JP2021193882A - 小麦加工製品の改質剤及び小麦加工製品の製造方法 - Google Patents

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俊 小川
Takashi Ogawa
一磨 塩田
Kazuma Shioda
和廣 濱口
Kazuhiro Hamaguchi
智弘 野口
Toshihiro Noguchi
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Abstract

【課題】品質に優れた小麦加工製品の改質剤及び小麦加工製品の製造方法の提供。【解決手段】クリベロマイセス・ラクティス由来のプロテインジスルフィドイソメラーゼを主成分とする小麦加工製品の改質剤。さらに、エンドプラズミックレティキュラムオキシドレダクターゼ1及びフラビンアデニンジヌクレオチドを含有する、前記小麦加工製品の改質剤。クリベロマイセス・ラクティス由来のプロテインジスルフィドイソメラーゼを主成分とする小麦加工製品の改質剤を小麦粉に添加して生地を形成する、小麦加工製品の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、小麦加工製品の改質剤及び小麦加工製品の製造方法に関する。
グリアジンとグルテニンは小麦の主要タンパク質であり、合わせて小麦全タンパク質の80%強と大部分を占める。製パンや製麺の過程で水を加えて捏ねることでグリアジンとグルテニンが絡み合い、生地中にグルテンを形成する。グルテンの特性はパンや麺の粘弾性等に深く関わる。
グルテンの形成には、様々な結合や分子間相互作用が関与すると考えられるが、特にジスルフィド結合(S-S結合)によるタンパク質分子間の架橋形成が最も重要であるとされている。生地混捏時のような非加熱条件でS-S結合のような共有結合を形成させるには何らかの酸化機構が存在すると推定されてきたが、最近の研究で、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(EC5.3.4.1)(以下、「PDI」ともいう)の作用によるS-S結合形成機構の存在が知られるようになった。PDIは小麦粉中にその存在が認められ、小麦タンパク質中の遊離SH基を酸化し、小麦タンパク質中にS-S結合を形成させる。
そこで、PDIを利用した製パン性の改良が検討され、例えば、特許文献1には、リコンビナントプロテインジスルフィドイソメラーゼを主成分とする小麦加工製品の改質剤が報告されている。また、特許文献2には、リコンビナントエンドプラズミックレティキュラムオキシドレダクターゼ1(Ero1)と、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)と、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)とを主成分とする小麦加工製品の改質剤が報告されている。特許文献2によれば、PDIは一度基質である小麦タンパク質のSH基を酸化すると自らは還元型となって酸化能力を失うため、基質へ効率的にS-S結合を形成させるには、Ero1のような酸化再生機構が必要である。
一方、非特許文献1には、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来のPDI(KlPDI)及びその遺伝子について報告されている。
しかしながら、PDIはその由来によって特性が異なることが知られている上に、非特許文献1では当該PDIの用途について検討されておらず、その製パン性改良効果は明らかではない。
特開2010−51196号公報 特開2011−177059号公報
Yeast 2000, 16, p.329-341
本発明は、品質に優れた小麦加工製品の新たな製造技術を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、クリベロマイセス・ラクティス由来のPDIが単独でも小麦加工製品の品質を向上させることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔6〕を提供するものである。
〔1〕クリベロマイセス・ラクティス由来のプロテインジスルフィドイソメラーゼを主成分とする小麦加工製品の改質剤。
〔2〕さらに、エンドプラズミックレティキュラムオキシドレダクターゼ1及びフラビンアデニンジヌクレオチドを含有する〔1〕記載の小麦加工製品の改質剤。
〔3〕前記小麦加工製品がパン類である〔1〕又は〔2〕記載の小麦加工製品の改質剤。
〔4〕クリベロマイセス・ラクティス由来のプロテインジスルフィドイソメラーゼを主成分とする小麦加工製品の改質剤を小麦粉に添加して生地を形成する、小麦加工製品の製造方法。
