JP2022032118A - 金属皮膜の成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ニッケルイオン濃度を高くすることができ、さらに高温成膜条件においても組成が維持される成膜用金属溶液を用いてニッケル皮膜を均一に形成させる方法を提供する。【解決手段】陽極と、陰極となる基材との間に、溶質及び溶媒を含む成膜用金属溶液を含有する固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜を前記基材に接触させると共に、前記陽極と前記基材との間に電圧を印加し、前記固体電解質膜の内部に含有された前記溶質由来の金属イオンから金属を前記基材の表面に析出させることにより、前記金属からなる金属皮膜を前記基材の表面に成膜する金属皮膜の成膜方法であって、前記溶質が、酢酸ニッケルであり、前記溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はジメチルスルホキシド(DMSO)である、前記方法に関する。【選択図】図11

Description

本発明は金属皮膜を成膜するための方法に関し、特に、固体電解質膜を基材に接触させて前記基材の表面にニッケル皮膜を成膜する方法に関する。
従来から、電子回路基材などを製造する際には、ニッケル回路パターンを形成すべく、基材の表面にニッケル皮膜が成膜される。たとえば、このような金属皮膜の成膜技術として、特許文献1に記載されているように、ニッケルイオンと、錯化剤と、還元剤とを含む無電解ニッケルめっき液であって、一般式:R-NC又はCN-R-NC(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環式基であって、これらはエーテル結合を有していてもよい)で表されるイソシアニド系物質を少なくとも1種さらに含むことを特徴とする無電解ニッケルめっき液を用いて無電解めっき処理により金属皮膜を成膜したり、スパッタリングなどのPVD法により金属皮膜を成膜したりする成膜技術が提案されている。
しかしながら、無電解めっき処理などのめっき処理をおこなった場合には、めっき処理後の水洗が必要であり、水洗された廃液を処理する必要があった。また、スパッタリングなどのPVD法により基材表面に成膜をおこなった場合には、被覆された金属皮膜に内部応力が生じるため、膜厚を厚膜化するには制限があり、特に、スパッタリングの場合には、高真空化でしか、成膜できない場合があった。
このような点を鑑みて、例えば、図1のA)に示すように、多孔質体からなる陽極11と、陽極11と陰極となる基材Bとの間において陽極11側に成膜用の金属イオンを含む溶液(以下、「成膜用金属溶液」ともいう)Lが接触するように配置された固体電解質膜13と、陽極11と基材Bとの間に電圧を印加する電源部(図示せず)と、を少なくとも備えた成膜装置が提案されている(例えば特許文献2)。
ここで、成膜装置のハウジング15には、成膜用金属溶液Lを収容する収容部19が形成されており、収容部19の成膜用金属溶液Lを陽極11を介して固体電解質膜13に供給可能なように、陽極11及び固体電解質膜13が配置されている。
このような成膜装置を用いて、陽極11と基材Bとの間に電源部で電圧を印加して、固体電解質膜13の内部に含有された金属イオンから金属を基材Bの表面に析出させることにより金属からなる金属被膜Fを、基材Bの表面に成膜することができる。
しかしながら、前記構成での方法を用いた場合、例えば金属種が、金属析出電位が水素還元電位より卑であるニッケルであり、電流効率が100%を下回る条件下では、固体電解質膜13と基材Bとの間に水の電気分解に起因する水素ガスが発生し(図2のNiの電位-pH図参照)、この発生した水素ガスが固体電解質膜13と基材Bと間に滞留することがあった。滞留した水素ガスは、図1のA)に示すように、気泡となって、固体電解質膜13とこれに圧着した基材Bとの間に存在することになるため、この部分において金属の析出が妨げられることがあった。これにより、図1のB)に示すように、金属皮膜Fに析出不良部(金属皮膜Fの未析出部、ボイドともいう)が形成され、均一な金属皮膜が得られないことがあった。
