JP2022088828A - 地熱タービンの高耐食静翼、地熱タービンの静翼翼列および地熱タービンの高耐食静翼の製造方法 - Google Patents

地熱タービンの高耐食静翼、地熱タービンの静翼翼列および地熱タービンの高耐食静翼の製造方法 Download PDF

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励 荒木
Tsutomu Araki
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竜太朗 高野
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Abstract

【課題】優れた耐食性を有し、腐食環境下において長期に亘って安定した運用が可能な地熱タービンの高耐食静翼、地熱タービンの静翼翼列および地熱タービンの高耐食静翼の製造方法を提供する。【解決手段】実施形態の静翼10は、腐食成分を含んだ作動媒体が流れる腐食環境下で使用され、地熱タービンのダイアフラム外輪113とダイアフラム内輪115との間に支持される。静翼10は、翼有効部20と、翼有効部20の一方の端部に形成され、ダイアフラム外輪113に嵌合される外輪嵌合部30と、翼有効部20の他方の端部に形成され、ダイアフラム内輪115に嵌合される内輪嵌合部40とを備える。翼有効部20、外輪嵌合部30および内輪嵌合部40が一体でかつNi基合金で形成されている。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、地熱タービンの高耐食静翼、地熱タービンの静翼翼列および地熱タービンの高耐食静翼の製造方法に関する。
従来、腐食環境下で運用される地熱タービンにおいて、構成部材の表面に耐腐食性材料からなるコーティング層を備えることで、構成部材と腐食性環境との接触を低減する技術が採用されている。
地熱タービンに導入される蒸気温度は、例えば、ボイラなどで生成された蒸気が導入される蒸気タービンの蒸気温度よりも低い。そのため、従来において、地熱タービンの構成部材は、12Cr鋼やCrMoV鋼などのFe基合金鋼で構成されている。
地熱タービンの構成部材である静翼(ノズル板)も、12Cr鋼などのFe基合金鋼で構成されている。そして、静翼の表面には、耐腐食性材料からなるコーティング層(耐食コーティング層)が形成されている。
特開2004-270484号公報
地熱タービンの作動媒体は、酸性の蒸気中に、二酸化炭素、硫化水素、塩素、アンモニアなどの腐食成分を多量に含む。地熱タービンの静翼は、このような腐食成分を含んだ作動媒体である蒸気に曝される腐食環境下で使用される。
耐食コーティング層で覆われた静翼であっても、コーティング層へのき裂発生や剥離が生じた場合は、露出した静翼の全面腐食、孔食、応力腐食割れが重畳して生じるため、静翼の更新や静翼の補修を頻繁に行う必要がある。
本発明が解決しようとする課題は、優れた耐食性を有し、腐食環境下において長期に亘って安定した運用が可能な地熱タービンの高耐食静翼、地熱タービンの静翼翼列および地熱タービンの高耐食静翼の製造方法を提供することである。
実施形態の地熱タービンの高耐食静翼は、腐食成分を含んだ作動媒体が流れる腐食環境下で使用され、地熱タービンのダイアフラム外輪とダイアフラム内輪との間に支持される。
高耐食静翼は、翼有効部と、前記翼有効部の一方の端部に形成され、前記ダイアフラム外輪に嵌合される外輪嵌合部と、前記翼有効部の他方の端部に形成され、前記ダイアフラム内輪に嵌合される内輪嵌合部とを備える。そして、前記翼有効部、前記外輪嵌合部および前記内輪嵌合部が一体でかつNi基合金で形成されている。
実施の形態の静翼を備えた蒸気タービンの鉛直方向の断面を示す図である。 実施の形態の静翼を周方向側から見たときの静翼の平面図である。 実施の形態の静翼を上流側から見たときの静翼の平面図である。 実施の形態の静翼を備える静翼翼列を上流側から見たときの静翼翼列の平面図である。 図4のA-A断面を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態の静翼10を備えた蒸気タービン100の鉛直方向の断面を示す図である。以下説明する蒸気タービンは、地熱タービンである。なお、図1では、一部のタービン段落の構成を省略して示している。
図1に示すように、蒸気タービン100は、ケーシング110を備え、このケーシング110内には、タービンロータ111が貫設されている。タービンロータ111には、周方向に亘って半径方向外側に突出するロータホイール111aが形成されている。このロータホイール111aは、タービンロータ111の中心軸方向に複数段形成されている。
ここで、周方向とは、タービンロータ111の中心軸Oを中心とする周方向、すなわち、中心軸Oの軸周りである。また、半径方向外側とは、半径方向における中心軸Oから遠ざかる側である。半径方向は、中心軸Oを基点とする、中心軸Oに垂直な方向である。また、タービンロータ111の中心軸方向を以下において単に軸方向という。
ロータホイール111aには、複数の動翼112が周方向に植設されている。複数の動翼112を周方向に備えた動翼翼列51は、軸方向に複数段構成されている。なお、タービンロータ111は、図示しないロータ軸受によって回転可能に支持されている。
ケーシング110の内周には、ダイアフラム外輪113が設置されている。ダイアフラム外輪113は、例えば、下流側に環状に延出し、動翼112の周囲を囲む環状延出部114を有している。ダイアフラム外輪113の内側には、ダイアフラム内輪115が設置されている。なお、下流側とは、作動流体の主流の流れ方向の下流側を意味する。
ダイアフラム外輪113とダイアフラム内輪115との間には、周方向に複数の静翼10が配置され、静翼翼列50を構成している。ダイアフラム外輪113は、静翼10を半径方向外側から支持し、ダイアフラム内輪115は、静翼10を半径方向内側から支持している。ここで、半径方向内側とは、半径方向における中心軸Oに近づく側(中心軸O側)である。なお、静翼10は、高耐食静翼として機能する。
