β-トロフィン発現ベクターの構造を示す。
β-トロフィン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞における発現β-トロフィンプラスミド遺伝子を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたβ-トロフィンのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換β-トロフィンのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のβ-トロフィンの半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
成長ホルモン発現ベクターの構造を示す。
成長ホルモン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞における発現成長ホルモンプラスミド遺伝子を示す。
ユビキチン化アッセイを通じた成長ホルモンのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換成長ホルモンのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後の成長ホルモンの半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
インスリン発現ベクターの構造を示す。
インスリン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるインスリンプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたインスリンのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換インスリン変異体のユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のインスリンの半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
インターフェロン-α発現ベクターの構造を示す。
インターフェロン-α遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるインターフェロン-αプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたインターフェロン-αのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換インターフェロン-αのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のインターフェロン-αの半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
G-CSF発現ベクターの構造を示す。
G-CSF遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるG-CSFプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたG-CSFのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換G-CSFのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のG-CSFの半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
インターフェロン-β発現ベクターの構造を示す。
インターフェロン-β遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるインターフェロン-βプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたインターフェロン-βのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換インターフェロン-βのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のインターフェロン-βの半減期変化を示す。
JAK-STAT及びPI3K/AKTシグナル伝達様効果についての結果を示す。
エリスロポエチン発現ベクターの構造を示す。
エリスロポエチン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるエリスロポエチンプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたエリスロポエチンのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換エリスロポエチンのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のエリスロポエチンの半減期変化を示す。
MAPK/ERKシグナル伝達様効果についての結果を示す。
BMP2発現ベクターの構造を示す。
BMP2遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるBMP2プラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたBMP2のタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換BMP2のユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のBMP2の半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)発現ベクターの構造を示す。
FGF-1遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるFGF-1プラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたFGF-1のタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換FGF-1のユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のFGF-1の半減期変化を示す。
MAPK/ERKシグナル伝達様効果についての結果を示す。
レプチン発現ベクターの構造を示す。
レプチン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるレプチンプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたレプチンのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換レプチンのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のレプチンの半減期変化を示す。
PI3K/AKTシグナル伝達様効果についての結果を示す。
血管内皮成長因子A(VEGFA)発現ベクターの構造を示す。
VEGFA遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるVEGFAプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたVEGFAのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換VEGFAのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のVEGFAの半減期変化を示す。
JAK-STAT及びPI3K/AKTシグナル伝達様効果についての結果を示す。
グレリン/オベスタチンプレプロペプチド(Prepro-GHRL)発現ベクターの構造を示す。
Prepro-GHRL遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるPrepro-GHRLプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたPrepro-GHRLのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換Prepro-GHRLのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のPrepro-GHRLの半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
GHRL発現ベクターの構造を示す。
GHRL遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるGHRLプラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたGHRLのタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換GHRLのユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のGHRLの半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)発現ベクターの構造を示す。
GLP-1遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
HEK-293T細胞におけるGLP-1プラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたGLP-1のタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換GLP-1のユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のGLP-1の半減期変化を示す。
JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
IgG重鎖発現ベクターの構造を示す。
IgG重鎖遺伝子に対するクローニングの結果を示す。
HEK-293T細胞におけるIgG重鎖プラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたIgG重鎖のタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換IgG重鎖のユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のIgG重鎖の半減期変化を示す。
IgG軽鎖発現ベクターの構造を示す。
IgG軽鎖遺伝子に対するクローニングの結果を示す。
HEK-293T細胞におけるIgG軽鎖プラスミド遺伝子の発現を示す。
ユビキチン化アッセイを通じたIgG軽鎖のタンパク質分解経路を説明している。
野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換IgG軽鎖のユビキチン化レベルを示す。
タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のIgG軽鎖の半減期変化を示す。
以降、実施例を参照して、本発明についてより詳細に説明する。これらの実施例は、いかなる方法においても、本発明を限定することが意図されるものでないことを理解しなければならない。
本発明の一実施形態において、タンパク質は、β-トロフィンである。β-トロフィンアミノ酸配列(配列番号1)において、N末端から62、124、153、及び158に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の増加したβ-トロフィンが提供される。さらに、糖尿病及び肥満を予防及び/又は治療するための置換β-トロフィンを含む医薬組成物が提供される(Cell、153(4)、747758、2013;Cell Metab.、18(1)、5~6、2013;Front Endocrinol(Lausanne)、4、146、2013)。
本発明の他の実施形態において、タンパク質は、成長ホルモンである。この成長ホルモンのアミノ酸配列(配列番号10)において、N末端から64、67、96、141、166、171、184、194、及び198に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の改善された成長ホルモンが提供される。さらに、小人症、歌舞伎症候群、及びカーンズ・セイヤー症候群(KSS)を予防及び/又は治療するための置換成長ホルモンを含む医薬組成物が提供される(J Endocrinol Invest.、39(6)、667~677、2016;J Pediatr Endocrinol Metab.、2016、[Epub ahead of print];Horm Res Paediatr.2016、[Epub ahead of print])。
本発明の他の実施形態において、タンパク質は、インスリンである。このインスリンのアミノ酸配列(配列番号17)において、N末端から53及び88に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の改善されたインスリンが提供される。さらに、糖尿病を予防及び/又は治療するための置換インスリンを含む医薬組成物が提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、インターフェロン-αである。このインターフェロン-αのアミノ酸配列(配列番号22)において、N末端から17、54、72、93、106、135、144、154、156、157、及び187に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の改善されたインターフェロン-αが提供される。さらに、多発性硬化症、自己免疫疾患、関節リウマチを含む免疫疾患、及び/又は、固形癌及び/又は血液癌を含む癌、及び/又は、ウィルス感染、HIV関連疾患、及びC型肝炎を含む感染症、インターフェロン-α治療を必要とする疾患又は障害を予防及び治療するための置換インターフェロン-αを含む医薬組成物が提供される(Ann Rheum Dis.、42(6)、672~676、1983;Memo.、9、63~65、2016)。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、G-CSFである。G-CSFのアミノ酸配列(配列番号31)において、N末端から11、46、53、64、及び73に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の延長されたG-CSFが提供される。さらに、好中球減少症を予防及び/又は治療するためのG-CSFを含む医薬組成物が提供される(EMBO Mol MeD.2016、[Epub ahead of print])。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、インターフェロン-βである。インターフェロン-βのアミノ酸配列(配列番号36)において、N末端から4、40、54、66、73、120、126、129、136、144、155、及び157に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の延長されたインターフェロン-βが提供される。さらに、多発性硬化症、自己免疫疾患、関節リウマチを含む免疫疾患、及び/又は、固形癌及び/又は血液癌を含む癌、及び/又は、ウィルス感染、HIV関連疾患、及びC型肝炎を含む感染症を予防及び/又は治療するための置換インターフェロン-βを含む医薬組成物が提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、エリスロポエチンである。