JP2022011487A - アンテナ装置およびアンテナ装置であるカード - Google Patents

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【課題】用途に応じた適切なアンテナへの切り換えが良好に行えるアンテナ装置を提供する。【解決手段】アンテナ装置1は、RFチップ31、RFアンテナ32及び両者が形成する閉回路に配置された第1、第2モードへ切り換え可能な第1のスイッチ回路とを有する第1の回路3と、制御用チップチップ41、制御用アンテナ42及び両者が形成する閉回路に配置された第3、第4モードへ切り換え可能な第2のスイッチ回路とを有する第2の回路4と、を備える。第1モードでは、第1の回路3が所定周波数の電磁波で共振し、第2モードでは共振せず、第3モードでは第2の回路4が共振し、第4モードでは共振しない。第1のスイッチ回路は、第2モードのときに第2のスイッチ回路を第3モードに切り換え可能で、第2のスイッチ回路は、第4モードのときに第1のスイッチ回路を第1モードに切り換え可能である。【選択図】図1

Description

本発明は、アンテナ回路を備えたアンテナ装置、とりわけ複数のアンテナから適切なアンテナを選択し、切り換えて使用することが可能なアンテナ装置およびアンテナ装置であるカードに関する。
従来、所定周波数の電磁波を介した情報の送受信や電力生成が可能なアンテナ回路を備えたアンテナ装置として、例えばICタグやカードが知られている。特に、電磁波を介した情報の送受信が可能なアンテナ装置であるカードは非接触ICカードとも呼ばれ、例えばISO/IEC14443やNFC通信規格に準拠したものが多く使用されている。電磁波を介した情報の送受信が可能なアンテナ装置やカードは、主として自身が電源を持たず、外部機器から送信されてきた電磁波をアンテナ回路で受信した際、電磁誘導の起電力により動作するパッシブ方式のものと、自身が内部に二次電池等の電源を備え、外部機器からの電磁波を受けていなくても動作可能なアクティブ方式のものとに大別される。なお、アクティブ方式の非接触ICカードでは、外部機器からの電磁波による電磁誘導の起電力で発生した電力を電源に蓄電するタイプのものが多い。
また、アンテナ装置のユーザの認証強化の観点から、これらのアンテナ装置は、指紋認証等の生体情報センサを具備し、正当なユーザであることが認証できた場合にのみ、アンテナ回路を介した情報送受信を可能とすることで、スキミング等の不正使用を抑制したり、液晶や電子ペーパー等による表示装置を具備し、アンテナ装置の状態をユーザに明確に判別できるようにすることが求められている。しかし、これらの生体情報センサや表示装置は概して駆動消費電力が大きく、何らの制御もせずに電力供給すると、アンテナによる情報の送受信や生体認証等の途中で電力不足による動作の中断の可能性がある。さらには、メモリからのデータの読み出し中やメモリへのデータの書き込み中に動作が中断することによって、アンテナ装置を駆動するICチップの誤動作または故障の可能性もある。
これについて、例えば特許文献1には、電源ボタンの入力に応じて指紋センサ等を具備した第2領域に内蔵バッテリーから提供された電源を伝達し、指紋認証結果に基づいて第3領域のアンテナを連結し通信機能の活性化を制御するカード制御部を有する第1領域と、 第1領域から供給された電源に応答して活性化され、所持者が入力する指紋を感知する指紋認識センサを備える第2領域と、第1領域の制御に基づいて活性化される第3領域とを含む指紋認識カードが記載されている。
また、特許文献2には、第一の対の端子および第二の対の端子を有するアンテナを備え、RF信号がアンテナにより受信されるときに第二の対の端子により生成される電圧が第一の対の端子により生成される電圧よりも低くなるように、第二の対の端子のうちの少なくとも1つの端子が第一の対の端子間でアンテナに接続された回路が構成され、指紋スキャナ等のみに電力供給する第一の動作モードでは、第一の対の端子により生成される電圧を用い、RFIDスキャナと通信する第二の動作モードでは、第二の対の端子により生成される上述の電圧よりも低い電圧を用いて指紋スキャナ等に電力供給することが記載されている。
一方、特許文献3には、識別装置から発生する交流磁界を、当該識別装置と非接触ICカードとがデータの送受に使用 可能な周波数と、当該非接触ICカードが充電式電池に充電するための電力を得ることが可能な周波数とで相異なる専用の周波数としてそれぞれを別のアンテナコイルで受信、検出して使用する充電式非接触ICカードシステムが記載されている。
特開2019-160304号公報 特表2017-532706号公報 特開平10-307898号公報
一般的に、アンテナ装置について、通信用アンテナと充電用アンテナのようにアンテナを目的に応じて使い分けて使用する場合、それぞれのアンテナが同一周波数で機能するように構成した方が有利である。その方が、リーダー等の外部機器を単一周波数のみが送受信できるように設計すればよく、装置構成を単純化できるからである。しかし、同一アンテナを異なる目的に共用しようとすると、一の目的で使用する際のアンテナ回路と他の目的で使用する際のアンテナ回路とを電気的に完全に切り離すことは一般的に難しく、一の目的で使用しているアンテナの電圧、電流の変動の影響が、使用意図のない他の目的で使用するアンテナ回路にも及ぶことが考えられる。例えば、充電用アンテナとして使用している際のノイズの入力により、これが通信用アンテナからの入力と誤判定される等である。一方、同一周波数で機能する通信用アンテナと充電用アンテナとを別個に設けた場合、互いの通信が干渉し合う結果、通信および充電のいずれの機能も良好に発揮できないおそれがある。
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、用途に応じた適切なアンテナへの切り換えが良好に行えるアンテナ装置、およびアンテナ装置であるカードを提供することを課題とする。
本実施の形態によるアンテナ装置は、第1のICチップと、前記第1のICチップと電気的に接続して閉回路を形成できる第1のアンテナと、前記第1のICチップと前記第1のアンテナとが形成する前記閉回路に対して直列的または並列的に配置された、第1モードまたは第2モードへの切り換えが可能な第1のスイッチ回路と、を有する第1の回路、および、第2のICチップと、前記第2のICチップと電気的に接続して閉回路を形成できる第2のアンテナと、前記第2のICチップと前記第2のアンテナとが形成する前記閉回路に対して直列的または並列的に配置された、第3モードまたは第4モードへの切り換えが可能な第2のスイッチ回路と、を有する第2の回路、を備え、前記第1モードのときには前記第1の回路が所定周波数の電磁波により共振し、前記第2モードのときには共振せず、前記第3モードのときには前記第2の回路が前記所定周波数の電磁波により共振し、前記第4モードのときには共振せず、前記第1のスイッチ回路が前記第2モードのときに前記第2のスイッチ回路を前記第3モードに切り換えることができ、前記第2のスイッチ回路が前記第4モードのときに前記第1のスイッチ回路を前記第1モードに切り換えることができる。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の少なくともいずれかのスイッチ回路は、スイッチおよび容量素子が直列的に電気的接続されたものであり、かつ当該いずれかのスイッチ回路は対応する前記閉回路に対して並列的に配置されてもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の両方が前記スイッチおよび前記容量素子が直列的に電気的に接続されたものであり、かつ当該両方のスイッチ回路が対応する前記閉回路に対して並列的に配置されており、前記第1のスイッチ回路が有する前記容量素子と前記第2のスイッチ回路が有する前記容量素子とは、互いに異なる容量であってもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記所定周波数をf0とし、前記第2モードのときの前記第1の回路の共振周波数をf1とし、前記第4モードのときの前記第2の回路の共振周波数をf2とするとき、f1/f0またはf2/f0の値は、0.9より小さいかまたは1.1よりも大きくてもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記所定周波数の電磁波を前記第1の回路が受信しているときの、前記第1モードにおける誘起電圧の絶対値をV01とし、前記第2モードにおける誘起電圧の絶対値をV1とし、前記所定周波数の電磁波を前記第2の回路が受電しているときの、前記第3モードにおける誘起電圧の絶対値をV02とし、前記第4モードにおける誘起電圧の絶対値をV2とするとき、V1/V01またはV2/V02の値は、0.5より小さくてもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の少なくともいずれかのスイッチ回路は、スイッチのみが電気的に接続されたものであり、前記いずれかのスイッチ回路に対応する前記閉回路には容量素子が並列的に配置され、かつ、前記いずれかのスイッチ回路は当該容量素子に対して並列的に配置されてもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記いずれかのスイッチ回路が前記第1のスイッチ回路である場合には、前記第1のスイッチ回路の前記スイッチが開状態のとき前記第1の回路が第1モードとなり、閉状態のとき前記第2モードとなり、前記いずれかのスイッチ回路が前記第2のスイッチ回路である場合には、前記第2のスイッチ回路の前記スイッチが開状態のとき前記第2の回路が第3モードとなり、閉状態のとき前記第4モードとなってもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の少なくともいずれかのスイッチ回路は、スイッチのみが電気的に接続されたものであり、かつ当該いずれかのスイッチ回路は前記閉回路に対して直列的に配置されてもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記いずれかのスイッチ回路が前記第1のスイッチ回路である場合には、前記第1のスイッチ回路の前記スイッチが閉状態のとき前記第1の回路が第1モードとなり、開状態のとき前記第2モードとなり、前記いずれかのスイッチ回路が前記第2のスイッチ回路である場合には、前記第2のスイッチ回路の前記スイッチが閉状態のとき前記第2の回路が第3モードとなり、開状態のとき前記第4モードとなってもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、前記第1の回路は、前記第1モードにおいて前記所定周波数の電磁波の送受信による非接触通信が可能であり、かつ、前記第2モードにおいて当該非接触通信が困難であり、前記第2の回路は、前記第3モードにおいて前記所定周波数の電磁波の受電による、電磁誘導の起電力で生じる電流を前記第2のICチップ、または、電源ユニットをさらに備えている場合は当該電源ユニット、に供給することが可能であり、所定条件を満たさない場合には、前記第1の回路は前記第2モードに維持され、前記所定条件を満たした場合には、前記第2の回路が前記第3モードから前記第4モードに切り換えられ、かつ、前記第1の回路が前記第2モードから前記第1モードに切り換えられてもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置において、電源ユニットをさらに備え、前記電源ユニットは、前記第1の回路とも電気的に接続し、前記第1の回路が第1モードであるときに、前記所定周波数の電磁波の受電による、電磁誘導の起電力で生じる電流を蓄電することが可能であってもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置であるカードは、一または複数の絶縁性の基板と、前記基板の一方の面に形成された前記第1の回路および前記第2の回路と、前記基板の前記一方の面と隣接し、前記第1の回路および前記第2の回路の部品を保護するための貫通孔または切り欠きを有するスペーサと、前記スペーサの前記基板とは反対側に配置される第1基材と、前記基板の他方の面と隣接する第2基材と、を備えてもよい。
また、本実施の別の形態によるアンテナ装置であるカードは、外部接触端子をさらに備え、前記第1の回路は、前記外部接触端子を介した接触通信がさらに可能である、デュアルインターフェース型のカードでもよい。
本実施の形態によれば、用途に応じた適切なアンテナへの切り換えが良好に行えるアンテナ装置、およびアンテナ装置であるカードを提供することができる。
本開示の第1実施形態のアンテナ装置の構成を説明する概略平面図である。 図1に示す第1実施形態のアンテナ装置の構成を説明する断面図である。 第1実施形態のアンテナ装置の回路を示す図である。 第1実施形態のアンテナ装置の構成を示すブロック図である。 第1実施形態のアンテナ装置の動作を説明するフロー図である。 第1実施形態のアンテナ装置の動作を説明するフロー図である。 第1実施形態のアンテナ装置の製造工程を説明する図である。 第1実施形態のアンテナ装置の製造工程を説明する図である。 本開示の第2実施形態のアンテナ装置の回路を示す図である。 本開示の第3実施形態のアンテナ装置の回路を示す図である。 本開示の第4実施形態のアンテナ装置の構成を説明する概略平面図である。 変形例3に係るアンテナ装置の構成を説明する断面図である。 変形例3に係るアンテナ装置の製造工程を説明する図である。
以下、図面等を参照して、本開示のアンテナ装置およびアンテナ装置であるカードの一例について説明する。ただし、本開示のアンテナ装置およびアンテナ装置であるカードは、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
1.本開示の第1実施形態
本開示のアンテナ装置の第1実施形態の一例について説明する。図1は、カードであるアンテナ装置1を当該カードの主面の法線方向から平面視した平面図である。図2は、図1のアンテナ装置1の平面図において、制御用チップ41、電源ユニット6および生体情報センサ5を横切るアンテナ装置1の長辺方向に沿ったA-A線で切った断面を紙面の下方側から見た断面図である。また、図3は、アンテナ装置の概略的な回路を示す図であり、図4は、アンテナ装置の構成を示すブロック図である。
アンテナ装置1は、四隅が円弧状となる略長方形の平面を表裏に有する、薄手のいわゆるクレジットカード形状を備えている。アンテナ装置1は、クレジットカードの規格であるISO7810、ISO7816-1に準拠したサイズである長辺寸法が85.6mm、短辺寸法が53.98mmに近似することが好ましい。当該アンテナ装置1をクレジットカードとして兼用でき、パスケース等に他のカードと重ねて収納することが容易だからである。回路基板23はこれより若干小さくすることで、全体の仕上がりを良好とすることができる。ただし、アンテナ装置1の厚さは、必ずしも規格の最大値である0.84mm以下にする必要はない。後述する様々な部品を搭載したアンテナ装置1の厚みは通常、上記厚さを超えるからである。
なお、第1実施形態で説明するアンテナ装置1はカード形状であるが、アンテナ装置1の形態はこれに限らず、例えばRFIDタグまたは電子タグとも称されるICタグであってもよく、ラベル形態のものやウエアラブル端末、キーホルダータイプのものや、他の電子機器内部に組み込まれた構造のものであってもよい。
図1に示すように、アンテナ装置1は、略長方形状を形成する基材2と、当該基材2の表面に配置された略長方形状の生体情報センサ5と、表示部7と、電源スイッチ8と、を備えており、これらはアンテナ装置1の外部から直接視認することができる。また、破線で示した部品は、基材2の内部または奥側に配置されているため、直接視認することはできないが、アンテナ装置1は、RFチップ31やRFアンテナ32から構成されるRF通信回路3と、制御用チップ41や制御用アンテナ42、生体情報センサ5、および電源ユニット6を含む制御回路4と、をさらに備えている。
