JP2021171801A - 被覆アーク溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接部の強度及び溶接作業性に優れる被覆アーク溶接方法を提供する。【解決手段】被覆アーク溶接方法は、母材鋼板と、心線と前記心線を被覆する被覆剤とからなる被覆アーク溶接棒と、を用いた被覆アーク溶接方法であって、前記心線の溶接割れ感受性組成Pcmが0.280%以下であり、前記心線の炭素当量Ceqが0.67%〜0.72%であり、溶接時の冷却速度が10.9℃/sec以上である、被覆アーク溶接方法。【選択図】図1

Description

本開示は、被覆アーク溶接方法に関する。
従来から、簡便で、溶接品質が高く、高能率な溶接方法が求められている。簡便な溶接方法としては、被覆アーク溶接がある。被覆アーク溶接は、被覆アーク溶接棒の先端と被溶接物との間にアークを発生させ、このアークの熱で溶接する技術である。被覆アーク溶接は、溶接時に被覆アーク溶接棒の被覆剤からガスが発生するため、ガスシールドアーク溶接等のようにガスを送る必要が無いため、簡便な装置で溶接を行う事が出来る。また、被覆アーク溶接は、狭隘部や屋外でも溶接作業を行う事が出来るという利点がある。
しかし、被覆アーク溶接においては、高能率とするために、溶接時の入熱量を大きくすると、溶接部の冷却速度が小さくなるため、例えば、溶接部の強度が低下するという課題があった。溶接部の強度を落とさないように溶接時の入熱量を小さくすると、単位時間当たりの溶着量が少なくなるため、能率が低下するという課題があった。
溶接品質が高い溶接方法としては、特許文献1において、大入熱溶接前に、鋼板の少なくとも大入熱溶接により生じる溶接熱影響部に相当する領域を650〜740℃で加熱する溶接方法が開示されている。
特開平5−293662号公報
しかし、特許文献1の方法では、別途溶接熱影響部に相当する領域を加熱する必要があるため、その分溶接能率が低下するという課題がある。
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、溶接部の強度及び溶接能率に優れる被覆アーク溶接方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、被覆アーク溶接において、冷却速度を特定の範囲に制御し、かつ、被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcm及び炭素当量Ceqを制御することで前記課題を解決することを見出した。本開示の要旨は以下の通りである。
<1> 一態様に係る被覆アーク溶接方法は、
母材鋼板と、
心線と前記心線を被覆する被覆剤とからなる被覆アーク溶接棒と、
を用いた被覆アーク溶接方法であって、
下記式(1)から求められる前記被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcmが0.280%以下であり、
下記式(2)から求められる前記被覆アーク溶接棒の炭素当量Ceqが0.67%〜0.72%であり、溶接時の冷却速度が10.9℃/sec以上である。
Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5×[B]・・・ (式1)
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14・・・(式2)
ただし、前記式1及び前記式2中の[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]、[B]は各元素の質量%での含有量であり、含まない場合は0として計算する。
上記の態様によれば、溶接部の強度及び溶接能率に優れる被覆アーク溶接方法を提供することができる。
溶接金属部の0.2%耐力と冷却速度との関係を示す図である。 本開示の被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcm及び炭素当量Ceqと溶接結果を示す図である。
以下、実施形態について説明する。
本発明者らは、溶接部の強度に優れ、かつ高能率な溶接方法について、鋭意検討し、下記の知見を得た。
