JP2023006712A - 紙及び紙用の塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】引張強さ、防滑性、及び通気性というクラフト紙等の紙に求められる性能を好適に兼ね備えた紙、及びこのような紙を製造するために好適に利用することができる紙用の塗料組成物を提供する。【解決手段】原紙の一方又は両方の表面に塗膜層を有し、この塗膜層がリグニン含有率10%以上の微細化セルロース繊維を含み、前記原紙の質量に対する前記微細化セルロースの質量が0.1~10.0%であることを特徴とする紙。また、リグニン含有率10%以上の微細化セルロース繊維を含むことを特徴とする塗料組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、クラフト紙等の紙及び紙用の塗料組成物に関するものである。
クラフト紙等の紙は、製袋工場で印刷及び製袋され、米や麦、粉体、飼料等の重包装用の袋材等に使用される。このような紙には、破袋の防止のため、引張強さ等が高いことが要求される。紙の強度を高めるためには、主成分であるパルプ繊維の叩解を進めて繊維同士の絡み合いを多くすることで対応することが考えられる。しかしながら、叩解度の高いパルプ繊維を用いると、得られる紙の通気性が下がり、粉体を充填する際に時間を要したり、粉体が飛散し易くなったりするという問題がある。
そこで、カチオン交換能を有する無機系物質と高分子凝集剤を併用して添加し、抄紙することによって得られるクラフト紙が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。しかしながら、この提案によると、紙表面の凹凸に添加剤が埋まることで表面が平滑化され、例えば、内容物が充填された袋を積み上げて搬送する際に荷崩れが生じ易くなる。また、パルプ繊維以外の添加剤の添加により、繊維の絡み合いが弱まり、紙の強度が低下する可能性もある。特に、クラフト紙の場合は未晒パルプを主体としており樹脂分を含むため、樹脂分が抄紙薬品と結合して異物化し、引張強さ等が低下して破袋し易くなる可能性がある。
また、以上のような搬送の際の荷崩れを防止することを目的として、「粒子径1~30μmの範囲の粒子割合が少なくとも80重量%以上、粒子径70μm以上の粒子割合が0.4重量%以下であり、かつ平均粒子径が5~10μmの範囲にある製紙用水和珪酸塩からなる填料を、未晒クラフト紙の製紙原料中に絶乾パルプ当り0.2~3重量%内添して抄造することを特徴とする重袋原紙用未晒クラフト紙の製造方法」も提案されている(例えば、特許文献2等参照。)。しかしながら、このクラフト紙においては、上記填料がパルプ繊維間に入り込むことで通気性が低下し、また、特許文献1等の場合と同様に填料の添加により紙の強度が低下する可能性がある。
さらに、以上の他、例えば、「パルプ原料がリグノセルロース物質を蒸解した後のカッパー価が20~80である未晒パルプを主成分とし、該パルプ原料100質量部に対して、硫酸バンドを0.1~2.0質量部添加して抄紙し、コロイダルシリカを用紙中に0.05~2.0質量%含有せしめた事を特徴とする重袋用包装用紙」(例えば、特許文献3等参照。)も提案されている。しかしながら、コロイダルシリカの内添は、シリカの脱離性に懸念が残る。
以上のような背景のもと、原紙自体の改良ではなく、原紙製造段階等においてサイズプレスや噴霧ノズル等を用いて原紙表面に防滑剤等の塗料を塗布、あるいは噴霧する方法が種々試みられている。
防滑剤としては、例えば、コロイダルシリカ等の「シリカ粒子と水性樹脂エマルジョンとからなるシリカ複合エマルジョンを主成分とする防滑剤組成物において」、所定の「スチレン系単量体とアクリル系単量体とマレイン酸系単量体との共重体樹脂1~3重量%を含有せしめたことを特徴とする防滑剤組成物」が提案されている(例えば、特許文献4等参照。)。しかしながら、この組成物は、原紙表面への定着性が良くないので、バインダーを過剰に添加して定着性を向上させる必要があり、塗工、特に高速塗工には不向きである。また、低粘性としておけば高速塗工は可能となるが、原紙表面の平滑度合により、弾かれたり、塗りムラが発生したりするため、クラフト紙としての性能が劣る可能性がある。
この点、紙基材には、例えば、防滑性や防湿性等の機能を付与する目的で、あるいは紙基材自体の物性、例えば、紙力の向上やサイズ性(疎水性)の向上等を図る目的で塗布液が塗布されている。一方、塗布液の塗布は、例えば、抄紙機に付帯するサイズプレスや噴霧ノズル等で行われ、年々高速化する傾向にある。この高速化に対応するためには、塗布液を、例えば低粘度化する等が必要になる。しかしながら、塗布液を低粘度化すると、上記した問題が生じる。また、塗布液を低粘度化すると、紙基材へ浸透し易くなる。塗布された塗布液は、紙基材への浸透が好ましい場合もあるが、紙基材への浸透が好ましくない場合もある。後者の場合、塗布液を低粘度化するのみでは対応することができない。また、塗布液を紙基材の表面に残すためには塗布量を増やすことも考えられるが、塗布量を増やすと乾燥エネルギーが多く必要になる他、紙基材への塗布液の浸透が増え、紙基材の物性に対する影響が大きい。
特開平7-70975号公報 特開平5-321198号公報 特開2011-252248号公報 特開平7-304999号公報
本発明が解決しようとする課題は、引張強さ、防滑性、及び通気性というクラフト紙等の紙に求められる性能を好適に兼ね備えた紙、及びこのような紙を製造するために好適に利用することができる紙用の塗料組成物を提供することにある。
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
(請求項1に記載の手段)
原紙の一方又は両方の表面に塗膜層を有し、
この塗膜層がリグニン含有率10%以上の微細化セルロース繊維を含み、
前記原紙の質量に対する前記微細化セルロースの質量が0.1~10.0%である、
ことを特徴とする紙。
(請求項2に記載の手段)
前記微細化セルロース繊維の平均繊維長が0.5mm下で、かつ平均繊維幅が15μm以下である、
請求項1に記載の紙。
(請求項3に記載の手段)
前記微細化セルロース繊維の平均繊維幅が、前記原紙を構成するパルプ繊維の平均繊維幅の1分の1以下である、
請求項1又は請求項2に記載の紙。
(請求項4に記載の手段)
前記原紙には、紙力剤として置換度が5以上45以下のカチオン化澱粉が、前記原紙を構成するパルプ繊維100質量部に対して0.10~0.60質量部含有されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の紙。
(請求項5に記載の手段)
前記原紙のステキヒトサイズ度が、1~1000秒である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の紙。
(請求項6に記載の手段)
前記原紙を構成するパルプ繊維の質量加重平均繊維長が、0.5~3.5mmである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の紙。
(請求項7に記載の手段)
リグニン含有率10%以上の微細化セルロース繊維を含む、
ことを特徴とする塗料組成物。
(請求項8に記載の手段)
Ti値(25℃、6rpmのB型粘度/25℃、60rpmのB型粘度)が1~10である、
請求項7に記載の塗料組成物。
(請求項9に記載の手段)
前記微細化セルロース繊維の結晶化度が50~100である、
請求項8に記載の塗料組成物。
