JP2022514122A - タンパク質を同定及び定量化する方法及びシステム - Google Patents

タンパク質を同定及び定量化する方法及びシステム Download PDF

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Abstract

タンパク質を同定及び/または定量化するための方法及びシステムが、本明細書に提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、一般に、タンパク質を同定及び/または定量化する方法及びシステムに関する。
タンパク質ベースのバイオ医薬製品は、非常に高い純度基準を満たさなければならない。バイオ医薬品に見出されるプロセス関連不純物及び生成物関連不純物が幾つか存在する。これらの不純物は、活性、効力、及び安全性に関して、目的物質の性質に匹敵する性質を有していない。一例は、タンパク質の翻訳後修飾(PTM)であり、これはそれらの治療用途に関連するタンパク質の性質に多大な影響を与える。別のそのような例として、理想的には下流の精製によって除去されなければならない、二重特異性抗体の生成中に存在することがあるホモ二量体混入汚染物質が挙げられる。これらの不純物は、製品と比較して異なる作用様式及び潜在的な毒性または免疫原性を呈することがあり得ると思われる。加えて、それらは、製品よりも安定性が低い場合があり、より高い凝集及び免疫原性のリスクを示す。最近の進歩にもかかわらず、そのような不純物の定量的評価のための純度アッセイ法を開発するという課題は残っている。加えて、二重特異性抗体の分析法開発における鍵となる課題は、その方法が主たる目的の化学種に対して2%以下のレベルで存在する不純物を正確かつ再現性よく検出しなければならないことであり得る。したがって、薬物の開発と製造の様々な段階で、そのような不純物をモニタリング及び特性解析することが重要である。生物学的機能にとって不純物が重要であるにもかかわらず、それらの大規模な研究は適切な方法がないことによって妨げられてきた。
純度アッセイのための分析法は、目的物質及びその不純物を検出及び定量化するのに十分な精度及び分解能を示さなければならない。抗体中のPTM及び二重特異性抗体中のホモ二量体などの不純物の評価は、そのような不純物と目的物質の構造的及び物理化学的性質が類似しているため、困難な場合がある。そのような不純物を直接分析するには、アッセイするのに十分なほど多い量の目的物質を単離することが必要とされるが、これは望ましくなく、選択された場合にしかできない。
したがって、当技術分野ではタンパク質ベースのバイオ医薬品中のタンパク質-不純物及び/または目的物質の生成物を同定及び定量化するための方法及び/またはシステムに対する長年にわたる切実な必要性が存在する。
タンパク質ベースのバイオ医薬製品の開発、製造、及び販売の成長により、製品中の不純物を同定及び定量化するための方法及び/またはシステムに対する需要が高まっている。
本明細書に開示する実施形態は、タンパク質を迅速に特性解析するための方法及びシステムを提供することにより、前述の需要を満たす。
本開示は、少なくとも一部分では、試料中の不純物を定量化するための方法を提供する。
例示的な一実施形態では、該方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させること、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して不純物を含む溶出液を得ること、及び質量分析計を使用して溶出液中の不純物の量を定量化することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を定量化するための方法は、疎水性相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を定量化するための方法は、電荷-電荷相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに約10μg~約100μgの試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を定量化するための方法は、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して不純物を含む溶出液を得ることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を定量化するための方法は、質量分析計と適合性があり得る移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を定量化するための方法は、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができ、該移動相は、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせから選択することができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を定量化するための方法は、600mMまでの総塩濃度を含有する移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を定量化するための方法は、0.2ml/分~0.4ml/分の流量を有する移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、不純物を定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、生成物関連不純物であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、プロセス関連不純物であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、タンパク質の分解生成物であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、タンパク質の消化生成物であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、多重特異性抗体生成物のホモ二量体種であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、タンパク質の翻訳後修飾であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を定量化するための方法は、質量分析計を使用して前記溶出液中の不純物の量を定量化することを含むことができ、該質量分析計は、タンデム質量分析計であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を定量化するための方法は、質量分析計を使用して前記溶出液中の不純物の量を定量化することを含むことができ、該質量分析計は、ネイティブ質量分析計であり得る。
本開示は、少なくとも一部分では、試料中の不純物を検出するための方法を提供する。
例示的な一実施形態では、該方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させること、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して不純物を含む溶出液を得ること、及び質量分析計を使用して溶出液中の不純物を定量化することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を検出するための方法は、疎水性相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を検出するための方法は、電荷-電荷相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を検出するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに約10μg~約100μgの試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を検出するための方法は、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して不純物を含む溶出液を得ることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を検出するための方法は、質量分析計と適合性があり得る移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。
幾つかの特定の例示的な態様では、試料中の不純物を検出するための方法は、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができ、該移動相は、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせから選択することができる。
幾つかの特定の例示的な態様では、試料中の不純物を検出するための方法は、600mMまでの総塩濃度を含有する移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の不純物を検出するための方法は、0.2ml/分~0.4ml/分の流量を有する移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、不純物を検出するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、生成物関連不純物であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を検出するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、プロセス関連不純物であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を検出するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、タンパク質の分解生成物であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を検出するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、タンパク質の消化生成物であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を検出するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、多重特異性抗体生成物のホモ二量体種であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を検出するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該不純物は、タンパク質の翻訳後修飾であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を検出するための方法は、質量分析計を使用して溶出液中の不純物の量を検出することを含むことができ、該質量分析計は、タンデム質量分析計であり得る。
この実施形態の一態様では、不純物を検出するための方法は、質量分析計を使用して前記溶出液中の不純物の量を検出することを含むことができ、該質量分析計は、ネイティブ質量分析計であり得る。
本開示は、少なくとも一部分では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法を提供する。
例示的な一実施形態では、該方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させること、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して標的タンパク質を含む溶出液を得ること、ならびに質量分析計を使用して溶出液中の標的タンパク質を検出及び/または定量化することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、疎水性相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、電荷-電荷相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに約10μg~約100μgの試料を接触させることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して不純物を含む溶出液を得ることを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、質量分析計と適合性があり得る移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。特定の態様では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができ、該移動相は、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせから選択することができる。別の特定の態様では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、600mMまでの総塩濃度を含有する移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、試料中の標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、0.2ml/分~0.4ml/分の流量を有する移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄することを含むことができる。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、抗体であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、二重特異性抗体であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、治療用タンパク質であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、不純物であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、タンパク質のバイオ医薬品製造プロセスのプロセス関連不純物であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、タンパク質のバイオ医薬品製造プロセスの生成物関連不純物であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、タンパク質の分解生成物であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、タンパク質の消化生成物であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させることを含むことができ、該標的タンパク質は、多重特異性抗体生成物のホモ二量体種であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、質量分析計を使用して前記溶出液中の標的タンパク質の量を定量化することを含むことができ、該質量分析計は、タンデム質量分析計であり得る。
この実施形態の一態様では、標的タンパク質を検出及び/または定量化するための方法は、質量分析計を使用して前記溶出液中の標的タンパク質の量を定量化することを含むことができ、該質量分析計は、ネイティブ質量分析計であり得る。
例示的な一実施形態では、本開示は、少なくとも一部分では、混合モードクロマトグラフシステムに、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフカラム及び質量分析計を提供する。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、疎水性相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、電荷-電荷相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、約10μg~約100μgの試料の溶出に使用することができる追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、移動相を受け入れることが可能な混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、標的タンパク質を有する試料をさらに受け入れることが可能な混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、移動相で洗浄可能な混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフカラムに連結された質量分析計を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、タンデム質量分析計を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、ネイティブ質量分析計を含むことができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフカラムを含むことができ、該混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂は、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせから選択される移動相と適合性があり得る。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフカラムを含むことができ、該混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂は、600mMまでの総塩濃度を含有する移動相を使用して洗浄することができる。
