JP2022115493A - 分散体組成物 - Google Patents

分散体組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2022115493A
JP2022115493A JP2021012110A JP2021012110A JP2022115493A JP 2022115493 A JP2022115493 A JP 2022115493A JP 2021012110 A JP2021012110 A JP 2021012110A JP 2021012110 A JP2021012110 A JP 2021012110A JP 2022115493 A JP2022115493 A JP 2022115493A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dispersion composition
component
polyolefin resin
less
propylene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021012110A
Other languages
English (en)
Inventor
久雄 加藤
Hisao Kato
寛子 岩切
Hiroko Iwakiri
貴夫 吉元
Takao Yoshimoto
実 矢田
Minoru Yada
直輔 高本
Naosuke Takamoto
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Paper Industries Co Ltd
Jujo Paper Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paper Industries Co Ltd
Jujo Paper Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Paper Industries Co Ltd, Jujo Paper Co Ltd filed Critical Nippon Paper Industries Co Ltd
Priority to JP2021012110A priority Critical patent/JP2022115493A/ja
Publication of JP2022115493A publication Critical patent/JP2022115493A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Abstract

【課題】高い分散安定性、及び高温条件下での耐水付着性に優れる変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を提供することを目的とする。【解決手段】成分(A):ポリオレフィン樹脂を、成分(B):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂を含む分散体組成物であって、JIS K7121-1987に準拠して、10℃/分の昇温速度で測定された分散体組成物の示差走査型熱量計による融点が90℃以上110℃未満であり、分散体組成物を示差走査型熱量計で0.2℃/分 の昇温速度で測定した際、80℃以上100℃未満の範囲に発熱(結晶化)ピークが検出されることを特徴とする、分散体組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、分散体組成物に関する。より詳細には、高い分散安定性、及び高温条件下での耐水付着性に優れる分散体組成物に関する。
不飽和カルボン酸及び/またはその無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂は、難付着性基材であるポリオレフィン樹脂基材用の塗料、接着剤、又はインキ用添加剤として用いられている(例えば、特許文献1)。
近年、VOC(volatile organic compounds)削減などの環境問題の観点から、塗料の分野では溶剤系塗料から水系塗料への移行が進み、また、インキの分野では溶剤型インキから水性インキへの移行が進んでいる。このような情勢の中、上記変性ポリオレフィン樹脂の水性化(分散体組成物)の要望が高まっている。
変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物は、特定の用途において、高い分散安定性と高温条件下における耐水付着性が求められるものの、従来の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物では、両性能を十分に具備し得なかった。
特開2015-105294号公報
本発明の課題は、高い分散安定性、及び高温条件下での耐水付着性に優れる変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、分散体組成物の融点、及び示差走査型熱量計で測定した際の発熱(結晶化)ピークを所定の範囲となるように設計することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔6〕を提供する。
〔1〕成分(A):ポリオレフィン樹脂を、成分(B):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂を含む分散体組成物であって、JIS K7121-1987に準拠して、10℃/分の昇温速度で測定された分散体組成物の示差走査型熱量計による融点が90℃以上110℃未満であり、分散体組成物を示差走査型熱量計0.2℃/分 の昇温速度で測定した際、80℃以上100℃未満の範囲に発熱(結晶化)ピークが検出されることを特徴とする、分散体組成物。
〔2〕前記変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が、70、000以上150,000未満である、上記〔1〕に記載の分散体組成物。
