JP2022143636A - ベーカリー食品用油脂組成物、その製造方法、ベーカリー生地、およびベーカリー食品 - Google Patents

ベーカリー食品用油脂組成物、その製造方法、ベーカリー生地、およびベーカリー食品 Download PDF

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Abstract

【課題】ベーカリー食品の風味を強く感じさせたり味のコク味を高めたりする作用を有するベーカリー食品用油脂組成物を提供する。さらに、ベーカリー食品用油脂組成物の製造方法、ベーカリー生地、およびベーカリー食品を提供する。【解決手段】本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、原料油脂に対しレトルト処理を施すことで得られたレトルト油脂を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ベーカリー食品用油脂組成物、その製造方法、ベーカリー生地、およびベーカリー食品に関する。
油脂は飲食品の風味を強く感じさせる作用や濃厚感(コク味)を高める作用を有していることが知られている。
こうした風味の向上・改善を目的として、多様な飲食品に対し油脂が用いられていることもあり、油脂の風味を増強する方法が従来検討・追求されてきた。
従前検討されてきた油脂の風味を増強する方法は、大きく分けて3つあり、いずれも油脂を加熱することにより、油脂の風味を強めるものである。
第一に、油脂中の風味成分を増加させることを目的として、油脂に熱酸化等の酸化処理を施し、複雑な風味成分を得ることが挙げられる(特許文献1および特許文献2を参照)。
第二に、油脂の風味を改質する目的から、油脂に対して水素添加処理を施すことが挙げられる(特許文献3~10を参照)。
第三に、油脂中に風味原料を加えて加熱し、風味原料が有する風味を油脂に移行させることが挙げられる(特許文献11~14を参照)。
これらの風味が増強された油脂が適用される飲食品の一つとして、ベーカリー食品を挙げることができる。とりわけ菓子パンと呼ばれるリッチな生地配合のベーカリー食品において、濃厚な風味やコクのある甘さが要求されることが多いことから、これらの風味が増強された油脂はベーカリー食品の製造に活用されている。
ところで、油脂の風味を増強する上記3つの方法と同様に、飲食品や食品素材を加熱する工程をとる作業として、レトルト処理に代表される殺菌の工程が挙げられる。食品素材である油脂は、その製造工程中の精製の過程で高温下にさらされることもあって、従来、油脂は殺菌の対象ではなかった。
しかし、近年飲食品の保存期間の長期間化の観点から、食品素材である油脂の殺菌が検討されるようになってきた(特許文献15および特許文献16を参照)。
特開平4-229151号公報 特開平1-039962号公報 特開2011-152120号公報 特開2009-005681号公報 特開2009-089684号公報 特開2011-115149号公報 特許第5150797号公報 特開2014-054248号公報 特開2014-236672号公報 国際公開第2008/082106号 特開平1-218549号公報 特開2020-110128号公報 特開2009-268430号公報 特開2005-269950号公報 特開2007-325522号公報 特開2009-000081号公報
従前の油脂の風味を増強する方法には次のような課題があった。
特許文献1および2に示されるような第一の方法では、油脂を酸化することにより、油脂が有する風味の豊かさを強めることができる一方で、酸化処理に伴って、油脂の過酸化物価等が上昇してしまうことから、油脂の品質の安定性や保存性が乏しくなりやすい。さらに、酸化によって、油脂が、刺激のある風味や異味を持ちやすくなり、そのような風味や異味がそのまま飲食品に付与されてしまう場合がある。
特許文献3~10に示されるような第二の方法では、水素添加処理で油脂を改質することにより特有の風味(硬化油風味とも呼ばれる。)を有する水素添加油脂を得ることができる。この水素添加油脂は、従来、種々の飲食品やその調理油に好ましく用いられてきた。しかしながら、水素添加処理により油脂の風味を好ましく改質することができる反面、融点の上昇を伴う油脂物性の変化や、人の健康に悪影響を与えるとされるトランス脂肪酸の産生を伴なってしまう。
特許文献11~14に示されるような第三の方法では、風味原料由来の風味が油脂に付与された風味油(香味油とも呼ばれる。)を得ることができる。風味油は、飲食品に風味原料由来の特定の風味を付与したり、より強めたりすることができる。しかしながら、風味油は、製造の過程で風味原料を濾別する工程が必要になるため製造が煩雑になりやすい。さらに、適用する飲食品に要求される風味毎に異なる風味油が必要とされる場合があり、その汎用性が不充分である。
ここで、風味が増強された油脂を含有するマーガリン等の油脂組成物を、ベーカリー食品の製造に用いることができることが、これらの特許文献に示されている。しかし、適切に効果を得るために必要な油脂の含有量が多く、これらの特許文献に示された方法では、マーガリン等の油脂組成物の配合設計の自由度が下がる場合がある。また、これらの特許文献に示された方法は、ベーカリー食品自体の風味を強く感じさせたり、厚みのある風味に改良したりするというよりも、油脂の風味自体をベーカリー食品に強く付与するものが殆どである。
その為、油脂が有している、風味を強く感じさせる作用やコク味を高める作用を、強めるための手法には、更なる改良の余地がある。
他方、特許文献15および16に示されるような油脂の殺菌方法においては、工程を経たあとの油脂の風味に関して、具体的な記載や示唆はない。しかしながら、殺菌方法において、そもそも風味の改質を行うことが目的ではないため加熱時間が2~3秒程度と短く、油脂の風味が有意に変化することはない。
以上を鑑み、本発明が解決しようとする課題は下記のいずれか1つを含む。
・ベーカリー食品の風味を強く感じさせたり味のコク味を高めたりする作用を有するベーカリー食品用油脂組成物を得ること。
・異味や刺激のある風味(以下、「刺激味」ともいう。)が少なく、またはそれらを有しておらず、ベーカリー食品に刺激味や異味を付与することのないベーカリー食品用油脂組成物を得ること。
本発明は、上記課題を解決できるベーカリー食品用油脂組成物を提供することを目的とする。加えて、本発明は、上記のベーカリー食品用油脂組成物を含むベーカリー食品を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、加熱を伴う油脂の風味改質について検討を重ねた。その結果、従来、飲食品の殺菌手法として用いられているレトルト処理であるが、処理条件を適切に選択した場合、そのようなレトルト処理が施された油脂を含有するベーカリー食品用油脂組成物によって、意外にもベーカリー食品の風味が、強く感じられたり、コク味が増したりすることを知見した。
すなわち、以下の手段<1>により、好ましくは<2>以降の手段により、上記課題は解決された。
<1>
原料油脂に対しレトルト処理を施すことで得られたレトルト油脂を含有する、ベーカリー食品用油脂組成物。
<2>
原料油脂が、食用油脂、または、酸化防止剤を含有する食用油脂からなる、<1>に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<3>
原料油脂が、植物油脂およびその加工油脂からなる群のうち1種以上の植物由来の油脂を40質量%以上含有する、<1>または<2>に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<4>
植物由来の油脂の含有量が、原料油脂に対し30質量%以上である、<3>に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<5>
植物由来の油脂が、パーム油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油およびカカオ脂ならびにそれらの加工油脂のいずれか1種以上を含む、<3>または<4>に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<6>
原料油脂が、動物油脂およびその加工油脂からなる群のうち1種以上の動物由来の油脂を含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<7>