エリスロポエチンのアミノ酸配列(配列番号43)において、N末端から47、72、79、124、143、167、179、及び181に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の増加されたエリスロポエチンが提供される。さらに、慢性的腎不全、外科手術、及び癌又は癌治療等によって引き起こされる貧血を予防及び/又は治療するための置換エリスロポエチン含有医薬組成物が提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、骨形成タンパク質-2(BMP2)である。BMP2のアミノ酸配列(配列番号52)において、N末端から32、64、127、178、185,236、241、272、278、281、285、287、290、293、297、355、358、379、及び383に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の増加されたBMP2が提供される。さらに、貧血及び骨疾患を予防及び/又は治療するための置換BMP2含有医薬組成物が提供される(CeLL J.、17(2)、193~200、2015;Clin Orthop Relat Res.、318、222~230、1995)。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)である。FGF-1のアミノ酸配列(配列番号61)において、N末端から15、24、25、27、72、115、116、120、127、128、133、及び143に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の増加したFGF-1が提供される。さらに、ニューロン疾患を予防/及び治療するための置換FGF-1含有医薬組成物が提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、食欲抑制ホルモン(レプチン)である。食欲抑制ホルモン(レプチン)のアミノ酸配列(配列番号66)において、N末端から26、32、36、54、56、74、及び115に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の増加した食欲抑制ホルモン(レプチン)が提供される。さらに、脳疾患、心臓疾患、及び/又は肥満を予防及び/又は治療するための置換食欲抑制ホルモン(レプチン)含有医薬組成物が提供される(Ann N Y Acad Sci.、1243,1529、2011;J Neurochem.、128(1)、162~172、2014;Clin Exp Pharmacol Physiol.、38(12)、905~913、2011)。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、VEGFAである。VEGFAのアミノ酸配列(配列番号75)において、N末端から22、42、74、110、127、133、134、141、142、147、149、152、154、156、157、169、180、184、191、及び206に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、アンチエイジング、毛髪成長、傷痕、及び/又は血管形成に関連する疾患を予防及び/又は治療するための半減期が増加したVEGFAと、それを含む医薬組成物とが提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、食欲刺激ホルモン前駆体、グレリン/オベスタチンプレプロホルモン(prepro-GHRL)である。食欲刺激ホルモン前駆体のアミノ酸配列(配列番号80)において、N末端から39、42、43、47、85、100、111、及び117に対応する位置におけるリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の増加を示す食欲刺激ホルモン前駆体が提供される。さらに、肥満、栄養不良、及び/又は神経性無食欲症等の摂食障害を予防及び/又は治療するための置換食欲刺激ホルモン前駆体を含む医薬組成物が提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、食欲刺激ホルモン(グレリン)である。グレリンのアミノ酸配列(配列番号83)において、N末端から39、42、43、及び47に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。従って、半減期の増加した食欲刺激ホルモン(グレリン)が提供される。さらに、肥満、栄養不良、及び/又は神経性無食欲症等の摂食障害を予防及び/又は治療するための置換グレリンを含む医薬組成物が提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)である。GLP-1のアミノ酸配列(配列番号92)において、N末端から117及び125に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、糖尿病を予防及び/又は治療するための半減期の増加したGLP-1と、それを含む医薬組成物とが提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、IgGである。IgG重鎖のアミノ酸配列(配列番号97)において、N末端から49、62、84、95、143、155、169、227、232、235、236、240、244、268、270、296、310、312、339、342、344、348、356、360、362、382、392、414、431、436、及び461に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、癌を予防及び/又は治療するための半減期の改善されたIgGと、それを含む医薬組成物とが提供される。
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、IgGである。IgG軽鎖のアミノ酸配列(配列番号104)において、N末端から61、64、67、125、129、148、167、171、191、205、210、212、及び229に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、癌を予防及び/又は治療するための半減期の改善されたIgGと、それを含む医薬組成物とが提供される。
本発明において、タンパク質のアミノ酸配列のリジン残基をアルギニン(R)残基で置換するために特定部位の突然変異誘発が採用される。この方法によると、特定部位の突然変異誘発を生じるためにDNA配列を使用してプライマーセットが調製された後、変異体プラスミドDNAを生成する特定条件下でPCRが実施される。
本発明において、ユビキチン化の程度は、免疫沈降を使用することにより、細胞株を標的タンパク質で形質移入することによって判定される。MG132試薬治療後に形質移入された細胞株中でユビキチン化レベルが上昇すると、標的タンパク質がユビキチン-プロテアソーム経路を通じて分解されると理解される。
本発明の医薬組成物は、経口、経皮、皮下、静脈内、又は筋肉内の投与を含む種々の方法を通じて体内に投与可能であり、注射型製剤として投与可能であることがより好ましい。さらに、本発明の医薬組成物は、その投与後に、有効成分の迅速、持続的、又は遅延的放出を行う当業者に周知の方法を使用して製剤化可能である。この製剤は、錠剤、ピル、粉体、小袋、エリキシル剤、懸濁液、乳液、溶液、シロップ、エアロゾル、ソフトタイプ及びハードタイプのゼラチンカプセル、無菌注射可能な溶液、無菌包装粉体等の形態であってもよい。好適なキャリア、賦形剤、希釈剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、マニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微小結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、オキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。さらにこの製剤は、追加で、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、着香料、乳化剤、保存料等を含んでもよい。
好適なキャリア、賦形剤、及び希釈剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、マニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微小結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、オキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。さらにこの製剤は、追加で、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、着香料、乳化剤、保存料等を含んでもよい。
本明細書において使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に否定をしていない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、「含んでいる」「含む」「有している」「有する」「伴う」「等」又はこれらの活用形は、これらの用語が明細書及び/又は請求書のいずれかにおいて使用される程度において、限定的なものでなく、「含む」という用語と同様に包含的であることが意図されるものである。本発明において、「生体活性ポリペプチド又はタンパク質」とは、ヒトを含む哺乳動物への投与時、有用な生物学的活性を表す(ポリ)ペプチド又はタンパク質である。
以下の実施例は、例示としての実施形態を提供するものである。本開示と当業者の一般的なレベルに鑑みて、当業者は、以下の実施例が単なる例示であることを意図されるものであり、本クレームの主題の範囲から逸脱することなく、多数の変更、修正、及び代替が採用可能であることを理解するであろう。
実施例1:β-トロフィンユビキチン化及び半減期延長の解析と細胞中のシグナル伝達の検討
1.β-トロフィン発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)β-トロフィン発現ベクタークローニング
β-トロフィンのクローニングにトリゾール及びクロロホルムを使用してHepG2(ATCC、HB-8065)からRNAを精製及び抽出した。その後、SuperScript(商標)第1鎖cDNA合成系(Invitrogen, Grand Island、NY)を使用して、単一鎖DNAを合成した。上述の合成cDNAをテンプレートとして使用したPCRにより、β-トロフィンを増幅した。得られたβ-トロフィンDNA増幅生成物をBamHI及びEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-myc(5.6kb)ベクターに連結した(図1、β-トロフィンアミノ酸配列:配列番号1)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図2)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。図1中下線太字のヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図2)。タンパク質発現の分析のため、図1のマップ中のpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、β-トロフィンタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図3)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
リジン残基は、特定部位の突然変異誘発を使用してアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRには以下のプライマーセットを使用した。
(β-トロフィンK52R)FP5’-AGGGACGGCTGACAAGGGCCAGGAA-3’(配列番号2)、RP5’-CCAGGCTGTTCCTGGCCCTTGT CAGC-3’(配列番号3);
(β-トロフィンK124R)FP 5’-GGCACAGAGGGTGCTACGGGACAGC-3’(配列番号4)、RP5’-CGTAGCACCCTCTGTGCCTGGGCCA-3’(配列番号5);
(β-トロフィンK153R)FP5’-GAATTTGAGGTCTTAAGGGCTCACGC-3’(配列番号6)、RP5’-CTTGTC AGCGTGAGCCCTTAAGACCTC-3’(配列番号7);及び
(β-トロフィンK158R)FP5’-GCTCACGCTGACAGGCAGAGCCACAT-3’(配列番号8)、RP5’-CCATAGGATGTGGCTCTGCCTGTCAGC-3’(配列番号9)。
pcDNA3-myc-β-トロフィンをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを調製した(表1)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞(ATCC、CRL-3216)に、プラスミドコードpcDNA3-myc-β-トロフィンWT及びpMT123-HA-ユビキチン(J Biol Chem.、279(4)、2368-2376、2004;Cell Research、22、873885、2012;Oncogene、22、12731280、2003;Cell、78、787-798、1994)を導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-β-トロフィンWT 2μgとpMT123-HA-ユビキチン 1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図4)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)を導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図5)。免疫沈降のために得られたタンパク質サンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。続いて、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズとの反応後、免疫沈降物を分離した。次に、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス2次抗体(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(Santa Cruz Biotechnology、sc-7392)、及び抗β-アクチン(Santa Cruz Biotechnology、sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系(Western blot detection kit、ABfrontier、Seoul、Korea)で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-β-トロフィンWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドが生成された(図4、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが示された(図4、レーン4)。pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)に関して、野生型よりバンドが弱かった。これらの結果は、ユビキチンが変異体プラスミドと結合しなかったため、検出されるユビキチンの量が少なかったことを提示している(図5、レーン3、5、及び6)。これらの結果は、β-トロフィンがまずユビキチンに結合した後、ポリ-ユビキチン鎖に結合し、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを説明している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したβ-トロフィン半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後20分、40分、及び60分で検出した。結果として、ヒトのβ-トロフィンの分解が観察された(図6)。ヒトのβ-トロフィンの半減期は、1時間未満であったが、βトロフィン変異体(K62R)及びβトロフィン変異体(K158R)の半減期は、図6に示される通り、1時間以上に延長された。
