JP2022078396A - 層構造を有する歯科切削加工用レジン材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】歯科用補綴装置(クラウン、ブリッジ)を作製するための、透明性または色調の異なる3層以上の層構造またはグラデーション構造により構成される歯科切削加工用レジン材料を提供する。【解決手段】高透明層と低透明層を有する歯科切削加工用レジン材料であって、各層は、重合性単量体と充填材を含有し、高透明層と低透明層の厚さの比が1:1.2~3.5であり、高透明層は単数もしくは複数の層から構成され、それぞれ隣り合う層と彩度が異なり、低透明層は少なくとも2つ以上の層から構成され、それぞれ隣り合う層と彩度が異なり、高透明層のいずれの各層のコントラスト比と、低透明層のいずれの各層のコントラスト比の差が、0.02~0.05である高透明層から順に高くなる歯科切削加工用レジン材料である。【選択図】なし

Description

本発明は、歯科用補綴装置を作製するための、透明性または色調の異なる3層以上の層構造により構成される歯科切削加工用レジン材料に関する。
従来、歯科における補綴治療として、合金材料の鋳造により作製された歯冠を欠損部に適用する手法が行われてきた。これは、歯牙のう触部分を切削除去、残存歯牙の陰型を印象材により採得し、この陰型に石こうを流して歯牙模型を作製し、歯牙模型上で欠損部をワックスにて回復し、このワックスの形態をロストワックス法にて合金に置き換えて補綴装置を作製する方法である。
補綴装置として合金材料以外に、セラミックス材料やレジン材料が用いられる場合もある。これら材料を用いる場合も、欠損歯牙を再現した石こう模型上に各材料を盛り付けて作製する方法が一般的である。
近年、歯科用CAD/CAM技術の発展により、欠損歯牙を再現した石こう模型を光学スキャンし、コンピューター上に欠損歯牙のデジタルデータを作成し、これをもとに補綴装置のデジタルデータを作成し、このデータより材料を切削加工して補綴装置を作製する手法が用いられるようになってきた。このようなCAD/CAM技術による補綴装置の作製には、各種材料(合金、セラミックス、レジン)を予めブロック体(直方体形状、ディスク形状など)に成形して用いる。
補綴装置の色調において、合金材料は天然歯牙の色調とは大きく異なるため審美的には適していない。天然歯牙と色調が適合した審美的性能の高い補綴装置の作製には、セラミックス材料やレジン材料が用いられる。石こう模型上に手作業で材料を盛り付ける従来法では、象牙色に着色された材料やエナメル色に着色された材料を層状に盛り付けることにより、天然歯牙同様の色調を再現することが可能である。
特許文献1には、2層構造又は3層構造よりなる切削加工用ブランクが記載されている。具体的には、層間の境界面の曲線設計を詳細に規定することで、層間の色調の変化を移行的に表現する技術である。該技術における各層の色調設計においては、各層の透明性、色調の関係性が考慮されている。しかし、各層の透明性、色調の設計に関して、概念が述べられているのみで、明確な設定はなされていない。
WO 2015/051095
従来の歯科切削加工用レジン材料は、色調設計に関する技術が不十分であるため口腔内で天然歯牙の色調を適切に再現できない、
従来の歯科切削加工用レジン材料においては、厳密な天然歯の色調再現の為には、層構造が複雑にする必要があり、製造工程が複雑になり、効率を上げることが困難であった。本発明は、複雑な層構造ではなく、製造工程も簡便な状態を維持しながら、色調再現が可能となる。
本発明は、高透明層と低透明層を有する歯科切削加工用レジン材料であって、
各層は、重合性単量体を5重量%以上40重量%未満、と充填材を60重量%以上95重量%未満含有し、
高透明層と低透明層の厚さの比が1:1.2~3.5であり、
高透明層は単数もしくは複数の層から構成され、それぞれ隣り合う層と彩度が異なり、
低透明層は少なくとも2つ以上の層から構成され、それぞれ隣り合う層と彩度が異なり、
高透明層のいずれの各層のコントラスト比と、低透明層のいずれの各層のコントラスト比の差が、0.02~0.05であり、
低透明層内の全ての層のコントラスト比の差が、0.00~0.02未満であり、
高透明層の全ての各層の彩度に比べ、低透明層の全ての各層の彩度が高く
低透明層内の全ての層の彩度が、高透明層から順に高くなる歯科切削加工用レジン材料である。
このような設計の歯科切削加工用レジン材料より切削加工された歯科補綴装置は、切端部から歯頚部に向けて天然歯同様の透明性の変化と色調の変化を呈し、高い審美性を有するものとなる。
本発明は未硬化のペーストを層状に重ねて重合硬化させる、または各層ごとに重合硬化させることにより製造する歯科切削加工用レジン材料の製造方法において、それぞれの層の線収縮率の差が1.0%以下及び/又はそれぞれの層の重合発熱量の差が50J/g以下であることを特徴とする歯科切削加工用レジン材料の製造方法である。
本発明の歯科切削加工用レジン材料は、CAD/CAM技術による補綴装置を作製する為の材料であり、予めブロック状に成形して用いる。ブロック状とは、直方体形状、略円柱形状のディスク形状に成形して用いられることが多い。
本発明の歯科切削加工用レジン材料は、高透明層と低透明層を有する。高透明層と低透明層の界面に対する垂直方向の長さは10~20mmであることが多い。歯冠長方向に対応している。
低透明層は複数の層から構成されていることが好ましい。高透明層は複数の層で構成されていることが好ましい。