〔5〕前記小麦加工製品の改質剤がエンドプラズミックレティキュラムオキシドレダクターゼ1及びフラビンアデニンジヌクレオチドを含有する〔4〕記載の小麦加工製品の製造方法。
〔6〕小麦加工製品がパン類である〔4〕又は〔5〕記載の小麦加工製品の製造方法。
本発明の小麦加工製品の改質剤及び小麦加工製品の製造方法によれば、小麦加工製品の品質が向上するという効果を奏し得る。この品質向上効果は、PDIのジスルフィド結合を触媒するイソメラーゼ活性を再生するPDI酸化酵素の共存がない場合でも得られるので、経済的に有利である。
焼成1h後のパンの外観を比較した結果を示す図である。左から、無添加区、小麦PDI+Ero1+FAD、rClPDI+Ero1+FAD、rKlPDI+Ero1+FAD 焼成から1日目のパンの切断面を比較した結果を示す図である。左から、無添加区、小麦PDI+Ero1+FAD、rClPDI+Ero1+FAD、rKlPDI+Ero1+FAD
本発明の小麦加工製品の改質剤は、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来のPDIを主成分とする。
本明細書において、「小麦加工製品」とは、小麦粉を主成分とする食品をいい、例えば、食パン、菓子パン、イーストドーナツ等のパン類;中華麺、うどん、そば、パスタ等の麺類;饅頭、麩饅頭、中華饅頭等の菓子類;餃子、シュウマイ、春巻の皮等の皮類;麩、竹輪麩等が挙げられる。小麦粉としては、特に限定されず、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラムセモリナ等が挙げられる。
PDIは、活性中心に2つのシステイン残基を持ち、ジスルフィド結合を触媒する酵素である。PDI活性は、Johanna.L.,とArne.H(1979,1990)のインスリンを用いた方法(インスリン測定法)にて測定される。
(PDI活性)
試験管に0.4Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)0.5mL、8mM EDTA0.5mL、インスリン溶液0.1mL、蒸留水0.68mLを採取し、酵素溶液0.02mLを加えた後、3.3mM DTT0.2mLを加え、全量を2.0mLとし、25℃で40分間酵素反応を行う。生じたインスリンの濁度を吸収波長650nmの吸光度を測定する。酵素力価は、pH7.5、25℃でDTT存在下において0.5mg/mLのインスリンのA650を1分間に0.01変化させる力価を1Uとする。
本発明で用いられるクリベロマイセス・ラクティス由来のPDIは、クリベロマイセス・ラクティスが産生する野生型のPDIの他、当該PDIをコードする遺伝子を宿主微生物で発現させた酵素や、当該遺伝子を遺伝子組換え技術により改変、発現させた酵素であってPDI活性を保持するものであってもよい。
本発明においてクリベロマイセス・ラクティス由来のPDIは、以下の(i)〜(iii)のいずれかのタンパク質であることが好ましい。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は挿入されたアミノ酸配列を有し、プロテインジスルフィドイソメラーゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、プロテインジスルフィドイソメラーゼ活性を有するタンパク質 配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は挿入されたアミノ酸配列における、アミノ酸残基の欠失、置換又は挿入の数は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質と同等の酵素活性を示すものであれば限定されないが、1〜20個が好ましく、1〜10個がより好ましく、1〜8個がさらに好ましい。
本明細書において、配列番号2で示されるアミノ酸配列との配列同一性は80%以上であるが、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに好ましい。このような配列の同一性パーセンテージは、基準配列を照会配列として比較するアルゴリズムをもった公開又は市販されているソフトウエアを用いて計算することができる。例として、BLAST、FASTA又はGENETYX(ゼネティックス社)等を用いることができる。
また、本発明においてクリベロマイセス・ラクティス由来のPDIは、以下の(a)〜(d)のいずれかのDNAによりコードされるタンパク質であることが好ましい。
(a)配列番号1で示される塩基配列を有するDNA
