図1乃至図8を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから適宜変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1は、本実施の形態による袋10を示す正面図である。袋10は、内容物を収容する収容部17を備える。なお、図1においては、内容物が収容される前の状態の袋10が示されている。本実施の形態による袋10は、電子レンジによって内容物が加熱される電子レンジ用パウチとして好適に使用することができるよう構成されている。
図1に示すように、本実施の形態による袋10は、袋10に収容された内容物を加熱する際に発生する蒸気を外部に逃がすための蒸気抜き機構20を備える。蒸気抜き機構20は、蒸気の圧力が所定値以上になったときに袋10の内部と外部とを連通させて蒸気を逃がすとともに、蒸気抜き機構20以外の箇所から蒸気が抜けることを抑制するよう、構成されている。以下、袋10の構成について説明する。
袋
本実施の形態において、袋10は、自立可能に構成されたガセット式の袋である。袋10は、上部11、下部12及び一対の側部13を含み、正面図において略矩形状の輪郭を有する。なお、「上部」、「下部」及び「側部」などの名称、並びに、「上方」、「下方」などの用語は、ガセット部を下にして袋10が自立している状態を基準として袋10やその構成要素の位置や方向を相対的に表したものに過ぎない。袋10の輸送時や使用時の姿勢などは、本明細書における名称や用語によっては限定されない。
本実施の形態においては、袋10の幅方向を、第1方向D1とも称する。上述の一対の側部13は、第1方向D1において対向している。また、第1方向D1に直交する方向を、第2方向D2とも称する。本実施の形態の袋10においては、電子レンジによって袋10の内容物を加熱した後、第1方向D1に沿って消費者が袋10を引き裂くことにより袋10を開封する、という使用形態が想定されている。
図1に示すように、袋10は、表面を構成する表面フィルム14、裏面を構成する裏面フィルム15、及び、下部12を構成する下部フィルム16を備える。下部フィルム16は、折り返し部16fで折り返された状態で、表面フィルム14と裏面フィルム15との間に配置されている。
なお、上述の「表面フィルム」、「裏面フィルム」及び「下部フィルム」という用語は、位置関係に応じて各フィルムを区画したものに過ぎず、袋10を製造する際のフィルムの提供方法が、上述の用語によって限定されることはない。例えば、袋10は、表面フィルム14と裏面フィルム15と下部フィルム16が連設された1枚のフィルムを用いて製造されてもよく、表面フィルム14と下部フィルム16が連設された1枚のフィルムと1枚の裏面フィルム15の計2枚のフィルムを用いて製造されてもよく、1枚の表面フィルム14と1枚の裏面フィルム15と1枚の下部フィルム16の計3枚のフィルムを用いて製造されてもよい。
表面フィルム14、裏面フィルム15及び下部フィルム16は、内面同士がシール部によって接合されている。図1などの袋10の平面図においては、シール部にハッチングが施されている。
図1に示すように、シール部は、袋10の外縁に沿って延びる外縁シール部と、蒸気抜き機構20を構成する蒸気抜きシール部20aと、を有する。外縁シール部は、下部12に広がる下部シール部12a、及び、一対の側部13に沿って延びる一対の側部シール部13aを含む。なお、内容物が収容される前の状態の袋10においては、図1に示すように、袋10の上部11は開口部11bになっている。袋10に内容物を収容した後、表面フィルム14の内面と裏面フィルム15の内面とを上部11において接合することにより、上部シール部が形成されて袋10が封止される。
側部シール部13a、蒸気抜きシール部20a及び上部シール部は、表面フィルム14の内面と裏面フィルム15の内面とを接合することによって構成されるシール部である。
一方、下部シール部12aは、表面フィルム14の内面と下部フィルム16の内面とを接合することによって構成されるシール部、及び、裏面フィルム15の内面と下部フィルム16の内面とを接合することによって構成されるシール部を含む。
対向するフィルム同士を接合して袋10を封止することができる限りにおいて、シール部を形成するための方法が特に限られることはない。例えば、加熱などによってフィルムの内面を溶融させ、内面同士を溶着させることによって、すなわちヒートシールによって、シール部を形成してもよい。若しくは、接着剤などを用いて対向するフィルムの内面同士を接着することによって、シール部を形成してもよい。
蒸気抜き機構
以下、蒸気抜き機構20の構成について説明する。図2は、図1に示す袋10の蒸気抜き機構20をII-II線に沿って見た場合を示す断面図である。
蒸気抜き機構20の蒸気抜きシール部20aは、収容部17の圧力の増加に伴って剥離され易い形状を有している。例えば、蒸気抜きシール部20aは、側部シール部13aから袋10の内側に向かって突出した形状を有している。これにより、収容部17の圧力が増加した際に蒸気抜きシール部20aに加わる力を、側部シール部13aに加わる力よりも大きくすることができる。また、蒸気抜きシール部20aの幅は、側部シール部13aの幅よりも小さくなっている。また、図1及び図2に示すように、蒸気抜きシール部20aと側部13の外縁との間には、蒸気抜きシール部20aによって収容部17から隔離された非シール部20bが形成されている。
袋10の内容物を加熱する際、内容物に含まれる水分が蒸発して収容部17の圧力が増加すると、袋10は、収容部17の中心点Cを中心として膨らんでいく。この場合、側部シール部13aや蒸気抜きシール部20aなどのシール部には、中心点Cからシール部に向かう方向の力が加わる。シール部の各位置に加わる力は、中心点Cとの間の距離が小さいほど大きくなる。上述の蒸気抜きシール部20aは、側部シール部13aから収容部17側に向かって突出しており、このため、蒸気抜きシール部20aに加わる力は、側部シール部13aに加わる力よりも大きい。従って、側部シール部13aに比べて蒸気抜きシール部20aにおいて、シール部の剥離に起因する収容部17と外部との連通を生じ易くすることができる。
図1及び図2に示す例において、蒸気抜き機構20の非シール部20bは、袋10の側縁に至るよう広がっている。従って、袋10の側縁のうち非シール部20bと重なる部分が開口している。この場合、蒸気抜きシール部20aの剥離部分を通って収容部17から非シール部20bに流入した蒸気が、袋10の側縁の開口部20pを通って袋10の外部へスムーズに抜けることができる。以下の説明において、図1及び図2や後述する図4に示すような、蒸気抜き機構20の非シール部20bが袋10の側縁などの外縁に至るよう広がっているタイプの袋のことを、タイプ1の袋とも称する。
ところで、電子レンジなどを利用して袋10の内容物を加熱する際、内容物の一部が飛び跳ねて、袋10を構成する積層体の内面に到達することがある。積層体の内面に付着した内容物が水分を含んでいる場合、積層体の内面に付着した内容物が電子レンジによって更に加熱される。この場合、内容物に接している積層体の温度も上昇し、積層体に穴があいたり積層体にシワが形成されたりすることが考えられる。
このような課題を考慮し、本実施の形態においては、加熱されて高温になった袋10のシール部のシール強度が適度に低い値になるよう、シール部を構成している。例えば、100℃のときの袋10のシール部のシール強度(以下、熱間シール強度とも言う)が23N以下になるよう、シール部を構成している。この場合、電子レンジなどを利用して袋10の内容物を加熱する際、シール部の蒸気抜きシール部20aが、収容部17において発生した水蒸気の圧力から受ける力に基づいて剥離し易くなる。すなわち、より低い圧力で蒸気抜きシール部20aが剥離するようになる。これにより、袋10の内面に付着した内容物の温度が過剰に高くなるよりも前に、蒸気抜きシール部20aを剥離させて収容部17の蒸気を外部に放出し、収容部17の圧力及び温度を低下させることができる。このことにより、袋10の積層体に穴やシワなどのダメージが生じることを抑制することができる。以下の説明において、蒸気抜きシール部20aが剥離して収容部17が袋10の外部と連通する際の収容部17の圧力のことを、剥離圧力とも称する。
袋10のシール部の熱間シール強度が23N以下になるようにシール部を構成するための方法として、本実施の形態においては、低温時、例えば25℃のときの袋10のシール部のシール強度(以下、常温シール強度とも言う)を適切に管理する、という方法を採用する。本件発明者らが鋭意研究を重ねた結果、本実施の形態の袋10においては、常温シール強度が60N以下になるようにシール部を構成することにより、シール部の熱間シール強度を23N以下にすることができることを見出した。このような知見に基づき、本実施の形態においては、常温シール強度が60N以下になるようにシール部の構成条件を設定することにより、23N以下の熱間シール強度を有するシール部を備える袋10を製造することができる。このため、穴やシワなどのダメージが生じることが抑制された袋10を安定に提供することができる。
シール部の常温シール強度を決定する要因としては、積層体の内面に位置する後述するシーラントフィルムの機械特性や厚みなどを挙げることができる。また、ヒートシール処理によって蒸気抜きシール部20aなどのシール部を形成する場合、温度などのヒートシール処理の条件によっても、袋10のシール部のシール強度が変化し得る。また、ボイル処理やレトルト処理などの殺菌処理によっても、袋10のシール部のシール強度が変化し得る。本実施の形態においては、これらの要因を適切に調整及び考慮することにより、60N以下の常温シール強度を有するシール部を形成する。なお、袋10にボイル処理やレトルト処理などの処理が施される場合、特に断らない限り、袋10のシール部のシール強度とは、処理が施された後の袋10のシール部のシール強度を意味する。
なお、レトルト処理とは、内容物を袋10に充填して袋10を密封した後、蒸気又は加熱温水を利用して袋10を加圧状態で加熱する処理である。レトルト処理の温度は、例えば120℃以上である。ボイル処理とは、内容物を袋10に充填して袋10を密封した後、袋10を大気圧下で湯煎する処理である。ボイル処理の温度は、例えば90℃以上且つ100℃以下である。
また、蒸気抜きシール部20aの剥離圧力を決定する要因としては、蒸気抜きシール部20aの形状、寸法、熱間シール強度などを挙げることができる。蒸気抜きシール部20aの剥離圧力は、好ましくは133kPa以下であり、より好ましくは130kPa以下であり、更に好ましくは126kPa以下である。
なお、蒸気抜きシール部20aの剥離圧力が低すぎると、内容物が十分に加熱及び加圧されるよりも前に蒸気抜きシール部20aが剥離して収容部17の圧力及び温度が低下してしまうことが考えられる。この点を考慮すると、蒸気抜きシール部20aの剥離圧力は、好ましくは105kPa以上であり、より好ましくは110kPa以上である。
表面フィルム及び裏面フィルムの層構成
次に、表面フィルム14及び裏面フィルム15の層構成について説明する。図3は、表面フィルム14及び裏面フィルム15を構成する積層体30の層構成の一例を示す断面図である。