〔3〕前記成分(A)が、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の分散体組成物。
〔4〕前記分散体組成物の引張弾性率が250MPa以上8,000MPa以下である、上記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の分散体組成物。
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の分散体組成物を有効成分とする塗料、インキ、接着剤又はプライマー。
〔6〕成分(A):ポリオレフィン樹脂を、成分(B):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂を含む分散体組成物の製造方法であって、下記工程(a)を含むことを特徴とする分散体組成物の製造方法。
工程(a) :濃度調整後の分散体組成物を、分散体組成物の内温がJIS K7121-1987に準拠して10℃/分の昇温速度で測定された分散体組成物の示差走査型熱量計による融点の値±30℃の範囲内となるまで調温し、前記内温を保持したまま1時間以上攪拌する工程
本発明の変性ポリオレフィン樹脂によれば、高い分散安定性、及び高温条件下での耐水付着性に優れる塗膜を作製し得る。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
なお、本明細書中、「AA~BB」という表記は、AA以上BB以下を意味する。
[1.変性ポリオレフィン樹脂]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、成分(A):ポリオレフィン樹脂(以下、「成分(A)」とも記載する)を、成分(B):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体(以下、「成分(B)」とも記載する)でグラフト変性したグラフト変性物を含有する。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂のMwは、70,000以上200,000未満であり、80,000以上150,000未満が好ましい。Mwが70,000以上であると、乾燥後の塗膜が凝集力を発揮し、塗膜強度や付着性を付与し得る。一方、200,000未満であると、十分な溶剤溶解性を確保し得る。また、水分散体を調製した際、良好な安定性を確保し得る。
なお、本明細書中、Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定し、算出された値である。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂のTmは、85℃以上110℃未満が好ましく、90℃以上105℃未満がより好ましい。Tmが85℃以上であると、高温条件下での十分な耐水性をさらに向上し得る。一方、融点が110℃未満であると、塗膜焼付け時の良好な成膜性を確保し得る。
本明細書中、DSCによるTmは、以下の条件で測定した値である。JIS K7121-1987に準拠し、DSC測定装置(TA Instruments製)を用い、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持する。次いで、10℃/分の速度で降温して、-50℃で安定保持する。その後、10℃/分で150℃まで昇温し、融解した時の融解ピーク温度をTmとして評価する。
[1-1.成分(A):ポリオレフィン樹脂]
成分(A)は、特に限定されるものではなく、1種のオレフィンの単独重合体であってもよく、2種以上のオレフィンの共重合体であってもよい。また、共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。オレフィンとしては、α-オレフィンが好適に用いられる。α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
成分(A)としては、ポリプロピレン基材等の非極性樹脂基材に対して十分な付着性を発現させるという観点から、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体がより好適に用いられる。特に、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体を用いることが好ましい。
なお、本明細書中、ポリプロピレンとは、基本単位がプロピレン由来の構成単位である重合体を表す。エチレン-プロピレン共重合体とは、基本単位がエチレン由来の構成単位及びプロピレン由来の構成単位である共重合体を表す。プロピレン-1-ブテン共重合体とは、基本単位がプロピレン由来の構成単位及び1-ブテン由来の構成単位である共重合体を表す。これらの重合体は、上記基本単位以外の他のオレフィン由来の構成単位を少量含有していてもよい。この含有量は、樹脂本来の性能を著しく損なわない量であればよい。このような他のオレフィン由来の構成単位は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂の製造までの工程で混入することがある。
成分(A)は、構成単位100モル%中、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上含むことが好ましい。プロピレン由来の構成単位を上記範囲で含むと、プロピレン樹脂等の非極性樹脂基剤等の非極性樹脂成型品に対する付着性を確保し得る。
エチレン-プロピレン共重合体及びプロピレン-1-ブテン共重合体がランダム共重合体である場合、構成単位100モル%中、エチレン由来の構成単位又はブテン由来の構成単位を5~50モル%の割合で含み、プロピレン由来の構成単位を50~95モル%の割合で含むことが好ましい。
成分(A)は、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られるポリオレフィン樹脂は、下記の特徴を有するので好ましい。メタロセン触媒を用いて得られる成分(A)は、分子量分布が狭い。また、成分(A)が共重合体の場合は、ランダム共重合性に優れ、組成分布が狭く、さらには、共重合し得るコモノマーの範囲が広い。
