JP2021509258A - 癌治療のために免疫チェックポイントを調節する単一特異性および二重特異性タンパク質 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、2017年12月29日に出願された米国特許仮出願第62/611,543号に対する優先権を主張するものであり、当該特許仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
本発明は、抗体に関する。より詳細には、本発明は、癌治療のための抗体に関する。
ヒトにおけるリンパ球の2つの主要なタイプは、T(胸腺由来)およびB(骨髄由来)である。これらの細胞は、リンパ球発達経路に運命付けられた骨髄および胎児肝臓の造血幹細胞に由来する。これらの幹細胞の後代は、Bリンパ球またはTリンパ球に成熟するための分岐経路に従う。ヒトBリンパ球発達は、完全に骨髄内において生じる。その一方で、T細胞は、骨髄を去って血流によって胸腺まで移動する未成熟前駆体から発達し、そこで、それらは、増殖し、成熟Tリンパ球へと分化する。
T細胞は、最も大量で(血液リンパ球の約75%)、強力な免疫キラー細胞である。抗腫瘍性免疫応答におけるエフェクターT細胞の役割は、インビトロ研究および、腫瘍のいくつかのタイプにおけるCD8+T細胞の高浸潤が好ましい臨床予後と相関関係を有するという観察によって強く支持される(Fridman et al.,2012)。エフェクターナイーブT細胞の活性化は、少なくとも3つの相補シグナル:(i)共受容体(CD4またはCD8)の支援によるTCR−CD3/Ag−MHC相互作用;(ii)CD80またはCD86などの共刺激性分子のCD28、CD40/CD40Lへの結合;および(iii)サイトカインなどのアクセサリ分子を必要とする。
免疫チェックポイントは、通常、付随的な組織損傷を最小限に抑えるため、自己寛容性を維持し、末梢組織における生理学的応答の持続期間および振幅を調節するために、免疫系、具体的にはT細胞媒介性免疫を張り巡らせるリガンド−受容体相互作用によって開始される、阻害性および刺激性経路のグループを意味する(Pardoll,2012)。腫瘍細胞は、免疫抵抗性の主要メカニズムとして、ある特定のチェックポイント経路を選出する。例えば、プログラム細胞死タンパク質1リガンドのPD−L1は、一般的に、ヒト癌の腫瘍細胞表面において上方制御される。PD−L1と、腫瘍浸透リンパ球(TIL)、特にT細胞、において発現される、その受容体であるPD−1との相互作用は、局所的T細胞媒介性応答を阻害することにより、免疫監視から逃れる(Liang et al.,2006;Sznol and Chen,2013)。したがって、癌細胞での免疫抑制性シグナルの阻害、またはT細胞の直接的アゴニスト刺激は、強い持続性の抗腫瘍免疫応答を生じるおよび/または誘起する。最近の臨床研究は、抗体を介した、または可溶性リガンドまたは受容体によって調節される、免疫チェックポイントタンパク質の遮断が、治療的抗腫瘍免疫の達成に対する最も有望なアプローチであることを強く示唆した(Topalian et al.,2014)。現在、抗PD−1および抗CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原−4)抗体が、黒色腫などの疾患を治療するために、FDAによって承認されている。
エフェクター免疫細胞に腫瘍細胞を効率的に再標的化させるために二重特異性抗体を使用するアイデアは、1980年代に現れた(Karpovsky et al.,1984;Perez et al.,1985;Staerz et al.,1985)。二重特異性抗体は、一般的に、Fc断片、IgG様分子、および小さい組換え二重特異性形式(それらの大部分は、単鎖可変断片(scFv)に由来する)の有無に基づいて、異なる薬物動力学特性を有する2つの主要な群に分類される。抗体断片は、それらのコンパクトなサイズにより、通常、IgG様分子よりも効率的に腫瘍に浸透するが、この利点は、それらの全体的腫瘍取り込みおよび滞留時間を制限する短い血清半減期(数時間)によって緩和される(Goldenberg et al.,2007)。対照的に、新生児Fc受容体に結合するFc断片の存在は、IgG様形式に対して長い血清半減期(>10日)を提供し、これは、腫瘍取り込みおよび滞留に有利に働くが、腫瘍浸透を制限する。
参照は、以下において、本発明の本実施形態に対して詳細になされ、その例は、添付の図面に示される。同じまたは同様の部分を参照するために、図面および説明において、可能な限り、同じ参照番号が使用される。
PD−L1またはOX40に対する治療抗体の生成のために、OmniMabファージミドライブラリによる選択を実施した。当該ファージミドライブラリは、百を超える健康なドナーB細胞のコレクションからAP Biosciences Inc.(APBio Inc.)によって生成される。パンニングの第一ラウンドのためのファージを、Hyperphage(Μ13Κ07ΔρΙΙΙ、Progen,ハイデルベルク,ドイツ)によって調製した。PD−L1またはOX40特異的バインダー選択およびOmniMabライブラリからの単離に対して、PD−L1またはOX40に対する固相パンニングおよび細胞パンニングを適用した。固相パンニングは、第一ラウンド選択において組換えヒトPD−L1−Fc(APBio Inc.)を使用して実施し、次いで、第二および第三ラウンドの濃縮に対して、PD−L1またはOX40を発現したHEK293細胞を使用した。3つのラウンド選択の後、当該特異的PD−L1またはOX40バインダーをスクリーニングし、対応する組換えタンパク質による直接的ELISAによって単離した(図2A、2B、3A、および3B)。予めコーティングしたPD−L1−Fc組換えタンパク質を、レスキューされたファージを含有する上清を用いて1時間ブロットし、0.1%のTween−20を含有するPBSで3回洗浄した。結合したファージを、HRP標識抗M13抗体(Roche)によって検出し、シグナル発生のために、TMB基質を使用した。OD450の読み取り値を記録した。ポジティブバインダーを単離し、重鎖および軽鎖の配列および多様性を確認するために配列決定を行った。PD−L1またはOX40に対して特異的な重鎖および軽鎖の可変領域は、配列番号1から配列番号8で記述され:この場合、配列番号1は、PD−L1クローン6の軽鎖であり、配列番号2は、PD−L1クローン6の重鎖の可変領域であり、配列番号3は、PD−L1クローン32の軽鎖であり、配列番号4は、PD−L1クローン32の重鎖の可変領域であり、配列番号5は、OX40クローンB17の軽鎖であり、配列番号6は、OX40クローンB17の重鎖の可変領域であり、配列番号7は、OX40クローンB19の軽鎖であり、配列番号8は、OX40クローンB19の重鎖の可変領域である。図2A、2B、3A、および3Bに示されるように、いくつかのクローンを単離し、それらは、ネガティブコントロールと比較して、対応する抗原に対して特異的に認識されることが分かった。