動物由来の油脂の含有量が、原料油脂に対し30~70質量%である、<6>に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<8>
動物由来の油脂が、豚脂および乳脂の少なくとも1つを含む、<7>に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<9>
レトルト処理が、密封容器内で、加熱温度を120~140℃とし、内圧をゲージ圧で0.05~1.5MPaとし、加熱保持時間を5~120分として、加熱することである、<1>~<8>のいずれか1つに記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<10>
レトルト油脂の含有量が、ベーカリー食品用油脂組成物に対し0.1~1.5質量%である、<1>~<9>のいずれか1つに記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<11>
ベーカリー食品用油脂組成物中の連続相が油相である、<1>~<10>のいずれか1つに記載のベーカリー食品用油脂組成物。
<12>
原料油脂に対しレトルト処理を施すことで得られたレトルト油脂を、他の食用油脂と混合することを含む、ベーカリー食品用油脂組成物の製造方法。
<13>
<1>~<11>のいずれか1つに記載のベーカリー食品用油脂組成物、または<12>に記載の製造方法で得られたベーカリー食品用油脂組成物を含有する、ベーカリー生地。
<14>
<1>~<11>のいずれか1つに記載のベーカリー食品用油脂組成物、または<12>に記載の製造方法で得られたベーカリー食品用油脂組成物を含有する、ベーカリー食品。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物により、ベーカリー食品の風味を強く感じさせたりコク味を高めたりすることができる。
他の態様では、本発明のベーカリー食品用油脂組成物により、ベーカリー食品に刺激味や異味を付与することを抑制できる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の製造方法により、上記ベーカリー食品用油脂組成物が得られる。
本発明のベーカリー生地およびベーカリー食品により、良好な風味のベーカリー食品が得られる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。各構成要素は、便宜上、この好適な実施形態に基づいて説明されるが、本発明は、そのような実施形態に限定されるものではない。
<レトルト油脂>
まず、本発明のベーカリー食品用油脂組成物に含有されるレトルト油脂について説明する。「レトルト油脂」は、本発明および本明細書において、原料油脂に対しレトルト処理を施すことで得られた食用油脂を意味する。また、「原料油脂」は、本発明および本明細書において、レトルト油脂の製造に用いられかつレトルト処理における原料となる食用油脂を意味する。
<<レトルト処理>>
レトルト油脂は、技術常識に照らして、油脂由来の成分(例えば、遊離の脂肪酸、グリセリン、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド等)と、レトルト処理により二次的に産生された成分(例えば、有機酸類、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、エステル類、含硫化合物、ケトン類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、芳香族化合物およびラクトン類等)の混合物と推定される。
このように多種多様な成分構成を有するレトルト油脂につき、本発明の課題を解決するのに必要な構造または特性を明らかにし、本発明をその構造または特性により直接特定することは、膨大な時間とコストを要すると予想され、およそ実際的でない。したがって、本発明のベーカリー食品用油脂組成物に含まれるレトルト油脂について、その製造方法によって特定するのが合理的であると思量する。
レトルト処理について述べる。本発明におけるレトルト処理とは、油脂の風味改質を伴う程度に、圧力をかけながら食用油脂を加熱する処理を指す。
本発明におけるレトルト処理の方法は、圧力をかけながら食用油脂を加熱することができれば、特に制限されない。レトルト処理は、例えば、飲食品の殺菌を目的とした加熱処理で使用するような密封容器(例えば、缶、瓶およびレトルトパウチ等)に原料油脂を密封し、レトルト釜やオートクレーブを用いて圧力をかけながら加熱することを含む。
取扱いの観点から、密封容器は、レトルトパウチであることが好ましい。レトルトパウチとしては、複数のプラスチックフィルムを張り合わせたものや、プラスチックトレーとプラスチックフィルムとを張り合わせたものなどでもよく、さらにはプラスチックフィルムまたはプラスチックトレーにアルミ箔等の金属箔を張り合わせたものなどでもよい。
圧力をかける方法は、水で圧力をかける方法や、窒素などの不活性ガスで圧力をかける方法など、公知の方法を用いることができる。
レトルト処理における加熱温度は、油脂の風味を適切に変化させる観点から、例えば100℃以上であり、110℃以上または115℃以上に調整することも可能である。本発明の効果をより適切かつ効率的に得るために、レトルト処理における加熱温度は、120~140℃であることが好ましく、125~140℃であるがより好ましく、125~135℃であるがさらに好ましい。レトルト処理における加熱温度が120℃以上であると、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品の風味を強くしたり、コク味を強めたりする効果を強く得ることができる。また、レトルト処理における加熱温度が140℃以下であると、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品に対して、刺激味や異味を付与することなく、ベーカリー食品の風味を強くしたり、コク味を強めたりする効果が得られやすくなる。
レトルト処理における昇温速度は、特に制限されず、例えば1~10℃/分であり、2~5℃/分でもよい。レトルト処理における降温速度は、特に制限されず、例えば3~15℃/分であり、5~10℃/分でもよい。
レトルト処理における圧力は、内圧のゲージ圧で0.05~1.5MPaであることが好ましく、0.07~0.9MPaであることがより好ましく、0.09~0.4MPaであることがさらに好ましい。ゲージ圧とは、真空をゼロとする絶対圧力に対して、大気圧をゼロとする相対的な圧力を指す。レトルト処理における圧力が0.05MPa以上であると、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品の風味を強くしたり、コク味を強めたりする効果を強く得ることができる。また、レトルト処理における圧力が1.5MPa以下であると、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品に対して、刺激味や異味を付与することなく、ベーカリー食品の風味を強くしたり、コク味を強めたりする効果が得られやすくなる。
レトルト処理における加熱時間は、加熱温度および圧力に応じて、適切な油脂の風味変化が生じるように適宜調整し得る。特に、100℃以上の所定の温度を保持しながら加熱する時間(加熱保持時間)は、例えば1分以上であり、2分以上、3分以上または4分以上に調整することも可能である。本発明の効果をより適切に得るために、加熱保持時間は、5~150分であることが好ましく、20~140分であることがより好ましく、40~130分であることがさらに好ましい。レトルト処理における加熱保持時間が5分以上であると、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品の風味を強くしたりコク味を強めたりする効果を強く得ることができる。また、レトルト処理における加熱保持時間が150分以下であると、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品に対して、刺激味や異味を付与することなく、ベーカリー食品の風味を強くしたり、コク味を強めたりする効果が得られやすくなる。