アンテナ装置1は、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、制御回路4が有する制御用アンテナ42で受電し、電磁誘導の起電力で生じる電流を電源ユニット6に蓄電させるとともに、配線41cを介して制御用チップ41にも供給し、さらには制御用チップ41から配線41eを経由して生体情報センサ5にも給電する。これにより、制御用チップ41および生体情報センサ5を継続的に動作させることができる。アンテナ装置1のユーザは、自身の指を例えば指紋センサとして例示できる生体情報センサ5上に載置して自分の指紋情報を読み込ませ、制御用チップ41によって、あらかじめ登録された情報と照合することにより正当なユーザの使用であるか否かが判断される。
また、アンテナ装置1は、制御用チップ41によって正当なユーザの使用であることが認証されると、当該制御用チップ41の制御部からの指示により、制御回路4の制御用アンテナ42が無効化され、RF通信回路3のRFアンテナ32が有効化される。これにより、アンテナ装置1は、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、RF通信回路3が有するRFアンテナ32で受電および受信し、電磁誘導の起電力で生じる電流をRFチップ31に供給するととともに、外部機器とRF通信回路3との間で、電磁波の送受信による非接触通信を行うことが可能となる。
なお、RF通信回路3や制御回路4で例示されるような、ある所定の機能を果たすためにアンテナを含めて構成された電気回路をアンテナ回路と称する。また、アンテナ回路が所定の機能を果たすようにアンテナが電磁波の送受信や受電等の働きを良好に発揮できる状態、すなわち、アンテナが所定周波数の電磁波の送受信や受電等を行うことが可能な状態において当該アンテナは有効化されており、当該働きを良好に発揮できない状態、すなわち、アンテナが所定周波数の電磁波の送受信や受電等を行うことが困難な状態において当該アンテナは無効化されている。さらに、アンテナ回路が所定の機能を良好に実現できる状態において当該アンテナ回路および当該機能は活性化されており、当該所定の機能を良好に実現できない状態において当該アンテナ回路および当該機能は非活性化されている。
ここで、アンテナ装置1は、制御用チップ41の制御部からの指示により、制御回路4の制御用アンテナ42およびRF通信回路3のRFアンテナ32のいずれか一方を有効化し、他方を無効化するよう制御される。制御用アンテナ42およびRF通信回路3のRFアンテナ32アンテナの有効化および無効化は、それぞれのアンテナが備えるスイッチ回路のスイッチを切り換えて、回路の一部をつなぎ替えることにより実現されるが、詳細は後述する。
アンテナ装置1は、制御用チップ41からの指示によって、制御用アンテナ42およびRFアンテナ32のいずれか一方を有効化し、他方を無効化することができる。このように、生体認証機能および非接触通信機能のいずれか一方を活性化させることにより、例えば両方の機能を同時に活性化する場合と比較して、電力消費の集中を回避でき、いずれか一方の使用中のアンテナに流れた電流が他方の未使用のアンテナへ流れる等による悪影響を抑制することができる。また、RFチップ31と制御用チップ41との間に特別な通信回路等を設ける必要がなく、制御用チップ41の機能と無関係にRFチップ31を選択することができ、チップの選択範囲を拡大でき、回路設計を容易化することができる。以下、第1実施形態のアンテナ装置1の主要な構成要素の各部について説明する。
(a)RF通信回路
図1に示すように、RF通信回路3は、RFチップ31と、両端が当該RFチップ31と電気的に接続するRFアンテナ32とを備えている。また、図2に示すように、RF通信回路3は、RFチップ31およびRFアンテナ32を支持する回路基板23を備えている。さらに、図3に示すように、RF通信回路3は、共振周波数を整合させるための同調用コンデンサ33と、回路の一部を切り換えるためのスイッチ回路34と、RFアンテナ32の電磁誘導の起電力で生じる電流を整流する整流回路37と、アンテナ装置1から返信データを送信する際の負荷変調を掛けるためのオン、オフ信号を生成する電界効果トランジスタ38等とを備えている。また、スイッチ回路34は、内部のスイッチ35のオープン、クローズの状態により、RFアンテナ32を有効化または無効化することができる。なお、オープンはスイッチの開状態を指し、クローズはスイッチの閉状態を指す。
なお、RF通信回路3としての必須の構成要素は、RFアンテナ32、スイッチ回路34、および、RFチップ31である。この構成により、RF通信回路3は、RFアンテナ32が有効化されている場合、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、RF通信回路3が有するRFアンテナ32で受電および受信でき、外部機器とRF通信回路3との間で、電磁波の送受信による非接触通信を行うことができる。
(i)回路基板
回路基板23としては、絶縁性基板であって通常用いられる各種のプリント基板用部材を使用することができ、その形態もリジッドなものやフレキシブルなものがいずれも適用できる。例えば、紙材にフェノール樹脂やエポキシ樹脂を含侵させたものや、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含侵させたもの、ポリイミドフィルム等を挙げることができる。厚さの制限は特にないが、フレキシブルな基板であれば、厚さを0.01mm以上、0.2mm以下程度、リジッドな基板であれば、例えば0.1mm以上、0.4mm以下程度とすることができる。
(ii)RFチップ
RFチップ31は、CPUまたはMCUを備えるICチップであり、CPU等は各種制御、演算、メモリからのデータの読み出し、メモリへのデータの書き込み等を行う。また、RFチップ31は、RFアンテナ32を通じて外部機器からの電磁波に含まれるデータを解読したり、送信用データを電磁波に変換して外部機器に対して送信することができる。なお、RFチップ31は、RFアンテナ32の電磁誘導の起電力で生じる電流から必要な駆動電力を生成している。
また、RFチップ31は、一時的なデータの格納場所としてRAMを備え、オペレーションシステム(OS)や固定アプリケーションのプログラム格納場所としてROMを備える。さらに、各種の可変データや可変パラメータ、可変のアプリケーションプログラムの格納場所として不揮発性の書き換え可能メモリ(NVM)を備える。なお、本実施形態では、各種制御、演算、メモリアクセス、電磁波からの電力生成、データの解読、電磁波へのデータの変換、のすべてを一つのICチップで行うが、例えば電力生成や制御、演算等の一部を別の専用素子等で分担させる構成としてもよい。
(iii)RFアンテナ
RFアンテナ32は、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を受信し、交流磁界により生じる電磁誘導の起電力で生じる電流や電圧の変化をその両端が電気的に接続するRFチップ31に伝達し、RFチップ31から出力された電流や電圧の変化を所定周波数の電磁波に変換して放射し、外部機器が受信、解読できるようにする機能を有している。
また、RFアンテナ32は、外部機器からの電磁波を受電し、交流磁界により生じる電磁誘導の起電力で生じる電流を、駆動電力としてRFチップ31に供給する機能をも有する。送受信に用いる電磁波の周波数帯は、135kHzを使用するLF帯、13.56MHzを使用するHF帯、920MHzや2.45GHzを使用するUHF帯等、様々なものが選択できるが、例えばHF帯用のアンテナはループアンテナを、UHF帯用のアンテナはダイポールアンテナを用いる等、使用周波数帯に応じたアンテナ形状の選択が必要である。
本実施形態では、アンテナ装置1は、HF帯である13.56MHzで動作するよう設計されている。RF通信回路3は、そのアンテナ回路内に備えるスイッチ回路34がRFアンテナ32を有効化するように設定されているとき、RFチップ31およびRFアンテナ32が一つの閉回路を形成し、かつ、共振周波数が13.56MHzとなる共振回路を形成する。
すなわち、RFチップ31およびRFアンテナ32により構成されるRF通信回路3の等価回路が、インダクタンスがL1であるコイルと容量がC1であるコンデンサとの並列回路となるように配置される。このとき、RF通信回路3が活性化されているときの共振周波数f0がf0=1/(2π×(L111/2)であることから、f0が13.56となるように、RF通信回路3内の各インダクタンス要素と各容量要素のパラメータを適宜定め、これらを合算した回路全体のインダクタンスおよび容量がL1およびC1となるようにすればよい。
RFアンテナ32が受電または受信する電磁波の周波数がRF通信回路3の共振周波数と一致するとき、RF通信回路3のインピーダンスと電磁誘導の誘電起電力の電圧は最大となり、電力発生効率と信号受信強度は最大化する。この周波数-インピーダンス曲線または周波数-電圧曲線のピークは、共振周波数の時に突出して大きくなり、これから少しでもずれると急激に低下する。したがって、受電または受信すべき電磁波の周波数が、RF通信回路3の共振周波数より一定以上高め、または低めにずれている場合、共振周波数での受電または受信時と比べて、ほとんど効率的な電力生成や信号送受信ができなくなり、実質的にRF通信回路3のアンテナ回路を断線させたことと類似の作用を及ぼし得る。
各々のアンテナ回路の特性にもよるが、アンテナ回路の共振周波数をf0とし、これよりも低い周波数をfaとし、f0よりも高い周波数をfbとするとき、一般的に当該アンテナ回路が共振できる範囲はおおむね、fa/f0が0.9以上で、fb/f0が1.1以下であると考えられる。この範囲外となるfaやfbである電磁波に対しては、当該アンテナ回路のインピーダンスや電圧が急減し、アンテナ回路がまったく共振しないか、ほとんど共振しているとは認められない状態となる。このような所定範囲外の周波数の電磁波に対する当該アンテナ回路の挙動を本開示においては共振しないと称する。
また、アンテナ回路の共振を、共振周波数におけるアンテナ回路に誘起される誘導電圧(誘起電圧)から見ることもできる。この場合は、アンテナ回路に共振周波数に対応する電磁波を供給し、これを当該アンテナ回路が受信または受電したときの誘起電圧のピーク値の絶対値をV0とする。ここで、アンテナ回路が受信または受電する電磁波の周波数が変動した場合には、誘起電圧はピーク値から外れて減衰し、周波数の変動が大きくなるほど減衰の程度は大きくなる。
この減衰した誘起電圧の絶対値をVaとすると、当該アンテナ回路が共振できる範囲はおおむね、Va/V0が0.5以上であると考えられる。この範囲外となる電磁波に対してはアンテナ回路がまったく共振しないか、ほとんど共振しているとは認められない状態となる。このような誘起電圧のピーク値からの減衰が大きくなるような、所定範囲外の周波数の電磁波に対する当該アンテナ回路の挙動をも、本開示においては共振しないと称する。
RFアンテナ32は、典型的には、回路基板23の一方の面上に接着剤を介して銅箔やアルミ箔等を貼り込む方法で形成できる。すなわち、この銅箔等の上にレジストを塗布し、所定のアンテナパターン以外の領域を塞ぐように形成されたマスクを載置して露光し、その後、アンテナパターン以外の領域の、レジストが未硬化である銅箔等をエッチング液で除去、洗浄することによってRFアンテナ32を形成することができる。この方式では、銅箔等の厚さを薄くすることでアンテナ線の厚さを薄くできる利点がある。
また、RFアンテナ32は、回路基板23の一方の面上に銅線の周囲が絶縁体部材で被覆された被覆付導線を埋め込む巻き線方式によって形成されてもよく、銅線の代わりに、Cu-Ni、Cu-Cr、Cu-Zn、Cu-Sn、Cu-Be等の銅合金線、または鉄、ステンレス、アルミ等の種々の金属線、金属合金線を選択してもよい。また、アンテナ回路の電気抵抗が高めになるが、金属粒子を含む導電インキを回路基板23の一方の面上にシルク印刷方式で印刷したり、インクジェット方式で形成してもよい。これらの方式は、エッチングを用いる方式よりもコスト面や量産性の面で有利である。
RFアンテナ32の始点または終点となる2か所の端部32aおよび32bは、それぞれRFチップ31の電気的接続端子である接続パッド31aおよび31bに接続される。RFアンテナ32が上述したエッチング方式で形成されている場合は、RFアンテナ32の端部32aおよび32bの上面を覆うように異方性導電フィルム、すなわちACF(Anisotropic Conductive Film)を貼り付けておき、接続パッド31aおよび31bにあらかじめ金バンプ等の導電性突起が形成されたRFチップ31をこの上にフェイスダウンで搭載し、所定の熱圧を所定時間加える。
こうすることで、熱溶融した異方性導電フィルムのバインダーがRFチップ31とRFアンテナ32との隙間を埋め、かつ、異方性導電フィルムの導電粒子が、RFアンテナ32の端部32aからRFチップ31の接続パッド31aに向けて互いに接触し合いながらつながることにより、端部32aと接続パッド31aとが導通する。RFアンテナ32の端部32bとRFチップ31の接続パッド31bについても同様である。
なお、RFアンテナ32とRFチップ31との電気的接続は、上述した異方性導電フィルムを使用する以外に、異方性導電ペースト(ACP)や、はんだ、あるいはエポキシ樹脂中に銀粒子をフィラーとして分散した、いわゆる導電ペーストを使用してもよい。また、RFチップ31を直接RFアンテナ32に接合するのではなく、別の接続端子を備えた基板上にRFチップ31を搭載し、これを樹脂封止してモジュール化したものをRFアンテナ32に接合してもよい。
この場合は、モジュールに形成された接続端子をRFアンテナ32の端部32aおよび32bとACF等を介して接続するか、溶接等により接続することができる。一方、RFアンテナ32が巻き線方式である場合は、2か所の端部32aおよび32bの被覆を剥がして、この上に上記のようにRFチップ31をモジュール化したものを搭載し、当該モジュールの接続端子をRFアンテナ32の端部32aおよび32bと溶接等により接続することができる。
(iv)スイッチ回路
スイッチ回路34は、上述したRF通信回路3の共振周波数を所定周波数に同調させるかこれに対してシフトさせるかを選択するスイッチ機能を有する。スイッチ回路34は、図3に示すように、スイッチ35と調整用コンデンサ36とが直列につながれ、かつ、これがRFアンテナ32の端部32aに向かう配線と端部32bに向かう配線とにまたがって並列につながれた構成を有する。
また、RF通信回路3には、スイッチ回路34とは別に同調用のコンデンサ33が同様に並列につながれている。スイッチ35は、後述するように、制御用チップ41の制御部48からの信号35sを受けて、オープンまたはクローズの状態に切り替わることができる。スイッチ35は、機械式の接点スイッチでもよく、電界効果トランジスタ等を含むトランジスタを用いる無接点スイッチでもよい。
スイッチ35がオープンのとき、RF通信回路3は所定周波数の電磁波により共振する活性化モードとなる。調整用コンデンサ36はRF通信回路3内で浮いた状態となり、RFアンテナ32に電流が流れても調整用コンデンサ36に蓄電されることはなく、RFアンテナ32の回路特性にほとんど影響を及ぼさない。このとき、RF通信回路3全体の容量は、主として同調用のコンデンサ33の容量に依存し、これと回路内の他の素子の容量成分を合算した容量が上述した等価回路の容量であるC1となるようにコンデンサ33の容量が選択される。
よって、このとき、RF通信回路3の共振周波数f0は、外部機器との送受信に用いる周波数、例えば13.56MHzと略同一となり、外部機器とアンテナ装置1との通信が良好に行われる。この場合、RFアンテナ32は有効化され、RF通信回路3の非接触通信機能が活性化された状態となる。
一方、スイッチ35がクローズのとき、RF通信回路3は所定周波数の電磁波により共振しない非活性化モードとなる。調整用コンデンサ36はRF通信回路3内で並列に接続された状態となり、RFアンテナ32に電流が流れた場合にコンデンサ33に加えて調整用コンデンサ36にも蓄電される。すなわち、RF通信回路3全体として容量成分が増加する。このとき、RF通信回路3の回路全体の等価回路の容量は上記のC1よりも大きな容量であるC11にシフトする。したがって、RF通信回路3の共振周波数は、上記のf0よりも小さいf11にシフトする。
