JP2022103007A - 溶液処理方法および溶液処理装置 - Google Patents

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Shinichiro Yoshitomi
宜記 岡本
Yoshiki Okamoto
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Abstract

【課題】残したい成分と水を回収しつつ分離対象物質を分離する、膜分離による溶液処理方法を提供する。【解決手段】分離膜モジュール1と、分離膜モジュール1と同等以上の分離膜性能を有する分離膜モジュール2を用い、原液101が少なくとも成分A、成分Bを含み、原液中の成分濃度に対して、透過液中の成分濃度の減少率で定義する除去率について、分離膜モジュール1の成分Aの除去率が90%以上で、かつ成分Bの除去率が成分Aの除去率よりも60%ポイント以上低く、分離膜モジュール2の成分Bの除去率が85%以上であり、少なくとも(i)、(ii)のいずれかを満たす溶液処理方法。(i)分離膜モジュール2の透過液109の一部を原液101に戻し、透過液109の残りを分離膜1モジュールの濃縮液105と混合する。(ii)分離膜モジュール2の透過液を分離膜モジュール1の濃縮液と混合して精製液102を得、当該精製液の一部を原液に戻す。【選択図】図1

Description

本発明は、中性分子などの分離対象物質が含まれる溶液に対して、精製液として残したい成分および水を回収しながら分離対象物質を分離する、膜分離を利用した溶液処理方法に関する。
近年、複数の成分が溶けている溶液から有用な物質を取り出したり、不純物を分離したりするような選択分離技術のニーズが高まっている。例えば、様々な元素が解けている塩湖水などから有価物を取り出したり、不純物の入っている溶液から不純物を取り出したりなどが挙げられる。例えば特許文献1では、海水淡水化で得られる淡水や水道に利用される原水などに溶存しているホウ素を逆浸透膜とルースRO膜を用いて除去する方法について記載されている。また、特許文献2には、逆浸透膜とナノろ過(NF)膜を用いて、海水あるいは海洋深層水からミネラル成分を残し塩分を除去する方法について記載されている。
様々な選択分離技術のニーズの中で、近年、生活水準の向上に伴って世界的に人口透析治療の患者が増えており、治療により排出される透析廃液から不純物を除去し透析液として再生する技術が着目されつつある。一般的な人工透析治療では、一回の処置において90Lから150Lの大量の透析液を使用する必要がある。人工透析治療に使用された透析液には血液から移動した尿素などの老廃物が含まれるため、基本的に一度の使用によって透析液は廃棄される。そのため大量の透析廃液が発生してしまうことが問題となっている。
透析液の作成方法としては、水道水を逆浸透(RO)膜などで処理した純水に、必要な塩分、グルコースなどを添加し透析液とする方法が一般的である。しかしながら、水道水の供給が断続的な水不足地域においては、必要な量の水道水の確保が困難な場合もあり、水使用量の低減が求められている。さらに、水供給量が十分な地域においても、災害時において断水が続くと透析液を水道水から作ることができなくなる。そのため、透析廃液から尿素などの老廃物を取り除き、透析液として再利用する透析廃液再利用の要望はますます高まってきており、透析廃液再利用技術の提案がいくつかなされている。
例えば、使用済みの透析廃液から、吸着材によって不純物、老廃物、及び電解質を取り除くことが提案されているが、実施される透析治療に応じて透析廃液の再生には数キログラムの吸着材が必要とされ、重量やコストをできるだけ抑えるシステムが望まれている。
吸着材量を低減する手法として、特許文献3には二段階で吸着剤カートリッジを用いるシステムが提案されている。
特許文献4にはウレアーゼおよびイオン交換樹脂または無機吸着材による尿素除去システムが提案されている。
特許文献5には吸着剤や電気透析により塩分をある程度除去した後に、逆浸透膜を用いて不純物を除去するシステムが提案されている。
日本国特開平9-29027号公報 日本国特開2003-88863号公報 日本国特開2014-204958号公報 日本国特表2014-530643号公報 国際公開2020-218571号公報
特許文献3および4に記載の技術は、ウレアーゼで尿素をアンモニアに分解し、アンモニアをさらに捕捉することで、使用済み透析液から尿素を分離する技術である。したがって、尿素及び分解物であるアンモニアを完全に捕捉するためには複数の吸着材が必要となる。吸着材量が少ないと捕捉されなかったアンモニアが残存する懸念があるため、吸着材量が多く必要であり、それによりコストが高くなったり透析廃液再利用装置の重量が大きくなったりするため問題があった。
特許文献5に記載の技術は、孔径が7.0Å以下の逆浸透膜を用いて尿素などの老廃物を分離し透析廃液を再生する技術である。本技術では、特に水を高回収で処理する場合、逆浸透膜に通水する前処理として浸透圧差低減のため透析廃液中の塩を除去する必要があるため、イオン交換樹脂や電気透析装置を前処理として使用する。イオン交換樹脂を使用する場合、一回の透析治療で使用済みのイオン交換樹脂の廃棄物が排出されてしまう問題がある。また、電気透析装置を使用した場合、脱塩に高電圧が必要であり、かつ塩素ガス発生の懸念もあるため安全上好ましくない。
そこで、本発明の目的は、中性分子などの分離対象物質が含まれる溶液に対して、複数の膜を組み合わせ精製液として残したい成分および水をなるべく回収しながら分離対象物質を分離する、溶液処理方法を提供することにある。なお、本技術は透析廃液再利用を例として説明するが、透析廃液再利用以外の用途、例えば溶液から有用なイオンを回収する有価物回収などにも本技術は問題なく使用することができる。
上記目的を達成するために、本発明によれば、(1)原液を、分離膜1と、上記分離膜1の分離膜性能と同等あるいはそれよりも高い分離膜性能を有する分離膜2で分離処理する溶液処理方法であって、上記分離膜1を使用した分離膜モジュール1および上記分離膜2を使用した分離膜モジュール2には透過側と供給側が存在し、上記原液は、少なくとも成分A、成分Bを含むものであり、上記分離膜1および上記分離膜2を標準評価条件で運転した場合において、供給液中の成分濃度に対して、透過した溶液中の成分濃度の減少率で定義する除去率について、上記分離膜1の上記成分Aの除去率が90%以上であり、かつ、上記分離膜1の上記成分Bの除去率が、上記分離膜1の上記成分Aの除去率よりも60%ポイント以上低いものであり、上記分離膜2の上記成分Bの除去率が85%以上であり、上記分離膜モジュール1の透過側から得られる透過液を含む透過側溶液は、上記分離膜モジュール2の供給側に供給し分離処理され、少なくとも以下の(i)(ii)のいずれかの要件を満たすことを特徴とする溶液処理方法が提供される。
(i)上記分離膜モジュール2の透過液の少なくとも一部を上記原液と混合後上記分離膜モジュール1の供給側に供給し、上記分離膜モジュール2の透過液の残りの全量または一部を上記分離膜モジュール1の濃縮液と混合し精製液を得る。
(ii)上記分離膜モジュール2の透過液を分離膜モジュール1の濃縮液と混合し精製液を得、かつ、当該精製液の一部を上記原液と混合後、分離膜モジュール1の供給側に供給する。
また、本発明の好ましい形態によれば、(2)上記分離膜モジュール1または2に使われる分離膜エレメントが、有孔中心管を備えたスパイラル型の分離膜エレメントであることを特徴とする、(1)に記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(3)上記分離膜エレメントの有孔中心管の長手方向に対し垂直方向における外周端部に、供給液供給部又は濃縮液排出部を有していることを特徴とする、(2)に記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(4)上記分離膜モジュール1が膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造であり、上記分離膜モジュール1の透過側に、上記分離膜モジュール2の濃縮液、または原液、またはその両方が供給されることを特徴とする、(1)に記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(5)上記分離膜モジュール2が膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造であり、上記分離膜モジュール2の透過側に上記分離膜モジュール1の濃縮液が供給されることを特徴とする、(1)、(4)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(6)膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造となっている上記分離膜モジュール1または上記分離膜モジュール2について、透過側と供給側に供給される溶液の流れがそれぞれ向流となっていることを特徴とする、(4)または(5)に記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(7)上記分離膜モジュール1が透過液方向に多段となっていることを特徴とする、(1)~(6)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(8)最後段に設置される上記分離膜モジュール1の濃縮液を循環し、上記分離膜モジュール1の供給側に戻すことを特徴とする、(7)に記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(9)上記分離膜モジュール2が透過液方向に多段となっていることを特徴とする、(1)~(8)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(10)上記分離膜モジュール1または上記分離膜モジュール2が濃縮液方向に多段となっていることを特徴とする、(1)~(9)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(11)上記原液の成分濃度の合計が1000mg/L以上であることを特徴とする、(1)~(10)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(12)上記成分Aがイオンで上記成分Bが中性分子であることを特徴とする、(1)~(11)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(13)上記原液が医療用人工透析廃液であることを特徴とする、(1)~(12)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(14)上記成分Aが多価イオンで上記成分Bが1価イオンであることを特徴とする、(1)~(11)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(15)上記成分Aが高分子の中性分子で上記成分Bが低分子の中性分子であることを特徴とする、(1)~(11)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(16)上記分離膜1が逆浸透膜もしくはナノろ過膜であることを特徴とする、(1)~(15)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(17)上記分離膜2が逆浸透膜であることを特徴とする(1)~(16)のいずれかに記載の溶液処理方法が提供される。
また、本発明によれば、(18)原液を、分離膜1と、上記分離膜1の分離膜性能と同等あるいはそれよりも高い分離膜性能を有する分離膜2で分離処理する溶液処理装置であって、上記分離膜1を使用した分離膜モジュール1および上記分離膜2を使用した分離膜モジュール2には透過側と供給側が存在し、上記分離膜1および上記分離膜2を標準評価条件で運転した場合において、供給液中の成分濃度に対して、透過した溶液中の成分濃度の減少率で定義する除去率について、上記分離膜1の上記成分Aの除去率が90%以上であり、かつ、上記分離膜1の上記成分Bの除去率が、上記分離膜1の上記成分Aの除去率よりも60%ポイント以上低いものであり、上記分離膜2の上記成分Bの除去率が85%以上であり、上記分離膜モジュール1の透過側から得られる透過液を含む透過側溶液のラインは、上記分離膜モジュール2の供給側に接続され、少なくとも以下の(i)(ii)のいずれかの要件を満たすことを特徴とする溶液処理装置が提供される。
(i)上記分離膜モジュール2の透過液ラインを2つに分岐させ、一方を上記原液のラインに接続し、上記原液と上記分離膜モジュール2の透過液の混合液のラインを上記分離膜モジュール1の供給側に接続し、上記分離膜モジュール2の透過液ラインのもう一方を上記分離膜モジュール1の濃縮液ラインに接続し精製液ラインとする。
(ii)上記分離膜モジュール1の濃縮液ラインを上記分離膜モジュール2の透過側の溶液ラインに接続し精製液ラインとし、かつ、精製液ラインを2つに分岐させ、一方を上記原液ラインに接続し、上記原液と上記精製液の混合液のラインを分離膜モジュール1の供給側に接続する。
また、本発明の好ましい形態によれば、(19)上記分離膜モジュール1または上記分離膜モジュール2に使われる分離膜エレメントが、有孔中心管を備えたスパイラル型の分離膜エレメントであることを特徴とする、(18)に記載の溶液処理装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(20)上記分離膜エレメントの有孔中心管の長手方向に対し垂直方向における外周端部に、供給液供給部又は濃縮液排出部を有していることを特徴とする、(19)に記載の溶液処理装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(21)上記分離膜モジュール1が膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造であり、上記分離膜モジュール1の透過側に、上記分離膜モジュール2の濃縮液、または原液、またはその両方のラインが接続されることを特徴とする、(18)に記載の溶液処理装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(22)上記分離膜モジュール2が膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造であり、上記分離膜モジュール2の透過側に上記分離膜モジュール1の濃縮液ラインが接続されることを特徴とする、(18)または(21)のいずれかに記載の溶液処理装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、(23)膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造となっている上記分離膜モジュール1または上記分離膜モジュール2について、透過側と供給側に供給される溶液の流れがそれぞれ向流となるように配管接続されていることを特徴とする、(21)または(22)に記載の溶液処理装置が提供される。
本発明の溶液処理方法によって、分離対象物質が含まれる溶液に対して、膜分離処理により回収したい成分をなるべく回収しながら分離対象物質を分離することができる。
本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の溶液処理方法に使用するI型分離膜エレメントの一部展開斜視図である。 本発明に記載の溶液処理方法に使用するOARO分離膜エレメントの構造の一例を示す模式図(OARO分離膜エレメントの展開図)である。 本発明に記載のI型の分離膜エレメントを搭載した通常の分離膜モジュールの構造の一例を示す模式図(断面図)である。 本発明に記載のOARO分離膜モジュールの構造の一例を示す模式図(断面図)である。 本発明に記載の溶液処理方法の模式図の一例である。 本発明に記載の逆L型の分離膜エレメントの一例を示す模式図(断面図)である。 本発明に記載のL型の分離膜エレメントの一例を示す模式図(断面図)である。 本発明に記載のUターン型(I型-逆L型)の分離膜エレメントの一例を示す模式図(断面図)である。 本発明に記載のI型の分離膜体の一例を示す模式図(I型分離膜エレメントの展開図)である。 本発明に記載の逆L型の分離膜体の一例を示す模式図(逆L型分離膜エレメントの展開図)である。 本発明に記載のL型の分離膜体の一例を示す模式図(L型分離膜エレメントの展開図)である。 本発明に記載の逆L型の分離膜エレメントを3本搭載した通常の分離膜モジュールの一例を示す模式図(断面図)である。 本発明に記載のL型の分離膜エレメントを3本搭載した通常の分離膜モジュールの一例を示す模式図(断面図)である。 本発明に記載の逆L型の分離膜エレメントを2本、Uターン型(I型-逆L型)の分離膜エレメントを1本搭載した通常の分離膜モジュールの一例を示す模式図(断面図)である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(1)本出願における溶液処理方法に使用される分離膜