下記式(1)で求められる溶接割れ感受性組成Pcmが0.280%以下であり、下記式(2)で求められる炭素当量Ceqが0.67%〜0.72%である被覆アーク溶接棒を用い、かつ、溶接時の冷却速度を10.9℃/sec以上とすることで、溶接金属部の引張強度低下が抑制され、かつ、アークタイムを低減できることが分かった。
Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5×[B]・・・ (式1)
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14・・・(式2)
ただし、前記式1及び前記式2中の[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]、[B]は各元素の質量%での含有量であり、含まない場合は0として計算する。
即ち、本実施形態に係る溶接方法は、被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcmと炭素当量Ceqの制御の効果と冷却速度の制御の効果との相乗効果により、溶接部の強度及び溶接能率に優れるという効果が得られる。
以下、本実施形態に用いられる被覆アーク溶接棒について説明する。なお、本明細書において、溶着金属とは、溶加材から溶接部に移行した金属を意味する。具体的には、例えば多層盛り溶接を行い、被覆アーク溶接棒の成分のみで作成した金属が、溶着金属である。
本明細書において、溶接金属とは、溶接部の一部であって、溶接中に溶融凝固した金属を意味する。ここで溶融凝固した金属とは、母材鋼板と被覆アーク溶接棒の両方が溶融し凝固した金属を意味する。
(被覆アーク溶接棒)
本実施形態に係る溶接方法に用いられる被覆アーク溶接棒は、心線と、この心線を被覆する被覆剤から構成される。以下、被覆アーク溶接棒のPcm及びCeqについて説明する。
(被覆アーク溶接棒のPcm)
Pcmは日本溶接協会が定めた溶接割れ感受性組成と呼ばれる数値であり、低温割れに対する鋼材の化学成分の影響を表したものである。式(1)によって、求められるが一般に溶接割れ感受性組成Pcmが高いほど鋼材の溶接部に低温割れが発生しやすい。この式を用いて被覆アーク溶接棒のPcmについて評価を行ったところ,予熱温度100℃のU型溶接割れ試験において被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcmが0.280%以下まで溶接部の割れを抑制することができることが分かった。従って、被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcmは0.280%以下とする。被覆アーク溶接割れ感受性組成Pcmの下限は特に限定されるものではない。
(被覆アーク溶接棒のCeq)
被覆アーク溶接棒の炭素当量Ceqは式(2)によって、求められる。被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcmが上記範囲内である場合において、被覆アーク溶接棒の炭素当量Ceqが0.67%未満の場合、溶着金属の強度が十分でない場合がある。そのため、炭素当量Ceqは0.67%以上とする。被覆アーク溶接棒の炭素当量Ceqが0.72%超であると溶着金属の強度が高くなりすぎる。炭素当量Ceqは0.72%以下とする。また、炭素当量が0.67%〜0.72%の範囲であると溶着金属の靭性を維持できる。
(心線)
本実施形態に係る被覆アーク溶接方法に用いられる被覆アーク溶接棒の心線は、被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcmと炭素当量Ceqが特定の範囲に制御されていれば、その化学組成は特に限定されない。
(心線の化学組成)
本実施形態の被覆アーク溶接方法に用いられる被覆アーク溶接棒の心線の好ましい化学組成としては、例えば、以下の化学組成が挙げられる。
被覆アーク溶接棒の心線は、質量%で、C:0.09%以下、Si:0.35%〜0.70%、Mn:1.10%〜1.70%、Ni:2.10%〜2.50%、Cr:0.75%〜1.15%、Mo:0.30%〜0.85%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、並びに残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する。以下、成分(元素)の含有量を示す「%」は、「質量%」を意味する。