高透明層と低透明層は重合性単量体を5重量%以上40重量%未満、充填材を60重量%以上95重量%未満含有する。重合性単量体を10重量%以上30重量%未満、充填材を70重量%以上90重量%未満含有することが好ましい。
高透明層と低透明層の厚さの比が1:1.2~3.5である。このことにより、口腔内に装着した際に支台歯の色調に大きな影響を受けることがなくなる。
これらの高透明層及び低透明層の中に含まれる層は彩度が異なれば別の層である。
高透明層は単数もしくは複数の層から構成される。好ましくは1-3層であり、更に好ましくは1層である。高透明層の内部に有するそれぞれ隣り合う層は彩度が異なる。更に、高透明層の内部に有する全ての層は彩度が異なることが好ましい。
低透明層は少なくとも2つ以上の層から構成される。好ましくは2-4層であり、更に好ましくは2層である。低透明層の内部に有するそれぞれ隣り合う層は彩度が異なる。更に、低透明層の内部に有する全ての層は彩度が異なることが好ましい。
高透明層のいずれの各層のコントラスト比と、低透明層のいずれの各層のコントラスト比の差が、0.02~0.05であり、好ましくは0.03~0.04である。
低透明層内の全ての層のコントラスト比の差が、0.00~0.02未満である。
高透明層の全ての各層の彩度に比べ、低透明層の全ての各層の彩度が高い。
本発明の歯科切削加工用レジン材料の製造方法は、重合性単量体と充填材に色彩を調整する着色材を混合してペーストを作製し、ペーストを層状に重ねて型中で重合硬化させることが多い。
また、歯科切削加工用レジン材料において、それぞれの層の線収縮率の差が1.0%以下及び/又はそれぞれの層の重合発熱量の差が50J/g以下であることが好ましい。更にそれぞれの層の線収縮率の差が1.0%以下及びそれぞれの層の重合発熱量の差が50J/g以下であることが好ましい。
本発明の歯科切削加工用レジン材料に用いることができるそれら成分について記述する。
重合性単量体には、一般的に歯科用材料に用いられている公知の重合性単量体が、特に制限なく使用できる。具体的には、一般的にラジカル重合性の単量体が挙げられる。単官能の重合性単量体として、例えば、メチル(メタ)アクリレ-ト、エチル(メタ)アクリレ-ト、ノルマルブチル(メタ)アクリレ-ト、イソブチル(メタ)アクリレ-ト、tert-ブチル(メタ)アクリレ-ト、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレ-ト、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコ-ルアセトアセテ-ト(メタ)アクリレ-ト、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β-(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、β-(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンサクシネート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレン(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)-N-フェニルグリシン、N-(メタ)アクリロイルグリシン、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、(メタ)アクリルアルデヒドエチルアセタール等のビニルエーテル;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のアルケニルベンゼン;アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;(メタ)アクリルアルデヒド、3-シアノ(メタ)アクリルアルデヒド等の(メタ)アクリルアルデヒド;(メタ)アクリルアミド、N-スクシン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸等の(メタ)アクリル酸もしくはそれらの金属塩;アシッドホスホエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル燐酸等の燐酸エステル基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩;アリルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、tert-ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩が挙げられる。