4.細胞中のβ-トロフィン及び置換β-トロフィンによるシグナル伝達
マウスの肝臓中の一過性発現β-トロフィンが膵臓β細胞増殖を触媒することが報告されている(Cell、153、747~758、2013)。この実験において、我々は、細胞中のβ-トロフィンと置換β-トロフィンとによるシグナル伝達について検討した。まず、PANC-1細胞(ATCC、CRL-1469)をPBSで7回洗浄した後、各々、3μgのpcDNA3-myc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(158R)を使用して導入した。導入から2日後、タンパク質を細胞から抽出して定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。この目的のために、各々、pcDNA3-myc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)を導入したPANC-1細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。その後、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(Santa Cruz Biotechnology、sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(Santa Cruz Biotechnology、sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)は、野生型と比較して、PANC-1細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図7)。
実施例2:成長ホルモンのユビキチン化及び半減期延長の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.GH発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)GH発現ベクタークローニング
PCRで増幅したGH DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCS4-フラグベクター(4.3kb、Oncotarget.、7(12)、14441-14457、2016)に連結した(図8、GHアミノ酸配列:配列番号10)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図9)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;60℃にて30秒間;72℃にて30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。図8中下線太字のヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図9)。タンパク質発現の分析のため、図8のマップ中のpCS4-フラグベクターのフラグに対する抗フラグ(Sigma-aldrich、F3165)抗体により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、成長ホルモンがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図10)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(GH K67R)FP5’-CCAAAGGAACAGAGGTATTCATTC-3’(配列番号11)、RP5’-CAGGAATGAATACCTCTGTTCCTT-3’(配列番号12);
(GH K141R)FP5’-GACCTCCTAAGGGACCTAGAG-3’(配列番号13)、RP5’-CTCTAGGTCCCTTAGGAGGTC-3’(配列番号14);および
(GH K166R)FP5’-CAGATCTTCAGGCAGACCTAC-3’(配列番号15)、RP5’-GTAGGTCTGCCTGAAGATCTG-3’(配列番号16)
pcDNA3-myc-β-成長ホルモンをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)3つの変異体プラスミドDNAを生成した(表2)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCS4-フラグ-GH WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCS4-フラグ-GH WT2μgとpMT123-HA-ユビキチン1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図11)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCS4-フラグ-GH WT、pCS4-フラグ-GH変異体(K67R)、pCS4-フラグ-GH変異体(K141R)、pCS4-フラグ-GH変異体(K166R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルのアセスメントのために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpCS4-フラグ-成長ホルモンWT、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)を共導入した。次に、導入後24時間で、免疫沈降を実施した(図12)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗フラグ(Sigma-aldrich、F3165)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。続いて、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズとの反応後、免疫沈降物を分離した。その後、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗フラグ(Sigma-aldrich、F3165)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗フラグ(Sigma-aldrich、F3165)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpCS4-フラグ-成長ホルモンWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドが生成された(図11、レーン2及び3)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図11、レーン3)。さらに、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)に関して、野生型と比較して、バンドが弱かった(図12、レーン3~5)。これらの結果は、ユビキチンが変異体プラスミドと結合しなかったため、検出されるユビキチンの量が少なかったことを提示している。これらの結果は、β-トロフィンがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを説明している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用した成長ホルモン半減期の解析
HEK293T細胞に、各々、2μgのpCS4-フラグ-成長ホルモンWT、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を同合成阻害剤による処理後1時間、2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトの成長ホルモンの分解が観察された(図13)。ヒトの成長ホルモンの半減期は、2時間未満であったが、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)の半減期は、図13に示される通り、8時間以上に延長された。
4.細胞中の成長ホルモン及び置換成長ホルモンによるシグナル伝達
成長ホルモンがタンパク質のSTAT(シグナル伝達物質及び転写の活性化因子)の転写を制御することが報告されている(Oncogene、19、2585~2597、2000)。この実験において、我々は、細胞中の成長ホルモンと置換成長ホルモンとによるシグナル伝達について検討した。まず、HEK293T細胞に、各々、3μgのpCS4-フラグ-成長ホルモンWT、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)を導入した。導入から1日後、超音波処理により、細胞溶解からタンパク質を得た。PANC-1細胞(ATCC、CRL-1469)をPBSで7回洗浄した後、以上のように得られたタンパク質を3μg使用して導入を行った。細胞中のシグナル伝達の解析のために、ウェスタンブロットを実施した。この目的のために、各々、pCS4-フラグ-成長ホルモンWT、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)を導入したPANC-1細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)は、pCS4-フラグ-成長ホルモンWTと比較して、PANC-1細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示し、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)は、コントロールと比較して、リン酸化STAT3の伝達が増加を示した(図14)。
実施例3:インスリンのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.インスリン発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)インスリン発現ベクタークローニング
PCRによるインスリンDNA増幅生成物をBamHI及びEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図15、インスリンアミノ酸配列:配列番号17)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図16)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;60℃にて30秒間;72℃にて30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。図15中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図16)。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図15のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、インスリンがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図17)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(インスリン K53R)FP5’-GGCTTCTTCTACACACCCAGGACCC-3’(配列番号18)、RP5’-CTCCCGGCGGGTCCTGGGTGTGTA-3’(配列番号19);および
(インスリン K88R)FP5’-TCCCTGCAGAGGCGTGGCATTGT-3’(配列番号20)、RP5’-TTGTTCCACAATGCCACGCCTCTGC AG-3’(配列番号21)
pcDNA3-myc-インスリンをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表3)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-インスリンWT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、cDNA3-myc-インスリンWT 2μgとpMT123-HA-ユビキチン1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図18)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。さらに、ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、及びpcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図19)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-インスリンWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強い結合を検出した(図18、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図18、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)に関して、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図19、レーン3)。これらの結果は、インスリンがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを教示している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したインスリン半減期の解析
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、及びpcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのインスリンの分解が観察された(図20)。その結果、ヒトのインスリンの半減期は、30分未満であったが、ヒトのpcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)の半減期は、図20に示される通り、1時間以上に延長された。
4.細胞中のインスリン及び置換インスリンによるシグナル伝達