T細胞活性化における機能性を有する特異的バインダーの迅速なスクリーニングを容易にするために、ELISAによるPD−L1またはOX40に対するポジティブバインダーの重鎖および軽鎖を増幅し、消化し、IgG4定常領域(配列番号9)を保持するAPBio専用IgG発現ベクター中へサブクローニングした。配列検証後、プラスミドを調製し、抗体発現のために、293フェクチントランスフェクション試薬(Invitrogen)によってHEK293細胞中へとトランスフェクトした。4日間の培養後、無血清培地中に分泌された抗体を、タンパク質Gクロマトグラフィによって、培養上清から親和性により精製した。次いで、精製された抗体を濃縮し、その後、PBS緩衝液において透析した。透析したタンパク質の最終濃度を、NanoDrop2000分光光度計によって特定し、図4および5に示されるように、還元試薬を用いてまたは用いずに、SDS−PAGEによって純度および完全性を特定した。精製された様々な抗体リード、PD−L1またはOX40特異的のどちらか、の完全性は、基準抗体、PD−L1に対してはMPDL3280AまたはOX40に対してはGSK3174998、と同様に、HEK293細胞において正常である。
直接的コーティングされた設定において、ヒトPD−L1−FcまたはOX40−Fcに対するELISA結合キャラクタリゼーションのために、PD−L1またはOX40に対する精製された抗体リード(抗PD−L1抗体リードまたは抗OX40抗体リード)を適用した。図6および7は、それぞれ、抗PD−L1および抗OX40抗体に対するELISA結合結果を示した。PD−L1特異的抗体の場合、ほとんどのリードは、基準抗体(Ref Ab,MPDL3280A,Roche)に対して、同様のまたはより良い結合活性を示した。
PD−L1またはOX40を発現したHEK293細胞を用いて結合活性を特定して結合活性を比較するために、フローサイトメトリに対しても、精製された抗体リード(抗PD−L1抗体リードまたは抗OX40抗体リード)を適用した。図8および9は、安定発現されたPD−L1またはOX40のHEK293細胞を用いたFACSによって示されるように、対応する抗体リードの結合活性を示している。
抗体リードは、PD−1へのPD−L1の結合を遮断する能力について本発明の抗PD−L1抗体リードを評価するために使用される結合選択性および親和性アッセイを示した。
当該PD−1シグナル伝達経路は、中程度のTCR/CD28共刺激シグナルを阻害し、その場合、最初に、T細胞増殖を減少することなく、サイトカイン産生が減少する。当該TCR/CD28共刺激シグナルが弱まると、当該PD−1経路が支配的となり、サイトカイン産生の著しい減少は、増殖の減少を伴う。したがって、本発明のヒト抗体のPD−L1との相互作用の阻害を介した当該PD−1の阻害がT細胞活性化を高めることを検証するために、混合リンパ球反応(MLR)を実施する。
T細胞増殖およびサイトカイン産生のOX40共刺激を活性化するために、精製された抗体リードを、サイトカイン産生、増殖を高めるそれらの能力、およびヒトCD3+T細胞における増殖を誘起する能力について、機能的にスクリーニングした。当該抗CD3抗体(OKT3、BioLegend Cat.No.317304)および抗OX40抗体リード(クローンB6、B70、B120、A4、B17、B19、およびB30)、基準抗体(GSK3174998)またはアイソタイプの抗体(アイソ#1、#2)を、Maxisorp 96ウェルプレートにコーティングした。その一方で、ナイーブヒトCD3+T細胞を、製造元の説明に従って市販のRosetteSep(商標)Human T Cell Enrichment Cocktail(STEMCELL Cat.No.15061)を使用して、健康な成人のボランティア由来のヒト血液から単離した。次いで、当該単離されたCD3+T細胞を、CFSE(CellTrace(商標)CFSE細胞増殖キット、Life technologies、Cat.NO. C34554)によって標識し、細胞増殖およびサイトカイン産生を特定するために、RPMI1640培地、10%のウシ胎仔血清、および2.5mMのL−グルタミンの入った、抗体で予めコーティングしたウェルに、1×106細胞/mLにおいて播種した。3日間の培養後、フローサイトメトリによる増幅アッセイのために当該細胞を収集し、次いで、定量ELISAによってIL−2およびINF−γ産生について培地を分析した。
二重特異性が、scFv形式と融合されたIgGベースとして設計されるため、抗免疫チェックポイント抗体の構造に、OX40 scFvをFc末端において融合させた。抗体は、阻害性抗免疫チェックポイント抗体(例えば、抗PD−L1、抗PD−1、抗CTLA4、抗LAG3など)、または刺激性抗体(例えば、抗CD28、抗CD137、抗CD27、抗ICOSなど)であり得る。図14に表されるように、二重特異性抗体を生成するために、リンカーが、抗体FcとOX40 scFvとの間に位置される。
PD−1とPD−L1との間の相互作用およびOX40シグナル伝達のアゴニスト活性化の阻害によってT細胞活性化を高めることにおける二重特異性抗体の相乗的協力を特定するために、二重特異性抗体リードの抗PD−L1−OX40 scFvを、上記において説明したようにMLRに適用した。次いで、抗体処理の3日後または5日後に、IL−2およびINF−γ産生を記録した。T細胞活性化増進における相乗効果を比較するために、単一、併用、または二重特異性抗体を等しい量または等しいモルにおいて適用し、アイソタイプIgGをネガティブコントロールとして使用した。図16Aおよび16Bに示されたデータのように、当該抗PD−L1抗体リード単独は、基準抗体MPDL3280Aと同様に、処理の3日後に著しいIL−2誘導を示したが、対照的に、当該抗OX40抗体リードは、抗体処理の3日後または5日後のいずれかにおいて、サイトカイン産生の明確な上方調節を増加することができない。このことは、基準抗体GSK3174998と一致している。しかしながら、当該抗OX40抗体と抗PD−L1抗体との併用は、抗体処理の3日後および5日後におけるサイトカイン産生の著しい上方調節を示した。当該相乗効果は、二重特異性抗体リード処理においても観察され、サイトカイン産生の増分は、併用処理と同様である。このことは、抗PD−L1−OX40 scFv二重特異性抗体リードも、当該scFv転換において結合活性の損失なしに、抗体併用処理と同様に機能することを示した。
精製された抗PD−L1−クローン6−OX40クローンB17scFvAbは、単一カラムタンパク質Aクロマトグラフィ精製の後のSEC−HPLC分析によって、低い純度(74.07%)であることが明らかとなり、したがって、純度を向上させるため、および本発明の二重特異性抗体の凝集を低減するために、いくつかの抗体バリアントを作製した。二重特異性抗体抗PD−L1−OX40 Ab(配列番号16)において、OX40B17scFvにおけるリンカーの代わりに、上記において説明したリンカーを使用し、CHO細胞において抗PD−L1−OX40 Ab−V1からV4(配列番号18から配列番号21)として作製した。これらのバリアントを精製し、XBridge Protein BEH SEC−HPLCカラム(Waters、Cat.No.186007640)によって分析した。当該データを下記の表1にまとめ、二重特異性抗体バリアントの1つである抗PD−L1−OX40 Ab−V4は、抗体純度を著しく向上させることが明らかとなった。純度は、74.07%から92.27%に高められる。したがって、当該抗PD−L1−OX40 Ab−V4を、当該抗体純度を向上させるために、さらなる遺伝子改変に使用した。