また、二官能の重合性単量体としては、例えば、エチレンジオ-ル、プロピレンジオ-ル、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、エイコサンジオール等のジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニル単量体とヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフオロンジイソシアネート、メチルビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導されるウレタン系重合性単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニル単量体とジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族含有ジイソシアネート化合物との付加物から誘導される芳香族環とウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体;2,2-ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(3-(メタ)アクリロキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシイソプロポキシフェニル)プロパン等の芳香族環とエーテル結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体、ビスフェノ-ルAもしくは水添ビスフェノ-ルAとグリシジル(メタ)アクリレ-トの1:2反応物、例えば、ビスフェノ-ルAジグリシジルエ-テル(メタ)アクリル酸付加物等のビスフェノ-ルAもしくは水添ビスフェノ-ルAとエポキシ基を持つ(メタ)アクリレ-トの1:2付加物等が挙げられる。
また、重合性官能基を3個以上有する多官能の重合性単量体の例としては、
トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ホスファゼン骨格を持つトリ(メタ)アクリレ-ト、イソシアヌル酸骨格を持つトリ(メタ)アクリレ-ト、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、またジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフオロンジイソシアネート、メチルビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物とグリシドールジ(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニルモノマーから誘導されるウレタン系重合性単量体、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートのようなエチレン性不飽和基を5個以上有する重合性単量体、ポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレートを含む重合性多官能アクリレート;フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー及びペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどのウレタン結合を有する重合性多官能アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本発明では、前述した重合性単量体を単独、もしくは2種以上を混合して配合することができる。2種以上の重合性単量体を混合することで、重合性単量体の屈折率や物性を調整することができる。重合性単量体の配合量は、重合性単量体と充填材の合計量に対して5重量%以上40重量%未満であることが好ましい。さらに好ましくは10重量%以上30重量%未満である。重合性単量体の配合量が少なすぎると、充填材との混合によるペーストの作製が困難となることがある。
充填材は、無機充填材、有機充填材、有機質複合充填材の内1つ以上から選ばれる。充填材は無機充填材であることが好ましい。
無機充填材には、歯科用材料に用いられている公知の無機充填材が特に制限なく使用できる。具体的には、カオリン、タルク、石英、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミノシリケート、窒化珪素、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、種々のガラス類(フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムやジルコニウムを含むガラス、ガラスセラミックス、フルオロアルミノシリケートガラス、ゾルゲル法による合成ガラスなど)、ジルコニア、ジルコニウムシリケート、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。無機充填材の形状、粒度分布及び平均粒径等に特に制限ない。しかしながら、一般的な無機充填材を配合した歯科用レジン材料と同様に、材料強度を上げつつ、材料の表面滑沢性を両立させる必要がある。このため、平均粒径は1nm以上~50μm以下、好ましくは3nm以上~30μm 以下、更に好ましくは5nm以上~10μm以下であることが望ましい。
有機充填材としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
また、有機質複合充填材として、無機充填材の表面を重合性単量体で重合被覆した後に適当な粒子径に粉砕したもの、あるいは、予め重合性単量体に無機充填材を混合配合させておいた後に重合・粉砕して得られる粒子等が挙げられる。有機充填材又は有機質複合充填材の配合率が60重量%未満の場合は、材料を長期的に安定して機能させることが難しい。
充填材中に有機充填材及びまたは有機質複合充填材60重量%以上95重量%未満配合することが好ましい。
有機充填材又は有機質複合充填材の平均粒径は1nm以上~50μm以下であることが好ましい。