静翼翼列50は、軸方向に動翼翼列51と交互に複数段備えられている。そして、静翼翼列50と、その直下流側に位置する動翼翼列51とで一つのタービン段落を構成している。なお、静翼10の構成については、後に詳しく説明する。
ダイアフラム外輪113とダイアフラム内輪115との間には、作動流体が流れる環状の蒸気通路116が形成されている。蒸気通路116は、例えば、下流に行くに伴い、流路断面が徐々に拡大する。
タービンロータ111とケーシング110との間には、蒸気の外部への漏洩を防止するために、グランドシール部117が設けられている。また、タービンロータ111とダイアフラム内輪115との間には、この間を蒸気が下流側へ漏洩するのを防止するために、シール部118が設けられている。
また、グランドシール部117およびシール部118の内周面には、シールフィン117a、118aが備えられている。なお、グランドシール部117およびシール部118は、周方向に亘って設けられている。
また、蒸気タービン100には、蒸気導入管120からの蒸気を蒸気タービン100の内部に導入するための蒸気入口管(図示しない)がケーシング110を貫通して設けられている。なお、地熱タービンである蒸気タービン100へ導入される蒸気は、二酸化炭素、硫化水素、塩素、アンモニアなどの腐食成分を含んだ酸性の蒸気である。
なお、図示しない最終段のタービン段落の下流側には、各タービン段落において膨張仕事をした蒸気を排気するための排気通路(図示しない)が設けられている。
次に、実施の形態の静翼10および静翼翼列50について詳しく説明する。
図2は、実施の形態の静翼10を周方向側から見たときの静翼10の平面図である。図3は、実施の形態の静翼10を上流側から見たときの静翼10の平面図である。図4は、実施の形態の静翼10を備える静翼翼列50を上流側から見たときの静翼翼列50の平面図である。図5は、図4のA-A断面を示す図である。
ここで、図2は、ダイアフラム外輪113やダイアフラム内輪115に嵌合させる状態の静翼10を周方向側から見たときの平面図である。図3は、ダイアフラム外輪113やダイアフラム内輪115に嵌合させる状態の静翼10を上流側から見たときの平面図である。図5は、固定ピン150が位置する静翼翼列50の子午断面図を示している。また、図5において、上半部ダイアフラム外輪113aの一部を省略して示している。
静翼10は、二酸化炭素、硫化水素、塩素、アンモニアなどの腐食成分を含んだ作動媒体が流れる腐食環境下で使用される。
図2に示すように、静翼10は、翼有効部20と、外輪嵌合部30と、内輪嵌合部40とを備える。翼有効部20、外輪嵌合部30および内輪嵌合部40は、一体で構成されている。すなわち、静翼10は、翼有効部20、外輪嵌合部30および内輪嵌合部40が一体的に形成された一体構造体である。
翼有効部20は、作動流体が流れる環状の蒸気通路116に位置し、作動流体に曝される。図2において、翼有効部20における前縁20aは、左側側部であり、翼有効部20における後縁20bは、右側側部である。作動流体は、周方向に所定の間隙をあけて位置する翼有効部20間を前縁20a側から後縁20b側に向かって流れる。
外輪嵌合部30は、翼有効部20の一方の端部に形成されている。外輪嵌合部30は、図4に示すように、ダイアフラム外輪113に嵌合される。外輪嵌合部30は、ダイアフラム外輪113と嵌合するための嵌合凹部32を有する。
この嵌合凹部32は、図2および図3に示すように、例えば、外輪嵌合部30の上流側の端面31に周方向に亘って下流側に凹む円弧状の溝部で構成される。嵌合凹部32の形状は、後述する、ダイアフラム外輪113の嵌合凸部131の形状に対応して形成されている。嵌合凹部32は、外輪嵌合部30の上流側の端面31を周方向に貫通して形成される。
ここで、上流側とは、作動流体の主流の流れ方向の上流側を意味する。なお、ここでは、嵌合凹部32の断面形状(周方向に垂直な断面)が矩形の一例を示している。
内輪嵌合部40は、翼有効部20の他方の端部に形成されている。内輪嵌合部40は、図3に示すように、ダイアフラム内輪115に嵌合される。内輪嵌合部40は、ダイアフラム内輪115と嵌合するための嵌合凸部41を有する。
この嵌合凸部41は、図2および図3に示すように、例えば、内輪嵌合部40の底面42に周方向に亘って中心軸O側に突出する円弧状の突条部で構成される。嵌合凸部41の形状は、後述する、ダイアフラム内輪115の嵌合凹部141の形状に対応して形成されている。なお、ここでは、嵌合凸部41の断面形状(周方向に垂直な断面)が矩形の一例を示している。
ここで、図2および図3に示した静翼10は、外輪嵌合部30と内輪嵌合部40との間に一つの翼有効部20を有する構成である。そして、複数の静翼10を、ダイアフラム外輪113とダイアフラム内輪115との間に周方向に配置することで、静翼翼列50が構成される。
上記した静翼10は、腐食成分を含んだ作動媒体に直接接触する。すなわち、腐食成分を含んだ作動媒体に接触する静翼10の表面には、腐食を防止する耐食コーティング層は形成されていない。
さらに、静翼10は次の特性を有する。
静翼10は、JIS Z 3104に準ずる放射線探傷試験において、静翼10の内部における欠陥の検出がない。
なお、放射線探傷試験において、最終形態の静翼10ばかりでなく、鋳造後の静翼構造体(熱間等方圧加圧処理前の静翼構造体)においても有意な欠陥が検出されない。このように、放射線探傷試験において、後述する熱間等方圧加圧処理が施された最終形態の静翼10の内部において有意な欠陥が検出されないとともに、鋳造後の静翼構造体においても有意な欠陥が検出されない。
そのため、静翼の製造工程において、静翼構造体の廃棄や製造工程の停止を伴うことなく、次の製造工程に進むことができる。これによって、製造時間の短縮や優れた経済性が得られる。
