JP4385693B2 - 積層体およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ポリフェニレンサルファイド(以下PPSと略称することがある)層と金属板を熱融着によって直接接合した積層体に関するもので、耐熱性、耐湿熱性および接着力に優れた電気絶縁層を有する金属に関するものである。
近年、電子部品、電子機器の急速な発達に伴い、自動車や産業機器分野では電気、電子回路、通信回路のシールド基板や放熱基板(回路基板)、絶縁基板が多用されている。これらの基板は単にシールド効果や放熱、絶縁目的のみが要求されるのではなく、耐熱性、耐湿熱性等の耐環境性に加えその環境における電気絶縁性や加工性、低価格化等の要求が厳しくなってきている。従来この分野においては、有機や無機の繊維シートにエポキシ樹脂等を含浸させたものを金属板に積層し熱硬化させたものや、ポリイミド樹脂を塗布したり、ポリイミドフィルムと金属板とをポリイミド樹脂を介して積層したもの、また金属板の表面にシリコンやエポキシ等の耐熱樹脂を塗布したものが用いられていた。
しかし、これらの積層体は下記の問題点を有していた。すなわち、前記繊維シートにエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させたものやポリイミドフィルムや同樹脂を金属板に積層したものは、熱硬化やイミド化に時間がかかり加工性が悪くコストアップすることや、樹脂自体が吸湿したりして誘電特性が悪い等の問題点がある。またシリコン、エポキシ等の耐熱樹脂を直接金属板に塗布したものは、樹脂の熱硬化等で加工に時間がかかる上、温湿度下に放置されたときの電気絶縁性の信頼性が乏しかった。
以上の状況から、耐環境性に優れ、かつ加工性に優れる(加工に時間がかからない)熱可塑性樹脂フィルムを金属板に熱融着接合することが検討されており、耐熱性、耐湿熱性、耐薬品性、電気特性(誘電特性含む)等をバランス良く兼ね備えたPPSフィルムと金属板の熱融着積層体が注目を浴びている(例えば特許文献1参照)。そのようなPPSフィルムと金属板の熱融着積層体としては、下記のものが知られている。
(1)燐青銅板にPPSフィルムを積層し、該積層体を可変コンデンサに用いたもの(例えば特許文献2参照)。
(2)二軸延伸PPSフィルム(以下PPS−BOと略称することがある)の表面にプラズマ処理やコロナ処理等を施し該PPSの融点以下の温度で熱融着したものを金属ベース回路基板に用いたもの(例えば特許文献3参照)。
(3)PPS−BOと未延伸PPSフィルム(以下PPS−NOと略称することがある)の積層フィルムのPPS−NOの面と金属板を熱融着接合したもの(例えば特許文献4参照)。
(4)二軸延伸ポリ−p−フェニレンサルファイド(以下ホモPPSと略称する場合がある)フィルムに共重合PPS層を積層したPPS積層フィルムの共重合PPS層と金属板を熱融着積層したものを金属ベース回路基板に用いたもの(例えば特許文献5参照)。
特開昭56−62121号公報 特開昭63−51618号公報 特開平1−95586号公報 特開平3−90349号公報 特開平6−91812号公報
しかしながら、上記PPSを用いた積層体、金属ベース回路基板は下記の問題を有しており、シールドや回路分野への展開が限定されていた。
すなわち、(1)および(2)の可変コンデンサや金属ベース回路基板は、PPS−BOを基本的には該ポリマーの融点以下(PPSの融点は285℃)で熱融着加工しており、金属板との密着力が弱い。可変コンデンサの場合は金属を打ち抜きその金属の両面にPPS−BOを熱融着しているので、PPS−BO同士が部分的に熱融着しており見かけ上密着力があるが、金属板とPPS−BOの接着部分の密着力はかなり弱い。また、PPS−BOを金属板に熱融着した金属ベース回路基板は上記同様の理由で密着力が弱く、特に該金属回路基板に曲げ加工や成形加工が行われると剥がれてしまう。
(3)のPPS−BOとPPS−NOの積層フィルムのPPS−NO面に金属板を積層したものは、加熱で軟化しやすいPPS−NOを使用しているため、比較的低温で熱融着が可能であるが、該積層状態で高温高湿下に長時間置かれると、PPS−NO層のストレスクラックや結晶化による機械強度の低下で電気特性が低下しやすい。PPS−NO層が結晶化等で機械強度が低下していると、特に曲げや絞り成型加工は金属と同様に常温で行われるためクラックが発生しやすい。そのため曲げや絞り成型加工して上記の環境下に晒すと絶縁性が低下しやすい。
(4)のホモPPSと共重合PPSを製膜工程で積層した二軸延伸フィルムの共重合面に金属板を融着したものは、250℃程度の低温で接着でき強固な接着力が得られる。しかし、製膜工程で得た該積層フィルムは共重合PPSの融点以上で熱処理されるため溶融して未延伸化しており上記(3)と同様の問題が発生する。また、製膜工程の該熱処理温度を低くし共重合PPS層の分子配向度を保持すると、フィルム全体の熱収縮率が大きくなり熱融着時に皺等が発生しやすく熱融着の加工性が著しく低下するという問題点があった。さらに該共重合ポリマからなるPPSフィルムは結晶化速度が速く、曲げ、絞り成型等でクラックが発生しやすい。
