JP2022069342A - 熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶を液体の有機化合物で取り囲み、金属ないしは金属酸化物のナノ粒子を液体の有機化合物で取り囲んで析出させ、金属ないしは金属酸化物のナノ粒子を凝集させずに析出させる方法 - Google Patents

熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶を液体の有機化合物で取り囲み、金属ないしは金属酸化物のナノ粒子を液体の有機化合物で取り囲んで析出させ、金属ないしは金属酸化物のナノ粒子を凝集させずに析出させる方法 Download PDF

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【課題】金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の製造方法であって、安価な原料を用い、極めて簡単な処理で、製造する際に不純物を一切含まない、製造方法を提供する。【解決手段】金属化合物の結晶を粉砕し、該粉砕された結晶の集まりを、液体の有機化合物で囲み、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する。この後、前記懸濁液を昇温し、前記金属化合物の微細結晶を熱分解させ、熱分解により金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液となる。さらに、前記液体の有機化合物を気化させ、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを析出させる。【選択図】図1

Description

本発明は、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の結晶を、20nm前後の大きさの微細結晶に粉砕し、該微細結晶を、液体の有機化合物で取り囲み、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する。さらに、金属ないしは金属酸化物からなる10nm前後の大きさのナノ粒子を、前記液体の有機化合物に取り囲んで析出させる。この後、前記液体の有機化合物を気化し、金属ないしは金属酸化物のナノ粒子が、凝集せずに個々のナノ粒子に分離した該ナノ粒子の集まりとして得られる。
本発明に先行して、本発明者は、飽和カルボン酸からなるエステル類に属する固体の有機化合物で覆われた金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを製造する方法に係る発明を、特願2020-090892(令和2年5月15日出願)として出願した。本発明は、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の結晶を、20nm前後の大きさの微細結晶に粉砕し、該微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した第一の懸濁液を作成する。さらに、第一の懸濁液を昇温し、前記金属化合物を熱分解すると、金属ないしは金属酸化物からなる10nm前後の大きさのナノ粒子が、前記液体の有機化合物に囲まれて析出し、該液体の有機化合物中に分散した第二の懸濁液が得られる。本発明は、金属化合物の結晶を20nm前後の大きさに粉砕したため、前記した先行出願に比べ、金属化合物の結晶の大きさが1/5程度に縮小する。これによって、金属化合物の微細結晶を熱分解すると、金属ないしは金属酸化物からなる10nm前後の大きさのナノ粒子が、液体の有機化合物に囲まれて析出し、先行出願に比べ、ナノ粒子の大きさが1/5程度に縮小する。さらに、本発明では、ナノ粒子を液体の有機化合物で囲み、該液体の有機化合物中に分散させるため、固体の有機化合物でナノ粒子を囲む先行出願より、ナノ粒子の保存とナノ粒子を取り出すことが容易になる。
ナノレベルの大きさからなる金属ナノ粒子の性質が、バルクからなる金属とは異なる性質を持つため、様々な製法によって様々な金属ナノ粒子が製造されている。
例えば、特許文献1には、銅イオン、及び炭素原子数4-12のラクタム系化合物が溶解している還元反応水溶液において、銅イオンの電解還元反応により、ラクタム系有機化合物で被覆された銅ナノ粒子を析出させる技術が開示されている。これによって、析出する銅ナノ粒子がデンドライト状に凝集するのが抑制されるとの記載がある。しかし、還元反応水溶液における全ての異物を完全に排除することは困難であるため、本技術によって析出する銅ナノ粒子の純度は低い。さらに、製造できるナノ粒子が銅に限定される。また特殊な薬品に依る還元反応を利用するため、安価なナノ粒子が製造できない。
また、特許文献2には、銅化合物が溶解あるいは分散している液中で、化学的に修飾したゼラチンの存在下で、銅イオンを還元して、銅ナノ粒子を得る技術が開示されている。しかしながら、前記した特許文献1と同様に、化学的に修飾したゼラチンの加水分解において、全ての異物を完全に排除することは困難であり、本技術によって得られる銅ナノ粒子の純度は低い。また、特許文献1と同様に、製造できる金属ナノ粒子が銅に限定される。また特殊な薬品に依る還元反応を利用するため、安価なナノ粒子が製造できない。
さらに、特許文献3には、金属酸化物または金属水酸化物と、酸性物質または塩基性物質と、有機修飾剤を含有する有機溶媒からなる反応媒体をマイクロ波で加熱することにより金属ナノ粒子を製造する技術が開示されている。しかしながら、反応媒質に均一にマイクロ波を照射して、同一の温度に加熱するには、反応媒体の量に制限があり、金属ナノ粒子の量産性に劣る。また、マイクロ波を照射した試料を濾過、精製した後に800℃という高温で熱処理することが必要になり、大気雰囲気での処理ではナノ粒子が酸化される。また、酸化されない雰囲気での熱処理は、金属ナノ粒子の製造費用が高価になる。
特開2014-156627号公報 特開2014-129609号公報 特開2013-23699号公報
ナノ粒子が凝集せずに、個々のナノ粒子に分離した該ナノ粒子の集まりとして得られれば、ナノ粒子の固有の性質が工業製品に適応でき、ナノ粒子を工業製品に適応する範囲が広がる。また、金属に限らず、金属酸化物のナノ粒子が製造できれば、ナノ粒子の工業製品への適応範囲がさらに広がる。さらに、ナノ粒子の大きさが小さいほど、ナノ粒子を適応する工業製品の範囲が広がる。しかしながら、ナノ粒子が、極微細で極軽量で比表面積が大きいため、ナノ粒子の大きさが小さくなるほど、ナノ粒子の取り扱いが難しくなる。特に、不純物を含まない金属のナノ粒子は、製造時に活性状態にあるため凝集し易く、一度、凝集した金属のナノ粒子を、個々のナノ粒子に解除することは難しい。これによって、金属のナノ粒子の製造意義が失われる。また、ナノ粒子を製造する際に、ナノ粒子を構成する以外の原子が存在すると、純粋な金属ないしは純粋な金属酸化物のナノ粒子が生成されない。従って、ナノ粒子を製造する際に、異物や不純物の存在や混入は、完全に排除しなければならない。いっぽう、ナノ粒子を化学的に安定な有機化合物で取り囲んで析出させ、この後、ナノ粒子が、不活性で安定したナノ粒子になれば、有機化合物で取り囲んだナノ粒子の集まりは、長期保存が可能になる。さらに、有機化合物の蒸気圧より低い圧力に減圧させ、ナノ粒子を取り囲んだ有機化合物を気化すれば、ナノ粒子が再度活性化することがないため、ナノ粒子が凝集せず、個々のナノ粒子に分離した状態でナノ粒子の集まりが析出する。この結果、ナノ粒子の集まりを、様々な工業製品に適応できる。しかし、こうしたナノ粒子の集まりを製造するに際し、次の9つの課題が発生する。
第一に、安価な原料を用い、極めて簡単な処理でナノ粒子の集まりを製造する。これによって、安価なナノ粒子が製造できる。第二に、不純物を一切含まないナノ粒子を製造する。第三に、製造するナノ粒子の量に制約がない。第四に、金属に限らず、金属酸化物のナノ粒子を製造する。第五に、ナノ粒子の大きさが10nm前後と小さい。第六に、ナノ粒子を有機化合物で取り囲んで析出させる。第七に、有機化合物が化学的に安定な物質で、活性状態で析出した金属のナノ粒子が、有機化合物と化学反応を起こさず、その後、金属のナノ粒子が不活性になり、安定化した金属のナノ粒子が、有機化合物で取り囲まれる。第八に、有機化合物が化学的に安定な物質で、ナノ粒子が経時変化せず、また、室温における蒸気圧が低く、長期保存が可能になる。第九に、有機化合物の気化によって、必要な時に必要な量のナノ粒子を、ナノ粒子同士が凝集せず、個々のナノ粒子に分離した該ナノ粒子の集まりとして取り出せる。
本発明における解決すべき課題は、前記した9つの課題を解決して、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子を製造することにある。
本発明における熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法は、
メタノールに分散するが、メタノールに溶解しない第一の性質と、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する第二の性質を兼備する金属化合物をメタノールに分散し、該金属化合物のメタノール分散液を作成し、この後、該金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させ、該金属化合物の結晶の集まりを析出させる、さらに、該金属化合物の結晶の集まりを容器に充填し、該金属化合物の結晶の集まりの表面全体を覆う板材を、該金属化合物の結晶の集まりの上に被せる、この後、該板材の表面全体に圧縮荷重を加え、前記容器内の前記金属化合物の結晶を粉砕する、さらに、前記容器に前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を繰り返し加え、該容器内の前記粉砕された金属化合物の結晶の集まりを再配列させる、この後、前記板材の表面全体に再度前記圧縮荷重を加え、前記金属化合物の結晶の粉砕をさらに進める、さらに、前記容器に前記3方向の衝撃加速度を再度繰り返し加える、こうした前記圧縮荷重を加える処理と前記衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、前記板材に前記圧縮荷重を加えた際に、該板材からの反発力が発生した時点で、前記一対の処理を停止する、この後、前記板材を前記容器から取り出し、さらに、前記容器に、融点が15℃より低い第一の性質と、前記金属化合物が溶解及び分散しない第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より30℃以内の温度だけ高い第三の性質と、前記金属化合物の熱分解温度で析出した金属ないしは金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない第四の性質と、吸水性を持たない第五の性質からなる5つの性質を兼備する液体の有機化合物を、前記容器内の前記金属化合物の粉砕された結晶の集まりより多い体積からなる該有機化合物の重量として秤量し、該秤量した液体の有機化合物を前記容器に混合し、前記金属化合物の粉砕された結晶の集まりが、前記液体の有機化合物に分散された第一の懸濁液を作成する、さらに、前記容器内に超音波ホモジナイザー装置を配置し、該超音波ホモジナイザー装置の稼働によって、前記第一の懸濁液中に衝撃波を連続して発生させ、該衝撃波が前記金属化合物の粉砕された結晶の集まりに連続して衝突し、該粉砕された結晶が個々の結晶に分離し、該個々の結晶が、前記液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した第二の懸濁液が前記容器内に作成される、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法。
つまり、本製造方法によれば、次の5つの極めて簡単な処理を連続して実施すると、容器内に、20nm前後の大きさの微細結晶が液体の有機化合物で囲まれるとともに、該有機化合物中に前記微細結晶が分散した懸濁液が製造される。
第一の処理は、金属化合物を、最も汎用的な溶剤であるメタノールに分散するだけの処理である。第二の処理は、メタノール分散液からメタノールを気化するだけの処理である。第三の処理は、容器に充填した金属化合物の微細結晶の集まりに圧縮荷重を加える処理と、さらに、容器に3方向の衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、金属化合物の結晶の粉砕を進める処理である。第四の処理は、粉砕が進んだ結晶の集まりが充填された容器に、5つの性質を兼備する有機化合物を充填するだけの処理である。第五の処理は、超音波ホモジナイザー装置の稼働によって、懸濁液に衝撃波を連続して加えるだけの処理である。
これら極めて簡単な5つの処理を連続して実施すると、粉砕された個々の結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該個々の結晶が有機化合物中に分散した懸濁液が容器に製造される。この結果、6段落に記載した第一の課題が解決される。
次に、前記した5つの処理における現象と各々の処理の効果とを説明する。
第一の処理において、熱分解で金属を析出する金属化合物を、最も汎用的な溶剤であるメタノールに分散すると、金属化合物が分子状態となってメタノールに分散する。これに対し、金属化合物がメタノールに溶解すると、金属化合物を構成する金属が金属イオンとなってメタノール中に溶出し、溶解した金属化合物は、溶解前の金属化合物に戻ることができない。このため、金属化合物のメタノール溶解液からメタノールを気化させると、溶解前の金属化合物の結晶が析出しない。従って、メタノールに溶解せず分散する金属化合物を用いる。つまり、金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させると、分散前の金属化合物が、100nmより小さい金属化合物の結晶として析出する。
第二の処理において、金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化すると、100nmより小さい金属化合物の結晶の集まりが析出する。つまり、金属化合物のメタノール分散液において、金属化合物が分子状態となってメタノールに均一に分散しため、メタノールを気化させると、分散前の金属化合物が、100nmより小さい粒状の結晶として析出する。この結晶は、分子状態でメタノール中に分散した金属化合物が、結晶として析出したため、金属化合物の単分子が形成する結晶が集積した結晶の集まりである。従って、結晶に応力を加えると結晶が粉砕され、微細な結晶になる。いっぽう、結晶が微細になるほど、結晶に応力を加えることが難しくなり、結晶の微細化には限界がある。なお、気化したメタノールは回収機で回収し、再利用する。
