製例1で使用したものと同じもの)を添加し、かつEDOTのアセトニトリル溶液(濃度:10質量%)を、EDOTの濃度が0.25質量%となる量で添加した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(15)を調製した。
調製例16
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、0.5質量%の濃度となる量のスルホン化ポリエステル(調製例10で使用したものと同じもの)を添加した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(16)を調製した。
調製例17
スルホン化ポリエステルによってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、EDOTのアセトニトリル溶液(濃度:10質量%)を、EDOTの濃度が0.1質量%となる量で添加した以外は、調製例10と同様にして導電性高分子分散液(17)を調製した。
調製例18
スルホン化ポリエステルによってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、0.25質量%の濃度となる量のスルホン化ポリエステル(調製例10で使用したものと同じもの)を添加し、かつEDOTのアセトニトリル溶液(濃度:10質量%)を、EDOTの濃度が0.25質量%となる量で添加した以外は、調製例10と同様にして導電性高分子分散液(18)を調製した。
調製例19
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、10質量%の濃度となる量のジメチルスルホキシドを添加した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(19)を調製した。
調製例20
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、0.03質量%の濃度となる量のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ノニオン系界面活性剤)を添加した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(20)を調製した。
調製例21
ポリスチレンスルホン酸によってドーピングされた導電性高分子の最終の濃度調整の際に、0.5質量%の濃度となる量の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(密着性向上剤)を添加した以外は、調製例1と同様にして導電性高分子分散液(21)を調製した。
調製例1~21で調製した導電性高分子分散液の構成、電気伝導度およびpHを表1に示す。なお、表1に記載の略号は、以下の通りである。
EDOT/Bu-EDOT : EDOTとブチル化EDOTとの混合物
PSS : ポリスチレンスルホン酸
P(SS-HME): スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体
SPE : スルホン化ポリエステル
DMSO : ジメチルスルホキシド
POEAE : ポリオキシエチレンアルキルエーテル
Figure 2023022858000002
〔電解コンデンサの作製〕
実施例1
直方体状のタンタル焼結体(リード線の一方の先端がタンタル焼結体内に埋め込まれ、もう一方の先端がタンタル焼結体の一面から突出している)を2質量%濃度のリン酸水溶液中に浸漬し、10Vの電圧を印加することで、タンタル焼結体の表面に誘電体層(誘電体酸化皮膜)を形成した。
そして、上記タンタル焼結体の誘電体層上に、電解重合を可能とするためにプレコート層を形成してコンデンサ素子を作製した。30質量%濃度のトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液中に上記タンタル焼結体を浸漬してから取り出し、105℃で30分間乾燥させた。乾燥後の上記タンタル焼結体をEDOT中に浸漬し、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気中で1時間化学酸化重合を行って、上記タンタル焼結体の誘電体層上に、EDOTの重合体で構成されたプレコート層を形成し、水で1時間洗浄してから105℃で乾燥させた。
次に、調製例1で得られた導電性高分子分散液(1)中に上記コンデンサ素子とSUS304板とを浸漬し、コンデンサ素子を陽極とし、SUS304板を陰極として、液温:20~30℃下で1mA/cmになるように定電流で電圧を印加して、コンデンサ素子のプレコート層上に、固体電解質層(導電性高分子の層)を形成した。そして、コンデンサ素子の固体電解質層をカーボンペーストおよび銀ペーストで覆った後に外装材で外装して、タンタル電解コンデンサを得た。
実施例2~21
導電性高分子分散液を、調製例2~21で得られた導電性高分子分散液(2)~(21)のいずれかに変更した以外は、実施例1と同様にしてタンタル電解コンデンサを作製した。
実施例22
コンデンサ素子のプレコート層上での固体電解質層の形成を、3Vの定電圧で電圧を印加することによって行った以外は、実施例1と同様にしてタンタル電解コンデンサを作製した。
比較例1
5質量%濃度のパラトルエンスルホン酸水溶液:200gを室温下で攪拌し、pHを測定しながら攪拌を続け、pHが1.5になるまでエチレンジアミンを添加した。そこで、0.4μmのガラスフィルターで濾過して不溶物を取り除くことにより、前処理剤を得た。
実施例1と同様にしてプレコート層を形成したコンデンサ素子を、上記前処理剤中に浸漬し、引き上げた後に120℃で10分間乾燥した。このコンデンサ素子を調製例1で得た導電性高分子分散液(1)中に浸漬し、引き上げた後に120℃で10分間乾燥して、プレコート層上に固体電解質層(導電性高分子の層)を形成した。そして、このようにして得られた固体電解質層を有するコンデンサ素子を用いた以外は、実施例1と同様にしてタンタル電解コンデンサを作製した。
実施例および比較例のタンタル電解コンデンサについて、初期特性として漏れ電流とESR(等価直列抵抗)とを下記の方法で測定すると共に、耐久性評価を下記の方法で実施した。
漏れ電流:
実施例および比較例のタンタル電解コンデンサ各10個に、25℃で25Vの定格電圧を60秒間印加した後、デジタルオシロスコープを用いて漏れ電流を測定し、実施例および比較例のそれぞれについて、10個の測定値の平均値を求めた。
ESR:
実施例および比較例のタンタル電解コンデンサ各10個のESRを、HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用いて、25℃の条件下で、100kHzで測定し、実施例および比較例のそれぞれについて、10個の測定値の小数点第1位で四捨五入した平均値を求めた。
耐久性評価:
(耐熱性評価)
実施例および比較例のタンタル電解コンデンサ各10個を150℃の環境下で500時間貯蔵した後に、初期特性評価時と同じ方法でESRを測定し、実施例および比較例のそれぞれについて、10個の測定値の小数点第1位で四捨五入した平均値を求め、初期特性評価時のESRの平均値で除して、変化率(倍)を求めた。
(耐湿性評価)
実施例および比較例のタンタル電解コンデンサ各10個(耐熱性評価に使用したものとは別の電解コンデンサ)を85℃、相対湿度85%の環境下で500時間貯蔵した後に初期特性評価時と同じ方法でESRを測定し、実施例および比較例のそれぞれについて、10個の測定値の小数点第1位で四捨五入した平均値を求め、初期特性評価時のESRの平均値で除して、変化率(倍)を求めた。
上記の各評価結果を、各タンタル電解コンデンサの作製に使用したコンデンサ素子上に形成した固体電解質層の端部の厚みと併せて表2に示す。なお、固体電解質層の端部の厚みは、実施例および比較例のタンタル電解コンデンサ各5個に係るコンデンサ素子の上面(リード線が突出している面)と側面との間の角部上にある固体電解質層の厚みを、光学顕微鏡を用いて測定し、実施例および比較例のそれぞれについて、5個の測定値の小数点第1位を四捨五入した平均値である。
また、表2における電圧の印加の欄の記載は、以下の通りである。
A : 電圧の印加あり(条件:定電流)
B : 電圧の印加あり(条件:定電圧)
なし : 電圧の印加なし
Figure 2023022858000003
表2に示す通り、実施例1~22のタンタル電解コンデンサは、初期特性評価時の漏れ電流が小さく、高温環境下や高湿環境下でのESRの変化が抑制されており、優れた耐熱性および耐湿性を有していた。
一方、比較例1のタンタル電解コンデンサは、特許文献1と同様に、架橋剤に該当するパラトルエンスルホン酸とエチレンジアミンとの塩を含有する前処理剤を適用した後に、導電性高分子分散液を用いて形成した固体電解質層を有するコンデンサ素子を用いて構成したものであるが、初期特性評価時の漏れ電流は小さく、前処理剤の使用による一定の効果は認められるものの、実施例の電解コンデンサに比べると大きくなった。また、比較例1の電解コンデンサは、高温環境下や高湿環境下でのESRの変化率が大きかった。