その他、PPSフィルムと金属板を重ね合わせてPPSの融点以上の温度で長時間熱プレスする方法が考えられるが、融点以上の高温で長時間熱プレスするとポリマーが分解して発泡してしまったり、熱架橋が進み折り曲げ加工等でクラックが入ったりする問題があった。
そこで、本発明は上記の問題点に鑑み、PPS樹脂層と金属板との密着力に優れ、容易に曲げや絞り成形ができ、かつ高温湿熱下での機械特性や電気絶縁の信頼性が低下せずPPSが持つ優れた諸特性が保持された金属板との積層体を提供せんとするもである。特に本発明の積層体はシールド板、放熱等金属ベース回路基板で折り曲げや絞り成形が必要な分野に好適に用いることができる。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、金属板の少なくとも片方の面に、ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなる樹脂層が接着剤を介することなく積層された積層体であって、樹脂層の配向度OFが0.65〜0.9の範囲であることを特徴とする積層体である。
また、上記積層体の樹脂層に更にポリフェニレンサルファイドフィルムが接着剤を介することなく積層されていることを特徴とする積層体である。
さらにポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなる樹脂層に、高温揮発分が0.02重量%以下、250℃の加熱収縮率が8%以下であるポリフェニレンサルファイドフィルムを該フィルムの融点以上の温度で熱圧着することを特徴とする積層体の製造方法である。
本発明の積層体は上記の構成としたため、PPS樹脂層と金属板との密着力に優れ、容易に曲げや絞り成形ができ、かつ高温湿熱下での機械特性や電気絶縁が低下せず、PPSが持つ優れた諸特性が保持された金属板との積層体が得られた。さらに、本発明の樹脂層は熱可塑性樹脂であり、積層後の樹脂層の硬化やイミド化等の反応に要する時間が必要なく短時間で容易に加工できる。
本発明は、PPSフィルムの融点以上の温度でPPS樹脂層と金属板とを熱融着したあとのPPS層の配向度OFを特定の範囲に制御することで前記課題を解決するものである。
本発明でいう金属板は、熱融着加工や打ち抜き、曲げ、絞り成形等の加工性の観点から、厚さが0.2〜5mmが好ましく、0.25〜3mmを用いることがより好ましい。金属としては、アルミニウム、SUS、銅などの純粋な金属や2種以上の金属の合金およびこれらの酸化物を用いることができる。また、2層以上の金属板が積層されていてもよい。該金属の表面に、酸化、別の金属原子の付加、薬品処理等の表面処理が施されていることはむしろ好ましい。該金属の表面粗さ(粗さの最大と最小差:Rt)は、5μm以下が熱融着性、絶縁の信頼性、熱圧着の加工性の点で好ましい。
ポリフェニレンサルファイドとは、PPS成分を好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上含む次式で示される構成単位からなる重合体をいう。
Figure 0004385693
かかるPPS成分が90モル%未満では、ポリマの結晶性と熱転移温度、融点などが低く、PPSを主成分とする樹脂組成物の特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性、誘電特性などを損なうことがある。より好ましくは、PPSがポリ−p−フェニレンサルファイドであることである。
上記PPS樹脂において、繰り返し単位の10モル%未満、好ましくは5モル%未満であれば、共重合可能な他のスルファイド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
本発明において、PPSを主成分とする樹脂組成物とは、PPSを60重量%以上含む組成物をいう。PPSの含有量が60重量%未満では、本発明の積層体の該組成物からなる層の機械特性、耐熱性、熱融着特性(金属との密着性)、吸湿寸法安定性、誘電特性などを損なう。また、該組成物中の残りの40重量%未満はPPS以外のポリマー、無機または有機のフィラー、滑剤、着色剤などの添加物を含むことができる。さらに、PPS組成物の溶融粘度は、温度300℃、剪断速度200sec-1のもとで、100〜50000ポイズ、より好ましくは、500〜20000ポイズの範囲である。フィルムの成形、製膜加工しやすく、また金属板との熱融着加工もしやすいためである。
本発明の積層体は、上記金属板とPPS樹脂層が接着剤を介することなく積層されたものをいう。接着剤を介することなく積層されたとは、PPS以外の樹脂、接着剤、粘着剤等の樹脂を介さず直接PPS層が金属と積層されていることをいう。接着剤や粘着剤等PPS以外の層が金属板とPPS層の界面に存在すると、PPSの特徴である耐熱性、耐湿熱性、耐薬品性、電気特性等が損なわれる。
ここで、本発明の積層体においては、上記PPS層の厚さは特に限定されないが、10〜150μmの範囲が熱融着の加工性と後で述べる該樹脂層の配向度OFが制御しやすく好ましい。すなわち、10μm未満の厚さでは熱融着加工時の熱皺や気泡が発生しやすく、金属板表面の凹凸の影響を受け絶縁の信頼性が低下する傾向にある。一方、該厚さが150μmを越えると熱融着に必要な熱量が大きくなり、後述する配向度OFの制御が難しくなり密着力が低下する傾向にある。