本発明によると、引張強さ、防滑性、及び通気性というクラフト紙等の紙に求められる性能を好適に兼ね備えた紙、及びこのような紙を製造するために好適に利用することができる紙用の塗料組成物となる。
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
本形態のクラフト紙等の紙は、原紙の一方又は両方の表面に塗料組成物が塗布等されてなる。以下、順に説明する。
(原紙)
本形態の原紙は、パルプ繊維を主成分(好適には、90質量%以上。)として含む。このパルプ繊維の質量加重平均繊維長は、0.5~3.5mmであるのが好ましく、0.6~3.5mmであるのがより好ましく、0.7~3.0mmであるのが特に好ましい。質量加重平均繊維長が0.5mm未満であると、原紙の空隙が減少し、通気性が低下したり、あるいは原紙表面が平坦になることで滑り易い紙となったりする可能性がある。この点、強度の低下や防滑性の低下は、塗料組成物の塗布で少しは改善することができるが、通気性の低下改善には困難を伴う。他方、質量加重平均繊維長が3.5mmを超えると、原紙の空隙が大きくなりすぎ、袋として用いた場合に粉体を封入する際、空隙に粉体が入り込んで破袋が生じ易くなったり、原紙から粉体が抜け出したりする可能性がある。
質量加重平均繊維長とは、原紙をJIS-P8220:1998「パルプ-離解方法」で離解して得られたパルプ繊維について、JIS-P8226-2:2011「パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法」で測定した値をいう。
パルプ繊維の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、15μm以上、好ましくは15~50μm、より好ましくは15~40μm、特に好ましくは15~30μmである。パルプ繊維の平均繊維径が50μmを超えると、繊維が太く、物理的な繊維の絡み合いが少なくなり、強度低下につながりやすい。他方、パルプ繊維の平均繊維径が15μmを下回ると、物理的な繊維の絡み合いが増加し、強度向上につながるが、繊維が小さくなるため、空隙が小さくなり、通気性が下がるおそれがある。
パルプ繊維の平均繊維径は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」を使用し測定することができる。
パルプ繊維は、フィブリル化率が0.1~5.0%であるのが好ましく、0.3~5.0%であるのがより好ましく、0.5~5.0%であるのが特に好ましい。フィブリル化率が0.1%未満であると、フィブリル化が十分に進んでいないため、繊維同士の絡み合いが弱く、引張強度や防滑性が不十分になる可能性がある。他方、フィブリル化率が5.0%を超えると、繊維同士の絡み合いが強くなりすぎ、原紙における空隙が減少し、通気性が悪くなる可能性がある。この点、フィブリル化率を上記範囲内に調整すると、引張強度及び通気性の両方が満足されたクラフト紙等の紙を得易くなる。また、このようにパルプ繊維の調整により引張強度及び通気性を高めると、添加剤を多量に用いる必要がなくなり、添加剤の添加を原因とする引張強度や防滑性の低下等を抑えることができる。
フィブリル化率は、後述する微細化セルロース繊維の場合と同様にして測定した値である。
パルプ繊維のフィブリル化率は、叩解の方式(粘状叩解かカッティング叩解かの選択等)、その他の様々な条件によって調節することができる。具体的には、叩解の方式の他、例えば、叩解に用いる刃の大きさ、形状や角度、ビッカース硬度、クリアランスのような装置特性に関する条件、叩解を行う際の濃度、温度やpHといった工程変数に関する条件等によって、フィブリル化率を調節することができる。
パルプ繊維は、叩解機として、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等を使い叩解することができる。好ましくは、叩解機を2台以上直列に繋ぎ、2回以上の叩解を行うとよい。
2台以上の叩解機を使用する場合は、例えば、1台目の叩解機には刃の角度が小さいプレートを入れ、パルプ繊維をカッティングするように叩解して繊維長の調整を行い、2台目の叩解機には刃の角度が大きいプレートを入れ、パルプ繊維を毛羽立たせるように叩解することができる。このように2台以上の叩解機を用いることで、1台の叩解機で1回のみ叩解するより、平均繊維長やフィブリル化率を調整し易くなる。上記例の場合、1台目の叩解機は、いわゆるカッティング叩解を行うものであり、ディスクプレートの刃の角度は0°以上10°未満が好ましい。2台目の叩解機は、いわゆる粘状叩解を行うものであり、刃の角度は10°以上20°未満が好ましい。
叩解の際の濃度(叩解濃度)は、1.0~5.0%であるのが好ましく、1.0~4.5%であるのがより好ましく、1.0~4.0%であるのが特に好ましい。濃度が1.0%未満であると、十分にフィブリル化した繊維を得られにくく、繊維同士の絡み合いが少なくなり、強度が低下する可能性がある。他方、濃度が5.0%を超えると、繊維同士の絡み合いが多くなりすぎ、紙層の空隙が減少し、通気性が悪くなる可能性がある。
パルプ繊維のカッパー価は、11~65であるのが好ましく、18~59であるのがより好ましく、25~52であるのが特に好ましい。カッパー価は、パルプ中の樹脂分量、主にリグニン量を示す指標であり、この値が高いほど樹脂分量が多いことになる。また、樹脂分は抄紙工程において添加剤と結合し異物化するとパルプ繊維のセルロース部分に比べて硬く大きくなり、繊維間結合を阻害して紙の強度を低下させ易い。したがって、通常のクラフト紙においては、カッパー価を65以下に抑えることで、JIS-P3401「クラフト紙」に規定する引張強さ及び伸びを達成している。
本形態においてカッパー価とは、原紙をJIS-P8220:1998「パルプ-離解方法」で離解して得られたパルプ繊維について、JIS-P8211に準じて測定した値をいう。
なお、カッパー価が高くなるとパルプ製造で発生する廃棄物量が減るため、カッパー価が高いパルプ繊維を用いると、環境負荷が低減する。また、カッパー価が高いパルプ繊維を用いると、パルプ繊維に含まれる樹脂分が歩留まり向上剤や紙力増強剤と同様の機能を発揮するため、添加剤の使用量を低減することができる。ただし、パルプ繊維のカッパー価が60を超えると、原紙の引張強度が不十分になる可能性がある。
以上のような平均繊維断面積を有するパルプを用いるためには、当該平均繊維断面積を有するパルプ繊維を多く含む樹種をパルプ原料として使用するのが好ましい。具体的には、例えば、樹種が針葉樹であれば、モミ、エゾマツ、ヒメコマツ、スギ、ヒノキ、ヒバ等が好ましく、スギがより好ましい。カラマツ、アカマツ、クロマツなどは平均繊維断面積が大きくなり易く、繊維同士の絡み合いが少なくなり引張強さが低下し易い。また、ツガは平均繊維断面積が小さくなり易く、原紙が密になり透気性が低下し易い。一方、樹種が広葉樹であれば、ドロノキ、ミズナラ、アカガシ、シイノキ、ケヤキ、カツラ、シナノキ、ハリギリ、ヤチダモなどが好ましく、ケヤキがより好ましい。マカンバやキリは平均繊維断面積が大きくなり易く、ブナは平均繊維断面積か小さくなり易い。
平均繊維断面積を調節する方法は、以上のように樹種を選定する方法の他、例えば、パルプ製造工程における蒸解条件や、調成工程における叩解条件を調節する方法等が存在する。
パルプ繊維のフリーネスは、410~690ccとするのが好ましく、450~650ccとするのがより好ましく、480~620ccとするのが特に好ましい。フリーネスを以上の範囲内にすることで、繊維同士の絡み合い度合い及び空隙が好適になり、得られるクラフト紙等の紙の透気性及び強度をバランスよく発揮させることができる。