<概要>
分離膜としては、溶液中の残したい成分Aと除去したい成分Bに応じた分離性能を有する膜が用いられる。分離膜は、単一層であってもよいし、分離機能層と基材とを備える複合膜であってもよい。また、複合膜においては、分離機能層と基材との間に、さらに多孔性支持層があってもよい。
ここで、分離膜には透過側の面と供給側の面があり、透過側流路材を挟み透過側の面が互いに向かい合うように形成された状態の分離膜のことを分離膜リーフと呼び、さらに分離膜リーフの片端面に供給側流路材を置いたものを分離膜体と呼ぶ。
<分離機能層>
分離機能層は、分離機能および支持機能の両方を有する層であってもよいし、分離機能のみを備えていてもよい。なお、「分離機能層」とは、少なくとも分離機能を備える層を指す。
分離機能層が分離機能および支持機能の両方を有する場合、分離機能層としては、セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンからなる群から選ばれるポリマーを主成分として含有する層が好ましく適用される。
一方、分離機能層としては、孔径の制御が容易であり、かつ耐久性に優れるという点で、架橋高分子が好ましく使用される。特に、供給液中の成分の分離性能に優れるという点で、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて得られるポリアミド分離機能層や、有機無機ハイブリッド機能層などが好適に用いられる。これらの分離機能層は、多孔性支持層上でモノマーを重縮合することによって形成可能である。
例えば、分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有することができる。このような膜は、公知の方法により、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを界面重縮合することで形成できる。例えば、多孔性支持層上に多官能アミン水溶液を塗布し、余分な多官能アミン水溶液をエアーナイフなどで除去し、その後、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布することで、重縮合が起きてポリアミド分離機能層が得られる。
<多孔性支持層>
多孔性支持層は、分離機能層を支持する層であり、樹脂が素材の場合多孔性樹脂層とも言い換えることができる。
多孔性支持層に使用される材料や、その形状は特に限定されないが、例えば、多孔性樹脂によって基板上に形成されてもよい。多孔性支持層の組成は特に限定されないが、熱可塑性樹脂によって形成されていることが好ましい。ここで、熱可塑性樹脂とは、鎖状高分子物質からできており、加熱すると外力によって変形または流動する性質が表れる樹脂のことをいう。熱可塑性樹脂の例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル・スチレン共重合体などが使用できる。これらの中から化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいポリスルホンを使用することが好ましい。
多孔性支持層は、例えば、上記ポリスルホンのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を、後述する基材(例えば密に織ったポリエステル不織布)の上に一定の厚みに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、製造することができる。
なお、後述のOARO(Osmotically Assisted Reverse Osmosis)分離膜エレメントを使用した分離膜モジュールにおいては、分離膜の透過側に供給される流体の浸透圧によって、膜の供給側と透過側の浸透圧差を低減することから、透過側および供給側に供給される流体を分離膜機能層の界面近傍、すなわち、多孔性支持層の表面近傍まで浸透しやすい構造であることが好ましい。
<基材>
分離膜の強度、寸法安定性などの観点から、分離膜は基材を有してもよい。基材としては、強度、流体透過性の点で繊維状の基材を用いることが好ましい。
基材としては、長繊維不織布および短繊維不織布それぞれを好ましく用いることができる。
<分離膜体>
分離膜は、透過側流路材を挟んで透過側の面が対向するように配置され分離膜リーフとなる。分離膜リーフの供給側の面の片端面に供給側流路材を配置したものを分離膜体と呼ぶ。透過側流路は、透過流体が有孔中心管に流れるように、透過側の面の間が、巻回方向内側の一辺のみにおいて開放され、他の三辺においては封止される。供給側流路は、分離膜の供給側の面の間に形成され、供給側流路材の封止方法により、後述のようにI型や逆L型、Uターン型など様々なタイプの分離膜エレメントとなる。
<分離膜1および分離膜2の差異>
分離膜の除去率は、分離膜の標準評価条件で運転した場合において、供給液中の成分濃度に対して、透過した溶液中の成分濃度の減少率で定義する。本出願では分離膜1と分離膜2の2種類の膜を用いており、それぞれの膜について成分Aおよび成分Bの除去率が測定される。
本出願においては、分離膜1の成分A除去率は90%以上であり、かつ、分離膜1の成分Bの除去率が、分離膜1の成分Aの除去率よりも60%ポイント以上低いものであり、分離膜2の成分Bの除去率が85%以上である必要がある。
分離膜1は成分Aと成分Bを選択分離する必要があるため、上記のような除去率の膜を分離膜1として使用する。一方、分離膜2は分離膜1を選択的に透過した成分Bを濃縮液として除去し、系外に排出する役割があるため、上記のような除去率の膜を分離膜2して使用する。これらの除去率を満たすことにより、初めてプロセス全体として、十分な性能を発揮することができる。
標準評価条件について説明する。標準評価条件における膜への供給液は、処理したい原液あるいは原液中の成分Aおよび成分Bを模擬した溶液を使用する。なお、原液の浸透圧が高く評価が難しい場合は、最大3倍まで原液を希釈した溶液を評価に使用しても良い。標準評価条件における膜透過フラックスは、0.3m/dとする。また、標準評価条件では、供給される供給液量に対する透過液量の割合である回収率が0と近似できる、すなわち十分な膜面流速が必要である。
例えば、本発明の溶液処理方法を用いて透析廃液から塩を回収し尿素を分離したい場合、分離膜1の評価については、供給液として透析廃液を模擬した塩10000mg/Lおよび尿素630mg/Lが含まれる模擬溶液を使用し、温度36℃、圧力1.0MPaで膜評価を行う。また、分離膜2の評価については、分離膜1と同様の模擬溶液を使用し、温度36℃、圧力2.2MPaで膜評価を行う。
例えば、本発明の溶液処理方法を用いてCaCl10000mg/LとNaCl 5000mg/Lが含まれる溶液を分離し、高純度のNaCl溶液を得たい場合、分離膜1の評価については、供給液としてCaCl10000mg/LおよびNaCl 5000mg/Lが含まれる溶液を使用し、温度25℃、圧力1.1MPaで膜評価を行う。また、分離膜2の評価については、分離膜1と同様の溶液を使用し、温度25℃、圧力2.4MPaで膜評価を行う。
例えば、本発明の溶液処理方法を用いてビールを分離し、ノンアルコールビールを得たい場合、分離膜1の評価については、供給液として水で2倍に希釈したビールを使用し、温度25℃、圧力2.0MPaで膜評価を行う。また、分離膜2の評価については、分離膜1と同様の溶液を使用し、温度25℃、圧力4.0MPaで膜評価を行う。
分離膜1の種類については上記条件を満たせれば特に限定されないが、成分Aが各種イオン、成分Bが分子量の小さい中性分子の場合は、ナノろ過膜あるいは低圧RO膜が好ましく使用される。
分離膜2の種類は上記条件を満たせれば特に限定されないが、成分Aがイオン、成分Bが中性分子の場合は、海水淡水化などに使われる緻密なRO膜が好ましく使用される。
また、本出願における分離膜では分離膜性能が定義される。分離膜性能とは、pH7、1000mg/Lの塩化ナトリウム(NaCl)の原液に対して、膜透過フラックスが0.3m/dとなる場合の除去率を比較し、除去率が高いほど分離膜性能が高いと定義する。一般的に分離膜性能は、ナノろ過膜<低圧RO膜<海水淡水化用RO膜となる。
(2)本出願における溶液分離方法に使用される分離膜モジュール
本発明における分離膜1や分離膜2は、平膜状の膜を有孔中心管の周囲に巻囲したスパイラル型エレメントや、プレート型支持板の両面に平膜を張ったものを、スペーサーを介して一定の間隔で積層したプレート・アンド・フレーム型エレメント、さらには、管状膜を用いたチューブラー型エレメント、中空糸膜を束ねてケースに収納した中空糸膜エレメントとして構成することができる。さらに、これらのエレメントを耐圧容器に単数もしくは複数個を直列に接続して収容し分離膜モジュールとする。エレメントの形態としては、いずれの形態であっても良いが、操作性や互換性の観点からはスパイラル型分離膜エレメントを使用するのが好ましい。スパイラル型分離膜エレメントは、分離膜、透過側流路材、供給側流路材の積層物を、透過液を集める有孔中心管の周りに巻囲したものである。
<通常の分離膜モジュール・I型分離膜エレメント>
I型と呼ばれる分離膜エレメント(201)は、図11に示すように片端面より供給液(206)が流入し、もう片端面から濃縮液(208)が排出される。I型の分離膜エレメント(201)は図11で示したように、分離膜(203)、供給側流路材(204)、透過側流路材(205)、有孔中心管(202)を備える。I型の分離膜エレメント(201)において、分離膜(203)は、供給側流路材(204)、透過側流路材(205)と、図19に示すような分離膜体(227)を形成する。分離膜(203)は、透過側流路材(205)を挟んで透過側の面(212)が対向するように配置される。また、供給側の面(211)の間には供給側流路材(204)が配置される。透過側流路は、透過液(207)が有孔中心管(202)に流れるように、透過側の面(212)の間が、巻回方向内側の一辺のみにおいて開放され、他の三辺においては封止(閉口)される。
供給側流路材は、分離膜の供給側の面に挟まれるように配置され、分離膜に供給液を供給する流路(すなわち供給側流路)を形成する。さらに供給液の濃度分極を抑制するために、供給液の流れを乱すような形状になっていることが好ましい。
供給側流路材は、ネット、あるいは空隙を有するシートに凸状物が設けられたような連続形状を有している部材であってもよいし、あるいは分離膜に対して0より大きく1未満である投影面積比を示す不連続形状を有するものであってもよい。また、供給側流路材は分離膜と分離可能であってもよいし、分離膜に固着していてもよい。
なお、供給側流路材の素材は特に限定されず、分離膜と同素材であっても異素材であっても構わない。
供給側流路材の厚みが大きいと圧力損失が小さくなるが、エレメント化した場合に圧力容器に充填できる膜面積が小さくなる。厚みが小さいと流路の圧力損失が大きくなり、分離性能や透過性能が低下してしまう。各性能のバランスや運転コストを考慮すると、供給側流路材の厚みは、好ましくは200~1000μmであり、より好ましくは300~900μmである。
供給側流路材の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することもできるし、あるいはマイクロスコープを用いて撮影した画像を解析することによって測定することもできる。
供給側流路材がネットである場合、ネットは複数の糸により構成されている。複数の糸は、交点において互いに交差し、交点部分が最も厚みが大きくなる。
ネットを構成する糸の径は糸の長さ方向において一定であってもよく、長さ方向に一様に増加または減少してもよく、増加と減少を繰り返すような形態であっても構わない。糸の径が長さ方向において増加と減少を繰り返すような形態である場合、糸径が最も大きくなる箇所で複数の糸が交差するような形態であることが好ましい。糸径が最も大きくなる箇所で複数の糸が交差することによって、供給側流路の圧力損失を低くすることができる。
また、交差する複数の糸の径は同じであっても異なっていても構わない。交差する複数の糸の径が異なっている場合、厚みが一定であれば、径の小さい糸は圧力損失の低減効果が大きく、径の大きい糸は流れを乱す乱流効果が大きくなる。
上述の圧力損失と乱流効果とのバランスから、ネットを構成する糸断面の径は、(最小部の径)/(最大部の径)が0.1以上0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以上0.6以下である。
ネットを構成する糸の傾斜角は、供給液の流れる方向に対して平行方向であれば、圧力損失を低くすることができるが、濃度分極低減効果は小さくなり、垂直方向であれば、圧力損失は高くなるが、濃度分極低減効果を大きくすることができる。圧力損失と濃度分極低減効果のバランスから、糸の傾斜角度は供給液の平均流れ角度に対して、-60°以上60°以下であることが好ましい。ここで、平均流れ角度とは、1枚の分離膜体の中での流れ角度の平均値である。
複数の糸が交差する交点の間隔は、大きいほど圧力損失は小さくなり、小さいと圧力損失は大きくなる。それらのバランスから、交点間隔は、1.0mm以上10mm以下が好ましく、1.1mm以上8mm以下がより好ましく、1.2mm以上5mm以下がさらに好ましい。
ネットを構成する糸の断面形状は特に限定されず、楕円、円、三角形、四角形、不定形などを用いることができるが、ネットと分離膜表面が接する部分の面積が小さいと分離膜表面とネットとの擦れによる分離膜性能の低下を抑制することができるうえ、流れのデッドゾーンを小さくすることができ、濃度分極を抑制することができるため、好ましい。ネットと分離膜表面が接する部分の分離膜に対する投影面積比は、0.01以上0.25以下であることが好ましく、0.02以上0.2以下がより好ましい。
ネットを構成する糸の材質は、供給側流路材としての剛性を維持することができ、分離膜表面を傷つけないものであれば特に限定されず、分離膜と同素材であっても異素材であってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、熱硬化性エラストマーなどが好ましく用いられる。
透過側流路材は、分離膜の透過側の面に挟まれるように配置され、分離膜を透過した透過液を有孔中心管の孔まで導く透過側流路を形成する役割を担う。
透過側流路材は、透過側流路の流動抵抗を低減し、かつ加圧ろ過下においても分離膜の透過液流路への落ち込みを抑制し、流路を安定に形成される点では、透過側流路材の横断面積比が0.30~0.75であることが好ましく、0.40~0.60であることがより好ましい。透過側流路材の種類は限定されず、トリコットのような緯編物、不織布のような多孔性シートに突起物を配置したシート、フィルムや不織布を凹凸加工した凹凸加工シートなどを用いることができる。
特定の横断面積比を有する透過側流路材を本発明に使用する分離膜エレメントに配置することにより、透過側流路の流動抵抗をより低減することができ、それに伴い、流動抵抗が大きい流路材を含む分離膜エレメントと、同じ回収率で運転した際、供給液の流速が速まり濃度分極を小さくでき、特に高回収率運転下における濃度分極の増加やスケールの発生をさらに抑制することができる。
横断面積比は、分離膜エレメントの有孔中心管長手方向と平行な方向に沿って、透過側流路材の凸部を通るように切断し、その断面について、凸部の中心と隣接する凸部の中心の距離と透過側流路材の高さの積に対する、凸部の中心と隣接する凸部の中心との間に占める透過側流路材の断面積との比である。横断面積比の算出には、例えばキーエンス社製高精度形状測定システムKS-1100を用い、任意の30カ所の平均値として算出することができる。
透過側流路材の厚みは、厚ければ圧力損失を小さくすることができるものの、分離膜エレメントの容器に充填できる膜面積が減少してしまう。薄ければ、分離膜エレメントに充填可能な膜面積は大きくなるものの、圧力損失は大きくなってしまう。それらのバランスから、透過側流路材の厚みは、好ましくは0.1mm~0.5mmであり、より好ましくは0.2mm~0.4mmである。
透過側流路材の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することができる。
透過側流路材の素材は、有孔中心管に容易に巻回できるものであればよく、透過側流路の圧縮弾性率は、0.1~5GPaであることが好ましい。圧縮弾性率がこの範囲内であれば、透過側流路材を有孔中心管に容易に巻回することができる。具体的には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましく用いられる。