第三の処理において、板材で容器内に拘束した金属化合物の結晶の集まりに対し、板材を介して圧縮荷重を加える。この際、結晶の大きさが相対的に大きい結晶ほど粉砕されやすい。このため、相対的に大きい結晶が優先して粉砕され、圧縮荷重が加えられている間は、結晶の粉砕が進む。いっぽう、結晶の集まりにおいては、結晶の粉砕によって新たな空隙が形成され、圧縮荷重が加えられている間は、空隙を埋めるように結晶が移動する。印加する圧縮荷重を停止した後に、容器に前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を繰り返し加える。この際、結晶は、板材で容器内に拘束されているため飛散せず、空隙を埋めるように結晶が移動し、結晶の集まりが容器内で再配列する。さらに、印加する衝撃加速度を停止した後に、再度、板材を介して結晶の集まりに圧縮荷重を加える。この際、より微細になった結晶の集まりに対し、前記した結晶の粉砕が進む。この後、再度、容器に3方向の衝撃加速度を繰り返し加え、微細になった結晶の集まりの再配列を進める。こうした圧縮荷重を加える処理と、3方向の衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返す。いっぽう、結晶が微細になるほど、圧縮荷重を加えも、結晶に応力を加えることが難しくなり、結晶の微細化には限界がある。結晶の微細化が限界になると、板材に圧縮荷重を加えても、結晶の粉砕が行われず、板材に反発力が発生する。この時点で、一対の処理を停止する。この結果、結晶の大きさは、結晶が析出した時点の大きさに比べ、1/5に近い20nm前後になる。なお、金属化合物の結晶が析出した際に、結晶の大きさにばらつきがあり、また、粉砕よってできた空隙の大きさにもばらつきがある。このため、粉砕が進んだ結晶の集まりの大きさにもばらつきがある。また、板材に加える圧縮荷重は、容器の大きさに応じて、10-100kg重に相当する圧縮荷重を加える。また、容器に加える衝撃加速度は、容器の大きさに応じて、0.3-1.0Gの衝撃加速度を加える。
第四の処理において、融点が15℃より低い第一の性質と、前記金属化合物が溶解及び分散しない第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より30℃以内の温度だけ高い第三の性質と、前記金属化合物の熱分解温度で析出した金属ないしは金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない第四の性質と、吸水性を持たない第五の性質からなる5つの性質を兼備する液体の有機化合物を、容器内の金属化合物の粉砕された結晶の集まりより多い体積からなる該有機化合物を、容器に充填して攪拌すると、粉砕された結晶の集まりが液体の有機化合物に分散された第一の懸濁液が、容器内に製造される。なお、有機化合物の重量を、粉砕された結晶の集まりの重量より多い重量とし加え、第一の懸濁液における粉砕された結晶の分散性を高めた。
第五の処理において、超音波ホモジナイザー装置の稼働によって、第一の懸濁液に衝撃波を連続して加えると、液体の有機化合物を介して、粉砕された結晶の集まりに衝撃波が連続して加わる。つまり、容器内で超音波ホモジナイザー装置を稼働させると、超音波の振動周波数の振動周期に応じて、粗密波からなる超音波が、第一の懸濁液中を連続して伝搬する際に、高圧域と低圧域とが繰り返し発生し、この圧力差が第一懸濁液を構成する有機化合物の分子間力を上回る際に、微細結晶と同程度の大きさで、莫大な数のキャビティ(空洞)が連続して形成される。このキャビティが第一の懸濁液内で膨張し、この後、収縮する現象を繰り返し、次第にキャビティが成長し、一定の大きさ以上にキャビティが膨張すると、莫大な数のキャビティが連続して圧壊する。この際に莫大な数の衝撃波波が連続して第一の懸濁液中に発生する。この衝撃波が液体の有機化合物を介して粉砕された結晶の集まりに加わり、粉砕された結晶同士が直接接触した部位に衝撃波が加わると、粉砕された結晶が殆ど質量を持たないため、粉砕された結晶が容易に分離する。この際、液体の有機化合物の粘度に応じて、液体の有機化合物が分離した結晶に吸着し、分離した結晶が液体の有機化合物で覆われ、この後、分離した結晶同士が直接接触しない。この結果、粉砕された結晶は、懸濁液中で1個1個の結晶に分離され、分離された結晶は、液体の有機化合物で囲まれた第二の懸濁液になる。
これら5つの処理を連続して実施すると、容器内に第二の懸濁液が製造される。いっぽう、粉砕された結晶が20nm前後と極めて微細であるため、粉砕された結晶の集まりを経時変化させることなく、長期に保管することは難しい。しかしながら、第二の懸濁液においては、個々の粉砕された結晶を取り囲む液体の有機化合物が、金属化合物に溶解及び分散せず、また、吸水性を持たないため、液体の有機化合物で囲まれた金属化合物の粉砕された結晶は、長期に亘って経時変化しない。さらに、液体の有機化合物は、室温における蒸気圧が著しく小さく、蒸発量は極めて少なく、長期に亘って粉砕された結晶を取り囲んで保存する。この結果、5つの性質を兼備する有機化合物で粉砕された結晶が取り囲まれ、長期に亘って経時変化することなく粉砕された結晶が保存できる。
7段落に記載した方法で製造した第二の懸濁液から金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを析出させる方法は、
7段落に記載した方法で製造した第二の懸濁液の必要となる量を新たな容器に充填し、該新たな容器を、7段落に記載した金属化合物を熱分解させる雰囲気に晒すとともに、該金属化合物が熱分解する温度に昇温する、これによって、前記新たな容器内に、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が、7段落に記載した液体の有機化合物に囲まれて析出し、該液体の有機化合物中に前記ナノ粒子の集まりが分散した第三の懸濁液が作成される、この後、該第三の懸濁液が充填された前記新たな容器を真空チャンバー内に移し、真空ポンプによって前記真空チャンバー内の圧力を、該新たな容器内の前記第三の懸濁液の温度における前記液体の有機化合物の蒸気圧より低い圧力に減圧させ、前記第三の懸濁体から前記液体の有機化合物を気化させる、これによって、前記新たな容器に、前記金属ないしは前記金属酸化物からなるナノ粒子の集まりが析出する、7段落に記載した方法で製造した第二の懸濁液から金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを析出させる方法。
最初に、7段落に記載した方法で製造した第二の懸濁液の必要となる量を新たな容器に充填し、新たな容器を、金属化合物を熱分解させる雰囲気に晒すとともに、金属化合物が熱分解する温度まで昇温する。金属化合物が熱分解する温度に到達すると、液体の有機化合物で囲まれた金属化合物の粉砕された結晶が、無機物の分子ないしは有機物の分子と金属分子とに分解し、無機物の分子ないしは有機物の分子が気化熱を奪って気化する。この際、無機物ないしは有機物からなる気体の体積が爆発的に膨張し、気体分子が有機化合物を通過して、順次外界に吐き出る。つまり、無機物の分子ないしは有機物の分子の1モルが気化すると、無機物ないしは有機物からなる気体の体積は22.4リットルを占める。このため、無機物の分子ないしは有機物の分子の気化が始まると、液体の有機化合物で囲まれた無機物ないしは有機物からなる気体は、20nm前後の大きさから爆発的に膨張し、気体分子が有機化合物を通過して、順次外界に吐き出る。また、無機物ないしは有機物からなる気体の密度は、液体の有機化合物の密度より2桁小さいため、無機物ないしは有機物からなる気体は、液体の有機化合物内に留まることはできない。この後、無機物の分子ないしは有機物の分子の気化が完了した瞬間に、金属分子の集まりが10nm前後の大きさからなる金属ないしは金属酸化物のナノ粒子を形成し、該ナノ粒子が液体の有機化合物に囲まれて析出する。これによって、液体の有機化合物に囲まれて金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が析出し、該液体の有機化合物中にナノ粒子が分散した第三の懸濁液が作成される。なお、金属化合物が熱分解する際に、第二の懸濁液に含まれ、沸点が金属化合物の熱分解温度より低い、水分、有機物、水酸化物などの不純物は、全て第二の懸濁液から気化し、金属ないしは金属酸化物のナノ粒子が析出する際に、ナノ粒子が不純物を持たない液体の有機化合物に囲まれて析出するため、真性な金属ないしは真性な金属酸化物のナノ粒子として析出する。
いっぽう、真性な金属のナノ粒子は、析出した際は活性状態にあるが、液体の有機化合物とは化学反応を起こさず、析出後には、液体の有機化合物で囲まれて、不活性で安定した金属のナノ粒子になる。また、有機化合物が化学的に安定な物質で、吸水性を持たないため、液体の有機化合物で囲まれたナノ粒子は化学変化しない。この結果、6段落に記載した第二から第八の課題が解決される。なお、容器から気化した無機物ないしは有機物の気体は、回収機で回収し、再利用する。
次に、第三の懸濁液を真空チャンバー内に速やかに移し、真空ポンプによって真空チャンバー内の圧力を、容器内の第三の懸濁液の温度における有機化合物の蒸気圧より低い圧力に減圧させると、第三の懸濁液から有機化合物が気化し、容器内に金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりが析出する。なお、第三の懸濁液の温度が金属化合物の熱分解温度に近く、また、有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より30℃以内の温度だけ高いため、真空チャンバー内に移された第三の懸濁液における有機化合物の蒸気圧は、数千パスカルを超える蒸気圧持つ。従って、真空チャンバー内の圧力を数千パスカルに近い圧力に減圧するだけで、有機化合物が気化できる。なお、液体の有機化合物で囲まれた金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子は、既に不活性で安定したナノ粒子になっている。従って、有機化合物の蒸気圧より低い圧力に減圧させ、有機化合物を気化させたため、ナノ粒子は昇温の過程を踏んでいないため、容器内に析出した金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子は凝集せず、個々のナノ粒子に分離した該ナノ粒子の集まりとして析出する。従って、個々のナノ粒子に分離した該ナノ粒子の集まりを、容器から取り出せる。この結果、6段落に記載した第九の課題が解決される。
これに対し、第三の懸濁液を有機化合物の沸点に昇温し、有機化合物を気化させると、液体の有機化合物で囲まれた金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が、金属化合物の熱分解温度より30℃以内だけ高い温度に昇温され、金属のナノ粒子が析出した際の温度より30℃以内だけ高い温度に昇温されるため、金属のナノ粒子が再度活性化する。従って、有機化合物が気化した後に、活性化した金属のナノ粒子同士が接触し、金属のナノ粒子同士が凝着する。ナノ粒子の大きさが10nm前後と小さいため、凝着した金属のナノ粒子を分離することはできない。このため、第二の懸濁液を用い、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを析出させる方法として、第三の懸濁液を、容器内の第三の懸濁液の温度における有機化合物の蒸気圧より低い圧力に減圧させて、有機化合物を気化させる方法を用いた。
7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法は、
7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、無機物の分子ないしは無機物のイオンが配位子となって金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩で構成された無機金属化合物であり、7段落に記載した液体の有機化合物が、炭素原子の数が11-13からなるアルカン、ないしは、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、脂肪族アルコール類に属するいずれか1種類の有機化合物であり、前記無機金属化合物を7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、前記アルカン、ないしは、前記カルボン酸エステル類、ないしは、前記脂肪族アルコール類に属するいずれか1種類の有機化合物を7段落に記載した液体の有機化合物として用い、7段落に記載した懸濁液を製造する方法に従って懸濁液を製造する、7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法。
つまり、無機物からなる分子ないしは無機物からなるイオンが配位子となって、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩からなる無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180-220℃の温度範囲で無機物の気化が完了して金属が析出する。
すなわち、無機金属化合物を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きく、金属イオンと配位子との距離が最も長い。この無機金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了すると金属が析出し、熱分解を終える。金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属が析出する温度の中で最も低い。従って、熱処理費用が安価で済む。また、金属錯イオンを有する無機塩からなる無機金属化合物は、メタノールに10重量%近く分散し、メタノールに溶解しない。このため、無機金属化合物は、7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用いることができる。