レトルト処理は、原料油脂全体に一括して実施してもよく、原料油脂を複数の密封容器に分けて、或いは、異なる原料油脂を別々の密封容器に入れてそれぞれ個別に実施してもよい。
<<原料油脂>>
次に、原料油脂について述べる。レトルト油脂は、この原料油脂をレトルト処理することにより得られる。原料油脂は、特に制限されず、種々の食用油脂から選択することができる。原料油脂として用いることができる油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、シア脂、サル脂およびカカオ脂等の植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油および鯨油等の動物油脂、並びに、これらの油脂に、水素添加、分別およびエステル交換から選択される1以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。加工油脂の例としては、パーム油を例に挙げると、パーム油を分別することにより得られる低融点画分(パームオレイン)、パーム油を分別することにより得られる高融点画分(パームステアリン)、およびこれらのエステル交換油が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で原料油脂として用いることもでき、または2種以上を混合したものを原料油脂として用いることもできる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の効果をより高める観点から、原料油脂は、植物油脂およびその加工油脂からなる群のうち1種以上(「植物由来の油脂」とも記載する。)を40質量%以上含有することが好ましい。さらに、植物由来の油脂の含有量は、原料油脂に対し、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。植物由来の油脂を、原料油脂に対し40質量%以上含有させることで、異味を付与することなく、ベーカリー食品自体のコク味をいっそう強めることができる。さらに、植物由来の油脂の含有量は、原料油脂に対し、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。植物由来の油脂が原料油脂に対し90質量%以下であることにより、より異味や刺激味の付与を抑制しやすくなる。植物由来の油脂は、1種単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。植物由来の油脂が2種以上の組み合わせである場合には、それらの合計量が上記範囲にあることが好ましい。
原料油脂に含まれることが好ましい上記植物油脂としては、パーム油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油およびカカオ脂のいずれか1種以上が挙げられる。特に、植物油脂として、パーム油、綿実油、大豆油、菜種油、米油およびヒマワリ油のいずれか1種以上を使用することがより好ましく、パーム油、綿実油、米油およびヒマワリ油のいずれか1種以上を使用することがさらに好ましい。これらの加工油脂は、上記した植物油脂に対し、水素添加および分別のいずれか1つ以上を行った油脂であることが好ましい。さらに。植物油脂の加工油脂が、口中温度付近である35℃で好ましくは25~45%、より好ましくは30~40%のSFC(固体脂含量)を有することにより、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品のコク味を付与することがより容易になる。
上記SFCの条件を満たし、原料油脂として好ましく使用できる植物油脂の加工油脂としては、パームステアリンおよびそのエステル交換油を挙げることができる。上記SFCの条件を満たす観点からは、ヨウ素価30~40のパームステアリンを使用することが好ましい。
原料油脂は、動物油脂およびその加工油脂からなる群のうち1種以上(「動物由来の油脂」とも記載する。)を含有することができる。動物由来の油脂は、豚脂および乳脂の少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの動物由来の油脂を、原料油脂の一部として選択することで、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品の風味を強めることがより容易になる。
動物由来の油脂の含有量は、原料油脂に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上である。動物由来の油脂が原料油脂に対し10質量%以上であることにより、ベーカリー食品自体の風味およびコク味をよりいっそう強めることができる。さらに、動物由来の油脂の含有量は、原料油脂に対し、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。動物由来の油脂が原料油脂に対し55質量%以下であることにより、より異味や刺激味の付与を抑制しやすくなる。動物由来の油脂は、1種単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。動物由来の油脂が2種以上の組み合わせである場合には、それらの合計量が上記範囲にあることが好ましい。
さらに、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を用いたベーカリー食品に刺激味および異味を付与することを抑制する観点から、原料油脂の水分量は少ないほど好ましい。原料油脂の水分量は、原料油脂中1.5質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがさらに好ましい。原料油脂中の水分量の下限値は0質量%であるが、0.1質量%以上でもよい。原料油脂中の水分量を上記範囲の値とするためには、例えば、加熱等により水分を除く方法や、モレキュラーシーブなどの水分吸着剤を添加し、水分を除いた後に濾別する方法等を挙げることができる。
原料油脂が、常温(例えば23~25℃)で固体の油脂を含む場合には、レトルト処理を行う前に、原料油脂を充分に溶解し混合しておくことが好ましい。
原料油脂において、健康リスクが懸念されるトランス脂肪酸の含量は少ないほど好ましい。原料油脂の構成脂肪酸組成の全量を100質量%としたとき、トランス脂肪酸の含量は好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは2質量%未満である。
このような原料油脂を、レトルト処理することで、レトルト油脂中のトランス脂肪酸含量の増加を抑制することができる。原料油脂の構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸の含量が上記範囲を満たす場合、レトルト油脂の構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸の含量は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは2質量%未満となる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、このようにトランス脂肪酸の含量が少なくても、ベーカリー食品の風味を強めたり、コク味を付与したりすることができるため、好適である。
油脂の構成脂肪酸組成および各成分の含量は、常法により測定でき、例えば日本油化学会制定の「基準油脂分析試験法2.4.2.3-2013」や「基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013」を参考に、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定することができる。
なお、本発明においては、原料油脂をレトルト処理するに際し、例えば、乳や乳製品(粉末品を含む)、卵および各種卵加工品(粉末品を含む)、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、調味料(例えば食塩や塩化カリウム等の塩味剤、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類)、他の食用素材(果実、果汁、コーヒー、紅茶、緑茶、ナッツペースト、香料、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等)、食品添加物(着香料、アミノ酸、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤等)などの食品原料を、原料油脂中に溶解・分散させた状態でレトルト処理することも可能である。
