JP2020193353A - ニッケル膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本開示の目的の一つは、表面が均一なニッケル膜を形成可能なニッケル膜の形成方法を提供することである。【解決手段】本実施形態の一態様は、固相電析法によりニッケル膜を形成する方法であって、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程と、電解ニッケルめっき液中に前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極を配置する電極配置工程と、前記電解ニッケルめっき液に、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程と、前記第一の通電工程の後、前記電解ニッケルめっき液を用いて、固相電析法により所定の電流密度及び所定の電気容量でニッケル膜を形成する成膜工程と、を含む、方法である。【選択図】図1
Description
本開示は、ニッケル膜の形成方法に関する。
めっきは金属被膜形成技術として有用な技術であるが、多量の廃液が問題になっている。その点に関し、固相電析法(SED法)は、固体電解質膜(固体)と基板(固体)を接触させて成膜する技術であるため、めっきよりも廃液が少なく、環境負荷を低減することができる。
固相電析法として、例えば、特許文献1では、陽極と、陰極となる基材との間において前記陽極の表面に固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜を基材に接触させると共に、前記陽極と前記基材との間に電圧を印加し、該固体電解質膜の内部に含有されたニッケルイオンからニッケルを前記基材の表面に析出することにより、前記ニッケルからなるニッケル膜を前記基材の表面に成膜する際に、前記固体電解質膜に前記ニッケルイオンを供給するための成膜用ニッケル溶液であって、前記成膜用ニッケル溶液は、pH4.2〜6.1の範囲にあり、前記成膜用ニッケル溶液には、前記成膜時において、前記pHの範囲内で緩衝能を有し、前記ニッケルイオンと不溶性塩及び錯体を形成しないpH緩衝液をさらに含むことを特徴とする成膜用ニッケル溶液が開示されている。特許文献1の技術によれば、固体電解質膜と基材とを接触させた状態で、これらの間に水素ガスが発生することを抑制し、これにより、皮膜中の未析出部(ピンホール)の発生及びヤケの発生を抑え、均一かつ均質なニッケル膜を成膜することができる。
ここで、金属被膜形成技術には、表面が均一なめっき膜が求められる。その点、特許文献1の技術は、固体電解質膜と基板の間に発生する水素ガスを抑制できるが、形成したニッケル膜の表面粗さが大きくなる場合がある。
そこで、本開示の目的の一つは、表面が均一なニッケル膜を形成可能なニッケル膜の形成方法を提供することである。
本実施形態の態様例は、以下の通りに記載される。
(1) 固相電析法によりニッケル膜を形成する方法であって、
第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程と、
電解ニッケルめっき液中に前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極を配置する電極配置工程と、
前記電解ニッケルめっき液に、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程と、
前記第一の通電工程の後、得られた前記電解ニッケルめっき液を用いて、固相電析法により所定の電流密度及び所定の電気容量でニッケル膜を形成する成膜工程と、
を含む、方法。
(2) 前記第一の通電処理は、前記成膜工程における前記所定の電流密度よりも小さい電流密度で行う、(1)に記載の方法。
(3) 前記第一の通電処理は、前記成膜工程における前記所定の電気容量と実質的に同等の電気容量に達するまで行う、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 前記第一の通電工程は、前記第一の通電処理の後に、前記電解ニッケルめっき液を前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で所定の時間放置することを含む、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5) 前記第一の通電工程は、不活性雰囲気下(例えば窒素ガス雰囲気下)で行われる、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6) 前記第一の通電工程の後であって前記成膜工程の前に、前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極の前記固体電解質膜をそれぞれ新しいものに交換し、前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極間の電位を直前の通電処理での電位と反転させた状態で、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で、前記電解ニッケルめっき液に第二の通電処理を施す第二の通電工程を含む、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7) 前記第二の通電処理は、前記成膜工程における前記所定の電流密度よりも小さい電流密度で行う、(6)に記載の方法。