このような点を鑑みて、特許文献3には、陽極と、陰極となる基材との間に固体電解質膜を配置し、該固体電解質膜を基材に接触させると共に、前記陽極と前記基材との間に電圧を印加し、該固体電解質膜の内部に含有された金属イオンから金属を前記基材の表面に析出することにより、前記金属からなる金属皮膜を前記基材の表面に成膜する際に、前記固体電解質膜に前記金属イオンを供給するための成膜用金属溶液を用いた金属皮膜の成膜方法であって、前記金属皮膜の成膜方法は、前記陽極に多孔質体からなる陽極を用い、前記陽極に前記成膜用金属溶液を流しつつ、前記陽極に流れている前記成膜用金属溶液を前記固体電解質膜に接触させながら、前記金属皮膜を成膜する、又は、前記陽極と前記固体電解質膜との間に、間隙を設け、前記間隙に前記成膜用金属溶液を流しつつ、前記間隙に流れている前記成膜用金属溶液を前記固体電解質膜に接触させながら、前記金属皮膜を成膜するものであり、前記成膜用金属溶液は、溶媒と、該溶媒中にイオンの状態で溶解した前記金属を含み、前記金属は、ニッケルであり、前記溶媒は、メタノール、エタノール、及びプロパノールから選択される少なくとも1種からなるアルコール系溶媒、又は、該アルコール系溶媒に水が添加された溶媒であり、前記成膜用金属溶液の水素イオン濃度は、25℃において0~10-7.85mol/Lの範囲にあることを特徴とする金属皮膜の成膜方法が記載されている。
特開2008-280551号公報 国際公開第2013/125643号 特開2016-023338号公報
しかしながら、特許文献3に記載の技術を用いた場合、成膜用金属溶液において、イオン輸送を有利にするためのニッケルイオン濃度の高濃度化が困難であり、さらに、アルコール系溶媒を使用しているため、高温成膜条件における成膜用金属溶液組成の維持もまた困難である。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ニッケルイオン濃度を高くすることができ、さらに高温成膜条件においても組成が維持される成膜用金属溶液を用いてニッケル皮膜を均一に形成させる方法を提供することにある。
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、陽極と、陰極となる基材との間に、溶質及び溶媒を含む成膜用金属溶液を含有する固体電解質膜を配置し、該固体電解質膜を基材に接触させると共に、陽極と基材との間に電圧を印加し、該固体電解質膜の内部に含有された溶質由来の金属イオンから金属を基材の表面に析出させることにより、金属からなる金属皮膜を基材の表面に成膜する金属皮膜の成膜方法において、溶質として酢酸ニッケルを使用し、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はジメチルスルホキシド(DMSO)を使用することにより、成膜用金属溶液中のニッケルイオン濃度を高くすることができ、かつニッケル皮膜を均一に成膜することができることを見出し、本発明を完成した。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)陽極と、陰極となる基材との間に、溶質及び溶媒を含む成膜用金属溶液を含有する固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜を前記基材に接触させると共に、前記陽極と前記基材との間に電圧を印加し、前記固体電解質膜の内部に含有された前記溶質由来の金属イオンから金属を前記基材の表面に析出させることにより、前記金属からなる金属皮膜を前記基材の表面に成膜する金属皮膜の成膜方法であって、
前記溶質が、酢酸ニッケルであり、
前記溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はジメチルスルホキシド(DMSO)である、
前記方法。
本発明によれば、ニッケルイオン濃度を高くすることができ、さらに高温成膜条件においても組成が維持される成膜用金属溶液を用いてニッケル皮膜を均一に形成させる方法が提供される。