ここで、有意な欠陥とは、JIS Z 3104に準ずる放射線探傷試験において検出可能な最小サイズの欠陥および最小サイズを超えるサイズの欠陥をいう。
静翼10は、JIS Z 2343に準ずる浸透探傷試験において、静翼10の表面における欠陥の検出がない。
浸透探傷試験では、放射線探傷試験では確認できない大きさの粒状欠陥や線状き裂などを明瞭に確認できる。
通常、例えば、製造工程の最終段階で欠陥が検出された場合、欠陥は、研磨除去または溶接によって補修される。また、欠陥が検出された部位によっては、補修作業が困難なことがある。この場合には、製造された静翼10は廃棄される。このような静翼10の製造工程の最終段階における欠陥の補修や静翼10の廃棄は、製作の遅延や経済性の低下を招く。
しかしながら、実施の形態の静翼10は、静翼10の表面における欠陥の検出がないため、上記した欠陥の修理や静翼10の廃棄は、生じない。そのため、静翼10の製造工程において、製造時間の短縮や優れた経済性が得られる。
上記したように、本実施の形態の静翼10は、放射線探傷試験および浸透探傷試験において、内部および表面における欠陥の検出されない静翼である。
次に、上記した実施の形態の静翼10を備える静翼翼列50について説明する。
実施の形態の静翼翼列50は、腐食成分を含んだ作動媒体が流れる腐食環境下で使用される。
図4に示すように、静翼翼列50は、ダイアフラム外輪113と、ダイアフラム内輪115と、静翼10とを備える。静翼翼列50は、上半部静翼翼列50aおよび下半部静翼翼列50bからなる2分割構造で構成されている。上半部静翼翼列50aは、タービンロータ111の中心軸Oよりも鉛直上方側に位置する。下半部静翼翼列50bは、タービンロータ111の中心軸Oよりも鉛直下方側に位置する。
ダイアフラム外輪113は、上半部ダイアフラム外輪113aと、下半部ダイアフラム外輪113bとを備える。下半部ダイアフラム外輪113b上に上半部ダイアフラム外輪113aを設置することで、環状のダイアフラム外輪113を構成する。
ダイアフラム内輪115は、上半部ダイアフラム内輪115aと、下半部ダイアフラム内輪115bとを備える。下半部ダイアフラム内輪115b上に上半部ダイアフラム内輪115aを設置することで、環状のダイアフラム内輪115を構成する。
図5に示すように、ダイアフラム外輪113には、静翼10の外輪嵌合部30を嵌合させる篏合溝部130が周方向に亘って形成されている。篏合溝部130には、外輪嵌合部30の嵌合凹部32に嵌合する嵌合凸部131が形成されている。嵌合凸部131は、例えば、周方向に亘って篏合溝部130の上流側の端面130aから軸方向の下流側へ突出する突条部で構成される。
静翼10の外輪嵌合部30を篏合溝部130に嵌合させることで、静翼10は、ダイアフラム外輪113に支持される。
なお、ダイアフラム外輪113における外輪嵌合部30の支持構造は、この構造に限られるものではない。例えば、外輪嵌合部30に突条部を設け、ダイアフラム外輪113にこの突条部と嵌合する嵌合凹部を備えてもよい。
図5に示すように、ダイアフラム内輪115には、静翼10の内輪嵌合部40を嵌合させる篏合溝部140が周方向に亘って形成されている。篏合溝部140には、内輪嵌合部40の嵌合凸部41に嵌合する嵌合凹部141が形成されている。嵌合凹部141は、周方向に亘って篏合溝部140の底部から中心軸方向に形成された溝部で構成される。
静翼10の内輪嵌合部40を篏合溝部140に嵌合させることで、静翼10は、ダイアフラム内輪115に支持される。
ここで、静翼10は、例えば、上半部ダイアフラム外輪113aと上半部ダイアフラム内輪115aとの間を周方向にスライドさせながら嵌合される。そして、複数の静翼10が周方向に嵌合され、上半部静翼翼列50aが構成される。
同様に、静翼10は、例えば、下半部ダイアフラム外輪113bと下半部ダイアフラム内輪115bとの間を周方向にスライドさせながら嵌合される。そして、複数の静翼10が周方向に嵌合され、下半部静翼翼列50bが構成される。
上記において静翼10をスライドさせる際、上半部ダイアフラム外輪113aと上半部ダイアフラム内輪115a、および下半部ダイアフラム外輪113bと下半部ダイアフラム内輪115bは、静翼10の外輪嵌合部30を嵌合可能な間隙をあけて配置されている。
なお、前述したように、静翼翼列50は、ケーシング110の半径方向内側で、タービンロータ111の周囲に配置される。
ここで、図4に示すように、上半部静翼翼列50aにおいて、周方向の両端部の静翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)は、固定ピン150によって、それぞれ上半部ダイアフラム内輪115aに固定されている。なお、固定ピン150は、棒状部材として機能する。
ここで、図5において、上半部静翼翼列50aにおける、一方の端部の静翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)が固定ピン150によって固定されている状態が示されている。
図5に示すように、上半部ダイアフラム内輪115aおよび嵌合凸部41には、固定ピン150を挿入させるための挿入孔151、152が形成されている。内輪嵌合部40の嵌合凸部41がダイアフラム内輪115の嵌合凹部141に嵌合された際、挿入孔151と挿入孔152は、軸方向に一直線状に連通するように構成されている。挿入孔151および挿入孔152は、例えば、同じの孔径に形成されている。
固定ピン150は、棒状の部材で構成されている。固定ピン150は、挿入孔151の入口151aから挿入孔152を貫通する長さに構成される。固定ピン150の外径は、固定ピン150を挿入孔151、152に挿入させた際、静翼10の内輪嵌合部40が動かないように固定できる程度に設定される。例えば、固定ピン150の外径は、挿入孔151、152の孔径より若干小さく構成される。