当該安定性は、ヒト血清(BioreclamationIVT、Cat.No.HMSRM)ならびに関連前臨床種:赤毛ザル(BioreclamationIVT、Cat.No.RHSSRM)およびCD1マウス(BioreclamationIVT、Cat.No.MSESRM)由来の血清において評価した。15μg/mLの最終濃度となるように、試料を異なる種の血清に加え、37℃の水浴においてインキュベートした。0日間、1日間、2日間、3日間、7日間、10日間、および14日間のインキュベート時間の後で、血清試料を収集し、分析まで−80℃において冷凍して貯蔵した。
PBS中における1μg/mLのOX40−Fcの100μLでELISAプレート(NUNC、Cat.No.442404)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。0.1%のTween−20(Sigma、Cat.No.P2287−500mL)を含むPBSとして洗浄緩衝液を調製し、洗浄緩衝液中における1%のBSA(UniRegion、Cat.No.UR−BSA001−100G)として、ブロッキング緩衝液を調製した。ブロッキング緩衝液における3×段階希釈による10倍希釈によって血清試料を調製し、ブロッキング緩衝液における3×段階希釈によって標準物を10nMにおいて調製した。ビオチン化PD−L1−Fcを、標準的プロトコルを使用してBiotin Fastコンジュゲート化キット(abcam,Cat.No.ab201796)によって標識し、ブロッキング緩衝液における30nMにおいて調製した。ストレプトアビジン−HRP(abcam、Cat.No.ab7403)を、ブロッキング緩衝液における1μg/mLにて調製した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後に、全ての試料を100μLにおいて各ウェルに加え、周囲温度において1時間インキュベートした。100μLのTMB溶液(Invitrogen、Cat.No.00−2023)による2分間のTMB現像を、100μLの1NのHCl溶液(Merck、Cat.No.1.00317.1000)によって止めた。450nm吸収を、ELISA読み取り機(Biotek、Powerwave XS)によって読み取った。
二重特異性抗体における当該PD−L1およびOX40の齧歯動物交差反応性の欠如は、当該抗体の抗ヒト腫瘍有効性の評価に対する標準的なマウス同系またはヒト異種移植腫瘍モデルの使用を妨げた。したがって、ベージュ(Bg)変異欠如マウスのTおよびBリンパ球および機能性NK細胞を有するSCID−Bgマウス(CB.17/Icr.Cg PkrdcscidLystbg/CrI)を使用して、新規のhuPBL−SCID−Bg異種腫瘍マウスモデルを作製した。当該二重特異性抗体の抗ヒト腫瘍有効性を、下記において説明するようにこのモデルを使用して評価した。
下記の実施例は、ヒトPD−L1およびOX40を標的とする治療目的にとって好適なモノクローナル抗体の作製について説明している。複合体、ヒト抗ヒトPD−L1および抗OX40抗体は、それぞれ、抗PD−L1抗体クローン6および抗OX40抗体クローンB17から作製した。ヒトV領域配列のセグメントは、無関係のヒト抗体(生殖系列および非生殖系列)配列データベースを供給源とした。
本発明によって提供されるある特定の抗体を、ヒトPD−L1またはOX40に結合するFabから独自に作製した。当該Fabは、対応するFc融合タンパク質(PD−L1−FcまたはOX40−Fc)および対応するヒトタンパク質(PD−L1またはOX40)を発現する細胞における交互パンニング(alternating panning)に従って、ファージディスプレイライブラリであるOmniMabファージミドライブラリから選択した。直接的ELISAまたは細胞ベースのELISAスクリーニング後、当該ポジティブクローンを、重鎖および軽鎖に対して配列決定した。これらのFabは、PD−L1に対して「OM−PD−L1−6」および「OM−PDL1−32」など、OX40に対して「OM−OX40−A4」、「OM−OX40−B17」、および「OM−OX40−B19」など、として指定されたものを含む。本出願において開示されるPD−L1抗体PD−L1−クローン3、PD−L1−クローン6、およびPD−L1−クローン32を、「OM−PD−L1−6」および「OM−PDL1−32」から作製した。その一方で、本出願において開示されるOX40抗体OX40−A4、OX40−B17、およびOX40−B19は、HEK293細胞またはCHO−S細胞において「OM−OX40−A4」、「OM−OX40−B17」、および「OM−OX40−B19」から作製した。ならびに、PD−L1およびOX40を同時に標的化する二重特異性抗体を、抗PD−L1 6−OX40 scFvB17抗体および抗PD−L1 6−OX40 scFvB19抗体として設計した。所定のFabの軽鎖可変領域および重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、当該軽鎖可変領域および重鎖可変領域の当該アミノ酸配列と同一である。
抗PD−L1−OX40二重特異性抗体を、図13に示されるように構築し、HEK293細胞またはCHO−S細胞において発現させた。二重特異性抗体を含む培地を、タンパク質Gクロマトグラフィによって、培養上清から親和性により精製した。精製された抗体を濃縮し、その後、PBS緩衝液において透析し、図14に示されるようにSDS−PAGEによって分析した。PD−L1またはOX40への精製された融合タンパク質の直接結合をELISAにおいて試験するために、100ng/ウェルの組換えPD−L1またはOX40で、96ウェルELISAプレートをコーティングした。様々な濃度の精製された抗PD−L1−OX40 scFvを各ウェルに加え、1時間インキュベートした。洗浄後、抗FabHRPコンジュゲート(Jackson Immunochemicals)の1:5000希釈を各ウェルに加え、さらに1時間インキュベートした。最終洗浄後、TMB基質(Invitrogen Inc.)を加え、450nmにおけるOD吸光度を測定した。当該データを、GraphPad Prism 5を使用してS字形曲線近似によって解析し、EC50を計算した。
抗PD−L1−OX40 scFv抗体結合特異性を試験するために、安定PD−L1発現293細胞であるIFN−γ刺激A549またはWiDrを、氷上で1時間かけて1μg/mLの抗PD−L1−OX40 scFv抗体で染色し、その後、1×PBSで3回洗浄した。結合した抗体融合タンパク質を、Alexa−488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)で検出し、その後、FACS分析を行った。当該試験のネガティブコントロールとして、アイソタイプ抗体を使用した。結果は、抗PD−L1−OX40 scFvが、抗PD−L1単独と比較して、その抗原結合特性を維持していることを示した。抗PD−L1−OX40 scFv抗体の結合特異性も、安定OX40発現293細胞を使用して試験した。