固体電解質膜を用いた成膜装置で成膜する際の課題を説明するための図である。 NiのpHと電位の関係を示す図(Niの電位-pH図)である。 本発明の一実施形態に係る金属皮膜の成膜装置の模式的概念図である。 図3に示す金属皮膜の成膜装置による成膜方法を説明するための模式的断面図である。 溶解性及び安定性の確認方法を示すスキームである。 [A]塩化ニッケル(II)六水和物の各溶媒に対する溶解性試験及び安定性試験の結果を示す図である。 [B]酢酸ニッケル(II)四水和物の各溶媒に対する溶解性試験及び安定性試験の結果を示す図である。 [C]硫酸ニッケル(II)六水和物の各溶媒に対する溶解性試験及び安定性試験の結果を示す図である。 [D]硝酸ニッケル(II)六水和物の各溶媒に対する溶解性試験及び安定性試験の結果を示す図である。 [E]スルファミン酸ニッケル(II)四水和物の各溶媒に対する溶解性試験及び安定性試験の結果を示す図である。 実施例1及び2並びに比較例1~4の組み合わせによる成膜用金属溶液を用いて固相電析法(SED)により成膜した試験片外観を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明の金属皮膜の成膜方法は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者がおこない得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
本発明は、陽極と、陰極となる基材との間に、溶質及び溶媒を含む成膜用金属溶液を含有する固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜を前記基材に接触させると共に、前記陽極と前記基材との間に電圧を印加し、前記固体電解質膜の内部に含有された前記溶質由来の金属イオンから金属を前記基材の表面に析出させることにより、前記金属からなる金属皮膜を前記基材の表面に成膜する金属皮膜の成膜方法であって、前記溶質として特定のニッケル化合物を使用し、前記溶媒として特定の化合物を使用する、前記方法に関する。
以下に本発明の実施形態に係る金属皮膜の成膜方法を好適に実施することができる成膜装置について図面を使用して説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る金属皮膜の成膜装置である成膜装置1Aの模式的概念図である。図4は、図3に示す金属皮膜Fの成膜装置1Aによる成膜方法を説明するための模式的断面図である。
図3に示すように、本発明に係る成膜装置1Aは、金属イオンから金属を析出させて、該析出した金属からなる金属皮膜を基材Bの表面に成膜する装置である。ここで、基材Bは、銅やアルミニウムなどの金属材料からなる基材、又は樹脂若しくはシリコン基材の処理表面に金属下地層が形成されている基材を用いる。
成膜装置1Aは、金属製の陽極11と、陽極11と陰極となる基材Bとの間において陽極11の表面に配置された固体電解質膜13と、陽極11と陰極となる基材Bとの間に電圧を印加する電源部14と、を少なくとも備えている。
陽極11は、成膜用金属溶液Lを陽極11に供給するハウジング(金属イオン供給部)15内に収容されている。ハウジング15には上下方向に貫通した貫通部が形成され、その内部空間に陽極11が収容されている。固体電解質膜13には、陽極11の下面を覆うように凹部が形成されており、固体電解質膜13は、陽極11の下部を収容した状態で、ハウジング15の貫通部の下側開口を覆っている。
さらに、ハウジング15の貫通部において、陽極11の上面に接触し、陽極11を加圧するための接触加圧部(金属パンチ)19が配置されている。接触加圧部19は、陽極11を介して固体電解質膜13で基材Bの表面を加圧するものである。具体的には、接触加圧部19は、基材Bの表面のうち金属皮膜Fが成膜される成膜領域を均一に加圧するように、成膜領域に対応した陽極11の表面を加圧する。
本実施形態では、陽極11の下面が基材Bの成膜領域に一致した大きさとなっており、陽極11の上面と下面は同じ大きさである。したがって、後述する加圧手段16の推力により接触加圧部19で陽極11の上面(全面)を加圧すると、陽極11の下面(全面)で固体電解質膜13を介して基材Bの成膜領域(全領域)を均一に加圧することができる。
さらに、ハウジング15の一方側には、成膜用金属溶液Lが収納された溶液タンク17が、供給管17aを介して接続されており、その他方側には、使用後の廃液を回収する廃液タンク18が、廃液管18aを介して接続されている。
ここで、供給管17aは、ハウジング15の、成膜用金属溶液Lの供給流路15aに接続されており、廃液管18aは、ハウジング15の、成膜用金属溶液Lの排出流路15bに接続されている。図4に示すように、ハウジング15の供給流路15aと排出流路15bとを繋ぐ流路には、多孔質からなる陽極11が配置されている。
