JP5049568B2 - 金属分散液の製造方法 - Google Patents
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そこで、広範囲の塗装方法に適用できるアルコール溶媒中で分散安定性に優れた金属分散液が求められており、また、バインダー成分等の配合量を任意に設計し易くするためにも、高濃度の金属分散液が求められている。
本発明の金属分散液は、電気的導通を確保する材料、帯電防止、電磁波遮蔽、金属光沢を付与する材料などに用いられ、特に、塗膜の導電性を活用したプリント配線基板等の微細電極及び回路配線パターンの形成、塗膜の鏡面を活用した意匠・装飾用途に用いられる。
(1)金属粒子
本発明で用いる金属粒子は、その構成成分、粒子径等には特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。構成成分としては、1種の金属であっても、合金にしたり積層するなど2種以上の金属で構成されても良い。その金属成分としては周期表VIII族(鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)及びIB族(銅、銀、金)からなる群より選ばれる少なくとも1種であれば、導電性が高いので好ましく、中でも銀、金、白金、パラジウム、銅は特に導電性が高くより好ましく、電極、回路配線パターン形成用の金属分散液に用いるには、導電性とコストのバランスから銀又は銅が特に好ましい。また、金属粒子には、製法上不可避の酸素、異種金属等の不純物を含有していても良く、あるいは、金属粒子の急激な酸化防止のために必要に応じて予め酸素、金属酸化物やメルカプトカルボン酸以外の有機化合物などが含まれていても良い。金属粒子の粒子径は、入手し易いことから1nm〜10μm程度の平均粒子径を有する金属粒子を適宜用いるのが好ましく、1nm〜1μm程度の平均粒子径の金属粒子がより好ましく、多方面の用途に用いることができることから1〜100nm程度の平均粒子径を有する金属コロイド粒子が更に好ましく、より微細な電極、回路配線パターンを得るためには、5〜50nmの範囲の平均粒子径を有する金属コロイド粒子を用いるのが更に好ましい。本発明では1種の金属粒子を用いても良いし、2種以上の金属粒子を混合して用いても良く、例えば平均粒子径が異なる2種以上の金属粒子、構成成分が異なる2種以上の金属粒子を混合して用いても良い。
メルカプトカルボン酸及び/又はその塩は、分子内に硫黄元素とカルボキシル基とを含む有機化合物である。本発明では前述のように、この硫黄元素が金属粒子と化学結合しているものと考えられるが、メルカプトカルボン酸及び/又はその塩が金属粒子表面に吸着又は沈着した状態にあっても良く、一部が化学結合し残部が吸着、沈着した状態でも良い。電極や配線パターンの形成に用いる場合は、低分子量のものを用いると熱分解し易く、形成後の電極、配線パターン中に残留し難いので好ましく、分子量が200以下であれば好ましく、180以下であればいっそう好ましい。そのようなメルカプトカルボン酸として、例えば、メルカプトプロピオン酸(分子量106)、メルカプト酢酸(同92)、チオジプロピオン酸(同178)、メルカプトコハク酸(同149)、ジメルカプトコハク酸(同180)、チオジグリコール酸(同150)、システイン(同121)等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。中でも、メルカプトプロピオン酸の効果が高く好ましい。また、メルカプトカルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
酸は、本発明ではメルカプトカルボン酸及び/又はその塩とアルコールとの反応を促進させる働きをするもので、無機酸、有機酸のいずれも用いることができ、100%濃度での酸度関数(H0)が−5以下の強酸が好ましい。そのような強酸としては、例えば、硫酸(H0=−11.9)、硝酸(H0=−6.3)、弗酸(H0=−10.2)、トリフルオロメタンスルホン酸(H0=−14.9)等が挙げられる。中でも、硫酸及び/又は硝酸の効果が高く好ましい。
