JP2021154735A - フィルムコンデンサ用フィルム、フィルムコンデンサ用金属層積層フィルム、およびフィルムコンデンサ - Google Patents

フィルムコンデンサ用フィルム、フィルムコンデンサ用金属層積層フィルム、およびフィルムコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、高い耐熱性とセルフヒーリング性を具備し、生産性にも優れるフィルムコンデンサ用フィルムを提供することをその課題とする。【解決手段】 融点180℃以上かつ/またはガラス転移温度130℃以上の樹脂層Aと、少なくとも一方のフィルム最外層に、該樹脂層Aより厚みが薄い層Bを有し、2つある最外層表面のうち、同じ面同士で動摩擦係数を測定した際、動摩擦係数が大きい方の表面をa面、小さい方の表面をb面とし、前記a面同士の動摩擦係数をμdaa、前記a面と前記b面との動摩擦係数をμdabとしたとき、μdaa>μdabかつ、μdab≦1.2を満たし、少なくとも一方の最外層表面が、突出山部とコア部を分離する負荷面積率Smr1≧12%を満たす、フィルムコンデンサ用フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、フィルムキャパシタの誘電体となるフィルムコンデンサ用フィルム、フィルムコンデンサ用金属層積層フィルム、およびフィルムコンデンサに関するものである。
ここ数年、地球環境問題等に起因してハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の電動機駆動併用車、あるいは電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の電動機駆動車の市場が拡大しているが、これら電動機駆動併用車や電動機駆動車の市場拡大に伴い、これらの車に使用されるフィルムキャパシタの需要も急速に増大している。
フィルムキャパシタは、樹脂製の基材フィルムを誘電体とするキャパシタであり、優れた周波数特性や温度安定性を得ることができる。このフィルムキャパシタの基材フィルムとしては、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムやポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいは非晶性の熱可塑性樹脂であるポリエーテルイミド(PEI)樹脂フィルムが挙げられる。
これらのフィルムの中では、ポリエーテルイミド樹脂フィルムが基材フィルムとして注目されている(特許文献1)。これは、フィルムキャパシタが電動機駆動併用車や電動機駆動車の用途に利用される場合、120℃の環境下での使用に耐えられる耐熱性が要求されるが、ガラス転移点温度(Tg)が200℃以上のポリエーテルイミド樹脂製の基材フィルムを使用すれば、優れた耐熱性、耐電圧特性や誘電特性等の電気的特性を得ることができるからである。
一方で、ポリエーテルイミドやポリフェニレンスルフィドなどの優れた耐熱性を持つ基材フィルムは、一般的にセルフヒーリング(SH)性が悪く、長時間使用しているとコンデンサ容量が低下していくという欠点があった。これに対し、基材フィルムにコート層を設けることでセルフヒーリング性を改善する技術が知られている(特許文献2、3)。
特開2007−300126号公報 特開2018−163950号公報 国際公開第2007/080757号公報
しかしながら従来技術で、耐熱性とセルフヒーリング性を両立する際には、高額かつ形成に時間がかかり生産性が悪く、セルフヒーリング性の改善効果も低いポリパラキシリレン系樹脂のコートが使用されていることや、絶縁破壊時に電気回路の導線不良の原因となる可能性があるシロキサンを生成するシリコーン系のセルフヒーリングコートが使用されていること等が課題であった。そこで、本発明は、かかる従来技術の背景を鑑み、高い耐熱性とセルフヒーリング性を具備し、生産性にも優れるフィルムコンデンサ用フィルムを提供せんとするものである。
上述した課題は、以下の発明によって解決可能である。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、融点180℃以上かつ/またはガラス転移温度130℃以上の樹脂層Aと、少なくとも一方のフィルム最外層に、該樹脂層Aより厚みが薄い層Bを有し、2つある最外層表面のうち、同じ面同士で動摩擦係数を測定した際、動摩擦係数が大きい方の表面をa面、小さい方の表面をb面とし、前記a面同士の動摩擦係数をμdaa、前記a面と前記b面との動摩擦係数をμdabとしたとき、μdaa>μdabかつ、μdab≦1.2を満たし、少なくとも一方の最外層表面が、突出山部とコア部を分離する負荷面積率Smr1≧12%を満たすフィルムコンデンサ用フィルムである。
本発明によれば、高い耐熱性とセルフヒーリング性を具備し、生産性にも優れるフィルムコンデンサ用フィルムを提供することができる。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、融点180℃以上かつ/またはガラス転移温度130℃以上の樹脂層Aと、少なくとも一方のフィルム最外層に、該樹脂層Aより厚みが薄い層Bを有し、2つある最外層表面のうち、同じ面同士で動摩擦係数を測定した際、動摩擦係数が大きい方の表面をa面、小さい方の表面をb面とし、前記a面同士の動摩擦係数をμdaa、前記a面と前記b面との動摩擦係数をμdabとしたとき、μdaa>μdabかつ、μdab≦1.2を満たし、少なくとも一方の最外層表面が、突出山部とコア部を分離する負荷面積率Smr1≧12%を満たす。以下、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムについて具体的に説明する。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、融点180℃以上かつ/またはガラス転移温度130℃以上の樹脂層Aを有する。樹脂層Aの融点の下限は、好ましくは205℃、より好ましくは215℃であり、上限は特に設けないが、好ましくは400℃、より好ましくは350℃である。樹脂層Aのガラス転移温度の下限は、好ましくは180℃、より好ましくは205℃であり、上限は特に設けないが、好ましくは400℃、より好ましくは350℃である。樹脂層Aの融点および/またはガラス転移温度が前記した範囲に含まれることで、120℃以上の高温環境下でフィルムコンデンサ用フィルムを使用した際に熱収縮や破膜による絶縁不良を起こしにくくなる。
本発明の樹脂層Aの厚みは特に限定されるものではないが、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。本発明の樹脂層Aの厚みを100μm以下とすることで、コンデンサ素子としたときの体積を小さくすることが容易となる。樹脂層Aの厚みの下限は特に限定されるものではないが、0.50μmであることが好ましく、1.3μmであることがより好ましく、1.6μmであることがさらに好ましい。樹脂層Aの厚みを0.50μm以上とすることで、絶縁破壊電圧を高くすることが容易となる。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの樹脂層Aに用いる原料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリメチルペンテン(PMP)樹脂、環状オレフィン(COP)樹脂、及び環状オレフィン・コポリマー(COC)樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、及びポリエチレンナレフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(変性PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、及びポリアミド11T(PA11T)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、及びポリフェニルスルホン(PPSU)樹脂等のポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、及びポリアミドイミド(PAI)樹脂等のポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等のポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂(四フッ化エチレン樹脂ともいう)、ポリテトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂(四フッ化エチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂ともいう)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂(四フッ化エチレン‐六フッ化プロピレン共重合体樹脂ともいう)、テトラフルオロエチレン‐エチレン共重合体(ETFE)樹脂(四フッ化エチレン‐エチレン共重合体樹脂ともいう)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)樹脂(三フッ化塩化エチレン樹脂ともいう)、ポリビニリデンフルオライド(PVDE)樹脂(フッ化ビニリデン樹脂ともいう)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロピレン共重合体樹脂等のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、フェノール樹脂、ポリウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらの中では、150℃での耐熱性に優れるポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリフェニルスルホン樹脂等のポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂を用いるのが好ましく、耐熱性に優れる樹脂の中では誘電正接が低く、コンデンサとしての使用に適したポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂を用いるのがより好ましく、これらの樹脂のうち少なくとも1つの樹脂を50質量%以上100質量%以下含有することがより好ましい。