Claims (6)

  1. チオフェンまたはその誘導体の重合体であり、かつ高分子アニオンをドーパントとして含む導電性高分子を含有する導電性高分子分散液に浸漬したコンデンサ素子を陽極として電圧を印加して、上記コンデンサ素子上に固体電解質層を形成する工程を有することを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
  2. 上記導電性高分子分散液は、電気伝導度が0.01~40mS/cmである請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
  3. 上記導電性高分子分散液は、pHが1.0~7.0である請求項1または2に記載の電解コンデンサの製造方法。
  4. 上記導電性高分子分散液は、チオフェンまたはその誘導体を含有している請求項1~3のいずれかに記載の電解コンデンサの製造方法。
  5. 上記導電性高分子分散液は、導電性高分子のドーパントとして機能し得る高分子アニオンを含有している請求項1~3のいずれかに記載の電解コンデンサの製造方法。
  6. 上記高分子アニオンとして、ポリスチレンスルホン酸、もしくはスチレンスルホン酸と、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸グリシジルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体、またはスルホン化ポリエステルを使用した請求項1~5のいずれかに記載の電解コンデンサの製造方法。
JP2021127894A 2021-08-04 2021-08-04 電解コンデンサの製造方法 Pending JP2023022858A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021127894A JP2023022858A (ja) 2021-08-04 2021-08-04 電解コンデンサの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021127894A JP2023022858A (ja) 2021-08-04 2021-08-04 電解コンデンサの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023022858A true JP2023022858A (ja) 2023-02-16