(C:0.09%以下)
Cは、溶着金属の引張強度を向上させる元素である。心線中のC含有量が、0.09%超であると、溶着金属中に炭化物が析出し、溶着金属の靭性が低下する。そのため、心線中のC含有量は、0.09%以下とするのがよい。溶着金属の引張強度及び靭性を向上させるために、C含有量は0.01%以上であってもよい。
(Si:0.35%〜0.70%)
Siは、脱酸の効果がある元素である。心線中のSi含有量が0.35%未満であると、脱酸の効果が得られない。そのため、心線中のSi含有量は、0.35%以上とするのがよい。心線中のSi含有量が0.70%超であると、溶着金属の粒界に偏析したSiが割れを引き起こすため、心線中のSi含有量は0.70%以下とするのがよい。
(Mn:1.10%〜1.70%)
Mnは、溶着金属の耐割れ性を向上させる元素である。心線中のMn含有量が1.10%未満であると、溶着金属の耐割れ性の効果が得られない。そのため、心線中のMn含有量は、1.10%以上とするのがよい。また、心線中のMn含有量が1.70%超であると、溶着金属の靭性が低下するため、心線中のMn含有量は、1.70%以下とするのがよい。
(Ni:2.10%〜2.50%)
Niは溶着金属の引張強度及び靭性を向上させる元素である。心線中のNiの含有量が、2.10%未満の場合、溶着金属に対する引張強度及び靭性の向上の効果が得られない。そのため、心線中のNi含有量は、2.10%以上とするのがよい。心線中のNiの含有量が2.50%超であると、溶接割れが発生しやすくなることに加え、溶着金属の形状が凸状になりやすい。そのため、心線中のNiの含有量は、2.50%以下とするのが良い。
(Cr:0.75%〜1.15%)
Crは溶着金属の焼入れ性を向上させ、溶着金属の引張強度が向上する元素である。心線中のCrの含有量が0.75%未満であると、溶着金属の引張強度の向上の効果が得られない。そのため、心線中のCr含有量は、0.75%以上とするのがよい。心線中のCr含有量が1.15%超であると、溶着金属の靭性が低下する。そのため、心線中のCr含有量は1.15%以下とするのが良い。
(Mo:0.30%〜0.85%)
Moは溶着金属の焼入れ性を向上させ、溶着金属の引張強度が向上する元素である。心線中のMo含有量が0.30%未満であると、溶着金属の引張強度の向上の効果が得られない。そのため、心線中のMo含有量は、0.30%以上とするのがよい。心線中のMo含有量が0.85%超であると、溶着金属の靭性が低下する。そのため、心線中のMo含有量は0.85%以下とするのが良い。
(P:0.015%以下)
Pは、一般に鋼中に不純物として入る元素であり、心線中にも不純物として含まれる。Pは、溶着金属の割れの原因となる元素であるので、出来る限り心線中のP含有量を抑制することが好ましい。心線中のP含有量が0.015%超となると、溶着金属の割れが顕著になるので、P含有量は0.015%以下とするのがよい。心線中のP含有量は、コストの観点から0.001%以上であってもよい。
(S:0.015%以下)
Sは、一般に鋼中に不純物として入る元素であり、心線中にも不純物として含まれる。Sは、溶着金属の割れの原因となる元素であるので、出来る限り心線中のS含有量を抑制することが好ましい。心線中のS含有量が0.015%超となると、溶着金属の割れが顕著になるので、S含有量は0.015%以下とするのがよい。S含有量は、コストの観点から0.001%以上であってもよい。
(残部)
心線の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。不純物とは原材料に含まれる成分や製造の過程で混入される成分をいう。不純物は、本実施形態の効果を損なわない範囲で許容される。
(心線の直径)
心線の直径は、2.0〜6.0mmとしてもよい。心線の直径は、2.5mm以上であってもよく、3.0mm以上であってもよい。また、心線の直径は、5.5mm以下であってもよく、5.0mm以下であってもよい。
(心線の長さ)
心線の長さは、200mm〜500mmであってもよい。心線の長さは、250mm以上であってもよく、300mm以上であってもよい。心線の長さは、450mm以下であってもよく、400mm以下であってもよい。
(被覆剤)