本発明で最も重要な因子は、PPS樹脂層の配向度OFを0.65〜0.9(より好ましくは0.7〜0.85)の範囲に制御することである。該配向度が0.9を越えるとPPS層と金属板との積層体を折り曲げたり絞り成形したときにクラックが入りやすく部分的な密着不良を起こしたり、温湿度下での絶縁性が低下してしまう。逆に該配向度が0.65未満になると金属板との密着力が乏しく該積層体を打ち抜き、折り曲げまたは絞り成型したときに剥がれてしまい本発明の目的、すなわち金属板との密着力に優れ、かつ高温湿熱下での機械特性や電気絶縁の信頼性の改善ができなくなる。
ここで、配向度OFとは、広角X線回折法で測定したEdgeおよびEndの二方向からの配向度をいい、それらの方向からのX線入射によるX線プレート写真を撮影し、PPSの結晶の(200)回折リングをマイクロデンシトメータで赤道上を半径方向に走査した時の黒化度Iφ=0゜と、同じく30度方向での黒化度Iφ=30゜との比Iφ=30゜/Iφ=0゜によって定義される。また、Edge方向とは、シート面に平行かつシートの幅方向にも平行な方向、End方向とは、シート面に平行かつ長手方向にも平行な方向をいう。本発明はこの二方向からの配向度がいずれも上記範囲に入っていなければならない。
本発明の積層体は、上記本発明の積層体のPPS層に、さらにPPSフィルムが接着剤等介さずに積層されているものが、PPS表面の小皺、凹凸等がなく外観上好ましい。絶縁の信頼性は更に向上するためである。また、樹脂層にさらに積層されるPPSフィルム層のPPSは、PPS成分が80モル%以上でも構わない。該積層体のPPS層にさらに積層されるPPSフィルムは、前述のPPS樹脂組成物を溶融押し出し成形し、二軸延伸、熱処理してなるいわゆる二軸延伸PPSフィルムが、加工時の耐熱性、機械特性等の点で特に好ましい。その理由は、第1層目のPPS層を第2層目のPPSフィルムのアンカー接着剤層の役割で、第2層目のPPSフィルムの熱融着温度が下げられ、外観性の向上、絶縁の信頼性をさらに向上させることができるためである。
次に本発明の積層体の製造方法について述べる。
まず、本発明で用いるPPSは、例えば、硫化アルカリとp−ジクロルベンゼンを極性溶媒中で高温高圧下に反応させる方法を用いることができる。特に硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンをN−メチル−ピロリドン等のアミド系高沸点極性溶媒中で反応させることが好ましい。この場合、重合度を調整するために苛性アルカリ、カルボン酸アルカリ金属塩などのいわゆる重合助剤を添加して、230〜280℃で反応させるのが最も好ましい。重合系内の圧力および重合時間は使用する助剤の種類や量および所望する重合度などによって適宜決定される。さらに、最終的に得られるフィルムの揮発分等を取り除くために重合されたポリマ(一般的に粉末状)を金属イオンを含まない水や湯、有機溶媒で充分洗浄し、重合中の副生塩、重合助剤を除去することが好ましい。
このようにして得られたPPSポリマに不活性無機粒子等を混合しPPS樹脂組成物を製造する。混合方法は、両社を混合しミキサー等でブレンドした後エクストルーダーに代表される等の方法で、溶融押出混合しながらガット状に押し出し、それをカットしてペレット化する。また、予め高濃度の添加物を溶融混合したものをペレット化し、該ペレットを添加物が混入していない別のペレットで薄めてもよい。
本発明の積層体に用いるPPSフィルムは不純物が少ない方が熱融着加工性の上で好ましい。すなわち、本発明で言う高温揮発分とはPPSフィルムの250℃で発生する揮発分と同150℃で発生する揮発分の差であり、該高温揮発分が0.02%以下であることが、該PPSと金属板を高温で熱融着したときに金属板とフィルムの界面に気泡が発生しにくく、密着力や電気絶縁性を低下させないので特に好ましい。
該高温揮発分を低減させる方法としては、上記で得たポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を減圧下(好ましくは真空度が0〜50mmHg)で120〜200℃(好ましくは160℃から195℃)でミキサーで攪拌しながら3時間以上(好ましくは5〜10時間)乾燥する。さらに、減圧下(好ましくは真空度が0〜50mmHg)で120℃から170℃で1時間以上再度乾燥させる。このように、乾燥を2段階に分けて行うことで注目している揮発分を目的の範囲内に制御することができる。このとき、上記の工程によって得られた樹脂組成物の250℃での揮発分から150℃での揮発分を引いた差が0.3重量%以下にすることで、該樹脂組成物を後述する溶融押出、キャスト、二軸延伸、熱処理によって製造されるPPSフィルムの高温揮発分を0.02%以下に制御することができる。さらに樹脂組成物を乾燥後、徐冷して室温まで戻し再度乾燥させるなど乾燥を多段階に分けて行ってもよい。ここで、該乾燥温度が200℃を越えるとポリマーが熱劣化して異物を発生させたり、乾燥原料が固まり厚み変動等フィルムの製膜に支障を来す。さらに該温度が120℃未満では本発明でいう揮発分の差を低下させる効果を発揮できない。また、重合後の粉末原料を直接上記の方法で多段乾燥してもよい。この他に以下の方法によっても注目している高温揮発分を目的の範囲内に制御することができる。