固定ピン150は、例えば、ダイアフラム内輪115を構成する金属材料と同じ材料で構成される。固定ピン150は、例えば、ASTM規格のA182 F91、A182 F6a、A217 C12Aなどのステンレス鋼、ASTM規格のA193 B16などの低合金鋼、JIS規格のSS400などの炭素鋼で構成される。
なお、上半部静翼翼列50aにおいて、他方の端部の静翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)が固定ピン150によって上半部ダイアフラム内輪115aに固定される構成も、上記した一方の端部の静翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)が固定ピン150によって上半部ダイアフラム内輪115aに固定される構成と同じである。
なお、上記した上半部静翼翼列50aにおけるピン固定の一例では、固定ピン150による固定個所は、2か所となる。
上半部ダイアフラム内輪115aと静翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)との固定は、次のように行われる。
まず、上記したように、上半部ダイアフラム外輪113aと上半部ダイアフラム内輪115aとの間に必要数の静翼10を嵌合させた状態において、上流側から軸方向に挿入孔151の入口151aに固定ピン150を挿入する。なお、固定ピン150は、上半部ダイアフラム内輪115aの両端における挿入孔151に挿入される。
そして、固定ピン150を軸方向に挿入させ、固定ピン150を挿入孔152に貫通させる。なお、固定ピン150の上流側の端部を軸方向に打ち込むことで、固定ピン150は、挿入孔151、152に挿入される。
このようなピン固定によって、静翼10(内輪嵌合部40)は、上半部ダイアフラム内輪115aに固定される。これによって、例えば、上半部静翼翼列50aの両端部が鉛直下方となる状態で上半部静翼翼列50aを鉛直上方に持ち上げても、静翼10は下方に脱落しない。
ここでは、上半部静翼翼列50aにおいて、周方向の両端部の静翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)を固定ピン150によって上半部ダイアフラム内輪115aに固定する一例を示したが、この構成に限られない。
上半部静翼翼列50aにおいて、固定ピン150による固定個所は、上記したように、少なくとも周方向の両端部の静翼10を固定するための2か所であればよい。また、固定ピン150による固定個所は、例えば、3か所以上あってもよい。
例えば、周方向の両端部の静翼10以外に、周方向の両端部の中央(90度位置)に位置する静翼10を固定ピン150によって上半部ダイアフラム内輪115aに固定してもよい。この場合には、固定ピン150による固定個所は、3か所となる。
さらに、周方向の両端部の静翼10以外に、例えば、周方向の端部から45度の位置のそれぞれの静翼10を固定ピン150によって上半部ダイアフラム内輪115aに固定してもよい。この場合には、固定ピン150による固定個所は、4か所となる。
なお、下半部静翼翼列50bにおいても、周方向の両端部の静翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)を固定ピン150によって下半部ダイアフラム内輪115bに固定してもよい。さらに、下半部静翼翼列50bにおいて、周方向の両端部の静翼10以外に、周方向の任意の位置に位置する静翼10を固定ピン150によって固定してもよい。
本実施の形態の静翼翼列50において、周方向の両端部の静翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)を固定ピン150によって上半部ダイアフラム内輪115aに固定することで、静翼翼列の組立の際、例えば、上半部ダイアフラム外輪113aと上半部ダイアフラム内輪115aとの間からの静翼10の脱落を防止できる。
また、固定ピン150による固定を採用することで、静翼10の脱落を防止する以外にも、分解や再組立てが容易となる。
また、例えば、周方向の端部の静翼10を固定ピン150によって上半部ダイアフラム内輪115aに固定することで、上半部静翼翼列50aの周方向の両端の静翼10の外輪嵌合部30および内輪嵌合部40は、それぞれ、下半部静翼翼列50bの周方向の両端の静翼10の外輪嵌合部30および内輪嵌合部40と接触した状態が維持される。
これによって、腐食成分を含む作動流体が、静翼翼列50における蒸気通路116から、篏合溝部130の上流側の端面130aと外輪嵌合部30との接触面間、ダイアフラム内輪115の篏合溝部140の上流側端面と内輪嵌合部40との接触面間へ漏洩することを抑制できる。そのため、蒸気通路116を構成するタービン構成部材以外のタービン構成部材の腐食等が抑制される。これによって、蒸気タービン100の長期間に亘る安定な運用が可能になる。
ここで、一定期間の運転後に蒸気タービン100を分解する際、2分割された静翼翼列50における、上半部静翼翼列50aと下半部静翼翼列50bとの接触面が固着することがある。この固着した部分には、過剰な負荷が発生し、分解することによって静翼10が変形することがある。
しかしながら、翼10の内輪嵌合部40(嵌合凸部41)を固定ピン150によって上半部ダイアフラム内輪115aに固定して一体化することで、上半部静翼翼列50aと下半部静翼翼列50bとの接触面が固着した場合においても、静翼10の変形を回避することができる。
また、固定ピン150による固定個所を3か所以上とすることで、静翼10全体の剛性が増加するとともに、薄肉の翼有効部20への負荷集中が回避される。これによって、蒸気タービン100や静翼翼列50の分解作業を容易に行うことができる。
ここで、静翼10、すなわち翼有効部20、外輪嵌合部30および内輪嵌合部40は、Ni基合金で形成されている。