これらの樹脂は、変性体、誘導体、及び他の化合物との共重合体をも使用することができる。また、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用することもできる。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの樹脂層Aには、その特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、架橋剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、着色剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、無機粒子、樹脂粒子、無機化合物、有機化合物等を含有してもよい。なお、これらの各成分は、必要に応じて単独でまたは複数種類を組み合わせて用いることもできる。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、その少なくとも一方のフィルム最外層に、該樹脂層Aより厚みが薄い層Bを有する。層Bの酸素原子含量は1.0質量%以上であることが好ましい。層Bの酸素原子含量は、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは21質量%以上であり、特に好ましくは25質量%以上である。層Bの酸素原子含量の上限は特に限定されるものではないが、好ましくは50質量%であり、より好ましくは37質量%であり、さらに好ましくは34質量%である。層Bに含まれる酸素原子の含量を1.0質量%以上とすることで絶縁破壊時に層Bが揮散しやすくなり、セルフヒーリング性を高くすることができる。層Bに含まれる酸素原子の含量を50質量%以下とすることで、フィルム同士のブロッキング性が低く、生産性に優れたフィルムを得ることができる。なお、層Bの酸素原子含量は1.0質量%以上であるとは、層Bにおける水素原子、炭素原子、硫黄原子、ケイ素原子、窒素原子および酸素原子の合計を100質量%としたときに、層B中の酸素原子が1.0質量%以上であることをいう。後述の層Bのケイ素原子Siの含有量も同様に解釈することができる。
本発明の層Bの厚みは特に限定されるものではないが、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。層Bの厚みを10nm以上とすることで、セルフヒーリング性を高めることが容易となる。また、層Bの厚みの上限は特に限定されるものではないが、5.0μmであることが好ましく、1.0μmであることがより好ましく、0.50μmであることがさらに好ましく、0.30μmであることが特に好ましい。層Bの厚みを5.0μm以下とすることで、絶縁破壊電圧を高くすることが容易となる。
ここで、各層の厚みは幅方向−厚み方向断面を電界放射走差電子顕微鏡で観察し、その測長機能により計測することができ、詳細な手順は後述する。また、各層における原子の含有量は、ラザフォード後方散乱/水素前方散乱分析同時測定法(National Electrostatics Corporation製 Pelletron 3SDH)による分析で得られた原子分率より求めることができ、詳細な手順は後述する(層Bの酸素原子含量だけでなく、各層の他の原子含有量も同じ。)。
層Bのケイ素原子Siの含有量は27質量%以下であることが好ましい。層Bのケイ素原子Siの含有量の上限は、より好ましくは15質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、ケイ素原子Siを含有しないことが特に好ましい。層Bに含まれるケイ素原子Siの含有量を27質量%以下とすることにより、絶縁破壊時に生成するシロキサンによるコンデンサ特性の劣化をすることができる。
層Bは次の条件(i)を満たすことが好ましい。
条件(i):層Bに含有される水素原子H、炭素原子C、硫黄原子S、ケイ素原子Si、窒素原子Nおよび酸素原子Oの原子分率から次式(イ)に基づき計算される値XBが0.90以下である。
式(イ) XB=(層Bの炭素原子Cの原子分率+層Bの窒素原子Nの原子分率+層Bの硫黄原子Sの原子分率+層Bのケイ素原子Siの原子分率)/(層Bの水素原子Hの原子分率+層Bの酸素原子Oの原子分率)
前記条件(i)のXBの上限は、より好ましくは0.80、さらに好ましくは0.70であり、特に好ましくは0.65である。XBは、絶縁破壊時に蒸散しにくい傾向のある原子と蒸散しやすい傾向のある原子の比をとったものであり、0.90以下とすることで、セルフヒーリング性やコンデンサの信頼性を高くすることが容易になる。XBの下限は特に限定されるものではないが、好ましくは0.050、より好ましくは0.20である。XBを0.050以上とすることで、層Bと樹脂層Aとの密着性を高くすることが容易になる。
層Bに用いる原料は特に限定されるものではないが、例えば樹脂、低分子有機化合物を用いることができる。樹脂層Aとの密着性の観点から樹脂を用いることが好ましい。層Bに用いる樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリスチレン(PS)樹脂、ポリメチルペンテン(PMP)樹脂、環状オレフィン(COP)樹脂、及び環状オレフィン・コポリマー(COC)樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、及びポリエチレンナレフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(変性PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、及びポリアミド11T(PA11T)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、及びポリフェニルスルホン(PPSU)樹脂等のポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、及びポリアミドイミド(PAI)樹脂等のポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等のポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂(四フッ化エチレン樹脂ともいう)、ポリテトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂(四フッ化エチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂ともいう)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂(四フッ化エチレン‐六フッ化プロピレン共重合体樹脂ともいう)、テトラフルオロエチレン‐エチレン共重合体(ETFE)樹脂(四フッ化エチレン‐エチレン共重合体樹脂ともいう)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)樹脂(三フッ化塩化エチレン樹脂ともいう)、ポリビニリデンフルオライド(PVDE)樹脂(フッ化ビニリデン樹脂ともいう)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロピレン共重合体樹脂等のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、フェノール樹脂、ポリウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリウレタン樹脂(PU)、ポリウレタンアクリレート樹脂、セルロース、セルロース誘導体(例えば、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、XBが低い値となりセルフヒーリング性が高くなる樹脂として、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリメチルペンテン(PNP)樹脂、環状オレフィン(COP)樹脂、及び環状オレフィン・コポリマー(COC)樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、及びポリエチレンナレフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、フェノール樹脂、セルロース、セルロース誘導体(例えば、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂を用いることが好ましい。
これらの原料のうち、アクリル樹脂は形成時の架橋により耐熱性を高めることができ、エポキシ樹脂やセルロース誘導体は主骨格の構造から耐熱性が高く、層Bの原料として用いることで、本発明のコンデンサ用フィルムを用いてなるコンデンサ素子を作製した際に高温での寿命を長くすることが容易となる。また、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂は酸素原子を含む樹脂であることから、層Bの酸素原子含量を高めて、セルフヒーリング性を高くするのが容易となる。これらの点から、層Bはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂のうち少なくとも1つの樹脂を50質量%以上100質量%以下含有することがより好ましい。これらの原料は、変性体、誘導体、及び他の化合物との共重合体や、モノマーの形態で塗工した後、重合させて形成した樹脂をも使用することができる。また、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用することもできる。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、層B側の表面の突出山部高さを高くして、滑り性を良くする観点から、層Bが、互いに非相溶の2つ以上の成分を含むことが好ましい。ここで「互いに非相溶の成分」とは、分子レベルで均一に混合していない2成分のことであり、具体的には異なる2成分を主成分とする相がいずれも0.01μm以上の相構造を形成している場合における、当該2成分をいう(ここでいう「主成分」に該当するか否かは、2成分の合計した含有量が、層Bを構成する全成分中50質量%を超えるか否かで判断することができる。)。なお、例えば3成分以上の成分が層Bに含まれる場合は、ある一つの成分を主成分とする相が0.01μm以上の相構造を形成していれば、「互いに非相溶の2つ以上の成分を含む」を満たすものとする。なお、層Bを構成する成分が3成分以上の場合、そのうち2成分が上記要件を満たせば、残りの他の成分が上記要件を満たすか否かを問わず「互いに非相溶の2つ以上の成分を含む」ものと見なす。