上記のような食品原料を原料油脂に混ぜる場合には、その含有量は、原料油脂に対し15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
しかし、上記のような食品原料を原料油脂に混ぜると、(1)得られるレトルト油脂の汎用性が低下しやすいこと、(2)食品原料を濾別する必要が生じて製造が煩雑になりやすいこと、および、(3)ベーカリー食品自体の風味を向上させる効果よりも別の風味を付与する効果が強くなりやすい。したがって、本発明において、レトルト油脂を得るに際し、食用油脂のみに対してレトルト処理を行うことが好ましい。
または、本発明において、原料油脂は、酸化防止剤を含むことができる。つまり、レトルト油脂を得るに際し、酸化防止剤のみを含有する食用油脂に対してレトルト処理を行うことも好ましい。酸化防止剤は、濾別しなくてもベーカリー食品の風味に与える影響が殆どなく、レトルト油脂の保存性や安定性を高めるためである。
本発明で使用される酸化防止剤としては、特に制限されず、公知のものを使用できる。そのような酸化防止剤としては、例えばビタミンE、ビタミンC、ローズマリー抽出物および茶抽出物などが挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、特に制限はないが、原料油脂100質量部に対し0.01~0.1質量部であることが好ましい。レトルト油脂の保存性や安定性を高める観点から、酸化防止剤の含有量は、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.03質量部以上であることがさらに好ましい。また、風味への影響や経済性の観点から、酸化防止剤の含量は、0.07質量部以下であることがより好ましく、0.05質量部以下であることがさらに好ましい。酸化防止剤は、1種単独で使用されてもよく、2種以上の組み合わせで使用されてもよい。2種以上の組み合わせで使用される場合には、それらの合計含量が上記範囲にあることが好ましい。
なお、酸化防止剤は、上記のとおり、レトルト処理を行う前の原料油脂に含有させることで、レトルト油脂に含有させることもでき、レトルト処理後に、レトルト油脂に添加することもできる。
<ベーカリー食品用油脂組成物>
本発明のベーカリー食品用油脂組成物について述べる。本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、上記のレトルト油脂(原料油脂に対しレトルト処理を施すことで得られた食用油脂)を含有する。本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、レトルト油脂以外の構成は、一般にベーカリー食品に適用できる範囲で、特に限定されるものではないが、以下の好ましい構成をとることにより、ベーカリー食品の風味をいっそう強く感じさせたり、いっそうコク味を付与することが可能になる。
<<レトルト油脂以外の食用油脂>>
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、レトルト油脂以外に、種々の食用油脂を含有することができる。食用油脂としては特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油および鯨油等、各種の植物油脂および動物油脂、並びに、これらを水素添加、分別およびエステル交換から選択される1以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、レトルト油脂以外の食用油脂として、これらの食用油脂を単独で用いることもでき、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
レトルト油脂以外の食用油脂の含有量は、ベーカリー食品用油脂組成物に対し、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上であるレトルト油脂以外の食用油脂がベーカリー食品用油脂組成物に対し70質量%以上であることにより、より異味や刺激味の付与を抑制しやすくなる。さらに、レトルト油脂以外の食用油脂の含有量は、ベーカリー食品用油脂組成物に対し、99.5質量%以下でもよく、99.0質量%以下でもよく、98質量%以下でもよい。レトルト油脂以外の食用油脂は、1種単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。レトルト油脂以外の食用油脂が2種以上の組み合わせである場合には、それらの合計量が上記範囲にあることが好ましい。
従前のベーカリー食品の製造時に用いられていた油脂は、風味の強いベーカリー食品を得る観点から、単価の高い乳脂や豚脂等の動物油脂を多く含有するものが多かった。しかしながら、本発明のベーカリー食品用油脂組成物によれば、動物油脂の含有量を高めることなく、風味の強いベーカリー食品を得ることが可能になる。一般的に動物由来の油脂はトランス脂肪酸を多く含むため、動物由来の油脂の使用量抑制は、トランス脂肪酸の抑制にもつながる。レトルト油脂以外の食用油脂として、動物由来の油脂の含有量は、ベーカリー食品用油脂組成物に対し、例えば20質量%以下であってもよく、16質量%以下であってもよく、12質量%以下であってもよい。本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、レトルト油脂以外の食用油脂としての動物由来の油脂の含有量の下限は0質量%である。なお、本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、上記の原料油脂が動物由来の油脂を含む場合には、レトルト油脂の重量に、原料油脂中の動物由来の油脂の割合を乗算した値と、レトルト油脂以外の食用油脂としての動物由来の油脂の重量との合計量が、上記範囲に含まれることが好ましい。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、レトルト油脂の含有量は、所望の効果の程度に応じて、適宜調整し得る。とりわけ、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品に異味および刺激味を付与することなく、ベーカリー食品自体の風味を強めたりコク味を付与したりする観点から、レトルト油脂の含有量は、ベーカリー食品用油脂組成物に対し0.1~1.5質量%であることが好ましく、0.3~1.0質量%であることがより好ましく、0.3~0.6質量%であることがさらに好ましい。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、レトルト油脂の含有量と、レトルト油脂以外の食用油脂の含有量とを合わせた油脂分は、ベーカリー食品用油脂組成物中、60~100質量%であることが好ましく、68~100質量%であることがより好ましく、75~100質量%であることがさらに好ましい。本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、本発明のベーカリー食品用油脂組成物に含有しうるその他原料(後述)が油分を含む場合には、その油分も含めた油脂分が上記範囲にあることが好ましい。後述するとおり、本発明のベーカリー食品用油脂組成物において連続相が油相であることが好ましい。本発明のベーカリー食品用油脂組成物中の油脂の含有量が上記範囲にあることで、連続相が油相となりやすい他、ベーカリー食品の風味を改質する本発明の効果が得られやすくなる。
<<その他原材料>>