本発明に用いる無機充填材には、表面処理材によって表面処理が施されていることが好ましい。表面処理材の例としては、シラン化合物、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
表面処理剤は、無機充填材100重量部に対して、1~30重量部配合し、表面処理することが好ましい。
本発明による材料を切削加工して得た補綴装置は、重合性単量体と無機充填材を配合することによって口腔内にて2年以上において、補綴装置として機能することができる。このため、口腔内特有の高温高湿度下での耐久性が要求され、これを達成するために一定量以上の無機充填材にて強化する必要がある。無機充填材の配合率が60重量%未満の場合は、材料を長期的に安定して機能させることが難しい。本発明の材料は、充填材を60重量%以上95重量%未満、好ましくは65重量%以上90重量%未満、さらに好ましくは70重量%以上85重量%未満配合させることが望ましい。
本発明の歯科切削加工用レジン材料に含まれる重合性単量体を重合するために重合触媒を配合することが好ましい。重合触媒には、歯科用材料に用いられている公知の重合触媒が制限なく使用される。例えば光重合触媒として、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、4,4’-ジメトキシベンジル、4,4’-ジメトキシベンジル、4,4’-オキシベンジル、4,4’-クロルベンジル、カンファーキノン、カンファーキノンカルボン酸、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチル、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸フェニルエステルなどが挙げられる。
また、例えば熱(化学)重合触媒として、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などが有効である。具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。
上述した重合触媒の配合量は、重合性単量体100重量部に対して、0.01~5重量部、より好ましくは0.05~3重量部、さらに好ましくは0.1~2重量部である。重合触媒の配合量が少なすぎる場合、重合性単量体の重合が不十分となることがある。一方、重合触媒の配合量が多すぎる場合は、重合時の停止反応が促進され結果として材料の強度低下を招くことがある。
また、前述した重合触媒と組み合わせて、公知の重合促進剤を含むことが好ましい。例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル安息香酸、N,N-ジエチル安息香酸、N,N-ジメチル安息香酸エチル、N,N-ジエチル安息香酸エチル、N,N-ジメチル安息香酸メチル、N,N-ジエチル安息香酸メチル、N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、p-ジメチルアミノフェネチルアルコ-ル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレ-ト、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレ-ト、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、N-エチルエタノ-ルアミン等が挙げられる。
重合促進剤の配合量は、重合性単量体100重量部に対して、0.001~1重量部、より好ましくは0.1以上0.5重量部以下である。
また本発明の歯科切削加工用レジン材料において、連鎖移動剤を配合することが好ましい。均一に重合硬化させることが期待できる。連鎖移動剤は、公知の化合物が制限無く使用することができる。具体的に例示すると、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタンなどのメルカプタン化合物、リモネン、ミルセン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、β-ピネン、α-ピネンなどのテルペノイド系化合物、α-メチルスチレンダマーなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤の中でもテルペノイド系化合物が特に好ましい。具体的にはα-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネンが特に好ましい。連鎖移動剤の配合量は、重合性単量体100重量部に対して、0.001~1重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下である。
本発明の歯科切削加工用レジン材料において、着色材を配合することが好ましい。容易に色彩を調整することができる。着色材は、歯科用材料に用いられている公知の着色材が制限なく使用される。着色材には、無機化合物系着色材及び有機化合物系着色材のいずれも使用可能である。
具体的な無機化合物系着色材は、●例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;亜鉛華、酸化チタン、酸化鉄赤(ベンガラ)、酸化鉄黒、酸化鉄黄、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料;パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等が挙げられる。