2つ以上の成分が非相溶か否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,Munich Viema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。互いに非相溶の成分を2種以上混合して突出山部高さを高くする方法は特に限定されるものではないが、例えば、溶媒中に粒子と樹脂を分散させて乾燥時に粒子を突起として残す方法、樹脂層Aの材料との親和性の高い樹脂と低い樹脂を、親和性の低い樹脂が少なくなるように混合して層B側の表面に親和性の低い樹脂を突起として点在させる方法、及び2種類の沸点が異なる溶媒中に、それぞれの溶媒に対し高い親和性を持つ樹脂を溶解させて乾燥時に一方の溶媒が先に蒸発するよう温度を設定することで、残った方の溶媒に溶解した樹脂が後から突起として析出するようにする方法、及びこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。
層Bに用いる互いに非相溶な2つの成分の組み合わせとしては、アクリル樹脂とセルロース誘導体の組み合わせ、セルロース誘導体とエポキシ樹脂の組み合わせ、メタクリル樹脂とアクリル樹脂の組み合わせが好ましい。これらは変性体、誘導体、及び他の化合物との共重合体や、モノマーの形態で塗工した後、重合させて形成した樹脂をも使用することができ、層Bを形成するための組成物を樹脂層Aに塗工して形成させる場合には、これらの原料の組み合わせについて、一方をポリマーの形態、もう一方をモノマーの形態で混合した塗液を塗工した後、モノマーを重合させて形成するのが好ましい。また、加工性を重視するのであれば、例えばエポキシ樹脂とシリカの組み合わせも好ましい。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、コンデンサに用いたときの寿命を長くする観点から、誘電正接が2.0%以下であることが好ましい。上記観点から、フィルムコンデンサ用フィルムの誘電正接の上限は、好ましくは0.70%、より好ましくは0.40%、さらに好ましくは0.30%である。フィルムコンデンサ用フィルムの誘電正接が2.0%以下であることにより、フィルムコンデンサに使用した際に通電中の発熱量が軽減され、フィルムコンデンサの寿命が長くなる。フィルムコンデンサ用フィルムの誘電正接の下限は特に限定されるものではないが、好ましくは0.0010%であり、より好ましくは0.010%である。フィルムコンデンサ用フィルムの誘電正接は、極性の低い樹脂を樹脂層Aの樹脂として使用することや、層Bの原料として、誘電正接が樹脂層Aより高い原料を使用している場合、層Bの厚みを薄くすることにより小さくすることができる。なお、ここでいう誘電正接はJIS C2138−2007に準じて測定した値をいい、その詳細な測定方法は後述する。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、2つある最外層表面のうち、同じ面同士で動摩擦係数を測定した際、動摩擦係数が大きい方の表面をa面、小さい方の表面をb面とし、a面同士の動摩擦係数をμdaa、a面とb面との動摩擦係数をμdabとしたとき、μdaa>μdabかつ、μdab≦1.2を満たす。また、b面同士の動摩擦係数をμdbbとする。μdabは、より好ましくはμdab≦0.90、さらに好ましくはμdab≦0.75、特に好ましくはμdab≦0.60を満たすことである。μdaa>μdabかつμdab≦1.2とすることで、コンデンサ特性を低下させにくく滑り性を改善することができる。さらに、μdabを低い値とすることで、加工性をより高くすることができる。μdabの下限は特に限定されるものではないが、0.10であることが好ましい。μdabを0.10以上とすることで、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムを巻回体としたときに巻きずれしにくくすることが容易になる。なお、動摩擦係数はJIS K 7125(1999)に準じて、荷重200g、25℃、65%RHにて測定するものとし、詳細な手順は後述する。
μdaaとμdabが、μdaa>μdabかつ、μdab≦1.2を満たすようにする方法としては、特に限定されるものではないが、平滑な基材フィルムや鏡面ロール上で樹脂層Aを形成し、その上に非相溶の2つの成分を原料に含むようにして層Bを形成する方法が挙げられる。μdabが高い場合には、前記した2つの成分の含有量の差が小さくなるように混合比を調整することでμdabを低くすることができる。また、μdaa≦μdabとするには、前記した方法でμdabを低くするか、樹脂層Aを形成するのに用いる基材フィルムやロールの平滑性を高くし、μdaaを高くすることでμdaa>μdabとすることができる。
μdbbの値は特に限定されるものではないが、0.10以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましい。μdbbを0.10以上とすることで、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムを巻回体とした際の巻きずれを抑えることが容易となる。μdbbの上限は特に限定されるものではないが、2.0であることが好ましく、1.5であることがより好ましく、1.2であることがさらに好ましい。μdbbを2.0以下とすることで、加工性を高くすることが容易となる。
μdaaの値は特に限定されるものではないが、0.10以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましい。μdaaを0.10以上とすることで、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムを巻回体とした際の巻きずれを抑えることが容易となる。μdaaの上限は特に限定されるものではないが、2.0であることが好ましく、1.5であることがより好ましく、1.2であることがさらに好ましい。μdaaの値を2.0以下とすることで、加工性を高くすることが容易となる。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、少なくとも一方の最外層表面が、突出山部とコア部を分離する負荷面積率Smr1≧12%を満たす。Smr1は突出部の割合に着目したものであるから、その値が高いほど、他の面と接触させたときの接触面積を効果的に低減することができる。Smr1を12%以上とすることで、フィルムの絶縁破壊電圧を高くしたままフィルムの滑り性を改善することができる。Smr1の上限は特に限定されるものではないが、49%であることが好ましく、より好ましくは18%である。Smr1を49%以下とすることで、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムを巻回体としたときに、フィルム表面の変形を抑制することが容易になる。なお、Smr1は、ISO 25178-2 : 2012、ISO 25178-3:2012に準じて測定、算出することができ、詳細な測定手順は後述する。
少なくとも一方の最外層表面のSmr1が、Smr1≧12%を満たすようにする方法は、特に限定されるものではないが、例えば、非相溶の2つの成分を原料に含むようにして層Bを形成する方法が挙げられる。Smr1が低い場合には、前記した2つの成分の含有量の差が大きくなるように混合比を調整することや、2つの成分の溶解度パラメーター(いわゆるSP値)が小さくなるようにすることで、Smr1を高くすることができる。
樹脂層Aに含有される水素原子H、炭素原子C、硫黄原子S、ケイ素原子Si、窒素原子Nおよび酸素原子Oの原子分率から次式(ロ)に基づいて計算される値XAは、XBに対し、XA>XBを満たすことが好ましい。
式(ロ) XA=(樹脂層Aの炭素原子Cの原子分率+樹脂層Aの窒素原子Nの原子分率+樹脂層Aの硫黄原子Sの原子分率+樹脂層Aのケイ素原子Siの原子分率)/(樹脂層Aの水素原子Hの原子分率+樹脂層Aの酸素原子Oの原子分率)
XAは高いほど不飽和度が高く剛直な構造を持った樹脂となる傾向があることから、XA>XBを満たすようにすることで、耐熱性を高く保ったままでセルフヒーリング性を高めることが容易になる。
a面の突出山部高さSpk-aとb面の突出山部高さSpk-bとの比は、Spk-b/Spk-a≧2.0を満たし、かつ、b面の突出山部とコア部を分離する負荷面積率Smr1-b≧12%以上であることが好ましい。Smr1-bを12%以上とすることで、フィルムの滑り性を改善することができる。Smr1-bの上限は特に限定されるものではないが、49%であることが好ましい。Smr1-bを49%以下とすることで、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムを巻回体としたときに、フィルム表面の変形を抑制することが容易になる。Spk-b/Spk-a≧2.0かつSmr1-b≧12%を満たすことで、滑り性に優れたフィルムを得ることが容易になる。なお、Spk-aとSpk-bは、ISO 25178-2 : 2012、ISO 25178-3:2012に準じて測定、算出することができ、詳細な測定手順は後述する。
少なくとも一方の最外層表面のSpk-aと、Spk-bと、Smr1-bとが、Spk-b/Spk-a≧2.0を満たし、かつ、Smr1-b≧12%以上を満たすようにする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、非相溶の2つの成分を原料に含むようにして層Bを形成する方法が挙げられる。Spk-b/Spk-aが低い場合には、前記した2つの成分の含有量の差を大きくし、2つの成分の溶解度パラメーター(いわゆるSP値)が大きくなるようにすることでSpk-b/Spk-aを高くすることができる。Smr1-bが低い場合には、前記した2つの成分の含有量の差が大きくなるように混合比を調整したり、2つの成分の溶解度パラメーター(いわゆるSP値)が小さくなるようにすることでSmr1-bを高くすることができる。