この実施形態の一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフカラムを含むことができ、該クロマトグラフカラムは、0.2ml/分~0.4ml/分の流量を有する移動相で洗浄することができる。
サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーを使用してタンパク質を定量化及び/または検出するために使用されるシステムの例を示す図である。 例示的な実施形態を使用してホモ二量体種から二重特異性抗体を精製する試みを表す図である。 タンパク質の沈殿(または疎水性相互作用の促進)に及ぼす陰イオン及び陽イオンの作用を示すホフマイスター系列を示す図である。 例示的な実施形態による混合モードサイズ排除クロマトグラフィー質量分析システムを示す図である。 例示的な実施形態によって30mM~300mMの範囲の移動相濃度で実行されたBEH200 SECカラムでの試料混合物中の8種のmAbの保持時間のグラフを示す図であり、2つの挿入図は、対応する濃度での8種のmAbのMM-SEC-MS分析からのベースピーククロマトグラム(BPC)を表す。 150mMの総塩濃度及び450mMの総塩濃度の移動相を使用した例示的な混合モードサイズクロマトグラフィー質量分析システムを使用した二重特異性抗体試料のクロマトグラフプロファイルを示す図である。 例示的な実施形態によって混合モードサイズ排除クロマトグラフィー質量分析を使用して分離及び分析された二重特異性抗体、ホモ二量体1及びホモ二量体2の抽出イオンクロマトグラム(XIC)及びネイティブ質量スペクトルを示す図である。 例示的な実施形態による抗体検出分光法の、LumosでのRP LC-MS、EMRでのSEC-MS、及びEMRでのMM-SEC-MSの場合の全イオンクロマトグラム(TIC)及びネイティブMSスペクトルの比較を示す図である。 図8-1の説明を参照されたい。 例示的な実施形態によるZenix SEC-300、3μm、300Å、7.8×300mmを使用した抗体のMM-SEC-MS検出の連続ランの抽出イオンクロマトグラム(XIC)及びネイティブ質量スペクトルを示す図である。 例示的な実施形態によって二重特異性抗体生成物中のホモ二量体種の検出を実行したときに得られた抽出イオンクロマトグラム(XIC)を示す図である。 例示的な実施形態によって流量0.4mL/分でZenix SEC-300、3μm、300Å、7.8×300mm、及び流量0.3mL/分でZenixSEC-300、3μm、300Å、4.6×300mmを使用して二重特異性抗体生成物中のホモ二量体種の検出を実行したときに得られた抽出イオンクロマトグラム(XIC)の比較を示す図である。 例示的な実施形態によって異なる塩濃度の移動相を使用して二重特異性抗体、ホモ二量体1、及びホモ二量体2の脱グリコシル化混合物のMM-SEC-MS分析を実行したときに得られた抽出イオンクロマトグラム(XIC)を示す図である。 例示的な実施形態によってMM-SEC-MS分析を実行したときの、二重特異性抗体、ホモ二量体1、及びホモ二量体2の脱グリコシル化混合物についてのタンパク質の保持時間(分)対移動相の総塩濃度のチャートを示す図である。 例示的な実施形態によってMM-SEC-MS分析を実行したときの、総塩濃度の変化に基づく保持時間の傾向を示すチャートを表す図である。 例示的な実施形態によってMM-SEC-MS分析を実行したときの、総塩濃度の変化に基づく保持時間の差の傾向を示すチャートを表す図である。 例示的な実施形態によってWaters BEH SEC Columnで二重特異性抗体、ホモ二量体1、及びホモ二量体2の脱グリコシル化混合物のMM-SEC-MS分析を行ったときに得られた抽出イオンクロマトグラム(XIC)を示す図である。 例示的な実施形態によってWaters BEH SEC ColumnでMM-SEC-MS分析を実行したときの、二重特異性抗体、ホモ二量体1及びホモ二量体2の脱グリコシル化混合物についてのタンパク質の保持時間(分)対移動相の総塩濃度のチャートを示す図である。 例示的な実施形態によってWaters BEH SEC Columnで抗体及びその酸化バリアントのMM-SEC-MS分析を行ったときに得られた抽出イオンクロマトグラム(XIC)を示す図である。 例示的な実施形態によってWaters BEH SEC ColumnでMM-SEC-MS分析を実行したときの、抗体及びその酸化バリアントについてのタンパク質の保持時間(分)対移動相の総塩濃度のチャートを示す図である。 例示的な実施形態による二重特異性抗体及びそのホモ二量体種を含有する混合物の試料調製の方法を示す図である。 例示的な実施形態による300mMの塩濃度を有する移動相を使用した二重特異性抗体及びそのホモ二量体種の混合物のインタクトレベルでのMM-SEC-MS分析を示す図である。 例示的な実施形態による70mMの塩濃度を有する移動相を使用した二重特異性抗体及びそのホモ二量体種の混合物のサブユニットレベルでのMM-SEC-MS分析を示す図である。 例示的な実施形態による二重特異性抗体及びそのホモ二量体種の混合物のインタクトレベルでのMM-SEC-MS分析からのホモ二量体定量化の結果を示す図である。 例示的な実施形態による二重特異性抗体及びそのホモ二量体種の混合物のサブユニットレベルでのMM-SEC-MS分析からのホモ二量体定量化の結果を示す図である。 例示的な実施形態によって実施された、BEHカラム(左)またはZenixカラム(右)のいずれかでのMM-SEC-MSによる二重特異性抗体混合物[4種の異なるbsAb/H2L2ホモ二量体/H2L2ホモ二量体混合物]の分析を示す図であり、図中、各BPCトレースは、示された移動相の塩濃度を使用した個別の1つの分析を表す。 例示的な実施形態によって実施された、分析用にそれぞれ0.01%及び0.1%のスパイクイン標準物質を使用した、bsAb2(左パネル)及びbsAb4(右パネル)中のホモ二量体不純物についてのMM-SEC-MSによる検出限界試験を示す図であり、図中、ネイティブMSスペクトル(a、b、c、d、e、及びf)は、対応するTIC領域で平均化し、2つの最も豊富な荷電状態を示した。 図26-1の説明を参照されたい。 連続希釈された既知の比率(左パネルの灰色の線及び印を付けた値)でbsAb2にスパイクされたホモ二量体を使用して例示的な実施形態によって実施された定量化試験を示し、及びまた生の質量スペクトルで最も豊富な4つの荷電状態のXIC強度に基づいた(右パネルに示す例として、各ホモ二量体の相対存在量0.1%)bsAb2に対するH2L2ホモ二量体(赤)及びH2L2ホモ二量体(青)の測定比率を示す図である。
詳細な説明
バイオ医薬品中の不純物は、目的物質の効力、クリアランス、安全性、及び免疫原性に潜在的に影響を与えるおそれのある変化を引き起こす可能性がある。例えば、メチオニン及びトリプトファン側鎖が酸化すると、Fc受容体及び抗原への抗体結合に影響を与える可能性がある(Bertolotti-Ciarlet et al.Mol.Immunol.(2009)46:1878-1882;Pan et al.Protein Sci.(2009)18:424-433;Wei et al.Anal.Chem.(2007)79:2797-2805;及びWang et al.Mol.Immunol.(2011)48:860-866)。
電気泳動及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ベースの方法などの、従来の分離ベースの抗体純度アッセイでは、これらの不純物を目的物質と区別するために必要な分解能が不足している。PTMをモニタリングするために使用される、質量分析に連結された逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)によるペプチドマッピングには幾つかの限界がある。何故なら、RP-LC-MS用の試料調製プロセスは非常に長く、ある場合には、高温、有機溶媒、及び酸性pHなどのクロマトグラフ条件が酸化アーチファクトを誘導するおそれがあるからである。
加えて、幾つかのサイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィー法も、目的物質から不純物を分離するために使用することができる。分離された不純物及び目的物質は、質量分析計を使用してさらに分析することができる。しかしながら、サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフカラムからの移動相を質量分析計に直接注入することはできず、移動相の交換を含めた追加ステップが必要とされる(図1参照)。
既存の方法の限界を考慮して、本明細書に開示する通りの、新規混合モード-サイズ排除クロマトグラフィー-質量分析システムを使用する不純物を同定及び定量化するための有効かつ効率的な方法を開発した。混合モード-サイズ排除クロマトグラフィー-質量分析システムは、他の典型的なアッセイでは実現できない効率的な混合モード分離及び高感度のオンラインMS検出により、極めて低いレベルで存在する不純物を定量化する感度及び能力を改善する。
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。実践または試験には本明細書に記載するものと同様または同等の任意の方法及び材料を使用することができるが、特定の方法及び材料を以下に記載する。言及する全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
「a」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきであり、「約」及び「およそ」という用語は、当業者であれば理解するように標準偏差を許容すると理解すべきである。また、範囲が示される場合、端点が含まれる。
標的タンパク質
バイオ医薬製品は、高レベルの力価、純度、及び低レベルの構造不均質性を示すことが必要とされる。構造不均質性は、薬物の生物活性及び効力に影響を与えることが多い。したがって、治療用タンパク質及び/または不純物の特性解析及び定量化は、医薬開発に重要である。タンパク質における構造不均質性は、翻訳後修飾だけでなく、製造中及び保存条件に内在する化学修飾からも生じることがある。バイオテクノロジー業界で生成されるタンパク質の場合、標的タンパク質を精製するためと、最終製品の品質を正確に把握するための両方で、補完的な分離技法が必要とされることがある。生成物が複雑であることから、単純な一次元分離戦略の使用は排除される。したがって、治療用タンパク質及び/または不純物を検出及び/または定量化する正確かつ効率的な方法が必要である。
幾つかの例示的な実施形態では、本開示は、試料中のタンパク質及び/または不純物を定量化及び/または検出するための方法を提供する。
本明細書で使用する場合、「タンパク質」という用語は、共有結合したアミド結合を有する任意のアミノ酸ポリマーを含む。タンパク質は、当技術分野で一般に「ポリペプチド」として公知の1つまたは複数のアミノ酸ポリマー鎖を含む。「ポリペプチド」とは、ペプチド結合を介して結合されたアミノ酸残基、その関連する天然に存在する構造バリアント及び天然に存在しない合成類似体から構成されたポリマー、その関連する天然に存在する構造バリアントならびに天然に存在しない合成類似体を指す。「合成ペプチドまたはポリペプチド」とは、天然に存在しないペプチドまたはポリペプチドを指す。合成ペプチドまたはポリペプチドは、例えば、自動化ポリペプチド合成装置を使用して合成することができる。様々な固相ペプチド合成法が当業者に公知である。タンパク質は、単一の機能する生体分子を形成するために1つまたは複数のポリペプチドを含有し得る。タンパク質として、生体治療用タンパク質、研究または療法に使用される組換えタンパク質、捕捉用タンパク質及び他のキメラ受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ならびに二重特異性抗体をいずれかを挙げることができる。別の例示的な態様では、タンパク質として、抗体フラグメント、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを挙げることができる。タンパク質は、組換え細胞ベースの産生系、例えば昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えばピキア属(Pichia sp.))、哺乳類系(例えばCHO細胞、及びCHO-K1細胞のようなCHO派生細胞)を使って生成することができる。生体治療用タンパク質及びその生成について考察する最近の総説については、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,”(Biotechnol.Genet.Eng.Rev.(2012)147-75)を参照されたい。幾つかの実施形態において、タンパク質は、修飾、付加物、及び他の共有結合部分を含む。これらの修飾、付加物、及び部分として、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、グリカン(例えば、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、ノイラミン酸、N-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、及び他の単糖)、PEG、ポリヒスチジン、FLAGタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン質結合タンパク質(CBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)myc-エピトープ、蛍光標識、及び他の染料などが挙げられる。タンパク質は、組成及び溶解度に基づいて分類することができ、よって、それらとして、単純タンパク質、例えば、球状タンパク質及び繊維状タンパク質;複合タンパク質、例えば、核タンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、色素タンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質、及びリポタンパク質;ならびに誘導タンパク質、例えば、一次誘導タンパク質、及び二次誘導タンパク質などを挙げることができる。
幾つかの例示的な実施形態では、タンパク質は、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、またはそれらの組み合わせであり得る。
「抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互に接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略記する)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2、及びC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略記する)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。V及びV領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が間に挿入された、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細分される。各V及びVは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へと、次の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の異なる実施形態では、抗big-ET-1抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖細胞系列配列と同一であってもよいし、天然の修飾または人工的な修飾を受けていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの対比分析に基づいて定義されてもよい。「抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、完全な抗体分子の抗原結合フラグメントも含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、本明細書で使用する場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得ることができる、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、完全な抗体分子から、任意の適切な標準的技法を使って、例えば、タンパク質消化、または抗体の可変ドメイン及び任意選択により定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組換え遺伝子操作技法などを使って誘導されてもよい。そのようなDNAは公知であり、及び/または、例えば、商業的供給元、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーが含まれる)から容易に入手することができるか、または合成することができる。DNAは、配列決定し、化学的にまたは分子生物学的技法を使用することによって操作して、例えば、1つまたは複数の可変及び/または定常ドメインを適切な構成に配置したり、あるいはコドンを導入する、システイン残基を作製する、アミノ酸を修飾する、付加する、もしくは欠失させたりすることができる。