透過側流路材の圧縮弾性率は、精密万能試験機を用いて圧縮試験を行い、応力ひずみ線図を作成することにより、測定することができる。
有孔中心管は、その中を透過液が流れるように構成されていればよく、材質、形状は特に限定されない。有孔中心管の径は、大きければ、分離膜エレメントの充填可能な膜面積が減少してしまい、小さければ、有孔中心管の内部を透過液が流れる際の流動抵抗が大きくなってしまう。有孔中心管の径は、透過液の流量に応じて適宜設計されるが、好ましくは10~50mm、さらに好ましくは15~40mmである。有孔中心管としては、例えば、複数の孔が設けられた側面を有する円筒状の部材が用いられる。
I型分離膜エレメントは図13に示すように供給液(206)と濃縮液(207)が混ざらないようにするためのシール部材であるブラインシール(223)を装着し、圧力容器(222)に封入され、分離膜モジュールとなる。このように、供給液(206)が透過液(208)と濃縮液(207)に分離される分離膜モジュールを、以下通常の分離膜モジュール(216)と呼ぶ。
<通常の分離膜モジュール・L型、逆L型、Uターン型分離膜エレメント>
L型と呼ばれる分離膜エレメント(225)は図17に示すように、エレメント外周部より供給液(206)が流入し、片端面より濃縮液(207)が排出される。L型分離膜エレメント(225)は、図21に示されるL型の分離膜体(229)を有孔中心管(202)の周囲に巻回した構造をしている。逆L型と呼ばれる分離膜エレメント(224)は図16に示すようにL型の流れを逆にした構造の分離膜エレメントで、エレメントの片端面より供給液(206)が流入し、外周面から濃縮液(207)が排出される。逆L型分離膜エレメント(224)は、図20に示される逆L型の分離膜体(228)を有孔中心管(202)の周囲に巻回した構造をしている。
L型や逆L型のエレメントは、分離膜体の有効中心管長手方向の長さWと、有孔中心管長手方向と垂直の方向における長さLの比率L/Wが2.5以上の分離膜エレメントにおいて、供給液に対する透過液の比率である回収率を一定とした運転の場合、分離膜エレメント内の供給側流路材を通る供給液が同じL/Wを持つI型分離膜エレメントに対して高流速化される。従って、本溶液処理方法に使用される分離膜エレメントとして、L/Wが2.5以上のL型および逆L型分離膜エレメントは高回収率運転であっても、膜面の濃度分極を抑制することができ、より安定的に運転することが可能である。L型および逆L型分離膜エレメントに使用される流路材はI型分離膜エレメントに使用される流路材と同様のもので構わない。
さらなる供給液の高流速化のため、1本の分離膜エレメント内に2種類の分離膜体を持つ分離膜エレメントであるUターン型分離膜エレメントを使用しても良い。Uターン型分離膜エレメント(226)の一例としては、図18に示すようなI型分離膜体と逆L型分離膜体を組み合わせたI型-逆L型分離膜エレメント(226)が挙げられる。I型-逆L型分離膜エレメント(226)は、図19に示されるような供給液(206)が有孔中心管(202)の長手方向の片端面から流入しもう片方の端面より排出されるI型の分離膜体(227)と、図20に示されるような供給液(206)が有孔中心管(202)の長手方向の片端面から流入し外周面から排出される逆L型の分離膜体(228)を同時に巻囲した構造を有する分離膜エレメントである。I型-逆L型分離膜エレメント(226)の逆L型分離膜体(228)の開口部のある端面に、図18に示すように流れをUターンさせるUターンキャップ(230)を装着することにより、供給液がI型分離膜体(227)を通過した後に逆L型分離膜体(228)に供給されることになるため、供給液(206)を高流速化させる、いわゆるツリー型配置を1本の分離膜エレメントで模擬した構造とすることができる。I型分離膜体(227)と逆L型分離膜体(228)の比率および上述のL/Wを適切に設計することにより、I型-逆L型分離膜エレメント(226)は従来のI型分離膜エレメント(201)に対して5~20倍程度まで濃縮液流速を速めることができ、高回収率であってもさらに安定的に運転することが可能である。I型-逆L型分離膜エレメント(226)に使用される流路材はI型分離膜エレメント(201)に使用される流路材と同様のもので構わない。
L型、逆L型、Uターン型分離膜エレメントを総称して、高流速型分離膜エレメントと呼ぶ。高流速型分離膜モジュールは、I型分離膜エレメントを使用した分離膜モジュールと同様に供給液が濃縮液と透過液に分離されるので、通常の分離膜モジュールである。図22に逆L型分離膜エレメント(224)3本を直列に圧力容器(222)に封入した分離膜モジュール(216)を示し、図23にL型分離膜エレメント(225)3本を直列に圧力容器(222)に封入した分離膜モジュール(216)を示す。L型および逆L型分離膜エレメントは一般的に有孔中心管長手方向の長さが短いため、図22や図23では分離膜エレメントの有孔中心管を直列に接続することにより、I型分離膜エレメントを使用した分離膜モジュールと膜面積を合わせている。図24に逆L型の分離膜エレメント(224)2本とUターン型分離膜エレメント(226)1本を直列に接続し封入した分離膜モジュール(216)を示す。Uターン型分離膜エレメントは増速効果が高いため、図24に示されるように特に流速が遅くなる直列接続の最後のエレメントに使用することが好ましい。
<OARO分離膜モジュール>
一方、本出願における好ましい一形態では、図12に示すような分離膜1や分離膜2の透過液側にも溶液が供給できるような構造の分離膜エレメントが使用される。このような分離膜エレメントをOARO(Osmotically Assisted Reverse Osmosis)分離膜エレメントまたは、PRO(Pressure―Retarded Osmosis)分離膜エレメントと呼ぶ。なお、以下OARO分離膜エレメント(213)と呼称する。OARO分離膜エレメント(213)においても、I型分離膜エレメント(201)同様に、分離膜(203)は、供給側流路材(204)と透過側流路材(205)と分離膜体を形成する。分離膜(203)は、透過側流路材(205)を挟んで透過側の面(212)が対向するように配置される。また、供給側の面(211)の間には供給側流路材(204)が配置される。
OARO分離膜エレメント(213)は、図12に示すように分離膜(203)の供給側の面(211)と透過側の面(212)の両方に溶液を供給し、排出することができる構造を有する。
OARO分離膜エレメント(213)においては、供給側の流路と透過側の流路は、膜を介して表裏で略同一の膜面を流れることが好ましい。膜を介して表裏で同一の膜面を流れるとは、供給側における供給液(206)の供給部から排出部までに通過する膜面上の経路が、透過側における供給液(214)の供給部から排出部までに通過する膜面上の経路が、膜の表裏で概ね同一または概ね反対の過程をたどるということを意図する。
上述の流路を形成するために、例えば、供給側流路および透過側流路は図12に示されるような流路であることが好ましい。図12は、OARO分離膜エレメント(213)の有孔中心管(202)および1対の分離膜体の展開図を示しており、図12(a)は分離膜体の供給側の面(211)および有孔中心管(202)を、図12(b)は分離膜体の透過側の面(212)および有孔中心管(202)を示している。図12(a)に示した供給側の流路は、分離膜の両端面において、分離膜エレメントの巻回方向の内周部が開口されており、中央部に内側から巻回方向外側にかけて連続的に封止(210)されており、外周部分は封止されておらず、流路が設けられている。すなわち、供給側の面(211)においては、供給液(206)が分離膜の一端面の内周部から流入し、有孔中心管(202)の長手方向中央部において巻回方向外側の流路を通り、もう一方の端面の内周部から濃縮液(207)が排出される。
図12(b)に示した透過側の流路は、分離膜体の巻回方向内側の一辺を除く三辺が全て封止されるとともに、分離膜体の中央部が、供給側の面(211)と同様に巻回方向の内側から外側にかけて連続的に封止(210)されており、外周部分は封止されておらず、流路が設けられている。また、有孔中心管(202)の中央部に仕切り(209)が設けられており、分離膜エレメントの透過側供給液(214)は有孔中心管(202)の端面から供給され、有孔中心管(202)の孔から分離膜上の透過側流路を通り、中央部の封止部(210)が設けられていない巻回方向外側の流路を通って再び有孔中心管(202)の内部(仕切り(209)の反対側)を通り、もう一方の有孔中心管(202)の端面から、透過側排出液(215)として排出される。このような流路であることで膜を介して表裏で概ね反対の流路とすることができるうえ、OARO分離膜エレメント(213)の製作性という点においても好ましい。
OARO分離膜エレメントにおける供給側流路材は、分離膜の供給側の面に挟まれるように配置され、分離膜に供給液を供給する流路(すなわち供給側流路)を形成する。さらに供給液の濃度分極を抑制するために、供給液の流れを乱すような形状になっていることが好ましい。
OARO分離膜エレメントにおける供給側流路材は、ネット、あるいは空隙を有するシートに凸状物が設けられたような連続形状を有している部材であってもよいし、あるいは分離膜に対して0より大きく1未満である投影面積比を示す不連続形状を有するものであってもよい。また、供給側流路材は分離膜と分離可能であってもよいし、分離膜に固着していてもよい。
なお、供給側流路材の素材は特に限定されず、分離膜と同素材であっても異素材であっても構わない。
供給側流路材の厚みが大きいと圧力損失が小さくなるが、エレメント化した場合に圧力容器に充填できる膜面積が小さくなる。厚みが小さいと流路の圧力損失が大きくなり、分離性能や流体透過性能が低下してしまう。各性能のバランスや運転コストを考慮すると、供給側流路材の厚みは、好ましくは200~1000μmであり、より好ましくは300~900μmである。
供給側流路材の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することもできるし、あるいはマイクロスコープを用いて撮影した画像を解析することによって測定することもできる。
供給側流路材がネットである場合、ネットは複数の糸により構成されている。複数の糸は、交点において互いに交差し、交点部分が最も厚みが大きくなる。
ネットを構成する糸の径は糸の長さ方向において一定であってもよく、ネットを構成する糸の径は糸の長さ方向において一定であってもよく、長さ方向に一様に増加または減少してもよく、増加と減少を繰り返すような形態であっても構わない。糸の径が長さ方向において増加と減少を繰り返すような形態である場合、糸径が最も大きくなる箇所で複数の糸が交差するような形態であることが好ましい。糸径が最も大きくなる箇所で複数の糸が交差することによって、供給側流路の圧力損失を低くすることができる。
また、交差する複数の糸の径は同じであっても異なっていても構わない。交差する複数の糸の径が異なっている場合、厚みが一定であれば、径の小さい糸は圧力損失の低減効果が大きく、径の大きい糸は流れを乱す乱流効果が大きくなる。
上述の圧力損失と乱流効果とのバランスから、ネットを構成する糸断面の径は、(最小部の径)/(最大部の径)が0.1以上0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以上0.6以下である。
ネットを構成する糸の傾斜角は、供給液の流れる方向に対して平行方向であれば、圧力損失を低くすることができるが、濃度分極低減効果は小さくなり、垂直方向であれば、圧力損失は高くなるが、濃度分極低減効果を大きくすることができる。圧力損失と濃度分極低減効果のバランスから、糸の傾斜角度は供給液の平均流れ角度に対して、-60°以上60°以下であることが好ましい。ここで、平均流れ角度とは、1枚の分離膜体の中での流れ角度の平均値である。しかし、OARO分離膜エレメント(213)において、供給側流路の流れの方向が図12に示したように流路の途中にて90°変化する。したがって、糸の傾斜角度は、分離膜面上において、流れ方向に応じて、場所によって異なっていることが好ましい。
複数の糸が交差する交点の間隔は、大きいほど圧力損失は小さくなり、小さいと圧力損失は大きくなる。それらのバランスから、交点間隔は、1mm以上10mm以下が好ましく、1.5mm以上8mm以下がより好ましく、2mm以上6mm以下がさらに好ましい。
ネットを構成する糸の断面形状は特に限定されず、楕円、円、三角形、四角形、不定形などを用いることができるが、ネットと分離膜表面が接する部分の面積が小さいと分離膜表面とネットとの擦れによる分離膜性能の低下を抑制することができるうえ、流れのデッドゾーンを小さくすることができ、濃度分極を抑制することができるため、好ましい。ネットと分離膜表面が接する部分の分離膜に対する投影面積比は、0.01以上0.25以下であることが好ましく、0.02以上0.2以下がより好ましい。
ネットを構成する糸の材質は、供給側流路材としての剛性を維持することができ、分離膜表面を傷つけないものであれば特に限定されず、分離膜と同素材であっても異素材であってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、熱硬化性エラストマーなどが好ましく用いられる。
OARO分離膜エレメント(213)における透過側流路材(205)は、図12に示されるように、分離膜の透過側の面(212)に挟まれるように配置され、透過液(208)の流路を形成する点は通常の分離膜エレメントと同様であるが、OARO分離膜エレメント(213)においては、透過液のみではなく、透過側にも透過側供給液(214)が供給されるため、透過側に供給される透過側供給液(214)が透過液(208)と混合し透過側排出液(215)として排出されるまでの流路を形成する役割を果たす。
OARO分離膜エレメントにおける透過側流路材は、透過側流路の流動抵抗を低減し、かつ加圧ろ過下においても分離膜の透過流体流路への落ち込みを抑制し、流路を安定に形成される点で、透過側流路材の横断面積比が0.10~0.50であることが好ましく、0.20~0.40であることがより好ましい。透過側流路材の種類は限定されず、トリコットのような緯編物、不織布のような多孔性シートに突起物を配置したシート、フィルムや不織布を凹凸加工した凹凸加工シートなどを用いることができるが、図2に示したように流路の途中で流れの向きが変化することから、断面積比や形態は流れの方向に応じて場所で異なる形態であることがより好ましい。
透過側流路材の厚みは、厚ければ圧力損失を小さくすることができるものの、同サイズの分離膜エレメントに充填できる膜面積が減少してしまう。薄ければ、同サイズの分離膜エレメントに充填可能な膜面積は大きくなるものの、圧力損失は大きくなってしまう。それらのバランスから、透過側流路材の厚みは、好ましくは0.2mm~1mmであり、より好ましくは0.3mm~0.9mmである。
透過側流路材の厚みは、市販の厚み測定器により直接測定することができる。
透過側流路材の素材は、有孔中心管(202)に容易に巻回できるものであればよく、透過側流路材の圧縮弾性率は、0.1~5GPaであることが好ましい。圧縮弾性率がこの範囲内であれば、透過側流路材を有孔中心管に容易に巻回することができる。具体的には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましく用いられる。
透過側流路材の圧縮弾性率は、精密万能試験機を用いて圧縮試験を行い、応力ひずみ線図を作成することにより、測定することができる。
図12に示したように、有孔中心管(202)は、内部中央部に仕切り(209)が設けられている構造のものを用いることができる。有効中心管(202)の形状は、その中を透過側供給液(214)および透過側排出液(215)が流れるように構成されていればよく、材質、形状は特に限定されない。有孔中心管(202)の径は、大きければ、同サイズの分離膜エレメントに充填可能な膜面積が減少してしまい、小さければ、有孔中心管(202)の内部を透過側供給液(214)および透過側排出液(215)が流れる際の流動抵抗が大きくなってしまう。有孔中心管(202)の径は、透過側供給液(214)および透過側排出液(215)の流量に応じて適宜設計されるが、好ましくは10~50mm、さらに好ましくは15~40mmである。有孔中心管(202)としては、例えば、複数の孔が設けられた側面を有する円筒状の部材が用いられる。
流路の形成に用いられる封止部(210)は、巻回前に外周端部を接着剤やテープで封止する、もしくは端面については、巻回後に、端面を接着剤やテープで封止することによって封止することができる。接着剤等による封止は、接着剤またはホットメルト等による接着、熱またはレーザによる融着等により行うことができる。