インスリンが肝臓中のSTATリン酸化反応を刺激することにより、肝臓中のグルコース恒常性を制御することが報告されている(Cell Metab.、3、267275、2006)。この実験において、我々は、細胞中のインスリンと置換インスリンとによるシグナル伝達について検討した。まず、PANC-1細胞及びHepG2細胞をPBSで7回洗浄した後、各々、3μgのpcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、及びpcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)を導入した。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、及びpcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)を導入したPANC-1細胞及びHePG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)は、pcDNA3-myc-インスリンWTと比較して、PANC-1細胞及びHePG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図21)。
実施例4:インターフェロン-αのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.インターフェロン-α発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)インターフェロン-α発現ベクタークローニング
PCRで増幅されたインターフェロン-α DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図22、インターフェロン-αアミノ酸配列:配列番号22)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図23)。図22中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図23)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図22のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したインターフェロン-αタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図24)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(IFN-α K93R)FP5’-CTTCAGCACAAGGGACTCATC-3’(配列番号23)、RP5’-CAGATGAGTCCCTTGTGCTGA-3’(配列番号24)
(IFN-α K106R)FP5’-CTCCTAGACAGATTCTACACT-3’(配列番号25)、RP5’-AGTGTAGAATCTGTCTAGGAG-3’(配列番号26)
(IFN-α K144R)FP5’-GCTGTGAGGAGATACTTCCAA-3’(配列番号27)、RP5’-TTGGAAGTATCTCCTCACAGC-3’(配列番号28);および
(IFN-α K154R)P5’-CTCTATCTGAGAGAGAAGAAA-3’(配列番号29)、RP5’-TTTCTTCTCTCTCAGATAGAG-3’(配列番号30))
pcDNA3-myc-インターフェロン-αをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを生成した(表4)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-インターフェロン-α WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-インターフェロン-α WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチン DNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図25)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-インターフェロン-α WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-α WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図26)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-インターフェロン-αWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を生成することにより、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドが検出された(図25、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドを生成した(図25、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)に関して、変異体プラスミドがユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図26、レーン3~6)。これらの結果は、インターフェロン-αがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを説明している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したインターフェロン-α半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後1日及び2日で検出した。結果として、ヒトのインターフェロン-αの分解が観察された(図27)。ヒトのインターフェロン-αの半減期は、1日未満であったが、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)の半減期は、図27に示される通り、2日以上に延長された。
4.細胞中のインターフェロン-α及び置換インターフェロン-αによるシグナル伝達
IFN-αがSTAT-1、STA-2、及びSTA-3(J Immunol.、187、2578~2585、2011)を増強し、IFN-αが黒色腫瘍形成に寄与するSTAT3タンパク質を活性化することが報告されている(Eur J Cancer、45、1315~1323、2009)。この実験において、我々は、細胞中のインターフェロン-αと置換インターフェロン-αとによるシグナル伝達について検討した。まず、THP-1細胞(ATCC、TIB-202)をPBSで7回洗浄した後、各々、3μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-αWT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)を導入した。導入から1日後及び2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-インターフェロン-αWT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)を導入したTHP-1細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)は、pcDNA3-myc-インターフェロン-αWTと比較して、THP-1細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図28)。
実施例5:G-CSFのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.G-CSF発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)G-CSF発現ベクタークローニング
PCRで増幅されたG-CSF DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図29、G-CSFアミノ酸配列:配列番号31)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図30)。図29中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図30)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図29のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したG-CSFタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図31)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(G-CSF K46R)FP5’-AGCTTCCTGCTCAGGTGCTTAGAG-3’(配列番号32)、RP5’-TTGCTCTAAGCACCTGAGCAGGAA-3’(配列番号33);および
(G-CSF K73R)FP5’-TGTGCCACCTACAGGCTGTGCCAC-3’(配列番号34)、RP5’-GGGGTGGCACAGCCTGTAGGTGGC-3’(配列番号35)
pcDNA3-myc-G-CSFをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表5)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞(ATCC、CRL-3216)に、プラスミドコードpcDNA3-myc-G-CSF WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-G-CSF WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図32)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-GCSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-G-CSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、及びpcDNA3-myc-G-CSF(K73R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図33)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA-myc-G-CSF WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図32、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドを生成した(図32、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-G-CSF(K73R)に関して、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されるユビキチンの量が少なかった(図33、レーン4)。これらの結果は、G-CSFがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを示している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したG-CSF半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-G-CSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、及びpcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後4時間、8時間、及び16時間で検出した。結果として、ヒトのG-CSFの分解が観察された(図34)。ヒトのG-CSFの半減期は、約4時間であり、ヒトの置換G-CSF(K73R)の半減期は、図34に示される通り、16時間以上に延長された。
4.細胞中のG-CSF及び置換G-CSFによるシグナル伝達
G-CSFがグリオーマ細胞中のSTAT3を活性化することにより、グリオーマ成長に関与することが報告されている(Cancer Biol Ther.、13(6)、389~400、2012)。さらに、卵巣上皮癌細胞中にG-CSFが発現し、JAK2/STAT3経路を調節することにより、病理学的に女性の子宮癌に関連することが報告されている(Br J Cancer、110、133~145、2014)。この実験において、我々は、細胞中のG-CSFと置換G-CSFとによるシグナル伝達について検討した。まず、THP-1細胞(ATCC、TIB-202)をPBSで7回洗浄した後、各々、3μgのpcDNA3-myc-G-CSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、及びpcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)を導入した。導入から1日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-G-CSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、及びpcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)を導入したTHP-1細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)及びpcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)は、野生型と比較して、THP-1細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図35)。
実施例6:インターフェロン-βのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.インターフェロン-β発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)インターフェロン-β発現ベクタークローニング
PCRで増幅されたインターフェロン-β DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図36、インターフェロン-βアミノ酸配列:配列番号36)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図37)。図36中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図37)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて50秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図36のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したインターフェロン-βがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図38)。さらに、インターフェロン-βに関しては、グリコシル化により、細胞中に2種の発現バンドが生成された。経路を遮断する500部のPNGase F(New England Biolabs Inc.、P0704S)で細胞を処理した後、1つのみのバンドが検出された(図38)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(IFN-β K40R)FP5’-CAGTGTCAGAGGCTCCTGTGG-3’(配列番号37)、RP5’-CCACAGGAGCCTCTGACACTG-3’(配列番号38);