本明細書で使用する場合、「抗体フラグメント」は、例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域などの、インタクトな抗体の一部分を含む。抗体フラグメントの例として、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFvフラグメント、Fvフラグメント、dsFvダイアボディ、dAbフラグメント、Fd’フラグメント、Fdフラグメント、及び単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに抗体フラグメントから形成されるトリアボディ、テトラボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、及び多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。Fvフラグメントは、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域の組み合わせであり、ScFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって接続されている組換え一本鎖ポリペプチド分子である。幾つかの例示的な実施形態では、抗体フラグメントは、親抗体と同じ抗原に結合するのに十分な、そのフラグメントの元となった親抗体のアミノ酸配列を含有する。幾つかの例示的な実施形態では、フラグメントは、親抗体の親和性に匹敵する親和性で抗原に結合し、及び/または抗原への結合に関して親抗体と競合する。抗体フラグメントは、任意の手段によって生成されてもよい。例えば、抗体フラグメントは、インタクトな抗体のフラグメント化によって酵素的にまたは化学的に生成されてもよく、及び/または部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換えによって生成されてもよい。あるいは、または加えて、抗体フラグメントは、全体的にまたは部分的に合成によって生成されてもよい。抗体フラグメントは、任意選択により一本鎖抗体フラグメントを含んでもよい。あるいは、または加えて、抗体フラグメントは、例えばジスルフィド結合によって、一緒に結合された複数の鎖を含んでもよい。抗体フラグメントは、任意選択により多分子複合体を含んでもよい。機能的抗体フラグメントは、典型的には少なくとも約50のアミノ酸、より典型的には少なくとも約200のアミノ酸を含む。
「二重特異性抗体」という語句は、2つ以上のエピトープに選択的に結合することが可能な抗体を含む。二重特異性抗体は一般に2つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、2つの異なる分子(例えば抗原)または同じ分子(例えば同じ抗原)のいずれかの異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合することが可能なら、第1のエピトープに対する第1の重鎖の親和性は一般に、第2のエピトープに対する第1の重鎖の親和性より、少なくとも1桁~2桁または3桁または4桁低く、逆もまた同じである。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じまたは異なる標的(例えば、同じまたは異なるタンパク質)にあり得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作ることができる。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列を、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合することができ、そのような配列を、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞中で発現させることができる。典型的な二重特異性抗体は、それぞれが3つの重鎖CDR、それに続くC1ドメイン、ヒンジ、C2ドメイン、及びC3ドメインを有する2つの重鎖と免疫グロブリン軽鎖とを有し、該軽鎖は、抗原結合特異性を付与しないが各重鎖に会合することができるもの、または各重鎖に会合することができ、かつ重鎖抗原結合領域によって結合されるエピトープの1つもしくは複数に結合することができるもの、または各重鎖に会合することができ、かつ重鎖の一方もしくは両方が一方もしくは両方のエピトープに結合できるようにするものである。BsAbは、Fc領域を有するもの(IgG様)とFc領域がないものの2つの主要なクラスに分割することができ、後者は通常、Fcを含むIgG及びIgG様二重特異性分子よりも小さい。IgG様bsAbは、限定するものではないが、トリオマブ(triomab)、ノブ・イントゥ・ホール(knobs into holes)IgG(kih IgG)、crossMab、orth-Fab IgG、二重可変ドメインIg(DVD-Ig)、ツー・イン・ワン(Two-in-one)または二重作用Fab(DAF)、IgG-一本鎖Fv(IgG-scFv)、またはκλボディなどの様々な形式を有することができる。非IgG様の様々な形式として、タンデムscFv、ダイアボディ形式、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAbs)、二重親和性再標的化(Dual-affinity retargeting)分子(DART)、DART-Fc、ナノボディ、またはドック・アンド・ロック(dock-and-lock)(DNL)法によって生成される抗体が挙げられる。Fanら、ならびにKontermann及びBrinkmannは、二重特異性抗体についての詳細な総説を発表している(Fan et al.“Bispecific antibodies and their applications” J.Hematol.Oncol.(2015)8:130;Kontermann and Brinkmann.“Bispecific antibodies” Drug Discov.Today(2015)20:838-847)。BsAbを生成する方法は、2つの異なるハイブリドーマ細胞系の体細胞融合に基づくクアドローマ技術、化学的架橋剤を含む化学的コンジュゲーション、及び組換えDNA技術を利用する遺伝学的アプローチに限定されない。bsAbの例として、以下の特許出願に開示されるものが挙げられ、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる:2010年6月25日に出願された米国特許第8,586,713号、2012年6月5日に出願された米国特許出願公開第2013/0045492号;2013年9月19日に出願された米国特許第9,657,102号;2015年7月24日に出願された米国特許出願公開第2016/0024147号;2017年9月22日出願された米国特許出願公開第2018/0112001号;2017年9月22日に出願された米国特許出願公開第2018/0104357号;2016年12月21日に出願された米国特許出願公開第2017/0174779号;2016年12月21日に出願された米国特許出願公開第2017/0174781号;2016年7月29日に出願された米国特許第10,179,819号;及び2017年11月15日に出願された米国特許出願公開第2018/0134794号。二重特異性抗体の製造中の幾つかのステップにおいて、低レベルのホモ二量体不純物が存在し得る。そのようなホモ二量体不純物の検出は、ホモ二量体不純物の存在量が低いこと、及び通常の液体クロマトグラフ法を使って実施した場合にはこれらの不純物が主要化学種と共溶出することから、インタクト質量分析を使って実行するときには困難な場合がある(図2に図示する通り)。
治療用二重特異性抗体(bsAb)は、2つの別個の標的に同時に結合することができ、二重機能性または新規な作用機序を提供することによって治療効力の強化を実現する可能性を秘めている(Marie Godar et al.,Therapeutic bispecific antibody formats:a patent applications review(1994-2017),28 Expert Opinion on Therapeutic Patents 251-276(2018))。現在までに、様々な疾患を治療するために60を超える二重特異性分子が開発及び評価されており、それらの多くは、治療用途における公知の利点(安定性、血清半減期など)のためにIgG様アーキテクチャを採用している(Christoph Spiess,Qianting Zhai&Paul J.Carter,Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies,67 Molecular Immunology 95-106(2015);M X Sliwkowski&I Mellman,Antibody therapeutics in cancer.,341 Science 1192-1198(2013);Paul J.Carter,Potent antibody therapeutics by design,6 Nature Reviews Immunology 343-357(2006))。二重特異性抗体は、往々にして、異なる軽鎖及び重鎖を共発現させることによって単一の細胞で産生される。続いて、bsAb構築物を組立てるには、同族の軽鎖及び重鎖の正しい対合、ならびに2つの異なる半分子のヘテロ二量体化が必要とされる。残念なことに、このプロセスは、誤って組立てられた分子構築物、例えば、単一特異性分子(例えば、ホモ二量体種)の形成をもたらすこともある。他の不純物とは異なり、下流での精製によるホモ二量体種の除去は、それらが予期されるbsAb生成物と極めて類似した物理化学的性質を示すことが多いために困難な場合がある。ポリペプチド鎖対合の忠実度を改善するために、したがってbsAbの形成が有利になるように、近年では様々な戦略が開発されてきた(Shixue Chen et al.,Immunoglobulin Gamma-Like Therapeutic Bispecific Antibody Formats for Tumor Therapy,2019 Journal of Immunology Research 1-13(2019))。例えば、bsAbの各抗原結合アームに同一の軽鎖を使用することは、特に成功裡に軽鎖と重鎖の間の誤対合を回避している(A.Margaret Merchant et al.,An efficient route to human bispecific IgG,16 Nature Biotechnology 677-681(1998))。加えて、異なる重鎖のヘテロ二量体化は、ヘテロ二量体の形成が有利になるように特定の変異が抗体のFc部分に遺伝子操作された、ノブ・イントゥ・ホール(John B.b.Ridgway,Leonard G.Presta&Paul Carter,‘Knobs-into-holes’engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization,9“Protein Engineering,Design and Selection”617-621(1996))設計を使用することで大幅に促進することができる。あるいは、Fc部分でのアミノ酸置換を介してプロテインA結合親和性を調節することによって、プロテインA精製ステップの間にbsAbをホモ二量体不純物から効率的に単離することもできる(Adam Zwolak et al.,Rapid Purification of Human Bispecific Antibodies via Selective Modulation of Protein A Binding,7 Scientific Reports 15521(2017))。この戦略は、既に成功裡に実装されて、臨床試験を支援するためのbsAbの大量生産が実現されている(Andrew D.Tustian et al.,Development of purification processes for fully human bispecific antibodies based upon modification of protein A binding avidity,8 mAbs 828-838(2016))。
タンパク質工学及びプロセス開発による新規bsAb形式の進歩により、高純度の治療用bsAbの大規模生産が可能となってきている。しかしながら、bsAb製剤に低存在量のホモ二量体不純物が存在する可能性は依然としてあり得、開発及び放出試験中に日常的にモニタリングする必要がある。生成物関連不純物と見なされるホモ二量体抗体は、多くの性質で目的のbsAbと極めて類似している可能性があり、現在の分析技法では検出及び定量化が独特で困難な作業となる。ホモ二量体種は通常、対応するbsAbと比較して特徴的な分子量を呈するため、LC-MSベースの技法を使用したインタクトなタンパク質レベルでの質量測定が、それらの特性解析の選択法となっている(R.Jeremy Woods et al.,LC-MS characterization and purity assessment of a prototype bispecific antibody,5 mAbs 711-722(2013);Wolfgang Schaefer et al.,Heavy and light chain pairing of bivalent quadroma and knobs-into-holes antibodies analyzed by UHR-ESI-QTOF mass spectrometry,8 mAbs 49-55(2015);Frank D. Macchi et al.,Absolute Quantitation of Intact Recombinant Antibody Product Variants Using Mass Spectrometry,87 Analytical Chemistry 10475-10482(2015);Luis Schachner et al.,Characterization of Chain Pairing Variants of Bispecific IgG Expressed in a Single Host Cell by High-Resolution Native and Denaturing Mass Spectrometry,88 Analytical Chemistry 12122-12127(2016);Yiyuan Yin et al.,Precise quantification of mixtures of bispecific IgG produced in single host cells by liquid chromatography-Orbitrap high-resolution mass spectrometry,8 mAbs 1467-1476(2016);Chunlei Wang et al.,A systematic approach for analysis and characterization of mispairing in bispecific antibodies with asymmetric architecture,10 mAbs 1226-1235(2018);Markus Haberger et al.,Rapid characterization of biotherapeutic proteins by size-exclusion chromatography coupled to native mass spectrometry,8 mAbs 331-339(2015);Francois Debaene et al.,Time Resolved Native Ion-Mobility Mass Spectrometry to Monitor Dynamics of IgG4 Fab Arm Exchange and “Bispecific” Monoclonal Antibody Formation,85 Analytical Chemistry 9785-9792(2013))。例えば、bsAb試料中のホモ二量体不純物を定量化するために、高分解能精密質量(HRAM)質量分析計に連結された逆相クロマトグラフィー(RPLC)を使用することが幾つかの研究室によって報告されている (Woods et al,2013,前出;Schachner et al,2016,前出;Yin et al,2016,前出)。これらの研究のほとんどにおいて、ホモ二量体は、主要なbsAb種からクロマトグラフ分離をすることなく検出及び定量化することができた。実際には、サイズが大きいだけでなく(約150kDa)物理化学的性質の類似性も考えると、RPLC法を使用してホモ二量体抗体とbsAbの十分な分離を実現することは多くの場合困難な作業になり得る。結果として、RPLC-MSベースの方法では、往々にして、低レベルで存在するホモ二量体種を検出する際の感度が不足し(報告されている最も低いLLOQは約1%である(Schachner et al,2016,前出;Yin et al,2016,前出)、それは主に共溶出する圧倒的に存在量が多いbsAb種からのイオン抑制に起因する。さらに、PTM(例えば、C末端Lysでは+128Da、及びグリケーションでは+162)または内転位の形成からのbsAbのバリアント型が分析を妨害する可能性があると考えられるので、クロマトグラフ分離を行わないと、分子量がbsAbに近いホモ二量体種の検出は特に困難になり得る。最後に、ホモ二量体とbsAbのクロマトグラフ分離がRPLC法によって実現される場合、異なる溶媒組成では異なる保持時間で溶出する抗体のイオン化効率の不一致によって、やはりMSベースの定量化が損なわれるおそれがあることから、定量化を行うときにはスパイクイン標準物質を使用して外部検量線を作成することが必要とされる(Risto Kostiainen&Tiina J.Kauppila,Effect of eluent on the ionization process in liquid chromatography-mass spectrometry,1216 Journal of Chromatography A 685-699(2009))。代替的に、ネイティブ質量分析がインタクトなタンパク質の分析における別の価値ある技法となり、モノクローナル抗体(mAb)の不均質性評価のために多くの日常的な分析ワークフローに組み込まれてきた(Haberger et al,2016,前出;Sara Rosati et al.,Qualitative and Semiquantitative Analysis of Composite Mixtures of Antibodies by Native Mass Spectrometry,84 Analytical Chemistry 7227-7232(2012);Anthony Ehkirch et al.,Hyphenation of size exclusion chromatography to native ion mobility mass spectrometry for the analytical characterization of therapeutic antibodies and related products,1086 Journal of Chromatography B 176-183(2018);Guillaume Terral,Alain Beck&Sarah Cianferani,Insights from native mass spectrometry and ion mobility-mass spectrometry for antibody and antibody-based product characterization,1032 Journal of Chromatography B 79-90(2016);Oscar Hernandez-Alba et al.,Native Mass Spectrometry,Ion Mobility,and Collision-Induced Unfolding for Conformational Characterization of IgG4 Monoclonal Antibodies,90 Analytical Chemistry 8865-8872(2018))。ネイティブMSは、より少ない荷電状態から生じた信号がより集中するために,RPLC-MSよりも改善された感度を有することができる。例えば、Rosatiら(前出) によって、2つの共発現したIgG1抗体の二成分混合物を研究するためのネイティブMSの使用が報告された。しかしながら、効率的なクロマトグラフ分離がなければ、低レベルで存在するホモ二量体種の検出と定量化は、上で考察したのと同じ理由で相変わらず困難である。