接着剤の塗布量は、分離膜(203)が有孔中心管(202)に巻回された後に、接着剤が塗布される部分の幅が2~30mm以下であるような量であることが好ましい。これによって、有効膜面積も比較的大きく確保することができる。OARO分離膜エレメント(213)は分離膜の透過側の面(212)にも透過側供給液(214)が供給されることにより、分離膜の供給側の面(211)の成分濃度が高い場合においても、分離膜の供給側と透過側の浸透圧差を低減することができ、一般的にはより低圧で溶液を処理することが可能となる。低圧で処理することが可能となれば、配管や圧力容器、ポンプなどをより簡素化することができる。また、ポンプの静音化も可能になるため、騒音を低減することができる。
OARO分離膜エレメント(213)は図14に示すように供給液(206)と濃縮液(207)が混ざらないようにするためのシール部材であるブラインシール(223)を装着し、圧力容器(222)に封入され、OARO分離膜モジュール(217)となる。
(3)本出願における溶液処理方法のプロセス構成
本出願では、循環により得られる分離膜2からの透過液または精製液を原液に混合した溶液を加圧し、成分Aの除去率が90%以上、かつ、成分Bの除去率が成分Aの除去率よりも60%ポイント以上低い分離膜1で処理し、分離膜1の透過液と分離膜1の濃縮液を得る。この時、分離膜1に供給された溶液量と分離膜1を透過した溶液量の比率である回収率は50%以上であることが好ましい。このような回収率とすることにより、分離膜1の選択分離性能をより発揮することができる。分離膜1は上記のような除去率であるため、分離膜1の透過液は成分Bが多く含まれており、成分Aはあまり含まれない。一方、分離膜1の濃縮液は成分A、成分Bともに含まれることになるが、成分Aの除去率が高いため、成分Aがより優先的に含まれるようになる。
さらに、分離膜1の透過液を、成分Bの除去率が85%以上である分離膜2で処理し、分離膜2の濃縮液と分離膜2の透過液を得る。この時、分離膜2に供給された溶液量と分離膜1を透過した溶液量の比率である回収率は、プロセス全体の水回収率に応じて設定されるが、分離膜2の透過液は分離膜1の供給液への循環に利用されるため、回収率は50%以上であることが好ましい。分離膜2は上記のような除去率を持っているため、分離膜2の透過液には成分A、成分Bともに微量しか含まれない。分離膜2の濃縮液には成分Bが多く含まれている。最後に分離膜1の濃縮液と分離膜2の透過液を混合すれば、成分Bのみ選択的に分離された精製液が得られる。
図1に本出願に示す溶液処理方法の1つの形態を示す。図1に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール1(1)および分離膜モジュール2(2)ともに透過側の供給がない形の通常の分離膜モジュールが使用されている。通常の分離膜モジュールではモジュールの供給側に加圧された供給液を導入し、濃縮液と透過液を得る。本出願の溶液処理方法は、上述のように分離膜モジュール1を透過した成分Bを分離膜モジュール2の濃縮液として除去するため、分離膜モジュール1の透過液の量を多くしなければ、全体としての成分Bの除去率が低くなる。特に、原液における総成分濃度が1000mg/L以上と高い時、分離膜モジュール1の透過液あるいは濃縮液の循環がない場合は、分離膜モジュール1における回収率を高くする必要があり、回収率の上昇に呼応し分離膜モジュール1に印加する圧力も上昇する。例えば、分離膜モジュール1の供給液における成分AとしてNaClを想定し、その濃度が10000mg/Lのとき、分離膜モジュール1を回収率90%で運転した場合、分離膜モジュール1の濃縮液はおよそ10倍の濃度となり、その浸透圧は8.8MPa程度となる。一方、図1に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール2の透過液(109)の一部を分離膜モジュール1(1)に供給される原液(101)と混合し循環している。分離膜モジュール2の透過液の循環がない溶液処理方法では、分離膜モジュール1の濃縮液が高濃度になる問題があったが、図1に示すような溶液処理方法をとることによって、分離膜モジュール1の供給液(104)の濃度を低くすることができ、分離膜モジュール1(1)が高回収であっても分離膜モジュール1の濃縮液(105)の濃度を低く抑えることができる。例えば、成分AとしてNaClを想定し、その濃度が10000mg/Lの原液(101)を処理するとき、分離膜モジュール2の透過液(109)を循環し分離膜モジュール1の供給液(104)の成分Aの濃度を2000mg/Lまで低減することができれば、分離膜モジュール1(1)が90%の回収率であっても、分離膜モジュール1の濃縮液(105)の浸透圧は1.7MPa程度となる。このように分離膜モジュール2の透過液(109)の循環を行わない溶液処理方法に対して、より低圧で処理することが可能となる。低圧で処理することができれば、高圧ポンプや高圧対応の流路、圧力容器を使用する必要がなくなるため、装置コストの低減や騒音の低減が期待される。分離膜モジュール2の透過液(109)の量に対する循環(110)量を増していくと、全体の溶液回収率溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環量を決定する必要がある。また、分離膜モジュール2の透過液(109)をすべて循環した場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量は著しく増加するため、好ましくない。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の透過液(109)の量に対する循環(110)量は0より大きく1未満まで任意に設定することができる。また、精製液の濃度調整などのため、分離膜モジュール2の透過液の一部を取り出したり、精製液に純水や溶液を追加したりしても良い。
図2に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール1の濃縮液(105)と分離膜モジュール2の透過液(109)が混ざった精製液(102)の一部を原液(101)に循環している。精製液(102)を原液(101)に循環する場合、分離膜モジュール2の透過液(109)の一部に加えて、分離膜モジュール1の濃縮液(105)の一部を循環していることと同義である。このとき、上述した浸透圧低減効果に加えて、濃縮液の循環により分離膜モジュール1(1)における成分Bの除去率が低下するため、分離膜モジュール1の透過液(106)の量を低減することができる。分離膜モジュール1(1)の成分Bの除去率が比較的高めであり、分離膜モジュール1(1)の選択分離性能が十分に発揮されないという場合は、図2に示す溶液処理方法を用いることが好ましい。精製液(102)の循環量を増していくと、全体の溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環(111)量を決定する必要がある。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール1の濃縮液(105)と分離膜モジュール2の透過液(109)の合計量に対する循環(111)量については0より大きく1未満まで任意に設定することができる。
図3に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール1(1)は通常の分離膜モジュールを使用し、分離膜モジュール2(2)は透過液側にも供給口と排出口とを有する形態のOARO分離膜モジュールを使用し、分離膜モジュール2の透過側供給液(115)として分離膜モジュール1の濃縮液(105)の一部を供給している。すなわち、分離膜モジュール2の透過液(109)と分離膜モジュール1の濃縮液(105)を分離膜モジュール2(2)内で混合し精製液(102)としている。また、精製液(102)の一部を原液(101)に混合するため循環(111)している。分離膜モジュール1(1)での総成分除去率が低い場合、分離膜モジュール2の供給液(107)内の総成分濃度が高くなり、さらに全体の溶液回収率が高い場合は、分離膜モジュール2(2)の溶液回収率が高くなるため、分離膜モジュール2の濃縮液(108)と透過液(109)間の浸透圧差が問題となる場合がある。その場合、図3に示す溶液処理方法をとることにより、分離膜モジュール2(2)の透過側排出液(109)の浸透圧が上昇するため、分離膜モジュール2(2)の浸透圧差を低減することができ、より低圧で処理することが可能となる。また、分離膜モジュール2(2)の透液性が低い場合においても、分離膜モジュール2(2)の透過側供給液(115)として分離膜モジュール1の濃縮液(105)を導入することにより、分離膜モジュール2の透過側排出液(109)の浸透圧により分離膜モジュール2の供給液(107)から液を取り出しやすくなるため更なる低圧化が期待される。図3に示す溶液処理方法において、精製液循環(111)量を増していくと、溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて精製液循環(111)量を決定する必要がある。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール1の濃縮液(105)と分離膜モジュール2の透過液(109)の合計量に対する循環(111)量については0より大きく1未満まで任意に設定することができる。
図4に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール1(1)はOARO分離膜エレメントを使用し、分離膜モジュール2(2)は通常の分離膜エレメントを使用し、分離膜モジュール1の透過側供給液(114)として分離膜モジュール2の濃縮液(108)の一部または原液(101)の一部を供給している。また、分離膜モジュール2の透過液(109)の一部を原液(101)に混合するため循環(110)している。このような溶液処理方法とすることにより、透過液循環(110)による分離膜モジュール1の供給液(104)の浸透圧差低減効果と、分離膜モジュール1の透過液側への溶液供給(114)による供給液側と透過液側の浸透圧差低減効果により、分離膜モジュール1の供給液(104)と透過側溶液の浸透圧差を著しく軽減することができる。図4に示す溶液処理方法は分離膜モジュール1の濃縮液(105)の浸透圧が特に高い場合に好ましく用いられる。図4に示す溶液処理方法において、分離膜モジュール2の透過液の循環(110)量を増していくと、溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環(110)量を決定する必要がある。また、分離膜モジュール2の透過液(109)をすべて循環した場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量は著しく増加するため、好ましくない。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の透過液(109)の量に対する循環(110)量については0より大きく1未満まで任意に設定することができる。また、分離膜モジュール2の濃縮液(108)の量に対する分離膜モジュール1の透過側への循環(113)量および分離膜モジュール1の透過液側への原液供給(112)量について、それぞれ増加させると分離膜モジュール2(2)の供給圧力が増大する。そのため、分離膜モジュール1(1)と分離膜モジュール2(2)の供給圧力のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の濃縮液(108)の量に対する分離膜モジュール1の透過液側への循環(113)量および分離膜1の透過液側への原液供給(112)量は、0以上1未満まで任意に設定することができる。また、精製液の濃度調整などのため、分離膜モジュール2の透過液の一部を取り出したり、精製液に純水や溶液を追加したりしても良い。
図5に示す溶液処理方法は、図4に示す溶液処理方法に対して、分離膜モジュール2の透過液(109)と分離膜モジュール1の濃縮液(105)を混合した精製液(102)の一部を循環させる点が異なる。このような溶液処理方法とすることにより、図2に示す溶液処理方法と同様に分離膜モジュール1の選択分離性能が十分に発揮されないという場合においても成分Bの除去率を比較的低めにすることができ、選択分離性能を向上させることができる。図5に示す溶液処理方法において、精製液循環(111)の量を増していくと、全体の溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環(111)量を決定する必要がある。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール1の濃縮液(105)と分離膜モジュール2の透過液(109)の合計量に対する循環(111)量については、0より大きく1未満まで任意に設定することができる。また、分離膜モジュール2の濃縮液(108)量に対する分離膜モジュール1の透過側循環(113)量および分離膜モジュール1の透過側への原液供給(112)量について、それぞれ増加させると、溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール2の供給圧力も増大する。そのため、分離膜モジュール1と分離膜モジュール2の供給圧力のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の濃縮液(108)量に対する分離膜1の透過側への循環(113)量および分離膜1の透過側への原液供給(112)量は、0~1まで任意に設定することができる。
図6に示す溶液処理方法では分離膜モジュール1(1)と分離膜モジュール2(2)のどちらもOARO分離膜モジュールとなっている。分離膜モジュール1の透過側供給液(114)には分離膜モジュール2の濃縮液(108)の一部または原液(101)の一部、あるいはその両方が供給される。また、分離膜モジュール2の透過側供給液(115)には分離膜モジュール1の濃縮液(105)が供給される。すなわち、分離膜モジュール2の透過液と分離膜モジュール1の濃縮液(105)を分離膜モジュール2(2)のOARO分離膜モジュール内で混合し精製液としている。このような溶液処理方法とすることにより、分離膜モジュール1(1)および分離膜モジュール2(2)のどちらも供給液側と透過液側の浸透圧差を低減することができるため、より低圧で運転することができる。また、精製液(102)の一部を原液に混合するため循環(111)している。図6に示す溶液処理方法において、精製液の循環(111)量を増していくと、溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過(106)(109)量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環(111)量を決定する必要がある。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール1の濃縮液(105)と分離膜モジュール2の透過側排出液(109)の合計量に対する循環(111)量については0より大きく1未満まで任意に設定することができる。また、分離膜モジュール2の濃縮液(108)量に対する分離膜モジュール1の透過側への循環(113)量および分離膜モジュール1の透過側への原液供給(112)量について、それぞれ増加させると、溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール2(2)の供給圧力も増大する。そのため、分離膜モジュール1(1)と分離膜モジュール2(2)の供給圧力のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の濃縮液(108)量に対する分離膜モジュール1の透過側への循環(113)量および分離膜モジュール1の透過側への原液供給(112)量は、0~1まで任意に設定することができる。