着色材には、不透明にする機能する不透明着色材を含む。特に白色の着色材は、各層の不透明度を調節するのに有用な不透明着色材である。不透明着色材とは、各層においてコントラスト比を調整することができる材料である。具体的には、酸化チタンである。
着色材は、重合性単量体と充填材の合計を100重量部に対して、0を超え、3重量部以内で含むことが好ましい。コントラスト比や彩度に合わせて、調整して配合することが好ましい。
本発明の歯科切削加工用レジン材料には、必要に応じて公知の各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては重合禁止剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などが挙げられる。
本発明の歯科切削加工用レジン材料における高透明層と低透明層の界面に対する垂直方向は、切削される歯冠の歯軸方向と一致する。歯冠の切端部は高透明層側であり、歯頚部は低透明層側となる。天然歯牙の層構造と一致していないが、略平行な高透明層と低透明層によって、天然歯に近い色調再現を得ることが課題となる。
本発明の歯科切削加工用レジン材料では、層構造を略平行な平面な層状態にすることにより、層の数が少ない場合であっても、各層の色調の移行がスムーズに見えることかつ口腔内に入れた際に支台歯の色による影響を極力少なくすることができる。具体的には各層のコントラスト比と彩度を詳細に規定して設計することにより、歯科切削加工用レジン材料として色調変化がスムーズに視覚できる技術である。本発明の高透明層の透明性と色調をエナメル色に適するように、低透明層の透明性と色調を象牙色に適するように設計することが好ましい。すべての層の彩度が高透明層側から低透明層側に移行するにつれて、順次彩度が高くなる様に構成することが好ましい。
本発明の歯科切削加工用レジン材料を用いて、高透明層側を切端側に、低透明層側を歯頚部側として設計・切削加工することで、比較的単純な層構造でありながら天然歯同様の色調をもち、口腔内に入れた際に支台歯の色の影響を受けにくい補綴装置が得られる。
本発明の歯科切削加工用レジン材料における高透明層及び低透明層の厚さを10―18mm以上と設定することが好ましい。成人の天然歯牙に適用させることを考えると、高透明層、低透明層のそれぞれの厚さは12―16mm以上に設定することが好ましいと考える。その結果、実臨床では、歯科切削加工用レジン材料より作製される様々な形態・大きさの歯冠補綴装置に適応することができる。
また、低透明層の内で、最も高透明層に近い層の層厚さは0.5―8mmであることが好ましい。その結果、高透明層の色調と低透明層の色調を移行的に変化する様に見せることができる。
低透明層と高透明層内の各層の厚さは、0.5―8mmであることが好ましい。
高透明層と、低透明層のコントラスト比の差が、0.02以上0.05以下の範囲にすることで天然歯同様の透明性の変化を示すことを見出した。更に好ましくは0.03以上0.04以下の範囲にすることで更に天然歯同様の透明性の変化を示すことを見出した。
高透明層内のいずれもの層と低透明層内のいずれもの層コントラスト比の差が0.02より小さいと、作製した歯科補綴装置のエナメル色の透明性が不足したように見え、審美性に劣るものとなる。高透明層内のいずれもの層と低透明層内のいずれもの層のコントラスト比の差が0.05より大きいと、高透明層と低透明層間の透明性、色調のギャップが大きすぎて自然感が無くなり、審美性に劣る。
また、低透明層中の全ての層のコントラスト比の差は、0.02より小さくすることにより、天然歯と同様の色調再現を可能にしている。この差が0.02より大きくなると、低透明層中の層の界面が明確になり審美性に劣る、支台歯の色調が反映されやすくなるなどの弊害が生じる。
重合性単量体と充填材を含有する歯科切削加工用レジン材料において、材料の透明性を調整する方法は、2つに大別される。
1つの方法は、重合性単量体と充填材の屈折率の差を調整することである。両者の屈折率の差が小さいと材料の透明性が上がり、逆に屈折率の差が大きくなると材料の透明性を下げることができる。
このため、層ごとに重合性単量体の種類や充填材の種類が異なることは、層ごとに重合する反応が異なることがあり、不具合が生じることがある。よって、各層が同様の重合反応を進めることが好ましい。
もう1つの方法は、白色着色材などの配合量を変える方法である。
高透明層と低透明層に含まれる重合性単量体と充填材の種類を同種のものとし、着色材の配合により各層の不透明度を変化させる方法は、各層の重合反応を均一に進行させることができるため、不具合の発生を軽減し好ましい。
いずれの方法でも、光重合により硬化させる場合は、各層ごとに重合、充填を繰り返して成形することが好ましい。
高透明層は単数もしくは複数の層から構成され、それぞれ隣り合う層と彩度が異なる。高透明層が複数の層から構成される場合は、高透明層内の全ての層の彩度が、低透明層から順に高くなることが好ましい。低透明層は少なくとも2つ以上の層から構成され、それぞれ隣り合う層と彩度が異なる。高透明層の全ての各層の彩度に比べ、低透明層の全ての各層の彩度が高いことが好ましい。低透明層内の全ての層の彩度が、高透明層から順に高くなることが好ましい。
高透明層の内の全ての層の色彩は、L*a*b*表色系の測定値より、L*値が74.0~85.0、a*値がー2.5~0.2、b*値が8.5~20.0であることが好ましい。