静翼10は、以下に示す組成成分範囲のNi基合金で構成される。実施の形態の静翼10を構成するNi基合金は、質量%で、Cr:20.0~22.5、Mo:12.5~14.5、W:2.5~3.5、Fe:2.0~6.0、V:0.05~0.35を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
ここで、静翼10の製造方法は、後に説明するが、鋳造によって製造される。
次に、上記した実施形態の静翼10を構成するNi基合金における各組成成分範囲の限定理由を説明する。以下の説明において組成を表す%は特に明記しない限り質量%とする。
(1)Cr(クロム)
Crは、耐食性向上に有効である。その効果は、静翼10を構成するNi基合金においては、Crの含有率が20.0~22.5%で最大となる。Crの含有率が20.0%未満では、耐食性が劣る。Crの含有率が22.5%を超えると、bcc-Cr相やσ相を形成して脆化を促進させる。そのため、Crの含有率を20.0~22.5%とした。
(2)Mo(モリブデン)
Moは、Ni母相中に固溶して合金の強度向上に寄与する。静翼10を構成するNi基合金では、結晶粒が粗大かつ金属元素以外の析出物構成元素を意図的に添加しないため、Ni母相の強化因子としてMoが有用である。Ni母相の強化の効果は、Moの含有率が12.5%以上で最大となる。Moの含有率が14.5%を超えるとNiMoが生成し、脆化が進行する。そのため、Moの含有率を12.5~14.5%とした。
(3)W(タングステン)
Wは、Ni母相中に固溶して合金の強度向上に寄与する。静翼10を構成するNi基合金では、結晶粒が粗大かつ金属元素以外の析出物構成元素を意図的に添加しないため、Ni母相の強化因子としてWが有用である。類似効果を有するMoとの併用の場合、Ni母相の強化の効果は、Wの含有率が2.5%以上で最大となる。Wの含有率が3.5%を超えるとNiWが生成し、脆化が進行する。そのため、Wの含有率を2.5~3.5%とした。
(4)Fe(鉄)
合金の溶解原料として、純クロム、純ニッケルなどの純金属元素以外に、フェロモリブデン、フェロタングステンなど、Feとの化合物も広く用いられる。そして、Ni合金中へのFeの含有は、少なからず許容される必要がある。Feの含有率が2.0%未満では、溶解原料の構成がほぼ純金属元素のみとなるため経済性を低下させる。一方、Feの含有率が6.0%を超えるとNiとFeからなる金属間化合物を生成し、脆化を促進する。そのため、Feの含有率を2.0~6.0%とした。
(5)V(バナジウム)
Ni母相中に固溶したVは、単独では特段の効果はないが、VはC(炭素)との親和性が強く、炭化物を形成しやすい。静翼10を構成するNi基合金では、この性質を活かし、応力腐食割れを促進する結晶粒界へのCr炭化物の生成を抑制することとした。静翼10を構成するNi基合金では、Cは意図的に添加しないが、不可避的不純物として混入する。Vを添加し、V炭化物を結晶粒内に生成させることで、Ni母相中のCの残存量をなくし、結晶粒界に析出するCr炭化物の生成を抑制することができる。この効果は、Vの含有率が0.05%以上で認められる。この効果は、Vの含有率が0.35%を超えると飽和する。そのため、Vの含有率を0.05~0.35%とした。
(6)C(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、N(窒素)、P(リン)およびS(硫黄)
C、Si、Mn、N、P、およびSは、実施形態の静翼10を構成するNi基合金においては、不可避的不純物に分類されるものである。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが望ましい。
また、これらの不可避的不純物のうち、少なくとも、Siの残存含有率は、0.8%以下に抑制されることが好ましい。Siの残存含有率を0.8%以下にすることで、靭性の低下が抑制される。
次に、実施形態の静翼10の製造方法について説明する。
まず、静翼10を構成する組成成分のNi基合金素材を大気中において溶解する(溶解工程)。
そして、溶解したNi基合金素材を静翼10に形状に対応して形成された型枠に流し込んで、大気中において静翼構造体を鋳造形成する(構造体形成工程)。静翼構造体は、翼有効部20、外輪嵌合部30および内輪嵌合部40が一体的に構成された一体構造体である。なお、静翼構造体は、静翼10の最終形状に対し、数ミリの余肉を有する状態に鋳造されている。
続いて、溶解したNi基合金素材が凝固した後、型枠から静翼構造体を取り出す。そして、静翼構造体に対して熱間等方圧加圧(HIP:Hot Isostatic Pressing)処理を施す。なお、以下において、熱間等方圧加圧処理をHIP処理という。HIP処理は、100MPa±5MPaの圧力かつ不活性ガスの環境下で、静翼構造体を1200~1250℃の温度で加熱する(HIP処理工程)。ここで、不活性ガスとして、窒素ガスまたはアルゴンガスなどが使用される。なお、静翼構造体の肉厚部の厚さなどによって異なるが、HIP処理時間は、例えば、3~5時間である。
上記した圧力および温度下でHIP処理を施すことで、静翼構造体において生成した鋳造欠陥を消滅させることが可能となる。静翼10を構成するNi基合金は、温度が1200℃程度で延性が最も良好となる。そのため、静翼構造体を1200℃程度に加熱した状態で、静翼構造体全体に等方圧をかけて圧縮することで、静翼構造体の内部に残存した微細鋳造欠陥は消滅する。
なお、HIP処理において、温度が1200℃未満では偏析部の拡散が不十分であり、温度が1250℃を超えると設備の損傷を助長する。そのため、HIP処理の温度を1200~1250℃とした。
また、このHIP処理の温度において、100MPa程度に加圧することで、静翼構造体に内在するほぼ全ての欠陥を消滅させることができる。静翼構造体のような肉厚の構造体において、HIP処理の圧力が低圧になるとHIP処理に時間を要するとともに、静翼構造体に欠陥が内在することがある。そのため、HIP処理の圧力を100MPa±5MPaとした。