11が良好な通信が確保され得る所定の範囲を逸脱する場合、すなわち、f11/f0の値が0.95より小さい場合に、外部機器とアンテナ装置1との通信を良好に行うことが困難なため、RFアンテナ32は無効化され、RF通信回路3の非接触通信機能が非活性化された状態となる。したがって、RFアンテナ32を無効化したいときに、RF通信回路3が意図しない誤動作により通信を行ってしまうことの抑制、および、制御回路4とRF通信回路3との同時動作による制御回路4へのノイズ発生や誤動作、電力不足による動作中断等の抑制が図れる。
また、f11/f0の値が0.9より小さいことが、当該抑制の効果を一層高める点でより好ましい。なお、詳細を後述するが、スイッチ35がクローズのときの同調用コンデンサ33および調整用コンデンサ36による等価回路の合算容量をC0に合わせることにより、このときのRF通信回路3の共振周波数がもとの共振周波数よりも大きくなるような構成としてもよい。
一方、RFアンテナ32が無効化され、RF通信回路3の非接触通信機能が非活性化された状態となるもうひとつのケースとして、受信した電磁波によってRF通信回路3に誘導される誘起電圧が著しく低下した場合が挙げられる。RF通信回路3のスイッチ35がオープンのときに、所定周波数の電磁波によって共振した際のRF通信回路3の誘起電圧のピーク値の絶対値をV01とし、スイッチ35がクローズのとき、当該所定周波数の電磁波を受信したときのRF通信回路3の誘起電圧の絶対値をV1とする。このとき、V1/V01の値が0.5より小さい場合には、外部機器とアンテナ装置1との通信を良好に行うことが困難なため、RFアンテナ32は無効化され、RF通信回路3の非接触通信機能が非活性化された状態となる。
このように、RF通信回路3の誘起電圧がピーク値に対して大きく減衰するのは、上述のように、RF通信回路3のスイッチ35をクローズにすることにより、RF通信回路3の共振周波数がf0よりも小さいf11にシフトするため、周波数がf0である電磁波を受信してもRF通信回路3が共振しないことに起因する。
(v)その他の回路
詳細は後述するが、RF通信回路3には、上述したもの以外に、RFアンテナ32が受電した電磁波による電磁誘導の誘電起電力で生じる電流を直流電流に変換する整流回路37や、RFアンテナ32で受信する電磁波に負荷変調を掛け、RFチップ31の接続パッド31fからの信号38sを受けてオン、オフすることによって送信用データに対応する電磁波の波形を生成する電界効果トランジスタ38を備えている。本実施形態では、上記の整流回路37で生じた直流電流をRFチップ31に給電すべく、当該整流回路37から分岐する二つの配線の先端をそれぞれ、RFチップ31の接続パッド31cおよび31dと電気的に接続している。ただし、整流回路37の機能は、RFチップ31の内部に備えていてもよい。
(b)制御回路
図1に示すように、制御回路4は、制御用チップ41と、両端が当該制御用チップ41および電源ユニット6とそれぞれ並列に電気的に接続する制御用アンテナ42とを備えている。また、図2に示すように、制御回路4は、制御用チップ41、制御用アンテナ42、電源ユニット6をおよび生体情報センサ5を支持する回路基板23を備えている。一方、図3に示すように、制御回路4は、RF通信回路3と同様に共振周波数を整合させるための同調用のコンデンサ43と、回路の一部を切り換えるためのスイッチ回路44と、制御用アンテナ42で受電し、電磁誘導の起電力で生じる電流を整流する整流回路47とを備えている。
また、スイッチ回路44は、内部のスイッチ45のオン、オフ状態により、制御用アンテナ42を有効化または無効化することができる。この構成により、制御回路4は、制御用アンテナ42が有効化されている場合にのみ、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、制御回路4が有する制御用アンテナ42で受電でき、電源ユニット6への充電や制御用チップ41および生体情報センサ5の駆動電力を得るための給電をすることができる。
なお、制御回路4としての必須の構成要素は、制御用アンテナ42、スイッチ回路44、および、制御用チップ41と電源ユニット6とのいずれか、である。本実施形態では、制御用アンテナ42の両端が制御用チップ41と電源ユニット6とに並列接続されるが、制御用アンテナ42の両端が制御用チップ41のみ、または電源ユニット6のみに接続されてもよい。
(i)回路基板
回路基板23は、前述したRFチップ31やRFアンテナ32を支持する回路基板23と共用されるものであるが、その上に搭載されるデバイスの配置やサイズに応じて一部の基板を分離させてもよい。例えば、図2に示すように、本実施形態では、生体情報センサ5の表面5aを、コア層21の表面21aと略同一に合わせるため、制御用チップ41や電源ユニット6を搭載する回路基板23aと、生体情報センサ5を搭載する回路基板23bとは互いに分離配置される。
回路基板23aおよび回路基板23bの、アンテナ装置1の厚さ方向の配置位置が互いに異なるからである。この場合、例えば電源ユニット6と生体情報センサ5との電気的接続をとるために、回路基板23aおよび回路基板23bを導電性部材である連結配線部23cで連結することが好ましい。
(ii)制御用チップ
制御用チップ41は、RFチップ31と同様、CPUまたはMCUを備えるICチップである。また、図4のブロック図に示すように、制御部48およびメモリ49をさらに備える。制御用チップ41は、電源スイッチ8からの入力信号等をトリガとして生体情報センサ5に対して、生体情報の取得を指示し駆動させる機能や、生体情報センサ5が取得した生体情報と、メモリ49に記憶する、あらかじめ登録された情報とを照合することにより、所定の生体認証条件、すなわち、正当なユーザの使用であるか否かを判断する機能を有する。
さらに、制御用チップ41は、この判断結果に基づいて、RF通信回路3のRFアンテナ32の有効化または無効化、および、制御回路4の制御用アンテナ42の有効化または無効化の切り換えの指示を行うことができる。具体的には、制御用チップ41は、制御部48を通じて、スイッチ回路34のスイッチ35をオープンまたはクローズとする信号35sと、スイッチ回路44のスイッチ45をオープンまたはクローズとする信号45sとを出力することができる。
また、制御用チップ41は、これ以外に、例えば、生体情報センサ5が取得したユーザの指紋情報等の生体情報から特徴点を抽出する画像処理回路や、電源ユニット6からの電流量や電圧をモニタリングすることにより電源ユニット6の蓄電量を推定し、この結果に応じた制御を行う制御回路を備えていてもよい。電源ユニット6の蓄電量に応じた制御とは、例えば、電源ユニット6の蓄電量が一定量以下に下がった場合は、電力を必要とする生体情報センサ5の駆動を中止したり、処理速度を遅くして消費電力を低減させる等が考えられる。
なお、上述した制御部48や画像処理回路は、制御用チップ41ではなく、これと配線でつながれた別個の専用チップや専用素子として設けてもよい。また、制御用アンテナ42の始点または終点となる2か所の端部42aおよび42bには、それぞれ制御用チップ41の電気的接続端子である接続パッド41aおよび41bが接続されるが、その接続方法として、RFアンテナ32の端部32aおよび32bへのRFチップ31の接続パッド31aおよび31bの接続方法と同様の方法を適用し得る。
(iii)制御用アンテナ
制御用アンテナ42は、RFアンテナ32とは別個のアンテナであり、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を受電し、交流磁界により生じる電磁誘導の起電力で生じる電流を、駆動電力として制御用チップ41や電源ユニット6に供給する機能を有する。また、この電磁誘導の起電力で生じる電流を、生体情報センサ5の駆動電力として直接、生体情報センサ5に供給する機能を有していてもよい。制御用アンテナ42の受電に用いる電磁波の周波数は、RFアンテナ32と同様にLF帯、HF帯、UHF帯等から選択できるが、リーダー等の外部機器の構成を単純化する観点から、RFアンテナ32の周波数と同一にすることが好ましい。本実施形態では、制御用アンテナ42の周波数目標値をRFアンテナ32と同様に13.56MHzとしている。
制御回路4は、スイッチ回路44が制御用アンテナ42を有効化するように設定されているとき、制御用チップ41または電源ユニット6と、制御用アンテナ42とが一つの閉回路を形成し、かつ、共振周波数が13.56MHzとなる共振回路を形成する。すなわち、制御回路4の等価回路が、インダクタンスがL2であるコイルと容量がC2であるコンデンサとの並列回路となるように配置される。
このとき、制御回路4が活性化されているときの共振周波数f0がf0=1/(2π×(L221/2)であることから、f0が13.56となるように、制御回路4内の各インダクタンス要素と各容量要素のパラメータを適宜定め、これらを合算した回路全体のインダクタンスおよび容量がL2およびC2となるようにすればよいことは、RFアンテナ32と同様である。なお、本実施形態のように、RF通信回路3および制御回路4のもとの共振周波数f0を同一とすることが好ましいが、実用上の問題がない範囲で若干のずれがあってもよい。
制御用アンテナ42が受電する電磁波の周波数が制御回路4の共振周波数と一致するとき、制御回路4のインピーダンスと電磁誘導の誘電起電力の電圧は最大となり、電力発生効率は最大化する。一方、受電すべき電磁波の周波数が、制御回路4の共振周波数より一定以上高め、または低めにずれている場合、共振周波数での受電時と比べて、ほとんど効率的な電力生成ができなくなり、実質的に制御回路4のアンテナ回路を断線させたことと類似の作用を及ぼし得る。
制御用アンテナ42の形成方法として、RFアンテナ32と同様のものが選択可能であり、RFアンテナ32と同一方法で形成することが材料コストや工程簡略化の観点からは好ましい。本実施形態では、制御用アンテナ42は、RFアンテナ32と同様に、エッチング方式にて形成される。また、制御用アンテナ42のループコイルは、図1に示すように、RFアンテナ32のループコイルの開口部の内側に形成されている。
一般的にループアンテナが受電、受信する電磁波により生じる電磁誘導の磁界強度は、ループアンテナのアンテナ巻き数および開口部の面積に比例する。よって、制御用アンテナ42およびRFアンテナ32のいずれを内側に配置すべきかについては、RF通信回路3の通信感度や強度と制御回路4の電力発生効率との優先度合いを考慮して適宜設計すればよい。
制御用アンテナ42の始点または終点となる2か所の端部42aおよび42bは、それぞれ制御用チップ41の電気的接続端子である接続パッド41aおよび41bに接続される。また、制御用アンテナ42の2か所の端部は、それぞれが分岐し、制御用チップ41に加えて電源ユニット6とも接続される。制御用アンテナ42と制御用チップ41または電源ユニット6との電気的接続は、前述したRFアンテナ32とRFチップ31との接続と同様の方法で行うことができる。
(iv)スイッチ回路
スイッチ回路44は、上述したRF通信回路3のスイッチ回路34と同様に、制御回路4の共振周波数を所定周波数に同調させるかこれに対してシフトさせるかを選択するスイッチ機能を有する。スイッチ回路44は、スイッチ45と調整用コンデンサ46とが直列につながれ、かつ、これが制御用アンテナ42の端部42aに向かう配線と端部42bに向かう配線とにまたがって並列につながれた構成を有する。
また、制御回路4には、スイッチ回路44とは別に同調用のコンデンサ43が同様に並列につながれている。スイッチ45は、前述のとおり、制御用チップ41の制御部48からの信号45sを受けて、オープンまたはクローズの状態に切り替わることができる。スイッチ45は、スイッチ35と同様の方式が適用可能であり、両スイッチのいずれか一方が接点式、他方が無接点式であってもよい。
スイッチ45がオープンのとき、制御回路4は所定周波数の電磁波により共振する活性化モードとなる。調整用コンデンサ46は制御回路4内で浮いた状態となり、制御回路4全体の容量は、コンデンサ46とは無関係に主として同調用のコンデンサ33の容量に依存し、これと回路内の他の素子の容量成分を合算した容量が上述した等価回路の容量であるC2となるようにコンデンサ33の容量が選択される。よって、このとき、制御回路4の共振周波数f2は、外部機器との送受信に用いる周波数、例えば13.56MHzと略同一となり、外部機器とアンテナ装置1との通信が良好に行われる。この場合、制御用アンテナ42は有効化され、制御回路4の電力取得機能が活性化された状態となる。
一方、スイッチ45がクローズのとき、制御回路4は所定周波数の電磁波により共振しない非活性化モードとなる。調整用コンデンサ46は制御回路4内で並列に接続された状態となり、制御用アンテナ42に電流が流れた場合にコンデンサ43に加えて調整用コンデンサ46にも蓄電される。すなわち、制御回路4全体として容量成分が増加する。このとき、制御回路4の等価回路の容量は上記のC2よりも大きな容量であるC21にシフトする。したがって、制御回路4の共振周波数は、上記のf0よりも小さいf21にシフトする。
21が良好な通信が確保され得る所定の範囲を逸脱する場合、すなわち、f21/f0の値が0.95より小さい場合に、外部機器とアンテナ装置1との通信を良好に行うことが困難なため、制御用アンテナ42は無効化され、制御回路4の電力取得機能が非活性化された状態となる。したがって、制御用アンテナ42を無効化したいときに、制御回路4が意図しない誤動作により通信を行ってしまうことの抑制、および、RF通信回路3制御回路4との同時動作による制御回路4へのノイズ発生や誤動作、電力不足による動作中断等の抑制が図れる。
また、f21/f0の値が0.9より小さいことが、当該抑制の効果を一層高める点でより好ましい。スイッチ45がクローズのときの同調用コンデンサ43および調整用コンデンサ46による等価回路の合算容量をC0に合わせることにより、このときの制御回路4の共振周波数がもとの共振周波数よりも大きくなるような構成としてもよいことは前述のRF通信回路3と同様である。
また、制御用アンテナ42が無効化され、制御回路4の電力取得機能が非活性化された状態となるもうひとつのケースとして、受電した電磁波によって制御回路4に誘導される誘起電圧が著しく低下した場合が挙げられる。制御回路4のスイッチ45がオープンのときに、所定周波数の電磁波によって共振した際の制御回路4の誘起電圧のピーク値の絶対値をV02とし、スイッチ45がクローズのとき、当該所定周波数の電磁波を受電したときの制御回路4の誘起電圧の絶対値をV2とする。このとき、V2/V02の値が0.5より小さい場合には、外部機器とアンテナ装置1との通信を良好に行うことが困難なため、制御用アンテナ42は無効化され、制御回路4の電力取得機能が非活性化された状態となる。
このように、制御回路4の誘起電圧がピーク値に対して大きく減衰するのは、上述のように、制御回路4のスイッチ45をクローズにすることにより、制御回路4の共振周波数がf0よりも小さいf21にシフトするため、周波数がf0である電磁波を受信しても制御回路4が共振しないことに起因する。
ここで、リーダー等の外部機器の装置構成を単純化する観点からは、同一周波数の電磁波の送信で、アンテナ装置1のRF通信回路3の非接触通信機能や制御回路4の電力取得機能を活性化できることが好ましい。これより、本実施形態では、RF通信回路3を有効化したときの共振周波数f0と制御回路4を有効化したときの共振周波数f0とを同一周波数としているが、これには限定されない。
例えば、RF通信回路3を有効化できる電磁波の周波数範囲を第1の範囲、無効化できる範囲を第2の範囲とし、制御回路4を有効化できる電磁波の周波数範囲を第3の範囲、無効化できる範囲を第4の範囲とするとき、第1の範囲と第2の範囲とは少なくとも一部が重複し、かつ、第1の範囲と第4の範囲において、および第3の範囲と第2の範囲において、重複しないことが好ましい。この条件であれば、外部機器が同一周波数の電磁波の送信で、アンテナ装置1のRF通信回路3の非接触通信機能や制御回路4の電力取得機能を活性化でき、かつ、確実にいずれか一方の機能を活性化または非活性化できるからである。