(INF-β K126R)FP5’-CTGGAAGAAAGACTGGAGAAA-3’(配列番号39)、RP5’-TTTCTCCAGTCTTTCTTCCAG-3’(配列番号40);および
(IFN-β K155R)FP5’-CATTACCTGAGGGCCAAGGAG-3’(配列番号41)、RP5’-CTCCTTGGCCCTCAGGTAATG-3’(配列番号42)
pcDNA3-myc-インターフェロン-βをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)3つのプラスミドDNAを生成した(表6)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-インターフェロン-β WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図39)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(155R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図40)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-インターフェロン-β WTと結合させることにより、ポリユビキチン化を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図39、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図39、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)に関して、野生型と比較してバンドが弱く、変異体のプラスミドがユビキチンと結合しなかったため、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図40、レーン3~5)。これらの結果は、インターフェロン-βがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを示している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したインターフェロン-β半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後4時間及び8時間で検出した。結果として、ヒトのインターフェロン-βの分解が観察された(図41)。ヒトのインターフェロン-βの半減期は、4時間未満であったが、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)の半減期は、図41に示される通り、8時間以上に延長された。
4.細胞中のインターフェロン-β及び置換インターフェロン-βによるシグナル伝達
AKTを含むシグナル経路の活性化が、IFN-β処理細胞によって誘発されることが報告されている(Pharmaceuticals(Basel)、3、994~1015、2010)。この実験において、我々は、細胞中のインターフェロン-βと置換インターフェロン-βとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)を使用して導入を行った。導入から1日後、超音波処理により、HepG2細胞溶解からタンパク質を得た後、PBSで7回洗浄したHepG2細胞に導入した。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、抗AKT(H-136、sc-8312)、抗リン酸化AKT(S473、Cell Signaling 9271S)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)は、野生型と比較して、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)中のリン酸化AKTシグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図42)。
実施例7:エリスロポエチン(EPO)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.エリスロポエチン(EPO)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)エリスロポエチン(EPO)発現ベクタークローニング
PCRで増幅されたエリスロポエチン(EPO)DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図43、エリスロポエチンアミノ酸配列:配列番号43)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図44)。図43中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図44)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図43のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したEPOタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図45)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(EPO K124R)FP5’-GCATGTGGATAGAGCCGTCAGTGC-3’(配列番号44)、RP5’-GCACTGACGGCTCTATCCACATGC-3’(配列番号45);
(EPO K167R)FP5’-TGACACTTTCCGCAGACTCTTCCGAGTCTAC-3’(配列番号46)、RP5’-GTAGACTCGGAAGAGTCTGCGGAAAGTGTCA-3’(配列番号47);
(EPO K179R)FP5’-CTCCGGGGAAGGCTGAAGCTG-3’(配列番号48)、RP5’-CAGCTTCAGCCTTCCC CGGAG-3’(配列番号49);および
(EPO K181R)FP5’-GGAAAGCTGAGGCTGTACACAGG-3’(配列番号50)、RP5’-CCTGTGTACAGCCTCAGCTTTCC-3’(配列番号51)
pcDNA3-myc-EPOをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを生成した(表7)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞(ATCC、CRL-3216)に、プラスミドコードpcDNA3-myc-EPO WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-EPO WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチン1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図46)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO(K179R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図47)
免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(Santa Cruz Biotechnology、sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-EPO WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを生成した(図46、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図46、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)に関して、変異体(K181R)がユビキチンと結合しなかったため、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図47、レーン6)。これらの結果は、インスリンがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを説明している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したエリスロポエチン半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのエリスロポエチンの分解が観察された(図48)。ヒトのエリスロポエチン(EPO)の半減期は、4時間未満であったが、pcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)の半減期は、図48に示される通り、8時間以上に延長された。
4.細胞中のエリスロポエチン(EPO)及び置換エリスロポエチン(EPO)によるシグナル伝達
EPOが投与されると、Erk1/2リン酸化反応を通じて細胞周期進行を調節することにより、低酸素症に効果を有することが報告されている(J Hematol Oncol.、6、65、2013)。この実験において、我々は、細胞中のエリスロポエチン(EPO)とエリスロポエチン(EPO)変異体とによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗Erk1/2(9B3、Abfrontier LF-MA0134)、抗リン酸化Erk1/2(Thr202/Try204、Abfrontier LF-PA0090)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)は、pcDNA3-myc-EPO野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化Erk1/2シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図49)。
実施例8:骨形成タンパク質2(BMP2)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.骨形成タンパク質2(BMP2)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)骨形成タンパク質2(BMP2)発現ベクタークローニング
PCRで増幅された骨形成タンパク質2(BMP2)DNAをEcoRI及びXhoIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図50、BMP2アミノ酸配列:配列番号52)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図51)。図50中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図51)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図50のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したBMP2タンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図52)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(BMP2 K293R)FP5’-GAAACGCCTTAGGTCCAGCTGTAAGAGAC-3’(配列番号53)、RP5’-GTCTCTTACAGCTGGACCTAAGGCGTTTC3’(配列番号54);
(BMP2 K297R)FP5’-TTAAGTCCAGCTGTAGGAGACACCCTTTGT-3’(配列番号55)、RP5’-ACAAAGG GTGTCTCCTACAGCTGGACTTAA-3’(配列番号56);
(BMP2 K355R)FP5’-GTTAACTCTAGGATTCCTAAGGC-3’(配列番号57)、RP5’-GCCTTAGGAATCCTAGAGTTAAC-3’(配列番号58);および
(BMP2 K383R)FP5’-GGTTGTATTAAGGAACTATCAGGAC-3’(配列番号59)、RP5’-GTCCTGATAGTTCCTTAATACAACC-3’(配列番号60)
pcDNA3-myc-BMP2をテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)5つのプラスミドDNAを生成した(表8)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、pcDNA3-myc-BMP2 WT及びプラスミドコードpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-BMP2 WT2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図53)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-BMP2 WT、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-BMP2 WT、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K62R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K124R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K158R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図54)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-BMP2 WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図53、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン化形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図53、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)に関して、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図54、レーン3~5)。これらの結果は、BMP2がまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを示している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したBMP2半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後4時間及び8時間で検出した。結果として、ヒトのBMP2の分解が観察された(図55)。ヒトのBMP2の半減期は、2時間未満であったが、ヒトpcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)の半減期は、図55に示される通り、4時間以上に延長された。
4.細胞中のBMP2及び置換BMP2によるシグナル伝達
骨形成タンパク質-2(BMP2)は、種々の骨髄腫細胞中のSTAT3を不活性化することにより、アポトーシスを誘発することが知られている(Blood、96、2005~2011、2000)。この実験において、我々は、細胞中のBMP2と置換BMP2とによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpcDNA3-myc-BMP2WT、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-BMP2WT、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動した。次に、抗ウサギと抗マウス2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図56)。