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、レトルト油脂、およびレトルト油脂以外の食用油脂のみからなることができる。また、本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、レトルト油脂、およびレトルト油脂以外の食用油脂に加えて、水やその他の原材料を含有することができる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物が水を含有する場合、ベーカリー食品用油脂組成物中の水の含有量は、1~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。なお、後述する、本発明のベーカリー食品用油脂組成物に含有しうるその他の原材料が水分を含む場合には、その水分も含めた水の含有量が、上記範囲にあることが好ましい。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物に含有しうるその他の原材料としては、例えば、糖類、乳化剤、澱粉類、デキストリン、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳、蛋白質濃縮ホエイ等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵および各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
上記その他の原材料は、本発明の目的を損なわない範囲で任意に含有させ、使用することができる。その他の原材料の含有量は、本発明のベーカリー食品用油脂組成物中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
その他の原材料において、乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム等が挙げることができる。これらの乳化剤は単独で用いることもでき、または二種以上を組み合わせて用いることもできる。
乳化剤を含有する場合、その含有量は、風味を損ねない観点から、ベーカリー食品用油脂組成物中、5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
<<本発明の連続相について>>
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の形態としては、油脂を含有する食品、例えばマーガリン・ファットスプレッド・ショートニング・バター等の可塑性油脂組成物や、流動ショートニング、流動状マーガリン、液状油組成物、粉末油脂、純生クリーム、ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)、植物性ホイップ用クリーム、クリームチーズ、チョコペースト等を挙げることができる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の連続相は、油相であってもよく、また水相であってもよい。本発明のベーカリー食品用油脂組成物の効果を十分に得るために、練り込まれやすく、ベーカリー食品生地の全体に均等に拡がりやすい観点から、連続相は油相であることが好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物が乳化物である場合、その乳化形態は特に問われず、油中水型、水中油型、および二重乳化型のいずれでも構わない。本発明のベーカリー用油脂組成物は、油中水型乳化物、および、油中水中油型乳化物のような連続相が油相である多重乳化物であることが好ましく、簡便に製造できる点からとりわけ、油中水型乳化物であることが好ましい。なお、本発明のベーカリー食品用油脂組成物が油中水中油型乳化物の形態をとる場合には、上記のレトルト油脂は外油相ではなく、内油相に含有されることが好ましい。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、所望の効果が得られ易いことから、可塑性を有することが好ましい。ベーカリー食品用油脂組成物が可塑性を有する場合、ベーカリー食品製造時の使用形態として、好ましくは練り込み油脂や折り込み油脂の形態が挙げられる。特に、ベーカリー食品の製造時に、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を練り込み油脂として用いることで、ベーカリー食品生地中に油脂が均一に分散しやすくなる。
<ベーカリー食品用油脂組成物の製造方法>
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の製造方法は、レトルト油脂(原料油脂に対しレトルト処理を施すことで得られた食用油脂)を、他の食用油脂と混合することを含む。油脂の混合方法は、特に限定されるものではなく、レトルト油脂がベーカリー食品用油脂組成物の中に含有されるものであれば公知の方法を採用できる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の製造方法において、複数のレトルト油脂を使用してもよい。すなわち、別々にレトルト処理を行って得た同種または異種の複数のレトルト油脂を、事前に混合して一緒に他の食用油脂に混合してもよく、または、そのような複数のレトルト油脂を別々に他の食用油脂に混合してもよい。さらに、レトルト油脂は、別の食用油脂に混合され、その後、さらに別の食用油脂に混合されてもよい。
例えば、本発明のベーカリー食品用油脂組成物が可塑性油脂組成物の形態をとる場合は、可塑性油脂組成物の製造の過程で、複数種のレトルト油脂を用いる場合には、油脂中に上述のレトルト油脂を別個に、或いは前もって複数のレトルト油脂を混合したものを直接分散してから、急冷可塑化により可塑性油脂組成物を製造することができる。
ベーカリー食品用油脂組成物が水相を含有する場合には、油相にレトルト油脂を混合・分散させてから、水相と共に急冷可塑化することにより、可塑性油脂組成物を製造することができる。
本発明の効果を十分に得る観点から、ベーカリー食品用油脂組成物を製造する際に、レトルト油脂以外の成分で油脂組成物を一旦調製し、その後レトルト油脂を最後に添加する方法よりも、レトルト油脂を早い段階で他の食用油脂と混合する方法が好ましい。この機序については現段階では不明だが、レトルト油脂を他の食用油脂に溶解し、またはレトルト油脂を予備乳化液中に含有させ、その後、ベーカリー食品用油脂組成物を得るための調整処置を行う手法によれば、レトルト油脂が溶解した食用油脂または予備乳化液が保温されたり殺菌されたりする過程で、その中のレトルト油脂が二次的に加熱されることで、いっそう効果が高まるためと出願人は考えている。
本発明の好ましい態様に基づき、連続相を油相とする油中水型乳化物であるベーカリー食品用油脂組成物の製造方法について述べる。
油中水型乳化物であるベーカリー食品用油脂組成物を製造するには、レトルト油脂を好ましくは上記の含有量の範囲内となるような量で、他の食用油脂に混合して、連続相となる油相を作製する。このとき、必要に応じて、油溶性のその他の原材料を油相に混合しておく。次に、水に必要に応じて水溶性のその他の原材料を分散・溶解させた水相と、油相とを混合し、油中水型に乳化して予備乳化液を得る。そして、得られた予備乳化液を冷却、好ましくは急冷可塑化することにより、油中水型乳化物である本発明のベーカリー食品用油脂組成物を得ることができる。
上記で得られた予備乳化液は、殺菌処理することが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でもよく、プレート式熱交換器や掻き取り式熱交換器を用いた連続方式でもよい。また殺菌温度は、好ましくは80~100℃、より好ましくは80~95℃、さらに好ましくは80~90℃である。殺菌時間は、例えば掻き取り式熱交換器を用いて85℃で連続殺菌する場合、好ましくは30~300秒、より好ましくは40~285秒、さらに好ましくは50~260秒である。その後、必要に応じ、油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行う。予備冷却の温度は、好ましくは40~60℃、より好ましくは40~55℃、さらに好ましくは40~50℃とする。
次に、必要に応じて、予備冷却した予備乳化液を冷却する。好ましくは急冷可塑化を行う。この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクターおよびケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート式熱交換器、開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターとの組み合わせを用いて行うことができる。急冷を行うことにより、予備乳化液が可塑性を有する油脂組成物となる。急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物が、ショートニングのような水分を殆ど含有しない形態の場合には、レトルト油脂および必要に応じてその他の原材料を、上記範囲内となるような量で、油相に混合・分散させることにより、そのようなベーカリー食品用油脂組成物が製造できる。なお、本発明のベーカリー食品用油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させてもよく、含気させなくてもよい。