また、RF通信回路3および制御回路4は、上述した最適なf0、f11およびf2を決定する上で、同調用のコンデンサ33、43および調整用コンデンサ36、46の各容量を適宜決定する必要がある。よって、一般的に、スイッチ回路34の調整用コンデンサ36およびスイッチ回路44の調整用コンデンサ46の容量は互いに異なるように決定されてもよい。
なお、本実施形態では、RF通信回路3のスイッチ回路34と制御回路4のスイッチ回路44とは、互いに別個の構成として設けられているが、スイッチ回路34およびスイッチ回路44を単一かつ共通の回路構成とし、これをRF通信回路3および制御回路4が共用する構造としてもよい。この場合、共用のスイッチ回路のスイッチは、いわゆる双投スイッチまたはC接点と呼ばれる構造のものであり、一の状態と他の状態との切り換えが可能である。
一の状態では、RF通信回路3として見たときにはスイッチ回路のスイッチはクローズとなり、制御回路4として見たときにはスイッチ回路のスイッチはオープンとなる。一方、他の状態では、RF通信回路3として見たときにはスイッチ回路のスイッチはオープンとなり、制御回路4として見たときにはスイッチ回路のスイッチはクローズとなる。このような構成にすることで、スイッチ回路を複数備える必要がなく、制御部がRF通信回路3のスイッチと制御回路4のスイッチの両方に指示する必要もないので、回路構成や制御を単純化できる利点を有する。
(v)生体情報センサ
生体情報センサ5は、特定ユーザ認証等のため、ユーザ固有の生体情報を取得するためのセンサであり、対象情報はユーザの指から取得する指紋情報、指や手のひらから取得する静脈情報、目から取得する虹彩情報、声から取得する声紋情報、またはユーザの血圧や脈拍等の情報等、様々なものが選択可能である。本実施形態では、生体情報センサ5として指紋情報を取得する指紋センサを使用する。
生体情報センサ5である指紋センサは、アンテナ装置1であるカードの表面21aと略同一面に露出している生体情報センサ5の筐体の表面5aに、ユーザが自己の指を載置することにより、必要な指紋情報を読み取ることができる。読み取り方式は任意であるが、例えば、表面5aに照明とCCDカメラとを備え、生体情報センサ5に載置された指に照明光を当て、反射光の強さをCCDカメラの各画素のデータとして取り込む方法が考えられる。
(vi)電源ユニット
電源ユニット6は、制御用アンテナ42が受電する電磁波の電磁誘導の誘電起電力で発生する電流を蓄電する二次電池であるが、一次電池でもよく、一時的に蓄電するための単なる容量素子であってもよい。電源ユニット6は通常のリチウムイオン二次電池でもよく、酸化物を固体電解質材料とする電解質層を有する全固体電池としてもよい。
また、電源ユニット6は、制御用アンテナ42からだけでなく、RFアンテナ32が受電する電磁波の電磁誘導の誘電起電力で発生する電流をも併せて蓄電する構成であってもよい。本実施形態では、制御用アンテナ42の端部42aおよび42bは、それぞれが分岐し、制御用チップ41および電源ユニット6と接続されている。ただし、制御用アンテナ42の端部42aおよび42bは、制御用チップ41または電源ユニット6の一方にのみ接続されていてもよい。
(vii)その他の回路
詳細は後述するが、制御回路4には、上述したもの以外に、制御用アンテナ42が受電した電磁波による電磁誘導の誘電起電力で生じる電流を直流電流に変換する整流回路47を備えている。
(c)基材その他
本実施形態のアンテナ装置1は、カード形態であるため、以下に述べる追加の構成要素を備えているが、これらはアンテナ装置1の必須の構成要素ではない。アンテナ装置1としては、上述したように、RF通信回路3および制御回路4を備えていれば足りる。以下に、本実施形態のカードであるアンテナ装置1として付加的に備えている構成について説明する。
(i)コア層
図2に示すように、アンテナ装置1は、その表裏面にそれぞれ基材2であるコア層21および22を備えており、両コア層21、22の間に、上述したRF通信回路3および制御回路4が挟み込まれた構成を有している。コア層21および22としては、白色または着色された各種のプラスチックシートを幅広く使用することができ、以下にあげる単独のフィルムあるいはそれらの複合フィルムを使用できる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET-G(テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、等である。コアシートの厚さは、カードの全体厚さを勘案して適宜に選択することができるが、例えば、0.1mm以上、0.5mm以下程度とすることができる。
なお、コア層21に代えて、不透明色の層であるコア層と、透明色のオーバーシート層との積層体の構成としてもよい。こうすることにより、通常のクレジットカードと同様に、コア層の表面に印刷がされ、その上面が透明なオーバーシートによって保護層として覆われ、コア層の表面の印刷が剥がれにくく、光沢感を得ることができる。あるいは、磁気ストライプを熱転写したオーバーシート層をコア層に積層し、オーバーシート層の上面に磁気ストライプを隠蔽する印刷を行うことによって、磁気ストライプが視認されない高意匠性のカードを得ることができる。また、コア層22についても同様である。
(ii)スペーサ
上述のように、アンテナ装置1は、その表裏面にそれぞれコア層21および22を備え、内部にRF通信回路3および制御回路4を挟む構造を有している。ここで、図2に示すように、RF通信回路3や制御回路4の断面は、回路基板23のみが存在する薄い領域と、回路基板23上にRFチップ31や制御用チップ41、生体情報センサ5、電源ユニット6等の各種デバイスが搭載された厚い領域とが併存しており、その影響を受けることでコア層21および22の表面平滑性を維持することが比較的困難である。
このようなRF通信回路3や制御回路4の厚さの不均一によるコア層21および22のうねりを抑制するため、アンテナ装置1は、回路基板23上に部分的に載置されるスペーサ24を備えている。スペーサ24には、各種デバイスとの干渉を回避するため、当該デバイスに対応する領域に貫通孔や切り欠きが設けられている。スペーサ24の部材や厚さは、コア層と同様とすることができる。
(iii)接着剤
上述したスペーサに加え、アンテナ装置1は、表裏面のコア層21および22と、内部のRF通信回路3および制御回路4との間に形成されるスペーサ24以外の空隙を埋め、コア層21および22と、RF通信回路3および制御回路4との密着および密閉を図り、表裏面のコア層21および22のうねりの一層の抑制を図るために、当該空隙に相当する部分に液状の接着剤40が充填されている。接着剤40は、常温硬化型、加熱硬化型等の様々な材料を使用できるが、例えば天然ゴム、合成ゴム系接着剤や、ポリイソシアネートとポリオールのウレタン化反応を用いるウレタン系接着剤等、硬化後もカードとしての一定の可撓性が得られる材料を選択することが好ましい。
なお、通常の磁気カードやICカードのように、上記のような液状の接着剤を使用せずにアンテナ装置1を形成してもよい。この場合、自己融着性のない回路基板23とスペーサ24との間、および回路基板23とコア層22との間に熱融着する接着性シートを挟み、コア層21および22のそれぞれの外側の表面にステンレス板を当て、両側から所定の熱圧を掛ける。これにより、内部のコア層22、接着性シート、回路基板23、接着性シート、スペーサ24およびコア層21の各層が熱融着により一体化したアンテナ装置1を得ることができる。
(iv)表示部、電源スイッチ等
本実施形態のアンテナ装置1は、上記の他にも、必須の構成要素ではないが、付加的な機能を有している。アンテナ装置1は、図1に示すように、アンテナ装置1であるカードの表面21aに露出する表示部7と電源スイッチ8とを互いに隣接するように備えている。表示部7は、アンテナ装置1の動作状態や、そのときに操作可能な機能を表示することができる。本実施形態の表示部7は、一方が正常動作を示す緑色、他方は異常動作や警告を示す赤色に発光する2個のLEDランプであるが、これに限らず、表示部7は、1個のLEDランプが複数色に発光できるものあってもよい。
あるいは、表示部7は、液晶や電子ペーパー等であったり、文字等を表示できるものであってもよい。また、電源スイッチ8は、ユーザがアンテナ装置1の使用の際に押すことにより、生体認証機能や非接触通信機能を活性化するようにアンテナ装置1を起動させるトリガ信号を出力するものとして用いられる。例えば、ユーザが、電源スイッチ8を押すことにより、電源ユニット6または制御回路4から生体情報センサ5に対して電力供給を開始させ、生体情報センサ5による指紋照合を行うことができる。
ただし、このような表示部7や電源スイッチ8は他の構成にて代用可能である。例えば、表示部7を設けずに、アンテナ装置1の状態等を音声等で報知することもできる。また、電源スイッチ8を設ける代わりに、後述するように他のセンサ等でこの機能を代用してもよい。電源スイッチ8が単純に存在しない構成であってもよく、この場合、本実施形態の説明は、常時、電源スイッチ8が押された状態であるものと置き換えることができる。
(d)アンテナ装置の動作等
次に、第1実施形態に係るアンテナ装置1の操作方法、動作および作用について、主として図4~図6に基づいて説明する。図5および図6は、アンテナ装置1の動作を説明するフロー図である。
(i)アンテナ装置の起動および生体認証
図5に示すように、まずユーザはアンテナ装置1の電源スイッチ8を押して、アンテナ装置1を起動させる(ステップS201)。なお、電源スイッチ8を設けない構成とした場合は、アンテナ装置1が外部機器にかざされたことを制御用アンテナ42が検出することで電源スイッチ8が押された場合と同様の挙動をすることとしてもよい。この場合は、図5のステップS201からステップS203は行われず、スイッチ回路34のスイッチ35がノーマルクローズであり、かつ、スイッチ回路44のスイッチ45がノーマルオープンとなっている。そして、制御用アンテナ42による受電検出をトリガとしてステップS204から開始する。
電源スイッチ8が押される前は、RF通信回路3の非接触通信機能が非活性化された状態、すなわち、スイッチ回路34のスイッチ35がクローズとなっている。一方、制御回路4の電力取得機能も非活性化された状態、すなわち、スイッチ回路44のスイッチ45がクローズとなっている。ただし、電源スイッチ8が押される前において、スイッチ回路44のスイッチ45がオープンであり、制御回路4の電力取得機能が活性化された状態となっていてもよい。また、電源スイッチ8が押される前は、電源ユニット6と、制御用チップ41および生体情報センサ5とをつなぐ電力供給用配線はオープンとなっており、電源ユニット6から制御用チップ41や生体情報センサ5への給電は行われない。
電源スイッチ8が押されることにより、電源ユニット6は、制御用チップ41への給電を開始する(ステップS202)。制御用チップ41の起動により、当該制御用チップ41は、CPU等の一機能として働く制御部48を介して、RF通信回路3のスイッチ回路34のスイッチ35をクローズのままとし、かつ、制御回路4のスイッチ回路44のスイッチ45をオープンに切り換えるよう、スイッチ35および45に指示する(ステップS203)。これにより、アンテナ装置1の非接触通信機能は非活性化されたままであり、かつ、制御回路4の電力取得機能が活性化される。
この状態では、制御回路4が所定周波数の電磁波を受けたときに共振し、電磁誘導の起電力で生じる電流を用いて、制御用チップ41へ給電したり電源ユニット6に蓄電することができる(ステップS204)。また、電源ユニット6を中継するか直接的に制御用アンテナ42から電力供給を受けて生体情報センサ5へ給電することができる。よって、制御回路4が所定周波数の電磁波を受電し続ける限り、継続的に制御用チップ41や生体情報センサ5を駆動させることができる。
また、この状態において、ユーザが自身の指を生体情報センサ5の表面5aに載置することにより、生体情報センサ5はユーザの指から必要な生体情報を取得することができる(ステップS205)。ここで、生体情報センサ5は、指を載置した際のCCDセンサの感度の変化や生体情報センサ5付近に設けた容量センサ、温度センサ、または荷重センサ等の検知により、生体情報の取得動作を開始してもよい。あるいは、電源スイッチ8を押してから一定時間内の間、生体情報の取り込み動作を連続的に繰り返す構成としてもよい。
生体情報センサ5による生体情報取得には、例えば時間的制限や回数的制限等、所定条件による制限を設けることができる。本実施形態では、例えば電源スイッチ8を押してから1分以内、かつ、生体認証の失敗が2回以内、という制限を設けている。これにより、ユーザが意図しないタイミングで自分の生体情報を取得されてしまったり、他人のなりすましによる生体認証処理が繰り返し行われる等の問題を抑制することができる。
ここで、生体情報センサ5による生体情報取得が未だ行われていない場合、所定条件を満たすか否かの判断を制御用チップ41が行う(ステップS221)。これを満たす場合は、上記のステップS204およびステップS205を繰り返す。一方、所定条件を満たさない場合(時間が1分を超えた場合または生体認証の失敗が3回に達した場合等)、処理はフローCに続く(図6参照)。なお、所定条件を満たすか否かの判断やその後の処理は、制御用チップ41を介さずに生体情報センサ5自身が行ってもよい。
また、所定条件内において生体情報センサ5による生体情報取得がされた場合には、制御用チップ41は、自身のメモリ49に記憶している正当ユーザのものとして登録された生体情報を読み出し、当該取得された生体情報と比較し照合する(ステップS206)。取得した生体情報とあらかじめ登録された正当ユーザの生体情報との比較照合については、様々な方法が考えられる。CCDカメラ等で画素ごとの濃度情報として取得した正当ユーザの指紋等の撮像情報を、グレースケール化または2値化してそのまま制御用チップ41のメモリ49に格納することも可能だが、データ量が膨大となる。
そのため、これらの撮像情報から一定の特徴を抽出し、元の撮像情報の特徴を有しつつ、データ量の少ないテンプレート情報としてメモリ49に格納しておき、認証のために生体情報センサ5による生体情報取得を行う際には、登録時と同様のアルゴリズムで一定の特徴を抽出し、これと登録済みのテンプレート情報との比較照合をすることが便宜である。これにより、制御用チップ41のメモリ占有量の低減と、生体認証に係る所要時間の短縮が図れるからである。
上記の生体情報センサ5により取得された生体情報と、制御用チップ41のメモリ49に記憶する正当ユーザの生体情報との照合により、両者が同一範囲のものであると制御用チップ41が判断した場合、生体認証が成功したこととなる(ステップS207)。このとき、生体認証の成功を示す表示を、例えば表示部7であるLEDランプを緑色に点灯させる等して行うことができる(ステップS208)。これによって、アンテナ装置1が、ユーザの生体認証に成功したことを、当該ユーザに明確に伝えることができる。一方、両者が同一範囲のものではないと判断した場合、生体認証が失敗したこととなる(ステップS207)。この場合は、例えば表示部7を赤色に点灯させる等して行うことができる(ステップS231)。
生体認証に成功した場合は、制御用チップ41は、制御部48を介して、制御回路4のスイッチ回路44のスイッチ45をオープンからクローズへと切り換え、これと同時に、あるいはスイッチ45の切り換え後の一定時間経過後に、RF通信回路3のスイッチ回路34のスイッチ35をクローズからオープンへと切り換えるよう、スイッチ35および45に指示する(ステップS209)。
これにより、アンテナ装置1の制御回路4の電力取得機能が活性化されていた状態から非活性化された状態に遷移する。また、これと同時あるいは一定時間経過後に、RF通信回路3の非接触通信機能が非活性化されていた状態から活性化された状態に遷移する。スイッチ45およびスイッチ35の切り換えタイミングを一定時間だけずらすことにより、制御回路4とRF通信回路3との両方に電流が流れ込み、RF通信回路3が瞬間的な電流、電圧変動により誤動作する可能性を低減できる。当該時間は、例えば1μsec以上、10sec以下とすることができる。