すなわち、無機物からなる分子ないしは無機物からなるイオンが配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンは、他の金属錯イオンに比べて合成が容易である。このような金属錯イオンとして、アンモニアNHが配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオン、水HOが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア金属錯イオン、水酸基OHが配位子となって金属イオンに配位結合するヒドロキソ金属錯イオン、塩素イオンClが、ないしは塩素イオンClとアンモニアNHとが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンなどがある。さらに、このような金属錯イオンを有する塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩からなる無機金属化合物は、合成が容易で、無機塩の分子量が小さいため、180-220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し金属を析出する。この金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属を析出する温度の中で最も低い。こうした無機金属化合物は、汎用的な工業用の薬品である。
いっぽう、7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として、前記した無機金属化合物を用いることで、7段落に記載した5つの性質を兼備する適切な有機化合物として、炭素原子の数が11-13からなるアルカン、ないしは、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、脂肪族アルコール類に属する有機化合物が存在する。なお、これらの有機化合物は、汎用的な工業用の有機化合物である。
すなわち、炭素原子の数が11からなるn-ウンデカンC1124は、融点が-26℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い196℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5つの性質を兼備する。なお、蒸気圧は、沸点に近い192℃では5383パスカルである。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、n-ウンデカンが数千パスカルの蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、n-ウンデカンを気化することができる。さらに、n-ウンデカンは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
次に、炭素原子の数が12からなるn-ドデカンC1226は、融点が-9.6℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い216℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5つの性質を兼備する。なお、蒸気圧は、48℃では133パスカルで、無機金属化合物の熱分解温度に近い204℃では、蒸気圧は6310パスカルである。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、n-ドデカンが数千パスカルの蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、n-ドデカンを気化することができる。さらに、n-ドデカンは水に殆ど溶けない。このため、常温の近辺では吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低いため、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、炭素原子の数が13からなるn-トリデカンC1328は、融点が-5℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い235℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5つの性質を兼備する。なお、蒸気圧は、無機金属化合物の熱分解温度に近い211℃では、5520パスカルである。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、n-トリデカンが数千パスカルの蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、n-トリデカンを気化することができる。さらに、n-トリデカンは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。常温の20℃近辺での蒸気圧が低いため、蒸発量が極めて僅かな液体である。また、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、7段落に記載した金属化合物として、前記した無機金属化合物を用いることによって、7段落に記載した5つの性質を兼備する適切な他の有機化合物として、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類に属する有機化合物が存在する。
すなわち、デカン酸エステル類の中では、デカン酸メチルCH(CHCOOCHは、融点が-12℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い224℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、199℃においては2213パスカルで、沸点に近づくにつれ急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、デカン酸メチルが数千パスカルの蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、デカン酸メチルを気化することができる。さらに、デカン酸メチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
次に、デカン酸エチルCH(CHCOOCは、融点が-20℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い243℃で、前記無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、デカン酸メチルと同様に、沸点に近づくと急激に増加する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、デカン酸エチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、デカン酸エチルを気化することができる。さらに、デカン酸エチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
いっぽう、ノナン酸エステル類の中で、ノナン酸メチルCH(CHCOOCHは、融点が-35℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い214℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、沸点が無機金属化合物の熱分解温度に近いため、無機金属化合物の熱分解温度では1気圧に近い蒸気圧を持つ。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ノナン酸メチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ノナン酸メチルを気化することができる。さらに、ノナン酸メチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
また、ノナン酸エチルCH(CHCOOCは、融点は-44℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い220℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、沸点が無機金属化合物の熱分解温度に近いため、無機金属化合物の熱分解温度では1気圧に近い蒸気圧を持つ。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ノナン酸エチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ノナン酸エチルを気化することができる。さらに、ノナン酸エチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、オクタン酸エステル類の中では、オクタン酸メチルCH(CHCOOCHは、融点が-40℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い194℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、沸点に近い190℃では4410パスカルを持つ。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オクタン酸メチルが数千パスカルの蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オクタン酸メチルを気化することができる。さらに、オクタン酸メチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、オクタン酸エチルCH(CHCOOCは、融点が-48℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い208℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、60℃において322パスカルで、沸点に近づくと蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オクタン酸エチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オクタン酸エチルを気化することができる。さらに、オクタン酸エチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
また、オクタン酸イソプロピルCH(CHCOOCH(CHは、融点が12℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い214℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、沸点が無機金属化合物の熱分解温度に近いため、無機金属化合物の熱分解温度では1気圧に近い蒸気圧を持つ。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オクタン酸イソプロピルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オクタン酸イソプロピルを気化することができる。さらに、オクタン酸イソプロピルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、ヘプタン酸エステル類の中では、ヘプタン酸ブチルCH(CHCOOCは、融点が-64℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い207℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、沸点が無機金属化合物の熱分解温度に近いため、無機金属化合物の熱分解温度では1気圧に近い蒸気圧を持つ。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ヘプタン酸ブチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ヘプタン酸ブチルを気化することができる。さらに、ヘプタン酸ブチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
いっぽう、7段落に記載した金属化合物として、前記した無機金属化合物を用いることによって、7段落に記載した5つの性質を兼備する適切な他の有機化合物として、8-22個の炭素の鎖からなる脂肪族アルコールCH(CHn-1OHに属する有機化合物が存在する。
すなわち、炭素の鎖が8からなる1-オクタノールCH(CHOHは、融点が-16℃で、無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い195℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、171℃で348パスカル、193℃では3797パスカルであり、沸点に近づくと蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、1-オクタノールが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、1-オクタノールを気化することができる。さらに、1-オクタノールは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