上記と同様な方法で樹脂組成物を得る。該樹脂組成物を再度ベント孔を有する押出機に供給する。好ましくは、該樹脂組成物を減圧下(好ましくは真空度が0〜50mmHg)で120〜200℃(好ましくは160℃から195℃)でミキサーで攪拌しながら3時間以上(好ましくは5〜8時間)乾燥させた後、再度押し出しを行う。さらに好ましくはこのときの乾燥を上記と同様な方法で2段階に分けて行う。このように押し出しを多段に分けて行うことでも高温揮発分は減少し目的の範囲内にすることができる。
次に本発明の積層体に用いる二軸延伸PPSフィルムの製造方法について述べる。
上記で得られたPPS樹脂組成物をエクストルーダーに代表される溶融押出機に供給し、Tダイ等のスリット状のダイから溶融されたポリマを連続的に押しだし、その後強制的に冷却し未配向非結晶状態のシートを得る。係る強制冷却の手段としては、冷却された金属ドラム上にキャストし該溶融ポリマをPPSのガラス転移点以下に冷却固化する方法が厚み斑が少なく最も好ましい。
このようにして得られたシートを二軸に延伸する。延伸方法は逐次二軸延伸法、テンター法やチューブラー法による同時二軸延伸法を用いることができる。本発明の積層体に用いる二軸延伸PPSは、積層後のPPS層の配向度OFの制御、該PPS層の皺や気泡の発生防止の上で用いる二軸延伸PPSフィルムの配向度OF(前述した定義の配向度)が0.5〜0.8の範囲に制御することが好ましい。すなわち、該配向度が0.5未満では二軸延伸フィルムのもつ内部歪みが大きく、熱収縮率によって本発明の積層体のPPS層に皺や気泡を発生させやすく、密着力の低下につながる。逆に該配向度が0.8を越えると積層後のPPS層の配向度OFが0.9を越え、曲げや絞り成形時にクラックが発生したり、温湿度下で長時間エージングしたときの電気絶縁の信頼性が低下し、本発明の目的が達成しにくくなる。上記好ましい配向度の範囲に制御する延伸条件としては、使用するポリマの性質や延伸方法によって多少異なるが、逐次二軸延伸法の場合、フィルムの長手方向、幅方向とも延伸温度が85〜105℃の範囲で、延伸倍率が1.5〜4.5の範囲が好ましい。
このようにして得られた二軸延伸PPSフィルムを、さらに定長または15%以下の制限収縮下で熱処理する(制限収縮下での熱処理が特に好ましい)。熱処理温は240℃〜ポリマの融点で時間が1〜60秒の範囲が好ましい。さらに必要に応じて長手方向または/および幅方向を低熱収縮率化を目的とした熱アニール処理を施してもよい。最終的に得られた二軸延伸PPSフィルムの250℃、10分間の加熱熱収縮率が、8%以下であることが熱融着時に発生する皺や気泡の防止や金属板との密着性の面で好ましい。ここで加熱収縮率とは、フィルムに200mm間隔のマークを入れ、金尺で正確にマーク間距離を読みとる(αmm)。該サンプルを250℃の熱風オーブンに10分間エージングした後に該サンプルのマーク間距離を上記の方法で読みとる(βmm)。上記のマーク間距離から(α−β)/α×100で算出し%で表した数値である。
また、易接着を目的にコロナ放電処理やプラズマ処理等の放電処理を行うことも好ましい。また本発明に用いる二軸延伸PPSフィルムの厚さは10〜150μmの範囲が熱融着加工性と密着力の点で好ましい。
さらに本発明の積層体の製造方法について説明する。
積層体のPPS層の配向度OFを本発明の範囲に制御するには、金属板をPPSの融点以上に加熱した直後に冷却できるプレスロールでPPSと金属板を熱融着(熱圧着)する方法が、積層体を均等に高温加熱でき熱圧着後瞬時に冷却できるため該PPS層の配向度OFが制御しやすので好ましい。該金属板の加熱温度は、後に熱圧着するフィルムの厚さにもよるが300〜400℃の範囲が熱圧着後の積層体のPPS層の配向度OFを制御しやすくて好ましい。金属板の加熱からフィルムを熱圧着までの時間は1〜10秒の範囲が好ましく、プレスロールの表面温度は10℃〜PPSのガラス転移点、熱圧着時のプレス圧は1〜10kg/cm、プレス時間は5秒以下が密着性、熱圧着後のPPS層の配向度制御や品位保持(皺、気泡等)の点で好ましい。金属板の加熱方式は、一般に熱風、電気ヒータ、加熱ロール方式が用いられ、プレスロールの冷却は水やその他の媒体が一般的に用いられる。
次に本発明のもう一つの積層体である、上記熱圧着した該PPS層にさらにPPSフィルムを積層する積層体(以下、「2層積層体」と称することがある)について述べる。上記の熱圧着装置の後に同様の加熱装置とプレスロールを設けて、上記本発明の第1層積層体のPPS層に別の二軸延伸PPSフィルムを熱圧着して該2層積層体を得ることができる。この場合はPPS同士の熱融着になるため、加熱温度は、290〜350℃の範囲で密着力は充分あり、かつ二軸延伸PPSフィルムの特性を出来るだけ維持させることができるし熱圧着後の品位が低下しない。2層目の二軸延伸PPSフィルムは本発明の配向度OFの規制はなく市販されている二軸延伸PPSフィルムを用いることができる。本発明の2層積層体は、第1層目のPPS層は密着力を向上させるためのアンカー目的で、第2層目のPPSフィルム層は二軸延伸PPSフィルムの特性を生かすことと絶縁の信頼性、積層体の品位をさらに向上させ本発明の目的をより効率よく達成させることが目的である。また2積層体の場合は、第1層目のPPS層の厚さ(x)と第2層目のPPSフィルム層の厚さ(y)の比x/yは1以上が好ましく、該PPS層の総厚(x+y)は20〜150μmの範囲が好ましい。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明する。
