JP2022182963A - 熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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JP2022182963A JP2021201851A JP2021201851A JP2022182963A JP 2022182963 A JP2022182963 A JP 2022182963A JP 2021201851 A JP2021201851 A JP 2021201851A JP 2021201851 A JP2021201851 A JP 2021201851A JP 2022182963 A JP2022182963 A JP 2022182963A
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Abstract

【課題】高い熱伝導性と流動性、成形性に優れ、成形時のガス発生の問題がなく、強度と難燃性を併せ有する熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、膨張黒鉛(B)10~100質量部及びリン系難燃剤(C)2~20質量部を含有する熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物であって、ポリカーボネート樹脂(A)は、JIS K7210に準拠し、高荷式フローテスターを用いて、278℃、荷重160kgfの条件下で測定する単位時間あたりの流出量Q値が10×10-2cm3/sec~150×10-2cm3/secの範囲にあることを特徴とする熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、高い熱伝導性と流動性、成形性に優れ、成形時のガス発生の問題がなく、強度と難燃性を併せ有する熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性等に優れ、これらの特性のバランスも良好であることから、電気電子機器部品、OA機器部品、精密機械部品、車輌用部品などの分野で広く使用されている。
しかしながら、ポリカーボネート樹脂は、電気抵抗率が高く帯電し易いために、静電気に起因する様々な障害を引き起こす可能性がある。また、上記の分野においては、殆どの機器が発熱する部品を搭載しているが、近年、機器の小型化、軽量化、高伝送密度化等の高性能化に伴い、部品当たりの消費電力量が増え、発熱量が大で、小型軽量化された部品も多くなり、高い熱伝導率を有しながら流動性・成形性に優れ、強度にも優れるポリカーボネート樹脂材料が強く求められている。
ポリカーボネート樹脂材料に熱伝導性を付与する方法として、種々の熱伝導性フィラーを配合する方法が知られており、特許文献1~6には、熱伝導度の良好なポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
また、本出願人は、特許文献7により、炭素繊維強化系のポリカーボネート樹脂組成物において、黒鉛、リン系難燃剤、フルオロポリマー及び数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物を含有する樹脂組成物を提案した。当該組成物は炭素繊維強化系であるので当然ながらその耐衝撃性は高いが、良熱伝導性である炭素繊維と黒鉛を具体的には合計で70質量%というような量で含有することにより高い熱伝導率を発現させている。しかし、炭素繊維と黒鉛をこのような量で含有すると流動性が低下するため、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物(具体的にはポリエチレンワックス等)やAS樹脂を配合しており、そのため成形時にはガスを発生しやすくなり、成形品の外観不良を引き起こしやすく、さらに垂れ落ち防止剤であるフルオロポリマーを含有するので樹脂組成物の流動性を低下させるという問題がある。
特開2007-16093号公報 特開2007-238917号公報 特開2008-127554号公報 特開2008-163270号公報 特開2009-161582号公報 特開2011-16936号公報 特開2015-110718号公報
また、電気電子機器等の部品の分野においては、部品形状の複雑化・軽量薄肉化等により、高度の流動性、成形性も強く求められている。
本発明の目的(課題)は、高い熱伝導性と流動性、成形性に優れ、成形時のガス発生の問題がなく、強度と難燃性を併せ有する熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、ポリカーボネート樹脂に膨張黒鉛を配合したコンパウンド品につき、多種多岐にわたる検討を行った。その結果、原料ポリカーボネート樹脂として流出量Q値が高いものを使用すると、コンパウンド品の熱伝導率が向上することを見出した。その際、コンパウンド後の膨張黒鉛の粒径や粒径分布は、原料ポリカーボネート樹脂のQ値の違いによる影響はなく、ほぼ同じ粒径分布であってあまり変化は見られないことが判明し、Q値が高いものを使用することによって膨張黒鉛の分散性が良くなり熱伝導性が向上すると考えられ、そして、これによりコンパウンド品(ペレット)の流動性も向上し成形性も良くなり、引張強度や曲げ強度等の機械特性も良好となることが見出された。
本発明は、以下の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供する。
1.ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、膨張黒鉛(B)10~100質量部及びリン系難燃剤(C)2~20質量部を含有する熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物であって、
ポリカーボネート樹脂(A)は、JIS K7210に準拠し、高荷式フローテスターを用いて、278℃、荷重160kgfの条件下で測定する単位時間あたりの流出量Q値が10×10-2cm/sec~150×10-2cm/secの範囲にあることを特徴とする熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
2.さらに、ガラス繊維(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、5~50質量部含有する上記1に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
3.さらに、離型剤(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~1質量部含有する上記1または2に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
4.さらに、安定剤(F)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~1質量部含有する上記1~3のいずれかに記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