図3に示すように、積層体30は、第1プラスチックフィルム40、第1接着剤層45、第2プラスチックフィルム50、第2接着剤層55及びシーラントフィルム70をこの順で少なくとも備える。第1プラスチックフィルム40は、外面30y側に位置しており、シーラントフィルム70は、外面30yの反対側の内面30x側に位置している。内面30xは、収容部17側に位置する面である。
以下、積層体30の各層についてそれぞれ詳細に説明する。
(第1プラスチックフィルム)
第1プラスチックフィルム40は、例えば、所定の方向において延伸されている延伸プラスチックフィルムである。第1プラスチックフィルム40は、積層体30に所定の強度を持たせるための基材層として機能する。第1プラスチックフィルム40は、所定の一方向において延伸された一軸延伸フィルムであってもよく、所定の二方向において延伸された二軸延伸フィルムであってもよい。第1プラスチックフィルム40の延伸方向は特には限定されない。例えば、第1プラスチックフィルム40は、側部13が延びる方向において延伸されていてもよく、側部13が延びる方向に直交する方向において延伸されていてもよい。第1プラスチックフィルム40の延伸倍率は、例えば1.05倍以上である。
第1プラスチックフィルム40は、例えば、ポリエステルを主成分として含む。例えば、第1プラスチックフィルム40は、51質量%以上のポリエステルを含む。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとも記す)などを挙げることができる。なお、第1プラスチックフィルム40における、51質量%以上のポリエステルは、一種類のポリエステルによって構成されていてもよく、二種類以上のポリエステルによって構成されていてもよい。
第1プラスチックフィルム40がポリエステルを主成分として含む場合、第1プラスチックフィルム40の厚みは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。また、第1プラスチックフィルム40がポリエステルを主成分として含む場合、第1プラスチックフィルム40の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。第1プラスチックフィルム40の厚みを9μm以上にすることにより、第1プラスチックフィルム40が十分な強度を有するようになる。また、第1プラスチックフィルム40の厚みを25μm以下にすることにより、第1プラスチックフィルム40が優れた成形性を示すようになる。このため、積層体30を加工して袋10を製造する工程を効率的に実施することができる。
第1プラスチックフィルム40は、ポリアミドを主成分として含んでいてもよい。例えば、第1プラスチックフィルム40は、51質量%以上のポリアミドを含む。ポリアミド系の例としては、脂肪族ポリアミドまたは芳香族ポリアミドが挙げられる。脂肪族ポリアミドとてしてはナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体などのナイロンが挙げられ、芳香族ポリアミドとしては、ポリメタキシレンアジパミド(MXD6)などが挙げられる。第1プラスチックフィルム40がポリアミドを主成分として含むことにより、第1プラスチックフィルム40を備える積層体30の突き刺し強度を高めることができる。
第1プラスチックフィルム40がポリアミドを主成分として含む場合、第1プラスチックフィルム40の厚みは、好ましくは12μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。また、第1プラスチックフィルム40がポリアミドを主成分として含む場合、第1プラスチックフィルム40の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
第1プラスチックフィルム40は、単一の層によって構成されていてもよく、複数の層によって構成されていてもよい。第1プラスチックフィルム40が複数の層を含む場合、第1プラスチックフィルム40は、例えば、共押し出しによって作製された共押しフィルムである。共押し出しによって作製された第1プラスチックフィルム40は、例えば、順に積層された、PETなどのポリエステルからなる第1層、ナイロンなどのポリアミドからなる第2層、およびPETなどのポリエステルからなる第3層を含む。なお、ナイロンなどのポリアミドからなる第2層の質量が、第1プラスチックフィルム40全体の質量の51%以上である場合、共押し出しによって作製された第1プラスチックフィルム40の主成分はポリアミドであると言える。
(第1接着剤層)
第1接着剤層45は、第1プラスチックフィルム40と第2プラスチックフィルム50とをドライラミネート法により接着するための接着剤を含む。第1接着剤層45を構成する接着剤は、主剤及び溶剤を含む第1組成物と、硬化剤及び溶剤を含む第2組成物とを混合して作製した接着剤組成物から生成される。具体的には、接着剤は、接着剤組成物中の主剤と溶剤とが反応して生成された硬化物を含む。
接着剤の例としては、ポリウレタンなどを挙げることができる。ポリウレタンは、主剤としてのポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。ポリウレタンの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンなどを挙げることができる。ポリエーテルポリウレタンは、主剤としてのポリエーテルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。ポリエステルポリウレタンは、主剤としてのポリエステルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族系イソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂肪族系イソシアネート化合物、あるいは、上記各種イソシアネート化合物の付加体または多量体を用いることができる。
第1接着剤層45の厚みは、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは3μm以上である。また、第1接着剤層45の厚みは、好ましくは6μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。
(第2プラスチックフィルム)
第2プラスチックフィルム50は、例えば、第1プラスチックフィルム40と同様に、所定の方向において延伸されているプラスチックフィルムである。第2プラスチックフィルム50も、第1プラスチックフィルム40と同様に、積層体30に所定の強度を持たせるための基材層として機能する。第2プラスチックフィルム50の延伸方向も、第1プラスチックフィルム40の場合と同様に特には限定されない。
第2プラスチックフィルム50は、第1プラスチックフィルム40と同様に、ポリエステル又はポリアミドを主成分として含む。なお、積層体30に耐熱性を持たせるためには、第1プラスチックフィルム40及び第2プラスチックフィルム50のうちの少なくとも一方が、ポリエステルを主成分として含むことが好ましい。従って、第1プラスチックフィルム40がポリアミドを主成分として含む場合、第2プラスチックフィルム50は、ポリエステルを主成分として含む。第1プラスチックフィルム40がポリエステルを主成分として含む場合、第2プラスチックフィルム50は、ポリエステルを主成分として含んでいてもよく、ポリアミドを主成分として含んでいてもよい。
第2プラスチックフィルム50がポリエステルを主成分として含む場合、例えば、51質量%以上のポリエステルを含む場合、ポリエステルの例としては、第1プラスチックフィルム40の場合と同様に、PET、PBTなどを挙げることができる。第2プラスチックフィルム50の厚みは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。また、第2プラスチックフィルム50がポリエステルを主成分として含む場合、第2プラスチックフィルム50の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。第2プラスチックフィルム50がポリエステルを主成分として含む場合の、第2プラスチックフィルム50熱伝導率、融点などは、ポリエステルを主成分として含む第1プラスチックフィルム40の場合と同様である。
第2プラスチックフィルム50がポリアミドを主成分として含む場合、例えば、51質量%以上のポリアミドを含む場合、ポリアミドの例としては、第1プラスチックフィルム40の場合と同様に、脂肪族ポリアミドまたは芳香族ポリアミドを挙げることができる。
第2プラスチックフィルム50の厚みは、好ましくは12μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。また、第2プラスチックフィルム50がポリアミドを主成分として含む場合、第2プラスチックフィルム50の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
(第2接着剤層)
第2接着剤層55は、第2プラスチックフィルム50とシーラントフィルム70とをドライラミネート法により接着するための接着剤を含む。第2接着剤層55の接着剤の例としては、第1接着剤層45の場合と同様に、ポリウレタンなどを挙げることができる。以下に説明する構成、材料や特性以外にも、第2接着剤層55の構成、材料や特性として、第1接着剤層45と同様のものを採用することができる。
第2接着剤層55の厚みは、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは3μm以上である。また、第2接着剤層55の厚みは、好ましくは6μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。
ところで、接着剤の硬化剤を構成するイソシアネート化合物としては、上述のように、芳香族系イソシアネート化合物及び脂肪族系イソシアネート化合物が存在する。このうち芳香族系イソシアネート化合物は、加熱殺菌などの高温環境下において、食品用途で使用できない成分が溶出する。ところで、第2接着剤層55は、シーラントフィルム70に接している。このため、第2接着剤層55が芳香族系イソシアネート化合物を含む場合、芳香族系イソシアネート化合物から溶出された成分が、シーラントフィルム70に接する収容部17に収容されている内容物に付着することがある。
このような課題を考慮し、好ましくは、第2接着剤層55を構成する接着剤として、主剤としてのポリオールと、硬化剤としての脂肪族系イソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物を用いる。これにより、第2接着剤層55に起因する、食品用途で使用できない成分が、内容物に付着することを防止することができる。
(シーラントフィルム)
次に、シーラントフィルム70について説明する。シーラントフィルム70を構成する材料としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンから選択される1種または2種以上の樹脂を用いることができる。シーラントフィルム70は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、シーラントフィルム70は、好ましくは未延伸のフィルムからなる。なお「未延伸」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