<物性および評価方法、評価基準>
(1)配向度OF
本発明の積層体の金属板を希酸(希塩酸等で金属の種類により選定することができる。本実施例では、13%の塩酸を用い24時間程度かけてエッチングして該積層体のPPS層のみを取り出した。2層積層体の場合は、金属板を上記エッチング後、2層目のPPS層をレーザでエッチングし1層目のPPS層のみ取り出した。
各試料を同方向にそろえて厚さ1mm、幅1mm、長さ10mmの短冊状の成形(成型時の各フィルムの固定は5%酢酸アミル溶液)し、フィルムの膜面にそってX線を入射(EdgeおよびEnd方向)してプレート写真を撮影した。X線発生装置は理学電機製D−3F型装置を用い、40kV−20mmAでNiフィルターを通したCu−Ka線をX線源とした。試料−フィルム間距離は41mmでコダックノンスクリーンタイプフィルムを用い多重露出(15分および30分)法を採用した。次にプレート写真上の(200)ピークの強度をφ=0゜(赤道線上)、10゜、20゜、30゜の位置で写真の中心から半径方向にデンシトメータを走査し黒化度を読みとり各試料の配向度OFを下記定義した。
OF=Iφ=30゜/Iφ=0゜
ここでIφ=30゜は30°の走査の最大強度、Iφ=0°は赤道線走査の最大強度である。なお、Iφ=0°はφ=0°とφ=180°、Iφ=30°はφ=30°とφ=150°の強度の平均値を用いた。ここでデンシトメータの測定条件は次の通りである。
装置は小西六写真工業製サクラマイクロデンシトメーターモデルPDM−5タイプAを使用し測定濃度範囲は0.0〜4.0D(最小測定面積4μ2換算)、光学倍率100倍、スリット幅1μ、高さ10μを使用しフィルム移動速度50μm/秒でチャート速度は1mm/秒である。
(2)絶縁の信頼性評価(絶縁性)
50mm角の積層体を樹脂層外に90度折り曲げ加工し、121℃、2気圧の飽和水蒸気の耐圧容器(内側ガラスコート)に入れ、定期的に取り出して、樹脂層の90度に折り曲げられた分部に同型の真鍮沿わしプラスチック製のクリップで固定して、該真鍮を電極にした。また金属板側をアース極にして直流2kVの電圧をかけ、その電流値をチャートに記録し下記の基準で評価した。
○:エージング時間が200時間で上記電流が0.2mA以下であった。
△:エージング時間が100時間で上記電流が0.2mA以下で該エージング時間が200時間経つと電流値が0.2mAを越えた。
×:エージング時間が100時間で上記電流値が0.2mAを越えた。
(3)積層界面評価
上記(2)のエージング後のサンプルを取り出し、該折り曲げ部分の断面を顕微鏡(10倍)で観察し、発生クラック等の状態から下記の基準で評価した。
○:樹脂層と金属板の界面にクラックや気泡、剥がれ等の欠陥が全く発生していない。
△:樹脂層と金属板の界面にクラックや気泡、剥がれ等の欠陥が少し発生しているが実用上問題ないレベル。
×:樹脂層と金属板の界面にクラックや気泡、剥がれ等の欠陥が発生し実用上問題があるレベル。
(4)外観評価
積層体の作成後の樹脂層表面を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:樹脂層表面に、皺、気泡が見られなかった。
△:樹脂層表面に、多少皺や気泡が見られた。
×:樹脂層表面に、多数の皺や気泡が発生し実用上問題であった。
(5)成形性評価
積層体を、サイズが50mmφ、深さが最大10mmφの半球状に常温にてプレスで絞り成形したときの成形常態を、顕微鏡により断面観察し下記の基準で評価した。
○:樹脂層に剥がれやクラック等が全く見られず、成形性に問題ないレベル。
△:樹脂層に一部微少な剥がれ部分あるが、クラックはなく実用上問題ないレベル。
×:樹脂層に剥がれまたは/およびクラックが発生し実用上問題になるレベル。
(6)金属板との密着力
積層体(10mm幅×50mm)を金属ロールからなるカレンダニングロール(プレスロール)で10%金属を圧延した後、手で剥がして密着力を下記の基準で評価した。プレス圧力は金属の種類や厚さで調整した。
○:金属板と樹脂層の界面に力を入れても簡単に剥がれない。
△:金属板と樹脂層の界面に力を入れたら一部が浮き上がるが他は簡単に剥がれない。
×:圧延後に剥がれるか、金属板と樹脂層の界面に力を入れたら簡単に剥がれる。
(7)誘電損失の高周波特性
JIS C2151(1990)に準じて、フィルム面にアルミニウム蒸着で電極を作成し、金属面をアース側にして、1MHzの周波数で測定し、%表示して比較した。
(8)PPSフィルムの高温揮発分の評価
パージ&トラップ法により試料を加熱して発生したガスを有機成分吸収管(ORBO−100)、無機成分吸収管(ORBO−52)にそれぞれ捕集し、有機成分を溶媒脱離法で溶出してガスクロマトグラフィー、無機成分を溶媒脱離法で溶出してイオンクロマトグラフィーをそれぞれ用いて測定した。また、試料の量および加熱は以下の条件で行った。
試料:ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物あるいはポリフェニレンサルファイドフィルム0.5〜3.0g