樹脂層Aおよび層Bの合計厚みをT(F)としたとき、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの両方の最外層表面の最大谷深さSvが、いずれもSv/T(F)<0.30を満たすことが好ましい。Sv/T(F)の上限は、両面ともに好ましくは0.20である。すなわちSv/T(F)≦0.20であることがより好ましい。Sv/T(F)は、フィルムの厚みに対する凹みの大きさを意味しており、高いほど同一の厚みで比較した場合に絶縁破壊しやすくなる。Sv/T(F)を0.30未満とすることで、高い耐電圧特性を持ったフィルムを得ることが容易となる。なお、Svは、ISO 25178-2 : 2012、ISO 25178-3:2012に準じて測定、算出することができ、詳細な測定手順は後述する。
Sv/T(F)を0.30未満とする方法は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂層Aを平滑な基材フィルムや鏡面ロール上で形成し、その上に溶液または液状の層Bの原料をコーターで塗工した後、乾燥して層Bを形成する方法が挙げられる。層B側の表面のSv/T(F)が0.30以上となる場合には、層Bの原料にレベリング剤を添加することでSv/T(F)を低くすることができる。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの両方の最外層表面の最大谷深さSvの値は、いずれの面についても0.10nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの両方の最外層表面の最大谷深さSvを、いずれの面においても0.10nm以上とすることで、加工性を高くすることが容易となる。本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの両方の最外層表面の最大谷深さSvの上限は、いずれの面についても5000nmであることが好ましい。本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの両方の最外層表面の最大谷深さSvを、いずれの面についても5000nm以下とすることで、高い耐電圧特性を持ったフィルムを得ることが容易となる。
以下、本発明のフィルムコンデンサ用金属層積層フィルムについて説明する。本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、集積化の観点から少なくとも一方の最外層の表面に金属層を有するフィルムコンデンサ用金属層積層フィルムとすることが好ましく、セルフヒーリング性を高める目的から、樹脂層A、層B、金属層をこの順に有するフィルムコンデンサ用金属層積層フィルムとすることがより好ましい。なお、ここで「樹脂層A、層B、金属層をこの順に有する」とは、樹脂層A、層B、金属層がこの順に位置している態様全般をいい、樹脂層Aと層Bの間、層Bと金属層との間に他の層があるか否かは問わない。
さらに、本発明のフィルムコンデンサ用金属層積層フィルムは、耐熱性の高い樹脂からなる樹脂層Aの平滑性を高めることで耐電圧特性を高く保ったまま、層Bによる滑り性の改善効果を発揮させるために、樹脂層Aの一方の面にのみ前記層Bを有し、層B側に前記金属層を有し、2つある最外層表面のうち、同じ面同士で測定した動摩擦係数が大きい方の表面をa面、小さい方の表面をb面としたときに、b面が樹脂層Aから見て層B側にあることが特に好ましい。
金属層の厚さは、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは5nm以上80nm以下、さらに好ましくは10nm以上50nm以下の範囲である。また、金属層の表面抵抗値は、好ましくは0.1Ω/sq以上10Ω/sq以下、より好ましくは2Ω/sq以上8Ω/sq以下、さらに好ましくは3Ω/sq以上6Ω/sq以下の範囲である。これは、金属層の表面抵抗値が0.1Ω/sq未満の場合には、セルフヒーリング性(自己修復性とも言う)が低下するので、好ましくないからである。逆に、10Ω/sqを超える場合には、誘電正接が悪化するおそれがあるという理由に基づく。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプに限定されるものではない。具体的には電極構成の観点では箔巻きコンデンサ、金属蒸着膜コンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。また、形状の観点では、捲巻式であっても積層式であっても構わない。これらの中では、本発明のフィルムの特性から、金属層積層フィルムを含む金属蒸着膜フィルムコンデンサとして使用するのが好ましい。金属層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が用いられる。これらの方法の中では、生産性に優れる真空蒸着法が好ましい。金属層が蒸着される場合、蒸着方法として、オイル法やテープ等が使用される。金属層の蒸着パターンとしては、特に限定されるものではないが、好ましいパターンとしては、例えばTマージンパタン、ハニカムパターン、モザイクパターン等が挙げられる。
次に本発明のフィルムコンデンサについて説明する。本発明のフィルムコンデンサは、本発明のフィルムコンデンサ用金属層積層フィルムを用いて成る。本発明のフィルムコンデンサは、自動車用インバーターおよび/またはコンバーター(例えば、ハイブリッド電気自動車用のインバーター、ハイブリッド電気自動車用のコンバーター、電気自動車用のインバーター、電気自動車用のコンバーターなど)の一部とすることができる。
次に、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの製造方法の例について説明する。なお、以下の例は樹脂層Aと層Bを有する2層構成のものであるが、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、樹脂層Aと層Bを有する限り2層構成であっても、それ以外の層を有する3層以上の構成であってもよい。3層以上の構成である場合には、融点180℃以上かつ/またはガラス転移温度130℃以上で、最も厚みの大きい層を樹脂層Aとする。
まず、樹脂層Aの形成方法としては、樹脂層Aの原料を押出機に供給し、Tダイなどのスリット状口金から溶融押出させて冷却ドラムなどの上で固化させて樹脂層Aとする方法や、溶液又は液体状の樹脂層Aの原料を、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、またはそれらにシリコーンコートをして離型性を高めたフィルムなどの基材フィルム上にコーターで塗工した後、乾燥することで樹脂層Aを形成する方法や、該液体を流延ベルト上に流延させた後、乾燥することで樹脂層Aを形成する方法等が挙げられる。中でも、樹脂層Aの平滑性を高める観点から、溶液又は液体状の樹脂層Aの原料を基材フィルム上にコーターで塗工した後、乾燥する方法で樹脂層Aを形成する方法か、原料を押出機に供給し、Tダイなどのスリット状口金から溶融押出させて冷却ドラムなどの上で固化させてフィルム状に成形した後、一軸または二軸で延伸したものを樹脂層Aとする方法のいずれかの方法で行うのが好ましい。基材フィルム上に樹脂層Aを形成した場合には、層Bの形成を行う前に樹脂層Aを基材フィルムから剥離してもよいし、しなくてもよいが、搬送性を高める観点から、剥離せずに層Bの形成を行うのが好ましい。
樹脂層Aの一方の面に層Bを形成する方法としては、溶液または液体状の層Bの原料を樹脂層A上にコーターで塗工した後乾燥する方法や、層Bの原料を樹脂層A上に真空蒸着する方法が挙げられる。形成された層Bの突起高さを高める観点から、溶液または液体状の層Bの原料を樹脂層A上にコーターで塗工した後乾燥する方法で形成するのが好ましい。
樹脂層Aの一方の面に層Bの原料を塗工して形成する場合に、樹脂層Aの塗工面に事前にコロナ放電処理等の表面処理を行っても良い。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、塗料組成物の塗工面へ濡れ性を向上させ、塗料組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することが容易となる。得られた樹脂層Aと層Bからなるフィルムに金属層を積層する場合には、その方法は特に限定されるものではないが、真空蒸着によって金属を層B上に蒸着するのが好ましい。蒸着に用いる金属としてはアルミニウムが好ましい。このとき、アルミニウムと同時あるいは逐次に、例えば、ニッケル、銅、金、銀、クロムおよび亜鉛などの他の金属成分を蒸着することもできる。樹脂層Aと層Bからなるフィルムへの金属層積層を蒸着によって行う場合、蒸着前にフィルムの蒸着面にコロナ放電処理等の表面処理を行っても良い。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、蒸着した金属のフィルムへの密着性を高めることができる。
層Bを形成する際には、層Bの成分を架橋するのが好ましい。架橋する方法は特に限定されるものではないが、反応点を複数持つ化合物を層Bの原料として用い、熱や、紫外線により架橋反応をさせる方法が挙げられる。反応点を複数持つ化合物としては、ビニル基を2つ以上持つアクリレート、エポキシ基を2つ以上持つエポキシ、メラミンとホルムアルデヒドの縮合物などが挙げられる。このうち、層Bの酸素濃度を高くしてセルフヒーリング性を高める観点から、ビニル基を2つ以上持つアクリレートを用いるのが好ましい。架橋反応を促進するために、層Bを形成する際に酸や塩基などの触媒や、カチオン開始剤、アニオン開始剤、ラジカル開始剤などの添加剤を反応点の反応性に合わせて添加してもよい。例えば、ビニル基を2つ以上持つアクリレートを層Bの原料として用いる場合には、紫外線によりラジカルを生成するラジカル開始剤を添加した塗液を作成し、樹脂層Aに該塗液を塗工した後紫外線を照射することで架橋反応を促進することができる。ラジカル開始剤としては、特に限定されるものではないが、紫外線によりラジカルを生成する、ヒドロキシアルキルフェノン型開始剤、アミノアセトフェノン型開始剤を用いることができる。層Bを架橋することで、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの耐熱性を高めることが容易となる。
以下、実施例を用いて本発明のフィルムコンデンサ用フィルムについて具体的に説明する。なお、特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
(1)フィルム厚みT(F)
フィルムの任意の10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて測定した。その10箇所の厚みの算術平均値をフィルム厚みT(F)とした。