T細胞反応性を調節する当該抗PD−L1−OX40 scFv抗体の能力を測定するため、精製したT細胞を、数日かけてGM−CSFおよびIL−4において単球を培養することによって調製した同種異系樹状細胞と共に培養する。市販のELISAキットを使用してそれぞれIL−2およびIFN−γを測定するために3日目および5日目での上清の収集を可能にするために、平行プレートを準備した。Genentech/Rocheのヒト化抗PD−L1であるMPDL3280Aを、自前で作製し、ポジティブコントロールとして使用した。図15に示される当該データのように、当該IL−2およびINF−γ産生は、抗体処理の3日または5日後に、二重特異性抗体処理ならびに併用処理において非常に上方調節される。とりわけ、抗PD−L1抗体クローン6および抗OX40抗体クローンB17(抗PD−L1−OX40 scFvB17Ab)によって複合化された当該二重特異性抗体、または組み合わせ物(抗PD−L1クローン6Ab+抗OX40クローンB17Ab)は、PD−L1およびOX40基準抗体の組み合わせ物(PD−L1 RefAb+OX40 RefAb)よりも高いT細胞活性化の増進を示した。このことは、当該抗OX40B17抗体が、基準OX40抗体GSK3174998と比較してより良好なアゴニスト活性を結果として生じる特殊なエピトープ結合性を有し得ることを示していた。
マウスPD−L1またはOX40とのPD−L1またはOX40抗体における検出可能な交差反応の欠如ならびにヒト免疫細胞の存在に対する要件は、当該二重特異性抗体のインビボ機能性評価のためのモデルの開発を必要とした。重症複合免疫不全(SCID)変異およびIL−2受容体共通ガンマ鎖(一般的に、NSGと呼ばれる)における欠損を有するNOD遺伝的背景のマウスは、多くのヒト末梢血白血球(huPBL)の移植を支援することができ、少なくとも30日間、移植を維持することができる(King et al.,2008)。huPBL−NSGモデルとしても知られるこのマウスモデルを、ヒト免疫細胞に対する当該抗体のインビボ全身性投与の機能効果を評価するために使用した。
huPBL−NSGマウスにおいて異種移植モデルを確立するために、PD−L1ポジティブヒト前立腺癌細胞株PC−3(ATCC#CRL−1435)または腎癌細胞A498(ATCC(登録商標)HTB−44(商標))を使用することができる。腫瘍形成のために、3×106PC−3細胞(またはA498細胞)/マウスが、上記において説明したhuPBL−NSGマウスに、皮下において注入されるであろう。腫瘍成長に対する阻害効果を評価するために、腫瘍細胞移植の14日後に、0.1〜3mg/kgの異なる濃度の抗PD−L1−OX40 scFv抗体、基準抗体、またはアイソタイプの抗体が、毎週2回、4週間にわたってマウスに静脈内投与されるであろう。腫瘍成長は、FoxChaseSCID(登録商標)Beigeマウスモデルにおいて説明したように、最長5週間にわたって毎週2回測定されるであろう。
10〜40mg/kgの二官能性タンパク質抗PD−L1−OX40 scFvが、皮下注入または静脈内注入によってマウスまたはサルに投与されるであろう。注入後、最長15日間まで、異なる時点において、血清試料が採取されるであろう。当該血清試料中のFc融合タンパク質の濃度が、サンドイッチELISAアッセイを使用して特定されるであろう。
本発明は、抗体に関する。より詳細には、本発明は、癌治療のための抗体に関する。
ヒトにおけるリンパ球の2つの主要なタイプは、T(胸腺由来)およびB(骨髄由来)である。これらの細胞は、リンパ球発達経路に運命付けられた骨髄および胎児肝臓の造血幹細胞に由来する。これらの幹細胞の後代は、Bリンパ球またはTリンパ球に成熟するための分岐経路に従う。ヒトBリンパ球発達は、完全に骨髄内において生じる。その一方で、T細胞は、骨髄を去って血流によって胸腺まで移動する未成熟前駆体から発達し、そこで、それらは、増殖し、成熟Tリンパ球へと分化する。
T細胞は、最も大量で(血液リンパ球の約75%)、強力な免疫キラー細胞である。抗腫瘍性免疫応答におけるエフェクターT細胞の役割は、インビトロ研究および、腫瘍のいくつかのタイプにおけるCD8+T細胞の高浸潤が好ましい臨床予後と相関関係を有するという観察によって強く支持される(Fridman et al.,2012)。エフェクターナイーブT細胞の活性化は、少なくとも3つの相補シグナル:(i)共受容体(CD4またはCD8)の支援によるTCR−CD3/Ag−MHC相互作用;(ii)CD80またはCD86などの共刺激性分子のCD28、CD40/CD40Lへの結合;および(iii)サイトカインなどのアクセサリ分子を必要とする。
免疫チェックポイントは、通常、付随的な組織損傷を最小限に抑えるため、自己寛容性を維持し、末梢組織における生理学的応答の持続期間および振幅を調節するために、免疫系、具体的にはT細胞媒介性免疫を張り巡らせるリガンド−受容体相互作用によって開始される、阻害性および刺激性経路のグループを意味する(Pardoll,2012)。腫瘍細胞は、免疫抵抗性の主要メカニズムとして、ある特定のチェックポイント経路を選出する。例えば、プログラム細胞死タンパク質1リガンドのPD−L1は、一般的に、ヒト癌の腫瘍細胞表面において上方制御される。PD−L1と、腫瘍浸透リンパ球(TIL)、特にT細胞、において発現される、その受容体であるPD−1との相互作用は、局所的T細胞媒介性応答を阻害することにより、免疫監視から逃れる(Liang et al.,2006;Sznol and Chen,2013)。したがって、癌細胞での免疫抑制性シグナルの阻害、またはT細胞の直接的アゴニスト刺激は、強い持続性の抗腫瘍免疫応答を生じるおよび/または誘起する。最近の臨床研究は、抗体を介した、または可溶性リガンドまたは受容体によって調節される、免疫チェックポイントタンパク質の遮断が、治療的抗腫瘍免疫の達成に対する最も有望なアプローチであることを強く示唆した(Topalian et al.,2014)。現在、抗PD−1および抗CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原−4)抗体が、黒色腫などの疾患を治療するために、FDAによって承認されている。
エフェクター免疫細胞に腫瘍細胞を効率的に再標的化させるために二重特異性抗体を使用するアイデアは、1980年代に現れた(Karpovsky et al.,1984;Perez et al.,1985;Staerz et al.,1985)。二重特異性抗体は、一般的に、Fc断片、IgG様分子、および小さい組換え二重特異性形式(それらの大部分は、単鎖可変断片(scFv)に由来する)の有無に基づいて、異なる薬物動力学特性を有する2つの主要な群に分類される。抗体断片は、それらのコンパクトなサイズにより、通常、IgG様分子よりも効率的に腫瘍に浸透するが、この利点は、それらの全体的腫瘍取り込みおよび滞留時間を制限する短い血清半減期(数時間)によって緩和される(Goldenberg et al.,2007)。対照的に、新生児Fc受容体に結合するFc断片の存在は、IgG様形式に対して長い血清半減期(>10日)を提供し、これは、腫瘍取り込みおよび滞留に有利に働くが、腫瘍浸透を制限する。
参照は、以下において、本発明の本実施形態に対して詳細になされ、その例は、添付の図面に示される。同じまたは同様の部分を参照するために、図面および説明において、可能な限り、同じ参照番号が使用される。