次に、炭素の鎖が9からなる1-ノナノールCH(CHOHは、融点が-7℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い215℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、193℃では1842パスカルで、沸点に近づくと蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、1-ノナノールが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、1-ノナノールを気化することができる。さらに、1-ノナノールは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、炭素の鎖が10からなる1-デカノールCH(CHOHは、融点が-6.4℃で、前記した無機金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が無機金属化合物の熱分解温度より高い233℃で、無機金属化合物の熱分解で析出する金属からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、193℃では910パスカルで、沸点に近づくと蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、1-デカノールが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、1-デカノールを気化することができる。さらに、1-デカノールは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、無機金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
以上に説明したように、7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として、前記した無機金属化合物を用いることによって、7段落に記載した5つの性質を兼備する適切な有機化合物として、炭素原子の数が11-14からなるアルカン、ないしは、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、脂肪族アルコール類に属する有機化合物が存在する。
7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法は、
7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、オクチル酸金属化合物であり、7段落に記載した液体の有機化合物が、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類に属する1種類の有機化合物であり、前記オクチル酸金属化合物を7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、前記飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類に属する1種類の有機化合物を7段落に記載した液体の有機化合物として用い、7段落に記載した懸濁液を製造する方法に従って懸濁液を製造する、7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法。
つまり、オクチル酸金属化合物は、大気雰囲気の290℃で熱処理すると、金属を析出する。また、メタノールに10重量%近く分散し、メタノールに溶解しない。従って、オクチル酸金属化合物は、7段落に記載した懸濁液を製造する方法において、2つの性質を兼備する金属化合物である。
すなわち、オクチル酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、オクチル酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するオクチル酸金属化合物においては、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造の特徴を持つオクチル酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、オクチル酸の沸点の228℃を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、オクチル酸と金属とに分離する。さらに、オクチル酸が飽和脂肪酸であるため、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、オクチル酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了する290℃で金属が析出する。なお、オクチル酸金属化合物を窒素雰囲気で熱処理すると、330℃で金属が析出する。
つまり、飽和脂肪酸からなるカルボン酸のカルボキシラートアニオン(R-COO)が、金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物は、熱分解で金属を析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、金属を析出する熱分解温度が低い順に、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物がある。従って、熱分解温度が最も低いオクチル酸金属化合物を用いると、7段落に記載した懸濁液が安価に製造できる。なお、ラウリン酸金属化合物とステアリン酸金属化合物は、オクチル酸金属化合物と同様に、メタノールに10重量%近く分散し、メタノールに溶解しない。
つまり、ラウリン酸の沸点は296℃であり、ラウリン酸金属化合物の熱分解温度が360℃である。しかし、ラウリン酸金属化合物とステアリン酸金属化合物の熱分解温度が、オクチル酸金属化合物の熱分解温度より高く、金属を析出する原料として、オクチル酸金属化合物を用いるのが望ましい。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べ、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅と酸化第二銅とを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化第一銅は、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で酸化第二銅に酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
さらに、オクチル酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、オクチル酸を強アルカリと反応させるとオクチル酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、オクチル酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるオクチル酸金属化合物が生成される。また、オクチル酸が汎用的な有機酸である。従って、オクチル酸金属化合物は、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、12段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱分解温度が高くなるが、錯体より安価な金属化合物である。
以上に説明したように、オクチル酸金属化合物は、7段落に記載した懸濁液を製造する方法において、2つの性質を兼備する金属化合物であり、また、金属の微粒子の安価な原料になる。
いっぽう、7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として、前記したオクチル酸金属化合物を用いることで、7段落に記載した5つの性質を兼備する適切な有機化合物として、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類に属する有機化合物が存在する。該カルボン酸エステル類に属する有機化合物は、汎用的な工業用の有機化合物である。
すなわち、ミリスチン酸エステル類の中で、ミリスチン酸エチルCH(CH12COOCは、融点が11℃で、前記したオクチル酸金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が295℃で、オクチル酸金属化合物の熱分解温度である290℃より5℃高く、オクチル酸金属化合物の熱分解温度で析出した金属の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ミリスチン酸エチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ミリスチン酸エチルを気化することができる。さらに、ミリスチン酸エチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、オクチル酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、ミリスチン酸イソプロピルCH(CH12COOCは、融点が7℃で、前記したオクチル酸金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が320℃で、オクチル酸金属化合物の熱分解温度である290℃より30℃高く、オクチル酸金属化合物の熱分解温度で析出した金属の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、235℃において1753パスカルで、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ミリスチン酸イソプロピルが数千パスカルの蒸気圧を持ち、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ミリスチン酸イソプロピルを気化することができる。さらに、ミリスチン酸イソプロピルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘ってオクチル酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
次に、ラウリン酸エステル類の中で、ラウリン酸ブチルCH(CH10COOCは、融点が-10℃で、沸点が306℃で、前記したオクチル酸金属化合物の熱分解温度である290℃より16℃高く、オクチル酸金属化合物の熱分解温度で析出した金属の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ラウリン酸ブチルを気化することができる。さらに、ラウリン酸ブチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、オクチル酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
また、ラウリン酸2-エチルヘキシルCH(CH10COOC17は、融点が-30℃で、沸点が315℃で、前記したオクチル酸金属化合物の熱分解温度である290℃より25℃高く、オクチル酸金属化合物の熱分解温度で析出した金属の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ラウリン酸2-エチルヘキシルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ラウリン酸2-エチルヘキシルを気化することができる。さらに、ラウリン酸2-エチルヘキシルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、オクチル酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、オクタン酸エステル類の中で、オクタン酸オクチルCH(CHCOO(CHCHは、融点が-18℃で、沸点が306℃で、前記したオクチル酸金属化合物の熱分解温度である290℃より16℃高く、オクチル酸金属化合物の熱分解温度で析出した金属の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オクタン酸オクチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オクタン酸オクチルを気化することができる。さらに、オクタン酸オクチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、オクチル酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
以上に説明したように、7段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として、前記したオクチル酸金属化合物を用いることによって、7段落に記載した5つの性質を兼備する適切な有機化合物として、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類に属する有機化合物が存在する。
7段落に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法は、
7段落に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物からなる錯体であり、7段落に記載した液体の有機化合物が、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、不飽和脂肪酸類に属するいずれか1種類の有機化合物であり、前記カルボン酸金属化合物を7段落に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物として用い、前記カルボン酸エステル類、ないしは、前記不飽和脂肪酸類に属するいずれか1種類の有機化合物を7段落に記載した液体の有機化合物として用い、7段落に記載した懸濁液を製造する方法に従って懸濁液を製造する、7段落に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法。
つまり、カルボン酸金属化合物からなる錯体は、180-330℃の温度からなる大気雰囲気で熱処理すると、金属酸化物を析出する。また、メタノールに分散し、メタノールに溶解しない。従って、カルボン酸金属化合物からなる錯体は、7段落に記載した懸濁液を製造する方法において、2つの性質を兼備する金属化合物である。
すなわち、カルボン酸のカルボキシラートアニオン(R-COO)が配位子となって、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物からなる錯体は、最も大きいイオンである金属イオンにカルボキシラートアニオン(R-COO)が近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンに配位結合するカルボキシラートアニオン(R-COO)が、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシラートアニオン(R-COO)が金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の分子量と、配位結合するカルボン酸の数に応じて、カルボン酸の気化が進み、気化が完了すると、金属酸化物が析出して熱分解を終える。
こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。これらカルボン酸金属化合物からなる錯体は、カルボン酸の沸点に応じて、180-330℃の大気雰囲気で熱分解する。つまり、酢酸の沸点は118℃で、カプリル酸の沸点は237℃で、安息香酸の沸点は249℃である。いっぽう、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で、一般式ではC2n-1COOHで示され、主成分は沸点が268℃で、分子量が170のC17COOHからなる。このため、ナフテン酸金属化合物の熱分解温度は、カルボン酸金属化合物からなる錯体の中で330℃と高い。従って、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物を、7段落に記載した2つの性質を兼備する金属化合物として用いることができる。
いっぽう、酢酸金属化合物の中に、メタノールに溶解する酢酸金属化合物がある。また、熱分解でアモルファス化した金属酸化物を析出する酢酸金属化合物がある。アモルファス化した金属酸化物の組成は一定でない。こうした酢酸金属化合物は、金属酸化物からなる微粒子の原料として用いることができない。さらに、酢酸金属化合物ないしはカプリル酸金属化合物の中に、熱分解で無定形の金属酸化物を析出する酢酸金属化合物ないしはカプリル酸金属化合物がある。こうした酢酸金属化合物ないしはカプリル酸金属化合物は、金属酸化物からなる微粒子の原料として用いることができない。また、酢酸金属化合物とカプリル酸金属化合物と安息香酸金属化合物の中に、酸素イオンが金属イオンに近づいて配位結合して複核錯塩を形成するが、熱分解の途上においては不安定な物質であり、熱分解における取り扱いが難しい酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物ないしは安息香酸金属化合物がある。こうしたカルボン酸金属化合物においては、ナフテン酸金属化合物を金属酸化物からなる微粒子の原料として用いる。従って、熱分解で析出する物質に応じて、カルボン酸金属化合物からなる錯体を、微細結晶の原料として用いる。
さらに、カルボン酸金属化合物からなる錯体は容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物からなる錯体が合成される。また、原料となるカルボン酸は、安価な有機酸である。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。
以上に説明したように、カルボン酸金属化合物からなる錯体は、7段落に記載した懸濁液を製造する製造方法において、熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物であり、また、金属酸化物の微粒子の安価な原料になる。
いっぽう、7段落に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物として、前記したカルボン酸金属化合物からなる錯体を用いることによって、7段落に記載した5つの性質を兼備する適切な有機化合物として、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、不飽和脂肪酸類に属する有機化合物が存在する。なお、これらの有機化合物は、汎用的な工業用の有機化合物である。
すなわち、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類の中では、オクタン酸エステル類に属するオクタン酸メチルCH(CHCOOCHは、12段落に記載したように、融点が-40℃で、前記したカルボン酸金属化合物からなる錯体が溶解及び分散せず、沸点が前記した酢酸金属化合物の熱分解温度より19℃高い194℃で、酢酸金属化合物の熱分解で析出する金属酸化物からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、沸点が酢酸金属化合物の熱分解温度に近く、沸点に近い190℃では4410パスカルを持つ。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オクタン酸メチルが数千パスカル蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オクタン酸メチルを気化することができる。さらに、オクタン酸メチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、酢酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、オクタン酸エチルCH(CHCOOCは、12段落に記載したように、融点が-48℃で、前記した酢酸金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が酢酸金属化合物の熱分解温度より28℃高い208℃で、酢酸金属化合物の熱分解で析出する金属酸化物からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、60℃では322パスカルで、沸点に近づくと蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オクタン酸エチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オクタン酸エチルを気化することができる。さらに、オクタン酸エチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、酢酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、オクタン酸エステル類の中で、オクタン酸オクチルCH(CHCOO(CHCHは、12段落に記載したように、融点が-18℃で、沸点が306℃で、前記したカプリル酸金属化合物の熱分解温度より11℃高い295℃で、カプリル酸金属化合物の熱分解温度で析出した金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オクタン酸オクチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オクタン酸オクチルを気化することができる。さらに、オクタン酸オクチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、カプリル酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
また、オクタン酸イソプロピルCH(CHCOOCH(CHは、12段落に記載したように、融点が12℃で、前記した酢酸金属化合物が溶解及び分散せず、沸点が酢酸金属化合物の熱分解温度より24℃高い214℃で、酢酸金属化合物の熱分解で析出する金属酸化物からなる微粒子と化学反応を起こさず、吸水性を持たない、7段落に記載した5の性質を兼備する。蒸気圧は、沸点が酢酸金属化合物の熱分解温度に近いため、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オクタン酸イソプロピルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オクタン酸イソプロピルを気化することができる。さらに、オクタン酸イソプロピルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、酢酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、カルボン酸エステル類の中で、ラウリン酸エステル類に属するラウリン酸ブチルCH(CH10COOCは、14段落に記載したように、融点が-10℃で、沸点が306℃で、前記したカプリル酸金属化合物の熱分解温度より11℃高い295℃で、カプリル酸金属化合物の熱分解温度で析出した金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ラウリン酸ブチルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ラウリン酸ブチルを気化することができる。さらに、ラウリン酸ブチルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、カプリル酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
また、ラウリン酸2-エチルヘキシルCH(CH10COOC17は、14段落に記載したように、融点が-30℃で、沸点が315℃で、前記したカプリル酸金属化合物の熱分解温度より20℃高い295℃で、また、前記した安息香酸金属化合物の熱分解温度より5℃高く、カプリル酸金属化合物ないしは安息香酸金属化合物の熱分解温度で析出した金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。また、ラウリン酸2-エチルヘキシルの蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ラウリン酸2-エチルヘキシルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ラウリン酸2-エチルヘキシルを気化することができる。さらに、ラウリン酸2-エチルヘキシルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、カプリル酸金属化合物ないしは安息香酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、ラウリン酸ヘキシルCH(CH10COOCH(CHは、融点が-3℃で、沸点が335℃で、前記した安息香酸金属化合物の熱分解温度より25℃高く、また、前記したナフテン酸金属化合物の熱分解温度より5℃高く、安息香酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物の熱分解で析出した金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。また、ラウリン酸ヘキシルの蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ラウリン酸ヘキシルが一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ラウリン酸ヘキシルを気化することができる。さらに、ラウリン酸ヘキシルは水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、安息香酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
ところで、不飽和脂肪酸類に属する有機化合物の中に、前記したカルボン酸金属化合物からなる錯体を、7段落に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物として用いる際に、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物が存在する。
すなわち、ミリストレイン酸CH(CHCH=CH(CHCOOHは、融点が-4℃で、沸点が339℃で、前記した安息香酸金属化合物の熱分解温度より29℃高く、また、前記したナフテン酸金属化合物の熱分解温度である330℃より9℃高く、熱分解で析出した金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。ミリストレイン酸の蒸気圧は、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、ミリストレイン酸が一定の蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、ミリストレイン酸を気化することができる。さらに、ミリストレイン酸は水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、安息香酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
さらに、オレイン酸CH(CHCH=CH(CHCOOHは、融点が13.4℃で、沸点が360℃で、前記したナフテン酸金属化合物の熱分解温度である330℃より30℃高く、熱分解で析出した金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、265℃において2357パスカルで、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、オレイン酸が数千パスカルの蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、オレイン酸を気化することができる。さらに、オレイン酸は水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、ナフテン酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
また、リノール酸CH(CH(CH=CHCH(CHCOOHは、融点が-5℃で、沸点が360℃で、前記したナフテン酸金属化合物の熱分解温度である330℃より30℃高く、熱分解で析出した金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない、7段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。蒸気圧は、229℃において2133パスカルで、沸点に近づくほど蒸気圧が急増する。従って、9段落に記載した第三の懸濁液の温度が低下する以前に、真空ポンプで真空チャンバー内を減圧すると、リノール酸が数千パスカルの蒸気圧を持つため、真空チャンバー内の真空度を高めることなく、リノール酸を気化することができる。さらに、リノール酸は水に殆ど溶けない。このため、常温の20℃近辺で吸水性がない。また、常温の20℃近辺での蒸気圧が低く、蒸発量が極めて僅かな液体である。さらに、常温の20℃近辺では化学的に安定している。このため、第二の懸濁液において、長期に亘って、ナフテン酸金属化合物の微細結晶を変化させることなく保管できる。