(2)樹脂層Aの厚みT(A)、層Bの厚みT(B)
ミクロトーム法を用い、フィルムの幅方向−厚み方向に断面を有する幅5mmの超薄切片を作製し、該断面に白金コートをして観察試料とした。次に、日立製作所製電界放射走差電子顕微鏡(S−4800)を用いて、フィルム断面を加速電圧1.0kVで観察し、観察画像の任意の箇所から樹脂層Aの厚み、層Bの厚みを計測した。なお、2層のうち厚い方の層を樹脂層A、薄い方の層を層Bとし、観察倍率は10,000倍とした。さらに、同様の計測を合計20回行い、その平均値を樹脂層Aの厚みT(A)、層Bの厚みT(B)として用いた。
(3)樹脂層Aの融点、ガラス転移温度
(2)に記載の手順で決定された樹脂層Aを5mg量り取り、示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で以下のプログラムに従い加熱冷却した。
<プログラム>
ステップ1:25℃から330℃まで10℃/minで加熱した後、5分間330℃に保つ。
ステップ2:330℃から25℃まで−10℃/minで冷却した後、5分間25℃に保つ。
ステップ3:25℃から330℃まで10℃/minで加熱した後、5分間330℃に保つ。
ステップ3の昇温過程において、330℃から低温側に向けてDSCチャートを見た時に、DSCチャートの傾きがベースラインの傾きから変化している温度の最大値をT_1とし、T_1未満の温度でDSCチャートの傾きがベースラインの傾きに戻った温度の最小値をT_2とし、以下の計算式により得られた値Tgを樹脂層Aのガラス転移温度とした。
<計算式>
Tg=(T_1+T_2)/2 。
また、ステップ3で得られる吸熱カーブのピーク温度を樹脂層Aの融点とし、複数のピーク温度が観測できる場合には、最も高温の温度を樹脂層Aの融点とした。但し、ステップ3で得られる吸熱カーブにピークが観測されず、かつ、ステップ3の昇温過程において、330℃から低温側に向けてDSCチャートを見た時に、25℃以上の領域でDSCチャートの傾きがベースラインの傾きから変化していなかった場合、樹脂層Aの融点、ガラス転移温度をともに330℃以上とした。ステップ3で得られる吸熱カーブにピークが観測されなかったが、ガラス転移温度が330℃未満であった場合、融点なしとした。ステップ3の昇温過程において、330℃から低温側に向けてDSCチャートを見た時に、25℃以上の領域でDSCチャートの傾きがベースラインの傾きから変化していなかったが、融点が330℃未満であった場合、ガラス転移温度なしとした。それぞれ、該当する場合表1〜表3においては「−」として記載した。
(4)樹脂層A、層Bに含有される水素原子H、炭素原子C、硫黄原子S、ケイ素原子Si、窒素原子Nおよび酸素原子Oの原子分率と、層Bの酸素原子O、ケイ素原子Siの含有量
フィルムの樹脂層A側の表面をラザフォード後方散乱/水素前方散乱分析同時測定法(National Electrostatics Corporation製Pelletron 3SDH)により分析し、樹脂層Aの水素原子H、炭素原子C、硫黄原子S、ケイ素原子Si、窒素原子Nおよび酸素原子Oの原子収率Y(H)、Y(C)、Y(S)、Y(Si)、Y(N)およびY(O)を得た。得られた値から、次式に基づいて得られた値を樹脂層Aに含有される水素原子H、炭素原子C、硫黄原子S、ケイ素原子Si、窒素原子Nおよび酸素原子Oの原子分率とした。
<計算式>
Y(All)=Y(C)+Y(S)+Y(Si)+Y(N)+Y(O)+Y(H)とした。
水素原子Hの原子分率=Y(H)/Y(All)
炭素原子Cの原子分率=Y(C)/Y(All)
硫黄原子Sの原子分率=Y(S)/Y(All)
ケイ素原子Siの原子分率=Y(Si)/Y(All)
窒素原子Nの原子分率=Y(N)/Y(All)
酸素原子Oの原子分率=Y(O)/Y(All)。
層Bについても、ラザフォード後方散乱/水素前方散乱分析同時測定法により分析する表面を層B側の表面としたこと以外は同様の手順で分析、各値の計算を行い、層Bに含有される水素原子H、炭素原子C、硫黄原子S、ケイ素原子Si、窒素原子Nおよび酸素原子Oの原子分率とした。また、層Bの酸素原子O、ケイ素原子Siの含有量を次式に基づいて算出した。なお、式中の原子分率Y(C)、Y(S)、Y(Si)、Y(N)、Y(O)、Y(H)はいずれも層Bのものである。
<計算式>
酸素原子Oの含有量(質量%)=100×16.0×Y(O)/(12.0×Y(C)+32.1×Y(S)+28.1×Y(Si)+14.0×Y(N)+16.0×Y(O)+1.01×Y(H))
ケイ素原子Siの含有量(質量%)=100×28.1×Y(Si)/(12.0×Y(C)+32.1×Y(S)+28.1×Y(Si)+14.0×Y(N)+16.0×Y(O)+1.01×Y(H))
なお、測定の条件は以下の通り。
入射イオン: 4He++
入射エネルギー: 2300keV
入射角: 75deg
散乱角: 160deg
反跳角: 30deg
試料電流: 4nA
ビーム径: 2mmφ
面内回転: 無
照射量: 0.5μC×20点
(5)XA、XB
(4)に記載の方法で得られた各値を用いて、下記式(イ)によりXBを、下記式(ロ)によりXAを算出した。
式(イ) XB=(層Bの炭素原子Cの原子分率+層Bの窒素原子Nの原子分率+層Bの硫黄原子Sの原子分率+層Bのケイ素原子Siの原子分率)/(層Bの水素原子Hの原子分率+層Bの酸素原子Oの原子分率)
式(ロ) XA=(樹脂層Aの炭素原子Cの原子分率+樹脂層Aの窒素原子Nの原子分率+樹脂層Aの硫黄原子Sの原子分率+樹脂層Aのケイ素原子Siの原子分率)/(樹脂層Aの水素原子Hの原子分率+樹脂層Aの酸素原子Oの原子分率)。
(6)動摩擦係数(μdaa、μdab、μdbb)
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS K 7125(1999)に準じて、荷重200g、25℃、65%RHにて動摩擦係数を測定した。なお、フィルムの一方の面をα面、他方の面をβ面としたときに、測定はα面同士を重ねた場合、β面同士を重ねた場合の2つの場合について測定を行った。測定はそれぞれ3回行い、得られた値の平均値を算出し、各面同士で測定した場合の動摩擦係数とした。α面、β面のうち、各面同士で重ねて測定した際の動摩擦係数が大きい方の表面をa面、小さい方の表面をb面としたときに、a面同士の動摩擦係数をμdaa、b面同士の動摩擦係数をμdbbとした。さらに、a面とb面を重ねた場合について測定を3回行い、得られた値の平均値を算出し、μdabとした。なお、各場合について測定時にロードセルで検出された摩擦力が5.9Nを超えたときには、測定を中断し、その場合の動摩擦係数の測定値を>3.0とした。同じ面同士で測定した場合の動摩擦係数が等しいか、>3.0であった場合、後述する方法で測定した算術平均粗さSaが高い方の面をb面とした。
(7)算術平均粗さSa,負荷面積率Smr1、突出山部高さSpk、最大谷深さSv
各パラメーターは、ISO 25178-2 : 2012、ISO 25178-3:2012に準じて測定、算出した。ただし、測定は走査型白色干渉顕微鏡「VS1540」(株式会社日立ハイテクサイエンス製、測定条件と装置構成は後述する)を使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を補完処理(完全補完)し、多項式4次近似にて面補正した後、メジアンフィルタ(3×3ピクセル)で処理したものを測定した。また、S-filterのS-Filter Nesting Indexは0.455とした。測定は、5cm×5cmの正方形状に切ったフィルムの両面について行い、対角線の交差点を1点目の測定点(開始点)とし、開始点より4つある各角に向けて1cm離れた位置をそれぞれ2〜5点目の測定点として合計5箇所の測定位置を決め、各測定位置で測定を行い、上記の手順に従って各測定位置のSa,Smr1、Spk、Svを求め、それぞれの平均値をフィルムのSa,Smr1、Spk、Svとして採用した。また、特にa面のSpkの値をSpk-a、b面のSpk、Smr1の値をそれぞれSpk-b、Smr1-bとした。得られたSpk-aとSpk-bの値から、Spk-b/Spk-aを算出した。得られた各面のSvの値と、上述したT(F)の値からSv/T(F)を算出した。
<測定条件と装置構成>
対物レンズ:10x
鏡筒:1x
ズームレンズ:1x
波長フィルタ:530nm white
測定モード:Wave
測定ソフトウェア:VS−Measure 10.0.4.0
解析ソフトウェア:VS−Viewer10.0.3.0
測定領域:561.1μm×561.5μm
画素数:1,024×1,024。
(8)SH不良率、セルフヒーリング性
層B側の表面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。なお、層Bを有さないフィルムには、b面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。次いでコロナ放電処理面にベルジャー式真空蒸着装置で気圧1.0×10−3Pa、フィラメント電圧2.6kVで市販のアルミニウムを蒸着させ、50nmの蒸着膜を形成させ、金属層積層フィルムを得た。得られた金属層積層フィルムを、長手方向を長辺とする12cm×7.5cmの長方形状に切り、試験片とした。
1m×2mの銅板の上に、10cm角の厚み1mmの“テフロン”(登録商標)シートを設置した。“テフロン”(登録商標)シートの上に、試験片の短辺と、“テフロン”(登録商標)シートの一辺が並行になり、かつ、試験片の片側の短辺から端1cmの領域が“テフロン” (登録商標)シート上に乗るよう試験片を設置した。試験片の“テフロン”(登録商標)シートに乗っている部分を2cm程度挟み込むようにして、5cm角の板状の導電性ゴム製電極を“テフロン”(登録商標)シートの上に乗せた。さらに、ゴム電極と試験片と“テフロン”(登録商標)シートが重なっている領域の上に重心が来るように3cmφの円柱の電極をゴム電極上に設置した。円柱の電極と銅板にそれぞれ電線を介してDC電源を接続し、初期電圧として100VDCの電圧を印加し、該電圧で15秒経過後にステップ状に100VDC/30秒で初期電圧+800VDCまで徐々に印加電圧を上昇させることを繰り返す所謂ステップアップ試験を行い、金属層積層フィルムに複数の絶縁破壊痕を発生させた。