(8) 前記第二の通電処理は、前記成膜工程における前記所定の電気容量と実質的に同等の電気容量に達するまで行う、(6)又は(7)に記載の方法。
(9) 前記第二の通電工程を複数回含む、(6)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
(10) 前記第二の通電工程は、前記第二の通電処理の後に、前記電解ニッケルめっき液を、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で所定の時間放置することを含む、(6)〜(9)のいずれか1つに記載の方法。
(11) 前記第二の通電工程は、不活性雰囲気下(例えば窒素ガス雰囲気下)で行われる、(6)〜(10)のいずれか1つに記載の方法。
(12) 前記電解ニッケルめっき液のpHが、3.0〜6.5である(1)〜(11)のいずれか1つに記載の方法。
(13) 固相電析法によるニッケル膜の形成に用いるための電解ニッケルめっき液を製造する方法であって、
第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程と、
電解ニッケルめっき液中に前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極を配置する電極配置工程と、
前記電解ニッケルめっき液に、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程と、
を含む、方法。
第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程と、
電解ニッケルめっき液中に前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極を配置する電極配置工程と、
前記電解ニッケルめっき液に、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程と、
前記第一の通電工程の後、得られた前記電解ニッケルめっき液を用いて、固相電析法により所定の電流密度及び所定の電気容量でニッケル膜を形成する成膜工程と、
を含む、方法。
(2) 前記第一の通電処理は、前記成膜工程における前記所定の電流密度よりも小さい電流密度で行う、(1)に記載の方法。
(3) 前記第一の通電処理は、前記成膜工程における前記所定の電気容量と実質的に同等の電気容量に達するまで行う、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 前記第一の通電工程は、前記第一の通電処理の後に、前記電解ニッケルめっき液を前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で所定の時間放置することを含む、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5) 前記第一の通電工程は、不活性雰囲気下(例えば窒素ガス雰囲気下)で行われる、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6) 前記第一の通電工程の後であって前記成膜工程の前に、前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極の前記固体電解質膜をそれぞれ新しいものに交換し、前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極間の電位を直前の通電処理での電位と反転させた状態で、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で、前記電解ニッケルめっき液に第二の通電処理を施す第二の通電工程を含む、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7) 前記第二の通電処理は、前記成膜工程における前記所定の電流密度よりも小さい電流密度で行う、(6)に記載の方法。
(8) 前記第二の通電処理は、前記成膜工程における前記所定の電気容量と実質的に同等の電気容量に達するまで行う、(6)又は(7)に記載の方法。
(9) 前記第二の通電工程を複数回含む、(6)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
(10) 前記第二の通電工程は、前記第二の通電処理の後に、前記電解ニッケルめっき液を、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で所定の時間放置することを含む、(6)〜(9)のいずれか1つに記載の方法。
(11) 前記第二の通電工程は、不活性雰囲気下(例えば窒素ガス雰囲気下)で行われる、(6)〜(10)のいずれか1つに記載の方法。
(12) 前記電解ニッケルめっき液のpHが、3.0〜6.5である(1)〜(11)のいずれか1つに記載の方法。
(13) 固相電析法によるニッケル膜の形成に用いるための電解ニッケルめっき液を製造する方法であって、
第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程と、
電解ニッケルめっき液中に前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極を配置する電極配置工程と、
前記電解ニッケルめっき液に、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程と、