以上に説明したように、7段落に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物として、前記したカルボン酸金属化合物からなる錯体を用いることによって、7段落に記載した5つの性質を兼備する適切な有機化合物として、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、不飽和脂肪酸類に属する有機化合物が存在する。
銀のナノ粒子の集まりの一部を拡大して模式的に図示した図である。
実施形態1
本実施形態は、12段落で説明した熱分解で金属を析出する無機金属化合物に関わる実施形態である。本発明における金属化合物は、第一にメタノールに分散し、メタノールに溶解せず、第二に熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する。ここでは金属を銀とし、銀化合物を例にして説明する。
最初に、メタノールに分散し、メタノールに溶解しない銀化合物を説明する。硝酸銀はメタノールに溶解し、銀イオンが溶出し、多くの銀イオンが銀微粒子の析出に参加できない。従って、銀化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、酸化銀、塩化金、硫酸銀、水酸化銀、炭酸銀などの無機銀化合物はメタノールに分散しない。このため、前記した無機金化合物は、銀化合物として適切でない。
いっぽう、銀化合物は銀を析出する性質を持つ。銀化合物から銀が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応のひとつに熱分解反応がある。さらに、銀化合物の熱分解温度が低ければ、熱処理温度が低くなり、第二の懸濁液が安価に製造できる。いっぽう、無機物からなる分子ないしは無機物からなるイオンが配位子となって、銀イオンに配位結合する銀錯イオンを有する無機金化合物からなる銀錯体は、無機物の分子量が小さければ、還元雰囲気での熱分解温度は低い。また、他の銀錯イオンを有する錯体より合成が容易で安価な工業用薬品である。
すなわち、銀錯体を構成する分子の中で銀イオンが最も大きい。ちなみに、銀原子の単結合の共有結合半径は128pmであり、窒素原子の単結合の共有結合半径の71pmであり、酸素原子の単結合の共有結合半径は63pmである。このため、配位子が銀イオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、無機金化合物からなる銀錯体は、還元雰囲気の熱処理によって、最初に配位結合部が分断され、銀と無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後に銀が析出する。
このような無機金化合物からなる銀錯体として、アンモニアNHが配位子となって銀イオンに配位結合するジアンミン銀イオン[Ag(NHを有する銀錯体と、シアン化物イオンCNが配位子となって銀イオンに配位結合するジシアノ銀イオン[Ag(CN)を有する銀錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他の銀錯イオンを有する銀錯体に比べて、合成が容易であり安価に製造できる。こうした銀錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の低い温度で無機物の気化が完了して銀が析出する。また、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銀錯体として、例えば、塩化ジアンミン銀[Ag(NH]Cl、硫酸ジアンミン銀[Ag(NHSO、硝酸ジアンミン銀[Ag(NH]NOなどがある。
また、熱分解で銅を析出する無機銅化合物からなる銅錯体として、アンモニアNHが配位子となって銅イオンに配位結合するテトラアンミン銅イオン[Cu(NH2+を有する銅錯体や、ヘキサアンミン銅イオン[Cu(NH2+を有する銅錯体や、塩素イオンClが配位子になって銅イオンに配位結合するテトラクロロ銅イオン[CuCl2-を有する銅錯体は、配位子が低分子量で配位子の数が少ないため、他の銅錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易であり、安価に製造できる。こうした銅錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の比較的低い温度で熱分解が完了する。また、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銅錯体として、例えば、テトラアンミン銅硝酸塩[Cu(NH](NOやヘキサアンミン銅硫酸塩[Cu(NH]SOがある。
同様に、熱分解でニッケルを析出し、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する、無機ニッケル化合物からなるニッケル錯体として、例えば、ヘキサアンミンニッケル塩化物[Ni(NH]Clがある。
また、熱分解でコバルトを析出し、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する、無機コバルト化合物からなるコバルト錯体として、例えば、ヘキサアンミンコバルト塩化物[Co(NH]Clや、ヘキサアンミンコバルト硝酸塩[Co(NH](NOがある。
さらに、熱分解でイリジウムを析出し、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する、無機イリジウム化合物からなるイリジウム錯体として、例えば、ヘキサアンミンイリジウム塩化物[Ir(NH]Clがある。
同様に、熱分解でルテニウムを析出し、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する、無機ルテニウム化合物からなるルテニウム錯体として、例えば、ヘキサアンミンルテニウム塩化物[Ru(NH]Clがある。
さらに、熱分解でロジウムを析出し、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する、無機ロジウム化合物からなるロジウム錯体として、例えば、ヘキサアンミンロジウム塩化物ヘキサアンミンイリジウム塩化物[Rh(NH]Clがある。
同様に、熱分解で白金を析出し、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する、無機白金化合物からなる白金錯体として、例えば、トランス-ジアンミンジクロロ白金[PtCl(NH]がある。
さらに、熱分解でパラジウムを析出し、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する、無機パラジウム化合物からなるパラジウム錯体として、例えば、ジアンミンジクロロパラジウム[PdCl(NH]がある。
以上に説明したように、無機物のイオンないしは無機物の分子が配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機塩からなる無機金属化合物は、配位子が低分子量で、配位子の数が少なく、無機塩の分子量が小さいため、熱分解温度が最も低く、合成が容易で最も安価な金属錯体である。従って、金属のナノ粒子の優れた原料になる。
実施形態2
本実施形態は、14段落で説明した熱分解で金属を析出するオクチル酸金属化合物に関わる実施形態である。本発明における金属化合物は、第一にメタノールに分散し、メタノールに溶解せず、第二に熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する。ここでは、金属を銅とし、銅化合物について説明する。
最初に、メタノールに分散し、メタノールに溶解しない銅化合物を説明する。塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの無機銅化合物はメタノールに溶解し、銅イオンが溶出してしまい、多くの銅イオンが銅微粒子の析出に参加できなくなる。従って、銅化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、酸化銅、塩化銅、硫化銅などの無機銅化合物は、最も汎用的な溶剤であるメタノールに分散しない。このため、これらの無機銅化合物は、メタノールに分散する性質を持つ銅化合物として適切でない。
いっぽう分子量が小さい無機物の分子ないしは無機イオンが、銅イオンに配位結合する銅錯イオンを有する錯体として、12段落で説明したアンミン銅錯体やクロロ銅錯体がある。これらの錯体は、汎用的な有機酸からなる有機銅化合物に比べると高価である。
有機銅化合物は銅を析出する。有機銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応のひとつに熱分解反応がある。さらに、有機酸が汎用的な有機酸で、有機銅化合物の合成が容易でれば、有機銅化合物が安価に製造できる。さらに、有機銅化合物の熱分解温度が低ければ、銅を安価な熱処理費用で析出できる。こうした性質を兼備する有機銅化合物に、カルボン酸R-COOHのカルボキシラートアニオン(R-COO)が銅イオンに共有結合するカルボン酸銅化合物がある。つまり、カルボン酸銅化合物を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは銅イオンである。従って、カルボン酸のカルボキシラートアニオンが、銅イオンに共有結合すれば、銅イオンとカルボキシラートアニオンとの距離が、イオン同士の距離の中で最も長い。こうしたカルボン酸銅化合物を大気雰囲気で昇温させると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボン酸と銅とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化した後に銅が析出する。なお、還元雰囲気でのカルボン酸銅化合物の熱分解は、大気雰囲気での熱分解より高温側で進むため、大気雰囲気での熱分解のほうが熱処理費用は安価で済む。またカルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物が熱分解すると、酸化銅が析出する。
いっぽう、カルボン酸銅化合物の中で、カルボン酸のカルボキシラートアニオンが配位子となって銅イオンに近づいて配位結合するカルボン酸銅は、銅イオンとカルボキシラートアニオンとの距離が短くなり、反対に、カルボキシラートアニオンにおける酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅化合物の熱分解反応は、カルボキシラートアニオンにおける酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化銅が析出する。このカルボン酸銅化合物は、17段落に説明したカルボン酸金属化合物に属する。
さらに、カルボン酸銅化合物は、カルボン酸が最も汎用的な有機酸であるため、合成が容易で最も安価な有機銅化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸銅などの無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅化合物が生成される。このため、有機銅化合物の中で最も安価である。
カルボン酸銅化合物の組成式はCu(COOR)で表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸銅化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置する銅イオンCu2+が最も大きい。従って、銅イオンCu2+とカルボキシラートアニオン(R-CO )とが共有結合する場合は、銅イオンCu2+とカルボキシラートアニオン(R-CO )との距離が最大になる。この理由は、銅原子の2重結合における共有結合半径は115pmであり、酸素原子の2重結合における共有結合半径は57pmであり、炭素原子の2重結合における共有結合半径は67pmであることによる。このため、このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、結合距離が最も長い銅イオンとカルボキシラートアニオン(R-CO )との結合部が最初に分断され、銅とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。こうしたカルボン酸銅化合物として、オクチル酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などがある。このようなカルボン酸銅化合物の多くは、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。
さらに飽和脂肪酸の沸点が低ければ、カルボン酸銅化合物は低い温度で熱分解し、銅を析出させる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高くなり、飽和脂肪酸の気化熱が大きいため、熱分解温度が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。
これに対し、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点がさらに低くなり、気化熱も小さい。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物は、さらに低い温度で熱分解温度する。また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物も極性を持ち、メタノールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸は構造式がCH(CHCH(C)COOHで示され、CHでCH(CHとCとのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、銅を析出する原料として、オクチル酸銅Cu(C15COO)が望ましい。オクチル酸銅は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了して銅が析出し、メタノールに10重量%近く分散する。