実施例9:線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)発現ベクタークローニング
PCRで増幅された線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)DNAをKpnI及びXhaIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCMV3-C-mycベクター(6.1kb)に連結した(図57、FGF-1アミノ酸配列:配列番号61)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図58)。図57中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図58)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図57のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したFGF-1がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図59)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(FGF-1 K27R)FP5’-AAGAAGCCCAGACTCCTCTAC-3’(配列番号62)、RP5’-GTAGAGGAGTCTGGGCTTCTT-3’(配列番号63);および
(FGF-1 K120R)FP5’-CATGCAGAGAGGAATTGGTTT-3’(配列番号64)、RP5’-AAACCAATTCCTCTCTGCATG-3’(配列番号65)
pCMV3-myc-FGF-1をテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表9)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCMV3-C-myc-FGF-1 WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCMV3-C-myc-FGF-1 WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図60)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCMV3-C-myc-FGF-1 WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpCMV3-C-myc-FGF-1 WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)及びpCMV3-C-myc-FGF-1(K120R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図61)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-FGF-1 WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図60、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図60、レーン4)。さらに、pCMV3-myc-FGF-1変異体(K27R)及びpCMV3-myc-FGF-1変異体(K120R)に関して、pCMV3-myc-FGF-1変異体(K27R)及びpCMV3-myc-FGF-1変異体(K120R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図61、レーン3及び4)。これらの結果は、FGF-1がまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを示している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したFGF-1半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpCMV3-C-myc-FGF-1WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)、及びpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後24時間、及び36時間で検出した。結果として、ヒトのFGF-1の分解が観察された(図62)。ヒトのFGF-1の半減期は、1日未満であったが、ヒトのpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)及び、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)の半減期は、図62に示される通り、1日以上に延長された。
4.細胞中のFGF-1及び置換FGF-1によるシグナル伝達
HEK293細胞が組換FGF-1で処理されるとき、Erk1/2リン酸化反応が増加することが報告されている(Nature、513(7518)、436~439、2014)。この実験において、我々は、細胞中のFGF-1と置換FGF-1とによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpCMV3-C-myc-FGF-1 WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)、及びpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pCMV3-C-myc-FGF-1 WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)、及びpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗Erk1/2(9B3、Abfrontier LF-MA0134)、抗リン酸化Erk1/2(Thr202/Try204、Abfrontier LF-PA0090)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)及びpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化ERK1/2シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図63)。
実施例10:レプチンのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.レプチン発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)レプチン発現ベクタークローニング
PCRで増幅されたレプチンDNAをKpnI及びXbaIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCMV3-C-mycベクター(6.1kb)に連結した(図64、レプチンアミノ酸配列:配列番号66)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図65)。図64中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図65)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて45秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図64のマップ中に示されるpCMV3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したレプチンタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図66)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(レプチン K26R)FP5’-CCCATCCAAAAGGTCCAAGAT-3’(配列番号67)、RP5’- ATCTTGGACCTTTTGGATGGG-3’(配列番号68);
(レプチン K32R)FP5’-GATGACACCAAGACCCTCATC-3’(配列番号69)、RP 5’-GATGAGGGTCTTGGTGTCATC-3’ (配列番号70);
(レプチン K36R)FP5’-ACCCTCATCAGGACAATTGTC-3’(配列番号71)、RP5’-GACAATTGTCCTGATGAGGGT-3’(配列番号72);および
(レプチン K74R)FP5’-ACCTTATCCAGGATGGACCAG-3’(配列番号73)、RP5’-CTGGTCCATCCTGGATAAGGT-3’(配列番号74)
pCMV3-C-myc-レプチンをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを生成した(表10)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCMV3-C-myc-レプチンWT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCMV3-C-myc-レプチンWT 6μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図67)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCMV3-C-myc-レプチンWT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各6μgのpCMV3-C-myc-レプチンWT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図68)。免疫沈降のために得られたタンパク質を、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpCMV3-C-myc-レプチンWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図67、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図67、レーン4)。さらに、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変更体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図68、レーン3、5、及び6)。これらの結果は、インスリンがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを示している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したレプチン半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、6μgのpCMV3-C-myc-レプチンWT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのレプチンの分解が観察された(図69)。ヒトのレプチンの半減期は、約4時間であり、ヒトのpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)の半減期は、図69に示される通り、8時間以上に延長された。
4.細胞中のレプチン及び置換レプチンによるシグナル伝達
レプチンが乳癌細胞中のAKTリン酸化反応を増進することが報告されており(Cancer Biol Ther.、16(8)、1220~1230、2015)、またPI3K/AKTシグナル伝達子宮癌を通じて癌細胞の成長を刺激することが報告されている(Int J Oncol.、49(2)、847、2016)。この実験において、我々は、細胞中のレプチンと置換レプチンとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、6μgのpCMV3-C-myc-レプチン WT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pCMV3-C-myc-レプチン WT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギと抗マウスのとの2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗AKT(H-136、sc8312)、抗リン酸化AKT(S473、Cell Signaling 9271S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)は、コントロールと比較して、HepG2細胞中のリン酸化Erk1/2シグナル伝達が著しい増加を示した(図70)。
実施例11:血管内皮成長因子A(VEGFA)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.血管内皮成長因子A(VEGFA)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)血管内皮成長因子A(VEGFA)発現ベクタークローニング
PCRで増幅された血管内皮成長因子A(VEGFA)DNAをKpnI及びXbaIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCMV3-C-mycベクター(6.1kb)に連結した(図71、VEGFAアミノ酸配列:配列番号75)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図72)。図71中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図72)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図71のマップ中に示されるpCMV3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したVEGFAがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図73)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(VEGFA K127R)FP5’-TACAGCACAACAGATGTGAATGCAGACC-3’(配列番号76)、RP5’-GGTCTGCATTCACATCTGTTGTGCTGTA-3’(配列番号77);および
(VEGFA K180R)FP5’-ATCCGCAGACGTGTAGATGTTCCTGCA-3’(配列番号78)、RP5’-TGCAGGAACATCTACACGTCTGCGGAT-3’(配列番号79)