本形態において、フリーネスとは、JIS-P8121に規定されるカナダ標準形ろ水度試験機を用いて測定した値をいう。
パルプ繊維の原料となる原料パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、古紙パルプ(DIP)、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
ただし、NUKP及びLUKPを混合して用いるか、NUKPのみを用いるのがより好ましい。この形態によると、重包装用クラフト紙等の紙に必要な通気性、防滑性、引張強度、引張伸長率等を高めることができる。
NUKP及びLUKPを混合して用いる場合、NUKP及びLUKPの質量比は、60:40以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましい。NUKPが主となる質量比とすることで、滑り角度、引張強度、引張伸長率等をバランスよく高めることができる。
以上のパルプ繊維を含むパルプスラリーには、添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、硫酸バンド、紙力剤、サイズ剤、歩留まり向上剤(凝集剤、凝結剤等)等を例示することができる。
硫酸バンドの添加量は、パルプ繊維100質量部に対して0.40~1.10質量部とすることができる。
紙力剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロース等の中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。紙力剤の添加量は、パルプ繊維100質量部に対して0.10~0.60質量部とすることができる。
ただし、置換度(グルコース単位一ユニットあたりに導入されたカチオン基の平均個数)が5以上45以下であるカチオン化澱粉を使用するのが好ましく、置換度が10以上40以下であるカチオン化澱粉を使用するのがより好ましい。置換度が以上の範囲内のカチオン化澱粉を用いた場合は、パルプ繊維表面のアニオン性部分に対して定着し易いため、パルプ繊維同士の結合強度を向上でき、引張強さを向上させることができる。この点、置換度が5を下回ると、カチオン化澱粉がパルプ繊維に定着し難くなり、引張強さの向上効果が得られ難い。他方、置換度が45を超えると、パルプ繊維のみならず、抄紙系内の樹脂分と結合して異物化し易くなり、引張強さが低下し易くなる。
サイズ剤としては、例えば、ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤、アルケニルコハク酸無水物、アルキルテケンダイマー等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
ただし、酸性ロジンエマルジョンサイズ剤を使用するのが好ましい。
サイズ剤の添加量は、パルプ繊維100質量部に対して0.050~0.50質量部とすることができる。
パルプスラリー中のパルプ繊維以外の添加物の含有量は、パルプ繊維100質量部に対して2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましい。パルプ繊維以外の添加物の含有量を少なくすることで、強度の低下や荷崩れの発生を低減することができる。この点、本形態においては、パルプ繊維の質量加重平均繊維長、フィブリル化率、カッパー価等を調整しているため、添加物の含有量を少なくしても高い強度を有し、かつ、優れた通気性や防滑性等を発揮する紙を得ることができる。
また、本形態においては、樹脂分量の多い(カッパー価の高い)パルプ繊維を使用するため、樹脂分そのものが歩留り剤や紙力増強剤のごとく作用し、パルプ繊維に含有させる凝集剤や凝結剤などの歩留り向上剤の使用量を低減でき、特には歩留り薬品が無配合であっても、地合いが良く引張強さ及び伸びに優れた紙が得られる。また、各種紙力増強剤の使用量を低減でき、特には各種紙力増強剤が無配合であっても、高い強度を有する紙が得られる。
パルプスラリーにおけるパルプ繊維以外の添加物の含有量の下限としては、0質量部とすることもできるが、添加剤の機能を十分に発揮させるためには0.5質量部が好ましい。
本形態においては、以上のパルプスラリーを抄紙機等により抄紙した後、原紙表面に塗料組成物の塗布を行う。この塗布前の原紙の物性は、以下のとおりであるのが好ましい。
原紙の透気度は、30秒以下が好ましく、25秒以下がより好ましく、20秒以下が特に好ましい。透気度が30秒より高いと、粉体を送風しながら封入する際、空気が素早く抜けず、封入に時間を要することとなる。また、飼料袋のように上方から内容物を落下させる場合は空気の抜けが悪く、破袋の可能性がある。
透気度の下限は、例えば、5.0秒であり、10秒がより好ましい。
本形態において透気度とは、JIS-P8117:1998「紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)-ガーレー法」に準じて測定した値をいう。
原紙の滑り角度は、25度以上であることが好ましい。このような滑り角度を有する紙によれば、内容物を封入した重袋を積み上げた際の荷崩れの発生を低減することができる。
滑り角度の上限は、例えば、40度である。
本形態において滑り角度とは、JIS-P8147:「紙及び板紙≡静及び動摩擦係数の測定方法」に準じて傾斜法にて測定した値をいう。
原紙の引張強さ縦は4.5kN/m以上、引張強さ横は2.2kN/m以上、引張伸長率縦は2.0%以上、引張伸長率横は4.0%以上であるとよい。このような引張強さ及び引張伸張率を有する紙は、強度が高く、重包装用としてより好適である。
本形態において引張強さ(縦・横)」とは、JIS-P8113:「紙及び板紙≡引張特性の試験方法」に準じて測定した値をいう。また、引張伸張率(縦・横)とは、JIS-P8113:「紙及び板紙引張特性の試験方法≡第2部定速伸張法」に準じて測定した値をいう。
なお、紙がクラフト紙である場合において、当該クラフト紙はJIS-P3401「クラフト紙」が規定するとおり、一定以上の引張強さ及び伸びを満足することが求められ、実使用上は透気度と滑り角度も所定範囲内に調整する必要がある。しかしながら、引張強さを向上させるためにパルプの叩解を進めると、繊維同士の絡み合いが多くなり透気度が高くなり、また、表面平滑性が高くなり滑り角度が低下する。他方、叩解を進めない場合は、そもそも引張強度が得られない問題がある。
原紙の坪量は、例えば、65~95g/m2、好ましくは75~90g/m2である。
本形態において坪量は、JIS8124:2011に準拠して測定した値である。
原紙のベック平滑性は、例えば、1秒以上、好ましくは1~1,000秒、より好ましくは2~500秒である。
本形態においてベック平滑度は、JIS8119:1998に準拠して測定した値である。
原紙のステキヒトサイズ度は、例えば1~1000秒、好ましくは1~500秒、より好ましくは2~200秒である。サイズ度が高すぎると、原紙が本形態の塗料組成物を弾いてしまい、塗布が不十分になる可能性がある。他方で、サイズ度が低すぎると、塗布薬品が基紙に浸透して、所望の強度、防滑性が得られないおそれがある。また、水濡れ時に紙層内部まで水が浸透し、強度が低下して袋が破れる可能性がある。
本形態においてステキヒトサイズ度は、JIS8122:2004に準拠して測定した値である。