また、アルミニウムを析出する原料としてオクチル酸アルミニウムAl(C15COO)が、鉄を析出する原料としてオクチル酸鉄Fe(C15COO)が、ニッケルを析出する原料としてオクチル酸ニッケルNi(C15COO)が、コバルトを析出する原料としてオクチル酸コバルトCo(C15COO)が、マンガンを析出する原料としてオクチル酸マンガンMn(C15COO)が、亜鉛を析出する原料としてオクチル酸亜鉛Zn(C15COO)が、錫を析出する原料としてオクチル酸錫Sn(C15COO)が、カルシウムを析出する原料としてオクチル酸カルシウムCa(C15COO)が望ましい。これらのオクチル酸金属化合物は、いずれもメタノールに10重量%近い割合で分散する。
実施形態3
本実施形態は、16段落で説明した熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物からなる錯体に関わる実施形態である。本発明における金属化合物は、第一にメタノールに分散し、メタノールに溶解せず、第二に熱分解で金属酸化物を析出する2つの性質を兼備する。ここでは、金属酸化物を酸化チタンTiOとし、チタン化合物の実施形態から説明する。
最初に、メタノールに分散するチタン化合物を説明する。塩化チタンはメタノールに溶解する。酸化チタンはメタノールに分散しない。このため、これら低分子量の無機チタン化合物は、メタノールに分散しない。
なお、18段落で説明した無機物の分子ないしは無機物のイオンからなる配位子が、チタンイオンに配位結合したチタン錯イオンとして、チタン錯イオン[TiClO]2-を有する無機金属化合物があるが、配位結合が安定でない。
次に、有機チタン化合物について説明する。有機チタン化合物は、熱分解によって二酸化チタンTiOを析出する。有機チタン化合物から酸化チタンが生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応のひとつに熱分解反応がある。つまり、有機チタン化合物を昇温するだけで、熱分解によって酸化チタンが析出する。さらに、有機チタン化合物の合成が容易でれば、有機チタン化合物が安価に製造できる。これらの性質を兼備する有機チタン化合物に、カルボン酸チタン化合物がある。
つまり、カルボン酸チタン化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質はチタンイオンTi4+である。いっぽう、チタンイオンTi4+とカルボキシラートアニオン(R-CO )とが共有結合するカルボン酸チタン化合物は、チタンイオンと酸素イオンとの距離が最大になるため、熱分解でチタンを析出する。このため、熱分解で酸化チタンを析出するカルボン酸チタン化合物は、チタンイオンTi4+にカルボキシラートアニオン(R-CO )が近づき、これによって、カルボキシラートアニオン(R-CO )がチタンイオンTi4+の反対側で結合するイオンと結合する距離が最も長くなる。つまり、カルボキシラートアニオン(R-CO )がチタンイオンTi4+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最も長く、最初にこの結合部が分断され、チタンイオンと結合した酸素イオン、つまり、酸化チタンTiOとカルボン酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸チタン化合物として、カルボキシラートアニオン(R-CO )が配位子になってチタンイオンTi4+に配位結合するカルボン酸チタン化合物がある。
また、有機チタン化合物の中でカルボン酸チタン化合物は、合成が容易で、有機酸の沸点が低くければ熱分解温度が比較的低い。このため、カルボキシラートアニオン(R-CO )が、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物からなる錯体は、安価な工業用薬品であり、熱処理費用も安価で済む。従って、カルボキシラートアニオン(R-CO )がチタンイオンに配位結合したカルボン酸チタン化合物は、熱分解で酸化チタンを析出する安価な工業用薬品である。
こうしたカルボン酸チタン化合物として、酢酸チタン、カプリル酸チタン、安息香酸チタン、ナフテン酸チタンなどが挙げられる。しかし、酢酸チタンとカプリル酸チタンは、配位結合が安定していないため、熱分解で酸化チタンを析出しない。いっぽう、安息香酸の沸点は249℃であり、テトラ安息香酸チタンTi(CCOO)は大気雰囲気の310℃で熱分解して酸化チタンを析出し、ナフテン酸チタンより熱分解温度が低い。
また、カルボン酸バナジウム化合物の中で、ナフテン酸バナジウムを除くカルボン酸バナジウム化合物は、配位結合が安定していないため、熱分解で酸化バナジウムを析出しない。いっぽう、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で、一般式がC2n-1COOHで示され、主成分の沸点が268℃で、分子量が170のC17COOHからなる。従って、ナフテン酸バナジウムは大気雰囲気の330℃で熱分解して、酸化バナジウムを析出する。
なお、カルボン酸のカルボキシラートアニオン(R-CO )が配位子になって、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物は有機金属化合物からなる錯体である。一方、18段落で説明した錯体は、無機物の分子ないしは無機物のイオンが配位子となって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体である。また、配位子と金属錯イオンと結合する無機物とが、カルボン酸に比べて分子量が小さいため、無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より低い。
実施例1
本実施例は、熱分解で銀を析出する無機銀化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する。無機銀化合物として、17段落の実施形態1で説明した塩化ジアンミン銀(例えば、田中貴金属工業株式会社の製品)を用いた。また、液体の有機化合物として、12段落に記載した炭素原子の数が11からなるn-ウンデカン(例えば、ENEOS株式会社の製品)を用いた。
最初に、容器に2.5リットルのメタノールを充填し、塩化ジアンミン銀の177.5g(1モルに相当する)をメタノールに分散した。さらに、容器を65℃に昇温し、メタノールを気化し、塩化ジアンミン銀の結晶を析出させた。この後、塩化ジアンミン銀の結晶の集まりを、10cm×10cm×2cmの容器に移した。さらに、塩化ジアンミン銀の結晶の集まりの上に、10cm×10cm×1cmの板を被せ、板の上に10kgの重りを載せ、この後、重りを取り除き、容器に対し、前後、左右、上下の3方向の0.3Gからなる衝撃加速度を繰り返し加えた。こうした圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とを、3回繰り返した後に、重りを板の上に載せたが、板が全く沈まなかったため、処理を停止した。この後、板を容器から取り外し、容器に、93gのn-ウンデカンを混合し、第一の懸濁液を作成した。なお、n-ウンデカンの体積は、塩化ジアンミン銀の体積より27%多い。この後、容器内に、超音波ホモジナイザー装置(例えば、ヤマト科学株式会社の製品LUH300)のホーンを浸漬させ、20kHzの超音波振動を容器内の第一の懸濁体に2分間加え、容器内に第二の懸濁液を作成した。
なお、圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とを終えた塩化ジアンミン銀の結晶の一部を取り出し、電子顕微鏡で、試料の観察と分析とを行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。
試料からの反射電子線の900-1000Vの間にある2次電子線を取り出し画像処理を行なった。試料は20nm前後の大きさからなる有機物の集まりで形成されていた。このため、塩化ジアンミン銀の結晶は、20nm前後の大きさに粉砕された。
実施例2
本実施例は、実施例1で製造した懸濁液から、銀のナノ粒子の集まりを析出させる。
実施例1で製造した懸濁液の一部を容器に移し、該容器をアンモニアガス雰囲気の焼成炉に配置し、180℃まで昇温し、180℃に5分間放置させた。その後、容器を真空ベルジャー内に配置させ、真空ベルジャー内の圧力を100パスカルまで減圧し、n-ウンデカンを気化した。さらに、真空ベルジャーを大気圧に戻し、容器内の試料を、実施例1で用いた電子顕微鏡で観察と分析を行った。
この結果、試料は、10nm前後の大きさからなる銀のナノ粒子の集まりであった。なお、容器を僅かに動かしただけで、容器内のナノ粒子が簡単に動いたため、銀のナノ粒子は凝集せず、個々のナノ粒子が分離していると思われる。図1に、析出した銀のナノ粒子の集まりを、模式的に図示する。1は銀のナノ粒子である。
なお、n-ウンデカンの沸点は196℃で、塩化ジアンミン銀の熱分解温度180℃より16℃だけ高い。従って、塩化ジアンミン銀の微細結晶を熱分解した懸濁液を、速やかに真空ベルジャー内に移せば、懸濁液の温度の低下は抑制され、n-ウンデカンは一定の蒸気圧を持つ。このため、真空ベルジャー内の圧力を100パスカルまで減圧させ、n-ウンデカンを確実に懸濁液から気化させた。
なお、銀は比抵抗が低く、比較的酸化されにくい物質であるため、電子配線などの導電材料として用いられる。例えば、銀のナノ粒子は、比表面積が大きいため、銀のナノ粒子を昇温すると、活性化されたナノ粒子になり、低温で融着しやすい性質を持つ。このため、活性化した銀のナノ粒子の融点が下がり、鉛フリーのはんだ代替材料として用いられる。また、インクジェットプリンタなどを用いた印刷法による電子配線の形成に用いられる。
また、銀イオンの抗菌性はよく知られているが、銀をナノ粒子化すると、比表面積が著しく増大し、表面原子の増大によって銀のイオン化が促進され、銀の抗菌性がさらに高まり、抗菌材への応用が可能になる。さらに、貴金属はバルクでは安定な物質であるが、ナノ粒子化することにより強い触媒活性を発現する。従って、銀のナノ粒子は、様々な触媒作用を持つ工業製品への応用が可能になる。
実施例3
本実施例は、18段落に記載した熱分解で銅を析出するオクチル酸銅(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)の微細結晶が、14段落に記載したラウリン酸ブチル(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社の製品)で囲まれ、ラウリン酸ブチルに分散した懸濁液を製造する。
最初に、容器に2リットルのメタノールを充填し、オクチル酸銅の140g(0.4モルに相当する)をメタノールに分散した。さらに、容器を65℃に昇温し、メタノールを気化し、オクチル酸銅の結晶を析出させた。この後、オクチル酸銅の結晶の集まりを、10cm×10cm×2cmの容器に移した。さらに、オクチル酸銅の結晶の集まりの上に、10cm×10cm×1cmの板を被せ、板の上に10kgの重りを載せ、さらに、重りを取り除き、容器に対し、前後、左右、上下の3方向の0.3Gからなる衝撃加速度を繰り返し加えた。こうした圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とを、3回繰り返した後に、重りを板の上に載せたが、板が全く沈まなかったため、処理を停止した。この後、板を容器から取り外し、容器に、150gのラウリン酸ブチルを混合し、第一の懸濁液を作成した。なお、ラウリン酸ブチルの体積は、オクチル酸銅の体積より35%多い。この後、容器内に、実施例1で用いた超音波ホモジナイザー装置のホーンを浸漬させ、20kHzの超音波振動を容器内の第一の懸濁体に2分間加え、容器内に第二の懸濁液を作成した。
なお、実施例1と同様に、粉砕したオクチル酸銅の結晶の一部を取り出し、電子顕微鏡で、試料の観察と分析とを行なった。試料は20nm前後の大きさからなる有機物で形成されていた。このため、オクチル酸銅の結晶は、20nm前後の大きさに粉砕された。
実施例4
本実施例は、実施例3で製造した懸濁液から、銅のナノ粒子の集まりを析出させる。
実施例3で製造した懸濁液の一部を容器に移し、該容器を大気雰囲気の焼成炉に配置し、290℃まで昇温し、290℃に1分間放置させた。その後、容器を真空ベルジャー内に配置させ、真空ベルジャー内の圧力を100パスカルまで減圧し、ラウリン酸ブチルを気化した。さらに、真空ベルジャーを大気圧に戻し、容器内の試料を、実施例1で用いた電子顕微鏡で観察と分析を行った。
この結果、試料は、10nm前後の大きさからなる銅のナノ粒子の集まりであった。なお、容器を僅かに動かしただけで、容器内のナノ粒子が簡単に動いたため、銅のナノ粒子は凝集せず、個々のナノ粒子が分離していると思われる。
なお、ラウリン酸ブチルの沸点は306℃で、オクチル酸銅の熱分解温度290℃より16℃だけ高い。従って、オクチル酸銅の微細結晶を熱分解した懸濁液を、速やかに真空ベルジャー内に移せば、懸濁液の温度の低下は抑制され、ラウリン酸ブチルは一定の蒸気圧を持つ。このため、真空ベルジャー内の圧力を100パスカルまで減圧させ、ラウリン酸ブチルを確実に懸濁液から気化させた。
なお、銅のナノ粒子の原料であるオクチル酸銅は、銀のナノ粒子の原料である塩化ジアンミン銀より安価である。従って、銅のナノ粒子の集まりは、実施例2で作成した銀のナノ粒子の集まりより安価である。また、銅のナノ粒子は、銀のナノ粒子と同様に、比表面積が大きいため、銅のナノ粒子を昇温すると、活性化されたナノ粒子になり、低温で融着する性質を持つため、銀のナノ粒子と同様にバルクより著しく低温で接合する接合材として用いることができる。従って、銅のナノ粒子は、銀のナノ粒子と同様に、鉛フリーのはんだ代替材料として用いられる。また、インクジェットプリンタなどを用いた印刷法による電子配線の形成に用いられる。
実施例5
本実施例は、19段落に記載した熱分解で酸化チタンを析出するテトラ安息香酸チタン(例えば、シグマ・アルドリッチ社の製品)の微細結晶が、16段落に記載したラウリン酸ヘキシル(例えば、高級アルコール工業株式会社の製品)に分散した懸濁液を製造する。
最初に、容器に2リットルのメタノールを充填し、テトラ安息香酸チタンの160g(0.3モルに相当する)をメタノールに分散した。さらに、容器を65℃に昇温し、メタノールを気化し、テトラ安息香酸チタンの結晶を析出させた。この後、テトラ安息香酸チタンの結晶の集まりを、10cm×10cm×2cmの容器に移した。さらに、テトラ安息香酸チタンの結晶の集まりの上に、10cm×10cm×1cmの板を被せ、板の上に10kgの重りを載せ、さらに、重りを取り除き、容器に対し、前後、左右、上下の3方向の0.3Gからなる衝撃加速度を繰り返し加えた。こうした圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とを、3回繰り返した後に、重りを板の上に載せたが、板が全く沈まなかったため、処理を停止した。この後、板を容器から取り外し、容器に、150gのラウリン酸ヘキシルを混合し、第一の懸濁液を作成した。なお、ラウリン酸ヘキシルの体積は、テトラ安息香酸チタンの体積より22%多い。この後、容器内に、実施例1で用いた超音波ホモジナイザー装置のホーンを浸漬させ、20kHzの超音波振動を容器内の第一の懸濁体に2分間加え、容器内に第二の懸濁液を作成した。