を含む、方法。
本開示により、表面が均一なニッケル膜を形成可能なニッケル膜の形成方法を提供することができる。
本実施形態の一態様は、固相電析法によりニッケル膜を形成する方法であって、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程と、電解ニッケルめっき液中に前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極を配置する電極配置工程と、前記電解ニッケルめっき液に、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程と、前記第一の通電工程の後、前記電解ニッケルめっき液を用いて、固相電析法により所定の電流密度及び所定の電気容量でニッケル膜を形成する成膜工程と、を含む、方法である。
本実施形態に係る方法(ニッケル膜の製造方法)では、表面が均一なニッケル膜を形成することができる。表面が均一なニッケル膜を形成できる理由は、以下の通り推測される。なお、以下の理由は推測であり、本実施形態をなんら制限するものではない。まず、第一の理由として、所定の温度での通電により電解ニッケルめっき液中に含まれる緩衝剤(例えば酢酸イオン)とニッケルイオンが原子レベルで近接し、電解ニッケルめっき液が電気化学的に安定することが挙げられる。また、第二の理由として、電解ニッケルめっき液に含まれる不純物が固体電解質膜に吸着して除去され、不純物濃度が低下することが挙げられる。また、電解ニッケルめっき液中で固体電解質膜をガラス転移点以上に加熱することにより、固体電解質膜のイオンチャンネル構造を発達させ、電解ニッケルめっき液に含まれる水が固体電解質膜のイオンクラスター内においてクラスターとなり、水分子はニッケルイオンに配位する。そのため、イオンクラスターの内壁に介在するイオン交換基(例えばスルホン酸基)、水クラスター及びニッケルイオンの微細構造が最適化され、固体電解質膜中へのニッケルイオン拡散を効率化できる。一方、電解ニッケルめっき液を沸点を超えて加熱すると、ニッケル浴中に核沸騰が発生し、イオン交換基(例えばスルホン酸基)、水クラスター及びニッケルイオンの最適微細構造に乱れが生じ、固体電解質膜中へのニッケルイオン拡散が阻害されると考えられる。
以下、本実施形態に係る方法について、詳細に説明する。
(電解質膜設置工程)
本実施形態に係る方法は、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程を含む。
本実施形態に係る方法は、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程を含む。
固体電解質膜は、例えば、加圧によりニッケル電極に取り付けることができる。例えば、固体電解質膜とニッケル電極を接触させ、導電性のない有機材料からなる拘束冶具により、拘束してもよい。
固体電解質膜は、ニッケル電極の表面の一部に取り付けてもよく、又はニッケル電極の全面に取り付けてもよい。
固体電解質膜としては、特に限定するものではないが、例えば、デュポン社製のナフィオン(登録商標)等のフッ素系樹脂、炭化水素系樹脂、ポリアミック酸樹脂、旭硝子社製のセレミオン(CMV、CMD、CMFシリーズ)等のイオン交換機能を有する樹脂を挙げることができる。固体電解質膜は、イオン交換基を有するため、不純物を吸着することができる。
(電極配置工程)
本実施形態に係る方法は、電解ニッケルめっき液中に第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極を配置する電極配置工程を含む。
本実施形態に係る方法は、電解ニッケルめっき液中に第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極を配置する電極配置工程を含む。
電解ニッケルめっき液は、ニッケル化合物を含有する液(電解液)である。ニッケル化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、塩化物若しくは臭化物等のハロゲン化合物、硫酸塩、硝酸塩等の無機塩、酢酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。こられは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ニッケルイオンの濃度は、特に限定するものではないが、例えば、0.1〜2.0mol/Lであり、好ましくは0.8〜1.2mol/Lである。電解ニッケルめっき液としては、例えば、ワット浴、ウッド浴又はスルファミン酸浴等が挙げられる。
また、電解ニッケルめっき液は、pH緩衝剤を含む。pH緩衝剤としては、具体的には、(1)リン酸−リン酸ニッケル緩衝液等の無機緩衝液、(2)酢酸−酢酸ニッケル緩衝液又は酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液等のモノカルボン酸緩衝液、(3)コハク酸−コハク酸ニッケル又はシュウ酸−シュウ酸ニッケル等のジカルボン酸緩衝液、(4)クエン酸−クエン酸ニッケル等のトリカルボン酸緩衝液、(5)アミノカルボン酸等を挙げることができる。これらのうち、酢酸−酢酸ニッケル緩衝液又は酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液等のモノカルボン酸緩衝液が好ましい。