積層体30から構成された袋10には、ボイル処理やレトルト処理などの殺菌処理が高温で施される。従って、シーラントフィルム70は、これらの高温での処理に耐える耐熱性を有するものが用いられる。
シーラントフィルム70を構成する材料の融点は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。シーラントフィルム70の融点を高くすることにより、袋10のレトルト処理を高温で実施することが可能になり、このため、レトルト処理に要する時間を短くすることができる。なお、シーラントフィルム70を構成する材料の融点は、プラスチックフィルム40,50を構成する樹脂の融点より低い。
レトルト処理の観点で考える場合、シーラントフィルム70を構成する材料として、プロピレンを主成分とする材料を用いることができる。ここで、「プロピレンを主成分とする材料」とは、プロピレンの含有率が90質量%以上である材料を意味する。プロピレンを主成分とする材料としては、具体的には、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、ホモポリプロピレンなどのポリプロピレン、又はポリプロピレンとポリエチレンとを混合したものなどを挙げることができる。ここで、「プロピレン・エチレンブロック共重合体」とは、下記の式(I)に示される構造式を有する材料を意味する。また、「プロピレン・エチレンランダム共重合体」とは、下記の式(II)に示される構造式を有する材料を意味する。また、「ホモポリプロピレン」とは、下記の式(III)に示される構造式を有する材料を意味する。
プロピレンを主成分とする材料として、ポリプロピレンとポリエチレンとを混合したものを用いる場合には、材料は、海島構造を有していてもよい。ここで、「海島構造」とは、ポリプロピレンが連続する領域の内に、ポリエチレンが不連続に分散している構造をいう。
ボイル処理の観点で考える場合、シーラントフィルム70を構成する材料の例として、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの組み合わせなどを挙げることができる。ポリエチレンとしては、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はこれらの組み合わせなどを挙げることができる。例えば、上述のレトルト処理の観点からシーラントフィルム70を構成する材料として挙げた材料を用いることも可能である。シーラントフィルム70を構成する材料は、例えば100℃以上、より好ましくは105℃以上、更に好ましくは110℃以上の融点を有する。シーラントフィルム70を構成する材料としてポリエチレンを用いる場合、100℃以上の融点は、例えば、ポリエチレンの密度が0.920g/cm3以上である場合に実現され得る。また、100℃以上の融点を有するシーラントフィルム70の具体例としては、三井化学東セロ製TUX-HC、東洋紡製L6101、出光ユニテック製LS700C等を挙げることができる。105℃以上の融点を有するシーラントフィルム70の具体例としては、タマポリ製NB-1等を挙げることができる。110℃以上の融点を有するシーラントフィルム70の具体例としては、出光ユニテック製LS760C、三井化学東セロ製TUX-HZ等を挙げることができる。
好ましくは、シーラントフィルム70は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む単層のフィルムである。例えば、シーラントフィルム70は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とする単層の未延伸フィルムである。プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることにより、シーラントフィルム70の耐衝撃性を高めることができ、これにより、落下時の衝撃により袋10が破袋してしまうことを抑制することができる。また、積層体30の耐突き刺し性を高めることができる。
また、プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることにより、高温時、例えば100℃のときの、シーラントフィルム70によって構成されるシール部の強度、すなわち上述の熱間シール強度が、低温時、例えば25℃のときのシール強度、すなわち上述の常温シール強度に比べて小さくなる。熱間シール強度が低いことにより、電子レンジを用いて袋10を加熱する際、蒸気抜きシール部20aが剥離し易くなり、収容部17の蒸気が袋10の外部に抜けやすくなる。このため、収容部17の内圧が過大になることを抑制することができ、これにより、加熱時に積層体30にダメージが生じることを抑制することができる。
袋10のシール部の、100℃のときの15mm幅における熱間シール強度は、好ましくは23N以下であり、より好ましくは20N以下であり、更に好ましくは15N以下である。また、袋10のシール部の熱間シール強度は、11N以下や10N以下であってもよい。なお、熱間シール強度が低すぎると、内容物が十分に加熱及び加圧されるよりも前に蒸気抜きシール部20aが剥離して収容部17の圧力及び温度が低下してしまうことが考えられる。この点を考慮すると、袋10のシール部の熱間シール強度は、好ましくは4N以上であり、より好ましくは5N以上である。
また、袋10のシール部の、25℃のときの15mm幅における常温シール強度は、好ましくは60N以下であり、より好ましくは55N以下であり、50N以下であってもよい。常温シール強度が60N以下になるようシール部を形成することにより、シール部の熱間シール強度を23N以下にすることができる。また、袋10のシール部の、25℃のときの15mm幅における常温シール強度は、好ましくは35N以上であり、より好ましくは40N以上であり、45N以上又は50N以上であってもよい。常温シール強度が35N以上になるようシール部を形成することにより、搬送時などに袋10が受ける力に起因して袋10のシール部が剥離してしまうことを抑制することができる。また、常温シール強度が40N以上になるようシール部を形成することにより、後述する実施例において示すように、シール温度のばらつきに起因して常温シール強度がばらついてしまうことを抑制することができる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体は、例えば、ポリプロピレンからなる海成分と、エチレン・プロピレン共重合ゴム成分からなる島成分と、を含む。海成分は、プロピレン・エチレンブロック共重合体の耐ブロッキング性、耐熱性、剛性、シール強度などを高めることに寄与し得る。また、島成分は、プロピレン・エチレンブロック共重合体の耐衝撃性を高めることに寄与し得る。従って、海成分と島成分の比率を調整することにより、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含むシーラントフィルム70の機械特性を調整することができる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体において、ポリプロピレンからなる海成分の質量比率は、エチレン・プロピレン共重合ゴム成分からなる島成分の質量比率よりも高い。
例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体において、ポリプロピレンからなる海成分の質量比率は、少なくとも51質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。
単層のシーラントフィルム70は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂に加えて、第2の熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。第2の熱可塑性樹脂としては、α-オレフィン共重合体、ポリエチレンなどを挙げることができる。α-オレフィン共重合体は、例えば直鎖状低密度ポリエチレンである。ポリエチレンの例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを挙げることができる。第2の熱可塑性樹脂は、シーラントフィルム70の耐衝撃性を高めることに寄与し得る。
低密度ポリエチレンとは、密度が0.910g/cm3以上且つ0.925g/cm3以下のポリエチレンである。中密度ポリエチレンは、密度が0.926g/cm3以上且つ0.940g/cm3以下のポリエチレンである。高密度ポリエチレンとは、密度が0.941g/cm3以上且つ0.965g/cm3以下のポリエチレンである。低密度ポリエチレンは、例えば、1000気圧以上且つ2000気圧未満の高圧でエチレンを重合することにより得られる。中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンは、例えば、1気圧以上且つ1000気圧未満の中圧又は低圧でエチレンを重合することにより得られる。
なお、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を部分的に含んでいてもよい。また、中圧又は低圧でエチレンを重合する場合であっても、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を含む場合は、中密度又は低密度のポリエチレンが生成され得る。このようなポリエチレンが、上述の直鎖状低密度ポリエチレンと称される。直鎖状低密度ポリエチレンは、中圧又は低圧でエチレンを重合することにより得られる直鎖状ポリマーにα-オレフィンを共重合させて短鎖分岐を導入することによって得られる。α-オレフィンの例としては、1-ブテン(C4)、1-ヘキセン(C6)、4-メチルペンテン(C6)、1-オクテン(C8)などを挙げることができる。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、例えば0.915g/cm3以上且つ0.945g/cm3以下である。
なお、プロピレン・エチレンブロック共重合体の第2の熱可塑性樹脂を構成するα-オレフィン共重合体は、上述の直鎖状低密度ポリエチレンには限られない。α-オレフィン共重合体とは、下記の式(IV)に示される構造式を有する材料を意味する。
R
1、R
2はいずれも、H(水素原子)、又はCH
3、C
2H
5などのアルキル基である。また、j及びkはいずれも、1以上の整数である。また、jはkよりも大きい。すなわち、式(IV)に示すα-オレフィン共重合体においては、R
1を含む左側の構造がベースとなる。R
1は例えばHであり、R
2は例えばC
2H
5である。
シーラントフィルム70において、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含む第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い。例えば、単層のシーラントフィルム70において、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、少なくとも51質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。