このように構成することにより、溶液タンク17に収納された成膜用金属溶液Lが、供給管17aを介してハウジング15の内部に供給される。ハウジング15内では、成膜用金属溶液Lが供給流路15aを通過し、供給流路15aから陽極11内に成膜用金属溶液Lが流れる。陽極11内を通過した成膜用金属溶液Lは、排出流路15bを流れ、廃液管18aを介して廃液タンク18に送ることができる。
さらに、接触加圧部19には、加圧手段16が接続されている。加圧手段16は、陽極11を基材Bに向かって移動させることにより、固体電解質膜13を基材Bの成膜領域に加圧するものである。例えば、加圧手段16としては、油圧式又は空気式のシリンダなどを挙げることができる。成膜装置1Aは、基材Bを固定し、陽極11に対して基材Bのアライメントを調整する基台21を備えている。
陽極11は、成膜用金属溶液Lが透過し、かつ固体電解質膜に金属イオンを供給する、多孔質体からなる。このような多孔質体としては、(1)成膜用金属溶液Lに対して耐食性を有し、(2)陽極として作用可能な導電率を有し、(3)成膜用金属溶液Lを透過することができ、(4)後述する接触加圧部19を介して加圧手段16により加圧することができるものであれば、特に限定されるものではなく、たとえば、発泡チタンなど、めっき金属イオンよりもイオン化傾向が低く(あるいは、電極電位が高く)、開気孔の連続気泡体からなる発泡金属体などを挙げることができる。
また、上述した(3)の条件を満たすものであれば、特に限定されるものではないが、発泡金属体を用いる場合には、気孔率50体積%~95体積%程度、孔径50μm~600μm程度、厚さ0.1mm~50mm程度のものが好ましい。
固体電解質膜13は、上述した成膜用金属溶液Lに接触させることにより、金属イオンを内部に含浸することができ、電圧を印加したときに基材Bの表面において金属イオン由来の金属が析出するとこができるのであれば、特に限定されるものではない。固体電解質膜の材質としては、たとえばデュポン社製のナフィオン(登録商標)などのフッ素系樹脂、炭化水素系樹脂、ポリアミック酸樹脂、旭硝子社製のセレミオン(CMV、CMD、CMFシリーズ)などのイオン交換機能を有した樹脂を挙げることができる。
ここで本実施形態では、金属皮膜Fを成膜する装置として陽極11を多孔質体としたが、後述するように、固体電解質膜13に金属イオンを供給することができるのであれば、陽極を多孔質体にしなくとも、陽極と固体電解質膜との間に間隙を設け、この間に成膜用金属溶液を流してもよい。
このような成膜装置1Aを用いた金属皮膜の成膜方法を以下に説明する。まず、図3及び4に示すように、まず、基台21に基材Bを配置し、陽極11に対して基材Bのアライメントを調整し基材Bの温度調整をおこなう。次に、多孔質体からなる陽極11の表面に固体電解質膜13を配置し、固体電解質膜13を基材Bに接触させる。
次に、加圧手段16を用いて、陽極11を基材Bに向かって移動させることにより、固体電解質膜13を基材Bの成膜領域に加圧する。これにより、陽極11を介して固体電解質膜13を加圧することができるので、固体電解質膜13を成膜領域の基材Bの表面に均一に倣わせることができる。すなわち、接触加圧部19により加圧された陽極11をバックアップ材として固体電解質膜13を基材に接触(加圧)しながら、より均一な膜厚の金属皮膜Fを成膜することができる。
次に、電源部14を用いて、陽極11と陰極となる基材Bとの間に電圧を印加し、固体電解質膜13の内部に含有された金属イオンから金属を基材Bの表面に析出させる。陽極11は、金属製の接触加圧部19と直接的に接触しているので、接触加圧部19と導通している。したがって、電源部14により、陽極11と基材Bとの間に電圧を印加することができる。
この際、陽極11内部に、成膜用金属溶液Lを流しながら金属皮膜の成膜をおこなう。このような結果、多孔質体からなる陽極11を用いることにより、成膜用金属溶液Lをその内部に透過させることができ、成膜用金属溶液Lを金属イオンとともに、固体電解質膜13に供給することができる。これにより、成膜時において、多孔質体である陽極11内部に、成膜用金属溶液Lを随時安定して供給することができる。供給された成膜用金属溶液Lは、陽極11内部を透過して、陽極11に隣接する固体電解質膜13に接触し、固体電解質膜13内に金属イオンが含浸される。
そして、陽極11と、陰極となる基材Bと、の間に電圧を印加することにより、固体電解質膜13内の金属イオンは陽極11側から基材B側に移動し、固体電解質膜13の内部に含有された金属イオンから金属が基材Bの表面に析出される。これにより、金属皮膜Fを基材Bの表面に成膜することができる。