電解ニッケルめっき液のpHは、好ましくは3.0〜6.5であり、より好ましくは3.5〜6.0であり、特に好ましくは3.9〜4.0である。このようなpHに設定することによって、電解ニッケルめっき液の安定性を効果的に向上することができる。
pH緩衝液の濃度は、好ましくは0.1〜2.0mol/L、より好ましくは0.4〜1.0mol/Lである。
(第一の通電工程)
本実施形態に係る方法は、電解ニッケルめっき液に、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程を含む。
本実施形態に係る方法は、電解ニッケルめっき液に、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程を含む。
第一の通電処理において、電解ニッケルめっき液の温度は、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下である。電解ニッケルめっき液の温度を固体電解質膜のガラス転移点以上に設定することにより、固体電解質膜のイオンチャンネル構造を発達させ、電解ニッケルめっき液に含まれる水が固体電解質膜のイオンクラスター内においてクラスターとなり、水分子はニッケルイオンに配位する。そのため、イオンクラスターの内壁に介在するイオン交換性基(例えばスルホン酸基)、水クラスター及びニッケルイオンの微細構造が最適化され、固体電解質膜中へのニッケルイオン拡散を効率化できる。また、電解ニッケルめっき液の温度を水の沸点を超えて設定すると、ニッケル浴中に核沸騰が発生し、イオン交換性基(例えばスルホン酸基)、水クラスター及びニッケルイオンの最適微細構造に乱れが生じ、固体電解質膜中へのニッケルイオン拡散が阻害される。それゆえ、電解ニッケルめっき液の加熱温度の上限は、水の沸点以下とした。なお、固体電解質膜のガラス転移点とは、具体的には、固体電解質膜に含まれるポリマーのガラス転移点である。水の沸点は、1気圧の時に100℃である。第一の通電処理における温度は、例えば60〜95℃、好ましくは65〜85℃、より好ましくは70〜80℃である。
第一の通電処理は、後の成膜工程における所定の電流密度よりも小さい電流密度で行うことが好ましい。一般的に、電解ニッケルめっき液は、溶媒、金属塩、錯化剤、緩衝剤、光沢剤及び/又は表面改質剤等を含む混合物である。めっき金属イオンには、溶媒、金属塩のアニオン、錯化剤、緩衝剤、光沢剤及び/又は表面改質剤が近接し、めっき液内において、最適な微細構造となるようにめっき液が設計されている。固相電析法では、陽極及び陰極の両電極間に固体電解質膜を介在させ、電極間に電位を印加することにより、固体電解質膜に形成されるイオンチャンネル中を、キャリアーとなる金属イオンが移動する。めっき金属イオンには、溶媒、金属塩のアニオン、錯化剤、緩衝剤、光沢剤及び/又は表面改質剤が近接するが、成膜工程における電流密度以上の電流密度で第一の通電処理を実施すると、金属イオンに近接する溶媒、金属塩のアニオン、錯化剤、緩衝剤、光沢剤及び/又は表面改質剤の最適な微細構造に大きな乱れを生じることなく、めっき液を安定系として維持できる。一般に、めっき液は、固体電解質膜のイオンチャンネル径よりも大きく、固体電解質膜を透過できない添加剤を含有する。しかしながら、第一の通電処理を実施すると、固相電析法に有効ではない添加剤を固体電解質膜中に捕捉することができるので、固相電析法を用いた本成膜の際、金属イオンに近接する溶媒、金属塩のアニオン、錯化剤、緩衝剤、光沢剤及び/又は表面改質剤の最適微細構造が得られ、均一なめっき膜を作製することが可能になる。第一の通電処理における電流密度は、好ましくは、0.5〜10A/dm2であり、より好ましくは0.5〜8A/dm2である。
第一の通電処理は、後の成膜工程における所定の電気容量と実質的に同等の電気容量に達するまで行うことが好ましい。第一の通電工程において、所定の電気容量と実質的に同等の電気容量に達するまで行うことが好ましい理由を示す。固相電析法において、めっき膜厚は、ファラディーの法則により、固体電解質膜を透過し、陰極基板にて電析した金属イオンの反応重量から換算する。そのため、第一の通電工程において、所定の電気容量(成膜に十分な電気容量)よりも相当低い電気容量にて通電した場合、固体電解質膜のイオン交換性基(例えばスルホン酸基)の数に対して金属イオン数が不足し、固体電解質膜のイオン交換性基と金属イオンのイオン交換反応が局所的に不十分になり、均一な成膜が得られない可能性がある。また、第一の通電工程において、所定の電気容量(成膜に十分な電気容量)よりも相当高い電気容量にて通電した場合、固体電解質膜中に樹枝状の金属成長が発生して、固体電解質膜の機械強度が低下し、めっき液が漏洩する可能性がある。従って、第一の通電工程において、所定の電気容量と実質的に同等の電気容量に達するまで行うことが好ましい。第一の通電処理における電気容量は、好ましくは6〜300Cであり、より好ましくは18〜90Cである。本明細書において、「実質的に同等の電気容量」とは、成膜工程における電気容量に対して、第一の通電処理における電気容量が、好ましくは80〜120%の範囲、より好ましくは90〜110%の範囲、さらに好ましくは95〜105%の範囲、特に好ましくは99〜101%の範囲であることを言う。