低透明層の内の全ての層の色彩は、L*a*b*表色系の測定値より、L*値が70.0~88.0、a*値がー2.5~0.2、b*値が8.0~25.0であることが好ましい。
本発明においては、高透明層はエナメル層の単層からなることが好ましく、低透明層はボディー層、サービカル層の2層からなることが好ましい。この彩度は、エナメル層が最も低く、サービカル層が最も高く、ボディー層はエナメル層とサービカル層の中間に位置する関係である。
エナメル層の色彩は、L*a*b*表色系の測定値より、L*値が74.0~85.0、a*値がー2.5~0.2、b*値が8.5~20.0であることが好ましい。
ボディー層の色彩は、L*a*b*表色系の測定値より、L*値が72.0~88.0、a*値がー2.5~0.2、b*値が8.0~25.0であることが好ましい。
サービカル層の色彩は、L*a*b*表色系の測定値より、L*値が70.0~83.0、a*値がー2.5~0.2、b*値が10.5~25.0であることが好ましい。
本発明の歯科切削加工用レジン材料より切削加工された歯科補綴装置を観察すると、高透明層内と低透明層内の各層のコントラスト比が異なることによりエナメル部分、象牙部分と認識することができ、各層の彩度に差をつけることで、より天然歯に近似した色調勾配を有する歯科補綴装置を得ることができた。
本発明の実施において、その製造方法は特に限定されない。
歯科切削加工用レジン材料の製造方法としては、重合性単量体、無機充填材、重合触媒、着色材等を混合したペーストを準備する。ペーストは、着色材によって、コントラスト比と彩度を、エナメル層などの高透明層、ボディー層やサービカル層などの低透明層に最適に調整した各ペーストとしている。
一つ目の型への充填と重合にかかる製造方法は、1つの層を型に充填し、重合後に次の層を型に充填し重合する充填毎重合製造方法がある。充填毎重合製造方法の場合は、各層の構造を設計した型を複数組用意する。
2つ目の型への充填と重合にかかる製造方法は、異なる色調に着色された各層のペーストを順次型に充填し、その後まとめて重合するまとめ重合製造方法がある。まとめ重合製造方法の場合は、歯科切削加工用レジン材料の形状を設計した型を用意することになる。

充填毎重合製造方法やまとめ重合製造方法のいずれの製造方法であっても、光重合により重合硬化させる場合は、型を樹脂製やシリコン製の光透過性を持つ素材にする必要がある。

歯科切削加工用レジン材料を生産する場合、各層を構成する各ペーストの重合時における線収縮率の差は、0.0~1.0%であることが好ましい。更に好ましくは0.0~0.6%以下である。特に隣り合う層のペーストは0.0~0.6%以下である。
各層を構成するペーストが均等に重合反応即ち重合収縮を進めることが理想となる。歯科切削加工用レジン材料の構成要素の重合性単量体として、多くの場合ラジカル重合性の重合性単量体を使用するが、これらの重合性単量体は重合時に数%から20%程度の重合収縮を伴う。仮に、各層に用いる重合性単量体の種類の違いや、各層の充填材配合量が異なると、各層の重合収縮率が異なってくる。各層の重合収縮率が大きく異なると、重合硬化後の層間にひずみが生じる。ひずみが大きいと製造途中において歯科切削加工用レジン材料が破壊する。また、歯科切削加工用レジン材料が製造できた場合でも歯科切削加工用レジン材料の内部に残留応力が生じているため耐久性を低下させる。よって、各層の重合収縮率は極力合わせる必要がある。前記、線収縮率の範囲とすることで、ひずみを緩和し破壊を軽減することができる。
各層を構成する各ペーストの重合発熱量の差は、0~50J/gであることが好ましい。更に好ましくは、0~10J/gである。歯科切削加工用レジン材料内部に残留応力を発生させないという観点では、重合反応に伴う重合発熱量も大きな要素となる。重合発熱量は、材料の重合率、材料の熱膨張や熱収縮などに影響する。仮に、各層で重合発熱量が異なった場合、各層の重合率が異なる結果となり層間で重合時ひずみが発生する。また製造後の歯科切削加工用レジン材料に外部応力が加わったときも、各層で重合率が異なることより層間でひずみ応力が発生する。更に、重合反応時には歯科切削加工用レジン材料が重合により高温となるが、反応終了後には冷却される。このとき歯科切削加工用レジン材料の熱収縮を伴うが、各層の重合発熱量が異なると当然熱収縮量が異なってくる。すなわち、層間にひずみを発生させる要因となる。従って、各層を構成する成分の重合発熱量を極力合わせる必要がある。前記、重合発熱量の範囲とすることで、ひずみを緩和し破壊を軽減することができる。
(コントラスト比の測定)
透明性を表すコントラスト比は歯科切削加工用レジン材料の各層ごとに厚さ1mmに切削研磨した試験片を白バック上と黒バック上でXYZ表色系により測色し、白バック上で測色したY値をYw、黒バック上で測色したY値をYbとしたとき、以下の式から算出される。
Figure 2022078396000001
(彩度の測定)
彩度は、歯科切削加工用レジン材料の各層ごとに厚さ1mmに切削研磨した試験片を白バック上でL*a*b*表色系により測色したときのa*値、b*値で示され、下記式で算出される。
Figure 2022078396000002
(線収縮率)
実施例の各層に使用する未硬化のペーストを14.5×14.5×18mmのブロック体作製用金型に充填し、重合硬化させた。14.5mm辺の金型寸法と、重合硬化後のブロック体の14.5mm辺の寸法を正確に測定し、(金型寸法-ブロック体寸法)/金型寸法×100により、ペーストの線収縮率を求めた。