現在までに、bsAb試料中のホモ二量体種の検出及び定量化をクロマトグラフ分離に依拠する分析法については限られた報告しか存在していない。例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(Wang et al.,2018,前出)またはイオン交換クロマトグラフィー(IEX)(A.F.Labrijn et al.,Efficient generation of stable bispecific IgG1 by controlled Fab-arm exchange,110 Proceedings of the National Academy of Sciences 5145-5150(2013);Michael J Gramer et al.,Production of stable bispecific IgG1 by controlled Fab-arm exchange,5 mAbs 962-973 (2013))は、bsAb及びそのホモ二量体がそれぞれ疎水性または等電点(pI)における十分に異なる値を呈するならば、bsAbをそのホモ二量体から分離することが示されている。加えて、オンラインIEX-ネイティブMS技術の最近の進歩(Yuetian Yan et al.,Ultrasensitive Characterization of Charge Heterogeneity of Therapeutic Monoclonal Antibodies Using Strong Cation Exchange Chromatography Coupled to Native Mass Spectrometry,90 Analytical Chemistry 13013-13020(2018);Florian Fussl et al.,Charge Variant Analysis of Monoclonal Antibodies Using Direct Coupled pH Gradient Cation Exchange Chromatography to High-Resolution Native Mass Spectrometry,90 Analytical Chemistry 4669-4676(2018);Aaron O.Bailey et al.,Charge variant native mass spectrometry benefits mass precision and dynamic range of monoclonal antibody intact mass analysis,10 mAbs 1214-1225(2018))は、bsAb中の低レベルのホモ二量体種の高感度検出に対する有効なアプローチを提供している。しかしながら、分解能が高いため、IEXは通常、各抗体についてそれらの電荷の不均質性に基づいて、おそらく互いに重なり合うと思われる複雑な電荷プロファイルを生じる。さらに、このアプローチを使用するMSベースの定量化は、各分子から分離された電荷バリアント型のすべてを集計して算出する必要があるために、複雑になる可能性がある。加えて、RPLCベースのアプローチと同様に、IEX法は勾配溶離を利用するが、異なる溶媒条件下(例えば、pHや塩濃度)で溶出する抗体のイオン化効率が異なるために、その勾配溶離によっておそらくMSベースの定量化が損なわれると思われる。近年、流体力学的体積とカラムマトリックスとの疎水性相互作用の両方によって分析物を分離する、SECベースの混合モードクロマトグラフィー(MM-SEC)法が、抗体の不均質性の研究に適用されている(Xiaoyu Yang et al.,Analysis and purification of IgG4 bispecific antibodies by a mixed-mode chromatography,484 Analytical Biochemistry 173-179(2015);Cintyu Wong,Camille Strachan-Mills&Sudhir Burman,Facile method of quantification for oxidized tryptophan degradants of monoclonal antibody by mixed mode ultra performance liquid chromatography,1270 Journal of Chromatography A 153-161(2012);Jorge Alexander Pavon et al.,Analysis of monoclonal antibody oxidation by simple mixed mode chromatography,1431 Journal of Chromatography A 154-165(2016))。UVまたは蛍光検出と連結して、MM-SEC法はbsAb試料中のホモ二量体種の相対的定量化に成功裡に適用された(Yang et al,2015,前出)。しかしながら、この方法の有用性は、UVまたは蛍光ベースの定量化のためにベースライン分離を実現することができるようにホモ二量体種とbsAb種の疎水性が十分に異なる場合に限定され得ることは明らかである。さらに、ホモ二量体種の同定が標準物質に対する保持時間アラインメントのみに基づいていたため、それらがbsAb分子のオリゴマー型または短縮型と共溶出するならば、相対存在量を過大評価するリスクが常にあった。
SECカラムを使用する混合モードクロマトグラフィーの概念は、タンパク質分析物とカラムマトリックス間の望まれない二次相互作用に由来する。理想的には、SECは、タンパク質分析物の流体力学的体積のみに基づいて、タンパク質分析物を分離するべきである。実際には、静電、疎水性、及び水素結合相互作用はすべて、カラムマトリックス、緩衝液条件、及びタンパク質の特性に応じて、タンパク質の保持及び分離に様々な度合いで寄与し得ると思われる(Alexandre Goyon et al.,Unraveling the mysteries of modern size exclusion chromatography-the way to achieve confident characterization of therapeutic proteins,1092 Journal of Chromatography B 368-378(2018);Tsutomu Arakawa et al.,The critical role of mobile phase composition in size exclusion chromatography of protein pharmaceuticals,99 Journal of Pharmaceutical Sciences 1674-1692(2010))。クロマトグラフ条件を適切に最適化することによってSEC分離中にこれらの二次相互作用を利用することで、流体力学的体積は類似しているが表面特性(例えば、電荷及び疎水性)が異なる抗体の分離を改善する機会が与えられる。MS適合性移動相を使用することによって、混合モードSECのネイティブMS検出とのオンライン連結(MM-SEC-MS)は、UVベースの方法に優る多くの利点を有することができ、それには、正確な質量測定によるホモ二量体種の明瞭な同定、共溶出種からの最小限の干渉、及びクロマトグラフ分解能についてのあまり厳しくない要件が含まれる(Terral et al.,2016,前出;Goyon et al.,2017,前出)。
本明細書で使用する場合、「多重特異性抗体」または「Mab」は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する抗体を指す。そのような分子は通常、2つの抗原に結合するだけだが(すなわち二重特異性抗体、BsAb)、三重特異性抗体及びKIH三重特異性体など、追加的特異性を持つ抗体も、本明細書に開示するシステム及び方法によって対処することができる。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、ハイブリドーマ技術によって生成される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、当技術分野で利用できるまたは公知の任意の手段によって、任意の真核クローン、原核クローンまたはファージクローンを含めた単一のクローンから誘導することができる。本開示で有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術またはそれらの組み合わせの使用を含めた、当技術分野において公知の多種多様な技法を使用して調製することができる。
バイオ医薬品の生成の多くの段階で、不純物が形成される可能性がある。バイオテクノロジーに由来する不純物は、特性解析及び定量化を行うことが極めて難しい場合がある。何故なら、それらは極めて低いレベルで存在することが多く、非常に複雑な化学種または化学種の混合物になる可能性があるからである。不純物のピークの信用できる標準品を得ることが極めて困難な場合もある。しかしながら、微量の不純物タンパク質の完全な特性解析を行うことは、時間がかかり、非常に長く、そして極めて費用のかかることの多いプロセスになる。多くの場合、不純物として、バリアント、アイソフォーム、分解生成物、生成物関連不純物、プロセス関連不純物、軽微な翻訳後修飾、凝集物、またはインタクトな組換えタンパク質の切り出されたフラグメントを挙げることができる。考えられる不純物はほぼ無限にあり、そのほとんどは公知であり得ると思われるが、すべてが公知であるわけではない。
本明細書で使用する場合、「標的タンパク質」という用語は、目的物質もしくは不純物、またはその両方を含むことができる。
本明細書で使用する場合、「目的物質」という用語は、目的の構造、機能、または効力プロファイルを有するタンパク質を指す。
本明細書で使用する場合、「不純物」という用語は、バイオ医薬製品に存在する任意の望ましくないタンパク質を含むことができる。不純物は、プロセス及び生成物に関連する不純物を含むことができる。不純物はさらに、公知の構造のもの、部分的に特性解析されたもの、または同定されていないものであり得る。プロセス関連不純物は製造プロセスに由来し得るものであり、細胞基質由来、細胞培養物由来及び下流由来の3つの主要カテゴリーを含むことができる。細胞基質由来の不純物として、宿主生物由来のタンパク質及び核酸(宿主細胞ゲノムDNA、ベクターDNA、または総DNA)が挙げられるが、これらに限定されない。細胞培養物由来の不純物として、インデューサー、抗生物質、血清、及び他の培地成分が挙げられるが、これらに限定されない。下流由来の不純物として、酵素、化学的及び生化学的処理試薬(例えば、臭化シアン、グアニジン、酸化及び還元剤)、無機塩(例えば、重金属、ヒ素、非金属イオン)、溶媒、担体、リガンド(例えば、モノクローナル抗体)、ならびに他の溶出物が挙げられるが、これらに限定されない。生成物関連不純物(例えば、前駆体、ある種の分解生成物)は、活性、効力、及び安全性に関して目的物質のそれに匹敵する性質を有していない、製造及び/または保存中に生じる分子バリアントであり得る。このようなバリアントは、修飾(複数可)のタイプを同定するための単離及び特性解析にかなりの労力を必要とすることがある。生成物関連不純物として、短縮型、修飾型、及び凝集物を挙げることができる。短縮型は、加水分解酵素またはペプチド結合の開裂を触媒する化学物質によって形成される。修飾型として、脱アミド化、異性化、ミスマッチS-S結合化、酸化、または改変された複合化型(例えば、グリコシル化、リン酸化)が挙げられるが、これらに限定されない。修飾型として、任意の翻訳後修飾型を挙げることもできる。凝集物として、目的物質の二量体及び高次多量体が挙げられる。(Q6B Specifications:Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products,ICH August 1999,U.S.Dept.of Health and Humans Services)。
本明細書で使用する場合、「翻訳後修飾」または「PTM」という一般用語は、ポリペプチドが、そのリボソーム合成中(翻訳時修飾)またはリボソーム合成後(翻訳後修飾)のいずれかに受ける共有結合修飾を指す。PTMは一般に、特異的な酵素または酵素経路によって導入される。多くは、タンパク質骨格内の特定の特徴的なタンパク質配列(特徴的配列)の部位で行われる。数百のPTMが記録されており、これらの修飾は、タンパク質の構造または機能のある側面に必ず影響を与える(Walsh,G.“Proteins”(2014)second edition,published by Wiley and Sons,Ltd.,ISBN:9780470669853)。様々な翻訳後修飾として、開裂、N末端伸長、タンパク質分解、N末端のアシル化、ビオチン化(ビオチンでのリジン残基のアシル化)、C末端のアミド化、グリコシル化、ヨウ素化、補欠分子族の共有結合、アセチル化(アセチル基の付加、通常はタンパク質のN末端で行われる)、アルキル化(アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル)の付加、通常はリジン又はアルギニン残基で行われる)、メチル化、アデニル化、ADP-リボシル化、ポリペプチド鎖内または鎖間での共有結合架橋、スルホン化、プレニル化、ビタミンC依存性修飾(プロリン及びリジンのヒドロキシル化ならびにカルボキシ末端のアミド化)、ビタミンK依存性修飾(ビタミンKがグルタミン酸残基のカルボキシル化における補助因子となってγカルボキシグルタミン酸(glu残基)の形成をもたらす)、グルタミル化(グルタミン酸残基の共有結合)、グリシル化(グリシン残基の共有結合)、グリコシル化(糖タンパク質をもたらす、アスパラギン、ヒドロキシリジン、セリン、またはトレオニンのいずれかへのグリコシル基の付加)、イソプレニル化(ファルネソール及びゲラニルゲラニオールなどのイソプレノイド基の付加)、リポイル化(リポ酸官能基の結合)、ホスホパンテテイニル化(補酵素Aからの4’-ホスホパンテテイニル部分の付加、脂肪酸、ポリケチド、非リボソームペプチド、及びロイシン生合成におけるようなもの)、リン酸化(リン酸基の付加、通常はセリン、チロシン、トレオニン、またはヒスチジンへの付加)、及び硫酸化(硫酸基の付加、通常はチロシン残基への付加)が挙げられるが、これらに限定されない。アミノ酸の化学的性質を変化させる翻訳後修飾として、シトルリン化(脱イミノ化によるアルギニンからシトルリンへの転化)、及び脱アミド化(グルタミンからグルタミン酸への転化又はアスパラギンからアスパラギン酸への転化)が挙げられるが、これらに限定されない。構造変化を含む翻訳後修飾として、ジスルフィド架橋の形成(2つのシステインアミノ酸の共有結合)、及びタンパク質開裂(ペプチド結合でのタンパク質の開裂)が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の翻訳後修飾は、ISG化(ISG15タンパク質(インターフェロン刺激遺伝子)への共有結合)、SUMO化(SUMOタンパク質(低分子ユビキチン様修飾因子)への共有結合)、及びユビキチン化(タンパク質ユビキチンへの共有結合)など、他のタンパク質またはペプチドの付加を含む。UniProtによって管理されるPTMのより詳細な統制語彙についてはhttp://www.uniprot.org/docs/ptmlistを参照されたい。
混合モードサイズ排除クロマトグラフィー
本明細書で使用する場合、「クロマトグラフィー」という用語は、液体または気体によって担持される化学物質混合物を、化学成分が固定相液体または固相の周辺または上を流れたときのその分配の差の結果として成分に分離することができるプロセスを指す。
本明細書で使用する場合、「混合モードクロマトグラフィー(MMC)」または「マルチモーダルクロマトグラフィー」という用語は、溶質が2つ以上の相互作用モードまたは機序を通して固定相と相互作用するクロマトグラフ法を含む。MMCは、従来の逆相(RP)、イオン交換(IEX)、及び順相クロマトグラフィー(NP)の代替または補完ツールとして使用することができる。疎水性相互作用、親水性相互作用、及びイオン性相互作用がそれぞれ優勢な相互作用モードであるRP、NP、及びIEXクロマトグラフィーとは異なり、混合モードクロマトグラフィーは、これらの相互作用モードの2つ以上の組み合わせを用いることができる。混合モードクロマトグラフィー媒体は、単一モードクロマトグラフィーでは再現することができない独特な選択性を提供することができる。混合モードクロマトグラフィーは、親和性に基づく方法と比較して費用削減の可能性及び操作の柔軟性も提供することができる。