心線を被覆する被覆剤は、イルミナイト(チタン鉄鉱FeTiO)を30%程度含んだイルミナイト系、有機物を20以上含んだセルロース系、酸化鉄を主成分とした酸化鉄系、石灰石などの塩基性炭酸塩を主成分とした低水素系、酸化チタンを35%程度含むチタニア系、酸化チタン30%程度及び石灰石などの塩基性物質を20%程度含有するライムチタニア系等の被覆剤等を用いることができ、またこれらに限定されない。また、目的に応じ、被覆剤は、合金成分を含有してもよい。本実施形態の被覆アーク溶接方法に用いられる被覆アーク溶接棒の被覆剤は、本実施形態の効果が得られる範囲で適宜選択することができる。
本実施形態の被覆アーク溶接棒の被覆率は、特に限定されないが、例えば20〜40%とするのがよい。なお、被覆アーク溶接棒の被覆率は、(被覆アーク溶接棒の総質量−心線の総質量)/被覆アーク溶接棒の総質量で求められる。被覆率については、本実施形態の効果が得られる範囲で調整できる。次に、母材鋼板について説明する。
(母材鋼板)
本実施形態の被覆アーク溶接方法に用いられる母材鋼板は、特に限定されない。本実施形態の被覆アーク溶接方法に用いられる母材鋼板の好ましい化学組成としては、例えば、以下の化学組成が挙げられる。
本実施形態に用いられる母材鋼板の化学組成が、質量%で、C:0.04%以上0.10%以下、Si:0.02%以上0.40%以下、Mn:0.5%以上1.0%以下、Ni:2.0%以上4.5%以下、Cr:0.1%以上1.0%以下、Mo:0.1%以上0.6%以下、V:0.005%以上0.1%以下、Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.0001%以上0.0070%以下、P:0.0010%以上0.0100%以下、S:0.0001%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不純物である。
(C:0.04%以上0.10%以下)
Cは、母材鋼板の引張強度を向上させる元素である。母材鋼板のC含有量が、0.10%超であると、熱影響部の靭性が低下する場合がある。そのため、母材鋼板のC含有量は、0.10%以下とするのがよい。母材鋼板の引張強度及び靭性を向上させるために、母材鋼板のC含有量は0.04%以上であってもよい。
(Si:0.02%以上0.40%以下)
Siは脱酸の効果がある元素である。母材鋼板のSi含有量が0.02%未満の場合、脱酸の効果を得られないことがある。そのため、母材鋼板のSi含有量は0.02%以上とするのがよい。また、母材鋼板のSi含有量が0.40%超では、熱影響部の靭性を劣化させることがある。そのため、母材鋼板のSi含有量は、0.40%以下とするのがよい。
(Mn:0.5%以上1.0%以下)
Mnは焼入れ性を向上させる元素である。母材鋼板のMn含有量が0.5%未満では、Mnの焼入れ性向上の効果が得られない場合がある。そのため、母材鋼板のMn含有量は、0.5%以上とするのがよい。母材鋼板のMn含有量が1.0%超では、熱影響部の靭性のばらつきを生じさせる場合がある。そのため、母材鋼板のMn含有量は1.0%以下とするのがよい。
(Ni:2.0%以上4.5%以下)
Niは母材鋼板の強度及び靭性を向上させる元素である。母材鋼板のNi含有量が2.0%未満の場合、母材鋼板の強度及び靭性の向上の効果が得られない場合がある。そのため、母材鋼板のNi含有量は、2.0%以上とするのがよい。母材鋼板のNi含有量が4.5%超の場合、熱影響部の靭性に悪影響を与えることがあり、また、溶接金属の形状が凸状になることがある。そのため、母材鋼板のNi含有量は4.5%以下とするのがよい。
(Cr:0.1%以上1.0%以下)
Crは、母材鋼板の強度を向上させる元素である。母材鋼板のCr含有量が、0.1%未満の場合、母材鋼板の強度の向上効果が得られない場合がある。そのため、母材鋼板のCr含有量は、0.1%以上とするのが良い。母材鋼板のCr含有量が1.0%超の場合、熱影響部の靭性が低下する場合がある。そのため、母材鋼板のCr含有量は、1.0%以下とするのがよい。
(Mo:0.1%以上0.6%以下)
Moは、母材鋼板の強度及び靭性を向上させる元素である。母材鋼板のMo含有量が0.1%未満の場合、母材鋼板の強度及び靭性を向上させる効果が得られない場合がある。そのため、母材鋼板のMo含有量は0.1%以上とするのがよい。母材鋼板のMo含有量が0.6%超の場合、熱影響部の靭性が低下する場合がある。そのため、母材鋼板のMo含有量は、0.6%以下とするのがよい。