pCMV3-C-myc-VEGFA DNAをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表11)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCMV3-C-myc-VEGFA WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCMV3-C-myc-VEGFA WT 6μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図74)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各6μgのpCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)、及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図75)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。
分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpCMV3-C-myc-VEGFA WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図74、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図74、レーン4)。さらに、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図75、レーン3及び4)。これらの結果は、VEGFAがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを示している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したVEGFA半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、6μgのpCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのVEGFAの分解が観察された(図76)。ヒトのVEGFAの半減期は、2時間未満であったが、ヒトのpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)の半減期は、図76に示される通り、4時間以上に延長された。
4.細胞中のVEGFA及び置換VEGFAによるシグナル伝達の検討
VEGFAは、内皮細胞の成長及び増殖に関連し、癌細胞中の血管形成において機能する一方で、PI3K/Akt/HIF-1α経路(Carcinogenesis、34、426~435、2013)に関与する。さらに、VEGFは、AKTリン酸化反応を誘発する(Kidney Int.、68、1648~1659、2005)。この実験において、我々は、細胞中のVEGFAと置換VEGFAとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)を8時間飢えさせた後、各々、6μgのpCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)、及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)、及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、抗AKT(H-136、sc-8312)、抗リン酸化AKT(S473、Cell Signaling 9271s)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果としてpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3及びリン酸化AKTシグナル伝達が同じであったか、増加を示した(図77)。
実施例12:食欲刺激ホルモン前駆体(グレリン/オベスタチンプレプロホルモン;prepro-GHRL)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.prepro-GHRL発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)prepro-GHRL発現ベクタークローニング
PCRで増幅されたprepro-GHRL DNAをKpnI及びXbaIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCMV3-C-mycベクター(6.1kb)に連結した(図78、prepro-GHRLアミノ酸配列:配列番号80)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図79)。図78中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図79)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図78のマップ中に示されるpCMV3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合した食欲刺激ホルモン前駆体タンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図80)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(prepro-GHRL K100R)FP5’-GCCCTGGGGAGGTTTCTTCAG-3’(配列番号81)、RP5’-CTGAAGAAACCTCCCCAGGGC-3’(配列番号82)
pCMV3-C-myc-prepro-GHRLをテンプレートとして使用することにより、リジン残基がアルギニンで置換された(K→R)プラスミドDNAを生成した(表12)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT 6μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図81)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT、pCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各6μgのpCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT及びpCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図82)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpCMV3-C-myc-VEGFA WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図81、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図81、レーン4)。さらに、pCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)に関して、pCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図82、レーン3)。これらの結果は、prepro-GHRLがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを示している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したprepro-GHRL半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpCMV3-myc-prepro-GHRL WT及びpCMV3-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのprepro-GHRLの分解が観察された(図83)。ヒトのprepro-GHRLの半減期は、2時間未満であったが、pCMV3-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)の半減期は、図83に示される通り、2時間以上に延長された。
4.細胞中のprepro-GHRL及び置換prepro-GHRLによるシグナル伝達
食欲刺激ホルモン前駆体が成長ホルモン分泌促進受容体(GHS-R)を通じて細胞成長を調節し、インビボにおけるカルシウム調節を通じてSTAT3を増進することが報告されている(Mol Cell Endocrinol.、285、19~25、2008)。この実験において、我々は、細胞中のprepro-GHRLと置換prepro-GHRLとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、6μgのpCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT及びpCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT及びpCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)を導入したHepG2細胞(ATCC、AB-8065)から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果としてpCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、増加を示した(図84)。
実施例13:グレリンのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.グレリン発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)グレリン発現ベクタークローニング
PCRで増幅された食欲刺激ホルモン(グレリン)DNAをBamHI及びXhoIIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図85、グレリンアミノ酸配列:配列番号83)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図86)。図85中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図86)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて20秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図85のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合した食欲刺激ホルモン(グレリン)pcDNA3-mycがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図87)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(グレリン K39R FP)5’-AGTCCAGCAGAGAAGGGAGTCGAAGAAGCCA-3’(配列番号84)、RP5’-TGGCTTCTTCGACTCCCT TCTCTGCTGGACT-3’(配列番号85);
(グレリン K42R)FP5’-AGAAAGGAGTCGAGGAAGCCACCAGCCAAGC-3’(配列番号86)、RP 5’-GCT TGGCTGGTGGCTTCCTCGACTCCTTTCT-3’(配列番号87);
(グレリン K43R FP)5’-AGAAAGGAGTCGAAGAGGCCACCAGC CAAGC-3’(配列番号88), RP 5’-GCTTGGCTGGTGGCCTCTTCGACTCCTTTCT-3’(配列番号89);および
(グレリン K47R)FP5’-AAGAAGCCACC AGCCAGGCTGCAGCCCCGA-3’(配列番号90)、RP5’-TCGGGGCTGCAGCCTGGCTGGTGGCTTCTT-3’(配列番号91)
pcDNA3-myc-グレリンをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを生成した(表13)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-グレリンWT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-グレリンWT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図88)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-グレリンWT、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-グレリン WT、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図89)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル))を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-グレリン WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図88、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図88、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図89、レーン3~6)。これらの結果は、prepro-GHRLがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを表している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したグレリン半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後12時間、24時間、及び36時間で検出した。結果として、ヒトのグレリンの分解が観察された(図90)。ヒトのグレリンの半減期は、15時間未満であったが、ヒトのpcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)の半減期は、図90に示される通り、36時間以上に延長された。
4.細胞中のグレリン及び置換グレリンによるシグナル伝達
食欲刺激ホルモンが成長ホルモン分泌促進受容体(GHS-R)を通じて細胞成長を調節し、インビボにおけるカルシウム調節を通じてSTAT3を増加させることが報告されている(Mol Cell Endocrinol.、285、19~25、2008)。この実験において、我々は、細胞中のグレリンと置換グレリンとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpcDNA3-myc-グレリンWT、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-グレリンWT、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果としてpcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、増加を示した(図91)。
実施例14:グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)発現ベクタークローニング