第一の通電工程は、第一の通電処理の後に、電解ニッケルめっき液を固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で所定の時間放置することを含むことが好ましい。通電処理を実施すると、電極間に電界が生じ、極性により、電極間に介在するめっき液中のめっき金属イオンに近接する、溶媒、金属塩のアニオン、錯化剤、緩衝剤、光沢剤及び/又は表面改質剤の微細構造に非平衡系のゆらぎが生じる。しかし、通電処理後に電解ニッケルめっき液を所定の時間放置することにより、熱によるゆらぎのみになり、めっき金属イオンに近接する、溶媒、金属塩のアニオン、錯化剤、緩衝剤、光沢剤及び/又は表面改質剤の微細構造が最適化され、めっき液が安定化する。放置時間は、例えば1〜48時間、好ましくは12〜36時間、より好ましくは20〜28時間である。
第一の通電工程は、不活性雰囲気下(例えば窒素ガス雰囲気下)で行われることが好ましい。不活性雰囲気下で通電処理を行うことにより、電解ニッケルめっき液の酸化を防ぐことができる。
(第二の通電工程)
本実施形態に係る方法は、好ましくは、第一の通電工程の後であって成膜工程の前に、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極の固体電解質膜をそれぞれ新しいものに交換し、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極間の電位を直前の通電処理での電位と反転させた状態で、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で、電解ニッケルめっき液に第二の通電処理を施す第二の通電工程を含む。第二の通電工程を行うことにより、さらに電解ニッケルめっき液を安定化することができ、表面がより均一なニッケル膜を形成することができる。この理由は、以下の通り推測される。第一に、所定の温度での通電処理を更に行うことにより、電解ニッケルめっき液を電気化学的に安定することができる。第二に、新しく交換した固体電解質膜がさらに不純物を吸着し、不純物濃度を低下することができる。なお、以上の理由は推測であり、本実施形態を制限するものではない。
本実施形態に係る方法は、好ましくは、第一の通電工程の後であって成膜工程の前に、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極の固体電解質膜をそれぞれ新しいものに交換し、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極間の電位を直前の通電処理での電位と反転させた状態で、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で、電解ニッケルめっき液に第二の通電処理を施す第二の通電工程を含む。第二の通電工程を行うことにより、さらに電解ニッケルめっき液を安定化することができ、表面がより均一なニッケル膜を形成することができる。この理由は、以下の通り推測される。第一に、所定の温度での通電処理を更に行うことにより、電解ニッケルめっき液を電気化学的に安定することができる。第二に、新しく交換した固体電解質膜がさらに不純物を吸着し、不純物濃度を低下することができる。なお、以上の理由は推測であり、本実施形態を制限するものではない。
第二の通電工程は、1回だけ行ってもよく、又は複数回行ってもよい。第二の通電工程は、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、さらに好ましくは4回以上、特に好ましくは5回以上行うことが好ましい。
第二の通電処理は、第一の通電処理と同様に、後の成膜工程における所定の電流密度よりも小さい電流密度で行うことが好ましい。第二の通電処理における電流密度は好ましくは0.5〜10A/dm2であり、より好ましくは0.5〜8A/dm2である。
第二の通電処理は、第一の通電処理と同様に、後の成膜工程における所定の電気容量と実質的に同等の電気容量に達するまで行うことが好ましい。第二の通電処理における電気容量は、好ましくは6〜300Cであり、より好ましくは18〜90Cである。本明細書において、「実質的に同等の電気容量」とは、成膜工程における電気容量に対して、第二の通電処理における電気容量が、好ましくは80〜120%の範囲、より好ましくは90〜110%の範囲、さらに好ましくは95〜105%の範囲、特に好ましくは99〜101%の範囲であることを言う。
第二の通電工程は、第一の通電処理と同様に、第二の通電処理の後に、電解ニッケルめっき液を固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で所定の時間放置することを含むことが好ましい。放置時間は、例えば1〜48時間、好ましくは12〜36時間、より好ましくは20〜28時間である。
第二の通電工程は、第一の通電処理と同様に、不活性雰囲気下(例えば窒素ガス雰囲気下)で行われることが好ましい。不活性雰囲気下で通電処理を行うことにより、電解ニッケルめっき液の酸化を防ぐことができる。
(成膜工程)
本実施形態に係る方法は、第一の通電工程又は第二の通電工程の後、得られた電解ニッケルめっき液を用いて、固相電析法により所定の電流密度及び所定の電気容量でニッケル膜を形成する成膜工程を含む。
本実施形態に係る方法は、第一の通電工程又は第二の通電工程の後、得られた電解ニッケルめっき液を用いて、固相電析法により所定の電流密度及び所定の電気容量でニッケル膜を形成する成膜工程を含む。
本実施形態に係る方法では、上述の工程で得られた電解ニッケルめっき液を用いて、固相電析法によりニッケル膜を形成する。以下に、図1に記載の成膜装置を用いてニッケル膜を成膜する形態の例について具体的に説明する。