アルコールとしては金属粒子を分散するものであればどのようなものでも使用できるが、メルカプトカルボン酸及び/又はその塩との反応を行い得るものが好ましく、反応性が高い低級アルコールがより好ましく、これが有するアルキル基の炭素数が6以下であれば、優れた分散安定性の金属分散液が得られ易いのでより好ましく、直鎖状、分枝状、環状等の種々の構造様態を制限無く用いることができる。中でも、メタノール及び/又はエタノールは効果が大きく、好ましい低級アルコールである。また、エステル化反応後に固液分離して改めて分散させる際に用いるアルコールを含む溶媒としては、エステル化反応と同種のアルコール又は異種のアルコールを用いることができるが、同種のアルコールを用いるのが金属粒子の分散安定性を保持できるため好ましい。また、本発明の効果を損ねない範囲でなら、他の溶媒を含んでも良い。但し、アルコールに水が含まれていると、生成したメルカプトカルボン酸エステルが、経時的に加水分解が進行してメルカプトカルボン酸に戻り、分散安定性が低下してしまうので、水分が5%以下のものを用いるのが好ましい。
電極、回路配線パターンは、前記金属分散液を、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の方法により、基板に塗布した後、塗布物を適当な温度で加熱焼成して得られる。また、塗膜は、前記金属分散液を、例えば、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、刷毛塗り等の方法により、基材に塗布し乾燥して得られる。あるいは、スクリーン印刷やインクジェット印刷などの印刷方法や転写方法を用いて塗膜を形成することもできる。
装飾を施す物品の具体例としては、(1)自動車、トラック、バスなどの輸送機器の外装、内装、バンパー、ドアノブ、サイドミラー、フロントグリル、ランプの反射板、表示機器等、
(2)テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、パーソナルコンピューター、携帯電話、カメラなどの電化製品の外装、リモートコントロール、タッチパネル、フロントパネル等、
(3)家屋、ビル、デパート、ストアー、ショッピングモール、パチンコ店、結婚式場、葬儀場、神社仏閣などの建築物の外装、窓ガラス、玄関、表札、門扉、ドア、ドアノブ、ショーウインド、内装等、
(4)照明器具、家具、調度品、トイレ機器、仏壇仏具、仏像などの家屋設備、
(5)金物、食器などの什器、
(6)飲料水、タバコなどの自動販売機、
(7)合成洗剤、スキンケア、清涼飲料水、酒類、菓子類、食品、たばこ、医薬品などの容器、
(8)表装紙、ダンボール箱などの梱包用具、
(9)衣服、靴、鞄、メガネ、人口爪、人口毛、宝飾品などの衣装・装飾品、
(10)野球のバット、ゴルフのクラブなどのスポーツ用品、つり具などの趣味用品、
(11)鉛筆、色紙、ノート、年賀はがきなどの事務用品、机、椅子などの事務機器、
(12)書籍類のカバーやオビ等、人形、ミニカーなどのおもちゃ、定期券などのカード類、CD、DVDなどの記録媒体、などが挙げられる。また、人間の爪、皮膚、眉毛、髪の毛などを基材とすることができる。
(金属コロイド粒子の調製)
金属化合物として硝酸銀50gと3−メルカプトプロピオン酸1.6gを純水220ミリリットルに溶解し、28%アンモニア水70ミリリットルを加え、pHを11.6に調整した。一方、28%アンモニア水4ミリリットルを加えた295ミリリットルの純水に還元剤として水素化ホウ素ナトリウム2.1gを溶解した。両者を30分間かけて600ミリリットルの純水中に撹拌しながら同時に滴下し、硝酸銀を還元して、3−メルカプトプロピオン酸が表面に存在する銀コロイド粒子を溶媒中に生成させた。次いで、得られた銀コロイド粒子の溶媒を、硝酸(30%)を用いて溶媒のpHを2.5に調整し、銀コロイド粒子を沈降させ、真空ろ過機で銀コロイド粒子(銀コロイド粒子1000重量部に対し、メルカプトプロピオン酸を3重量部含む。銀コロイド粒子の平均粒子径は約10nm)をろ別し、ろ液の比導電率が10μS/cm以下になるまで水洗した後、真空乾燥機にて水分を除去し、銀コロイド粉末(X)を得た。