(V:0.005%以上0.1%以下)
Vは強度確保に有効な元素である。0.005%未満の場合、効果が小さく、0.1%超の場合、溶接熱影響部靭性の低下を招く。そのため、母材鋼板のV含有量は0.005%以上、0.1%以下とするのが良い。
(Al:0.01%以上0.08%以下)
Alは、脱酸材として機能する元素である。母材鋼板のAl含有量が0.01%未満の場合、脱酸の効果が十分に得られない場合がある。そのため、母材鋼板のAl含有量は、0.01%以上とするのがよい。母材鋼板のAl含有量が0.08%超の場合、熱影響部の靭性が低下する場合がある。そのため、母材鋼板のAl含有量は、0.08%以下とするのが良い。
(N:0.0001%以上0.0070%以下)
母材鋼板のN含有量が0.0001%未満では、精錬負荷の増大によって生産性が低下し、0.0070%超の場合、母材靭性、溶接熱影響部靭性が低下する場合がある。そのため、母材鋼板のN含有量は、0.0001%以上0.0070%以下とするのが良い。
(P:0.0010%以上0.0100%以下)
Pは、一般に鋼中に不純物として入る元素である。Pは、熱影響部の靭性を低下させる原因となる元素であるので、出来る限り母材鋼板のP含有量を抑制することが好ましい。母材鋼板のP含有量が0.0100%超となると、熱影響部の靭性の低下が顕著になるので、P含有量は0.0100%以下とするのがよい。母材鋼板のP含有量は、コストの観点から0.0010%以上であってもよい。
(S:0.0001%以上0.0050%以下)
Sは、一般に鋼中に不純物として入る元素である。Sは、熱影響部の靭性を低下させる原因となる元素であるので、出来る限り母材鋼板のS含有量を抑制することが好ましい。母材鋼板のS含有量が0.0050%超となると、熱影響部の靭性の低下が顕著になるので、母材鋼板のS含有量は0.0050%以下とするのがよい。母材鋼板のS含有量は、コストの観点から0.0001%以上であってもよい。
(残部)
母材鋼板の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。不純物とは原材料に含まれる成分や製造の過程で混入される成分をいう。不純物は、本実施形態の効果を損なわない範囲で許容される。
(母材鋼板の板厚)
本実施形態の被覆アーク溶接方法に用いられる母材鋼板の板厚は特に限定されない。
(溶接条件)
次に、本実施形態の被覆アーク溶接条件について説明する。本実施形態の被覆アーク溶接方法は、前記の溶接割れ感受性組成Pcmと炭素当量Ceqを制御した被覆アーク溶接棒を用い、溶接時の冷却速度10.9℃/sec以上である被覆アーク溶接方法である。以下、本実施形態の溶接条件について説明する。
(冷却速度:10.9℃/sec以上)
本実施形態の被覆アーク溶接方法の冷却速度は例えば下記式によって求めることができる。
冷却速度=2πλCρ(h/jQ)(T−T
ここで、λ:700℃における熱伝導率、C:700℃における比熱、ρ:700℃における密度、h:鋼材の板厚、Q:溶接入熱量、T:鋼材の初期温度、T:冷却速度を求める鋼材の温度、j:熱の仕事当量である。
板厚,パス間温度が一定の場合,入熱量が上昇すると冷却速度が低下する関係があり、溶接金属部の強度は低下する。本開示で示す母材及び溶接材料を用いて、冷却速度と溶接金属部の強度との関係について検討した。得られた溶接金属部の強度と冷却速度との関係を図1に示す。図1の縦軸は0.2%耐力を示し、横軸は冷却速度を示す。図1中の実線は、本開示のPcm及びCeqの範囲に調整した被覆アーク溶接棒を用いて溶接した場合の0.2%耐力と冷却速度との関係の一例を示す。図1に示すように冷却速度が10.9℃/sec未満となると、溶接金属部の強度が維持できない。一方、入熱量が減少すると冷却速度は増大するが、単位時間当たりの溶着量が少なくなる。
以上、本実施形態の被覆アーク溶接方法を説明したが、本開示の目的を損なわない範囲で適宜変更することができる。
以下、本開示の効果を実施例により具体的に説明する。
被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcm及び炭素当量Ceqを表1に示す。母材鋼板は、高張力鋼板を用いた。溶接は、溶接材料の標準溶接条件にて実施した。なお、開先角度は50°である。冷却速度は10.9℃/sec以上とした。