続いて、HIP処理が施された静翼構造体を冷却する(冷却工程)。静翼構造体の冷却は、窒素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガスを静翼構造体に吹き付けて急冷する。この際、不活性ガスを高速で噴出して静翼構造体に衝突させて、熱伝達率を増加させて急冷することが好ましい。なお、静翼構造体は、例えば、室温まで冷却される。
この不活性ガスを吹き付けることによる冷却速度は、空冷による冷却速度よりも速いことが好ましい。なお、ここでの冷却速度は、静翼構造体内の所定箇所において、単位時間あたりに低下する温度をいう。
続いて、冷却された静翼構造体の余肉を切削して最終形状の静翼10に加工する(加工工程)。余肉の切削は、例えば、機械加工によって施される。
上記した製造工程を経て静翼10が製造される。
なお、上記した静翼10の製造工程では、腐食成分を含んだ作動媒体に接触する静翼10の表面に、腐食を防止する耐食コーティング層を形成する工程を含んでいない。
上記した本実施の形態の静翼10は、放射線探傷試験および浸透探傷試験において、内部および表面において欠陥が検出されない静翼である。静翼10は、腐食環境下であっても、腐食、孔食、応力腐食割れなどが生じにくい。また、静翼10においては、優れた耐食性を有するため、腐食成分を含んだ作動媒体に接触する静翼10の表面に耐食コーティング層を備える必要がない。
静翼10は、従来の地熱タービンの静翼よりも、長期間にわたり安定運用が可能である。そのため、本実施の形態の静翼10を備えた静翼翼列50のメンテナンスサイクルや交換サイクルは、従来の地熱タービンの静翼翼列のそれらに比べて長い。これによって、本実施の形態の静翼10や静翼翼列50を備えることで、地熱タービンにおける維持管理コストを削減することができる。
また、静翼10は、翼有効部20、外輪嵌合部30および内輪嵌合部40が一体的に構成された一体構造体である。そのため、外輪嵌合部30および内輪嵌合部40を翼有効部20に溶接結合する工程を削減できるとともに、溶接部における欠陥、応力腐食割れなどの問題を回避できる。
(強度特性および靭性の評価)
以下に、実施形態の静翼10が、強度特性および靭性に優れていることを説明する。
表1は、強度特性および靭性の評価に用いられた試料1~試料6の化学組成を示す。なお、表1に示された試料1~試料3は、実施形態の静翼10を構成するNi基合金の化学組成範囲にあるNi基合金である。試料4は、その組成が実施形態の静翼10を構成するNi基合金の化学組成範囲にない鋼であり、比較例である。試料5~試料6は、その組成が実施形態の静翼10を構成するNi基合金の化学組成範囲にないNi基合金であり、比較例である。
Figure 2022088828000002
強度特性を引張試験、靭性を衝撃試験によって評価した。
各試験に使用する試験片を次のように作製した。
表1に示す化学組成を有する試料1~試料6の素材をそれぞれ大気中において溶解炉にて溶解した。溶解した素材を型枠に流し込んで鋳造物を形成した。
続いて、試料1~試料6の鋳造物に対して、それぞれ次の条件で熱処理および冷却を施した。
試料1~試料3の鋳造物に対して、鋳造後、アルゴンガス(Arガス)雰囲気の下でHIP処理を施した。HIP処理は、温度が1205℃、圧力が100MPa、処理時間が4時間の条件で行われた。HIP処理後の試料1~試料3の鋳造物に対して、Arガスを吹き付けて急冷した。
試料4の鋳造物に対して、圧延成形を施した。圧延形成後の鋳造物に対して、大気中において1090℃の温度で4時間の焼ならしを施した。焼ならし後の鋳造物に対して、大気中において640℃の温度で8時間の焼戻しを施した。そして、焼戻し後の試料4の鋳造物を炉冷した。
試料5の鋳造物に対して、圧延成形を施した。圧延形成後の鋳造物に対して、大気中において960℃の温度で1時間の溶体化処理を施した。溶体化処理後の鋳造物に対して、大気中において621℃の温度で8時間の時効処理を施した。そして、時効処理後の試料5の鋳造物を炉冷した。
試料6の鋳造物に対して、鋳造後、Arガス雰囲気の下、溶体化処理を施した。溶体化処理は、温度が1180℃、圧力が大気圧、処理時間が1時間の条件で行われた。溶体化処理後の試料6の鋳造物に対して、Arガスを吹き付けて急冷した。
そして、この鋳造物から、引張試験用および衝撃試験用の所定のサイズの試験片を作製した。
引張試験は、JIS4号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して実施した。引張試験によって、常温引張強さ(MPa)を得た。
衝撃試験は、2mmVノッチ試験片を用いて、JIS Z 2242に準拠して実施した。衝撃試験によって、20℃衝撃吸収エネルギ(J)を得た。
引張試験および衝撃試験の結果を表2に示す。
Figure 2022088828000003
ここで、地熱タービンにおける静翼を構成する材料に要求される常温引張強さは、600MPa以上であれば十分な値である。また、地熱タービンにおける静翼を構成する材料に要求される20℃衝撃吸収エネルギは、100J以上であれば十分な値である。
表2に示すように、試料1~試料3において、常温引張強さは、600MPa以上であった。また、試料1~試料3において、20℃衝撃吸収エネルギは、280J以上であった。
一方、試料4~試料6において、20℃衝撃吸収エネルギは、60J以下であった。
これらの結果から、試料1~試料3は、地熱タービンの設計に必要な十分な強度特性を有しつつ、高い靱性を有することが示された。
(耐食性の評価)
上記した試料1~試料6に対して、曝露試験を実施した。露点温度において、CO、HS、HBO、Cl、NH などの腐食成分を含む、pHが3.5、平均温度が160℃の実蒸気環境下で曝露試験を実施した。曝露試験では、この実蒸気環境下に試験片を1ヶ月間放置した。