5.さらに、酸性基含有有機化合物(G)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~0.1質量部含有する上記1~4のいずれかに記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
6.さらに、難燃助剤(H)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.5~5質量部含有する上記1~5のいずれかに記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
7.上記1~6のいずれかに記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性と流動性、成形性に優れ、成形時のガス発生の問題もなく、強度及び難燃性に優れる。
実施例2で得られたポリカーボネート樹脂組成物成形体のSEM画像の写真である。 比較例1で得られたポリカーボネート樹脂組成物成形体のSEM画像の写真である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、膨張黒鉛(B)10~100質量部及びリン系難燃剤(C)2~20質量部を含有し、ポリカーボネート樹脂(A)は、JIS K7210に準拠し、高荷式フローテスターを用いて、278℃、荷重160kgfの条件下で測定する単位時間あたりの流出量Q値が10×10-2cm/sec~150×10-2cm/secの範囲にあることを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の樹脂組成物が含有するポリカーボネート樹脂(A)の種類は、特に限定されず、種々のものが用いられる。ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類でき、いずれを用いることもできるが、ポリカーボネート樹脂(A)としては、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。これらの中では、界面重合法によるものが特に好ましい。
さらにポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよく、バージン原料とリサイクル樹脂の両方を含有することも好ましく、リサイクルポリカーボネート樹脂からなることでもよい。ポリカーボネート樹脂(A)中のリサイクルポリカーボネート樹脂の割合は40%以上、50%以上、60%以上、80%以上が好ましく、100%が特に好ましい。
本発明においては、ポリカーボネート樹脂(A)として、JIS K7210に準拠し、高荷式フローテスターを用いて、278℃、荷重160kgfの条件下で測定する単位時間あたりの流出量Q値が10×10-2cm/sec~150×10-2cm/secの範囲にあるポリカーボネート樹脂を使用する。
このようなQ値を有するポリカーボネート樹脂は、単独でこのような高いQ値を有するポリカーボネート樹脂を使用してもよいが、Q値の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して上記Q値に調整して用いることも好ましく、この場合には、Q値が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。例えば、実施例に示したように、Q値が10×10-2cm/secより小さい標準的なポリカーボネート樹脂に、Q値が大きい高流動性のポリカーボネート樹脂を組み合わせて、Q値が上記範囲になるように調整する方法は、好ましいQ値調整の方法である。
もう一つの好ましい方法は、ポリカーボネート樹脂(A)として、重合する際の末端停止剤としてアルキルフェノール化合物を使用したポリカーボネート樹脂を使用することである。この場合、アルキルフェノール化合物におけるアルキル基の炭素数は4以上が好ましく、好ましくは12以下、より好ましくは10以下であり、8以下であることがさらに好ましい。アルキル基は、直鎖のものでも分岐していてもよいが、分岐状のものが特に好ましい。アルキルフェノール化合物としては、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-ヘキシルフェノール、p-tert-オクチルフェノール等が好ましく、特にp-tert-オクチルフェノールが好ましく、末端がp-tert-オクチルフェニル基であるポリカーボネート樹脂が好ましい。
末端がアルキルフェニル基で封鎖されたものは、強度を維持しながら高度の流動性を有し、Q値が30×10-2cm/sec以上を可能とする。
さらに、もう一つの好ましい方法は、ポリカーボネート樹脂(A)がポリカーボネートオリゴマーを含有する方法である。ポリカーボネートオリゴマー自体はQ値が4000×10-2cm/sec以上が可能であり、これをQ値が10×10-2cm/secより小さい標準的なポリカーボネート樹脂と組み合わせて、Q値が上記範囲になるように調整することも可能であるし、勿論、Q値が10×10-2cm/secより大きい高流動性ポリカーボネート樹脂と組み合わせて、より大きなQ値とすることもできる。ただし、ポリカーボネートオリゴマーを含有することはQ値を所定範囲内にするのに有効ではあるが、ポリカーボネートオリゴマーを含有すると成形時にガスを発生しやすくなり、金型汚染や成形品の外観不良が生じやすいので、その点では好ましくない。ポリカーボネートオリゴマーを含有する場合は、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)としてのQ値は10×10-2cm/sec以上、150×10-2cm/sec以下であるが、好ましくは11×10-2cm/sec以上、より好ましくは14×10-2cm/sec以上、さらに好ましくは20×10-2cm/sec以上、特に好ましくは30×10-2cm/sec以上であり、また、好ましくは130×10-2cm/sec以下、中でも120×10-2cm/sec以下、100×10-2cm/sec以下、80×10-2cm/sec以下、特に好ましくは60×10-2cm/sec以下である。
[膨張黒鉛(B)]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は膨張黒鉛(B)を含有する。
膨張黒鉛(または膨張化黒鉛とも称される。)は、天然に産出される天然黒鉛、または石油コークス、石油ピッチ、無定形炭素等の非結晶質炭素を加熱により結晶化して、原料黒鉛のC軸方向に膨張させた黒鉛である。
膨張黒鉛(B)は、平均粒径が50~500μmであることが好ましく、100~500μmがより好ましい。このような膨張黒鉛を使用することにより、熱伝導性が良好になる傾向にある。
ここで膨張黒鉛(B)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定したときの積算累積容量%が50%であるD50平均粒径である。