図7に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール1(1)、分離膜モジュール2(2)ともに通常の分離膜モジュールを使用しており、分離膜モジュール1(1)が透過側に2段となっている。また、分離膜モジュール1(1)の2段目の濃縮液(105)を原液(101)へ循環し、分離膜モジュール2の透過液(109)の一部を原液(101)へ循環している。このように、分離膜モジュール1が透過液方向に多段となっている場合、分離膜モジュール1の少なくとも最終段の濃縮液を原液へ循環させることが好ましい。このような溶液処理方法とすることにより、図1の溶液処理方法に対して、分離膜モジュール1(1)の選択分離性能が低い場合においても、全体として高い選択分離性能を発揮することができる。分離膜モジュール2の透過液(109)量に対する循環(110)量を増していくと、全体の溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過(106)(109)量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環(110)量を決定する必要がある。また、分離膜モジュール2の透過液(109)をすべて循環(110)した場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)量は著しく増加するため、好ましくない。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の透過液(109)量に対する循環量は0より大きく1未満まで任意に設定することができる。また、精製液の濃度調整などのため、分離膜モジュール2の透過液の一部を取り出したり、精製液に純水や溶液を追加したりしても良い。
図8に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール1(1)、分離膜モジュール2(2)ともに通常の分離膜モジュールを使用し、分離膜モジュール1(1)が濃縮方向に2段となっており、1段目と2段目の間に昇圧ポンプを配置している。また、分離膜モジュール2の透過液(109)の一部を原液(101)へ循環している。このような溶液処理方法とすることにより、分離膜モジュール1(1)での回収率が高く、分離膜モジュール1(1)の供給側入り口と出口での有効圧力のバランスが悪化し透過液量バランスも悪化する場合においても、分離膜モジュール1(1)の供給圧力を2段階に上げることができるので、分離膜モジュール1(1)でより安定的に溶液を処理することができる。分離膜モジュール2の透過液(109)の量に対する循環(110)量を増していくと、全体の溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環量を決定する必要がある。また、分離膜モジュール2の透過液(109)をすべて循環した場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)の量は著しく増加するため、好ましくない。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の透過液(109)の量に対する循環(110)量は0より大きく1未満まで任意に設定することができる。また、精製液の濃度調整などのため、分離膜モジュール2の透過液の一部を取り出したり、精製液に純水などの溶液を追加したりしても良い。
図9に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール1(1)、分離膜モジュール2(2)ともに通常の分離膜モジュールを使用し、分離膜モジュール1(1)が透過方向に2段かつ透過1段目が濃縮方向にも2段となっている。また、分離膜モジュール1(1)の透過1段目の濃縮1段目と濃縮2段目の間に昇圧ポンプを配置している。また、分離膜モジュール1の透過2段目の濃縮液(105)を原液(101)へ循環しており、分離膜モジュール2の透過液(109)の一部を原液(101)へ循環している。このような溶液処理方法とすることにより、図8の溶液処理方法と同様に分離膜モジュール1(1)の透過量バランスを改善し、さらに図7の溶液処理方法と同様に分離膜モジュール1(1)の選択分離性能が低い場合においても全体として高い選択分離性能を発揮することができる。分離膜モジュール2の透過液(109)量に対する循環量(110)を増していくと、全体の溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環量を決定する必要がある。また、分離膜モジュール2の透過液(109)をすべて循環した場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)量は著しく増加するため、好ましくない。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の透過液(109)量に対する循環(110)量は0より大きく1未満まで任意に設定することができる。また、精製液の濃度調整などのため、分離膜モジュール2の透過液の一部を取り出したり、精製液に純水や溶液を追加したりしても良い。
図10に示す溶液処理方法では、分離膜モジュール1(1)、分離膜モジュール2(2)ともに通常の分離膜モジュールを使用し、分離膜モジュール2(2)が透過方向に2段となっている。また、分離膜モジュール2(2)の透過2段目の濃縮液(105)を分離膜モジュール2(2)の透過1段目の供給液に循環している。このような溶液処理方法とすることにより、分離膜モジュール2(2)の分離性能が低い場合においても、全体として高い選択分離性能を発揮させることができる。分離膜モジュール2の透過液(109)量に対する循環(110)量を増していくと、全体の溶液回収率が固定の場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)量も増えることになるため、浸透圧低減効果と透過量の増大のバランスを鑑みて循環量を決定する必要がある。また、分離膜モジュール2の透過液(109)をすべて循環した場合、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2の透過液(106)(109)量は著しく増加するため、好ましくない。上述のバランスを鑑み、分離膜モジュール2の透過液(109)量に対する循環(110)量は0より大きく1未満まで任意に設定することができる。また、精製液の濃度調整などのため、分離膜モジュール2の透過液の一部を取り出したり、精製液に純水などの溶液を追加したりしても良い。
(4)本出願における溶液処理方法に用いられる原液
本出願における溶液処理方法に用いられる原液は、少なくとも成分Aおよび成分Bを含む。成分Aおよび成分Bは単一の物質である必要はなく、混合物であっても構わない。分離膜1は成分Aを高除去、成分Bを低除去し、分離膜2は成分Aおよび成分Bともに高除去である必要があるが、これらの関係を満たせば成分Aおよび成分Bの種類は限定されない。
本出願における溶液処理方法に用いられる原液には、総成分濃度として1000mg/L以上含まれていることが好ましい。本出願の溶液処理方法では、総成分濃度として、1000mg/L以上含まれることにより、上述のように、透過液または精製液を循環することによる圧力低減効果をより強く発揮することができる。
成分Bの分離膜1と分離膜2の除去率の差が大きいほど本出願における溶液処理方法の成分Aと成分Bの選択分離効果が高くなるため、成分Aとしては各種イオン、成分Bとしては低分子の中性分子であることが好ましい。その他の例としては、成分Aとして多価のイオン性物質、成分Bとして1価のイオン性物質、成分Aとして高分子の中性分子、成分Bとして低分子の中性分子などが考えられる。
成分Aとして各種イオン、成分Bとして、低分子の中性分子とした場合、分離膜1は逆浸透膜またはナノろ過膜、分離膜2は逆浸透膜であることが好ましい。成分Aが各種イオン、成分Bが低分子の中性分子となる原液としては、例えば、医療用人工透析廃液が挙げられる。医療用人工透析廃液における成分Aは人口透析治療に用いられる各種イオン、成分Bは人工透析治療で体内から除去される物質として最も除去量の多い尿素である。本出願における溶液処理方法を人工透析廃液の再生に使用した場合、水および各種イオン類を回収し、尿素が除去されるため、膜分離処理により人工透析廃液を再生することができる。
成分Aとして多価のイオン性物質、成分Bとして1価のイオン性物質とした場合、分離膜1はナノろ過膜、分離膜2は逆浸透膜であることが好ましい。成分Aが多価のイオン、成分Bが1価のイオンとなる原液としては、例えば、塩湖水が挙げられる。本出願における溶液処理方法を塩湖水に用いれば、塩湖水を多価と1価のイオンに分離することができ、有用な金属を得るための分離操作が簡略化できる。
また、成分Aとして高分子の中性分子、成分Bとして低分子の中性分子とした場合、分離膜1はナノろ過膜、分離膜2は逆浸透膜であることが好ましい。成分Aが高分子の中性分子、成分Bが低分子の中性分子となる原液としては、例えばアルコール飲料が挙げられる。本出願における溶液処理方法をアルコール飲料に用いれば、アルコール飲料からアルコールを除去し、膜分離処理によりノンアルコール飲料を製造することができる。
(5)本出願における溶液処理方法に用いられる溶液処理装置
本出願の溶液処理方法を具現化するために、(3)で説明したような流れでラインを組み、適切な位置にバルブやポンプを配置させ、溶液処理装置を組み立てることができる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(分離膜性能の測定)
pH7、1000mg/Lの塩化ナトリウム(NaCl)の原液に対して、膜透過フラックスが0.3m/dとなる場合のNaClの除去率を分離膜性能と定義する。
(微多孔性支持膜の作製)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm2/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0重量%DMF(dimethylformamide)溶液を室温(25℃)にて200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって支持膜を作製した。
(海水淡水化RO膜Aの作製)
m-フェニレンジアミンの6.0重量%水溶液を作製した。上述の操作で得られた支持膜を上記水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、45℃に保たれたブース内でトリメシン酸クロリド(TMC)0.17重量%を含む45℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して10秒間静置した。140℃のオーブンに入れ、膜の裏面側に設けたノズルから100℃の水蒸気を供給しつつ、30秒間加熱して海水淡水化用RO膜を得た。作製した海水淡水化用RO膜Aの分離膜性能は99.3%であった。
(海水淡水化RO膜Bの作製)
m-フェニレンジアミンの5.5重量%水溶液を作製した。上述の操作で得られた支持膜を上記水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、45℃に保たれたブース内でトリメシン酸クロリド(TMC)0.15重量%を含む45℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して10秒間静置した。140℃のオーブンに入れ、膜の裏面側に設けたノズルから100℃の水蒸気を供給しつつ、30秒間加熱して海水淡水化用RO膜Bを得た。作製した海水淡水化用RO膜の分離膜性能は99.0%であった。
(海水淡水化RO膜Cの作製)
m-フェニレンジアミンの4.0重量%水溶液を作製した。上述の操作で得られた支持膜を上記水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、45℃に保たれたブース内でトリメシン酸クロリド(TMC)0.14重量%を含む45℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して10秒間静置した。140℃のオーブンに入れ、膜の裏面側に設けたノズルから100℃の水蒸気を供給しつつ、30秒間加熱して海水淡水化用RO膜を得た。作製した海水淡水化用RO膜Cの分離膜性能は98.8%であった。
(低圧RO膜Aの作製)
上述の操作で得られた支持膜表面に、m-フェニレンジアミンの1.8重量%、ε-カプロラクタム4.5重量%水溶液を塗布し、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.06重量%を含む25℃のn-デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布した。その後、膜から余分な溶液をエアブローで除去し、80℃の熱水で洗浄して、エアブローで液切りして低圧RO膜を得た。作製した低圧RO膜の分離膜性能は98.0%であった。
(低圧RO膜Bの作製)
上述の操作で得られた支持膜をm-フェニレンジアミンの3.8質量%水溶液中に2分間浸漬した後、垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付けて多孔性支持層表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリドの0.175質量%n-デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置し、さらに1分間垂直に保持して液切りした。その後、90℃の熱水で2分間洗浄して、分離膜を得た。作製した低圧RO膜Bの分離膜性能は98.2%であった。
(低圧RO膜Cの作製)
m-フェニレンジアミンの2.0重量%水溶液を作製した。上述の操作で得られた支持膜を上記水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、25℃に保たれたブース内でトリメシン酸クロリド(TMC)0.1重量%を含む25℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して10秒間静置した。液切りしたのちに、送風機を使って30秒間風乾し、低圧RO膜Cを得た。作製した低圧RO膜Cの分離膜性能は98.4%であった。
(ナノろ過膜Aの作製)
上述の操作で得られた支持膜を、多官能アミン全体1.5重量%で、メタフェニレンジアミン/1,3,5-トリアミノベンゼン=70/30モル比となるように調製した多官能アミンおよびε-カプロラクタムの3.0重量%を含む水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.05重量%を含むn-デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に膜から余分な溶液を除去するために、膜を2分間垂直に把持して液切りを行って、送風機を使い20℃の気体を吹き付けて乾燥させた。このようにして得られた分離膜を、0.7重量%の亜硝酸ナトリウム及び0.1重量%の硫酸を含む水溶液により室温で2分間処理した後、直ちに水で洗い、室温にて保存しナノろ過膜Aを得た。ナノろ過膜Aの分離膜性能は94.2%であった。
(ナノろ過膜Bの作製)
上述の操作で得られた支持膜を、ピペラジン0.25重量%を含む水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.17重量%を含むn-デカン溶液を、160cm3/m2の割合で支持膜表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に膜から余分な溶液を除去するために、膜を1分間垂直に把持して液切りを行って、送風機を使い20℃の気体を吹き付けて乾燥させた。乾燥後、直ちに水で洗い、室温にて保存しナノろ過膜Bを得た。ナノろ過膜Bの分離膜性能は40.2%であった。
(I型分離膜エレメントの作製)
分離膜を6枚裁断し、内周端部が折り目となるように供給側を内側にして折りたたみ、ネット(厚み:0.8mm、ピッチ:5mm×5mm、繊維径:380μm、投影面積比:0.15)を供給側流路材として、ネット構成糸の傾斜角度が巻回方向に対して45°となるように配置した。透過側流路材として、厚みが均一であるトリコット(厚み:280μm)を用意し6枚分裁断した。このようにして、長さ850mm、幅930mmまたは幅465mmの分離膜体を6枚作製した。透過側流路材を分離膜の透過側の面に配置して、内周端部が開口するように透過側流路に接着剤を塗布し、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)製の有孔中心管(長さ:1020mmまたは510mm、径:30mm、孔数40個または20個×直線状1列)にスパイラル状に巻囲した。巻囲後、外周にフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット、端板の取り付け、フィラメントワインディングを行うことで、有効膜面積が8mまたは4mのI型分離膜エレメントを作製した。作成した分離膜エレメントにブラインシールを取り付け、3本直列にして圧力容器に入れ分離膜モジュールを得た。
(L型および逆L型分離膜エレメントの作製)