上述のように、第2の熱可塑性樹脂は、シーラントフィルム70の耐衝撃性を高めることに寄与し得る。従って、単層のシーラントフィルム70における、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含む第2の熱可塑性樹脂の質量比率を調整することにより、シーラントフィルム70の機械特性を調整することができる。
また、シーラントフィルム70は、熱可塑性エラストマーを更に含んでいてもよい。熱可塑性エラストマーを用いることにより、シーラントフィルム70の耐衝撃性や耐突き刺し性を更に高めることができる。
熱可塑性エラストマーは、例えば水添スチレン系熱可塑性エラストマーである。水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBからなる構造を有する。また、熱可塑性エラストマーは、エチレン・α-オレフィンエラストマーであってもよい。エチレン・α-オレフィンエラストマーは、低結晶性もしくは非晶性の共重合体エラストマーであり、主成分としての50~90質量%のエチレンと共重合モノマーとしてのα-オレフィンとのランダム共重合体である。
シーラントフィルム70におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、例えば80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上である。
プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法としては、触媒を用いて原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。触媒としては、チーグラー・ナッタ型やメタロセン触媒などを用いることができる。
シーラントフィルム70の厚みは、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは40μm以上である。また、シーラントフィルム70の厚みは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。
以下、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む単層のシーラントフィルム70の好ましい機械特性について説明する。
流れ方向(MD)におけるシーラントフィルム70の、25℃における引張弾性率(MPa)は、好ましくは500MPa以上であり、より好ましくは600MPa以上であり、650MPa以上、又は700MPa以上であってもよい。また、流れ方向(MD)におけるシーラントフィルム70の引張弾性率(MPa)とシーラントフィルム70の厚み(μm)の積は、好ましくは35000以上であり、より好ましくは38000以上であり、更に好ましくは45000以上である。また、垂直方向(TD)におけるシーラントフィルム70の、25℃における引張弾性率(MPa)は、好ましくは450MPa以上であり、より好ましくは500MPa以上であり、550MPa以上、又は600MPa以上であってもよい。また、垂直方向(TD)におけるシーラントフィルム70の引張弾性率(MPa)とシーラントフィルム70の厚み(μm)の積は、好ましくは25000以上であり、より好ましくは30000以上であり、更に好ましくは35000以上であり、38000以上であってもよい。シーラントフィルム70が高い引張弾性率を有することにより、袋10を開封する際の引き裂き性を高めることができる。
また、流れ方向(MD)におけるシーラントフィルム70の、25℃における引張伸度(%)は、好ましくは1100(%)以下であり、より好ましくは1000(%)以下であり、900(%)以下、又は800(%)以下であってもよい。また、流れ方向(MD)におけるシーラントフィルム70の引張伸度(%)とシーラントフィルム70の厚み(μm)の積は、好ましくは55000以下であり、より好ましくは50000以下である。また、垂直方向(TD)におけるシーラントフィルム70の、25℃における引張伸度(%)は、好ましくは1200(%)以下であり、より好ましくは1100(%)以下であり、1000(%)以下、又は900(%)以下であってもよい。また、垂直方向(TD)におけるシーラントフィルム70の引張伸度(%)とシーラントフィルム70の厚み(μm)の積は、好ましくは60000以下であり、より好ましくは55000以下である。
引張弾性率及び引張伸度は、JIS K7127に準拠して測定され得る。測定器としては、オリエンテック社製の恒温槽付き引張試験機 RTC-1310Aを用いることができる。なお、図1に示す袋10においては、上部11及び下部12が延びる方向が、シーラントフィルム70などの、袋10を構成するフィルムの流れ方向であり、側部13が延びる方向が、シーラントフィルム70などの、袋10を構成するフィルムの垂直方向である。図示はしないが、上部11及び下部12が延びる方向が、フィルムの垂直方向となり、側部13が延びる方向が、フィルムの流れ方向となるよう、袋10が構成されていてもよい。
(その他の層)
積層体30は、図3には示されていない層を更に備えていてもよい。以下、さらなる層の例について説明する。
積層体30は、印刷層を更に備えていてもよい。印刷層は、袋10に製品情報を示したり美感を付与したりするために積層体30に設けられる層であり、例えば第1プラスチックフィルム40に印刷されている。印刷層は、文字、数字、記号、図形、絵柄などを表現する。印刷層を構成する材料としては、グラビア印刷用のインキやフレキソ印刷用のインキを用いることができる。グラビア印刷用のインキの具体例としては、DICグラフィックス株式会社製のフィナートを挙げることができる。
また、積層体30は、透明ガスバリア層を更に備えていてもよい。透明ガスバリア層は、プラスチックフィルム40,50の面上などに形成され、透明性を有する無機材料からなる透明蒸着層を少なくとも含む。また、透明ガスバリア層は、透明蒸着層の面上に形成され、透明性を有する透明ガスバリア性塗布膜を更に含んでいてもよい。
透明蒸着層は、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を阻止するガスバリア性の機能を有する層として機能する。なお、透明蒸着層は二層以上設けられてもよい。透明蒸着層を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。透明蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。具体的には、ローラー式蒸着膜成膜装置を用いて、成膜ローラー上において蒸着層を形成することができる。透明蒸着層を構成する無機材料の例としては、アルミニウム酸化物(酸化アルミニウム)、珪素酸化物などを挙げることができる。透明蒸着層の厚みは、好ましくは、40Å以上且つ130Å以下、より好ましくは、50Å以上且つ120Å以下である。
透明ガスバリア性塗布膜は、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を抑制する層として機能する層である。透明ガスバリア性塗布膜37は、一般式R1
nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも一種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合する透明ガスバリア性組成物により得られる。
なお、常温シール強度を60N以下にすることができる限りにおいて、積層体30の層構成が上述のものに限られることはない。例えば、積層体30は、プラスチックフィルムを1つのみ備えていてもよい。
下部フィルムの層構成
次に、下部フィルム16の層構成について説明する。
表面フィルム14の内面及び裏面フィルム15の内面と接合可能な内面を有する限りにおいて、下部フィルム16の層構成は任意である。例えば、表面フィルム14及び裏面フィルム15と同様に、下部フィルム16として上述の積層体30を用いてもよい。若しくは、内面がシーラント層によって構成され、且つ積層体30とは異なる構成のフィルムを、下部フィルム16として用いてもよい。
積層体の製造方法
次に、積層体30の製造方法の一例について説明する。
まず、上述の第1延伸プラスチックフィルム40及び第2延伸プラスチックフィルム50を準備する。続いて、ドライラミネート法により、第1延伸プラスチックフィルム40と第2延伸プラスチックフィルム50とを、第1接着剤層45を介して積層する。その後、ドライラミネート法により、第1延伸プラスチックフィルム40及び第2延伸プラスチックフィルム50を含む積層体と、シーラントフィルム70とを、第2接着剤層55を介して積層する。これによって、第1延伸プラスチックフィルム40、第2延伸プラスチックフィルム50及びシーラントフィルム70を備える積層体30を得ることができる。
若しくは、まず第2延伸プラスチックフィルム50とシーラントフィルム70とを第2接着剤層55を介してドライラミネート法により積層し、その後、第1延伸プラスチックフィルム40と、第2延伸プラスチックフィルム50及びシーラントフィルム70を含む積層体とを第1接着剤層45を介してドライラミネート法により積層することにより、積層体30を製造してもよい。
ドライラミネート法においては、まず、積層される2つのフィルムのうちの一方に接着剤組成物を塗布する。続いて、塗布された接着剤組成物を乾燥させて溶剤を揮発させる。
その後、乾燥後の接着剤組成物を介して2つのフィルムを積層する。続いて、積層された2つのフィルムを巻き取った状態で、例えば20℃以上の環境下で24時間以上にわたってエージングする。
袋の製造方法
次に、上述の積層体30を用いて袋10を製造する方法について説明する。まず、積層体30からなる表面フィルム14及び裏面フィルム15を準備する。また、表面フィルム14と裏面フィルム15との間に、折り返した状態の下部フィルム16を挿入する。続いて、各フィルムの内面同士を所定のシール温度でヒートシールして、下部シール部12a、側部シール部13a、蒸気抜きシール部20aなどのシール部を形成する。ヒートシール処理の条件は、シール部の常温シール強度が60N以下になり、このため熱間シール強度が23N以下になるよう、シーラントフィルム70の材料に応じて設定される。
続いて、ヒートシールによって互いに接合されたフィルムを適切な形状に切断して、図1に示す袋10を得る。続いて、上部11の開口部11bを介して内容物18を袋10に充填する。内容物18は、例えば、カレー、シチュー、スープ等の、水分を含む調理済食品である。また、内容物18は、肉や魚及びそれらのための調味料など、油分を多く含む素材を有していてもよい。また食品以外にも、湯煎等によって加熱され得るものを内容物として袋10に収容することができる。その後、上部11をヒートシールして上部シール部を形成する。このようにして、図4に示すように、内容物18が収容され封止された袋10を得ることができる。その後、ボイル処理やレトルト処理などの殺菌処理を、内容物18が収容された袋10に対して必要に応じて実施する。