また、膨張黒鉛の嵩比重は0.01~0.50g/cmであることが好ましく、0.05~0.30g/cmがより好ましく、0.10~0.25g/cmがさらに好ましい。嵩比重が0.50g/cmを超えると熱伝導性が低下しやすく、0.01g/cmを下回るとポリカーボネート樹脂組成物製造時の押出安定性が悪く好ましくない。
膨張黒鉛(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリカーボネート樹脂(A)との分散性を高めるために、表面処理を施してあることが好ましい。このような表面処理が施されたものとしては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪族金属塩等の表面処理剤でその表面を処理したものや、インターカレーション法によりアンモニウム塩等による有機化処理したものや、さらにウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂をバインダーとして処理したもの等が挙げられる。
膨張黒鉛(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、10~100質量部である。このような量で、上記したQ値のポリカーボネート樹脂(A)と組み合わせることにより、膨張黒鉛(B)がポリカーボネート樹脂(A)への分散状態が、後記したモルフォロジー画像からも分かるように、極めて良くなり熱伝導率が向上する。膨張黒鉛(B)の含有量が10質量部未満では熱伝導性が不十分となりやすく、逆に100質量部を超えると強度や流動性が不十分となりやすい。膨張黒鉛(B)の含有量は、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
[リン系難燃剤(C)]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系難燃剤(C)を含有する。
リン系難燃剤としては、分子中にリンを含む化合物であり、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、熱安定性の面から、例えば下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物や、下記一般式(2)または(3)で表されるホスファゼン化合物が好ましい。
Figure 2022182963000002
Figure 2022182963000003
Figure 2022182963000004
<リン酸エステル化合物>
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なる縮合リン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。kは、通常0~5の整数であり、異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは0.5~2、より好ましくは0.6~1.5、さらに好ましくは0.8~1.2、特に好ましくは0.95~1.15の範囲である。
また、Xは、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、レゾルシノール、ビスフェノールA、3,3’-ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0または1を表し、中でも1であることが好ましい。
また、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1~6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基、p-クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、tert-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(tert-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(tert-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル類;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート、ビフェニルビス-ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル類;等が挙げられる。
一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.1mgKOH以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。かかる酸価の下限は実質的に0とすることも可能である。一方、ハーフエステルの含有量は1.1質量部以下がより好ましく、0.9質量部以下がさらに好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合やハーフエステルの含有量が1.1質量部を超える場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性や耐加水分解性の低下を招きやすい傾向がある。
本発明に用いるリン酸エステル化合物としては、上述のものの他に、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,3-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、リン酸エステル部位を含有する、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはエポキシ樹脂も当然含まれる。
<ホスファゼン化合物>
上記一般式(2)または(3)で表されるホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、(ポリ)トリルオキシホスファゼン(例えば、o-トリルオキシホスファゼン、m-トリルオキシホスファゼン、p-トリルオキシホスファゼン、o,m-トリルオキシホスファゼン、o,p-トリルオキシホスファゼン、m,p-トリルオキシホスファゼン、o,m,p-トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)キシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C1-6アルキルC6-20アリールオキシホスファゼンや、(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン(例えば、フェノキシo-トリルオキシホスファゼン、フェノキシm-トリルオキシホスファゼン、フェノキシp-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p-トリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p-トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)フェノキシキシリルオキシホスファゼン、(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C6-20アリールC1-10アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン等が例示できる。