加熱温度:250℃、150℃
加熱雰囲気:空気気流(100ml/分)中
加熱時間:1時間
上記の250℃揮発分と150℃揮発分の差を高温揮発分とした。
(9)PPSフィルムの加熱収縮率の評価
PPSフィルムの長手方向、幅方向各々を10mm幅×230mm長に切り出し、該長尺方向に200mm間隔のマークを入れ、金尺で正確にマーク間距離を読みとる(αmm)。該サンプルを250℃の熱風オーブンに10分間エージングした後に該サンプルのマーク間距離を上記の方法で読みとる(βmm)。上記のマーク間距離から次式で熱収縮率を算出し%で表した。
加熱収縮率(%)=(α−β)/α×100
(10)融点の測定
示差熱量分析法(DSC法)で測定した融点のピークの頂点を融点とした。
(実施例1)
(1)PPSの重合
オートクレーブに硫化ナトリウム32kg(250モル、結晶水40wt%を含む)、水酸化ナトリウム100g、安息香酸ナトリウム36.1kg(250モル)、およびN−メチル−2−ピドリドン(以下NMPと略称する)79.2kgを仕込み、撹拌しながら徐々に205℃まで昇温し、水6.9kgを含む留出液7リットルを除去した。残留混合物に1,4−ジクロルベンゼン(以下DCBと略称する)37.5kg(255モル)、およびNMP20kgを加え、250℃で5時間重合した。得られた反応生成物をイオン交換水を用いた熱湯とNMPで交互に8回洗浄し、真空乾燥機で80℃、24時間乾燥した。得られたPPS粉末ポリマの溶融粘度は4100ポイズ、ガラス転移温度90℃、融点285℃であった。
(2)PPS樹脂組成物の調合
上記(1)で得られたPPSの粉末に、平均粒径が1μmの炭酸カルシウム粉末を1%添加しヘンシェルミキサーで混合した後、30mmφ二軸押出機で320℃の温度にてガット状に押しだし、水中で冷却後短くカットしてPPS樹脂組成物のペレットを作成した。
(3)PPS樹脂組成物の乾燥
上記(2)で得られたポリ−p−フェニレンサルファイド樹脂組成物を180℃、10mmHgの減圧下にてミキサーでかき混ぜながら7時間乾燥した後、160℃、10mmHgで5時間乾燥した。得られたポリ−p−フェニレンサルファイド樹脂組成物の250℃での揮発分から150℃での揮発分を引いた差(高温揮発分)は0.15重量%であった。
(4)二軸延伸PPSフィルムの製造
上記(3)の乾燥ペレットを50mmφの単軸押出機に供給し320℃の温度で溶融し、300mmのスリット状のTダイから押し出し、表面温度30℃の鏡面金属ドラムにキャストし、厚さ350μmの未延伸PPSシートを得た。該シートをロール群からなる縦延伸装置に導き、98℃の温度で3.7倍長手方向に延伸した。その後、横延伸装置(テンター)に該一軸延伸フィルムを導き、延伸温度98℃、延伸倍率3.5倍で幅方向に延伸し、後続する熱処理室で270℃の温度で10秒間熱処理した。さらに同一テンターで幅方向に5%のリラックスを行い、25μm厚さの二軸延伸PPSフィルムを得た。該フィルムの配向度OFは、Edge方向が0.68、End方向が0.71であった。更に該フィルムの表面に6000J/m2のコロナ放電処理を施した。また得られたPPSフィルムの高温揮発分は0.016%であった。また250℃の熱収縮率は、長手方向が4.1%、幅方向が1.8%であった。
(5)金属との積層
1mm厚さ、表面粗さ(Rt)が3μmのアルミニウム板(表面にリン酸クロム塩処理)を準備した。金属との積層は、アルミ板を連続にヒータで加熱しながら、金属ロール(25℃に通水冷却)とシリコンゴム被覆ロール(25℃に通水冷却)からなるプレスロールに供給し、該プレスロールで二軸延伸PPSフィルムと連続的に熱圧着積層した。加熱されたアルミ板の表面温度は380℃(赤外線温度計で測定)で、プレスロールに供給された二軸延伸PPSフィルムがアルミ板と熱圧着される直前の温度は360℃(赤外線温度計で測定)であり、プレス圧力は3kg/cmに調整した。また該積層は、アルミ板の表面処理面とフィルムのコロナ放電処理が積層されるようにした。このようにして得られた積層体を積層体−1とする。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、二軸延伸PPSフィルムとアルミ板を熱圧着したが、アルミ板の加熱温度を変更し、該表面温度が330℃で、熱圧着直前のフィルム温度は310℃であった。このようにして得られた積層体を積層体−2とする。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、二軸延伸PPSフィルムとアルミ板を熱圧着したが、アルミ板の加熱温度を変更し、該表面温度が305℃で、熱圧着直前のフィルム温度は295℃であった。このようにして得られた積層体を積層体−3とする。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、二軸延伸PPSフィルムとアルミ板を熱圧着したが、アルミ板の加熱温度を変更し、該表面温度が300℃で、熱圧着直前のフィルム温度は283℃であった。このようにして得られた積層体を積層体−4とする。
(比較例2)