発生した絶縁破壊痕を目視観察し、2つ以上の絶縁破壊痕が重なっている絶縁破壊痕を1つのSH不良箇所、そうでない絶縁破壊痕を1つの正常箇所として、それぞれの数を求め、次式によりSH不良率を求めた。同様の測定を2回行い、平均値をフィルムのSH不良率として採用した。なお、絶縁破壊が発生しなかった場合、初期電圧を900VDCとして同様の測定を行った。初期電圧10,000VDCでも絶縁破壊が発生しなかった場合、SH不良率は0%とした。
<計算式>
SH不良率(%)=100×(SH不良箇所の個数)/(正常箇所の個数+SH不良箇所の個数)
フィルムのSH不良率を基に、セルフヒーリング性について以下の通り評価した。
S:SH不良率が16%以下である。
A:SH不良率が16%より大きく、かつ、22%以下である。
B:SH不良率が22%より大きく、かつ、30%以下である。
C:SH不良率が30%より大きい。
(9)加工性の評価
層B側の表面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。なお、層Bを有さないフィルムには、b面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。次いでコロナ放電処理面にベルジャー式真空蒸着装置で気圧1.0×10−3Pa、フィラメント電圧2.6kVで市販のアルミニウムを蒸着させ、50nmの蒸着膜を形成させ、金属層積層フィルムを得た。得られた金属層積層フィルムを、長手方向を長辺とする12cm×7.5cmの長方形状に切り、試験片とした。東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS K 7125(1999)に準じて、荷重200g、25℃、65%RHにて得られた金属層積層フィルムの、金属蒸着面と、金属を蒸着していない面との間の動摩擦係数測定を3回行い、得られた値の平均値を金属積層フィルムの動摩擦係数μMとした。なお、測定時にロードセルで検出された摩擦力が5.9Nを超えたときには、測定を中断し、その場合のμMの測定値を>3.0とした。得られたμMを基に、フィルムの加工性を以下の基準で判定した。
S:μMが0.60以下である。
A:μMが0.60より大きく、0.90以下である。
B:μMが0.90より大きく、かつ、1.5以下である。
C:μMが1.5より大きい。
(10)誘電正接
JIS C2138−2007に準じて、誘電正接を測定した。まず、フィルムを6cm×6cmの正方形状に切り出し、層B側の表面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。なお、層Bを有さないフィルムには、b面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。次いでコロナ放電処理面にベルジャー式真空蒸着装置で気圧1.0×10−3Pa、フィラメント電圧2.6kVで市販のアルミニウムを蒸着させ、5.0cm径、50nm厚みの円形薄膜電極を形成させた。続いて、フィルムのコロナ放電処理を行わなかった表面に、コロナ放電処理面に形成した電極の中心と中心位置が一致するように、ベルジャー式真空蒸着装置で気圧1.0×10−3Pa、フィラメント電圧2.6kVで市販のアルミニウムを蒸着させ、5.6cm径、50nm厚みの円形薄膜電極を形成させ、試験片を得た。得られた試験片を、E4980A プレシジョンLCRメータ(Keysight Technologies製)にて、接触法、23℃、相対湿度50%、周波数10kHzでn=5で誘電正接を測定し、得られた値の平均値を当該フィルムの誘電正接とした。
(11)150℃でのフィルム絶縁破壊電圧の評価
150℃に保温されたオーブン内でフィルムを1分間加熱後、その雰囲気中でJIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて測定した。ただし、下部電極については、JIS C2330(2001)7.4.11.2のB法記載の金属板の上に、同一寸法の株式会社十川ゴム製「導電ゴムE−100<65>」を載せたものを使用した。絶縁破壊電圧試験(上記測定)を30回行い、得られた値をフィルムの厚み(上記(1)で測定)で除し、(V/μm)に換算して得られた計30点の測定値(算出値)のうち、最大値から大きい順に5点と最小値から小さい順に5点を除いた20点の平均値を求め、これを150℃でのフィルム絶縁破壊電圧とした。得られた150℃でのフィルム絶縁破壊電圧から、以下の通り150℃でのフィルム絶縁破壊電圧の評価を行った。
S:150℃でのフィルム絶縁破壊電圧が270V/μm以上であった。
A:150℃でのフィルム絶縁破壊電圧が240V/μm以上270V/μm未満であった。
B:150℃でのフィルム絶縁破壊電圧が210V/μm以上240V/μm未満であった。
C:150℃でのフィルム絶縁破壊電圧が100V/μm以上210V/μm未満であった。
D:150℃でのフィルム絶縁破壊電圧が100V/μm未満もしくはフィルムの収縮が大きく評価不可であった。
(12)フィルムコンデンサ特性の評価(150℃での信頼性)
フィルムの層B側の表面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。なお、層Bを有さないフィルムには、b面に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。次いでコロナ放電処理面に、(株)アルバック製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が10Ω/sqで長手方向に垂直な方向にマージン部を設けた、いわゆるT型マージン(マスキングオイルにより長手方向ピッチ(周期)が17mm、ヒューズ幅が0.5mm)を有する蒸着パターンで蒸着を施し、スリット後に、フィルム幅50mm(端部マージン幅2mm)の蒸着リールを得た。次いで、このリールを用いて(株)皆藤製作所製素子巻機(KAW−4NHB)にてフィルムコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、減圧下、130℃の温度で8時間の熱処理を施し、リード線を取り付けてフィルムコンデンサ素子に仕上げた。こうして得られたコンデンサ素子10個を用いて、150℃高温下でコンデンサ素子に250VDCの電圧を印加し、該電圧で10分間経過後にステップ状に50VDC/1分で徐々に印加電圧を上昇させることを繰り返す所謂ステップアップ試験を行った。静電容量が初期値に対して12%以下に減少するまで電圧を上昇させた後に、コンデンサ素子を解体し破壊の状態を調べて、フィルムコンデンサ特性を以下の通り評価した。
S:フィルムコンデンサ素子形状の変化は無く貫通状の破壊は観察されなかった。
A:フィルムコンデンサ素子形状の変化は無くフィルム5層以内の貫通状破壊が観察された。
B:フィルムコンデンサ素子形状の変化は無くフィルム5層〜7層を貫通する貫通状破壊が観察された。
C:フィルムコンデンサ素子形状に変化が認められる若しくはフィルム7層〜14層の貫通状破壊が観察された。
D:フィルムコンデンサ素子形状が大きく変化し破壊した、若しくはフィルムの加工性が悪く、フィルムコンデンサ素子を作製することができなかった。
−:フィルムコンデンサ特性の評価を行わなかった。
Sは問題なく使用でき、Aは条件次第で使用可能であり、Bは実用上の性能に劣るが使用可能であり、Cは条件次第で実用上の性能に劣るが使用可能である。Dは実質コンデンサ用フィルムとしての使用が困難である。
〔樹脂、フィルム、塗液〕
ポリフェニレンスルフィド系樹脂顆粒1(PPS顆粒1):
工程撹拌機付きの1リットルオートクレーブに、47質量%水硫化ナトリウム1.00モル、96質量%水酸化ナトリウム1.02モル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.56モル、酢酸ナトリウム0.46モル、及びイオン交換水140gを仕込み、250rpmで撹拌しつつ常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、212gの水および4gのNMPを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)1.00モル、NMP1.32モルを加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、240rpmで撹拌しながら、200℃〜235℃まで0.6℃/分の速度で昇温して、235℃に到達後、235℃で反応を95分間継続した。その後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温して100分保持した。このとき、270℃に到達した後、1モルの水を15分かけて系内に注入した。270℃で100分保持した後、1.0℃/分の速度で200℃まで冷却し、その後室温の冷却水をオートクレーブにかけることで室温近傍まで冷却した。続いて、内容物を取り出し、0.4リットルのNMPで希釈して85℃で30分撹拌した後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別した。さらに、得られた固形物に、0.5リットルのNMPを加えて85℃で30分撹拌し、固形物を濾別した。その後、得られた固形物を0.9リットルの温水で3回洗浄して濾別した。こうして得られた粒子(固形物)に1リットルの温水を加えて2回洗浄、濾別してポリマー粒子を得た。これを、80℃で熱風乾燥した後、120℃で減圧乾燥し、融点が280℃、重量平均分子量70,000のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂の顆粒(PPS顆粒1)を得た。
フィルム用PPS原料1(PPS1):
PPS顆粒1を、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した。その後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用PPS原料1(PPS1)とした。
フィルム用PPS原料(PPS2):
PPS顆粒1を100質量部と、平均粒径が0.7μmの炭酸カルシウム粒子1(日東粉化工業社製“NITOREX”#30PS)を0.05質量部と、ステアリン酸カルシウムを0.2質量部とを混合して得られた混合粉末をペレット化し、PPSを主成分とする樹脂ペレットを調製した。得られた樹脂ペレットを320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した。その後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用PPS原料2(PPS2)とした。