これらのうち、好ましくは、環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状C1-3アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン、C6-20アリールオキシC1-3アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン(例えば、環状及び/又は鎖状トリルオキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状フェノキシトリルフェノキシホスファゼン等)である。
一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、なかでもR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120~130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。
また、一般式(2)中、tは3~25の整数を表すが、なかでもtが3~8の整数である化合物が好ましく、tの異なる化合物の混合物であってもよい。なかでも、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10~40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
一般式(3)中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、R及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220~250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3~10,000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。
また、Rは、-N=P(OR基、-N=P(OR基、-N=P(O)OR基、-N=P(O)OR基から選ばれる少なくとも1種を示し、R10は、-P(OR基、-P(OR基、-P(O)(OR基、-P(O)(OR基から選ばれる少なくとも1種を示す。
また、一般式(3)中、uは3~10,000の整数を示し、好ましくは3~1,000、より好ましくは3~100、さらに好ましくは3~25である。
また、本発明に用いるホスファゼン化合物は、その一部が架橋された架橋ホスファゼン化合物であってもよい。このような架橋構造を有することで耐熱性が向上する傾向にある。
このような架橋ホスファゼン化合物としては、下記一般式(4)に示す架橋構造、例えば、4,4’-スルホニルジフェニレン(ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2-(4,4’-ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’-ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
Figure 2022182963000005
[式(4)中、Xは-C(CH-、-SO-、-S-、又は-O-であり、vは0又は1である。]
また、架橋ホスファゼン化合物としては、一般式(2)においてR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物、又は、前記一般式(3)においてR及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物が難燃性の点から好ましく、環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物及び/又は一般式(3)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基及びフェニレン基数を基準として、通常50~99.9%、好ましくは70~90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
本発明において、ホスファゼン化合物は、前記一般式(2)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物、及び、上記一般式(3)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物よる成る群から選択される少なくとも1種であることが、難燃性及び機械的特性の点から好ましい。
リン系難燃剤(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、2~20質量部である。リン系難燃剤(C)の配合量が2質量部を下回る場合は、難燃性が不十分であり、20質量部を超えると著しい耐熱性の低下や、機械物性の低下を引き起こす。リン系難燃剤(C)がリン酸エステル化合物である場合の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、2~10質量部であり、リン系難燃剤(C)がホスファゼン化合物である場合の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、8~15質量部である。
[ガラス繊維(D)]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、ガラス繊維(D)を含有することも好ましい。ガラス繊維(D)のガラス組成には特に制限はないが、好ましくは無アルカリガラス(Eガラス)である。
ガラス繊維(D)としては、断面(ガラス繊維の繊維長さ方向に直交する断面)形状が、円形のものよりも、断面形状が扁平のガラス繊維(以下、「扁平ガラス繊維」ともいう。)の方が、流動性が良い上に、層状構造を有する膨張黒鉛(B)と共に樹脂組成物の流れ方向に平行して流動しやすく、膨張黒鉛(B)の分散がより良好になり熱伝導性が向上し、成形品の寸法安定性等の向上効果に優れることから好ましい。
ここで、ガラス繊維の断面形状は、繊維の長さ方向に直交する断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率で表すことができ、扁平ガラス繊維の扁平率はその平均値で1.5~8であることが好ましく、3~8であることがより好ましい。
扁平ガラス繊維の断面の長径D2の平均値は、通常10~50μm、好ましくは15~40μm、より好ましくは20~35μm、さらに好ましくは24~30μmであり、特に好ましくは25~30μmである。
ガラス繊維(D)の平均繊維長と平均繊維径の比(アスペクト比)は、通常2~1000、好ましくは2.5~700、より好ましくは3~600である。ガラス繊維(D)のアスペクト比が2以上であれば、機械的強度の向上効果に優れ、600以下であれば、ソリや異方性を抑え、成形品外観の低下を防止することができる。