曝露試験の結果を表3に示す。
Figure 2022088828000004
曝露試験において、全面腐食、腐食減量、孔食、応力腐食割れを評価した。全面腐食、孔食および応力腐食割れについては、目視で観察した。表3において、全面腐食、孔食、応力腐食割れが、目視で観察された場合には、「有」、目視で観察されない場合には、「無」と示している。また、腐食減量が生じた場合には、「有」、腐食減量が生じていえない場合には、「無」と示している。
ここで、全面腐食とは、全面で起る均一な腐食である。孔食は、例えば、材料の表面に発生したピンホールなどから内部に向い進行する不均一な局部腐食である。応力腐食割れは、応力のかかった部分において腐食とともに生じる割れである。腐食減量は、腐食試験後、表面に付着した腐食生成物を取り除いた試験片の質量減である。
なお、表3には、各試料における、耐食性の指標となる耐食性指数(PRE)も示されている。PREは、次の式1によって算出される。PREの数値が大きいほど孔食に対して良好な材質を意味する。
Cr+3.3×(Mo+W/2)+16×N ・・・ (式1)
表3に示すように、試料1~試料3においては、PREが65を超えている。また、試料1~試料3においては、全面腐食、腐食減量、孔食、応力腐食割れのいずれも生じていない。
一方、試料4~試料6においては、PREが50を下回っている。試料4においては、全面腐食、腐食減量および孔食を生じている。また、試料5においては、孔食および応力腐食割れが生じている。なお、試料6においては、全面腐食、腐食減量、孔食、応力腐食割れのいずれも生じていないが、前述したように、地熱タービンの設計に必要な靱性を有していない。
これらの結果から、試料1~試料3は、実蒸気環境下でも優れた耐食性を有することが示された。
(欠陥の評価)
試料1~試料3を用いて熱処理の条件を変えて静翼10を製造して、静翼10の欠陥の評価を行った。なお、大気圧の下、鋳造によって静翼構造体を製作するまでの工程は、前述した静翼10の製造方法と同じである。
表4は、静翼A~静翼Fを製造する際、静翼構造体に対して施した熱処理および冷却の条件を示している。
Figure 2022088828000005
ここで、静翼A、静翼Dおよび静翼Fは、試料1の化学組成のNi合金で構成されている。静翼Bおよび静翼Eは、試料2の化学組成のNi合金で構成されている。静翼Cは、試料3の化学組成のNi合金で構成されている。
静翼A、静翼Bおよび静翼Cの静翼構造体に対しては、Arガス雰囲気の下、温度1205℃、圧力100MPaで、4時間、HIP処理を施した。冷却方式として、Arガスの吹き付けによる急冷方式を採用した。
静翼Dおよび静翼Eの静翼構造体に対しては、Arガス雰囲気の下、温度1205℃、大気圧で、1時間、溶体化処理を施した。冷却方式として、Arガスの吹き付けによる急冷方式を採用した。
静翼Fの静翼構造体に対しては、Arガス雰囲気の下、温度1205℃、大気圧で、1時間、溶体化処理を施した。冷却方式として、Arガスの吹き付けによる急冷方式を採用した。さらに、静翼Fに対しては、溶体化処理後、Arガス雰囲気の下、温度1205℃、圧力100MPaで、4時間、HIP処理を施した。冷却方式として、Arガスの吹き付けによる急冷方式を採用した。
各静翼の静翼構造体に対して、冷却後、機械加工によって静翼構造体の余肉を切削して最終形状の静翼に加工した。
各静翼に対して、JIS Z 3104に準ずる放射線探傷試験を実施した。放射線探傷試験は、静翼の外輪嵌合部、内輪嵌合部、翼有効部に対して実施された。
ここで、外輪嵌合部および内輪嵌合部の最大肉厚さは80mm、翼有効部の最大肉厚さは30mmであった。
次に、各静翼の表面に対して、JIS Z 2343に準ずる浸透探傷試験を実施した。
次に、外輪嵌合部から内輪嵌合部に向かって、静翼の翼長方向に対して垂直に15mm間隔で各試料をワイヤーカット放電加工によって切断した。各切断面を研磨した後、各切断面に対して、JIS Z 2343に準ずる浸透探傷試験を実施した。
さらに、静翼Fを構成する試料1の化学組成のNi合金の鋳造物(試料Fと呼ぶ)に対して、表4の静翼Fにおける熱処理および冷却と同じ条件で熱処理および冷却を施した。なお、この試料Fは、大気圧の下、鋳造された。その試料Fから引張試験および衝撃試験の試験片を製作した。そして、前述した方法で、引張試験および衝撃試験を実施した。
放射線探傷試験および浸透探傷試験の結果を表5に示す。
Figure 2022088828000006
表5において、欠陥が検出された場合には、「有」、欠陥が検出されない場合には、「無」と示している。
表5に示すように、静翼A、静翼Bおよび静翼Cにおいては、放射線探傷試験および浸透探傷試験(表面、断面)のいずれにおいても欠陥は検出されなかった。
一方、HIP処理が施されていない静翼Dおよび静翼Eにおいては、放射線探傷試験および浸透探傷試験(表面、断面)のいずれにおいても欠陥は検出された。
放射線探傷試験では、静翼Dおよび静翼Eのそれぞれにおいて、本試験で検出可能なサイズである1.5~2mm程度の欠陥が複数個検出された。
また、表面における浸透探傷試験では、静翼D、静翼Eのそれぞれにおいて、複数の欠陥が確認された。表面における浸透探傷試験における欠陥は、放射線探傷試験で確認された欠陥とは異なる部位にあり、0.5mm未満の微小なものであった。
断面における浸透探傷試験では、放射線探傷試験で確認された欠陥を含む、複数の欠陥が確認された。
静翼Fにおいては、放射線探傷試験および浸透探傷試験(表面、断面)のいずれにおいても欠陥は検出されなかった。しかしながら、試料Fにおける常温引張強さは、500MPaであり、静翼を構成する材料に要求される常温引張強さの600MPaを大きく下回った。なお、試料Fにおける20℃衝撃吸収エネルギは、330Jであった。