メタロセン触媒としては、公知のものが使用できる。メタロセン触媒は、好ましくは、以下に述べる成分(1)及び(2)と、さらに必要に応じて(3)とを組み合わせて得られる。
・成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4~6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体;
・成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩;
・成分(3);有機アルミニウム化合物。
塗膜に十分な強度を付与するという観点から、成分(A)の引張弾性率は、150MPa以上が好ましく、250MPa以上がより好ましい。その上限は、通常、8000MPa以下であり、5000MPa以下、3000MPa以下、1000MPa以下が好ましく、800MPa以下がより好ましく、600MPa以下がさらに好ましい。
なお、成分(A)の引張弾性率の測定は、分散体組成物の引張弾性率の測定と同様に行うことができる。
成分(A)の融点は、80℃以上110℃未満が好ましく、85℃以上105℃がより好ましい。これにより融点が上記範囲である変性ポリオレフィン樹脂を容易に得ることができる。成分(A)の重量平均分子量は、70,000以上500,000未満であり、80,000以上400,000未満が好ましい。
成分(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合、その割合は特に限定されない。
[1-2.成分(B):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体]
成分(B)は、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体である。α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。中でも、無水マレイン酸が好ましい。
成分(B)は、α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であればよく、1種以上のα,β-不飽和カルボン酸と1種以上のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体の組み合わせ、2種以上のα,β-不飽和カルボン酸の組み合わせ、2種以上のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体の組み合わせであってもよい。
グラフト変性物中の成分(B)のグラフト重量は、グラフト変性物を100重量%とした場合に、0.1~10重量%が好ましく、0.5~5重量%がより好ましい。グラフト重量が0.1重量%以上であると、得られる変性ポリオレフィン樹脂の上塗り塗料に対する付着性を確保し得る。また、水分散体を調製した際の良好な安定性を確保し得る。グラフト重量が10重量%以下であると、グラフト未反応物の発生を防止することができ、樹脂基材に対する十分な付着性を確保し得る。
成分(B)のグラフト重量は、アルカリ滴定法によって求めた値である。
グラフト変性物は、成分(A)に成分(B)をグラフト重合することで調製し得る。グラフト変性は、公知の方法で行うことが可能であり、成分(C):ラジカル発生剤(以下、「成分(C)」ともいう)を用いてもよい。グラフト変性は、例えば、成分(A)及び成分(B)の混合物を、トルエン等の有機溶剤に加熱溶解し、成分(C)を添加する溶液法、或いは、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の混練機を使用して、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を添加し、加熱下で溶融混練反応によりグラフト変性物を得る方法が挙げられる。成分(A)、成分(B)及び成分(C)は、一括添加しても、逐次添加してもよい。
成分(C)は、公知のラジカル発生剤の中より適宜選択することができ、有機過酸化物系化合物が好ましい。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。中でも、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド及びジラウリルパーオキサイドが好ましい。
成分(C)は、単独のラジカル発生剤でもよいし、複数種のラジカル発生剤の組み合わせであってもよい。
グラフト重合反応における成分(C)の添加量は、成分(B)の添加量(重量)に対し、1~100重量%が好ましく、10~50重量%がより好ましい。1重量%以上であると、十分なグラフト効率を確保し得る。100重量%以下であると、グラフト変性物の重量平均分子量の低下を防止し得る。
[1-3.変性ポリオレフィン樹脂の製造方法]
反応装置としては、例えば、温水や蒸気で加温可能なジャケットを有する反応タンクや、二軸押出機などを用いることができる。
反応は、回分式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。
変性ポリオレフィン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではない。一例を以下に示す。
まず、ポリオレフィン樹脂を用意する。ポリオレフィン樹脂は、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンとを、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒等の触媒の存在下、重合することにより調製し得る。ポリオレフィン樹脂は、市販品を用いてもよい。