本形態において原紙は、単層であっても、複数層であってもよい。
(塗料組成物)
本形態の紙においては、以上の原紙の一方又は両方の表面に塗料組成物を塗布し、前述した課題を解決するうえでの紙の性能を好適なものにする。以下、塗料組成物について、詳細に説明する。
本形態の塗料組成物は、リグニン含有率10%以上の微細化セルロースを含む。組成物には、バインダー樹脂や撥水剤を含ませることができる。
この点、従来のクラフト紙等の紙は、一例として防滑剤を紙面(原紙)に外添させることで防滑効果を発揮させている。防滑剤によっては、紙面に塗工した防滑剤が紙の厚み方向に浸透してしまう場合があった。この浸透を防止するために紙面に予め外添紙力剤を塗って塗工膜を形成した上で、防滑剤を塗工する手法を採っていた。
これに対して、本形態の塗料組成物は、紙の厚み方向に浸透しないもの、又は浸透したとしても僅かに浸透したものとなっている。このメカニズムは明らかではないが、おそらく次のように推測される。なお、このことは、塗料組成物の塗布に先立つ外添紙力剤等の塗布を、本発明において否定する趣旨ではない。
微細化セルロース繊維の分散液の性質としてチキソトロピー性を有する。これは外力が加わらない状態では、粘性が相対的に高く流動性は低いが、圧力、外力が加わった状態では粘性が低く、流動性が良好となる性質である。これは塗料組成物をアプリケーター(塗工機)等で紙に塗布する瞬間は高いシェアが加わるため、塗料組成物の流動性は高くなり被膜され易くなるが、塗布直後は、塗料組成物に加わる力がなくなり、粘性が高く変化することを意味する。塗布後、紙の厚み方向では、毛細管現象で紙の内部に塗料組成物が浸透する現象が発生するが、塗布時に加わる力に比べると弱く、塗料組成物の流動性が大きく変わるほどの力は加わらないことから原紙に留まりやすくなるものと考えられる。また、本形態においては、原紙の組成や物性を前述したように調節しているため、塗料組成物が原紙表面に留まる効果がより大きなものとなる。
本形態において微細化セルロース繊維は、セルロース繊維の水素結合点を増やし、もって紙表面の強度を向上する役割を有する。微細化セルロース繊維は、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができ、化学処理、機械処理等公知の処理手法で製造することができる。原料となるセルロース繊維としては、植物由来の繊維、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、植物繊維であるパルプ繊維(原料パルプ)を使用するのが、経済的コストがかからず好ましい。
微細化セルロース繊維の原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。古紙パルブ以外のパルプは、古紙パルプよりもセルロース繊維の純度が高く、セルロース繊維以外の夾雑物が少ないので好ましい。セルロース繊維の純度が高いパルプから得られた微細化セルロース繊維は、流動性や被膜形成性に優れる。
なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物の状態等であってもよい。近年ではオーガニック成分含有の塗料組成物の需要が増加傾向にあるため、特に、古紙以外の植物由来の広葉樹や針葉樹を原料とする木材パルプが好適である。
木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。特に、リグニン含有量の多い木材パルプが好ましい。
リグニン含有量の多い木材パルプとしては、特に機械パルプを例示することができる。機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
微細化セルロース繊維の解繊に先立って、解繊の前処理として、化学的な手法によって微細化セルロース繊維を処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)、TEMPO触媒による酸化(酸化処理)、リンオキソ酸によるエステル化(化学的処理)等を例示することができる。解繊に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、解繊し易くなり、微細化セルロース繊維が均質性に優れるものとなる。
より詳細には、原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、塗料組成物の均質性向上に資する。ただし、前処理は、微細化セルロース繊維のアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
なお、化学的な変性処理を原料パルプに行って解繊すると、平均繊維径の相対的に小さい微細化セルロース繊維が生成される。塗料組成物は、微細化セルロース繊維を有するが、微細化セルロース繊維は、化学的な変性処理がなされていないものであってもよいし、化学的な変性処理がなされているものであってもよい。
また、微細化セルロース繊維の一部のみが、化学的な変性がなされていないものであってもよい。この場合、微細化セルロース繊維全体は、化学的な変性がなされていないものと化学的な変性がなされているものとを有することになる。化学的な変性がなされていない微細化セルロース繊維と化学的な変性がなされた微細化セルロース繊維が混合された塗料組成物は、平均繊維径の大きいものと平均繊維径が小さいものを有し、擬塑性と微細化セルロース繊維の分散性に優れたものとなる。
塗料組成物に含まれる微細化セルロース繊維の一部が、化学的な変性がなされていないものである場合は、微細化セルロース繊維のうちの、化学的な変性がなされていない微細化セルロース繊維の配合率を50%以上、好ましくは60%以上とすると、静置粘度が高くなりすぎず、擬塑性に優れたものとなりよい。
ここで、上記酵素処理について、詳細に説明する。
酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。これらの酵素を使用すると、セルロース繊維の解繊がより容易になる。なお、セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を惹き起こす。また、ヘミセルラーゼ系酵素は、水共存下でヘミセルロースの分解を惹き起こす。
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ-ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
また、セルラーゼ系酵素としては、EG(エンドグルカナーゼ)及びCBH(セロビオハイドロラーゼ)のいずれかもを使用することもできる。EG及びCBHは、それぞれを単体で使用しても、混合して使用してもよい。また、ヘミセルラーゼ系酵素と混合して使用してもよい。
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
ヘミセルロースは、植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で木材の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。針葉樹の2次壁では、グルコマンナンが主成分であり、広葉樹2次壁では4-O-メチルグルクロノキシランが主成分である。そこで、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)からセルロース微細繊維を得る場合は、マンナーゼを使用するのが好ましい。また、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)からセルロース微細繊維を得る場合は、キシラナーゼを使用するのが好ましい。