(b)配列番号1で示される塩基配列において1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列を有し、かつプロテインジスルフィドイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号1で示される塩基配列に対して80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつプロテインジスルフィドイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロテインジスルフィドイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
配列番号1で示される塩基配列において1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列における、1〜数個の塩基とは、1〜10個が好ましく、1〜5個がより好ましく、1〜3個がさらに好ましく、1又は2個がさらに好ましい。また、塩基の欠失とは塩基の欠落又は消失を意味し、塩基の置換とは塩基が別の塩基に置き換えられていることを意味し、塩基の付加とは塩基が付け加えられていることを意味する。「付加」には、配列の一端又は両端への塩基の付加、及び配列中の塩基の間に別の塩基が挿入されることが含まれる。
本明細書において、塩基配列の配列同一性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がさらに好ましい。
塩基配列の配列同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,1993,90,p.5873-5877)を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている(J.Mol.Biol.,1990,215,p.403-410)。また、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyxのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(www.ncbi.nlm.nih.gov参照)。
本明細書において、ストリンジェントな条件とは、同一性が高い塩基配列同士がハイブリダイズし、それより同一性が低い塩基配列同士がハイブリダイズしない条件をいう。「ストリンジェントな条件」とは、求める同一性の高低によって、適宜条件を変えることができる。より高ストリンジェントな条件であるほど、より同一性の高い配列のみがハイブリダイズすることになる。例えば、ストリンジェントな条件として、Molecular Cloning:A Laboratory Manual (Second Edition,J.Sambrook et.al,1989)に記載の条件等が挙げられる。すなわち、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン***DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件等が挙げられる。
なお、配列番号2で示されるアミノ酸配列、配列番号1で示される塩基配列は、それぞれクリベロマイセス・ラクティス ATCC8585株由来のPDIのアミノ酸配列と、当該PDIをコードする遺伝子の塩基配列である。
PDIをコードする遺伝子を利用したPDIの調製は、例えば、PDIをコードする遺伝子を含む発現ベクターを微生物等の宿主細胞に導入し、得られた形質転換体を培養することで産生させることができる。形質転換体には、PDIをコードする遺伝子をベクターの状態で保持させても良いし、当該遺伝子をゲノム内に保持させても良い。PDIをコードする遺伝子は、本明細書が開示する遺伝子配列情報を参考に、PCR法等の当該分野で用いられる任意の方法を用いて単離された状態に調製することができる。
クリベロマイセス・ラクティス由来のPDIを発現させるための形質転換の対象となる宿主微生物としては、例えば、エシェリキア(Escherichia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバチルス(Brevibacillus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、リステリア(Listeria)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Shizosaccharomyces)属、アスペルギルス(Aspergillus)属等に属する細菌、酵母、糸状菌が挙げられる。なかでも、酵素の分泌生産に優れ、プロテアーゼの夾雑が少ない点から、好ましくはバチルス(Bacillus)属、ブレビバチルス(Brevibacillus)属に属する細菌であり、より好ましくはブレビバチルス(Brevibacillus)属細菌である。