これにより、固体電解質膜13で基材Bの成膜領域を均一に加圧することができるので、固体電解質膜13を基材Bの成膜領域に均一に倣わせた状態で金属皮膜を基材に成膜することができる。このような結果、バラつきの少ない均一な膜厚かつ均一な金属皮膜を基材の成膜領域となる表面に成膜することができる。
ところで、成膜用金属溶液Lは、溶質、すなわち、溶媒中にイオンの状態で溶解した金属(金属イオン)と、溶媒とを含むものである。
ここで、溶質は、酢酸ニッケルである。酢酸ニッケルは、無水物であっても、水和物、例えば四水和物であってもよい。酢酸ニッケルは、酢酸ニッケル(II)四水和物が好ましい。酢酸ニッケル中のニッケルは、ニッケルイオンの状態で後述する溶媒中に溶解している。
溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はジメチルスルホキシド(DMSO)である。言い換えると、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される少なくとも1種からなる溶媒である。これらの溶媒は極性を有するため、前記の酢酸イオン中のニッケルに配位することで、ニッケルをイオンの状態で安定して成膜用金属溶液中に含むことができる。また、これらの溶媒は沸点が100℃よりも高く、高温成膜条件において成膜用金属溶液組成が維持される。さらに、これらの溶媒は、プロトン性溶媒ではないため、めっきの際に分解して水素を発生する可能性が少ない。また、これらの溶媒は、一般に工業用途で使用されるため、入手しやすい。
溶質及び溶媒として前記化合物を用いることにより、成膜用金属溶液中の溶質の濃度を、通常0.5mol/L以上、好ましくは1.0mol/L以上に高くすることができ、好適なイオン輸送を確保できると共に、陽極11と基材Bとの間に電圧を印加した際には、水素よりもイオン化傾向が大きいニッケルを、基材Bの表面に均一に析出させることができる。なお、成膜用金属溶液中の溶質の濃度は、各溶媒に対する飽和濃度まで上げることができる。この結果、金属皮膜Fを成膜する際に、水素ガスは発生し難く、均一な金属皮膜Fを得ることができる。
なお、図3及び4を用いて説明した本発明の一実施形態では、成膜用金属溶液は、多孔質体からなる陽極11の表面(又は陽極と固体電解質膜の間の間隙)から固体電解質膜13に絶えず供給され得るが、本発明の別の実施形態では、固体電解質膜として、固体電解質膜を予め成膜用金属溶液に浸漬させて調製した成膜用金属溶液含有固体電解質膜を用いることで、図3及び4に記載の成膜装置を用いない通常の固相電析法でも本発明を実施することができる。あるいは、本発明のさらに別の実施形態は、特開2014-51701号公報に記載の液圧方式を用いて実施することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
1.ニッケル塩(Ni塩)×有機溶媒の選定
以下の[溶解性及び安定性の確認方法]にしたがって、各ニッケル塩の各溶媒(有機溶媒)に対する溶解性及び安定性を確認した。
溶質として使用したニッケル塩は、以下の表1に示すとおりである。
Figure 2022032118000002
溶媒として使用した化合物は、以下の表2に示すとおりである。
Figure 2022032118000003
[溶解性及び安定性の確認方法]
各有機溶媒中に各ニッケル塩を段階的に1mol/Lまで溶解させ、ニッケル塩の溶け残り及び/又は原料以外の沈殿の有無を目視確認することで溶解性を確認した。続いて、溶解試験後の試料をろ過することで溶け残り及び/又は原料以外の沈殿を除去し、その後、ろ液を3日間室温で保管し、保管後のろ液の変化の有無を目視確認することで安定性を確認した。具体的な溶解性及び安定性の確認方法を以下に示す。
(1)溶媒中にニッケル塩を、ニッケル濃度が0.25mol/Lになるように加えて混合物を調製し、得られた混合物を、1日、室温でスターラー撹拌した。ニッケルの溶解性を、溶け残り及び/又は原料以外の沈殿の有無により目視確認した。ニッケル塩が全て溶解した場合には(2)の工程に進み、溶け残り及び/又は原料以外の沈殿が確認された場合には、さらに2日間、室温でスターラー撹拌し、(4)の工程に進んだ。