「サイズ排除クロマトグラフィー」または「SEC」または「ゲルろ過」という語句は、溶液中の分子のサイズに従って分子を分別することができる液体カラムクロマトグラフ技法を含む。
本明細書で使用する場合、「SECクロマトグラフィー樹脂」または「SECクロマトグラフィー媒体」という用語は、本明細書で相互に交換可能に使用され、目的物質から不純物(例えば、二重特異性抗体生成物の場合のホモ二量体混入汚染物質)を分離する、SECに使用される任意の種類の固相を含むことができる。使用しようとする樹脂の体積、カラムの長さ及び直径、ならびに動的容量及び流量は、幾つかのパラメータ、例えば、処理しようとする流体の体積、本発明の方法に供しようとする流体中のタンパク質の濃度などに依存し得る。各ステップでのこれらのパラメータの決定は、十分に当業者の平均的な技能の範囲内である。
本明細書で使用する場合、「混合モードサイズ排除クロマトグラフィー」または「MM-SEC」という用語は、それらのサイズに基づく分離以外の追加の相互作用を通してタンパク質を分離する任意のクロマトグラフ法を含むことができる。追加または二次相互作用は、以下の機序:陰イオン交換、陽イオン交換、疎水性相互作用、親水性相互作用、電荷-電荷相互作用、水素結合、パイ-パイ結合、及び金属親和性のうちの1つまたは複数を活用することができる。混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂は、MM-SEC分離に使用される任意の種類の固相を指すことができる。非限定的な例は、Sepax Zenix SEC-300、Waters BEH 300、またはAgilent Bio SEC-3である。
本明細書で使用する場合、「疎水性官能性」という用語は、二次相互作用としてのタンパク質とSECクロマトグラフ樹脂との疎水性相互作用を指す。疎水性官能性はピーク形状にも相当な影響を与える可能性があり、それはプロセスの分解能に顕著な作用を及ぼす可能性がある。疎水性相互作用は、移動相のイオン強度が高いときに最も強い。疎水性官能性を樹脂に含むように移動相を選択する場合、様々なイオンを、それらが疎水性相互作用(塩析作用)を促進するのか、または水の構造を撹乱して(カオトロピック作用)疎水性相互作用を弱化させるのかに応じて、いわゆる疎溶媒性系列(soluphobic series)に配置することができる(図3に示す通り)。陽イオンは、塩析作用の増大という観点から、Ba++;Ca++;Mg++;Li;Cs;Na;K;Rb;NH4とランク付けされ、一方陰イオンは、カオトロピック作用の増大という観点から、PO;SO ;CHCO ;Cl;Br;NO ;ClO ;I;SCNと順位付けすることができる。一般に、Na、K、またはNH硫酸塩は、HICにおけるリガンド-タンパク質相互作用を効率的に促進する。以下の関係によって示されるように相互作用の強度に影響を与える塩を配合することができる:(NHSO>NaSO>NaCl>NHCl>NaBr>NaSCN。
質量分析
本明細書で使用する場合、「質量分析計」という用語は、特定の分子種を検出し、それらの正確な質量を測定することが可能なデバイスを含む。この用語は、ポリペプチドまたはペプチドを入れて溶出させ、検出及び/または特性解析することができる任意の分子検出器を含むことが意味される。質量分析計は、3つの主要部分、すなわちイオン源、質量分析器、及び検出器を含むことができる。イオン源の役割は、気相イオンを作り出すことである。分析物である原子、分子、またはクラスターを気相中に移し、イオン化することができ、(エレクトロスプレーイオン化の場合には)同時に行うこともできる。イオン源の選択は、用途に大きく依存する。
本明細書で使用する場合、「質量分析器」という用語は、化学種、すなわち、原子、分子、またはクラスターをそれらの質量に従って分離することができるデバイスを含む。高速タンパク質シーケンシングに用いることができると思われる質量分析器の非限定的な例は、飛行時間型(TOF)、磁場/電場型、四重極質量フィルター型(Q)、四重極イオントラップ型(QIT)、オービトラップ型、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FTICR)、及びまた加速器質量分析(AMS)の技法である。
本明細書で使用する場合、「タンデム質量分析」という用語は、試料分子に関する構造情報が多段の質量選択及び質量分離を使用して得られる技法を含む。前提条件は、試料分子を気相に移し、インタクトな状態でイオン化することができること、及び最初の質量選択ステップ後にそれらを何らかの予測可能かつ制御可能な様式で解離するように誘導できることである。多段MS/MS、またはMSは、最初にプリカーサーイオンを選択及び単離し(MS)、それをフラグメント化し、一次フラグメントイオンを単離し(MS)、それをフラグメント化し、二次フラグメントを単離すること(MS)などによって、意味のある情報を得ることができるかまたはフラグメントイオンシグナルが検出可能である限り実行することができる。タンデムMSは、多種多様な分析器の組み合わせで成功裡に実行されている。ある種の用途のためにどんな分析器を組み合わせるのかは、多くの様々な要因、例えば、感度、選択性、及び速度だけでなく、サイズ、費用、及び有用性によっても決定される。タンデムMS法の2つの主要なカテゴリーは、空間的タンデム及び時間的タンデムであるが、時間的タンデム分析器が空間的に連結されるかまたは空間的タンデム分析器と連結されたハイブリッドも存在する。
幾つかの例示的な実施形態では、質量分析は、ネイティブ条件下で実行することができる。
本明細書で使用する場合、「ネイティブ条件」または「ネイティブMS」または「ネイティブESI-MS」という用語は、分析物中の非共有結合相互作用を保存する条件下で実行する質量分析を含むことができる。ネイティブMSに関する詳細な総説については、この総説:Elisabetta Boeri Erba&Carlo Petosa,The emerging role of native mass spectrometry in characterizing the structure and dynamics of macromolecular complexes,24 Protein Science 1176-1192(2015)を参照されたい。ネイティブESIと通常のESIの相違の幾つかを表1に示す(Hao Zhang et al.,Native mass spectrometry of photosynthetic pigment-protein complexes,587 FEBS Letters 1012-1020(2013))。
Figure 2022514122000001
例示的な実施形態
本明細書に開示する実施形態は、試料中のタンパク質の迅速な特性解析のための組成物、方法、及びシステムを提供する。
本明細書で使用する場合、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」という用語は、非限定的であることを意味し、それぞれ「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」を意味すると理解される。
本開示は、試料中の不純物を検出または定量化するための方法であって、混合モードクロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させること;移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して不純物を含む溶出液を得ること;及び質量分析計を使用して溶出液中の不純物を検出することを含む方法を提供する。
本開示は、試料中の標的タンパク質を検出または定量化するための方法であって、混合モードクロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに試料を接触させること、移動相を使用して混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して標的タンパク質を含む溶出液を得ること;及び質量分析計を使用して溶出液中の標的タンパク質を検出または定量化することを含む方法を提供する。
幾つかの特定の例示的な態様では、クロマトグラフシステムは、追加の相互作用を有するサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
幾つかの特定の例示的な態様では、クロマトグラフシステムは、疎水性相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
幾つかの特定の例示的な態様では、クロマトグラフシステムは、電荷-電荷相互作用官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を含むことができる。
幾つかの例示的な実施形態では、試料中の不純物を検出または定量化するための方法は、少なくとも1種の望ましくないタンパク質を含み得る不純物を含むことができる。不純物(複数可)は、公知の構造のもの、または部分的に特性解析されたもの、または同定されていないものであり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、不純物は、生成物関連不純物であり得る。生成物関連不純物は、分子バリアント、前駆体、分解生成物、フラグメント化タンパク質、消化された生成物、凝集物、翻訳後修飾型、またはそれらの組み合わせであり得る。
幾つかの特定の例示的な態様では、不純物は、プロセス関連不純物であり得る。プロセス関連不純物は、製造プロセスに由来する不純物、すなわち、核酸及び宿主細胞タンパク質、抗生物質、血清、他の培地成分、酵素、化学的及び生化学的処理試薬、無機塩、溶媒、担体、リガンド、ならびに製造プロセスに使用される他の溶出物を含み得る。
幾つかの例示的な実施形態で、不純物は、約4.5~約9.0の範囲内のpIを有するタンパク質であり得る。一態様では、不純物は、約4.5、約5.0、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、または約9.0のpIを有するタンパク質であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、不純物は、ホモ二量体種であり得る。一態様では、不純物は、二重特異性抗体の生成中に形成されることがあるホモ二量体種であり得る。別の態様では、試料中の不純物の数は少なくとも2つであり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、クロマトグラフシステムに負荷する試料の量は、約10μg~約100μgの範囲であり得る。例示的な一実施形態では、クロマトグラフシステムに負荷する試料の量は、約10μg、約12.5μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、または約100μgであり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、不純物を溶出するのに使用される移動相は、質量分析計と適合性があり得る移動相であり得る。
幾つかの特定の例示的な態様では、移動相は、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせであり得る。一態様では、移動相の総濃度は、約600mMまでの範囲であり得る。特定の態様では、移動相の総濃度は、約5mM、約6mM、7mM、約8mM、9mM、約10mM、12.5mM、約15mM、17.5mM、約20mM、25mM、約30mM、35mM、約40mM、45mM、約50mM、55mM、約60mM、65mM、約70mM、75mM、約80mM、75mM、約95mM、100mM、約1100mM、120mM、約130mM、140mM、約150mM、160mM、約170mM、180mM、約190mM、200mM、約225mM、250mM、約275mM、300mM、約325mM、350mM、約375mM、400mM、約425mM、450mM、約475mM、500mM、約525mM、550mM、約575mM、または約600mMであり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、移動相は、約0.1ml/分~約0.4ml/分の流量を有することができる。例示的な一実施形態では、移動相の流量は、約0.1ml/分、約0.15ml/分、約0.20ml/分、約0.25ml/分、約0.30ml/分、約0.35ml/分、または約0.4ml/分であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、不純物を検出または定量化するための方法は、質量分析計を使用して溶出液中の不純物を検出または定量化することを含むことができる。一態様では、質量分析計は、タンデム質量分析計であり得る。別の態様では、質量分析計は、ナノスプレーを含むことができる。
幾つかの例示的な実施形態では、溶出液は、不純物に加えて標的タンパク質を含むことができる。一態様では、標的タンパク質は、抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、または多重特異性抗体を含み得る。特定の態様では、標的タンパク質は、モノクローナル抗体であり得る。特定の態様では、標的タンパク質は、治療用抗体であり得る。特定の態様では、標的タンパク質は、免疫グロブリンタンパク質であり得る。別の特定の態様では、免疫グロブリンタンパク質は、IgG1であり得る。さらに別の特定の態様では、免疫グロブリンタンパク質は、IgG4であり得る。一態様では、標的タンパク質は、二重特異性抗体であり得る。特定の態様では、二重特異性抗体は、抗CD20/CD3モノクローナル抗体であり得る。一態様では、標的タンパク質は、マウス線維芽細胞株MG87を使用して作製された抗体であり得る。一態様では、標的タンパク質は、抗体の消化時に形成される抗体フラグメントであり得る。
一態様では、標的タンパク質は、翻訳後修飾タンパク質であり得る。特定の態様では、翻訳後修飾タンパク質は、開裂、N末端伸長、タンパク質分解、N末端のアシル化、ビオチン化、C末端のアミド化、酸化、グリコシル化、ヨウ素化、補欠分子族の共有結合、アセチル化、アルキル化、メチル化、アデニル化、ADP-リボシル化、ポリペプチド鎖内または鎖間での共有結合架橋、スルホン化、プレニル化、ビタミンC依存性修飾、ビタミンK依存性修飾、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、脱グリコシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイニル化、リン酸化、硫酸化、シトルリン化、脱アミド化、ジスルフィド架橋の形成、タンパク質開裂、ISG化、SUMO化、またはユビキチン化(タンパク質ユビキチンへの共有結合)によって形成され得る。
別の態様では、標的タンパク質は、タンパク質の分解生成物であり得る。
さらに別の態様では、標的タンパク質は、バイオ医薬製品に見出される不純物であり得る。特定の態様では、標的タンパク質は、バイオ医薬製品の製造中に見出される不純物であり得る。
一態様では、標的タンパク質は、約4.5~約9.0の範囲内のpIを有するタンパク質であり得る。
一態様では、標的タンパク質は、生成物関連不純物であり得る。生成物関連不純物は、分子バリアント、前駆体、分解生成物、フラグメント化タンパク質、消化された生成物、凝集物、翻訳後修飾型、またはそれらの組み合わせであり得る。
一態様では、標的タンパク質は、プロセス関連不純物であり得る。プロセス関連不純物は、製造プロセスに由来する不純物、すなわち、核酸及び宿主細胞タンパク質、抗生物質、血清、他の培地成分、酵素、化学的及び生化学的処理試薬、無機塩、溶媒、担体、リガンド、ならびに製造プロセスに使用される他の溶出物を含み得る。
一態様では、試料中の不純物の数は少なくとも2つであり得る。
一態様では、翻訳後修飾タンパク質は、タンパク質の酸化時に形成され得る。
別の態様では、標的タンパク質は、分解生成物を含み得る。
別の態様では、分解生成物は、治療用タンパク質の翻訳後修飾を含み得る。
幾つかの例示的な実施形態では、移動相を使用して混合モードクロマトグラフィー樹脂を洗浄することは、約30分未満が必要とされる。一態様では、移動相を使用して混合モードクロマトグラフィー樹脂を洗浄するのに必要とされる時間は、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約26分、約27分、約28分、約29分、または約30分であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、クロマトグラフシステムは、クリーニングせずに少なくとも約3回の試料ランに使用することができる。一態様では、クロマトグラフシステムは、クリーニングせずに少なくとも約3回の試料ラン、少なくとも約4回の試料ラン、少なくとも約5回の試料ラン、少なくとも約6回の試料ラン、少なくとも約7回の試料ラン、または少なくとも約8回の試料ランに使用することができる。
該方法が前述のタンパク質、不純物、カラムのいずれかに限定されないこと、及び検出または定量化するための方法が任意の適切な手段で行われることが理解される。
幾つかの例示的な実施形態では、本開示は、移動相を使用して洗浄して標的タンパク質を含む溶出液を得ることが可能なクロマトグラフカラム110と、該クロマトグラフカラムに連結された質量分析計120とを含む混合モードクロマトグラフシステムを提供する(図4に示す通り)。一態様では、クロマトグラフカラム110は、試料ローディングデバイス100を使用して、試料と接触することが可能である。