つぎに、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分を、ポリオレフィン樹脂に導入する。変性方法は、公知の方法、例えば、グラフト重合方法で行うことができる。グラフト重合反応の際には、ラジカル発生剤を用いてもよい。変性ポリオレフィン樹脂を得る方法としては、トルエン等の溶剤に、ポリオレフィン樹脂と環状構造を有するα,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分を加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法;バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の機器に、ポリオレフィン樹脂、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分、及びラジカル発生剤を添加し混練する溶融混練法が挙げられる。ここで、α,β-不飽和カルボン酸誘導体を含む変性成分は、一括添加してもよく、逐次添加してもよい。
ポリオレフィン樹脂にグラフト重合しない未反応物は、例えば貧溶媒で抽出して除去してもよい。このようにして、グラフト重合体が得られる。
[2.分散体組成物]
本発明の分散体組成物は、変性ポリオレフィン樹脂を含む。本発明の分散体組成物は、必要に応じて他の成分を含んでもよい。分散体組成物のDSCによる融点は90℃以上110℃未満である。また、分散体組成物をDSCで0.2℃/分 の昇温速度で測定した際、80℃以上90℃未満の範囲に発熱(結晶化)ピークが検出される。
分散体組成物のTmは、90℃以上110℃未満が好ましく、95℃以上105℃未満がより好ましい。Tmが90℃以上であると、高温条件下での十分な耐水性をさらに向上し得る。一方、融点が110℃未満であると、塗膜焼付け時の良好な成膜性を確保し得る。
なお、分散体組成物のTmは、分散体組成物を40℃、24時間乾燥して得られた乾燥物を、前述した変性ポリオレフィン樹脂のTmと同様にDSC(TA Instruments製)を用いて測定し得る。
分散体組成物を、DSCにて0.2℃/分 の昇温速度で測定した際、80℃以上100℃未満の範囲に発熱(結晶化)ピークが検出されることが好ましく、80℃以上90℃未満の範囲に発熱(結晶化)ピークが検出されることがより好ましい。発熱(結晶化)ピークが80℃以上で検出されると、樹脂中の非晶質部の割合が少なく、晶質部の密度が高い状態であることから、樹脂の溶剤溶解性が低下し、分散安定性が向上する。一方、発熱(結晶化)ピークが100℃未満であると、塗膜焼付け時の良好な成膜性を確保し得る。
分散体組成物の引張弾性率は、250MPa以上であり、300MPa以上が好ましい。引張弾性率が250MPa以上であると、塗膜に十分な強度を付与し得る。また、その上限は特に限定されないが、通常、8000MPa以下であり、5000MPa以下、3000MPa以下、1000MPa以下が好ましく、800MPa以下がより好ましく、600MPa以下がさらに好ましく、500MPa以下がさらにより好ましい。
本明細書中、分散体組成物の引張弾性率は、以下の条件で測定した値である。まず、変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を乾燥し、乾燥物を得る。得られた乾燥物を有機溶剤に加熱溶解し、得られた溶液を剥離紙に膜厚約20μmとなるように塗工する。100℃に設定した送風乾燥機で5分間乾燥を行い、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下で24時間保管する。その後、幅15mm、長さ150mmにカットし、剥離紙を剥離することで試験フィルムを得る。得られた試験フィルムに対し、引張試験機を用いて引張速度10mm/min、チャック間距離100mmの条件で引張弾性率を測定する。
上記測定条件からわかるように、分散体組成物の引張弾性率は、変性ポリオレフィン樹脂からなり、幅15mm、長さ150mmの試験フィルムを用いて、引張速度10mm/min、チャック間距離100mmの条件で測定した値である。
(分散媒)
分散媒は、非水系であってもよく、水系であってもよい。非水系分散媒としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の有機溶媒が挙げられる。水系分散媒は、通常は水であるが、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を併用してもよい。
(乳化剤)
乳化剤は、変性ポリオレフィン樹脂を、水系分散媒に分散させる際、分散体の安定化を図る目的で添加する従来公知のものを使用し得る。例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ジオクチルスルホコハク酸エステル塩、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
本発明の分散体組成物において、乳化剤の含有量は、10重量%未満が好ましく、5重量%未満がより好ましい。下限は特に限定されず、乳化剤を含有しなくもてよい。乳化剤の含有量が10重量%未満であると、乳化剤の添加による付着性の低下を抑制し得る。
本発明の分散体組成物は、変性ポリオレフィン樹脂と分散媒の他に、溶液、硬化剤、及び接着成分からなる群より選択される少なくとも1種の成分をさらに含んでも良い。
(溶液)
溶液としては、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサノン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。環境問題の観点から、芳香族溶剤以外の有機溶剤が好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤がより好ましい。
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含む樹脂組成物の保存安定性を高めるために、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、プロピレン系グリコールエーテル(例、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル)を、1種単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。この場合、上記有機溶剤に対して、1~20質量%添加することが好ましい。
また、溶液としては、例えば、下記一般式(1)で表され、且つその分子量が200未満である化合物が好ましい。
R-O-(ClH2lO)mH・・・・・・式(1)
一般式(1)中、Rは、CnH2n+1であり、nは、10以下の整数である。nは、8以下の整数であることが好ましく、7以下の整数であることがより好ましく、6以下の整数であることがさらに好ましく、5以下の整数であることがさらにより好ましく、4以下の整数であることがとりわけ好ましい。
一般式(1)中、lは、5以下の整数であり、4以下の整数であることが好ましく、3以下の整数であることがより好ましい。
一般式(1)中、mは、5以下の整数であり、4以下の整数であることが好ましく、3以下の整数であることがより好ましく、2以下の整数であることがさらに好ましく、1であることがさらにより好ましい。
一般式(1)で表され、且つその分子量が200未満である化合物は、グリコールエーテル系の化合物であることが好ましい。グリコールエーテル系の化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類の水素原子が、アルキル基に置換された構造である。
一般式(1)で表される化合物は、一分子中に疎水基と親水基を有する。これにより、一般式(1)で表される化合物を添加することにより、変性ポリオレフィン樹脂を容易に水中に分散、乳化させることができる。そのため、本発明の分散樹脂組成物が良好な保存安定性を保つことができるようになる。
一般式(1)で表される化合物として、より詳細には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノデシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルが好ましい。
一般式(1)で表される化合物の分子量は、200未満である。これにより、変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物(本発明の分散樹脂組成物)の沸点の上昇を抑えることができる。その結果、該水分散体組成物、又は該水分散体組成物を含むプライマー等を塗工した後、塗膜の高温又は長時間乾燥を省略することができる。
一般式(1)で表される化合物の分子量とは、IUPAC原子量委員会で承認された(12C=12とする)相対原子質量から求める分子量である。
一般式(1)で表され、且つその分子量が200未満である化合物は、一般式(1)で表される化合物単独であってもよいし、2種以上の一般式(1)で表される化合物の組み合わせであってもよい。後者の場合、それぞれの化合物の配合比は特に限定されない。
(硬化剤)
硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリオール化合物、或いはそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤が例示される。
硬化剤は1種単独であってもよく、複数種の組み合わせであってもよい。
硬化剤の配合量は、変性ポリオレフィン樹脂中の成分(B):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト変性量により適宜選択できる。また、硬化剤を配合する場合は、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物等の触媒を併用することができる。
(接着成分)
接着成分としては、所望の効果を阻害しない範囲でポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着成分を用いることができる。
[プライマー、バインダー]
本発明の分散体組成物は、プライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーとして利用し得る。本発明の分散樹脂組成物は、溶液安定性に優れており、自動車のバンパー等ポリオレフィン基材への上塗り塗装時のプライマー、上塗り塗料やクリアーとの付着性に優れる塗料用バインダーとして好適に利用し得る。
[接着剤]
本発明の分散体組成物は、付着性(接着性)が低く、塗料等の塗工が困難な基材のための中間媒体として有用であり、例えば、付着性(接着性)の乏しいポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材同士の接着剤として使用し得る。この際、基材がプラズマ、コロナ等により表面処理されているか否かを問わず用いることができる。
また、本発明の分散樹脂組成物は、金属と樹脂との優れた接着性をも発揮し得る。金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスが挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂等の非極性樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が挙げられる。従って、本発明の分散樹脂組成物は、接着剤、プライマー、及び塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして、又はこれらの成分として、用いることができる。
[2-1.分散体組成物の製造方法]
分散体組成物の製造方法は、公知の方法を用いることができるが、乳化工程、及び濃度調整工程(留去工程)の後に、分散体組成物の内温が、JIS K7121-1987に準拠して10℃/分の昇温速度で測定された分散体組成物の示差走査型熱量計による融点の値±30℃の範囲内となるまで加温し、前記内温を保持したまま、1時間以上攪拌する工程(養生工程)を経ることが好ましい。養生工程を経ることで、樹脂の非晶質部の一部が晶質化し、更に晶質部の密度が向上するため、分散体組成物を示差走査型熱量計で0.2℃/分 の昇温速度で測定した際の発熱(結晶化)ピークを所望の範囲で調整し得る。