図4において、符号H1は、上部シール部11aから収容部17の中心点Cまでの、第2方向D2における距離を表す。また、符号H2は、蒸気抜きシール部20aから収容部17の中心点Cまでの最短距離を表す。図4に示すようなタイプ1の袋において、距離H1に対する距離H2の比は、例えば1.05以上且つ4.0以下である。このように距離H2を設定することにより、袋10を加熱する際に蒸気抜きシール部20aよりも前に上部シール部11aが剥離してしまうことを抑制することができる。なお、収容部17の中心点Cは、上部シール部11aの内縁の中間点Y1と下部シール部12aの内縁の中間点Y2とを結ぶ線分の中間点として定義される。
シール強度の測定方法
次に、袋10のシール部のシール強度の測定方法について説明する。シール強度は、JIS Z1707 7.5に準拠して測定され得る。測定器としては、例えばオリエンテック社製の恒温槽付き引張試験機 RTC-1310Aを用いることができる。
まず、シール部のシール強度を測定するための試験片90を準備する。例えば、図4において符号Vが付された一点鎖線の枠で示すように、袋10の表面フィルム14及び裏面フィルム15のうち側部シール部13aを含む部分を切り出して、第1方向D1に沿って延びる試験片90を得る。第1方向D1に直交する第2方向D2における試験片90の幅Wは、15mmである。
図5は、試験片90を示す断面図である。試験片90は、側部シール部などの、表面フィルム14のシーラントフィルム70と裏面フィルム15のシーラントフィルム70とが接合されているシール部95と、表面フィルム14のシーラントフィルム70と裏面フィルム15のシーラントフィルム70とが接合されていない非シール部96と、を含んでいる。
図6は、試験片90を用いてシール強度を測定する様子を示す図である。まず、非シール部96において表面フィルム14及び裏面フィルム15をそれぞれ、測定器のつかみ具91及びつかみ具92で把持する。また、つかみ具91,92をそれぞれ、試験片90のシール部95の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、300mm/分の速度で引っ張り、引張応力の最大値(図7参照)を測定する。図7は、間隔Sに対する引張応力の変化を示す図である。
複数の試験片90について、引張応力の最大値を測定し、その平均値をシール強度とすることができる。引っ張りを開始する際の、つかみ具91,92間の間隔Sは、例えば20であり、引っ張りを終了する際の、つかみ具91,92間の間隔Sは例えば40mmである。上述の常温シール強度を測定する場合、測定時の環境は、例えば温度25℃、相対湿度50%である。また、上述の熱間シール強度を測定する場合、測定時の環境は、例えば温度100℃、相対湿度50%である。
剥離圧力の測定方法
次に、図8を参照して、蒸気抜きシール部20aの剥離圧力の測定方法について説明する。図8は、剥離圧力を測定するためのセンサ81が収容部17に設けられた袋10を示す縦断面図である。
まず、上述の図1に示すような、一部が開口した状態の袋10を準備する。続いて、袋10の内部に、圧力を測定可能なデータロガーのセンサ81を設ける。例えば、センサ81を袋10の内面に取り付ける。また、袋10の収容部17に所定量の水を、例えば100mlの水を充填する。その後、袋10の開口部にシール部を形成して袋10を封止する。データロガーとしては、例えば、TMI-ORION製のPicoVACQ PTを用いることができる。PicoVACQ PTは、圧力に加えて温度を測定することもできる。
続いて、センサ81を用いて収容部17の圧力を所定の時間間隔で測定しながら、電子レンジなどを利用して袋10内の水を加熱する。電子レンジとしては、出力が500W~1500Wの範囲内の任意のものを用いることができる。時間間隔は、例えば0.1秒以上且つ10秒以下であり、例えば1.0秒である。
水が蒸発して収容部17の圧力が増加すると、蒸気抜きシール部20aが剥離し始める。蒸気抜きシール部20aの剥離が袋10の外縁にまで進行して収容部17が非シール部20b及び袋10の外部に連通すると、センサ81によって測定されている収容部17の圧力が急激に低下する。圧力が急激に低下し始める直前に測定された、収容部17の圧力を、蒸気抜きシール部20aの剥離圧力として記録する。圧力が急激に低下し始める直前の収容部17の温度は、例えば80℃以上且つ120℃以下である。
内容物の加熱方法
次に、袋10に収容された内容物18の加熱方法の一例について説明する。
まず、下部12を下にして袋10を自立させた状態で、袋10を電子レンジの内部に載置する。次に、電子レンジを利用して内容物を加熱する。これによって、内容物18の温度が高くなり、これに伴って、内容物18に含まれる水分が蒸発して収容部17の圧力が高まる。
収容部17の圧力が高くなると、収容部17から受ける力によって表面フィルム14及び裏面フィルム15が外側に膨らむ。ここで本実施の形態においては、常温シール強度が60N以下であるようシール部が構成されている。これにより、23N以下の熱間シール部を有するシール部を備える袋10を得ることができる。このため、袋10に収容されている内容物18の温度が過剰に高くなったり、内容物18の圧力が過剰に高くなったりするよりも前に、蒸気抜きシール部20aを剥離させることができる。従って、加熱の際に袋10の積層体30に穴があいたり積層体30にシワが形成されたりすることを抑制することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
(袋の第1の変形例)
上述の本実施の形態の蒸気抜き機構20においては、非シール部20bの縁部のうち側縁の開口部20pと第1方向D1において対向している部分が、第1方向D1に直交する第2方向D2に平行に延びている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図9に示すように、非シール部20bの縁部のうち側縁の開口部20pと第1方向D1において対向している部分が、第2方向D2に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
以下の説明において、非シール部20bの縁部のうち側縁の開口部20pと第1方向D1において対向している部分のことを、第1縁部20b1とも称する。また、非シール部20bの縁部のうち、接続部20b3を介して第1縁部20b1の下端に接続されるとともに袋10の側縁に向かって延びる部分のことを、第2縁部20b2とも称する。
図9に示す例において、第1縁部20b1は、上部11側に向かうにつれて側縁の開口部20p側に変位するよう、第2方向D2に対して傾斜した方向に延びている。これにより、収容部17から接続部20b3の位置を通って非シール部20bに流入した蒸気を開口部20pへスムーズに導くことができる。第1縁部20b1が延びる方向と第2方向D2とが成す角度θ1は、例えば1度以上であり、好ましくは10度以上又は20度以上であり、より好ましくは30度以上ある。また、第1縁部20b1が延びる方向と第2方向D2とが成す角度θ1は、例えば70度以下であり、60度以下であってもよい。以下の説明において、第1縁部20b1が第2方向D2に対して傾斜した方向に延びている袋10のことを、タイプ1(傾斜)の袋とも称する。
図9に示す例において、符号20a1は、蒸気抜きシール部20aのうち非シール部20bの第1縁部20b1に対応する部分の内縁であり、以下の説明において第1内縁とも称する。また、符号20a2は、蒸気抜きシール部20aのうち非シール部20bの第2縁部20b2に対応する部分の内縁であり、以下の説明において第2内縁とも称する。符号20a1は、第1内縁20a1と第2内縁20a2とが接続される接続部20a3である。
図9に示す例においては、第1内縁20a1が延びる方向と第2内縁20a2が延びる方向とが成す角度θ2が、90度未満になっている。これにより、収容部17の圧力が増加した際に接続部20a3に力が加わり易くなる。このことにより、蒸気抜きシール部20aの剥離が接続部20a3から非シール部20bの接続部20b3の位置まで進行し易くなる。第1内縁20a1が延びる方向と第2内縁20a2が延びる方向とが成す角度θ2は、好ましくは89度以下であり、より好ましくは80度以下又は70度以下である。
(袋の第2の変形例)
上述の本実施の形態及び第1の変形例の蒸気抜き機構20においては、蒸気抜きシール部20aによって収容部17から隔離されている非シール部20bが、袋10の外縁に至るよう広がっている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図10に示すように、非シール部20bが、蒸気抜きシール部20aと側部シール部13aとによって囲われていてもよい。この場合、非シール部20bには、表面フィルム14又は裏面フィルム15の少なくとも一方を貫通する貫通孔20cが形成されている。この場合、蒸気抜きシール部20aの剥離部分を通って収容部17から非シール部20bに流入した蒸気は、貫通孔20cを通って袋10の外部に抜ける。以下の説明において、図10に示すような、蒸気抜き機構20の非シール部20bが蒸気抜きシール部20aと側部シール部13aとによって囲われているタイプの袋のことを、タイプ2の袋とも称する。
図10に示す袋10においては、非シール部20bが側部シール部13aよりも収容部17側に位置している。このため、第1方向D1における非シール部20bの幅が同一である場合、本変形例のタイプ2の袋10の蒸気抜きシール部20aから中心点Cまでの距離H2は、図1や図4に示すタイプ1の袋10の蒸気抜きシール部20aから中心点Cまでの距離H2よりも短い。このため、電子レンジなどを用いて袋10の内容物を加熱する際、蒸気抜きシール部20aに力が加わり易く、蒸気抜きシール部20aの剥離圧力が低くなり易い。図10に示すようなタイプ2の袋において、距離H1に対する距離H2の比は、例えば1.05以上且つ5.0以下である。
本変形例においても、常温シール強度が60N以下であるようシール部が構成されている。これにより、23N以下の熱間シール部を有するシール部を備える袋10を得ることができる。このため、袋10に収容されている内容物18の温度が過剰に高くなったり、内容物18の圧力が過剰に高くなったりするよりも前に、蒸気抜きシール部20aを剥離させることができる。従って、加熱の際に袋10の積層体30に穴があいたり積層体30にシワが形成されたりすることを抑制することができる。
(袋の第3の変形例)
上述の本実施の形態及び第1の変形例の蒸気抜き機構20においては、蒸気抜きシール部20aが側部シール部13aに接続している例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図11に示すように、蒸気抜きシール部20aが側部シール部13aから離間していてもよい。この場合、蒸気抜きシール部20aによって囲われた非シール部20bには、表面フィルム14又は裏面フィルム15の少なくとも一方を貫通する貫通孔20cが形成されている。第1の変形例の場合と同様に、蒸気抜きシール部20aの剥離部分を通って収容部17から非シール部20bに流入した蒸気は、貫通孔20cを通って袋10の外部に抜ける。以下の説明において、図11に示すような、蒸気抜き機構20の蒸気抜きシール部20aが側部シール部13aから離間しているタイプの袋のことを、タイプ3の袋とも称する。
図11に示す袋10においては、非シール部20bが側部シール部13aから離間している。このため、第1方向D1における非シール部20bの幅が同一である場合、本変形例のタイプ3の袋10の蒸気抜きシール部20aから中心点Cまでの距離H2は、図10に示すタイプ2の袋10の蒸気抜きシール部20aから中心点Cまでの距離H2よりも短い。このため、電子レンジなどを用いて袋10の内容物を加熱する際、蒸気抜きシール部20aに力がより加わり易く、蒸気抜きシール部20aの剥離圧力がより低くなり易い。