PD−L1またはOX40に対する治療抗体の生成のために、OmniMabファージミドライブラリによる選択を実施した。当該ファージミドライブラリは、百を超える健康なドナーB細胞のコレクションからAP Biosciences Inc.(APBio Inc.)によって生成される。パンニングの第一ラウンドのためのファージを、Hyperphage(Μ13Κ07ΔρΙΙΙ、Progen,ハイデルベルク,ドイツ)によって調製した。PD−L1またはOX40特異的バインダー選択およびOmniMabライブラリからの単離に対して、PD−L1またはOX40に対する固相パンニングおよび細胞パンニングを適用した。固相パンニングは、第一ラウンド選択において組換えヒトPD−L1−FcまたはOX40−Fc(APBio Inc.)を使用して実施し、次いで、第二および第三ラウンドの濃縮に対して、PD−L1またはOX40を発現したHEK293細胞を使用した。3つのラウンド選択の後、当該特異的PD−L1またはOX40バインダーをスクリーニングし、対応する組換えタンパク質による直接的ELISAまたは細胞ベースELISAによって単離した(図2A、2B、3A、および3B)。予めコーティングしたPD−L1−Fc組換えタンパク質またはOX40発現293細胞を、レスキューされたファージを含有する上清を用いて1時間ブロットし、0.1%のTween−20を含有するPBSで3回洗浄した。結合したファージを、HRP標識抗M13抗体(Roche)によって検出し、シグナル発生のために、TMB基質を使用した。OD450の読み取り値を記録した。ポジティブバインダーを単離し、重鎖および軽鎖の配列および多様性を確認するために配列決定を行った。PD−L1またはOX40に対して特異的な重鎖および軽鎖の可変領域は、配列番号1から配列番号8で記述され:この場合、配列番号1は、PD−L1クローン6の軽鎖であり、配列番号2は、PD−L1クローン6の重鎖の可変領域であり、配列番号3は、PD−L1クローン32の軽鎖であり、配列番号4は、PD−L1クローン32の重鎖の可変領域であり、配列番号5は、OX40クローンB17の軽鎖であり、配列番号6は、OX40クローンB17の重鎖の可変領域であり、配列番号7は、OX40クローンB19の軽鎖であり、配列番号8は、OX40クローンB19の重鎖の可変領域である。図2A、2B、3A、および3Bに示されるように、いくつかのクローンを単離し、それらは、ネガティブコントロールと比較して、対応する抗原に対して特異的に認識されることが分かった。
T細胞活性化における機能性を有する特異的バインダーの迅速なスクリーニングを容易にするために、ELISAによるPD−L1またはOX40に対するポジティブバインダーの重鎖および軽鎖を増幅し、消化し、IgG4定常領域(配列番号9)を保持するAPBio専用IgG発現ベクター中へサブクローニングした。配列検証後、プラスミドを調製し、抗体発現のために、293フェクチントランスフェクション試薬(Invitrogen)によってHEK293細胞中へとトランスフェクトした。4日間の培養後、無血清培地中に分泌された抗体を、タンパク質Gクロマトグラフィによって、培養上清から親和性により精製した。次いで、精製された抗体を濃縮し、その後、PBS緩衝液において透析した。透析したタンパク質の最終濃度を、NanoDrop2000分光光度計によって特定し、図4および5に示されるように、還元試薬を用いてまたは用いずに、SDS−PAGEによって純度および完全性を特定した。精製された様々な抗体リード、PD−L1またはOX40特異的のどちらか、の完全性は、基準抗体、PD−L1に対してはMPDL3280AまたはOX40に対してはGSK3174998、と同様に、HEK293細胞において正常である。
直接的コーティングされた設定において、ヒトPD−L1−FcまたはOX40−Fcに対するELISA結合キャラクタリゼーションのために、PD−L1またはOX40に対する精製された抗体リード(抗PD−L1抗体リードまたは抗OX40抗体リード)を適用した。図6および7は、それぞれ、抗PD−L1および抗OX40抗体に対するELISA結合結果を示した。PD−L1特異的抗体の場合、ほとんどのリードは、基準抗体(Ref Ab,MPDL3280A,Roche)に対して、同様のまたはより良い結合活性を示した。
PD−L1またはOX40を発現したHEK293細胞を用いて結合活性を特定して結合活性を比較するために、フローサイトメトリに対しても、精製された抗体リード(抗PD−L1抗体リードまたは抗OX40抗体リード)を適用した。図8および9は、安定発現されたPD−L1またはOX40のHEK293細胞を用いたFACSによって示されるように、対応する抗体リードの結合活性を示している。
抗体リードは、PD−1へのPD−L1の結合を遮断する能力について本発明の抗PD−L1抗体リードを評価するために使用される結合選択性および親和性アッセイを示した。
当該PD−1シグナル伝達経路は、中程度のTCR/CD28共刺激シグナルを阻害し、その場合、最初に、T細胞増殖を減少することなく、サイトカイン産生が減少する。当該TCR/CD28共刺激シグナルが弱まると、当該PD−1経路が支配的となり、サイトカイン産生の著しい減少は、増殖の減少を伴う。したがって、本発明のヒト抗体のPD−L1との相互作用の阻害を介した当該PD−1の阻害がT細胞活性化を高めることを検証するために、混合リンパ球反応(MLR)を実施する。
T細胞増殖およびサイトカイン産生のOX40共刺激を活性化するために、精製された抗体リードを、サイトカイン産生、増殖を高めるそれらの能力、およびヒトCD3+T細胞における増殖を誘起する能力について、機能的にスクリーニングした。当該抗CD3抗体(OKT3、BioLegend Cat.No.317304)および抗OX40抗体リード(クローンB6、B70、B120、A4、B17、B19、およびB30)、基準抗体(GSK3174998)またはアイソタイプの抗体(アイソ#1、#2)を、Maxisorp 96ウェルプレートにコーティングした。その一方で、ナイーブヒトCD3+T細胞を、製造元の説明に従って市販のRosetteSep(商標)Human T Cell Enrichment Cocktail(STEMCELL Cat.No.15061)を使用して、健康な成人のボランティア由来のヒト血液から単離した。次いで、当該単離されたCD3+T細胞を、CFSE(CellTrace(商標)CFSE細胞増殖キット、Life technologies、Cat.NO. C34554)によって標識し、細胞増殖およびサイトカイン産生を特定するために、RPMI1640培地、10%のウシ胎仔血清、および2.5mMのL−グルタミンの入った、抗体で予めコーティングしたウェルに、1×106細胞/mLにおいて播種した。3日間の培養後、フローサイトメトリによる増幅アッセイのために当該細胞を収集し、次いで、定量ELISAによってIL−2およびIFN−γ産生について培地を分析した。
二重特異性が、scFv形式と融合されたIgGベースとして設計されるため、抗免疫チェックポイント抗体の構造に、OX40 scFvをFc末端において融合させた。抗体は、阻害性抗免疫チェックポイント抗体(例えば、抗PD−L1、抗PD−1、抗CTLA4、抗LAG3など)、または刺激性抗体(例えば、抗CD28、抗CD137、抗CD27、抗ICOSなど)であり得る。図14に表されるように、二重特異性抗体を生成するために、リンカーが、抗体FcとOX40 scFvとの間に位置される。