PPSフィルム1:
原料として、PPS1を180℃で3時間にわたって真空乾燥した。次いで、押出機に供給し、窒素雰囲気下、320℃の温度で溶融させ、Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融単層シートとし、これを表面温度25℃に保たれた回転速度4.0m/minのキャストドラム上に吐出し、静電印加法で密着させて冷却固化することによりキャストし、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して延伸温度103℃でフィルムの長手方向に3.1倍の倍率で延伸した。その後、得られた一軸延伸フィルムの幅方向両端部をクリップで担持してテンターに導き、延伸温度100℃で幅方向に3.3倍の倍率で延伸した。引き続いて280℃で熱処理を行った後、2%弛緩処理を行い、室温まで冷却した。次いでフィルム表面(キャストドラム接触面側)に25W・min/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、その後、フィルムエッジを除去し、厚み4.5μmの二軸延伸PPSフィルムを得た。
PPSフィルム2:
原料としてPPS1に代えてPPS2を用いた以外はPPSフィルム1と同様にして、厚み4.6μmの二軸延伸PPSフィルムを得た。
PPSフィルム3:
キャストドラムの速度を3.0m/minにした以外はPPSフィルム1と同様にして、厚み6.0μmの二軸延伸PPSフィルムを得た。
塗液1:
70gのアクリレート(I)(商品名“ビスコート”#300、ペンタエリスリトールとアクリル酸の縮合物、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを45質量%と、ペンタエリスリトールトリアクリレートを35質量%とを含有、大阪有機化学工業株式会社製)と、50gの酢酸セルロース(i)(富士フイルム和光純薬株式会社製、酢化度54%)と、880gの2−ブタノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、200mgのOmnirad184(IGM Resins B.V.社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)とを混合した塗液。
塗液2:
70gのアクリレート(II)(商品名“EBECRYL”(登録商標) 150,ダイセル・オルネクス株式会社製、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート)と、30gの酢酸セルロース(i)と、900gの2−ブタノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、200mgのOmnirad184(IGM Resins B.V.社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)とを混合した塗液。
塗液3:
80gのアクリレート(I)と、11gのエポキシ樹脂(商品名“EPICLON”(登録商標)850、活性基当量189eq/g、DIC株式会社製)と、9.0gの活性エステル(商品名“HPC−8000−65T”、活性基当量223eq/g、DIC株式会社製)と、900gの2−ブタノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、200mgのOmnirad184(IGM Resins B.V.社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)と、10mgの4−ジメチルアミノピリジン(東京化成工業株式会社製)とを混合した塗液。
塗液4:
65gのアクリレート(I)と、35gのテルペンフェノール樹脂(商品名"TH130"、ヤスハラケミカル社製)と、900gの2−ブタノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、200mgのOmnirad184(IGM Resins B.V.社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)とを混合した塗液。
塗液5:
99.9gのニトリルブタジエンゴム(商品名“Nipol”(登録商標) DN003、日本ゼオン株式会社製、ムーニー粘度77.5)と、100mgの炭酸カルシウム粒子2(商品名” CALUCEO P015S0“、粒子径150nm)と、900gの2−ブタノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)とを混合した塗液。
塗液6:
54gのエポキシ樹脂(商品名“EPICLON” (登録商標)850、活性基当量189eq/g、DIC株式会社製)と、45.5gの活性エステル(商品名“HPC−8000−65T”、活性基当量223eq/g、DIC株式会社製)と、7.0gのシリカ粒子(y)(平均粒子径0.1μm、“シーホスター”(登録商標)KE-P10、日本触媒株式会社製)と、900gの2−ブタノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、10mgの4−ジメチルアミノピリジン(東京化成工業株式会社製)とを混合した塗液。
塗液7:
93gのポリエーテルイミド(商品名"ULTEM"(登録商標) Resin 1010、SABIC社製、ガラス転移温度217℃)と、7.0gのシリカ粒子(y)(平均粒子径0.1μm、“シーホスター”(登録商標)KE-P10、日本触媒株式会社製)と、900gのN−メチルピロリドン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を混合した塗液。
(実施例1)
ポリエーテルイミド樹脂(商品名"ULTEM"(登録商標) Resin 1010、SABIC社製、ガラス転移温度217℃)15gをN-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬株式会社製)85g中に溶解させ、ポリエーテルイミドのNMP溶液を作製した。これを、市販のポリイミドフィルム(厚み140μm)上に#20のメタバーを用いて塗工し、150℃のオーブンで15分間乾燥させ、ポリイミドフィルム上にポリエーテルイミド樹脂層(樹脂層A)を形成させた。続いて、テルペンフェノール樹脂(商品名"TH130"、ヤスハラケミカル社製)2.1gと、シリカ粒子(x)(平均粒子径0.7μm、“サンシール”(登録商標)SS−07、株式会社トクヤマ製)25mgと、2−ブタノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)12gを混合し、テルペンフェノール樹脂を溶解させた塗液を作成した。これを、ポリイミドフィルム上のポリエーテルイミド樹脂層上に#4のメタバーを用いて塗工し、100℃のオーブンで1分間乾燥させ、ポリエーテルイミド樹脂層上にコート層(層B)を形成させた。ポリエーテルイミド樹脂層とコート層の積層体をポリイミドフィルムから剥離し、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
テルペンフェノール樹脂とシリカ粒子と2−ブタノンの混合量を、それぞれ0.70g、8mg、14.2gとした以外は実施例1と同様にしてフィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
PPSフィルム1(樹脂層A)のコロナ処理を施した面上に、バーコーターを用いて硬化後の層Bの膜厚が0.10μmとなるように塗液1を均一に塗工した後、90℃の乾燥炉で乾燥時間が1分になるよう乾燥させた。続いて、UV照射装置に導入し、照度50mW/cm、照射量0.1J/cm、酸素濃度100ppmの条件で塗膜を硬化させて層Bを形成した後、樹脂層Aと層Bの積層体を巻き取り、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
塗液1に代えて塗液2を使用した以外は、実施例3と同様にして、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
塗液1に代えて塗液3を使用し、乾燥炉での乾燥温度を120℃とした以外には、実施例3と同様にして、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
(実施例6)
150gのポリエーテルイミド樹脂を850gN-メチル-2-ピロリドン中に溶解させ、ポリエーテルイミドのNMP溶液を作製した。これを、市販のポリイミドフィルム(厚み140μm)上にバーコーターを用いて乾燥後のポリエーテルイミド層の厚みが3μmになるよう均一に塗工し、150℃の乾燥炉に導入して乾燥時間が5分間になるよう乾燥させ、ポリイミドフィルム上にポリエーテルイミド樹脂層(樹脂層A)を形成させた。得られた積層体の樹脂層A側の表面にバーコーターを用いて硬化後の層Bの厚みが0.1μmとなるように塗液4を均一に塗工した後、90℃の乾燥炉で乾燥時間が1分になるよう乾燥させた。続いて、UV照射装置に導入し、照度50mW/cm、照射量0.1J/cm、酸素濃度100ppmの条件で塗膜を硬化させて層Bを形成させた。続いて、ポリイミドフィルムから樹脂層Aと層Bの積層体を剥離して巻き取り、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
(実施例7)
塗液1に代えて塗液6を使用した以外は、実施例3と同様にして、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
(実施例8)
塗液1に代えて塗液7を使用し、乾燥炉の温度を90℃から150℃にし、乾燥時間を1分から5分とした以外は、実施例3と同様にして、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
(実施例9)
酢酸セルロース(i)100gをメチルエチルケトン900g中に溶解させ、酢酸セルロースのメチルエチルケトン溶液を作製した。これを、市販のポリイミドフィルム(厚み140μm)上にバーコーターを用いて乾燥後の酢酸セルロース層の厚みが3.2μmとなるように塗工し、100℃の乾燥炉に導入して乾燥時間が2分間になるよう乾燥させ、ポリイミドフィルム上に酢酸セルロース樹脂層(樹脂層A)を形成させた。続いて、得られた積層体の樹脂層A側の表面にバーコーターを用いて硬化後の層Bの厚みが0.10μmとなるように塗液7を塗工し、100℃の乾燥炉に導入して乾燥時間が1分間になるよう乾燥させ、樹脂層A上に層Bを形成させた。ポリイミドフィルムから樹脂層Aと層Bの積層体を剥離して巻き取り、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