セルロース繊維に対する酵素の添加量は、例えば、酵素の種類、原料となる木材の種類(針葉樹か広葉樹か)、機械パルプの種類等によって決まる。ただし、セルロース繊維に対する酵素の添加量は、好ましくは0.1~3質量%と、より好ましくは0.3~2.5質量%、特に好ましくは0.5~2質量%である。酵素の添加量が0.1質量%未満であると、酵素の添加による効果が十分に得られないおそれがある。他方、酵素の添加量が3質量%を超えると、セルロースが糖化され、セルロース微細繊維の収率が低下するおそれがある。また、添加量の増量に見合う効果の向上を認めることができないとの問題もある。
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0~6.9)であるのが好ましい。一方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1~10.0)であるのが好ましい。
酵素処理時の温度は、酵素としてセルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素のいずれを使用する場合においても、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃、特に好ましくは40~60℃である。酵素処理時の温度が30℃以上であれば、酵素活性が低下し難くなり、処理時間の長期化を防止することができる。他方、酵素処理時の温度が70℃以下であれば、酵素の失活を防止することができる。
酵素処理の時間は、例えば、酵素の種類、酵素処理の温度、酵素処理時のpH等によって決まる。ただし、一般的な酵素処理の時間は、0.5~24時間である。
酵素処理した後には、酵素を失活させるのが好ましい。酵素を失活させる方法としては、例えば、アルカリ水溶液(好ましくはpH10以上、より好ましくはpH11以上)を添加する方法、80~100℃の熱水を添加する方法等が存在する。
次に、アルカリ処理の方法について、説明する。
アルカリ処理の方法としては、例えば、アルカリ溶液中に、セルロース繊維を浸漬する方法が存在する。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であっても、有機アルカリ化合物であってもよい。無機アルカリ化合物としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩等を例示することができる。また、アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム等を例示することができる。アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム等を例示することができる。アルカリ金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等を例示することができる。
有機アルカリ化合物としては、例えば、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物及びその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を例示することができる。具体的には、例えば、例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等を例示することができる。
アルカリ溶液の溶媒は、水及び有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)であるのが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であるのがより好ましい。
アルカリ溶液の25℃におけるpHは、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは11~14である。pHが9以上であると、セルロース微細繊維の収率が高くなる。ただし、pHが14を超えると、アルカリ溶液の取り扱い性が低下する。
セルロース繊維を解繊するにあたっては、当該セルロース繊維をスラリー状にしておくのが好ましい。このスラリーの固形分濃度は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは1~4質量%、特に好ましくは2~3質量%である。固形分濃度が上記範囲内であれば、効率的に解繊することができる。
セルロース繊維の解繊は、例えば、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、高速回転式ホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等のリファイナー、一軸混練機、多軸混練機、各種バクテリア等の中から1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。ただし、セルロース繊維の解繊は、水流、特に高圧水流で微細化する装置・方法を使用して行うのが好ましい。この装置・方法によると、得られるセルロース微細繊維の寸法均一性、分散均一性が非常に高いものとなる。これに対し、例えば、回転する砥石間で磨砕するグラインダーを使用すると、セルロース繊維を均一に微細化するのが難しく、場合によっては、一部に解れない繊維塊が残ってしまうおそれがある。
セルロース繊維の解繊に使用するグラインダーとしては、例えば、増幸産業株式会社のマスコロイダー等が存在する。また、高圧水流で微細化する装置としては、例えば、株式会社スギノマシンのスターバースト(登録商標)や、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ\Nanovater(登録商標)等が存在する。また、セルロース繊維の解繊に使用する高速回転式ホモジナイザーとしては、エムテクニック社製のクレアミックス-11S等が存在する。
なお、回転する砥石間で磨砕する方法と、高圧水流で微細化する方法とで、それぞれセルロース繊維を解繊し、得られた各繊維を顕微鏡観察した場合に、高圧水流で微細化する方法で得られた繊維の方が、繊維幅が均一であることが知見されている。
高圧水流による解繊は、セルロース繊維の分散液を増圧機で、例えば50MPa以上、好ましくは75MPa以上、より好ましくは100MPa以上に加圧し(高圧条件)、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が、例えば30MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧する(減圧条件)方式で行うと好適である。この圧力差で生じるへき開現象によって、パルプ繊維が解繊される。高圧条件の圧力が低い場合や、高圧条件から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするために繰り返し解繊(ノズルから噴出)する必要が生じる。