(重合発熱量)
実施例の各層に使用する未硬化のペーストを示差走査熱量計(DSC)にて分析し、重合発熱量を測定した。
(補綴装置の色調評価)
成形したブロック体を歯科用CAD/CAM切削加工機DWX-51D(ローランド)により切削加工し、上顎右側中切歯クラウンを作製した。作製したクラウンを10人が目視観察し、歯科補綴装置としての色調再現性(エナメル色、象牙色の表現性)及び層の境界線ついての評価を行った。評価は、目視観察者10人中、9人以上の場合を「◎:優れた色調再現性」、8人または7人の場合を「○:色調再現性良好」、6人以下の場合を「×:色調再現性不良」、で表した。
(支台歯の影響確認評価)
色調評価で作製したクラウンに対し、松風ダイカラーワックスA2(松風)を用いて支台歯模型を2本作製した。作製したワックス支台歯模型の内1本にナイスフィット 金パラシルバーカラー(松風)で着色し金属支台歯色を再現した。作製した2本の支台歯模型にクラウンをはめて目視観察し、支台歯色の影響の評価を行った。評価は、◎:支台歯色の影響がほとんどない、○:支台歯色の影響が少ない、×:支台歯色の影響が大きい、で表した。
(ブロック体成型時の割れ、クラック評価)
成型したブロック体の外観を目視により確認し、割れ及びクラックの評価を行った。評価は、◎:割れ、クラックが無い、○:クラックの発生割合が5%未満、×:クラックの発生割合が5%以上で表した。なお、表中に示すように、5%以上の割合での割れ、クラックの発生は、いずれの実施例・比較例においても確認されなかった。
(ペーストP-1~8、10の作製)
1,6-ビスメタクリルエチルカルボニルアミノ(2,2,4-)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.3重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液40重量部に対して、シリカ充填材とジルコニウムシリケート充填材の1対1の混合充填材60重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材をコントラスト比と彩度に合わせて各微量(重合性単量体混合液と混合充填材との混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペーストを作製した。なお、各着色材の配合量を変化させることにより、所望の透明性と色調を有するペースト9種(P-1~8、10)を作製した。
(ペーストP-9、12の作製)
1,6-ビスメタクリルエチルカルボニルアミノ(2,2,4-)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.1重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液を20重量部に対して、シリカ充填材とジルコニウムシリケート充填材の1対1の混合充填材80重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材をコントラスト比と彩度に合わせて各微量(重合性単量体混合液と混合充填材との混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペーストを作製した。なお、各着色材の配合量を変化させることにより、所望の透明性と色調を有するペースト3種(P-9、12)を作製した。
(ペーストP-11の作製)
1,6-ビスメタクリルエチルカルボニルアミノ(2,2,4-)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.05重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液40重量部に対して、シリカ充填材とジルコニウムシリケート充填材の1対1の混合充填材60重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材をコントラスト比と彩度に合わせて各微量(重合性単量体混合液と混合充填材との混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペースト(P-11)を作製した。
(実施例1~6、9、10、比較例1~5)
14.5×14.5×18mmのブロック体作製用金型に、サービカル層用のペーストを14.5mm辺の高さに対し4.8mmの高さまで充填した。続けてその上にボディー用のペーストを充填した(ボディー層の高さ4.9mm)。さらにその上にエナメル層用のペーストを充填した(エナメル層の高さ4.8mm)。金型を100℃に加熱し、歯科切削加工用レジン材料を得た。コントラスト比と彩度を変化させたペーストを使用し、実施例1~6、9、10及び比較例1~5を作製した。なお表1には使用したペーストのペースト番号を、実際に作製された層厚さ、測定した彩度及びコントラスト比とともに記載している。
(実施例7、比較例6)
14.5×14.5×18mmのブロック体作製用金型に、サービカル層用ペーストを14.5mm辺の高さに対し5.6mmの高さまで充填した。続けてその上にボディー層用ペーストを充填した(ボディー層の高さ5.7mm)。さらにその上にエナメル層用ペーストを充填した(エナメル層の高さ3.2mm)。金型を100℃に加熱し、歯科切削加工用レジン材料を得た。コントラスト比と彩度を変化させたペーストを使用し、実施例7及び比較例6を作製した。なお表1には使用したペーストのペースト番号を、実際に作製された層厚さ、測定した彩度及びコントラスト比とともに記載している。