PCRで増幅されたグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図92、GLP-1アミノ酸配列:配列番号92)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図93)。図92中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(図93)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて20秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図92のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したGLP-1がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図94)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(GLP-1 K117R)FP5’-AAGCTGCCAGGGAATTCA-3’(配列番号93)、RP5’-TGAATTCCCTGGCAGCTT-3’(配列番号94);および
(GLP-1 K125R)FP5’-TTGGCTGGTGAGAGGCC-3’(配列番号95),RP5’-GGCCTCTCACCAGCCAA-3’(配列番号96)
pcDNA3-myc-GLP-1をテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表15)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-GLP-1WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-GLP-1WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図95)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-GLP-1WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、pcDNA3-myc-GLP-1(K125R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-GLP-1WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図96)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル))を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-GLP-1 WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図95、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図95、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図96、レーン3及び4)。これらの結果は、GLP-1がまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを表している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したGLP-1半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-GLP-1WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのGLP-1の分解が観察された(図97)。ヒトのGLP-1の半減期は、約2時間であり、ヒトのpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)の半減期は、図97に示される通り、4時間以上に延長された。
4.細胞中のGLP-1及び置換GLP-1によるシグナル伝達の検討
GLP-1は、グルコース恒常性を調節してインスリン感度を増進するため、糖尿病の治療に使用可能であり、STAT3活性を誘発可能である(Biochem Biophy Res Commun.、425(2)、304~308、2012)。この実験において、我々は、細胞中のGLP-1と置換GLP-1とによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、6μgのpcDNA3-myc-GLP-1 WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-GLP-1WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(図98)。
実施例15:IgG重鎖のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.IgG重鎖発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)IgG重鎖発現ベクタークローニング
IgG重鎖(HC)DNA配列をRocheによるEP1308455B9号(抗HER2抗体を含む組成物、p24)の記載に応じて合成し、さらに哺乳類細胞においてよく発現するように最適化した。その後、PCRで増幅されたIgG重鎖(HC)DNAをEcoRI及びXhoIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図99、IgGアミノ酸配列:配列番号97)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図100)。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図99のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したIgG重鎖(HC)がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図101)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(IgG HC K235R)FP5’-ACAAAGGTGGACAGGAAGGTGGAGCCCAAG-3’(配列番号98)、RP5’-CTTGGGCTCCACCTTCC TGTCCACCTTTGT-3’(配列番号99);
(IgG HC K344R)FP5’-GAGTATAAGTGCAGGGTGTCCAATAAGGCCCTGC-3’(配列番号100)、RP5’-GCAGGGCCTTATTGGACACCCTGCACTTATACTC-3’(配列番号101);および
(IgG HC K431R)FP5’-CTTTCTGTATAGCAGGCTGA CCGTGGATAAGTCC-3’(配列番号102)、RP5’-GGACTTATCCACGGTCAGCCTGCTATACAGAAAG-3’(配列番号103)
pcDNA3-myc-IgG HC DNAをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)3つのプラスミドDNAを生成した(表14)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-IgG-HC WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-IgG-HC WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図102)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-IgG-HC WT、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K235R)、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K344R)、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-IgG-HC WT、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K235R)、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K344R)、及びpcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図103)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。
分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-IgG-HC WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図102、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図102、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図103、レーン5)。これらの結果は、IgG-HCがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを表している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したIgG-HC半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-IgG-HC WT、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K235R)、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K344R)、及びpcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのIgG-HCの分解の抑制が観察された(図104)。ヒトのIgG-HCの半減期は、2時間未満であったが、ヒトのpcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)の半減期は、図104に示される通り、4時間以上に延長された。
実施例16:IgG軽鎖(LC)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
1.IgG軽鎖(LC)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
(1)IgG軽鎖(LC)発現ベクタークローニング
IgG軽鎖(LC)DNA配列をRocheによるEP1308455B9号(抗HER2抗体を含む組成物、p23)の記載に応じて合成し、さらに哺乳類細胞においてよく発現するように最適化した。その後、PCRで増幅されたIgG軽鎖(LC)DNAをEcoRI及びXhoIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(図105、IgG軽鎖アミノ酸配列:配列番号104)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(図106)。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、図105のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したIgG軽鎖(LC)がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(図107)。
(2)リジン(リジン、K)残基置換
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
(IgG LC K67R)FP5’-CCTGGCAAGGCCCCAAGGCTGCTGATCTAC-3’(配列番号105)、RP5’-GTAGATCAGCAGCCTTGGGGCCTTGCCAGG-3’(配列番号106);
(IgG LC K129R)FP5’-ACAAAGGTGGAGATCAGGAGGACCGTGGCC-3’(配列番号107)、RP5’-GGCCACGGTCCTCCTGATCTCCACCTTTGT-3’(配列番号108);および
(IgG LC K171R)FP5’-GCCAAGGTGCAGTGGAGGGTGGATAACGCC-3’(配列番号109)、RP5’-GGCGTTATCCACCCTCCACTGCACCTTGGC-3’(配列番号110)
pcDNA3-myc-IgG LC DNAをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)3つのプラスミドDNAを生成した(表16)。
2.インビボにおけるユビキチン化分析
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3.1-6myc-IgG-LC WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-IgG-LC WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(図108)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-IgG-LC WT、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K67R)、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K129R)、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-IgG-LC WT、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K67R)、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K129R)、及びpcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(図109)。免疫沈降のために得られたタンパク質サンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル))を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-IgG-LC WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(図108、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(図108、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(図109、レーン5)。これらの結果は、IgG-LCがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを表している。
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したIgG-LC半減期のアセスメント
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-IgG-LC WT、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K67R)、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K129R)、及びpcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、本発明に係るヒトの置換IgG-LCの分解が抑制された(図110)。ヒトのIgG-LCの半減期は、1時間未満であったが、ヒトのpcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)の半減期は、図110に示される通り、2時間以上に延長された。