実施例1の未延伸PPSシートの製造で、溶融押出機へのPPS樹脂組成物の供給量を制御して、厚さ25μmの未延伸PPSシートを得た(得られた未延伸PPS層の配向度OFは、Edge:0.97、End:0.95であった)。該シートを実施例3の条件で未延伸PPSシートと金属板を熱圧着し積層体−5を得た。
(比較例3)
特開平4−319436号広報の実施例3の方法および条件で、PPS組成物/共重合PPS組成物の積層二軸延伸フィルム得た。フィルムの厚さは25μmで、該PPS組成物層は19μm、共重合PPS組成物層の厚さは6μmになるよう調整した。なお、該共重合PPSの融点は253℃であった。
該積層フィルムを実施例1の熱圧着方法で、熱圧着直前のフィルム温度が255℃になるよう調整した。該積層体を積層体−6とする。
(比較例4)
市販されているポリイミドワニス(東レ製“トレニース”#3000)を実施例1で用いたアルミ板に乾燥後の塗布厚みが25μmになるようアプリケーターで調整し、270℃の温度で2時間イミド化反応させた。得られた積層体を積層体−7とする。
(比較例5)
実施例1に用いたアルミ板に、市販されているシリコン樹脂(スリーボンド3160)を硬化後の厚さが25μmになるようアプリケーターで調整し、紫外線で硬化させた。得られた積層体を積層体−8とする。
(比較例6)
実施例1の二軸延伸PPSフィルムのコロナ処理面に耐熱ウレタン系の接着剤(東洋モートン社製:アドコート76P1)を10μm/dryの塗布厚みになるようメタリングバーで調整し、実施例1のアルミ板に積層した。積層の条件は加熱プレス方式で温度100℃、プレス圧1kg/cmであった。また熱硬化の条件は、80℃で2日間とした。この積層体を積層体−9する。
(実施例4)
実施例1と同条件で12μm厚さの二軸延伸PPSフィルムを得た(配向度OF:Edge=0.72、End=0.75、250℃の加熱収縮率は、長手方向が5.3%、幅方向が1.7%)。該フィルムを実施例1の方法でアルミ板に積層(熱圧着)した。アルミ板の加熱温度は320℃で、熱圧着直前のフィルム温度は305℃であった。該積層体を積層体−10とする。
(実施例5)
実施例1と同じ方法で150μmの二軸延伸PPSフィルムを得て(配向度OF:Edge=0.66、End=0.64、加熱収縮率は長手方向が4.0%、幅方向が1.2%)、実施例1の方法でアルミ板に熱圧着した。アルミ板の加熱温度は400℃、熱圧着直前のフィルム温度は320℃であった。この積層体を積層体−11とする。
(実施例6)
実施例1と同条件で100μm厚さの二軸延伸PPSフィルムを得た。該フィルムを実施例1で得られた積層体−1のPPS層の上に実施例1の方法で熱圧着し本発明の2層積層体を得た。但し、熱圧着の条件は、積層体−1を320℃に加熱し、プレスロールに上記100μmのPPSフィルムを供給する直前の温度は290℃であった。該積層体を積層体−12とする。
(実施例7)
実施例5で得た150μm厚さの二軸延伸PPSフィルムを実施例4の積層体−10に熱圧着して本発明の2層積層体を作成した。この場合の積層体−10の加熱温度は330℃、プレスロール供給直前のフィルム温度は295℃であった。該積層体を積層体−13とする。
(実施例8〜10)
実施例1の二軸延伸PPSフィルムの延伸倍率、延伸温度、熱処理温度、リラックス率等を変更し、配向度OFおよび加熱収縮率が異なる50μmの二軸延伸PPSフィルムを得た。得られた3種類のフィルムの特性を表1に示す。該フィルムを実施例1の方法で、アルミ板の加熱温度が340℃、熱圧着温度を310℃になるよう調整し3種類の積層体(積層体−14〜16)を得た。
Figure 0004385693
(実施例11)
実施例1の方法で、PPSの重合後の洗浄回数を6回にし、そのPPS樹脂組成物のペレットの真空乾燥の条件は、温度140℃、真空度を10mmHgにし乾燥時間を6時間のみにした。乾燥後の樹脂組成物の高温揮発分は0.38重量%であった。その他は実施例1の方法で厚さ25μmの二軸延伸PPSフィルムを得た。得られたフィルムの高温揮発分は0.024重量%であり、積層体の製造条件も実施例2の条件を用いた(積層体−17)。
(実施例12)
実施例1の条件で、50μmのPPSフィルムを得(配向度OF:Edge=0.67、End=0.70、250℃の加熱収縮率は、長手方向が4.6%、幅方向が1.8%)、金属板を0.5mmのSUS板(表面粗さRt:3μm)を用いて、実施例1の方法で積層体を作成した。SUS板の加熱温度は340℃、フィルムとの積層直前のフィルムの温度は310℃であった。該積層体を積層体18とする。
(評価)
実施例および比較例の評価の結果を表2に比較して示す。
Figure 0004385693
(まとめ)
まず、本発明の積層体(実施例1〜3)と従来品(比較例1〜6)を比較してみる。
実施例1〜3の本発明の積層体は、金属板との密着力、高温高湿度下の絶縁性、絞り成形性および高周波領域での誘電損失の変化に代表される誘電特性に優れ、かつ金属板との積層加工が短時間で容易にでき加工性にも優れるものである。