また、回路の構成の仕方によっては、スイッチ35および45への指示(ステップS209)の後、アンテナ装置1の制御回路4の電力取得機能が活性化されていた状態から非活性化された状態に遷移するよりも若干早いタイミングで、RF通信回路3の非接触通信機能が非活性化されていた状態から活性化された状態に遷移する。その後、一定時間経過後にアンテナ装置1の制御回路4の電力取得機能が活性化されていた状態から非活性化された状態に遷移する。当該時間は、例えば1sec以下とすることができる。この範囲であれば、RF通信回路3および制御回路4が同時に活性化する時間が短いため、それぞれの回路に与える影響を限定できるからである。その後、アンテナ装置1の処理はフローBに続く(図6参照)。
一方、生体認証に失敗した場合は、制御用チップ41は、上述した所定条件(例えば1分以内、かつ、生体認証の失敗が2回以内である等)を満たすか否かの判断を行い(ステップS232)、これを満たす場合は、上記のステップS204以降を繰り返す。所定条件を満たさない場合、処理はフローDに続く(図6参照)。なお、ステップS221に挙げた所定条件と、ステップS232に挙げた所定条件とは同一条件でもよく、異なる条件であってもよい。
(ii)非接触通信
続いて、図6に示すフローBに係るアンテナ装置1の処理を説明する。フローBは、上述したとおり、ユーザが生体認証に成功し、アンテナ装置1の制御回路4の電力取得機能が非活性化され、RF通信回路3の非接触通信機能が活性化された状態に遷移した後の流れである。この状態において、RF通信回路3は、所定周波数の電磁波を受けたときに共振し、電磁誘導の起電力で生じる電流や電圧の変化をその両端が電気的に接続するRFチップ31に伝達し、RFチップ31から出力された電流や電圧の変化を所定周波数の電磁波に変換して放射し、外部機器が受信、解読できるようにすることができる(ステップS211)。また、RFアンテナ32は、外部機器から所定周波数の電磁波を受電し、電磁誘導の起電力で生じる電流を、駆動電力としてRFチップ31に供給することもできる。
ここで、RF通信回路3を活性化させた状態の維持について、例えば時間的制限等、所定条件による制限を設けることができる。本実施形態では、例えば、アンテナ装置1の制御回路4の電力取得機能が非活性化され、RF通信回路3の非接触通信機能が活性化された状態に遷移した時点から10sec以下という制限を設けている。これにより、ユーザが意図しないタイミングで、自己による生体認証を経ることなく、他人のなりすましによるアンテナ装置1の非接触通信機能の利用を抑制することができる。これらの制限は、回路特性等を鑑み、任意に設定、調整できる。
所定条件を満たすか否かの判断を制御用チップ41が行い(ステップS212)、これを満たす場合は、継続してアンテナ装置1の非接触通信機能の利用ができ(ステップS211)、所定条件を満たさない場合(時間が10分を超えた場合等)、制御用チップ41は、制御部48を介して、RF通信回路3のスイッチ回路34のスイッチ35をオープンからクローズへと切り換え、制御回路4のスイッチ回路44のスイッチ45をクローズのまま維持する(ステップS213)。ただし、スイッチ回路44のスイッチ45をオープンへ切り換え、制御回路4の電力取得機能が活性化された状態となっていてもよい。
なお、RF通信回路3を活性化させた状態の維持に関する所定条件は、上記に限られず、例えば、制御用チップ41が専用センサ等を用いて、RF通信回路3の動作状態、例えばRFアンテナ32に発生する磁界強度や電流等をモニタリングし、一定以上の磁界強度等が得られているか、または、これを下回る磁界強度等となる時間が所定時間以内であること等を所定条件としてもよい。また、これ以外の方法として、RFチップ31と制御用チップ41とを配線でつなぎ、RFチップ31から、自身が動作中であることを示す信号を制御用チップ41に出力し、当該信号が受信できること、または、当該信号が受信できない時間が所定時間以内であること等を所定条件としてもよい。
その後、電源スイッチ8を押す前の状態と同様に、電源ユニット6と、制御用チップ41および生体情報センサ5とをつなぐ電力供給用配線をオープンとし、電源ユニット6から制御用チップ41や生体情報センサ5への給電を停止する(ステップS214)。これにより、アンテナ装置1は、RF通信回路3の非接触通信機能と制御回路4の電力取得機能とのいずれもが非活性化された状態に戻る。
また、図5に示すフローCおよびDに係るアンテナ装置1の処理を説明する。フローCは、上述したとおり、生体情報センサ5による生体情報取得において、生体情報取得がされないで所定条件を満たさない場合のその後の流れであり、フローDは、生体認証に失敗したことによって所定条件を満たさない場合のその後の流れである。この場合、図6に示すように、いずれも上述したステップS213からの流れに従う。すなわち、RF通信回路3および制御回路4を非活性化するべく、スイッチ回路34のスイッチ35およびスイッチ回路44のスイッチ45をともにクローズとする。その後、電源ユニット6と、制御用チップ41および生体情報センサ5とをつなぐ電力供給用配線をオープンとする。
(e)アンテナ装置の製造方法
次に、本実施形態のカード形状である、アンテナ装置1の製造方法の一例を説明する。図7および図8は、第1実施形態のアンテナ装置の製造工程を説明する図である。
(i)基材への粘着材の貼り付け
まず、図7(a)に示すように、アンテナ装置1の表裏面を形成する基材2の一方であるコア層22の片側面の所定位置に、所定の厚さおよび領域を有する両面粘着テープ等の粘着材50を貼り付ける。なお、平面視した際の基材2の外形形状は、アンテナ装置1の外形形状と同様に略長方形であるが、製造に際しては、アンテナ装置1が縦横にマトリックス状に配置された多面付けの積層体として製造し、最後にカード形状に打ち抜き加工して各々のアンテナ装置1を得る方法をとることが量産性の面から好適である。図7および図8では、説明の簡略化のため、アンテナ装置1の1枚単位での図を示しているが、上記のとおり、多面付けの積層体の製造方法をも包含するものとする。
粘着材50は、そのコア層22とは反対側の面に各種デバイスが搭載された回路基板23を載置したとき、コア層22に対する所定位置に当該回路基板23を位置決めおよび仮固定するために設ける。また、粘着材50の厚さは、後述するように、その上に固定させるデバイスおよび回路基板23の厚さや、厚さ方向の配置予定位置に応じて適宜変えたものが使用できる。なお、粘着材50の材料としては各種公知のものが使用可能であり、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーン樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の粘着材等を使用できる。また、これに必要に応じてロジン系やフェノール樹脂系の粘着付与剤、可塑剤等の軟化剤を添加してもよい。
(ii)回路基板へのアンテナ形成およびデバイスの取り付け
一方、回路基板23の片面または必要に応じて両面に、RFアンテナ32、制御用アンテナ42を形成し、これに各種デバイスを取り付ける。RFアンテナ32や制御用アンテナ42の形成方法、および、RFアンテナ32や制御用アンテナ42にRFチップ31や制御用チップ41を接続する方法は前述したとおりである。その他、必要に応じて回路基板23の片面または必要に応じて両面には、アンテナ形成方法に準じて各種デバイス間の電気的接続を図るための配線パターンを形成する。
そして、回路基板23上に電源ユニット6や生体情報センサ5、スイッチ回路34および44、各種抵抗素子、容量素子、整流素子、スイッチ等を搭載し固定する。また、これらの回路基板23と各種デバイスとの電気的接点部分の補強および腐食防止のため、必要に応じてエポキシ樹脂等の封止剤を充填して当該接点部分を被覆保護してもよい。
(iii)基材へのデバイス付き回路基板の取り付け
次に、図7(b)に示すように、一方の面に粘着材50が貼り付けられたコア層22の粘着材50の面上に、各種デバイスが取り付けられた回路基板23を載置し、接着固定する。これらのデバイスや回路基板23は、後述する接着剤の充填工程によりアンテナ装置1における配置が最終的に固定されるが、デバイスや回路基板23の配置が接着剤の流動の影響でずれてしまうことを抑制するために、これらを事前にコア層22に仮固定することを意図している。
ここで、例えば生体情報センサ5を搭載する回路基板23bは、他のデバイスを搭載する回路基板23aとは分離している。また、回路基板23bに対応する粘着材50の厚さは、他の回路基板23aに対応する粘着材50の厚さよりも厚くなっている。他のデバイスと異なり、生体情報センサ5は、その表面5aがアンテナ装置1の表面であるコア層21の表面21aと略同一となるように、そのアンテナ装置1の厚さ方向の位置を別途定める必要があるからである。
(iv)スペーサの載置
続いて、図7(c)に示すように、粘着材50と接着固定された各種デバイス付きの回路基板23に重なるように、スペーサ24が載置される。スペーサ24は、回路基板23に対して、コア層22とは反対側に飛び出す各種デバイスとの干渉を避けるため、必要に応じて貫通孔や切り欠きが設けられている。また、スペーサ24の載置位置が回路基板23に対してずれないように、スペーサ24を、粘着材を介して回路基板23に対して仮固定してもよい。
また、これと前後して、他の回路基板23aと分離配置される生体情報センサ5用の回路基板23bの、当該回路基板23aとの電気的接続路を確保するため、回路基板23aおよび回路基板23bにまたがるように導電性ブリッジ素子である連結配線部23cが設けられる。連結配線部23cは導線でもよく、銅片やはんだ、あるいは導電ペーストでもよい。
(v)基材への接着剤塗布
次に、図8(a)に示すように、アンテナ装置1のコア層22とは反対側の表面を形成する基材2であるコア層21を準備する。コア層21には、あらかじめ、生体情報センサ5の表面5aがアンテナ装置1の表面上に露出して配置されるよう、生体情報センサ5の表面5aのサイズに応じた孔が開けられている。また、そのコア層21の孔の外周の、回路基板23と対向する面には、枠21bが接着剤等により固定されている。枠21bは、接着剤40を充填したアンテナ装置1のコア層21に形成されたダム枠であり、生体情報センサ5に対応する孔から硬化前の当該接着剤40が外部にはみ出すことを抑制するものである。
さらに、上記のような枠21bが取り付けられたコア層21の枠21bと同じ面、すなわち回路基板23への載置後、これと対向する面に液状の接着剤40を塗布する。コア層22と当該コア層21とは、各種デバイスが搭載された回路基板23であるRF通信回路3や制御回路4を挟み込んでアンテナ装置1を形成する。ここで、接着剤40を間に挟むことにより、各々のデバイスや回路基板23が位置ずれせずにアンテナ装置1の内部での位置が固定され、デバイスや回路基板23の空気中への露出量が減ることで、これらの劣化が抑制されるからである。
ただし、接着剤40は、本実施形態のようにコア層21の片側面に塗布することに代えて、各種デバイスおよび回路基板23の露出面に直接塗布してもよい。最終的にコア層21が回路基板23に対して積層されたときに、接着剤40がコア層21および22の間の各種デバイス、回路基板23およびスペーサ24を除く空隙を充填する構成となることには変わりないからである。
(vi)接着剤を塗布した基材の回路基板への積層
次に、図8(b)に示すように、接着剤40が塗布されたコア層21を、コア層22、各種デバイスが搭載された回路基板23、およびスペーサ24が積層された中間積層体に対して接着剤塗布面が回路基板23と対向する向きとなるように積層する。また、中間積層体にコア層21を積層した最終積層体を、表裏面からローラで挟み込んで搬送する等して適度の荷重を掛けて厚さの均一化を図り、さらには、常温または所定の温度を掛けることによって、内部に充填された液状接着剤の硬化を促進する。
(vii)積層体の打ち抜きによるアンテナ装置の完成
図示はしないが、アンテナ装置1が多面付けの積層体として製造された場合には、最後に、この最終積層体をカード形状に打ち抜くことにより、各々のアンテナ装置1が完成する。打ち抜きは、例えばオスメス刃、またはトムソン刃(ビク刃)を抜き型として使用してもよく、あるいはレーザ照射により外周を切断することによってカード形状に仕上げてもよい。
(f)第1実施形態について
アンテナ装置1は、主としてRFチップ31、RFアンテナ32およびスイッチ回路34を含むRF通信回路3と、制御用チップ41または電源ユニット6、制御用アンテナ42およびスイッチ回路44を含む制御回路4とを備えている。また、アンテナ装置1の必須要件ではないが、第1実施形態のアンテナ装置1は、さらに生体情報センサ5を備え、カード形状をしている。
アンテナ装置1は、その制御回路4が活性化モードとなる。その結果、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、制御回路4が有する制御用アンテナ42で受電し、電磁誘導の起電力で生じる電流を電源ユニット6に蓄電させること、または、制御用チップ41へ給電することが可能である。また、このとき、当該電流を生体情報センサ5にも供給でき、制御用チップ41や生体情報センサ5を継続的に動作させることができる。したがって、アンテナ装置1は、生体情報センサ5によってユーザの生体情報を取得することができ、かつ、制御用チップ41によって、当該取得された情報とあらかじめ登録された情報との照合等を経て、当該ユーザを認証することができる。
また、アンテナ装置1は、制御用チップ41によって正当ユーザであると認証できた場合等、一定条件のときにそのRF通信回路3が活性化モードとなる。その結果、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、RF通信回路3が有するRFアンテナ32で受電および受信し、電磁誘導の起電力で生じる電流をRFチップ31に供給するととともに、外部機器とRF通信回路3との間で、電磁波の送受信による非接触通信を行うことを可能とする。
このとき、制御用チップ41の制御部は、RF通信回路3のスイッチ回路34のスイッチ35および制御回路4のスイッチ回路44のスイッチ45を切り換えることにより、RFアンテナ32および制御用アンテナ42のいずれか一方を有効化し、他方を無効化する。すなわち、アンテナ装置1は、RF通信回路3および制御回路4のいずれか一方を活性化モードとすることができ、このときは他方が非活性化モードとなる。
第1実施形態のアンテナ装置1は、上記の構成や作用を備えることにより、同一のアンテナの全部または一部を用いて、電力取得機能と非接触通信機能との両機能を同時に確保する装置と比較して、装置全体としての消費電力の集中化が抑制でき、電力不足による意図しないタイミングでの電力取得や非接触通信の中断および電力低下によるチップの誤動作や故障の可能性が低減できる。また、同一のアンテナの全部または一部を用いて、電力取得機能の使用と非接触通信機能の使用のタイミングをずらすようにした装置と比較して、一方の機能の使用時に、同一のアンテナを経由して電流、電圧信号のノイズが他方の機能に悪影響(誤動作等)を及ぼす可能性が低減できる。
さらに、第1実施形態のアンテナ装置1は、上記の構成や作用を備えることにより、特定のアンテナを有効化、無効化する場合の各種パラメータの調整を比較的容易に行うことができる。すなわち、アンテナ装置1のRF通信回路3の共振周波数は、前述の式のとおり、主としてコンデンサ33およびスイッチ回路34内に設けられた調整用コンデンサ36によって定まる(その他、RFチップ31の容量等も考慮すべきであるが、話の単純化のためここでは省略する)。ここで、スイッチ回路34のスイッチ35をオープンにするかクローズにするかによって、RF通信回路3の等価回路から見た容量成分を、コンデンサ33のみの容量か、コンデンサ33および36の合算容量かに容易に変化させることができる。