分離膜を6枚裁断し、内周端部が折り目となるように供給側を内側にして折りたたみ、ネット(厚み:0.8mm、ピッチ:5mm×5mm、繊維径:380μm、投影面積比:0.15)を供給側流路材として、ネット構成糸の傾斜角度が巻回方向に対して45°となるように配置した。透過側流路材として、厚みが均一であるトリコット(厚み:280μm)を用意し6枚分裁断した。このようにして、長さ850mm、幅310mm分離膜体を6枚作製した。なお、分離膜体の有効中心管長手方向の長さWと、有孔中心管長手方向と垂直の方向における長さLの比率L/Wは、2.74である。透過側流路材を分離膜の透過側の面に配置して、内周端部が開口するように透過側流路に接着剤を塗布し、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)製の有孔中心管(長さ:340mm、径:30mm、孔数12個×直線状1列)にスパイラル状に巻囲した。巻囲後、外周に孔付きのフィルムを巻き付けテープで固定した後に、エッジカットを行った。その後、有孔中心管の長手方向の片端面に接着剤を塗布し封止を行った。さらに、封止した側と逆の端面は内周部の20%が開口するように接着剤を塗布し、有効膜面積2.67mのL型および逆L型分離膜エレメントを作製した。なお、L型および逆L型分離膜エレメントは、上述のL/Wが2.74であるため、長さLが、有効膜面積が8mのI型分離膜エレメントの1/3となっており、それに伴い有効膜面積も8mのI型分離膜エレメントの1/3となっている。分離膜エレメントの外周部より供給液を供給する場合はL型分離膜エレメント、分離膜エレメントの片端面より供給液を供給する場合は逆L型分離膜エレメントとなる。作成した分離膜エレメントにブラインシールを取り付け、圧力容器に入れ分離膜モジュールを得た。
(Uターン型分離膜エレメントの作製)
分離膜を6枚裁断し、内周端部が折り目となるように供給側を内側にして折りたたみ、ネット(厚み:0.8mm、ピッチ:5mm×5mm、繊維径:380μm、投影面積比:0.15)を供給側流路材として、ネット構成糸の傾斜角度が巻回方向に対して45°となるように配置した。これらの供給側流路材を挟んだ分離膜の内、4枚の分離膜の供給側流路材の外周端部を図19のようにI型分離膜体となるように接着し、さらに2枚は図20のように逆L型分離膜体となるように有孔中心管の長手方向の両端面を接着した。なお、片端面の開口部の分離膜体の長さに対する開口率は20%とした。透過側流路材として、厚みが均一であるトリコット(厚み:280μm)を用意し6枚分裁断した。このようにして、長さ850mm、幅310mmの分離膜体を6枚作製した。なお、分離膜体の有効中心管長手方向の長さWと、有孔中心管長手方向と垂直の方向における長さLの比率L/Wは、2.74である。透過側流路材を分離膜の透過側の面に配置して、内周端部が開口するように透過側流路に接着剤を塗布し、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)製の有孔中心管(長さ:340mm、径:30mm、孔数12個×直線状1列)にスパイラル状に巻囲した。巻囲後、外周に孔付きのフィルムを巻き付けテープで固定した後に、エッジカットを行い、有孔中心管の長手方向の両端面の外周付近の接着剤を塗布した。その後、供給液流れをUターンさせるUターンキャップを逆L型分離膜体の開口部のある側の端面に取り付け、有効膜面積2.67mのUターン型分離膜エレメントを作製した。なお、Uターン型分離膜エレメントは、上述のL/Wが2.74であるため、長さLが、有効膜面積が8mのI型分離膜エレメントの1/3となっており、それに伴い有効膜面積も8mのI型分離膜エレメントの1/3となっている。作成した分離膜エレメントにブラインシールを取り付け、圧力容器に入れ分離膜モジュールを得た。
(OARO分離膜エレメントの作製)
分離膜を6枚裁断し、内周端部が折り目となるように供給側を内側にして折りたたみ、ネット(厚み:0.8mm、ピッチ:5mm×5mm、繊維径:380μm、投影面積比:0.15)を供給側流路材として、ネット構成糸の傾斜角度が巻回方向に対して45°となるように配置した。このようにして、長さ850mm、幅930mmの分離膜体を6枚作製した。さらに分離膜の供給側の面に図12(a)に示すような封止部となるように接着剤を塗布した。透過側流路材として、厚みが均一であるトリコット(厚み:600μm)を用意し6枚分裁断した。透過側流路材を分離膜の透過側の面に配置して、図12(b)に示すように透過側流路に接着剤を塗布し、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)製の有孔中心管(長さ:1020mm、径:30mm、孔数40個×直線状1列)にスパイラル状に巻囲した。巻囲後、外周にフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット、端板の取り付け、フィラメントワインディングを行うことで、OARO型分離膜エレメントを作製した。作成した分離膜エレメントにブラインシールを取り付け、圧力容器に入れ分離膜モジュールを得た。
(実施例1)
原液を人工透析廃液とした。人工透析廃液中の成分Aは塩類(約10000mg/L)、成分Bは尿素(約630mg/L)である。また、分離膜1を上述のような方法で得られた低圧RO膜Aとし、分離膜2を上述のような方法で得られた海水淡水化RO膜Aとした。分離膜1に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ98.5%および20.0%であった。また、分離膜2に対しても同様に原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ99.5%および94.0%であった。得られた分離膜を用いて、上記のような方法でI型分離膜エレメントを作製した。
作成した分離膜エレメントに端板およびブラインシールを取り付け、圧力容器に入れ分離膜モジュール1および分離膜モジュール2を1本ずつ得た。図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表1に示す条件で評価を行ったところ、結果は表1に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85であった。
Figure 2022103007000002
(実施例2)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、実施例1と同様の分離膜モジュールを用意した。図2のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表1に示す条件で評価を行ったところ、結果は表1に示すようであった。なお、精製液の循環比は0.71であった。
(実施例3)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、実施例1と同様の分離膜モジュールを用意した。図3のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表1に示す条件で評価を行ったところ、結果は表1に示すようであった。なお、精製液の循環比は0.83であった。
(実施例4)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、実施例1と同様の分離膜モジュールを用意した。図4のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表1に示す条件で評価を行ったところ、結果は表1に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85、分離膜2の濃縮液の循環比は0.67、分離膜1の原液透過側供給比率は0であった。
(実施例5)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、実施例1と同様の分離膜モジュールを用意した。図5のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表1に示す条件で評価を行ったところ、結果は表1に示すようであった。なお、精製液の循環比は0.8、分離膜2の濃縮液の循環比は0.67、分離膜1の原液透過側供給比率は0であった。
(実施例6)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、実施例1と同様の分離膜モジュールを用意した。図6のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表1に示す条件で評価を行ったところ、結果は表1に示すようであった。なお、精製液の循環比は0.78、分離膜2の濃縮液の循環比は0.67、分離膜1の原液透過側供給比率は0であった。
(実施例7)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、分離膜モジュール1に使用する分離膜をナノろ過膜Aとし、分離膜モジュール1を2本用意した以外は実施例1と同様にして分離膜モジュールを用意した。なお、分離膜1に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ95.0%および10.0%であった。図7のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表2に示す条件で評価を行ったところ、結果は表2に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.86であった。
Figure 2022103007000003
(実施例8)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、分離膜モジュール1に使用する分離膜を実施例1で使用した低圧RO膜Aとし、さらに分離膜モジュール1の膜面積を実施例1の半分にするために、分離膜1の分離膜体の幅を半分にし、それに伴い各部材のサイズも半分にし、膜面積が実施例1の半分となった分離膜モジュール1を2本用意した。また、実施例1と同様にして分離膜モジュール2を用意した。図8のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行い、表2に示す条件で評価を行ったところ、結果は表2に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85であった。
(実施例9)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、分離膜モジュール1に使用する分離膜を実施例7で使用したナノろ過膜Aとし、さらに分離膜モジュール1の透過前段に使用する膜面積を実施例1の半分にするために、分離膜1の分離膜体の幅を半分にし、それに伴い各部材のサイズも半分にし、透過前段に使用する分離膜モジュール1を2本用意した。さらに、実施例1と同様のサイズの、分離膜モジュール1を1本用意した。また、実施例1と同様にして分離膜モジュール2を1本用意した。図9のようにポンプおよびバルブを用意し、半分のサイズの分離膜モジュール1を透過1段目に配置するように配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表2に示す条件で評価を行ったところ、結果は表2に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.86であった。
(実施例10)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、実施例1と同様にして分離膜モジュール1を1本作製した。また、分離膜モジュール2に使用する分離膜を海水淡水化RO膜Bとした以外は実施例1と同様にして、分離膜モジュール2を2本作製した。なお、分離膜2に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ99.2%および85.0%であった。図10のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表2に示す条件で評価を行ったところ、結果は表2に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.75であった。
(実施例11)
成分Aを塩化カルシウム(CaCl)、成分Bを塩化ナトリウム(NaCl)とした混合溶液を原液とした。それぞれの濃度は、塩化カルシウムが10000mg/L、塩化ナトリウムが5000mg/Lである。分離膜モジュール1に使用する分離膜をナノろ過膜Bとした以外は実施例1と同様にして分離膜モジュール1を2本作製した。また、実施例1と同様にして、分離膜モジュール2を1本作製した。なお、分離膜1に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ99.0%および35.0%であった。分離膜2に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ99.9%および99.0%であった。図7のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が86.7%、NaCl除去率が50%程度になるようにバルブを調整し、表2に示す条件で評価を行ったところ、結果は表2に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85であった。このとき、分離膜2の濃縮液におけるNaCl純度は99.6%となり、塩化カルシウムと塩化ナトリウムの混合溶液から高純度の塩化ナトリウムを取り出すことができた。
(実施例12)
原液をビールとした。ビール中の成分Aはタンパク質や糖質などの有機物、成分Bはエタノールである。それぞれの濃度は、成分Aが44585mg/L、成分Bが42410mg/Lである。分離膜モジュール1に使用する分離膜をナノろ過膜Aとした以外は実施例1と同様にして分離膜モジュール1を作製した。また、実施例1と同様にして、分離膜モジュール2を1本作製した。なお、分離膜1に対して、原液を用いて、圧力標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ99.0%および5.0%であった。分離膜2に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ99.9%および96.0%であった。図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が50%、エタノール除去率が90%程度になるようにバルブを調整し、表2に示す条件で評価を行ったところ、結果は表2に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.90であった。このとき、精製液における成分Aは83811mg/L、成分Bは4240mg/Lとなる。精製液の成分A濃度を原液と合わせ、ノンアルコールビールとするために、精製液の1.88倍の純水を加え希釈した。希釈の結果、成分Aは44580mg/L、成分Bは2256mg/Lとなり、ビールから膜分離操作により簡易的にノンアルコールビールを作製することができた。
(実施例13)
実施例12では精製液を純水で希釈してノンアルコールビールを製造したが、プロセスの低圧化のため純水で原液を希釈してから処理する方法も考えられので、原液を純水で2倍に希釈したビールとした。原液中の成分Aはタンパク質や糖質などの有機物、成分Bはエタノールである。それぞれの濃度は、成分Aが22292mg/L、成分Bが21205mg/Lである。実施例12と同様にして分離膜モジュールを作製し、図15のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が50%、エタノール除去率が90%程度になるようにバルブを調整し、表3に示す条件で評価を行ったところ、結果は表3に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.90、分離膜2の透過液の精製液の原液への循環量を除いた残りのうち精製液としたものの割合は0.92であった。このとき、精製液における成分Aは44585mg/L、成分Bは2222mg/Lとなり、実施例12よりも低圧で、ビールから膜分離操作により簡易的にノンアルコールビールを作製することができた。
Figure 2022103007000004
(実施例14)