Figure 2021171801
(溶接金属引張試験)
上記の溶接によって得られた溶接継手を用い、JIS Z 2241(2011)に準拠して、試験片を作製した。作製した試験片を用い、JIS Z 2241(2011)に基づき溶接金属引張試験を行った。結果を表2に示す。引張強さが使用した溶接用材料規定範囲内のときを合格とした。引張強さが使用した溶接材料の規定範囲外の場合を不合格とした。表2中の溶接金属引張試験の欄の「〇」は引張強さ規定範囲内であったことを示し、「低」は引張強さ規定範囲の下限未満であったことを示し、「高」は、引張強さ規定範囲の上限超であったことを示す。
(シャルピー衝撃試験)
JIZ Z 2242(2018)に基づき、試験片は溶接金属部から採取した。得られた試験片をJIS Z 2242(2018)に準拠して測定した。各試験温度における吸収エネルギーが使用した溶接材料の規格値以上となる場合を合格とした。結果を表2に示す。シャルピーの欄の「〇」は、吸収エネルギーが使用した溶接材料の規格値以上であったことを意味し、「×」は、吸収エネルギーが使用した溶接材料の規格値未満となったことを示す。
(U割れ試験)
U割れ試験は、JIS Z 3157(1993)に基づき測定した。予熱温度100℃,水蒸気圧25mmHg(温度30℃×湿度80%),吸湿量0.2%の条件下で試験を行い,溶接部に割れが生じなければ合格,割れが生じたときは不合格とした。結果を表2に示す。U割れ試験の欄の「〇」は割れがなかったことを示し、「×」は割れがあったことを示す。「−」は、試験を行わなかったことを示す。
(溶接作業能率)
溶接作業能率はアークタイムで評価した。アークタイムは一定の長さ,板厚の溶接部を形成するまでの時間とした。従来溶接条件のアークタイムを下回ったときを合格,上回った時を不合格とした。結果を表2に示す。溶接作業能率の欄の「〇」は従来溶接条件のアークタイムを下回ったことを示し、「×」は従来溶接条件のアークタイムを上回ったことを示す。「−」は、試験を行わなかったことを示す。
Figure 2021171801
本開示に関わる被覆アーク溶接方法に係る試験番号Aは、心線の溶接割れ感受性組成Pcm及び炭素当量Ceqが後述する適正範囲内であり、かつ、強度及び靭性に優れた溶接部を形成することができ、溶接金属の形状、溶接作業性にも優れていた。
シャルピー衝撃試験の結果、試験番号A〜Lのいずれも試験に合格した。
溶接金属引張試験の結果、試験番号A、D〜F及びLは試験に合格した。一方、試験番号B〜C及びKは規定値に対して強度が不足、試験番号G〜Jは規定値に対して強度が超過したために不合格となった。
U割れ試験の結果、試験番号A〜C、F及びLは試験に合格した。一方、試験番号D,E及びG〜Jは試験に不合格となった。(試験番号Kについては溶接金属引張試験に不合格であることが事前に判明していたことからU割れ試験を実施しなかった。)
溶接金属引張試験、シャルピー衝撃試験及びU割れ試験のいずれの試験にも合格した試験番号A、F及びLについて、溶接作業能率を確認した。試験番号A、F及びLは溶接作業能率の規定を満足した。
以上の結果を図2に示す。図2は、縦軸を炭素当量Ceq、横軸を溶接割れ感受性組成Pcmとした。凡例中の割れの「〇」は割れ試験に合格したことを意味し、「×」は割れ試験に不合格であることを示し、「−」は、割れ試験未実施であることを示す。凡例中の強度の「〇」は引張強さ規定範囲内であったことを示し、「低」は引張強さ規定範囲の下限未満であったことを示し、「高」は、引張強さ規定範囲の上限超であったことを示す。図2に示したように、溶接割れ感受性組成Pcmが0.280%以下、炭素当量Ceqが0.67%〜0.72%であれば、適切な強度を維持しつつ割れを抑制することができる。
上記の実施形態に記載の被覆アーク溶接方法は、例えば以下のように把握され得る。
(1)第1の態様によれば、被覆アーク溶接方法は、母材鋼板と、心線と前記心線を被覆する被覆剤とからなる被覆アーク溶接棒と、用いた被覆アーク溶接方法であって、下記式(1)から求められる前記心線の溶接割れ感受性組成Pcmが0.280%以下であり、下記式(2)から求められる前記心線のCeqが0.67%〜0.72%であり、溶接時の冷却速度が10.9℃以上である。
Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5×[B]・・・ (式1)
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14・・・(式2)
ただし、前記式1及び前記式2中の[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]、[B]は各元素の質量%での含有量であり、含まない場合は0として計算する。
(2)第2の態様によれば、第1の態様に係る被覆アーク溶接方法において、前記母材鋼板の化学組成が、質量%で、C:0.04%以上0.10%以下、Si:0.02%以上0.40%以下、Mn:0.5%以上1.0%以下、Ni:2.0%以上4.5%以下、Cr:0.1%以上1.0%以下、Mo:0.1%以上0.6%以下、V:0.005%以上0.1%以下、Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.0001%以上0.0070%以下、P:0.0010%以上0.0100%以下、S:0.0001%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不純物である。
(3)第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る被覆アーク溶接方法において、前記心線の化学組成が、質量%で、C:0.09%以下、Si:0.35%〜0.70%、Mn:1.10%〜1.70%、Ni:2.10%〜2.50%、Cr:0.75%〜1.15%、Mo:0.30%〜0.85%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、並びに残部がFe及び不純物であってよい。
本開示に係る被覆アーク溶接方法は、溶接部の強度に優れ、溶接作業性にも優れるため、高い産業上の利用可能性を有する。

Claims (3)

  1. 母材鋼板と、
    心線と前記心線を被覆する被覆剤とからなる被覆アーク溶接棒と、
    を用いた被覆アーク溶接方法であって、
    下記式(1)から求められる前記被覆アーク溶接棒の溶接割れ感受性組成Pcmが0.280%以下であり、
    下記式(2)から求められる前記被覆アーク溶接棒のCeqが0.67%〜0.72%であり、
    溶接時の冷却速度が10.9℃/sec以上である、被覆アーク溶接方法。
    Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5×[B]・・・ (式1)
    Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14・・・(式2)
    ただし、前記式1及び前記式2中の[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]、[B]は各元素の質量%での含有量であり、含まない場合は0として計算する。
  2. 前記母材鋼板の化学組成が、質量%で、
    C:0.04%以上0.10%以下、
    Si:0.02%以上0.40%以下、
    Mn:0.5%以上1.0%以下、
    Ni:2.0%以上4.5%以下、
    Cr:0.1%以上1.0%以下、
    Mo:0.1%以上0.6%以下、
    V:0.005%以上0.1%以下、
    Al:0.01%以上0.08%以下、
    N:0.0001%以上0.0070%以下、
    P:0.0010%以上0.0100%以下、
    S:0.0001%以上0.0050%以下、
    を含有し、残部がFe及び不純物である請求項1に記載の被覆アーク溶接方法。
  3. 前記心線の化学組成が、質量%で、
    C:0.09%以下、
    Si:0.35%〜0.70%、
    Mn:1.10%〜1.70%、
    Ni:2.10%〜2.50%、
    Cr:0.75%〜1.15%、
    Mo:0.30%〜0.85%、
    P:0.015%以下、
    S:0.015%以下、
    並びに残部がFe及び不純物である請求項1又は2に記載の被覆アーク溶接方法。

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