得られた銀コロイド粉末(X)をメタノールと硝酸の混合溶媒中(硝酸は銀コロイド粒子に対し1重量%に相当)に撹拌混合して、分散させた後、30分間撹拌して本発明の金属分散液(銀コロイド粒子濃度:30重量%)を得た。これを試料Aとする。
実施例1において、硝酸を硫酸に替えたこと以外は同様にして調製し、本発明の金属分散液を得た。これを試料Bとする。
実施例1で得た銀コロイド粉末(X)をエタノールと硝酸の混合溶媒中(硝酸は銀コロイド粒子に対し1重量%に相当)に撹拌混合して、分散させた後、50℃に加温し、30分間撹拌して参考例の金属分散液(銀コロイド粒子濃度:30重量%)を得た。これを試料Cとする。
実施例1において、メタノールをメチルイソブチルケトンに替えたこと以外は同様にして調製し、比較対象の金属分散液を得た。これを試料Dとする。
(金属コロイド粒子の調製)
金属化合物として硝酸銀39.4gを純水に溶解した水溶液60ミリリットルを、表面保護剤としてクエン酸3ナトリウム2水和物262.8g、還元剤として硫酸第一鉄7水和物129.2gを、純水800ミリリットルに溶解した水溶液に、撹拌しながら20分間かけて滴下し、硝酸銀を還元して、クエン酸3ナトリウムが表面に存在する銀コロイド粒子を溶媒中に生成させた。次いで、得られた銀コロイド粒子の溶媒を、遠心分離機を用いて98000m/s2で30分間遠心分離を行い、沈降分を回収して800ミリリットルの純水に再分散させ、更に、98000m/s2で30分間遠心分離を行い沈降分を除去し、水性銀コロイド溶液を得た。この水性銀コロイド溶液の比導電率を測定したところ、10μS/cm以下であった。得られた水性銀コロイド溶液にアセトン800ミリリットルを添加し、銀コロイド粒子を凝集させ、再度、29400m/s2で30分間遠心分離して沈降分を回収し、真空乾燥機にて水分を除去し、銀コロイド粉末(Y)を得た。
前記の銀コロイド粉末(Y)をメタノールと硝酸の混合溶媒中(硝酸は銀コロイド粒子に対し1重量%に相当)に撹拌混合して、分散させた後、30分間撹拌して比較対象の金属分散液(銀コロイド粒子濃度:30重量%)を得た。これを試料Eとする。
実施例1、2、参考例1、比較例1〜2で得られた金属分散液(試料A〜E)を、3日間静置した後、溶媒中の固形分濃度を測定した。固形分濃度が高い程、分散安定性に優れている。結果を表1に示す。本発明の金属分散液は、分散安定性に優れていることが判る。
Claims (6)
- 金属粒子100重量部に対し0.5〜5重量部の範囲の酸の存在下で、金属粒子100重量部に対し0.05〜20重量部の範囲のメルカプトカルボン酸及び/又はその塩を粒子表面に有する金属粒子とメタノールとを加熱することなく混合して、金属粒子をメタノールに分散させることを特徴とする金属分散液の製造方法。
- メルカプトカルボン酸がメルカプトプロピオン酸であることを特徴とする請求項1記載の金属分散液の製造方法。
- 酸が硫酸及び/又は硝酸であることを特徴とする請求項1記載の金属分散液の製造方法。
- 金属粒子を構成する金属が鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀及び金から選ばれる少なくても1種であることを請求項1記載の金属分散液の製造方法。
- 金属粒子が銀粒子であることを特徴とする請求項4記載の金属分散液の製造方法。
- 金属粒子の濃度が10重量%以上であることを特徴とする請求項1記載の金属分散液の製造方法。
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