高圧水流によって解繊する装置としては、高圧ホモジナイザーを使用するのが好ましい。高圧ホモジナイザーとは、例えば10MPa以上、好ましくは100MPa以上の圧力でセルロース繊維のスラリーを噴出する能力を有するホモジナイザーをいう。セルロース繊維を高圧ホモジナイザーで処理すると、セルロース繊維同士の衝突、圧力差、マイクロキャビテーションなどが作用し、セルロース繊維の解繊が効果的に生じる。したがって、解繊の処理回数を減らすことができ、セルロース微細繊維の製造効率を高めることができる。
高圧ホモジナイザーとしては、セルロース繊維のスラリーを一直線上で対向衝突させるものを使用するのが好ましい。具体的には、例えば、対向衝突型高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー/MICROFLUIDIZER(登録商標)、湿式ジェットミル)である。この装置においては、加圧されたセルロース繊維のスラリーが合流部で対向衝突するように2本の上流側流路が形成されている。また、セルロース繊維のスラリーは合流部で衝突し、衝突したセルロース繊維のスラリーは下流側流路から流出する。上流側流路に対して下流側流路は垂直に設けられており、上流側流路と下流側流路とでT字型の流路が形成されている。このような対向衝突型の高圧ホモジナイザーを用いると高圧ホモジナイザーから与えられるエネルギーが衝突エネルギーに最大限に変換されるため、より効率的にセルロース繊維を解繊することができる。
原料パルプの解繊は、得られる微細化セルロース繊維の各種物性等が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
微細化セルロース繊維の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、15μm以下、好ましくは15~0.001μm、より好ましくは15~0.003μm、特に好ましくは15~0.005μmである。特に微細化セルロース繊維の平均繊維径が0.005μmを下回ると、粘性が上昇し塗りムラが抑制しやすくなる効果があるものの、同時に保水性も高くなり、乾燥性が悪化する可能性がある。微細化セルロース繊維の平均繊維径が15μmを上回ると、繊維自体は太く、防滑性が備わり好ましい反面、塗料組成物の流動性が抑制されるので、均一な塗布面が形成され難く、塗りムラが発生するおそれがある。
微細化セルロース繊維の平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
微細化セルロース繊維の平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%の微細化セルロース繊維の水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
微細化セルロース繊維の平均繊維長(単繊維の長さ)は、上限が0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.2mm以下であるとよい。微細化セルロース繊維の平均繊維長の下限は、特に限定されない。しかしながら、同平均繊維長の上限を0.5mm超にすると、微細化セルロース繊維のアスペクト比が大きくなり、繊維のネットワーク構造が形成しやすくなる一方で微細化セルロース繊維相互が凝集して凝集物となり、塗料組成物における微細化セルロース繊維の分散性が低下するおそれがある。
微細化セルロース繊維の平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって任意に調整することができる。
微細化セルロース繊維の平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
微細化セルロース繊維(ただし、リンオキソ酸によりエステル化された微細化セルロース繊維を除く。)の保水度は、下限を150%以上とするとよい。また、同保水度の上限を500%以下とするとよい。保水度が500%を超えると、塗膜層の乾燥が遅くなり、製造時の機器設備の汚れにつながり、塗膜のムラや製品の欠陥が発生するおそれがある。微細化セルロース繊維は保水性を有するので、これを備えた塗料組成物は湿潤性を備えたものとなる。
微細化セルロース繊維の保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
微細化セルロース繊維のゼータ電位は、好ましくは-150~20mV、より好ましくは-100~0mV、特に好ましくは-80~-10mVである。ゼータ電位が-150mVを下回ると、塗膜強度が発揮されないおそれがある。他方、ゼータ電位が20mVを上回ると、分散安定性が低下するおそれがある。
微細化セルロース繊維の軸比(繊維長/繊維幅)は、好ましくは10~5000000、より好ましくは15~400000、特に好ましくは20~300000である。軸比が10未満であると微細化セルロース繊維が微粒子状に近くなり、チキソトロピー性が発揮されない可能性がある。他方、軸比が500000を超える微細化セルロース繊維は細長く、防滑性に富む反面、塗料組成物の流動安定性が損なわれ、均一な塗膜層の形成が難しくなる。
微細化セルロース繊維のフィブリル化率は、好ましくは3以上%以上、より好ましくは5%以上、特に好ましくは7%以上である。フィブリル化率が3%を下回ると、微細化が進行しておらず、もはや通常のパルプ繊維と変わらなくなる。
フィブリル化率とは、バルメット社製の繊維分析計「FS5」を使用し測定することができる。
微細化セルロース繊維の結晶化度は、50~100、より好ましくは60~90、特に好ましくは65~85である。結晶化度が50未満であると、塗料組成物が原紙に浸み込み易く、原紙表面に塗膜層が形成されにくく、塗膜層が形成されたとしても乾燥後の強度が弱くなるおそれがある。
結晶化度は、JIS-K0131(1996)の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、微細化セルロース繊維は、非晶質部分と結晶質部分とを有しており、結晶化度は微細化セルロース繊維全体における結晶質部分の割合を意味する。
微細化セルロース繊維の擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、微細化セルロース繊維は、繊維長及び繊維径の均一性が高く、塗料組成物中に含まれる微細化セルロース繊維以外の組成物の分散性が良好になる。
微細化セルロース繊維のピーク値はISO-13320(2009)に準拠して測定する。より詳細には、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用して微細化セルロース繊維の水分散液における体積基準粒度分布を調べる。そして、この分布から微細化セルロース繊維の最頻径を測定する。この最頻径をピーク値とする。
上記単一のピークとなる微細化セルロース繊維の粒径の擬似粒度分布のピーク値は、例えば300μm以下であるのが好ましく、200μm以下であるのがより好ましく、100μm以下であるのが特に好ましい。ピーク値が300μmを超えると、均質な解繊がなされていないおそれがある。
微細化セルロース繊維の粒径におけるピーク値、及び擬似粒度分布の中位径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
解繊して得られた微細化セルロース繊維は、リグニン含有率が、好ましくは10%以上、より好ましくは10~50%、特に好ましくは15~50%である。リグニン含有量が50%を超えると、防滑性は向上するものの、微細繊維中のセルロース成分が減るため、紙への定着性が悪化し、所望の強度が得られない可能性がある。他方、リグニン含有量が10%未満であると、相対的に微細繊維中のセルロース成分が増え、原紙中のパルプとの結合が強まるため、強度が向上しやすくなるものの、他方で結合が強くなりすぎるため通気性を阻害してしまう可能性がある。