図11に示すようなタイプ3の袋において、距離H1に対する距離H2の比は、例えば1.05以上且つ6.0以下である。
本変形例においても、常温シール強度が60N以下であるようシール部が構成されている。これにより、23N以下の熱間シール部を有するシール部を備える袋10を得ることができる。このため、袋10に収容されている内容物18の温度が過剰に高くなったり、内容物18の圧力が過剰に高くなったりするよりも前に、蒸気抜きシール部20aを剥離させることができる。従って、加熱の際に袋10の積層体30に穴があいたり積層体30にシワが形成されたりすることを抑制することができる。
なお、蒸気抜きシール部20aから中心点Cまでの距離H2が短くなると、電子レンジなどを用いて袋10の内容物を加熱する時以外にも、蒸気抜きシール部20aに力が加わり易くなる。例えば、複数の袋10を積み重ねた状態で袋10を搬送する際にも、蒸気抜きシール部20aに力が加わり易くなり、意図しない蒸気抜きシール部20aの剥離が生じ易くなる。言い換えると、蒸気抜きシール部20aから中心点Cまでの距離H2が短いほど、袋10の耐荷重が低くなる。従って、袋10の耐荷重の点では、タイプ3の袋10よりもタイプ2の袋10が好ましく、タイプ1の袋10が更に好ましい。
(袋の第4の変形例)
図12は、袋10の一変形例を示す正面図である。図12に示すように、表面フィルム14は、表面フィルム14の内面同士が部分的に重ね合された合掌部14aを含んでいてもよい。合掌部14aは、例えば、1枚の表面フィルム14にひだを形成するように折り返し部14fで折り返すことによって構成され得る。また、合掌部14aは、2枚の表面フィルム14の一部分同士を重ね合わせることによって構成されてもよい。
合掌部14aには、一方の側部シール部13aから他方の側部シール部13aまで延びる合掌シール部14bが形成されている。この場合、蒸気抜き機構20は、例えば、合掌シール部14bから収容部17に向かって突出した蒸気抜きシール部20aと、蒸気抜きシール部20aと合掌シール部14bとによって囲われた非シール部20bと、非シール部20bにおいて表面フィルム14に形成された貫通孔20cと、を有する。
本変形例においても、収容部17の圧力が増加すると、蒸気抜きシール部20aが剥離して収容部17と非シール部20bとが連通する。蒸気抜きシール部20aの剥離部分を通って収容部17から非シール部20bに流入した蒸気は、貫通孔20cを通って袋10の外部に抜ける。以下の説明において、図12に示すような、合掌部14aに蒸気抜き機構20が設けられるタイプの袋のことを、タイプ4の袋とも称する。図12に示すようなタイプ4の袋において、距離H1に対する距離H2の比は、例えば1.10以上且つ6.0以下である。
本変形例においても、常温シール強度が60N以下であるようシール部が構成されている。これにより、23N以下の熱間シール部を有するシール部を備える袋10を得ることができる。このため、袋10に収容されている内容物18の温度が過剰に高くなったり、内容物18の圧力が過剰に高くなったりするよりも前に、蒸気抜きシール部20aを剥離させることができる。従って、加熱の際に袋10の積層体30に穴があいたり積層体30にシワが形成されたりすることを抑制することができる。
(他の態様)
本発明の他の態様は、収容部を有する袋であって、前記袋の内面に位置し、単一の層からなるシーラントフィルムと、前記シーラントフィルムよりも外面側に位置する少なくとも1つのプラスチックフィルムと、を含む積層体と、一対の前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、前記シール部は、前記袋の外縁に位置する外縁シール部と、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側に位置し、前記収容部の圧力の増加により剥離する蒸気抜きシール部と、を有し、25℃のときの前記シール部のシール強度が60N以下であり、100℃のときの前記シール部のシール強度が23N以下である、袋である。
本発明の他の態様による袋において、流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以上であってもよい。
本発明の他の態様による袋において、25℃のときの前記シール部のシール強度が55N以下であってもよい。
本発明の他の態様による袋において、25℃のときの前記シール部のシール強度が40N以上であってもよく、45N以上であってもよい。
本発明の他の態様による袋において、前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分として含んでいてもよい。
本発明の他の態様による袋において、前記シーラントフィルムは、主成分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体と、α-オレフィン共重合体とを含んでいてもよい。
本発明の他の態様による袋において、前記蒸気抜きシール部によって前記収容部から隔離された非シール部を更に備え、前記非シール部は、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側の位置から前記袋の外縁に至るよう広がっていてもよい。
本発明の他の態様による袋において、前記蒸気抜きシール部の剥離圧力は、133kPa以下であってもよく、130kPa以下であってもよい。
本発明の他の態様による袋の製造方法は、収容部を有する袋の製造方法であって、前記袋の内面に位置するシーラントフィルムと、前記シーラントフィルムよりも外面側に位置する少なくとも1つのプラスチックフィルムと、を含む積層体を準備する工程と、一対の前記積層体の内面同士を所定のシール温度でヒートシールして、前記袋の外縁に位置する外縁シール部と、前記外縁シール部よりも前記収容部の中心点側に位置し、前記収容部の圧力の増加により剥離する蒸気抜きシール部と、を有するシール部を形成するシール工程と、前記シール部が形成された前記積層体を切断して複数の前記袋を得る工程と、を備え、前記シール工程の前記シール温度は、100℃のときの前記シール部のシール強度が23N以下になるよう設定されている、袋の製造方法である。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例A1)
第1プラスチックフィルム40として、12μmの厚みを有する延伸PETフィルムを準備した。また、第2プラスチックフィルム50として、12μmの厚みを有する延伸PETフィルムを準備した。また、シーラントフィルム70として、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム ZK207を準備した。ZK207は、上述のプロピレン・エチレンブロック共重合体を含む。シーラントフィルム70の厚みは70μmであった。
ZK207は、高い引張弾性率を有する。具体的には、流れ方向(MD)におけるZK207の引張弾性率は、厚みが50μmの場合に780MPaであり、厚みが60μmの場合に680MPaである。また、垂直方向(TD)におけるZK207の引張弾性率は、厚みが50μmの場合に630MPaであり、厚みが60μmの場合に560MPaである。従って、流れ方向におけるZK207の引張弾性率(MPa)と厚み(μm)の積は、厚みが50μmの場合に39000であり、厚みが60μmの場合に40800である。また、垂直方向におけるZK207の引張弾性率(MPa)と厚み(μm)の積は、厚みが50μmの場合に31500であり、厚みが60μmの場合に33600である。
また、ZK207は、低い引張伸度を有する。具体的には、流れ方向(MD)におけるZK207の引張伸度は、厚みが50μmの場合に790%であり、厚みが60μmの場合に730%である。また、垂直方向(TD)におけるZK207の引張伸度は、厚みが50μmの場合に1020%であり、厚みが60μmの場合に870%である。従って、流れ方向におけるZK207の引張伸度(%)と厚み(μm)の積は、厚みが50μmの場合に39500であり、厚みが60μmの場合に43800である。また、垂直方向におけるZK207の引張伸度(%)と厚み(μm)の積は、厚みが50μmの場合に51000であり、厚みが60μmの場合に52200である。
続いて、ドライラミネート法により、第1プラスチックフィルム40、第2プラスチックフィルム50及びシーラントフィルム70を積層し、積層体30を作製した。第1接着剤層45及び第2接着剤層55としては、ロックペイント株式会社製の2液型ポリウレタン系接着剤(主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を用いた。なお、主剤のRU-40は、ポリエステルポリオールである。第1接着剤層45及び第2接着剤層55の厚みは、3.5μmであった。
続いて、2枚の積層体30の内面30x同士を部分的にヒートシールしてシール部を形成した。ヒートシール処理の際の温度(以下、シール温度とも称する)は、170℃とした。続いて、2枚の積層体30のうちシール部を含む部分を切り出して、シール強度を測定するための上述の試験片90を作製した。その後、積層体30の常温シール強度を、JIS 1707 7.5に準拠して、温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定した。
測定器としては、オリエンテック社製の恒温槽付き引張試験機 RTC-1310Aを用いた。
なお、本実施例においては、シール強度の測定前、レトルト処理やボイル処理などの処理を模擬する熱を試験片90に加えなかった。以下の説明において、レトルト処理やボイル処理などの処理を模擬する熱が加えられていない積層体30や試験片90の状態のことを、レトルト処理前とも称する。
また、異なるシール温度で作製された試験片90を準備し、常温シール強度をそれぞれ測定した。ここでは、175℃から220℃まで5℃刻みで異なるシール温度を有する試験片90を準備した。結果を図13の「常温シール強度(レトルト処理前)」の行に示す。また、シール温度に対してシール強度をプロットすることによって得られたグラフを図14に示す。
(実施例A2)
レトルト処理を模擬する熱が加えられた積層体30を用いて試験片90を作製したこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、試験片90の常温シール強度を測定した。結果を図13の「常温シール強度(レトルト処理後)」の行に示す。また、シール温度に対してシール強度をプロットすることによって得られたグラフを図14に示す。
試験片90を構成する積層体30に加えた処理は以下の通りである。
・加熱温度:121℃
・加熱時間:40分
・圧力:0.2MPa
(実施例A3)
温度100℃、相対湿度50%の環境下でシール強度の測定を実施したこと以外は、実施例A1の場合と同様にして、試験片90の熱間シール強度をそれぞれ測定した。結果を図13の「熱間シール強度(レトルト処理前)」の行に示す。また、シール温度に対してシール強度をプロットすることによって得られたグラフを図14に示す。
(実施例A4)