<ベーカリー生地およびベーカリー食品>
次に、本発明のベーカリー生地およびベーカリー食品について述べる。本発明のベーカリー生地は、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー生地である。また、本発明のベーカリー食品は、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有するベーカリー食品である。本発明のベーカリー食品は、本発明のベーカリー生地を加熱処理することにより得られる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有することのできるベーカリー生地としては、特に限定されず、任意のパン類の生地、菓子類の生地が挙げられる。好ましくは、食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、フランスパン生地等のパン類の生地や、パイ生地、シュー生地、ドーナツ生地、バターケーキ生地、スポンジケーキ生地、ハードビスケット生地、ワッフル生地、スコーン生地等の菓子類の生地が挙げられる。
とりわけ、(1)ドーナツ生地などの油調されることのあるベーカリー生地や、(2)生地の製造に用いられる油脂として練り込み油脂のみが用いられ、油脂の含有量が含有される穀粉類に対して35質量部以下であるベーカリー生地(例えば食パンや菓子パン、バターロール生地等)、(3)生地の製造に用いられる油脂として練り込み油脂と折り込み油脂とが併用され、それら油脂の合計含有量が60質量部以下のベーカリー生地(デニッシュ生地やペストリー生地、パイ生地等)が、本発明の効果を得る観点から好ましく選択される。
上記(2)および(3)のベーカリー生地においては、生地の製造に用いられる油脂が上記範囲を超えるものであっても、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を適用することは可能である。しかしながら、生地の製造に用いられる油脂が上記範囲を超えて過剰である場合には、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を含有させることにより、ベーカリー食品の風味を強く感じさせたりコク味を高めたりする効果が強くなり、過剰に風味が改質される場合がある。
本発明のベーカリー生地中におけるベーカリー食品用油脂組成物の含有量は、従前知られたベーカリー食品用油脂組成物と同様である。ベーカリー生地の種類や、ベーカリー食品用油脂組成物中の上記レトルト油脂の含有量、求める効果の程度、さらにはベーカリー食品用油脂組成物の形態によっても異なるが、本発明のベーカリー生地中におけるベーカリー食品用油脂組成物の含有量は、例えば、ベーカリー生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。また、本発明のベーカリー生地中におけるベーカリー食品用油脂組成物の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上である。
上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、小麦粉を、穀粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
上記ベーカリー生地のうち、パン類の生地を調製する場合に、小麦粉以外の穀粉類を使用する際、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は、穀粉類とグルテンをあわせた合計量に対し、タンパク質含量が好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~18質量%となる量である。
本発明のベーカリー生地において、必要に応じ、一般の製菓製パン材料として使用することのできる、その他の原材料を配合することができる。そのような原材料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、でんぷん類、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオおよびカカオ製品、コーヒーおよびコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、酵母エキス、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
その他の原材料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができる。水については、例えばパン類の場合、上記穀粉類100質量部に対して、好ましくは30~100質量部、より好ましくは30~70質量部となる範囲で使用する。また、水以外のその他の原材料については、上記穀粉類100質量部に対して、合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。なお、その他の原材料として、水分を含有する原材料を使用した場合は、上記の水には、その他の原材料に含まれる水分も含めるものとする。
本発明のベーカリー生地の製造方法としては、通常、製菓製パン法として使用されている、あらゆる製菓製パン法を採ることができる。例えば、本発明のベーカリー生地の製造方法として、パン類の製造方法として中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等を採用することができ、菓子類の製造方法としてシュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、共立て法、別立て法等を採用することができる。
本発明のベーカリー生地は、冷蔵または冷凍により保存することが可能である。
本発明のベーカリー食品のうち、とりわけパンを中種法で製造する場合は、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を中種生地および/または本捏生地に練り込み、含有させることにより製造することができるが、本捏生地に練り込み、含有させることが好ましい。
本発明のベーカリー食品を製造するときの加熱処理としては、ベーカリー生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。また、得られた本発明のベーカリー食品を、冷蔵または冷凍により保存したり、その保存後に電子レンジで加熱したりすることも可能である。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例に限定されるものではない。
[レトルト油脂の製造]
下記の手順に従って、レトルト油脂A~Fおよび比較用の加熱油脂Aを製造した。
<製造例1:レトルト油脂Aの製造>
パームステアリン(ADEKA社製、ヨウ素価36.5)50質量部、豚脂(ADEKA社製、ヨウ素価65.0)50質量部をそれぞれ加熱溶解し、その後、混合および撹拌することにより、混合油脂Aを得た。上記パームステアリンの過酸化物価は0.5であり、酸価は0.04であった。また、上記豚脂の過酸化物価は0.3であり、酸価は0.02であった。混合油脂Aの過酸化物価は0.4であり、酸価は0.05であった。この混合油脂Aをレトルトパウチ(福助工業社製 レトルトパウチNタイプ 14-18)に100g測りとり、レトルトパウチのヘッドスペースに空気が入らないように口を閉じ、ヒートシーラーでレトルトパウチを密閉した。
次に、以下に示す条件でレトルト処理を行った。具体的には、密閉したレトルトパウチを、オートクレーブの加圧槽内に入れ、60℃の温水を所定量注水し、内圧をゲージ圧で0.1MPaに設定し、目標とする保持温度を130℃に設定し、昇温速度2.6℃/分の条件でレトルト処理を開始した。オートクレーブの加圧槽内の温度が設定温度に到達してから、130分間、設定温度および設定圧力を保持した。その後、オートクレーブの加圧槽内を降温速度9.6℃/分の条件で常温まで冷却した後に、オートクレーブ内の圧力を常圧に戻し、レトルトパウチを取り出した。上記の工程により、レトルト油脂Aを得た。