なお、実施例1と同様に、粉砕したテトラ安息香酸チタンの結晶の一部を取り出し、電子顕微鏡で、試料の観察と分析とを行なった。試料は20nm前後の大きさからなる有機物で形成されていた。このため、テトラ安息香酸チタンの結晶は、20nm前後の大きさに粉砕された。
実施例6
本実施例は、実施例5で製造した懸濁液から、酸化チタンのナノ粒子の集まりを析出させる。
実施例5で製造した懸濁液の一部を容器に移し、該容器を大気雰囲気の焼成炉に配置し、310℃まで昇温し、310℃に1分間放置させた。その後、容器を真空ベルジャー内に配置させ、真空ベルジャー内の圧力を50パスカルまで減圧し、ラウリン酸ヘキシルを気化した。さらに、真空ベルジャーを大気圧に戻し、容器内の試料を、実施例1で用いた電子顕微鏡で観察と分析を行った。
この結果、試料は、10nm前後の大きさからなる酸化チタンのナノ粒子の集まりであった。なお、容器を僅かに動かしただけで、容器内のナノ粒子が簡単に動いたため、酸化チタンのナノ粒子は凝集せず、個々のナノ粒子が分離していると思われる。
さらに、極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、酸化チタンの結晶構造の解析を行なった。酸化チタンは、正方晶系のアナターゼ型であった。アナターゼ型の酸化チタンは、光触媒活性を持ち、粒子が小さいほど比表面積が大きいため活性度が高い。このため、抗菌、脱臭、大気浄化、セルフクリーニング膜などへの適応が考えられる。本実施例で作成した酸化チタンのナノ粒子は、このような製品への応用が可能になる。
なお、ラウリン酸ヘキシルの沸点は335℃で、テトラ安息香酸チタンの熱分解温度310℃より25℃だけ高い。従って、テトラ安息香酸チタンの微細結晶を熱分解した懸濁液を、速やかに真空ベルジャー内に移せば、懸濁液の温度の低下は抑制され、ラウリン酸ヘキシルは一定の蒸気圧を持つ。このため、真空ベルジャー内の圧力を50パスカルまで減圧させ、ラウリン酸ヘキシルを確実に懸濁液から気化させた。
以上に説明した実施例は、熱分解で銀、銅、酸化チタンのいずれかを析出する金属化合物の微細結晶を、沸点が、金属化合物の熱分解温度より30℃以内の温度だけ高い液体の有機化合物に分散した懸濁液の製造方法に係り、また、該懸濁液を用いて、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを析出させる方法に関わる。
いっぽう、塩化ジアンミン銀の微細結晶をn-ウンデカンに分散した懸濁液は、一つの事例に過ぎず、実施例1に限定されることはない。つまり、無機物からなる分子ないしは無機物からなるイオンが配位子となって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンからなる金属錯体は、17段落に説明したように、様々な無機金化合物からなる金属錯体が存在する。また、無機金化合物からなる金属錯体の微細結晶を分散させる液体の有機化合物は、12段落に記載したように、様々な有機化合物が存在する。従って、実施例1は、懸濁液を製造する一つの事例に過ぎず、実施例1に限定されることはない。また、実施例2で記載した方法に従って懸濁液を処理すれば、金属のナノ粒子が液体の有機化合物で取り囲んで析出し、この後、液体の有機化合物を真空チャンバー内で気化すると、様々な金属からナノ粒子が凝集せずに、個々の金属ナノ粒子の集まりが得られる。従って、実施例2は、銀のナノ粒子が凝集せずに、個々の銀のナノ粒子の集まりが得られる一つの事例に過ぎず、様々な金属からナノ粒子が凝集せずに、個々の金属のナノ粒子の集まりが得られる。
また、オクチル酸銅をラウリン酸ブチルに分散した懸濁液は、一つの事例に過ぎず、実施例3に限定されることはない。つまり、熱分解で金属を析出するオクチル酸金属化合物は、18段落に説明したように、様々なオクチル酸金属化合物が存在する。また、オクチル酸金属化合物を分散させる液体の有機化合物は、14段落に記載したように、様々な有機化合物が存在する。従って、実施例3は、懸濁液を製造する一つの事例に過ぎず、実施例3に限定されることはない。また、実施例4で記載した方法に従って懸濁液を処理すれば、金属のナノ粒子が液体の有機化合物で取り囲んで析出し、この後、液体の有機化合物を真空チャンバー内で気化すると、様々な金属からナノ粒子が凝集せずに、個々の金属ナノ粒子の集まりが得られる。従って、実施例4は、金属のナノ粒子が凝集せずに、個々の金属のナノ粒子の集まりが得られる一つの事例に過ぎず、実施例4に限定されない。
さらに、テトラ安息香酸チタンをラウリン酸ヘキシルに分散した懸濁液は、一つの事例に過ぎず、実施例5に限定されることはない。つまり、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物は、19段落に説明したように、様々なカルボン酸金属化合物が存在する。また、カルボン酸金属化合物を分散させる液体の有機化合物は、16段落に記載したように、様々な有機化合物が存在する。従って、実施例5は、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物を、液体の有機化合物に分散した懸濁液を製造する一つの事例に過ぎず、実施例5に限定されることはない。また、実施例6で記載した方法に従って懸濁液を処理すれば、金属酸化物のナノ粒子が液体の有機化合物で取り囲んで析出し、この後、液体の有機化合物を真空チャンバー内で気化すると、様々な金属酸化物からナノ粒子が得られる。従って、実施例6は、金属酸化物のナノ粒子の集まりが得られる一つの事例に過ぎず、実施例6に限定されることはない。
本発明に依れば、金属ないしは金属酸化物のナノ粒子が凝集せず、個々のナノ粒子に分離しているため、ナノ粒子の集まりは、様々な工業製品への応用が可能になる。さらに、ナノ粒子の大きさは、10nm前後と小さい。従って、本発明は、様々な工業用製品に応用できるナノ粒子の製造に係る発明である。
1 銀のナノ粒子

Claims (5)

  1. 熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法は、
    メタノールに分散するが、メタノールに溶解しない第一の性質と、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する第二の性質を兼備する金属化合物をメタノールに分散し、該金属化合物のメタノール分散液を作成し、この後、該金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させ、該金属化合物の結晶の集まりを析出させる、さらに、該金属化合物の結晶の集まりを容器に充填し、該金属化合物の結晶の集まりの表面全体を覆う板材を、該金属化合物の結晶の集まりの上に被せる、この後、該板材の表面全体に圧縮荷重を加え、前記容器内の前記金属化合物の結晶を粉砕する、さらに、前記容器に前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を繰り返し加え、該容器内の前記粉砕された金属化合物の結晶の集まりを再配列させる、この後、前記板材の表面全体に再度前記圧縮荷重を加え、前記金属化合物の結晶の粉砕をさらに進める、さらに、前記容器に前記3方向の衝撃加速度を再度繰り返し加える、こうした前記圧縮荷重を加える処理と前記衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、前記板材に前記圧縮荷重を加えた際に、該板材からの反発力が発生した時点で、前記一対の処理を停止する、この後、前記板材を前記容器から取り出し、さらに、前記容器に、融点が15℃より低い第一の性質と、前記金属化合物が溶解及び分散しない第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より30℃以内の温度だけ高い第三の性質と、前記金属化合物の熱分解温度で析出した金属ないしは金属酸化物の微粒子と化学反応を起こさない第四の性質と、吸水性を持たない第五の性質からなる5つの性質を兼備する液体の有機化合物を、前記容器内の前記金属化合物の粉砕された結晶の集まりより多い体積からなる該有機化合物の重量として秤量し、該秤量した液体の有機化合物を前記容器に混合し、前記金属化合物の粉砕された結晶の集まりが、前記液体の有機化合物に分散された第一の懸濁液を作成する、さらに、前記容器内に超音波ホモジナイザー装置を配置し、該超音波ホモジナイザー装置の稼働によって、前記第一の懸濁液中に衝撃波を連続して発生させ、該衝撃波が前記金属化合物の粉砕された結晶の集まりに連続して衝突し、該粉砕された結晶が個々の結晶に分離し、該個々の結晶が、前記液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した第二の懸濁液が前記容器内に作成される、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法。
  2. 請求項1に記載した方法で製造した第二の懸濁液から金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを析出させる方法は、
    請求項1に記載した方法で製造した第二の懸濁液の必要となる量を新たな容器に充填し、該新たな容器を、請求項1に記載した金属化合物を熱分解させる雰囲気に晒すとともに、該金属化合物が熱分解する温度に昇温する、これによって、前記新たな容器内に、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が、請求項1に記載した液体の有機化合物に囲まれて析出し、該液体の有機化合物中に前記ナノ粒子の集まりが分散した第三の懸濁液が作成される、この後、該第三の懸濁液が充填された前記新たな容器を真空チャンバー内に移し、真空ポンプによって前記真空チャンバー内の圧力を、該新たな容器内の前記第三の懸濁液の温度における前記液体の有機化合物の蒸気圧より低い圧力に減圧させ、前記第三の懸濁体から前記液体の有機化合物を気化させる、これによって、前記新たな容器に、前記金属ないしは前記金属酸化物からなるナノ粒子の集まりが析出する、請求項1に記載した方法で製造した第二の懸濁液から金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを析出させる方法。
  3. 請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法は、
    請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、無機物の分子ないしは無機物のイオンが配位子となって金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩で構成された無機金属化合物であり、請求項1に記載した液体の有機化合物が、炭素原子の数が11-13からなるアルカン、ないしは、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、脂肪族アルコール類に属するいずれか1種類の有機化合物であり、前記無機金属化合物を、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、前記アルカン、ないしは、前記カルボン酸エステル類、ないしは、前記脂肪族アルコール類に属するいずれか1種類の有機化合物を、請求項1に記載した液体の有機化合物として用い、請求項1に記載した懸濁液を製造する方法に従って懸濁液を製造する、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法。
  4. 請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法は、
    請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、オクチル酸金属化合物であり、請求項1に記載した液体の有機化合物が、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類に属する1種類の有機化合物であり、前記オクチル酸金属化合物を、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、前記飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類に属する1種類の有機化合物を、請求項1に記載した液体の有機化合物として用い、請求項1に記載した懸濁液を製造する方法に従って懸濁液を製造する、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法。
  5. 請求項1に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法は、
    請求項1に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物からなる錯体であり、請求項1に記載した液体の有機化合物が、飽和脂肪酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、不飽和脂肪酸類に属するいずれか1種類の有機化合物であり、前記カルボン酸金属化合物を、請求項1に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物として用い、前記カルボン酸エステル類、ないしは、前記不飽和脂肪酸類に属するいずれか1種類の液体の有機化合物を、請求項1に記載した液体の有機化合物として用い、請求項1に記載した懸濁液を製造する方法に従って懸濁液を製造する、請求項1に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物の微細結晶が、液体の有機化合物で囲まれ、該液体の有機化合物中に分散した懸濁液を製造する方法。
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