レトルト処理を模擬する熱が加えられた積層体30を用いて試験片90を作製したこと以外は、実施例A2の場合と同様にして、試験片90の熱間シール強度をそれぞれ測定した。結果を図13の「熱間シール強度(レトルト処理後)」の行に示す。また、シール温度に対してシール強度をプロットすることによって得られたグラフを図14に示す。
図13及び図14に示すように、シール温度が高くなるほど常温シール強度が増加する傾向が見られた。特に、レトルト処理後の常温シール強度が40N未満の場合に、常温シール強度のシール温度への依存性が大きかった。従って、常温シール強度の安定性の観点からは、レトルト処理後の常温シール強度が40N以上であることが好ましく、45N以上であることがより好ましく、50N以上であることが更に好ましいと言える。これにより、シール温度のばらつきに起因してレトルト処理後の常温シール強度がばらついてしまうことを抑制することができる。
熱間シール強度も、常温シール強度の場合と同様に、シール温度が高くなるほど増加する傾向が見られた。
図13及び図14に示すように、レトルト処理後の試験片90の常温シール強度が、レトルト処理前の試験片90の常温シール強度よりも小さくなる傾向が見られた。レトルト処理後の試験片90の常温シール強度とレトルト処理前の試験片90の常温シール強度の差は、5N~13Nの範囲内であった。一方、レトルト処理後の試験片90の熱間シール強度とレトルト処理前の試験片90の熱間シール強度の差は、常温シール強度の場合に比べて小さく、3N以下であった。
(実施例B1)
第1プラスチックフィルム40として、12μmの厚みを有する延伸PETフィルムを準備した。また、第2プラスチックフィルム50として、12μmの厚みを有する延伸PETフィルムを準備した。また、シーラントフィルム70として、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム ZK207を準備した。ZK207は、上述のプロピレン・エチレンブロック共重合体を含む。シーラントフィルム70の厚みは70μmであった。
続いて、ドライラミネート法により、第1プラスチックフィルム40、第2プラスチックフィルム50及びシーラントフィルム70を積層し、積層体30を作製した。第1接着剤層45及び第2接着剤層55としては、ロックペイント株式会社製の2液型ポリウレタン系接着剤(主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を用いた。なお、主剤のRU-40は、ポリエステルポリオールである。第1接着剤層45及び第2接着剤層55の厚みは、3.5μmであった。
〔シール強度の評価〕
続いて、2枚の積層体30の内面30x同士を第1のシール温度でヒートシールしてシール部を形成した。続いて、2枚の積層体30のうちシール部を含む部分を切り出して、シール強度を測定するための試験片90を作製した。ここでは、上述の実施例A1のような、レトルト処理前の試験片90と、上述の実施例A2のような、レトルト処理後の試験片90とを、それぞれ複数個準備した。続いて、レトルト処理前の試験片90を用いて、常温シール強度及び熱間シール強度をそれぞれ測定した。結果、常温シール強度及び熱間シール強度はそれぞれ65N及び23Nであった。また、レトルト処理後の試験片90を用いて、常温シール強度及び熱間シール強度をそれぞれ測定した。結果、常温シール強度及び熱間シール強度はそれぞれ60N及び23Nであった。
〔剥離圧力の評価〕
続いて、積層体30を用いて、図1及び図4に示すタイプ1の蒸気抜き機構20を備える袋10を作製した。袋10の高さS1は145mmであり、幅S2は140mmであった。また、折り返された下部フィルム16の高さS3、すなわち袋10の下端部から折り返し部16fまでの高さは、40mmであった。以下の説明において、高さS1が145mmであり、幅S2が140mmであり、高さS3が40mmである袋10を、Sサイズの袋10とも称する。続いて、100mlの水を袋10の内部に充填し、また、袋10の内部にデータロガーのセンサ81を配置し、袋10の上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。
続いて、センサ81を用いて収容部17の圧力を1秒ごとに測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱した。出力500Wの電子レンジとしては、Panasonic社製のNE-MS261を用いた。収容部17の圧力が増加し、蒸気抜きシール部20aの剥離が袋10の外縁に到達すると、収容部17の蒸気が袋10の外部に排出され始め、収容部17の圧力が急激に低下した。圧力が急激に低下し始める直前の収容部17の圧力である剥離圧力は、130.7kPaであった。
〔耐熱性の評価〕
剥離圧力の評価の場合と同様に、積層体30を用いてSサイズの袋10を作製した。続いて、油分を多く含む100gの内容物をSサイズの袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。
その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。試験は、10個の袋10に対して実施した。結果、10個中7個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B2)
実施例B1の場合と同一の積層体30を用いてタイプ1の袋10を作製した。袋10の高さS1は145mmであり、幅S2は150mmであり、折り返された下部フィルム16の高さS3は43mmであった。以下の説明において、高さS1が145mmであり、幅S2が150mmであり、高さS3が43mmである袋10を、Mサイズの袋10とも称する。
続いて、実施例B1の場合と同様に、100mlの水を袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部を形成した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は132.5kPaであった。
また、実施例B1の場合と同様に、油分を多く含む100gの内容物をMサイズの袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B3)
実施例B1の場合と同一の積層体30を用いて、Sサイズの、図9に示すタイプ1(傾斜)の袋10を作製した。第1縁部20b1が延びる方向と第2方向D2とが成す角度θ1は30度であった。また、第1内縁20a1が延びる方向と第2内縁20a2が延びる方向とが成す角度θ2は70度であった。
続いて、実施例B1の場合と同様に、100mlの水を袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部を形成した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は129.4kPaであった。
また、実施例B1の場合と同様に、油分を多く含む100gの内容物をSサイズの袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B4)
実施例B1の場合と同一の積層体30を、上述の第1のシール温度よりも低い第2のシール温度でヒートシールすることによって作製した試験片90を用いて、シール強度を測定した。レトルト処理前の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ60N及び15Nであった。また、レトルト処理後の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ55N及び15Nであった。
また、シール温度を上述の第2のシール温度としたこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、Sサイズのタイプ1の袋10を作製した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は127.3kPaであった。
また、シール温度を上述の第2のシール温度としたこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、油分を多く含む100gの内容物をSサイズのタイプ1の袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B5)
実施例B1の場合と同一の積層体30を、実施例4の場合の第2のシール温度よりも低い第3のシール温度でヒートシールすることによって作製した試験片90を用いて、シール強度を測定した。レトルト処理前の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ55N及び10Nであった。また、レトルト処理後の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ45N及び9Nであった。
また、シール温度を上述の第3のシール温度としたこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、Sサイズのタイプ1の袋10を作製した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は124.9kPaであった。
また、シール温度を上述の第3のシール温度としたこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、油分を多く含む100gの内容物をSサイズのタイプ1の袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B6)
ヒートシール処理の温度を、実施例B5の場合と同様に第3のシール温度としたこと以外は、実施例B2の場合と同様にして、Mサイズのタイプ1の袋10を作製した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は125.5kPaであった。
また、ヒートシール処理の温度を、実施例B5の場合と同様に第3のシール温度としたこと以外は、実施例B2の場合と同様に、油分を多く含む100gの内容物をMサイズの袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B7)
実施例B5の場合と同一の積層体30を上述の第3のシール温度でヒートシールすることによって、実施例B6の場合と同様のMサイズのタイプ1の袋10を作製した。続いて、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力1600Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。出力1600Wの電子レンジとしては、Panasonic社製のNE-1801を用いた。結果、剥離圧力は124.8kPaであった。
また、実施例B5の場合と同一の積層体30を上述の第3のシール温度でヒートシールすることによって、実施例B6の場合と同様のMサイズのタイプ1の袋10を作製した。
続いて、油分を多く含む100gの内容物をMサイズのタイプ1の袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、出力1600Wの電子レンジを利用して40秒間にわたって、袋10内の水を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B8)