図1は、ニッケル膜Fの成膜装置1Aの模式的概念図である。図2は、図1に示すニッケル膜Fの成膜装置1Aによる成膜方法を説明するための模式的断面図である。
図1に示すように、成膜装置1Aは、ニッケルイオンからニッケルを析出させて、該析出したニッケルからなるニッケル膜Fを基材Bの表面に成膜する装置である。ここで、基材Bは、アルミニウム等の金属材料からなる基材、又は樹脂又はシリコン基材の処理表面に金属下地層が形成されている基材を用いることができる。
成膜装置1Aは、金属製の陽極11と、陽極11と陰極となる基材Bとの間において陽極11の表面に配置された固体電解質膜13と、陽極11と陰極となる基材Bとの間に電圧を印加する電源部14と、を少なくとも備えている。
陽極11は、上述の電解ニッケルめっき液Lを陽極11に供給するハウジング(ニッケルイオン供給部)15内に収容されている。ハウジング15には上下方向に貫通した貫通部が形成され、その内部空間に陽極11が収容されている。固体電解質膜13には、陽極11の下面を覆うように凹部が形成されており、固体電解質膜13は、陽極11の下部を収容した状態で、ハウジング15の貫通部の下側開口を覆っている。
さらに、ハウジング15の貫通部において、陽極11の上面に接触し、陽極11を加圧するための接触加圧部(金属パンチ)19が配置されている。接触加圧部19は、陽極11を介して固体電解質膜13で基材Bの表面を加圧するものである。具体的には、接触加圧部19は、基材Bの表面のうちニッケル膜Fが成膜される成膜領域を均一に加圧するように、成膜領域に対応した陽極11の表面を加圧する。
図1に示す形態では、陽極11の下面が基材Bの成膜領域に一致した大きさとなっており、陽極11の上面と下面は同じ大きさである。したがって、後述する加圧手段16の推力により接触加圧部19で陽極11の上面(全面)を加圧すると、陽極11の下面(全面)で固体電解質膜13を介して基材Bの成膜領域(全領域)を均一に加圧することができる。
さらに、ハウジング15の一方側には、電解ニッケルめっき液Lが収納された溶液タンク17が、供給管17aを介して接続されており、その他方側には、使用後の廃液を回収する廃液タンク18が、廃液管18aを介して接続されている。
供給管17aは、ハウジング15の、電解ニッケルめっき液Lの供給流路15aに接続されており、廃液管18aは、ハウジング15の、電解ニッケルめっき液Lの排出流路15bに接続されている。図2に示すように、ハウジング15の供給流路15aと排出流路15bとを繋ぐ流路には、多孔質からなる陽極11が配置されている。
このように構成することにより、溶液タンク17に収納された電解ニッケルめっき液Lが、供給管17aを介してハウジング15の内部に供給される。ハウジング15内では、電解ニッケルめっき液Lが供給流路15aを通過し、供給流路15aから陽極11内に電解ニッケルめっき液Lが流れる。陽極11内を通過した電解ニッケルめっき液Lは、排出流路15bを流れ、廃液管18aを介して廃液タンク18に送ることができる。
さらに、接触加圧部19には、加圧手段16が接続されている。加圧手段16は、陽極11を基材Bに向かって移動させることにより、固体電解質膜13を基材Bの成膜領域Eに加圧するものである。例えば、加圧手段16としては、油圧式又は空気式のシリンダ等を挙げることができる。成膜装置1Aは、基材Bを固定し、陽極11に対して基材Bのアライメントを調整する基台21を備えている。
陽極11は、電解ニッケルめっき液Lが透過し、かつ固体電解質膜にニッケルイオンを供給する、多孔質体からなり得る。このような多孔質体としては、(1)電解ニッケルめっき液Lに対して耐食性を有し、(2)陽極として作用可能な導電率を有し、(3)電解ニッケルめっき液Lを透過することができ、(4)後述する接触加圧部19を介して加圧手段16により加圧することができるものであれば、特に限定されるものではなく、たとえば、発泡チタン等、めっきニッケルイオンよりもイオン化傾向が低く(あるいは、電極電位が高く)、開気孔の連続気泡体からなる発泡金属体等を挙げることができる。
ここで、図1に示す形態では、ニッケル膜Fを成膜する装置として陽極11を多孔質体としたが、固体電解質膜13にニッケルイオンを含浸することができるのであれば、この装置及びこの装置を用いた成膜方法に限定されるものではない。
このような成膜装置1Aを用いたニッケル膜の成膜方法を以下に説明する。まず、図1及び2に示すように、まず、基台21に基材Bを配置し、陽極11に対して基材Bのアライメントを調整し基材Bの温度調整を行う。次に、陽極11の表面に固体電解質膜13を配置し、固体電解質膜13を基材Bに接触させる。
次に、加圧手段16を用いて、陽極11を基材Bに向かって移動させることにより、固体電解質膜13を基材Bの成膜領域Eに加圧する。これにより、陽極11を介して固体電解質膜13を加圧することができるので、固体電解質膜13を成膜領域Eの基材Bの表面に均一に倣わせることができる。
次に、電源部14を用いて、陽極11と陰極となる基材Bとの間に電圧を印加し、固体電解質膜13の内部に含有されたニッケルイオンからニッケルを基材Bの表面に析出させる。陽極11は、金属製の接触加圧部19と直接的に接触しているので、接触加圧部19と導通している。したがって、電源部14により、陽極11と基材Bとの間に電圧を印加することができる。