ベクターの種類は、特に限定されず、タンパク質生産に通常用いられるベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、YAC、BAC等が挙げられる。なかでも、プラスミドベクターが好ましく、市販のタンパク質発現用プラスミドベクター、例えば、pETやpBIC等を好適に用いることができる。プラスミドベクターへの遺伝子の導入手順は、当該分野で周知である。
形質転換体の培養に使用する培地、培養条件は、形質転換体の種類にあわせて当業者が適宜選択することができる。
例えば、微生物が資化し得る炭素源、無機窒素源又は有機窒素源、無機塩、その他必要な有機微量栄養源を含有する培地を用いて、通気攪拌、振とう等の好気条件下で行うことができる。培地は、合成培地、天然培地、半合成培地のいずれであってもよく、又は市販の培地であってもよい。培地は、好ましくは液体培地である。
培養温度は10℃〜40℃、培養期間は1日〜12日の範囲が好ましい。生産性を考慮して培養中にpH調整をしても良い。
形質転換体が産生したPDIの精製は、公知の精製方法が利用できる。
本発明の小麦加工製品の改質剤中におけるクリベロマイセス・ラクティス由来のPDIの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10000U/gであることが好ましく、1〜1000U/gであることがより好ましく、10〜100U/gであることがさらに好ましい。
本発明の小麦加工製品の改質剤は、さらにエンドプラズミックレティキュラムオキシドレダクターゼ1(Ero1)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を含有することが好ましい。クリベロマイセス・ラクティス由来のPDIと、Ero1及びFADを併用することで、パンの比容積の増大等の小麦加工製品の品質向上効果を一層向上させることができる。
Ero1は、活性中心にFADが結合したフラビン酵素であり、還元型PDIを酸化し、酸化型PDIに再生する反応を触媒する酵素である。Ero1は、大腸菌等の大量発現系にて調製したリコンビナントEro1(rEro1)であってもよい。また、FADは、補酵素型のビタミンB2であり、Ero1の酸化還元反応の際の水素の授受に関する。
小麦加工製品の改質剤中におけるEro1の含有量は、特に限定されないが、例えば、クリベロマイセス・ラクティス由来のPDIに対するモル比が好ましくは2〜20倍、より好ましくは5〜10倍になるように配合する。
また、小麦加工製品の改質剤中におけるFADの含有量は、特に限定されないが、例えば、1〜5質量%である。
本発明の小麦加工製品の改質剤は、クリベロマイセス・ラクティス由来のPDIと、必要により用いられる任意の成分とを常法に従い処方することで製造することができる。小麦加工製品の改質剤の形態は、例えば、粉末状、顆粒状、液体状、ペースト状等適宜選択することができる。
任意の成分は、例えば、保存剤や賦形剤である。小麦加工製品の改質剤中における任意の成分の含有量は、例えば、40〜99質量%である。本発明の小麦加工製品の改質剤がEro1及びFADを含有する場合、任意の成分の含有量は、例えば、40〜97質量%である。
本発明の小麦加工製品の製造方法は、上述した小麦加工製品の改質剤を小麦粉に添加して生地を形成するものである。これにより、生地中のジスルフィド結合の形成が促進され、後述するように、クリベロマイセス・ラクティス由来のPDI単独でも、例えばパンにおいては比容積が増加し柔らかい口当たりのパンを製造することができる。また、クラムの軟らかさを維持することができ、パンの老化抑制にプラスの効果を与える。
本発明の小麦加工製品の製造方法において、クリベロマイセス・ラクティス由来のPDIの添加量は小麦加工製品の目的に応じて適宜設定することができるため特に限定されないが、例えば、小麦粉1gに対し0.2U〜0.5Uであることが好ましい。
また、Ero1の添加量は、小麦加工製品の生地におけるPDIとの会合性を考慮して、クリベロマイセス・ラクティス由来のPDIのモル比の2〜20倍量であることが好ましく、5〜10倍量であることがより好ましい。
また、FADの添加量は小麦粉1gに対して、0.0001〜1μmolであることが好ましく、0.001〜0.1μmolであることがより好ましく、0.005〜0.04μmolであることがさらに好ましい。