ところで、前述したようにカッパー価はパルプ中の樹脂分量、主にリグニン量を示す指標であり、原紙及び塗料組成物のいずれにおいても同様である。そこで、原紙のパルプ繊維のカッパー価を25~52%とし、かつ微細化セルロース繊維のリグリン含有量を15%~50%に調整すると、原紙と塗料組成物(微細化セルロース繊維)との親和性が良好となり、例えば、紙の自然な風合いを出し易くなる等の効果がある。
微細化セルロース繊維のリグニン含有量は、クラーソンリグニン法(TAPPI T-222 om-83)に準拠して行うことで測定した値である。
解繊して得られた微細化セルロース繊維は、塗料組成物を調製するのに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
微細化セルロース繊維の濃度を1質量%(w/w)とした場合における分散液のB型粘度は、10~300000cP、より好ましくは100~100000cPとするとよい。B型粘度が10cP未満であると粘性が低すぎるため、塗膜層の形成が困難であり、300000cPを超えると、粘性が高すぎて塗布が困難となる。
25℃、60rpmの条件での、塗料組成物のB型粘度は、例えば、1000cP以下、より好ましくは700cP以下、さらに好ましくは500cP以下とするとよい。B型粘度が1000cPを超過すると、流動性が悪化して、基紙に均一な塗膜面が形成されにくく、塗布ムラが発生し易い。
本形態においてB型粘度は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する
微細化セルロース繊維のパルプ粘度は、好ましくは1~10cps、より好ましくは2~9cps、特に好ましくは3~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示しており、繊維そのものの強さにも影響し、分散液の状態の粘度そのものに影響する。
微細化セルロース繊維のパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
塗料組成物中における微細化セルロース繊維は、固形分換算で、0.5質量%以上、好ましくは0.5~20.0質量%、より好ましくは0.5~10.0質量%である。同配合率が20.0質量%を超えると、微細化セルロース繊維における塗料組成物への分散性が低下するおそれがある。
本形態の塗料組成物には、以上の微細化セルロース繊維の他、バインダー成分を含ませることができる。バインダー成分とは、微細化セルロース繊維が原紙表面に留まり、原紙表面から剥がれるのを抑制する作用を有するものである。
バインダー樹脂としては、公知の粘性を有する樹脂を適宜用いることができ、例えば、スチレン-ブタジエン系ラテックス、アクリル系エマルジョン、アクリル-スチレン系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、デンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール(PVA)等のラテックス、エマルジョン、水溶性バインダー等の中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
また塗料組成物には必要に応じて撥水剤をも含有させることができる。撥水剤を含めることで、塗膜層が優れた撥水性を発揮する。
塗料組成物は、濃度2.0%のときのチキソトロピーインデックス(Ti値)が1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。この範囲であれば、塗料組成物は伸びが良く、原紙表面への塗布性がよいものとなる。チキソトロピーインデックスが1未満だと、塗料組成物の伸びが十分ではなく、塗布ムラが発生し易くなる。
また、濃度2.0%のときのチキソトロピーインデックス(Ti値)は10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。チキソトロピーインデックスが10以下とすることで、良好なハンドリング性を保つことができる。チキソトロピーインデックスが10を超えると圧力ムラが発生しやすく、ポンプ供給が安定しないなどの問題が発生するおそれがある。
チキソトロピーインデックスは一例として以下の手法で求めることができる。塗料組成物を25℃、6rpmの条件でB型粘度を測定する。また、塗料組成物を25℃、60rpmの条件でB型粘度を測定する。6rpmとしたときのB型粘度を、60rpmとしたときのB型粘度、で除した値をチキソトロピーインデックスとする([数1]参照)。
[数1]
Ti値(25℃)=(6rpmとしたときのB型粘度)/(60rpmとしたときのB型粘度)
ここで、B型粘度は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。
25℃、60rpmの条件での塗料組成物のB型粘度は、好ましくは2000cps以下、より好ましくは10~1500、特に好ましくは50~1500である。B型粘度が2000cpsを上回ると、例えば塗布速度100m/秒以上の高速塗布のもとでは塗布面を均一に形成するのが難しくなる。もっとも、B型粘度が50cpsを下回ると、原紙への浸透性が高くなり過ぎ、塗布量を5g/m2に抑える場合においては、紙基材表面に留まる塗料組成物が少量となり過ぎる可能性がある。また、平滑性も不十分になる可能性がある。
(紙)
微細化セルロースは、乾燥後基準で原紙に対して10.0質量%以下となるように塗布するのが好ましく、0.1~10.0質量%となるように塗布するのがより好ましく、0.2~10.0質量%となるように塗布するのが特に好ましい。塗布量が10.0質量%を超えると、原紙表面に塗膜層が形成されやすいが、膜厚が高すぎることで通気性(透気度)が悪化する。他方、塗布量が0.1質量%未満であると、原紙表面に塗膜層が形成されにくく、適切な防滑性を付与できなくなる可能性がある。
塗膜層は、全量が原紙表面上に存在していてもよいし、一部が原紙の内部方向、すなわち厚み方向に浸透していてもよい。なお、塗膜層の平均厚みとは、原紙表面から塗膜層表面までの厚みをいい、原紙の内部に浸透した部分の厚みは考慮しない。
塗膜層は、原紙の一方の面(表面、フェルト面)に形成されていてもよいし、もう一方の面(裏面、ワイヤー面)に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。
次に、塗料組成物の塗布手法について説明する。
本形態の紙は、以上の塗料組成物が原紙の一方又は両方の表面に塗布されたものである。この塗布は、例えば、抄紙設備に備わるサイズプレスや噴霧ノズル等を用いてオフラインで行っても、原紙を製造する過程において湿紙に塗料組成物を塗布するオンラインで行ってもよい。
オンライン塗布による場合は、例えば、幅方向に原料濃度調整可能な機構を備えたヘッドボックスから紙料(原料)を噴出し、ワイヤーパートにおいてパルプ繊維の分散を図りながら紙層を形成し、シュープレス等を備えるプレスパートで脱水し、プレドライヤーパートで湿紙の乾燥を図る。乾燥後の湿紙には、サイズプレス(例えば、ゲートロールやロッドメタリング等の転写式、2ロールポンド式など。)を使用して本形態の塗料組成物を塗布する。塗布後は、例えば、アフタードライヤーパートで乾燥し、必要によりカレンダー装置でカンレダー処理し、巻取機で巻取る。特にオンライン塗布による場合は、乾燥自体の時間及び乾燥までの時間が限られ、塗料組成物の濃度を下げるのは好ましくないため、本形態の塗料組成物の有意性が際立つ。