この際、陽極11内部に、電解ニッケルめっき液Lを流しながらニッケル膜の成膜を行う。このような結果、多孔質体からなる陽極11を用いることにより、電解ニッケルめっき液Lをその内部に透過させることができ、電解ニッケルめっき液Lをニッケルイオンとともに、固体電解質膜13に供給することができる。これにより、成膜時において、多孔質体である陽極11内部に、電解ニッケルめっき液Lを随時安定して供給することができる。供給された電解ニッケルめっき液Lは、陽極11内部を透過して、陽極11に隣接する固体電解質膜13に接触し、固体電解質膜13内にニッケルイオンが含浸される。
そして、陽極11と、陰極となる基材Bと、の間に電圧を印加することにより、固体電解質膜13内のニッケルイオンは陽極11側から基材B側に移動し、固体電解質膜13の内部に含有されたニッケルイオンからニッケルが基材Bの表面に析出される。電圧の印可は、所定の電流密度で、所定の電気容量に達するまで行われる。この所定の電流密度及び所定の電気容量は、電解ニッケルめっき液の組成や形成するニッケル膜の厚さ等の条件によって当業者が適宜設定するものである。上述の通り、成膜工程における電流密度及び電気容量は、上述の第一の通電処理及び第二の通電処理における好ましい電流密度及び/又は電気容量に関係がある。そのため、第一の通電処理及び第二の通電処理を実施する際には、成膜工程における電流密度及び/又は電気容量を把握しておくべきである。
本実施形態に係る方法において、上述の工程により得られた電解ニッケルめっき液を用いて固相電析法によりニッケル膜を成膜することにより、表面が均一なニッケル膜を形成することができる。
なお、本実施形態は、電解ニッケルめっき液の製造方法としても把握することができる。すなわち、本実施形態に係る電解ニッケルめっき液の製造方法は、固相電析法によるニッケル膜の形成に用いるための電解ニッケルめっき液を製造する方法であって、第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程と、電解ニッケルめっき液中に前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極を配置する電極配置工程と、前記電解ニッケルめっき液に、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程と、を含む、方法である。本実施形態により、均一なニッケル膜を形成することができる電解ニッケルめっき液を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本実施形態を説明するが、本開示はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
図3に示すように、ニッケルからなる電極(陽極及び陰極)の表面に固体電解質膜(電解質膜:N117、デュポン社製)をそれぞれ密着させ(電解質膜設置工程)、該電極を電解ニッケルめっき液中に配置した(電極配置工程)。電解ニッケルめっき液としては、1Mの塩化ニッケル+0.5Mの酢酸/酢酸ニッケル緩衝液を含む水溶液(pH4.0)を用意した。次に、電極及び電解ニッケルめっき液を収容した密閉容器の内部を窒素ガスにて置換した。次に、密閉容器を、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度(具体的には75℃)で加熱した。次に、電解ニッケルめっき液の温度を維持したまま、後工程の成膜工程における電流密度(7.5A/dm2)よりも小さい電流密度(具体的には0.5A/dm2)で且つ後工程の成膜工程における電気容量と同等の電気容量(具体的には60C)で、電解ニッケルめっき液に第一の通電処理を施した(第一の通電工程)。次に、電解ニッケルめっき液の温度を維持したまま、所定時間(24時間)放置した。次に、前記2つのニッケル電極に取り付けた固体電解質膜を新しいものに交換した。次に、前記2つのニッケル電極間の電位を直前の通電処理での電位と反転させた状態で、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度(具体的には75℃)で、電解ニッケルめっき液に第二の通電処理(電流密度:0.5A/dm2、電気容量:60C)を施し、その後温度を維持したまま24時間放置した(第二の通電工程)。第二の通電処理は、合計6回実施した。上記工程により得られた電解ニッケルめっき液のpHは3.9〜4.0であった。次に、得られた電解ニッケルめっき液を用いて固相電析法によりニッケル膜を形成した(成膜工程)。
図3に示すように、ニッケルからなる電極(陽極及び陰極)の表面に固体電解質膜(電解質膜:N117、デュポン社製)をそれぞれ密着させ(電解質膜設置工程)、該電極を電解ニッケルめっき液中に配置した(電極配置工程)。電解ニッケルめっき液としては、1Mの塩化ニッケル+0.5Mの酢酸/酢酸ニッケル緩衝液を含む水溶液(pH4.0)を用意した。次に、電極及び電解ニッケルめっき液を収容した密閉容器の内部を窒素ガスにて置換した。次に、密閉容器を、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度(具体的には75℃)で加熱した。次に、電解ニッケルめっき液の温度を維持したまま、後工程の成膜工程における電流密度(7.5A/dm2)よりも小さい電流密度(具体的には0.5A/dm2)で且つ後工程の成膜工程における電気容量と同等の電気容量(具体的には60C)で、電解ニッケルめっき液に第一の通電処理を施した(第一の通電工程)。次に、電解ニッケルめっき液の温度を維持したまま、所定時間(24時間)放置した。次に、前記2つのニッケル電極に取り付けた固体電解質膜を新しいものに交換した。次に、前記2つのニッケル電極間の電位を直前の通電処理での電位と反転させた状態で、固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度(具体的には75℃)で、電解ニッケルめっき液に第二の通電処理(電流密度:0.5A/dm2、電気容量:60C)を施し、その後温度を維持したまま24時間放置した(第二の通電工程)。第二の通電処理は、合計6回実施した。上記工程により得られた電解ニッケルめっき液のpHは3.9〜4.0であった。次に、得られた電解ニッケルめっき液を用いて固相電析法によりニッケル膜を形成した(成膜工程)。