ガラス繊維(D)は、樹脂マトリクスとの接着性を改良すると共に、ポリカーボネート樹脂(A)の分解を抑制するために、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理したものを用いてもよい。ただし、市販のガラス繊維は、予め表面処理剤で表面処理されているものが多いため、表面処理品を用いる場合は、表面処理剤を更に用いる必要はない。
ガラス繊維(D)を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、35質量部以下、中でも30質量部以下、25質量部以下、特には20質量部以下が好ましい。このような量で含有することにより、ポリカーボネート樹脂組成物の熱伝導率を高くしたままで、引張特性や曲げ特性を向上させることができる。ガラス繊維(D)の含有量が5質量部未満では、ガラス繊維(D)を配合したことによる機械的特性の向上効果を十分に得ることができにくく、50質量部を超えると、ガラス繊維(D)の高配合に起因してガラス繊維(D)の表面浮きによる透明性や成形品外観の低下、耐衝撃性の低下が問題となりやすい上に、ポリカーボネート樹脂組成物の溶融押出(ペレット化)が困難になる場合がある。
[離型剤(E)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤(E)を含有することが好ましい。離型剤(E)としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であることが好ましい。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーンオイル等が挙げられる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
離型剤(E)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量を前記範囲の下限値以上とすることにより離型性の効果が十分に得られやすく、離型剤の含有量が前記範囲の上限値以下とすることにより、十分な耐加水分解性が得られ、また射出成形時の金型汚染などが生じにくくなる。
[安定剤(F)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、安定剤(F)を含有することが好ましく、安定剤(F)としてはリン系安定剤やフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
リン系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン,2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
フェノール系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。フェノール系安定剤の含有量を前記範囲の下限値以上とすることで、フェノール系安定剤としての効果を十分得ることができる。また、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値以下にすることにより、効果が頭打ちになることなく経済的である。
[酸性基含有有機化合物(G)]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、酸性基含有有機化合物(G)を含有することも好ましい。酸性基含有有機化合物(G)とは、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基に代表される酸性基を有する有機化合物であり、好適にはカルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基からなる群より選択される少なくとも1種を有する有機化合物である。特にカルボキシル基、カルボン酸無水物基およびホスホン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の酸性基を有する有機化合物が好ましく、中でもカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を有する有機化合物が好ましく、特には脂肪族カルボン酸が好ましい。
脂肪族カルボン酸としては、炭素数が10~22の脂肪族カルボン酸が好ましく、より好ましくは炭素数10~22の飽和脂肪族モノカルボン酸であり、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。これらの中では、ステアリン酸またはベヘン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。
酸性基含有有機化合物(G)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01~0.1質量部であり、より好ましくは0.02質量部以上、さらには0.03質量部以上が好ましく、また、より好ましくは0.08質量部以下、さらに好ましくは0.07質量部以下である。含有量が上記範囲にあることで、成形時に離型しやすく、流動性も向上する。上記範囲の下限値未満の場合は、酸性基含有有機化合物(G)による耐衝撃性の改良の効果が不十分となりやすく、含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性が低下しやすく、ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じやすい。
[難燃助剤(H)]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃助剤(H)を含有することも好ましい。本発明において難燃助剤(H)とは、ポリカーボネート樹脂を難燃化するのに使用されるリン系難燃剤(C)と併用して、相乗効果を発現させるものをいう。
難燃助剤としては有機系難燃助剤と無機系難燃助剤が挙げられる。
有機系難燃助剤として、好ましいものとしてフッ素樹脂が挙げられ、その中でもより好ましいものとしてポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
無機系難燃助剤としては、ほう酸亜鉛、ほう酸バリウム等のほう酸化合物、二酸化錫、錫酸亜鉛等の錫化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等のアンチモン化合物、酸化モリブデン等のモリブデン化合物等が挙げられ、中でもほう酸化合物が好ましく、ほう酸亜鉛が特に好ましい。
また、タルクも難燃性をさらにより向上させることができるので、特に好ましい。
リン系難燃剤(C)と難燃助剤(H)を併用すると、後記実施例に示すように、より薄肉でもUL-94でのV-0を達成し、燃焼時間も短くすることが可能となる。