次に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
製造例1 クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来PDI(KlPDI)のブレビバチルス(Brevibacillus)を宿主とした組換え発現と組換え酵素(rKlPDI)の取得
クリベロマイセス・ラクティス ATCC8585のゲノムDNAを鋳型として、表1に示すプライマー(KlPDI-F:配列番号3、KlPDI-R:配列番号4)を用いたPCRにより、目的のKlPDI配列の増幅を行った。取得したPCR断片を、ブレビバチルス分泌発現システム(Takara社製)を使用して宿主のブレビバチルスへ導入し、組換え酵素の取得を試みた。発現用のベクターには、pBIC3プラスミドを選択した。実験操作は添付の説明書の内容に従って行った。
Figure 2021193882
形質転換操作後に得られたネオマイシン耐性を持つコロニーについてコロニーPCRによる確認試験を行った結果、KlPDI配列の増幅が見られたことから、設計通り目的の遺伝子が導入されたことを確認した。目的遺伝子の導入を確認したコロニーをTMNm培地(グルコース 10g/L、ファイトンペプトン 10g/L、カツオエキス 5.75g/L、酵母エキス 2.0g/L、FeSO4・7H2O 10mg/L、MnSO4・4H2O 10mg/L、ZnSO4・7H2O 1mg/L。グルコースは別滅菌して添加。pH7.0)にて、30℃、72h培養して組換え酵素の生産を行った。その結果、培養上清中に100〜120U/mLのPDI活性(インスリン測定法)を確認し、効率よくrKlPDIを生産することに成功した。プロテアーゼ活性については検出されなかった。
実施例1 rKlPDIを使用した製パン試験
(1)方法
日清製粉製の中力粉(商品名:雀)を使用して製パン試験を行った。中力粉200gに塩4g、砂糖10gを加えて混合した。この粉体をショートニング8gと共にNational Manufacturing製のピンミキサーの容器に入れた。オリエンタル酵母製のパン酵母(商品名:オリエンタルイースト一般用)8gを水132gに懸濁し、粉体に加えて捏ね工程を行った。酵素やFADを加える系では、ここで加える水に混ぜて同時に加えた。捏ね時間は、予備試験の結果からパン生地の粘度が最適であった6分40秒に設定した。恒温・恒湿室(20℃、55%RH)で作業を行った。捏ね時間は、適宜微調整した。
本試験では、無添加区、小麦PDI+Ero1+FAD、rKlPDI、rKlPDI(10倍量)の4条件で試験を行った。PDIは、中力粉200gに対して50Uとし、10倍量では500U分を添加した。Ero1は80nmol、FADは8μmolを添加した。
Ero1は特許文献2記載の方法で調整したリコンビナント酵素を、FADは関東化学製の試薬を使用した。
捏ねた生地を、一次発酵(27℃、75%RH、90min)、パンチング(ガス抜き)、二次発酵(38℃、85%RH、30min)、200gに切り分け整形、ベンチタイム(38℃、85%RH、10min)、モルダー(オシキリ社製)による整形、ホイロ(38℃、85%RH、60min)の順で発酵、整形処理し食パン用の型に入れた。
ホイロまでの工程を終えたパン生地をオーブンに入れ、200℃、20minの焼成を行った。この時、オーブン内の位置による加熱状態の差を最小にするため、各パン生地は時間をずらして発酵を行い、4サンプルがそれぞれオーブンの同じ位置に置いて焼成できるよう調整した。
焼成後、焼きあがった山型パン(n=1)を型から取り出し、1h後に山型パンの外観比較及び比容積(cm/g)を測定し、24h経過後に山型パンの比容積(cm/g)を測定した。比容積の測定は(レーザー体積計 AR−01、K-AXIS社)により行った24h後の比容積を測定した後、山型パンの中心部を切断して厚さ20mmにスライスしたパンのサンプルを調製し、クラム(内側の白い部分)硬さ(N)と凝集性を測定した。焼成から3日目にも、上記スライスしたパンのサンプルのクラム硬さと凝集性を測定した。
物性の測定は、(万能物性測定器、INSTRON5564、INSTRON社)を使用して行った。クラム硬さは直径23.0mm のプランジャーにて5mm/secで50%圧縮した際の応力(N)、凝集性は同条件にて、70%圧縮を2度繰り返し、2回目の応力(N)を1回目の応力(N)で除した値とした。
(2)結果
表2に比容積測定の結果、表3にクラム硬さ測定の結果、表4に凝集性の推移を示す。
Figure 2021193882
Figure 2021193882