(比較例1)
樹脂層Aを形成した後の層Bを形成する工程を省略した以外は実施例1と同様にしてA層のみからなるフィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
(比較例2)
PPSフィルム1(樹脂層A)のコロナ処理を施した面上にバーコーターで硬化後の層Bの厚みが0.50μmとなるように塗液5を塗工し、90℃のオーブンで1分乾燥させて層Bを形成させ、フィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
(比較例3)
PPSフィルム1をフィルムコンデンサ用フィルムとして、評価を行った。評価結果を表3に示す。
(比較例4)
PPSフィルム2をフィルムコンデンサ用フィルムとして、評価を行った。評価結果を表3に示す。
(比較例5)
樹脂層Aの成形材料としてポリエーテルイミド樹脂〔SABICイノベーティブプラスチック社製 品名:“ULTEM”(登録商標)1010−1000−NB(以下、「1010−1000」と略す)〕を用意し、この成形材料を150℃に加熱した除湿熱風乾燥機〔松井製作所社製 商品名:マルチジェット MJ3〕中に12時間放置して乾燥させ、この成形材料の含水率が300ppm以下であることを確認後、成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練するとともに、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出してポリエーテルイミド樹脂製のフィルムを帯形に押出成形し、長さ1000m、幅65cmのポリエーテルイミド樹脂層を作製した。単軸押出成形機のシリンダー温度は360〜380℃、Tダイスの温度は385℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は380℃にそれぞれ調整した。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際、不活性ガスである窒素ガス18L/分を供給した。形成したポリエーテルイミド樹脂層を、算術平均粗さ(Ra)が0.44〜0.47μmのシリコーンゴムを備えた一対の圧着ロール、周面に算術平均粗さ(Ra)が1.28μmの凸柄模様を備えた205℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、各圧着ロールと金属ロールとに挟持させて冷却した。圧着ロールと金属ロールとにポリエーテルイミド樹脂層を挟持させることにより、ポリエーテルイミド樹脂層の表裏面に微細な凹凸部をそれぞれ複数形成させた。得られた表面に微細な凹凸部のあるポリエーテルイミド樹脂層を樹脂層Aとして、ジパラキシリレンを180℃、10Paの条件下で気化させ、680℃、10Paの条件下で熱分解し、熱分解して得られたジラジカルパラキシリレンモノマーを35℃、10Paの条件下で樹脂層Aの金属ロール面側に重合させることにより、ポリパラキシリレン樹脂からなる層Bを形成した。得られた積層体を巻き取ってフィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
(比較例6)
チーグラー・ナッタ触媒にて重合された、メソペンタッド分率が0.98、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分である直鎖状ポリプロピレン樹脂を単軸の溶融押出機に供給し、240℃で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、溶融ポリマーをTダイより吐出させ、該溶融シートを95℃に保持されたキャスティングドラム上で、静電印加により密着させ冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、該シートを複数のロール群にて徐々に145℃に予熱し、引き続き145℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.0倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、165℃の温度で幅方向に8倍延伸し、次いで1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に8%の弛緩を与えながら130℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま140℃で熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、フィルム厚み3.0μmのフィルムを巻き取ってフィルムコンデンサ用フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
(比較例7)
PPSフィルム3を樹脂層Aとして、その片面に真空蒸着法にシリコーン組成物(信越化学工業社製、シリコーン X−40−2655A)を厚みが0.1μmになるように蒸着した。続けてコート層面に、O2ガスを微量供給しながら250kHz、5kWのパルスDC電源を用いてグロー放電を発生してグロー放電処理を施し(処理電力密度 E=27.8W・min/m2)、層Bを形成した。得られた積層体を巻き取ってフィルムコンデンサ用フィルムを得た。
Figure 2021154735
Figure 2021154735
Figure 2021154735
なお、実施例1、実施例2、比較例1については枚葉にてフィルムを作成しており、コンデンサ素子加工を行うのに十分な長さのフィルムが得られないため、コンデンサ素子加工とフィルムコンデンサ特性の評価を行わなかった。
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に適用でき、特に高温時の耐電圧性と信頼性が必要な高電圧用コンデンサ用途に利用できる。

Claims (14)

  1. 融点180℃以上かつ/またはガラス転移温度130℃以上の樹脂層Aと、少なくとも一方のフィルム最外層に、該樹脂層Aより厚みが薄い層Bを有し、2つある最外層表面のうち、同じ面同士で動摩擦係数を測定した際、動摩擦係数が大きい方の表面をa面、小さい方の表面をb面とし、前記a面同士の動摩擦係数をμdaa、前記a面と前記b面との動摩擦係数をμdabとしたとき、μdaa>μdabかつ、μdab≦1.2を満たし、少なくとも一方の最外層表面が、突出山部とコア部を分離する負荷面積率Smr1≧12%を満たす、フィルムコンデンサ用フィルム。
  2. 誘電正接が2.0%以下である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
  3. 前記層Bの酸素原子含有量が1.0質量%以上である、請求項1または2のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
  4. 前記層B中のケイ素原子Siの含有量が27質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
  5. 前記層Bが次の条件(i)を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
    条件(i):前記層Bに含有される水素原子H、炭素原子C、硫黄原子S、ケイ素原子Si、窒素原子Nおよび酸素原子Oの原子分率から次式(イ)に基づき計算される値XBが0.90以下である。
    式(イ) XB=(前記層Bの炭素原子Cの原子分率+前記層Bの窒素原子Nの原子分率+前記層Bの硫黄原子Sの原子分率+前記層Bのケイ素原子Siの原子分率)/(前記層Bの水素原子Hの原子分率+前記層Bの酸素原子Oの原子分率)
  6. 前記a面の突出山部高さSpk-aと前記b面の突出山部高さSpk-bとの比が、Spk-b/Spk-a≧2.0を満たし、かつ、前記b面の突出山部とコア部を分離する負荷面積率Smr1-b≧12%を満たす、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
  7. フィルム厚みをT(F)としたとき、両方の最外層表面の最大谷深さSvが、いずれもSv/T(F)<0.30を満たす、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
  8. 前記層Bが、互いに非相溶の2つ以上の成分を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
  9. 前記樹脂層Aが、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂のうち少なくとも1つの樹脂を50質量%以上100質量%以下含有する、請求項1〜8のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
  10. 前記層Bが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂のうち少なくとも1つの樹脂を50質量%以上100質量%以下含有する、請求項1〜9のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用フィルムの少なくとも一方の最外層の表面に金属層を有する、フィルムコンデンサ用金属層積層フィルム。
  12. 前記樹脂層A、前記層B、前記金属層をこの順に有する、請求項11に記載のフィルムコンデンサ用金属層積層フィルム。
  13. 前記樹脂層Aの一方の面にのみ前記層Bを有し、前記層B側に前記金属層を有し、2つある最外層表面のうち、同じ面同士で測定した動摩擦係数が大きい方の表面をa面、小さい方の表面をb面としたときに、前記b面が前記樹脂層Aから見て前記層B側にある、請求項12に記載のフィルムコンデンサ用金属層積層フィルム。
  14. 請求項11〜13のいずれかに記載のフィルムコンデンサ用金属層積層フィルムを用いて成る、フィルムコンデンサ。
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