上記濃度調整工程と養生工程の間に、分散体組成物を一旦冷却し、内温を室温程度まで低下させた状態で1時間以上攪拌する工程(冷却工程)を含めてもよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。また、「部」とは、特に断りがない限り、重量部である。
[物性の測定方法]:
Mw、無水マレイン酸のグラフト重量は、変性ポリオレフィン樹脂を用いて測定した。Tm、引張弾性率、平均粒子径は、水分散体組成物を用いて測定した。測定方法の詳細を下記に示す。
[Mw(重量平均分子量)]:
製造例で製造した樹脂について、GPCにより下記条件に従い測定した。
装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
カラム:TSK-gel G-6000 HXL,G-5000 HXL,G-4000 HXL,G-3000 HXL,G-2000 HXL(東ソー(株)製)
溶離液:THF
流速:1mL/min
温度:ポンプオーブン、カラムオーブン40℃
注入量:100μL
標準物質:ポリスチレン EasiCal PS-1(Agilent Technology(株)製)
[グラフト重量(重量%)]:
アルカリ滴定法にて求めた。
[Tm(融点、℃)]:
JIS K7121-1987に準拠し、DSC測定装置(TA Instruments(株)製)を用い、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持した。次いで、10℃/分の速度で降温して、-50℃で安定保持した。その後、10℃/分で150℃まで昇温し、融解した時の融解ピーク温度をTmとした。
なお、水分散体組成物のTmは、水分散体組成物を40℃、24時間乾燥して得られた乾燥物を、DSC(TA Instruments(株)製)を用いて上記と同じ条件で測定した。
[引張弾性率]:
水分散体組成物を40℃、24時間乾燥し、得られた乾燥物を有機溶剤に溶解して溶液を得た。得られた溶液を剥離紙に膜厚約20μmとなるように塗工し、100℃に設定した送風乾燥機で5分間乾燥を行い、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下で24時間保管して塗膜を作製した。塗膜を幅15mm、長さ150mmにカットし、剥離紙を剥離することで試験フィルムを得た。得られた試験フィルムに対し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機:株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて引張速度10mm/min、チャック間距離100mmの条件で引張弾性率を測定した。
[発熱(結晶化)ピーク]:
DSC測定装置(TA Instruments製)を用い、約5mgの試料を0.2℃/分で昇温し、発熱(結晶化)ピークが生じた際のピークトップの温度を測定した。
なお、水分散体組成物の発熱(結晶化)ピークは、水分散体組成物を40℃、24時間乾燥して得られた乾燥物を、DSC(TA Instruments(株)製)を用いて上記と同じ条件で測定した。
[平均粒子径(nm)]:
粒度分布測定装置(Malvern Instruments製)にて測定した。
[実施例1]
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン-1-ブテン共重合体(I)(プロピレン成分が90モル%、1-ブテン成分が10モル%、Mwが400,000、Tmが100℃、引張弾性率が360MPa)及びプロピレン-エチレン共重合体(II)(プロピレン成分が85モル%、エチレン成分が15モル%、Mwが170,000、Tmが104~106℃、引張弾性率が250MPa)を、重量比95:5で合計100部となるようにトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸3.0部、ジ-t-ブチルパーオキサイド2.0部をそれぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了から1時間さらに反応を行った後、室温まで冷却した。反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、Mwが80,000、Tmが87~96℃、無水マレイン酸のグラフト重量が1.7重量%の変性ポリオレフィン樹脂(1)を得た。
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、得られた変性ポリオレフィン樹脂(1)を100g、トルエン20g、エチレングリコールモノブチルエーテル(分子量=118.2)60gを添加し、フラスコ内温95℃で30分攪拌した。次に、N,N-ジメチルエタノールアミン〔DMEA〕7gを添加し、フラスコ内温95℃で60分攪拌した。その後、90℃の脱イオン水400gを120分かけて添加し、フラスコ内温が30℃になるまで攪拌しながら冷却した。フラスコ内温が95℃になるまで攪拌しながら再度加熱し、トルエン及びエチレングリコールモノブチルエーテルの一部を減圧下にて留去した。その後、室温まで攪拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した。これにより、変性ポリオレフィン樹脂(1)を含む分散体組成物(1)を得た。なお、分散体組成物(1)のTmは95℃であった。
続いて、得られた分散体組成物(1)をフラスコ内温80℃で5時間攪拌を行ったところ、引張弾性率は389MPa、発熱(結晶化)ピークが82℃、平均粒子径は110nmの分散体組成物(2)が得られた。
[比較例1]