PD−1とPD−L1との間の相互作用およびOX40シグナル伝達のアゴニスト活性化の阻害によってT細胞活性化を高めることにおける二重特異性抗体の相乗的協力を特定するために、二重特異性抗体リードの抗PD−L1−OX40 scFvを、上記において説明したようにMLRに適用した。次いで、抗体処理の3日後または5日後に、IL−2およびIFN−γ産生を記録した。T細胞活性化増進における相乗効果を比較するために、単一、併用、または二重特異性抗体を等しい量または等しいモルにおいて適用し、アイソタイプIgGをネガティブコントロールとして使用した。図16Aおよび16Bに示されたデータのように、当該抗PD−L1抗体リード単独は、基準抗体MPDL3280Aと同様に、処理の3日後に著しいIL−2誘導を示したが、対照的に、当該抗OX40抗体リードは、抗体処理の3日後または5日後のいずれかにおいて、サイトカイン産生の明確な上方調節を増加することができない。このことは、基準抗体GSK3174998と一致している。しかしながら、当該抗OX40抗体と抗PD−L1抗体との併用は、抗体処理の3日後および5日後におけるサイトカイン産生の著しい上方調節を示した。当該相乗効果は、二重特異性抗体リード処理においても観察され、サイトカイン産生の増分は、併用処理と同様である。このことは、抗PD−L1−OX40 scFv二重特異性抗体リードも、当該scFv転換において結合活性の損失なしに、抗体併用処理と同様に機能することを示した。
精製された抗PD−L1−クローン6−OX40クローンB17scFvAbは、単一カラムタンパク質Aクロマトグラフィ精製の後のSEC−HPLC分析によって、低い純度(74.07%)であることが明らかとなり、したがって、純度を向上させるため、および本発明の二重特異性抗体の凝集を低減するために、いくつかの抗体バリアントを作製した。二重特異性抗体抗PD−L1−OX40 Ab(配列番号16)において、OX40B17scFvにおけるリンカーの代わりに、上記において説明したリンカーを使用し、CHO細胞において抗PD−L1−OX40 Ab−V1からV4(配列番号18から配列番号21)として作製した。これらのバリアントを精製し、XBridge Protein BEH SEC−HPLCカラム(Waters、Cat.No.186007640)によって分析した。当該データを下記の表1にまとめ、二重特異性抗体バリアントの1つである抗PD−L1−OX40 Ab−V4は、抗体純度を著しく向上させることが明らかとなった。純度は、74.07%から92.27%に高められる。したがって、当該抗PD−L1−OX40 Ab−V4を、当該抗体純度を向上させるために、さらなる遺伝子改変に使用した。
当該安定性は、ヒト血清(BioreclamationIVT、Cat.No.HMSRM)ならびに関連前臨床種:赤毛ザル(BioreclamationIVT、Cat.No.RHSSRM)およびCD1マウス(BioreclamationIVT、Cat.No.MSESRM)由来の血清において評価した。15μg/mLの最終濃度となるように、試料を異なる種の血清に加え、37℃の水浴においてインキュベートした。0日間、1日間、2日間、3日間、7日間、10日間、および14日間のインキュベート時間の後で、血清試料を収集し、分析まで−80℃において冷凍して貯蔵した。
PBS中における1μg/mLのOX40−Fcの100μLでELISAプレート(NUNC、Cat.No.442404)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。0.1%のTween−20(Sigma、Cat.No.P2287−500mL)を含むPBSとして洗浄緩衝液を調製し、洗浄緩衝液中における1%のBSA(UniRegion、Cat.No.UR−BSA001−100G)として、ブロッキング緩衝液を調製した。ブロッキング緩衝液における3×段階希釈による10倍希釈によって血清試料を調製し、ブロッキング緩衝液における3×段階希釈によって標準物を10nMにおいて調製した。ビオチン化PD−L1−Fcを、標準的プロトコルを使用してBiotin Fastコンジュゲート化キット(abcam,Cat.No.ab201796)によって標識し、ブロッキング緩衝液における30nMにおいて調製した。ストレプトアビジン−HRP(abcam、Cat.No.ab7403)を、ブロッキング緩衝液における1μg/mLにて調製した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後に、全ての試料を100μLにおいて各ウェルに加え、周囲温度において1時間インキュベートした。100μLのTMB溶液(Invitrogen、Cat.No.00−2023)による2分間のTMB現像を、100μLの1NのHCl溶液(Merck、Cat.No.1.00317.1000)によって止めた。450nm吸収を、ELISA読み取り機(Biotek、Powerwave XS)によって読み取った。
二重特異性抗体における当該PD−L1およびOX40の齧歯動物交差反応性の欠如は、当該抗体の抗ヒト腫瘍有効性の評価に対する標準的なマウス同系またはヒト異種移植腫瘍モデルの使用を妨げた。したがって、ベージュ(Bg)変異欠如マウスのTおよびBリンパ球および機能性NK細胞を有するSCID−Bgマウス(CB.17/Icr.Cg PkrdcscidLystbg/CrI)を使用して、新規のhuPBL−SCID−Bg異種腫瘍マウスモデルを作製した。当該二重特異性抗体の抗ヒト腫瘍有効性を、下記において説明するようにこのモデルを使用して評価した。
下記の実施例は、ヒトPD−L1およびOX40を標的とする治療目的にとって好適なモノクローナル抗体の作製について説明している。複合体、ヒト抗ヒトPD−L1および抗OX40抗体は、それぞれ、抗PD−L1抗体クローン6および抗OX40抗体クローンB17から作製した。ヒトV領域配列のセグメントは、無関係のヒト抗体(生殖系列および非生殖系列)配列データベースを供給源とした。
本発明によって提供されるある特定の抗体を、ヒトPD−L1またはOX40に結合するFabから独自に作製した。当該Fabは、対応するFc融合タンパク質(PD−L1−FcまたはOX40−Fc)および対応するヒトタンパク質(PD−L1またはOX40)を発現する細胞における交互パンニング(alternating panning)に従って、ファージディスプレイライブラリであるOmniMabファージミドライブラリから選択した。直接的ELISAまたは細胞ベースのELISAスクリーニング後、当該ポジティブクローンを、重鎖および軽鎖に対して配列決定した。これらのFabは、PD−L1に対して「OM−PD−L1−6」および「OM−PDL1−32」など、OX40に対して「OM−OX40−A4」、「OM−OX40−B17」、および「OM−OX40−B19」など、として指定されたものを含む。本出願において開示されるPD−L1抗体PD−L1−クローン3、PD−L1−クローン6、およびPD−L1−クローン32を、「OM−PD−L1−6」および「OM−PDL1−32」から作製した。その一方で、本出願において開示されるOX40抗体OX40−A4、OX40−B17、およびOX40−B19は、HEK293細胞またはCHO−S細胞において「OM−OX40−A4」、「OM−OX40−B17」、および「OM−OX40−B19」から作製した。ならびに、PD−L1およびOX40を同時に標的化する二重特異性抗体を、抗PD−L1 6−OX40 scFvB17抗体および抗PD−L1 6−OX40 scFvB19抗体として設計した。所定のFabの軽鎖可変領域および重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、当該軽鎖可変領域および重鎖可変領域の当該アミノ酸配列と同一である。