難燃助剤(H)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.5~5質量部であり、より好ましくは0.8質量部以上、さらには1質量部以上が好ましく、また、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。含有量が上記範囲にあることで、さらに薄肉でもUL-94でのV-0を達成し、燃焼時間も短くすることが可能となる
[その他の成分]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、上記した以外の各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
<その他の樹脂>
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
その他の樹脂を含有する場合は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましく、中でも20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、7質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、特には1質量部以下であることが好ましい。
<樹脂添加剤>
樹脂添加剤としては、例えば、炭素繊維、滴下防止剤(フルオロポリマー)、紫外線吸収剤、染顔料(カーボンブラックを含む)、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、炭素繊維を含有することも可能であるが、炭素繊維を含有することは流動性を低下させることに繋がり、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に於ける優れた流動性がもたらす作用効果を損なう恐れがあるので、炭素繊維を含有する場合の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは5質量部未満、3質量部未満とすることがより好ましい。
また、本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、滴下防止剤であるフルオロポリマーを含有することも可能であるが、フルオロポリマーの含有も流動性を低下させるので、フルオロポリマーを含有する場合の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.5質量部未満、中でも0.3質量部未満、0.2質量部未満、0.1質量部未満、特には0.05質量部未満とすることが好ましい。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記した必須成分、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。二軸混練押出機を使用する場合は、ガラス繊維はサイドフィードすることが好ましい。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
[ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性に優れ、ISO22007-2に準拠し、100mm×100mm×3mmtの成形品の面方向(樹脂の流動方向)の熱伝導率が、好ましくは10W/mK以上であり、より好ましくは11W/mK以上であり、その上限としては好ましくは13.5W/mK以下である。なお、熱伝導率の具体的な測定方法は、実施例に記載する通りである。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性にも優れており、JIS K7210に準拠し、高荷式フローテスターを用いて、278℃、荷重160kgfの条件下で測定する単位時間あたりの流出量Q値が、ガラス繊維なしの非強化系で好ましくは4×10-2cm/sec以上、ガラス繊維入りの強化系でも好ましくは2.5×10-2cm/sec以上の値を示す。なお、Q値の具体的な測定方法は、実施例に詳記する通りである。
[成形品]
ポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットは、各種の成形法で成形して成形品とされる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、筐体、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
成形体を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。これらの中では特には射出成形法が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性と流動性、成形性に優れ、成形時のガス発生の問題がなく、強度と難燃性を併せ有する高熱伝導性の樹脂材料であるので、これを成形した成形品は、電気電子部品や照明器具用部品等に好適であり、例えばプロジェクターの放熱部品や筐体、各種ルーター等の放熱部品や筐体、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ或いは各種携帯端末の部品や筺体、LED照明におけるLED実装用基板又はヒートシンク部材並びに部品類、バッテリー充電用機器部品、バッテリーカバー等に特に好適である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下の表1の通りである。
なお、表1中、ポリカーボネート樹脂(A1)~(A9)のQ値は、前述した方法で求めた値である。
Figure 2022182963000006
(実施例1~23、比較例1~2)
上記表1に記載した各成分を、下記の表2~5に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30HSST)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、ガラス繊維を配合する場合はサイドフィードして、溶融混練させポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[密度]
上記で得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、日精樹脂工業社製射出成形機(型締め力80T)を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃の条件で、ISOに準拠したISO試験片を成形し、このISO試験片のうち曲げ試験片を取り除いた部分を用いて、ISO1183に準拠して密度を測定した。
[流動性の評価:Q値(単位:×10-2cm/sec)]
上記で得られたペレットを、100℃で4時間以上乾燥した後、JIS K7210付属書Cに基づき、高荷式フローテスターを用いて、278℃、荷重160kgfの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:×10-2cm/sec)を測定して、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
[引張特性と曲げ特性の評価]