プロピレン-1-ブテン共重合体(I)(プロピレン成分が90モル%、1-ブテン成分が10モル%、Mwが400,000、Tmが100℃、引張弾性率が360MPa)100部、無水マレイン酸3.0部、ジラウリルパーオキサイド2.0部を、200℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、Mwが80,000、Tmが100℃、無水マレイン酸のグラフト重量が3.0重量%の変性ポリオレフィン樹脂(2)を得た。
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付けた4つ口フラスコ中に、得られた変性ポリオレフィン樹脂(2)を100g、トルエン20g、エチレングリコールモノブチルエーテル(分子量=118.2)60gを添加し、フラスコ内温95℃で30分攪拌した。次に、N,N-ジメチルエタノールアミン〔DMEA〕7gを添加し、フラスコ内温95℃で60分攪拌した。その後、90℃の脱イオン水400gを120分かけて添加し、フラスコ内温が30℃になるまで攪拌しながら冷却した。フラスコ内温が95℃になるまで攪拌しながら再度加熱し、トルエン及びエチレングリコールモノブチルエーテルの一部を減圧下にて留去した。その後、室温まで攪拌しながら冷却し、脱イオン水にて固形分を30wt%となるよう調整した。これにより、変性ポリオレフィン樹脂(2)を含む分散体組成物(3)を得た。なお、なお、分散体組成物(3)のTmは94℃であり、引張弾性率は367MPaであり、発熱(結晶化)ピークが75℃であり、平均粒子径は80nmであった。
Figure 2022115493000001
実施例1及び比較例1で得た水分散体組成物を用いて、下記に記載する試験を行った。試験結果の一覧を表2に示す。
[分散安定性試験]:
実施例及び比較例で得られた分散体組成物と2-エチルヘキサノールを、体積比80:20の割合で混合した溶液として100g調製し、40℃の恒温条件下に7日間静置後、溶液の粘度を測定した。混合直後の粘度と比較し、以下の「A」、「B」の基準により評価した。
A:粘度変化の幅が粘度±20mPa・s未満であった。
B:粘度変化の幅が粘度±20mPa・s以上であった。
[高温条件下での耐水剥離試験]:
(塗料の調製)
実施例及び比較例で得られた分散体組成物を固形分換算で40部、水性アクリル樹脂(バイヒドロールXP2427、住化バイエルウレタン社製)を固形分換算で40部、水性ポリウレタン樹脂(ユーコートUWS-145、三洋化成工業製)を固形分換算で20部、導電性カーボンのカーボンECP600JD(ライオン社製)20部、二酸化チタンのチタンR-960(DuPont社製)80部を、常法に従って配合し、固形分40%になるようにイオン交換水で希釈することで水性プライマー塗料を調製した。
(試験板の作製)
ボディ用樹脂基材に対し、エアー式スプレーガンによって乾燥膜厚が約25μmとなるよう調整した水性プライマー塗料を塗装し、5分間静置した後、60℃で3分間プレヒートを行った。次に、水性メタリック色ベースコート塗料を乾燥膜厚が約20μmとなるよう塗装し、5分間静置した後、80℃で3分間プレヒートを行った。その後、アクリルウレタン系溶剤型クリヤー塗料を乾燥膜厚が約35μmとなるよう塗装し、7分間静置した後、120℃で20分間の焼付け処理を行い、被塗物を作製した。
次いで、作製した被塗物にウレタン系接着剤(商品名「3740」、サンスター株式会社製、自動車用ウインドシールド剤)を、塗布形状が幅20mm、厚さ3mm、長さ100mm以上となるように塗布し、離型紙を被せた後、平板で均一に押さえつけた。平板を取り除いた後、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下で72時間放置して硬化させた。その後、離型紙を剥がして、試験板を作製した。
(試験手順)
作製した試験板を60℃に設定した恒温水槽中に10日間浸漬した後、23℃の水中に1時間浸漬して冷却し、以下の剥離試験を行った。
硬化した接着剤層を塗膜に対して90度以上の方向に手で引っ張りながら2~3mm間隔で、塗膜に対して約60度の角度で塗膜表面に達するところまでカッターナイフでカットを入れた。接着剤層を剥がした後の剥離状態を以下の「A」、「B」、「C」、「D」の基準により評価した。
A:接着剤層の剥れが認められず、塗膜の露出も認められない。
B:塗膜は破壊されず、接着剤層のみが凝集破壊を起こして剥れるが、塗膜と接着剤層の
付着はほぼ保たれている。
C:塗膜が凝集破壊を起こして剥れる。
D:塗膜と接着剤層との界面で剥れが認められる。
[碁盤目付着試験]:
(試験片の作製)
超高剛性ポリプロピレン板の表面をイソプロピルアルコールで脱脂し、乾燥膜厚が約15μmとなるよう水分散体組成物をスプレー塗装し、80℃で5分間プレヒートを行った。次に、ベース塗料をスプレー塗装し10分間静置した後、クリヤー塗料を塗装し、10分間静置した。その後、120℃で20分間の焼付け処理を行い、室温で72時間静置することで、試験片を作製した。
(試験手順)
作製した試験片に対し、カッターナイフで塗膜上に2mm間隔で素地に達する100個の碁盤目状の切り込みを入れ、その上にセロハン粘着テープを密着させて180°の角度で10回剥離し、塗膜の残存を判定した。具体的には残マス数を数えた。
[耐水付着性試験]:
碁盤目付着試験の場合と同様にして試験片を作製した。試験片を60℃の温水に10日間浸漬した後、塗膜表面の膨れ状態(ブリスター)を目視で観察した。カッターナイフで塗膜上に2mm間隔で素地に達する100個の碁盤目状に切り込みを入れ、その上にセロハン粘着テープを貼った後、180°の角度で剥離し、塗膜の残存する程度で判定した。また、該試験で全て剥離しなかったサンプルについては、同様の試験を連続で10回行い、10回剥離後の塗膜の残存を判定した。具体的には残マス数を数えた。
ブリスターは以下の基準で評価した。
径:(大)1~10(小)
頻度:無,(少)F,M,MD,D(多)
なお、径とは、ブリスターの大きさであり、目視で確認可能な数値は8までである。また、頻度とは、ブリスターの数であり、F(Few)、M(Medium)、MD(Medium Dense)、D(Dense)の略である。
Figure 2022115493000002