また、スイッチ35の状態によって互いに変化する容量に基づき、RF通信回路3の共振周波数が異なる二つの状態に容易に変化させることができる。このことから、RF通信回路3の共振周波数が異なる二つの状態について、一の状態のときにRF通信回路3が所定周波数の電磁波と共振し、他の状態のときには共振しないように、コンデンサ33および36容量の組み合わせを選択するだけで、容易にRFアンテナ32を有効化および無効化できるRF通信回路3を構成することができる。したがって、アンテナ回路の共振周波数をシフトさせずに単に電流を遮断する方式と比べると、スイッチ35のスイッチ特性に基づく不具合を抑制することができる。
例えば、スイッチ35に無接点スイッチであるトランジスタを用いた場合には、オープンにしてゲート電圧を下げていても、ソースからドレインに向けて微量の漏れ電流が流れることがあり、共振周波数がシフトしていない場合はアンテナ回路が不用意に動作してしまうおそれがある。さらに、RFチップ31と制御用チップ41との間に特別な通信回路等を新たに設ける必要がなく、制御用チップ41の機能と無関係にRFチップ31を選択することができ、チップの選択範囲の拡大および回路設計の容易化を図ることもできる。
2.第1実施形態の変形例
上述した第1実施形態のアンテナ装置1の変形例について説明する。なお、アンテナ装置の部材構成や回路構成は第1実施形態のアンテナ装置1と同様であるため、同一の符号を用いて相違点について説明する。
(a)変形例1
(i)RF通信回路のスイッチ回路
変形例1は、第1実施形態と同様に、RF通信回路3の等価回路が、インダクタンスがL1であるコイルと容量がC1であるコンデンサとの並列回路となるように配置される。また、RF通信回路3が活性化されているときの共振周波数f0がf0=1/(2π×(L111/2)である。
ここで、スイッチ回路34は、上述したRF通信回路3の共振周波数を所定周波数に同調させるかこれに対してシフトさせるかを選択するスイッチ機能を有するが、第1実施形態のスイッチ回路34とはスイッチ35の動作が逆論理となる。すなわち、スイッチ35がクローズのとき、RF通信回路3が活性化モードとなり、調整用コンデンサ36はRF通信回路3内で並列に接続された状態となる。
このとき、RF通信回路3全体の容量が上述した等価回路の容量であるC1となるように調整用コンデンサ36およびスイッチ回路34の外部に接続される同調用のコンデンサ33の容量が選択される。また、RF通信回路3の共振周波数はf0となり、外部機器との送受信に用いる周波数、例えば13.56MHzと略同一となり、外部機器とアンテナ装置1との通信が良好に行われる。よって、RFアンテナ32は有効化され、RF通信回路3の非接触通信機能が活性化された状態となる。
一方、スイッチ35がオープンのとき、RF通信回路3が非活性化モードとなる。調整用コンデンサ36はRF通信回路3内で浮いた状態となり、RFアンテナ32に電流が流れても調整用コンデンサ36に蓄電されることはなく、RFアンテナ32の回路特性にほとんど影響を及ぼさない。このとき、RF通信回路3全体の容量は、主として同調用のコンデンサ33の容量に依存し、これと回路内の他の素子の容量成分を合算したときの等価回路の容量がC12となるようにコンデンサ33の容量が選択される。したがって、RF通信回路3の共振周波数は、上記のf0よりも大きいf12にシフトする。
12が良好な通信が確保され得る所定の範囲を逸脱する場合、すなわち、f12/f0の値が1.05より大きい場合に、外部機器とアンテナ装置1との通信を良好に行うことが困難なため、RFアンテナ32は無効化され、RF通信回路3の非接触通信機能が非活性化された状態となる。したがって、RFアンテナ32を無効化したいときに、RF通信回路3が意図しない誤動作により通信を行ってしまうことの抑制、および、RF通信回路3制御回路4との同時動作による制御回路4へのノイズ発生や誤動作、電力不足による動作中断等の抑制が図れる。また、f22/f0の値が1.1より大きいことが、当該抑制の効果を一層高める点でより好ましい。
また、受信した電磁波によってRF通信回路3に誘導される誘起電圧が著しく低下した場合にも、RFアンテナ32が無効化され、RF通信回路3の非接触通信機能が非活性化された状態となることは上述の第1実施形態と同様であるため、この点の詳細な説明は省略する。
(ii)制御回路のスイッチ回路
制御回路4のスイッチ回路44も、上述の変形例に係るRF通信回路3のスイッチ回路34と同様の構成をとることができる。すなわち、制御回路4の等価回路が、インダクタンスがL2であるコイルと容量がC2であるコンデンサとの並列回路となるように配置される。また、制御回路4が活性化されているときの共振周波数f0がf0=1/(2π×(L221/2)である。
ここで、スイッチ回路44のスイッチ45がクローズのとき、その制御回路4が活性化モードとなる。その結果、調整用コンデンサ46は制御回路4内で並列に接続された状態となる。このとき、制御回路4全体の容量が上述した等価回路の容量であるC2となるようにコンデンサ46およびスイッチ回路44の外部に接続される同調用のコンデンサ43の容量が選択される。
一方、スイッチ45がオープンのとき、その制御回路4が非活性化モードとなる。その結果、調整用コンデンサ46は制御回路4内で浮いた状態となり、制御用アンテナ42に電流が流れても調整用コンデンサ46に蓄電されることはなく、制御用アンテナ42の回路特性にほとんど影響を及ぼさない。このとき、制御回路4全体の容量は、主として同調用のコンデンサ43の容量に依存し、これと回路内の他の素子の容量成分を合算したときの等価回路の容量がC2よりも小さいC22となるようにコンデンサ43の容量が選択される。したがって、制御回路4の共振周波数は、上記のf0よりも大きいf22にシフトする。
22が良好な通信が確保され得る所定の範囲を逸脱する場合、すなわち、f22/f0の値が1.05より大きい場合に、外部機器とアンテナ装置1との通信を良好に行うことが困難なため、制御用アンテナ42は無効化され、制御回路4の電力取得機能が非活性化された状態となる。したがって、制御用アンテナ42を無効化したいときに、制御回路4が意図しない誤動作により通信を行ってしまうことの抑制、および、RF通信回路3制御回路4との同時動作による制御回路4へのノイズ発生や誤動作、電力不足による動作中断等の抑制が図れる。また、f12/f0の値が1.1より大きいことが、当該抑制の効果を一層高める点でより好ましい。
また、受信した電磁波によって制御回路4に誘導される誘起電圧が著しく低下した場合にも、制御用アンテナ42が無効化され、制御回路4の電力取得機能が非活性化された状態となることは上述の第1実施形態と同様であるため、この点の詳細な説明は省略する。
(iii)アンテナ装置の動作等および製造方法
変形例に係るアンテナ装置1の操作方法、動作および作用は、前述したアンテナ装置1のそれとおおむね同様である。ただし、ステップS203は、RF通信回路3のスイッチ回路34のスイッチ35をオープンのままとし、かつ、制御回路4のスイッチ回路44のスイッチ45をクローズとするよう、スイッチ35および45に指示する旨の内容に読み替える必要がある。
同じく、ステップS209は、生体認証に成功した場合は、制御用チップ41は制御部48を介して制御回路4のスイッチ回路44のスイッチ45をクローズからオープンへと切り換える。また、これと同時に、あるいはスイッチ45の切り換え後の一定時間経過後に、RF通信回路3のスイッチ回路34bのスイッチ35をオープンからクローズへと切り換えるよう、スイッチ35および45に指示する旨の内容に読み替える必要がある。
さらに、ステップS213は、所定条件を満たさない場合(時間が10分を超えた場合等)、制御用チップ41は、制御部48を介して、RF通信回路3のスイッチ回路34のスイッチ35をクローズからオープンへと切り換え、制御回路4のスイッチ回路44のスイッチ45をオープンのまま維持する旨の内容に読み替える必要がある。また、アンテナ装置1の製造方法は、前述したアンテナ装置1のそれと同様である。
なお、本変形例は、述のRF通信回路3の等価回路におけるコイルインダクタンスL1をL5に、容量C1をC5に、共振周波数f1をf5に置き換えたRF通信回路3Bの等価回路を想定する。ここで、RF通信回路3Bのスイッチ回路34bのスイッチ35がクローズのとき、RFアンテナ32、スイッチ回路34bおよびRFチップ31が閉回路を形成し、これにコンデンサ33が並列的に接続する。RF通信回路3B全体の容量は、主としてコンデンサ33の容量に依存し、これと回路内の他の素子の容量成分を合算した容量が前述の等価回路の容量であるC5となるようにコンデンサ33の容量が選択される。
よって、このとき、RF通信回路3Bの共振周波数f5は、外部機器との送受信に用いる周波数、例えば13.56MHzと略同一となり、外部機器とアンテナ装置1Bとの通信が良好に行われる。この場合、RFアンテナ32は有効化され、RF通信回路3Aの非接触通信機能が活性化された状態となる。
一方、スイッチ35がオープンのとき、RFアンテナ32の端部32aに向かう配線は実質的に断線したことになり、RFチップ31とは電気的に接続されない。よってRF通信回路3BがRFアンテナ32およびRFチップ31を含む閉回路が形成されず、RFアンテナ32の両端に交流磁界が発生したとしても、その電流、電圧はRFチップ31に入力されなくなる。よって、この場合、明らかにRFアンテナ32は無効化され、RF通信回路3Aの非接触通信機能が非活性化された状態となる。
(b)変形例2
変形例1は、上述のように、RF通信回路3のスイッチ回路34のスイッチ35をクローズとしたときに、RF通信回路3の共振周波数を所定周波数に同調させてRF通信回路3を活性化し、スイッチ35をオープンにしたときに、RF通信回路3の共振周波数を所定周波数からシフトさせ、RF通信回路3を非活性化するものである。また、これと同様に、制御回路4のスイッチ回路44のスイッチ45をクローズとしたときに、制御回路4の共振周波数を所定周波数に同調させて制御回路4を活性化し、スイッチ35をオープンにしたときに、制御回路4の共振周波数を所定周波数からシフトさせ、制御回路4を非活性化するものである。
これに対して、変形例2は、RF通信回路3および制御回路4のいずれか一方のアンテナ回路のスイッチ回路が、スイッチがオープンのときにアンテナ回路が活性化される構成、すなわち、第1実施形態の構成を備え、他方のアンテナ回路のスイッチ回路は、スイッチがクローズのときにアンテナ回路が活性化される構成、すなわち、変形例1の構成を備えるものである。例えば、RF通信回路3のスイッチ回路34は、スイッチ35がオープンのとき、RF通信回路3全体の容量が上述した等価回路の容量であるC1となるようにコンデンサ33の容量が選択される。よってこのとき、RF通信回路3の共振周波数はf0なる。
また、スイッチ35がクローズのとき、RF通信回路3全体の容量がC1よりも大きな容量であるC11にシフトする。したがって、RF通信回路3の共振周波数は、上記のf0よりも小さいf11にシフトする。
一方、制御回路4のスイッチ回路44は、スイッチ45がクローズのとき、制御回路4全体の容量が上述した等価回路の容量であるC2となるようにコンデンサ46およびスイッチ回路44の外部に接続される同調用のコンデンサ43の容量が選択される。
また、スイッチ45がオープンのとき、制御回路4全体の容量が、は、主として同調用のコンデンサ43の容量に依存し、これと回路内の他の素子の容量成分を合算したときの等価回路の容量がC2よりも小さいC22となるようにコンデンサ43の容量が選択される。したがって、制御回路4の共振周波数は、上記のf0よりも大きいf22にシフトする。
このように、変形例2では、RF通信回路3および制御回路4を活性化するときのアンテナ回路の共振周波数がともにf0であるが、RF通信回路3を非活性化したときの当該RF通信回路3の共振周波数はf0よりも小さいf11にシフトし、制御回路4を非活性化したときの当該制御回路4の共振周波数はf0よりも大きいf22にシフトする。したがって、アンテナ装置1のRF通信回路3および制御回路4の活性化可能な周波数f0にある程度の範囲が存在し、リーダー等の外部機器から送信された電磁波の周波数がf0よりも多少上下に変動したとしても、一方が非活性化するようにスイッチ回路が切り替えられたRF通信回路3や制御回路4が同時に誤って活性化してしまう可能性を一層低減することができる。
なお、これの反対で、RF通信回路3を非活性化したときの当該RF通信回路3の共振周波数がf0よりも大きいf12にシフトし、制御回路4を非活性化したときの当該制御回路4の共振周波数がf0よりも小さいf21にシフトするようにアンテナ装置1を構成してもよい。
(c)変形例3
本実施形態のアンテナ装置1の製造方法は上述したものには限られない。以下に、変形例3に係るアンテナ装置1Dの構成および製造方法の一例を説明する。図12は、変形例3のアンテナ装置1Dの図2に対応する断面図であり、図13は、図8に対応するアンテナ装置1Dの製造工程を説明する図である。
変形例3のアンテナ装置1Dがアンテナ装置1と異なるのは、図12に示すように、回路基板23が、粘着材50によりコア層22に対して固定されていないことである。その代わりに、回路基板23は、生体情報センサ5の周囲に設けられた粘着材50を介して、コア層21に対して固定されている。すなわち、コア層21の回路基板23側の裏面の枠21bの周囲を囲むように粘着材50が貼り付けられ、当該粘着材50の厚さ方向の一端にコア層21が、他端に回路基板23が当接し、コア層21および回路基板23を接着固定している。これにより、アンテナ装置1よりも、粘着材50の使用箇所を少なくでき、その使用量を低減できる。
変形例3のアンテナ装置1Dを製造する場合は、まず、図13(a)に示すように、コア層21を準備し、あらかじめ、生体情報センサ5の表面5aがアンテナ装置1の表面上に露出して配置されるよう、生体情報センサ5の表面5aのサイズに応じた孔を開けておく。また、そのコア層21の孔の外周の、回路基板23と対向する面に、枠21bを接着剤等により固定する。さらに、コア層21の枠21bに沿ってこれと同等かこれより多少大きめのサイズの粘着材50を枠21bに対して粘着させる。粘着材50の一部は、枠21bの外側のコア層21に直接粘着していてもよい。
次に、図13(b)に示すように、粘着材50が貼付されたコア層21を、各種デバイスが搭載された回路基板23に積層し、粘着材50の端部が回路基板23の一部と当接するように押し付ける。なお、回路基板23の上には、あらかじめスペーサ24を載置しておく。これにより、各種デバイス、回路基板23、スペーサ24およびコア層21の相対的な位置関係は固定され、大きくずれることがなくなる。
その後、図13(b)に示すように、回路基板23のコア層21とは反対側の面に一定の間隔を開けてコア層22を配置する。さらに、その後、コア層21とコア層22との間の隙間全体に、接着剤40を注入、充填し、接着剤を硬化させる。以上により、粘着材50の配置が異なること以外はアンテナ装置1とほぼ同様の構成である変形例3に係るアンテナ装置1Dが完成する。
これより、変形例3では、粘着材50をコア層21の枠21bに沿った領域に設けることで、回路基板23とコア層21との仮固定を行うことができ、工程の単純化と粘着材50の使用量の低減を図ることができる。
3.本開示の第2実施形態
次に、第2実施形態のアンテナ装置1Aについて、主として第1実施形態との相違点を中心に説明する。図9は、第2実施形態のアンテナ装置1Aについての、図3に対応する概略的な回路を示す図である。アンテナ装置1AはRF通信回路3Aおよび制御回路4Aを備えている。また、RF通信回路3Aおよび制御回路4Aは、それぞれ、アンテナ装置1のRF通信回路3および制御回路4が備えるスイッチ回路34および44とは異なるスイッチ回路34aおよび44aを備える。
スイッチ回路34および34aは、ともにRFアンテナ32の端部32aに向かう配線と端部32bに向かう配線とにまたがって並列につながれた構成を有している。しかし、スイッチ回路34がスイッチ35と調整用コンデンサ36とが直列につながれた構成であるのに対して、スイッチ回路34aは、スイッチ35のみから構成されている点が相違する。また、制御回路4Aのスイッチ回路44aも同様である。