第1プラスチックフィルム40として、12μmの厚みを有する延伸PETフィルムを準備した。また、第2プラスチックフィルム50として、15μmの厚みを有する延伸ナイロンフィルムを準備した。また、シーラントフィルム70として、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム ZK207を準備した。シーラントフィルム70の厚みは70μmであった。
続いて、2枚の積層体30の内面30x同士を第4のシール温度で部分的にヒートシールすることにより作製した試験片90を用いて、実施例B1の場合と同様にして、積層体30間のシール強度を測定した。レトルト処理前の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ58N及び11Nであった。また、レトルト処理後の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ50N及び11Nであった。
また、積層体30を用いてSサイズのタイプ1の袋10を第4のシール温度で作製した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は125.9kPaであった。
また、積層体30を用いてSサイズの袋10を第4のシール温度で作製した。続いて、油分を多く含む100gの内容物を袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて40秒間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B9)
実施例B8の場合と同一の積層体30を、上述の第4のシール温度よりも低い第5のシール温度でヒートシールすることによって作製した試験片90を用いて、シール強度を測定した。レトルト処理前の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ55N及び10Nであった。また、レトルト処理後の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ45N及び9Nであった。
また、シール温度を上述の第5のシール温度としたこと以外は、実施例B8の場合と同様にして、Sサイズのタイプ1の袋10を作製した。その後、実施例B8の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は122.2kPaであった。
また、シール温度を上述の第5のシール温度としたこと以外は、実施例B8の場合と同様にして、油分を多く含む100gの内容物をSサイズのタイプ1の袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B10)
実施例B8の場合と同一の積層体30を、上述の第5のシール温度よりも低い第6のシール温度でヒートシールすることによって作製した試験片90を用いて、シール強度を測定した。レトルト処理前の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ50N及び7Nであった。また、レトルト処理後の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ38N及び7Nであった。
また、シール温度を上述の第6のシール温度としたこと以外は、実施例B8の場合と同様にして、Sサイズのタイプ1の袋10を作製した。その後、実施例B8の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は120.2kPaであった。
また、シール温度を上述の第6のシール温度としたこと以外は、実施例B8の場合と同様にして、油分を多く含む100gの内容物をSサイズのタイプ1の袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B11)
実施例B8の場合と同一の積層体30を、上述の第6のシール温度よりも低い第7のシール温度でヒートシールすることによって作製した試験片90を用いて、シール強度を測定した。レトルト処理前の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ45N及び6Nであった。また、レトルト処理後の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ32N及び6Nであった。
また、シール温度を上述の第7のシール温度としたこと以外は、実施例B8の場合と同様にして、Sサイズのタイプ1の袋10を作製した。その後、実施例B8の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は118.9kPaであった。
また、シール温度を上述の第7のシール温度としたこと以外は、実施例B8の場合と同様にして、油分を多く含む100gの内容物をSサイズのタイプ1の袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(比較例B1)
実施例B1の場合と同一の積層体30を、上述の第1のシール温度よりも高い第8のシール温度でヒートシールすることによって作製した試験片90を用いて、シール強度を測定した。レトルト処理前の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ70N及び26Nであった。また、レトルト処理後の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ65N及び26Nであった。
また、シール温度を上述の第8のシール温度としたこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、Sサイズのタイプ1の袋10を作製した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は133.2kPaであった。
また、シール温度を上述の第3のシール温度としたこと以外は、実施例B1の場合と同様にして、油分を多く含む100gの内容物をSサイズのタイプ1の袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中6個の袋10において、積層体30に穴があいたことが確認された。
(比較例B2)
実施例B8の場合と同一の積層体30を、上述の第7のシール温度よりも低い第9のシール温度でヒートシールすることによって作製した試験片90を用いて、シール強度を測定した。レトルト処理前の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ35N及び5Nであった。また、レトルト処理後の試験片90においては、常温シール強度及び熱間シール強度がそれぞれ25N及び5Nであった。
また、シール温度を上述の第9のシール温度としたこと以外は、実施例B8の場合と同様にして、Sサイズのタイプ1の袋10を作製した。その後、実施例B7の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力1600Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は115.4kPaであった。
また、シール温度を上述の第9のシール温度としたこと以外は、実施例B8の場合と同様にして、油分を多く含む100gの内容物をSサイズのタイプ1の袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、1600Wの出力の電子レンジを用いて40秒間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B12)
実施例B1の場合と同一の積層体30を用いて、Sサイズのタイプ2の袋10を作製した。続いて、実施例B1の場合と同様に、100mlの水を袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部を形成した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は124.2kPaであった。
また、剥離圧力の評価の場合と同様に、積層体30を用いてSサイズのタイプ2の袋10を作製した。続いて、油分を多く含む100gの内容物を袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
(実施例B13)
実施例B1の場合と同一の積層体30を用いて、Sサイズのタイプ3の袋10を作製した。続いて、実施例B1の場合と同様に、100mlの水を袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部を形成した。その後、実施例B1の場合と同様に、センサ81を用いて収容部17の圧力を測定しながら、出力500Wの電子レンジを利用して袋10内の水を加熱し、剥離圧力を測定した。結果、剥離圧力は122.1kPaであった。
また、剥離圧力の評価の場合と同様に、積層体30を用いてSサイズのタイプ3の袋10を作製した。続いて、油分を多く含む100gの内容物を袋10の内部に充填し、上部11をヒートシールして上部シール部11aを形成した。その後、500Wの出力の電子レンジを用いて2分間にわたって、内容物が収容された袋10を加熱し、袋10を構成する積層体30にダメージが生じるか否かを確認した。結果、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていないことを確認した。
実施例B1~B13及び比較例B1~B2の積層体の層構成、シール強度の測定結果、剥離圧力の測定結果、耐熱性の評価結果などを、図15にまとめて示す。図15において、「層構成」の欄には、積層体の構成要素を、外面側の層から順に上から記載している。
また、「耐熱性」の欄において、10個中10個の袋10において、積層体30に穴があいていなかった場合には「great」と記し、10個中5~9個の袋10において、積層体30に穴があいていなかった場合には「good」と記し、10個中6個以上の袋10において、積層体30に穴があいていた場合には「bad」と記した。
実施例B1~B13と比較例B1との比較から分かるように、レトルト処理後の常温シール強度が60N以下になるようにシール部を構成することにより、レトルト処理後のシール部の熱間シール強度を23N以下にすることができ、また、剥離圧力を133kPa以下にすることができた。また、レトルト処理後の常温シール強度が55N以下になるようにシール部を構成することにより、レトルト処理後のシール部の熱間シール強度を15N以下にすることができ、また、剥離圧力を130kPa以下にすることができた。また、レトルト処理後の常温シール強度が50N以下になるようにシール部を構成することにより、レトルト処理後のシール部の熱間シール強度を11N以下にすることができ、また、剥離圧力を126kPa以下にすることができた。このように、レトルト処理後の常温シール強度が所定値以下になるようにシール部の形成条件や積層体30の層構成を設定することにより、所望の値以下の熱間シール強度をレトルト処理後に有する袋10を作製することができた。これにより、加熱の際に袋10の積層体30に穴があくことを抑制することができた。