Figure 2021193882
焼成1h後及び24h後の比容積を測定した結果、rKlPDIを単独で添加した2つの試験区で、無添加区に対して7〜8%体積が増大したことが確認された(表2)。外観比較でも、パンの体積が向上している様子が確認できた(図示なし)。これより、rKlPDI単独でパン生地中のグルテンネットワーク形成を促進する効果が得られたと考えられる。当該2つの試験区において、小麦PDI+Ero1+FADの試験区と比容積の増大効果に差は見られなかった。
クラムの硬さについては、保存1日及び3日において、rKlPDIを添加した試験区で、小麦PDI+Ero1+FADの試験区よりもクラムの軟らかさが維持されることが確認された(表3)。
凝集性については各試験区で変化は見られなかった(表4)。
実施例2 rKlPDIを使用した製パン試験
(1)方法
実施例1と同様の方法で製パン試験を行った。本試験は、無添加区、小麦PDI+Ero1+FAD、Citrus limon(レモン)由来PDI(rClPDI)+Ero1+FAD、rKlPDI+Ero1+FADの4条件で試験を行った。各PDIの添加量は、中力粉200gに対して50Uとし、Ero1 80nmol、FAD 8μmolを同時に添加した。
rClPDIは次のようにして調製ものを使用した。
遺伝子配列情報(GenBank: HM641784.1)を基に、ClPDIのDNA配列を全合成して取得した。この合成DNAを鋳型とし、PCRによりClPDIの配列を増幅した。PCRに使用したプライマー情報を下表5に示した(ClPDI-F:配列番号7、ClPDI-R:配列番号8)。取得したPCR断片を、ブレビバチルス分泌発現システム(Takara社製)を使用して宿主のブレビバチルスへ導入し、組換え酵素の取得を行った。発現用のベクターには、pBIC3プラスミドを選択した。形質転換体の培養と組換え酵素の取得はrKlPDIの取得時と同様の方法で行った。
Figure 2021193882
焼成後、焼きあがった山型パンは実施例1と同様な手法にて、パンの比容積及び厚さ20mmにスライスしたパンのサンプルのクラム硬さを測定した。
(2)結果
表6に比容積測定の結果、表7にクラム硬さ測定の結果を示す。また、図1に外観比較の結果、図2に切断面の様子を示す
Figure 2021193882
Figure 2021193882
焼成1h後及び24h後の比容積を測定した結果、rKlPDI+Ero1+FADの試験区で、無添加区に対して11〜14%と大幅に体積が増大したことが確認された(表6)。一方、小麦PDI+Ero1+FADの試験区では、無添加区に対して3〜5%体積が増大しており、これは既報と同等の結果であった。rClPDI+Ero1+FADの試験区では、体積の増大はほとんど認められなかった。rKlPDI+Ero1+FADの試験区における比容積の増大は、外観の観察でも明らかであった(図1)。
切断面の様子を観察した結果、比容積の正確な比較を困難にするような大きな気泡はなく、均一に膨らんでいる様子が確認された(図2)。
クラムの硬さについては、小麦PDI+Ero1+FADの試験区では、無添加区に対して約70%の硬さであり、これも既報と同等の結果であった。rKlPDI+Ero1+FADの試験区のクラム硬さは、小麦PDI+Ero1+FADの試験区と同様の傾向が確認された。rClPDI+Ero1+FADの試験区では、無添加区の硬さからほとんど変化は見られなかった(表7)。

Claims (6)

  1. クリベロマイセス・ラクティス由来のプロテインジスルフィドイソメラーゼを主成分とする小麦加工製品の改質剤。
  2. さらに、エンドプラズミックレティキュラムオキシドレダクターゼ1及びフラビンアデニンジヌクレオチドを含有する請求項1記載の小麦加工製品の改質剤。
  3. 前記小麦加工製品がパン類である請求項1又は2記載の小麦加工製品の改質剤。
  4. クリベロマイセス・ラクティス由来のプロテインジスルフィドイソメラーゼを主成分とする小麦加工製品の改質剤を小麦粉に添加して生地を形成する、小麦加工製品の製造方法。
  5. 前記小麦加工製品の改質剤がエンドプラズミックレティキュラムオキシドレダクターゼ1及びフラビンアデニンジヌクレオチドを含有する請求項4記載の小麦加工製品の製造方法。
  6. 小麦加工製品がパン類である請求項4又は5記載の小麦加工製品の製造方法。
JP2020100222A 2020-06-09 2020-06-09 小麦加工製品の改質剤及び小麦加工製品の製造方法 Pending JP2021193882A (ja)

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