幾つかの例示的な実施形態では、クロマトグラフカラム110に負荷することができる試料の量は、約10μg~約100μgの範囲であり得る。一態様では、クロマトグラフカラム110に負荷することができる試料の量は、約10μg、約12.5μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、または約100μgであり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、クロマトグラフカラム110は、移動相で洗浄することが可能であり得る。一態様では、移動相は、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせであり得る。一態様では、クロマトグラフカラム110で使用することができる移動相の総濃度は、約600mMまでの範囲であり得る。特定の態様では、クロマトグラフカラム110で使用することができる移動相の総濃度は、約5mM、約6mM、7mM、約8mM、9mM、約10mM、12.5mM、約15mM、17.5mM、約20mM、25mM、約30mM、35mM、約40mM、45mM、約50mM、55mM、約60mM、65mM、約70mM、75mM、約80mM、75mM、約95mM、100mM、約1100mM、120mM、約130mM、140mM、約150mM、160mM、約170mM、180mM、約190mM、200mM、約225mM、250mM、約275mM、300mM、約325mM、350mM、約375mM、400mM、約425mM、450mM、約475mM、500mM、約525mM、550mM、約575mM、または約600mMであり得る。別の態様では、クロマトグラフカラム110で使用することができる移動相は、0.1ml/分~0.4ml/分の流量を有することができる。特定の態様では、クロマトグラフカラム110で使用することができる移動相の流量は、約0.1ml/分、約0.15ml/分、約0.20ml/分、約0.25ml/分、約0.30ml/分、約0.35ml/分、または約0.4ml/分であり得る。別の態様では、クロマトグラフカラム110で使用することができる移動相は、不純物を溶出するために使用することができる。
幾つかの例示的な実施形態では、クロマトグラフカラム110は、質量分析計120と連結することが可能であり得る。一態様では、質量分析計120は、ナノスプレーを含むことができる。
幾つかの例示的な実施形態では、質量分析計120は、タンデム質量分析計であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、質量分析計120は、ネイティブ質量分析計であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、混合モードクロマトグラフシステムは、標的タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る(図4参照)。一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、1つの標的タンパク質の検出140及び/または定量化130に使用することができる。
幾つかの例示的な実施形態では、混合モードクロマトグラフシステムは、モノクローナル抗体の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、混合モードクロマトグラフシステムは、治療用抗体の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、混合モードクロマトグラフシステムは、免疫グロブリンタンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、IgG1タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。別の態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、IgG4タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。別の態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、二重特異性抗体の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。さらに別の態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、抗CD20/CD3モノクローナル抗体の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、混合モードクロマトグラフシステムは、抗体の消化時に形成された抗体フラグメントの検出140及び/または定量化130が可能であり得る。一態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、翻訳後修飾タンパク質であり得る標的タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。別の態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、タンパク質の分解生成物であり得る標的タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。さらに別の態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、バイオ医薬製品に見出される不純物であり得る標的タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。別の態様では、混合モードクロマトグラフシステムは、バイオ医薬製品の製造中に見出される不純物であり得る標的タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、混合モードクロマトグラフシステムは、約4.5~約9.0の範囲内のpIを有するタンパク質であり得る標的タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、混合モードクロマトグラフシステムは、生成物関連不純物であり得る標的タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。生成物関連不純物は、分子バリアント、前駆体、分解生成物、フラグメント化タンパク質、消化された生成物、凝集物、翻訳後修飾型、またはそれらの組み合わせであり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、混合モードクロマトグラフシステムは、プロセス関連不純物であり得る標的タンパク質の検出140及び/または定量化130が可能であり得る。プロセス関連不純物は、製造プロセスに由来する不純物、すなわち、核酸及び宿主細胞タンパク質、抗生物質、血清、他の培地成分、酵素、化学的及び生化学的処理試薬、無機塩、溶媒、担体、リガンド、ならびに製造プロセスに使用される他の溶出物を含み得る。一態様では、試料中の不純物の数は少なくとも2つであり得る。
幾つかの例示的な実施形態では、クロマトグラフカラム110は、クリーニングせずに少なくとも約3回の試料ランに使用することが可能である。一態様では、クロマトグラフカラム110は、クリーニングせずに少なくとも約3回の試料ラン、少なくとも約4回の試料ラン、少なくとも約5回の試料ラン、少なくとも約6回の試料ラン、少なくとも約7回の試料ラン、または少なくとも約8回の試料ランに使用することができる。
該システムが、前述のタンパク質、不純物、移動相、またはクロマトグラフカラムのいずれにも限定されないことが理解される。
本明細書に提供する方法ステップの番号及び/または文字での連続するラベル付けは、示された特定の順序に方法またはその任意の実施形態を限定することを意味するものではない。
特許、特許出願、特許出願公開、受入番号、技術論文、及び学術論文を含めた様々な刊行物を、本明細書にわたって引用する。引用したこれらの参照文献の各々は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は、本開示をさらに詳しく説明するために提供される以下の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。それらは例示を意図するものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
材料。脱イオン水は、MilliPak Express 20フィルターを装着したMilli-Q一体型浄水システム(MilliporeSigma,Burlington,MA)によって得た。酢酸アンモニウム(LC/MSグレード)、酢酸、及び炭酸水素アンモニウム(LC/MSグレード)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F)は、New England Biolabs Inc(Ipswich,MA)から購入した。Invitrogen(商標)UltraPure(商標)1M Tris-HCl緩衝液、pH7.5は、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から得た。IgG1及びIgG4サブクラスを含めたすべてのモノクローナル抗体並びに二重特異性体はRegeneronで生成した。
試料調製。Fc部分に2つのN結合型グリカンが存在することによって導入された質量の不均質性を低減するために、各抗体または抗体混合物試料をPNGase F(タンパク質10μg当たり1IUBミリユニット)で100mMのTris-HCl(pH7.5)中45℃で1時間処理した。bsAb混合物のスパイクイン標準物質を調製するために、最初に分析用強陽イオン交換クロマトグラフィー(SCX)を使用してbsAb原薬をさらに精製して、大規模製造プロセスからのあらゆる残留ホモ二量体不純物を除去した。SCX分画の詳細な条件は以降に示す。分画後、精製したBsAbと対応するホモ二量体標準物質の両方を50mMのTris-HCl緩衝液(pH7.5)に緩衝液交換し、Nanodrop(Thermo Fisher Scientific,Bremen, Germany)によって決定される濃度に基づいて各々6μg/μLに調整した。続いて、bsAbと2つの対応するホモ二量体とを1:1:1の比率で混合した。最後に、2μg/μLのbsAb溶液を使用して段階希釈を実行して、ホモ二量体レベルが0.1%~10%の範囲である一連のスパイクイン標準物質を調製した。
SCXによるbsAb原薬からのbsAbの精製。各bsAb試料からbsAbをさらに精製するために、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を備えたWaters I-Class UPLCシステム(Waters,Milford,MA,US)で分析用強陽イオン交換クロマトグラフィー(SCX)を実行した。試料を注入する前に、カラム槽の温度を45℃に設定し、YMC-BioPro SP-F強陽イオン交換カラム(100mm×4.6mm、5μm)(YMC Co.,LTD.,Kyoto,Japan)を0.4mL/分の流量の移動相A(20mM酢酸でpHを5.6に調整した20mM酢酸アンモニウム)で事前コンディショニングした。一定分量(200μg)のタンパク質試料の注入時に、勾配を100%移動相Aに2分間保持し、続いて16分間で100%移動相B(140mM酢酸アンモニウム、10mM炭酸水素アンモニウム、pH7.4)に線形増加させる。勾配を100%移動相Bに4分間保持し、次いで100%移動相Aに戻してカラムを7分間再コンディショニングし、その後次の注入を行った。次いで、分画されたBsAbを、誤対合されたホモ二量体試料と同じ緩衝液に緩衝液交換し、その後混合してスパイクイン標準物質を調製した。
MM-SEC-MS法。混合モードサイズ排除クロマトグラフィーは、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を備えたWaters I-Class UPLCシステム(Waters,Milford,MA,US)で実行した。Nanospray Flex(商標)Ion Sourceを備えたThermo Exactive Plus EMR質量分析計(Thermo Fisher Scientific,Bremen,Germany)を質量測定に使用した。試料を注入する前に、カラム(Waters BEH200 SEC 4.6×300mm、200Å、1.7μm、またはSepax Zenix SEC-300 4.6×300mm、300Å、3μm)を、酢酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムをベースとする種々の濃度の移動相(30mM~450mM)を使用して0.2mL/分の流量で予め平衡化した。これは、2溶媒系(移動相A:水;移動相B:420mM酢酸アンモニウム及び30mM炭酸水素アンモニウム)を使用した定率(%)の移動相Bで行うことによって実現した。抗体試料(2~10μg)の注入時に、定組成溶離法を24分間行った。UVとMSの同時検出を可能にするため、SEC分離後にポストカラムスプリッター(約200:1の比率)を適用して、ナノ-ESI-MS分析用には流量を約1μL/分に低減する一方で、残りの高流量を280nmでのUVモニタリング用のPDA検出器に分流した。使い捨てのPicoTip Emitter(コーティングなし、チップ:10±1μm)(New Objective,Inc.,Woburn,MA,US)を使用してナノ-ESIを実現した。質量分析のために、分解能を17,500に、キャピラリースプレー電圧を1.5kVに、インソースフラグメンテーションエネルギーを100に、衝突エネルギーを10に、キャピラリー温度を350℃に、S-レンズRFレベルを200に、HCDトラッピングガス圧力を3に設定した。質量スペクトルは、2000~15000の間のm/z範囲枠内で取得した。
実施例1.MS適合性緩衝液を使用したSEC中の二次相互作用。
タンパク質の表面は高度に不均質であり、シリカまたは多糖ベースのSECカラムマトリックスとの水素結合(ヒドロキシル、アミン、及びアミド基)、静電(荷電基)、及び疎水性(疎水基)相互作用に寄与し得る多くの様々な官能基からなる。これらの相互作用は一般に、様々な結合強度を有し、SEC用途に使用されるpH、温度、及び移動相の組成に大きく依存する。例えば、中性付近のpHで実行すると、シリカベースのSECカラムからのシラノール基が負に帯電し、それによって塩基性タンパク質の静電相互作用が促進されることがある。そのような相互作用を抑制するために、中程度のイオン強度を有する移動相(Goyon et al,2018,前出)または低pH(5未満)を有する移動相(Pavon et al,2016,前出)が必要とされることが今まで多かった。
ごく最近では、シリカ表面誘導体化(短いアルキル鎖または官能基の結合など)を介して、現代のSECカラムからの残留シラノール基を効率的に遮蔽することができ、それによって静電相互作用の存在が劇的に低減している。しかしながら、これらの新たに導入された化学基は、最近の研究に報告されるように、タンパク質分析物との他の二次相互作用(例えば、疎水性相互作用)の強化をもたらすおそれもある(Yang et al.,2015,前出;Yan He et al.,On-line coupling of size exclusion chromatography with mixed-mode liquid Chromatography for comprehensive profiling of biopharmaceutical drug product,1262 Journal of Chromatography A 122-129(2012))。Arakawaらによって要約されるように、静電相互作用は低塩濃度で優勢であるのに対し、疎水性相互作用は高イオン強度の移動相で有利であり、特にホフマイスター系列で上位の塩(図3参照)が使用されるときに有利である。オンラインSEC-MS用途に適合性のある塩の選択は一般に限定されているが(例えば、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、及び炭酸水素アンモニウム)、それでもタンパク質分析物とカラムマトリックスの間の異なるタイプの二次相互作用を種々の塩濃度によって調節し、タンパク質を分離することを目的として模索することができると思われる。
塩濃度に関連する混合モード相互作用を査定するために、異なる表面特性を有する8種の抗体(いずれもIgG1及びIgG4のサブクラス)の混合物を、後続のネイティブMS分析で実施可能な範囲である30mM~300mMの種々の濃度の酢酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムベースの移動相を使用して、Waters BEH200 SECカラムで分析した。酢酸アンモニウムと炭酸水素アンモニウムの間のモル比は14:1に一定に保って、およそ7.4のpH値を実現した。8種のmAbのクロマトグラフ挙動を、抽出イオンクロマトグラム(XIC)によって決定されたそれらのSEC保持時間を移動相濃度に対してプロットすることによって示した(図5)。総じて、8種のmAbは、30mMの移動相塩濃度を使用してSECを実行したときに最もよく分離された。塩濃度が増加するにつれ、8種のmAbの溶出プロファイルは近くなり、分解能が低下した(図5中挿入図)。これらの保持時間のシフトは、mAb分子とカラムマトリックスの間の二次相互作用の変化によって説明できると思われる。その一方で、カラムマトリックスからの残留シラノール基がpH7.4で負に帯電するようになるために、それらは正に帯電したタンパク質の表面と静電相互作用を介して相互作用した可能性がある。この相互作用は、使用する塩濃度を低くすると強化される。その一方で、使用する塩濃度を高くしたときに、mAb分子とカラムマトリックスの間の疎水性相互作用が促進された可能性がある。興味深いことに、これらの8種のmAbは、それらのpI値に基づいて3つの異なるグループに分類することができ、それにおいて保持時間と塩濃度の間に類似した関係性が観察された。第1のグループは、3種の酸性mAb分子、mAb5(pI=6.3)、mAb6(pI6.4)、及びmAb1(pI=6.7)を含み、これらはpH7.4でタンパク質表面により少ない正電荷を有すると予想され、したがってカラムマトリックスとの最小の静電相互作用を呈した。図5に示すように、これら3種の分子はすべて塩濃度が増加するにつれて保持時間が増加する傾向を示し、それによって、イオン強度が高くなると弱い静電相互作用が排除され、疎水性相互作用がSEC分離中に優勢な役割を果たすことが示された。逆に、pH7.4でタンパク質表面により多い正電荷を有すると予想される3種の塩基性mAb分子、mAb3(pI=8.0)、mAb4(pI=8.3)、及びmAb8(pI=7.6はすべて、塩濃度が増加するにつれて保持時間が減少する傾向を示した。塩濃度と保持時間の間のこの逆相関は、優勢な静電相互作用に主に起因し、これは低塩濃度で促進され、高塩濃度で抑制された。最後に、酸性または塩基性のいずれのmAbとも異なり、mAb2(pI=7.3)及びmAb7(pI=6.9)は「中性」のグループとなり、これらはおそらくタンパク質表面に中程度の量の正電荷を有し、したがってカラムマトリックスと中間レベルの静電相互作用を呈したと思われる。このグループの分子は、種々の塩濃度(30mM~300mM)で比較的変化しない保持時間を維持した。この場合、塩濃度が増加したときに、疎水性相互作用の増加はおそらく静電相互作用の減少と近く、それによって打ち消されたことによって、保持時間がほとんどシフトしなかったと思われる。これらの結果から、塩濃度を適正に調節することによって、SECカラムでの混合モード相互作用を使用して後続のMS分析のために異なる抗体(例えば、bsAb対ホモ二量体)を分離するまたは部分的に分離することが可能であり得ることが示された。