実施例1と同様の分離膜を用意し、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2に使われる分離膜エレメントをL型分離膜エレメントとした。実施例1と同様に図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。なお、L型分離膜エレメントは有効膜面積が2.67mであるため、分離膜1および分離膜2ともにL型分離膜エレメントを3本直列に配置した図23に示されるような分離膜モジュールを使用し、分離膜モジュールの有効膜面積を8mとした。実施例1と同様の原液を使用し、全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表3に示す条件で評価を行ったところ、結果は表3に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85であった。L型分離膜エレメントを使用することにより、I型分離膜エレメントに対して、高流速で供給液を流すことができるため膜面濃度分極が低減され、同フラックス運転時の圧力が低下し、さらに分離膜モジュールの見かけの除去率も向上する。その結果、プロセスの低圧化や成分A回収率の向上が可能となる。
(実施例15)
実施例1と同様の分離膜を用意し、分離膜モジュール1および分離膜モジュール2に使われる分離膜エレメントを逆L型エレメントとした。実施例1と同様に図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。なお、逆L型分離膜エレメントは有効膜面積が2.67mであるため、分離膜1および分離膜2ともに逆L型分離膜エレメントを3本直列に配置した図22に示されるような分離膜モジュールを使用し、分離膜モジュールの有効膜面積を8mとした。実施例1と同様の原液を使用し、全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表3に示す条件で評価を行ったところ、結果は表3に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85であった。逆L型分離膜エレメントを使用することにより、I型分離膜エレメントに対して、高流速で供給液を流すことができるため膜面濃度分極が低減され、同フラックス運転時の圧力が低下し、さらに分離膜モジュールの見かけの除去率も向上する。その結果、プロセスの低圧化や成分A回収率の向上が可能となる。
(実施例16)
実施例15と同様の分離膜を用意し、図24に示されるような直列配置の最後尾の分離膜エレメントをUターン型分離膜エレメントとした分離膜モジュールを使用する以外は実施例15と同様にして分離膜モジュールを用意し、配管接続を行った。実施例1と同様に図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例1と同様の原液を使用し、全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表3に示す条件で評価を行ったところ、結果は表3に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85であった。逆L型分離膜エレメントに加えてUターン型分離膜エレメントを使用することにより、I型分離膜エレメントに対して、さらに高流速で供給液を流すことができるため特に分離膜モジュール内の最後の分離膜エレメントの膜面濃度分極が低減され、同フラックス運転時の圧力が低下し、さらに分離膜モジュールの見かけの除去率も向上する。その結果、プロセスの低圧化や成分A回収率の向上が可能となる。
(実施例17)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、分離膜1を低圧RO膜Bとした以外は実施例1と同様にして分離膜モジュール1を1本作製した。また、実施例1と同様にして、分離膜モジュール2を1本作製した。なお、分離膜1に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ98.7%および35.0%であった。図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表3に示す条件で評価を行ったところ、結果は表3に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85であった。
(実施例18)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、分離膜2を海水淡水化RO膜Bとした以外は実施例1と同様にして分離膜モジュール1を1本作製した。また、実施例1と同様にして、分離膜モジュール2を1本作製した。図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表3に示す条件で評価を行ったところ、結果は表3に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.85であった。
(実施例19)
原液を実施例1で使用した人工透析廃液とし、分離膜1を低圧RO膜Bとし、分離膜2を海水淡水化RO膜Bとした以外は実施例1と同様にして分離膜モジュール1および分離膜モジュール2を1本ずつ作製した。図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表4に示す条件で評価を行ったところ、結果は表4に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.9であった。
Figure 2022103007000005
(比較例1)
実施例1と同様の分離膜モジュールを用意した。図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例1と同様の原液を使用し、分離膜モジュール2の透過液のすべてを分離膜モジュール1の濃縮液と混合し、精製液とするように透過液循環バルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度になるようにバルブを調整し、表4に示す条件で評価を行ったところ、結果は表4に示すようであった。図1の溶液処理方法において、実施例1と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例2)
実施例1と同様の分離膜モジュールを用意した。図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例1と同様の原液を使用し、分離膜モジュール2の透過液のすべてを循環させるように透過液循環バルブを調整した。このとき、分離膜モジュール1の濃縮液がそのまま精製液となる。全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表4に示す条件で評価を行ったところ、結果は表4に示すようであった。図1の溶液処理方法において、実施例1と同様の原液を使用し分離膜モジュール2の透過液をすべて循環した場合は、実施例1に対して膜透過量が著しく多くなり、特に緻密な分離膜を使用する分離膜モジュール2の運転圧力が上昇する。また、膜透過量が増えることから実施例1に対してポンプの送液量も増大するため、装置の大型化や騒音が増加し好ましくない。
(比較例3)
実施例3と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例3と同様に図3のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例3と同様の原液を使用し、実施例3に対して、分離膜モジュール2の透過側排出液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度になるようにバルブを調整し、表4に示す条件で評価を行ったところ、結果は表4に示すようであった。図3の溶液処理方法において、実施例3と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例4)
実施例4と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例4と同様に図4のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例4と同様の原液を使用し、実施例4に対して、分離膜モジュール2の透過液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度になるようにバルブを調整し、表4に示す条件で評価を行ったところ、結果は表4に示すようであった。図4の溶液処理方法において、実施例4と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例5)
実施例4と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例4と同様に図4のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例4と同様の原液を使用し、実施例4に対して、分離膜モジュール2の透過液を全量原液に循環させる、すなわち循環比を1とするようにバルブを調整した。このとき、分離膜モジュール1の濃縮液がそのまま精製液となる。さらに、全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表4に示す条件で評価を行ったところ、結果は表4に示すようであった。図4の溶液処理方法において、実施例4と同様の原液を使用し分離膜モジュール2の透過液をすべて循環した場合は、実施例4に対して膜透過量が著しく多くなり、特に緻密な分離膜を使用する分離膜モジュール2の運転圧力が上昇する。また、膜透過量が増えることから実施例4に対してポンプの送液量も増大するため、装置の大型化や騒音が増加し好ましくない。
(比較例6)
実施例6と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例6と同様に図6のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例6と同様の原液を使用し、実施例6に対して、分離膜モジュール2の透過側排出液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度になるようにバルブを調整し、表4に示す条件で評価を行ったところ、結果は表4に示すようであった。図6の溶液処理方法において、実施例6と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
Figure 2022103007000006
(比較例7)
実施例7と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例7と同様に図7のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例7と同様の原液を使用し、実施例7に対して、分離膜モジュール2の透過液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度になるようにバルブを調整し、表5に示す条件で評価を行ったところ、結果は表5に示すようであった。図7の溶液処理方法におい、実施例7と同様の原液を使用して循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例8)
実施例7と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例7と同様に図7のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例7と同様の原液を使用し、実施例7に対して、分離膜モジュール2の透過液を全量原液に循環させる、すなわち循環比を1とするようにバルブを調整した。このとき、分離膜モジュール1の濃縮液がそのまま精製液となる。さらに、全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表5に示す条件で評価を行ったところ、結果は表5に示すようであった。図7の溶液処理方法において、実施例7と同様の原液を使用し分離膜モジュール2の透過液をすべて循環した場合は、実施例7に対して膜透過量が著しく多くなり、特に緻密な分離膜を使用する分離膜モジュール2の運転圧力が上昇する。また、膜透過量が増えることから実施例7に対してポンプの送液量も増大するため、装置の大型化や騒音が増加し好ましくない。
(比較例9)
実施例8と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例8と同様に図8のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例8と同様の原液を使用し、実施例8に対して、分離膜モジュール2の透過液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度となるようにバルブを調整し、表5に示す条件で評価を行ったところ、結果は表5に示すようであった。図8の溶液処理方法において、実施例8と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例10)
実施例8と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例8と同様に図8のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例8と同様の原液を使用し、実施例8に対して、分離膜モジュール2の透過液を全量原液に循環させる、すなわち循環比を1とするようにバルブを調整した。このとき、分離膜モジュール1の濃縮液がそのまま精製液となる。さらに、全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表5に示す条件で評価を行ったところ、結果は表5に示すようであった。図8の溶液処理方法において、実施例8と同様の原液を使用し分離膜モジュール2の透過液をすべて循環した場合は、実施例8に対して膜透過量が著しく多くなり、特に緻密な分離膜を使用する分離膜モジュール2の運転圧力が上昇する。また、膜透過量が増えることから実施例8に対してポンプの送液量も増大するため、装置の大型化や騒音が増加し好ましくない。
(比較例11)
実施例9と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例9と同様に図9のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例9と同様の原液を使用し、実施例9に対して、分離膜モジュール2の透過液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度となるようにバルブを調整し、表5に示す条件で評価を行ったところ、結果は表5に示すようであった。図9の溶液処理方法において、実施例9と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例12)
実施例9と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例9と同様に図9のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例9と同様の原液を使用し、実施例9に対して、分離膜モジュール2の透過液を全量原液に循環させる、すなわち循環比を1とするようにバルブを調整した。このとき、分離膜モジュール1の濃縮液がそのまま精製液となる。さらに、全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表6に示す条件で評価を行ったところ、結果は表6に示すようであった。図9の溶液処理方法において、実施例9と同様の原液を使用し分離膜モジュール2の透過液をすべて循環した場合は、実施例9に対して膜透過量が著しく多くなり、特に緻密な分離膜を使用する分離膜モジュール2の運転圧力が上昇する。また、膜透過量が増えることから実施例9に対してポンプの送液量も増大するため、装置の大型化や騒音が増加し好ましくない。
Figure 2022103007000007
(比較例13)
実施例10と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例10と同様に図10のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例10と同様の原液を使用し、実施例10に対して、分離膜モジュール2の透過液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度となるようにバルブを調整し、表6に示す条件で評価を行ったところ、結果は表6に示すようであった。図10の溶液処理方法において、実施例10と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例14)