(2)(1)においてニッケル塩が全て溶解した場合、0.25mol/Lのニッケル溶液に、ニッケル塩をニッケル濃度が0.50mol/Lになるようにさらに加えて混合物を調製し、得られた混合物を、1日、室温でスターラー撹拌した。ニッケルの溶解性を、溶け残り及び/又は原料以外の沈殿の有無により目視確認した。ニッケル塩が全て溶解した場合には(3)の工程に進み、溶け残り及び/又は原料以外の沈殿が確認された場合には、さらに1日、室温でスターラー撹拌し、(4)の工程に進んだ。
(3)(2)においてニッケル塩が全て溶解した場合、0.50mol/Lのニッケル溶液に、ニッケル塩をニッケル濃度が1.00mol/Lになるようにさらに加えて混合物を調製し、得られた混合物を、1日、室温でスターラー撹拌した。ニッケルの溶解性を、溶け残り及び/又は原料以外の沈殿の有無により目視確認し、(4)の工程に進んだ。
(4)(1)~(3)における溶解試験後の試料をろ過することにより、溶け残り及び/又は原料以外の沈殿物を除去し、得られたろ液を3日間室温で保管した。ニッケルの安定性を、3日間室温保管後のろ液の色の変化やにごり物の有無により目視確認した。
図5に溶解性及び安定性確認方法のスキームを示す。
結果を図6~10及び表3に示す。
Figure 2022032118000004
ここで、表3における評価基準は以下のとおりである。
xM:xは飽和濃度(0.25mol/L(M)、0.50M、1.00Mを評価)
○:3日間の安定性あり
×:3日間以内に浮遊析出物が沈降
-:流動性がなかったため、ろ過及び安定性確認できず
2.皮膜形成実験
1.ニッケル塩×有機溶媒の選定の結果から選定された、飽和濃度を1.00M以上にすることができるニッケル塩×有機溶媒の組み合わせ5組([B]-(5)、[B]-(6)、[D]-(1)、[D]-(2)、及び[D]-(5))の成膜用金属溶液と、比較例1としての、純水中に塩化ニッケル(II)及び酢酸ニッケル(II)を溶解させることで調製した水溶性ニッケル溶液とを使用して、以下の条件の固相電析法(SED)により、ニッケル皮膜を形成させた。
[SED構成での処理条件]
成膜用金属溶液:1.ニッケル塩×有機溶媒の選定のなかで、ニッケル塩が1.00Mで安定的に溶解した組み合わせ5組([B]-(5)、[B]-(6)、[D]-(1)、[D]-(2)、及び[D]-(5))、及び比較例1としての水溶性ニッケル溶液(0.95Mの塩化ニッケル(II)+0.05Mの酢酸ニッケル(II))
成膜用金属溶液のニッケル濃度:1.00M
印加電圧:1.5V(500mC/cmの電流が流れるまで印加)(v.s. Ni/Ni2+
成膜面積:1cm
温度:室温
陽極:Niワイヤー(φ8mmSUS棒に巻き付け)
固体電解質膜:Nafion NRE212(DuPont製)
基材:銅板
結果を図11及び表4に示す。
Figure 2022032118000005
図11及び表4より、成膜用金属溶液が、N,N-ジメチルホルムアミドと酢酸ニッケルの組み合わせ、及びジメチルスルホキシドと酢酸ニッケルの組み合わせであるときに、成膜用金属溶液が高ニッケルイオン濃度であっても、SEDにより、均一なニッケル皮膜が得られることがわかった。
1A:成膜装置、11:陽極、13:固体電解質膜、14:電源部、15:ハウジング(金属イオン供給部)、15a:供給流路、15b:排出流路、16:加圧手段、17溶液タンク、17a:供給管、18:廃液タンク、18a:廃液管、19:接触加圧部、21:基台、B:基材(陰極)、L:成膜用金属溶液(ニッケル溶液)

Claims (1)

  1. 陽極と、陰極となる基材との間に、溶質及び溶媒を含む成膜用金属溶液を含有する固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜を前記基材に接触させると共に、前記陽極と前記基材との間に電圧を印加し、前記固体電解質膜の内部に含有された前記溶質由来の金属イオンから金属を前記基材の表面に析出させることにより、前記金属からなる金属皮膜を前記基材の表面に成膜する金属皮膜の成膜方法であって、
    前記溶質が、酢酸ニッケルであり、
    前記溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はジメチルスルホキシド(DMSO)である、
    前記方法。
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