表2より、実施例1は分散安定性と高温条件下での耐水付着性を具備した分散体組成物であることがわかる。一方、比較例1では、耐水付着性は有しているものの、分散安定性に劣る。

Claims (6)

  1. 成分(A):ポリオレフィン樹脂を、成分(B):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂を含む分散体組成物であって、
    JIS K7121-1987に準拠して、10℃/分の昇温速度で測定された分散体組成物の示差走査型熱量計による融点が90℃以上110℃未満であり、
    分散体組成物を示差走査型熱量計で0.2℃/分 の昇温速度で測定した際、80℃以上100℃未満の範囲に発熱(結晶化)ピークが検出されることを特徴とする、分散体組成物。
  2. 前記変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が、70、000以上150,000未満である、請求項1に記載の分散体組成物。
  3. 前記成分(A)が、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の分散体組成物。
  4. 前記分散体組成物の引張弾性率が250MPa以上8,000MPa以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の分散体組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の分散体組成物を有効成分とする塗料、インキ、接着剤又はプライマー。
  6. 成分(A):ポリオレフィン樹脂を、成分(B):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂を含む分散体組成物の製造方法であって、下記工程(a)を含むことを特徴とする分散体組成物の製造方法。
    工程(a) :濃度調整後の分散体組成物を、分散体組成物の内温がJIS K7121-1987に準拠して10℃/分の昇温速度で測定された分散体組成物の示差走査型熱量計による融点の値±30℃の範囲内となるまで調温し、前記内温を保持したまま1時間以上攪拌する工程
JP2021012110A 2021-01-28 2021-01-28 分散体組成物 Pending JP2022115493A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021012110A JP2022115493A (ja) 2021-01-28 2021-01-28 分散体組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021012110A JP2022115493A (ja) 2021-01-28 2021-01-28 分散体組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022115493A true JP2022115493A (ja) 2022-08-09

Family

ID=82747766

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021012110A Pending JP2022115493A (ja) 2021-01-28 2021-01-28 分散体組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022115493A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7535347B1 (ja) 2023-10-31 2024-08-16 ユニチカ株式会社 ポリオレフィン樹脂水性分散体、その製造方法、及び塗膜

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7535347B1 (ja) 2023-10-31 2024-08-16 ユニチカ株式会社 ポリオレフィン樹脂水性分散体、その製造方法、及び塗膜

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2557421C (en) Modified polyolefin resin
JP7322207B2 (ja) 塩素化ポリオレフィン系樹脂組成物
JP2018150482A (ja) 変性ポリオレフィン樹脂
JP7115809B2 (ja) オレフィン基材用水系接着剤樹脂組成物
WO2020031916A1 (ja) 変性ポリオレフィン樹脂、水性分散体、及びプライマー
WO2021039729A1 (ja) 変性ポリオレフィン樹脂及び分散体組成物
JP2022115493A (ja) 分散体組成物
JP7412159B2 (ja) 変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物及びその製造方法
JP7212459B2 (ja) 変性ポリオレフィン系樹脂及びその製造方法
EP3805274A1 (en) Modified polyolefin resin, use thereof, and production method therefor
JP7505662B2 (ja) 水性分散体組成物
JP7530350B2 (ja) 分散樹脂組成物
JP2020111707A (ja) 金属被覆用塗料組成物、および積層体
JP2019156887A (ja) 水性分散体
JP7451118B2 (ja) 変性ポリオレフィン樹脂
JP7362028B2 (ja) 変性ポリオレフィン樹脂
JP2024108459A (ja) 分散体組成物
JP2022126372A (ja) 分散樹脂組成物
WO2022186294A1 (ja) 水性分散体
WO2022024476A1 (ja) 変性ポリオレフィン樹脂及びその用途
JP2023146023A (ja) 変性ポリオレフィン樹脂組成物
JP2020143181A (ja) 変性ポリオレフィン樹脂