これらの結果から、本実施の形態の静翼10を構成する化学組成からなる静翼構造体にHIP処理を施すことで、静翼に要求される強度特性を有するとともに、内部および表面のいずれにも欠陥を全く有しない静翼を提供できることが示された。
以上説明した実施形態によれば、優れた耐食性を有し、腐食環境下において長期に亘って安定した運用が可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…静翼、20…翼有効部、20a…前縁、20b…後縁、30…外輪嵌合部、31、130a…端面、32、141…嵌合凹部、40…内輪嵌合部、41、131…嵌合凸部、42…底面、50…静翼翼列、50a…上半部静翼翼列、50b…下半部静翼翼列、51…動翼翼列、100…蒸気タービン、110…ケーシング、111…タービンロータ、111a…ロータホイール、112…動翼、113…ダイアフラム外輪、113a…上半部ダイアフラム外輪、113b…下半部ダイアフラム外輪、114…環状延出部、115…ダイアフラム内輪、115a…上半部ダイアフラム内輪、115b…下半部ダイアフラム内輪、116…蒸気通路、117…グランドシール部、117a、118a…シールフィン、118…シール部、120…蒸気導入管、130、140…篏合溝部、150…固定ピン、151、152…挿入孔、151a…入口。

Claims (11)

  1. 腐食成分を含んだ作動媒体が流れる腐食環境下で使用され、地熱タービンのダイアフラム外輪とダイアフラム内輪との間に支持される高耐食静翼であって、
    翼有効部と、
    前記翼有効部の一方の端部に形成され、前記ダイアフラム外輪に嵌合される外輪嵌合部と、
    前記翼有効部の他方の端部に形成され、前記ダイアフラム内輪に嵌合される内輪嵌合部と
    を備え、
    前記翼有効部、前記外輪嵌合部および前記内輪嵌合部が一体でかつNi基合金で形成されていることを特徴とする地熱タービンの高耐食静翼。
  2. 前記Ni基合金が、
    質量%で、Cr:20.0~22.5、Mo:12.5~14.5、W:2.5~3.5、Fe:2.0~6.0、V:0.05~0.35を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載の地熱タービンの高耐食静翼。
  3. 腐食成分を含んだ前記作動媒体に接触する前記高耐食静翼の表面において、腐食を防止する耐食コーティング層を備えていないことを特徴とする請求項1または2記載の地熱タービンの高耐食静翼。
  4. JIS Z 3104に準ずる放射線探傷試験において、前記高耐食静翼の内部における欠陥の検出がないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の地熱タービンの高耐食静翼。
  5. JIS Z 2343に準ずる浸透探傷試験において、前記高耐食静翼の表面における欠陥の検出がないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の地熱タービンの高耐食静翼。
  6. 腐食成分を含んだ作動媒体が流れる腐食環境下で使用される地熱タービンの静翼翼列であって、
    ダイアフラム外輪と、
    前記ダイアフラム外輪の内側に設けられたダイアフラム内輪と、
    前記ダイアフラム外輪と前記ダイアフラム内輪との間に周方向に亘って複数備えられた、請求項1乃至5のいずれか1記載の地熱タービンの高耐食静翼と、
    前記ダイアフラム内輪に嵌合された前記高耐食静翼の内輪嵌合部と、前記ダイアフラム内輪とを固定する棒状部材と
    を具備することを特徴する地熱タービンの静翼翼列。
  7. 前記静翼翼列が、上半部静翼翼列および下半部静翼翼列からなる2分割構造で構成され、
    前記上半部静翼翼列において、周方向の両端部の前記高耐食静翼の前記内輪嵌合部が、それぞれ前記ダイアフラム内輪に前記棒状部材によって固定されていることを特徴する請求項6記載の地熱タービンの静翼翼列。
  8. 腐食成分を含んだ作動媒体が流れる腐食環境下で使用される地熱タービンの高耐食静翼の製造方法であって、
    質量%で、Cr:20.0~22.5、Mo:12.5~14.5、W:2.5~3.5、Fe:2.0~6.0、V:0.05~0.35を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなるNi基合金素材を大気中において溶解する溶解工程と、
    溶解した前記Ni基合金素材を、大気中において所定の形状の鋳型に流し込んで静翼構造体を形成する構造体形成工程と、
    100MPa±5MPaの圧力かつ不活性ガスの環境下で、前記静翼構造体を1200~1250℃の温度で熱間等方圧加圧処理する熱間等方圧加圧工程と、
    前記熱間等方圧加圧処理が施された前記静翼構造体を冷却する冷却工程と、
    冷却された前記静翼構造体の余肉を切削して高耐食静翼に加工する加工工程と
    を具備することを特徴とする地熱タービンの高耐食静翼の製造方法。
  9. 前記地熱タービンの高耐食静翼の製造方法において、
    腐食成分を含んだ前記作動媒体に接触する前記高耐食静翼の表面に、腐食を防止する耐食コーティング層を形成する工程を含まないことを特徴とする請求項8記載の地熱タービンの高耐食静翼の製造方法。
  10. JIS Z 3104に準ずる放射線探傷試験において、前記加工工程において加工された前記高耐食静翼の内部における欠陥の検出がないことを特徴とする請求項8または9記載の地熱タービンの高耐食静翼の製造方法。
  11. JIS Z 2343に準ずる浸透探傷試験において、前記加工工程において加工された前記高耐食静翼の表面における欠陥の検出がないことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の地熱タービンの高耐食静翼の製造方法。
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