(a)RF通信回路のスイッチ回路
前述のRF通信回路3の等価回路におけるコイルインダクタンスL1をL3に、容量C1をC3に、共振周波数f1をf3に置き換えたRF通信回路3Aの等価回路を想定する。ここで、RF通信回路3Aのスイッチ回路34aのスイッチ35がオープンのとき、RF通信回路3Aは活性化モードとなる。RF通信回路3A全体の容量は、主としてコンデンサ33の容量に依存し、これと回路内の他の素子の容量成分を合算した容量が前述の等価回路の容量であるC3となるようにコンデンサ33の容量が選択される。
このとき、RF通信回路3Aの共振周波数f3は、外部機器との送受信に用いる周波数、例えば13.56MHzと略同一となり、外部機器とアンテナ装置1Aとの通信が良好に行われる。この場合、RFアンテナ32は有効化され、RF通信回路3Aの非接触通信機能が活性化された状態となる。
一方、スイッチ35がクローズのとき、RF通信回路3Aは非活性化モードとなる。スイッチ回路34aと並列に接続されるコンデンサ33の両端が同一電圧となるため、コンデンサの蓄電機能は発揮できなくなる。また、RFアンテナ32の端部32aに向かう配線と端部32bに向かう配線とがショートするため、RFアンテナ32の両端に交流磁界は発生しなくなる。よって、この場合、明らかにRFアンテナ32は無効化され、RF通信回路3Aの非接触通信機能が非活性化された状態となる。
(b)制御回路のスイッチ回路
制御回路4Aのスイッチ回路44aの作用も、上述のRF通信回路3Aのスイッチ回路34aと同様である。前述の制御回路4の等価回路におけるコイルインダクタンスL2をL4に、容量C2をC4に、共振周波数f2をf4に置き換えた制御回路4Aの等価回路を想定する。ここで、スイッチ回路44aのスイッチ45がオープンのとき、制御回路4Aは活性化モードとなる。コンデンサ43と回路内の他の素子の容量成分を合算した容量が前述の等価回路の容量であるC4となるようにコンデンサ43の容量が選択されるため、制御用アンテナ42は有効化され、制御回路4Aの非接触通信機能が活性化された状態となる。
一方、スイッチ45がクローズのとき、制御回路4Aは非活性化モードとなる。このとき、コンデンサ43の蓄電機能は発揮できなくなり、制御用アンテナ42の両端に交流磁界は発生しなくなる。この場合は明らかに制御用アンテナ42は無効化され、制御回路4Aの電力取得機能が非活性化された状態となる。
(c)アンテナ装置の動作等および製造方法
アンテナ装置1Aの操作方法、動作および作用は、前述したアンテナ装置1のそれと同様である。また、アンテナ装置1Aの製造方法も、前述したアンテナ装置1のそれと同様である。
(d)第2実施形態について
アンテナ装置1Aは、第1実施形態のアンテナ装置1とは、RF通信回路3Aが備えるRFアンテナ32の有効化または無効化を選択するスイッチ回路34aと、制御回路4Aが備える制御用アンテナ42の有効化または無効化を選択するスイッチ回路44aとの構成が異なる。本実施形態では、スイッチ回路34aはスイッチ35のみを有し、第1実施形態のスイッチ回路34のようにコンデンサを直列的に備えていない。
よって、スイッチ35をオープンとしたときには、第1実施形態と同様の作用により、RF通信回路3は活性化モードとなる。このとき、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、RF通信回路3Aが有するRFアンテナ32で受電および受信し、電磁誘導の起電力で生じる電流をRFチップ31に供給するととともに、外部機器とRF通信回路3Aとの間で、電磁波の送受信による非接触通信を行うことが可能となる。
一方、スイッチ35をクローズにしたときには、RF通信回路3は非活性化モードとなるが、内容面が第1実施形態とは異なる。すなわち、RF通信回路3Aの共振周波数は、スイッチ35をオープンにした場合と比べて変動するわけではなく、RFアンテナ32およびコンデンサ33の両端がショートされることにより、実質的に電流の発生を遮断することで、RFアンテナ32を無効化する。なお、制御回路4Aのスイッチ回路44aについても同様である。
本実施形態では、上記のとおり、スイッチ回路34aおよび44aの構成をより単純化しつつ、RFアンテナ32および制御用アンテナ42の有効化および無効化の制御を行うことができる。なお、スイッチ35が接点スイッチ、無接点スイッチのいずれであっても、スイッチ35をクローズにした際、スイッチ35の両端のインピーダンスは必ずしも0とはならないことがある。
このとき、スイッチ35をクローズとしていても、微量の電流が制御回路4A内に流れる可能性があることから、アンテナ回路に一定以上の電流や電圧が生じない限り、RFチップ31が動作開始しないようにRFチップ31またはRF通信回路3A内に何らかの動作制限回路を設けておくことが好ましい。
4.本開示の第3実施形態
続けて、第3実施形態のアンテナ装置1Bについて、第2実施形態と同様、主として第1実施形態との相違点を中心に説明する。図10は、第3実施形態のアンテナ装置1Bについての、図3に対応する概略的な回路を示す図である。アンテナ装置1BはRF通信回路3Bおよび制御回路4Bを備えている。
また、RF通信回路3Bおよび制御回路4Bは、アンテナ装置1や1Aとは異なるスイッチ回路34bおよび44bを備える。さらに、スイッチ回路34bや44bの配置位置も、スイッチ回路34、34aや44、44aとは異なる。制御回路4Aのスイッチ回路44aも同様である。
(a)RF通信回路のスイッチ回路
第1および第2実施形態のRF通信回路3および3Aのスイッチ回路34および34aは、ともにRFアンテナ32の端部32aに向かう配線と端部32bに向かう配線とにまたがって並列につながれた構成を有していた。しかし、第3実施形態のRF通信回路3Bのスイッチ回路34bは、RFアンテナ32の端部32aに向かう配線の途中に直列につながれた構成を有する。なお、スイッチ回路34bは、RFアンテナ32の端部32bに向かう配線の途中に直列につながれた構成であってもよい。さらに、スイッチ回路34bは、第2実施形態のスイッチ回路34aと同様に、スイッチ35のみから構成されている。また、制御回路4Bのスイッチ回路44bも同様である。
前述のRF通信回路3の等価回路におけるコイルインダクタンスL1をL5に、容量C1をC5に、共振周波数f1をf5に置き換えたRF通信回路3Bの等価回路を想定する。ここで、RF通信回路3Bのスイッチ回路34bのスイッチ35がクローズのとき、RF通信回路3Bは活性化モードとなる。このとき、RFアンテナ32、スイッチ回路34bおよびRFチップ31が閉回路を形成し、これにコンデンサ33が並列的に接続する。RF通信回路3B全体の容量は、主としてコンデンサ33の容量に依存し、これと回路内の他の素子の容量成分を合算した容量が前述の等価回路の容量であるC5となるようにコンデンサ33の容量が選択される。
よって、RF通信回路3Bの共振周波数f5は、外部機器との送受信に用いる周波数、例えば13.56MHzと略同一となり、外部機器とアンテナ装置1Bとの通信が良好に行われる。この場合、RFアンテナ32は有効化され、RF通信回路3Aの非接触通信機能が活性化された状態となる。
一方、スイッチ35がオープンのとき、RF通信回路3Bは非活性化モードとなる。このとき、RFアンテナ32の端部32aに向かう配線は実質的に断線したことになり、RFチップ31とは電気的に接続されない。よってRF通信回路3BがRFアンテナ32およびRFチップ31を含む閉回路が形成されず、RFアンテナ32の両端に交流磁界が発生したとしても、その電流、電圧はRFチップ31に入力されなくなる。よって、この場合、明らかにRFアンテナ32は無効化され、RF通信回路3Aの非接触通信機能が非活性化された状態となる。
(b)制御回路のスイッチ回路
制御回路4Bのスイッチ回路44bの作用も、上述のRF通信回路3Bのスイッチ回路34bと同様である。前述の制御回路4の等価回路におけるコイルインダクタンスL2をL6に、容量C2をC6に、共振周波数f2をf6に置き換えた制御回路4Bの等価回路を想定する。ここで、スイッチ回路44bのスイッチ45がクローズのとき、制御回路4Bは活性化モードとなる。ここで、コンデンサ43と回路内の他の素子の容量成分を合算した容量が前述の等価回路の容量であるC6となるようにコンデンサ43の容量が選択されるため、制御用アンテナ42は有効化され、制御回路4Bの非接触通信機能が活性化された状態となる。
一方、スイッチ45がオープンのとき、制御回路4Bは非活性化モードとなる。このとき、制御用アンテナ42の両端に交流磁界が発生したとしても、その電流、電圧は制御用チップ41や電源ユニット6に入力されなくなる。この場合、明らかに制御用アンテナ42は無効化されたことと同じとなり、制御回路4Bの電力取得機能が非活性化された状態となる。
このように、第3実施形態のRF通信回路3Bのスイッチ回路34bは、そのスイッチ35をオープンにするかクローズにするかによって決まる、RFアンテナ32の有効化または無効化と、RF通信回路3Bの活性化または非活性化の挙動が逆転する。すなわち、第1および第2実施形態のRF通信回路3および3Aのスイッチ回路34および34aでは、スイッチ35をオープンにしたとき、RFアンテナ32が有効化され、RF通信回路3および3Aが活性化されることになるが、第3実施形態のRF通信回路3Bのスイッチ回路34bでは、スイッチ35をオープンにしたとき、RFアンテナ32が無効化され、RF通信回路3Bが非活性化される。
(c)アンテナ装置の動作等および製造方法
アンテナ装置1Aの操作方法、動作および作用は、前述したアンテナ装置1のそれとおおむね同様である。ただし、ステップS203は、RF通信回路3Bのスイッチ回路34bのスイッチ35をオープンのままとし、かつ、制御回路4Bのスイッチ回路44bのスイッチ45をクローズとするよう、スイッチ35および45に指示する旨の内容に読み替える必要がある。同じく、ステップS209は、生体認証に成功した場合に、制御用チップ41は制御部48を介して制御回路4Bのスイッチ回路44bのスイッチ45をクローズからオープンへと切り換える。
また、これと同時に、あるいはスイッチ45の切り換え後の一定時間経過後に、RF通信回路3Bのスイッチ回路34bのスイッチ35をオープンからクローズへと切り換えるよう、スイッチ35および45に指示する旨の内容に読み替える必要がある。
さらに、ステップS213は、所定条件を満たさない場合(時間が10分を超えた場合等)、制御用チップ41は、制御部48を介して、RF通信回路3Bのスイッチ回路34bのスイッチ35をクローズからオープンへと切り換え、制御回路4のスイッチ回路44bのスイッチ45をオープンのまま維持する旨の内容に読み替える必要がある。また、アンテナ装置1Bの製造方法は、前述したアンテナ装置1のそれと同様である。
(d)第3実施形態について
アンテナ装置1Bは、第1実施形態のアンテナ装置1とは、RF通信回路3Bが備えるRFアンテナ32の有効化または無効化を選択するスイッチ回路34bと、制御回路4Bが備える制御用アンテナ42の有効化または無効化を選択するスイッチ回路44bとの構成が異なる他、スイッチ回路34bおよび44bのRF通信回路3Bおよび制御回路4B内の配置も異なる。本実施形態では、第2実施形態と同様にスイッチ回路34bはスイッチ35のみを有し、第1実施形態のスイッチ回路34のようにコンデンサを直列的に備えていない。さらに、RF通信回路3Bのスイッチ回路34bは、RFアンテナ32の端部32aに向かう配線の途中、または端部32bに向かう配線の途中に直列につながれた構成を有する。
よって、スイッチ35をオープンにしたときとクローズにしたときのRFアンテナ32やRF通信回路3Bの挙動は逆転する。すなわち、スイッチ35をクローズとしたときには、第1実施形態と同様の作用により、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、RF通信回路3Bが有するRFアンテナ32で受電および受信し、電磁誘導の起電力で生じる電流をRFチップ31に供給するととともに、外部機器とRF通信回路3Bとの間で、電磁波の送受信による非接触通信を行うことが可能となる。
一方、スイッチ35をオープンにしたときには、第1実施形態とは異なり、RF通信回路3Bの共振周波数は、スイッチ35をクローズにした場合と比べて変動するわけではなく、RFアンテナ32の一端が断線して、または疑似的な断線をしてRFチップ31と接続しなくなることにより、実質的に電流の発生を遮断することで、RFアンテナ32を無効化する。なお、制御回路4Bのスイッチ回路44bについても同様である。
本実施形態では、上記のとおり、スイッチ回路34bおよび44bの構成をより単純化しつつ、RFアンテナ32および制御用アンテナ42の有効化および無効化の制御を行うことができる。なお、スイッチ35が無接点スイッチである場合は、スイッチ35をオープン、すなわち、トランジスタ等のゲート電圧を動作電圧以下に下げていても、ソースからドレインに向けて微量の漏れ電流が流れることがあり、その結果、制御回路4B内に微量の電流が流れる可能性がある。よって、一定以上の電流や電圧が生じない限り、RFチップ31が動作開始しないようにRFチップ31またはRF通信回路3B内に何らかの動作制限回路を設けておくことが好ましい。
5.本開示の第4実施形態
次に、第4実施形態のアンテナ装置1Cについて、同じく第1実施形態との相違点を中心に説明する。図11は、第4実施形態のアンテナ装置1CであるデュアルインターフェースICカードについての、図1に対応する平面図である。デュアルインターフェースICカードとは、外部接触端子を通じて銀行のATM機等の外部装置とデータの送受信を有線で行う接触通信機能と、自動改札機のような外部装置とデータの送受信を電磁波等による無線で行う非接触通信機能とを単一チップで共用できるICカードをいう。
図11に示すように、アンテナ装置1Cは、略長方形状を形成する基材2と、当該基材2の表面に配置された、略長方形状の外部接触端子31eを有するRFチップ31gと、略長方形状の生体情報センサ5と、表示部7と、電源スイッチ8と、を備えており、これらを直接視認することができる。また、破線で示した部品は、基材2の内部または奥側に配置されているため、直接視認することはできないが、アンテナ装置1Cは、RFチップ31gやRFアンテナ32から構成されるRF通信回路3と、制御用チップ41や制御用アンテナ42、生体情報センサ5、および電源ユニット6を含む制御回路4と、をさらに備えている。
アンテナ装置1Cは、リーダー等の外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、制御回路4が有する制御用アンテナ42で受電し、電磁誘導の起電力で生じる電流を電源ユニット6に蓄電したり、制御用チップ41および生体情報センサ5に供給することができる。また、アンテナ装置1Cは、外部機器から発せられた所定周波数の電磁波を、RF通信回路3が有するRFアンテナ32で受信し、外部機器とRF通信回路3との間で、電磁波の送受信による非接触通信を行うことが可能である。
さらに、アンテナ装置1Cは、制御用チップ41の制御部48からの指示により、RF通信回路3および制御回路4のいずれか一方を活性化モードとすることができ、このときは必ず他方が非活性化モードとなる。このとき、RF通信回路3のRFアンテナ32および制御回路4の制御用アンテナ42のいずれか一方を有効化し、他方を無効化するよう制御できる。これにより、両方の機能を同時に活性化する場合と比較して、電力消費の集中を回避でき、いずれか一方の使用中のアンテナに流れた電流が他方の未使用のアンテナへ流れる等による悪影響を抑制することができる。
さらに、アンテナ装置1Cは、上記の一連の動作とは独立して、RFチップ31gの機能により、外部接触端子31eを通じての外部機器との接触通信を随時行うことができる。すなわち、アンテナ装置1Cは、制御用アンテナ42を有効化し制御回路4の電力取得機能を活性化している間は、生体情報センサ5による生体情報取得や制御用チップ41による判断等の制御回路4の電力取得機能に基づく一連の動作が許されるが、RF通信回路3の非接触通信機能は使用できない。