成膜工程は、上述した図1に示す成膜装置を用いて実施した。陽極としては、ニッケル板(NI−313551、大きさ:2t×40×50mm、(株)ニラコ製)を用いた。固体電解質膜としてイオン交換膜(電解質膜:N117、デュポン社製)を用いた。基材としては、銅ブロック基板(大きさ:20×35×3mm)を用い、該銅ブロック基板にポリイミドテープを貼り付けて10mm×20mm角の開口部を形成し、該開口部を成膜領域として用いた。成膜条件は、基材温度を80℃、圧力を1MPa、ニッケル成膜面積を10×20mm、電流値を150mA、電流密度7.5A/dm2、電気容量を60C、成膜時間を400秒とした。
[比較例1]
未処理(未通電)の電解ニッケルめっき液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル膜を成膜した。
未処理(未通電)の電解ニッケルめっき液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル膜を成膜した。
[評価1:表面粗さ]
作製したニッケル膜の表面粗さ(Ra及びRz)を粗さ計(SURFCOM1400G25、東京精密社(株))を用いて測定した。表面粗さ測定を実施した試料の個数は、50個であった。表1に、表面粗さ(Ra及びRz)の最大値及び最小値並びに平均値を示す。
作製したニッケル膜の表面粗さ(Ra及びRz)を粗さ計(SURFCOM1400G25、東京精密社(株))を用いて測定した。表面粗さ測定を実施した試料の個数は、50個であった。表1に、表面粗さ(Ra及びRz)の最大値及び最小値並びに平均値を示す。
実施例1で作製したニッケル膜の表面粗さRaは、比較例1で作製したニッケル膜の表面粗さRaよりも、平均値及びばらつきともに小さくなった。また、実施例1で作製したニッケル膜の表面粗さRzは、比較例1で作製したニッケル膜の表面粗さRzよりも、平均値及びばらつきともに小さくなった。よって、本実施形態に係る方法より、表面が均一なニッケル膜を形成できることがわかる。
なお、実施例1及び比較例1における陰極電流効率(%)を測定したところ、実施例と比較例とでは、電流効率の平均値及びそのばらつきに実質的な差はなかったことが確認された。
本明細書中に記載した数値範囲の上限値及び/又は下限値は、それぞれ任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。例えば、数値範囲の上限値及び下限値を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、数値範囲の上限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、また、数値範囲の下限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。
この記載した開示に続く特許請求の範囲は、本明細書においてこの記載した開示に明示的に組み込まれ、各請求項は個別の実施形態として独立している。本開示は独立請求項をその従属請求項によって置き換えたもの全てを含む。さらに、独立請求項及びそれに続く従属請求項から誘導される追加的な実施形態も、この記載した明細書に明示的に組み込まれる。
当業者であれば本開示を最大限に利用するために上記の説明を用いることができる。本明細書に開示した特許請求の範囲及び実施形態は、単に説明的及び例示的なものであり、いかなる意味でも本開示の範囲を限定しないと解釈すべきである。本開示の助けを借りて、本開示の基本原理から逸脱することなく上記の実施形態の詳細に変更を加えることができる。換言すれば、上記の明細書に具体的に開示した実施形態の種々の改変及び改善は、本開示の範囲内である。
Claims (1)
- 固相電析法によりニッケル膜を形成する方法であって、
第一のニッケル電極及び第二のニッケル電極のそれぞれの表面上に固体電解質膜を取り付ける電解質膜設置工程と、
電解ニッケルめっき液中に前記第一のニッケル電極及び前記第二のニッケル電極を配置する電極配置工程と、
前記電解ニッケルめっき液に、前記固体電解質膜のガラス転移点以上且つ水の沸点以下の温度で第一の通電処理を施す第一の通電工程と、
前記第一の通電工程の後、得られた前記電解ニッケルめっき液を用いて、固相電析法により所定の電流密度及び所定の電気容量でニッケル膜を形成する成膜工程と、
を含む、方法。
Priority Applications (1)
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JP2019098575A JP2020193353A (ja) | 2019-05-27 | 2019-05-27 | ニッケル膜の形成方法 |
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