Family

ID=85203986

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021127894A Pending JP2023022858A (ja) 2021-08-04 2021-08-04 電解コンデンサの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023022858A (ja)

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023053390A (ja) * 2022-02-04 2023-04-12 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023053389A (ja) * 2018-03-08 2023-04-12 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023053392A (ja) * 2022-02-04 2023-04-12 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023054223A (ja) * 2019-03-28 2023-04-13 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023054222A (ja) * 2019-03-28 2023-04-13 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023054225A (ja) * 2019-04-11 2023-04-13 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023054224A (ja) * 2019-04-11 2023-04-13 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023060270A (ja) * 2022-04-01 2023-04-27 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023060269A (ja) * 2022-04-01 2023-04-27 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023063369A (ja) * 2022-01-07 2023-05-09 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023071934A (ja) * 2019-02-15 2023-05-23 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023105105A (ja) * 2020-05-29 2023-07-28 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023105101A (ja) * 2018-12-26 2023-07-28 株式会社三洋物産 遊技機

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023053389A (ja) * 2018-03-08 2023-04-12 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023105101A (ja) * 2018-12-26 2023-07-28 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023071934A (ja) * 2019-02-15 2023-05-23 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023054223A (ja) * 2019-03-28 2023-04-13 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023054222A (ja) * 2019-03-28 2023-04-13 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023054224A (ja) * 2019-04-11 2023-04-13 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023054225A (ja) * 2019-04-11 2023-04-13 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023105105A (ja) * 2020-05-29 2023-07-28 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023063369A (ja) * 2022-01-07 2023-05-09 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023053390A (ja) * 2022-02-04 2023-04-12 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023053392A (ja) * 2022-02-04 2023-04-12 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023060270A (ja) * 2022-04-01 2023-04-27 株式会社三洋物産 遊技機
JP2023060269A (ja) * 2022-04-01 2023-04-27 株式会社三洋物産 遊技機

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2023022858A (ja) 電解コンデンサの製造方法
US9953767B2 (en) Conductive polymer dispersion liquid, a conductive polymer, and use thereof
US9589738B2 (en) Solid electrolyte capacitor and a method for manufacturing the same
JP5988824B2 (ja) 電解コンデンサの製造方法
KR101803997B1 (ko) 폴리알킬렌 글리콜을 통한 고체 전해질로서 pedot/pss를 포함하는 캐패시터에서 전기적 파라미터를 개선하는 방법
JP5988831B2 (ja) 電解コンデンサの製造方法
JP4454041B2 (ja) 導電性組成物の分散液、導電性組成物およびその用途
JP6256970B2 (ja) 電解コンデンサおよびその製造方法
JP6462255B2 (ja) 電解コンデンサおよびその製造方法
JP5807997B2 (ja) 固体電解コンデンサの製造方法
US20160225531A1 (en) A monomer liquid for of conductive polymer production and a manufacturing method of an electrolyte capacitor using the same
JP2010182426A (ja) 導電性高分子組成物およびその製造方法、並びに導電性高分子組成物を用いた固体電解コンデンサ
JP4573363B1 (ja) 有機溶剤系導電性高分子分散液の製造方法およびその応用
JP7064807B2 (ja) 導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液、導電性高分子の製造方法、および電解コンデンサの製造方法
WO2017143736A1 (zh) 一种铝电解质电容器及其制备方法
JP7449717B2 (ja) 導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液、導電性高分子およびその製造方法、並びに電解コンデンサおよびその製造方法
JP7083280B2 (ja) 電解コンデンサの製造方法
JP7282583B2 (ja) 電解コンデンサの製造方法
JP2022126045A (ja) 導電性高分子分散液、導電性高分子膜および電解コンデンサ
JP7357487B2 (ja) 電解コンデンサおよびその製造方法
WO2022255209A1 (ja) 導電性高分子用ドーパント溶液、導電性高分子製造用モノマー液、導電性組成物およびその製造方法、並びに電解コンデンサおよびその製造方法
JP2023104024A (ja) 電解コンデンサおよびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240105