(実施例8、比較例7)
14.5×14.5×18mmのブロック体作製用金型に、サービカル層用のペーストを14.5mm辺の高さに対し3.9mmの高さまで充填した。続けてその上にボディー層用のペーストを充填した(ボディー層の高さ4.0mm)。さらにその上にエナメル層用のペーストを充填した(エナメル層の高さ6.6mm)。金型を100℃に加熱し、歯科切削加工用レジン材料を得た。コントラスト比と彩度を変化させたペーストを使用し、実施例8及び比較例7を作製した。なお表1には使用したペーストのペースト番号を、実際に作製された層厚さ、測定した彩度及びコントラスト比とともに記載している。

Figure 2022078396000003
Figure 2022078396000004

すべての実施例において、成型した歯科切削加工用レジン材料に割れやクラックがなく、また削り出した歯科用補綴装置は各層の色調が移行的であり層の境界線が確認されず天然歯に類似した透明性及び色調を有し、また支台歯色の影響が少ないものであった。
一方で、比較例1では、低透明層のボディー層とサービカル層のコントラスト比の差が大きくまた彩度がボディー層がサービカル層に比べて大きいため、補綴装置を作製した際、ボディー層とサービカル層の境界線が目立つまた低透明層群の色調に違和感があるものであった。
比較例2では、高透明層のエナメル層のコントラスト比が低透明層群のコントラスト比と差がほとんどないため、補綴装置切端部に透明性がなく審美性に欠けるものであった。
比較例3では、高透明層群のエナメル層と低透明層とのコントラスト比に差が大きくまた低透明層のボディー層とサービカル層に同じペーストを使用したため、高透明層群と低透明層群の境界線が目立ちまた低透明層群に色調移行性がなく補綴装置の審美性に欠けるものであった。
比較例4では、低透明層のボディー層とサービカル層のコントラスト比に差が大きく、各層の彩度の関係がエナメル層の彩度に比べボディー層の彩度が低く、ボディー層の彩度に比べサービカル層の彩度が低いため、ボディー層とサービカル層の境界線が目立ちまた補綴装置の色調に違和感がありそして支台歯色の影響を大きく受けるものであった。
比較例5では、重合発熱量または線収縮率に差が大きいペーストを組み合わせて歯科切削加工用レジン材料を作製したため歯科切削加工用レジン材料の成形時に割れやクラックが発生した。しかし、歯科切削加工用レジン材料の成型数の内、割れやクラックが発生したものは全体の5%未満であった。
比較例6では高透明層群の割合が少なく低透明層群の割合が多い歯科切削加工用レジン材料、比較例7では高透明層群の割合が多く低透明層群の割合が少ない歯科切削加工用レジン材料を作製した。比較例6、比較例7で成形した歯科切削加工用レジン材料より削り出した補綴装置は、天然歯とは異なる層構造であったため審美性に劣るものであった。
以上の結果から、本発明の層構造を有する歯科切削加工用レジン材料から切削された歯科用補綴装置は、天然歯に類似した透明性及び色調を有し、また支台歯色の影響が少ないものであった。これは、高透明層と低透明層のコントラスト比を適切に規定し、かつ各層の彩度を設定したことが起因しているものと考えられる。
また、成型した歯科切削加工用レジン材料に割れやクラックの発生が極めて少なかったのは、使用するペーストの線収縮率、重合発熱量を適切に規定したことが起因しているものと考えられる。
よって、本発明の層構造を有する歯科切削加工用レジン材料は、従来の層構造を有する歯科切削加工用レジン材料の色調、支台歯色の影響、製造性を飛躍的に改善したものである。
本発明は、歯科用補綴装置(クラウン、ブリッジ)を作製するための、歯科切削加工用レジン材料に関するものであり、産業上利用するものである。


Claims (2)

  1. 高透明層と低透明層を有する歯科切削加工用レジン材料であって、
    各層は、重合性単量体を5重量%以上40重量%未満、と充填材を60重量%以上95重量%未満含有し、
    高透明層と低透明層の厚さの比が1:1.2~3.5であり、
    高透明層は単数もしくは複数の層から構成され、それぞれ隣り合う層と彩度が異なり、
    低透明層は少なくとも2つ以上の層から構成され、それぞれ隣り合う層と彩度が異なり、
    高透明層のいずれの各層のコントラスト比と、低透明層のいずれの各層のコントラスト比の差が、0.02~0.05であり、
    低透明層内の全ての層のコントラスト比の差が、0.00~0.02未満であり、
    高透明層の全ての各層の彩度に比べ、低透明層の全ての各層の彩度が高く
    低透明層内の全ての層の彩度が、高透明層から順に高くなる歯科切削加工用レジン材料。
  2. 請求項1記載の歯科切削加工用レジン材料の製造方法であって、
    未硬化のペーストを層状に重ねて重合硬化させる、または各層ごとに重合硬化させることにより製造する歯科切削加工用レジン材料の製造方法において、
    それぞれの層の線収縮率の差が1.0%以下及び/又は
    それぞれの層の重合発熱量の差が50J/g以下であることを特徴とする歯科切削加工用レジン材料の製造方法。


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