これに対し、PPSフィルムの融点以下の温度で熱圧着した、本発明の積層体のPPS層の配向度OFが0.65未満の比較例1の積層体−4(PPSフィルムの融点以下で熱圧着したもの)は密着力が弱いために界面剥離しやすく高温高湿度下での絶縁の信頼性が低下する。また絞り成形で完全に剥がれてしまう。また、積層体のPPS層に未延伸PPSシートを用いた比較例2の積層体−5は金属板との密着力は良好なものの、未延伸シート層の配向度OFが0.90を越え、樹脂層の配向が弱く結晶化の影響も受けて、折り曲げ加工や絞り成形加工で樹脂層にクラックが発生し絶縁の信頼性が低下する。また密着性に優れる共重合PPSの積層フィルムを用いた比較例3の積層体−6も、折り曲げられた常態で高温、高湿度の雰囲気に長時間晒されるとクラックが発生し絶縁の信頼性が低下する。
一方、PPS以外の樹脂である比較例4のポリイミド樹脂を用いた積層体−7は、絞り成形性が悪いこと、高周波領域の誘電損失が問題であること、さらに樹脂のイミド化に要する時間が必要で積層体の加工性が悪い。また、比較例5のシリコン樹脂を用いた積層体−8は高温、高湿度下での絶縁の信頼性に乏しく、誘電損失の高周波特性が問題である。さらに、PPSフィルムを熱融着せず接着剤を介して積層した比較例6の積層体−9も高温高湿下での絶縁の信頼性および高周波領域での誘電特性が乏しく本発明の目的が達成できないことが判る。
本発明の積層体は、本発明の目的である金属板との高密着力、高温高湿度下での絶縁の信頼性の向上、曲げ加工や絞り成形性の付与は、金属板に熱圧着した後のPPS層の配向度OFを0.65〜0.90の特定の範囲に制御することである。実施例1〜3(積層体−1〜3)および比較例1、2の通りである。また実施例1〜3で、該配向度OFが大きくなると(PPS樹脂層の配向が低下すると)高温、高湿度下での絶縁の信頼性が低下する傾向があり、逆に該OFが小さくなると(樹脂層の配向が高くなると)金属板との密着力が低下し剥離による絶縁の信頼性の低下や剥離により絞り成型性が低下する傾向にある。また実施例4、5の積層体(積層体−10、11)の結果から、フィルム厚さを薄くすると熱圧着加工時に気泡や熱皺が入りやすいし、金属板の表面欠陥の影響を受けやすいために絶縁の信頼性が低下する方向である。逆に厚さが厚くなると熱圧着時の熱量不足による密着力の低下が生じやすく加工性が悪くなる傾向にある。よって本発明の積層体に用いるPPSフィルム厚さは10〜150μmの範囲が好ましい。
実施例6、7の積層体−12、13は本発明のもう一つの構成である、金属板にPPSフィルムを熱圧着積層した本発明の積層体のPPS層表面に更にPPSフィルムを熱融着積層したもの(本発明で言う2層積層体)である。積層体−12、13は、共に熱圧着時の熱じわ、気泡の発生や金属板の表面欠陥の影響を受けて高温、高湿度下での絶縁の信頼性が比較的低い積層体−1、積層体−10にもう一層別のPPSフィルムを熱融着したものある。このようにPPS層を2層にすることで上記の絶縁の信頼性が大幅に改善され、本発明の目的をより達成したすいことが判る。さらに第1層目のPPS層が金属板との密着力が強固であり、該1層目をアンカー目的に用いることができ、次の2層目はPPS同士の熱融着積層になるため比較的低温で加工でき、外観も良好になる。
実施例8〜10の積層体−14〜16は、使用するPPSフィルムの配向度OFと加熱収縮率を変更したものである。使用するPPSフィルムの配向度OFが0.50〜0.80の範囲に制御しておくと積層体にしたときのPPS層の配向度OFを本発明の範囲内に制御しやすいし、本発明の目的である金属板との密着力を得るためには、使用するPPSフィルムの250℃の加熱収縮率を8.0%以下にすることが好ましいことが判る。
また実施例11の積層体−17に用いたPPSフィルムは、実施例1の積層体に用いたPPSフィルムと比較して高温揮発分が多いものである。該高温揮発分が多く含まれると、高温で熱圧着して積層体を製造するときに微細気泡が発生しやすく、密着力の低下につながり絶縁の信頼性が低下する傾向にある。本発明に使用するPPSフィルムの高温揮発分は0.02%以下であることが特に好ましい。実施例12は、別の金属板であるSUS板を用いたものである。金属板を変更しても積層体を本発明の構成にすることで本発明の目的が達成できることが判る。
本発明の積層体は、自動車、産業機器、電子部品機器等のシールド基材、放熱回路基板、絶縁保護基板等や、絞り成型が可能であり成型を必要とする上記用途に最適なものである。

Claims (4)

  1. 金属板の少なくとも片方の面に、ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなる樹脂層が接着剤を介することなく積層された積層体であって、樹脂層の配向度OFが0.65〜0.9の範囲であることを特徴とする積層体。
  2. ポリフェニレンサルファイドがポリ−p−フェニレンサルファイドである請求項1記載の積層体。
  3. 樹脂層の表面に更にポリフェニレンサルファイドフィルムが接着剤を介することなく積層された請求項1または2記載の積層体。
  4. ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなる樹脂層に、高温揮発分が0.02重量%以下、250℃の加熱収縮率が8%以下であるポリフェニレンサルファイドフィルムを該フィルムの融点以上の温度で熱圧着することを特徴とする積層体の製造方法。
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