抗PD−L1−OX40二重特異性抗体を、図14に示されるように構築し、HEK293細胞またはCHO−S細胞において発現させた。二重特異性抗体を含む培地を、タンパク質Gクロマトグラフィによって、培養上清から親和性により精製した。精製された抗体を濃縮し、その後、PBS緩衝液において透析し、図15に示されるようにSDS−PAGEによって分析した。PD−L1またはOX40への精製された融合タンパク質の直接結合をELISAにおいて試験するために、100ng/ウェルの組換えPD−L1またはOX40で、96ウェルELISAプレートをコーティングした。様々な濃度の精製された抗PD−L1−OX40 scFvを各ウェルに加え、1時間インキュベートした。洗浄後、抗FabHRPコンジュゲート(Jackson Immunochemicals)の1:5000希釈を各ウェルに加え、さらに1時間インキュベートした。最終洗浄後、TMB基質(Invitrogen Inc.)を加え、450nmにおけるOD吸光度を測定した。当該データを、GraphPad Prism 5を使用してS字形曲線近似によって解析し、EC50を計算した。
抗PD−L1−OX40 scFv抗体結合特異性を試験するために、安定PD−L1発現293細胞であるIFN−γ刺激A549またはWiDrを、氷上で1時間かけて1μg/mLの抗PD−L1−OX40 scFv抗体で染色し、その後、1×PBSで3回洗浄した。結合した抗体融合タンパク質を、Alexa−488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)で検出し、その後、FACS分析を行った。当該試験のネガティブコントロールとして、アイソタイプ抗体を使用した。結果は、抗PD−L1−OX40 scFvが、抗PD−L1単独と比較して、その抗原結合特性を維持していることを示した。抗PD−L1−OX40 scFv抗体の結合特異性も、安定OX40発現293細胞を使用して試験した。
T細胞反応性を調節する当該抗PD−L1−OX40 scFv抗体の能力を測定するため、精製したT細胞を、数日かけてGM−CSFおよびIL−4において単球を培養することによって調製した同種異系樹状細胞と共に培養する。市販のELISAキットを使用してそれぞれIL−2およびIFN−γを測定するために3日目および5日目での上清の収集を可能にするために、平行プレートを準備した。Genentech/Rocheのヒト化抗PD−L1であるMPDL3280Aを、自前で作製し、ポジティブコントロールとして使用した。図16Aおよび16Bに示される当該データのように、当該IL−2およびIFN−γ産生は、抗体処理の3日または5日後に、二重特異性抗体処理ならびに併用処理において非常に上方調節される。とりわけ、抗PD−L1抗体クローン6および抗OX40抗体クローンB17(抗PD−L1−OX40 scFvB17Ab)によって複合化された当該二重特異性抗体、または組み合わせ物(抗PD−L1クローン6Ab+抗OX40クローンB17Ab)は、PD−L1およびOX40基準抗体の組み合わせ物(PD−L1 RefAb+OX40 RefAb)よりも高いT細胞活性化の増進を示した。このことは、当該抗OX40B17抗体が、基準OX40抗体GSK3174998と比較してより良好なアゴニスト活性を結果として生じる特殊なエピトープ結合性を有し得ることを示していた。
マウスPD−L1またはOX40とのPD−L1またはOX40抗体における検出可能な交差反応の欠如ならびにヒト免疫細胞の存在に対する要件は、当該二重特異性抗体のインビボ機能性評価のためのモデルの開発を必要とした。重症複合免疫不全(SCID)変異およびIL−2受容体共通ガンマ鎖(一般的に、NSGと呼ばれる)における欠損を有するNOD遺伝的背景のマウスは、多くのヒト末梢血白血球(huPBL)の移植を支援することができ、少なくとも30日間、移植を維持することができる(King et al.,2008)。huPBL−NSGモデルとしても知られるこのマウスモデルを、ヒト免疫細胞に対する当該抗体のインビボ全身性投与の機能効果を評価するために使用した。
huPBL−NSGマウスにおいて異種移植モデルを確立するために、PD−L1ポジティブヒト前立腺癌細胞株PC−3(ATCC#CRL−1435)または腎癌細胞A498(ATCC(登録商標)HTB−44(商標))を使用することができる。腫瘍形成のために、3×106PC−3細胞(またはA498細胞)/マウスが、上記において説明したhuPBL−NSGマウスに、皮下において注入されるであろう。腫瘍成長に対する阻害効果を評価するために、腫瘍細胞移植の14日後に、0.1〜3mg/kgの異なる濃度の抗PD−L1−OX40 scFv抗体、基準抗体、またはアイソタイプの抗体が、毎週2回、4週間にわたってマウスに静脈内投与されるであろう。腫瘍成長は、FoxChaseSCID(登録商標)Beigeマウスモデルにおいて説明したように、最長5週間にわたって毎週2回測定されるであろう。
10〜40mg/kgの二官能性タンパク質抗PD−L1−OX40 scFvが、皮下注入または静脈内注入によってマウスまたはサルに投与されるであろう。注入後、最長15日間まで、異なる時点において、血清試料が採取されるであろう。当該血清試料中のFc融合タンパク質の濃度が、サンドイッチELISAアッセイを使用して特定されるであろう。
Claims (28)
- OX40(CD134)に結合する抗体またはその抗原結合性部分であって、
配列番号6、配列番号8、配列番号10のアミノ酸126〜244、および配列番号13のアミノ酸123〜240からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号5のアミノ酸1〜108、配列番号7のアミノ酸1〜108、配列番号10のアミノ酸1〜112、および配列番号13のアミノ酸1〜108からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体またはその抗原結合性部分。 - 前記抗体またはその抗原結合性部分が、配列番号10、11、12、および13からなる群より選択される単鎖可変断片(scFv)配列である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性部分。
- 前記抗体またはその抗原結合性部分が、二重特異性抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性部分。
- 前記二重特異性抗体は、免疫チェックポイントタンパク質結合部位を含む、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合性部分。