<製造例2:レトルト油脂Bの製造>
設定温度および設定圧力を保持する時間(保持時間)を105分とした他は、製造例1と同様にレトルト処理を行い、レトルト油脂Bを得た。
<製造例3:レトルト油脂Cの製造>
保持時間を90分とした他は、製造例1と同様にレトルト処理を行い、レトルト油脂Cを得た。
<製造例4:レトルト油脂Dの製造>
保持時間を75分とした他は、製造例1と同様にレトルト処理を行い、レトルト油脂Dを得た。
<製造例5:レトルト油脂Eの製造>
レトルト処理に供する油脂をパームステアリンのみとし、保持時間を105分とした他は、製造例1と同様にレトルト処理を行い、レトルト油脂Eを得た。
<製造例6:レトルト油脂Fの製造>
レトルト処理に供する油脂を豚脂のみとし、保持時間を105分とした他は、製造例1と同様にレトルト処理を行い、レトルト油脂Fを得た。
<製造例7>
製造例1と同様に作製した混合油脂Aをレトルトパウチ(福助工業社製 レトルトパウチNタイプ 14-18)に100g測りとり、レトルトパウチのヘッドスペースに空気が入らないように口を閉じ、ヒートシーラーでレトルトパウチを密閉した。
このレトルトパウチを60℃に設定された大気下のオイルバスに浸漬し、その後、目標とする保持温度を130℃に設定し、昇温速度2.6℃/分の条件で加熱を開始した。オイルバスの温度が設定温度に到達してから、105分間、設定温度を保持した。その後、オイルバスの温度を降温速度9.6℃/分の条件で常温まで冷却し、レトルトパウチを取り出した。上記の工程により、常圧下で油脂が加熱された加熱油脂Aを得た。
表1は、レトルト油脂A~Fおよび加熱油脂Aの製造条件および物性の比較である。なお、表1において、すべての油脂において同じ製造条件の記載は省略している。
Figure 2022143636000001
[ベーカリー食品用油脂組成物の製造]
レトルト油脂A~Fおよび加熱油脂Aを用いて、表2および3の配合に則って、ベーカリー食品用油脂組成物A~Lを製造した。ベーカリー食品用油脂組成物L(比較例2)は、レトルト油脂の代わりに同量の油脂(豚脂とパームステアリン)を加えたものであり、以下の評価におけるコントロールである。
ベーカリー食品用油脂組成物A~Lは次の方法で製造した。まず、表2および3に示した配合(質量部)で油脂を混合し、加熱溶解し、さらによく撹拌してそれぞれ油脂配合物を調製した。次いで、得られた油脂配合物を、掻き取り式熱交換器を用いて85℃で60秒間殺菌し、その後50℃まで予備冷却した。予備冷却した油脂配合物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化し、可塑性を有しかつ油中水型乳化物の形態をとるベーカリー食品用油脂組成物A~Lを得た。
[検討1:ケーキドーナツ]
ベーカリー食品用油脂組成物A~Lを用いて、ケーキドーナツを製造した。使用したベーカリー食品用油脂組成物の附番に合わせて、ケーキドーナツを附番している。
<ケーキドーナツの製造>
まず、ベーカリー食品用油脂組成物(A~Lの各1種)10質量部、上白糖45質量部、および、食塩1.5質量部を混合した配合物をビーターでよく撹拌した。次いで、全卵30質量部を少量ずつ上記配合物に加えながらクリーム状になるまで更に配合物を撹拌した。その後、脱脂粉乳4.0質量部および薄力粉(ハート、日本製粉社製)100質量部を、撹拌しながら少しずつ配合物に投入した。投入し終えた後、脱脂濃縮乳6質量部を少量ずつ配合物に加えて、均一になるように撹拌し、更にフロアタイムを20分とることにより、ケーキドーナツ生地A~Lを得た。
上記生地を厚さ13mmまで圧延し、リング型で55g/個の成形生地をいくつか作製した。上記の成形生地を、170℃の揚げ油で、120秒油ちょうし、その後、成形生地を反転して120秒更に油ちょうした。油ちょう後、成形生地を取り上げ、油が垂れなくなるまで油きりを行い、ケーキドーナツA~Lを得た。
<評価方法>
ケーキドーナツA~Lを食し、ケーキドーナツA~Kについて、コントロール(ケーキドーナツL)と比較した場合における風味の増強、コク味の増強、および異味や刺激味の抑制について官能評価を行い、レトルト油脂および加熱油脂がベーカリー食品に与える効果を評価した。官能評価は、下記評価基準に基づき、12名のパネラーにより実施した。官能評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
<<評価基準:ケーキドーナツの風味の程度>>
5点:コントロールと比較して、非常に強い。
3点:コントロールと比較して、強い。
1点:コントロールと比較して、やや強い。
0点:コントロールと同等である、またはコントロールと比較して弱い。
<<評価基準:ケーキドーナツのコク味の程度>>
5点:コントロールと比較して、非常に強い。
3点:コントロールと比較して、強い。
1点:コントロールと比較して、やや強い。
0点:コントロールと同等である、またはコントロールと比較して弱い。
<<評価基準:異味・刺激味の程度>>
5点:コントロールと同等の風味であり、異味および刺激味が感じられない。
3点:コントロールと比較して、わずかに異味または刺激味が感じられるが許容範囲である。
1点:コントロールと比較して、異味または刺激味が感じられる。
0点:コントロールと比較して、強い異味または刺激味が感じられる。
評価結果は表2および3のとおりである。官能評価の結果は、全パネラーの合計点に応じて、[54~60点:+++、44~53点:++、36~43点:+、18~35点:-、0~17点:--]として表記した。風味の増強、コク味の増強、および異味や刺激味の抑制のすべての項目において、プラス記号「+」が1つ以上であれば、本発明の課題達成レベルである。
Figure 2022143636000002
Figure 2022143636000003
[検討2:ブリオッシュ]
ベーカリー食品用油脂組成物B、D、HおよびLを用いて、ブリオッシュを製造した。使用したベーカリー食品用油脂組成物の附番に合わせて、ブリオッシュを附番している。
<ブリオッシュの製造>
まず、強力粉70質量部、イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖3質量部、水40質量部をボールにとり、ミキサーを用いて低速で3分撹拌した後、中速で2分撹拌したものを、28℃・2時間の条件下で発酵させ、中種生地を得た。このときの捏上温度は26℃であった。
次に、上記得られた中種生地の全量をボールにとり、強力粉10質量部、薄力粉20質量部、脱脂粉乳3質量部、食塩1.5質量部、グラニュー糖20質量部、卵黄20質量部、水4質量部を加えて、ミキサーを用いて、低速で3分撹拌した後、中速で2分、高速で1分撹拌した。撹拌後の中種生地にベーカリー食品用油脂組成物B、D、HおよびLを12.5質量部それぞれ投入し、その後、低速で3分、中速で3分撹拌することにより、ブリオッシュ生地を得た。このときの捏上温度は28℃であった。フロアタイムを30分とった後、45gずつに分割し、ベンチタイムを30分とり、ブリオッシュ・ア・テット成形し、アルミケースに入れ、ホイロをとった。ホイロ条件は、温度38℃、湿度80%、および時間55分間であった。ホイロ終了後、生地表面に溶いておいた全卵を塗布し、190℃設定のオーブンで11分焼成し、ブリオッシュB、D、HおよびLを得た。
<評価方法>
ブリオッシュB、D、HおよびLを食し、ブリオッシュB、DおよびHについて、コントロール(ブリオッシュL)と比較した場合における風味の増強、コク味の増強、および異味や刺激味の抑制について官能評価を行い、レトルト油脂および加熱油脂が食品に与える効果を評価した。官能評価は、下記評価基準に基づき、12名のパネラーにより実施した。官能評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
<<評価基準:ブリオッシュの風味の程度>>
5点:コントロールと比較して、非常に強い。
3点:コントロールと比較して、強い。
1点:コントロールと比較して、やや強い。
0点:コントロールと同等である、またはコントロールと比較して弱い。
<<評価基準:ブリオッシュのコク味の程度>>