Waters BEHカラムでは低塩濃度で高いクロマトグラフ分解能が実現したと思われるが、塩基性mAbの場合は、これらの条件下で重度のピークテーリングが起こることがあり、タンパク質の回収に相当な影響を及ぼすおそれがあるために、注意が必要である(Alexandre Goyon et al.,Characterization of 30 therapeutic antibodies and related products by size exclusion chromatography:Feasibility assessment for future mass spectrometry hyphenation,1065-1066 Journal of Chromatography B 35-43(2017))。
実施例2.MM-SEC-MSを使用した二重特異性抗体(二重特異性Ab)のO-グリカンバリアントの検出
2.1 二重特異性抗体の試料調製
抗CD20×抗CD3二重特異性抗体(BsAb1)は、Fc結合を低減させるように修飾されたIgG4アイソタイプをベースとするヒンジ安定化CD20×CD3二重特異性完全長抗体(Ab)である。それは、T細胞(CD3を介して)及びCD20発現細胞に結合するように設計される。二重特異性抗体は、Smithらによって記載される通りの手法に従うことによって生成した(Sci.Rep.(2015)5:17943)。
2.2 MM-SEC-MS
MM-SEC-MSを使用した分析は、上記の通りのシステムでZenix SEC-300 MKカラム(7.8×300nm、3μm)を使用して定組成で実行した。溶出は、280nmでのUVによってモニタリングした。
2組の実験を実施した。第1の実験では、移動相は140mM酢酸アンモニウム及び10mM炭酸水素アンモニウムを含んでおり、第2の実験では、移動相は420mM酢酸アンモニウム及び30mM炭酸水素アンモニウムを含んでいた。溶出は、0.4mL/分の流量で実施した。平衡化は、移動相を使用して実行した。
分析ランのために、注入負荷を100μgの総タンパク質から構成した。溶出は、酢酸アンモニウム(緩衝液A)及び炭酸水素アンモニウム(緩衝液B)からなる定組成勾配を使用して実施した。質量分析データは、Protein Metrics製のIntactソフトウェアを使用することによって分析した。
異なる濃度の移動相での2回のランから、異なる移動相での二重特異性抗体の溶出時間から観察されるように塩濃度が高くなるとSEC分離中の疎水性相互作用を強化できることが明らかになった。この作用により、二重特異性抗体とそのO-グリカンバリアントの間の分離が増大した(図6参照)。
実施例3.Zenix SEC-300、3μm、300Å、7.8×300mmを使用したホモ二量体種の検出
3.1 二重特異性抗体とホモ二量体との混合標準物質の試料調製
二重特異性抗体(BsAb1)(Fc/Fc)の生成中に2種のホモ二量体不純物を作製する:すなわち、ホモ二量体1(Fc-Fc)及びホモ二量体2(Fc/Fc)である(図2参照)。
3.2 MM-SEC-MS
MM-SEC-MSを使用した取得は、上記の通りのシステムでZenix SEC-300 MKカラム(7.8×300nm、3μm)を使用して定組成で実行した。溶出は、280nmでのUVによってモニタリングした。
2組の実験を実施した。第1の実験では、移動相は140mM酢酸アンモニウム及び10mM炭酸水素アンモニウムを含んでおり、第2の実験では、移動相は420mM酢酸アンモニウム及び30mM炭酸水素アンモニウムを含んでいた。溶出は、0.4mL/分の流量で実施した。
分析ランのために、注入負荷を50μgの総タンパク質から構成した。溶出は、酢酸アンモニウム(緩衝液A)及び炭酸水素アンモニウム(緩衝液B)からなる定組成勾配を使用して実施した。2.2から得られた結果と同様に、異なる濃度の移動相での2回のランから、異なる移動相での二重特異性抗体及びホモ二量体の溶出時間から観察されるように塩濃度が高くなるとSEC分離中の疎水性相互作用を強化できることが明らかになった。450mMの総塩濃度を有する移動相で実行すると、二重特異性抗体からのホモ二量体1及びホモ二量体2の分離が改善された(図7参照)。
実施例4.MM-SEC-MS、SEC-MS、及びRP LC-MSを使用した、二重特異性抗体中のホモ二量体不純物の検出の比較。
4.1 二重特異性抗体とホモ二量体との混合標準物質の試料調製
試料は、実施例3に示した手法を使用して調製した。
4.2 RP LC-MS
試料を0.5mg/mLに希釈した。この溶液をLC-MS分析用に0.5μgで注入した。LC-MS実験は、ThermoFisher Fusion Lumos Tribrid質量分析計で実行した。Waters BioResolve(商標)mAb Polyphenyl、450Å、2.7μm 2.1×50mm Column(P.N.186008944)を逆相分離に使用した。試料温度は5℃に設定し、カラム温度は80℃に設定した。移動相Aは水中0.1%FA、移動相Bはアセトニトリル中0.1%FAであった。質量分析実験はポジティブモードで実行した。MSイオン源条件は次の通りに設定した。すなわち、スプレー電圧を3.8 kVに、イオン移送管温度を325℃に、気化器温度を250℃に、シースガスを40(Arb)に、補助ガスを10(Arb)に、スイープガスを2(Arb)に、RFレンズ(%)を60に、及びソースフラグメンテーションエネルギーを40Vに設定した。MSデータは、オービトラップによって1500~4000のm/z範囲の高質量範囲モードで取得した。分解能は、m/z200で15,000に設定し(10マイクロスキャン)、AGCターゲットは10、最大注入時間は50msに設定した。質量分析データは、Xacliburソフトウェアを使用して分析した。
4.3 SEC-MS
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、ACQUITY UPLC Protein BEH SEC Column(200Å、1.7μm、4.6mm×300mm)で、140mM酢酸アンモニウム及び10mM炭酸水素アンモニウムを含む移動相を使用して実行した。SEC実験は、Waters Acquity UPLC I-classシステムで、室温、280nmでの波長検出、0.2mL/分の流量、及び50μgのタンパク質注入負荷で実行した。
4.4 MM-SEC-MS
MM-SEC-MSシステムでの分析ランは、実施例3.2に示す手法を使用して、420mM酢酸アンモニウム及び30mM炭酸水素アンモニウムを含有する移動相を使用して定組成で実施した。
4.5 結果
LumosでのRP LC-MS(図8参照)、EMRでのSEC-MS、及びEMRでのMM-SEC-MSについての全イオンクロマトグラム(TIC)及びネイティブMSスペクトルの比較から、ホモ二量体の二重特異性抗体からの有意な分離及び検出が示される。RP LC-MSからの生質量スペクトログラムは、ホモ二量体と二重特異性抗体を区別することができなかった。SEC-MSからの生質量スペクトルは、ホモ二量体1と二重特異性抗体とを分離及び検出することができたが、分離は、ホモ二量体2と二重特異性抗体とを分離及び検出するには十分ではなかった。MM-SEC-MSからの生質量スペクトルだけが、ホモ二量体1、ホモ二量体2、及び二重特異性抗体の十分な分離及び検出を示した。この比較は、バイオ医薬製品中の不純物の検出に関してMM-SEC-MSがSEC-MS及びRP LC-MSより優位であることの概念実証となる。
実施例5.Zenix SEC-300、3μm、300Å、7.8×300mmを使用したMM-SEC-MS検出の連続ラン
連続ランでの検出のデータ品質を評価するために、二重特異性Ab、ホモ二量体1、及びホモ二量体2を含有する試料(4.1に示す通りに調製したもの)の3回の分析ランをMM-SEC-MSシステムを使用して実施した。分析ランは、4.2に示した手法、ならびに280mM酢酸アンモニウム及び20mM炭酸水素アンモニウムを含む移動相を使用して実行した。
3回のランについての生質量スペクトル及び抽出イオンクロマトグラム(XIC)から、データ品質及びシグナル対ノイズ比の減少が示された(図9参照)。この作用は、大きいカラム(7.8×300mm)を使用したことが原因であり得ると思われる。これは、MSの強度を確保するために多量のタンパク質試料(約50μg)を必要とし、それによって高塩濃度でタンパク質の沈殿が生じるために、流路を頻繁にクリーニングすることが必要となる(クリーニング前に最大3回の試料ラン)。
さらに、大きいカラム及びナノスプリッターが処理することができる比較的低流量(最大約0.4mL/分)によって、ピーク幅が広くなった(約1.5分)。これは、場合によってMSの強度及び分解能に影響を及ぼす。遅い溶出時間によって、全体的な分析時間も遅くなった(各試料30分)。
実施例6.Zenix SEC-300、3μm、300Å、4.6×300mmを使用したホモ二量体種の検出
6.1 二重特異性抗体とホモ二量体との混合標準物質の試料調製
二重特異性抗体とホモ二量体との混合標準物質は、3.1に示す方法によって調製することができる。
6.2 MM-SEC-MS
MM-SEC-MSを使用した取得は、上記の通りのシステムでZenix SEC-300 MKカラム(4.6×300nm、3μm)を使用して定組成で実行した。溶出は、280nmでのUVによってモニタリングした。
4組の実験を実施した。第1の実験では、移動相は140mM酢酸アンモニウム及び10mM炭酸水素アンモニウムを含み、第2の実験では、移動相は280mM酢酸アンモニウム及び20mM炭酸水素アンモニウムを含み、第3の実験では、移動相は420mM酢酸アンモニウム及び30mM炭酸水素アンモニウムを含み、第4の実験では、移動相は560mM酢酸アンモニウム及び40mM炭酸水素アンモニウムを含んでいた。溶出は、0.3mL/分の流量で実施した。
分析ランのために、注入負荷を10μgのタンパク質から構成した。溶出は、酢酸アンモニウム(緩衝液A)及び炭酸水素アンモニウム(緩衝液B)からなる定組成勾配を使用して実施した。150mMの総塩濃度より大きい濃度を使用すると、ホモ二量体と二重特異性抗体の分離及び検出の改善が示される(図10参照)。大きい方のカラム(7.8×300nm)を使用した総分析時間及びピーク幅と比較して、小さい方のカラム(4.6×300nm)を使用した総分析時間は約18分に減少し、ピーク幅は1分未満に減少した。その相違の表現を図11に示す。
実施例7.二重特異性抗体、ホモ二量体1、及びホモ二量体2の脱グリコシル化混合物のZenix-SECカラムでのMM-SEC-MS分析
7.1 二重特異性抗体、ホモ二量体1、及びホモ二量体2の脱グリコシル化混合物の調製
各タンパク質をペプチドN-グリコシダーゼF(PNGase F;タンパク質10μg当たり1IUBミリユニット)で45℃で1時間処理して、各重鎖の定常領域からグリカン鎖を完全に除去した。
7.2 MM-SEC-MS
MM-SEC-MSを使用した取得は、上記の通りのシステムでZenix SEC-300 MKカラム(4.6×300nm、3μm)を使用して定組成で実行した。溶出は、280nmでのUVによってモニタリングした。
6組の実験を実施した。第1の実験では、移動相は9.3mM酢酸アンモニウム及び0.7mM炭酸水素アンモニウムを含み、第2の実験では、移動相は46.7mM酢酸アンモニウム及び3.3mM炭酸水素アンモニウムを含み、第3の実験では、移動相は93.3mM酢酸アンモニウム及び6.7mM炭酸水素アンモニウムを含み、第4の実験では、移動相は186.7mM酢酸アンモニウム及び13.3mM炭酸水素アンモニウムを含み、第5の実験では、移動相は280mM酢酸アンモニウム及び20mM炭酸水素アンモニウムを含み、第6の実験では、移動相は420mM酢酸アンモニウム及び30mM炭酸水素アンモニウムを含んでいた。溶出は、0.3mL/分の流量で実施した。
分析ランのために、注入負荷を10μgのタンパク質から構成した。
10mMの総塩濃度を使用すると、ホモ二量体1、二重特異性抗体、及びホモ二量体2の有意な分離が示される。10mMの塩濃度では、ホモ二量体2の保持時間は二重特異性抗体より遅く、それはホモ二量体1の保持時間より遅いことが示された。しかしながら、10mMより濃度が高くなると、ホモ二量体1の保持時間は二重特異性抗体より遅く、その保持時間はホモ二量体2より短いことが示された(図12及び図13参照)。この作用は、使用したサイズ排除クロマトグラフィー樹脂と3種のタンパク質との異なるタイプの相互作用(電荷、形状、または疎水性)に起因し得ると思われる。所与の塩濃度でのタンパク質の電荷は、それらのpI値に依存する(表2)。有意な分離は、10mMの低塩濃度の移動相を使用するか、または100mMより大きい高塩濃度の移動相を使用するか、そのいずれかによって得られた。塩濃度が低くなると、保持は電荷-電荷相互作用によって推進され得る。例えば、塩基性分子は、MM-SEC-MSシステムでは、低い方の塩濃度を有する移動相を使用して分離することができる。塩濃度が高くなると、保持は疎水性相互作用によって推進される。例えば、酸性または疎水性分子は、MM-SEC-MSシステムでは、高い方の塩濃度を有する移動相を使用して分離することができる(図14及び図15参照)。
理想的なSEC分離は、タンパク質の流体力学的体積のみに基づくべきであり、タンパク質と固定相の間に他の相互作用が所望されるべきではない。シリカベースのカラムマトリックスはシラノール基(イオン交換特性)によって負電荷を呈することがあるため、シリカ粒子の誘導体化がシラノールの作用を低減させるのに役立つが、同時に新たな相互作用機序(疎水性)を導入する可能性がある。よってこれによって、Zenix SEC-カラムに観察されるように、官能性を有するSEC樹脂が作出されることがある。これによって、Zenix-SECカラム中で実施したときの、異なる濃度を有するタンパク質の溶出の順序の相違が説明される。
Figure 2022514122000002
実施例8.二重特異性抗体、ホモ二量体1、及びホモ二量体2の脱グリコシル化混合物のWaters BEH SEC ColumnでのMM-SEC-MS分析
8.1 二重特異性抗体、ホモ二量体1、及びホモ二量体2の脱グリコシル化混合物の調製
脱グリコシル化混合物は、7.1と同じ手法を使用して調製した。
8.2 MM-SEC-MS
MM-SEC-MSを使用した取得は、上記の通りのシステムでWaters BEH SEC Columを使用して定組成で実行した。溶出は、280nmでのUVによってモニタリングした。
6組の実験を実施した。第1の実験では、移動相は14mM酢酸アンモニウム及び1mM炭酸水素アンモニウムを含み、第2の実験では、移動相は18.7mM酢酸アンモニウム及び1.3mM炭酸水素アンモニウムを含み、第3の実験では、移動相は28mM酢酸アンモニウム及び2mM炭酸水素アンモニウムを含み、第4の実験では、移動相は70mM酢酸アンモニウム及び5mM炭酸水素アンモニウムを含み、第5の実験では、移動相は93.3mM酢酸アンモニウム及び6.7mM炭酸水素アンモニウムを含み、第6の実験では、移動相は280mM酢酸アンモニウム及び20mM炭酸水素アンモニウムを含んでいた。溶出は、0.2mL/分の流量で実施した。
分析ランのために、注入負荷を10μgのタンパク質から構成した。
15mMの総塩濃度を使用すると、ホモ二量体1、二重特異性抗体、及びホモ二量体2の有意な分離が示される。15mMの塩濃度で、ホモ二量体2の保持時間は二重特異性抗体より早く、それはホモ二量体1より早い保持時間を示した。移動相の濃度が増加すると、保持時間の差が低減した。さらに、300mMの移動相の塩濃度では、ホモ二量体1の保持時間は二重特異性抗体より早く、それはホモ二量体2より早い保持時間を示した(図16及び図17参照)。図14及び図15に記載するように、この作用は、SECカラム上の追加の相互作用の進展に起因する。追加の相互作用は、移動相の塩濃度に依存する。低い方の濃度では、電荷-電荷相互作用がカラムで優勢であり、カラムでのタンパク質の保持を決定する。
実施例9.Waters BEH SEC ColumnでのIgG1分子及びその酸化バリアントのMM-SEC-MS分析
9.1 IgG1分子(Ab1)の酸化バリアントの調製
Ab1をペプチドN-グリコシダーゼF(PNGase F;タンパク質10μg当たり1IUBミリユニット)で45℃で1時間処理して、各重鎖の定常領域からグリカン鎖を完全に除去した。
9.2 MM-SEC-MS
MM-SEC-MSを使用した取得は、上記の通りのシステムでWaters BEH SEC Columを使用して定組成で実行した。溶出は、280nmでのUVによってモニタリングした。
3組の実験を実施した。第1の実験では、移動相は93.3mM酢酸アンモニウム及び6.7mM炭酸水素アンモニウムを含み、第2の実験では、移動相は140mM酢酸アンモニウム及び10mM炭酸水素アンモニウムを含み、第3の実験では、移動相は280mM酢酸アンモニウム及び20mM炭酸水素アンモニウムを含んでいた。溶出は、0.2mL/分の流量で実施した。
分析ランのために、注入負荷を10μgのタンパク質から構成した。
100mM、150mM、及び300mMの塩濃度の移動相を使用すると、MM-SEC-MSシステムで抗体Ab1とその酸化バリアントが有意に分離される(図18、上パネル参照)。IgG1抗体Ab1のpIは8.65である。より高いPIを有するIgG1分子では、低いpI値を有するIgG4分子と比較して、電荷相互作用がより優勢な役割を果たす。