実施例10と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例10と同様に図10のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例10と同様の原液を使用し、実施例10に対して、分離膜モジュール2の透過液を全量原液に循環させる、すなわち循環比を1とするようにバルブを調整した。このとき、分離膜モジュール1の濃縮液がそのまま精製液となる。さらに、全体の溶液回収率が97%、尿素除去率が70%程度になるようにバルブを調整し、表6に示す条件で評価を行ったところ、結果は表6に示すようであった。図10の溶液処理方法において、実施例10と同様の原液を使用し分離膜モジュール2の透過液をすべて循環した場合は、実施例10に対して膜透過量が著しく多くなり、特に緻密な分離膜を使用する分離膜モジュール2の運転圧力が上昇する。また、膜透過量が増えることから実施例10に対してポンプの送液量も増大するため、装置の大型化や騒音が増加し好ましくない。
(比較例15)
実施例11と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例11と同様に図7のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例11と同様の原液を使用し、実施例11に対して、分離膜モジュール2の透過液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度となるようにバルブを調整し、表6に示す条件で評価を行ったところ、結果は表6に示すようであった。図7の溶液処理方法において、実施例11と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例16)
実施例11と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例11と同様に図7のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例11と同様の原液を使用し、実施例11に対して、分離膜モジュール2の透過液を全量原液に循環させる、すなわち循環比を1とするようにバルブを調整した。このとき、分離膜モジュール1の濃縮液がそのまま精製液となる。さらに、全体の溶液回収率が86.7%、NaCl除去率が50%程度になるようにバルブを調整し、表6に示す条件で評価を行ったところ、結果は表6に示すようであった。図7の溶液処理方法において、実施例11と同様の原液を使用し分離膜モジュール2の透過液をすべて循環した場合は、実施例11に対して膜透過量が著しく多くなり、特に緻密な分離膜を使用する分離膜モジュール2の運転圧力が上昇する。また、膜透過量が増えることから実施例11に対してポンプの送液量も増大するため、装置の大型化や騒音が増加し好ましくない。
(比較例17)
実施例12と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例12と同様に図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例12と同様の原液を使用し、実施例12に対して、分離膜モジュール2の透過液を原液に循環しない、すなわち循環比を0とするようにバルブを調整した。最大運転圧力が5.5MPa程度となるようにバルブを調整し、表6に示す条件で評価を行ったところ、結果は表6に示すようであった。図1の溶液処理方法において、実施例12と同様の原液を使用し循環を行わない場合は分離膜モジュール1が高圧となってしまうので、成分Bの除去率が得られない。
(比較例18)
実施例12と同様の分離膜モジュールを用意し、実施例12と同様に図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。実施例12と同様の原液を使用し、実施例12に対して、分離膜モジュール2の透過液を全量原液に循環させる、すなわち循環比を1とするようにバルブを調整した。このとき、分離膜モジュール1の濃縮液がそのまま精製液となる。さらに、全体の溶液回収率が50.0%、エタノール除去率が90%程度になるようにバルブを調整し、表7に示す条件で評価を行ったところ、結果は表7に示すようであった。図1の溶液処理方法において、実施例12と同様の原液を使用し分離膜モジュール2の透過液をすべて循環した場合は、実施例12に対して膜透過量が著しく多くなり、特に緻密な分離膜を使用する分離膜モジュール2の運転圧力が上昇する。また、膜透過量が増えることから実施例12に対してポンプの送液量も増大するため、装置の大型化や騒音が増加し好ましくない。
(比較例19)
分離膜1を低圧RO膜Cとした以外は実施例19と同様にして分離膜モジュールを用意した。実施例19と同様に図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。なお、分離膜1に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ98.9%および50.1%であった。実施例19と同様の原液を使用し、全体の溶液回収率が97%、分離膜モジュール1の運転圧力が5.5MPa程度となるようにバルブを調整し、表7に示す条件で評価を行ったところ、結果は表7に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.9であった。このように、分離膜1の成分A除去率と成分B除去率の差が60%ポイント以下のときは、全体の成分B除去率70%以上を達成することができない。
(比較例20)
分離膜2を海水淡水化RO膜Cとした以外は実施例19と同様にして分離膜モジュールを用意した。実施例19と同様に図1のようにポンプおよびバルブを用意し、配管接続を行った。なお、分離膜2に対して、原液を用いて、標準評価条件で評価したところ、成分Aおよび成分Bの除去率はそれぞれ99.1%および80.1%であった。実施例19と同様の原液を使用し、全体の溶液回収率が97%、分離膜モジュール1の運転圧力が5.5MPa程度となるようにバルブを調整し、表7に示す条件で評価を行ったところ、結果は表7に示すようであった。なお、分離膜モジュール2の透過液の循環比は0.9であった。このように、分離膜2の成分B除去率が85%以下のときは、全体の成分B除去率70%以上を達成することができない。
Figure 2022103007000008
1 分離膜モジュール1
2 分離膜モジュール2
3 分離膜モジュール1供給ポンプ
4 分離膜モジュール1濃縮液バルブ
5 分離膜モジュール2供給ポンプ
6 分離膜モジュール2濃縮液バルブ
7 分離膜モジュール2透過液または精製液流量分配バルブ
8 分離膜モジュール2透過液逆止弁
9 分離膜モジュール2濃縮液流量分配バルブ
10 原液流量分配バルブ
11 透過液混合量調整バルブ
101 原液
102 精製液
103 成分B濃縮液
104 分離膜モジュール1供給液
105 分離膜モジュール1濃縮液
106 分離膜モジュール1透過液または透過側排出液
107 分離膜モジュール2供給液
108 分離膜モジュール2濃縮液
109 分離膜モジュール2透過液または透過側排出液
110 分離膜モジュール2透過液循環
111 精製液循環
112 分離膜モジュール1透過側供給原液
113 分離膜モジュール2濃縮液循環
114 分離膜モジュール1透過側供給液
115 分離膜モジュール2透過側供給液
201 I型分離膜エレメント
202 有孔中心管
203 分離膜
204 供給側流路材
205 透過側流路材
206 供給液
207 濃縮液
208 透過液
209 仕切り
210 封止部
211 分離膜の供給側の面
212 分離膜の透過側の面
213 OARO分離膜エレメント
214 透過側供給液
215 透過側排出液
216 通常の分離膜モジュール
217 OARO分離膜モジュール
218 供給側供給口
219 供給側排出口
220 透過側供給口
221 透過側排出口
222 圧力容器
223 ブラインシール
224 逆L型分離膜エレメント
225 L型分離膜エレメント
226 Uターン型(I型-逆L型)分離膜エレメント
227 I型分離膜体
228 逆L型分離膜体
229 L型分離膜体
230 Uターンキャップ

Claims (23)

  1. 原液を、分離膜1と、前記分離膜1の分離膜性能と同等あるいはそれよりも高い分離膜性能を有する分離膜2で分離処理する溶液処理方法であって、
    前記分離膜1を使用した分離膜モジュール1および前記分離膜2を使用した分離膜モジュール2には透過側と供給側が存在し、
    前記原液は、少なくとも成分A、成分Bを含むものであり、
    前記分離膜1および前記分離膜2を標準評価条件で運転した場合において、供給液中の成分濃度に対して、透過した溶液中の成分濃度の減少率で定義する除去率について、
    前記分離膜1の前記成分Aの除去率が90%以上であり、かつ、
    前記分離膜1の前記成分Bの除去率が、前記分離膜1の前記成分Aの除去率よりも60%ポイント以上低いものであり、
    前記分離膜2の前記成分Bの除去率が85%以上であり、
    前記分離膜モジュール1の透過側から得られる透過液を含む透過側溶液は、前記分離膜モジュール2の供給側に供給し分離処理され、
    少なくとも以下の(i)(ii)のいずれかの要件を満たすことを特徴とする溶液処理方法。
    (i)前記分離膜モジュール2の透過液の少なくとも一部を前記原液と混合後前記分離膜モジュール1の供給側に供給し、前記分離膜モジュール2の透過液の残りの全量または一部を前記分離膜モジュール1の濃縮液と混合し精製液を得る。
    (ii)前記分離膜モジュール2の透過液を分離膜モジュール1の濃縮液と混合し精製液を得、かつ、当該精製液の一部を前記原液と混合後、分離膜モジュール1の供給側に供給する。
  2. 前記分離膜モジュール1または2に使われる分離膜エレメントが、有孔中心管を備えたスパイラル型の分離膜エレメントであることを特徴とする、請求項1に記載の溶液処理方法。
  3. 前記分離膜エレメントの有孔中心管の長手方向に対し垂直方向における外周端部に、供給液供給部又は濃縮液排出部を有していることを特徴とする、請求項2に記載の溶液処理方法。
  4. 前記分離膜モジュール1が膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造であり、前記分離膜モジュール1の透過側に、前記分離膜モジュール2の濃縮液、または原液、またはその両方が供給されることを特徴とする、請求項1に記載の溶液処理方法。
  5. 前記分離膜モジュール2が膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造であり、前記分離膜モジュール2の透過側に前記分離膜モジュール1の濃縮液が供給されることを特徴とする、請求項1または4に記載の溶液処理方法。
  6. 膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造となっている前記分離膜モジュール1または前記分離膜モジュール2について、透過側と供給側に供給される溶液の流れがそれぞれ向流となっていることを特徴とする、請求項4または5に記載の溶液処理方法。
  7. 前記分離膜モジュール1が透過液方向に多段となっていることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の溶液処理方法。
  8. 最後段に設置される前記分離膜モジュール1の濃縮液を循環し、前記分離膜1の供給側に戻すことを特徴とする、請求項7に記載の溶液処理方法。
  9. 前記分離膜モジュール2が透過液方向に多段となっていることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の溶液処理方法。
  10. 前記分離膜モジュール1または2が濃縮液方向に多段となっていることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の溶液処理方法。
  11. 前記原液の成分濃度の合計が1000mg/L以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の溶液処理方法
  12. 前記成分Aがイオンで前記成分Bが中性分子であることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の溶液処理方法。
  13. 前記原液が医療用人工透析廃液であることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の溶液処理方法。
  14. 前記成分Aが多価イオンで前記成分Bが1価イオンであることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の溶液処理方法。
  15. 前記成分Aが高分子の中性分子で前記成分Bが低分子の中性分子であることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の溶液処理方法。
  16. 前記分離膜1が逆浸透膜もしくはナノろ過膜であることを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載の溶液処理方法。
  17. 前記分離膜2が逆浸透膜であることを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載の溶液処理方法。
  18. 原液を、分離膜1と、前記分離膜1の分離膜性能と同等あるいはそれよりも高い分離膜性能を有する分離膜2で分離処理する溶液処理装置であって、
    前記分離膜1を使用した分離膜モジュール1および前記分離膜2を使用した分離膜モジュール2には透過側と供給側が存在し、
    前記分離膜1および前記分離膜2を標準評価条件で運転した場合において、供給液中の成分濃度に対して、透過した溶液中の成分濃度の減少率で定義する除去率について、
    前記分離膜1の前記成分Aの除去率が90%以上であり、かつ、
    前記分離膜1の前記成分Bの除去率が、前記分離膜1の前記成分Aの除去率よりも60%ポイント以上低いものであり、
    前記分離膜2の前記成分Bの除去率が85%以上であり、
    前記分離膜モジュール1の透過側から得られる透過液を含む透過側溶液のラインは、前記分離膜モジュール2の供給側に接続され、
    少なくとも以下の(i)(ii)のいずれかの要件を満たすことを特徴とする、溶液処理装置。
    (i)前記分離膜モジュール2の透過液ラインを2つに分岐させ、一方を前記原液のラインに接続し、前記原液と前記分離膜モジュール2の透過液の混合液のラインを前記分離膜モジュール1の供給側に接続し、前記分離膜モジュール2の透過液ラインのもう一方を前記分離膜モジュール1の濃縮液ラインに接続し精製液ラインとする。
    (ii)前記分離膜モジュール1の濃縮液ラインを分離膜モジュール2の透過側の溶液ラインに接続し精製液ラインとし、かつ、精製液ラインを2つに分岐させ、一方を前記原液ラインに接続し、前記原液と前記精製液の混合液のラインを分離膜モジュール1の供給側に接続する。
  19. 前記分離膜モジュール1または2に使われる分離膜エレメントが、有孔中心管を備えたスパイラル型の分離膜エレメントであることを特徴とする、請求項18に記載の溶液処理装置。
  20. 前記分離膜エレメントの有孔中心管の長手方向に対し垂直方向における外周端部に、供給液供給部又は濃縮液排出部を有していることを特徴とする、請求項19に記載の溶液処理装置。
  21. 前記分離膜モジュール1が膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造であり、前記分離膜モジュール1の透過側に、前記分離膜モジュール2の濃縮液、または原液、またはその両方のラインが接続されることを特徴とする、請求項18に記載の溶液処理装置。
  22. 前記分離膜モジュール2が膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造であり、前記分離膜モジュール2の透過側に前記分離膜モジュール1の濃縮液ラインが接続されることを特徴とする、請求項18または21に記載の溶液処理装置。
  23. 膜の透過側と供給側の両側に供給口と排出口とを有する構造となっている前記分離膜モジュール1または前記分離膜モジュール2について、透過側と供給側に供給される溶液の流れがそれぞれ向流となるように配管接続されていることを特徴とする、請求項21または22に記載の溶液処理装置。
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