5点:コントロールと比較して、非常に強い。
3点:コントロールと比較して、強い。
1点:コントロールと比較して、やや強い。
0点:コントロールと同等である、またはコントロールと比較して弱い。
<<評価基準:異味・刺激味の程度>>
5点:コントロールと同等の風味であり、異味および刺激味が感じられない。
3点:コントロールと比較して、わずかに異味または刺激味が感じられるが許容範囲である。
1点:コントロールと比較して、異味または刺激味が感じられる。
0点:コントロールと比較して、強い異味または刺激味が感じられる。
評価結果は表4のとおりである。官能評価の結果は、全パネラーの合計点に応じて、[54~60点:+++、44~53点:++、36~43点:+、18~35点:-、0~17点:--]として表記した。風味の増強、コク味の増強、および異味や刺激味の抑制のすべての項目において、プラス記号「+」が1つ以上であれば、本発明の課題達成レベルである。
Figure 2022143636000004
[検討3:デニッシュ(デニッシュペストリー)]
下記のとおり作製したロールイン用のベーカリー食品用油脂組成物M~Sを用いて、デニッシュを製造した。使用したベーカリー食品用油脂組成物の附番に合わせて、デニッシュを附番している。
<ロールイン用のベーカリー食品用油脂組成物M~Sの製造>
表5に示す質量比で、油脂類(パームオレインのランダムエステル交換油、菜種油、ランダムエステル交換油A、豚脂およびパームステアリンのうち、表に記載されたもの)を70℃に加熱および混合し、混合油を得た。この混合油に、表5に示す質量比で、乳化剤(グリセリンモノ脂肪酸エステルおよびレシチン)と、レトルト油脂A、B、D~Fのいずれか1つまたは加熱油脂Aとを混合および溶解して、油相を作製した。その後、水に脱脂粉乳を混合および溶解して得た水相と上記油相とを常法で混合して、油中水型の乳化物を作製した。この乳化物を急冷可塑化工程(冷却速度20℃/分以上)にかけた後、縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、ロールイン用のベーカリー用油脂組成物M~Sを得た。
※ランダムエステル交換油脂Aは、パーム油65質量部とパーム極度硬化油35質量部とを、それぞれ加熱して溶解した状態で混合した混合油脂に対して、常法により、ランダムエステル交換反応を施して得られた油脂である。
<デニッシュ生地およびデニッシュの製造>
強力粉80質量部、薄力粉20質量部、イースト4質量部、イーストフード0.2質量部、上白糖15質量部、全卵(正味)10質量部、純植物性マーガリン5質量部、水45質量部をミキサーボールに入れ、フックを備えた縦型ミキサーで低速3分、中速3分混合し、ベース生地を得た。このベース生地をフロアタイム20分、-5℃の冷凍庫で24時間リタードさせ、その後、常法により、各ベーカリー食品用油脂組成物(M~Sのいずれか1つ)50質量部をベース生地にロールイン(3つ折り3回)し、デニッシュ生地を得た。
上記で得られたデニッシュ生地を厚さ4mmに圧延し、10mm×10mmの板状に切り出し、34℃で60分間のホイロをとり、その後、固定オーブンを用いて200℃で15分間焼成することにより、デニッシュM~Sを得た。
<評価方法>
デニッシュM~Sを食し、デニッシュM~Rについて、コントロール(デニッシュS)と比較した場合における風味の増強、コク味の増強、および異味や刺激味の抑制について官能評価を行い、レトルト油脂および加熱油脂が食品に与える効果を評価した。官能評価は、下記評価基準に基づき、12名のパネラーにより実施した。官能評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
<<評価基準:デニッシュの風味の程度>>
5点:コントロールと比較して、非常に強い。
3点:コントロールと比較して、強い。
1点:コントロールと比較して、やや強い。
0点:コントロールと同等である、またはコントロールと比較して弱い。
<<評価基準:デニッシュのコク味の程度>>
5点:コントロールと比較して、非常に強い。
3点:コントロールと比較して、強い。
1点:コントロールと比較して、やや強い。
0点:コントロールと同等である、またはコントロールと比較して弱い。
<<評価基準:異味・刺激味の程度>>
5点:コントロールと同等の風味であり、異味や刺激味が感じられない。
3点:コントロールと比較して、わずかに異味または刺激味が感じられるが許容範囲である。
1点:コントロールと比較して、異味または刺激味が感じられる。
0点:コントロールと比較して、強い異味または刺激味が感じられる。
評価結果は表5のとおりである。官能評価の結果は、全パネラーの合計点に応じて、[54~60点:+++、44~53点:++、36~43点:+、18~35点:-、0~17点:--]として表記した。風味の増強、コク味の増強、および異味や刺激味の抑制のすべての項目において、プラス記号「+」が1つ以上であれば、本発明の課題達成レベルである。
Figure 2022143636000005

Claims (14)

  1. 原料油脂に対しレトルト処理を施すことで得られたレトルト油脂を含有する、ベーカリー食品用油脂組成物。
  2. 前記原料油脂が、食用油脂、または、酸化防止剤を含有する食用油脂からなる、請求項1に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  3. 前記原料油脂が、植物油脂およびその加工油脂からなる群のうち1種以上の植物由来の油脂を40質量%以上含有する、請求項1または2に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  4. 前記植物由来の油脂の含有量が、前記原料油脂に対し30質量%以上である、請求項3に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  5. 前記植物由来の油脂が、パーム油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油およびカカオ脂ならびにそれらの加工油脂のいずれか1種以上を含む、請求項3または4に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  6. 前記原料油脂が、動物油脂およびその加工油脂からなる群のうち1種以上の動物由来の油脂を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  7. 前記動物由来の油脂の含有量が、前記原料油脂に対し30~70質量%である、請求項6に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  8. 前記動物由来の油脂が、豚脂および乳脂の少なくとも1つを含む、請求項7に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  9. 前記レトルト処理が、密封容器内で、加熱温度を120~140℃とし、内圧をゲージ圧で0.05~1.5MPaとし、加熱保持時間を5~120分として、加熱することである、請求項1~8のいずれか1項に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  10. 前記レトルト油脂の含有量が、ベーカリー食品用油脂組成物に対し0.1~1.5質量%である、請求項1~9のいずれか1項に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  11. ベーカリー食品用油脂組成物中の連続相が油相である、請求項1~10のいずれか1項に記載のベーカリー食品用油脂組成物。
  12. 原料油脂に対しレトルト処理を施すことで得られたレトルト油脂を、他の食用油脂と混合することを含む、ベーカリー食品用油脂組成物の製造方法。
  13. 請求項1~11のいずれか1項に記載のベーカリー食品用油脂組成物、または請求項12に記載の製造方法で得られたベーカリー食品用油脂組成物を含有する、ベーカリー生地。
  14. 請求項1~11のいずれか1項に記載のベーカリー食品用油脂組成物、または請求項12に記載の製造方法で得られたベーカリー食品用油脂組成物を含有する、ベーカリー食品。
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