ただし、オフライン塗布による場合及びオンライン塗布による場合のいずれの場合においても、原紙が平均繊維幅15μm以上(好適には、15~30μm)のパルプ繊維で形成されており、微細化セルロース繊維の平均繊維幅が原紙を構成するパルプ繊維の平均繊維幅の1分の1以下(好適には、1分の1~30000分の1)であるのが好ましい。この形態によると、微細化セルロース繊維が原紙の目止め剤としての機能を兼ねるため、原紙への塗料組成物の浸透がより抑制され、紙力強度がより向上し、しかも、表面平滑性に与える影響が少なくなる。
塗料組成物の塗工は、例えばドライパートからリールパートまでの間で、スプレーにより、ドライヤ、カレンダーロール等に散布し、これを原紙の少なくとも一方の面に転移させることもできる。これにより、原紙表面に均一に塗料組成物が塗工される。
スプレーにより直接的に、又はロール等を介して間接的に塗布する場合、原紙の搬送方向に対して垂直方向に走査しながら散布する形態を例示できる。スプレーのノズル形状は、ノズルの目詰まり防止の観点から、均等扇型ノズル、広角扇型ノズル、片扇型ノズル、空円錐ノズル、充円錐型ノズル、充角錐型ノズル、直進ノズル等を好適に用いることができる。
紙、つまり塗膜層表面の平滑性は、例えば、ベック平滑度を指標にすることができる。塗膜層の表面におけるベック平滑度は、例えば25秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは35秒以上である。ベック平滑度が25秒を下回ると塗料組成物が原紙の内部に浸透してしまっているため、滑り性が悪化する可能性がある。
塗料組成物の塗布量は、固形分基準で例えば5g/m2以下、好ましくは0.5~4g/m2、より好ましくは1~3g/m2である。塗布量が5g/m2を上回ると、平滑性が向上しすぎることで防滑効果の向上が認められなくなる傾向にある。他方、塗布量0.5g/m2未満であると、原紙表面に留まる塗料組成物の量が不十分になり、目的を達することができなくなる可能性がある。
以下、本発明の実施例を説明する。
(微細化セルロース繊維)
リグニン含有量30.4%のサーモメカニカルパルプを3.0%に調整し、リファイナーで解繊して平均繊維長0.3mm、平均繊維幅15μmの微細化セルロース繊維とした(BTMP-MFC)。また、このBTMP-MFCを高圧ホモジナイザーで解繊して平均繊維幅50nmの微細化セルロース繊維とした(BTMP-CNF)。一方、リグニン含有量1.8%の漂白した広葉樹由来のパルプをリファイナーと高圧ホモジナイザーで解繊して、平均繊維幅20nmの微細化セルロース繊維とした(LBKP-CNF)。
(試験方法)
試験例1においては、平均繊維幅15~30μmのパルプ繊維で構成された大王製紙社製の重袋75.0g/m2に上記微細化セルロース繊維(BTMP-MFC)の水分散液を塗工量(微細化セルロース繊維の量)0.5g/m2になるように片面に塗工、乾燥し、強度、滑り角度、透気度を測定した。試験例2~4においては、塗工量を変化させて試験例1と同様に試験を行った。試験例5においては、微細化セルロース繊維をCNFに替えて試験例1と同様に試験を行った。試験例6においては、塗工量を変えて試験例5と同様に試験を行った。試験例7においては、BTMP-CNF及びLBKP―CNFを固形分換算で50:50になるように調整した2.0%を用いて実施例1と同様に試験を行った。試験例8においては、LBKP由来のCNFを用いた以外は実施例1と同様に試験を行った。結果は、表1に示した。なお、試験例9は試験例1~8で使用した原紙である。また、強度、滑り角度、透気度等の試験方法は、前述したとおりである。
Figure 2023006712000001
(考察)
試験例3と試験例6では、同じ素材のMFCとCNFとの違いが明らかになっている。両者の相違から、より微細化された繊維を使用すると滑り角度は効果的に上がるものの、通気性を悪化させることが分かる。この通気性の悪化は、例えば、塗工量の調節で抑制することができ、例えば、塗工量を0.1~0.5倍にする等の方法がある。
次に、微細化セルロース繊維を使用した場合における塗料組成物のTi値を調べる試験を行った。使用した微細化セルロース繊維、リグニン含有率、及び結果を表2に示した。なお、B型粘度やTi値の測定方法は前述したとおりである。また、試験例10の塗料組成物は前述試験例1~4で使用した塗料組成物に対応し、試験例11の塗料組成物は前述試験例5,6で使用した塗料組成物に対応し、試験例12の塗料組成物は前述試験例7で使用した塗料組成物に対応し、試験例13の塗料組成物は前述試験例8で使用した塗料組成物に対応する。
Figure 2023006712000002
本発明は、クラフト紙等の紙、その塗料組成物として利用可能である。また、クラフト紙は、特に重包装用として好適に用いることができ、例えば、粉体、米・麦、飼料等が充填される重袋に加工して用いることをできる。なお、クラフト紙とは、通常、クラフト法により製造されたパルプを原料とした洋紙のうち、強度を落とさないために漂白を行わない紙のことをいうとされている。また、茶色い色相を有するとされている。しかしながら、本発明においては、強度等の物性が十分であれば足り、漂白を行うか否かや、茶色い色相を有するか否か等は本発明とは関係がないので、これらの条件を満たさないクラフト紙もクラフト紙という。

Claims (9)

  1. 原紙の一方又は両方の表面に塗膜層を有し、
    この塗膜層がリグニン含有率10%以上の微細化セルロース繊維を含み、
    前記原紙の質量に対する前記微細化セルロースの質量が0.1~10.0%である、
    ことを特徴とする紙。
  2. 前記微細化セルロース繊維の平均繊維長が0.5mm下で、かつ平均繊維幅が15μm以下である、
    請求項1に記載の紙。
  3. 前記微細化セルロース繊維の平均繊維幅が、前記原紙を構成するパルプ繊維の平均繊維幅の1分の1以下である、
    請求項1又は請求項2に記載の紙。
  4. 前記原紙には、紙力剤として置換度が5以上45以下のカチオン化澱粉が、前記原紙を構成するパルプ繊維100質量部に対して0.10~0.60質量部含有されている、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の紙。
  5. 前記原紙のステキヒトサイズ度が、1~1000秒である、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の紙。
  6. 前記原紙を構成するパルプ繊維の質量加重平均繊維長が、0.5~3.5mmである、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の紙。
  7. リグニン含有率10%以上の微細化セルロース繊維を含む、
    ことを特徴とする塗料組成物。
  8. Ti値(25℃、6rpmのB型粘度/25℃、60rpmのB型粘度)が1~10である、
    請求項7に記載の塗料組成物。
  9. 前記微細化セルロース繊維の結晶化度が50~100である、
    請求項8に記載の塗料組成物。
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