実施例10. Waters BEH SEC ColumnでのIgG1分子のMM-SEC-MS分析
10.1 IgG1分子(Ab2)の調製
Ab2をペプチドN-グリコシダーゼF(PNGase F;タンパク質10μg当たり1IUBミリユニット)で45℃で1時間処理して、各重鎖の定常領域からグリカン鎖を完全に除去した。
10.2 MM-SEC-MS
MM-SEC-MSを使用した取得は、実施例8.2に記載する通りのシステムでWaters BEH SEC Columを使用して定組成で実行した。2種のIgG1分子-Ab1及びAb2の保持時間を比較すると、Ab2分子の方が保持時間が短いことが観察された(図18、下パネル参照)。
これは、Ab1とAb2の疎水性の相違に起因すると説明することができる。より疎水性が高い分子では、より疎水性が低い分子と比較して、「塩析」作用がより低い塩濃度で生じ始める。このポイントは、転移点とも呼ばれる(図19参照)。
実施例11. MM-SEC-MSを使用した二重特異性抗体中のホモ二量体不純物の定量化
標準物質は、図20に示す手法を使用して作製した。
MM-SEC-MSを使用した取得は、記載の通りのシステムでZenix SEC-300 MKカラム(4.6×300nm、3μm)を使用して定組成で実行した。タンパク質を溶出するために300mMの塩濃度及び70mMの塩濃度を有する移動相を使用した。インタクトレベル及びサブユニットレベルでの両方の濃度について、ホモ二量体の量が高くなると、MM-SEC-MSを使用した検出が高度になることが観察された(図21及び図22参照)。移動相の塩濃度が70mMのとき、二重特異性抗体の追加のFc不純物も検出された。
インタクトレベルで、検出されたホモ二量体1/二重特異性抗体に対する理論上のホモ二量体1/二重特異性抗体のプロット、及び検出されたホモ二量体2/二重特異性抗体に対する理論上のホモ二量体2/二重特異性抗体のプロットは、0.1%~50%存在するホモ二量体の定量化に関して良好な直線性を示した(図23参照)。
サブユニットレベルで、検出されたホモ二量体1/二重特異性抗体に対する理論上のホモ二量体1/二重特異性抗体のプロット、及び検出されたホモ二量体2/二重特異性抗体に対する理論上のホモ二量体2/二重特異性抗体のプロットは、0.1%~50%存在するホモ二量体の定量化に関して良好な直線性を示した(図24参照)。インタクトレベルと比較して、より良好な精度がサブユニットレベルで得られた。
実施例12.ネイティブMS検出のための二重特異性抗体とホモ二量体抗体の混合モードSEC分離
異なるpI値及び疎水性を有する4種のbsAb分子(表3)をそれらの対応するホモ二量体抗体と混合し、試験標準物質として使用した。各bsAb分子(HHL2)は、2つの同一の軽鎖(LC)及び2つの異なる重鎖(HC及びHC)を含有し、それに対して各ホモ二量体抗体(H2L2またはH2L2)は、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖(HCまたはHC)を含有する。
Figure 2022514122000003
見かけのHIC保持係数は、HICによって分析されたタンパク質分子の保持時間に基づいて算出した。YMC BioPro HIC BFカラム(4μm、100mm×4.6mm)に、3.3Mアンモニウム緩衝液の移動相「A」及び水の移動相Bを適用した。勾配は、0.4mL/分の流量で、18分間で100%Aから97%Aで実行した。見かけのHIC保持係数は、18分間でのその保持時間を10のスケールに正規化することによって算出した。
次いで4種のbsAb混合物を、Waters BEHカラムで3つの異なる塩濃度(75mM、150mM、及び300mM)を使用して分析し、その後オンラインネイティブMS検出を行った。得られた基準ピーククロマトグラム(BPC)を図25の左パネルに示す。前の試験からの観察と一致して、塩濃度が増加するにつれ、異なるpI値を有するmAb分子は、異なる保持時間の動向を呈した。したがって、種々の塩濃度で異なる各抗体の保持挙動を利用して、塩濃度を調節することによってbsAbからホモ二量体を分離する可能性を模索した。例えば、bsAb2混合物では、塩濃度が300mMから75mMに減少するにつれて、2種の酸性分子、H2L2ホモ二量体(pI=6.1)及びHHL2 bsAb(pI=6.5)はいずれも、おそらく低塩濃度での疎水性の低減及び低静電相互作用のために溶出が早くなった。対照的に、中性分子、H2L2ホモ二量体(pI=7.2)は、塩濃度を調節してもほとんど保持時間が変わらないままであった。これは多分、低塩濃度での疎水性相互作用の低減が静電相互作用の強化によって打ち消されたためあると思われる。加えて、H2L2ホモ二量体は、低塩濃度でHHL2 bsAbと比較して相当な保持時間の減少を呈したので(おそらくそのより低いpI値、及びそれによるより弱い静電相互作用に起因すると思われる)、2つの分離の改善も実現された。その結果、両方のホモ二量体とbsAb2の良好なクロマトグラフ分離が75mMの塩濃度で実現された。
同様に、bsAb3とその2つのホモ二量体の分離も、塩濃度を300mMから75mMに減少させると相当に改善された。これは、H2L2ホモ二量体(pI=6.6)、HHL2 bsAb(pI=7.4)、及びH2L2ホモ二量体(pI=8.3)の保持時間がそれぞれ、減少した、変わらないままであった、または増加したからである。注目すべきは、2つの実施例のいずれにおいてもベースライン分解能は実現されなかったが、ホモ二量体の同定及び定量化は、検出器としてのMSの高特異性によって、UVベースの定量化にあるような共溶出種による相当な影響を受けないはずであるということである。
bsAb5混合物でもやはり、BEHカラムでの75mMの塩濃度で、高濃度条件より良好な分離が実現された。これは、塩濃度が減少するにつれ、比較的塩基性の分子、HHL2 bsAb(pI=8.1)及びH2L2ホモ二量体(pI=8.5)が両方とも次第に遅くなる保持時間を呈したのに対して、比較的中性のH2L2ホモ二量体(pI=7.4)が保持時間の変化を示さなかったためである。しかしながら、良好なクロマトグラフ分離にもかかわらず、この条件はホモ二量体の定量化には理想的ではなかった。何故なら、H2L2ホモ二量体は塩基性が高いために、低塩濃度ではピークテーリング及びタンパク質回収損失を生じ始めたからである。さらに、bsAb4混合物は、塩濃度を300mMから75mMに減少させることによって分離の改善を実現できなかったことを実証した。これはおそらく、3種の分子がすべて中性付近のpIを有し(表3)、よって相当する塩濃度の変化で類似した保持挙動を呈するためと思われる。塩濃度をさらに下げて静電相互作用を強化すれば分離を改善することができるが、おそらく重度のピークテーリングが生じることとなり、それによって定量化が損なわれると思われる。塩濃度が増加するにつれてbsAb4混合物の溶出プロファイルが広がることも興味深い。300mMの塩濃度では、3種の分子の溶出順序は、XICによって(データ示さず)H2L2ホモ二量体、HHL2 bsAb、及びH2L2ホモ二量体と決定され、これは疎水性相互作用クロマトグラフィーによって決定されたそれらの疎水性の順位と一致した(表3)。したがって、さらに高い塩濃度を使用することによって疎水性相互作用をさらに強化すれば、おそらくこのカラムでのbsAb4混合物の分離が改善されると思われる。残念なことに、本発明者らの実験に基づくと、300mMより高い塩濃度によって大抵脱溶媒和の問題が生じ、ネイティブMSの感度が有意に損なわれる。
MS分析に有利な塩濃度を使用しながらbsAb混合物の分離をさらに考査するために、Sepax Zenix SEC-300 カラムを混合モード相互作用に関して評価した。このカラム中の3μmシリカビーズは、化学的に結合されたスタンドアップ型の単相でコーティングされており、これは、以前の研究に報告されているようにこのカラムの中程度の疎水性におそらく寄与していると思われる(Yang et al,2016,前出;Wong et al,前出;Pavon et al,前出)。150mM及び300mMの塩濃度で、4種のbsAb混合物の各々を、後続のネイティブMS検出のためにこのカラムで分離した。作成したBPCを図25の右パネルに示す。予想した通り、bsAb4混合物は、同じ塩濃度で操作したときに、BEHカラムと比較して改善された分離をZenixカラムで示した。3種の分子の溶出順序もそれらの相対的疎水性と一致しており、最も疎水性のH2L2ホモ二量体が最後に溶出した。注目すべきは、bsAb4混合物のクロマトグラフ分解能が、150mMでの分解能と比較して300mM塩濃度でさらに改善されたことである。これは、塩濃度が高くなったことによって疎水性相互作用が促進されたと予想される。加えて、bsAb5混合物は、BEHカラムと比較してより効率的にZenixカラムで分割された。これは多分、カラムマトリックスと混合物の成分との疎水性相互作用の大きな相違に起因すると思われる。要約すると、異なる性質を有する2種のSECカラムの塩濃度を調節することによって、後続のネイティブMS検出に好適な塩濃度で4種のbsAb混合物すべてについて良好なクロマトグラフ分離が実現できることが実証される。おそらく本研究で試験されていない他のSECカラムも、新規な混合モード相互作用を与えることによって、本方法の適用可能性をさらに拡大することができると思われる。
実施例13.ネイティブMM-SEC-MSによるホモ二量体不純物の定量化。
MSベースのアプローチによる相対的定量化は、多くの場合、各分析物からのMS応答(例えば、イオン化効率及びイオン透過効率)を十分に特性解析して理解することが必要とされる。サイズが類似しているため、bsAb及びホモ二量体は、ネイティブMS分析中に同様のイオン透過効率を呈するはずである。他方では、イオン化効率は、溶出時の溶媒組成と共溶出種の存在の両方の影響を受ける可能性があると思われる。MM-SEC-MS法は定組成溶離を利用するので、勾配溶離法(例えば、IEX-MS)に通常見られるような、異なる溶媒組成に起因するイオン化への影響を排除することができる。ホモ二量体不純物の相対的定量化を査定するMM-SEC-MS法の性能を評価するために、相対存在量0.1%~10%の範囲のホモ二量体不純物を含有する一連のbsAb2スパイクイン試料を分析用に調製した。bsAb2と対応するホモ二量体間のMM-SEC分離を実現するために、75mMの塩濃度の移動相を使用するWaters BEHカラムを適用した。bsAb2試料中に存在する各ホモ二量体の相対的定量化を査定するために、ホモ二量体種またはbsAb2のいずれかの4つの最も存在量の多い荷電状態のm/zに基づいてXICを作成し、ピーク面積を積分し、各ホモ二量体の量の定量化に使用した。図26に示すように、0.1%~10%の範囲のホモ二量体不純物の確実な定量化がこの方法によって容易に実現することができる。加えて、0.1%のスパイクインレベルであっても、H2L2ホモ二量体種とH2L2ホモ二量体種の両方の高品質なネイティブ質量スペクトルを得ることができるので(図27、右パネル)、信頼性の高い同定及び定量化につながり得る。
新規MM-SEC-MS法を開発し、bsAb試料中のホモ二量体不純物の高感度な検出及び定量化について評価してきた。本発明者らは最初に、異なる塩濃度でのSEC分離中の抗体分子とカラムマトリックスの混合モード相互作用を調査した。種々のpIの8種の別個の抗体を使用して、所定のpH条件下で塩基性分子が酸性分子と比較して強いカラムマトリックスとの静電相互作用を呈し、そのような相互作用は塩濃度を下げることによって強化できることが観察された。他方で、SEC分離中の塩濃度を増加させると、抗体とカラムマトリックスの間の静電相互作用を低減させる一方で、疎水性相互作用を促進することができる。これらの混合モード相互作用は、類似した流体力学的体積を有するが表面特性が異なる抗体を分離する、他に例を見ない機会を提供する。異なるカラムの性質を利用して、静電相互作用または疎水性相互作用のいずれかを使用してMM-SEC法によって4種のbsAb混合物のクロマトグラフ分離を遂行した。それは塩濃度を調節することによって容易に実現された。本発明者らは、実現されたクロマトグラフ分離が、後続のネイティブMS分析による低存在量のホモ二量体不純物の改善された検出を得るのに不可欠であることも実証した。2つのbsAbの実施例では、0.01%(bsAb2)及び0.1%(bsAb4)で存在するホモ二量体不純物が、本MM-SEC-MS法を使用して成功裡に検出された。知る限りにおいて、この新たな開発は、bsAb試料中のホモ二量体不純物の検出における最も高感度な方法である。最後に、一連のスパイクイン標準物質を使用することによって、MM-SEC-MS法が、様々なレベルで存在するホモ二量体不純物の確実な定量化を提供することができることを実証した。感度が高いために、0.1%ほど低いレベルであっても信頼性の高い同定及び定量化を得ることができる。要約すると、この新たに開発されたMM-SEC-MS法は、bsAb試料中のホモ二量体不純物の検出及び定量化に対する高感度のアプローチを提供し、よって治療用bsAbの開発を支援するために使用することができる。最後に、この方法の用途は、同時に配合される治療薬に存在する抗体の混合物の特性解析など、他の分野にも広げることができると思われる。

Claims (19)

  1. 試料中の不純物を定量化するための方法であって、
    追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させること;
    移動相を使用して前記混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して、前記不純物を含む溶出液を得ること;及び
    質量分析計を使用して前記溶出液中の前記不純物の量を定量化すること
    を含む、前記方法。
  2. 前記不純物を溶出するために使用される前記移動相が、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、もしくはギ酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせを有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記不純物を溶出するために使用される前記移動相が、酢酸アンモニウムと炭酸水素アンモニウムとの約600mM未満の総濃度を有する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記不純物を溶出するために使用される前記移動相が、約0.2ml/分~約0.4ml/分の流量を有する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂に負荷された前記試料の量が、約10μg~約100μgである、請求項1に記載の方法。
  6. 前記不純物が生成物関連不純物である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記不純物がホモ二量体である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記試料が、溶出時に分離される前記不純物及び少なくとも1種の標的タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記標的タンパク質が抗体である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記抗体が二重特異性抗体である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記標的タンパク質が治療用抗体である、請求項8に記載の方法。
  12. 前記質量分析計が前記クロマトグラフシステムに連結されている、請求項1に記載の方法。
  13. 前記追加の官能性が疎水性相互作用官能性である、請求項1に記載の方法。
  14. 前記追加の官能性が電荷-電荷相互作用官能性である、請求項1に記載の方法。
  15. 前記質量分析計がネイティブ質量分析計である、請求項1に記載の方法。
  16. 試料中の不純物を検出するための方法であって、
    追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させること;
    移動相を使用して前記混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して、前記不純物を含む溶出液を得ること;及び
    質量分析計を使用して前記溶出液中の前記不純物を検出すること
    を含む、前記方法。
  17. 試料中の標的タンパク質を定量化するための方法であって、
    追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させること;
    移動相を使用して前記混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して、前記標的タンパク質を含む溶出液を得ること;及び
    質量分析計を使用して前記溶出液中の前記標的タンパク質を定量化すること
    を含む、前記方法。
  18. 試料中の標的タンパク質を検出するための方法であって、
    追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフシステムに前記試料を接触させること;
    移動相を使用して前記混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を洗浄して、前記標的タンパク質を含む溶出液を得ること;及び
    質量分析計を使用して前記溶出液中の前記標的タンパク質を検出すること
    を含む、前記方法。
  19. 追加の官能性を有する混合モードサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を有するクロマトグラフカラムであって、移動相と標的タンパク質を有する試料とを受け入れることが可能である、前記カラム、及び
    前記標的タンパク質を検出するための、前記クロマトグラフカラムに連結された質量分析計
    を含む、混合モードクロマトグラフィーシステム。
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