また逆に、アンテナ装置1Cは、RFアンテナ32を有効化しRF通信回路3の非接触通信機能を活性化している間は、非接触通信は許されるが、生体情報センサ5による生体情報取得や制御用チップ41による判断等の電力取得機能に基づく一連の動作は行えない。
しかし、アンテナ装置1Cは、RF通信回路3が活性化されているか、制御回路4が活性化されているかに関わらず、RFチップ31gの接触通信機能に基づき、当該アンテナ装置1Cの外部接触端子31eを外部機器のコンタクトピンと接触させることにより、ISO7816に準じた接触通信機能を発揮することができる。ただし通常は、デュアルインターフェースICカードに使用するRFチップ31gは、非接触通信と接触通信のいずれか一方を優先するように設計されているため、非接触通信の最中には接触通信を同時に行うことができないケースが多い。
なお、RFチップ31gと制御用チップ41との間を、回路基板23を経由して信号線で接続することもできる。この場合、アンテナ装置1Cは、制御回路4が非活性化されてからでないとRF通信回路3を活性化しないのと同様に、制御回路4が非活性化されてからでないと接触通信機能を活性化しない、といった制御をすることが可能となる。例えば、一連の生体情報センサ5によるユーザ認証が成功しなければ、非接触通信機能だけでなく、接触通信機能も使用できないようにすることで、アンテナ装置1Cのセキュリティを向上させることができる。
(a)RF通信回路および制御回路の構成
アンテナ装置1CのRF通信回路3および制御回路4の構成は、接触通信部分を除いて第1実施形態のそれと同様である。また、上記のように、RFチップ31gおよび制御用チップ41を信号線で電気的に接続してもよい。
(i)RFチップ
RFチップ31gは、RFチップ31の非接触通信に関する諸機能に加え、接触通信用インターフェースを備え、ISO7816に準拠した6個または8個の独立した端子を有する外部接触端子31eをその周囲に配置している。RFチップ31gと外部接触端子31eとは、一体化したICモジュールとして製造されてもよく、外部接触端子31eとは分離してRFチップ31gのみが回路基板23上に形成され、両者がフレキシブル基板によって電気的に接続されていてもよい。
(ii)RFアンテナ
RFアンテナ32は、第1実施形態と同様に、RFアンテナ32の始点または終点となる2か所の端部32aおよび32bが、それぞれRFチップ31gの電気的接続端子である接続パッド31aおよび31bに接続されることにより、RFチップ31gとの閉回路を形成する。
(b)アンテナ装置の動作等
アンテナ装置1Cの操作方法、動作および作用は、前述したアンテナ装置1のそれと同様である。ただし、前述したように、RFチップ31gによるRF通信回路3の活性化と連動して、またはRF通信回路3が活性化される条件下でのみ、RFチップ31gの外部接触端子31eを通じた外部機器との接触通信機能を活性化する制御を付加してもよい。
この場合、RFチップ31gの接触通信機能を活性化させるか否かの判断は、制御用チップ41が行ってもよく、RFチップ31gが、非接触通信機能の活性化または非活性化の状態を検出して、自身で接触通信機能を活性化させるか否かの判断を行ってもよい。また、この場合において、非接触通信機能の活性化の条件と、接触通信機能の活性化の条件とが異なるように制御することもできる。
(c)アンテナ装置の製造方法
アンテナ装置1Cの製造方法は、前述したアンテナ装置1のそれとほぼ同様である。ただし、回路基板23へのアンテナ形成およびデバイスの取り付けの工程において、回路基板23の片面には、RFチップ31gを含む各種デバイスを取り付けるが、RFチップ31gには、これと一体化した、または分離配置され電気的に接続された外部接触端子31eがあらかじめ付随して形成されていることが必要である。
また、基材への接着剤塗布の工程において、アンテナ装置1Cのコア層22とは反対側の表面を形成するコア層21を準備する段階では、コア層21には、あらかじめ、生体情報センサ5の表面5aがアンテナ装置1の表面上に露出して配置されるよう、生体情報センサ5の表面5aのサイズに応じた孔が開けられている。これに加えて、コア層21には、外部接触端子31eがアンテナ装置1Cの表面上に露出して配置されるよう、外部接触端子31eのサイズに応じた孔が開けられることが必要である。
なお、RFチップ31gが、外部接触端子31eと一体的なICモジュールとして形成されている場合には、上述の方法によらず、RFチップ31gを搭載しない回路基板23を用いて、第1実施形態におけるアンテナ装置1の製造方法にてカードサイズの中間物を製造する。その後、当該中間物の外部接触端子31eの搭載予定領域に沿って表面を切削加工して凹部を形成し、回路基板23のRFアンテナ32の両端部32aおよび32bを露出させる。
さらに、RFアンテナ32の両端部32aおよび32bの上面に導電ペースト等を塗布した後、RFチップ31gを含むICモジュールを、RFアンテナ32の端部32aおよび32bと電気的に接続するように位置合わせして搭載し、導電ペーストを加熱硬化させる。このとき、ICモジュールには、RFチップ31gの接続パッド31aおよび31bと電気的に導通した2端子が露出しており、当該2端子が、それぞれ、RFアンテナ32の両端部32aおよび32bと電気的に接続される。こうすることによって製造工程の簡略化や歩留まり向上による製造コストの低減を図ることができる。
(d)第4実施形態について
アンテナ装置1Cは、接触通信と非接触通信とを1チップで兼用できるRFチップ31gおよびRFアンテナ32を含むRF通信回路3と、制御用チップ41または電源ユニット6、および制御用アンテナ42を含む制御回路4とを備えたデュアルインターフェースICカードである。また、アンテナ装置1Cは、さらに生体情報センサ5を備えることができる。
アンテナ装置1Cは、上述のした第1実施形態のカードであるアンテナ装置1の機能のすべてを有している。さらに、アンテナ装置1Cは、RF通信回路3が活性化されているか、制御回路4が活性化されているかに関わらず、RFチップ31gの接触通信機能に基づき、当該アンテナ装置1Cの外部接触端子31eを介して外部機器との間で接触通信機能を発揮することができる。これより、アンテナ装置1Cは、デュアルインターフェースICカードとして、非接触通信と接触通信の両方の機能を兼用して使用できる。
また、スキミング等の不正使用がされる可能性が比較的高い非接触通信を行う際には、事前に生体認証等を経て安全が確認された場合にこれを許可する等の使い分けが容易にできる。さらに、RFチップ31gと制御用チップ41との間に通信回路等を設けない場合は、制御用チップ41の機能と無関係にRFチップ31gを選択することができ、チップの選択範囲の拡大および回路設計の容易化を図ることもできる。
また、アンテナ装置1Cは、接触通信時に、RFチップ31gの外部接触端子31eを通じて供給される電源電力を制御回路4の制御用チップ41に伝達する構成としてもよい。すなわち、RFチップ31gと制御用チップ41との間に電力供給用の配線を設けてもよい。こうすることにより、アンテナ装置1Cは、接触通信を行っている間に、十分な電力を制御用チップ41や生体情報センサ5に供給できる。その結果、生体認証等を経て安全が確認された場合にRF通信回路3を活性化させ、非接触通信を良好に行うことができる。
なお、第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態では、それぞれのRF通信回路および制御回路が備えるスイッチ回路の構成が同一である旨の例示をしている。ただし、本開示はこれに限定されるものではなく、いずれか一の実施形態や変形例で例示されるRF通信回路が備えるスイッチ回路と、これとは異なる他の実施形態や変形例で例示される制御回路が備えるスイッチ回路と、を組み合わせたアンテナ装置としてもよいことは言うまでもない。また、第4実施形態のデュアルインターフェースICカードについても同様であり、これらはすべて本開示の範囲に含まれる。
1、1A、1B、1D アンテナ装置
1C アンテナ装置(デュアルインターフェースICカード)
2 基材
3、3A、3B RF通信回路
4、4A、4B 制御回路
5 生体情報センサ
6 電源ユニット
7 表示部
8 電源スイッチ
21、22 コア層
21a 表面
21b 枠
23、23a、23b 回路基板
23c 連結配線部
24 スペーサ
31、31g RFチップ
31a、31b、31c、31d、31f 接続パッド
31e 外部接触端子
32 RFアンテナ
32a、32b 端部
33 コンデンサ
34、34a、34b スイッチ回路
35 スイッチ
35s 信号
36 調整用コンデンサ
37 整流回路
38 電界効果トランジスタ
38s 信号
40 接着剤
41 制御用チップ
41a、41b 接続パッド
41c、41e 配線
42 制御用アンテナ
42a、42b 端部
43 コンデンサ
44、44a、44b スイッチ回路
45 スイッチ
45s 信号
46 調整用コンデンサ
47 整流回路
48 制御部
49 メモリ
50 粘着材

Claims (13)

  1. 第1のICチップと、
    前記第1のICチップと電気的に接続して閉回路を形成できる第1のアンテナと、
    前記第1のICチップと前記第1のアンテナとが形成する前記閉回路に対して直列的または並列的に配置された、第1モードまたは第2モードへの切り換えが可能な第1のスイッチ回路と、を有する第1の回路、および、
    第2のICチップと、
    前記第2のICチップと電気的に接続して閉回路を形成できる第2のアンテナと、
    前記第2のICチップと前記第2のアンテナとが形成する前記閉回路に対して直列的または並列的に配置された、第3モードまたは第4モードへの切り換えが可能な第2のスイッチ回路と、を有する第2の回路、を備え、
    前記第1モードのときには前記第1の回路が所定周波数の電磁波により共振し、前記第2モードのときには共振せず、
    前記第3モードのときには前記第2の回路が前記所定周波数の電磁波により共振し、前記第4モードのときには共振せず、
    前記第1のスイッチ回路が前記第2モードのときに前記第2のスイッチ回路を前記第3モードに切り換えることができ、
    前記第2のスイッチ回路が前記第4モードのときに前記第1のスイッチ回路を前記第1モードに切り換えることができる、アンテナ装置。
  2. 前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の少なくともいずれかのスイッチ回路は、スイッチおよび容量素子が直列的に電気的接続されたものであり、かつ当該いずれかのスイッチ回路は対応する前記閉回路に対して並列的に配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の両方が前記スイッチおよび前記容量素子が直列的に電気的に接続されたものであり、かつ当該両方のスイッチ回路が対応する前記閉回路に対して並列的に配置されており、
    前記第1のスイッチ回路が有する前記容量素子と前記第2のスイッチ回路が有する前記容量素子とは、互いに異なる容量である、請求項2に記載のアンテナ装置。
  4. 前記所定周波数をf0とし、前記第2モードのときの前記第1の回路の共振周波数をf1とし、前記第4モードのときの前記第2の回路の共振周波数をf2とするとき、
    1/f0またはf2/f0の値は、0.9より小さいかまたは1.1よりも大きい、請求項2または3に記載のアンテナ装置。
  5. 前記所定周波数の電磁波を前記第1の回路が受信しているときの、前記第1モードにおける誘起電圧の絶対値をV01とし、前記第2モードにおける誘起電圧の絶対値をV1とし、
    前記所定周波数の電磁波を前記第2の回路が受電しているときの、前記第3モードにおける誘起電圧の絶対値をV02とし、前記第4モードにおける誘起電圧の絶対値をV2とするとき、
    1/V01またはV2/V02の値は、0.5より小さい、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
  6. 前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の少なくともいずれかのスイッチ回路は、スイッチのみが電気的に接続されたものであり、
    前記いずれかのスイッチ回路に対応する前記閉回路には容量素子が並列的に配置され、かつ、前記いずれかのスイッチ回路は当該容量素子に対して並列的に配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
  7. 前記いずれかのスイッチ回路が前記第1のスイッチ回路である場合には、
    前記第1のスイッチ回路の前記スイッチが開状態のとき前記第1の回路が第1モードとなり、閉状態のとき前記第2モードとなり、
    前記いずれかのスイッチ回路が前記第2のスイッチ回路である場合には、
    前記第2のスイッチ回路の前記スイッチが開状態のとき前記第2の回路が第3モードとなり、閉状態のとき前記第4モードとなる、請求項6に記載のアンテナ装置。
  8. 前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路の少なくともいずれかのスイッチ回路は、スイッチのみが電気的に接続されたものであり、かつ当該いずれかのスイッチ回路は前記閉回路に対して直列的に配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
  9. 前記いずれかのスイッチ回路が前記第1のスイッチ回路である場合には、
    前記第1のスイッチ回路の前記スイッチが閉状態のとき前記第1の回路が第1モードとなり、開状態のとき前記第2モードとなり、
    前記いずれかのスイッチ回路が前記第2のスイッチ回路である場合には、
    前記第2のスイッチ回路の前記スイッチが閉状態のとき前記第2の回路が第3モードとなり、開状態のとき前記第4モードとなる、請求項8に記載のアンテナ装置。
  10. 前記第1の回路は、前記第1モードにおいて前記所定周波数の電磁波の送受信による非接触通信が可能であり、かつ、前記第2モードにおいて当該非接触通信が困難であり、
    前記第2の回路は、前記第3モードにおいて前記所定周波数の電磁波の受電による、電磁誘導の起電力で生じる電流を前記第2のICチップ、または、電源ユニットをさらに備えている場合は当該電源ユニット、に供給することが可能であり、
    所定条件を満たさない場合には、前記第1の回路は前記第2モードに維持され、
    前記所定条件を満たした場合には、前記第2の回路が前記第3モードから前記第4モードに切り換えられ、かつ、前記第1の回路が前記第2モードから前記第1モードに切り換えられる、請求項1から9のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
  11. 前記電源ユニットを備え、
    前記電源ユニットは、前記第1の回路とも電気的に接続し、前記第1の回路が第1モードであるときに、前記所定周波数の電磁波の受電による、電磁誘導の起電力で生じる電流を蓄電することが可能である、請求項10に記載のアンテナ装置。
  12. 請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナ装置であって、
    一または複数の絶縁性の基板と、
    前記基板の一方の面に形成された前記第1の回路および前記第2の回路と、
    前記基板の前記一方の面と隣接し、前記第1の回路および前記第2の回路の部品を保護するための貫通孔または切り欠きを有するスペーサと、
    前記スペーサの前記基板とは反対側に配置される第1基材と、
    前記基板の他方の面と隣接する第2基材と、を備える、カード。
  13. 外部接触端子をさらに備え、
    前記第1の回路は、前記外部接触端子を介した接触通信がさらに可能である、請求項12に記載のデュアルインターフェース型のカード。
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