上記で得られたペレットを、100℃で5時間乾燥した後、日精樹脂工業社製射出成形機(型締め力80T)を用いて、シリンダー設定温度300℃、金型温度100℃、射出時間2秒、成形サイクル40秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
上記ISO多目的試験片(4mm)を用い、ISO規格527-1及びISO527-2に準拠して、23℃において、引張強度(単位:MPa)、引張弾性率(単位:MPa)、引張歪み(単位:%)を測定した。
また、上記ISO多目的試験片(4mm)を用い、ISO178に準拠して、23℃において、曲げ強度(単位:MPa)と曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
[成形時のガス発生の評価]
上記したISO多目的試験片(4mm)を射出成形で行う際、射出成形機のノズル先端から発生するガスの様子を目視で観察し、ガスの発生がほとんど認められないものを「○」、ガスの発生が認められるものを「△」、著しいガスの発生が認められるものを「×」と、評価した。
[難燃性の評価:UL-94(2mmt、1.5mmt)]
得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製「SE100DU」)を用い、樹脂温度300℃、金型温度100℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mmで、肉厚が2mmのUL試験用試験片を得た。実施例22、23においては、肉厚が1.5mmのUL試験用試験片も成形し、評価を行った。
得られたUL試験用試験片を、23℃、相対湿度50%の高温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して試験を実施した。燃焼性結果は良好な順からV-0、V-1、V-2、HBとし、規格外のものをNGと分類した。
[熱伝導率の測定(単位:W/m・K)]
得られたペレットについて、日精樹脂工業社製射出成形機(型締め力80T)を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃の条件で、100mm×100mm×3mmtの試験片を射出成形した。
この試験片を用い、ホットディスク法熱物性測定装置(京都電子工業社製「TPS-2500S」)により、ISO22007-2に準拠し、試験片の面方向(樹脂の流動方向)及び厚み方向の熱伝導率(単位:W/m・K)を測定した。
[モルフォロジー観察]
得られたISO引張試験片(厚さ4mm)の表層から深さ方向へ1500μmの部分で、樹脂組成物の流動方向に平行な断面を、Leica社製「UC7」を用い、ダイヤモンドナイフで厚さ100nmの超薄切片を切り出した。得られた超薄切片を四酸化ルテニウムで40分染色後、日立ハイテク社製走査電子顕微鏡(SEM)「S-4800」を用い、加速電圧2kVの条件で、SEM画像を得た。
取得したSEM画像を、画像解析ソフトを用いて膨張黒鉛ドメインの平均面積やドメインのサンプル数をより詳細に把握した。
図1、図2は、それぞれ実施例2と比較例1のSEM画像の写真である。図中、黒く見えるのが膨張黒鉛であり、白く見えるのはマトリックスを形成しているポリカーボネート樹脂(A)である。図2(比較例1)では、膨張黒鉛(B)が分散せずに一部凝集しているのが多く見られ(熱伝導度は9.1W/mK)、これに比べて、図1(実施例2)では膨張黒鉛(B)の凝集はなくポリカーボネート樹脂(A)への分散が良好になっている(熱伝導度は12.0W/mK)ことが分かる。
[樹脂組成物中の膨張黒鉛(B)の体積平均粒径(単位:μm)]
前記で得られたペレットを大気雰囲気下で500℃、3時間加熱して灰化して残った灰化サンプルに分散液を注入し、得られた分散液を用い、粒子径分布測定装置(マイクロトラック社製MT3300EXII)にて膨張黒鉛の体積平均粒径(単位:μm)を測定した。
結果を、以下の表2~5に示した。表2、3及び5はガラス繊維を含有しない非強化系、表4はガラス繊維強化系での結果である。
Figure 2022182963000007
Figure 2022182963000008
Figure 2022182963000009
Figure 2022182963000010
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性と流動性、成形性に優れ、成形時のガス発生の問題がなく、強度と難燃性を併せ有する高熱伝導性のポリカーボネート樹脂組成物であるので、高い熱伝導性が求められる各種の電気・電子機器部品等に好適に利用でき、産業上の利用性は高いものがある。

Claims (7)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、膨張黒鉛(B)10~100質量部及びリン系難燃剤(C)2~20質量部を含有する熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物であって、
    ポリカーボネート樹脂(A)は、JIS K7210に準拠し、高荷式フローテスターを用いて、278℃、荷重160kgfの条件下で測定する単位時間あたりの流出量Q値が10×10-2cm/sec~150×10-2cm/secの範囲にあることを特徴とする熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. さらに、ガラス繊維(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、5~50質量部含有する請求項1に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. さらに、離型剤(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~1質量部含有する請求項1または2に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. さらに、安定剤(F)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~1質量部含有する請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. さらに、酸性基含有有機化合物(G)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01~0.1質量部含有する請求項1~4のいずれかに記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. さらに、難燃助剤(H)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.5~5質量部含有する請求項1~5のいずれかに記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品。
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