- 前記免疫チェックポイントタンパク質結合部位は、プログラム細胞死タンパク質1リガンド(PD−L1)結合部位、PD−1結合部位、上皮増殖因子受容体(EGFR)結合部位、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)結合部位、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)結合部位、またはリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)結合部位を含む、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合性部分。
- PD−L1に結合する抗体またはその抗原結合性部分であって、
配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、
配列番号1のアミノ酸1〜111および配列番号3のアミノ酸1〜110からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、
を含む抗体またはその抗原結合性部分。 - 少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む二重特異性抗体であって、前記ポリペプチド鎖は、
OX40結合部位であって、
配列番号6、配列番号8、配列番号10のアミノ酸126〜244、および配列番号13のアミノ酸123〜240からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号5のアミノ酸1〜108、配列番号7のアミノ酸1〜108、配列番号10のアミノ酸1〜110、および配列番号13のアミノ酸1〜107からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、
を含むOX40結合部位と、
PD−L1結合部位であって、
配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、
配列番号1のアミノ酸1〜111および配列番号3のアミノ酸1〜110からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと
を含む、PD−L1結合部位と、
を含む、二重特異性抗体。 - 前記ポリペプチド鎖は、さらに、
Fcドメインと、
当該FcドメインのN末端に接続されたFab断片であって、前記PD−L1結合部位を含むFab断片と、
当該FcドメインのC末端に接続されたscFvであって、前記OX40結合部位を含むscFvと、
を含む、請求項7に記載の二重特異性抗体。 - 前記ポリペプチド鎖は、さらに、前記Fcドメインと前記scFvとの間にリンカーを含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
- 前記scFvが、配列番号18のアミノ酸455〜707,配列番号19のアミノ酸455〜708,配列番号20のアミノ酸455〜701,配列番号21のアミノ酸455〜706,配列番号22のアミノ酸455〜706,配列番号23のアミノ酸455〜706,配列番号24のアミノ酸455〜706,配列番号25のアミノ酸455〜706,配列番号26のアミノ酸455〜706,配列番号27のアミノ酸455〜706,配列番号28のアミノ酸455〜706,および配列番号29のアミノ酸455〜706からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
- 前記二重特異性抗体が、一対のポリペプチド鎖を含む、請求項7に記載の二重特異性抗体。
- 前記二重特異性抗体が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgY抗体である、請求項11に記載の二重特異性抗体。
- 前記二重特異性抗体が、IgG抗体である、請求項12に記載の二重特異性抗体。
- 前記IgG抗体は、IgG1,IgG2,IgG3,またはIgG4抗体である、請求項13に記載の二重特異性抗体。
- 治療薬と、
PD−L1および/またはOX40に結合する抗体または抗原結合性部分と、
を含む抗体−薬物コンジュゲートであって、当該治療薬は、リンカーによって、当該抗体または当該抗原結合性断片に共有結合的にコンジュゲートされている、抗体−薬物コンジュゲート。 - 前記抗体または抗原結合性部分は、請求項1、6、または7から選択される、請求項15に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
- 請求項6に記載の前記抗体または前記その抗原結合性断片と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
- 請求項7から14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性部分の有効量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、癌を治療する方法。
- 前記癌は、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
- 請求項6に記載の前記抗体または抗原結合性部分の有効量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、癌を治療する方法。
- 前記癌は、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
- 請求項7から14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体の有効量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、癌を治療する方法。
- 前記癌は、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性部分をコードする核酸分子。
- 請求項6に記載の前記抗体または前記抗原結合性部分をコードする核酸分子。
- 請求項7から14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする核酸分子。
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C21 | Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings |
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A912 | Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board |
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C211 | Notice of termination of reconsideration by examiners before appeal proceedings |
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C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
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